以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置100を示す。画像処理装置100は、表示制御部110と、境界抽出部200と、情報算出部1000とを備える。画像処理装置100は、血管画像190を取得する撮影装置(不図示)を備える撮影システムの一部であってもよい。
画像処理装置100には、プローブを用いて管状物体内を走査することにより得られた管状物体画像が入力される。管状物体の種類は特に限定されないが、以下では管状物体は血管であり、画像処理装置100には血管画像190が入力されるものとして説明する。
血管画像190は、血管の形態を示す画像情報であって、その形態は特に限定されない。血管画像の取得方法は特に限定されず、例えば既存の超音波診断装置(IVUS)、光干渉断層画像診断装置(OCT)、又は光干渉断層画像診断装置(OFDI)等を用いることができる。以下では、プローブが挿入された血管のことを主血管と呼ぶ。
血管画像190は、以下のようにして取得することができる。すなわち、血管にプローブを挿入して血管内を走査することにより、複数のラインデータが取得される。それぞれのラインは1走査に対応し、1つのラインデータは、プローブから血管の深さ方向への距離と得られた信号強度との関係を示す。プローブの向き及びプローブの血管長さ方向の位置を変えながら走査を行うことにより、複数のラインデータを得ることができる。一実施形態において、血管画像190はこの複数のラインデータにより構成されている。例えば、血管画像190は、ラインデータにより示される1次元の画像を横に並べたものであってもよい。また、血管画像190は、ラインデータにより示される1次元の画像を円状に並べることにより得られる複数の横断断面画像(血管軸を横断する方向の断面像、例えば血管軸に垂直な断層像)により構成されていてもよい。また、血管画像190に対しては、ゲイン補正、コントラスト補正、又はγ補正等が行われていてもよい。本実施形態においては、血管画像190は、ゲイン及びコントラストが調整された、複数の横断断面画像で構成されている。
血管画像190は複数の横断断面画像の組み合わせには限られず、複数の血管軸方向断面画像(血管軸と平行な断面での断層像)の組み合わせであってもよいし、血管の3D画像であってもよい。既に知られているように、これらの横断断面画像、血管軸方向断面画像、及び3D画像は、互いに変換することが可能である。
境界抽出部200は、血管画像190から、主血管に相当する部分を検出する。また、境界抽出部200は、血管画像190から、主血管から分岐している分岐血管に相当する部分を検出する。このようにして、境界抽出部200は、主血管と分岐血管との境界部分を検出する。検出結果に従って、境界抽出部200は、血管画像190のうち主血管に相当する部位を示す情報と分岐血管に相当する部位とを区別する情報とを、情報算出部1000へと出力する。もっとも、後述するように、主血管と分岐血管との境界部分を検出することに先立って、主血管に相当する部分と分岐血管に相当する部分とを検出することは必須ではない。境界抽出部200の詳しい構成については後述する。ここで、分岐血管とは、プローブが挿入された主血管に接続している構造体であって、管状のものだけでなく、瘤状のものをも含む。
情報算出部1000は、境界抽出部200から得た情報を参照して、主血管からの分岐部分における分岐血管の形態を示す定量的な情報を生成する。そして、情報算出部1000は、生成された情報を表示制御部110を介して表示部120に表示させる。
表示制御部110は、表示部120を制御して所望の情報を表示させる。表示部120は、画像を表示可能な装置である。表示部120の種類は特に限定されず、例えば液晶ディスプレイ等でありうる。
[境界抽出部]
まず、境界抽出部200の概略構成について、図2を参照して説明する。境界抽出部200は、画像取得部210、位置取得部220、検出部230、及び判定部240を備える。
画像取得部210は、血管画像190を取得する。本実施形態において、画像取得部210は複数の断層像を取得する。それぞれの断層像に対して、後述する各部による処理が行われ、主血管に相当する部位を示す情報と分岐血管に相当する部位とを区別する情報が生成される。また、画像取得部210は、取得した断層像に対する前処理も行う。
位置取得部220は、断層像上における主血管の中心点の推定位置を取得する。本実施形態において、位置取得部220は、断層像に対する画像処理により、主血管の中心点の推定位置を算出する。しかしながら、入力部(不図示)を介したユーザ入力により、主血管の中心点が指定されてもよい。
一実施形態において、位置取得部220は、断層像上におけるガイドワイヤ及びカテーテルシースの像の推定位置を取得する。位置取得部220は、断層像に対する画像処理により、これらの推定位置を算出する。しかしながら、入力部(不図示)を介したユーザ入力により、これらの位置が指定されてもよい。
検出部230は、断層像上における血管の内表面を示す複数の点を検出する。検出方法としては、テンプレートマッチング等の様々な方法が考えられるが、本実施形態において、検出部230は、断層像を走査することにより断層像上における血管内壁の位置を抽出する。具体的には、検出部230は、主血管の中心点から外側に進んだ際における血管との交差点を、血管内壁の位置として抽出する。
判定部240は、抽出部230によって検出された複数の点のそれぞれが、主血管を示しているか否かを判定する。また、判定部240は、抽出部230によって検出された交差点が、分岐血管を示しているか否かを判定する。また、判定部240は、抽出部230によって検出された複数の点のそれぞれが、主血管と分岐血管との境界を示すか、を判定することもできる。これらの判定は、抽出部230によって検出された複数の点の位置に基づいて行われる。一実施形態において、これらの判定は、抽出部230によって検出された、連続した複数の点同士の位置関係に基づいて行われる。例えば、後述するように、連続した複数の点についての主血管の中心からの距離の変化に基づいて、抽出部230によって検出された点が主血管を示すか及び分岐血管を示すかを判定することができる。後述するように、抽出部230によって検出された連続した複数の点についての主血管の中心からの距離と閾値との比較に基づいて、それぞれの点が主血管を示すか及び分岐血管を示すかを判定することも、連続した複数の点同士の位置関係に基づく判定に含まれる。また、連続した複数の点が途切れている箇所には分岐血管が存在すると判定することができ、連続した複数の点の末端は主血管と分岐血管との境界を示すと判定することができる。
また、これらの判定は、独立に行うことができる。すなわち、判定部240は、抽出部230によって検出された点が主血管を示すか及び分岐血管を示すか、又は抽出部230によって検出された点が主血管と分岐血管との境界を示すか、のうちの少なくとも一方を判定することができる。これらの判定により、主血管と分岐血管との境界が検出される。
判定部240による判定には、主血管の中心点と交差点との距離が主に用いられる。しかしながら、判定部240は、他の様々な基準を用いてこの判定を行う。例えば、一実施形態において、判定部240は断層像上におけるガイドワイヤ及びカテーテルシースの像の位置を考慮して判定を行う。
一実施形態において、境界抽出部200は判定更新部250をさらに備える。判定更新部250は、判定部240による判定結果を更新する。例えば、判定更新部250は、判定部240による判定結果を修正することができる。また、判定更新部250は、新たな交差点を検出し、検出された交差点が主血管又は分岐血管を示すと判定することができる。また、判定更新部250は、血管画像190を構成する1つの断層像についての判定部240による判定結果に基づいて、別の断層像についての判定部240による判定結果を更新することができる。
次に、図3のフローチャートを参照して、境界抽出部200が行う処理について詳しく説明する。
ステップS305において、画像取得部210は、血管画像190を取得する。本実施例において、画像取得部210は、複数の断層像で構成される血管画像190を一度に取得するものとする。しかしながら、画像取得部210は、プローブを用いた血管の走査を行いながら順次生成された断層像を、順次取得してもよい。以下のステップS310以降の処理は、それぞれの断層像に対して順次行われる。以下の説明において処理対象となる断層像を図4Aに示す。
ステップS310において、画像取得部210は、取得した断層像に対する前処理を行う。もっとも、画像取得部210は既に前処理が行われている断層像を取得してもよい。前処理の種類は特に限定されないが、一実施形態においては、フィルタ処理及び2値化処理が行われる。用いられるフィルタの種類は特に限定されないが、例えば平滑化フィルタ処理を用いることができ、断層像に対して平滑化フィルタ処理を行うことにより、ノイズとして含まれる孤立点を低減することができる。フィルタ処理後の断層像を図4Bに示す。
