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JPWO2016039249A1 - 人工土壌粒子の製造方法、及び人工土壌粒子 - Google Patents

人工土壌粒子の製造方法、及び人工土壌粒子 Download PDF

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JPWO2016039249A1 JP2016547408A JP2016547408A JPWO2016039249A1 JP WO2016039249 A1 JPWO2016039249 A1 JP WO2016039249A1 JP 2016547408 A JP2016547408 A JP 2016547408A JP 2016547408 A JP2016547408 A JP 2016547408A JP WO2016039249 A1 JPWO2016039249 A1 JP WO2016039249A1
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Abstract

保水性等の土壌としての基本性能を維持しながら、外的な圧力等を受けても破壊されることなく、取り扱いが容易な人工土壌粒子の製造方法を提供する。多孔質フィラー、イオン反応性ゲル化剤、硬化材、及び水を混合して原料スラリーを調製する準備工程と、原料スラリーを多価金属イオン水溶液に滴下し、当該原料スラリーの液滴をゲル化させて粒状物を生成する造粒工程と、粒状物を回収する回収工程と、粒状物を乾燥処理することにより、当該粒状物を硬化させて補強する補強工程と、を包含する人工土壌粒子の製造方法。

Description

本発明は、人工土壌粒子の製造方法、及び人工土壌粒子に関する。
近年、生育条件がコントロールされた環境下で野菜等の植物を栽培する植物工場が増加している。従来の植物工場は、レタス等の葉物野菜の水耕栽培が中心であったが、最近では水耕栽培には向かない根菜類についても植物工場での栽培を試みる動きがある。根菜類を植物工場で栽培するためには、土壌としての基本性能に優れ、品質が高く、且つ高い耐久性を備える人工土壌を開発する必要がある。
これまでに開発された人工土壌として、有機物、無機物、及び土壌のうち少なくとも1種類の成分、並びに石こう等の固形物を水溶性ウレタンポリマーの硬化物によって部分的に結合させた多孔性人工土壌体があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の多孔性人工土壌体は、固形物を部分的に結合させて人工土壌体内に水を保持可能な空孔を形成することにより、保水性を向上させたものである。
また、粉状のゼオライトを水溶性高分子からなる結合材で結合させて団粒化した団粒構造ゼオライトがあった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の団粒構造ゼオライトは、ゼオライトを団粒構造化して団粒体内に水を保持可能な孔隙を形成することにより、保水性を高めたものである。
特開平5−244820号公報 特開2000−336356号公報
人工土壌粒子の開発に当たっては、天然土壌と同等の植物育成力を達成しながら、その能力を維持するために高い強度を有し、且つ作業性が良好となるものが望まれる。この点、特許文献1の人工土壌は、水溶性ウレタンポリマーの硬化物による固形物の結合形態が部分的であることから、十分な強度を有しているとはいえない。このため、植栽等の作業中に人工土壌粒子の構造が破壊され、保水性が低下したり、微粉等が発生して作業性が低下する虞がある。
特許文献2の団粒構造ゼオライトは、水の存在下で粉末のゼオライトと結合材とを混合して乾燥させただけのものであるため、ゼオライトの粒子間の結合力が十分でない虞がある。この団粒構造ゼオライトを用いて植栽等の作業を行うと、外的な圧力等により団粒構造が破壊され、土壌の基本性能が低下したり、微粉等が発生して作業性が低下する虞がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、保水性等の土壌としての基本性能を維持しながら、外的な圧力等を受けても破壊されることなく、取り扱いが容易な人工土壌粒子の製造方法を提供することを目的とする。また、そのような人工土壌粒子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌粒子の製造方法の特徴構成は、
