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JPWO2019189615A1 - 紙または板紙の製造方法 - Google Patents

紙または板紙の製造方法 Download PDF

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義弘 青木
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隆範 乙幡
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丈夫 泉谷
寛之 奥村
寛之 奥村
友紀 川真田
友紀 川真田
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Abstract

原料パルプに化学変性パルプを添加して混合パルプを調製する工程、当該混合パルプを叩解する工程、前記叩解後の混合パルプを含む紙料を調製する工程、および当該紙料を抄紙する工程を含む、紙または板紙の製造方法を提供する。

Description

本発明は、紙または板紙の製造方法に関する。
紙は、印刷用紙や包装用紙、紙器容器、板紙等の種々の分野に使用されており、物理的特性の向上と製造の省力化との両立が常に要求されている。近年では紙に、セルロースナノファイバー等の化学変性微細セルロースを添加して、紙の強度等の物理的特性を向上させることが提案されている(例えば特許文献1)。
また、パルプの叩解(リファイニング)においては、一般に大きな機械エネルギーが必要とされるため、少ないエネルギーで大きな叩解効果が得られれば製造の省力化の観点から極めて有利である。例えば特許文献2においては、省エネルギー効果が得られる叩解プレートを用いることが開示されている。
特開2016−094680号公報 特開2012−149362号公報
特許文献1の方法は予めセルロースナノファイバーを製造し、これを原料パルプに添加するため、製造工程が煩雑であるとともに専用の設備を新規に設置する必要があり労力と投資が必要である。また特許文献2の方法は既存設備の叩解プレートを省エネルギー型へ更新することが開示されているに過ぎず、化学変性微細セルロースを添加するためには新たに設備を導入する必要がある。かかる事情を鑑み、本発明は簡便な工程で物理的特性に優れる紙を提供することを課題とする。
課題を達成するための手段
発明者らは、原料パルプに化学変性パルプを添加し、これを叩解処理して化学変性パルプをミクロフィブリル化することで、簡便な工程で物理的特性に優れる紙を提供できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
(1)原料パルプに化学変性パルプを添加して混合パルプを調製する工程、
当該混合パルプを叩解する工程、
前記叩解後の混合パルプを含む紙料を調製する工程、および
当該紙料を抄紙する工程を含む、紙または板紙の製造方法。
(2)化学変性パルプがアニオン変性パルプである(1)に記載の紙または板紙の製造方法。
(3)アニオン変性パルプが、TEMPO酸化パルプまたはカルボキシメチル化パルプである(1)または(2)に記載の紙または板紙の製造方法。
(4)前記紙料が、前記叩解工程において調製されたミクロフィブリルセルロースを含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法。
(5)前記叩解後の混合パルプのカナダ標準濾水度(csf)が50〜600mlである、(1)〜(4)のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法。
本発明によって、簡便な工程で物理的特性に優れる紙または板紙を提供できる。
化学変性パルプの有無と叩解パス数と濾水度の関係
板紙とは、一般に紙の中でも特に厚いものを指すが、本発明においては、例えば、ライナーや中芯原紙などの段ボール原紙、板紙原紙、白板紙、チップボール、黄ボール、キャリアテープ、紙器原紙等の多層紙を「板紙」といい、単層紙を「紙」という。本発明において「X〜Y」はその端値であるXおよびYを含む。
1.製造方法
本発明の製造方法は、原料パルプと化学変性パルプを添加して混合パルプとし、これを叩解する叩解工程と、当該叩解後の混合パルプを含む紙料を調製して当該紙料を抄紙する抄紙工程を備える。
1−1.叩解工程
(1)化学変性パルプ
化学変性パルプとは、未変性パルプを化学的に変性して得られるパルプである。化学変性パルプの添加量は、抄紙後の紙において原料パルプに対して所望の量となるように調整される。原料パルプに対する当該量は後述する。
1)化学変性パルプの製造
1−1)未変性パルプ
