WO2013002084A1

WO2013002084A1 - 液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法

Info

Publication number: WO2013002084A1
Application number: PCT/JP2012/065681
Authority: WO
Inventors: 松本　俊寛; 真伸水▲崎▼; 昌行兼弘; 雄一川平
Original assignee: シャープ株式会社
Priority date: 2011-06-27
Filing date: 2012-06-20
Publication date: 2013-01-03
Also published as: TWI559057B; US9651828B2; TW201307968A; US20140111754A1

Abstract

本発明は、光配向技術及びＰＳＡ技術を組み合わせたときに、焼き付き等の低減及び電圧保持率の維持が可能な液晶表示装置を提供する。本発明の液晶表示装置は、一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層と、該一対の基板の少なくとも一方の基板上に形成された配向膜と、該配向膜上に形成され、液晶分子を配向制御するポリマー層とを備え、該ポリマー層は、液晶層中に添加された一種以上のモノマーが光吸収によりラジカルを発生し重合することによって形成されたものであり、該配向膜は、イミド構造を含む主鎖、及び、光反応性官能基を含む側鎖をもつ高分子材料からなり、光配向処理が施されたものである。

Description

液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法

本発明は、液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法に関する。より詳しくは、液晶の配向規制力を維持したポリマー層が配向膜上に形成された液晶表示装置、及び、配向膜上にポリマー層を形成する液晶表示装置の製造方法に関するものである。

液晶表示装置（ＬＣＤ：Liquid Crystal Display）は、複屈折性を有する液晶分子の配向を制御することにより光の透過／遮断（表示のオン／オフ）を制御する表示装置である。液晶分子を配向させる方法としては、基板の液晶層と接する面にラビング処理を施した配向膜を形成する方法が挙げられる。

また、マルチドメイン垂直配向（ＭＶＡ：Multi-domain Vertical Alignment）モードのように、配向処理を行わずに、配向規制用構造物として電極上に誘電体の突起物や電極の抜き部（スリット）を設け、液晶分子の配向を制御する方法もある。ＭＶＡモードでは、配向規制用構造物を設けているため、配向膜にラビング処理を施さなくても電圧印加時の液晶の配向を異なる複数の方位に制御可能であり、従来のＴＮモードに比べて視角特性に優れている。

しかし、突起物やスリットが形成された領域は、光透過率が低くなりやすい。これらの配置を単純化し、突起物同士の間隔、又は、スリット同士の間隙を広げれば、光透過率を高くすることができる。しかし、突起物同士の間隔、又は、スリット同士の間隙が広すぎると、液晶分子の傾斜の伝播に時間がかかるようになり、表示のために必要な電圧を液晶層に印加したときの液晶分子の応答が非常に遅くなる。

この応答の遅れを改善する方法としては、重合可能なモノマーを含む液晶組成物を基板間に注入し、電圧を印加した状態でモノマーを重合させることで、液晶分子の倒れる方向を記憶させたポリマー層を配向膜上に形成する技術（以下、「ＰＳＡ（Polymer Sustained Alignment：高分子配向安定化）技術」ともいう。）が検討されている（例えば、特許文献１参照。）。

一方、優れた視角特性を得る技術として、近年、配向膜にラビング処理を施さなくても電圧印加時の液晶配向方位を複数方位に制御可能とし、優れた視角特性を得ることができる光配向技術が検討されている。光配向技術は、配向膜の材料として光に活性の材料を用い、形成した膜に対して紫外線等の光線を照射することによって、配向制御させる技術である（例えば、特許文献２参照。）。

特開２００３－３０７７２０号公報特表２００９－５２０７０２号公報

本発明者らは種々の検討を行ったところ、液晶材料、重合性モノマー及び重合開始剤を含む液晶組成物を一対の基板間に注入し、所定の条件で重合反応を生じさせて配向膜上に配向規制力を維持したポリマー層を形成したとしても、従来のＰＳＡ技術では長時間同じパターンの表示を行うと、表示に「焼き付き」が発生することがあることを見いだした。焼き付きとは、同じ表示を一定時間行い、その後別の表示に変えたときに、変える前の映像が薄っすらと残ってしまう現象である。また、焼き付きが起こらなくとも、長時間の点灯表示を行った後に、表示にしみ又はムラが発生することがある。このような焼き付き、しみ又はムラ（以下、焼き付き等という。）の発生の原因の一つとしては、電荷を持つ物質（イオン性不純物等）が存在することにより液晶の配向状態が変化してしまうことが考えられる。上記電荷を持つ物質は、液晶材料及び配向膜の表面にもともと存在していたもののほかに、プロセス要因により発生したものと、長期間の経時変化による部材の劣化に起因して発生したものとが考えられる。

また、本発明者らは他の検討を行ったところ、光配向技術を行うことが可能な配向膜材料のうち、主鎖にイミド構造をもち、側鎖に光反応性官能基を有する高分子材料を用いて配向膜を形成した場合、製造条件によっては、作製される液晶表示装置の電圧保持率（ＶＨＲ：Voltage Holding Ratio）が液晶材料の種類に大きく依存することを見いだした。言い換えると、光配向処理を用いて配向膜を形成する場合、液晶材料の選択の幅が狭く、信頼性の高い液晶表示装置が得られにくくなる。

本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、光配向技術及びＰＳＡ技術を組み合わせたときに、焼き付き等の低減及び電圧保持率の維持が可能な液晶表示装置を提供することを目的とするものである。

本発明者らはまず、液晶表示装置に焼き付き等が生じる原因についてより詳細に検討し、重合反応を行った後の液晶層中に含まれる成分に着目した。そして、一連の重合反応が完了した後であっても、液晶層中には微量な未反応のモノマー、重合開始剤等が残存していることを見いだすとともに、未反応のモノマー及び重合開始剤のような電荷を帯び易い物質が液晶層中に残存していると、完成後の一般的な使用態様でのバックライト光の影響、又は、組立工程後の検査用エージング工程の影響により、イオン性不純物が発生し、液晶表示に焼き付き等を生じさせることを見いだした。

