WO2023248295A1 - 数値制御装置及び予想消費電力算出方法 - Google Patents

Abstract

消費電力の予想値の精度の向上を図る。また、実消費電力と予想消費電力とを可視化することで、比較を容易にして消費電力の支援をする。　数値制御装置が、機械を動作させる動作プログラムを記憶するプログラム記憶部と、動作プログラムに基づく第１の加減速設定により前記機械を動作させて、計算又は実測により実消費電力を取得する実消費電力取得部と、少なくとも、実消費電力と、第１の加減速設定から第２の加減速設定への加減速の変更分の消費電力の増減分とを加算して予想消費電力を算出する予想消費電力算出部と、予想消費電力算出部における、第１の加減速設定及び第２の加減速設定の消費電力の計算に必要な情報の少なくとも一部を記憶する設定値記憶部と、実消費電力と予想消費電力とを表示する表示部と、を備える。

Description

数値制御装置及び予想消費電力算出方法

　本発明は、予想消費電力を算出し、実消費電力とともに表示する数値制御装置及び予想消費電力算出方法に関する。

　経済的な面、又は昨今注目を浴びている省エネルギーの面から、機械動作を変更した際の消費電力の予想値を求めることが望ましい。

　特許文献１には、全体の加工工程において、加工プログラムの改良がどのように影響しているのかを分かりやすく表示することができる表示装置及び工作機械が記載されている。
　具体的には、特許文献１には、シーケンス番号で識別される複数のプログラムブロックとして、複数のブロックを含む加工プログラムを実行する工作機械から得られる情報を表示する表示装置が記載されている。表示装置は、工作機械の動作中の状態を変化量及び時間軸で示す状態情報と工作機械が実行している加工プログラムの所定のタイミングを示すタイミング情報とを取得するデータ取得部と、取得された状態情報及びタイミング情報に基づいて時系列情報を生成する時系列情報生成部と、タイミング情報によって示されるタイミングを揃えて、複数の時系列情報を重畳する重畳部と、重畳された複数の時系列情報を表示する表示部と、を備えている。表示装置は、加工負荷や速度、加工位置の変化量や、電力の変化量等の処理状態のデータを、状態情報として取得する。

　特許文献２には、サーボモータの出力を高精度に計算することができるサーボモータ制御装置が記載されている。
　具体的には、特許文献２には、サーボモータを制御するサーボモータ制御装置が、サーボモータに対して予め規定されたトルク定数が記憶される記憶部と、サーボモータの巻線の磁気飽和発生時に、記憶部に記憶されたトルク定数を補正するトルク定数補正部と、記憶部に記憶されたトルク定数もしくはトルク定数補正部によって計算された補正後のトルク定数と、サーボモータの電流に関連する値と、サーボモータの速度に関連する値と、に基づいて、サーボモータの出力を計算する出力計算部と、を備えることが記載されている。

　特許文献３には、ロボットの動作プログラムを高精度に修正するロボットプログラム修正システムが記載されている。
　具体的には、特許文献３には、ロボットプログラム修正システムが、ロボット制御装置とプログラム修正装置とを備えることが記載されている。ロボット制御装置は、動作プログラムを実行してロボットから得られるロボット検出情報を取得する情報取得部と取得されたロボット検出情報をプログラム修正装置に送信する通信部とを有する。プログラム修正装置は、動作プログラムＰＲに基づきシミュレーションを実行するシミュレーション部と、シミュレーション部でシミュレーションを繰り返しながら、シミュレーションの結果が予め定めた評価基準を満たすようにロボット検出情報に基づき動作プログラムＰＲを修正するプログラム修正部と、修正動作プログラムＰＲ１をロボット制御装置に送信する通信部とを有する。プログラム修正部は、ロボット制御装置から得られた各軸モータの速度、電流値等を用いてサイクルタイムが最短となるように、動作プログラムＰＲの教示点における指令速度および指令加速度を修正する。

特開２０１９－１３３３４６号公報 特開２０１８－１５３０４１号公報 特開２０１６－１６４８８号公報

　消費電力の予想値は、正確な予想値が得られるように精度の向上が望まれている。また、実消費電力と予想消費電力とを可視化することで、比較を容易にして消費電力削減の支援をすることが望まれている。

　（１）　本開示の第１の態様は、機械を動作させる動作プログラムを記憶するプログラム記憶部と、
　前記動作プログラムに基づく第１の加減速設定により前記機械を動作させて、計算又は実測により実消費電力を取得する実消費電力取得部と、
　少なくとも、前記実消費電力と、前記第１の加減速設定から第２の加減速設定への加減速の変更分の消費電力の増減分とを加算して予想消費電力を算出する予想消費電力算出部と、
　前記予想消費電力算出部における、前記第１の加減速設定及び前記第２の加減速設定の消費電力の計算に必要な情報の少なくとも一部を記憶する設定値記憶部と、
　前記実消費電力と前記予想消費電力とを表示する表示部と、
　を備えた数値制御装置である。

　（２）　本開示の第２の態様は、機械を動作させる動作プログラムを記憶するプログラム記憶部を備えた、数値制御装置としてのコンピュータが、
　前記動作プログラムに基づく第１の加減速設定及び第２の加減速設定の消費電力の計算に必要な情報を記憶し、
　前記第１の加減速設定により前記機械を動作させて、計算又は実測により実消費電力を取得し、
　少なくとも、前記実消費電力と、前記第１の加減速設定から前記第２の加減速設定への加減速の変更分の消費電力の増減分とを加算して予想消費電力を算出する、予想消費電力算出方法である。

　本開示の態様によれば、消費電力の予想値の精度の向上を図ることができる。また、実消費電力と予想消費電力とを可視化することで、比較を容易にして消費電力削減の支援をすることが可能となる。

本開示の一実施形態の数値制御装置を含む数値制御工作機械の構成を示すブロック図である。 サーボ制御装置の一構成例を示すブロック図である。 本開示の一実施形態の数値制御装置の構成を示すブロック図である。 直線加減速の加減速変更前後における速度の時間変化を示す特性図である。 直線加減速の加減速変更前後における加速度の時間変化を示す特性図である。 加減速変更前における速度の時間変化を示す特性図である。 加減速変更前における加速時の速度の時間変化を示す特性図である。 ベル形加減速の加減速変更前後における速度の時間変化を示す特性図である。 ベル形加減速の加減速変更前後における加速度の時間変化を示す特性図である。 指数形加減速の加減速変更前後における速度の時間変化を示す特性図である。 指数形加減速の加減速変更前後における加速度の時間変化を示す特性図である。 表示設定部の一構成例を示すブロック図である。 表示部に表示されるグラフ表示の第１例を示す図である。 表示部に表示されるグラフ表示の第２例を示す図である。 モータの積算電力に対する、クーラント用ポンプの積算電力、コンベアの積算電力、ライトの積算電力を示す特性図である。 本実施形態における数値制御装置の動作を示すフローチャートである。

