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JPWO2021029227A1 - 複合積層体及び、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体 - Google Patents

複合積層体及び、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体 Download PDF

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JPWO2021029227A1 JP2020559564A JP2020559564A JPWO2021029227A1 JP WO2021029227 A1 JPWO2021029227 A1 JP WO2021029227A1 JP 2020559564 A JP2020559564 A JP 2020559564A JP 2020559564 A JP2020559564 A JP 2020559564A JP WO2021029227 A1 JPWO2021029227 A1 JP WO2021029227A1
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Abstract

本発明は、金属と変性ポリフェニレンエーテルを高い強度で接合する用途に好適な複合積層体及びその関連技術を提供することを課題とする。本発明は、前記目的を達成するために、以下の手段を提供する。金属材と、前記金属材に積層された1層又は複数層の樹脂層からなる樹脂コーティング層とを有する複合積層体であって、前記樹脂層の少なくとも1層が、再変性−変性ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物から形成されてなる再変性−変性ポリフェニレンエーテル層であり、前記再変性−変性ポリフェニレンエーテル層は、変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂との混合物である混合物1を含む層、及び変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂との混合物である混合物2を含む層、から選ばれる少なくとも1種である、複合積層体。

Description

本発明は、金属と変性ポリフェニレンエーテルを高い強度で接合できる複合積層体およびその製造方法、前記複合積層体を用いた金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体及びその製造方法に関する。
製品の軽量化が求められる自動車部品やOA機器等の分野において、アルミニウム等の金属材と樹脂とを接合一体化させた金属―樹脂接合体への需要が高まっている。
金属―樹脂接合体における金属と樹脂の接合強度を高めるために、表面処理を施した金属を用いる方法(特許文献1〜3等)や、酸変性を施した樹脂を用いる方法(特許文献4〜7等)が知られている。特許文献4〜7は、極性のない樹脂であるポリオレフィンに酸変性を施して、金属―樹脂接合体における金属と樹脂の接合強度を高める技術を開示している。
特開2012−41579号公報 特開2016−16584号公報 特許第4541153号公報 特開2016−16584号公報 WO2016/199339号公報 WO2016/152118号公報 特開2018−154034号公報
近年、金属―樹脂接合体の樹脂として、機械的物性や電気的特性に優れた樹脂である変性ポリフェニレンエーテルを用いた、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体への需要がある。しかし、自動車部品やOA機器等の用途に十分な接合強度を有する金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体は実現されていない。
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、金属と変性ポリフェニレンエーテルを高い強度で接合する用途に好適な複合積層体及びその関連技術を提供することを課題とする。前記関連技術とは、前記複合積層体の製造方法、前記複合積層体を用いた金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体及びその製造方法、を意味する。
本発明は、前記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
なお、本明細書において、接合とは、物と物を繋合わせることを意味し、接着とはその下位概念であり、テープや接着剤の様な有機材(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)を介して、2つの被着材(接着しようとするもの)を接合状態とすることを意味する。
[1] 金属材と、前記金属材に積層された1層又は複数層の樹脂層からなる樹脂コーティング層とを有する複合積層体であって、前記樹脂層の少なくとも1層が、再変性―変性ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物から形成されてなる再変性―変性ポリフェニレンエーテル層であり、前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層は、変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂との混合物である混合物1を含む層、及び変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂との混合物である混合物2を含む層、から選ばれる少なくとも1種である、複合積層体。
[2] 前記混合物1が、変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液中で、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物を重付加反応させてなるものである、[1]に記載の複合積層体。
[3] 前記混合物1が、変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂を混合してなるものである、[1]に記載の複合積層体。
[4] 前記混合物2が、変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液中で、(メタ)アクリレートモノマーをラジカル重合させてなるものである、[1]に記載の複合積層体。
[5] 前記混合物2が、変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂を混合してなるものである、[1]に記載の複合積層体。
[6] 前記樹脂コーティング層が、更に、熱可塑性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる熱可塑性エポキシ樹脂層及び熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されてなる熱硬化性樹脂層から選ばれる少なくとも1種の樹脂層を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合積層体。
[7] 前記熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[6]に記載の複合積層体。
[8] 前記金属材と前記樹脂コーティング層との間に、前記金属材と前記樹脂コーティング層に接して積層された官能基含有層を有し、前記官能基含有層が、下記(1)〜(7)からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の複合積層体。
(1)シランカップリング剤由来であって、エポキシ基、アミノ基(メタ)アクリロイル基、及びメルカプト基、からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基
(2)シランカップリング剤由来のアミノ基に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(3)シランカップリング剤由来のメルカプト基に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(4)シランカップリング剤由来の(メタ)アクリロイル基に、チオール化合物を反応させてなる官能基
(5)シランカップリング剤由来のエポキシ基に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(6)イソシアネート化合物由来のイソシアナト基
(7)チオール化合物由来のメルカプト基
[9] 前記金属材は、その表面に、ブラスト処理、研磨処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施してなる、[1]〜[8]のいずれかに記載の複合積層体。
[10] 前記金属材がアルミニウムである、[1]〜[8]のいずれかに記載の複合積層体。[11] 前記金属材がアルミニウムである、[9]に記載の複合積層体。
[12] 前記前処理が、エッチング処理とべ−マイト処理から選ばれる少なくとも1種である、[11]に記載の複合積層体。
[13] 前記金属材が、鉄、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる、[1]〜[9]のいずれかに記載の複合積層体。
[14] [1]〜[13]のいずれかに記載の複合積層体の製造方法であって、前記金属材の表面に下記(1’)〜(7’)からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を施し、前記官能基含有層を形成する、複合積層体の製造方法。
(1’) エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有するシランカップリング剤での処理