多孔質フィラー、イオン反応性ゲル化剤、硬化材、及び水を混合して原料スラリーを調製する準備工程と、
前記原料スラリーを多価金属イオン水溶液に滴下し、当該原料スラリーの液滴をゲル化させて粒状物を生成する造粒工程と、
前記粒状物を回収する回収工程と、
前記粒状物を乾燥処理することにより、当該粒状物を硬化させて補強する補強工程と、
を包含することにある。
本構成の人工土壌粒子の製造方法は、多孔質フィラー、イオン反応性ゲル化剤、硬化材、及び水を混合して原料スラリーを調製し、原料スラリーを多価金属イオン水溶液に滴下して、当該原料スラリーの液滴をゲル化させて粒状物を生成するため、硬化材を粒状物中に均一に分散させることができる。この粒状物を乾燥処理すると、粒状物中に均一に分散した硬化材が硬化し、粒状物の表面から内部に亘って均一に補強される。これにより、人工土壌粒子の構造が安定化し、例えば、植栽等の作業時において外的な圧力が加わった場合でも、人工土壌粒子の構造は破壊され難いものとなる。また、本構成の人工土壌粒子の製造方法は、多孔質フィラーをゲル化させて粒状物を形成するため、人工土壌粒子の複数の多孔質フィラーの間には空隙が形成され、空隙内に水分を保持することができる。その結果、人工土壌粒子内に保持できる水分量が増加し、人工土壌粒子としての保水性を向上させることができる。さらに、本構成のように滴下によって人工土壌粒子を造粒する方法では、人工土壌粒子の粒径を均一に調整し易いため、品質にバラツキが少ない人工土壌粒子を容易に製造することができる。
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記準備工程において、前記原料スラリーにおける前記硬化材の含有量を0.5〜10重量%に調整することが好ましい。
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、硬化材を適切な含有量に調整するため、複数の多孔質フィラーの間に一定以上の空隙を確保しながら、硬化材により粒状物の構造を効果的に補強することができる。その結果、人工土壌粒子の保水性を維持しながら、人工土壌粒子の構造を安定化させることができる。
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記準備工程において、前記原料スラリーに肥料成分を添加することが好ましい。
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、原料スラリーに肥料成分を添加することで、人工土壌粒子内に肥料成分を均一に保持させることができる。そうすると、灌水や植物の根酸等により、先ず人工土壌粒子の表面から肥料成分が徐々に溶出し、次いで内部に保持された肥料成分が徐々に溶出していくため、いわゆる肥料の徐放性を備えた人工土壌粒子を得ることができる。また、当該人工土壌粒子は、硬化材で補強されているため、例えば、リン酸等の肥料成分を保持させても、人工土壌粒子としての構造を維持することができる。
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記補強工程により硬化させた粒状物を、肥料成分を含有する肥料液に浸漬することにより、当該粒状物に前記肥料成分を担持させる肥料担持工程をさらに実行することが好ましい。
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、上記肥料担持工程を実行することで、人工土壌粒子に容易に肥料を担持させることができる。また、肥料溶液に粒状物を浸漬して肥料成分を人工土壌粒子に担持させる場合、外部のpH環境の変化により肥料成分が放出され易くなるため、植物の成長段階で分泌される根酸等に応答して肥料成分を放出することができる人工土壌粒子を容易に得ることができる。
本構成の人工土壌粒子の製造方法において、
前記イオン反応性ゲル化剤はアルギン酸塩であり、前記硬化材は架橋性官能基を有する硬化性樹脂であることが好ましい。
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、適切なイオン反応性ゲル化剤及び硬化材を使用することで、複数の多孔質フィラーの間に一定以上の空隙を確実に形成しながら、人工土壌粒子の構造を確実に補強することができる。その結果、人工土壌粒子の高い保水性を維持しながら、人工土壌粒子の構造を安定化させることができる。