　以下、本開示の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
　図１は、本開示の一実施形態の数値制御装置を含む数値制御工作機械の構成を示すブロック図である。
　図１に示すように、数値制御工作機械１０は、ＣＮＣ（Computerized Numerical Control）装置等の数値制御装置２０、サーボ制御装置３０、モータ４０及び外部機器５０を備えている。サーボ制御装置３０はモータ４０を制御する。本実施形態では、数値制御装置２０が制御する機械として工作機械を取り上げ、動作プログラムは加工プログラムであるとして説明する。

　数値制御装置２０は、工具又はワークの移動を指令する加工プログラムに基づいてサーボ制御装置３０に位置指令等の制御指令を出力する。また、数値制御装置２０は、サーボ制御装置３０のフィードバック情報からプログラム運転での実消費電力を算出、又は電力計で実消費電力を実測し、そのプログラム中の加減速を変更した際の設定した期間中の予想消費電力を算出する。そして、数値制御装置２０は、後述する表示部２１２の表示画面に実測消費電力と予想消費電力の電力グラフを表示する。
　数値制御装置２０は、サーボ制御装置３０を含んでもよい。

　サーボ制御装置３０は、数値制御装置２０からの位置指令等の制御指令に基づいて、モータ４０を制御する。サーボ制御装置３０は、Ｘ軸モータを駆動するＸ軸サーボ制御部、Ｙ軸モータを駆動するＹ軸サーボ制御部、Ｚ軸モータを駆動するＺ軸サーボ制御部及び主軸モータを駆動する主軸モータ制御部を備えているが、図１においては、モータ４０を制御する１つのサーボ制御部のみが示され、他のサーボ制御部及び主軸モータ制御部の構成は省略されている。

　モータ４０は、工作機械の一部として設けられる。しかし、サーボ制御装置３０の一部として設けられてもよい。モータ４０は、以下の説明では回転運動をするモータとして説明するが、直線運動をするリニアモータであってもよい。

　モータ４０は、３軸加工機等の工作機械に含まれ、例えば、Ｘ軸の送り軸モータとなる。数値制御工作機械１０が３軸加工機に用いられる場合、送り軸モータとしては他にＹ軸及びＺ軸のモータが設けられており、また３軸加工機はボールエンドミル等の工具を回転させる主軸モータも備えている。

　モータ４０が、３軸加工機に用いられる回転運動をするモータである場合、モータ４０は、ボールねじ等を介して、ワークが載せられたテーブルをＸ軸方向に直線移動させる。なお、３軸加工機の構成は係る構成に限定されず、例えば、工具を固定し、テーブルをＸ軸方向、Ｙ軸方向及びＺ軸方向に直線移動させたり、テーブルを固定し、工具をＸ軸方向、Ｙ軸方向及びＺ軸方向に直線移動させたりしてもよい。工作機械は３軸加工機に限定されず、例えば５軸加工機でもよい。

　外部機器５０は、クーラントを循環させるクーラント用ポンプ、切り屑等を集めるコンベア、ライト、等である。図１では外部機器５０は１つ示されているが、外部機器５０は複数あってもよい。

　次にサーボ制御装置３０、数値制御装置２０及び外部機器５０の構成及び動作について更に詳細に説明する。 
＜サーボ制御装置＞
　サーボ制御装置３０は、３軸加工機の場合、Ｘ軸サーボ制御部、Ｙ軸サーボ制御部、Ｚ軸サーボ制御部及び主軸モータ制御部を備えているが、以下の説明では、Ｘ軸サーボ制御部を取り上げて説明する。Ｙ軸サーボ制御部及びＺ軸サーボ制御部の構成はＸ軸サーボ制御部と同様な構成であり、主軸モータ制御部の構成は例えば、特開２０１９－０４０５５６号に記載されている。

　図２は、サーボ制御装置の一構成例を示すブロック図である。
　図２に示すように、サーボ制御装置３０は、減算器３０１、位置制御部３０２、減算器３０３、速度制御部３０４、減算器３０５、電流制御部３０６及び積分器３０７を備えている。

　減算器３０１は、数値制御装置２０から出力される位置指令と位置フィードバックされた検出位置との差を求め、その差を位置偏差として位置制御部３０２に出力する。
　位置制御部３０２は、位置偏差にポジションゲインＰＧを乗じた値を、速度指令値として減算器３０３に出力する。

　減算器３０３は、位置制御部３０２から出力される速度指令値と速度フィードバックされた速度検出値との差を求め、その差を速度偏差として速度制御部３０４に出力する。

　速度制御部３０４は、速度偏差に積分ゲインＫ１ｖを乗じて積分した値と、速度偏差に比例ゲインＫ２ｖを乗じた値とを加算して、電流指令値として減算器３０５に出力する。

　減算器３０５は、速度制御部３０４から出力される電流指令値と電流フィードバックされた電流検出値との差を求め、その差を電流偏差として電流制御部３０６に出力する。
　電流制御部３０６は、電流偏差に基づいてモータ４０を駆動するための電圧指令を生成し、その電圧指令をモータ４０に出力する。

　モータ４０の回転角度位置は、不図示のロータリーエンコーダによって検出され、速度検出値は速度フィードバック情報（速度ＦＢ情報）として減算器３０３に入力される。速度検出値は、数値制御装置２０に入力される。
　積分器３０７は、速度検出値を積分して位置検出値を求め、位置検出値を位置フィードバック情報（位置ＦＢ情報）として、減算器３０１に入力する。
　モータ４０に取り付けられた、不図示の電流検出器は、電流を検出して、電流検出値を電流フィードバック情報（電流ＦＢ情報）として、減算器３０５に入力する。電流検出値は、数値制御装置２０に入力される。
　また、モータ４０に取り付けられた、不図示の電圧検出器は、電圧を検出して、電圧検出値を数値制御装置２０に入力する。
　なお、後述する、実消費電力の計算で、電圧検出値を用いない場合には電圧検出値を数値制御装置２０に入力しなくともよく、速度検出値を用いない場合には速度検出値を数値制御装置２０に入力しなくともよい。

＜数値制御装置＞
　図３は、本開示の一実施形態の数値制御装置の構成を示すブロック図である。
　図３に示すように、数値制御装置２０は、プログラム記憶部２０１、指令解析部２０２、補間部２０３、加減速制御部２０４、指令出力部２０５、設定値記憶部２０６、予想消費電力算出部２０７、設定変更部２０８、ＦＢ取得部２０９、実消費電力取得部２１０、表示設定部２１１及び表示部２１２を備えている。

　プログラム記憶部２０１には、加工プログラムが記憶される。
　指令解析部２０２は、加工プログラムからＸ軸、Ｙ軸、Ｚ軸及び主軸の移動の指令を含むブロックを逐次読みだして解析し、解析結果に基づいて各軸の移動を指令する移動指令データを作成する。
　補間部２０３は、指令解析部２０２から出力される移動指令データにより指令される移動指令に基づいて、指令経路上の点を補間周期で補間計算した補間データを生成する。

　加減速制御部２０４は、補間部２０３から出力される補間データに基づいて、加減速処理を行い補間周期ごとの各軸の加工速度を計算して後述する指令出力部２０５に出力する。
　指令出力部２０５は、加減速制御部２０４から出力される各軸の加工速度に基づいて位置指令を生成し、サーボ制御装置３０に出力する。

