WO2020235032A1 - スティック型の掃除機 - Google Patents

Abstract

【課題】吸引ヘッドの移動操作上の有向性を解消して、使い勝手の良いスティック型の掃除機を実現する。 【解決手段】スティック型の掃除機１は、吸引ヘッド２と、自在継手部３と、スティック体４と、吸引流路５とを有する。吸引ヘッド２は、全方位に変位自在である。自在継手部３は、吸引ヘッド２の上部略中央から鉛直上方に向かって突出していると共に、全方位に可動自在である。スティック体４は、自在継手部３に一端が取り付けられ、自在継手部３の軸方向に延在している。吸引流路５は、自在継手部３の同心円上、例えば、自在継手部３の内周側に並んで設けられており、吸引ヘッド２とスティック体４との間を連通している。

Description

スティック型の掃除機

　本発明は、吸引ヘッドに対してスティック体が可動自在に取り付けられたスティック型の掃除機に関する。

　従来、吸引ヘッドに柄部を含むスティック体が取り付けられたスティック型の掃除機が知られている。例えば、特許文献１には、図１７に示すように、ノズルヘッド１０と、支持体１１と、これらを可動自在に連結するパイプ継ぎ手１２とを有する電気掃除機が開示されている。ノズルヘッド１０の後部左右には、前後の動きを許容し、左右の動きを規制する車輪１３がそれぞれ取り付けられている。ノズルヘッド１０の後部には、斜め上方に向かって突出したパイプ継ぎ手１２が取り付けられている。このパイプ継ぎ手１２の内部は、ゴミを吸い取る吸引流路の一部となっている。パイプ継ぎ手１２の上端には、斜め上方に向かって延在する支持体１１が取り付けられている。支持体１１の延在方向を斜め上方とすることで、ノズルヘッド１０を前方に押し出す操作を容易かつスムーズに行うことができる。

　また、特許文献２には、図１８に示すように、真空掃除機のための掃除機ヘッド２０が開示されている。この掃除機ヘッド２０は、前後に配置された一組の撹拌器２１，２２と、左右に配置されたホイール２３とを有する。一組の撹拌器２１，２２は、互いに反対方向に回転する。ホイール２３は、展開位置と退避位置との間を昇降自在であって、掃除機ヘッド２０の挙動を規定する動作モード（リニアモード／ホバーモード）に応じて、これらの位置が切り替えられる。すなわち、リニアモードでは、ホイール２３が下降した退避位置に設定され、接地したホイール２３によって掃除機ヘッド２０の移動が前後方向に拘束される。一方、ホバーモードでは、ホイール２３が上昇した退避位置に設定され、ホイール２３の拘束を受けることなく、掃除機ヘッド２０をあらゆる方向に自在に移動させることができる。また、掃除機ヘッド２０の中央には、斜め上方に向かって突出し、かつ、全方位に可動自在なネック２４が取り付けられている。このネック２４の上端（自由端）は、真空掃除機のチューブに取り付けられる。前方に向かって掃除機ヘッド２０を操作する場合、押出力が掃除機ヘッド１のネック２４に作用し、この押出力に応じて、掃除機ヘッド２０が前方に向かって推進する。

特開２００８－１７８６１５号公報 特開２０１８－１１０８５５号公報

　しかしながら、上述した従来技術では、吸引ヘッドを押し出す際の操作性を確保することに主眼が置かれており、そのために、パイプ継ぎ手やネックなどの継手部が吸引ヘッドの後方または中央から斜め上方に向かって突出した形態（吸引ヘッドに対して柄部が斜めに後退した形態）を有している。そのため、吸引ヘッドの移動に必要な操作は全方位において一様ではなく、吸引ヘッドの前後方向を意識した操作が必要となる。このような移動操作上の有向性から、例えばソファー下を清掃する場合のように、狭いエリア内で吸引ヘッドを左右に移動させる際の操作性には難があった。

　本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸引ヘッドの移動操作上の有向性を解消して、使い勝手の良いスティック型の掃除機を実現することである。