(2’) アミノ基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(3’) メルカプト基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(4’) (メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤での処理後に、チオール化合物を付加する処理
(5’) エポキシ基を有するシランカップリング剤での処理後に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(6’) イソシアネート化合物での処理
(7’) チオール化合物での処理
[15]
前記官能基含有層を形成する前に、前記金属材に、ブラスト処理、研磨処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施す、[14]に記載の複合積層体の製造方法。
[16] [1]〜[13]のいずれかに記載の複合積層体の樹脂コーティング層側の面と、変性ポリフェニレンエーテルとが接合一体化された、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体。
[17] [16]に記載の金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体を製造する方法であって、前記樹脂コーティング層側の面で、前記変性ポリフェニレンエーテルを射出成形又はプレス成形して、前記変性ポリフェニレンエーテルを前記面に接合させる、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体の製造方法。
本発明によれば、金属と変性ポリフェニレンエーテルを高い強度で接合する用途に好適な複合積層体およびその関連技術を提供することができる。
一実施形態における複合積層体の構成を示す説明図である。 他の実施形態における複合積層体の構成を示す説明図である。 一実施形態における金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体の構成を示す説明図である。 ベーマイト皮膜のSEM写真である。
本発明の一実施形態における複合積層体およびその関連技術について詳述する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」との用語は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。同様に、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
[複合積層体]
図1に示すように、本実施形態の複合積層体1は、金属材2と、前記金属材に積層された1層又は複数層の樹脂層からなる樹脂コーティング層3とを有する複合積層体である。前記樹脂コーティング層3の少なくとも1層が、再変性―変性ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物から形成されてなる再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31である。
<金属材2>
金属材2の金属種は特に限定されるものではない。金属種としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼、銅等が挙げられる。これらのうち、軽量性及び加工容易性等の観点から、アルミニウムが特に好適に用いられる。
金属材2に樹脂コーティング層3を積層する前に、金属材の表面に前処理を施すことが好ましい。
前処理としては、例えば、溶剤等による洗浄、脱脂処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、レーザー処理、エッチング処理、化成処理等が挙げられ、金属材表面に水酸基を発生させる前処理が好ましい。これらの前処理は、1種のみであってもよく、2種以上を施してもよい。これらの前処理の具体的な方法としては、公知の方法を用いることができる。
これらの前処理は、金属材2の表面の汚染物を除去、及び/又は、アンカー効果を目的とし、金属材2の表面に微細な凹凸21を形成して粗面化させるものである。これにより金属材2の表面と、樹脂コーティング層3との接着性を向上させることができ、また、種々の材質(金属材料、有機材料等)の接合対象との接合性の向上にも寄与し得る。
したがって、複合積層体1を製造する際、樹脂コーティング層3を形成する前に、金属材2の表面の汚染物を除去するとともに、アンカー効果を目的として、金属材2の表面に微細な凹凸21を形成して粗面化させる処理、具体的には、特に、ブラスト処理、研磨処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施すことが好ましい。
前記溶剤等による洗浄及び/又は前記脱脂処理としては、金属材2の表面を、アセトン、トルエン等の有機溶剤を用いて脱脂する等の処理が挙げられる。前記溶剤等による洗浄及び/又は前記脱脂処理は、他の前処理の前に行うことが好ましい。
前記ブラスト処理としては、例えば、ショットブラストやサンドブラスト等が挙げられる。
前記研磨処理としては、例えば、研磨布を用いたバフ研磨や、研磨紙(サンドペーパー)を用いたロール研磨、電解研磨等が挙げられる。
プラズマ処理とは、プラズマ処理高圧電源を用いて、電極と呼ばれるロッドから出るプラズマビームで材料表面を叩き、表面に存在する異物油膜を先ず洗浄、素材に応じたガスエネルギー投入することで表面分子を励起する方法で、表面に水酸基や極性基を付与できる大気圧プラズマ処理方法等が挙げられる。
レーザー処理とは、レーザー照射によって表面層のみを急速に加熱、冷却して,表面の特性を改善する技術で表面の粗面化に有効な方法である。公知のレーザー処理技術を使用することができる。
前記エッチング処理としては、例えば、アルカリ法、リン酸−硫酸法、フッ化物法、クロム酸−硫酸法、塩鉄法等の化学的エッチング処理、また、電解エッチング法等の電気化学的エッチング処理等が挙げられる。
金属材がアルミニウムである場合のエッチング処理は、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いたアルカリ法が好ましく、特に、水酸化ナトリウム水溶液を用いた苛性ソーダ法が好ましい。前記アルカリ法は、例えば、金属材であるアルミニウムを濃度3〜20質量%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液に、20〜70℃で1〜15分間浸漬させることにより行うことができる。添加剤として、キレート剤、酸化剤、リン酸塩等を添加してもよい。前記浸漬後、5〜20質量%の硝酸水溶液等で中和(脱スマット)し、水洗、乾燥を行うことが好ましい。
前記化成処理とは、主として金属材の表面に、化成皮膜を形成するものである。
化成処理としては、例えば、ベーマイト処理やジルコニウム処理等が挙げられる。
ベーマイト処理では、金属材であるアルミニウムを熱水処理することにより、該基材表面にベーマイト皮膜が形成される。反応促進剤として、アンモニアやトリエタノールアミン等を水に添加してもよい。例えば、金属材であるアルミニウムを、濃度0.1〜5.0質量%でトリエタノールアミンを含む90〜100℃の熱水中に3秒〜5分間浸漬して行うことが好ましい。
ジルコニウム処理では、金属材であるアルミニウムを、例えば、リン酸ジルコニウム等のジルコニウム塩含有液に浸漬することにより、該基材表面にジルコニウム化合物の皮膜が形成される。例えば、金属材であるアルミニウムを、ジルコニウム処理用の化成剤(例えば、日本パ−カライジング株式会社製「パルコ−ト3762」、同「パルコ−ト3796」等)の45〜70℃の液中に0.5〜3分間浸漬して行うことが好ましい。前記ジルコニウム処理は、前記苛性ソ−ダ法によるエッチング処理後に行うことが好ましい。
金属材がアルミニウムである場合は、特に、エッチング処理及びベーマイト処理から選ばれる少なくとも1種の前処理を含むことが好ましい。
<樹脂コーティング層3>
樹脂コーティング層3は、金属材2の表面上に積層される。樹脂コーティング層3は、前記の前処理が施されていない金属材2の表面に積層されていてもよく、前記の前処理を施した金属材2の表面に積層されていてもよい。あるいはまた、後述の官能基含有層4の表面に積層されていてもよい。
〔再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31〕
樹脂コーティング層3を構成する樹脂層の少なくとも1層は、再変性―変性ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物から形成されてなる再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31である。なお、本明細書において、再変性―変性ポリフェニレンエーテルとは、後述の変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂との混合物、及び/又は変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂との混合物を意味する。
前記金属材上に、このような所定の樹脂コーティング層が積層されていることにより、本実施態様の複合積層体は、変性ポリフェニレンエーテルとの優れた接着性を発揮することができる。
前記樹脂コーティング層を、前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31と前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層以外の層を含む複数層で構成し、再変性―変性ポリフェニレンエーテル層以外の層を、熱可塑性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる熱可塑性エポキシ樹脂層32及び熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる熱硬化性樹脂層33から選ばれる少なくとも1種とすることもできる。