　設定値記憶部２０６には、モータ諸元値、測定値、外部機器の消費電力及びパラメータ設定値が記憶される。モータ諸元値は、例えば、トルク定数である。測定値は、粘性摩擦、クーロン摩擦等である。パラメータ設定値は、速度、加速度等である。パラメータ設定値としての速度、加速度は、設定変更部２０８により変更される。外部機器の消費電力は外部機器からの入力される動作信号より稼働時間を求め、カタログスペックから得られる単位時間あたりの消費電力を参照して求められる。

　予想消費電力算出部２０７は、実消費電力取得部２１０から実消費電力を取得し、加工プログラムから求められた速度、加速度（第１の加減速設定となる）を設定値記憶部２０６から取得し、また、設定値記憶部２０６から、設定変更部２０８によって変更された速度、加速度（第２の加減速設定となる）を取得する。そして、予想消費電力算出部２０７は、実消費電力、変更前の速度、加速度（第１の加減速設定）、変更後の速度、加速度（第２の加減速設定）を用いて予想消費電力を計算する。予想消費電力の算出方法については後述する。なお、加速度は、速度が増加する場合と、速度が減少する場合の両方を含む。加工プログラムから求められる、速度及び加速度は設定変更部２０８に記憶されていてもよい。予想消費電力算出部２０７は、設定値記憶部２０６より外部機器５０の消費電力を取得し、外部機器５０の消費電力を含めて予想消費電力を算出することができる。
　予想消費電力算出部２０７は、設定変更部２０８から、変更された第２の加減速設定による再計算の指示が出された場合は、変更された第２の加減速設定となる速度、加速度等を用いて予想消費電力を再計算する。

　設定変更部２０８は、例えば、プログラム記憶部２０１に記憶された加工プログラムから速度、加速度（第１の加減速設定）を求め設定値記憶部２０６に記憶する。また、設定変更部２０８は、加工プログラムから求められた速度、加速度を変更して速度、加速度（第２の加減速設定）を設定値記憶部２０６に記憶する。第２の加減速設定の速度、加速度はユーザが設定してもよく、第１の加減速設定に基づいて変更量を予め決めておいてもよい。
　設定変更部２０８は、ユーザによる時定数、予想消費電力の指定により、第２の加減速設定となる速度、加速度等の加減速設定を変更し、変更された速度、加速度を設定値記憶部２０６に記憶する。また、設定変更部２０８は、決定した予想消費電力となるように、加減速制御部２０４の加減速時定数、一定速時間等の設定をする。
　なお、以上の説明では、設定変更部２０８が速度と加速度を変更する例について説明したが、加減速タイプによって変更する加減速のパラメータが異なり、加減速タイプが後述する直線加減速である場合は、例えば、速度と加速度、又は加減速時の時定数を変更する。加減速タイプが後述するベル形加減速である場合は、例えば、加減速時の１次加減速時間及び２次加減速時間、又は時定数及び速度変化を変更する。加減速タイプが後述する指数形加減速である場合は、例えば、加減速時の時定数及び最終到達速度を変更する。

　ＦＢ取得部２０９は、サーボ制御装置３０からのフィードバック情報となる、電流検出値及び電圧検出値、又は電流検出値及び速度検出値を取得する。サーボ制御装置３０から得られるフィードバック情報は、第１の加減速設定により生成される位置指令に基づいてサーボ制御装置３０を動作することで得られる。
　実消費電力取得部２１０は、ＦＢ取得部２０９によって取得された、電流検出値及び電圧検出値、又は電流検出値及び速度検出値を用いて実消費電力を算出する。実消費電力取得部２１０は、電力計により実消費電力を取得してもよく、この場合、ＦＢ取得部２０９はなくともよい。

　表示設定部２１１は、実消費電力取得部２１０で取得された実消費電力と、予想消費電力算出部２０７で算出した予想消費電力を設定した期間ごとに表示するように表示部２１２の表示設定を行う。
　表示部２１２は、表示設定部２１１の表示設定に基づいて表示画面に実消費電力と予想消費電力との表示を行う。
　表示設定部２１１の構成の詳細及び表示部２１２による表示例については、後述する。

　ユーザは、表示部２１２で表示された予想消費電力を見て、予想消費電力の値を変更することができる。ユーザは、後述するように、表示画面に時定数等が表示された場合は、時定数等を変更することで予想消費電力の値を変更することができる。

　以上説明した数値制御装置２０は、実消費電力取得部２１０によって、第１の加減速設定に基づく実消費電力を取得し、予想消費電力算出部２０７によって、第２の加減速設定に基づく予想消費電力を計算する。表示部２１２は、実消費電力と予想消費電力とを表示する。表示部２１２の表示画面を見たユーザが、時定数等を変更、又は予想消費電力を変更すると、設定変更部２０８は、速度、加速度等の第２の加減速設定を変更し、変更された速度、加速度等を設定値記憶部２０６に記憶する。
　以下、これらの動作について更に詳細に説明する。

　まず、実消費電力取得部２１０による実消費電力取得方法について説明する。
　（実消費電力取得方法）
　実消費電力取得部２１０は、実消費電力Ｐを、数式１（以下の数１）を用いて計算することで求めることができる。数式１において、Ｉｑは電流フィートバックである検出電流、Ｖは検出電圧、ωは角速度を示す。検出電流Ｉｑ及び検出電圧Ｖは、サーボ制御装置３０から出力される。角速度ωは、後述する速度フィードバックとしての速度検出値から求めることができる。実消費電力Ｐは、検出電流Ｉｑ及び検出電圧Ｖ、又は検出電流Ｉｑ及び角速度ωを用いて計算することができる。

　また、実消費電力取得部２１０は、実消費電力Ｐを、電力計から実際に計測された値を実消費電力Ｐとして取得することもできる。

　次に、予想消費電力算出部２０７による予想消費電力算出方法について説明する。

（予想消費電力算出方法）
　加工プログラムにおいて、ｎ回（ｎは自然数）加減速動作があるときの、全体予想消費電力Ｐｅは数式２（以下の数２）で示される。数式２において、電力Ｐａはある時刻でのサーボ制御装置の予想消費電力、時間Ｔは開始位置から目標位置までの時間、Ｔｘは機械の予想稼働時間、Ａはある時刻での外部機器５０の消費電力を示す。ここでは、予想消費電力算出部２０７は、時間Ｔｘ内での外部機器５０の消費電力を計算しているが、外部機器５０の消費電力は計算しなくともよい。

　数式２の第１項の式は、時間Ｔ内における予想消費電力Ｐａの積分値を示し、数式２の最終項の式は、機械の予想稼働時間Ｔｘにおける外部機器５０の予想消費電力Ａの積分値を示す。時間Ｔ内で行われる加減速動作は、予想稼働時間Ｔｘ内においてｎ回繰り返される。同じ加減速動作がｎ回繰り返される場合は、数式２の第１項の式はｎ個ある。
　数式２の第１項の予想消費電力Ｐａは、加工プログラム中の加減速を変更した際に（第１の加減速設定から第２の加減速設定に変更した際に）、加減速変更分による消費電力の増減分を計算で求め、その増減分を実消費電力Ｐに加減算することで算出される。実消費電力を得るための加減速の設定は第１の加減速設定に対応する。
　例えば、ある時刻での、加減速の変更前の第１の加減速設定での予想消費電力をＰｘ１、加減速の変更後の第２の加減速設定での予想消費電力をＰｘ２、実消費電力をＰとすると、ある時刻での数式２の第１項の予想消費電力Ｐａは、Ｐａ＝（Ｐｘ２－Ｐｘ１）＋Ｐで求めることができる。

