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JPWO2018116584A1 - 放射能分布測定装置及び方法 - Google Patents

放射能分布測定装置及び方法 Download PDF

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Abstract

放射線源からの被測定放射線を検出して検出信号を出力する放射線検出部と、放射線検出部の測定位置を測定する位置測定部と、検出信号に基づいて被測定放射線によるパルス波高分布を演算する波高演算部と、測定位置に対するパルス波高分布と、放射線検出部の位置を中心する半径方向と奥行き方向との組合せで決定される各位置に放射線源が存在すると仮定したときの複数の応答関数とを用いて、各位置に放射線源が存在すると仮定した場合に、仮定された放射線源から放出されたと推測される放射線の強度を予測強度として算出し、各位置に対する予測強度分布を演算する逆問題演算部と、予測強度分布と位置情報とを用いて、予測強度が一致する領域を同定して放射線源の3次元分布を推定する分布再構成部とを備える。

Description

本発明は、測定対象物内に含まれる放射性物質の分布を測定する放射能分布測定装置及び方法に関する。
従来の放射性物質の放射能分布を測定する手段として、測定対象領域内の放射線源の放射能を測定するガンマカメラがある(例えば、非特許文献1参照)。ガンマカメラは視野角内に存在する放射線源から飛来する放射線(主にγ線やX線)を複数の検出器を用いて計測することで、放射線の飛来方向を特定し、放射線源の3次元分布を測定していた。
一般的なガンマカメラでは、視野角内の放射線源の存在する方向は特定できたが、奥行き方向の情報を得ることは困難であった。奥行き方向の測定には測定位置をズラし、視差から算出するシステムが必要となる。しかしながら、視差を生み出すために複雑な形状を有する検出器が複数必要になり、測定装置の構成を単純化できなかった(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−069701号公報
日立アロカメディカル株式会社,「ガンマカメラHGD−E1500」,[online],平成28年11月29日検索,インターネット(URL:http://www.hitachi.co.jp/products/healthcare/products-support/radiation/gammacamera/index.html)及びインターネット(URL:http://www.hitachi.co.jp/products/healthcare/news/ham/pdf/news20140919.pdf)
従来技術では、凸凹形状の複数検出器と、用意した放射線源の存在位置に対応する放射線検出部の応答関数による演算から分布を測定していたが、特に放射線源の奥行き方向の分布測定は、放射線源が検出器から遠ざかるほど測定精度が落ちる。検出する放射線が平行に近づくために位置による差が現れにくいため、奥行き方向について精度を高めるためには検出器構造をより複雑化する問題があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、放射線源の3次元分布を放射線検出器そのものに特別な工夫を凝らすことなく、従来技術に比較して高精度に測定可能である放射能分布測定装置及び方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る放射能分布測定装置によれば、
放射線源から飛来する被測定放射線を検出して検出信号を出力する放射線検出部と、
前記放射線検出部が配置される測定位置を測定して出力する位置測定部と、
前記検出信号に基づいて、前記被測定放射線によるパルス波高分布を演算する波高演算部と、
所定の複数の測定位置に対してそれぞれ演算された複数のパルス波高分布と、所定の複数の位置のそれぞれに放射線源が存在すると仮定したときの複数の応答関数とを用いて、前記複数の位置のそれぞれに放射線源が存在すると仮定した場合に、仮定された放射線源から放出されたと推測される放射線の強度を予測強度として算出し、前記複数の位置に対する当該予測強度の分布を示す予測強度分布を演算して出力する逆問題演算部と、
前記複数の測定位置に対して演算された予測強度分布と、前記位置測定部から出力される測定位置の位置情報とを用いて、予測強度が一致する領域を同定して放射線源の3次元分布を推定する分布再構成部とを備えたことを特徴とする。
本発明に係る放射能分布測定装置によれば、特殊な形状の放射線検出器を用いることなく、放射線源の存在する予測強度分布を得ることができ、異なる複数の測定位置で得られた予測強度分布を用いることで、放射線検出器に特別な工夫をこらすことなく、従来技術に比較して高精度で、奥行き方向を含む放射線源の3次元分布を計測可能である。
本発明の実施の形態1に係る放射能分布測定装置100の構成例を示すブロック図である。 図1の逆問題演算部13と応答関数格納部14により求められる放射線源の予測強度分布を示す斜視図である。 図1の逆問題演算部13と応答関数格納部14により求められる予測強度分布を成すエネルギースペクトルの一例を示す概念図である。 図1の分布再構成部15により実行される、2方向の測定結果から放射線源分布の抽出方法を示す斜視図である。 図1の分布再構成部15により求められる、2つの予測強度から放射線源が存在する領域を導出する一例を示す概念図である。 図1の分布再構成部15により求められる3方向の測定結果から放射線源分布の抽出方法を示す斜視図である。 図1の分布再構成部15により実行される分布再構成処理を示すフローチャートである。 図1の位置測定部3により実行される位置測定処理を示すフローチャートである。 図1の放射能分布測定装置100によるケース1の測定方法を示す斜視図である。 図1の放射能分布測定装置100によるケース2の測定方法を示す斜視図である。 図1の放射能分布測定装置100によるケース3の測定方法を示す斜視図である。 図1の放射能分布測定装置100によるケース4の測定方法を示す斜視図である。 図1の放射能分布測定装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。 本発明の実施の形態2に係る放射能分布測定装置200を示すブロック図である。 本発明の実施の形態3に係る放射能分布測定装置300を示すブロック図である。 本発明の実施の形態4に係る放射能分布測定装置400を示すブロック図である。 図14の放射能分布測定装置400の使用例を示す斜視図である。 本発明の実施の形態5に係る放射能分布測定装置500を示す概念図である。 図16の放射能分布測定装置500における入射方向範囲を示す縦断面図である。 図16の放射能分布測定装置500において、コリメータ40が放射線検出部2A,2Bの側面全体及び上面の一部を覆う場合の縦断面図である。 図16の放射能分布測定装置500において、コリメータ40が放射線検出部2A,2Bの側面のみを覆う場合の縦断面図である。 図16において、放射線検出部2A,2Bの深さ方向の反応位置から放射能分布測定装置500における入射方向範囲を示す縦断面図である。