そして、本発明者らは、上記課題を解決する方法について種々検討したところ、配向膜上に形成する、配向規制力を維持するポリマー層を構成する材料に着目した。そして、ポリマー層形成用の重合性モノマーとして、重合性モノマー自体が光吸収によりラジカルを発生し、重合が進行する重合性モノマーを用いることで、重合開始剤を用いなくとも重合反応を進行させることができ、焼き付き等の発生を抑制するとともに、液晶材料に依存することなく信頼性の高い液晶表示装置が得られることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。

すなわち、本発明の一側面は、一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層と、該一対の基板の少なくとも一方の基板上に形成された配向膜と、該配向膜上に形成され、液晶分子を配向制御するポリマー層とを備え、該ポリマー層は、液晶層中に添加された一種以上のモノマーが光吸収によりラジカルを発生し重合することによって形成されたものであり、該配向膜は、イミド構造を含む主鎖、及び、光反応性官能基を含む側鎖をもつ高分子材料からなり、光配向処理が施されたものである液晶表示装置である。

上記一対の基板は、例えば、一方をアレイ基板、他方をカラーフィルタ基板として用いられる。アレイ基板は、複数の画素電極を備え、これにより画素単位で液晶の配向が制御される。カラーフィルタ基板は、複数色のカラーフィルタが、アレイ基板の画素電極とそれぞれ重畳する位置に配置され、画素単位で表示色が制御される。

上記一対の基板の少なくとも一方の基板上には、配向膜が形成されており、上記配向膜は、イミド構造を含む主鎖、及び、光反応性官能基を含む側鎖をもつ高分子材料からなり、光配向処理が施されたものである。光反応性官能基を含む側鎖をもつ高分子材料を用いて光配向処理を行うことで、容易に光配向膜を形成することができる。上記配向膜の例としては、３００ｎｍ以上の波長成分を含む光に対して光吸収を示す光反応性官能基を有する高分子材料から形成され、かつ、液晶分子を配向膜面に対して略垂直又は略水平に配向させる膜が挙げられる。本明細書において「略垂直」とは、具体的には８５～９０°を意味し、「略水平」とは、具体的には０～５°を意味する。

上記配向膜上には、液晶分子を配向制御するポリマー層が形成され、上記ポリマー層は、液晶層中に添加された一種以上のモノマーが光吸収によりラジカルを発生し重合することによって形成されたものである。本発明においてポリマー層は、重合開始剤なしで重合反応が行われるので、未反応重合開始剤の残存の影響による表示特性変化がない。そのため、表示の焼き付き等を低減させることができる。

上記ポリマー層を形成することにより、上記配向膜に対して配向処理を施さなかったとしても、配向膜及びポリマー層に近接する液晶分子の初期傾斜を一定の方向に傾かせることができる。例えば、液晶材料と一種以上のモノマーを含有する液晶組成物をパネルに封入後、電圧を印加して液晶分子がプレチルト配向している状態でモノマーを重合させ、ポリマー層を形成した場合にも、上記配向膜が配向処理されているか否かに関わらず、ポリマー層は液晶分子に対してプレチルト配向させる構造を有する形で形成されることになる。

また、このようなポリマー層は、完成後の一般的な使用態様におけるバックライト光に起因する液晶層の劣化を防ぐこともできる。

本発明の液晶表示装置の構成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素により特に限定されるものではない。

本発明の他の一側面は、一対の基板間に、液晶材料と、一種以上のモノマーとを含有する液晶組成物を注入する工程と、該一対の基板の少なくとも一方の基板上に配向膜材料を塗布し、該配向膜材料に光配向処理を行って配向膜を形成する工程と、該液晶組成物に光を照射し、該一種以上のモノマーの少なくとも一つからラジカルを発生させ重合させて、該配向膜上に、液晶分子を配向制御するポリマー層を形成する工程とを有する液晶表示装置の製造方法である。

本発明の製造方法によって製造される液晶表示装置の特徴は、上述の本発明の液晶表示装置で説明した特徴と同様である。すなわち、上記光配向処理の例としては、３００ｎｍ以上の波長成分を含む光を上記配向膜材料に照射する処理が挙げられる。

配向膜上に形成され、液晶分子を配向制御するポリマー層を形成する材料として、光吸収によりラジカルを発生し重合するモノマーを用いることで、重合開始剤なしで重合反応が行われるので、未反応重合開始剤の残存の影響による特性変化がなく、表示に焼き付き等が発生する可能性を低下させることができる。

本発明の液晶表示装置の製造方法としては、このような工程を必須として形成されるものである限り、その他の工程により特に限定されるものではない。上記ポリマー層を形成する工程は、液晶層に対して閾値以上の電圧を印加した状態で光を照射して重合を行う工程であっても、液晶層に対して閾値以上の電圧を印加しない状態で光を照射して重合を行う工程であってもいずれであってもよい。

本発明の液晶表示装置、及び、本発明の液晶表示装置の製造方法における好ましい態様について以下に詳しく説明する。

上記光反応性官能基は、好ましくは３００ｎｍ以上の波長成分を含む光に対して光吸収を示す光反応性官能基であり、具体的にはシンナメート基、クマリン基、カルコン基、トラン基、及び、アゾベンゼン基からなる群より選択される少なくとも一つを含み、上記主鎖のイミド化率は、５０％未満である。すなわち、上記配向膜は、光配向処理によって液晶分子を配向制御する特性が付与された膜であり、かつイミド化率が調整されている。イミド構造をもつ高分子材料としては、例えば、ポリイミド及びポリアミック酸が挙げられる。本明細書において「イミド化率」とは、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸のＮＨ基及びカルボキシル基のうち、イミド化によって脱水又は環化した比率（モル％）をいう。光反応性官能基を含む側鎖をもつ高分子材料に対して光配向処理を行うことで、容易に光配向膜を形成することができる。