また、所定の閾値を用いて2値化処理を行うことにより、後述する処理を簡略化することができる。2値化処理においては、血管内壁が白画素となり、血管内腔が黒画素となるような閾値が用いられる。このような閾値は、予め設定されていてもよいし、断層像のヒストグラムを参照して画像取得部210により自動的に決定されてもよい。また、閾値は入力部(不図示)を介してユーザにより入力されてもよい。以下では、ステップS310において2値化処理を行ったことを前提として説明する。しかしながら、2値化処理を行うことは必須ではない。2値化処理を行う場合は、閾値により規定される所定範囲内の画素値を有する画素が白画素であると判定され、所定範囲外の画素値を有する画素は黒画素であると判定される。また、2値化処理を行わない場合であっても、例えば後述するステップS325において、所定範囲内の画素値を有する画素が白画素であると判定し、所定範囲外の画素値を有する画素は黒画素であると判定することができる。2値化後の断層像を図4Cに示す。
ステップS315において、位置取得部220は、断層像上における主血管の中心点の推定位置を取得する。前述したように、中心点の推定位置はユーザにより入力されてもよいが、本実施形態において、位置取得部220は、断層像に対する画像処理により中心点の推定位置を算出する。
中心点の推定位置の算出方法は特に限定されない。一実施形態においては、断層像上の主血管が検出され、その重心が主血管の中心点の推定位置として用いられる。本実施形態においては、主血管の検出方法としてはハフ変換が用いられる。すなわち、位置取得部220は、2値化後の断層像に対してハフ変換処理を行うことにより、主血管の内壁形状を近似する円を検出する。そして、位置取得部220は、検出された円の中心位置を中心点の推定位置として取得する。ハフ変換により検出された円の例を図4Dに示す。
ハフ変換を用いた中心点の推定方法について、以下に詳しく説明する。まず、位置取得部220は、黒画素の円(輪郭の内側が黒画素であり、輪郭の外側(背景)が白画素である円)をハフ変換により抽出する。そして、位置取得部220は、断層像の中心を内包する円のうち最大のものを、主血管の内壁を示す円(以下、血管円と呼ぶ)として特定する。この血管円の中心が、主血管の中心点の推定位置として扱われる。また、位置取得部220は、血管円の半径も算出する。
もっとも、主血管の内腔が略円形状ではない場合には、ハフ変換により血管円を抽出できない可能性がある。この場合、位置取得部220は、主血管の他の位置における断層像から抽出された血管円の中心を、中心点の推定位置として用いることができる。血管円の半径についても同様である。一実施形態においては、ハフ変換により血管円を抽出できた断層像であって、最も近い位置の断層像から抽出された血管円の中心が、中心点の推定位置として用いられる。別の実施形態においては、隣接する位置の断層像における中心点の推定位置が、中心点の推定位置として用いられる。
さらなる方法として、ハフ変換により血管円を抽出できない場合、位置取得部220は血管の内接円を検出し、この内接円の中心を主血管の中心点の推定位置として扱ってもよい。例えば、2値化後の断層像上において、3点以上の白画素に内接し、白画素を通らない円を、血管の内接円として検出することができる。また例えば、ユークリッド距離変換を用いて、血管に内接する円のうち最大の円を検出することができる。距離変換はユークリッドに限らず、また重み付けを行ってもよい。さらに別の方法として、抽出部230によって検出された複数の点の重心を、主血管の中心点の推定位置として扱ってもよい。
後述するように断層像における主血管を示す交差点が決定された後に、主血管を示す交差点の重心位置を算出することもできる。この場合、位置取得部220は、主血管の他の位置における断層像について算出された主血管を示す交差点の重心位置を、中心点の推定位置として用いてもよい。さらなる実施形態において、位置取得部220は、ハフ変換により血管円を抽出できなかった場合に、主血管の他の位置における断層像について主血管を示す交差点の重心位置を算出し、中心点の推定位置として用いることができる。
このように、主血管の他の位置における断層像から抽出された血管円の中心を、中心点の推定位置として用いる場合、交差点の誤判定が生じる可能性がある。そこで、このような断層像については、判定部240は、隣接する断層像について検出されたワイヤ影境界ペアを参照して、ワイヤ影境界ペアとなる交差点を決定してもよい。具体的な一例としては、判定部240は、隣接する断層像について検出されたワイヤ影境界ペアと同じ角度方向に、ワイヤ影境界ペアが存在すると判定することができる。また、判定部240は、隣接する2つの断層像について検出されたワイヤ影境界のそれぞれの角度方向の中央に、ワイヤ影境界が存在すると判定することができる。
ステップS320において、位置取得部220は、断層像からガイドワイヤ及びカテーテルシースの像の推定位置をさらに検出する。通常、血管画像を撮影する際には、ガイドワイヤを介してガイディングカテーテル(不図示)が主血管内へと挿入され、カテーテルシースで覆われているプローブはガイディングカテーテル内へと挿入される。このため、断層像には、主血管に挿入されたガイドワイヤ及びカテーテルシースの像が含まれている。本実施形態においては、判定部240は断層像上におけるガイドワイヤ及びカテーテルシースの像の位置を考慮して判定を行う。
具体的には、位置取得部220は、白画素の円(輪郭の内側が白画素であり、輪郭の外側が黒画素である円)をハフ変換により抽出する。そして、位置取得部220は、断層像の中心に最も近い円を、カテーテルシースを示す円(以下、シース円と呼ぶ)として特定する。位置取得部220は、抽出された円のうち、主血管の内壁を示す円の内側にあるもののみを、カテーテルシースを示す円の候補として扱ってもよい。このシース円の中心が、カテーテルシース像の推定位置として扱われる。
また、位置取得部220は、2値化前の断層像において、シース円と血管円との間にある画素のうち、最高輝度を有する画素を検出する。検出された画素は、ガイドワイヤの一部を示す画素(以下、ガイドワイヤ画素と呼ぶ)として扱われ、ガイドワイヤ画素の位置が、ガイドワイヤ像の推定位置として扱われる。
ステップS325において、検出部230は、主血管の中心点から外側に進んだ際における血管との交差点を、血管内壁の位置として抽出する。以下に、その具体的な処理について説明する。
まず、検出部230は、2値化された断層像に対する前処理を行う。具体的には、検出部230は、血管円の中心から所定距離内にある画素を全て黒画素とする。この所定距離は、血管円の半径以下となるように定められる。この処理により、血管円の中心に近く、血管内壁ではない画素が、誤って血管内壁として検出される可能性を低くすることができる。一方で、この所定距離を血管円の半径よりも小さくすることにより、血管円付近に位置する血管内壁を示す画素の検出に失敗する可能性を低くすることができる。この所定距離は特に限定されず、例えば血管円の半径の0.95倍以下であってもよいし、血管円の半径の0.50倍以上であってもよい。
この処理により、例えば、ガイドワイヤ像、カテーテルシース像、及び血管内腔のノイズ等を、断層像から消すことができる。このため、主血管の中心点からの距離が所定距離以下である領域からは交差点が検出されなくなる。ガイドワイヤ像、カテーテルシース像、及び血管内腔のノイズを消すためには、別の方法を用いることもできる。例えば、テンプレートマッチングを用いてガイドワイヤ像又はカテーテルシース像等を認識し、認識した像を消すことができる。さらに、形態学的処理を用いることにより、ノイズ又はカテーテルシース像等を認識して消してもよい。交差点検出の直前の断層像を図4Eに示す。
その後、検出部230は、主血管の中心点から各角度方向へと走査を行い、血管との交差点、すなわち白画素との交差点を検出する。言い換えれば、検出部230は、主血管の中心点から各角度方向に伸びる複数の半直線のそれぞれについて、半直線上の白画素のうち中心点に最も近い画素を、この角度方向に対応する交差点として検出する。360°の走査を行うことにより、血管内壁を示す画素が抽出される。検出部230は、検出されたそれぞれの交差点に、角度方向と、主血管の中心点からの距離と、を対応づけて保存する。保存された情報を用いて、横軸が走査角度を示し、縦軸が主血管の中心点からの距離を示すグラフを作成することができる。
検出部230による検出の例を図4Fに示す。図4Fにおいては、血管円の中心400から、各角度方向411,412,413のそれぞれについて走査が行われている。その結果、交差点421,422,423が検出されている。
ステップS330において、判定部240は、主血管の中心点から交差点までの距離に基づいて、交差点が主血管を示すかを判定する。また、判定部240は、交差点が分岐血管を示すかを判定する。一般的に、断層像において分岐血管は主血管から離れていくので、分岐血管の内壁は主血管の内壁と比べて主血管の中心点からより離れていると考えられる。そこで、判定部240は、主血管の中心点から交差点までの距離が閾値以下である場合に、この交差点が主血管の内壁を示すと判定する。この閾値は、血管円の半径に基づいて決定される。具体的な閾値の決定方法は特に限定されず、例えば血管円の半径の0.90倍以上であってもよいし、血管円の半径の1.10倍以下であってもよい。
また、一実施形態においては、判定部240は、主血管の中心点から交差点までの距離が閾値を超える場合に、この交差点が分岐血管の内壁を示すと判定する。しかしながら、プローブから見てガイドワイヤの後ろに位置する主血管の内壁は断層像に写らない。そして、図4Fに示す写らない領域430(以下、ガイドワイヤの影と呼ぶ)が分岐血管として誤認識される可能性がある。そこで、本実施形態において、判定部240は、さらにカテーテルシースの像及びガイドワイヤの像の位置を考慮して、主血管の中心点からの距離が閾値を超える交差点が、分岐血管を示すかガイドワイヤの影を示すのかを判定する。