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施の形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る放射能分布測定装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態による放射能分布測定装置100は、放射線検出部2と、位置測定部3と、分布測定部10と、表示部18とを備える。ここで、分布測定部10は、信号増幅部11と、波高演算部12と、逆問題演算部13と、応答関数格納部14と、分布再構成部15等とを備え、放射線検出部2からの検出信号と、位置測定部3からの測定位置の情報から放射線源1の分布を推定する。表示部18は例えば液晶ディスプレイ等で構成される。
放射線検出部2は、測定対象となる物質中の放射線源1から放出された被測定対象となる放射線101を検出して検出信号を信号増幅部11に出力する。位置測定部3は、放射線検出部2の測定位置の情報を測定してその情報を分布再構成部15に出力する。ここで、測定位置とは、各測定において、放射線検出部2が配置される位置を意味する。言い換えると、測定位置とは、放射線検出部2がどの位置から測定するかを表す。
分布測定部10において、信号増幅部11は、例えば前置増幅器、波形整形増幅器等で構成される。また、波高演算部12は、例えば多重波高分析器等で構成される。そして、逆問題演算部13、応答関数格納部14、及び分布再構成部15は、例えば単一の又は複数のマイクロプロセッサで構成される。
放射線検出部2は例えば、放射線101を検出する放射線検出器等を有する。例えば、放射線検出部2がシンチレーション式検出器である場合、放射線検出部2は放射線に対する有感部がシンチレーション材料等で構成される。シンチレーション材料は、放射線から付与されたエネルギーにより構成分子が励起され、基底状態に戻る際に蛍光(シンチレーション光)を発生する材料である。かかるエネルギーは、放射線とシンチレーション材料との光電吸収、コンプトン効果、電子対生成等の相互作用により付与される。それゆえ、測定試料の放射線源1から放出された放射線101がシンチレーション検出器に入射すると、シンチレーション材料に固有の波長を有するシンチレーション光が発生する。また、シンチレーション検出器は、発生したシンチレーション光を光電変換する光電陰極(光電変換部)を有する。そして、シンチレーション検出器は、光電変換部で光電変換された電荷をパルス検出信号として出力する。
また、例えば、放射線検出部2が半導体式検出器である場合、電極を構成するn型半導体とp型半導体との間に逆バイアス電圧が印加され、逆バイアス電圧により生じる空乏層が放射線検出部を構成する。放射線源1から放出された放射線101が半導体式検出器に入射すると、放射線の電離作用により電子正孔対が生成する。そして、電子及び正孔がそれぞれ電極に移動し、半導体検出器はパルス検出信号を出力する。
次に、分布測定部10の動作について説明する。
まず、信号増幅部11は、放射線検出部2からのパルス検出信号に対して、予め設定された増幅率に従った増幅、信号の整形等を行って、波高演算部12に出力する。波高演算部12は、信号増幅部11からのパルス検出信号に対してパルス波高分析を行い、パルス波高分布を演算する。ここで、パルス波高分布は、各波高のパルスの発生分布である。具体的には、波高演算部12は、信号増幅部11によって増幅されたパルス検出信号のうち、例えばピーク値が所定値以上のパルスについて、そのピーク値をAD変換して出力する。
演算されたパルス波高分布には、放射線源1から放出された放射線101の純粋なエネルギー情報だけでなく、放射線101と放射線検出部2及び放射線源1から放射線検出部2までに存在する物質との、光電吸収、コンプトン効果、電子対生成等の相互作用による影響が含まれる。それゆえ、抽出されたパルス波高分布には、全吸収ピーク、コンプトン連続部、エスケープピーク等が現れる。さらに、放射線源1から放出された放射線101が放射線検出部2に入射し、付与されたエネルギーが電荷に変換される過程では、放射線検出部2がエネルギーを付与された際に発生させる電荷量の統計的なバラつきによって、放射線検出部2に固有の統計的な広がりが付加される。それゆえ、エネルギー分解能(例えば、パルス波高分布のピーク部分の半値幅で定義される)が低下する。この場合、放射線源1に含まれる放射性核種の同定及び定量分析の精度が悪化するという問題が生じる。
波高演算部12で演算されたパルス波高分布は、逆問題演算部13に入力される。逆問題演算部13は、応答関数格納部14に格納された応答関数を呼び出し、その応答関数を用いてパルス波高分布に対して逆問題演算を実行する。応答関数については後述する。複数の応答関数を応答関数格納部14に格納することで、所定の応答関数を演算時に読み出すことができる。ここで、Mを測定値であるパルス波高分布とし、Rr,z(L,E)を応答関数とし、Sr,xを放射線101の相互作用による影響が排除されたエネルギースペクトル34として、下記の式(1)が成立する。逆問題演算部13は、式(1)の逆変換となる式(2)を計算し、エネルギースペクトルSr,zを抽出する。なお、Lを放射線検出部2からの検出信号レベルであり、Eは入射γ線のエネルギーである。
M=Rr,z(L,E)・Sr,z (1)
r,z=Rr,z −1(L,E)・M (2)
ここで、Rr,z −1(L,E)は応答関数Rr,z(L,E)の逆行列となる。なお、添字のrは、放射線検出部2の検出線(一般に、同軸形状又は円筒形状の放射線検出部2の同心軸の検出中心線をいい、放射線検出部2は検出線2Lおよびその近傍で放射線を検出可能である。)2Lに対して平行な平面(以下、検出平面という)上における検出座標原点2P(検出線2Lと検出平面SS1,SS2,SS3(例えば後述する図2A参照)とが交差する点をいう)から当該検出平面SS1,SS2,SS3上で放射状の半径方向Rの座標値rを示し、zは、放射線検出部2の検出線2Lに平行な奥行き方向Zの座標値zを示す。すなわち、座標値r,zを用いて検出平面SS1,SS2,SS3上の位置を(r,z)で表す。また、エネルギースペクトルSr,zは、所定の位置(r,z)に存在する放射線源1から放出される放射線のエネルギー毎の強度を表す。なお、放射線のエネルギー毎の強度は、放射線の放出(発生)に対応する。
