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JPWO2018047785A1 - コラーゲン様ポリペプチド - Google Patents

コラーゲン様ポリペプチド Download PDF

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JPWO2018047785A1
JPWO2018047785A1 JP2018538403A JP2018538403A JPWO2018047785A1 JP WO2018047785 A1 JPWO2018047785 A1 JP WO2018047785A1 JP 2018538403 A JP2018538403 A JP 2018538403A JP 2018538403 A JP2018538403 A JP 2018538403A JP WO2018047785 A1 JPWO2018047785 A1 JP WO2018047785A1
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大輔 中村
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千秋 壷井
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Abstract

(a) 下記式(1)〜(3)H − ( X − Y − Gly )n − OH (1)H − ( Gly − X − Y )n − OH (2)H − ( Y − Gly − X )n − OH (3)(式(1)〜(3)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数である。)で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマー、又は(b) 上記式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマーと、下記式(4)〜(10)H − ( Z ) − OH (4)(式(4)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表す。)H − ( Pro−Lys−Gly )p− OH (5)H − ( Gly−Pro−Lys )p− OH (6)H − ( Lys−Gly−Pro )p− OH (7)(式(5)〜(7)中、pは1〜10の整数である。)H − ( Z2−Hyp−Gly )r− OH (8)H − ( Gly−Z2−Hyp )r− OH (9)H − ( Hyp−Gly−Z2)r− OH (10)(式(8)〜(10)中、Z2は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、rは1〜10の整数である。)で表される少なくとも1種のアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドとを有機塩基を用いてpH3〜10に調整した水系溶媒中で縮合反応させることによりポリペプチドを製造する方法によれば、実用上十分な耐熱性を有するコラーゲン様ポリペプチドを安定的に製造することができる。

Description

本発明は、高耐熱性コラーゲン様ポリペプチドを安定的に製造することができる方法、この方法により得られる高耐熱性コラーゲン様ポリペプチド、及びこのポリペプチドを用いて製造される架橋ポリペプチドに関する。
典型的なコラーゲン分子は、3アミノ酸ごとにグリシンが存在するアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、3本のポリペプチド鎖がらせんを巻いた特徴的なコラーゲンヘリックス構造を採っている。生体内では、3本鎖はコラーゲン繊維を形成し、さらに3次元的なコラーゲンマトリクスを形成している。コラーゲンマトリクスは、そこに細胞が接着して増殖や分化を行う足場として機能している。
コラーゲンは、その高い生体親和性から、医療・組織工学用のバイオマテリアルとして汎用されている。
しかし、天然のコラーゲンは熱に弱く、哺乳類由来のコラーゲンでも30℃〜40℃で三重らせん構造がほどけてランダムコイル状に変性する。バイオマテリアルとして利用するには加熱滅菌できることが求められるため、天然のコラーゲンをバイオマテリアルとして利用することは困難である。
そこで、合成コラーゲン様ポリペプチドの製造方法が、種々試みられている。合成コラーゲン様ポリペプチドは、天然コラーゲンと異なり、感染症の危険性がないこと、工業的合成により得られるため安定な供給が可能であることなどの優れた性質を有する。
非特許文献1は、Pro−Y−Gly(式中、Yは、Hyp又はProを表す)のユニットからなるポリペプチドが三重らせん構造を有するコラーゲン様ポリペプチドであること、このコラーゲン様ポリペプチドが、天然コラーゲンに比べて熱安定性が高いことを記載している。しかし、その耐熱性は、加熱滅菌に耐えるほどの十分なものではない。
また、特許文献1は、−(Pro−Y−Gly)n−(式中、Yは、Hypを表し、nは1〜20の整数を表す。)と、−(Z)r−(式中、Zは、Glyなどのアミノ酸残基又はペプチド鎖を表し、rは1〜2の整数を表す。)とを、100:0〜70:30のモル比で有し、分子量2万〜100万のコラーゲン様ポリペプチドを開示している([請求項1])。特許文献1は、通常のペプチド合成法、特に固相合成法により、このコラーゲン様ポリペプチドを製造できることを教えている([0044])。
また、特許文献2は、H−(Pro−Y−Gly)n−OH、H−(Y-Gly-Pro)n−OH、又はH−(Gly-Pro−Y)n−OH(式中、Yは、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数を表す。)を、リン酸イオン濃度0.01M未満の水系溶媒中で縮合させることにより、コラーゲン様ポリペプチドを製造する方法を開示している([請求項1])。特許文献2は、リン酸イオン濃度が低いほど高分子量のポリペプチドが得られることを教えている([0040])。
また、特許文献3は、−(Pro−Y−Gly)n−(式中、Yは、Pro又はHypを表し、nは1以上の整数である。)と多糖類由来の糖残基とを有する重合体が、コラーゲン様ポリペプチドの生体親和性と、多糖類由来の親水性とを兼ね備え、機械的強度が高い重合体であることを教えている([0013])。特許文献3は、一般的な縮合反応により、この重合体を製造できることを教えている([0033]〜[0039])。
しかし、これらの文献が教えるコラーゲン様ポリペプチドの製造方法では、縮合反応の進行が不十分でポリペプチド鎖が形成されなかったり、逆に、縮合反応が進行し過ぎて、過重合によりゲル状になってしまう場合がある。ゲル状になると、その後の精製が困難であり、また、構造や特性を分析できないため、バイオマテリアルに応用することができない。
特開2003−321500号公報 特開2014−9194号公報 特開2013−112653号公報
T. Kishimoto et al., Biopolymers,79,163−172(2005)
本発明は、実用上十分な耐熱性を有するコラーゲン様ポリペプチドを安定的に製造することができる方法、及びこの方法により得られる高耐熱性コラーゲン様ポリペプチドを提供することを主な課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、
(a) 下記式(1)

