明 細 書
無線通信装置、無線通信方法、及び無線通信システム
技術分野
[0001] 本発明は、同一の周波数チャネルを用い、異なる複数の送信アンテナより独立な データを送信し、複数の受信アンテナを用いて信号を受信し、各送受信アンテナ間 の伝達関数行列をもとに受信局側でデータの復調を行うことにより無線通信を実現 する高速無線アクセスシステム (または無線 LANシステム)において、回路規模を抑 制しながら良好な伝送特性を実現するための受信技術に関する。また、直交周波数 分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を併用す る場合に、基地局側にて送信ダイバーシチ利得を稼ぎ、無線端末側の回路規模を 抑えながら良好な特性を引き出すための送信技術に関する。本発明は、特に、 2.4GHz帯および 5GHz帯等を用いた高速無線アクセスシステム (または無線 LANシ ステム)の伝送速度の高速ィ匕を行うために利用される。
背景技術
[0002] 近年、 2.4GHz帯または 5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、
IEEE802.11g規格、 IEEE802.11a規格などに準拠した無線 LANシステムの普及が目 覚しい。これらのシステムでは、最大で 54Mbpsの伝送速度を実現している力 無線 LANの普及に伴 、更なる伝送速度の高速化が求められて!/、る。
そのための技術としては、 MIMO (Multiple-Input Multiple- Output)技術が有力であ る。この MIMO技術とは、送信局側において複数の送信アンテナから同一チャネル上 で異なる独立な信号を送信し、受信局側において同じく複数のアンテナを用いて信 号を受信し、各送信アンテナ Z受信アンテナ間の伝達関数行列を求め、この行列を 用いて送信局側で各アンテナカゝら送信した独立な信号を推定し、データを再生する ものである。
[0003] ここで、 N本の送信アンテナを用いて N系統の信号を送信し、 M本のアンテナを用い て信号を受信する場合を考える。まず、送受信局の各アンテナ間には N X M個の伝 送のパスが存在し、第 i送信アンテナから送信され第 j受信アンテナで受信される場合
の伝達関数を hとし、これを第 (Li)成分とする M行 N列の行列を Hと表記する。さらに、 ,
第 i送信アンテナからの送信信号を tとし (t , t , t ,· · · t )を成分とする列ベクトルを Tx i 1 2 3 N
、第 j受信アンテナでの受信信号を rとし (r , r , r ,··· r )を成分とする列ベクトルを Rx j 1 2 3
、第 j受信アンテナの熱雑音を nとし (η , η, η,··· n )を成分とする列ベクトルを nと表 j 1 2 3
記する。
この場合、以下の関係式が成り立つ。
[0004] [数 1]
Rx-HxTx + n …(1)
[0005] したがって、受信局側で受信した信号 Rxをもとに、送信信号 Txを推定する技術が 求められている。この MIMO技術の最も基本的なものとしては、一般に ZF (Zero Forcing)法と呼ばれる方法があげられる(例えば、非特許文献 1を参照。 )0
ここでは、上記の(式 1)に対し、伝達関数行列の逆行列 H—1を求め、これを式の両 辺の左カゝら掛け合わせる処理を行う。この結果、以下の式が得られる。
[0006] [数 2]
H~lxRx = Tx + H~] … (2)
[0007] つまり、各受信アンテナで受信した信号を合成し、所望の送信アンテナから以外の 信号による干渉を除去する処理を行うと、実際の送信信号ベクトル Txに微小な熱雑 音項 H_1Xnが加わった信号点が得られることになる。ここで、送信信号として、 BPSK、 QPSK、 16QAM、 64QAM等の多値変調を施した信号を用いる場合は、送信信号とし て取り得る信号点は不連続である。したがって、 H— とユークリッド距離が最も近 Vヽ点を送信コンスタレーシヨン上で検索する硬判定処理を行!ヽ、真の送信信号を推 定する。
[0008] 以上の ZF法においては、熱雑音項 H— nが十分に小さぐ且つ各送信アンテナ毎
の成分が均等であると仮定できる場合には良好な特性が期待できる。しかし、一般に はこの仮定は成り立たず、ある伝達関数行列に対して送信アンテナ毎の熱雑音 H 1 X nの絶対値の期待値は異なる。さらには、もし伝達関数行列 Hが逆行列がゼロとな る行列 (ないしはその行列式が非常に小さい)の場合には、送信信号の推定が非常 に不安定になる。この様な状況においては、受信特性が大幅に劣化する可能性があ る。このような問題点を解決するための方法として、例えば、 MMSE (Minimum Mean Square Error)法などがその一例にあげられる。
[0009] MMSE法の場合には、(式 1)の両辺の左からかける演算子を伝達関数行列 Hの逆 行列ではなぐ別の行列演算子 Fを用いる。この行列演算子 Fは、送信信号の第 kシ ンボルにおける送信信号ベクトルを Tx(k)、受信信号の第 kシンボルにおける受信信 号ベクトルを Tx(k)とした場合に、(F X Rx(k)— Tx(k)) H X (F X Rx(k)— Tx(k))の複数シン ボルに渡る期待値を最小化することが期待されるように行列演算子 Fを選択する。実 際には、この行列演算子 Fを既知のプリアンブル信号部を用いて推定し、そこで推定 された行列演算子 Fを以降のデータに対する復調において利用する。
[0010] 以上に説明したように、 MIMO技術を適用して通信を行うことにより伝送容量を増大 させることは可能であるが、複数の送信アンテナから送信される別々の信号はお互い に干渉となり得るため、受信側で複数のアンテナを用いることにより本来であれば受 信ダイバーシチ利得が期待されるのに、この干渉を相互にキャンセルする処理にお V、てダイバーシチ利得を最大化することができな 、。
即ち、上記 ZF法においては、各信号系列の系列間の干渉を除去し信号を分離す るため、伝達関数行列 Hの逆行列を用いているが、これは、あくまでも各信号系列間 の相互干渉を除去するのが目的であり、受信アンテナ間の合成によるダイバーシチ 利得を最大にするものではない。本来であれば、信号分離後の各信号系列の S/N 比 (信号対雑音レベル比)を最大にすることを方針として掲げて信号分離処理を行う のが好ましい。この S/N比を最大にする、すなわち受信側で最大比合成処理を実現 するためには、送信側において、受信端にて各信号系列が直交するように信号を調 整して送信する必要がある。この方法は、 E— SDM (Eigenbeam- Space Division Multiplexing)方式と呼ばれて 、る(例えば、非特許文献 2参照)。
[0011] この E— SDM方式では、送信側において伝達関数行列 Hが既知であることを前提 とする。この行列 Hをもとに、この行列のエルミート共役の行列 HHと Hの積すなわち N X Nの行列 HH X Hを対角化するュ-タリー行列 Uを求め、送信信号ベクトル Tx(k)に 対してュ-タリ変換を行った信号 U X Tx(k)を送信する。ここで第 i送信アンテナから 送信する信号は [UXTx] (ここで [X]はベクトル Xの第减分を表す)である。プリアン ブル信号も含めてュ-タリ変換した信号を送信すれば、受信局側では実際の伝達関 数行列が Hであったとしても、チャネル推定により得られる伝達関数行列は H X Uと なる。
[0012] ここで、このュ-タリ変換行列 Uと行列 Hには以下の関係式が成り立つ。
この(式 3)の右辺の行列 Λは Ν X Νの対角行列であり、行列の対角成分が非ゼロ であり(各成分は固有値と呼ばれ、 λ 1 ,λ2 ,λ 3 ···と表記しておく)、その他の対角成 分がゼロとなる。この方式を用いた場合には(式 1)も以下の様に変換されている。
両辺の左力 推定された伝達関数行列 Η X Uのエルミート共役の行列をかけると、 式は以下の様に変換される。
[0015] [数 5]
(H U)H xRx = AxTx + (HxU)n x"… C5)
これは、 N系統の信号系列は完全に直交した状態にあることを意味する。また、右 辺に現れた行列は、推定された伝達関数行列より(式 3)により直接的に求めることが できる。このため、もともとの行列 Hが逆行列を持つ力持たないかに依存せず、(式 3) 及び (式 5)によりゼロ以外の固有値をもつ信号系列に対して、安定して送信信号 Tx を推定することが可能である。
[0016] この Ε— SDM方式では、送信側にお!、て信号を変換することにより、送信信号に指 向性を持たせるフェーズドアレーアンテナ技術と等価的なことを行っているものと理 解できる。これにより、各送信アンテナ間の干渉を回避しながら、ダイバーシチ利得を あわせて得ることができるために、非常に良好な特性が期待できる。
[0017] ここで、図 17に従来技術における第一の無線局の送信部の構成を示す。図におい て、 100はデータ分割回路、 101— 1— 101— 3はプリアンブル付与回路、 102—1—1 02— 3は変調回路、 103は送信信号変換回路、 104-1— 104-3は無線部、 105—1 一 105— 3は送信アンテナ、 106は行列演算回路 # 1、 107は伝達関数行列管理回 路を示す。なお、ひとつの例として、送信局が 3つの送信アンテナを用いて 3系統の データを送信する場合を例にとって説明する。
[0018] まず、伝達関数行列管理回路 107が管理する伝達関数行列 Ηを行列演算回路 10 6に対して入力する。行列演算回路 # 1 (106)では、入力された行列 Ηに対し、エル ミート共役な行列 ΗΗ、それらの積 ΗΗ Χ Η、及びこれを対角化するュ-タリー行列 U を求め、これを送信信号変換回路 103に入力する。次に、データが入力されると、デ ータ分割回路 100はデータを 3系統に分離する。例えば、第 1系統のデータはブリア ンブル付与回路 101— 1に入力され、プリアンブルが付与された状態で変調回路 (Ch 1) 102—1に入力される。
[0019] 変調回路 (Chi) 102— 1では所定の変調を実施し、変調された信号は送信信号変 換回路 103に入力される。送信信号変換回路 103では、プリアンブル信号を含め送 信信号 Txに対してュ-タリ変換を実施し、 U X Txとして無線部 104— 1に入力される 。その後、無線部 104-1にて無線周波数に変換され、送信アンテナ 105-1より送信 される。同様に、第 2系統のデータは 101— 2— 105—2、第 3系統のデータは 101—3 一 105— 3を経由して、それぞれ個別に送信される。
[0020] 図 18に従来技術における第二の無線局の受信部の構成を示す。図 18において、 111— 1一 111— 3は受信アンテナ、 112— 1— 112— 3は無線部、 113はチャネル推 定回路、 114は受信信号管理回路、 115は伝達関数行列管理回路、 116は行列演 算回路 # 2、 117は行列演算回路 # 3、 118は硬判定回路、 119はデータ合成回路 を示す。
[0021] 第 1の受信アンテナ 111—1から第 3の受信アンテナ 111—3は、それぞれ個別に受 信信号を受信する。無線部 112— 1一 112— 3を経由して、受信した信号はチャネル 推定回路 113に入力される。送信側で付与した所定のプリアンブル信号の受信状況 から、チャネル推定回路 113にて各送信アンテナと受信アンテナ間の伝達関数をこ こで取得する。取得された各伝達関数の情報 h,は伝達関数行列管理回路 115にて 伝達関数行列 Hとして管理される。
ここで、この伝達関数 Hは、実際の伝送路の伝達関数にュニタリ変換行列を乗算し たものが得られることになる。
[0022] 行列演算回路 # 2 (116)では、伝達関数行列管理回路 115で管理された伝達関 数行列 Hをもとに、 HH及び ΗΗ Χ Η (=Λ)を演算により求める。ここで、行列 Λの各対 角成分は、(1, 1)成分が λ 、(2,2)成分が λ 、(3,3)成分が λ であるとする。
1 2 3
なお、 HH X Hで固有値え - λ を求める他に、近似値として、前記伝達関数を用
1 3
いて、 eh e2からえを求めてもかまわない。
この結果は、行列演算回路 # 3 (117)に入力される。一方、プリアンブル信号に後 続するデータ信号は、 1シンボル分ずつ受信信号管理回路 114に入力される。受信 信号管理回路 114では、各アンテナの受信信号 (r , r , r )T(Tは行ベクトル力 列
1 2 3
ベクトルへの変換を示す)を成分とした受信信号ベクトル Rxとしてー且管理される。こ の受信信号ベクトルは、行列演算回路 # 3 (117)にて行列 HHとの積をとる。この様に して得られたベクトルに対して、第 1成分に対しては λ 1で除算を、第 2成分に対して は λ 2で除算を、第 3成分に対しては λ 3で除算を行い、送信信号ベクトルの第 1次 推定を行う。この結果は、硬判定回路 118に入力され、その結果がデータ合成回路 1 19に入力される。全シンボルに渡り復調されたデータは、各系統毎の信号が適宜合 成されてもとのデータを再生し、出力される。
[0023] 図 19に、従来技術における第一の無線局の送信フローを示す。データが入力され ると (ステップ S 100)、送信局では N系統のデータ系列に分割され (ステップ S101)、 これらの信号にはそれぞれプリアンブル信号が付与され (ステップ S102)、これに各 系列毎に個別に変調処理を行う (ステップ S103)。変調された信号には、ュ-タリ変 換が実施され (ステップ S 104)、ュニタリ変換後の信号が無線部にて無線周波数に 変換され信号が送信される (ステップ S 105)。