ここで、応答関数Rr,z(L,E)は、例えば、放射線検出部2の検出線2L上の検出座標原点2Pから、検出平面SS1,SS2,SS3上の半径方向Rの座標値rと、放射線検出部2から奥行き方向Zの座標値zとの組合せで定義される各位置(r,z)のいずれか1ヶ所に放射線源1が存在するものと仮定して、放射線源1から放出された放射線101と放射線検出部2の相互作用から定義される。従って、応答関数Rr,z(L,E)は放射線源1が存在するものと仮定される位置の数だけ用意される。なお、応答関数Rr,z(L,E)は放射線源1が存在するものと仮定される複数の位置は、放射線検出部2の原点30(又は位置測定部3の原点30)からの相対位置で表されるので、測定位置が変化しても応答関数Rr,z(L,E)は共通となる。ここで、各位置(r,z)を検出平面SS1,SS2,SS3上の半径方向Rの座標値rと、放射線検出部2から奥行き方向Zの座標値zとの組合せで定義されるので、明確に定義できる。
放射線検出部2のいずれかの測定位置で得られた測定データとなるパルス波高分布に対して、用意した全ての応答関数Rr,z(L,E)を用いて式(2)による逆問題演算を行う。より具体的には、応答関数格納部14には、半径方向Rの座標値r1、奥行き方向Zの座標値z1に放射線源1が存在するときの応答関数Rr1,z1(L,E)、半径方向Rの座標値r2、奥行き方向座標値z2に放射線源1が存在するときの応答関数Rr2,z2(L,E)など、各位置(r,z)に放射線源1が存在すると仮定したときの応答関数がそれぞれ格納されている。なお、前記応答関数Rr,z(L,E)は、放射線源1から放射線検出部2までの経路における物質と放射線101の相互作用(減衰や散乱など)効果を考慮してもよい。
図2Aは図1の逆問題演算部13と応答関数格納部14により求められる放射線源の予測強度分布を示す斜視図である。また、図2Bは図1の逆問題演算部13と応答関数格納部14により求められる予測強度分布を成すエネルギースペクトルの一例を示す概念図である。
図2Aに示すように、上記式(2)を解くことにより、パルス波高分布Mから、放射線検出部2の原点30(又は位置測定部3の原点30)からの検出線2L上の検出座標原点2Pからの半径方向Rの座標値r及び奥行き方向Zの座標値zで定義される位置(r,z)にかかる応答関数Rr,z(L,E)の組合せに応じて、各位置(r,z)に放射線源1が存在すると仮定したときの当該放射線源1から放出された単位時間あたりの放射線101のエネルギースペクトルSr,zをそれぞれ抽出することができる。なお、各位置(r,z)は、1点を表しているわけではなく、放射線検出部2の原点30から延在する検出線2L上の検出座標原点2Pからの半径方向Rの座標値rと、奥行き方向Zの座標値zとにより定義される相対位置(r,z)で表される環状の領域内の位置を表している。
図2Bに示すように、抽出された複数のエネルギースペクトルSr,zは、放射線検出部2の相互作用による影響、及び、前述の統計的なバラつきによる影響が排除されている。上記式(2)の計算により、放射線101のエネルギー情報を正確に知ることができ、放射線源1の放射性物質の同定及び定量分析の精度が向上する。
そして、抽出された全てのエネルギースペクトルSr,zは、奥行き方向Zの同一の各座標値z(例えば、所定間隔毎の複数の座標値z)毎に群化(グループ化)し、エネルギースペクトル群として、分布再構成部15へ出力される。放射線源1が存在すると仮定された各位置(r,z)に対して求められたエネルギースペクトルSr,zのそれぞれが予測強度となる。また、エネルギースペクトル群は、各位置(r,z)に対する予測強度の3次元分布を表しており、3次元の予測強度分布となる。図2Bに示す通り、予測強度は、エネルギー毎の強度として求められる。また、予測強度分布は、放射線検出部2の各測定位置に対して求められる。ここで、前述の通り、予測強度は、各位置に放射線源1が存在すると仮定された場合の放射線の強度である。したがって、予測強度を仮想強度と言い換えることもできる。同様に、予測強度分布を仮想強度分布と言い換えることができる。
応答関数格納部14は、放射線検出部2の応答関数Rr,z(L,E)を格納する。もしくは、応答関数格納部14は、適宜、あらかじめ応答関数Rr,z(L,E)を算出し、データベース化して格納してもよい。これにより、種々の応答関数Rr,z(L,E)を予め応答関数格納部14に格納できる。ここで、例えば応答関数格納部14を構成するマイクロプロセッサに接続されたメモリとして構成される。そして、応答関数格納部14は、逆問題演算部13からの呼出しに応じて、格納された応答関数Rr,z(L,E)を出力する。
応答関数Rr,z(L,E)は、単一エネルギーを有する放射線Eのみが放射線検出部2の放射線検出器に入射した際に出力される放射線検出部出力Lとの関係を示す。また、応答関数Rr,z(L,E)は、
(1)放射線源1の位置及び分布と、
(2)放射線検出部2の放射線検出器の種類、寸法及び形状と、
(3)放射線検出部2を設置した測定体系等の放射線源1から放出された放射線101が放射線検出部2に到達するまでに通過した物質による相互作用と
によって決定され、例えば、EGS5(Electron Gamma Shower ver.5)等の放射線挙動解析用のモンテカルロ輸送計算コードによって、応答関数Rr,z(L,E)を算出することができる。もしくは、実験的に応答関数Rr,z(L,E)を算出することも可能である。
ここで、応答関数Rr,z(L,E)は前述のとおり、例えば、放射線検出部2の原点30から延在する検出線2L上の検出座標原点2Pからの半径方向Rの座標値rと、奥行き方向Zの座標値zとの組合せ毎に放射線源1が分布するとして定義され、具体的には、放射線検出部2の検出線2L上の奥行き方向Zの所定の座標値z毎に、検出座標原点2Pからの同心円又は環状に放射線源1が分布すると仮定して、前記のような放射線挙動解析や実験的に算出する。なお、応答関数Rr,z(L,E)の検出座標原点2Pは任意で決定でき、放射線検出部2の検出線2L上以外に設定してもよい。また、ここでは放射線検出部2が円柱形状又は同軸形状と仮定して説明しているが、本発明はこれに限らず、他の形状であれば、応答関数Rr,z(L,E)の検出座標原点2P、半径方向Rの座標値r、及び奥行き方向Zの座標値zは適宜選択することができる。