H − ( X − Y − Gly ) n− OH (1)

(式(1)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマー、下記式(2)

H − ( Gly − X − Y ) n− OH (2)

(式(2)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマー、及び下記式(3)

H − ( Y − Gly − X ) n− OH (3)

(式(3)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドオリゴマー、又は
(b) 上記式(1)で表されるペプチドオリゴマー、上記式(2)で表されるペプチドオリゴマー、及び上記式(3)で表されるペプチドオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドオリゴマーと、下記式(4)

H − ( Z ) − OH (4)

(式(4)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表す。)
で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチド、下記式(5)

H − ( Pro−Lys−Gly )p− OH (5)

(式(5)中、pは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマー、下記式(6)

H − ( Gly−Pro−Lys )p− OH (6)

(式(6)中、pは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマー、下記式(7)

H − ( Lys−Gly−Pro )p− OH (7)

(式(7)中、pは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマー、下記式(8)

H − ( Z−Hyp−Gly )r− OH (8)
(式(8)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、rは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマー、下記式(9)

H − ( Gly−Z−Hyp )r− OH (9)

(式(9)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、rは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマー、及び下記式(10)

H − ( Hyp−Gly−Z )r− OH (10)

(式(10)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、rは1〜10の整数である。)
で表されるペプチドオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドとを、有機塩基を用いてpH3〜10に調整した水系溶媒中で縮合反応させることにより、少なくとも一部が三重らせん構造を形成する、又は形成し得る重量平均分子量10,000〜1,500,000の高耐熱性のコラーゲン様ポリペプチドが得られることを見出した。
また、この製造方法によれば、縮合反応が過不足なく安定して進行し、高耐熱性のコラーゲン様ポリペプチドを効率よく製造できることを見出した。
本発明は、この知見に基づき完成されたものであり、以下のポリペプチドの製造方法、ポリペプチド、及び架橋ポリペプチドを提供する。
項1. (a) 下記式(1)〜(3)

H − ( X − Y − Gly )n − OH (1)
H − ( Gly − X − Y )n − OH (2)
H − ( Y − Gly − X )n − OH (3)

(式(1)〜(3)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数である。)
で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマー、又は
(b) 上記式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマーと、下記式(4)〜(10)

H − ( Z ) − OH (4)

(式(4)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表す。)

H − ( Pro−Lys−Gly )p− OH (5)
H − ( Gly−Pro−Lys )p− OH (6)
H − ( Lys−Gly−Pro )p− OH (7)

(式(5)〜(7)中、pは1〜10の整数である。)

H − ( Z−Hyp−Gly )r− OH (8)
H − ( Gly−Z−Hyp )r− OH (9)
H − ( Hyp−Gly−Z )r− OH (10)

(式(8)〜(10)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、rは1〜10の整数である。)
で表される少なくとも1種のアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドとを、
有機塩基を用いてpH3〜10に調整した水系溶媒中で縮合反応させることにより、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチドを得る工程を含むポリペプチドの製造方法。
項2. 有機塩基が第三級アミンである項1に記載の方法。
項3. 水系溶媒のpHを4〜8に調整する項1又は2に記載の方法。
項4. ペプチドオリゴマーを塩体として縮合反応に供する項1〜3の何れかに記載の方法。
項5. 項1〜4の何れかに記載の方法で製造される、下記式(11)

― ( X − Y − Gly ) m ― (11)

(式(11)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、mは、10〜3600の整数である。)
で表される少なくとも1種のユニットを有し、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチド。
項6. 円二色性スペクトルにおいて、波長210nm〜230nmに正のコットン効果を示し、波長185nm〜205nmに負のコットン効果を示す項5に記載のポリペプチド。
項7. 変性温度が50℃〜150℃である項5又は6に記載のポリペプチド。
項8. 下記式(15)

― ( Hyp − Hyp − Gly ) m ― (15)

(式(15)中、mは10〜3600の整数である。)
で表されるユニットを有し、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチド。
項9. 下記式(15)

― ( Hyp − Hyp − Gly ) m ― (15)

(式(15)中、mは10〜3600の整数である。)
で表されるユニットと、下記式(12)〜(14)

― ( Z ) l ― (12)

(式(12)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表し、lは、1〜360の整数である。)

― ( Pro−Lys−Gly )q― (13)

(式(13)中、qは1〜360の整数である。)

― ( Z−Hyp−Gly )s― (14)

(式(14)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、sは1〜360の整数である。)
で表される少なくとも1種のユニットとを有し、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチド。
項10. 項5〜9の何れかに記載のポリペプチドを架橋してなる架橋ポリペプチド。
項11. 変性温度が50℃〜150℃である項10に記載の架橋ポリペプチド。
本発明のポリペプチドの製造方法によれば、縮合反応が過不足なく進行し、高耐熱性のコラーゲン様ポリペプチドを効率よく製造することができる。
即ち、従来の製造方法では、条件によっては、縮合反応が十分に進行せず、所望の分子量のポリペプチドが得られなかったり、未反応原料が残る場合がある。また、縮合反応が進み過ぎて、ポリペプチドがゲル状になる場合もある。ゲル状になると、その後の精製が困難であり、また、構造や特性を分析できないため、バイオマテリアルに応用することができない。
この点、本発明方法によれば、縮合反応が十分に進行しなかったり、未反応物が生成したり、過重合するといった事態が抑制されて、広範囲の条件下で、安定してコラーゲン様ポリペプチドを得ることができる。また、得られるポリペプチドは、精製、分析が可能であるため、ポリペプチドの構造や特性に応じたバイオマテリアルに応用することができる。また、本発明方法によれば、ポリペプチドの分子量を容易に制御できるため、目的とするバイオマテリアルに応じた分子量のポリペプチドを効率よく製造することができる。
また、本発明方法によれば、変性温度が通常50℃以上の高耐熱性のコラーゲン様ポリペプチドが得られる。製造条件によっては、変性温度が120℃以上の超高耐熱性のコラーゲン様ポリペプチドが得られる場合もあり、この場合は、バイオマテリアルの汎用の滅菌方法であるオートクレーブ滅菌にも耐えるものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)ポリペプチドの製造方法
本発明の製造方法は、
(a) 下記式(1)〜(3)