樹脂コーティング層が複数層からなる場合、必須となる再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31が、金属材2と反対側の最表面となるように積層することが好ましい。
前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31は、変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂との混合物1を含む層及び変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂との混合物2を含む層から選ばれる少なくとも1種で構成される。
前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31は、変性ポリフェニレンエーテルを50〜95質量%含むことが好ましく、70〜90質量%含むことがより好ましい。
(変性ポリフェニレンエーテル(m―PPE))
変性ポリフェニレンエーテルは、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドの重合物であるポリフェニレンエーテル(PPE)と、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)等とのポリマーアロイである。前記変性ポリフェニレンエーテルとしては公知のものが使用できる。具体的には、SABIC社製NORYLシリーズ(PPE/PS):731,7310,731F,7310F、旭化成ケミカルズ株式会社製ザイロンシリーズ(PPE/PS,PP/PPE,PA/PPE,PPS/PPE,PPA/PPE)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製エピエースシリーズ、レマロイシリーズ(PPE/PS,PPE/PA)がある。なかでも、PPEとPSとのポリマーアロイが好ましい。
(混合物1)
混合物1は、変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂との混合物である。混合物1に用いることのできる熱可塑性エポキシ樹脂は、現場重合型フェノキシ樹脂、現場硬化型フェノキシ樹脂、現場硬化型エポキシ樹脂等とも呼ばれる樹脂であり、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とが触媒存在下で重付加反応することにより、熱可塑構造、すなわち、リニアポリマー構造を形成する。ここで、リニアポリマーとは、ポリマー分子中に架橋構造を含まず、1次元の直鎖状であるポリマーを意味する。熱可塑性エポキシ樹脂は、架橋構造による3次元ネットワ−クを構成する熱硬化性樹脂とは異なり、熱可塑性を有する。
(2官能エポキシ樹脂)
前記2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。具体的には、三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)828」、同「jER(登録商標)834」、同「jER(登録商標)1001」、同「jER(登録商標)1004」、同「jER(登録商標) YX―4000」等が挙げられる。
(2官能フェノール化合物)
前記2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノール、ビフェノール等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、これらの組み合わせとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF、ビフェニル型エポキシ樹脂と4,4’−ビフェノール等が挙げられる。また、例えば、ナガセケムテックス株式会社製「WPE190」と「EX―991L」との組み合わせも挙げられる。
混合物1は、変性ポリフェニレンエーテルの溶液中で、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを触媒存在下で重付加反応させることで得ることができる。又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを溶液中の触媒存在下で重付加反応させた後に、変性ポリフェニレンエーテルを混合してもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂の重付加反応のための触媒としては、例えば、トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物等が好適に用いられる。
混合物1を製造する際に使用する2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物の合計量は、変性ポリフェニレンエーテルを100質量部としたとき、5〜100質量部であることが好ましく、5〜60質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることがさらに好ましい。
(混合物2)
混合物2は、変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂との混合物である。
((メタ)アクリル樹脂)
混合物2に用いる(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位を25質量%以上含有する樹脂である。(メタ)アクリレートモノマー以外の他のモノマーが共重合されていてもよい。前記他のモノマーとして、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、なかでもスチレン、メタクリル酸が好ましい。また強度アップのため一部多官能のモノマーを共重合させてもよい。
混合物2に用いる変性ポリフェニレンエーテルは、混合物1を生成するときと同じものを用いることができる。
((メタ)アクリレートモノマー)
(メタ)アクリレートモノマーとしては、公知の単官能の(メタ)アクリル酸エステルが使用される。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロムプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
混合物2は変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液中で、(メタ)アクリレートモノマーをラジカル重合させることで得ることができる。又は混合物2は、変性ポリフェニレンエーテルと、(メタ)アクリル樹脂とを常法により混合して得ることもできる。
混合物2を製造する際に使用する(メタ)アクリル樹脂の合計量は、変性ポリフェニレンエーテルを100質量部としたとき、5〜100質量部であることが好ましく、5〜60質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることがさらに好ましい。
〔熱可塑性エポキシ樹脂層32〕
前記樹脂コーティング層3を、前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31とそれ以外の層との複数層の樹脂層で構成し、その再変性―変性ポリフェニレンエーテル層以外の樹脂層の少なくとも1層を、熱可塑性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる熱可塑性エポキシ樹脂層32で構成することができる。
前記熱可塑性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物は、熱可塑性エポキシ樹脂を40質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。
(熱可塑性エポキシ樹脂)
熱可塑性エポキシ樹脂は、混合物1の製造に使用する熱可塑性エポキシ樹脂と同様に、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とが触媒存在下で重付加反応することにより、熱可塑構造、すなわち、リニアポリマー構造を形成する樹脂であり、架橋構造による3次元ネットワークを構成する熱硬化性樹脂とは異なり、熱可塑性を有する。
熱可塑性エポキシ樹脂は、このような特徴を有していることにより、現場重合によって、金属材との接着性に優れ、かつ、再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31との接着性に優れた熱可塑性エポキシ樹脂層32を形成することができる。
したがって、複合積層体を製造する際、再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31より下層(金属材2側)に、熱可塑性エポキシ樹脂層32を形成することが好ましい。
熱可塑性エポキシ樹脂層32は、熱可塑性エポキシ樹脂のモノマーを含む組成物を重付加反応させることにより形成することができる。
前記重付加反応は、後述の官能基含有層4の表面上で行うことが好ましい。このような態様で形成された熱可塑性エポキシ樹脂層32を含む樹脂コーティング層3は、金属材2との接着性に優れ、かつ、後述の接合対象との接合性に優れる。
熱可塑性エポキシ樹脂のモノマーを含む組成物により、熱可塑性エポキシ樹脂層32を形成するコーティング方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。