また、用意する応答関数Rr,z(L,E)の放射線源1の分布領域は、任意で決定できる。例えば、放射線検出部2の検出線2Lに対して半径方向Rの座標値r及び奥行き方向Zの座標値zを共に領域の分割数を多くすることで、得られる空間分解能は細かくなり、反対に分割数を少なくすることで、空間分解能は荒くなる。例えば、放射線源1の分布領域を半径方向Rの長さ及び奥行き方向Zの長さのそれぞれを最大1mとし、それぞれの分割数を100とすると、応答関数Rr,z(L,E)は全部で10000個の位置(r,z)に対応して定義され、半径方向R及び奥行き方向Zの位置分解能は1cmとなる。なお、分布領域の最大値や分割数は、半径方向Rと奥行き方向Zで異なってもよい。
分布再構成部15は、逆問題演算部13から出力された、半径方向Rの座標値rと奥行き方向Zの座標値zの組合せ毎のエネルギースペクトル群である予測強度分布を用いて、測定対象物33に存在する放射線源1の3次元分布を推定し、放射線源1の位置情報を表示部18へ出力する。逆問題演算部13から出力されるエネルギースペクトル群は、放射線検出部2の原点30(又は分布測定部10の原点30の位置)からの相対位置で表される。従って、分布再構成部15は、位置測定部3で取得された放射線検出部2の測定位置の情報を用いて、各測定位置に対して取得された予測強度分布間の位置関係を決定する。さらに、分布再構成部15は、位置合わせを行った予測強度分布同士で予測強度が一致する領域を同定し、放射線源1の3次元分布と、当該放射線源1の3次元分布に基づく放射能もしくは放射能濃度を推定する。
次に、放射能分布測定装置100の動作について以下説明する。ここで、説明を簡単にするために、概念図の図3A及び図3Bと図4、及び処理フローである図5を参照して、放射能分布測定装置100の動作について説明する。
図3Aは図1の分布再構成部15により実行される、2方向の測定結果から放射線源分布の抽出方法を示す斜視図であり、図3Bは図1の分布再構成部15により求められる、2つの予測強度から放射線源1が存在する領域を導出する一例を示す概念図である。また、図4は図1の分布再構成部15により求められる3方向の測定結果から放射線源分布の抽出方法を示す斜視図である。さらに、図5は図1の分布再構成部15により実行される分布再構成処理を示すフローチャートである。
まず、分布再構成部15では、図5のステップS1において、図3Aの位置測定部3の原点30の座標の情報が位置測定部3から入力されて設定されているかを確認する。原点30の座標の情報が入力されているときは(ステップS1でYES)ステップS2に進む一方、当該情報が入力されていないときは(ステップS1でNO)、ステップS1に戻り、位置測定部3からの入力を待つこととなる。位置測定部3の動作については図6を参照して後述する。
ステップS2において、位置測定部3の原点30からの移動量32を確認する。放射線検出部2の移動に伴う、位置測定部3で測定された位置測定部3の位置の原点30からの位置測定部3の移動量32が0である場合、すなわち位置測定部3の放射線検出部2が原点30にある場合は、ステップS3へ進む。一方、位置測定部3の放射線検出部2の移動量が0でなく、放射線検出部2が原点30にない場合は、ステップS4へ進む。
ステップS3では、図3Aに示すように、放射線検出部2Aの移動がないとして、原点30を放射線検出部2Aの測定位置Aとして決定する。次に、逆問題演算部13により抽出したエネルギースペクトル群Aについて、分布再構成部15は、原点30である測定位置Aからの予測強度分布31Aを作成する。例えば、分布再構成部15は、図3Aに示すように、原点30から、特定の奥行き方向位置について、放射線検出部2Aの同心軸とした予測強度分布31Aを作成する。なお、ここでは、ある奥行き方向に対する面上の放射線源1の予測強度分布31の作成方法についてのみ説明しているが、応答関数Rr,z(L,E)で定義した奥行き方向全てに対応する予測強度分布31についても同様の処理を行い作成する。ここで、放射線検出部2Aとは、放射線検出部2が測定位置Aにある場合を指しており、放射線検出部2とは別の放射線検出部を備えるという意味ではなく、放射線検出部2B、2Cについても同様である。
一方、ステップS4では、図3Aに示すように、原点30に対して移動した測定位置Bにおいて、放射線検出部2Bの測定値を用いて前述した逆問題演算部13により、エネルギースペクトル群Bを抽出する。そして、原点30から移動量32を加味した測定位置Bからの予測強度分布31Bを作成し、ステップS5へ進む。ステップS5では、また、図3Bに示すように、前述した方法にて得られた予測強度分布31A及び予測強度分布31Bについて、例えば、ある深さ方向において、着目するエネルギー帯の強度が同一となる領域が存在するか否かが判断され、存在する場合はステップS6へ進む一方、存在しない場合はステップS1に戻る。
ステップS6では、図3A及び図3Bに示すように、予測強度分布31Aと予測強度分布31Bの強度が、同一もしくは予め設定した誤差範囲内となる領域がある場合、その領域内に放射線源1が存在するとして、放射線源1の位置情報を表示部18へ出力した後、ステップS1に戻る。ここで、予め設定した誤差とは、放射線検出部2のもつ放射線の測定精度とする。一般に放射線の検出器は非常に精度のよいものでも3%程度であり、悪い場合は30〜40%程度の測定誤差がある。
以降、図4に示すように放射線検出部2をさらに測定位置Cに移動させたり、又は、原点30を初期化したり、放射線検出部2の測定位置を移動させる毎に、位置測定部3から原点30や移動量32の信号を受取り、図5に示すようにステップS1からステップS6までの処理を繰り返し行う。そして、放射線源1の位置情報及び、予測強度で表される放射能もしくは放射能濃度を表示部18へ出力する。
次いで、分布再構成部15による放射線源1の分布情報の抽出方法について、図7、図8、図9、図10を参照してそれぞれケース毎に説明する。
図7は図1の放射能分布測定装置100によるケース1の測定方法を示す斜視図である。図7のケース1は、放射線源1が放射線検出部2Aの検出線2L上でかつ測定対象物33の表面33Sに存在する場合である。