本構成の人工土壌粒子の製造方法において、
前記準備工程において、前記架橋性官能基と反応する架橋剤を前記原料スラリーに添加することが好ましい。
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、硬化材の架橋性官能基と反応する架橋剤を原料スラリーに添加することで、硬化材どうしが架橋剤により架橋されるため、人工土壌粒子の内部及び表面を十分補強することができる。その結果、人工土壌粒子に十分な強度及び耐久性を与えることができる。
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌粒子の特徴構成は、
アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応により得られる粒状物中に多孔質フィラーが分散し、当該粒状物が硬化性樹脂により補強されていることにある。
本構成の人工土壌粒子によれば、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応により得られる粒状物中に多孔質フィラーが分散していることから、粒状物内に一定以上の空隙が形成される。その結果、人工土壌粒子の内部の空隙に水分を保持することが可能となり、人工土壌粒子の保水性を向上させることができる。また、当該粒状物は、硬化性樹脂により補強されているため、人工土壌粒子の構造が安定化し、例えば、植物の成長段階で分泌される根酸や、リン酸等の肥料成分に対しても高い耐久性を備えた人工土壌粒子とすることができる。
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記粒状物は、0.2〜10mmの粒径を有することが好ましい。
本構成の人工土壌粒子によれば、粒状物の粒径を0.2〜10mmとすることで、特に根菜類の栽培に適した取り扱いの容易な人工土壌粒子とすることができる。
図1は、本発明の人工土壌粒子を概念的に示した説明図である。
以下、本発明に係る人工土壌粒子の製造方法、及び人工土壌粒子に関する実施形態を、図1に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
<人工土壌粒子の製造方法>
図1は、本発明の人工土壌粒子50を概念的に示した説明図である。人工土壌粒子50は、滴下装置等を用いて製造することができる。人工土壌粒子50の製造方法としては、多孔質フィラー1、イオン反応性ゲル化剤、硬化材2、及び水を混合して原料スラリーを調製する準備工程と、原料スラリーを多価金属イオン水溶液に滴下し、当該原料スラリーの液滴をゲル化させて粒状物10を生成する造粒工程と、粒状物10を回収する回収工程と、粒状物10を乾燥処理することにより、当該粒状物10を硬化させて補強する補強工程と、を実行する。本発明の人工土壌粒子50の製造方法では、イオン反応性ゲル化剤を含む原料スラリーを、架橋剤である多価金属イオン水溶液に滴下すると、原料スラリーが多価金属イオン水溶液中で液滴化するとともに、原料スラリー中のイオン反応性ゲル化剤は硬化材2を含んだ状態で多孔質フィラー1の一部又は全体を被覆しながら架橋反応する。その結果、多孔質フィラー1が架橋構造3によって互いに連結された粒状物10が生成する。硬化材2は、粒状物10中の多孔質フィラー1の周りで略均一に分散した状態となっている。なお、図1では、多孔質フィラー1は架橋構造3によって二次元的に連結されているように描かれているが、実際には、多孔質フィラー1は三次元的な拡がりをもって架橋構造3によって連結されており、さらに粒状物10の表面も架橋構造3によって被覆された状態となっている。粒状物10を乾燥処理すると、多孔質フィラー1を連結する架橋構造3に加えて、多孔質フィラー1の周りに略均一に分散した硬化材2により、粒状物10は表面から内部(内側)に亘って均一に補強される。その結果、強度及び耐久性を備えた人工土壌粒子50を得ることができる。人工土壌粒子50は、複数の多孔質フィラー1が均一に分散した構造となっているため、複数の多孔質フィラー1の間には一定の大きさの空隙が形成される。当該空隙は、外部との通気性及び通水性を維持するための連通孔4として機能する。連通孔4は、複数の多孔質フィラー1によって取り囲まれるように構成されており、この多孔質フィラー1どうしが架橋構造3で結合されて、連通孔4の構造が維持されている。