具体的には、判定部240は、シース円の中心からガイドワイヤ画素の位置への延長上付近にある交差点はガイドワイヤの影を示し、この延長線上付近にはない交差点は分岐血管を示すと判定する。例えば、判定部240は、主血管の中心点と交差点との間の距離が閾値を超え、かつ断層像上でカテーテルシースの像からガイドワイヤの像へと向かう方向から所定の角度範囲内に交差点が存在する場合に、この交差点はガイドワイヤの影を示すと判定する。また、判定部240は、主血管の中心点と交差点との間の距離が閾値を超え、かつ断層像上でカテーテルシースの像からガイドワイヤの像へと向かう方向から所定の角度範囲内にない交差点は分岐血管を示すと判定する。この角度範囲は特に限定されず、適宜設定することができる。
判定部240による判定方法はこの方法には限定されない。例えば、判定部240は、隣接する角度方向に位置する2つの交差点について、主血管の中心点から交差点までの距離が大きく変化している場合に、この2つの交差点はガイドワイヤの影又は分岐血管を示すと判定することができる。そして、判定部240は、ガイドワイヤの影又は分岐血管を示すと判定されなかった交差点は、主血管を示すと判定することができる。この方法は、例えば、ハフ変換により血管円が検出できなかった断層像に対して適用することができる。
ステップS335において、判定部240は、判定結果に従って、主血管と分岐血管との境界を示す交差点を検出する。また、判定部240は、主血管とガイドワイヤの影との境界を示す交差点を検出する。本実施形態においては、隣接する角度方向にある交差点について、一方が主血管を示し、他方が分岐血管を示すと判定されている場合、判定部240は、主血管を示す交差点が、主血管と分岐血管との境界を示すと判定する。もっとも、この場合、分岐血管を示す交差点が、主血管と分岐血管との境界を示すと判定してもよい。検出部230による角度方向への走査の解像度が十分に高ければ、どちらの方法を採用しても得られる情報に大差はない。また、隣接する角度方向にある交差点について、一方が主血管を示し、他方がガイドワイヤの影を示すと判定されている場合、判定部240は、主血管を示す交差点が、主血管とガイドワイヤの影との境界を示すと判定する。もっとも、この場合、ガイドワイヤの影を示す交差点が、主血管とガイドワイヤの影との境界を示すと判定してもよい。
また、主血管の内壁が途切れている部分に、分岐血管又はガイドワイヤの影を示す交差点が検出されない可能性もある。例えば、図4Fに示す場合、ガイドワイヤの影が位置する角度方向において、ガイドワイヤの影を示す交差点は検出されないかもしれない。また、主血管の内壁と分岐血管の内壁とがなす角度によっては、分岐位置の周辺で分岐血管を示す交差点が検出されない可能性がある。そこで、判定部240は、断層像上において主血管の内表面が途切れている箇所の位置に基づいて、内表面を示す点が主血管と分岐血管(又はガイドワイヤの影)との境界に位置するかを判定することができる。
具体的な一例としては、判定部240は、隣接する角度方向について、一方の方向に主血管を示す交差点が存在するが、他方の方向には主血管を示す交差点が存在しない場合に、この交差点は主血管と分岐血管又はガイドワイヤの影との境界を示すと判定することができる(これを境界候補点とする)。より具体的には、判定部240は、カテーテルシースの像からガイドワイヤの像へと向かう方向から所定の角度範囲内に境界候補点が存在する場合、この境界候補点は主血管とガイドワイヤの影との境界を示すと判定する。また、判定部240は、カテーテルシースの像からガイドワイヤの像へと向かう方向から所定の角度範囲内に境界候補点が存在しない場合、この境界候補点は主血管と分岐血管との境界を示すと判定する。このような方法により、判定部240は、抽出部230によって検出された複数の点のそれぞれが、主血管と分岐血管との境界を示すかを判定することができる。本実施形態においては、抽出部230によって検出された点が主血管と分岐血管との境界を示すかの判定は、抽出部230によって検出された点が主血管を示すか及び分岐血管を示すかを判定した後に行われる。しかしながら、抽出部230によって検出された点が主血管と分岐血管との境界を示すかの判定は、抽出部230によって検出された点が主血管を示すか及び分岐血管を示すかの判定とは独立に行うことができる。
ステップS340において、判定部240は、分岐血管部分を挟む、主血管と分岐血管との境界を示す交差点ペアを検出する。具体的には、判定部240は、主血管と分岐血管との境界を示し、異なる2つの角度方向に存在する2つの交差点の組であって、この2つの角度方向の間に存在する交差点が全て分岐血管を示す(又は交差点が存在しない)交差点の組を検出する。以下では、こうして検出された交差点のペアのことを、分岐部境界ペアと呼ぶ。また、判定部240は、主血管とガイドワイヤの影との境界を示し、異なる2つの角度方向に存在する2つの交差点の組であって、この2つの角度方向の間に存在する交差点が全てガイドワイヤの影を示す(又は交差点が存在しない)交差点の組を検出する。以下では、こうして検出された交差点ペアのことを、ワイヤ影境界ペアと呼ぶ。このような検出された分岐部境界ペア及びワイヤ影境界ペアは、判定更新部250による処理のために用いられる。
ステップS345において、判定更新部250は、ステップS330における判定部240による判定結果を更新する。ここで、判定更新部250は、主血管と分岐血管との境界を示す交差点の位置と、主血管とガイドワイヤの影との境界を示す交差点の位置と、の少なくとも一方を参照する。例えば、判定更新部250は、これらの境界を示す交差点の位置に基づいて定まるパラメータが所定の条件に合致するか否かを判定し、合致する場合に、判定結果を修正することができる。また、判定更新部250は、これらの境界を示す交差点の位置に基づいて新たな交差点を検出し、検出された交差点に対して判定を行うことができる。以下では判定結果の更新方法について5つの例を説明するが、判定結果の更新方法には様々な形態が考えられ、以下の例には限定されない。
(1)三日月状主血管についての誤検出
主血管が図5Aに示す形状(三日月形状)を有している場合、主血管の血管内壁の一部について交差点が検出されないか、又は分岐血管を示す交差点として検出される可能性がある。例えば図5Aの場合、交差点502は主血管の中心点からの距離が大きい、もしくはその距離の変化が大きいため、分岐血管を示す交差点として検出される可能性がある。このような場合には、主血管の中心点から、分岐部境界ペア501,503のそれぞれへの距離の差が大きくなることが考えられる。一方で、図5Bに示すように、主血管が略円形状であり、分岐血管を示す交差点512が検出された場合には、主血管の中心点から、分岐部境界ペア511,513のそれぞれへの距離は同程度であることが多い。
そこで、本実施形態において、判定更新部250は、主血管と分岐血管との境界を示す交差点の位置を参照して、所定の条件に適合する場合、判定部240によって分岐血管を示すと判定された交差点は、主血管を示すと判定する。そして、判定更新部250は、判定部240による判定を更新する。具体的には、判定更新部250は、主血管の中心点から分岐部境界ペアのそれぞれまでの距離の差が閾値以上である場合に、判定部240によって分岐血管を示すと判定された交差点は、主血管を示すと判定する。図5Aの場合であれば、判定更新部250は、判定部240によって分岐血管を示すと判定された交差点502は、主血管を示すと判定する。また、判定更新部250は、交差点501,503は主血管と分岐血管との境界を示さず、分岐部境界ペアではないと判定する。
主血管が図5Aに示す形状を有している場合、主血管の中心点から各角度方向へと走査を行っても、交差点502付近で検出される、主血管を示す交差点の数は少なくなる。そこで、本実施形態において、判定更新部250は、分岐部境界ペアではないと判定された交差点501,503の間に存在する、主血管を示す交差点を追加検出する。追加検出方法の一例を、図5Cを参照して説明する。例えば、判定更新部250は、分岐部境界ペアではないと判定された交差点501,503を通る直線502を、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ平行移動することにより得られる直線505を設定する。そして、判定更新部250は、平行移動された直線505と血管との交差点504,506を主血管を示す交差点として検出する。具体的には、判定更新部250は、交差点501,503の中点502mを、交差点501,503を通る直線502と垂直に、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ移動した点505sを基準点として設定する。そして、判定更新部250は、設定された基準点505sから両方向へと直線505上で走査を行い、血管との交差点のペア、すなわち白画素との交差点のペア504,506を検出する。