本発明によれば、配向膜の主成分として主鎖のイミド化率が５０％未満のイミド化合物を用いたとしても、焼き付き等の発生を抑制するとともに、液晶材料に依存することなく信頼性の高い液晶表示装置が得られる。

上記少なくとも１種のモノマーは、３３０ｎｍ以上の波長成分を含む光の照射によりラジカルを発生するモノマーであることが好ましい。より好ましくは、３４０ｎｍ以上である。また、更に好ましくは、３８０ｎｍ以下である。図３は、参考例１及び参考例２のモノマーの吸光度（ａ．ｕ．）と、配向膜成膜基板の透過率（％）との関係をまとめたグラフである。図３に示すように、従来は３２０ｎｍ以下の波長の光の照射によりラジカルを発生するモノマー（例えば、参考例２）が多く用いられていたが、一般的に液晶表示装置に用いられる配向膜を表面に有する基板は、配向膜を構成する高分子主鎖及び側鎖の影響により３３０ｎｍ未満の波長の光を透過させにくい傾向にある。そのため、参考例２のモノマーを充分に光重合させるためには、３１０ｎｍの紫外光を長時間又は複数回照射する必要がある。しかしながら、このような紫外光を長時間又は複数回照射すると、液晶表示装置の構成部材（例えば、配向膜及び液晶層）の劣化が進行し、焼き付き等の欠陥を生じさせる場合がある。一方で、配向膜及び液晶層の劣化の進行を止めるために短時間の紫外線照射を行った場合、モノマーが充分に重合せず、不完全なポリマー層ができ、焼き付き等の欠陥を生じさせる場合がある。更に、一般的な紫外光光源は、３１０ｎｍに小さな発光強度を有し、３３０ｎｍ以上に大きな発光強度を持つ光を照射するものが多い。図４は、一般的な紫外光光源の発光スペクトルを示すグラフである。これに対しては、図３に示すように、３３０ｎｍ以上の波長成分を含む光を吸収するモノマー（例えば、参考例１）を用いることで、より光利用効率を高めることができるので、短時間かつ一回の照射であっても安定なポリマー層を形成することができる。

上記少なくとも１種のモノマーは、二官能モノマーであることが好ましい。二官能モノマーを使用することで単官能モノマーを使用する場合と比べて短時間の照射であっても配向膜の表面を覆う安定なポリマー層を形成することができ、また液晶表示装置を長時間使用した後の電圧保持率（ＶＨＲ）を高く維持することができる。

上記少なくとも１種のモノマーは、下記化学式（１）：

（式中、Ｐ^１は、同一又は異なって、アクリレート基又はメタクリレート基を表す。Ａ^１は、下記化学式（２－１）～（２－４）；

のいずれかを表す。Ａ^１が有する水素原子は、ハロゲン基、メチル基、エチル基又はプロピル基に置換されていてもよい。）で表される縮合芳香族化合物であることが好ましい。上記モノマーが上記化学式（２－１）～（２－４）で示されるようなフェナントレン縮合環を有する場合、３３０ｎｍよりも長波長側の光を吸収することができるので、他の化合物と比べて光の利用効率が高く、安定なポリマー層を作製することができる。

上記少なくとも１種のモノマーの他の例としては、下記化学式（３）；

（式中、Ｐ^２は、同一又は異なって、アクリレート基又はメタクリレート基を表す。Ａ^２は、下記化学式（４）；

を表す。Ａ^２が有する水素原子は、ハロゲン基、メチル基、エチル基又はプロピル基に置換されていてもよい。）で表される化合物が挙げられる。

本発明の液晶表示装置によれば、焼き付き等の発生を防止するとともに、電圧保持率の低下を妨げ、優れた表示品位が得られる。

実施形態１に係る液晶表示装置の断面模式図であり、ＰＳＡ重合工程前を示す。実施形態１に係る液晶表示装置の断面模式図であり、ＰＳＡ重合工程後を示す。参考例１及び参考例２のモノマーの吸光度（ａ．ｕ．）と、配向膜成膜基板の透過率（％）との関係をまとめたグラフである。評価試験１での紫外光光源の発光スペクトルを示すグラフである。サンプルＪ及びＫに使用した有機材料の吸収スペクトルを表すグラフである。各サンプルＪ及びＫのそれぞれに対して、異なる紫外線照射量で重合反応を行ったときの、液晶組成物に存在する重合性モノマー量を測定した結果を表すグラフである。

以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。

実施形態１
図１及び図２は、実施形態１に係る液晶表示装置の断面模式図である。図１はＰＳＡ重合工程前を示し、図２はＰＳＡ重合工程後を示す。図１及び図２に示すように実施形態１に係る液晶表示装置は、アレイ基板１と、カラーフィルタ基板２と、アレイ基板１及びカラーフィルタ基板２からなる一対の基板間に狭持された液晶層３とを備える。アレイ基板１は、ガラス等を材料とする絶縁性の透明基板１１と、透明基板１１上に形成された各種配線、画素電極１２、ＴＦＴ（Thin Film Transistor：薄膜トランジスタ）、各種配線及び電極を電気的に隔離するための層間絶縁膜１５等とを備える。より具体的には、アレイ基板１は、透明基板１１と、層間絶縁膜１５と、画素電極１２とを液晶層に向かってこの順に備える。層間絶縁膜１５を介して各種配線と画素電極１２とそれぞれ異なる層に配置することで、開口率の向上が可能な設計となる。層間絶縁膜１５は、有機材料で構成されており、アクリル系化合物、メタクリル系化合物及びキノンジアジド化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。カラーフィルタ基板２は、ガラス等を材料とする絶縁性の透明基板２１と、透明基板２１上に形成されたカラーフィルタ、ブラックマトリクス、共通電極２２等とを備える。