[0024] 図 20に、従来技術における第二の無線局の受信フローを示す。受信局では無線 パケットを受信すると (ステップ S 110)、プリアンブルを検出し (ステップ S111)、チヤ ネル推定を実施する (ステップ S112)。ここでは、各送信アンテナおよび受信アンテ ナ間の伝達関数を全て取得する。この伝達関数を各成分とする伝達関数行列 Hに 対し、エルミート共役な行列 HH、及びこれらの積である行列 ΗΗ Χ Η ( = Λ)を演算に より求める(ステップ S 113)。
[0025] 一方、プリアンブル信号に後続して受信される信号は、 1シンボル毎に各受信アン テナでの受信信号 rを成分としてもつ受信信号ベクトル Rxとして管理される (ステップ S 114)。これに対し、行列演算 HH X Rxを実施し、更に得られたベクトルの各成分を 行列 Λの対角成分 λ 1— λ 3で除算する (ステップ S115)。この結果をもって、硬判 定処理を行 ヽ (ステップ S116)、該当するシンボルの各送信アンテナから送信された 信号推定を確定させる (ステップ S117)。更に受信データが継続する場合には処理 ステップ S114に戻り、処理ステップ S 114— S 117を繰り返す。受信データが終わつ た場合 (ステップ S118)、一連の各系統の受信データを再構成し、送信側でのデー タを再現してデータを出力する (ステップ S 119)。
特干文献 1 : S. Kurosaki, Y. Asai, T. Sugiyama and M. Umehira, A
SDM-COFDM Scheme Employing a Simple Feed-Forward Inter-Channel
Interference Cancellerfor MIMO Based Broadband Wireless LANs", IEICE TRANS. COMMUN., V0I.E86 B. No.l, January, 2003
非特許文献 2:宫下他「MIMOチャネルにおける固有ビーム空間分割多重 (E— SD M)方式」,信学技法, RCS2002-53, 2002年 5月
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0026] この E— SDM法の最大の問題点は、送信局側でチャネル推定を正確に実施し、 UH
X HH X H X Uの非対角成分が綺麗にゼロとなる状況で運用しなければならな 、点で ある。
例えば、連続的に無線パケットを送信しつづける場合を考える。送信局は、最初に 何らかの方法によりチャネル推定を行 ヽ伝達関数行列 Hを取得し、これをもとにュ- タリ行列 Uを求める。連続して送信する無線パケットには、当然ながら同一のュ-タリ 変換が施されること〖こなる。
[0027] しかし、時間と共に伝達関数行列 Hは変動するため、変動後の伝達関数行列 H'に 対しては、 UH X H' H X H' X Uの非対角成分は綺麗にゼロとはならない。この非対角 成分は、チャネル間干渉となるため、干渉信号の影響で急激に特性が劣化する。し たがって、算出したュ-タリ変換 Uが非常に高い精度でなければ良好な特性が望め ないことになる。
[0028] また、この Ε— SDM方式では、各信号系列の信号はそれぞれ固有値え 一え (行
1 Ν 列 HH X Hは Ν行 Ν列の正方行列と仮定する)に対応した特性をもっために、それぞ れ個別の変調方式を採用したり、送信側にて注水定理と呼ばれる手法で送信電力 の配分を調整したりするのが一般的である。言い換えれば、信号系列は個別に独立 に扱うことで各系列の特性を効率的に引き出すことが前提となる。しかし、この様な制 御は複雑であり、また送受信局間でのネゴシエーションが必要となったりする。これら を回避する簡易な方法としては、全ての信号系列の信号を同一の出力で、且つ単一 の変調モードを用いて送信することが考えられる。しかし、この場合には各固有値の 値のばらつきが大きぐ特に最小固有値となる信号系列の特性は大幅に劣化する。
[0029] 以上は E— SDMを想定した場合である力 ここで OFDM変調方式と組み合わせた MIMO技術の一般的な特性について考えてみる。 OFDM変調を用いる場合、複数 のサブキャリア毎にこの信号系列毎の品質のばらつきが発生する。図 21及び図 22 に OFDM変調及び MIMO技術を併用した場合の各信号系列の特性の周波数依存 性を示す。各図において、横軸は周波数を表し、実効的にはサブキャリアの番号を 意味する。縦軸は伝送品質に相当するものとして BER (Bit Error Rate)を表している
[0030] 例えば E— SDMを用いた場合や、周波数間の相関が強い場合、図 21の様に各信 号系列の特性には大きな差が存在する。例えば、全周波数領域で BERが高い信号 系列 # 1の中に符号誤りがある部分的なパケット誤り率(PER: Packet Error Rate)が 20%であり、逆に全周波数領域で BERが低い信号系列 # 2の中に符号誤りがある部 分的な PERが 0.0001%であったとする。 MIMOの重畳数が 2である場合、システム 全体の平均 PERは各信号系列の PERを足して 2で割ったものとなり、ほぼ 10%となる 。つまり、品質の悪い信号系列が存在すると、システム全体としての PERはこれに足 を引っ張られることになる。
[0031] 一方、図 22に示す様に、信号系列 # 1と信号系列 # 2の特性がある周波数で逆転 し、それぞれが特定の周波数領域で大幅に劣化している場合を考える。この様に、 特性が劣化した周波数領域では、誤り訂正前の誤りがバースト的であるため、誤り訂 正処理を行っても訂正不可能となる確率が高い。つまり、全体から見れば部分的で あつたとしても、周波数軸上である程度の区間に渡り連続的に品質が劣化した状態 が続くと、誤り訂正の効果が薄れ、各信号系列の部分的な PER特性の劣化として現 れること〖こなる。
以上説明した様に、 OFDM変調と MIMO技術を併用する場合、特に E-SDM方 式を用いる場合には、システム全体の PER特性を向上させるためには、特定の信号 系列の符号誤りがバースト的とならず、ランダム化されていることが好ましい。
[0032] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、 MIMO技術を用いた無線通 信を行う際に、 E— SDM方法の良好な特性を実現しながらも、精度の低いュ-タリ変 換行列を用いた場合でも、安定した特性を実現可能な無線通信装置、無線通信方 法及び無線通信システムを簡易に提供することを目的とする。
また、 OFDM変調と MIMO技術を併用する無線通信を行う際に、各信号系列の 符号誤りをランダム化し、システム全体の PER特性を効率的に改善可能な、無線通 信方法、及び無線通信装置を簡易に提供することにある。また、このランダム化のた めの工夫は、通信を行うためのエアインタフェース規定を変えるものではなぐ送信端 末側の変更のみで対応できるものであれば、製品の差別ィ匕を行う上で、なお好まし
い。
課題を解決するための手段
[0033] 上記の問題を解決するために、本発明は、第一の無線局と第二の無線局とにより 構成された無線通信システムにおいて使用される無線通信装置であって、
前記第一の無線局は N (N は 1より大きい整数)本以上の第一のアンテナ群を備
tx tx
え、
送信すべきユーザデータを N系統 (N ≥N> 1、 Nは整数)に分割する分割手段と、
tx
前記 N系統に分割されたユーザデータに N種類の既知のパターンの信号を付与し て得られる N系統の信号系列により構成される無線データパケットを構築する手段と、
N系統の前記既知のパターンを含む信号系列にそれぞれ個別の係数を乗算する 処理を、係数の異なる組み合わせで複数回行い、各係数の組み合わせ毎に係数が 乗算された前記 N系統の信号系列を合成して該 N系統の信号系列力 N 系統の信
tx
号系列に変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された信号を前記第一のアンテナ群から送信する送信手 段と
を有することを特徴とする無線通信装置を提供する。
[0034] 好適な態様としては、
前記第二の無線局は M (Mは 1より大き 、整数)本の第二のアンテナ群を備え、 前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアン テナとの間の伝達関数 hまたはその近似値を取得する手段と、
J,i
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し、該行列 Ηのエルミート
J,i
共役な行列 HHを算出する手段と、
前記二つの行列の行列積即ち N行 N列の行列 HH X Hを算出する手段と、 前記行列 HH X Hを対角化するュ-タリ行列 Uを算出する手段と、を更に有し、 前記変換手段は、
N系統の前記信号系列の第 k(kは 1以上の整数)シンボルの情報をそれぞれ {x
1
(k),x (10, · · · , x (k)}とした場合、第 kシンボルの各情報を要素とする列ベクトル x(k)と
2 N
前記行列 Uの積により与えられる列ベクトル、即ち U X x(k)を算出する手段を含み、
前記送信手段は、
前記列ベクトル U X x(k)の第 i行成分 [U X
ナより送信する手段を含む。
この場合、 MIMO技術の適用において、簡易な ZF法等を利用しながらも、受信局 側における受信ダイバーシチ利得を最大限に引き出すための送信側技術の簡易な 実現手段を提供可能である。
[0035] 好適例として、
前記無線データパケットの送信に先立ち、制御情報を収容した第一の無線制御パ ケットを送信する手段と、
前記第一の無線制御パケットに対する応答である第二の無線制御パケットを N本以 上のアンテナを用いて受信する手段と、を更に有し、
前記取得手段は、前記第二の無線制御パケットに付与された複数系統の既知のパ ターンの信号を用いて、各アンテナでの受信信号から第二の無線局が送信に用いた 第 j (l≤j≤M、; jは整数)アンテナと第一の無線局が受信に用いた第 i (l≤ N、 iは 整数)アンテナ間の伝達関数 hを算出する手段を含む
J,i
ようにでさる。
この第一の無線局側の機能は、送信側にぉ 、て伝達関数行列を取得するための 簡易な実現方法を提供するものである。
[0036] 別の好適例として、前記無線データパケットの送信に先立ち、第一の無線制御パケ ットとして N系統の既知のパターンを含む信号系列を N本の前記第一のアンテナ群を 用いて送信する手段と、
前記第一の無線制御パケットに対する応答である第二の無線制御パケットを受信 する手段と、
前記第二の無線制御パケットに収容された前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテ ナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアンテナとの間の伝達関数 h に関する情報を
J,i
取得する手段と、
を含むことようにできる。
[0037] 前記無線局間の通信において K本のサブキャリア(Kは 1より大きい整数)を用いた
直交周波数分割多重(OFDM : Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方 式を用いても良い。
この場合の好適例として、前記第二の無線局より、信号系列が複数重畳されていな い即ち 1系統のみの信号系列で構成される制御情報を収容した無線制御パケットお よび/またはユーザデータを収容した無線データパケットを受信した際に、各受信ァ ンテナで受信された既知のパターンの信号の受信状態力 第 ks (l≤ks≤K、 は 整数)サブキャリアの第二の無線局が送信に用いた第 j (l≤j≤M、; jは整数)アンテナ と第一の無線局が受信に用いた第 i (l≤ N、 iは整数)アンテナ間の伝達関数 h [ks]
, を取得する伝達関数取得手段を含む。
また別の好適例として、前記第二の無線局の第 jアンテナで送信されな力つた第 ks ' (l≤ks '≤K、 ks 'は整数)サブキャリアにおける、前記第二の無線局の第 jアンテナと 前記第一の無線局の第 iアンテナ間の伝達関数 h [ks']を、前記第二の無線局の第 jァ
,
ンテナで送信された ks≠ks,及び ks≠ks,(l≤ks≤K、 l≤ks≤K、 ks、 ksは整数) なる第 ksサブキャリア及び第 ksサブキャリアに対する前記伝達関数 h [ksl]及び h [ks2] の内挿または外揷値により h [ks']を取得する伝達関数取得手段を含む。
,
これは、送信側において伝達関数行列を取得するための簡易な実現方法を提供 するものである。なお、この手段を用いる場合には、既存の無線 LANシステムに MIMO技術を適用する拡張を行う場合であっても、既存のフレームフォーマットを変 更することも、特殊な制御メッセージを新規に追加する必要もなぐノックワードコン パチビリティを維持しながら実現可能であるという効果も同時に得ることが可能である なお、これらの好適例において、前記第一の無線局側に前記伝達関数取得手段を 有することを、前記第二の無線局側に通知する手段を有しても良 、。