こうして検出された交差点504,506は、主血管を示す交差点である可能性がある。そこで、判定更新部250は、上流側又は下流側の横断断面画像における血管の大きさを考慮して、検出された交差点504,506が主血管を示すとの判定が妥当であるか否かを判定する。一実施形態においては、略円形である上流側又は下流側の横断断面画像が参照される。例えば、図5Aに示す形状を有するために主血管を示す交差点が追加検出された横断断面画像は、この判定においては考慮されない。判定方法の一例として、交差点504,506が主血管を示す交差点であると判定を更新することにより、更新された血管の大きさが上流側又は下流側の横断断面画像における血管のおおよその大きさに近づく場合には、判定が妥当であると判定することができる。判定更新部250は、妥当であると判定した場合、交差点504,506は主血管を示すと、判定部240による判定を更新する。
判定更新部250は、このように新たに検出された主血管を示す交差点のペアを通る直線の設定、平行移動、及び走査を行うことにより、順次主血管を示す交差点を検出することができる。すなわち、判定更新部250は、交差点504,506を通る直線505を、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ平行移動することにより得られる直線508を設定する。また、判定更新部250は、交差点504,506の中点505mを、交差点504,506を通る直線505と垂直に、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ移動した点508sを基準点として設定する。そして、判定更新部250は、設定された基準点508sから両方向へと直線508上で走査を行い、血管との交差点のペア、すなわち白画素との交差点のペア507,509を検出する。判定更新部250は、検出された交差点507,509を、主血管を示す交差点と判定する。この処理を繰り返した際に基準点が白画素となった場合には、繰り返しを終了してもよいし、平行移動させる距離をより小さくしてもよい。
(2)ひょうたん状主血管についての誤検出
主血管が狭窄しており、図6Bに示す形状(ひょうたん形状)を有している場合にも、主血管の血管内壁の一部について交差点が検出されないか、又は分岐血管を示す交差点として検出される可能性がある。例えば図6Bに示す断層像620の場合、交差点622,623は主血管の中心点からの距離が大きいため、分岐血管を示す交差点として検出される可能性がある。この場合、交差点621,624は、分岐部境界ペアであると判定される。
このように、狭窄部位付近では複数の断層像について分岐血管を示す交差点が誤検出される可能性がある。狭窄部位を前後の断層像と比較してみると、一般的には、上流側から狭窄部位に近づくにつれて主血管が狭くなり、狭窄部位から下流側に進むにつれて主血管は広くなる。図6Bは、狭窄が最も高度な部位における断層像620を示し、625は、断層像620における分岐部境界ペア621,624間の距離を示す。一方で、図6Aは、断層像620よりも上流における断層像610を示し、612は、断層像610における分岐部境界ペア611,613間の距離を示す。また、図6Cは、断層像620よりも下流における断層像630を示し、632は、断層像630における分岐部境界ペア631,633間の距離を示す。このように、分岐部境界ペア間の距離は、上流側から狭窄部位に近づくにつれて短くなり、狭窄部位から下流側に進むにつれて長くなる。一方で、主血管が略円形状であって分岐血管が存在する場合、分岐部境界ペア間の距離は、上流側から分岐血管の中心に近づくにつれて長くなり、分岐血管の中心から下流側に近づくにつれて短くなる。
そこで、本実施形態では、判定更新部250は、主血管と分岐血管との境界を示す交差点の位置を参照して、所定の条件に適合する場合、判定部240によって分岐血管を示すと判定された交差点は、主血管を示すと判定する。具体的には、判定更新部250は、断層像610から検出された分岐部境界ペア間の距離612が、断層像620から検出された分岐部境界ペア間の距離625よりも大きいか否かを判定する。また、判定更新部250は、断層像630から検出された分岐部境界ペア間の距離632が、断層像620から検出された分岐部境界ペア間の距離625よりも大きいか否かを判定する。このどちらの条件も満たされる場合、断層像610,620,630において、判定部240によって分岐血管を示すと判定された交差点は、主血管を示す可能性がある。また、断層像610と断層像630との間の断層像において、判定部240によって分岐血管を示すと判定された交差点についても、主血管を示す可能性がある。
そして、判定更新部250は、上流側又は下流側の横断断面画像における血管の大きさを考慮して、検出された交差点622,623が主血管を示すとの判定が妥当であるか否かを判定する。この判定は、図5A〜Cを参照して説明した交差点504,506についての判定と同様に行うことができる。判定更新部250は、妥当であると判定した場合、交差点622,623は主血管を示すと、判定部240による判定を更新する。また、判定更新部250は、交差点621,624は主血管と分岐血管との境界を示さず、分岐部境界ペアではないと判定する。
主血管が図6Bに示す形状を有している場合も、主血管の中心点から各角度方向へと走査を行っても、交差点622,623付近で検出される、主血管を示す交差点の数は少なくなる。そこで、本実施形態において、判定更新部250は、分岐部境界ペアではないと判定された交差点621,624の間に存在する、主血管を示す交差点を追加検出する。追加検出は、主血管が図5Aに示す形状を有している場合と同様に行うことができる。
(3)分岐血管とワイヤ影とが重なっている場合の誤検出
分岐血管とガイドワイヤの影とが重なっている場合、ガイドワイヤの位置によっては、本来は分岐血管を示す交差点が、ガイドワイヤの影を示すと誤判定される可能性がある。例えば図7Bに示す断層像720において、交差点723は分岐血管を示すが、ガイドワイヤの影を示すと誤判定されている。図7Bにおいては、交差点722もガイドワイヤの影を示すと判定されており、交差点721,724がワイヤ影境界ペアとして判定されている。このような誤判定が行われた場合、ワイヤ影境界ペア721,724により示されるガイドワイヤの影の大きさは大きくなる。
一方で、互いに隣接する位置の断層像において、通常ガイドワイヤの影の大きさはあまり異ならない。図7Aは、図7Bに示す断層像720の近隣の位置における断層像710である。また、図7Cも、図7Bに示す断層像720の近隣の位置における断層像730である。断層像710及び断層像730では、分岐血管とガイドワイヤの影とは重なっていない。この場合、ワイヤ影境界ペア711,712により示されるガイドワイヤの影の大きさは、ワイヤ影境界ペア731,732によるガイドワイヤの影の大きさとは大きく異ならない。
そこで、判定更新部250は、主血管とガイドワイヤの影との境界を示す交差点の位置を参照して、判定部240によってガイドワイヤの影を示すと判定された交差点は、分岐血管を示すと判定する。具体的には、判定更新部250は、近隣の位置の断層像と比較してガイドワイヤの影の大きさが大きい場合に、ガイドワイヤの影と分岐血管とが重なっていると判定し、ガイドワイヤの影を示すと判定された交差点のうち一部について、分岐血管を示すと判定する。
以下に、判定更新部250が行う具体的な処理の一例を説明する。まず判定更新部250は、検出されたワイヤ影境界ペアについて、角度幅及び中心角度を算出する。角度幅とは、主血管の中心点からワイヤ影境界ペアの一方への角度方向と、主血管の中心点からワイヤ影境界ペアの他方への角度方向との差分を表す。また、中心角度とは、主血管の中心点からワイヤ影境界ペアの一方への角度方向と、主血管の中心点からワイヤ影境界ペアの他方への角度方向と、の中央に位置する角度方向を表す。図7A,Cにおいて、713,733は角度幅を示し、714,734は中心角度を示す。
そして、判定更新部250は、明らかにワイヤ影境界ペアの角度幅が広い断層像を検出する。具体的には、判定更新部250は、ワイヤ影境界ペアの角度幅が閾値を超えている断層像を検出する。閾値は、予め設定されていてもよいし、判定更新部250によって算出されてもよい。例えば、この閾値は、検出対象となっている断層像に隣り合っている所定数の断層像について算出された角度幅の平均値に基づいて算出することができる。一例においては、閾値は、こうして算出された平均値に所定値を加算したものでありうる。以下では、図7Bに示す断層像720について、判定更新部250は、角度幅725が閾値を超えていると判定したものとする。
ワイヤ影境界ペアの角度幅が閾値を超えている断層像720が検出されると、判定更新部250は、この断層像720においてガイドワイヤの影が位置する部分、すなわちワイヤ影境界ペアの位置を推定する。判定更新部250は、この推定を、処理対象となる断層像の近隣に位置する断層像710,730について算出されたワイヤ影境界ペアの位置に基づいて行う。具体的には、判定更新部250は、断層像710から検出されたワイヤ影境界ペア711,712の位置と、断層像730から検出されたワイヤ影境界ペア731,732の位置とを参照して、第2の断層像におけるワイヤ影境界ペアの位置を推定する。ここで、断層像710、断層像720、及び断層像730はそれぞれ血管の第1、第2、及び第3の位置における断層像であり、第2の位置は第1の位置と第3の位置との間に存在する。