なお、熱可塑性エポキシ樹脂のモノマーを含む組成物は、熱可塑性エポキシ樹脂の重付加反応を十分に進行させ、所望の樹脂コーティング層を形成させるため、溶剤や、必要応じて着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。この場合、前記組成物の溶剤以外の含有成分中、熱可塑性エポキシ樹脂のモノマーが主成分であることが好ましい。前記主成分とは、熱可塑性エポキシ樹脂の含有率が50〜100質量%であることを意味する。前記含有率は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
熱可塑性エポキシ樹脂を得るためのモノマーは、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール性化合物との組み合わせが好ましい。
前記重付加反応は、反応化合物等の種類にもよるが、120〜200℃で、5〜90分間加熱して行うことが好ましい。具体的には、前記樹脂組成物をコーティングした後、適宜溶剤を揮発させ、その後、加熱して重付加反応を行うことにより、熱可塑性エポキシ樹脂層32を形成することができる。
〔熱硬化性樹脂層33〕
前記樹脂コーティング層3を、前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層31とそれ以外の層との複数層の樹脂層で構成し、前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層以外の樹脂層の少なくとも1層を、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されてなる熱硬化性樹脂層33で構成することもできる。
なお、前記熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂の硬化反応を十分に進行させ、所望の樹脂コーティング層を形成させるため、溶剤や、必要応じて着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。この場合、前記樹脂組成物の溶剤以外の含有成分中、前記熱硬化性樹脂が主成分であることが好ましい。前記主成分とは、前記熱硬化性樹脂の含有率が40〜100質量%であることを意味する。前記含有率は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂層33は、これらの樹脂のうちの1種単独で形成されていてもよく、2種以上が混合されて形成されていてもよい。あるいはまた、熱硬化性樹脂層33を複数層で構成し、各層を異なる種類の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で形成することもできる。
前記熱硬化性樹脂のモノマーを含む組成物により、熱硬化性樹脂層33を形成するコーティング方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。
なお、本実施態様で言う熱硬化性樹脂は、広く、架橋硬化する樹脂を意味し、加熱硬化タイプに限られず、常温硬化タイプや光硬化タイプも包含するものとする。前記光硬化タイプは、可視光や紫外線の照射によって短時間での硬化も可能である。前記光硬化タイプを、加熱硬化タイプ及び/又は常温硬化タイプと併用してもよい。前記光硬化タイプとしては、例えば、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)LC−760」、同「リポキシ(登録商標)LC−720」等のビニルエステル樹脂が挙げられる。
(ウレタン樹脂)
前記ウレタン樹脂は、通常、イソシアネート化合物のイソシアナト基とポリオール化合物の水酸基との反応によって得られる樹脂であり、ASTM D16において、「ビヒクル不揮発成分10質量%以上のポリイソシアネートを含む塗料」と定義されるものに該当するウレタン樹脂が好ましい。前記ウレタン樹脂は、一液型であっても、二液型であってもよい。
一液型ウレタン樹脂としては、例えば、油変性型(不飽和脂肪酸基の酸化重合により硬化するもの)、湿気硬化型(イソシアナト基と空気中の水との反応により硬化するもの)、ブロック型(ブロック剤が加熱により解離し再生したイソシアナト基と水酸基が反応して硬化するもの)、ラッカー型(溶剤が揮発して乾燥することにより硬化するもの)等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い容易性等の観点から、湿気硬化型一液ウレタン樹脂が好適に用いられる。具体的には、昭和電工株式会社製「UM−50P」等が挙げられる。
二液型ウレタン樹脂としては、例えば、触媒硬化型(イソシアナト基と空気中の水等とが触媒存在下で反応して硬化するもの)、ポリオール硬化型(イソシアナト基とポリオール化合物の水酸基との反応により硬化するもの)等が挙げられる。
前記ポリオール硬化型におけるポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、前記ポリオール硬化型におけるイソシアナト基を有するイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)又はその混合物、p−フェニレンジシソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やその多核体混合物であるポリメリックMDI等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族イソシアネート等が挙げられる。
前記ポリオール硬化型の二液型ウレタン樹脂における前記ポリオール化合物と前記イソシアネート化合物の配合比は、水酸基/イソシアナト基のモル当量比が0.7〜1.5の範囲であることが好ましい。
前記二液型ウレタン樹脂において使用されるウレタン化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジメチルエーテルアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジプロピレン−トリアミン、N−メチルモルフォリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等のアミン系触媒;ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレート等の有機錫系触媒等が挙げられる。
前記ポリオール硬化型においては、一般に、前記ポリオール化合物100質量部に対して、前記ウレタン化触媒が0.01〜10質量部配合されることが好ましい。
(エポキシ樹脂)
前記エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂である。
前記エポキシ樹脂の硬化前のプレポリマーとしては、例えば、エーテル系ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、エステル系の芳香族エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、エーテル・エステル系エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適に用いられる。これらのうち、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、具体的には、三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)828」、同「jER(登録商標)1001」等が挙げられる。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、具体的には、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製「D.E.N.(登録商標)438(登録商標)」等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂に使用される硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物、フェノール樹脂、チオール類、イミダゾール類、カチオン触媒等の公知の硬化剤が挙げられる。前記硬化剤は、長鎖脂肪族アミン又は/及びチオール類との併用により、伸び率が大きく、耐衝撃性に優れるという効果が得られる。
前記チオール類の具体例としては、後述の官能基含有層を形成するためのチオール化合物として例示したものと同じ化合物が挙げられる。これらの中でも、伸び率及び耐衝撃性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」)が好ましい。
(ビニルエステル樹脂)
前記ビニルエステル樹脂は、ビニルエステル化合物を重合性モノマー(例えば、スチレン等)に溶解したものである。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とも呼ばれるが、前記ビニルエステル樹脂には、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂も包含するものとする。
前記ビニルエステル樹脂としては、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)、「塗料用語辞典」(色材協会、1993年発行)等に記載されているものも使用することができ、また、具体的には、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)R−802」、同「リポキシ(登録商標)R−804」、同「リポキシ(登録商標)R−806」等が挙げられる。
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、イソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリルモノマー(及び、必要に応じて水酸基含有アリルエーテルモノマー)を反応させて得られるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーが挙げられる。具体的には、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)R−6545」等が挙げられる。