　かかる課題を解決すべく、吸引ヘッドと、自在継手部と、スティック体と、吸引流路とを有するスティック型の掃除機を提供する。吸引ヘッドは、全方位に変位自在である。自在継手部は、吸引ヘッドの上部略中央から鉛直上方に向かって突出していると共に、全方位に可動自在である。スティック体は、自在継手部に一端が取り付けられ、自在継手部の軸方向に延在している。吸引流路は、自在継手部の同心円上に並んで設けられ、吸引ヘッドとスティック体との間を連通している。

　ここで、本発明において、上記自在継手部は、内部が中空である筒形状を有しており、上記吸引流路は、自在継手部の内部空間を用いることによって、自在継手部の内周側に設けられていてもよい。この場合、上記吸引流路は、吸引ヘッドの上部略中央に設けられ、吸引ヘッドによって吸い取られたゴミが流れる吸引口と連通していることが好ましい。

　本発明において、上記吸引流路は、自在継手部の径方向外側に間隔を空けて設けられ、外部と区画する区画部材によって、自在継手部の外周側に設けられていてもよい。この場合、上記吸引流路は、吸引ヘッドの上部略中央に対して対称に設けられ、吸引ヘッドによって吸い取られたゴミが流れる複数の吸引口と連通していることが好ましい。

　本発明において、上記自在継手部の延在長は、吸引ヘッドに対してスティック体を９０度傾けても、吸引ヘッドとスティック体とが接触しない程に長いことが好ましい。この場合、地面を基準とした、上記自在継手部が備える回転軸の高さは、スティック体の最大半径以上であってもよい。

　本発明において、上記スティック体は、本体部と、棒状部とを有していてもよい。本体部は、ゴミを吸い取る吸引力を発生する吸引モータと、吸引流路を介して吸い取られたゴミを収納するゴミ収納部とを有する。棒状部は、本体部に取り付けられている。　この場合、本体部は、棒状部よりも自在継手部側に配置されていることが好ましい。

　本発明によれば、自在継手部が、吸引ヘッドの上部略中央から鉛直上方に向かって突出しており、スティック体が、自在継手部の軸方向に延在している。吸引流路は、自在継手部の同心円上に並んで設けられているため、スティック体をどの方向にどのように傾けても、スティック体の動きが吸引流路によって規制されることはない。これにより、吸引ヘッドの移動操作上の有向性を解消でき、使い勝手の良いスティック型の掃除機を実現できる。

スティック型の掃除機の外観斜視図 吸引ヘッドの一例を示す外観斜視図 吸引ヘッドの概略下面図 吸引ヘッドの断面図 回転ブラシ単体における力学的作用の説明図 一対の回転ブラシにおける力学的作用の説明図 自在継手部の展開斜視図 自在継手部と吸引流路との位置的関係を示す概略上面図 吸引ヘッドに対してスティック体を９０度傾けた状態を示す図 掃除機の使用状態を示す図 比較例によるソファー下清掃時の説明図 本実施形態によるソファー下清掃時の第１例の説明図 本実施形態によるソファー下清掃時の第２例の説明図 畳み清掃時における比較例および本実施形態の対比図 畳み清掃時における比較例および本実施形態の対比図 変形例に係る自在継手部と吸引流路との位置的関係を示す概略上面図 従来技術の説明図 従来技術の説明図

　図１は、本実施形態に係るスティック型の掃除機の外観斜視図である。この掃除機１は、吸引ヘッド２と、自在継手部３と、手で持つための柄部を含むスティック体４と主体に構成されている。吸引ヘッド２は、地面（清掃面）上のゴミを吸い取る。ここで、吸引ヘッド２の「ヘッド」とは、頭部や先端部といった場所を指す意味で用いており、その上面形状は、長方形状、正方形状、円状、楕円形状などを含めて任意である。すなわち、吸引ヘッド２の形状については、前後を特定可能な上面形状（長方形状など）であってもよいし、前後を特定不可な上面形状（円状）であっても構わない。また、スティック体４との大小関係についても、特段限定されるものではない。さらに、吸引ヘッド２は、地面と対向してゴミを吸い取る部材または構造体を指し、それ自体に吸引モータ（吸引源）が搭載されているかは問わない。