H − ( X − Y − Gly ) n− OH (1)
H − ( Gly − X − Y ) n− OH (2)
H − ( Y − Gly − X ) n− OH (3)

(式(1)〜(3)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数である。)
で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマー、又は
(b) 上記式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマーと、下記式(4)〜(10)

H − ( Z ) − OH (4)

(式(4)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表す。)

H − ( Pro−Lys−Gly )p− OH (5)
H − ( Gly−Pro−Lys )p− OH (6)
H − ( Lys−Gly−Pro )p− OH (7)

(式(5)〜(7)中、pは1〜10の整数である。)

H − ( Z−Hyp−Gly )r− OH (8)
H − ( Gly−Z−Hyp )r− OH (9)
H − ( Hyp−Gly−Z )r− OH (10)

(式(8)〜(10)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、rは1〜10の整数である。)
で表される少なくとも1種のアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドとを、
有機塩基を用いてpH3〜10に調整した水系溶媒中で縮合反応させることにより、少なくとも一部分が三重らせん構造を形成する、又は形成し得る重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチドを得る工程を含むポリペプチドの製造方法である。
原料
本発明方法では、上記式(1)で表されるペプチドオリゴマー、上記式(2)で表されるペプチドオリゴマー、及び/又は上記式(3)で表されるペプチドオリゴマーが必須の原料である。式(1)、(2)、及び(3)中のXとYの組み合わせとしては、一方がHypで他方がProである組み合わせ、双方がHypである組み合わせ、双方がProである組み合わせがある。少なくとも一方がHypであれば、得られるペプチドの親水性が向上し、例えば、保水性が求められるバイオマテリアル、例えば、化粧品原料などに好適に応用できる。双方がHypであってもよい。
式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。2種以上のペプチドオリゴマーを用いるときは、得られるポリペプチドが3重らせん構造をとり易くなるように、又は得られるポリペプチド中の3重らせん構造の部分を長くするために、式(1)〜(3)のペプチドオリゴマーの合計量に対して、Glyの位置が同じであるペプチドオリゴマーを35〜100モル%、中でも50〜100モル%、中でも70〜100モル%、中でも80〜100モル%、中でも90〜100モル%用いることが好ましい。例えば、式(1)に包含されるペプチドオリゴマーはGlyが3番目に存在する点で、Glyの位置が同じであるペプチドオリゴマーである。式(2)に包含されるペプチドオリゴマー、及び式(3)に包含されるペプチドオリゴマーも同様である。式(1)に包含されるペプチドオリゴマー、式(2)に包含されるペプチドオリゴマー、又は式(3)に包含されるペプチドオリゴマーだけを用いることが最も好ましい。
式(1)、(2)、及び(3)において、nは、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。また、nは、1、又は2であってもよい。
また、本発明方法では、式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマーに加えて、他のアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドを用いてもよい。他のアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドとしては、例えば、上記式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドが挙げられる。式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドのうち、ポリペプチドを架橋して架橋ポリペプチドとする場合に反応点となり易い点で、極性アミノ酸が好ましく、酸性の極性アミノ酸又は塩基性の極性アミノ酸がより好ましく、Asp、Glu、Lysがさらにより好ましい。
また、架橋ポリペプチドとする場合に反応点となりやすい点では、式(5)〜(7)のペプチドオリゴマー、又は式(8)〜(10)においてZがGluであるペプチドオリゴマーが好ましく、ポリペプチドの疎水性を調整できる点では式(8)〜(10)においてZがAla、Val、Leu、又はIleであるペプチドオリゴマーが好ましい。
また、Arg−Gly−Aspは細胞接着活性配列であるRGDモチーフであるため、Arg−Gly−Aspを用いることにより、得られるポリペプチドに細胞の接着生存促進作用などを付与できることが期待される。
式(4)中のε-ポリリジンは、特に限定されないが、例えば、約25〜30個のL−Lysからなり、食品防腐剤などとして市販されているε-ポリリジンを用いることができる。
また、式(4)中のArg−Gly−Asp、及び式(5)〜(10)で表されるペプチドオリゴマーからなる群より選ばれるペプチドオリゴマーを2種以上用いるときは、得られるポリペプチドが3重らせん構造をとり易くなるように、又は得られるポリペプチド中の3重らせん構造の部分を長くするために、Arg−Gly−Asp、及び式(5)〜(10)のペプチドオリゴマーの合計量に対して、Glyの位置が同じであるペプチドオリゴマーを35〜100モル%、中でも50〜100モル%、中でも70〜100モル%、中でも80〜100モル%、中でも90〜100モル%、中でも100モル%用いることが好ましい。例えば、Arg−Gly−Aspと、式(7)のペプチドオリゴマーと、式(10)のペプチドオリゴマーとは、Glyの位置が同じであるため、これらから選択されるペプチドオリゴマーの比率を上記範囲にすることが好ましい。また、式(5)のペプチドオリゴマーと、式(8)のペプチドオリゴマーはGlyの位置が同じであり、式(6)のペプチドオリゴマーと、式(9)のペプチドオリゴマーはGlyの位置が同じである。
式(4)中のArg−Gly−Asp、及び式(5)〜(10)で表されるペプチドオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチドオリゴマーを用いるときは、さらに、式(1)、式(2)、及び/又は式(3)のペプチドオリゴマーも含む全ペプチドオリゴマーについて、Glyの位置が同じであるペプチドオリゴマーを多くすることが好ましい。全ペプチドオリゴマー量に対する、Glyの位置が同じであるペプチドオリゴマーの使用量は、35〜100モル%、中でも50〜100モル%、中でも70〜100モル%、中でも80〜100モル%、中でも90〜100モル%、中でも100モル%が好ましい。例えば、式(1)で表されるペプチドオリゴマーと、式(5)で表されるペプチドオリゴマー、及び/又は式(8)で表されるペプチドオリゴマーとを組み合わせることが好ましい。
式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドを用いる場合のその合計使用量は、式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーの合計量の1molに対して、0.001mol以上、0.002mol以上、0.01mol以上、0.02mol以上、又は0.05mol以上とすることができる。この範囲であれば、用途に応じて得られるポリペプチドの反応性を調整する等の分子設計を行うことができる。
また、5mol以下、3mol以下、2mol以下、又は1mol以下とすることができる。この範囲であれば、得られるペプチドが三重らせんを形成し易くなる。
式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマー、及び式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドは、塩の形態で縮合反応に供することができ、これにより、反応が一層円滑に進行する。
これら原料のアミノ基部分の塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、アスコルビン酸塩のような有機酸塩;炭酸塩、炭酸水素塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩などが挙げられる。
また、カルボキシル基部分の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;亜鉛塩;鉄塩;アンモニウム塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、t−ブチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、ジメチルアンモニウム塩、ベンジルアミン塩、ピリジン塩、メチルピリジン(ピコリン)塩、キノリン塩、イソキノリン塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩のようなアミン塩などが挙げられる。
中でも、アミノ基部分の塩が好ましく、有機酸塩がより好ましく、塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩がさらにより好ましく、トリフルオロ酢酸塩がさらにより好ましい。
水系溶媒
水系溶媒としては、好ましくは、水を用いる。また、有機溶媒を含む水であってもよい。この場合、有機溶媒の含有量は、水系溶媒の全量に対して、50容量%以下が好ましく、25容量%以下がより好ましく、10容量%以下がさらにより好ましく、5容量%以下がさらにより好ましい。
有機溶媒の種類は、水と混和するものであればよく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチルウレア、ヘキサメチルホスホロアミドのようなアミド系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような多価アルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド系溶媒;N−メチルピロリドン、ピリジンのような窒素含有環状化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールのようなアルコール系溶媒;ギ酸、酢酸のようなカルボン酸系溶媒などが挙げられる。
有機溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
なお、水系溶媒は、縮合反応に関与しない成分や縮合反応を阻害しない成分であれば含んでいてもよいが、リン酸イオンを含まない水系溶媒とすることができる。
縮合剤・縮合助剤