より具体的には、判定更新部250は、断層像710から検出されたワイヤ影境界ペアの中心角度714と、断層像730から検出されたワイヤ影境界ペアの中心角度734との線形補間によって値を算出することができる。この場合、判定更新部250は、算出された値を、断層像720についてのワイヤ影境界ペアの中心角度727と推定することができる。また、判定更新部250は、断層像710から検出されたワイヤ影境界ペアの角度幅713と、断層像730から検出されたワイヤ影境界ペアの角度幅733との線形補間によって値を算出することができる。この場合、判定更新部250は、算出された値を、断層像720についてのワイヤ影境界ペアの角度幅728と推定することができる。ここで、線形補間は距離に応じて重み付けされていてもよいし、また3つ以上のフレームからの非線形補間であってもよい。
こうして推定されたワイヤ影境界ペアの中心角度727及び角度幅726を用いて、判定更新部250は、断層像720においてガイドワイヤの影を示すと判定された交差点のうち一部を選択する。具体的には、判定更新部250は、断層像720においてガイドワイヤの影を示すと判定された交差点のうち、推定されたワイヤ影境界ペアの中心角度727及び角度幅726により特定される領域728内に存在しない交差点723を選択することができる。もっとも、判定更新部250は、推定されたワイヤ影境界ペアの角度幅726の算出誤差を考慮して、この角度幅726に対して所定の角度値を加算してから、交差点723の選択を行ってもよい。そして、判定更新部250は、選択された交差点723は分岐血管を示すと判定する。また、判定更新部250は、新たな判定に従って、主血管と分岐血管との境界点を示す交差点724を、判定部240と同様に検出することができる。
判定更新部250は、ワイヤ影境界ペアの位置を正確に推定するために、分岐血管とガイドワイヤの影とが重なっていない断層像を、推定に用いる断層像として選択することができる。すなわち、一実施形態において、検出部230が検出した断層像710におけるワイヤ影境界ペアの角度幅713は閾値以下であり、かつ断層像730におけるワイヤ影境界ペアの角度幅733は閾値以下である。
(4)分岐血管の分岐起始部付近における追加検出
検出部230は所定の角度方向解像度に従って主血管の中心点から各角度方向に進んだ際における血管との交差点を検出する。しかしながら、解像度が粗い場合、分岐血管の分岐起始部付近、すなわち分岐血管の中心から離れた位置においては、分岐血管を抽出できない可能性がある。そこで、本実施形態において、判定更新部250は、主血管と分岐血管との境界を示す交差点の位置を参照して、検出されていない分岐血管が存在する可能性がある部分を検出する。そして、判定更新部250は、検出された部分についてより高い角度方向解像度に従って交差点の検出を行い、検出された交差点が分岐血管を示すか否かを判定する。
具体的には、まず、判定更新部250は、分岐部境界ペアが検出された断層像810と、分岐部境界ペアが検出されなかった断層像820と、の組み合わせを検出する。ここで、断層像810は、血管の第1の位置における断層像であり、断層像820は、第1の位置に隣接する第2の位置における断層像である。分岐血管は互いに隣接する複数の断層像に写るため、断層像820からは分岐血管は検出されなかったものの分岐血管が写っている可能性がある。
次に、判定更新部250は、図8Aに示すように断層像810から算出された分岐部境界ペア811,812の角度方向814を参照して、図8Bに示すように断層像820における検出範囲825を設定する。この検出範囲825は、検出開始角度及び検出終了角度により規定される。具体的には、検出範囲825は、角度方向814を含むように設定される。設定される検出範囲825の広さは特に制限されない。一実施形態においては、検出範囲825の広さは、分岐部境界ペア811,812の角度幅813と一致するように設定される。すなわち、検出開始角度は主血管の中心点から交差点811への角度方向に一致し、検出終了角度は主血管の中心点から交差点812への角度方向に一致する。別の実施形態においては、主血管の中心点から交差点までの距離の変化のトレンドを確認するために、検出範囲825の広さは、分岐部境界ペア811,812の角度幅813よりも所定値だけ大きくなるように設定される。分岐部境界ペアの角度幅及び角度方向は、ワイヤ影境界ペアの角度幅及び角度方向と同様に算出できる。
そして、判定更新部250は、設定された検出範囲825において、検出部230と同様の方法を用いながらも、より感度の高い検出方法を使用して、交差点を検出する。以下に、交差点の検出感度を高める例について説明するが、感度の高め方は以下の例に限られるわけではない。
一例として、判定更新部250は、検出部230が走査を行った際の角度方向解像度よりも高い角度方向解像度に従って、交差点を検出することができる。一例において、検出部230が1°ごとに走査を行うのであれば、判定更新部250は0.25°ごとに走査を行うことができる。そして、判定更新部250は、判定部240と同様に、検出された交差点が主血管を示すのか分岐血管を示すのかを判定する。
また、上述のように、判定部240は、隣接する角度方向に位置する2つの交差点について、主血管の中心点から交差点までの距離が大きく変化している場合に、この2つの交差点は分岐血管(又はガイドワイヤの影)を示すと判定することができる。判定更新部250も、同様の方法を用いて交差点が分岐血管を示すと判定することができるが、この場合に用いる判定の閾値を、判定部240が判定を行う場合の閾値よりも小さくすることができる。例えば、判定部240は、主血管の中心点から2つの交差点までの距離差が第1の閾値よりも大きい場合にこの2つの交差点は分岐血管(又はガイドワイヤの影)を示すと判定することができる。また、判定更新部250は、主血管の中心点から2つの交差点までの距離差が第2の閾値よりも大きい場合にこの2つの交差点は分岐血管(又はガイドワイヤの影)を示すと判定することができる。ここで、第2の閾値は第1の閾値よりも小さい。
別の方法においては、隣接する角度方向に位置する交差点について、主血管の中心点からの距離の変化のトレンドが検出され、距離の変化が閾値よりも大きくなる交差点が分岐血管を示すと判定される。例えば、隣接する角度方向に位置する第1、第2、及び第3交差点について、主血管の中心点から第1及び第2の交差点までの距離差と、主血管の中心点から第2及び第3の交差点までの距離差と、の差分が計算される。判定部240は、この差分が第1の閾値よりも大きい場合に、第1の交差点は分岐血管(又はガイドワイヤの影)を示すと判定することができる。また、判定更新部250は、この差分が第2の閾値よりも大きい場合に、第1の交差点は分岐血管を示すと判定することができる。ここでも、第2の閾値は第1の閾値よりも小さい。
(5)分岐血管の追加抽出
検出部230が用いる、血管の中心点から各角度方向へと走査することにより交差点を検出する方法では、分岐血管部分においては検出される交差点の数が少なくなることが考えられる。そこで、判定更新部250は、主血管と分岐血管との境界を示す交差点の位置、具体的には分岐部境界ペアの位置を参照して、分岐血管を示すさらなる交差点を検出し、検出された交差点について分岐血管を示すと判定する。
具体的な方法は、図5Cを参照して説明した、主血管を示す交差点を追加検出する方法と同様である。すなわち、判定更新部250は、分岐部境界ペアであると判定された交差点を通る直線を、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ平行移動することにより得られる直線を設定する。そして、判定更新部250は、平行移動された直線と血管との交差点を、分岐血管を示す交差点として検出する。
さらなる実施形態において、判定更新部250は、分岐部境界ペアを形成していない、主血管と分岐血管との境界を示す交差点の位置を参照して、分岐血管を示すさらなる交差点を検出し、検出された交差点について分岐血管を示すと判定する。例えば、図7Bに示されるように分岐血管とガイドワイヤの影とが重なっている場合、分岐部境界ペアを形成していない、主血管と分岐血管との境界を示す交差点が生じうる。この場合、判定更新部250は、主血管と分岐血管との境界を示す交差点724を通り、推定されたワイヤ影境界ペアの中心角度727により示される方向に直交する直線を、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ平行移動することにより得られる直線を設定する。そして、判定更新部250は、平行移動された直線と血管との交差点を、分岐血管を示す交差点として検出することができる。
この場合、判定更新部250は、交差点724から、中心角度727により示される方向に直交する直線に沿って、主血管の中心点へと近づく方向に所定距離離れた点を決定する。そして、判定更新部250は、決定された点を、中心角度727により示される方向に、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ移動した点を基準点として設定する。さらに、判定更新部250は、設定された基準点から交差点724に近づく方向へと設定された直線上で走査を行い、血管との交差点、すなわち白画素との交差点を、分岐血管を示す交差点として検出することができる。
別の実施形態においては、判定更新部250は、分岐部境界ペアであると判定された交差点の代わりに、主血管とガイドワイヤの影との境界を示す交差点721と、主血管と分岐血管との境界を示す交差点724と、のペアを用いることもできる。すなわち、判定更新部250は、このペアを通る直線を、主血管の中心点から遠ざかる方向に所定距離だけ平行移動することにより得られる直線を設定する。そして、判定更新部250は、平行移動された直線と血管との交差点のペアのうち、交差点724に近い方の交差点を、分岐血管を示す交差点として検出する。