未変性パルプは、特に限定されないが、例えば、植物、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物に由来するものが挙げられる。植物由来のものとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。
1−2)化学変性
化学変性とは未変性パルプのセルロースに官能基を導入することをいい、本発明においてはアニオン性基を導入することが好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基等の酸基が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、−COOH基、−R−COOH(Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基)、−O−R−COOH(Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態(例えばカルボキシレート基(−COOM、Mは金属原子))で導入されることもある。本発明において化学変性は、酸化またはエーテル化が好ましい。
酸化は公知のとおりに実施できる。例えばTEMPO等のN−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質との存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。このようにして得られたパルプを「TEMPO酸化パルプ」ともいう。あるいは、オゾン酸化方法が挙げられる。この酸化反応によればセルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5重量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セル
ロース重量〔g〕
このようにして測定した酸化セルロース中のカルボキシル基の量は、絶乾重量に対して、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.5mmol/g以上、さらに好ましくは0.8mmol/g以上である。当該量の上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。従って、当該量は0.1〜3.0mmol/gが好ましく、0.5〜2.5mmol/gがより好ましく、0.8〜2.0mmol/gがさらに好ましい。
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化などが挙げられる。この中でもカルボキシメチル化が好ましい。カルボキシメチル化は、例えば、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化する方法により実施できる。
カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法による。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5g以上2.0g以下程度精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
カルボキシメチル化セルロース中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。当該置換度の上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01〜0.50が好ましく、0.05〜0.40がより好ましく、0.10〜0.30がさらに好ましい。
(2)原料パルプ
原料パルプとは、一般に紙または板紙の主成分をなす未変性のパルプである。原料パルプとして、化学変性パルプの原料とした未変性パルプと同じものを使用してもよく、化学変性パルプの原料と異なるパルプを使用してもよい。原料パルプに化学変性パルプを添加して混合パルプとする方法は限定されないが、原料パルプと水からなるスラリーと、化学変性パルプと水からなるスラリーをそれぞれ準備して、両者を混合することが好ましい。
(3)混合パルプ
混合パルプにおける原料パルプと化学変性パルプの混合率は特に限定されない。原料パルプと化学変性パルプを混合した混合パルプ中の化学変性パルプの量は、1重量ppm〜99重量%程度であり、より好ましくは0.01重量%〜95重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%〜10重量%である。特に、当該混合パルプ以外のパルプを使用せずに紙または板紙を製造する場合、抄紙時の水切れの観点から混合パルプに対する化学変性パルプの混合率は、1重量ppm〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜5重量%がより好ましい。