本発明において、脱水縮合反応によるペプチドの合成は、液相合成、固相合成の何れでも行える。低コストで大量合成を行える点では、液相合成が好ましい。
何れの場合も、脱水縮合反応は、通常、縮合剤の存在下、又は縮合剤と縮合助剤の存在下で行えばよい。縮合助剤を使用することにより、縮合反応が促進され、かつ、ラセミ化が抑制される。
縮合剤は、水系溶媒中で脱水縮合を行えるものであればよく、例えば、1-[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド(WSCD(EDC))、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSCD・HCl)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホン酸塩(CME-カルボジイミド)のようなカルボジイミド系縮合剤;N,N’−カルボニルジイミダゾールのようなイミダゾール系縮合剤;4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホニウム・クロリドn水和物(DMT−MM)、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)-(2−オクトキシ−2−オキソエチル)ジメチルアンモニウム(DMT-MM)のようなトリアジン系縮合剤;{{[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]オキシ}−4−モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1H−ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、クロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyCloP)のようなフルオロホスフェート系縮合剤;O−(7−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TSTU)、O−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TDBTU)のようなフルオロホウ酸塩系縮合剤;ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)などが挙げられる。
中でも、カルボジイミド系縮合剤が好ましく、WSCD、WSCD・HCl、DCC、DICがより好ましい。
縮合剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
縮合剤の使用量は、式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーの合計の1molに対して、0.1mol以上、0.2mol以上、0.3mol以上、0.5mol以上、又は1mol以上とすることができる。この範囲であれば、実用上十分な速度で反応が進行する。また、20mol以下、15mol以下、10mol以下、8mol以下、又は6mol以下とすることができる。この範囲であれば、過重合を回避できる。
また、原料として、式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーに加えて、式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドを用いる場合は、縮合剤の使用量は、これら原料化合物の合計の1molに対して、0.1mol以上、0.2mol以上、0.3mol以上、0.5mol以上、又は1mol以上とすることができ、また、20mol以下、15mol以下、10mol以下、8mol以下、又は6mol以下とすることができる。この範囲であれば、実用上十分な速度で反応が進行すると共に、過重合を回避できる。
縮合助剤は、縮合反応を促進するものであればよく、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド(HONSu)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド(HONB)のようなN−ヒドロキシジカルボン酸イミド(N−ヒドロキシ多価カルボン酸イミド類)系縮合助剤;1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAt)のようなN−ヒドロキシベンゾトリアゾール系縮合助剤;3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOObt)のようなトリアジン系縮合助剤;2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステルなどが挙げられる。
中でも、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール系縮合助剤が好ましく、HOBtがより好ましい。
縮合助剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
縮合助剤の使用量は、式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーの合計の1molに対して、0.001mol以上、0.002mol以上、0.01mol以上、0.02mol以上、又は0.1mol以上とすることができる。この範囲であれば、実用上十分な速度で反応が進行し、ポリペプチドのラセミ化を抑制することができる。また、10mol以下、8mol以下、5mol以下、2mol以下、又は1mol以下とすることができる。この範囲であれば、水系溶媒に均一に溶解させて、助剤として機能させることができる。
また、原料として、式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーに加えて、式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドを用いる場合は、縮合助剤の使用量は、これら原料化合物の合計の1molに対して、0.001mol以上、0.002mol以上、0.01mol以上、0.02mol以上、又は0.1mol以上とすることができる。この範囲であれば、実用上十分な速度で反応が進行し、ポリペプチドのラセミ化を抑制することができる。また、10mol以下、8mol以下、5mol以下、2mol以下、又は1mol以下とすることができる。この範囲であれば、水系溶媒に均一に溶解させて、助剤として機能させることができる。
pH調整
縮合反応を行う水系溶媒のpHは、約3〜10に調整する。水系溶媒のpHは、約4以上、約5以上、又は約6以上とすることもできる。また、約9以下、約8以下、又は約7以下とすることもできる。
このpHは、ペプチドオリゴマー、又はさらにアミノ酸、ペプチドを含む原料に有機塩基を加えた後、縮合剤又はさらに縮合助剤を添加する前の反応液のpHを指す。即ち、有機塩基で中和した時の反応液のpHを指す。
本発明方法では、有機塩基を用いてpHを調整する。これにより、縮合反応を過不足なく安定して進行させることができ、構造を解析できるコラーゲン様ポリペプチドを効率良く得ることができる。
有機塩基は、縮合反応に関与しないもの、即ち、得られるペプチドに取り込まれないものであればよく、例えば、脂肪族アミン類(メチルアミン、エチルアミンのような第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミンのような第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンのような第三級アミン);芳香族アミン類(アニリン、トルイジンのような第一級アミンなど);複素環式アミン類(ピロリジン、ピペリジン、モルホリンのような第二級アミン;ピペラジンのような第二級ジアミン;ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン(コリジン)、2,6−ルチジン、キノリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンのような第三級アミンなど);アルカノールアミン(モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタンのような第一級アミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンのような第二級アミン;トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−ジメチルアミノエタノールのような第三級アミン)などが挙げられる。
中でも、第三級アミンが好ましく、脂肪族第三級アミン、複素環式第三級アミンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンがさらにより好ましい。
有機塩基は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
その他の反応条件
縮合反応において、原料濃度、即ち、水系溶媒中の式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーの濃度、又は式(1)〜(3)で表されるペプチドオリゴマーと式(4)〜(10)で表されるアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドとの合計の濃度は、水系溶媒の全量に対して、1重量%以上、3重量%以上、5重量%、又は10重量%以上とすることができる。この範囲であれば、実用上十分な速度で反応が進行する。また、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量以下、又は20重量以下とすることができる。この範囲であれば、過重合を回避できる。
反応温度は、−10℃以上、−5℃以上、0℃以上、又は10℃以上とすることができる。また、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、又は30℃以下とすることができる。この範囲であれば、縮合反応が効率よく進行する。
また、反応時間は、原料、縮合剤、縮合助剤、及び水系溶媒の種類や使用量、水系溶媒のpHなどによって異なるが、例えば、1時間以上、2時間以上、又は5時間以上とすることができ、また、100時間以下、90時間以下、80時間以下、70時間以下、60時間以下、50時間以下、40時間以下、30時間以下、又は20時間以下とすることができる。
精製
縮合反応による生成物には、通常、目的とするポリペプチドの他に、反応に用いた試薬や微量の未反応原料が残存している。従って、透析、限外ろ過、カラムクロマトグラフィーなどにより、目的ポリペプチドを精製することが望ましい。
また、ポリペプチドは、凍結乾燥などにより粉体とすれば、保存時の取り扱いが容易になり、また、その後の加工に使用し易くなる。
或いは、ポリペプチドを保存溶媒中で保存することもでき、これによりポリペプチドの構造が安定に保たれる。保存溶媒としては、水、生理食塩水、pH5〜8程度の緩衝液などが挙げられる。
(II)ペプチド
本発明のポリペプチドは、少なくとも一部が三重らせん構造を形成可能であり、重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチドである。
下記式(11)