　数式２の第１項は、時間Ｔ内における予想消費電力Ｐａの積分値であり、加工プログラムにおける第１回目の加減速動作における予想消費電力を示す。

　ここで、設定された加減速での消費電力をＰｘとすると、消費電力Ｐｘは、数式３（以下の数３）を数式４（以下の数式４）に挿入することで求めることができる。数式３及び数式４において、Ｋｔはトルク定数、Ｉｑaは電流、Ｊｍはイナーシャ、Ｆは粘性摩擦又はクーロン摩擦であり、ωは角速度である。

　イナーシャＪｍ、粘性摩擦及びクーロン摩擦である摩擦Ｆは予め測定されて、設定値記憶部２０６に記憶されており、角速度ω及び角加速度ｄω／ｄｔは、プログラム記憶部２０１に記憶された加工プログラムから求める、又は、又は設定値記憶部２０６に記憶された速度、加速度から求める。加工プログラムから求められた、変更前の角速度ω及び角加速度ｄω／ｄｔを用いて得られた消費電力Ｐｘは上記の消費電力Ｐｘ１であり、設定値記憶部２０６に記憶された変更後の速度、加速度から求められた、角速度ω及び角加速度ｄω／ｄｔを用いて得られた消費電力Ｐｘは上記の消費電力Ｐｘ２である。

　以下、時間Ｔ内での数式２の予想消費電力Ｐｅの積分値を求める方法について具体例を用いて説明する。
　（直線加減速）
　以下、工作機械が直線加減速で動作する場合において、加減速変更により位置到達の時間が増加する例について説明する。
　直線加減速の場合は、速度変化又は時定数を変更して予想消費電力を算出する。
　図４は、直線加減速の加減速変更前後における速度の時間変化を示す特性図である。図５は直線加減速の加減速変更前後における加速度の時間変化を示す特性図である。

　図４において、実線は加減速変更前の速度変化を示し、破線は加減速変更後の速度変化を示す。図５において、実線は加減速変更前の加速度変化を示し、破線は加減速変更後の加速度変化を示す。図４及び図５において、時間Ｔ１は、加減速変更前の加速期間を示し、時間Ｔ２は加減速変更前後での一定速期間の差分の期間を示し、時間Ｔ３は、加減速変更前の減速期間を示し、時間Ｔ４は加減速変更前後での減速期間の差分の期間を示している。時間Ｔ５は加減速変更前の一定速期間を示している。
　また、図４において、時間Ｔは加減速変更後の開始位置から目標位置までの時間、時間Ｔｓは加減速変更前の開始位置から目標位置までの時間を示している。

　図４に示すように、加減速変更後の速度は、加減速変更前の速度に比べて加速期間が長くなり、一定速期間が短くなり、減速期間が長くなる。
　時間Ｔ内における予想消費電力となる、数式２の第１項の予想消費電力Ｐａの積分値、及び外部機器５０の電力は、以下の数式５（以下の数５）で求めることができる。

　数式５において、加減速変更後の加減速期間の予想消費電力は、図４に示すように、加速期間（Ｔ１＋Ｔ２））と減速期間（Ｔ３＋Ｔ４）における予想消費電力を示し、加減速変更前の加減速期間の予想消費電力は、加速期間Ｔ１と減速期間Ｔ３における予想消費電力を示す。
　数式５の（時間Ｔ２における一定速中の電力）及び（（加減速変更後の加減速期間の予想消費電力）－（加減速変更前の加減速期間の予想消費電力））は、外部機器電力を含んでいない。数式５の（期間Ｔｓ内の実消費電力）は外部機器消費電力を含み、
　加減速を変更した場合、加減速時間も変化するが加減速中に移動する距離も変化するので一定速の時間も変化する。数式５は、この２つを考慮した増減分を計算した式である。

　外部機器の消費電力を含まない、加減速前の一定速中の消費電力は次のように求められる。数式６（以下の数６）で求めることができる。
　図６は、加減速変更前における速度の時間変化を示す特性図である。図６において、図４と同様に、時間Ｔ１は、加減速変更前の加速期間を示し、時間Ｔ３は、加減速変更前の減速期間を示し、時間Ｔ５は加減速変更前の一定速期間を示している。
　外部機器の消費電力を含まない、時間Ｔ５での消費電力は、数式６（以下の数６）で求めることができる。数式６の（期間Ｔｓまでの実消費電力）は外部機器消費電力を含み、（時間（Ｔ１＋Ｔ５）の加減速期間の消費電力）は外部機器消費電力を含んでいない。

　具体的な計算式は、数式７（以下の数７）で求めることができる。

　また、一定速中の予想消費電力は、取得した実消費電力を一定速中分のみ抜き出し、その値を予想される一定速時間分にして算出してもよい。具体的には実消費電力中の一定速部分の単位時間当たり(秒等)の値を算出して、予想される一定速の時間を乗算するようにしてもよい。

　直線加減速の場合の時間Ｔ１、Ｔ２、Ｔ３、Ｔ４、Ｔ５、目的位置までの距離Ｚは数式８（以下の数８）で求めることができる。数式８において、ｖ１は最終到達速度、ａ１は加減速変更前の加速度、ａ２は加減速変更後の加速度を示す。最終到達速度ｖ１は加減速変更の前後で同じである。

　時定数が指定された場合には、時定数を用いて、時間Ｔ１、Ｔ２を求めることができる。
　一例として、時間Ｔ１、Ｔ２を求める場合について説明する。
　加減速変更前の加速時の時定数を時定数Ｔ’、加減速変更後の加速時の時定数を時定数Ｔ’’とすると、時間Ｔ１、Ｔ２は数式９（以下の数９）を用いて求めることができる。

　図７は、加減速変更前における加速時の速度の時間変化を示す特性図である。

　（ベル形加減速）
　以下、工作機械がベル形加減速で動作する場合において、加減速変更により位置到達の時間が増加する例について説明する。
　ベル加速の場合は、一次加減速時間ｔ１、２次加減速時間ｔ２の変化から予想消費電力を算出する。加減速変更後の加減速設定（第２の加減速設定）は、加減速変更前の加減速設定（第１の加減速設定）の一次加減速時間ｔ１、２次加減速時間ｔ２を変更することで得られる。
　図８は、ベル形加減速の加減速変更前後における速度の時間変化を示す特性図である。図９はベル形加減速の加減速変更前後における加速度の時間変化を示す特性図である。
　図８において、実線は加減速変更前の速度変化を示し、破線は加減速変更後の速度変化を示す。図９において、実線は加減速変更前の加速度変化を示し、破線は加減速変更後の加速度変化を示す。