連通孔4は、外部環境から与えられた水を保持する能力があり、連通孔4のサイズを変えることにより、人工土壌粒子50の保水性を調整することができる。連通孔4のサイズは、架橋構造3のサイズを変更することで調整可能である。架橋構造3のサイズは、例えば、原料スラリー中のイオン反応性ゲル化剤の含有量や濃度、硬化材2の含有量や濃度、多価金属イオン水溶液の濃度を変更することで調整可能である。ここで、架橋構造3のサイズを大きくすると、隣接する多孔質フィラー1の間、及び架橋構造3と多孔質フィラー1との間に隙間等が大きくなり、人工土壌粒子50全体としての強度が弱まることがある。この場合、植栽等の作業時において、人工土壌粒子50を含む人工土壌培地に外力が加わると、人工土壌粒子50の構造が破壊され、土壌としての基本性能が維持できなくなることがある。また、長期にわたって使用すると、植物の産生する根酸(クエン酸等)、養分として添加するリン酸、常在微生物、紫外線等により、イオン反応性ゲル化剤が劣化して、人工土壌粒子全体としての強度が低下し、土壌としての基本性能が維持できなくなることもある。しかし、本発明の人工土壌粒子50では、人工土壌粒子50を硬化材2により表面から内側に亘って均一に補強しているため、連通孔4のサイズを大きくしても人工土壌粒子50の構造を維持することができ、その結果、人工土壌粒子50の保水性を向上させることができる。
(準備工程)
準備工程では、例えば、多孔質フィラー1、イオン反応性ゲル化剤、硬化材2を水に添加し、撹拌機等を用いて混合し、均一な原料スラリーを調製する。準備工程で使用する多孔質フィラー1として、人工土壌粒子50が十分な保肥力を有するように、イオン交換能が付与された材料を使用することが好ましい。多孔質フィラー1にイオン交換能が付与された材料を使用すると、人工土壌粒子50を肥料溶液に浸漬させるだけで、多孔質フィラー1に肥料成分を担持させることが可能となる。この場合、多孔質フィラー1がイオン交換能を有しているため、外部のpH環境の変化に応答して肥料成分を放出させることが可能となり、例えば、植物の成長段階で分泌される根酸等に応答して肥料成分を放出させることができる。イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換能が付与された材料、陰イオン交換能が付与された材料、又は両者の混合物を使用することができる。また、イオン交換能を有さない多孔質材料(例えば、高分子発泡体、ガラス発泡体等)を別に用意し、当該多孔質材料の細孔に上記のイオン交換能が付与された材料を圧入や含浸等によって導入し、これを多孔質フィラー1として使用することも可能である。陽イオン交換能が付与された材料として、陽イオン交換性鉱物、腐植、及び陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換能が付与された材料として、陰イオン交換性鉱物、及び陰イオン交換樹脂が挙げられる。
陽イオン交換性鉱物は、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系鉱物、雲母系鉱物、バーミキュライト、ゼオライト等が挙げられる。陽イオン交換樹脂は、例えば、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ゼオライト、又はベントナイトが好ましい。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂における陽イオン交換容量は、10〜700meq/100gに設定され、好ましくは20〜700meq/100gに設定され、より好ましくは30〜700meq/100gに設定される。陽イオン交換容量が10meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陽イオン交換容量が700meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