― ( X − Y − Gly ) m ― (11)

(式(11)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、mは、10〜3600の整数である。)
で表される少なくとも1種のユニットを有する場合、本発明のポリペプチドは少なくとも一部分が三重らせん構造を形成することができる。
式(11)中、mは、15以上、30以上、100以上、又は500以上とすることができる。また、3500以下、3000以下、2000以下、又は1000以下とすることができる。
また、上記式(11)で表される少なくとも1種のユニットに加えて、下記式(12)〜(14)

― ( Z ) l ― (12)

(式(12)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表し、lは、1〜360の整数である。)

― ( Pro−Lys−Gly )q― (13)

(式(13)中、qは1〜360の整数である。)

― ( Z−Hyp−Gly )s― (14)

(式(14)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、sは1〜360の整数である。)
で表される少なくとも1種のユニット(以下、「任意ユニット」と称することもある。)を有する場合もある。
式(12)、(13)及び(14)中、l、q及びsは、3以上、5以上、10以上、又は20以上とすることができる。また、300以下、250以下、200以下、又は150以下とすることができる。
任意ユニットを有する場合のその合計含有比率は、式(11)で表されるユニットの合計の1molに対して、0.001mol以上、0.002mol以上、0.01mol以上、0.02mol以上、又は0.05mol以上とすることができ、また、5mol以下、3mol以下、2mol以下、又は1mol以下とすることができる。本発明のポリペプチドがこの任意ユニットを有する場合、上記式(11)で表されるユニットと任意ユニットを交互に有することもできる。
本発明は、
下記式(15)

― ( Hyp − Hyp − Gly ) m ― (15)

(式(15)中、mは10〜3600の整数である。)
で表されるユニットを有し、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチドを包含する。
式(15)中、mは、15以上、30以上、100以上、又は500以上とすることができる。また、3500以下、3000以下、2000以下、又は1000以下とすることができる。
また、本発明は、上記式(15)で表されるユニットと、下記式(12)〜(14)

― ( Z ) l ― (12)

(式(12)中、ZはAla、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表し、lは、1〜360の整数である。)

― ( Pro−Lys−Gly )q― (13)

(式(13)中、qは1〜360の整数である。)

― ( Z−Hyp−Gly )s― (14)