本発明はまた、上記無線通信装置からの無線信号を前記第二の無線局において 受信するための無線通信装置であって、
前記第二の無線局は M (Mは 1以上の整数)本の第二のアンテナ群を備え、 前記第二のアンテナ群を用いて個別に無線信号を受信する手段と、
受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として、受信した各信号
系列の信号を分離して復調する復調手段と、
復調した全ての信号系列を合成し、ユーザデータとして出力する出力手段と を備えることを特徴とする無線通信装置も提供する。
なお、本発明は、上記送信側の無線通信装置と、上述の受信側の無線通信装置と を有する無線通信システムも提供する。
[0039] 典型例として、前記復調手段は、
受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として、前記第一のアン テナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアンテナとの間の伝達 関数 hを取得する手段と、
,
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し所定の演算を行い、 Ν
,
系統の送信信号の信号点に対応するベクトルを求める演算手段と、を含み、
前記出力手段は、
前記演算で得られたベクトルの各要素で与えられる N系統の送信信号を、受信した 全てのシンボルに対して合成し、前記ユーザデータとして出力する手段を含む。
[0040] 前記演算手段は、
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し、該行列 Ηのエルミート
,
共役な行列 HHを算出する手段と、
前記二つの行列の行列積即ち N行 N列の行列 HH X Hを算出する手段と、 前記行列 HH X Hの逆行列即ち(HH X H) 1を算出する手段と、
さらにこれらを用いて行列 (HH X H) 1 X HHを算出する手段と、
前記第二のアンテナ群の第 mアンテナで実際に受信された第 kシンボルの受信信 号を r (k)とした場合、 (r (k),r (k), - - - ,r (k))T(Tは行ベクトル力 列ベクトルへの変換 を示す)で表される受信信号べ外ル Rx(k)に対し、 (HH X H) 1 X HH X Rx(k)を演算す る手段と、
を含むようにしても良い。
[0041] また、前記演算手段は、
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする N行 N列の行列 Hに対し、該行列 Ηの逆行列 Η—1
,
を算出する手段と、
前記第二のアンテナ群の第 mアンテナで実際に受信された第 kシンボルの受信信 号を r (k)とした場合、 (r (k),r (k), - - - ,r (k))T(Tは行ベクトル力 列ベクトルへの変換 m 1 2
を示す)で表される受信信号べ外ル Rx(k)に対し、 H— 1 X Rx(k)を演算する手段と、 を含むようにしても良い。
この第二の無線局の機能は、受信局側において ZF法を実施する際に、行列が正 方行列であることを利用して簡易に実施するための手段を提供するためのものである
[0042] また、前記演算手段は、
前記第一のアンテナ群の第 nアンテナより送信された第 kシンボルの送信信号を t (k)とし、さらに前記第二のアンテナ群の第 mアンテナで実際に受信された第 kシンポ ルの受信信号を r (k)と表記した場合、 (t (k),t (10, · · · , t (k))T(Tは行べ外ルカも列 m 1 2 N
ベクトルへの変換を示す)で表される送信信号ベクトル Tx(k)、 (r (k),r (k), - - - ,r (k))T
1 2
で表される受信信号ベクトル Rx(k)、及び行列演算子 Fに対し、ベクトル F X Rx(k)— Tx(k)及び該ベクトルのエルミート共役のベクトル(F X Rx(k)-Tx(k)) Hのベクトル積 (F X Rx(k)-Tx(k)) H X (F X Rx(k)-Tx(k))の複数シンボルに渡る期待値を最小化するこ とが期待されるように行列演算子 Fを選択する手段と、
各シンボルに対して F X Rx(k)を演算する手段と、
を含むようにしても良い。
この第二の無線局側の機能は、受信局側にお!、て ZF法の代わりに MMSE法を用 いるための手段を提供するためのものである。
前記行列演算子 Fを MMSE (Minimum Mean Square Error)方式で求めても良い。
[0043] 上記無線通信装置の好適例として、
前記第二の無線局側に、
前記第一の無線局からの第一の無線制御パケットを受信した際に、
該第一の無線制御パケットに対する応答として、複数系統の既知のパターンを含む 第二の無線制御パケットを送信する手段を有する。
[0044] また別の好適例として、
前記第二の無線局側に、
前記第一の無線局からの N系統の既知のパターンを含む第一の無線制御パケット を受信した際に、
前記 N系統の既知のパターンの信号を用いて、前記伝達関数 hを算出する手段と
J,i 該第一の無線制御パケットに対する応答として、前記伝達関数に関する情報を収 容した第二の無線制御パケットを送信する手段と、
を有する。
[0045] 前記無線局間の通信にお 、て K本のサブキャリア(Kは 1より大き 、整数)を用いた 直交周波数分割多重(OFDM : Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方 式を用いても良い。
この場合、前記第二の無線局側に、
信号系列を複数重畳せずに前記第一の無線局に対して前記無線制御パケットまた は無線データパケットを送信する際に、第 ksサブキャリアの信号を、サブキャリア番号 ksに対応した第二のアンテナ群の中の所定の一つのアンテナを用いて送信する送 信手段を有しても良い。
ここで、前記第二の無線局側に前記送信手段を有することを、前記第一の無線局 側に通知する手段を有するようにしても良 、。
[0046] 本発明はまた、第一の無線局と第二の無線局との間で通信を行う無線通信方法に おいて、
前記第一の無線局は N (N は 1より大きい整数)本以上の第一のアンテナ群を備
tx tx
え、
送信すべきユーザデータを N系統に分割する分割ステップと、
前記 N系統に分割されたユーザデータに N種類の既知のパターンの信号を付与し て得られる N系統の信号系列により構成される無線データパケットを構築するステツ プと、
N系統の前記既知のパターンを含む信号系列にそれぞれ個別の係数を乗算する 処理を、係数の異なる組み合わせで複数回行い、各係数の組み合わせ毎に係数が 乗算された前記 N系統の信号系列を合成して該 N系統の信号系列力 N 系統の信
tx
号系列に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにおいて変換された信号を前記第一のアンテナ群力 送信する 送信ステップと
を有することを特徴とする無線通信方法を提供する。
[0047] 典型例として、前記第二の無線局は M (Mは 1より大きい整数)本の第二のアンテナ 群を備え、
前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアン テナとの間の伝達関数 hまたはその近似値を取得するステップと、
,
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し、該行列 Ηのエルミート ,
共役な行列 HHを算出するステップと、
前記二つの行列の行列積即ち N行 N列の行列 HH X Hを算出するステップと、 前記行列 HH X Hを対角化するュ-タリ行列 Uを算出するステップと、を更に有し、 前記変換ステップは、
N系統の前記信号系列の第 k(kは 1以上の整数)シンボルの情報をそれぞれ {x
(k),x (10, · · · , x (k)}とした場合、第 kシンボルの各情報を要素とする列ベクトル x(k)と 前記行列 Uの積により与えられる列ベクトル、即ち U X x(k)を算出するステップを含み
前記送信ステップは、
前記列ベクトル U X x(k)の第 i行成分 [U X x(k)]を第一のアンテナ群の中の第 iアンテ ナより送信するステップを含む。
[0048] 好適例として、前記無線データパケットの送信に先立ち、制御情報を収容した第一 の無線制御パケットを送信するステップと、
前記第一の無線制御パケットに対する応答である第二の無線制御パケットを N本以 上のアンテナを用いて受信するステップと、を更に有し、
前記取得ステップは、前記第二の無線制御パケットに付与された複数系統の既知 のパターンの信号を用いて、各アンテナでの受信信号から第二の無線局が送信に 用いた第 j (l≤j≤M、; jは整数)アンテナと第一の無線局が受信に用いた第 i (l≤i≤ N、 iは整数)アンテナ間の伝達関数 hを算出するステップを含む。
[0049] 別の好適例として、前記無線データパケットの送信に先立ち、第一の無線制御パケ ットとして N系統の既知のパターンを含む信号系列を N本の前記第一のアンテナ群を 用いて送信するステップと、
前記第一の無線制御パケットに対する応答である第二の無線制御パケットを受信 するステップと、
前記第二の無線制御パケットに収容された前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテ ナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアンテナとの間の伝達関数 h に関する情報を ,
取得するステップと、
を含む。
[0050] 前記無線局間の通信にお 、て K本のサブキャリア(Kは 1より大き 、整数)を用いた 直交周波数分割多重(OFDM : Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方 式を用いても良い。
この場合の好適例として、前記第二の無線局より、信号系列が複数重畳されていな い即ち 1系統のみの信号系列で構成される制御情報を収容した無線制御パケットお よび/またはユーザデータを収容した無線データパケットを受信した際に、各受信ァ ンテナで受信された既知のパターンの信号の受信状態力 第 ks (l≤ks≤K、 は 整数)サブキャリアの第二の無線局が送信に用いた第 j (l≤j≤M、; jは整数)アンテナ と第一の無線局が受信に用いた第 i (l≤ N、 iは整数)アンテナ間の伝達関数 h [ks] , を取得する伝達関数取得ステップを含む。
また別の好適例として、前記第二の無線局の第 jアンテナで送信されな力つた第 ks ' (l≤ks '≤K、 ks 'は整数)サブキャリアにおける、前記第二の無線局の第 jアンテナと 前記第一の無線局の第 iアンテナ間の伝達関数 h [ks']を、前記第二の無線局の第 jァ ,
ンテナで送信された ks≠ks,及び ks≠ks,(l≤ks≤K、 l≤ks≤K、 ks、 ksは整数) なる第 ksサブキャリア及び第 ksサブキャリアに対する前記伝達関数 h [ksl]及び h [ks2] の内挿または外揷値により h [ks']を取得する伝達関数取得ステップを含む。
,
これらの好適例にぉ 、て、前記第一の無線局側で前記伝達関数取得ステップを実 行することを、前記第二の無線局側に通知するステップを有しても良 、。
[0051] 本発明はまた、上記無線通信方法で送信された無線信号を前記第二の無線局に
ぉ 、て受信するための無線通信方法であって、
前記第二の無線局は M (Mは 1以上の整数)本の第二のアンテナ群を備え、 前記第二のアンテナ群を用いて個別に無線信号を受信するステップと、 受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として、受信した各信号 系列の信号を分離して復調する復調ステップと、
復調した全ての信号系列を合成し、ユーザデータとして出力する出力ステップと を備えることを特徴とする無線通信方法を提供する。
[0052] 典型例として、前記復調ステップは、
受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として、前記第一のアン テナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアンテナとの間の伝達 関数 hを取得するステップと、
,
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し所定の演算を行い、 Ν
,
系統の送信信号の信号点に対応するベクトルを求める演算ステップと、を含み、 前記出力ステップは、
前記演算で得られたベクトルの各要素で与えられる N系統の送信信号を、受信した 全てのシンボルに対して合成し、前記ユーザデータとして出力するステップを含む。
[0053] 好適例として、前記演算ステップは、
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し、該行列 Ηのエルミート
,
共役な行列 HHを算出するステップと、
前記二つの行列の行列積即ち N行 N列の行列 HH X Hを算出するステップと、 前記行列 HH X Hの逆行列即ち(HH X H) 1を算出するステップと、
さらにこれらを用いて行列 (HH X H) 1 X HHを算出するステップと、