陰イオン交換性鉱物は、例えば、ハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーライト、シェーグレン石、緑青等の主骨格として複水酸化物を有する天然層状複水酸化物、合成ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様物質、アロフェン、イモゴライト、カオリン等の粘土鉱物が挙げられる。陰イオン交換樹脂は、例えば、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ハイドロタルサイトが好ましい。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂における陰イオン交換容量は、5〜500meq/100gに設定され、好ましくは20〜500meq/100gに設定され、より好ましくは30〜500meq/100gに設定される。陰イオン交換容量が5meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陰イオン交換容量が500meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
硬化材2は、原料スラリーにおける硬化材2の含有量を0.5〜10重量%に設定することが好ましく、5〜10重量%に設定することがより好ましい。原料スラリーにおける硬化材2の含有量を0.5重量%より少なく設定すると、人工土壌粒子50の架橋構造3を十分補強することができなくなる虞がある。一方、原料スラリーにおける硬化材2の含有量を10重量%より多く設定すると、連通孔4のサイズが微細になり過ぎて、人工土壌粒子50の内部に保持できる水分量が低下し、人工土壌粒子50の保水性が低下する虞がある。また、硬化材2が硬化した際に、人工土壌粒子50が収縮して、人工土壌粒子50の形状がいびつになる虞がある。
硬化材2として、天然ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、カルボキシル変性スチレン−ブタジエンラテックス、カルボキシル変性スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、カルボキシル変性メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス、アクリレート系ラテックス、水系ポリウレタン樹脂等の硬化性樹脂を挙げることができ、この中でも架橋性官能基を有するカルボキシル変性スチレン−ブタジエンラテックス、カルボキシル変性スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、カルボキシル変性メチルメタクリレート−ブタジエンラテックスが好ましく、カルボキシル変性スチレン−ブタジエンラテックスがさらに好ましい。架橋性官能基を有する硬化材2を使用する場合、架橋性官能基と反応する架橋剤を原料スラリーに添加することが好ましい。これにより、人工土壌粒子50を効率よく補強することが可能となる。架橋性官能基と反応する架橋剤として、例えば、カルボジイミド、アジリジン化合物、有機チタン−ジルコニウム化合物を挙げることができ、この中でもカルボジイミドが好ましい。
原料スラリーには、肥料成分を添加することが好ましい。原料スラリーに肥料成分を添加、混合すると、肥料成分は、人工土壌粒子50中に均一に保持される。そうすると、灌水や植物の根酸等により、先ず人工土壌粒子50の表面から肥料成分が徐々に溶出し、次いで内部に保持された肥料成分が徐々に溶出していくため、いわゆる肥料の徐放性を備えた人工土壌粒子50を得ることができる。また、当該人工土壌粒子50は、硬化材2で補強されているため、例えば、リン酸等の肥料成分を保持させても、人工土壌粒子50としての構造を維持することができる。さらに、多孔質フィラー1にイオン交換能が付与された材料を使用すると、溶出した肥料が多孔質フィラー1に坦持されるため、さらに良好な肥料の徐放性を備えた人工土壌粒子50を得ることができる。
(造粒工程)
造粒工程では、準備工程で得られた原料スラリーを、例えば、ノズルを備える滴下装置を用いて滴下する。このとき、ノズルの先端から原料スラリーが離脱する際に、表面張力の作用により球状の液滴となる。この球状の液滴が多価金属イオン水溶液に浸漬すると、原料スラリーに含まれるイオン反応性ゲル化剤と多価金属イオン水溶液中の多価金属イオンとが架橋反応を起こしてゲル化した球状の粒状物10が生成する。本発明の人工土壌粒子50の製造方法では、原料スラリーに含まれるイオン反応性ゲル化剤の含有量や濃度、硬化材2の含有量や濃度を調整することにより、粒状物10の架橋密度を疎から密まで調整することができるため、粒状物10の連通孔4のサイズを容易に制御することができる。その結果、人工土壌粒子50の保水性を容易に制御することができる。また、粒状物10の粒径を均一に調整し易いため、品質にバラツキが少ない人工土壌粒子50を容易に製造することができる。