(式(14)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、sは1〜360の整数である。)
で表される少なくとも1種の任意ユニットとを有するポリペプチドであって、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチドを包含する。
式(12)、(13)、及び(14)中、l、q、及びsは、3以上、5以上、10以上、又は20以上とすることができる。また、300以下、250以下、200以下、又は150以下とすることができる。
任意ユニットを有する場合のその合計含有比率は、式(15)で表されるユニットの1molに対して、0.001mol以上、0.002mol以上、0.01mol以上、0.02mol以上、又は0.05mol以上とすることができ、また、5mol以下、3mol以下、2mol以下、又は1mol以下とすることができる。本発明のポリペプチドがこの任意ユニットを有する場合、上記式(15)で表されるユニットと任意ユニットを交互に有することもできる。
本発明のポリペプチドは、例えば、上記説明した本発明方法により製造することができる。
本発明のポリペプチドは、天然のコラーゲン分子と同様に、三重らせん構造を採る、又は採り得る。三重らせん構造を採ることは、円二色性スペクトルにおいて、210nm〜230nmに正のコットン効果を示し、かつ185nm〜205nmに負のコットン効果を示すことにより確認できる。
ポリペプチドは、少なくともその一部分が三重らせん構造を採っていればよく、又は採り得ればよい。
また、本発明のポリペプチドは、直鎖状、又は分岐鎖であり得る。
本発明のポリペプチドは、非常に耐熱性が高く、高温下でも変性せず、三重らせん構造を維持することができる。その変性温度は、通常、50℃以上であり得る。また、ポリペプチドを構成するユニットの種類や長さによっては、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上、100℃以上、105℃以上、110℃以上、115℃以上、120℃以上、130℃以上、又は140℃以上であり得る。変性温度の上限は、通常、150℃程度である。変性温度は、原料の選択やポリペプチド鎖長の調整などにより、当業者が適宜制御することができる。
変性温度は、三重らせん構造を維持できる温度であり、円二色性スペクトルの正のピーク波長での吸光度を、温度を上昇させながら測定し、吸光度が急速に低下する変曲点の温度を指す。変性温度は、円二色性スペクトルの測定装置や測定条件によりほとんど変化しない値である。
本発明のポリペプチドは、多様な長さのものとすることができる。ポリペプチド鎖の長さは、原料の種類や使用量、反応条件など、特に、縮合剤、縮合助剤の使用量を調整することにより制御できる。ペプチド鎖の長さ又は分子量は、当業者が、通常の知識により制御することができる。
上記説明した本発明方法により本発明のポリペプチドを製造する場合は、分子量の制御が非常に容易である。また、高分子量のポリペプチドも容易に製造できる。
本発明のポリペプチドの重量平均分子量は、1万以上である。また、例えば、2万以上、3万以上、5万以上、又は10万以上であり得る。また、本発明のポリペプチドの重量平均分子量は、150万以下である。また、例えば、130万以下、120万以下、110万以下、又は100万以下であり得る。
本発明において、重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定した値である。
用途
本発明のポリペプチドは、コラーゲン様ポリペプチドであるため、生体親和性ないしは生体適合性が高い。しかも、コラーゲンと異なり原料に由来する感染の危険性がない。さらに、耐熱性が高いため加熱滅菌にも耐える。従って、バイオマテリアルとして好適に利用できる。発明のポリペプチドは、例えば、人工皮膚、人工血管、細胞増殖の足場、組織接着材、医療器材(手術用縫合糸、コンタクトレンズ、カニューレ、ステントなど)、これらの医療器材の被覆材、医薬品や化粧品の原料、食品添加剤などとして利用できる。
本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの形態で使用できるが、バイオマテリアルとして利用する場合は、架橋させた架橋ポリペプチドの形態で使用することが多い。
本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの架橋に用いられる一般的な架橋剤を用いて架橋することができる。このような架橋剤として、例えば、1-[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド(WSCD(EDC))、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSCD・HCl)、グルタルアルデヒド、1,4−ジブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)、エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性架橋剤が挙げられる。
架橋ポリペプチドの変性温度は、通常、50℃以上であり得る。また、ポリペプチドを構成するユニットの種類や長さによっては、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上、100℃以上、105℃以上、110℃以上、115℃以上、120℃以上、130℃以上、又は140℃以上であり得る。変性温度の上限は、通常、150℃程度である。
本発明のポリペプチドを架橋すると、ゲル状になり得る。架橋ポリペプチドゲルはそのまま、又は乾燥物などとして利用できる。
本明細書において、アミノ酸残基は以下の略称で表記している。
Ala:L−アラニン残基
Arg:L−アルギニン残基
Asn:L−アスパラギン残基
Asp:L−アスパラギン酸残基
Cys:L−システイン残基
Gln:L−グルタミン残基
Glu:L−グルタミン酸残基
Gly:グリシン残基
His:L−ヒスチジン残基
Hyp:L−ヒドロキシプロリン残基
Ile:L−イソロイシン残基
Leu:L−ロイシン残基
Lys:L−リジン残基
Met:L−メチオニン残基
Phe:L−フェニルアラニン残基
Pro:L−プロリン残基
Ser:L−セリン残基
Thr:L−スレオニン残基
Trp:L−トリプトファン残基
Tyr:L−チロシン残基
Val:L−バリン残基
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ポリペプチドの物性評価は、以下の方法で行った。
重量平均分子量測定
ポリペプチドの重量平均分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。測定条件は、以下の通りである。
装置:(株)島津製作所製LC-20Aシステム
カラム:TSKgel GMPWxl
温度:40℃
流速:1.0 mL/min