　吸引ヘッド２およびスティック体４は、自在継手部３を介して連結されている。具体的には、吸引ヘッド２の略中央には、上下を貫通する吸引口２ａが設けられており、この吸引口２ａと位置的に対応して、吸引ヘッド２の上部略中央に自在継手部３の一端が取り付けられている。すなわち、吸引口２ａは、吸引ヘッド２によって吸引されたゴミの流路であると共に、自在継手部３の取付部位としての役割も担っている。また、自在継手部３の他端は、スティック体４の下端に取り付けられている。これにより、スティック体４は、吸引口２ａの軸線上に位置すると共に、全方位に亘って任意の角度で自由に傾けることができる。なお、同図では省略されているが、ヘッド部２側の吸引口２ａからスティック体４に至るゴミの吸引流路５（本実施形態では自在継手部３の内部空間）の外漏れを防止すべく、自在継手部３の外周は、樹脂材などの可撓性素材（カバー部材）によって覆われている。

　スティック体４は、その下端が自在継手部３に取り付けられ、自在継手部３の軸方向、すなわち、鉛直上方に向かって延在している。本実施形態において、スティック体４は、大径な本体部４ａと、小径な棒状部４ｂとを一体化した向性を有する。本体部４ａは、略筒状の形状を有しており、その内部には、吸引モータ、ゴミ収納部、充電式の電池などが収容されている。吸引モータは、ゴミを吸い取る吸引力を発生する。ゴミ収納部には、吸引ヘッド２ａが備える吸引口２ａと連通した吸引流路を介して吸い取られたゴミが収納される。本体部４ａの一端（下端）は、自在継手部３に取り付けられており、その他端（上端）は、本体部４ａと同一軸上に延在するように棒状部４ｂに取り付けられている。棒状部４ｂは、ユーザが掃除機１を操作する際の持ち手となるが、棒状部４ｂの上端に取っ手を設けて、この部分を持ち手としてもよい。また、持ち手棒部３ｂの上方には、オン／オフスイッチなどの操作ボタン類が適宜の箇所に設けられている。

　なお、スティック体４の形状は、自在継手部３の軸方向に延在するようなものであれば足り、必ずしも直線状や丸棒状である必要はなく、同一径である必要もない。例えば、吸引ヘッド３の移動操作上の感覚に影響を及ぼさない範囲で、掃除機１のデザイン性や機能性を考慮して、曲線状または曲面状の部位などが存在してもよい。

　重量のある本体部３については、スティック体４の下部、すなわち、自在継手部３に近い方に配置されている。その理由は、ユーザが持ち手棒部４を手で握って掃除機１を移動操作する際、自在継手部３を支点としたテコの原理により、ユーザに与える重量感を緩和し、軽快な操作性を実現するためである。

　本実施形態において、吸引ヘッド２は、全方位に変位自在な構成を有している。ここで、「全方位に変位自在」とは、吸引ヘッド２を移動させる際のユーザの操作感として、前後左右といった方向性を感じさせないことをいい、例えば、移動方向が前後に固定された車輪などを排除する趣旨である。その意味において、吸引ヘッド２の下面（地面との対向面）には、全方位に亘って転がり自在なボール式または車輪式のキャスターを設けることが好ましく、あるいは、以下に例示するような回転ブラシを設けてもよい。

　図２は、吸引ヘッド２の一例を示す外観斜視図である。この吸引ヘッド２は、カバー体２ｂの内部に取り付けられた一対の回転ブラシ２ｃ，２ｄを備えている。カバー体２ｂは、複数のカバー部材を組み立てることによって構成されている。一対の回転ブラシ２ｃ，２ｄは、地面と部分的に接地・接触して、カーペットなどに入り込んだゴミを掻き出す機能を有する。本実施形態では、これらの回転ブラシ２ｃ，２ｄは、吸引ヘッド２の前後、より具体的には、吸引口２ａに対する前後に並んで配置されている。前方の回転ブラシ２ｃは、吸引ヘッド２の幅方向に向かって地面と平行に延在する回転軸Ａ１に、回転自在に取り付けられている。また、後方の回転ブラシ２ｄは、吸引ヘッド２の幅方向に向かって地面と平行に延在する回転軸Ａ２に、回転自在に取り付けられている。