　図８及び図９において、時間Ｔ１は加減速変更前の加速期間を示し、時間Ｔ２は加減速変更前後での一定速期間の差分の期間を示し、時間Ｔ３は加減速変更前の減速期間を示し、時間Ｔ４は加減速変更前後での減速期間の差分の期間を示している。時間Ｔ５は加減速変更前の一定速期間を示している。
　図８に示すように、加減速変更後の速度は、加減速変更前の速度に比べて加速期間が長くなり、一定速期間が短くなり、減速期間が長くなる。
　時間Ｔ内における、数式２の第１項の予想消費電力Ｐａの積分値、及び外部機器の電力は、以下の数式１０（以下の数１０）で求めることができる。

　数式１０において、加減速変更後の加減速期間の予想消費電力は、加速期間（Ｔ１＋Ｔ２））と減速期間（Ｔ３＋Ｔ４）における予想消費電力を示し、加減速変更前の加減速期間の予想消費電力は、加速期間Ｔ１と減速期間Ｔ３における予想消費電力を示す。
　数式１０の（時間（Ｔ５－Ｔ２）における一定速中の電力）及び（（加減速変更後の加減速期間の予想消費電力）－（加減速変更前の加減速期間の予想消費電力））は、外部機器電力を含んでいない。
　加減速を変更した場合、加減速時間も変化するが加減速中に移動する距離も変化するので一定速の時間も変化する。数式１０は、この２つを考慮した増減分を計算した式である。

　ベル形加減速の場合の時間Ｔ１、Ｔ２、Ｔ３、Ｔ４、Ｔ５、目的位置までの距離Ｚ、は数式１１（以下の数１１）で求めることができる。数式１１において、ｖ１は最終到達速度、ａ１は加減速変更前の加速度を示す。最終到達速度ｖ１は加減速変更の前後で同じである。また、数式１１において、τ１は加減速変更前の時定数、τ２は加減速変更後の時定数、ｔ１は加減速変更前の１次加減速時間、ｔ２は加減速変更前の２次加減速時間、Ｔ５は実測の一定速の時間である。なお、Ｔ５－Ｔ２は予想の一定速時間を示す。

　（指数形加減速）
　以下、工作機械が指数形加減速で動作する場合において、加減速変更により位置到達の時間が増加する例について説明する。
　指数形加減速の場合は、時定数又は到達速度の変化から予想消費電力を算出する。加減速変更後の加減速設定（第２の加減速設定）は、加減速変更前の加減速設定（第１の加減速設定）の加減速時の時定数及び最終到達速度を変更することで得られる。
　図１０は、指数形加減速の加減速変更前後における速度の時間変化を示す特性図である。図１１は指数形加減速の加減速変更前後における加速度の時間変化を示す特性図である。

　図１０において、実線は加減速変更前の速度変化を示し、破線は加減速変更後の速度変化を示す。図１１において、実線は加減速変更前の加速度変化を示し、破線は加減速変更後の加速度変化を示す。図１０において、時間Ｔ１は、加減速変更前の加速期間を示し、時間Ｔ２は加減速変更前後での一定速期間の差分の期間を示し、時間Ｔ３は、加減速変更前の減速期間を示し、時間Ｔ４は加減速変更前後での減速期間の差分の期間を示している。時間Ｔ５は加減速変更前の一定速期間を示している。

　図１０に示すように、加減速変更後の速度は、加減速変更前の速度に比べて加速期間が長くなり、一定速期間が短くなり、減速期間が長くなる。
　時間Ｔ内における、数式２の第１項の予想消費電力Ｐａの積分値、及び外部機器の電力は、以下の数式１２（以下の数１２）で求めることができる。

　数式１２において、加減速変更後の加減速期間の予想消費電力は、加速期間（Ｔ１＋Ｔ２））と減速期間（Ｔ３＋Ｔ４）における予想消費電力を示し、加減速変更前の加減速期間の予想消費電力は、加速期間Ｔ１と減速期間Ｔ３における予想消費電力を示す。
　数式１２の（時間Ｔ２における一定速中の消費電力）及び（（加減速変更後の加減速期間の予想消費電力）－（加減速変更前の加減速期間の予想消費電力））は、外部機器電力を含んでいない。
　加減速を変更した場合、加減速時間も変化するが加減速中に移動する距離も変化するので一定速の時間も変化する。数式１２は、この２つを考慮した増減分を計算した式である。

　指数形加減速の場合の時間Ｔ１、Ｔ２、Ｔ３、Ｔ４、Ｔ５、目的位置までの距離Ｚ、は数式１３（以下の数１３）及び数式１４（以下の数１４）で求めることができる。数式１３及び数式１４において、ｖ１は最終到達速度、τ１は加減速変更前の時定数、τ２は加減速変更後の時定数、Ｖ１（ｔ）は加速時の速度、Ｖ’１（ｔ）は減速時の速度である。指数形においては、正確な時間Ｔ１を求めるのは困難なので、速度フィードバックがｖ１に達した時刻を時間Ｔ１とする。

　時間Ｔｓも同様に目標位置に到達するためにかかった実測の時間としてもよい。
　時間Ｔ２はＶ１（Ｔ１）＝Ｖ２（Ｔ１＋Ｔ２）を前提とすると、数式１４（以下の数式１４）で示される。

　以上、直線加減速、ベル形加減速、指数形加減速について、加減速変更により位置到達の時間が増加する例について説明したが、本実施形態は、加減速変更により位置到達の時間が減少する例にも適用できる。
　その場合、予想消費電力を計算する計算式である、数式５、数式１０及び数式１２の第２項及び第３項の符号は、逆となる。

　次に、表示設定部２１１の構成の詳細及び表示部２１２による表示例について説明する。
（表示設定部の構成及び表示部の表示例）
　図１２は、表示設定部の一構成例を示すブロック図である。
　図１２に示すように、表示設定部２１１は、実消費電力入力部２１１１、予想消費電力入力部２１１２、期間設定部２１１３、期間分割部２１１４、及び表示情報生成部２１１５を備えている。

　実消費電力入力部２１１１は、実消費電力取得部２１０から入力された実消費電力を表示情報生成部２１１５に出力する。
　予想消費電力入力部２１１２は、予想消費電力算出部２０７から入力された予想消費電力を表示情報生成部２１１５に出力する。

　期間設定部２１１３は、ユーザが設定した設定期間を期間設定情報として表示情報生成部２１１５に出力する。期間設定部２１１３は、設定期間を記憶する。なお、ここではユーザが設定期間を設定しているが、設定期間は予め設定されていてもよい。
　期間分割部２１１４は、ユーザからの設定期間の分割指示があった場合は、期間設定部２１１３から設定期間を読み出して設定期間を分割して、分割された複数の設定期間を期間設定情報として表示情報生成部２１１５に出力する。
　表示情報生成部２１１５は、実消費電力入力部２１１１から入力された実消費電力を時系列に記憶し、予想消費電力入力部２１１２から入力された予想消費電力を時系列に記憶する。そして、表示情報生成部２１１５は、期間設定部２１１３によって設定された設定期間内の実消費電力及び予想表示電力を読み出してグラフ化し、グラフを画面に表示するための表示情報を表示部２１２に出力する。
　複数の加減速設定又は変更前後の加減速設定により算出した複数の予想消費電力がある場合、複数の予想消費電力と実消費電力とは、１つのグラフに表示してもよいし、１つの予想消費電力と実消費電力とを表示するグラフを複数設けることで表示してもよい。