図7において、放射線検出部2を測定位置Aから測定位置B及び測定位置Cへと移動させることで、各測定位置A,B,Cで得られた測定データから、奥行き方向Zの所定の座標値zにおいて、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cを得る。ケース1では、放射線源1が測定対象物33の表面33Sにあり、かつ、放射線検出部2Aの検出線2L上に存在するため、得られた全ての予測強度分布31の中から、測定対象物33の表面33Sに対応する奥行き方向Zの座標値zの検出平面における予測強度分布31Aの中心部において、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cの強度が一致する領域が存在し、この強度が一致する領域が、放射線源1の存在する位置となる。
図8は図1の放射能分布測定装置100によるケース2の測定方法を示す斜視図である。図8のケース2は、放射線源1が放射線検出部2Aの検出線2L上にあり、測定対象物33中であって表面33Sから特定の深さdにある検出平面に放射線源1が存在する場合である。
図8において、放射線検出部2を測定位置Aから測定位置B及び測定位置Cへと移動させることで、各測定位置で得られた測定データから、奥行き方向Zの座標値zの検出平面において、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cを得る。ケース2では、放射線源1が測定対象物33の内部にあり、かつ、放射線検出部2Aの検出線2L上に存在するため、得られた全ての予測強度分布31の中から、測定対象物33の内部の特定の深さdに対応する奥行き方向Zの座標値zの検出平面の予測強度分布31Aの中心部において、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cの強度が一致する領域が存在し、この強度が一致する領域が、放射線源1の存在する位置となる。
図9は図1の放射能分布測定装置100によるケース3の測定方法を示す斜視図である。図9のケース3は、いずれの放射線検出部2A、2B,2Cの検出線2L上に放射線源1が存在しないが、測定対象物33の表面33Sに放射線源1が存在する場合である。
図9において、放射線検出部2を測定位置Aから測定位置B及び測定位置Cへと移動させることで、各測定位置で得られた測定データから、奥行き方向Zの座標値zの検出平面において、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cを得る。ケース3では、放射線源1が測定対象物33の表面にあり、かつ、いずれの放射線検出部2A,2B,2Cの検出線2L上に存在しないため、得られた全ての予測強度分布31の中から、測定対象物33の表面33Sに対応する奥行き方向Zの座標値zの検出平面の(予測強度分布の中心部以外の)いずれかの領域において、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cの強度が一致し、この強度が一致する領域が、放射線源1の存在する位置となる。
図10は図1の放射能分布測定装置100によるケース4の測定方法を示す斜視図である。図10のケース4は、いずれの放射線検出部2A,2B,2Cの検出線2L上に放射線源1が存在しないが、測定対象物33の表面33Sから特定の深さdにある検出平面上に放射線源1が存在する場合である。
図10において、放射線検出部2を測定位置Aから測定位置B及び測定位置Cへと移動させることで、各測定位置で得られた測定データから、奥行き方向Zの座標値zの検出平面において、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cを得る。ケース3では、放射線源1が測定対象物33の内部にあり、かつ、いずれの放射線検出部2の検出線2L上に存在しないため、得られた全ての予測強度分布31の中から、測定対象物33の内部であってその表面33Sから特定の深さdに対応する奥行き方向Zの座標値zの検出平面の(予測強度分布の中心部以外の)いずれかの領域において、予測強度分布31A、予測強度分布31B、予測強度分布31Cの強度が一致し、この強度が一致する領域が、放射線源1の存在する位置となる。
また、分布再構成部15では、逆問題演算部13が出力する複数のエネルギースペクトルから、特定のエネルギー帯のみの計数値(強度)を利用することで、特定の放射性物質にのみ限定して分布測定ができる。図2B等に示す通り、予測強度はエネルギー毎の強度として求められる。従って、予測強度分布もエネルギー毎の強度分布として求められる。注目すべき放射性物質がある場合には、分布再構成部15は、その放射性物質に対応するエネルギー帯の予測強度を用いて放射線源1の分布を推定すればよい。
例えば、放射性物質のセシウム−137が放出する放射線のエネルギーは662keVであるため、前記のエネルギースペクトルから、対応するエネルギー帯のみの計数値を分布再構成部15の処理に利用することで、セシウム−137に限った放射線源1の分布を得ることができる。また、放射性物質の放出する放射線のエネルギーに対応する放出割合を前記計数値に乗じることで、放射能として表すことができる。
なお、放射性物質の放出する放射線のエネルギーについては、予め、分布再構成部15の内部メモリに所定のデータベースとして格納しておいてもよく、分布再構成する際に、前記データベースから呼び出した放射性物質に対応するエネルギー帯のみの計数を用いるようにしてもよい。格納されたデータベースは、放射性核種に固有のデータを呼び出し、当該データに基づいて放射性核種の同定及び定量分析を行う。放射性核種の同定及び定量分析は、抽出されたエネルギースペクトルにおける、データベースから呼び出したデータに対応するエネルギー帯の計数値を算出することにより行う。ここで、データベースは、放射性核種が放出する放射線のエネルギー、放出割合を含むデータを格納する。例えば、放射性核種がセシウム−137である場合、放出されるγ線のエネルギー帯は662keV、放出割合は85%、というデータ等を格納する。そして、分布再構成部15の演算結果、すなわち放射線源1から放射性物質毎の分布結果を表示部18へ出力する。
図6は図1の位置測定部3により実行される位置測定処理を示すフローチャートである。位置測定部3は、放射線検出部2による測定開始時の位置情報を取得し、測定開始時の原点30や原点30に対する移動量32を分布再構成部15に出力する。具体的な動作フローについて図6を参照して後述する。
図6のステップS11において、まず、位置測定部3は分布再構成部15に原点30の情報が設定されているか否かを判定し、原点30の情報が設定されているときは(ステップS11でYES)ステップS14に進む一方、原点30の情報が設定されていないときは(ステップS11でNO)、ステップS12において例えば放射線検出部2の検出線2L上の測定位置を原点30に決定し、ステップS13において決定した位置情報を分布再構成部15へ出力する。なお、原点30は、必ずしも放射線検出部2の検出線2L上でなくてもよく、分布再構成部15において、放射線検出部2の位置情報と応答関数格納部14に格納される応答関数Rr,z(L,E)の空間座標を一致させれば、原点30は任意の位置で設定してもよい。