(4)混合パルプの叩解
混合パルプを叩解する方法は限定されず、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられる。具体的には高圧または超高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速離解機など回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、あるいはパルプ繊維同士の摩擦によるものを使用することができるが、本発明においては原料パルプおよび化学変性パルプの混合物を叩解処理するため、通常の抄紙工程で使用されるリファイナーや高速離解機を使用することが好ましい。リファイナーとしてはシングルディスクリファイナーやダブルディスクリファイナー等が挙げられる。当該処理に供する原料パルプはすでに叩解処理したものであってもよいし、未叩解のものでもよいが、製造効率の観点からは後者が好ましい。叩解処理に供する混合パルプのスラリーは、固形分(パルプと化学変性パルプの合計量濃度)が0.5〜35重量%であることが好ましい。叩解条件は適宜調整できるが、叩解後の混合パルプのカナダ標準濾水度(csf)が50〜600mlとなる条件が好ましく、抄紙時の水切れ(濾水性)による抄紙効率への影響や紙の地合い形成の観点から、200ml以上となる条件がより好ましく、300ml以上となる条件がさらに好ましい。各種製紙薬品の分散性を向上させるためには叩解処理を行う前の混合パルプに、填料、歩留り剤、紙力剤、分散剤、色材などの各種製紙薬品を添加することが好ましいが、より高いパルプ叩解効果を得る観点からは、叩解処理される混合パルプは、填料、歩留剤等の製紙薬品を含まないことが好ましい。
前記叩解後の混合パルプは、叩解処理された原料パルプ(抄紙用パルプ)および微細化された化学変性パルプ(微細セルロース)を含有する。本発明によれば、例えば一度の叩解処理で、抄紙用パルプおよび微細セルロースの混合物を得ることができる。したがって原料パルプおよび化学変性パルプをそれぞれ別個に叩解処理してから抄紙用パルプおよび微細セルロースを混合する場合と比較して、叩解処理工程などの工程数を減らすことができ、効率的に抄紙用パルプと微細セルロースの混合物を得ることができる。
また、本発明において発明者らは、原料パルプと化学変性パルプの混合叩解を行った場合、原料パルプのみを叩解処理した場合と比較して、効率的にパルプの濾水度を低下させることができることを見出した。すなわち、同一処理条件で叩解処理を行った場合、原料パルプ単独よりも、混合パルプの濾水度はより早く低下する。一般的に、未変性の抄紙用パルプは叩解を進めることで、濾水度が低下し(保水性の良化、フィブリル化の促進)、紙または板紙の紙力を高めることができる。すなわち、本発明によれば効率的に紙力を高めた紙を得ることができる。
本発明の微細セルロースは、平均繊維長が3mm以下かつ平均繊維径が60μm以下であることが好ましい。すなわち、化学変性パルプが解繊され化学変性微細セルロースになるように叩解処理することが好ましい。本発明において、平均繊維径とは長さ加重平均繊維径であり、平均繊維長とは長さ加重平均繊維長であり、これらは例えばバルメット社製フラクショネーター等で測定できる。
化学変性微細セルロースは500nm以上の平均繊維径を有するミクロフィブリルセルロースファイバー(以下「MFC」ともいう)と、500nm未満の平均繊維径を有するセルロースナノファイバー(以下「CNF」ともいう)を含む。本発明においては化学変性微細セルロースの製造効率向上のため、高圧ホモジェナイザーなどの強力な解繊ではなく、前述の通り通常の抄紙工程で使用されるリファイナーによる叩解を行うことが好ましい。このため、混合パルプの叩解によって得られた微細セルロースは好ましくはMFCである。
CNFはセルロースのシングルミクロフィブリルであり、その平均繊維径は2〜100nmが好ましく、2〜30nmがより好ましい。その平均繊維長は1〜5μm程度が好ましい。CNFの平均繊維径および平均繊維長は、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いても測定できる。
MFCの平均繊維径は1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。その上限は60μm以下が好ましい。MFCの平均繊維長は300μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましく、800μm以上がさらに好ましい。平均繊維長の上限は3000μm以下が好ましく、1500μm以下が好ましく、1100μm以下がさらに好ましい。MFCの平均アスペクト比は、10以上が好ましく、30以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。平均アスペクト比は、下記の式により算出できる。