アレイ基板１上（すなわち、画素電極１２上）には、配向膜１３が形成されている。カラーフィルタ基板２上（すなわち、共通電極２２上）には、配向膜２３が形成されている。配向膜１３、２３は、イミド構造を含む主鎖をもつ高分子材料（ポリイミド又はポリアミック酸）で構成されている。上記主鎖のイミド化率は、５０％未満である。配向膜１３、２３の表面に対しては、光配向処理が施されており、液晶分子のプレチルト角を垂直又は水平に方向付ける（初期傾斜させる）ことができる。なお、配向膜１３、２３は、垂直配向膜又は水平配向膜に対して光配向処理がなされたものであってもよい。垂直配向膜とは、配向処理が施されなくとも、液晶分子に対し概ね９０°のプレチルト角を付与する配向膜である。水平配向膜とは、配向処理が施されなくとも、液晶分子に対し概ね０°のプレチルト角を付与する配向膜である。

実施形態１において配向膜１３、２３には光配向処理がなされている。具体的には、光配向処理は、光反応性官能基を含む側鎖をもつ高分子材料を塗布し、焼成した後、一定条件で光照射がなされることで行われる。上記光反応性官能基は、３００ｎｍ以上の波長成分を含む光に対して光吸収を示す光反応性官能基であり、具体的にはシンナメート基、クマリン基、カルコン基、トラン基、及び、アゾベンゼン基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基が好ましい。これらの光反応性官能基は、ポリマーの側鎖に比較的容易に形成することができ、また、光配向処理の際の反応性にも優れている。

図１に示すように、ＰＳＡ重合工程前において液晶層３中には、１種以上の重合性モノマー４が存在している。そして、ＰＳＡ重合工程によって重合性モノマー４は重合を開始し、図２に示すように、配向膜１３、２３上にＰＳＡ層（ポリマー層）１４、２４が形成される。

具体的にはＰＳＡ層１４、２４は、１種以上の重合性モノマー４と、負又は正の誘電率異方性を有する液晶材料とを含む液晶組成物をアレイ基板１とカラーフィルタ基板２との間に注入して液晶層３を形成し、一定量の光を液晶層３に照射して重合性モノマー４を光重合させることによって、形成することができる。なお、図２においてＰＳＡ層１４、２４は、配向膜１３、２３一面に形成された図を示しているが、実際には、点状に複数形成されていてもよく、膜厚にバラツキがあってもよい。

実施形態１で用いる重合性モノマー４の少なくとも１種は、重合性モノマー４単独で光吸収を行い、ラジカルを発生して連鎖重合を開始するので、重合開始剤を投与する必要がない。

実施形態１においては、ＰＳＡ重合工程を行う際に、液晶層３に対し閾値以上の電圧を印加した状態で光照射を行うことで、閾値以上の電圧印加状態で配向した液晶分子にならった形で重合体が形成される。

また、実施形態１においては、液晶層３に対し閾値以上の電圧が印加された状態で光照射が行われなくてもよい。実施形態１では、配向膜１３、２３自体が液晶分子に対しプレチルト配向を付与する特性を有するため、配向膜１３、２３上に形成されるＰＳＡ層１４、２４は、配向膜のもつ配向規制力を維持した膜として機能する。

実施形態１において用いる重合性モノマーの少なくとも１種は、３３０ｎｍ以上の波長成分を含む光の照射によりラジカルを発生するモノマーであり、上記化学式（１）で表される縮合芳香族化合物、又は、上記化学式（３）で表される化合物が挙げられる。

これらの重合性モノマーは、二官能モノマーである。二官能モノマーによれば、液晶材料と混合させたときに単官能モノマーと比べて短時間で安定なＰＳＡ層を形成することができる。また、一般的に液晶表示装置に用いられる配向膜を表面に有する基板は、配向膜を含む基板構成において３３０ｎｍ未満の光を多く吸収する傾向にあるので、３３０ｎｍ以上の波長成分を含む光を吸収するモノマーを用いることで、より光利用効率を高めることができる。上記化学式（２－１）～（２－４）で示されるようなフェナントレン縮合環をもつ縮合芳香族化合物は、３３０ｎｍよりも長波長側に吸収波長域を有するので、これにより、紫外線照射による重合速度を高めることができ、安定なＰＳＡ層を作製することができる。なお、実施形態１においては、上述の特性をもつ重合性モノマーを少なくとも一種含む限り、他の種類の重合性モノマーを組み合わせて用いてもよい。

実施形態１に係る液晶表示装置の他の構成要素について詳述する。

実施形態１に係る液晶表示装置においては、アレイ基板１、液晶層３及びカラーフィルタ基板２が、液晶表示装置の背面側から観察面側に向かってこの順に積層されている。アレイ基板１の背面側には、偏光板が備え付けられている。また、カラーフィルタ基板２の観察面側にも、偏光板が備え付けられている。これらの偏光板に対しては、更に位相差板が配置されていてもよく、上記偏光板は、円偏光板であってもよい。

アレイ基板１には、ゲートドライバ、ソースドライバ等の各種ドライバが備え付けられており、画素ごとに画像表示の信号電圧の印加を調節することが可能である。

実施形態１に係る液晶表示装置は、透過型、反射型及び反射透過両用型のいずれであってもよい。透過型又は反射透過両用型であれば、実施形態１の液晶表示装置は、更に、バックライトを備えている。バックライトは、アレイ基板１の更に背面側に配置され、アレイ基板１、液晶層３及びカラーフィルタ基板２の順に光が透過するように配置される。反射型又は反射透過両用型であれば、アレイ基板１は、外光を反射するための反射板を備える。また、少なくとも反射光を表示として用いる領域においては、カラーフィルタ基板２の偏光板は、いわゆるλ／４位相差板を備える円偏光板である必要がある。

実施形態１に係る液晶表示装置は、カラーフィルタをアレイ基板１に備えるカラーフィルタオンアレイ（Color Filter On Array）の形態であってもよい。また、実施形態１に係る液晶表示装置はモノクロディスプレイであってもよく、その場合、カラーフィルタは配置される必要はない。