次いで、ステップS14において、原点30の初期化を行う必要があるか否かを判断し、初期化する必要がある場合は(ステップS14でYES)ステップS11に戻り、再度、原点30を決定して設定する。一方、初期化をする必要がない場合は(ステップS14でNO)、ステップS15で原点30からの放射線検出部2の移動量を位置測定部3で測定し、ステップS16において測定した原点30からの放射線検出部2の移動量を分布再構成部15へ出力して当該位置測定処理を終了する。
ここで、位置情報の取得には、例えば、ジャイロセンサや加速度センサ、超音波センサ等や別途用意されたレーザースキャナやカメラによる撮像画像等が考えられ、原点座標と原点座標に対する移動量が計測できれば、いずれの方式であってもよい。なお、位置測定部3による位置情報の取得は、放射線検出部2の測定開始から測定終了までの動作と同期するように作動してもよく、又は単独に作動してもよい。
また、本実施の形態では、以上の特殊な形状や構造を有しない放射線検出部2を用いて、測定位置を変えた測定を複数回行うことで、測定対象物33に含まれる放射性物質の分布情報を得ることができる。
図11は図1の放射能分布測定装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。図11に示すように、
(1)放射線検出部2が放射線検出器2aで構成され、
(2)位置測定部3がジャイロセンサ3aで構成され、
(3)信号増幅部11が増幅器11aで構成され、
(4)波高演算部12と逆問題演算部13と分布再構成部15がプロセッサ600で構成され、
(5)表示部18がディスプレイ18aで構成される。
ここで、プロセッサ600は例えば、CPU600aで実行する波高演算部12と逆問題演算部13と分布再構成部15の処理のためのプログラム、データ等を格納したメモリ600b、及び外部とのインターフェース(I/F)600c,600d,600e等から構成される。また、波高演算部12と逆問題演算部13と分布再構成部15の部分をプロセッサ600の代わりに、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデジタル回路で構成してもよい。
そして、演算処理に必要な、応答関数格納部14での放射線のエネルギー毎の応答関数Rr,z(L,E)、予め設定された各種設定値等の、放射線測定に必要な予め準備しておくデータ、テーブル、プログラム等はメモリ600bに予め格納しておく。なお、この放射能分布測定装置は、放射線検出器2aを移動させるために測定者が携帯可能な形態となっている。
以上説明したように、本実施の形態に係る放射能分布測定装置によれば、特殊な形状の放射線検出器を用いることなく、放射線源1の存在する予測強度分布を得ることができ、異なる複数の測定位置で得られた予測強度分布を用いることで、放射線検出器に特別な工夫をこらすことなく、従来技術に比較して高精度で、奥行き方向を含む放射線源1の3次元分布を計測可能である。
以上の実施の形態において、分布再構成部15は、複数の測定位置に対して演算された予測強度分布と、前記位置測定部から出力される測定位置の位置情報とを用いて、予測強度が一致する領域を同定して放射線源1の3次元分布と、当該放射線源1の3次元分布に基づく放射能と、放射能濃度とを推定している。本発明はこれに限らず、分布再構成部15は、複数の測定位置に対して演算された予測強度分布と、前記位置測定部から出力される測定位置の位置情報とを用いて、予測強度が一致する領域を同定して放射線源1の3次元分布のみを推定してもよい。また、分布再構成部15はさらに、当該放射線源1の3次元分布に基づく放射能と、放射能濃度とのうちの少なくとも1つを推定してもよい。これにより、それぞれ個別に推定できる。
以上の実施の形態によれば、逆問題演算部13によって得られる各測定位置に対する同心円上の予測強度分布を複数(複数の測定位置に対して1つずつ)演算し、分布再構成部15により、複数の測定位置に対して得られた予測強度分布から、放射線源1の3次元分布を求めることができる。そのため、先行技術のような凸凹形状の放射線検出部を用いること無く、放射線源1の3次元分布を得ることができる。また、放射線検出部2の位置の変えることによって奥行き方向Zの放射線の位置による違いが測定できるため、特に奥行き方向Zの位置分解能が向上するといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
実施の形態2.
図12は本発明の実施の形態2に係る放射能分布測定装置200を示すブロック図である。実施の形態2に係る放射能分布測定装置200は、図12に示すように、図1の実施の形態1に係る放射能分布測定装置100に比較して、放射線検出部2と位置測定部3を搭載して移動させる移動部4をさらに備えたことを特徴としている。以下、上記相違点について詳述する。
図12において、移動部4は、例えば、遠隔操作が可能なビークル又は小型ヘリ、無人飛行機、ドローン等を用いて、放射線検出部2と位置測定部3を測定者の操作により、意図する測定箇所まで移動させることが可能な装置である。なお、遠隔操作は有線方式、無線方式いずれの方式でもよい。また、移動部4には前述した放射線検出部2と位置測定部3のみでなく、分布測定部10を搭載してもよく、さらに表示部18を搭載してもよい。
以上のように構成された本実施の形態に係る放射能分布測定装置200によれば、実施の形態1による放射能分布測定装置100と同様の効果が得られると共に、移動部4により、放射線検出部2を測定者が意図する測定位置へ放射線検出部2と位置測定部3を移動させることができる。それゆえ、放射能の分布測定に際する測定者が放射能分布測定装置200を持ち運ぶこと無く、複数位置での測定が可能になり、放射線源1の位置情報を測定することが可能になる。さらに、放射能分布測定装置200のみを測定現場へ設定できるため、移動と測定作業に伴う測定者の被ばく量を軽減することができる。
すなわち、実施の形態1の効果に加え、実施の形態2に係る構成を実現することにより、放射能分布測定装置200を測定者が持ち運ぶこと無く、遠隔で放射能分布測定装置200を移動部4により移動させることができ、測定者が侵入できないような場所へと放射能分布測定装置200を設置できることに加えて、被ばくの恐れがある領域内での測定者の作業がなくなるため、被ばく量を軽減する効果がある。
実施の形態3.