平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
MFCは、セルロース系原料をビーターやディスパーザーなどで比較的弱く解繊または叩解処理して得られる。したがってMFCは、CNFと比較して繊維径が大きく、また繊維自体の微細化(内部フィブリル化)を抑制しながら効率的に繊維表面を毛羽立たせた(外部フィブリル化した)形状を有する。
上記のとおり、MFCはセルロース系原料とは解繊(フィブリル化)の度合いが異なり、MFCの機械解繊前後の濾水度や保水度の変化量で解繊度合を定量化することが可能である。しかしながら、本発明の製造方法によれば、原料パルプを叩解処理した抄紙用パルプと化学変性パルプを叩解処理した微細セルロースは混合物として得られるため、それぞれの解繊の度合いを個別に定量化することは困難である。発明者らは同一処理を行った際の原料パルプのみの濾水度や保水度の変化と、混合パルプ(原料パルプと化学変性パルプの混合物)の濾水度や保水度の変化を比較することで、化学変性パルプのフィブリル化の程度を推測することができることを見出した。すなわち、原料パルプと、原料パルプと化学変性パルプの混合物に対して同一条件で叩解処理を行った場合、前者のカナダ標準濾水度をCP、後者のカナダ標準濾水度をCP+Cとするとき、CP+C<CPとなるので、後者において原料パルプの叩解と同時に化学変性パルプの解繊も進んでいることが推測できる。
1−2.抄紙工程
(1)紙料
前述のとおりに準備した叩解済混合パルプに必要に応じて、公知の填料、歩留剤等の製紙薬品を添加し、紙料を調製する。紙料は水を含む。紙料中の各成分濃度は適宜調整される。また、本発明の効果を損なわない範囲で、前記紙料に、前記叩解済混合パルプ以外のパルプを添加してもよい。
(2)抄紙
抄紙は公知の方法によって実施できる。すなわち、前述のとおりに準備した叩解済混合パルプを含む紙料を調製し、長網型湿式抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等、公知の抄紙機を用いて実施できる。板紙(多層紙)を抄紙する場合は、各層の紙料をそれぞれ調製し、長網型湿式抄紙機等を用いて実施できる。抄紙速度は特に限定されないが、100〜2000m/分程度である。
1−3.他の工程
本発明の製造方法は、原紙の上にクリア塗工層または顔料塗工層を設ける塗工工程を備えていてもよく、さらには得られた紙または板紙を表面処理する工程を備えていてもよい。これらの方法は、公知のとおりに実施できる。
2.紙または板紙
(1)坪量
本発明によって得られる紙(単層紙)の原紙としての坪量は20g/m2以上が好ましく、30g/m2以上がより好ましい。当該坪量の上限は500g/m2以下が好ましい。本発明によって得られる板紙(多層紙)の原紙としての坪量は、1層あたり20g/m2以上が好ましく、40g/m2以上がより好ましい。1層あたりの坪量の上限は500g/m2以下が好ましく、200g/m2以下がさらに好ましい。
(2)特性
本発明により、簡便な方法によって物理的特性に優れる紙または板紙を製造できる。物理的特性が向上する理由は限定されないが、本発明の化学変性パルプは、セルロースのグルコース単位が有する水酸基のいずれかにアニオン性の電荷を有する官能基が導入されるため、官能基の静電反発によって叩解や解繊の効率が向上し、未変性の原料パルプよりもフィブリル化や解繊が進みやすい状態になっていると考えられる。そのため、原料パルプと化学変性パルプを同時に叩解する、すなわち混合パルプを叩解すると、原料パルプを単独で叩解したものよりも叩解が進みやすく、濾水度が低下しやすいと推察される。また、叩解により混合パルプ全体での微細繊維(フィブリル、ファイン)の存在量が多くなることで、セルロース繊維間の結合点が増加し、その結果、紙力が向上すると推察される。
本発明により、パルプの叩解(リファイニング)の際に少ないエネルギーで大きな叩解効果を得ることができる。効果向上の理由は限定されないが、上述の通り化学変性パルプ自体が未変性の原料パルプと比較して解繊されやすい状態になっていることに加え、原料パルプと化学変性パルプをそれぞれ叩解した場合よりも少ない処理工程で抄紙用パルプと微細セルロースの混合物を得ることができるためと推察される。
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。特に断らない限り、パルプ等の重量は絶乾重量である。