液晶層３には、一定電圧が印加されることで特定の方向に配向する特性をもつ液晶材料が充填されている。液晶層３内の液晶分子は、閾値以上の電圧の印加によってその配向性が制御される。例えば、液晶材料として負の誘電率異方性をもつ液晶材料を用い、配向膜として垂直配向膜を用いることで、ＶＡ（Vertical Alignment）モードとすることができる。また、例えば、液晶材料として正の誘電率異方性をもつ液晶材料を用い、配向膜として水平配向膜を用いることで、ＩＰＳ（In-Plane Switching）モード、ＦＦＳ（Fringe Field Switching）モード、ＴＮ（Twisted Nematic）モード、又は、ＯＣＢ（Optically Compensated Bend）モードとすることができる。

また、光配向処理の際に、配向処理方向を一対の基板で互いに直交するよう異ならせ、かつ、一つの画素が４つのドメイン（Domain）に分割されるタイプのＶＡＴＮ（Vertical Alignment Twisted Nematic）モードの構成によれば、視野角が大きく改善される。ＶＡＴＮにおいては、高精度なプレチルト制御が求められるが、実施形態１の液晶表示装置によれば、配向膜上に形成されたＰＳＡ層の影響により、安定性に優れたプレチルトを得ることができるため、複数のドメインをもつＶＡＴＮモードとしたとしても充分な配向安定性を得ることができる。

実施形態１に係る液晶表示装置は、液晶表示装置（例えば、液晶ＴＶ（テレビジョン）、ＤＩＤ（デジタルインフォメーションディスプレイ））を分解し、核磁気共鳴分析法（ＮＭＲ：Nuclear Magnetic Resonance）、フーリエ変換赤外分光法（ＦＴ－ＩＲ：Fourier Transform Infrared Spectroscopy）、質量分析法（ＭＳ：Mass Spectrometry）等を用いた化学分析を行うことにより、配向膜の成分の解析、ＰＳＡ層中に存在するＰＳＡ層形成用モノマー（重合性モノマー）の成分の解析、液晶層中に含まれるＰＳＡ層形成用モノマー（重合性モノマー）の混入量、ＰＳＡ層中のＰＳＡ層形成用モノマー（重合性モノマー）の存在比等を確認することができる。

評価試験１
以下に、実施形態１に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製し、その効果を検証した。まず、一対の基板を用意し、垂直配向膜用の材料であって側鎖に光反応性官能基（シンナメート基）を有するポリアミック酸溶液を一対の基板の表面にそれぞれスピンコーターを用いて塗布し、８０℃の条件下で５分間プリベーク（仮焼成）を行い、続いて２００℃の条件下で６０分間ポストべーク（本焼成）を行った。

ポストベーク後の配向膜のＦＴ－ＩＲスペクトルから、下記式を用いてイミド化率を算出したところ、主鎖のイミド化率は２０％より大きく５０％未満の範囲内であった。
イミド化率（％）＝［Ａｓ（Ｃ－Ｎ）／Ａｓ（Ｃ＝Ｃ）］／［Ａｒ（Ｃ－Ｎ）／Ａｒ（Ｃ＝Ｃ）］
なお、Ａ（Ｃ－Ｎ）は、イミドＣ－Ｎ伸縮振動（～１３７０ｃｍ^－１）の吸光度を示し、Ａ（Ｃ＝Ｃ）は、芳香族Ｃ＝Ｃ伸縮振動（～１５００ｃｍ^－１）の吸光度を示す。また、Ａｓは、サンプル塗膜の吸光度であり、Ａｒは、参照用の塗膜の吸光度である。参照用の塗膜は、サンプル塗膜の本焼成条件を、３００℃、９０分間に変更することによって形成された配向膜であり、この参照用の塗膜におけるイミド化率を１００％と仮定する。なお、イミド化率の程度は、ポストべーク温度によって調節することができる。

次に、基板面に対して斜め４５°の方向から紫外偏光を照射し、光配向処理を行った。ここでは３００ｎｍ以上の波長成分を含む紫外偏光を用いた。

次に、片側基板にエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂からなるシール材を塗布し、両基板をギャップ保持材（プラスチックビーズ）を介して重ねあわせた後、シール材を熱硬化することで、両基板を貼り合わせた。次に、シール材の一部に設けられた注入口を通じて、真空注入法により、負の誘電率異方性を有する（ネガ型）液晶材料と、ＰＳＡ層形成用の重合性モノマーとを含む液晶組成物を封入した。

本評価試験では、下記化学式（５）及び（６）で表される重合性モノマーを用いた。下記化学式（５）で表される化合物は、フェナントレン系の二官能メタクリレートモノマーであり、下記化学式（６）で表される化合物は、ビフェニル系の二官能メタクリレートモノマーである。

図３は、上記化学式（５）及び（６）で表される化合物の吸収スペクトル、及び、一般的な配向膜成膜基板の透過スペクトルを示すグラフである。上記化学式（６）で表される化合物は、波長３３０ｎｍを上限として、より短波長の光を吸収する。上記化学式（５）で表される化合物は、波長３８０ｎｍを上限として、より短波長の光を吸収する。したがって、上記化学式（５）で表される化合物は、上記化学式（６）で表される化合物では吸収が起こらない波長３３０ｎｍ～３８０ｎｍの光を吸収することができ、上記化学式（６）で表される化合物に比べてより広い吸収波長範囲を有しているといえる。

ここでの配向膜成膜基板とは、ガラス基板上にＩＴＯ（インジウム酸化スズ）膜が形成され、該ＩＴＯ膜上に配向膜が成膜されてできた基板をいう。一般的な配向膜成膜基板は、波長３４０ｎｍよりも短波長の光を透過しにくい。

以上のことから、一般的な配向膜成膜基板を通して液晶層内に光を照射してＰＳＡ処理を行う場合、上記化学式（６）で表される化合物のみでは、重合反応が終わりきるまでに長時間かかってしまう。