前記第二のアンテナ群の第 mアンテナで実際に受信された第 kシンボルの受信信 号を r (k)とした場合、 (r (k),r (k), - - - ,r (k))T(Tは行ベクトル力 列ベクトルへの変換 を示す)で表される受信信号べ外ル Rx(k)に対し、 (HH X H) 1 X HH X Rx(k)を演算す るステップと、
を含む。
[0054] 別の好適例として、前記演算ステップは、
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする N行 N列の行列 Hに対し、該行列 Hの逆行列 H—1
J,i
を算出するステップと、
前記第二のアンテナ群の第 mアンテナで実際に受信された第 kシンボルの受信信 号を r (k)とした場合、 (r (k),r (k), - - - ,r (k))T(Tは行ベクトル力 列ベクトルへの変換 m 1 2
を示す)で表される受信信号ベクトル Rx(k)に対し、 H 1 X Rx(k)を演算するステップと、 を含む。
[0055] また別の好適例として、 前記演算ステップは、前記第一のアンテナ群の第 nアンテ ナより送信された第 kシンボルの送信信号を t (k)とし、さらに前記第二のアンテナ群の 第 mアンテナで実際に受信された第 kシンボルの受信信号を r (k)と表記した場合、 (t
m
(k),t (k), - - - ,t (k))T(Tは行ベクトル力 列ベクトルへの変換を示す)で表される送信
1 2 N
信号ベクトル Tx(k)、 (r (k),r (k), - - - ,r (k))Tで表される受信信号ベクトル Rx(k)、及び
1 2 M
行列演算子 Fに対し、ベクトル!7 X Rx(k)— Tx(k)及び該ベクトルのエルミート共役のベ タトル(F X Rx(k)-Tx(k)) Hのベクトル積 (F X Rx(k)-Tx(k)) H X (F X Rx(k)— Tx(k))の複 数シンボルに渡る期待値を最小化することが期待されるように行列演算子 Fを選択す るステップと、
各シンボルに対して F X Rx(k)を演算するステップと、
を含む。
この場合、前記行列演算子 Fを MMSE (Minimum Mean Square Error)方式で求めて も良い。
[0056] また別の好適例として、前記第二の無線局側で、
前記第一の無線局からの N系統の既知のパターンを含む第一の無線制御パケット を受信した際に、
前記 N系統の既知のパターンの信号を用いて、前記伝達関数 hを算出するステツ
J,i
プと、
該第一の無線制御パケットに対する応答として、前記伝達関数に関する情報を収 容した第二の無線制御パケットを送信するステップと、
を実行する
[0057] 別の典型例として、前記第二の無線局側で、
前記第一の無線局からの第一の無線制御パケットを受信した際に、 該第一の無線制御パケットに対する応答として、複数系統の既知のパターンを含む 第二の無線制御パケットを送信するステップを実行する。
[0058] また別の典型例として、前記無線局間の通信において K本のサブキャリア (Kは 1よ り大き 、整数)を用いた直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式 用 ヽる。
この場合、前記第二の無線局側で、
信号系列を複数重畳せずに前記第一の無線局に対して前記無線制御パケットまた は無線データパケットを送信する際に、第 ksサブキャリアの信号を、サブキャリア番号 ksに対応した第二のアンテナ群の中の所定の一つのアンテナを用いて送信する送 信ステップを実行しても良!、。
ここで、前記第二の無線局側で前記送信ステップを実行することを、前記第一の無 線局側に通知するステップを有しても良 、。
[0059] 本発明の無線通信装置の別の典型的態様としては、
複数のサブキャリアを用いた直交周波数分割多重 (OFDM)変調方式を用いて無線 通信を行う無線通信システムで使用される無線通信装置であり、
前記分割手段は、各サブキャリア毎に個別に、送信すべきユーザデータを N系統 に分割し、
前記変換手段は、あるサブキャリアにおける N系統の前記信号系列の第 n (nは 1 以上の整数)シンボルの情報がそれぞれ {x (n ),x (n ), · · · ,χ (n )}であり且つこれら
1 s 2 s N s
を各成分として持つ N行の列ベクトル力 x(n )であった場合、 N行 N列の単位行列また s
は該単位行列の列を適宜入れ替えて得られる N (N > 1 :Nは整数)種類の回転行
R R R
列群を {R } (N ≥k≥l:kは整数)と表記した際に、各サブキャリアに対応した所定の k R
kに対する Rを用い、前記ベクトル x(n )を R X x(n )に変換する手段を少なくとも含み k s k s 前記送信手段は、各サブキャリアにおける該変換された列ベクトルの第减分を前 記第 1のアンテナ群の第 iアンテナより送信するようにする。
[0060] 好適例として、前記変換手段は、各サブキャリアにおける前記第 1のアンテナ群の
第 iアンテナより送信される第 nシンボルの信号を [R X x(n )]となる様に変換するよ s k s 1
うにする。
このような構成により、 MIMO技術を用いる際に、サブキャリア毎に各信号系列を 送信する際に用いるアンテナを入れ替え、その結果として信号系列毎の誤りを平均 化およびランダム化し、誤り訂正における符号化利得を向上させる。従来方式とは、 各サブキャリアに対応した所定の kに対し、そのサブキャリアにおいて前記第 1のアン テナ群の第 iアンテナより送信される第 nシンボルの信号を、回転行列 Rを使用して [
s k
R Χ χ(η )]となる様に変換する点、各サブキャリアにおいて該変換された信号 [R Χ χ k s i k
(n )]を前記第 1のアンテナ群の第 iアンテナより送信する点で異なっている。
s 1
これにより、 MIMO技術を用いた高能率な無線通信を行う際に、重畳する複数の 信号系列毎の受信特性を均一化し、伝送路上における符号誤りをランダム化するこ とが可能となる。特に、 E-SDM方式と組み合わせた場合には、 MIMO技術の持つ 性質として、重畳する信号系列間に受信特性の大きなばらつきが発生するという傾 向があつたが、本発明により信号系列毎の受信特性を平均化し、エラーをランダム化 することにより、その結果、誤り訂正の利得を向上させ、全体としてのパケット誤り率特 性を改善する効果を得ることができる。
別の好適例として、前記第二の無線局は M (Mは 1以上の整数)本の第二のアンテ ナ群を備え、
各サブキャリア毎に個別に、
前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアン テナとの間の伝達関数 hまたはその近似値を取得する手段と、
,
前記伝達関数 hを第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し、該行列 Hのェルミ
,
ート共役な行列 HHを算出する手段と、
前記二つの行列の行列積即ち N行 N列の正方行列 HH X Hを算出する手段と、 前記行列 HH X Hを対角化する N行 N列のュ-タリー行列 Uを算出する手段と、 を更に備え、
前記変換手段は、各サブキャリアにおける前記第 1のアンテナ群の第 iアンテナより 送信される第 nシンボルの信号を [U X R X x(n )]となる様に変換するようにする。
s k s 1
これにより、 MIMO技術に組み合わせて E— SDM方式を用いる際に、重畳する信 号系列の特性に大きな差が生じるのに対し、この特性を均一化し、その結果として信 号系列毎の誤りを平均化およびランダム化し、誤り訂正における符号化利得を向上 させるための簡易な実現方法を提供できる。
別の好適例として、前記第二の無線局は M(Mは 1以上の整数)本の第二のアンテ ナ群を備え、
N >Nであり、
各サブキャリア毎に個別に、
前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアン テナとの間の伝達関数 h またはその近似値を取得する手段と、
,
前記伝達関数 h を第 (j,i)成分とする M行 N 列の行列 Hに対し、該行列 Hのェルミ ート共役な行列 HHを算出する手段と、
前記二つの行列の行列積即ち N 行 N 列の正方行列 HHXHを算出する手段と、 前記行列 HHXHを対角化する N 行 N 列のュ-タリー行列 Uを算出する手段と、 を更に備え、
前記変換手段は、 N 行 N列の行列で且つ N≥j≥lなる整数 jに対し第 (j,j)成分の みが 1で他の成分が 0である行列を Tと表記した際に、各サブキャリアにおける前記第 1のアンテナ群の第 iアンテナ (N ≥i≥l:iは整数)より送信される第 nシンボルの信 号を [U X T X R X x(n )]となる様に変換するようにする。
このような構成により、各サブキャリアに対応した所定の kに対し前記第 1のアンテナ 群の第 i(N ≥i≥l:iは整数)アンテナより送信される第 nシンボルの信号を、伝達関 数行列 Hの HH X Hを対角化するュ-タリー行列 Uと、アンテナを入れ替える回転行 列 Rと、アンテナ数を拡張する行列 Tとにより、 [UXTXR Xx(n)]となる様に変換し
、該変換された信号 [UXTXR Xx(n)]を前記第 1のアンテナ群の第アンテナより 送信する。
これにより、重畳する信号系列数よりも送信アンテナの本数を増やし、送信アンテナ 数分だけ存在する MIMOのチャネルの中力 特性の悪!、チャネルを切り捨て、特性 の良いチャネルのみを用いて上記の処理を実施するための簡易な実現方法を提供
できる。
[0063] 典型例として、前記回転行列群 {R }は、 N行 N列の単位行列の列を適宜入れ替え
k
て得られる行列の中力 選び出したひとつの行列を Rとし、 N>j≥lなる整数 jに対 し第 (j+ 1 J)成分及び第( 1 ,Ν)成分のみが 1で且つ他の成分力^である Ν行 Ν列の行 列を Ρとし、更に N≥k≥2なる整数 kに対し R =Pk_1 XRとして与えられる合計 N個の
k 1
行列により構成され、
ユーザ情報が収容されるサブキャリアに対して用いる前記回転行列 Rを、前記回
k
転行列群 {R }の各行列を適当に並べ替えたものを Nサブキャリア周期で順番に対
k
応させる。
これにより、上述の回転行列として用いる行列を生成するための簡易な実現方法を 提供できる。
[0064] 別の典型例として、前記回転行列群 {R }は、 N行 N列の単位行列の列を適宜入れ
k
替えて得られる行列の中力 選び出したひとつの行列を Rとし、 N>j≥lなる整数 j に対し第 (j+ 1 J)成分及び第( 1 ,Ν)成分のみが 1で且つ他の成分が 0である Ν行 Ν列 の行列を Ρとし、更に N≥k≥2なる整数 kに対し R =Pk_1 XRとして与えられる合計 N
k 1
個の行列により構成され、
OFDM変調された信号をサブキャリア上にマッピングする際に、前記 N系統に分割 された各信号系列のビット列が Nサブキャリア周期 (Nは 1より大きな整数)で隣接す
U il
る様にインタリーブ処理を施す場合には、ユーザ情報が収容されるサブキャリアに対 して用いる前記回転行列 Rを、前記回転行列群 {R }の各行列をそれぞれ N個ずつ
k k U 用意したものを適当に並べ替えて N X Nサブキャリア周期で順番に対応させる。 これによつてもまた、上述の回転行列として用いる行列を生成するための簡易な実 現方法を提供できる。
[0065] 本発明はまた、上述の無線通信装置を前記第一の無線局に有する無線通信シス テムであって、
前記第二の無線局は M (Mは 1以上の整数)本の第二のアンテナ群を備え、 前記第二のアンテナ群を用いて個別に無線信号を受信する手段と、
受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として、前記の各信号系
列の信号を分離して復調する手段と、
復調した全ての信号系列を合成し、ユーザデータとして出力する手段と を備えることを特徴とする無線通信システムを提供する。
[0066] 本発明の無線通信方法の別の典型的態様としては、
複数のサブキャリアを用いた直交周波数分割多重 (OFDM)変調方式を用いて無 線通信を行う無線通信システムで使用される無線通信方法であり、
前記分割ステップでは、各サブキャリア毎に個別に、送信すべきユーザデータを N 系統に分割し、
前記変換ステップでは、あるサブキャリアにおける N系統の前記信号系列の第 n (n s は 1以上の整数)シンボルの情報がそれぞれ {χ (η ),χ (η ), · · · ,χ (η )}であり且つこ s 1 s 2 s N s
れらを各成分として持つ N行の列ベクトル力x(n )であった場合、 N行 N列の単位行 s
列または該単位行列の列を適宜入れ替えて得られる N (N > 1 :Nは整数)種類の
R R R
回転行列群を {R } (N ≥k≥l:kは整数)と表記した際に、各サブキャリアに対応した k R
所定の kに対する Rを用い、前記ベクトル x(n )を R X x(n )〖こ変換するステップを少 k s k s
なくとも含み、
前記送信手段は、各サブキャリアにおける該変換された列ベクトルの第减分を前 記第 1のアンテナ群の第 iアンテナより送信する。
[0067] 好適例として、前記変換ステップは、各サブキャリアにおける前記第 1のアンテナ群 の第 iアンテナより送信される第 nシンボルの信号を [R X x(n )]となる様に変換する s k s
[0068] また別の好適例として、 前記第二の無線局は M (Mは 1以上の整数)本の第二のァ ンテナ群を備え、
各サブキャリア毎に個別に、