判定更新部250は、同様の方法により、ワイヤ影境界ペアの位置を参照して、ガイドワイヤの影を示すさらなる交差点を検出し、検出された交差点についてガイドワイヤの影を示すと判定してもよい。
判定更新部250は、以上の(1)〜(5)の方法のうち1つのみを用いてもよいし、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。また、以上の方法を適用する順序は特に制限されない。一実施形態においては、分岐血管を示す交差点を多く抽出するために、判定更新部250は、(1)〜(4)の処理を行った後に、(5)の処理を行う。方法(2)〜(4)では、処理対象となる断層像とは異なる位置での断層像における、主血管と分岐血管との境界を示す交差点の位置と、主血管とガイドワイヤの影との境界を示す交差点の位置と、の少なくとも一方を参照して処理が行われる。このように、複数の断層像を参照することにより、より高い精度で主血管と分岐血管との境界を検出することができる。
境界抽出部200は、こうして得られた判定結果を、分岐血管についての定量的な情報の算出のために、情報算出部1000へと送る。具体的には、それぞれの交差点についての位置情報及び判定部240又は判定更新部250による判定結果が情報算出部1000へと送られる。一実施形態において、この位置情報には、主血管の中心点からの角度方向及び中心点からの距離が含まれる。この場合、境界抽出部200は、断層像における主血管の中心点の推定位置を、情報算出部1000に送ることができる。別の実施形態において、この位置情報には、断層像上における交差点のXY座標が含まれていてもよい。上述したように、境界抽出部200は断層像ごとに複数の交差点についての判定結果を生成し、情報算出部1000へと送る。
もっとも、全ての判定結果を送ることは必須ではなく、境界抽出部200は、少なくとも、主血管に相当する部位と、主血管から分岐する分岐血管に相当する部位と、を区別する情報を、情報算出部1000へと送る。例えば、境界抽出部200は、主血管と分岐血管との境界を示す交差点についての位置情報のみを、情報算出部1000へと送ってもよい。また、境界抽出部200は、分岐血管を示す交差点についての位置情報のみを、情報算出部1000へと送ってもよい。
また、境界抽出部200は、表示制御部110を介して、判定結果を表示部120に表示させることができる。表示画面の例を図9に示す。図9に示す表示画面900には、横断断面画像910及び血管軸方向断面画像920が表示されている。横断断面画像910には、検出された交差点を示し、互いに異なる色で表示されたドット911〜915が重畳表示されている。それぞれのドット911〜915は、主血管を示す交差点、分岐血管を示す交差点、ガイドワイヤの影を示す交差点、主血管と分岐血管との境界点を示す交差点、及び主血管とガイドワイヤの影との境界点を示す交差点を表している。ユーザは、例えばチェックボックス916を操作することにより、これらのドット911〜915の表示を停止することができる。血管軸方向断面画像にも、同様にドット911〜915が重畳表示されている。このように、判定部240又は判定更新部250により自動的に生成された判定結果を表示することにより、ユーザは血管画像のうち分岐血管又はガイドワイヤの影に相当する部分を容易に識別することが可能となる。
[情報算出部]
次に、情報算出部1000の概略構成について、図10を参照して説明する。情報算出部1000は、情報取得部1010及び生成部1020を備える。
情報取得部1010は、血管画像190のうち、主血管に相当する部位と、主血管から分岐する分岐血管に相当する部位と、を区別する情報を取得する。上述したように、情報取得部1010は、境界抽出部200により得られた判定結果を取得する。本実施形態において、情報取得部1010は、少なくとも、主血管と分岐血管との境界を示す交差点についての位置情報、又は分岐血管を示す交差点についての位置情報を、境界抽出部200から取得する。情報取得部1010は、さらに、血管画像190を取得することもできる。
生成部1020は、情報取得部1010が取得した情報を使用して、主血管からの分岐部分における分岐血管の形態を示す定量的な情報を生成する。この定量的な情報としては、例えば、主血管からの分岐部分における分岐血管の大きさを示す情報、及び主血管からの分岐血管の分岐方向を示す情報等が挙げられる。本実施形態において、生成部1020は、分岐血管の大きさを示す情報と分岐方向を示す情報との双方を生成するが、生成部1020は、このうち一方の情報を生成してもよい。
次に、図11のフローチャートを参照して、情報算出部1000が行う処理について詳しく説明する。
ステップS1110において、情報取得部1010は、上述したように、血管画像190のうち、主血管に相当する部位と、主血管から分岐する分岐血管に相当する部位と、を区別する情報を取得する。
ステップS1120において、生成部1020は、血管画像190に含まれる分岐血管の分岐部分を検出する。生成部1020は、分岐血管が存在する連続した断層像について、1つの分岐部分が存在するものと判定する。断層像に分岐血管が存在するか否かは、主血管と分岐血管との境界を示す交差点、又は分岐血管を示す交差点の存在を確認することにより、容易に行うことができる。複数の分岐部分が検出された場合、以下の処理はそれぞれの分岐部分について行われる。
ステップS1130〜S1140において、生成部1020は、ステップS1120で検出された分岐部分についての分岐面情報を算出する。分岐面とは、主血管と分岐血管とを接続する面であり、分岐面情報の例としては、分岐面の位置、向き及び大きさ等が挙げられる。分岐面の大きさは、主血管からの分岐部分における分岐血管の大きさに相当する。分岐面の大きさには、分岐面の面積だけではなく、分岐面の特徴を示す長さ(円であれば半径や直径、楕円であれば短径や長径など)及び分岐面の周囲の長さも含まれる。
ステップS1130において、生成部1020は、主血管と分岐血管との境界点群を近似する近似多角形又は近似楕円を導出する。例えば、図12Aには、主血管と分岐血管との境界を示す交差点群である境界点群1201が表されている。本実施形態において、生成部1020は、図12Bに示すように、この境界点群1201を近似する近似平面1202を導出する。さらに、生成部1020は、図12Cに示すように、それぞれの境界点群1201を近似平面1202へと垂直に投影することにより、投影点群1203を得る。こうして、図12Dに示すように、投影点群1203により構成される近似多角形1204が導出される。近似多角形1204は隣り合う投影点群1203を線形に結んで得られる。しかしながら、近似多角形1204の代わりに、投影点群1203を例えばスプライン曲線等を用いて非線形に結んで得られる近似曲線を導出してもよい。そして、生成部1020は、図12Eに示すように、近似多角形1204を近似する近似楕円1205を導出する。近似に用いるアルゴリズムは特に限定されず、最小二乗近似等の従来知られている方法を用いることができる。
ステップS1140において、生成部1020は、導出された近似多角形(又は近似曲線)の大きさ、導出された近似多角形(又は近似曲線)の最大内接円の大きさ、又は導出された近似楕円の大きさを、定量的な情報として算出する。例えば、生成部1020は、導出された近似多角形の面積を算出することができる。また、生成部1020は、導出された近似多角形の最大内接円の半径、直径、又は面積を算出することができる。さらに、生成部1020は、導出された近似楕円の短軸長、長軸長、又は面積等を算出することができる。また、生成部1020は、導出された近似多角形又は近似楕円の周長を算出することもできる。生成部1020は、導出された近似多角形の最大内接円の中心、導出された近似楕円の長軸と短軸との交点、又は導出された近似多角形若しくは近似楕円の重心をさらに算出してもよい。ここで、近似楕円の短軸長は、分岐部分における分岐血管の直径に近似していると考えられる。また、近似多角形又は近似楕円の面積は、分岐面の面積に近似していると考えられる。
こうして求められた分岐面情報は、分岐血管へと挿入するバルーンやステント等のデバイスを選択するための参考情報として用いられる。ステップS1130及びステップS1140において、生成部1020は、主血管と分岐血管との境界点群に内接する最大内接球を導出し、導出された最大内接球の大きさ及び位置を算出してもよい。こうして算出された値も分岐情報であり、分岐部分の大きさ及び位置を表している。
ステップS1150〜S1170において、生成部1020は、ステップS1120で検出された分岐部分についての、主血管からの分岐血管の分岐方向を算出する。
ステップS1150において、生成部1020は、分岐部分における主血管の向きを算出する。例えば、生成部1020は、分岐部分の近傍での2以上の断層像における主血管の内腔の重心を算出し、重心の位置を近似するベクトルを導出することができる。この計算には、境界抽出部200から取得した、主血管を示す交差点についての位置情報を使用することができる。このようにして導出されたベクトルは、主血管の向きを表している。重心の算出は、主血管を示す交差点についての位置情報を用いて行うことができる。主血管の向きを算出するために用いる断層像は、分岐部分が写っている断層像であってもよいし、分岐部分から所定の範囲内にある断層像であってもよい。もっとも、主血管の内腔の重心の代わりに、主血管の内腔の近似楕円の中心、又は主血管の内腔の最大内接円の中心等を用いることもできる。