実際に作製した液晶セルは、以下のサンプルＡ～Ｃ（実施例１～３）である。サンプルＡは、上記化学式（５）で表される二官能メタクリレートモノマーを、液晶材料Ａに対し０．６ｗｔ％の重量比となるように混合して作製した。サンプルＢは、上記化学式（６）で表される二官能メタクリレートモノマーを、液晶材料Ａに対し０．３ｗｔ％の重量比となるように混合して作製した。サンプルＣは、上記化学式（５）で表される二官能メタクリレートモノマーを、液晶材料Ｂに対し０．６ｗｔ％の重量比となるように混合して作製した。

次に、各サンプルＡ～Ｃに対し、電圧無印加の状態でブラックライト（３００～３７０ｎｍにピーク波長がある紫外光（図４））を照射し（液晶組成物に含まれるＰＳＡ層形成用の重合性モノマーが添加量の１％以下になるようにする）、重合反応を行うことで、ＰＳＡ層が垂直配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。

続いて、完成した各サンプルＡ～Ｃに対して、それぞれ電圧保持率（ＶＨＲ）の測定を行った。ＶＨＲは、１Ｖのパルス電圧を印加後、１６．６７ｍｓ間の電荷保持を確認することで決定した。また、ＶＨＲの測定（光劣化試験）は、初期段階と、発光ダイオード（ＬＥＤ：Light Emitting Diode）バックライトで偏光板を介さず光を照射し、１０００時間が経過してからの段階との計２回行った。

また、完成した各サンプルＡ～Ｃに対して、それぞれ残留ＤＣ電圧の測定を行った。残留ＤＣ電圧の値は、ＤＣオフセット電圧２Ｖを１０時間印加した後の電圧に対し、フリッカ消去法を用いることで決定した。

表１は、各サンプルＡ～Ｃを用いたＶＨＲ（％）及び残留ＤＣ電圧（ｍＶ）の測定結果を示す表である。

上記化学式（５）で表される二官能フェナントレン系モノマーを用いることにより、１０００時間経過後であってもＶＨＲ９８．５％以上を維持し、長期信頼性を得ることができた。また、残留ＤＣ電圧は０ｍＶとなり、焼き付き等の防止の優れた効果が得られた。この理由としては、二官能フェナントレン系モノマーを用いることにより、紫外光照射による重合速度が上がり、液晶材料に対する劣化が少なく抑えられたこと、３３０ｎｍ未満の短波長の光照射に基づく液晶材料、及び、配向膜材料に対する劣化が少なく抑えられたこと、ポリマー層が重合プロセス後におけるバックライト光に含まれる紫外光のカットに寄与したこと等が挙げられる。また、上記化学式（５）で表される二官能フェナントレン系モノマーによれば、液晶材料に関わらず、電圧保持率の低下の抑制、及び、残留ＤＣ電圧の発生防止の効果が得られた。

一方、上記化学式（６）で表される二官能ビフェニル系モノマーは、構造的には上記化学式（５）で表される二官能フェナントレン系モノマーに近く、電圧保持率低下の抑制効果は得られたが、主に３３０ｎｍ未満の光によりラジカルを発生するモノマーであるため、上記化学式（５）で表される二官能フェナントレン系モノマーと比べると、焼き付き等の解消の充分な効果は得られなかった。

評価試験２
次に、配向膜を構成する高分子材料の主鎖のイミド化率の違いに基づく電圧保持率への影響について検証を行った。本評価試験で作製したサンプルはＰＳＡ工程を経ていないが、配向膜の材料としては、側鎖に光反応性官能基（シンナメート基）を有するものと、有しないものとの二種類を用いた。側鎖に光反応性官能基を有するサンプルとして、サンプルＤ及びサンプルＥ（比較例１及び２）を作製し、側鎖に光反応性官能基を有しないサンプルとして、サンプルＦ及びサンプルＧ（比較例３及び４）を作製した。また、サンプルＤ及びサンプルＥにおいてポストベーク後の配向膜を構成する高分子材料の主鎖のイミド化率は、概ね８０％程度、サンプルＦ及びサンプルＧにおいてポストベーク後の配向膜を構成する高分子材料の主鎖のイミド化率は、概ね２０～５０％の範囲内であった。

サンプルＤとサンプルＥとの間、及び、サンプルＦとサンプルＧとの間では、それぞれ封入する液晶材料の種類を異ならせた。サンプルＤ及びサンプルＦは液晶材料Ａを封入し、サンプルＥ及びサンプルＧは液晶材料Ｂを封入した。下記表２及び表３に結果をまとめたものを示した。ＶＨＲの測定は、１Ｖのパルス電圧を印加後、１６．６７ｍｓ間の電荷保持を確認することで決定した。また、ＶＨＲの測定（光劣化試験）は、初期段階と、発光ダイオード（ＬＥＤ：Light Emitting Diode）バックライトで偏光板を介さず光を照射し、１０００時間が経過してからの段階との計２回行った。

表２及び表３を比較すると、液晶材料に起因する電圧保持率の依存性については、側鎖に光反応性官能基を有し、主鎖のイミド化率が５０％以上である高分子材料を配向膜材料として用いた液晶セル（表２）が、側鎖に光反応性官能基を有さず、主鎖のイミド化率が５０％未満である高分子材料を配向膜材料として用いた液晶セル（表３）と比べて高いといえる。

したがって、側鎖に光反応性官能基を有し、主鎖のイミド化率が５０％未満である高分子材料を配向膜材料として用いた液晶セルを使用する場合には、本発明のように、上記化学式（５）で表される化合物を用いてＰＳＡ層を用いることが効果的であるといえる。

液晶材料Ｂは、低粘度であり、動画性能に優れた材料である。しかしながら、表３に示すように、条件によっては電圧保持率の大きな低下を引き起こすことがある。これは、ＰＳＡ層形成のための紫外線照射により、液晶材料が劣化するためと考えられる。しかしながら、上記表１に示すように上記化学式（５）で表される化合物を用いてＰＳＡ層を形成することで、電圧保持率の低下を抑制することができる。