前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアン テナとの間の伝達関数 h またはその近似値を取得するステップと、
,
前記伝達関数 h を第 (j,i)成分とする M行 N列の行列 Hに対し、該行列 Hのェルミ
,
ート共役な行列 HHを算出するステップと、
前記二つの行列の行列積即ち N行 N列の正方行列 HH X Hを算出するステップと、
前記行列 HH X Hを対角化する N行 N列のュ-タリー行列 Uを算出するステップと、 を更に備え、
前記変換ステップは、各サブキャリアにおける前記第 1のアンテナ群の第 iアンテナ より送信される第 nシンボルの信号を [U XR X x(n )]となる様に変換する。
[0069] また別の好適例として、前記第二の無線局は M (Mは 1以上の整数)本の第二のァ ンテナ群を備え、
N >Nであり、
各サブキャリア毎に個別に、
前記第一のアンテナ群の内の第 iアンテナと前記第二のアンテナ群の内の第 jアン テナとの間の伝達関数 h またはその近似値を取得するステップと、
,
前記伝達関数 h を第 (j,i)成分とする M行 N 列の行列 Hに対し、該行列 Hのェルミ ート共役な行列 HHを算出するステップと、
前記二つの行列の行列積即ち N 行 N 列の正方行列 HH X Hを算出するステップ と、
前記行列 HH X Hを対角化する N 行 N 列のュ-タリー行列 Uを算出するステップ と、
を更に備え、
前記変換ステップは、 N 行 N列の行列で且つ N≥j≥lなる整数 jに対し第 (j,j)成分 のみが 1で他の成分力^である行列を Tと表記した際に、各サブキャリアにおける前記 第 1のアンテナ群の第 iアンテナ (N ≥i≥l :iは整数)より送信される第 nシンボルの 信号を [U X T X R X x(n )]となる様に変換する。
[0070] 典型的には、前記第二の無線局は、 M (Mは 1以上の整数)本の第二のアンテナ群 を備え、
前記第二のアンテナ群を備え用いて個別に無線信号を受信するステップと、 受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として、前記の各信号系 列の信号を分離して復調するステップと、
復調した全ての信号系列を合成し、ユーザデータとして出力するステップと を実行する。
発明の効果
[0071] 以上詳細に説明したように、本発明によれば、 MIMO技術を用いた高能率な無線 通信を行う際に、伝達関数行列を精度良く推定できた場合には E— SDM法と等価な 良好な特性を実現しながらも、伝達関数行列を精度良く推定できな!ヽ場合であって も安定した特性を示すことが可能であるという効果を得ることができる。
また、 OFDM変調方式に MIMO技術を用いる際に、サブキャリア毎に各信号系列 を送信する際に用いるアンテナを入れ替えることにより、信号系列毎の誤りを平均化 およびランダム化し、誤り訂正における符号化利得を向上させることができる。
例えば MIMO技術を用いた高能率な無線通信を行う際に、重畳する複数の信号 系列毎の受信特性を均一化し、伝送路上における符号誤りをランダム化することが 可能となる。特に、 E— SDM方式と組み合わせた場合には、 MIMO技術の持つ性質 として、重畳する信号系列間に受信特性の大きなばらつきが発生するという傾向があ つたが、本発明により信号系列毎の受信特性を平均化し、エラーをランダム化するこ とにより、その結果、誤り訂正の利得を向上させ、全体としてのパケット誤り率特性を 改善する効果を得ることができる。
また、 MIMO技術に組み合わせて E— SDM方式を用いる際に、通常重畳する信号 系列の特性に大きな差が生じるのに対し、この特性を均一化し、その結果として信号 系列毎の誤りを平均化およびランダム化し、誤り訂正における符号化利得を向上さ せるための簡易な実現方法を提供できる。
また、重畳する信号系列数よりも送信アンテナの本数を増やし、送信アンテナ数分 だけ存在する MIMOのチャネルの中力 特性の悪!、チャネルを切り捨て、特性の良 V、チャネルのみを用いて上記の処理を実施することもできる。
図面の簡単な説明
[0072] [図 1]本発明の第 1実施形態に係る無線通信システムおける第二の無線局の受信部 の構成例を示すブロック図。
[図 2]同実施形態に係る無線通信システムおける第一及び第二の無線局の送信部の 構成例を示すブロック図。
[図 3]同実施形態に係る無線通信システムおける第一及び第二の無線局の送信部の
構成例を示すブロック図
[図 4]同実施形態に係る無線通信システムおける第二の無線局の受信処理の内容を 示すフローチャート。
[図 5]同実施形態に係る無線通信方法における第一の無線局でのチャネル推定処 理の内容を示すフローチャート。
[図 6]同実施形態に係る無線通信方法における第二の無線局での無線制御パケット 受信時の処理内容を示すフローチャート。
[図 7]同実施形態に係る無線通信方法における第一の無線局でのチャネル推定処 理の内容を示すフローチャート。
[図 8]同実施形態に係る無線通信方法における第二の無線局での無線制御パケット 受信時の処理内容を示すフローチャート。
[図 9]同実施形態に係る無線通信システムにおける無線局の送受信部の構成例を示 すブロック図。
圆 10]本発明の第 2実施形態に係る第一の無線局の送信部の構成例を示す図。 圆 11]同実施形態に係る第二の無線局の受信部の構成例を示す図。
圆 12]同実施形態に係る第一の無線局の送信部の、第 2の構成例を示す図。
圆 13]同実施形態に係る第一の無線局の送信部の、第 3の構成例を示す図。
圆 14]同実施形態に係る第一の無線局の送信フローを示す図。
圆 15]同実施形態に係る第一の無線局の第 2の送信フローを示す図。
圆 16]同実施形態に係る第一の無線局の第 3の送信フローを示す図。
圆 17]従来技術における第一の無線局の送信部の構成を示す図。
圆 18]従来技術における第二の無線局の受信部の構成を示す図。
圆 19]従来技術における第一の無線局の送信フローを示す図。
圆 20]従来技術における第二の無線局の受信フローを示す図。
[図 21]OFDM変調及び MIMO技術を併用した場合の各信号系列の特性の周波数 依存性を示す図その 1。
[図 22]OFDM変調及び MIMO技術を併用した場合の各信号系列の特性の周波数 依存性を示す図その 2。
符号の説明
1···データ分割回路
2— 1— 2— 3···プリアンブル付与回路
3— 1一 3— 3···変調回路
4…送信信号変換回路 #1
5 - 1一 5 - 4…無線部
6— 1— 6— 4· "アンテナ
7···チャネル推定回路
8···伝達関数行列管理回路 9···行列演算回路 #1
10…行列演算回路 #2
11…送信信号変換回路 #2 12…送信信号変換回路 #3 13…送信信号変換回路 #4
21— 1一 21— 3···アンテナ
22— 1— 22— 3···無線部
23…チャネル推定回路
24…受信信号管理回路
25…伝達関数行列管理回路 26···行列演算回路 (受信) #1 27…行列演算回路 (受信) #2 28…硬判定回路
29…データ合成回路
31— a— 31— b · · ·受信アンテナ 32 - a— 32 - b…無線部
33— a— 33— b"-FFT回路
34…チャネル推定回路
35…チャネル分離回路
— 1— a— 36— K a,36— 1— b— 36— K b…サブキャリア復調回路 - a— 37 - b". PZS変換回路
…データ合成回路
· ··伝達関数補完回路
…伝達関数管理回路 # 2
…行列演算回路
…データ分割回路
— a— 43— 変換回路
— a— 44— b…プリアンブル付与回路
— 1— a— 45— K a,45— 1— b— 45— K b…サブキャリア変調回路 …送信信号変換回路
- a 47 - b"'IFFT回路
— a— 48— b…無線部
a— 49 b…送信アンテナ
— 1—51—3 …受信アンテナ
- 1一 52—3 …無線部
…チャネル推定回路
…受信信号管理回路
…伝達関数行列管理回路
…行列演算回路 # 2
…行列演算回路 # 3
…硬判定回路
…データ合成回路
…データ分割回路
— 1— 61— 3…プリアンブル付与回路
— 1— 62— 3…変調回路
…送信信号変換回路
- 1一 64 - 3…無線部
65— 1— 65— 3· ··送信アンテナ
66· ··行列演算回路
67· ··伝達関数行列管理回路
68· ··チャネル推定回路
69· ··制御情報終端回路
70· ··制御情報生成回路
発明を実施するための最良の形態
[0074] 以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第 1実施形態 >
図 1は、本発明の第 1実施形態に係る無線通信システムにおける第二の無線局の 受信部の構成を示す図である。本発明の実施形態に係る無線通信システムは、 N (N は 1より大き!、整数)本以上の第一のアンテナ群を備えた第一の無線局と、 M (Mは 1 より大きい整数)本の第二のアンテナ群を備えた第二の無線局とにより構成されてい る。
なお、ひとつの例として、送信局が 3つの送信アンテナを用いて 3系統のデータを 送信する場合を例にとって説明する。図において、 51-1— 51-3は受信アンテナ、 52-1— 52-3は無線部、 53はチャネル推定回路、 54は受信信号管理回路、 55は伝達 関数行列管理回路、 56は行列演算回路 # 2、 57は行列演算回路 # 3、 58は硬判定 回路、 59はデータ合成回路を示す。基本的な回路構成は図 18に示した従来の受信 部構成と変わらないが、行列演算回路 # 2 (56)、及び行列演算回路 # 3 (57)の処理 内容が異なっている。
[0075] 例えば、一例として、行列演算回路 # 2 (56)において行う処理は、推定後の伝達関 数行列 Hに対して以下の行列を求める処理である。
(1) HH:伝達関数行列 Hのエルミート共役な行列
(2) HH X H
(3) (HH X H)— 行列 (2)の逆行列
(4) (HH X H)— 1 X HH:行列 (3)と行列 (1)の積
これらの演算結果として、行列演算回路 # 3 (57)に対して行列 (HH X H)"1 X HHを入
力する。また。行列演算回路 # 3 (57)では、この行列と受信信号べ外ル Rxとの積 (HH X H)— 1 X HH X Rxを演算により求める。
[0076] 同様に、一例として、行列演算回路 # 2 (56)において伝達関数行列 Hの逆行列 H—1 を求める処理を行う。また、行列演算回路 # 2 (56)力 は行列演算回路 # 3 (57)に 対して行列 H 1を入力し、行列演算回路 # 3 (57)では、この行列と受信信号ベクトル Rxとの積 H— 1 X Rxを演算により求める。
なお、これらの演算((HH X H)— 1 X HH X Rxまたは H— 1 X Rx)は、(式 1)の熱雑音の項 が無視可能である場合の送信信号ベクトル Txの解を求める操作に相当する。したが つて、これらの演算もしくはそれと等価な演算を複数のステップに分解して順次処理 することによって送信信号ベクトル Txを求めることも、当然可能である。
[0077] 同様に、一例として、行列演算回路 # 2 (56)において、送信信号ベクトル Tx(k)、受 信信号ベクトル Rx(k)、及び行列演算子 Fに対し、 (F X Rx(k)-Tx(k))H X (FX Rx(k) - Tx(k))で与えられる物理量の複数シンボルに渡る期待値を最小化することが期待さ れる行列演算子 Fを求める処理を行う。また、行列演算回路 # 2 (56)からは行列演算 回路 # 3 (57)に対して行列 Fを入力し、行列演算回路 # 3 (57)では、この行列と受信 信号ベクトル Rxとの積 F X Rxを演算により求める。
[0078] なお、この行列演算子 Fは従来方式における MMSE法で用いられる行列として知ら れており、受信信号のプリアンブル信号を利用して、プリアンブル信号に対する(F X Rx(k)-Tx(k)) H X (F X Rx(k)-Tx(k))を最小にする様にして求めることが可能である。 またここで硬判定回路 58とは、伝達関数行列および受信信号ベクトル力 推定した 送信信号ベクトルの各成分が、本来は離散的な値をとる送信信号点と一致しなかつ た場合に、選択可能な送信信号点に信号を確定させる処理を行うためのものである 。これは、例えば誤り訂正符号化'復号ィ匕を行う場合において、一旦、軟判定を行つ た信号を用いて誤り訂正を行 、、その結果として信号点を確定させる場合の処理も 含んでいる。
[0079] 図 2及び図 3は、第一及び第二の無線局の送信部の構成例を示す図である。図に おいて、 60はデータ分割回路、 61-1— 61-3はプリアンブル付与回路、 62-1— 62-3は 変調回路、 63は送信信号変換回路、 64-1— 64-3は無線部、 65-1— 65-3は送信アン
テナ、 66は行列演算回路、 67は伝達関数行列管理回路、 68はチャネル推定回路、 69は制御情報終端回路、 60は制御情報生成回路を示す。送信側の構成は、従来方 式と同一であっても構わないが、本図では伝達関数行列 Hの取得方法を明示するた めに、チャネル推定回路 68、または制御情報終端回路 69及び制御情報生成回路 70 が追カ卩されている。