　回転ブラシ２ｃ，２ｄは、それぞれに内蔵された、あるいは、カバー体２ｂの側部に収納された駆動機構２ｅ（モータなどの駆動源を含む。）によって回転駆動する。また、回転ブラシ２ｃ，２ｄは、ユーザが吸引ヘッド２を移動させる際の操作上の有向性を解消すべく、互いに逆方向に回転しており、一例として、前方の回転ブラシ２ｃは反時計方向、後方の回転ブラシ２ｄは時計方向にそれぞれ回転する。なお、回転ブラシ２ｃ，２ｄの回転駆動は、単一の駆動源が発生した動力を複数の動力伝達機構で分配することによって行ってもよいし、複数の駆動源のそれぞれを回転ブラシ２ｃ，２ｄに個別に割り当ててもよい。

　図３は、吸引ヘッド２の概略下面図である。吸引ヘッド２の下部には、キャスター部２ｆが設けられている。キャスター部２ｆは、全方位に亘って転がり自在であり、例えば、ボール式のものや車輪式のものを用いることができる。キャスター部２ｆは、前後の回転ブラシ２ｃ，２ｄの中間、より好ましくは、回転軸Ａ１，Ａ２の中央（中心線上）に配置されている。キャスター部２ｆを中央に配置する理由は、掃除機１の動作時に、キャスター部２ｆを支点として、回転ブラシ２ｃ，２ｄのいずれかを地面に接地させ、ゴミの掻き出し効率を高めるためである。本実施形態では、複数のキャスター部２ｆが設けられており、一方は吸引ヘッド２の左側部に、他方は吸引ヘッド２の右側部にそれぞれ設けられている。また、カバー体２ｂの下部において、回転ブラシ２ｃ，２ｄの間に存在する横長の空間は、吸引モータの吸引力によって、地面上のゴミを吸い取るための空間（吸引部）として機能する。

　図４は、吸引ヘッド２の断面図である。キャスター部２ｆおよび回転ブラシ２ｃ，２ｄの接地面は、同一平面上、または、回転ブラシ２ｃ，２ｄの設置面の方が若干低く設定されている。キャスター部２ｆは、自身の摩耗を減らす等のために地面との転がりを発生させる機能を有する他、地面に対する回転ブラシ２ｃ，２ｄの接地高さを一定に維持する機能も有している。回転ブラシ２ｃ，２ｄの周囲には、柔らかいブラシが取り付けられているため、キャスター部２ｆがないと、吸引ヘッド２が沈み込んで地面に当接し、地面を傷つけたり、滑らなくなる原因となり得る。そこで、吸引ヘッド２の下部にキャスター部２ｆを設けることで、このような事態を未然に回避する。

　図５は、回転ブラシ（ローラ）単体における力学的作用の説明図である。質量ｍと半径ｒを持つ回転ブラシが、地面と接地している状態でトルクＴを発生させる回転運動を行った場合、Ｔ／ｒ＝Ｆの力が地面に対して発生する。この地面と回転ブラシとの間の摩擦係数をμとする。回転ブラシは、地面が固定されているため、反作用で進む。これは、環境を単純化した場合、Ｔ／ｒ＜μｍｇの条件下において発生する。この原理は、車が走る原理や、コロで物体を運ぶ際の重さに影響されないことと同様の原理である。