前記ビニルエステル樹脂は、有機過酸化物等の触媒存在下での加熱によるラジカル重合で硬化させることができる。
前記有機過酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアリルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシジカーボネート類等が挙げられる。これらをコバルト金属塩等と組み合わせることにより、常温での硬化も可能となる。
前記コバルト金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、水酸化コバルト等が挙げられる。これらの中でも、ナフテン酸コバルト又は/及びオクチル酸コバルトが好ましい。
(不飽和ポリエステル樹脂)
前記不飽和ポリエステル樹脂は、ポリオール化合物と不飽和多塩基酸(及び、必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を重合性モノマー(例えば、スチレン等)に溶解したものである。
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)、「塗料用語辞典」(色材協会、1993年発行)等に記載されているものも使用することができ、また、具体的には、昭和電工株式会社製「リゴラック(登録商標)」等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂は、前記ビニルエステル樹脂と同様の触媒存在下での加熱によるラジカル重合で硬化させることができる。
〔樹脂コーティング層の作用〕
樹脂コーティング層3は、金属材2の表面に優れた接着性で形成され、接合対象である変性ポリフェニレンエーテルとも優れた接着性を発揮するものである。また樹脂コーティング層3により金属材2の表面が保護され、金属材2の表面への汚れの付着や金属材2の表面の酸化等の変質を抑制することができる。
上記のように、樹脂コーティング層3によって、接合対象である変性ポリフェニレンエーテルとの優れた接合性が金属材2に付与され得る。さらに、上記のように金属材2の表面が保護された状態で、数ヶ月間の長期にわたって、優れた接着性が得られる状態を維持し得る複合積層体を得ることもできる。
上記のように、樹脂コーティング層3は、金属材2に、接合対象である変性ポリフェニレンエーテルに対する優れた接合性を付与する作用を奏し、樹脂コーティング層は、複合積層体のプライマー層とすることができる。
ここで言うプライマー層とは、例えば、後述の金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体5のように、金属材2が樹脂材等の接合対象と接合一体化される際に、金属材2と接合対象との間に介在し、金属材2の接合対象に対する接着性を向上させる層を意味するものとする。
<官能基含有層4>
図2に示すように、金属材2と樹脂コーティング層3との間に、金属材2と樹脂コーティング層3に接して積層された一層又は複数層の官能基含有層4を有することもできる。
官能基含有層4を有する場合、該官能基含有層が有する官能基が、金属材2の表面の水酸基および樹脂コーティング層3を構成する樹脂が有する官能基と、それぞれ反応して形成する化学結合により、金属材2の表面と、樹脂コーティング層3との接着性を向上させる効果が得られる。また、接合対象との接合性を向上させる効果も得られる。
官能基含有層4は、二次元に広がったシランカップリング剤処理層の表面の官能基の少なくとも一部に、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミノ化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物を反応させて有機材料が有する官能基と化学結合可能な官能基を三次元方向に延ばした官能基含有構造とすることができる。前記イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミノ化合物からなる群より選ばれる一種以上の化合物は、シランカップリング剤処理層の表面の官能基と反応可能な基及び前記樹脂コーティング層を構成する樹脂が有する官能基と反応可能な基を有する化合物であることが好ましい。
《処理》
官能基含有層4は、金属材2の表面に下記(1’)〜(7’)からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を施し、形成したものであることが好ましい。
(1’) エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有するシランカップリング剤での処理
(2’) アミノ基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(3’) メルカプト基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(4’) (メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤での処理後に、チオール化合物を付加する処理
(5’) エポキシ基を有するシランカップリング剤での処理後に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(6’) イソシアネート化合物での処理
(7’) チオール化合物での処理
《官能基》
官能基含有層4は、前記処理により導入された官能基を含むことが好ましく、具体的には、下記(1)〜(7)からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。
(1)シランカップリング剤由来であって、エポキシ基、アミノ基(メタ)アクリロイル基、及びメルカプト基、からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基
(2)シランカップリング剤由来のアミノ基に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(3)シランカップリング剤由来のメルカプト基に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(4)シランカップリング剤由来の(メタ)アクリロイル基に、チオール化合物を反応させてなる官能基
(5)シランカップリング剤由来のエポキシ基に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(6)イソシアネート化合物由来のイソシアナト基
(7)チオール化合物由来のメルカプト基
金属材2に官能基含有層4を形成する前に、金属材2の表面に前記の前処理を施すこともできる。
前処理を施すことにより、微細な凹凸21によるアンカー効果と、官能基含有層4が有する官能基が金属材2の表面の水酸基および樹脂コーティング層3を構成する樹脂が有する官能基のそれぞれと反応して形成する化学結合との相乗効果によって、金属材2の表面と、樹脂コーティング層3との接着性、及び、接合対象との接合性を向上させることもできる。
前記シランカップリング剤、前記イソシアネート化合物、前記チオール化合物等により、官能基含有層を形成する方法は特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。具体的には、金属材を、濃度5〜50質量%のシランカップリング剤等の常温〜100℃の溶液中に1分〜5日間浸漬した後、常温〜100℃で1分〜5時間乾燥させる等の方法により行うことができる。
〔シランカップリング剤〕
前記シランカップリング剤としては、例えば、ガラス繊維の表面処理等に用いられる公知のものを使用することができる。シランカップリング剤を加水分解させて生成したシラノール基、又はこれがオリゴマー化したシラノール基が、金属材2の表面に存在する水酸基と反応して結合することにより、樹脂コーティング層3と化学結合可能な該シランカップリング剤の構造に基づく官能基を、金属材2に対して付与する(導入する)ことができる。
前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ジチオールトリアジンプルピルトリエトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、その他の有効なシランカップリング剤として3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
〔エポキシ化合物〕
上記エポキシ化合物としては、公知のエポキシ化合物等を使用できる。多価エポキシ化合物や、エポキシ基以外にアルケニル基を有する化合物が好ましい。前記エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端基がラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基やアリル基とすることができるグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルや、末端基がエポキシ基である1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。また脂環式のエポキシ化合物でもよく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(株式会社ダイセル製 サイクロマーM100)、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(株式会社ダイセル製 セロキサイド2000)、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製 セロキサイド2021P)等が挙げられる。
〔チオール化合物〕
前記チオール化合物は、該チオール化合物中のメルカプト基が、金属材2の表面に存在する水酸基と反応して結合することにより、樹脂コーティング層や接合対象と化学結合可能な該チオール化合物の構造に基づく官能基を、金属材に対して付与する(導入する)ことができる。