分岐部分の近傍に病変が存在する場合、病変部においては主血管の内腔が狭くなり、重心の位置も移動する。一実施形態においては、分岐部分の近傍に病変が存在する場合、病変よりも分岐部分に近い断層像が用いられる。この場合、主血管の向きを算出する際における病変の影響を抑えることができる。病変の検出方法は特に限定されないが、例えば主血管の内腔が閾値よりも小さい場合に、断層像には病変が写っていると判定することができる。別の実施形態において、生成部1020は、病変部が写っている断層像のうち、主血管の内腔の最大内接円が最も小さい断層像を特定する。そして、特定された断層像における内接円の中心を、主血管の内腔の重心の代わりに用いることができる。このような構成によれば、算出される分岐方向は、血管におけるカテーテル等の進行方向に対する分岐血管の進行方向に近似するため、治療計画を立てる上で有用となる。
ステップS1160において、生成部1020は、分岐部分における分岐血管の分岐方向を算出する。本実施形態において、生成部1020は、分岐血管を示す交差点についての位置情報を参照して、分岐血管の分岐方向を算出する。例えば、生成部1020は、分岐血管に内接する内接球を導出することができる。そして、生成部1020は、ステップS1140で導出された近似多角形(又は近似曲線)又は近似楕円の重心から、導出された内接球の中心へと向かう方向に基づいて、分岐血管の分岐方向を算出することができる。
具体的には、生成部1020は、分岐血管を示す交差点群に内接する最大内接球を導出する。ここで、最大内接球は、分岐血管を示す交差点群により囲まれる空間から、分岐部分側又は分岐部分から離れた開放部側(下流側)においてはみ出ないように導出される。また、分岐血管を示す交差点群に、分岐血管の始点を表す点群と、分岐部分から離れた開放部側(下流側)の点群と、を加えてから最大内接球を導出してもよい。そして、生成部1020は、ステップS1140で算出された近似多角形(又は近似曲線)又は近似楕円の重心から最大内接球の重心へと向かうベクトルを、分岐血管の分岐方向を示すベクトルとして算出する。もっとも、生成部1020は、近似多角形(又は近似曲線)又は近似楕円の重心の代わりに、ステップS1140で導出された近似多角形(又は近似曲線)の最大内接円の中心を用いてもよい。一実施形態においては、算出精度を高めるために、分岐血管を示す交差点群の中から、分岐部分からより離れている所定数の点群が選択され、選択された点群に内接する最大内接球が導出される。
別の実施形態において、生成部1020は、分岐血管を示す交差点群に内接する2以上の内接球を導出し、一方の内接球の中心から、他方の内接球の中心へと向かう方向を、分岐血管の分岐方向として算出してもよい。この場合、分岐血管を示す交差点についての位置情報のみに基づいて分岐血管の分岐方向を算出することができる。一実施形態においては、分岐血管の分岐方向の算出精度を高めるために、一方の内接球が最大内接球であり、2つの内接球の中心間の距離が閾値以上であり、2つの内接球の半径の差が閾値以下となるように、2つの内接球が導出される。
分岐血管に病変部が存在する場合には、主血管に病変が存在する場合と同様の処理を行うことができる。生成部1020は、こうして得られた分岐部分における分岐血管の分岐方向を、角度を用いて定量的に表すことができる。一実施形態においては、この分岐方向は、血管画像190を撮影した際の走査方向に対する角度で表すことができる。このように求められた分岐方向は、ガイドワイヤ等を分岐血管へと挿入する際の参考情報として用いることができる。
一方で、本実施形態のステップS1170において、生成部1020は、より有用な情報を提供するために、主血管からの分岐血管の分岐角度を算出する。こうして算出された分岐角度は、主血管からの分岐部分における分岐血管の形態を示す定量的な情報に相当する。分岐角度の算出方法は特に限定されない。例えば、生成部1020は、主血管の向きを表すベクトルと、分岐血管の分岐方向を表すベクトルと、の間の角度を算出してもよい。
別の実施形態においては、ユーザが分岐角度をより感覚的に理解しやすいように、図13に示す角度Φ及びΘが算出される。図13においては、主血管の向きを表すベクトル1301がxy平面上にあり、x軸と平行となるように、xyz座標系(右手系のデカルト座標系)が設定されている。また、分岐血管の分岐方向を表すベクトル1302は、始点が原点に位置し、終点がxy平面の第一象限に位置するように、このxyz座標系は設定されている。図13において、投影点1303は、ベクトル1302の終点をxy平面上に投影して得られる点である。
こうして求められた分岐角度は、ガイドワイヤ等を分岐血管へと挿入する際の参考情報として用いることができる。
ステップS1180において、生成部1020は、ステップS1160で算出された分岐方向と直交する断面における、分岐血管の大きさを示す情報を算出する。こうして算出された情報も、主血管からの分岐部分における分岐血管の形態を示す定量的な情報に相当する。分岐血管の大きさを示す情報としては、例えば、断面積、周長、又は最大内接円の半径若しくは直径等が挙げられる。生成部1020は、分岐血管を示す交差点群に従って分岐血管の大きさを示す情報を生成することができる。ここで、交差点群の輝度を投影することにより、分岐血管の断面画像を生成することもできる。投影される交差点群の輝度とは、血管画像190(例えば横断断面画像)における対応する画素の輝度値である。
例えば、生成部1020は、分岐血管を示す交差点群を分岐方向と直交する断面へと投影してもよく、投影された点の位置に従って分岐血管の大きさを示す情報を算出することができる。この場合には、分岐血管を示す交差点群のうち、断面からの距離が所定範囲内にある点群を、断面へと投影することができる。
別の実施形態においては、以下のように投影される点群が選択される。この選択方法を、図14A〜Dを参照して説明する。分岐血管の分岐方向を表すベクトル1401が面上に来て、血管画像190の撮影時の撮影断面1402と直交する面をXY面とする。X軸は、血管画像190の撮影時の走査方向を表す。また、XY面上において、走査方向Xと分岐方向を表すベクトルとがなす角をΩとする。ここで、血管画像190の撮影時のi番目の撮影断面を断面iと呼び、分岐方向を表すベクトル1401と直交する投影先の断面1403を断面jと呼ぶ。これらの関係は図14Aに示されている。
まず、各断面iについて、分岐血管を示す交差点群のうち断面jに最も近い点を選択する。選択された点をPi,jと呼ぶ。次に、点Pi,jとPi+1,jとをXY面へと垂直に投影した際に、2つの投影点間を区切る垂直二等分面1404が算出される。図14Bは、垂直二等分面1404の位置を示している。そして、垂直二等分面1404と、垂直二等分面1404に平行でPi,jを通る面と、の間にある断面i上の分岐血管を示す交差点群が、断面jへと投影される点として選択される。また、垂直二等分面1404と、垂直二等分面1404に平行でPi+1,jを通る面と、の間にある断面i+1上の分岐血管を示す交差点群が、断面jへと投影される点として選択される。図14Cには、選択された点1405が表されている。
ただし、断面画像を複数作成する場合であって、断面jの間隔Dsと、断面iの間隔Dmとが、Ds<Dm・cosΩの関係を満たす場合には、分岐血管を示す交差点群のうち一部は、断面iと断面i+1との双方に投影される。このことを避けるために、以下の処理を行ってもよい。すなわち、Pi,jとPi,j+1とをXY面へと垂直に投影した際に、2つの投影点間を区切る垂直二等分面1406が算出される。そして、図14Dに示すように、垂直二等分面1406と、垂直二等分面1406に平行でPi,jを通る面と、の間にある断面i上の分岐血管を示す交差点群は、断面jへと投影されるが、断面j+1へは投影されない点として選択される。また、垂直二等分面1406と、垂直二等分面1406に平行でPi,j+1を通る面と、の間にある断面i上の分岐血管を示す交差点群は、断面j+1へと投影されるが、断面jへは投影されない点として選択される。
もっとも、血管画像190からの任意の断面における断層像の作成方法は多断面再構成法として公知である。したがって、生成部1020が、血管画像190を再構成することにより、分岐血管の分岐方向と直交する断面における断層像を作成する方法は、以上の方法に限られない。
分岐方向と直交する断面における分岐血管の大きさを示す情報の算出方法の具体例としては、投影された点を近似する近似楕円、近似曲線及び近似多角形を導出してその面積や周囲の長さを求める方法、投影された点の最大内接円を導出してその半径、直径、若しくは面積を求める方法、等が挙げられる。
上述したように、生成部1020は、分岐血管の分岐方向と直交する断面における断層像を作成し、出力することもできる。例えば、生成部1020は、ステップS1140で算出された近似多角形(若しくは近似曲線)又は近似楕円の重心を通る断層像を作成することができる。また、生成部1020は、分岐面のうち最も上流側又は最も下流側の位置を通る断層像を作成することもできる。生成部1020は、分岐血管の分岐方向に沿った視線方向、又は分岐方向に直交する視線方向における、分岐血管のサーフェスレンダリング画像又はボリュームレンダリング画像等を生成することもできる。