　一方、Ｔ／ｒ＞μｍｇの条件下、例えば、トルクＴが十分に大きい場合や、回転ブラシと地面との間の摩擦係数μが十分に小さい場合には、回転ブラシはスリップして進まなくなり、回転ブラシはその場で回転して浮いたように滑る。本実施形態は、かかる現象を回転ブラシ２ｃ，２ｄに利用したものである。すなわち、回転ブラシ２ｃの回転によって生じる力（回転ブラシ２ｃのトルクをＴ１、その半径をｒ１とすると、Ｔ１／ｒ１）については、回転ブラシ２ｃと地面との間の摩擦係数μと、回転ブラシ２ｃの分散質量ｍ１と、重力加速度ｇとの乗算値（μ*ｍ１*ｇ）よりも大きくなるように設定される。また、回転ブラシ２ｄの回転によって生じる力（回転ブラシ２ｄのトルクをＴ２、その半径をｒ２とすると、Ｔ２／ｒ２）については、回転ブラシ８と地面との間の摩擦係数μと、回転ブラシ２ｄの分散質量ｍ２と、重力加速度ｇとの乗算値（μ*ｍ２*ｇ）よりも大きくなるように設定される。ここで、「分散質量ｍ１，ｍ２」とは、吸引ヘッド２の全体の重さＭｇがそれぞれの回転ブラシ２ｃ，２ｄに分散した質量であり、ｍ１＋ｍ２＝Ｍｇとなる。以上の観点から、摩擦係数μは小さい方が好ましく、具体的な方法としては、回転ブラシ２ｃ，２ｄの素材をより摩擦係数μの低いものに工夫することが望ましい。

　図６は、一対の回転ブラシ２ｃ，２ｄにおける力学的作用の説明図である。一対の回転ブラシ２ｃ，２ｄを対向させて同じトルクで、かつ、互いに逆向きに回転させた場合、力の絶対値が同一で、かつ、向きが逆であるならば、回転ブラシ２ｃ，２ｄの進む力が互いに相殺される。ここで、「相殺」とは、互いの力が完全に相殺される場合のみならず、ユーザが軽く操作できるという作用効果が発揮される程度に、互いの力の差が小さくなる場合を含む。また、キャスター部２ｆを支点として作用することで、回転ブラシ２ｃ，２ｄの接地面が減少するため、瞬間的な摩擦係数が減り、吸引ヘッド２はその場にとどまりながら回転ブラシ２ｃ，２ｄが回転する。摩擦係数が減少するため、吸引ヘッド２は浮いたような状態となり、進む力を互いに相殺しているため、ユーザ（操作者）は所望の方向に吸引ヘッド２をスムーズに移動させることができる。また、キャスター部２ｆは方向自在に動くため、ユーザの移動操作を妨げることはなく、従来困難であった左右方向への平行移動も実現することができる。

　図７は、自在継手部３の展開斜視図である。この自在継手部３は、吸引ヘッド２ａが備える吸引口２ａと位置的に対応して、吸引ヘッド２の上部略中央から鉛直上方に向かって突出している。自在継手部３は、上下のヒンジ部３ａ，３ｂと、カルダンジョイント式の継手部３ｃとによって構成されている。下ヒンジ部３ａは、吸引ヘッド２に取り付けられており、吸引ヘッド２の上部から上方に向かって突出している。上ヒンジ部３ｂは、スティック部３の下端に取り付けられており、スティック部３の下端から下方に向かって突出している。継手部３ｃは、前後および左右に４つの突起部を有する。これらの突起部のうち、左右の突起部は、下ヒンジ部３ａが備える左右の貫通孔に挿通されており、前後の突起部は、上ヒンジ部３ｂが備える前後の貫通孔に挿通されている。これにより、自在継手部３は、下回転軸を中心に前後方向に可動自在な可動部位３ａ，３ｃと、この下回転軸とは直交する上回転軸を中心に左右方向に可動自在な可動部位３ｂ，３ｃとを備え、全体として２自由度（前後方向および左右方向）、すなわち、全方位に亘って任意の角度で可動自在（回転自在）となっている。

　図８は、自在継手部３と吸引流路５との位置的関係を示す概略上面図である。吸引流路５は、吸引ヘッド２の上部略中央に設けられた吸引口２ａと連通しており、吸引ヘッド２によって吸い取られたゴミが流れる流路となる。吸引流路５は、吸引ヘッド２とスティック体４との間を連通しており、自在継手部３の同心円上に並んで設けられている。本実施形態において、吸引流路５は、中空な筒形状を有する自在継手部３の内部空間が用いられ、自在継手部３の内周側に形成されることになる。