図13は本発明の実施の形態3に係る放射能分布測定装置300を示すブロック図である。実施の形態3に係る放射能分布測定装置300は、図13に示すように、図1の実施の形態1に係る放射能分布測定装置100に比較して、撮像部5をさらに備えたことを特徴としている。以下、上記相違点について詳述する。
図13において、撮像部5は、放射線検出部2を用いて測定する際と同時又は予め、例えば、光学式のデジタルカメラを用いて、測定対象物33を含む測定現場の静止画又は動画を撮影し、取得された画像を分布再構成部15へ出力する。分布再構成部15では、撮像部5により取得した画像上で放射線源1の存在する位置情報を照合させる。例えば、原点30において、撮像部5で現場画像を取得し、現場の撮影画像と得られた放射線源1の位置情報を重ね合わせて表示部18へ出力して表示する。
なお、前述では光学式カメラにより撮影された現場を2次元情報の画像に、放射線検出部2と位置測定部3によって、得られた放射線源1の位置情報を照合させた。しかし、本発明はこれに限らず、撮像部5が3次元情報を取得可能な、例えば、レーザースキャナ、Kinect等を用いることで、現場の3次元情報をもつ画像に対して、放射線源1の位置情報を照合させ、現場の3次元画像に放射線源1の位置情報を重ね合わせて表示してもよい。
以上のように構成された本実施の形態による放射能分布測定装置300によれば、実施の形態1による放射能分布測定装置100と同様の効果が得られると共に、撮像部5を用いて、測定者等が認識する空間情報に分布測定部10の出力となる放射線源1の位置情報を照合し、表示部18に光学撮像画像と放射能の分布を同時に表示することで、放射線源1の分布情報に対する観測理解度を向上させることができる。すなわち、実施の形態1の効果に加え、現場の画像と放射能分布を重ね合せて表示することで、放射能分布の観測理解度を向上させる効果がある。
実施の形態4.
図14は本発明の実施の形態4に係る放射能分布測定装置400を示すブロック図である。また、図15は図14の放射能分布測定装置400の使用例を示す斜視図である。実施の形態4に係る放射能分布測定装置400は、図14に示すように、図12の実施の形態2に係る移動部4に対応する移動部4Aと、図13の実施の形態3に係る撮像部5とをともに備えたことを特徴としている。
図14において、移動部4Aは放射線検出部2と位置測定部3、撮像部5を搭載し、測定者の操作により、放射能分布測定装置400を意図する測定箇所へ移動させることができ、かつ、放射線源1の位置情報を撮像部5が取得する図15の測定現場700の画像上に、表示することができる。
以上のように構成された本実施の形態に係る放射能分布測定装置400によれば、実施の形態1による放射能分布測定装置100と同様の効果が得られると共に、実施の形態2と実施の形態3の組み合わせにより、測定現場700までの通路等が測定者よりも小さく侵入できない領域や非常に放射線量が高く測定者が測定現場700で作業できない場所等であっても、移動部4Aを遠隔操作することで、測定現場700の画像と放射能の分布情報を得ることができる。それゆえ、測定者が物理的に侵入できない領域においても、放射能の分布測定に際して、放射能分布測定装置400を測定者が持ち運ぶこと無く、複数位置での測定ができ、さらに、測定作業に伴う測定者の被ばく量を軽減することができるとともに、放射線源1の分布情報に対する観測理解度を向上させることができる。
すなわち、実施の形態1に係る効果に加え、この構成を実現することにより、放射能分布測定装置400を測定者が持ち運ぶこと無く遠隔で放射能分布測定装置400を移動させることができ、測定者が侵入できないような場所へと放射能分布測定装置400を設置できることに加えて、被ばくの恐れがある領域内での測定者の作業がなくなるため、被ばく量を軽減する効果がある。また、測定現場700の画像と放射能分布を重ね合せて表示することで、放射能分布の観測理解度を向上させる効果がある。
実施の形態5.
図16は本発明の実施の形態5に係る放射能分布測定装置500を示す概念図である。実施の形態5は、実施の形態1から実施の形態4に対して、放射線検出部2に飛来する放射線の方向情報を得られる入射方向限定手段を付加させた構成であり、図16に示すように、放射線検出部2A、2Bに飛来する被測定放射線の入射方向の情報から放射線源1からの入射方向範囲41を限定することができる。従って、放射線源1の3次元分布を求めるために、放射能分布測定装置500を移動させる回数を減らすことができ、測定に有する時間を削減できる。
図17は図16の放射能分布測定装置500における入射方向範囲を示す縦断面図である。放射線検出部2A,2Bに飛来する放射線の入射方向範囲41を限定する入射方向手段としては、例えば、図17に示すように、放射線検出部2A,2Bの前方に、鉄系金属や鉛、タングステン等の重金属製のコリメータ40(任意の大きさの穴が空いた)を設ける。これにより、コリメータ40に設けた穴以外からの放射線を遮蔽し、放射線検出部2A,2Bに入射する放射線の入射方向範囲41を限定してもよい。
ここで、限定された放射線の入射方向範囲41については、コリメータ40に設けた穴とコリメータ40の厚さ、コリメータ40と放射線検出部2A,2Bの配置条件によって、図17に示すように、物理的に決定する入射方向角度44からなる円錐形状(無限高さ)となる。
なお、コリメータ40の厚みについては、対象とする放射線のエネルギーによって異なるが、一般的な放射線のエネルギー(〜3MeV)範囲であれば、鉛で10cm程度が必要となる。
図18Aは図16の放射能分布測定装置500において、コリメータ40が放射線検出部2A,2Bの側面全体及び上面の一部を覆う場合の縦断面図である。また、図18Bは図16の放射能分布測定装置において、コリメータ40が放射線検出部2A,2Bの側面のみを覆う場合の縦断面図である。
図18A及び図18Bの縦断面図に示すようにそれぞれ、周囲からの放射線を遮蔽するために放射線検出部2A,2Bの側面全体及び上面の一部を覆う形状、もしくは、放射線検出部2A,2Bの側面のみ覆う形状であってもよい。図18A及び図18Bに示すように、放射線検出部2A,2Bの側面全体及び上面の一部、もしくは側面のみ覆う場合、放射線検出部2A,2Bの前方方向に放射線源1が存在するとして測定を行うことになるが、環境中のγ線や散乱線等の放射線検出部2A,2Bの側面方向から飛来する放射線を遮蔽することにより、逆問題演算部13の演算誤差を軽減する効果がある。なお、コリメータ40は放射線の測定中に常時設けなくてもよい。
ここで、放射線検出部2A,2Bに入射した放射線の入射方向範囲41の情報を前記分布再構成部15(図1、図12〜図14参照)により、例えば、複数の測定位置に対して得られた予測強度分布に、入射方向範囲41を1とし、入射方向範囲41以外を0とした、補正係数の乗じることで、放射線源1の存在する3次元分布を、前記の実施の形態1から実施の形態4よりも少ない測定回数で求めることができる。
図19は図16において、放射線検出部2A,2Bの深さ方向の反応位置から放射能分布測定装置における入射方向範囲を示す縦断面図である。
前記コリメータ40を設けることに加え、例えば、CZT(CdZnTe:テルル化カドミウム亜鉛)半導体式検出器のように、電子と正孔の移動度の違いを利用して、アノード電極とカソード電極間の反応位置を得られることが一般的に知られている放射線検出部2A,2B(例えば非特許文献2)を用いれば、図19に示すように、検出部2に入射した放射線の深さ方向の反応位置42から限定した入射方向角度45から、前記入射方向範囲41をさらに限定した入射方向範囲43を得ることができるため、より少ない測定回数で放射線源1の存在する3次元分布を求めることができる。