イオン反応性ゲル化剤として、例えば、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。このうち、アルギン酸塩と架橋剤である多価金属イオンとのゲル化反応について説明する。アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不溶であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を架橋剤である多価金属イオン(例えば、Caイオン)水溶液に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こり、ゲル化する。アルギン酸ゲルの架橋構造3で構成された人工土壌粒子50は、適度なサイズの連通孔4を備えているため、保水性の高い人工土壌粒子50を容易に製造することができる。
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩の濃度は、好ましくは0.1〜1重量%であり、より好ましくは0.5〜1重量%である。アルギン酸の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が進行し難くなり、人工土壌粒子50の強度が維持できない虞がある。一方、アルギン酸の濃度が1重量%を超えると、人工土壌粒子50内の連通孔4が微細になり過ぎて、人工土壌粒子50の保水量が低下し、その結果、人工土壌粒子50の保水性が低下する虞がある。
多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化が起きる2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が進行し難くなる。一方、多価金属イオン水溶液の濃度が20重量%を超えるためには溶解に長時間を要するとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的ではない。
(回収工程)
回収工程では、得られた粒状物10を多価金属イオン水溶液から回収し、洗浄する。使用する多価金属イオン水溶液が塩化物イオンを含む場合、そのまま人工土壌粒子に使用すると塩化物イオンにより植物の成長に悪影響を及ぼす場合があるため、粒状物10を洗浄する必要がある。しかし乳酸カルシウム等の乳酸塩の多価金属イオンを使用する場合、乳酸塩は植物の成長に影響を及ぼさないため、得られた粒状物10を洗浄する必要がない。このため、乳酸塩の多価金属イオン水溶液を使用すると、粒状物10の洗浄により排出される廃液を低減することができる。
(補強工程)
補強工程では、回収された粒状物10を乾燥処理して、粒状物10に含まれる硬化材2を硬化させ、粒状物10の表面及び内部を補強する。硬化材2は、図1に示すように、粒状物10の表面から内部に亘って、均一に分散している。粒状物10を乾燥させると、水分が蒸発するにつれて多孔質構造内の隣接する多孔質フィラー1どうし、架橋構造3どうし、あるいは架橋構造3と隣接する多孔質フィラー1との結合力が高まる。この状態で粒状物10を適切に加熱・冷却したり、脱水・脱溶剤化すると、硬化材2が粒状物10内に生じる脆弱な箇所に密着し、硬化する。これにより、人工土壌粒子50の構造が補強され、人工土壌粒子50の強度及び耐久性が向上する。また、図1には示していないが、硬化材2は、多孔質フィラー1どうしを部分的に結合させるだけでなく、複数の多孔質フィラー1間を覆うように広がって、多孔質フィラー1どうしを連結させる場合もある。この場合、硬化材2は、複数の多孔質フィラー1間に広がった架橋構造3どうしを結合したり、架橋構造3の表面(粒状物10の外表部を含む)を広範囲に被覆する。このように人工土壌粒子50の架橋構造3が補強されると、例えば、人工土壌粒子50に肥料成分として保持させたリン酸や、植物が分泌する根酸が存在しても、架橋構造3を硬化材2が保護するため、架橋構造3の劣化を防止することができ、人工土壌粒子50の耐久性が向上する。
また、原料スラリーに混合される硬化材2が架橋性官能基を有するものであり、さらに、原料スラリーに当該架橋性官能基と反応する架橋剤がさらに添加されている場合は、硬化材2と架橋剤との間で化学反応が起こり、架橋構造3の脆弱な箇所がより強固に補強される。また、上記の架橋性官能基を有する硬化材2は、イオン反応性ゲル化剤とも反応するため、相乗的な補強効果も期待できる。この結果、高い強度及び耐久性を備えた人工土壌粒子50を得ることができる。