[0080] 図 2においては、第一の無線局が無線データパケットを送信する際に、これに先行 して伝達関数行列の推定用の信号を送信することを要求する制御信号を制御情報 生成回路 70にて生成し、これを送信する。この際の信号は、必ずしも複数の送信アン テナを用いて送信する必要はなぐ単一アンテナ力 送信しても構わない。第二の無 線局では、この信号を受信したことを制御情報終端回路 19にて認識すると、制御情 報生成回路 20より制御信号を生成し、 3系統のプリアンブル信号が付与された信号 を 3本の送信アンテナ 65-1— 65-3より送信する。この信号を受信した第一の無線局 は、無線部 64-1— 64-3を経由してプリアンブル信号をチャネル推定回路 68に入力し 、チャネル推定回路 68にて伝達関数行列 Hを取得する。これを伝達関数行列管理回 路 67に入力する。
[0081] 図 3においては、第一の無線局が無線データパケットを送信する際に、これに先行 して制御情報生成回路 70より制御信号を生成し、 3系統のプリアンブル信号が付与さ れた信号を 3本の送信アンテナ 65-1— 65-3より送信する。第二の無線局は、無線部 64-1— 64-3を経由してプリアンブル信号をチャネル推定回路 68に入力し、チャネル 推定回路 68にて伝達関数行列 Hを取得する。この情報は、制御情報生成回路 70に 入力され、この伝達関数行列に関する情報を含んだ制御信号を制御情報生成回路 70にて生成し、これを送信する。
[0082] 第一の無線局では、この信号を受信したことを制御情報終端回路 69にて認識する と、収容されていた伝達関数行列に関する情報を取り出し、これを伝達関数行列管 理回路 67に入力する。なお、上記伝達関数行列に関する情報を含んだ制御信号は 、必ずしも複数の送信アンテナを用いて送信する必要はなぐ単一アンテナから送信 しても構わない。
[0083] さらに、「第一の制御パケット」または「第二の制御パケット」として規定した信号を、
無線データパケットの送信に先立ち交換することは、必ずしも必要ではない。
一つの例として、 MIMO技術を用いながら双方向で定常的にデータの送受信を行 う場合には、伝達関数行列はデータの受信毎に取得可能である。
[0084] また別の例として、 5GHz帯における IEEE802.11a (ないしは 2. 4GHz帯における
IEEE802.11g)準拠の無線 LANの場合を説明する。この無線 LANシステムでは MIMO 技術は用いられておらず、将来的な拡張として MIMO技術が期待されているのである 1S ノ ックワードコンパチビリティの観点から、拡張されたシステムであっても、最低限 、 IEEE802.11a (または IEEE802.11g)準拠の信号の送受信は可能となる。
この IEEE802.11a (または IEEE802.11g)準拠システムでは、ユーザデータを収容し た無線データパケットを送信すると、受信に成功した受信局は受信成功を示す ACK( Acknowledgement)信号として、比較的信頼性の高!、伝送モードを用いて無線制御 パケットを返送する。 MIMO技術を用いて無線データパケットを送信する場合であつ ても、制御信号の安定送受信の観点力も無線制御パケットの転送には MIMO技術を 用いない、即ち複数の系統の信号系列を同一周波数チャネル上に重畳することなく 転送することが期待される。つまり、継続的にデータ通信を行う場合には、データ( MIMO適用)→ACK (MIMO非適用)→データ(MIMO適用)→ACK (MIMO非適用) →· · ·との繰り返しになると考えられる。
[0085] このケースにおいては、 MIMO技術を用いない ACK返送用の無線制御パケットにお いて伝達関数行列 Hの推定ができることが理想的である。また、そのための信号が、 既存の IEEE802.1 la (または IEEE802.1 lg)準拠の無線 LANのエア'インタフェースに なんら変更をカ卩えて 、な 、方法が好まし 、。
これを実現するために、 IEEE802.11a (または IEEE802.11 g)準拠システムで採用し ている OFDM変調技術を利用する。 OFDM変調技術では、複数のサブキャリアを周 波数軸上に直交するように連続的に並べ、高速フーリエ変換技術を利用して通信を 行う。
[0086] MIMO技術を適用する場合には、各サブキャリア毎に伝達関数行列 Hを求め、同一 サブキャリア内にとじてチャネル分離処理を行う。この際、異なるサブキャリア同士で は伝達関数行列 Hの値は異なるが、隣接したサブキャリア間ではその相関は強くなる
。この特性を利用して、例えばサブキャリア番号 nにおける第 i送信アンテナと第 j受信 アンテナ間の伝達関数を h (n)とすると、隣接サブキャリアに関する情報力 内挿によ
,
り以下のような近似を行うことが可能である。
[0087] [数 6] hj,i(n) {hj,i(n— 1) + hj,i(n+1)}/2 · · · (6)
[0088] [数 7] hj {n) = {h i(n-l)x2+hj,i(n+2)x1}/3 · · - (7)
[0089] [数 8] hj(i(n) = {hjf iCn-2)xi+hj)i(n+1)X2}/3 - · - (8)
[0090] ここで式(6)は、サブキャリア上でひとつおき(つまり 2サブキャリア周期)に h ( が
j,i 分かる場合に、その間の伝達関数を求める場合に利用できる。また、式(7)および式 (8)は、サブキャリア上でふたつおき(つまり 3サブキャリア周期)に h (n)が分力る場合
,
に、その間の伝達関数を求める場合に利用できる。
[0091] これを利用するためには、送信側で MIMO非適用の信号を送る際に、例えば偶数 サブキャリアは第 1送信アンテナ、奇数サブキャリアは第 2送信アンテナを用いたり、 3 の倍数となるサブキャリアは第 1送信アンテナ、 3の倍数 + 1となるサブキャリアは第 2 送信アンテナ、 3の倍数 +2となるサブキャリアは第 3送信アンテナを用いて送信する などすれば、各サブキャリア毎に伝達関数行列の要素の一部分を取得可能であり、 残りの要素を式 (6)—式 (8)などを用いて推定することが可能である。
なお、同様の処理は、 4サブキャリア周期以上の場合 (即ち、 4系統以上の信号系 列を重畳する場合)であっても適用可能である。
[0092] また、内挿で求まらな 、ような端の方のサブキャリア(例えば第 1サブキャリア等)に 関しては、外挿等の他の方法で近似しても構わない。
この技術の注目すべき点は、このサブキャリアを内挿により用いる提案自体は過去 に あり、 Jan Boerらによ 非特午文献「Jan Boer et. al., Backwards compatibility —How to make a MIMO-OFDM system backwards compatible and coexistence with l la/g at the link level.-", IEEE802.i l- 03/714r0, September, 2003」でも提案されて いる。
[0093] しかし、これらは N系統の信号系列を重畳した信号を受信する受信局においてチヤ ネル推定するためのものであり、受信した信号の復調処理そのものに利用されてい た。
一般に、隣接サブキャリア間での伝達関数の相関はそれほど強いわけではないの で、これを利用して行う復調処理は受信特性を大幅に劣化させることになり、あまり実 用的な技術とは言えない。しかし、これを送信側で行うュ-タリ変換の行列を求める ために用いることに限定すれば、仮にュ-タリ変換行列の推定精度が低くても復調 処理には何ら問題は生じない。
[0094] 言い換えると、推定精度の悪さは、単に本発明を適用することによる大きな利得を 若干下げる程度にとどまり、本発明不適用時の特性を下回ることはない。
なお、全ての無線局がこの機能を実装するとは限らない場合には、通信開始時に 無線局間でネゴシエーションを行い、 MIMO非適用時の信号の送信の仕方をお互い に通知することが好ましい。このネゴシエーション結果にあわせて、適応的に、隣接 サブキャリア間での伝達関数の相関を利用してチャネル推定処理を行うようにする。
[0095] 図 4は、本発明の実施形態に係る無線通信システムにおける第二の無線局の受信 フローを示す図である。本図においても、従来方式の図 20との差分は、処理 S74で行 う行列演算処理 # 2と、処理 S76における行列演算処理 # 3の内容のみである。 一例として、行列演算回路 # 2 (56)において行う処理は、 HH、 HH X H、(HH X H)— 1を 順次求め、最終的に(HH X H)— を求める。行列演算回路 # 3 (57)では、(HH X H) 1 X HH X Rxを演算により求めて!/、る。
[0096] 別例として、行列演算回路 # 2 (56)にお 、て伝達関数行列 Hの逆行列 H 1を求め、 行列演算回路 # 3 (57)では、 H を演算により求められる。また、行列演算回路 # 2 (56)にお!/、て、(F X Rx(k)-Tx(k)) H X (F X Rx(k) Tx(k))で与えられる物理量の
複数シンボルに渡る期待値を最小化することが期待される行列演算子 Fを求め、行 列演算回路 # 3 (57)では、 F X Rxを演算により求めることもできる。
一方、第一の無線局の送信部の送信フローは基本的には図 19の内容と同様であ つても構わないが、送信側でチャネル推定を行う場合の一例として、以下に、異なる 点について説明する。
[0097] 図 5は、本発明の実施形態に係る無線通信方法の第一の無線局でのチャネル推 定処理を示す図である。第一の無線局において、送信すべき無線データパケットが 入力された場合 (S21)、この無線データパケットの送信に先立ち、無線制御パケット を送信する(S22)。これにより第二の無線局に対し、複数の送信アンテナからそれぞ れ所定のプリアンブル信号を付与した無線制御パケットの送信を要求する。無線制 御パケットの待ち受け処理の後(S23)、無線制御パケットが正常に受信された場合に は(S24)、その信号を複数の受信アンテナで受信し (S25)、チャネル推定により伝達 関数行列 Hを算出する(S26)。処理 S24において無線制御パケットが正常に受信でき なかった場合には、処理 S22に戻り、無線制御パケットの再送信を行う。
[0098] 図 6は、本発明の実施形態に係る無線通信方法の第二の無線局での無線制御パ ケット受信時のフローを示す図である。この無線通信方法は、 N (Nは 1より大きい整数 )本以上の第一のアンテナ群を備えた第一の無線局と、 M (Mは 1より大き 、整数)本 の第二のアンテナ群を備えた第二の無線局との間で通信を行うものである。
図 6において、信号を受信すると (S31)、無線制御パケットか否かを判断し (S32)、 無線データパケットである場合には通常の受信処理を行う(S37)。
[0099] 一方、無線制御パケットであった場合には (S32)、信号種別を確認し (S33)、複数の 送信アンテナカゝらそれぞれ所定のプリアンブル信号を付与した無線制御パケットの 送信を要求するものであった場合に (S34)、複数の送信アンテナからそれぞれ所定 のプリアンブル信号を付与した無線制御パケットを送信する(S35)。
一方、通常の制御情報であった場合には (S34)、通常の制御情報処理を行う(S36)
[0100] 図 7は、本発明の実施形態に係る無線通信方法の第一の無線局でのチャネル推 定処理を示す図である。図 7において、第一の無線局において、送信すべき無線デ
ータパケットが入力された場合 (S41)、この無線データパケットの送信に先立ち、 N本 の送信アンテナを用いてそれぞれ既知プリアンブル信号が付与された無線制御パケ ットを送信する(S42)。無線制御パケットの待ち受け処理の後(S43)、無線制御バケツ トが正常に受信された場合には (S44)、その無線制御パケットを終端処理し (S45)、こ の中に収容されて!、る伝達関数行列 Hに関する情報を取り出し、送信側の伝達関数 行列管理回路内に設定する(S46)。処理 S44において無線制御パケットが正常に受 信できな力つた場合には、処理 S42に戻り、無線制御パケットの再送信を行う。
[0101] 図 8は、本発明の実施形態に係る無線通信方法の第二の無線局での無線制御パ ケット受信時のフローを示す図である。図 8において、信号を受信すると(S51)、無線 制御パケットか否かを判断し (S52)、無線データパケットである場合には通常の受信 処理を行う(S58)。一方、無線制御パケットであった場合には (S52)、信号種別を確 認し (S53)、伝達関数行列に関する情報を要求する信号であった場合には (S54)、 複数の受信アンテナで受信された信号に対しそれぞれ既知のプリアンブルパターン を利用し、チャネル推定により伝達関数行列 Hを取得する(S55)。その後、取得され た伝達関数行列情報を収容した無線制御パケットを生成し、これを送信する(S56)。 一方、処理 S54において、通常の制御情報であった場合には (S54)、通常の制御情 報処理を行う (S57) 0
以上、図 5から図 8までの説明において、第一の無線局は必ずしもデータの送信毎 に無線制御パケットを送信する必要はない。例えば、最後に伝達関数を取得してか ら一定以上の時間がたった場合など、必要に応じて送信すれば良 、。
[0102] なお、 MIMO技術の適用領域として、現在、 5GHz帯及び 2.4GHz帯を用いた高速無 線 LANシステムの拡張が注目されている。このような無線 LANシステムでは、通常、 第一の無線局の機能と第二の無線局の機能をひとつの無線局内に実装するのがー 般的であり、また OFDM変調方式を用いている。