前記チオール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端基がチオール基となるペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトプロピオネ−ト)(例えば、三菱化学株式会社製「QX40」、東レ・ファインケミカル株式会社製「QE−340M」)、エーテル系一級チオール(例えば、コグニス(Cognis)社製「カップキュア3−800」)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) BD1」)、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトブチレート)(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) NR1」)等が挙げられる。
〔アミノ化合物〕
上記アミノ化合物としては、公知のアミノ化合物等を使用できる。多官能アミノ化合物や、アミノ基(アミドを含む)以外にアルケニル基を有する化合物が好ましい。前記アミノ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端がアミノ基となるエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、4−アミノメチルオクタメチレンジアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3,3’−メチルイミノビス(プロピルアミン)、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロピルオキシ)エタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、アミノエチルピペラジン、末端基がラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基とすることができる(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
〔イソシアネート化合物〕
前記イソシアネート化合物は、該イソシアネート化合物中のイソシアナト基が、金属材2の表面に存在する水酸基と反応して結合することにより、樹脂コーティング層3と化学結合可能な該イソシアネート化合物の構造に基づく官能基を、金属材に対して付与する(導入する)ことができる。
前記イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端基がイソシアナトとなる多官能イソシアネートであるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の他、末端基がラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基とすることができるイソシアネート化合物である2−イソシアナトエチルメタクリレート(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMOI(登録商標)」)、2−イソシアネートエチルアクリレート(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズAOI(登録商標)」、同「AOI−VM(登録商標)」)、1,1−(ビスアクリロイルオキシエチル)エチルイソシアネート(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズBEI(登録商標)」)等が挙げられる。
[金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体5]
図3に示すように、本実施形態の金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体5は、複合積層体1の樹脂コーティング層3が、上述したように、プライマー層であり、該プライマー層側の面と、変性ポリフェニレンエーテル6とが接合一体化されたものである。
前記プライマー層の厚さ(乾燥後の厚さ)は、前記接合対象の材質や接合部分の接触面積にもよるが、前記プライマー層側の面と変性ポリフェニレンエーテルとの優れた接着性を得る観点から、1μm〜500μmであることが好ましく、より好ましくは3μm〜100μm、さらに好ましくは5μm〜70μmである。なお、前記プライマー層が複数層の場合、プライマー層の厚さ(乾燥後の厚さ)は、各層合計の厚さとする。
金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体5における変性ポリフェニレンエーテルは、特に限定されるものではなく、前述のものが使用できる。
金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体5を製造する方法としては、複合積層体1と変性ポリフェニレンエーテル6の成形体とを別個に作製したものを接着させて接合一体化させることができる。
また、変性ポリフェニレンエーテル6の成形体を成形するのと同時に、複合積層体1と接合一体化させることもできる。具体的には、変性ポリフェニレンエーテル6を、例えば、射出成形、プレス成形、トランスファー成形等の方法で成形する際に、複合積層体1の前記プライマー層側の面と変性ポリフェニレンエーテル6とを接合一体化させることにより、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体を得ることができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<製造例1>
フラスコに変性ポリフェニレンエーテル(SABIC社製 NOLYL731):3.77g、キシレン:95gを仕込み、撹拌しながら125℃に昇温して溶解した。次に、2官能エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)1001):1.0g、ビスフェノールA:0.22g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール:0.005gをフラスコ中に投入し、125℃で30分間撹拌し、前記変性ポリフェニレンエーテル100質量部に対して32質量部の熱可塑性エポキシ樹脂で変性した再変性-変性ポリフェニレンエーテル:再変性m−PPE−1を得た。
<製造例2>
フラスコに変性ポリフェニレンエーテル(SABIC社製 NOLYL731):3.75g、キシレン:95gを仕込み、撹拌しながら125℃に昇温して溶解した。次に、2官能エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)1007):1.18、ビスフェノールA:0.065g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール:0.004gをフラスコ中に投入し、125℃で30分間撹拌し、前記変性ポリフェニレンエーテル100質量部に対して33質量部の熱可塑性エポキシ樹脂で変性した再変性―変性ポリフェニレンエーテル:再変性m−PPE−2を得た。
<製造例3>
フラスコに変性ポリフェニレンエーテル(SABIC社製 NOLYL731):7.0g、キシレン:95gを仕込み、撹拌しながら125℃に昇温して溶解した。次にメタクリル酸:1.0g、メタクリル酸メチル:1.0g、スチレン:1.0gを混合したモノマー混合物に有機過酸化物触媒(日油株式会社製 パーブチル(登録商標)O):0.1gを混合したものを滴下し、撹拌しながら125℃で30分間撹拌し、メタクリル樹脂で変性した再変性-変性ポリフェニレンエーテル:再変性m−PPE−3を得た。
<製造例4>
フラスコに、2官能エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)1007):1.18g、ビスフェノールA:0.065g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール:0.004g、キシレン:95gを仕込み、140℃に昇温して1時間撹拌しながら反応し熱可塑性エポキシ樹脂を得た。次に、変性ポリフェニレンエーテル(SABIC社製 NOLYL731):1.24gを投入し、10分間撹拌、混合して再変性m−PPE−4を得た。
<製造例5>
フラスコにキシレン:95gを仕込み、メタクリル酸:1.0g、メタクリル酸メチル:1.0g、スチレン:1.0gを混合したモノマー混合物に有機過酸化物触媒(日油株式会社製 パーブチル(登録商標)):0.1gを混合したものを滴下し、125℃で30分間撹拌し、メタクリル樹脂溶液を得た。次にポリフェニレンエーテル(SABIC社製 NOLYL731):3.0gを投入し、10分間撹拌、混合してメタクリル樹脂で変性した再変性ポリフェニレンエーテル:再変性m−PPE−5得た。
<実施例1−1>
(前処理)
18mm×45mm、厚さ1.5mmのアルミニウム板(A6063)を、濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に1.5分間浸漬した後、濃度5質量%の硝酸水溶液で中和し、水洗、乾燥を行うことにより、エッチング処理を行った。
次いで、前記エッチング処理後のアルミニウム板を、純水中で10分間煮沸した後、250℃で10分間ベーキングすることによって、ベーマイト処理を行い、前記アルミニウム板の表面に表面処理部(表面凹凸を有するベーマイト皮膜)を形成した。
前記ベーマイト処理後のアルミニウム板の表面を、SEM写真(走査電子顕微鏡写真、45°傾斜観察)により観察したところ、図4に示すように、ヒゲ状の凹凸を表面に有するベーマイト皮膜が形成されていることが確認された。
(官能基含有層の形成)