(1)評価
坪量:JIS P 8223:2006に従った。
バルク厚さおよびバルク密度:JIS P 8223:2006を参考に測定した。
カナダ標準濾水度(csf:ml):JIS P 8121−2:2012に従った。
比破裂強さ:JIS P 8131:2009に従った。
比引張強さおよび破断伸び:JIS P 8223:2006を参考に測定した。
(2)化学変性パルプの製造
定法に従いNBKP(日本製紙株式会社製)をTEMPO酸化処理して、カルボキシル基量1.53mmol/gの化学変性パルプを得た。
[製造例1]
NUKP(日本製紙株式会社製、csf:671ml)に、前記化学変性パルプおよび水を添加して混合パルプスラリー(csf:658ml)を調製後、離解処理を行った。化学変性パルプの添加量は、NUKPと化学変性パルプのパルプ混合物100重量%に対して0.1重量%とした。当該混合パルプスラリーに水を添加して固形分濃度を3重量%に調整し、シングルディスクリファイナー(熊谷理機工業株式会社製)を用いて叩解処理を行った。処理条件、処理回数および処理回数ごとの混合パルプスラリーのカナダ標準濾水度(csf)を表1に示す。
[比較製造例1]
化学変性パルプを添加しない以外は製造例1と同様にして叩解処理を行った。処理条件、処理回数および処理回数ごとの混合パルプスラリーのカナダ標準濾水度(csf)を表1に示す。
Figure 2019189615
これらの結果を表1および図1に示す。原料パルプと化学変性パルプを別々の工程でリファイニングしてから混合した場合、2つのリファイニング工程を経る必要があるが、本発明によれば1つのリファイニング工程で、叩解された抄紙用パルプと微細セルロースの混合物を得ることができる。また、表1および図1に記載の通り原料パルプに化学変性パルプを添加することで、原料パルプ単独で叩解した場合と比較して、叩解工程数や処理回数を増やすことなく、効率的に濾水度を低下させることができる。
[実施例1]
製造例1で得たパス数3回の混合パルプスラリー(csf:484ml)に、カルシウムイオン濃度がパルプに対して1.0重量%となるよう塩化カルシウムを添加した後、2.5重量%の硫酸バンド、0.15重量%のポリアクリルアミド、0.4重量%のサイズ剤を添加して紙料を調製した。当該紙料をJIS P 8222を参考に手抄き紙を作成して、坪量が絶乾100g/m2を目標に紙を製造し、評価した。
[比較例1]
比較製造例1のNUKPパルプスラリーのうち、叩解処理を実施していないパルプスラリー(csf:671ml)を使用した以外は、実施例1と同様にして紙を製造して評価した。
[比較例2]
パス数3回のNUKPパルプスラリー(csf:558ml)を使用した以外は、比較例1と同様にして紙を製造して評価した。
[比較例3〜5]
叩解処理を実施していない混合パルプスラリー(csf:658ml)を使用した以外は、実施例1と同様にして紙を製造して評価した。
Figure 2019189615
これらの結果を表2に示す。比較製造例1で得た原料パルプ単独で叩解処理を行ったパルプスラリーから得た比較例2の紙と、製造例1で得た原料パルプと化学変性パルプの混合パルプスラリーから得られた紙を実施例1の紙を比較すると、同一の処理条件で叩解を行った場合、実施例1の紙の方が比較例1の紙に比べて高い強度特性を有していることがわかる。以上から、本発明により物理的特性に優れた紙を簡便な工程で製造できることが明らかである。

Claims (5)

  1. 原料パルプに化学変性パルプを添加して混合パルプを調製する工程、
    当該混合パルプを叩解する工程、
    前記叩解後の混合パルプを含む紙料を調製する工程、および
    当該紙料を抄紙する工程を含む、紙または板紙の製造方法。
  2. 化学変性パルプがアニオン変性パルプである請求項1に記載の紙または板紙の製造方法。
  3. アニオン変性パルプが、TEMPO酸化パルプまたはカルボキシメチル化パルプである請求項1または2に記載の紙または板紙の製造方法。
  4. 前記紙料が、前記叩解工程において調製されたミクロフィブリルセルロースを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法。
  5. 前記叩解後の混合パルプのカナダ標準濾水度(csf)が50〜600mlである、請求項1〜4のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法。
JP2020511005A 2018-03-30 2019-03-28 紙または板紙の製造方法 Pending JPWO2019189615A1 (ja)

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