溶離液:0.2N 硝酸ナトリウム水溶液
分子量標準:Showdex製STD Pシリーズ
三重らせん構造の確認
ポリペプチドの円二色性スペクトルを、円二色性分散計により決定した。測定条件は、以下のとおりである。
装置:(株)日本分光社製JASCO J720
波長範囲:185nm〜260nm
210〜230nmに正のコットン効果、185〜205nmに負のコットン効果が観測されることをもって、三重らせん構造を形成していることを確認した。
耐熱性評価
ポリペプチドについて、波長225nmの吸光度を、30℃から150℃まで1℃/minの温度勾配で測定し、吸光度が急速に低下する変曲点を確認し、変曲点の温度をポリペプチドの変性温度(温度変性点)とした。
実施例1
ペプチドオリゴマーとして、L-(4-ヒドロキシプロリル)-L-(4-ヒドロキシプロリル)-グリシン トリフルオロ酢酸塩 500mg(1.20 mmol)を4mlの蒸留水に溶解し、トリエチルアミンでpHを5に調整したのち、4℃に冷却した。その後、32.5mg( 0.240 mmol)の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、230 mg(1.2mmol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル-カルボジイミド塩酸塩(WSCD・HCl)を添加して1時間攪拌した後、20℃に昇温し終夜攪拌した。得られた反応溶液を限外ろ過し、凍結乾燥することによってポリペプチド1を得た。得られたポリペプチド1の円二色性スペクトルを測定し、三重らせん構造を形成していることを確認した。
実施例2〜9
ペプチドオリゴマーの種類及び添加量、pH、WSCD・HClの添加量を表1に示すように変更し、また、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールとペプチドオリゴマーとのモル比が実施例1と同じになるように1-ヒドロキシベンゾトリアゾールの使用量を調整したことを除き、実施例1と同様の方法でポリペプチド2〜9を得た。得られたポリペプチド2〜9の円二色性スペクトルを測定し、三重らせん構造を形成していることを確認した。
実施例1〜9の反応条件、及び得られたポリペプチドの物性を、下記表1に示す。変性温度の「−」は測定していないことを示す。
Figure 2018047785
実施例10
原料として、ペプチドオリゴマーのL-(4-ヒドロキシプロリル)-L-(4-ヒドロキシプロリル)-グリシン トリフルオロ酢酸塩 500mg(1.20 mmol)とアラニン10.7mg(0.12mmol)とを4mlの蒸留水に溶解し、トリエチルアミンでpHを7に調整したのち、4℃に冷却した。その後、35.7mg( 0.264 mmol) の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、430mg(2.24mmol) の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(WSCD・HCl)を添加して1時間攪拌した後、20℃に昇温し終夜攪拌した。得られた反応溶液を限外ろ過し、凍結乾燥することによってポリペプチド10を得た。得られたポリペプチド10の円二色性スペクトルを測定し、三重らせん構造を形成していることを確認した。
実施例11〜22
ペプチドオリゴマーの種類及び添加量、アミノ酸又はペプチドオリゴマーの種類及び添加量、pH、WSCD・HClの添加量を表2に示すように変更し、また、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールとペプチドオリゴマーとのモル比が実施例10と同じになるように1-ヒドロキシベンゾトリアゾールの使用量を調整したことを除き、実施例10と同様の方法でポリペプチド11〜22を得た。得られたポリペプチド11〜22の円二色性スペクトルを測定し、三重らせん構造を形成していることを確認した。
実施例10〜22の反応条件、及び得られたポリペプチドの物性を、下記表2に示す。変性温度の「−」は測定していないことを示す。
Figure 2018047785
実施例23、24
実施例6において、トリエチルアミンに代えて、それぞれ、N-メチルモルホリン、及びジイソプロピルエチルアミンを用いてpHを調整したことを除き、実施例6と同様の方法で、ポリペプチド23、及び24を得た。得られたポリペプチド23及び24の円二色性スペクトルを測定し、三重らせん構造を形成していることを確認した。
比較例1、2
実施例6において、トリエチルアミンに代えて、それぞれ、水酸化ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムを用いてpHを調整したことを除き、実施例6と同様の方法で、比較ポリペプチド1、及び2を得た。
実施例23、24、比較例1、2の反応条件、及び得られたポリペプチドの物性を、下記表3に示す。変性温度は測定していない。
Figure 2018047785
比較例1は、ポリペプチドがゲル状になり、分子量を測定することができなかった。縮合反応を制御できず、反応が進行し過ぎたためと考えられる。また、比較例2は、縮合反応が不十分であり、未反応原料が多く回収された。
実施例25(架橋ポリペプチドの製造)
実施例1で得られたポリペプチド1の20 mg を1 m lの蒸留水に溶解し、ここに、架橋剤のカルボキシメチルセルロース10 mg を1 ml の蒸留水に溶解した水溶液を加え、室温で24時間攪拌することによって、架橋ポリペプチドゲル1を得た。
実施例26〜30(架橋ポリペプチドの製造)
ポリペプチドの種類、又は架橋剤の種類を表4に示すように変更したことを除き、実施例25と同様の方法で架橋ポリペプチドゲル2〜6を得た。
各架橋ポリペプチドゲルの変性温度をポリペプチドと同じ方法により測定した。結果を表4に示す
Figure 2018047785
本発明のポリペプチドを架橋することにより、変性温度が一層高くなった。
表1〜4の結果から明らかなように、本発明の各実施例の方法により、変性温度87℃〜120℃という超高耐熱性のコラーゲン様ポリペプチドが得られた。また、ペプチドの重量平均分子量を1万〜91万という広範囲に制御することができた。
また、無機酸塩を用いてpH調整した比較例1、2では、縮合反応を制御することができなかったが、本発明の各実施例では、縮合反応を制御することができ、目的とする長さのコラーゲン様ポリペプチドを安定的に合成することができた。
また、本発明のポリペプチドを架橋することにより、変性温度が一層高い架橋ポリペプチドゲルを得ることができた。
本発明によれば、バイオマテリアルとして利用できる高耐熱性のコラーゲン様ポリペプチドを効率よく製造することができる。得られるコラーゲン様ポリペプチドは、人工皮膚、人工血管、細胞増殖の足場、組織接着材、医療器材(手術用縫合糸、コンタクトレンズ、カニューレ、ステントなど)、これらの医療器材の被覆材、医薬品や化粧品の原料、食品添加剤などとして利用できる。