評価試験３
以下に、実施形態１に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製し、その効果を検証した。まず、一対の基板を用意し、水平配向膜用の材料であって側鎖に３００ｎｍ以上の波長成分を含む光に対して吸収を示す光反応性官能基（シンナメート基）を有するポリアミック酸溶液を一対の基板の表面にそれぞれスピンコーターを用いて塗布し、８０℃の条件下で５分間プリベーク（仮焼成）を行い、続いて２００℃の条件下で６０分間ポストべーク（本焼成）を行った。

次に、片側基板にエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂からなるシール材を塗布し、両基板をギャップ保持材（プラスチックビーズ）を介して重ねあわせた後、シール材を熱硬化することで、両基板を貼り合わせた。次に、シール材の一部に設けられた注入口を通じて、真空注入法により、正の誘電率異方性を有する（ポジ型）液晶材料と、ＰＳＡ層形成用の重合性モノマーとを含む液晶組成物を封入した。

本評価試験では、上記化学式（５）及び（６）で表される重合性モノマーを用いた。上記化学式（５）で表される化合物は、フェナントレン系の二官能メタクリレートモノマーであり、上記化学式（６）で表される化合物は、ビフェニル系の二官能メタクリレートモノマーである。

実際に作製した液晶セルは、以下のサンプルＨ及びＩ（実施例４及び５）である。サンプルＨは、上記化学式（５）で表される二官能メタクリレートモノマーを、液晶材料Ｈに対し０．６ｗｔ％の重量比となるように混合して作製した。サンプルＩは、上記化学式（６）で表される二官能メタクリレートモノマーを、液晶材料Ｈに対し０．３ｗｔ％の重量比となるように混合して作製した。

次に、各サンプルＨ及びＩに対し、電圧無印加の状態でブラックライト（３００～３７０ｎｍにピーク波長がある紫外光（図４））を照射し（液晶組成物に含まれるＰＳＡ層形成用の重合性モノマーが添加量の１％以下になるようにする）、重合反応を行うことで、ＰＳＡ層が水平配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。

下記表４に結果をまとめたものを示した。ＶＨＲ及び残留ＤＣ電圧の測定は、評価試験１と同じ方法で行った。

垂直配向膜を用いた場合と同様、上記化学式（５）で表される二官能フェナントレン系モノマーを用いることにより、１０００時間経過後であってもＶＨＲ９８．５％以上を維持し、長期信頼性を得ることができた。また、残留ＤＣ電圧は０ｍＶとなり、焼き付き等の防止の優れた効果が得られた。この理由としては、二官能フェナントレン系モノマーを用いることにより、紫外光照射による重合速度が上がり、液晶材料に対する劣化が少なく抑えられたこと、３３０ｎｍ未満の短波長の光照射に基づく液晶材料、及び、配向膜材料に対する劣化が少なく抑えられたこと、ポリマー層が重合プロセス後におけるバックライト光に含まれる紫外光のカットに寄与したこと等が挙げられる。

一方、上記化学式（６）で表される二官能ビフェニル系モノマーは、水平配向膜を用いた場合においても、１０００時間経過後であってもＶＨＲ９８．０％以上を維持し、電圧保持率低下の抑制効果は得られたが、上記化学式（５）で表される二官能フェナントレン系モノマーと比べると、焼き付き等の解消の充分な効果は得られなかった。

評価試験３より、水平配向タイプの光配向材料を用いた場合であっても、垂直配向タイプの光配向材料を用いた場合と同様の効果が得られることが確認された。

評価試験４
以下に、実施形態１に係る液晶表示装置が備える液晶セルを実際に作製し、その効果を検証した。まず、有機材料で構成された層間絶縁膜を有する基板と、層間絶縁膜を有さない基板とからなる一対の基板を用意し、水平配向膜用の材料であって側鎖に３００ｎｍ以上の波長成分を含む光に対して吸収を示す光反応性官能基（シンナメート基）を有するポリアミック酸溶液を一対の基板の表面にそれぞれスピンコーターを用いて塗布し、８０℃の条件下で５分間プリベーク（仮焼成）を行い、続いて２００℃の条件下で６０分間ポストべーク（本焼成）を行った。

次に、支持基板面に対して斜め４５°の方向から紫外偏光を照射し、光配向処理を行った。ここでは３００ｎｍ以上の波長成分を含む紫外偏光を用いた。

実際に作製した液晶セルは、以下のサンプルＪ及びＫ（実施例６及び７）である。サンプルＪは、上記化学式（５）で表される二官能メタクリレートモノマーを、液晶材料Ｊに対し０．３ｗｔ％の重量比となるように混合して作製した。サンプルＫは、上記化学式（６）で表される二官能メタクリレートモノマーを、液晶材料Ｊに対し０．３ｗｔ％の重量比となるように混合して作製した。

次に、各サンプルＨ及びＩに対し、電圧無印加の状態で、有機材料で構成された層間絶縁膜を備える基板側からブラックライト（３００～３７０ｎｍにピーク波長がある紫外光（図４））を照射し（液晶組成物に含まれるＰＳＡ層形成用の重合性モノマーが添加量の１％以下になるようにする）、重合反応を行うことで、ＰＳＡ層が水平配向膜上に形成された液晶セルをそれぞれ完成させた。

図５は、サンプルＪ及びＫに使用した有機材料の吸収スペクトルを表すグラフである。なお、有機材料に含まれうる化合物としては、アクリル系化合物、メタクリル系化合物、キノンジアジド化合物等が挙げられ、いずれも同様の傾向を示す。

図６は、各サンプルＪ及びＫのそれぞれに対して、異なる紫外線照射量で重合反応を行ったときの、液晶組成物に存在する重合性モノマー量を測定した結果を表すグラフである。なお、液晶組成物中の重合性モノマーの残存量は、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。図６に示すグラフは、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した結果である。