<人工土壌粒子>
図1中の人工土壌粒子50の断面図は、多孔質天然鉱物であるゼオライト様の多孔質フィラー1を使用して形成した人工土壌粒子50の断面を例示している。人工土壌粒子50は、細孔5を有する複数の多孔質フィラー1が集合して粒状に構成されたものであり、複数の多孔質フィラー1の間に連通孔4が形成されている。人工土壌粒子50の内部に形成されている連通孔4は、人工土壌粒子50の外部環境と接続しており、人工土壌粒子50の内部と外部環境との間の通水性を確保し、水分及び養分を取り込むとともに、連通孔4から多孔質フィラー1の細孔5に養分を受け渡している。ここで、「外部環境」とは、人工土壌粒子50の外側の環境を意図する。
人工土壌粒子50中の複数の多孔質フィラー1は、それらが互いに接触していることは必須ではなく、イオン反応性ゲル化剤と多価金属イオンとにより形成される架橋構造3を介して一定範囲内の相対的な位置関係を維持していればよい。人工土壌粒子50は、図1に示すように、細孔5を有する複数の多孔質フィラー1を架橋構造3で結合することにより、多孔質フィラー1の間に連通孔4を形成した多孔質構造となっている。なお、図1では、紙面の都合上、細孔5と連通孔4との位置関係を二次元的に示しているが、実際の人工土壌粒子50では三次元的に多孔質フィラー1が結合した構造となっている。
人工土壌粒子50の粒径は、0.2〜10mmであり、好ましくは0.5〜5mmであり、より好ましくは1〜5mmである。人工土壌粒子50の粒径の調整は、例えば、篩による分級で行うことができる。人工土壌粒子50の粒径が0.2mm未満の場合、人工土壌粒子50間に形成される間隙が小さくなって排水性が低下し、栽培植物の根腐れが生じる虞がある。一方、人工土壌粒子50の粒径が10mmを超えると、人工土壌粒子50間に形成される間隙が大きくなり過ぎて、排水性が過剰になって植物が水分を吸収し難くなったり、人工土壌粒子50が疎になって植物が横倒れする虞がある。
<人工土壌粒子の強度>
硬化材2によって補強された人工土壌粒子50の強度は、繰り返し圧縮荷重の付加による容積変化率で評価することができる。容積変化率は、以下の方法で求めることができる。土壌評価用の試料円筒(内径:約5cm、高さ:約5cm、容積:100mL)にサンプルとして人工土壌100mLを充填し、試料円筒よりも径が僅かに小さい円筒状の錘(重量:5kg)をゆっくりとサンプルの上に載置する。その状態で60秒間放置し、錘を取り除く。これらの操作を10回繰り返す(繰り返し圧縮荷重25KPa)。繰り返し圧縮荷重の付与が完了したら、サンプルをそのまま60秒間放置し、メスシリンダー等を用いてサンプルの容積Vを測定し、容積変化率ΔVを以下の式[1]から求める。
ΔV(%) = (100−V)/100 × 100 ・・・ [1]
本発明の人工土壌粒子50は、繰り返し圧縮荷重25KPaの付加後の容積変化率が20%以下になるように設計され、好ましい容積変化率は15%以下である。容積変化率が20%を超えると、プランター等に人工土壌を充填したり、苗を移植する際に、人工土壌粒子50が粉砕され易くなり、人工土壌粒子50の構造が失われることになる。その結果、土壌としての基本性能が維持できなくなったり、作業性も低下する。また、人工土壌粒子50の構造が失われると、人工土壌の締め固めが起こり易くなるため、根菜類の栽培に悪影響を及ぼし得る。本発明の人工土壌粒子50は、上記した人工土壌粒子の製造方法を用いて上記容積変化率の範囲に容易に調整することができる。
本発明の硬化材で補強された人工土壌粒子について、補強後の耐久性を評価する試験を実施した。
<人工土壌粒子の作製>
多孔質フィラーとして陽イオン交換性鉱物であるゼオライト(琉球ライトCEC600、株式会社エコウエル製)及び陰イオン交換性鉱物であるハイドロタルサイト(和光純薬工業株式会社製)と、硬化材としてカルボキシル変性スチレン−ブタジエンラテックス(Nipol(登録商標) LX430、日本ゼオン株式会社製)とをアルギン酸ナトリウム0.5重量%水溶液に添加し、ミキサー(SM−L57:三洋電機株式会社製)を用いて3分間撹拌して原料スラリーを作製した。ゼオライト及びハイドロタルサイトは、アルギン酸ナトリウム0.5重量%水溶液100重量部に対して、それぞれ10重量部を添加した。得られた混合液を、多価金属イオン水溶液である5重量%塩化カルシウム水溶液に滴下してゲル化させ、粒状物を生成した。生成した粒状物を溶液から回収し、洗浄した後、55℃の乾燥機中で24時間乾燥させて人工土壌粒子を作製した。実施例1〜3の人工土壌粒子は、硬化材であるカルボキシル変性スチレン−ブタジエンラテックスを、原料スラリーに対して、それぞれ1重量%、5重量%、及び10重量%添加して作製した。比較例1の人工土壌粒子は、硬化材を添加していない原料スラリーを用いて作製した。