次に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−903;シランカップリング剤)2gを工業用エタノール1000gに溶解させた70℃のシランカップリング剤含有溶液中に、前記前処理後のアルミニウム板を20分間浸漬した。該アルミニウム板を取り出して乾燥させ、前記ベーマイト皮膜の表面に、官能基(アミノ基)含有層を形成した。
(樹脂コーティング層の形成)
次に、製造例1で得た再変性m−PPE−1を前記アルミニウム板の官能基含有層の表面に塗布し、キシレンを揮発させ150℃で30分間保持して、前記官能基含有層の表面に、再変性m−PPE−1の樹脂コーティング層(厚さ30μm)が形成された複合積層体を作製した。
<実施例1−2>
実施例1−1で作製した複合積層体の樹脂コーティング層側の表面に、接合対象である変性ポリフェニレンエーテル樹脂(SABIC社製 NOLYL731)を、射出成形機(住友重機械工業株式会社製 SE100V;シリンダー温度290℃、ツール温度120℃、インジェクションスピード50mm/sec、ピーク/ホールディング圧力175/150[MPa/MPa])にて射出成形することにより、ISO19095に準拠した引張試験用試験片(m−PPE樹脂、10mm×45mm×3mm、接合部長さ5mm)(金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体)を作製した。
(接合性の評価)
実施例1−2で作製した引張試験用試験片について、常温で(温度23℃、50%RH)1日間放置後、ISO19095 1−4に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所製 万能試験機オートグラフ「AG−IS」;ロードセル10kN、引張速度10mm/min、温度23℃、50%RH)にて、引張剪断接着強度試験を行い、接合強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
<実施例2−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に、ヒゲ状の凹凸を表面に有するベーマイト皮膜を形成した。
(官能基含有層の形成)
次に、実施例1−1と同様の操作を行い、前記ベーマイト皮膜の表面に、官能基(アミノ基)含有層を形成した。
(樹脂コーティング層の形成:1層目)
前記官能基含有層の表面に、2官能エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)1001):100g、ビスフェノールA:24g、及びトリエチルアミン:0.4gを、アセトン250g中に溶解してなる熱可塑性エポキシ樹脂組成物を、乾燥後の厚さが30μmになるようにスプレー法にて塗布した。空気中に常温で30分間放置することによって溶剤を揮発させた後、150℃の炉中に30分間放置して重付加反応を行い、常温まで放冷して、1層目の樹脂コーティング層(熱可塑性エポキシ樹脂層)を形成した。
(樹脂コーティング層の形成:2層目)
次に、製造例3で得た再変性m−PPE−3を、前記熱可塑性エポキシ樹脂層の表面に塗布し、キシレンを揮発させ150℃で30分間保持して、前記熱可塑性エポキシ樹脂層の表面に、再変性m−PPE−3の樹脂コーティング層(厚さ30μm)が形成された複合積層体を作製した。
<実施例2−2>
実施例2−1で作製した複合積層体の2層目の樹脂コーティング層側の表面に、実施例1−2と同様の操作を行い、引張試験用試験片を作製した。
その試験片について、実施例1−2と同じ手法で接合強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
<実施例3−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に、ヒゲ状の凹凸を表面に有するベーマイト皮膜を形成した。
(官能基含有層の形成)
次に、前記前処理後のアルミニウム板を、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−503;シランカップリング剤)0.5gを工業用エタノール100gに溶解せしめてなる70℃のシランカップリング剤溶液中に、5分間浸漬した後、該アルミニウム板を取り出して乾燥させ、アルミニウム板の表面に、シランカップリング剤由来の官能基(メタクリロイルオキシ基)を導入した。
そしてさらに2官能チオール化合物1,4ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製 カレンズMT BD1):0.6g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30):0.05gをトルエン150g中に溶解した溶液に70℃で10分間浸漬した後に引き揚げて乾燥した。このようにして、化学結合可能な官能基を有する官能基(メルカプト基)含有層を形成した。
(樹脂コーティング層の形成)
次に、製造例2で得た再変性m−PPE−2を前記アルミニウム板の官能基含有層の表面に塗布し、キシレンを揮発させ150℃で30分間保持して、前記官能基含有層の表面に、再変性m−PPE−2の樹脂コーティング層(厚さ30μm)が形成された複合積層体を作製した。
<実施例3−2>
実施例3−1で作製した複合積層体の樹脂コーティング層側の表面に、実施例1−2と同様の操作を行い、引張試験用試験片を作製した。
その試験片について、実施例1−2と同じ手法で接合強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
<実施例4−1>
(前処理)
18mm×45mm、厚さ1.5mmの銅板の表面を、#1000番サンドペーパーで研磨しアセトンで洗浄した。
(官能基含有層の形成)
次に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−903;シランカップリング剤)2gを工業用エタノール1000gに溶解させた70℃のシランカップリング剤含有溶液中に、前記前処理後の銅板を20分間浸漬した。該銅板を取り出して乾燥させ、前記銅板の表面に、官能基(アミノ基)含有層を形成した。
(樹脂コーティング層の形成)
次に、製造例4で得た再変性m−PPE−4を前記銅板の官能基含有層の表面に塗布し、キシレンを揮発させ150℃で30分間保持して、前記官能基含有層の表面に、再変性m−PPE−4の樹脂コーティング層(厚さ30μm)が形成された複合積層体を作製した。
<実施例4−2>
実施例4−1で作製した複合積層体の樹脂コーティング層側の表面に、実施例1−2と同様の操作を行い、引張試験用試験片を作製した。
その試験片について、実施例1−2と同じ手法で接合強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
<実施例5−1>
(前処理)
18mm×45mm、厚さ1.5mmの鉄板の表面を、#100番サンドペーパーで研磨しアセトンで洗浄した。
(樹脂コーティング層の形成)
次に、製造例5で得た再変性m−PPE−5を前記鉄板の表面に塗布し、キシレンを揮発させ150℃で30分間保持して、前記鉄板の表面に、再変性m−PPE−5の樹脂コーティング層(厚さ30μm)が形成された複合積層体を作製した。
<実施例5−2>
実施例5−1で作製した複合積層体の樹脂コーティング層側の表面に、実施例1−2と同様の操作を行い、引張試験用試験片を作製した。
その試験片について、実施例1−2と同じ手法で接合強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
<実施例6−1>
(前処理)
18mm×45mm、厚さ1.5mmのステンレス板(SUS304)の表面を、#100番サンドペーパーで研磨しアセトンで洗浄した。
(官能基含有層の形成)
次に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−903;シランカップリング剤)2gを工業用エタノール1000gに溶解させた70℃のシランカップリング剤含有溶液中に、前記前処理後のステンレス板を20分間浸漬した。該ステンレス板を取り出して乾燥させ、ステンレス板の表面に、シランカップリング剤由来の官能基(アミノ基)を導入した。続いてペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」):1.2g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30):0.05gをトルエン150g中に溶解した溶液に70℃で5分間浸漬した後に引き揚げて乾燥した。このようにして、化学結合可能な官能基(メルカプト基)を有する官能基含有層を形成した。
(樹脂コーティング層の形成)
固形ビニルエステル樹脂(昭和電工株式会社製 VR−77)100gをアセトン100g中に溶解し、さらに有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製 パーブチル(登録商標)O)1.0gを混合した熱硬化性樹脂組成物を、官能基含有層の形成後のステンレス板の官能基付着面(以下、官能基含有層表面という)に、乾燥厚さが15μmになるようにスプレー法にて塗布した後、空気中に常温で1時間放置することによって溶剤の揮発を行った。その後、120℃の乾燥炉中に30分間放置しビニルエステル樹脂の硬化を行って熱硬化性樹脂層(樹脂コーティング層の1層目)を形成させた。
続いて、製造例5で得た再変性m−PPE−5を前記ステンレス板の熱硬化性樹脂層の表面に塗布し、キシレンを揮発させ150℃で30分間保持して、前記官能基含有層の表面に、再変性m−PPE−5の樹脂コーティング層(厚さ30μm)が形成された複合積層体を作製した。
<実施例6−2>
実施例6−1で作製した複合積層体の樹脂コーティング層側の表面に、実施例1−2と同様の操作を行い、引張試験用試験片を作製した。
その試験片について、実施例1−2と同じ手法で接合強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