そこで、図 9に本発明の実施形態に係る無線通信システムにおける無線局の送受 信部の構成を示す。なお、本図では簡単のために送受信アンテナが共に 2系統の場 合 (N=M=2)の場合を例として用いて 、る。
[0103] 図 9において、 31-a— 31-bは受信アンテナ、 32-a— 32-bは無線部、 33-a— 33-bは
FFT回路、 34はチャネル推定回路、 35はチャネル分離回路、 36-1-a— 36-K-a及び 36-1-b— 36-K-bはサブキャリア復調回路、 37-a— 37-bは P/S変換回路、 38はデー タ合成回路、 39は伝達関数補完回路、 40は伝達関数管理回路 # 2、 41は行列演算 回路、 42はデータ分割回路、 43-a— 43-bは S/P変換回路、 44-a— 44-bはプリアンプ ル付与回路、 45-1-a— 45-K-a及び 45-1-b— 45-K-bはサブキャリア変調回路、 46は 送信信号変換回路、 47-a— 47-bは IFFT回路、 48-a— 48-bは無線部、 49-a— 49_bは 送信アンテナを示す。
[0104] まず、受信アンテナ (31-a— 31-b)にて信号を受信すると、各受信アンテナ毎に無 線部(32-a— 32-b)を経由して、 FFT回路(33-a— 33-b)にて各サブキャリア毎の信号 に周波数軸上で分離する。この分離された信号はチャネル推定回路 34に入力され、 受信信号の中の既知のプリアンブル信号よりそれぞれの伝達関数情報を取得する。 受信された信号が、 2系列の信号系列を重畳した信号であれば、チャネル分離回 路 35では、チャネル推定回路 34にて求めた伝達関数情報をもとに、各系列の信号の 分離処理を行 、、この結果をサブキャリア復調回路(36-1-a— 36-K-a及び 36-1-b— 36-K-b)に入力する。
[0105] サブキャリア復調回路(36-1-a— 36-K-a及び 36-1-b— 36-K-b)での処理は、各サ ブキャリア毎に送信信号を推定し、適宜、誤り訂正処理等を行うものである。復調され た信号は、サブキャリア毎に分離されていたものを P/S変換回路 (37-a— 37-b)にて ノ ラレル'シリアル変換が行われ、データ合成回路 38にてデータが再生され、出力さ れる。
一方、信号系列が重畳されていない信号であれば、チャネル分離回路 35では各受 信アンテナの信号をサブキャリア毎に最大比合成等の処理を行い、サブキャリア復調 回路(36-1-a— 36-K-a)に入力する。この際、チャネル推定回路 34からは、 MIMOの 伝達関数行列の一部分となる情報を伝達関数補完回路 39に入力する。伝達関数補 完回路 39では、(式 6)等で表される内挿演算によって歯抜け状の伝達関数行列の 成分を生成'補完する。
[0106] ここで得られた伝達関数行列 Hの情報は伝達関数行列管理回路 # 2 (40)に記録さ れる。この行列は信号受信毎に逐次更新され、最新の情報のみが記録されている。
行列演算回路 41では、伝達関数行列管理回路 40で管理された伝達関数行列 Hに対 し、 HH、 HH X Hを順次求め、最終的には HH X Hに対する固有ベクトルを求めることか ら HH X Hを対角化するュ-タリ変換行列 Uを求める。
この無線局が信号を送信する場合の処理も、 2系統の信号系列を重畳して送信す る場合と 1系統の信号を送信する場合とで処理が分かれる。
[0107] ユーザデータを高速で転送するような 2系統の信号を重畳して送信する場合、デー タがデータ分割回路 42に入力されると、これを 2系統の信号系列に分割し、 S/P変換 回路 (43-a— 43-b)ではさらに各サブキャリア毎に信号を振り分ける。この各サブキヤ リアの信号には、プリアンブル付与回路(44-a— 44-b)にて既知のプリアンブル信号 が付与され、サブキャリア変調回路(45-1-a— 45-K-a及び 45-1-b— 45-K-b)にて所 定の変調が施され、送信信号変換回路 46に入力される。
[0108] 送信信号変換回路 46では、行列演算回路 41で生成した各サブキャリア毎のュ-タ リ変換行列を用いて変換された信号を生成し、これを IFFT回路 (47-a— 47-b)に入力 する。 IFFT回路 (47-a— 47-b)では、周波数軸上に分離された信号を時間軸上の信 号に変換し、無線部 (48-a— 48-b)を経由して送信アンテナ (49-a— 49-b)から送信さ れる。
[0109] 一方、 1系統の信号を送信する場合には、例えばデータ分割回路 42からは S/P変換 回路 (43-a)と S/P変換回路 (43-b)に同一の信号を入力するが、送信アンテナ 49_aか ら送信する信号は奇数サブキャリア、送信アンテナ 49-bから送信する信号は偶数サ ブキャリアとなるように、送信信号変換回路 46にて、サブキャリア変調回路のうちの 45-l-a、 45-3-a、 45-5-a- · ·、 45-2-b、 45-4-b、 45-6-b- · ·のみの信号を有効とし(す なわち 45- 2- a、 45- 4- a、 45- 6- a' · ·、 45- 1- b、 45- 3- b、 45- 5- b' · ·の信号は廃棄)、 IFFT回路(47-a— 47-b)に出力する。その他の処理については、従来通りの処理と する。
なお、以上の処理において、第一の無線局から第二の無線局へ信号を送信する場 合の伝達関数と、その逆方向の伝達関数との間に所定の差分が存在する場合には 、送信側でュ-タリ変換を取得するために用いる伝達関数に対して、この差分を補正 する処理を追加することもできる。
[0110] <第 2実施形態 >
以下、本発明の第 2実施形態について説明する。本実施形態は、 OFDM変調方 式に MIMO技術を用いる際に、サブキャリア毎に各信号系列を送信する際に用いる アンテナを入れ替える技術に関するものである。
ここでは説明を簡単にするため、 3つの信号系列を重畳して伝送を行う場合を想定 し、アンテナ数を 3本または 4本とした例を用いて説明する。
図 14は、本発明の第 2実施形態における第一の無線局 (送信局)の送信フローを 示す図である。
データが入力されると (ステップ S1)、入力されたデータは N系統のデータ系列に分 割され (ステップ S 2)、これらの信号にはそれぞれプリアンブル信号が付与され (ステ ップ S3)、これに各系列毎に個別に変調処理を行う(ステップ S4)。変調された信号 には、送信信号変換処理 # 1として、サブキャリア毎に、各サブキャリアに対応した行 列 R
kを用いて信号系列と送信アンテナの対応をシャッフル (入換え)するための変換 処理が実施され (ステップ S5)、変換後の信号が無線部にて無線周波数に変換され 信号が送信される (ステップ S6)。なお、第二の無線局 (受信局)の受信フローは、図 20に示した従来方式と同様であり、異なる点はない。
[0111] ここで、送信信号変換処理 # 1 (ステップ S5)における変換処理においては、例え ば重畳する信号系列の数が 3である場合には、以下に示す 3つの行列 R、 R、 Rを
1 2 3 用いる。
[0112] [数 9]
0 0
0 1 0
0 1
• · · (9)
(10)
[0114] [数 11]
(11) ひとつの例として、サブキャリア #1に対しては Rを、サブキャリア #2に対しては R
1 2 を、サブキャリア #3に対しては Rを、サブキャリア #4に対しては Rを、サブキャリア
3 1
#5に対しては Rを' ··と順番に入れ替えながら変換を行う。ここでの処理は、例えば
2
変換 Rとは、 ΜΙΜΟにおける信号系列の #1を #2に置き換え、 #2を #3に置き換
2
え、 #3を #1に置き換えるという処理に対応する。つまり、サブキャリア #1とサブキヤ リア #2の様に隣接するサブキャリア間では、各信号系列を送信するアンテナが異な るようにしている。
[0115] この回転行列は、基本的には (式 9)に示された Rに対し、各行を適宜入れ替えた処 理により求められる。 Ν行 Ν列の正方行列に対してこの様な行列を生成する方法とし ては、 N>j≥lなる整数 j対し第 (j+l,j)成分及び第(Ι,Ν)成分のみが 1で且つ他の成 分が 0である Ν行 Ν列の行列を Ρとし、更に N≥k≥2なる整数 kに対し
[0116] [数 12]
Rk = Pk— χ Rx
•(12)
により計 N個の行列として求めることができる。
なお、 は式(9)の様に単位行列である必要はなぐ単位行列の行 (または列)を 適当に入れ替えたものであっても構わな!/、。
[0117] ここで、既存の無線 LANシステムとして IEEE802.11aないしは IEEE802.11g準 拠のシステムを考えた場合、 OFDM変調の 48本あるデータ伝送用のサブキャリアに 対し、 3サブキャリア周期でデータビット列の順番を入れ替えるインターリーブ処理を 行っている。
[0118] つまり、サブキャリア # 1→サブキャリア # 4→サブキャリア # 7→ サブキャリア
# 2→サブキャリア # 5→サブキャリア # 8→ サブキャリア # 3→サブキャリア # 6
→サブキャリア # 9→· · ·サブキャリア # 48→サブキャリア # 1 · · ·の順番で、データ のビット列が並ぶことになる。上述例において、(式 9)から (式 11)の回転行列を用いる 場合、サブキャリア # 1とサブキャリア # 4には同一の回転行列が用いられることにな る。この場合には、回転行列によるシャッフルの効果は得られなくなるため、この様な 場合には工夫が必要である。例えば、
サブキャリア # 1:行列 R使用、
サブキャリア # 2:行列 R使用、
2
サブキャリア # 3:行列 R使用、
3
サブキャリア # 4 :行列 R使用、
2
サブキャリア # 5:行列 R使用、
3
サブキャリア # 6:行列 R使用、
サブキャリア # 7:行列 R使用、
3
サブキャリア # 8:行列 R使用
サブキャリア # 9:行列 R使用、
2
サブキャリア # 10 :行列 R使用、
サブキャリア # 11 :行列 R使用、
2
サブキャリア # 12 :行列 R使用、
3
[0119] の様な順番で、 3種類の回転行列を用いながら、 9サブキャリア周期となる様に調整
し、インタリーブ周期である 3サブキャリア周期で回転行列が重ならな 、様に調整を行 これにより、インタリーブを行う場合であっても本発明の効果を得られるようにするこ とがでさる。
[0120] 図 15は、一具体例における第一の無線局(送信局)の送信フローを示す。図 14に 示す送信フローとの差分は、処理ステップ S5と処理ステップ S6の間に送信信号変換 処理 # 2 (ステップ S8)を行っている点である。ここでは、処理ステップ S 5でサブキヤリ ァ毎に各サブキャリアに対応した回転行列を送信信号ベクトル Xにかけた後、サブキ ャリア毎に個別のュ-タリー変換行列をさらにかける処理を行う(ステップ S8)。これに よって、送信信号ベクトルは U XRX xとなる。各サブキャリア毎にこのベクトルの各成 分で与えられる信号を、各無線部及びアンテナより送信することになる (ステップ S6)
[0121] 図 16は、一具体例における第一の無線局の送信フローを示す。図 14に示す送信 フローとの差分は、処理ステップ S5と処理ステップ S6の間に送信信号変換処理 # 3 (ステップ S9)及び送信信号変換処理 # 4 (ステップ S 10)を行って 、る点である。ここ では、処理ステップ S5でサブキャリア毎に個別の回転行列を送信信号ベクトル Xにか けた後、ベクトル R X xに (式 13)で与えられる行列をかける(ステップ S9)。
[0122] [数 13]
( \ 0 0
0 1 0
0 0 1
0 0ノ
•••(13) これにより、例えば 3つの信号系列を送信するために 3行 1列の列ベクトルであった ものを、 4行 1列の列ベクトルに変換する。その後、 4行 4列のサブキャリア毎に個別の ュ-タリー変換行列 Uをさらにかける送信信号変換処理 # 4を行う (ステップ S10)。こ
れによって、送信信号べクトルは11 丁 !^ となる。このベクトルの各成分で与えら れる信号を、各無線部及びアンテナより送信することになる (ステップ S6)。
また、図 15におけるステップ S5と S8,および図 16におけるステップ S5と S9と S10 は、ここでは順番に処理を行うとしたが、これらをまとめた変換行列を別途作成してお き、一括して変換処理を行っても構わない。
[0123] なお、以上に示した回転行列はひとつの例であり、その他の回転行列を用いてもよ いし、また、上述したものとは異なる順番でサブキャリアに対応させても構わない。さら に、伝達関数行列 Hは、各サブキャリア毎に異なるため、これに対応したュ-タリー変 換行列も各サブキャリア毎に個別のものとなる。このュ-タリー変換行列は、従来方 式と同様に、図 16に示した処理フローとは別に求めておくことになる。
[0124] 以上の方式を無線通信装置として実現するための構成例を以下に図を示して説明 する。
図 10は、本実施形態における第一の無線局の送信部の構成例を示す図である。 図 10において、 1はデータ分割回路、 2—1— 2— 3はプリアンブル付与回路、 3—1 一 3—3は変調回路、 4は送信信号変換回路 # 1、 5—1— 5—3は無線部、 6—1— 6—3 はアンテナを示す。