このような構成によれば、バルーンやステント等を用いて主血管に対して治療を行った後に、プラークが分岐血管方向へと移動することによる分岐血管の狭窄の度合いを容易に確認することができる。また、以上の方法によれば、例えば分岐血管とガイドワイヤの影とが重なっている等の理由で、一部の断層像について分岐血管を示す交差点が十分に検出できない場合であっても、一部の交差点を用いて分岐血管の形態を示す定量的な情報が得られる可能性がある。
分岐部分にステントが留置されている場合、ステップS1140において、生成部1020は、ステントストラット(ステントの支柱)の大きさ、例えば幅又は厚みを算出してもよい。ステントストラットは、断層像上には輝度の高い点として現れる。したがって、ガイドワイヤの像の推定位置と同様に、検出部230はステントストラットを形態学的にオブジェクトとして抽出することができ、その位置を検出することができる。この場合、生成部1020は、ステントストラットを表すオブジェクトを、分岐面へと垂直に投影することができる。そして、生成部1020は、分岐面をステントストラットにより分割することにより生じた分割領域の面積、又は最大内接円の大きさを算出することができる。こうして得られた情報により、主血管にステントを配置した後におけるステントストラットの幅又は厚みを確認することができる。
また、ステップS1180において、生成部1020は、ステントストラットを表すオブジェクトを、分岐血管の分岐方向と直交する断面へと投影することができる。そして、生成部1020は、この断面上で、ステントストラットにより分割された分割領域の面積、周長、又は最大内接円の大きさを算出することができる。こうして得られた情報は、ステントストラットの間隙を通るようにカテーテルを操作する際における、カテーテルに垂直な方向のステントストラットの幅に対応する。したがって、この情報は、ステントストラットの間隙を通るようにガイドワイヤ等を操作する際、例えばキッシングバルーンテクニックを行うために用いるバルーンを選択するために、有用である。
さらに、分岐部分にステントが配置されている場合、生成部1020は、ステントの大きさを示す情報を用いて、主血管からの分岐部分における分岐血管の形態を示す定量的な情報を補正することができる。ステントの大きさを示す情報は、情報取得部1010によって取得される。ステントの大きさを示す情報は、ユーザによって入力部(不図示)を介して入力されてもよいし、予め情報算出部1000に記録されていてもよい。
例えば、情報取得部1010は、ステントストラットの幅又は厚み(I1)を示す情報を取得することができる。この場合、生成部1020は、算出したステントストラットの幅又は厚み(I2)を用いて、補正パラメータ(I1/I2)を算出できる。算出されるステントストラットの幅又は厚みは、複数のステントストラットのそれぞれについて計測された値の平均値であってもよい。生成部1020は、こうして算出した補正パラメータ(I1/I2)を、分岐血管の形態を示す定量的な情報、例えばステップS1140で算出された近似楕円の短軸長等に乗算することにより、より正確な値を求めることができる。例えば、ステントストラットの幅を用いる場合、血管軸方向の長さを補正することができる。また、ステントストラットの厚みを用いる場合、走査ライン方向の長さを補正することができる。
情報算出部1000は、表示制御部110を介して、得られた分岐血管の形態を示す定量的な情報を表示部120に表示させることができる。例えば、表示制御部110は、定量的な情報を含む表示画面を表示部120に表示させることができる。また、表示制御部110は、血管の横断断面画像、軸方向断面画像、及び3次元画像のうちの少なくとも1つが含む表示画面を表示部120に表示させることもできる。定量的な情報と、血管の画像との双方を含む表示画面の例を図15に示す。もっとも、定量的な情報と、血管の画像との双方を、表示画面が含むことは必須ではない。
表示画面1500には、血管軸方向断面画像1510が表示されており、血管軸方向断面画像1510には、検出された主血管かから分岐血管への分岐部分SB1〜SB5が示されている。ユーザは、入力部(不図示)を介して、情報を知りたい分岐部分を指定することができる。表示制御部110は、複数の分岐部分のうちの1つを指定する入力に応じて、指定された分岐部分における分岐血管の形態を示す定量的な情報を含むように、表示画面を更新することができる。また、表示制御部110は、複数の分岐部分のうちの1つを指定する入力に応じて、指定された分岐部分を含む血管の横断断面画像、軸方向断面画像、及び3次元画像のうちの少なくとも1つを含むように、表示画面を更新することができる。
例えば、表示画面1500においては、分岐部分SB5が選択されている。図15に示す表示画面1500の領域1520には、分岐血管の分岐角度(Θ5,Φ5)、分岐血管の直径(D5)、及び分岐面の面積(S5)が表示されている。また、領域1520には、ステントストラットの幅又は厚みによって補正された後の、分岐血管の直径(D5)、及び分岐面の面積(S5)がさらに表示されている。
また、表示画面1500には、分岐部分SB5を含む血管軸方向断面画像の拡大画像1530,1540,1550と、分岐部分SB5を含む横断断面画像1560が表示されている。表示される拡大画像1530の断面位置は、画面奥行き方向へと変えることができる。また、拡大画像1530の断面の向きは、表示画面1500の右下のユーザインタフェース1580を用いてコントロールできる。拡大画像1540は、図13に示すxz平面に平行で、中心(プローブ)を通る血管軸方向断面である。拡大画像1550には、検出されたステントストラットの位置が強調表示されている。表示画面1500には、主血管についての血管軸方向断面画像と横断断面画像とが表示されているが、分岐部分SB5における分岐血管についての血管軸方向断面画像又は横断断面画像を表示してもよい。
3D画像1570は、分岐部分SB5を含む血管の3次元画像が表示されている。一実施形態においては、表示される3次元画像の視線方向は、指定された分岐部分における分岐血管の分岐方向に応じて決定される。例えば、表示制御部110は、選択された分岐部分SB5における分岐血管の分岐方向のベクトルと一致するように、3D画像1570の視線方向を決定することができる。視線方向の決定方法はこの方法に限られず、例えば、表示制御部110は、選択された分岐部分SB5における分岐血管の分岐方向のベクトルと直交するように、3D画像1570の視線方向を決定してもよい。
[その他の実施形態]
以上、境界抽出部200及び情報算出部1000を備える画像処理装置100について説明した。しかしながら、境界抽出部200を備える画像処理装置と、情報算出部1000を備える画像処理装置とが、別個の装置であってもよい。この場合、境界抽出部200を備える画像処理装置は、血管画像190を取得し、判定部240又は判定更新部250による判定結果を出力することができる。出力された情報に基づき、ユーザは血管画像190のうち分岐血管又はガイドワイヤの影に相当する部分を容易に識別することが可能となる。また、情報算出部1000を備える画像処理装置は、境界抽出部200が用いる方法とは別の方法で生成された、主血管に相当する部位と、分岐血管に相当する部位と、を区別する情報を取得してもよい。このような情報を用いても、情報算出部1000を備える画像処理装置は、得られた分岐血管の形態を示す定量的な情報を生成及び出力することができる。
図1に示した画像処理装置100が備える各部の機能は、汎用のコンピュータを用いて実現することができる。上述のように、境界抽出部200を備える画像処理装置と、情報算出部1000を備える画像処理装置とが、別個の装置である場合も、それぞれの装置の機能は汎用のコンピュータを用いて実現することができる。
図16はコンピュータの基本構成を示す図である。図16においてプロセッサ1610は、例えばCPUであり、コンピュータ全体の動作をコントロールする。メモリ1620は、例えばRAMであり、プログラム及びデータ等を一時的に記憶する。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体1630は、例えばハードディスク又はCD−ROM等であり、プログラム及びデータ等を長期的に記憶する。本実施形態においては、記憶媒体1630が格納している、各部の機能を実現するプログラムが、メモリ1620へと読み出される。そして、プロセッサ1610が、メモリ1620上のプログラムを実行することにより、上述の各ステップの処理が行われ、各部の機能が実現される。
図16において、入力インタフェース1640は外部の装置から情報を取得するためのインタフェースである。また、出力インタフェース1650は外部の装置へと情報を出力するためのインタフェースであり、例えば表示部120等に接続されている。バス1660は、上述の各部を接続し、データのやりとりを可能とする。
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
本願は、2014年3月14日提出の日本国特許出願特願2014−052371を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。