<比較例1−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に、ヒゲ状の凹凸を表面に有するベーマイト皮膜を形成した。
<比較例1−2>
比較例1−1のベーマイト皮膜の表面に、実施例1−2と同様の射出成形操作を行ったが、前記m−PPE樹脂は、前記ベーマイト皮膜の表面に接着せず、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体を作製することはできなかった。
<比較例2−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に、ヒゲ状の凹凸を表面に有するベーマイト皮膜を形成した。
(官能基含有層の形成)
次に、実施例1−1と同様の操作を行い、前記ベーマイト皮膜の表面に、官能基(アミノ基)含有層を形成した。
<比較例2−2>
比較例2−1の官能基含有層の表面に、実施例1−2と同様の操作を行い、引張試験用試験片を作製した。
その試験片について、実施例1−2と同じ手法で接合強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
Figure 2021029227

表1の実施例(1−2)〜実施例(6−2)に示すように、再変性―変性ポリフェニレンエーテル層を含む樹脂コーティング層を有する複合積層体を用いることで、金属と変性ポリフェニレンエーテルを高い強度で接合することができる。
本発明に係る複合積層体は、変性ポリフェニレンエーテルと接合一体化されて、例えば、ドアサイドパネル、ボンネット、ルーフ、テールゲート、ステアリングハンガー、Aピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラー、クラッシュボックス、パワーコントロールユニット(PCU)ハウジング、電動コンプレッサー部材(内壁部、吸入ポート部、エキゾーストコントロールバルブ(ECV)挿入部、マウントボス部等)、リチウムイオン電池(LIB)スペーサー、電池ケース、LEDヘッドランプ等の自動車用部品や、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットパソコン、スマートウォッチ、大型液晶テレビ(LCD−TV)、屋外LED照明の構造体等として用いられるが、特にこれら例示の用途に限定されるものではない。
1 複合積層体
2 金属材
21 微細な凹凸
3 樹脂コーティング層(プライマー層)
31 再変性―変性ポリフェニレンエーテル層
32 熱可塑性エポキシ樹脂層
33 熱硬化性樹脂層
4 官能基含有層
5 金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体
6 変性ポリフェニレンエーテル


Claims (17)

  1. 金属材と、前記金属材に積層された1層又は複数層の樹脂層からなる樹脂コーティング層とを有する複合積層体であって、
    前記樹脂層の少なくとも1層が、再変性―変性ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物から形成されてなる再変性―変性ポリフェニレンエーテル層であり、
    前記再変性―変性ポリフェニレンエーテル層は、
    変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂との混合物である混合物1を含む層、及び変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂との混合物である混合物2を含む層、から選ばれる少なくとも1種である、複合積層体。
  2. 前記混合物1が、変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液中で、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物を重付加反応させてなるものである、請求項1に記載の複合積層体。
  3. 前記混合物1が、変性ポリフェニレンエーテルと熱可塑性エポキシ樹脂を混合してなるものである、請求項1に記載の複合積層体。
  4. 前記混合物2が、変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液中で、(メタ)アクリレートモノマーをラジカル重合させてなるものである、請求項1に記載の複合積層体。
  5. 前記混合物2が、変性ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル樹脂を混合してなるものである、請求項1に記載の複合積層体。
  6. 前記樹脂コーティング層が、更に、熱可塑性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる熱可塑性エポキシ樹脂層及び熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されてなる熱硬化性樹脂層から選ばれる少なくとも1種の樹脂層を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合積層体。
  7. 前記熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の複合積層体。
  8. 前記金属材と前記樹脂コーティング層との間に、前記金属材と前記樹脂コーティング層に接して積層された官能基含有層を有し、
    前記官能基含有層が、下記(1)〜(7)からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合積層体。
    (1)シランカップリング剤由来であって、エポキシ基、アミノ基(メタ)アクリロイル基、及びメルカプト基、からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基
    (2)シランカップリング剤由来のアミノ基に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
    (3)シランカップリング剤由来のメルカプト基に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
    (4)シランカップリング剤由来の(メタ)アクリロイル基に、チオール化合物を反応させてなる官能基
    (5)シランカップリング剤由来のエポキシ基に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
    (6)イソシアネート化合物由来のイソシアナト基
    (7)チオール化合物由来のメルカプト基
  9. 前記金属材は、その表面に、ブラスト処理、研磨処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施してなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合積層体。
  10. 前記金属材がアルミニウムである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合積層体。
  11. 前記金属材がアルミニウムである、請求項9に記載の複合積層体。
  12. 前記前処理が、エッチング処理とベ−マイト処理から選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載の複合積層体。
  13. 前記金属材が、鉄、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合積層体。
  14. 請求項8〜13のいずれか1項に記載の複合積層体の製造方法であって、
    前記金属材の表面に下記(1’)〜(7’)からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を施し、前記官能基含有層を形成する、複合積層体の製造方法。
    (1’) エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有するシランカップリング剤での処理
    (2’) アミノ基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を付加する処理
    (3’) メルカプト基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
    (4’) (メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤での処理後に、チオール化合物を付加する処理
    (5’) エポキシ基を有するシランカップリング剤での処理後に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
    (6’) イソシアネート化合物での処理
    (7’) チオール化合物での処理
  15. 前記官能基含有層を形成する前に、前記金属材に、ブラスト処理、研磨処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施す、請求項14に記載の複合積層体の製造方法。
  16. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合積層体の樹脂コーティング層側の面と、変性ポリフェニレンエーテルとが接合一体化された、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体。
  17. 請求項16に記載の金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体を製造する方法であって、前記樹脂コーティング層側の面で、前記変性ポリフェニレンエーテルを射出成形又はプレス成形して、前記変性ポリフェニレンエーテルを前記面に接合させる、金属―変性ポリフェニレンエーテル接合体の製造方法。

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