　図９に示すように、スティック体４を吸引ヘッド２に対して９０度傾けても、互いに干渉しないようになっており、スティック体４を地面と平行にすることができる。これにより、例えば、ソファー下のような高さのない空間であっても、吸引ヘッド２を入り込ませることが可能になる。そのための条件としては、少なくとも、自在継手部３の延在長について、吸引ヘッド２に対してスティック体４を９０度傾けても、両者が接触しない程に長いことが必要である。また、自在継手部３における下側の回転軸（下回転軸）の高さＨ（地面を基準とする。）について、スティック体４の最大半径Ｒ（本実施形態では、大径な本体部４の半径）以上であることが好ましい（Ｈ≧Ｒ）。

　図１０は、掃除機１の使用状態を示す図である。本実施形態に係る掃除機１の特徴の一つは、吸引ヘッド２を移動させる際のユーザの操作感として、前後の概念が存在しないことが挙げられる。すなわち、ユーザは、前後方向はもとより、左右方向も含んだあらゆる方位について、旋回操作を要することなく、吸引ヘッド２を所望の方向に即座に移動させることができる。前後の概念が存在しない点、および、これに由来して旋回操作を要しないという点において、掃除機１の使用感は、モップやホウキなどのそれに類似している。

　以下、吸引ヘッドの動きが前後方向に制限された、換言すれば、移動操作上の有向性を有する従来の掃除機を比較例として、本実施形態に係る掃除機１の使用上の優位性について説明する。まず、ソファー下を清掃するケースを想定した場合、比較例では、図１１に示すように、横向きの吸引ヘッドを左右に自在に動かせないため、ソファーの足周りをうまく清掃することができない。そのため、通常は、吸引ヘッドの後方中央に配置された自在継手部を支点に吸引ヘッドを旋回させるといった操作を行う必要がある。これに対して、本実施形態では、図１２に示すように、横向きの吸引ヘッド２を左右に自在に動かすことができるため、ソファーの足周りにも吸引ヘッド２を回り込ませることができ、ユーザに負担を与えることなく、無駄のない清掃が可能になる。また、図１３に示すように、吸引ヘッド２が縦向きであっても左右に自在に動かすことができるため、吸引ヘッド２の向きを気にすることなく、効率の良い清掃が可能になる。

　つぎに、図１４に示すように、１畳相当の畳みを清掃するケースを想定した場合、比較例では、吸引ヘッドの移動方向が前後を基本とするため、前後の往復動を何度も繰り返す必要があり、清掃時間が掛かってしまう。これに対して、本実施形態では、吸引ヘッド２の方向性がなくホウキなどのような操作が可能なので、清掃時間を短縮でき、ユーザの移動量を大きく減らすことができる。また、図１５に示す別の清掃例では、比較例では、ユーザが外に回ってＵターンする必要があるのに対して、本実施形態では、吸引ヘッド２の方向性がないため、Ｕターンの必要がない。

　このように、本実施形態によれば、自在継手部３が、吸引ヘッド２の上部略中央から鉛直上方に向かって突出しており、スティック体４が、自在継手部３の軸方向に延在している。吸引流路５は、自在継手部３の同心円上、具体的には、自在継手部３の外周側に並んで設けられているため、スティック体４をどの方向にどのように傾けても、スティック体４の動きが吸引流路５によって規制されることはない。その結果、吸引ヘッド２を移動させる操作を行う際、前後方向の移動は容易だが、左右方向などの移動には難があるといった従来の問題（移動操作上の有向性）を解消でき、あらゆる状況下で全方位に移動可能な使い勝手の良いスティック型の掃除機１を実現できる。

　また、本実施形態によれば、吸引ヘッド２に対してスティック体４を９０度傾けても、互いに干渉しないような構成を採用することで、掃除機１の状況対応性をより高めることができる。例えば、ソファー下のような高さのない空間の清掃は、従来のスティック型の掃除機では対応が困難であったのに対して、本実施形態では、吸引ヘッド２を入り込ませることができるため、容易に対応することができる。

　さらに、本実施形態によれば、スティック体４を構成する本体部４ａと棒状部４ｂとの位置的関係として、本体部４ａを自在継手部３側、すなわち、自在継手部３に近い方に配置する。これにより、自在継手部３を支点としてスティック体４を上下に傾ける際、テコの原理よりユーザに与える重量感を緩和でき、軽快な操作性を実現することができる。