図４と図５とを比較すると、ブラックライトの発光強度が強い波長の光と、有機材料が吸収しやすい波長の光とは一部で重複しており、ブラックライトから発せられた光の一部は有機材料によって吸収されることになるが、図６に示されているように、有機材料で構成された層間絶縁膜を有する場合であっても、３３０ｎｍ以上の光によりラジカルを発生するモノマーを速やかに重合させることができ、これにより、ＰＳＡ層を配向膜上に形成することができる。

なお、図６に示されているように、化学式（６）で表わされる二官能ビフェニル系モノマーを使う場合であっても光の照射量を増やすことで残存モノマー量を減らすことは可能であるが、化学式（５）で表わされる二官能フェナントレン系モノマーを使用することにより、残存モノマー量をより効率的に減らすことができる。

なお、本願は、２０１１年６月２７日に出願された日本国特許出願２０１１－１４２３４７号及び２０１１年９月１３日に出願された日本国特許出願２０１１－１９９６１３号を基礎として、パリ条約ないし移行する国における法規に基づく優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。

１：アレイ基板
２：カラーフィルタ基板
３：液晶層
４：重合性モノマー
１１、２１：透明基板
１２：画素電極
１３、２３：配向膜
１４、２４：ＰＳＡ層（ポリマー層）
２２：共通電極

Claims

一対の基板と、
該一対の基板間に挟持された液晶層と、
該一対の基板の少なくとも一方の基板上に形成された配向膜と、
該配向膜上に形成され、液晶分子を配向制御するポリマー層とを備え、
該ポリマー層は、液晶層中に添加された一種以上のモノマーが光吸収によりラジカルを発生し重合することによって形成されたものであり、
該配向膜は、イミド構造を含む主鎖、及び、光反応性官能基を含む側鎖をもつ高分子材料からなり、光配向処理が施されたものである
ことを特徴とする液晶表示装置。
前記光反応性官能基は、３００ｎｍ以上の波長成分を含む光に対して光吸収を示し、
前記配向膜は、前記液晶分子を前記配向膜面に対して略垂直に配向させる
ことを特徴とする請求項１記載の液晶表示装置。
前記光反応性官能基は、３００ｎｍ以上の波長成分を含む光に対して光吸収を示し、
前記配向膜は、前記液晶分子を前記配向膜面に対して略水平に配向させる
ことを特徴とする請求項１記載の液晶表示装置。
前記光反応性官能基は、シンナメート基、クマリン基、カルコン基、トラン基、及び、アゾベンゼン基からなる群より選択される少なくとも一つを含み、
前記主鎖のイミド化率は、２０％より大きく５０％未満である
ことを特徴とする請求項１～３のいずれかに記載の液晶表示装置。
前記少なくとも１種のモノマーは、３３０ｎｍ以上の波長成分を含む光の照射によりラジカルを発生するモノマーであることを特徴とする請求項１～４のいずれかに記載の液晶表示装置。
前記少なくとも１種のモノマーは、下記化学式（１）：

（式中、Ｐ^１は、同一又は異なって、アクリレート基又はメタクリレート基を表す。Ａ^１は、下記化学式（２－１）～（２－４）；

のいずれかを表す。Ａ^１が有する水素原子は、ハロゲン基、メチル基、エチル基又はプロピル基に置換されていてもよい。）
で表される縮合芳香族化合物である
ことを特徴とする請求項１～５のいずれかに記載の液晶表示装置。
前記一対の基板の一方は、透明基板と、層間絶縁膜と、画素電極とを液晶層に向かってこの順に備えるアレイ基板であり、
該層間絶縁膜は、有機材料で構成されている
ことを特徴とする請求項１～６のいずれかに記載の液晶表示装置。
一対の基板間に、液晶材料と、一種以上のモノマーとを含有する液晶組成物を注入する工程と、
該一対の基板の少なくとも一方の基板上に配向膜材料を塗布し、該配向膜材料に光配向処理を行って配向膜を形成する工程と、
該液晶組成物に光を照射し、該一種以上のモノマーの少なくとも一つからラジカルを発生させ重合させて、該配向膜上に、液晶分子を配向制御するポリマー層を形成する工程とを有する
ことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
前記光配向処理は、３００ｎｍ以上の波長成分を含む光を前記配向膜材料に照射する処理であり、
前記配向膜は、前記液晶分子を該配向膜面に対して略垂直に配向させる
ことを特徴とする請求項８記載の液晶表示装置の製造方法。
前記光配向処理は、３００ｎｍ以上の波長成分を含む光を前記配向膜材料に照射する処理であり、
前記配向膜は、前記液晶分子を該配向膜面に対して略水平に配向させる
ことを特徴とする請求項８記載の液晶表示装置の製造方法。
前記少なくとも１種のモノマーは、３３０ｎｍ以上の波長成分を含む光の照射によりラジカルを発生するモノマーであることを特徴とする請求項８～１０のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
前記少なくとも１種のモノマーは、下記化学式（１）：

（式中、Ｐ^１は、同一又は異なって、アクリレート基又はメタクリレート基を表す。Ａ^１は、下記化学式（２－１）～（２－４）；

のいずれかを表す。Ａ^１が有する水素原子は、ハロゲン基、メチル基、エチル基又はプロピル基に置換されていてもよい。）
で表される縮合芳香族化合物である
ことを特徴とする請求項８～１１のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
前記一対の基板の一方は、透明基板と、層間絶縁膜と、画素電極とを液晶層に向かってこの順に備えるアレイ基板であり、
該層間絶縁膜は、有機材料で構成されている
ことを特徴とする請求項８～１２のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
前記ポリマー層を形成する工程は、液晶層に対して閾値以上の電圧を印加した状態で光を照射して重合を行う工程であることを特徴とする請求項８～１３のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
前記ポリマー層を形成する工程は、液晶層に対して閾値以上の電圧を印加しない状態で光を照射して重合を行う工程であることを特徴とする請求項８～１３のいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。