　以下、表示部２１２に表示される表示例について説明する。
　図１３は表示部に表示されるグラフ表示の第１例を示す図である。
　図１３は、機械の稼働開始からの実消費電力と予想消費電力との時間変化を示すグラフ（上図）と、日ごとの実消費電力と予想消費電力の推移を示すグラフ（下図）とを示している。図１３の下図の今日以後の１日目から５日目の実消費電力と予想消費電力は、今日の実消費電力と予想消費電力とに基づいて、過去の実消費電力と予想消費電力とのデータの傾向から予測される将来のデータである。
　ユーザは、図１３に示す内容を表示部２１２で表示するために、表示設定部２１１の期間設定部２１１３に実消費電力と予想消費電力とをグラフ表示する時間、日を入力する。
　日によって、加工プログラムの稼働時間又は稼働サイクル数が異なる場合には、表示部２１２は、加工プログラムの稼働時間又は稼働サイクル数を合わせて表示することもできる。
　また、期間分割部２１１４によって設定期間が分割された場合は、図１３の上図と下図の一方又は両方を複数のグラフに分割して表示することもできる。

　図１４は表示部に表示されるグラフ表示の第２例を示す図である。
　図１４は、積算期間、期間の分割、時定数、加速タイプ、消費電力、サイクルタイム等を表示する表と、実消費電力（現在の設定）及び予想消費電力のグラフとを示している。
　積算期間、期間の分割は、ユーザが表示設定部２１１に入力し、例えば、月曜日から金曜日、土曜日、日曜日の中から任意に設定される。期間を分割する場合、月曜日から金曜日と、土曜日及び日曜日とに分割することもできる。
　時定数、加減速タイプ（直線加減速、ベル形加減速、指数形加減速のいずれであるか）は、表示情報生成部２１１５が、加工プログラムから求めて、又は設定値記憶部２０６から読み出して設定される。ユーザが表示画面から設定することもできる。
　消費電力、サイクルタイムは、予想消費電力算出部２０７が算出して、表示設定部２１１の表示情報生成部２１１５に入力する。消費電力（予想消費電力）、サイクルタイムは、表示情報生成部２１１５が算出してもよい。表示情報生成部２１１５は、ユーザの指定によって、表示部２１２に、サイクルタイムに代えて、電気料金を表示してもよく、サイクルタイムと電気料金の両方を表示してもよい。サイクルタイム（軸の動作時間）は、例えば、図４、図６、及び図１０に示した時間Ｔから求めることができる。同時に複数の軸を動かす場合には、一番長い動作時間をサイクルタイムとする。ドウェルのような待ち時間もサイクルタイムに追加しもよい。主軸の動作時間は回転時間の指定から判断する。
　図１４に示す表とグラフとは、連動させることができ、例えば、グラムは実消費電力と変更後の予想消費電力を示し、ユーザが表の消費電力（予想消費電力）の値を変更した場合、グラフの予想消費電力の長さも変わる。
　ユーザが、直接、予想消費電力のグラフの長さを変更できるようにしてもよい。

　以下、設定変更部２０８による、加減速設定の変更について説明する。
　ユーザによって、時定数、加減速タイプが入力された場合、設定変更部２０８は、時定数と加減速タイプを予想消費電力算出部２０７に出力する。
　予想消費電力算出部２０７は、予想消費電力を、加減速タイプによって、時定数から予想消費電力を算出する。
　ユーザによって、予想消費電力が入力された場合、目標の予想消費電力にするには加減速をどう変えればよいか逆算する。
　時定数又は加減速を変える場合、加減速時間が変化すると同時に一定速の時間も変化する。一定速中の電力は実測値から求まるので、加減速と一定速時間の増減による外部機器電力変化も含めて最適値を算出する。予想消費電力を変える場合、加減速の変え方は全ての加減速時定数の増減の割合を同じとしてもよいし、加減速の個別設定も可能である。予想消費電力の変更範囲は加減速で変えられる範囲内とする。
　加減速タイプが、直線加減速の場合は、設定変更部２０８は、例えば、加減速時の時定数を変更する。
　加減速タイプが、ベル形加減速の場合は、設定変更部２０８は、例えば、加減速時の１次加減速時間及び２次加減速時間、又は時定数及び速度変化を変更する。
　加減速タイプが、指数形加減速の場合は、設定変更部２０８は、加減速時の時定数及び最終到達速度を変更する。

＜外部機器＞
　外部機器５０は、既に説明したように、クーラントを循環させるクーラント用ポンプ、切り屑等を集めるコンベア、ライト、等である。振動測定器、カメラ、ブレーキ装置等である。外部機器５０の消費電力は、既に説明したように、カタログスペックから得られる単位時間あたりの消費電力を用いて、外部機器５０の稼働時間に基づいて求められる。
　図１５はモータの積算電力に対する、クーラント用ポンプの積算消費電力、コンベアの積算消費電力、ライトの積算消費電力を示す特性図である。
　図１５において、０からｔｅ１はモータの待ち時間（ドウェル）、ｔｅ１からｔｅ２は加速時間、ｔｅ２からｔｅ３は一定速時間、ｔｅ３からｔｅ４は減速時間、ｔｅ４からｔｅ５はモータの待ち時間（ドウェル）、ｔｅ５からｔｅ６は加速時間、ｔｅ６からｔｅ７は定速時間、ｔｅ７からｔｅ８は減速時間、ｔｅ８からｔｅ９はモータの待ち時間（ドウェル）を示す。
　図１５に示すように、クーラント用ポンプはモータの動作と連動して動作し、クーラント用ポンプの電力は、モータの待ち時間中は消費されない。
　切り屑等を集めるコンベア、ライトはモータの動作と連動せずに動作する。コンベアは切り屑が一定量になったときに動作し、コンベアの電力が消費される。ライトはモータの動作前から点灯し、ライトの電力が消費される。

　以上説明した本実施形態の数値制御装置によれば、実消費電力と加減速の変化による消費電力の増減分から単純な予想値よりも正確な予想消費電力を算出することができる。
　また、実測電力と予想消費電力とをグラフ表示し可視化して表示して設定の支援をすることができる。

　以上、数値制御装置２０及びサーボ制御装置３０に含まれる機能ブロックについて説明した。
　これらの機能ブロックを実現するために、数値制御装置２０及びサーボ制御装置３０は、それぞれＣＰＵ（Central Processing Unit）等の演算処理装置を備える。また、数値制御装置２０及びサーボ制御装置３０は、アプリケーションソフトウェア又はＯＳ（Operating System）等の各種の制御用プログラムを格納したＨＤＤ（Hard Disk Drive）等の補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのＲＡＭ（Random Access Memory）といった主記憶装置も備える。