<耐久性評価試験>
本試験では、肥料成分の一つであるリン酸が人工土壌粒子の耐久性に与える影響を確認した。各人工土壌粒子(実施例1〜3、比較例1)0.5gを、5重量%リン酸水溶液100ccに浸漬し、所定時間経過後の各人工土壌粒子の崩壊状態を5段階で評価した。各人工土壌粒子の崩壊状態の評価は、目視により行った。人工土壌粒子の構造が完全な状態で維持されているものを「5」、水溶液は白濁しているが、人工土壌粒子の構造が維持されているものを「4」、水溶液が激しく白濁し、人工土壌粒子の構造に影響がでているものを「3」、人工土壌粒子が崩壊し始めているものを「2」、人工土壌粒子が完全に崩壊しているものを「1」とした。すなわち、「5」が崩壊の進んでいない最良の状態であり、「1」が崩壊が最も進んだ最低の状態であることを意味する。さらに、各人工土壌粒子について、繰り返し圧縮荷重25KPaの付加後の容積変化率、及び体積含水率を測定した。耐久性評価試験の結果を表1に示す。
Figure 2016039249
表1の結果から、実施例1〜3の人工土壌粒子は、比較例1の人工土壌粒子と比較して、肥料成分として使用したリン酸に対して高い耐久性を示した。そして、硬化材の含有量を増加させると、リン酸耐久性が向上する傾向が見られた。また、実施例1〜3の人工土壌粒子は、繰り返し圧縮荷重25KPaの付加後の容積変化率が20%以下に抑えられており、この点からも人工土壌粒子の構造が維持されていることが確認された。体積含水率に関しては、実施例1〜3の人工土壌粒子は、比較例1の人工土壌粒子と同等の値を示しており、硬化材を使用しても十分な保水性を確保できることが確認された。このように、本発明に係る人工土壌粒子は、保水性を維持しながら長期間の使用にも耐え得るものであり、土壌代替品として有用であることが確認された。
本発明の人工土壌粒子の製造方法、及び人工土壌粒子は、植物工場等で使用される人工土壌に利用可能であるが、その他の用途として、施設園芸用土壌、緑化用土壌、成型土壌、土壌改良剤、インテリア用土壌等にも利用可能である。
1 多孔質フィラー
2 硬化材
3 架橋構造
4 連通孔
5 細孔
10 粒状物
50 人工土壌粒子

Claims (8)

  1. 多孔質フィラー、イオン反応性ゲル化剤、硬化材、及び水を混合して原料スラリーを調製する準備工程と、
    前記原料スラリーを多価金属イオン水溶液に滴下し、当該原料スラリーの液滴をゲル化させて粒状物を生成する造粒工程と、
    前記粒状物を回収する回収工程と、
    前記粒状物を乾燥処理することにより、当該粒状物を硬化させて補強する補強工程と、
    を包含する人工土壌粒子の製造方法。
  2. 前記準備工程において、前記原料スラリーにおける前記硬化材の含有量を0.5〜10重量%に調整する請求項1に記載の人工土壌粒子の製造方法。
  3. 前記準備工程において、前記原料スラリーに肥料成分を添加する請求項1又は2に記載の人工土壌粒子の製造方法。
  4. 前記補強工程により硬化させた粒状物を、肥料成分を含有する肥料液に浸漬することにより、当該粒状物に前記肥料成分を担持させる肥料担持工程をさらに実行する請求項1〜3の何れか一項に記載の人工土壌粒子の製造方法。
  5. 前記イオン反応性ゲル化剤はアルギン酸塩であり、前記硬化材は架橋性官能基を有する硬化性樹脂である請求項1〜4の何れか一項に記載の人工土壌粒子の製造方法。
  6. 前記準備工程において、前記架橋性官能基と反応する架橋剤を前記原料スラリーに添加する請求項5に記載の人工土壌粒子の製造方法。
  7. アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応により得られる粒状物中に多孔質フィラーが分散し、当該粒状物が硬化性樹脂により補強されている人工土壌粒子。
  8. 前記粒状物は、0.2〜10mmの粒径を有する請求項7に記載の人工土壌粒子。
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