Claims (11)

  1. (a) 下記式(1)〜(3)

    H − ( X − Y − Gly )n − OH (1)
    H − ( Gly − X − Y )n − OH (2)
    H − ( Y − Gly − X )n − OH (3)

    (式(1)〜(3)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、nは1〜10の整数である。)
    で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマー、又は
    (b) 上記式(1)〜(3)で表される少なくとも1種のペプチドオリゴマーと、下記式(4)〜(10)

    H − ( Z ) − OH (4)

    (式(4)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表す。)

    H − ( Pro−Lys−Gly )p− OH (5)
    H − ( Gly−Pro−Lys )p− OH (6)
    H − ( Lys−Gly−Pro )p− OH (7)

    (式(5)〜(7)中、pは1〜10の整数である。)

    H − ( Z−Hyp−Gly )r− OH (8)
    H − ( Gly−Z−Hyp )r− OH (9)
    H − ( Hyp−Gly−Z )r− OH (10)

    (式(8)〜(10)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、rは1〜10の整数である。)
    で表される少なくとも1種のアミノ酸、ペプチドオリゴマー、又はペプチドとを、
    有機塩基を用いてpH3〜10に調整した水系溶媒中で縮合反応させることにより、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチドを得る工程を含むポリペプチドの製造方法。
  2. 有機塩基が第三級アミンである請求項1に記載の方法。
  3. 水系溶媒のpHを4〜8に調整する請求項1又は2に記載の方法。
  4. ペプチドオリゴマーを塩体として縮合反応に供する請求項1〜3の何れかに記載の方法。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の方法で製造される、下記式(11)

    ― ( X − Y − Gly ) m ― (11)

    (式(11)中、X及びYは、それぞれ独立して、Hyp又はProを表し、mは、10〜3600の整数である。)
    で表される少なくとも1種のユニットを有し、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチド。
  6. 円二色性スペクトルにおいて、波長210nm〜230nmに正のコットン効果を示し、波長185nm〜205nmに負のコットン効果を示す請求項5に記載のポリペプチド。
  7. 変性温度が50℃〜150℃である請求項5又は6に記載のポリペプチド。
  8. 下記式(15)

    ― ( Hyp − Hyp − Gly ) m ― (15)

    (式(15)中、mは10〜3600の整数である。)
    で表されるユニットを有し、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチド。
  9. 下記式(15)

    ― ( Hyp − Hyp − Gly ) m ― (15)

    (式(15)中、mは10〜3600の整数である。)
    で表されるユニットと、下記式(12)〜(14)

    ― ( Z ) l ― (12)

    (式(12)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Arg−Gly−Asp、及びε-ポリリジンからなる群より選択されるアミノ酸残基、ペプチドオリゴマー残基、又はペプチド残基を表し、lは、1〜360の整数である。)

    ― ( Pro−Lys−Gly )q― (13)

    (式(13)中、qは1〜360の整数である。)


    ― ( Z−Hyp−Gly )s― (14)

    (式(14)中、Zは、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し、sは1〜360の整数である。)
    で表される少なくとも1種のユニットとを有し、少なくとも一部が三重らせん構造を形成することができる重量平均分子量10,000〜1,500,000のポリペプチド。
  10. 請求項5〜9の何れかに記載のポリペプチドを架橋してなる架橋ポリペプチド。
  11. 変性温度が50℃〜150℃である請求項10に記載の架橋ポリペプチド。
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