　そして、数値制御装置２０及びサーボ制御装置３０において、それぞれの演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションソフトウェア又はＯＳを読み込み、読み込んだアプリケーションソフトウェア又はＯＳを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションソフトウェア又はＯＳに基づいた演算処理を行なう。また、この演算結果に基づいて、各装置が備える各種のハードウェアを制御する。これにより、本実施形態の機能ブロックは実現される。つまり、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。

　なお、数値制御装置２０はサーボ制御装置３０を含んでもよく、この場合、ＣＰＵ（Central Processing Unit）等の演算処理装置、補助記憶装置及び主記憶装置は共用され、数値制御装置３００及びサーボ制御装置４００に対してそれぞれ設ける必要はなくなる。

　数値制御装置２０又はサーボ制御装置３０について演算量が多い場合には、例えば、パーソナルコンピュータにＧＰＵ（Graphics Processing Units）を搭載し、ＧＰＧＰＵ（General-Purpose computing on Graphics Processing Units）と呼ばれる技術により、ＧＰＵを機械学習に伴う演算処理に利用するようにすると高速処理できるようになるのでよい。更には、より高速な処理を行うために、このようなＧＰＵを搭載したコンピュータを複数台用いてコンピュータ・クラスターを構築し、このコンピュータ・クラスターに含まれる複数のコンピュータにて並列処理を行うようにしてもよい。

　次に、図１６のフローチャートを参照して本実施形態における数値制御装置２０の動作について説明をする。図１６本実施形態における数値制御装置２０の動作を示すフローチャートである。

　まず、図１６のステップＳ１１において、実消費電力取得部２１０はＦＢ取得部２０９から、検出電流値及び検出電圧値を取得して、実消費電力を算出する。
　ステップＳ１２において、予想消費電力算出部２０７は、外部機器５０の稼働時間を求め、カタログスペックから得られる単位時間あたりの消費電力を用いて、外部機器５０の消費電力を求める。

　ステップＳ１３において、加減速変更分による消費電力の増減分を計算で求める。
　具体的には、予想消費電力算出部２０７は、設定値記憶部２０６からイナーシャＪｍ、粘性摩擦及びクーロン摩擦である摩擦Ｆを読み出し、角速度ω及び角加速度ｄω／ｄｔを、プログラム記憶部２０１に記憶された加工プログラムから、又は、又は設定値記憶部２０６に記憶された速度、加速度から求める。また、予想消費電力算出部２０７は、設定変更部２０８から加減速の変更を取得する。そして、予想消費電力算出部２０７は、数式３を挿入した数式４を用いて、加減速変更分による消費電力の増減分を計算で求める。
　ステップＳ１４において、予想消費電力算出部２０７は、実消費電力と、加減速変更分による消費電力の増減分と、外部機器５０の消費電力とを加算して予想消費電力を算出する。

　ステップＳ１５において、表示設定部２１１は、実消費電力取得部２１０で取得された実消費電力と、予想消費電力算出部２０７で算出した予想消費電力を設定した期間ごとに表示するように表示部２１２の表示設定を行い、表示部２１２は、実消費電力と予想消費電力とをグラフ表示する。

　表示部２１２の表示画面を見たユーザは、現在の消費電力（実消費電力）とするか、予想消費電力とするか、又は新たな予想消費電力を再計算するかどうか判断する。

　ステップＳ１６において、表示部２１２の表示画面を見たユーザが新たな予想消費電力を再計算するために、ユーザが設定変更部２０８に加減速、又は消費電力の変更を入力した場合は、設定変更部２０８は加減速の設定値を変更すると判断する（ステップＳ１６の“新たな消費電力”）。そして、設定変更部２０８は、予想消費電力算出部２０７に予想消費電力の再計算を指示し、設定値記憶部２０６の速度、加速度等の変更値を記憶し、ステップＳ１３に戻る。ステップＳ１３及びＳ１４で、予想消費電力の再計算が行われる。
　ステップ１６において、ユーザが設定変更部２０８に、予想消費電力を入力した場合は、ステップＳ１７に移行する。
　ステップ１７において、設定変更部２０８は予測消費電力となるように、加減速制御部２０４の加減速を変更し、処理を終了する。
　ステップ１６において、ユーザが設定変更部２０８に、実消費電力を入力した場合は、加減速の変更がないため、処理を終了する。

　上記の数値制御装置１０に含まれる各構成部は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記の数値制御装置１０に含まれる各構成部のそれぞれの協働により行なわれる制御パラメータ調整方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。

　プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体（例えば、ハードディスクドライブ）、光磁気記録媒体（例えば、光磁気ディスク）、ＣＤ－ＲＯＭ(Read Only Memory)、ＣＤ－Ｒ、ＣＤ－Ｒ／Ｗ、半導体メモリ（例えば、マスクＲＯＭ、ＰＲＯＭ(Programmable ROM)、ＥＰＲＯＭ(Erasable PROM)、フラッシュＲＯＭ、ＲＡＭ(random access memory）)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。

　上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
　例えば、上述した実施形態では数値制御装置で工作機械を制御する数値制御工作機械について説明したが、数値制御装置が制御する機械は、工作機械に限定されず、ロボット又は産業機械であってもよい。

　本開示による数値制御装置及び予想消費電力算出方法は、上述した実施形態を含め、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
　（１）　機械を動作させる動作プログラムを記憶するプログラム記憶部（例えば、プログラム記憶部２０１）と、
　前記動作プログラムに基づく第１の加減速設定により前記機械を動作させて、計算又は実測により実消費電力を取得する実消費電力取得部（例えば、実消費電力取得部２１０）と、
　少なくとも、前記実消費電力と、前記第１の加減速設定から第２の加減速設定への加減速の変更分の消費電力の増減分とを加算して予想消費電力を算出する予想消費電力算出部（例えば、予想消費電力算出部２０７）と、
　前記予想消費電力算出部における、前記第１の加減速設定及び前記第２の加減速設定の消費電力の計算に必要な情報の少なくとも一部を記憶する設定値記憶部（例えば、設定値記憶部２０６）と、
　前記実消費電力と前記予想消費電力とを表示する表示部（例えば、表示部２１２）と、
　を備えた数値制御装置（例えば、数値制御装置２０）。
　この数値制御装置によれば、消費電力の予想値の精度の向上を図ることができる。また、実消費電力と予想消費電力とを可視化することで、比較を容易にして消費電力の支援をするが可能となる。

（２）　前記数値制御装置は前記機械を動作させるサーボ制御装置（例えば、サーボ制御装置３０）に接続され、
　前記サーボ制御装置から、検出電圧と検出電流、又は検出電流と検出速度からなるフィードバック情報を取得するフィードバック取得部（例えば、ＦＢフィードバック取得部）を備え、
　前記実消費電力取得部は、前記フィードバック情報を用いた計算により前記実消費電力を取得する、上記（１）に記載の数値制御装置。

　（３）　前記表示部に前記実消費電力と前記予想消費電力とを設定した期間ごとに表示するための表示設定を行う表示設定部（例えば、表示設定部２１１）を備えた、上記（１）に記載の数値制御装置。