[0125] ユーザデータがデータ分割回路 1に入力されると、本図では 3つの信号系列に分 割され、それぞれがプリアンブル付与回路 2— 1一 2— 3に入力される。ここでは、信号 系列毎に異なった所定のプリアンブル信号が付与される。プリアンブル信号が付与さ れて生成された 3つの信号系列は、それぞれが独立に変調回路 3— 1一 3— 3で所定 の変調が施される。なお、ここでは OFDM変調を行うため、各信号系列はサブキヤリ ァ毎に変調が施される。
[0126] これらの信号は、送信信号変換回路 # 1 (4)にてサブキャリア毎に所定の変換が行 われる。変換された信号は、無線部 5—1— 5— 3を経由して、アンテナ 6—1— 6— 3より 送信される。
[0127] ここでは、例えば(式 9)一(式 11)に示す 3つの行列 R
1、 R
2、 Rを用いる。ひとつの 3
例として、サブキャリア # 1に対しては Rを、サブキャリア # 2に対しては Rを、サブキ
1 2 ャリア # 3に対しては Rを、サブキャリア # 4に対しては Rを、サブキャリア # 5に対し
ては Rを' · ·と順番に入れ替えながら変換を行う。
2
[0128] ここでの処理は、例えば変換 Rとは、 MIMOにおける信号系列の # 1を # 2に置き
2
換え、 # 2を # 3に置き換え、 # 3を # 1に置き換えるという処理に対応する。つまり、 サブキャリア # 1とサブキャリア # 2の様に隣接するサブキャリア間では、各信号系列 を送信するアンテナが異なるようにして 、る。
[0129] この様にして送信信号変換回路 4にて変換された信号は、無線部 5— 1一 5— 3を介 してアンテナ 6—1— 6— 3からそれぞれ送信される。
[0130] なお、 OFDM変調方式を用いる場合、複数のサブキャリア内にはユーザデータの 含まれな!/、既知信号が収容されたパイロットサブキャリアが含まれる場合があるが、こ こでの番号付けはパイロットサブキャリアを除外しているものとして説明した。
[0131] また、図 11は、本実施形態の無線通信方法における第二の無線局の受信部の構 成例を示す。
図 11において、 21— 1— 21— 3はアンテナ、 22— 1— 22— 3は無線部、 23はチヤネ ル推定回路、 24は受信信号管理回路、 25は伝達関数行列管理回路、 26は行列演 算回路 (受信) # 1、 27は行列演算回路 (受信) # 2、 28は硬判定回路、 29はデータ 合成回路を示す。
[0132] アンテナ 21— 1— 21— 3を介して、無線部 22— 1一 22— 3は個別にデータの受信処 理を行う。それぞれ受信した信号はチャネル推定回路 23に入力される。ここでは、受 信信号に含まれる既知信号部分、例えばプリアンブル信号など力 各パス毎及び各 サブキャリア毎に個別の伝達関数を算出する。この情報は伝達関数行列管理回路 2 5に入力され、伝達関数行列 Hとして管理される。行列演算回路 (受信) # 1 (26)で は、必要に応じて復調のための準備の行列演算を行う。例えば、行列が正方行列で あれば行列 Hの逆行列のみを、それ以外の場合には、行列 Hのエルミート共役の行 列である行列 HHを、更に (HH X H)、この逆行列と HHの積 (HH X H) 1 X HHを順次 計算する。以降の説明は、非正方行列の場合を仮定して進める。
[0133] プリアンブル信号などに後続するデータに対しては、受信信号管理回路 24で一旦 管理し、行列 (HH X H)— i x H11とこの受信信号 Rxとの積を行列演算回路 (受信) # 2 (27)で求める。硬判定回路 28では、求まった信号に対して硬判定処理を実施し、送
信信号を推定する。データ合成回路では、各信号系統に分離された再生信号系列 をそれぞれ合成し、送信側でのユーザデータを再生し、データを出力する。以上の 説明は、 ZF法を例にとって行った力 MMSE法、 MLD法、また、それらの組み合わ せ方法等を含むその他の方式を用いても構わな 、。
更に、本発明の実施形態例においては、 OFDM変調方式に適用する場合を中心 に説明を行っている力 サブキャリア単位での適用が可能であり、当然ながら、シング ルキャリア変調方式においても適用が可能である。
[0134] また、図 12は、本実施形態の無線通信方法における第一の無線局の送信部の第 2の構成例を示す。図 12に示す例においては、データ分割回路 1、プリアンブル付 与回路 2— 1一 2— 3、変調回路 3— 1一 3— 3、送信信号変換回路 # 1 (4)、無線部 5— 1 一 5— 3、アンテナ 6—1— 6— 3は図 10と同様であり、これにカ卩えて、チャネル推定回路 7、伝達関数行列管理回路 8、行列演算回路 # 1 (9)、行列演算回路 # 2 (10)、送 信信号変換回路 # 2 (11)が設けられて 、る。
[0135] なお、ユーザデータを含む信号を送信しょうとする第一の無線局においても、第二 の無線局より信号を受信する際には、アンテナ 6— 1一 6— 3で受信した信号を無線部 5—1— 5— 3を介してチャネル推定回路 7に入力する。ここでは、図 11に示した受信 部と同様に受信信号に含まれる既知信号部分、例えばプリアンブル信号など力 各 パス毎且つサブキャリア毎の伝達関数を算出する。
[0136] この情報は伝達関数行列管理回路 8に入力され、各サブキャリア毎に伝達関数行 列 Hとして管理される。行列演算回路 # 1 (9)においては、行列 Hのエルミート共役 の行列である行列 HH及び HH X Hを順次計算する。この結果をもとに、行列演算回 路 # 2 (10)では、行列 HH X Hを対角化可能なュニタリー行列 Uを各サブキャリア毎 に算出する。
この際、ュ-タリ変換行列により対角化された行列の第 (i,i)成分の固有値は、 iの値 力 S小さいほど固有値の絶対値が大きくなる (又は小さくなる)様に調整する。以上の様 にして得られた各サブキャリア毎のュ-タリ変換行列 Uを用い、図 12の場合に送信 信号変換回路 4から出力される信号に対して、送信信号変換回路 # 2 (11)ではュ- タリ変換処理を施し、これを無線部 5—1— 5— 3及びアンテナ 6—1— 6— 3を介して送
信する。
受信側の処理は図 11の場合と同様の処理を行う。
[0137] また、図 13は、本実施形態の無線通信方法における第一の無線局の送信部の第 3の構成例を示す。図 13に示す構成例においては、データ分割回路 1、プリアンプ ル付与回路 2— 1一 2— 3、変調回路 3— 1一 3— 3、送信信号変換回路 # 1 (4)、無線部 5—1— 5—3、アンテナ 6—1— 6—3、チャネル推定回路 7、伝達関数行列管理回路 8、 行列演算回路 # 1 (9)、及び行列演算回路 # 2 (10)は、図 12に示す構成例と共通 である。これに加えて、送信信号変換回路 # 3 (12)、送信信号変換回路 # 4 (13)が 設けられている。
[0138] また、図 10及び図 12に示す構成例では、 3系であった無線部 5—1— 5— 3及びアン テナ 6—1— 6— 3は 4系統に拡張され、無線部 5— 4及びアンテナ 6— 4が追加されて ヽ る。これに伴い、チャネル推定回路 7から行列演算回路 # 2 (10)内で処理される行 列の次数も一部変更されて 、る。
[0139] 図 13に示す構成例おいては、送信信号変換回路 4から出力される信号に対して、 送信信号変換回路 # 3 (12)では上述の (式 13)で表される変換行列を積算する。こ の演算の意味するところは、単に 3つの成分より形成される送信ベクトルを 4つの成分 の送信ベクトルに変換するという点である。行列力 行 3列であるのは、 MIMOの信 号系列の重畳数が 3であるのに対し信号送信のためのアンテナ数力 であるためで ある。一般に、重畳数が M、信号送信のためのアンテナ数が Nであれば N行 M列の 行列で、且つ上側 M行の行列が M行 M列の単位行列、下側(N - M)列が全てゼロ の行列となって ヽる。これにより送信アンテナの本数分の成分 (即ちュ-タリ変換行 列と同じ次数)を持った送信信号ベクトルが得られ、送信信号変換回路 # 4 (13)で はこの送信信号ベクトルにュ-タリ変換処理を施し、これを無線部 5—1— 5— 4及びァ ンテナ 6—1— 6— 4を介して送信する。なお、受信側の処理は図 11の場合と同様の処 理を行う。
さらに、本図に示す構成例においても、一連の処理は各サブキャリア毎に個別に行 う。また、図 12における送信信号変換回路 # 1 (4)と送信信号変換回路 # 2 (11)、 および図 13における送信信号変換回路 # 1 (4)と送信信号変換回路 # 3 (12)と送
信信号変換回路 # 4 (13)は、それぞれ別の機能ブロックとしたが、これらをまとめた 変換行列を別途作成しておき、一つの機能ブロックにまとめて一括の変換処理を行 つても構わない。
[0140] 以上詳細に説明した様に、本発明によれば、 MIMO技術を用いた高能率な無線 通信を行う際に、重畳する複数の信号系列毎の受信特性を均一化し、伝送路上に おける符号誤りをランダム化することが可能となる。特に、 OFDM変調方式を用いた E— SDM方式と組み合わせた場合には、 MIMO技術の持つ性質として、重畳する 信号系列間に受信特性の大きなばらつきが発生するという傾向があつたが、本発明 により信号系列毎の受信特性を平均化し、エラーをランダム化することにより、その結 果、誤り訂正の利得を向上させ、全体としてのパケット誤り率特性を改善する効果を 得ることができる。
[0141] また、図 10に示す送信部内の各回路、図 11に示す受信部内の各回路、図 12に示 す送信部内の各回路、図 13に示す送信部内の各回路は、専用のハードウェアによ り実現されるものであってもよぐメモリおよび CPU (中央処理装置)により構成し、こ れらの各回路の機能を実現するためのプログラム(図示せず)をメモリにロードして実 行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
[0142] また、図 10に示す送信部内の各回路、図 11に示す受信部内の各回路、図 12に示 す送信部内の各回路、図 13に示す送信部内の各回路の機能を実現するためのプロ グラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録され たプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、図 10に示す 送信部内の各回路、図 11に示す受信部内の各回路、図 12に示す送信部内の各回 路、図 13に示す送信部内の各回路に必要な処理を行ってもよい。なお、ここでいう「 コンピュータシステム」とは、 OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
[0143] また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気 ディスク、 ROM, DVD-ROM, CD— ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに 内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可 能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介し てプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保
持するもの (伝送媒体ないしは伝送波)、その場合のサーバやクライアントとなるコン ピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持して 、るも のも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するための ものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されて V、るプログラムとの組み合わせで実現できるもの、 、わゆる差分ファイル (差分プログ ラム)であっても良い。
[0144] また、以上説明した実施の形態例は全て本発明を例示的に示すものであって限定 的に示すものではなぐ本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施すること が出来る。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ 規定されるものである。
産業上の利用可能性
[0145] 本発明によれば、 MIMO技術を用いた高能率な無線通信を行う際に、伝達関数行 列を精度良く推定できた場合には E— SDM法と等価な良好な特性を実現しながらも 、伝達関数行列を精度良く推定できな ヽ場合であっても安定した特性を示すことが 可能であると 、う効果を得ることができる。
また、 OFDM変調方式に MIMO技術を用いる際に、サブキャリア毎に各信号系列 を送信する際に用いるアンテナを入れ替えることにより、信号系列毎の誤りを平均化 およびランダム化し、誤り訂正における符号化利得を向上させることができる。即ち、 MIMO技術を用いた高能率な無線通信を行う際に、重畳する複数の信号系列毎の 受信特性を均一化し、伝送路上における符号誤りをランダム化することが可能となる 効果を有するので、本発明は、 2.4GHz帯または 5GHz帯等を用いた高速無線ァク セスシステム(又は無線 LANシステム)の伝送速度の高速ィ匕を行うためにお ヽて利 用される。