　なお、上述した実施形態では、自在継手部３の同心円上に並んだ吸引流路５の一例として、自在継手部３の内周側に設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図１６に例示するように、吸引流路５を自在継手部３の外周側に設けてもよい。

　具体的には、自在継手部３の同心円上かつ外周側には、略筒状の区画部材６が間隔を空けて配置されている。区画部材６は、自在継手部３の可動を阻害しないように、樹脂材などの可撓性素材、または、自在継手部３の変位に追従可能な可動機構を備えている。この場合、吸引流路５は、自在継手部３と区画部材６との間に存在する隙間として規定され、区画部材６によって外部と分離した状態で区画される。自在継手部３の外周側に位置する吸引流路５は、吸引ヘッド２の上部略中央に対して対称に設けられた複数の吸引口２ａと連通している。

　この場合、自在継手部３は上述したような筒形状であってもよいが、棒状であっても構わない。また、吸引流路５内を流れるゴミが自在継手部３に付着することが懸念される場合には、自在継手部３と吸引流路５との間に略筒状の仕切りを設けて、吸引流路５から自在継手部３を分離することが好ましい。

　１　スティック型の掃除機
　２　吸引ヘッド
　２ａ　吸引口
　２ｂ　カバー体
　２ｃ，２ｄ　回転ブラシ
　２ｅ　駆動機構
　２ｆ　キャスター部
　３　自在継手部
　３ａ　下ヒンジ部
　３ｂ　上ヒンジ部
　３ｃ　継手部
　４　スティック体
　４ａ　本体部
　４ｂ　棒状部
　５　吸引流路
　６　区画部材

 

Claims (9)

1. 　スティック型の掃除機において、
   　全方位に変位自在な吸引ヘッドと、
   　前記吸引ヘッドの上部略中央から鉛直上方に向かって突出していると共に、全方位に可動自在な自在継手部と、
   　前記自在継手部に一端が取り付けられ、前記自在継手部の軸方向に延在するスティック体と、
   　前記自在継手部の同心円上に並んで設けられ、前記吸引ヘッドと前記スティック体との間を連通する吸引流路と
   を有することを特徴とするスティック型の掃除機。
2. 　前記自在継手部は、内部が中空である筒形状を有し、
   　前記吸引流路は、前記自在継手部の内部空間を用いることによって、前記自在継手部の内周側に設けられていることを特徴とする請求項１に記載されたスティック型の掃除機。
3. 　前記吸引流路は、前記吸引ヘッドの上部略中央に設けられ、前記吸引ヘッドによって吸い取られたゴミが流れる吸引口と連通していることを特徴とする請求項２に記載されたスティック型の掃除機。
4. 　前記吸引流路は、前記自在継手部の径方向外側に間隔を空けて設けられ、外部と区画する区画部材によって、前記自在継手部の外周側に設けられていることを特徴とする請求項１に記載されたスティック型の掃除機。
5. 　前記吸引流路は、前記吸引ヘッドの上部略中央に対して対称に設けられ、前記吸引ヘッドによって吸い取られたゴミが流れる複数の吸引口と連通していることを特徴とする請求項４に記載されたスティック型の掃除機。
6. 　前記自在継手部の延在長は、前記吸引ヘッドに対して前記スティック体を９０度傾けても、前記吸引ヘッドと前記スティック体とが接触しない程に長いことを特徴とする請求項１に記載されたスティック型の掃除機。
7. 　地面を基準とした回転軸の高さは、前記スティック体の最大半径以上であることを特徴とする請求項６に記載されたスティック型の掃除機。
8. 　前記スティック体は、
   　ゴミを吸い取る吸引力を発生する吸引モータと、前記吸引流路を介して吸い取られたゴミを収納するゴミ収納部とを有する本体部と、
   　前記本体部に取り付けられた棒状部と
   を有することを特徴とする請求項１から７のいずれかに記載されたスティック型の掃除機。
9. 　前記本体部は、前記棒状部よりも前記自在継手部側に配置されていることを特徴とする請求項８に記載されたスティック型の掃除機。
   
    

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