なお、実施の形態5の応答関数格納部14においては、コリメータ40を配置することによる放射線の散乱等を考慮し、逆問題演算部13の演算による誤差を減少させるために、配置するコリメータ40まで定義した応答関数を格納してもよい。
以上説明したように、本実施形態5に係る放射能分布測定装置500によれば、放射線源の存在する方向情報から、放射線源の存在する範囲を限定することができるため、実施形態1から実施の形態4に比較して、少ない測定回数で放射線源の分布を得ることができる。
以上詳述したように、本発明に係る放射能分布測定装置によれば、特殊な形状の放射線検出器を用いることなく、放射線源1の存在する予測強度分布を得ることができ、異なる複数の測定位置で得られた予測強度分布を用いることで、放射線検出器に特別な工夫をこらすことなく、従来技術に比較して高精度で、奥行き方向を含む放射線源1の3次元分布を計測可能である。
1 放射線源、2,2A,2B,2C 放射線検出部、2a 放射線検出器、2L 検出線、2P 検出座標原点、3 位置測定部、3a ジャイロセンサ、4,4A 移動部、5 撮像部、10 分布測定部、 11 信号増幅部、11a 増幅器、12 波高演算部、13 逆問題演算部、14 応答関数格納部、15 分布再構成部、18 表示部、18a ディスプレイ、30 原点、 31 予測強度分布、32 移動量、33 測定対象物、34 エネルギースペクトル、40 コリメータ、41 入射方向範囲、42 深さ方向反応位置、43 限定した入射方向範囲、44 入射方向角度、45 限定した入射方向角度、100,200,300,400,500 放射能分布測定装置、101 放射線、700 測定現場、600 プロセッサ、600a CPU、600b メモリ、600c,600d,600e インターフェース(I/F)、R 半径方向、Z 奥行き方向。

Claims (14)

  1. 放射線源から飛来する被測定放射線を検出して検出信号を出力する放射線検出部と、
    前記放射線検出部が配置される測定位置を測定して出力する位置測定部と、
    前記検出信号に基づいて、前記被測定放射線によるパルス波高分布を演算する波高演算部と、
    所定の複数の測定位置に対してそれぞれ演算された複数のパルス波高分布と、所定の複数の位置のそれぞれに放射線源が存在すると仮定したときの複数の応答関数とを用いて、前記複数の位置のそれぞれに放射線源が存在すると仮定した場合に、仮定された放射線源から放出されたと推測される放射線の強度を予測強度として算出し、前記複数の位置に対する当該予測強度の分布を示す予測強度分布を演算して出力する逆問題演算部と、
    前記複数の測定位置に対して演算された予測強度分布と、前記位置測定部から出力される測定位置の位置情報とを用いて、予測強度が一致する領域を同定して放射線源の3次元分布を推定する分布再構成部とを備えたことを特徴とする放射能分布測定装置。
  2. 前記分布再構成部はさらに、当該放射線源の3次元分布に基づく放射能と、放射能濃度とのうちの少なくとも1つを推定することを特徴とする請求項1記載の放射能分布測定装置。
  3. 前記所定の複数の位置は、前記放射線検出部の位置を中心する半径方向と奥行き方向との組合せで定義されることを特徴とする請求項1又は2記載の放射能分布測定装置。
  4. 前記複数の応答関数を格納する応答関数格納部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定装置。
  5. 前記放射線検出部が配置される測定位置を測定毎に移動させる移動部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定装置。
  6. 測定対象となる物質を含む領域の画像を撮像する撮像部と、
    前記推定された放射線源の3次元分布と、前記撮像された画像とを重ねて表示する表示部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定装置。
  7. 前記放射線検出部は、飛来する被測定放射線を検出する放射線の入射方向を限定する入射方向限定手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定装置。
  8. 放射線検出部が、放射線源から飛来する被測定放射線を検出して検出信号を出力するステップと、
    位置測定部が、前記放射線検出部が配置される測定位置を測定して出力するステップと、
    波高演算部が、前記検出信号に基づいて、前記被測定放射線によるパルス波高分布を演算するステップと、
    逆問題演算部が、所定の複数の測定位置に対してそれぞれ演算された複数のパルス波高分布と、所定の複数の位置のそれぞれに放射線源が存在すると仮定したときの複数の応答関数とを用いて、前記複数の位置のそれぞれに放射線源が存在すると仮定した場合に、仮定された放射線源から放出されたと推測される放射線の強度を予測強度として算出し、前記複数の位置に対する当該予測強度の分布を示す予測強度分布を演算して出力するステップと、
    分布再構成部が、前記複数の測定位置に対して演算された予測強度分布と、前記位置測定部から出力される測定位置の位置情報とを用いて、予測強度が一致する領域を同定して放射線源の3次元分布を推定するステップとを含むことを特徴とする放射能分布測定方法。
  9. 前記分布再構成部が、当該放射線源の3次元分布に基づく放射能と、放射能濃度とのうちの少なくとも1つを推定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の放射能分布測定方法。
  10. 前記所定の複数の位置は、前記放射線検出部の位置を中心する半径方向と奥行き方向との組合せで決定されることを特徴とする請求項8又は9記載の放射能分布測定方法。
  11. 応答関数格納部が、前記複数の応答関数を格納するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8〜10のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定方法。
  12. 前記放射線検出部が配置される測定位置を測定毎に移動させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項8〜11のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定方法。
  13. 撮像部が、測定対象となる物質を含む領域の画像を撮像するステップと、
    表示部が、前記推定された放射線源の3次元分布と、前記撮像された画像とを重ねて表示するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項8〜12のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定方法。
  14. 入射方向限定手段が、飛来する被測定放射線を検出する放射線の入射方向を限定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8〜13のうちのいずれか1つに記載の放射能分布測定方法。
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