　（４）　前記表示設定部は、前記期間を設定する期間設定部（例えば、期間設定部２１１３）と、該期間設定部で設定した期間を分割する期間分割部（例えば、期間分割部２１１４）とを有し、前記表示設定部は、前記表示部に、前記実消費電力と前記予想消費電力とを分割期間ごとに表示するための表示設定を行う、上記（３）に記載の数値制御装置。

　（５）　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部（例えば、設定変更部２０８）を備え、
　前記設定変更部は前記第２の加減速設定を変更し、
　前記予想消費電力算出部は、前記設定変更部で変更された前記第２の加減速設定に基づいて前記予想消費電力を再度算出する、上記（１）に記載の数値制御装置。

　（６）　前記予想消費電力算出部は、前記設定値記憶部より外部機器の消費電力を取得し、前記外部機器の消費電力を含めて前記予想消費電力を算出する、上記（１）に記載の数値制御装置。

　（７）　前記予想消費電力算出部は、前記実消費電力に、一定速中の消費電力に関する、前記第１の加減速設定から前記第２の加減速設定への加減速設定の変更前後の増減分と、加減速時の消費電力に関する、前記第１の加減速設定から第２の加減速設定への加減速設定変更前後の増減分と、を積算することによって前記予想消費電力を算出する、上記（１）から（６）のいずれかに記載の数値制御装置。

　（８）　前記第１及び第２の加減速設定が直線加減速に設定され、
　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部（例えば、設定変更部２０８）を備え、
　前記設定変更部は加減速時の時定数を変更する、上記（７）に記載の数値制御装置。

　（９）　前記第1及び第２の加減速設定がベル形加減速に設定され、
　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部（例えば、設定変更部２０８）を備え、
　前記設定変更部は、加減速時の１次加減速時間及び２次加減速時間、又は時定数及び速度変化を変更する、上記（７）に記載の数値制御装置。

　（１０）　前記第１及び第２の加減速設定が指数形加減速に設定され、
　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部（例えば、設定変更部２０８）を備え、
　前記設定変更部は、加減速時の時定数及び最終到達速度を変更する、上記（７）に記載の数値制御装置。

　（１１）　機械を動作させる動作プログラムを記憶するプログラム記憶部を備えた、数値制御装置としてのコンピュータが、
　前記動作プログラムに基づく第１の加減速設定及び第２の加減速設定の消費電力の計算に必要な情報を記憶し、
　前記第１の加減速設定により前記機械を動作させて、計算又は実測により実消費電力を取得し、
　少なくとも、前記実消費電力と、前記第１の加減速設定から前記第２の加減速設定への加減速の変更分の消費電力の増減分とを加算して予想消費電力を算出する、予想消費電力算出方法。
　この予想消費電力算出方法によれば、消費電力の予想値の精度の向上を図ることができる。

　１０　数値制御工作機械
　２０　数値制御装置
　３０　サーボ制御装置
　４０　モータ
　５０　外部機器
　２０１　プログラム記憶部
　２０１２　指令解析部
　２０３　補間部
　２０４　加減速制御部
　２０５　指令出力部
　２０６　設定値記憶部
　２０７　予想消費電力算出部
　２０８　設定変更部
　２０９　ＦＢ取得部
　２１０　実消費電力取得部
　２１１　表示設定部
　２１２　表示部
　３０１　減算器
　３０２　位置制御部
　３０３　減算器
　３０４　速度制御部
　３０５　減算器
　３０６　電流制御部
　３０７　積分器

Claims (11)

1. 　機械を動作させる動作プログラムを記憶するプログラム記憶部と、
   　前記動作プログラムに基づく第１の加減速設定により前記機械を動作させて、計算又は実測により実消費電力を取得する実消費電力取得部と、
   　少なくとも、前記実消費電力と、前記第１の加減速設定から第２の加減速設定への加減速の変更分の消費電力の増減分とを加算して予想消費電力を算出する予想消費電力算出部と、
   　前記予想消費電力算出部における、前記第１の加減速設定及び前記第２の加減速設定の消費電力の計算に必要な情報の少なくとも一部を記憶する設定値記憶部と、
   　前記実消費電力と前記予想消費電力とを表示する表示部と、
   　を備えた数値制御装置。
2. 　前記数値制御装置は前記機械を動作させるサーボ制御装置に接続され、
   　前記サーボ制御装置から、検出電圧と検出電流、又は検出電流と検出速度からなるフィードバック情報を取得するフィードバック取得部を備え、
   　前記実消費電力取得部は、前記フィードバック情報を用いた計算により前記実消費電力を取得する、請求項１に記載の数値制御装置。
3. 　前記表示部に前記実消費電力と前記予想消費電力とを設定した期間ごとに表示するための表示設定を行う表示設定部を備えた、請求項１に記載の数値制御装置。
4. 　前記表示設定部は、前記期間を設定する期間設定部と、該期間設定部で設定した期間を分割する期間分割部とを有し、前記表示設定部は、前記表示部に、前記実消費電力と前記予想消費電力とを分割期間ごとに表示するための表示設定を行う、請求項３に記載の数値制御装置。
5. 　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部を備え、
   　前記設定変更部は前記第２の加減速設定を変更し、
   　前記予想消費電力算出部は、前記設定変更部で変更された前記第２の加減速設定に基づいて前記予想消費電力を再度算出する、請求項１に記載の数値制御装置。
6. 　前記予想消費電力算出部は、前記設定値記憶部より外部機器の消費電力を取得し、前記外部機器の消費電力を含めて前記予想消費電力を算出する、請求項１に記載の数値制御装置。
7. 　前記予想消費電力算出部は、前記実消費電力に、一定速中の消費電力に関する、前記第１の加減速設定から前記第２の加減速設定への加減速設定の変更前後の増減分と、加減速時の消費電力に関する、前記第１の加減速設定から前記第２の加減速設定への加減速設定変更前後の増減分と、を積算することによって前記予想消費電力を算出する、請求項１から６のいずれか１項に記載の数値制御装置。
8. 　前記第１及び第２の加減速設定が直線加減速に設定され、
   　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部を備え、
   　前記設定変更部は加減速時の時定数を変更する、請求項７に記載の数値制御装置。
9. 　前記第1及び第２の加減速設定がベル形加減速に設定され、
   　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部を備え、
   　前記設定変更部は、加減速時の１次加減速時間及び２次加減速時間、又は時定数及び速度変化を変更する、請求項７に記載の数値制御装置。
10. 　前記第１及び第２の加減速設定が指数形加減速に設定され、
    　前記第１の加減速設定を前記第２の加減速設定に変更する設定変更部を備え、
    　　前記設定変更部は、加減速時の時定数及び最終到達速度を変更する、請求項７に記載の数値制御装置。
11. 　機械を動作させる動作プログラムを記憶するプログラム記憶部を備えた、数値制御装置としてのコンピュータが、
    　前記動作プログラムに基づく第１の加減速設定及び第２の加減速設定の消費電力の計算に必要な情報を記憶し、
    　前記第１の加減速設定により前記機械を動作させて、計算又は実測により実消費電力を取得し、
    　少なくとも、前記実消費電力と、前記第１の加減速設定から前記第２の加減速設定への加減速の変更分の消費電力の増減分とを加算して予想消費電力を算出する、予想消費電力算出方法。

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