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JPWO2014091969A1 - 単結晶製造装置、当該装置を用いる単結晶製造方法、及び当該方法によって製造される単結晶 - Google Patents

単結晶製造装置、当該装置を用いる単結晶製造方法、及び当該方法によって製造される単結晶 Download PDF

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JPWO2014091969A1
JPWO2014091969A1 JP2014551994A JP2014551994A JPWO2014091969A1 JP WO2014091969 A1 JPWO2014091969 A1 JP WO2014091969A1 JP 2014551994 A JP2014551994 A JP 2014551994A JP 2014551994 A JP2014551994 A JP 2014551994A JP WO2014091969 A1 JPWO2014091969 A1 JP WO2014091969A1
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守道 渡邊
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克宏 今井
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Abstract

噴射手段により原料の粉体を種基板に向かって噴射して種基板の表面上に膜を形成する成膜ステップと、種基板の表面上に形成された膜を加熱手段により加熱する加熱ステップとを実行することにより、粉体から単結晶を作製する単結晶製造装置において、噴射手段と加熱手段とを種基板を挟んで互いに対向するように配置する。これにより、原料融液を得ることが困難な材料系においても気孔が少ない高品質な単結晶を作製可能な生産性に優れた単結晶製造装置を提供する。

Description

本発明は、単結晶製造装置に関する。より具体的には、本発明は、気孔が少なく均質な単結晶を高い生産性にて製造することができる単結晶製造装置に関する。また、本発明は、かかる単結晶製造装置を用いる単結晶製造方法にも関する。更に、本発明は、かかる単結晶製造方法によって製造される単結晶にも関する。
例えば、圧電ポンプ、インクジェットプリンタのインクヘッド等の種々の用途において使用される圧電アクチュエータに用いられる圧電体材料や、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等の種々の半導体素子に用いられる半導体材料として、セラミックスを始めとする種々の無機材料が利用されている。かかる無機材料の性能を向上させるためには、これらの無機材料における結晶配向度を高くすることが重要であることが知られている。
例えば、圧電セラミックスにおいて、より高い圧電効果を発揮させるためには、圧電セラミックスに電界を印加することによって結晶中の電気双極子の向きを揃える処理(分極処理)が施されるが、この際、結晶配向度が高い程、より分極され易くなり、その結果、高い圧電性能を得ることができる。
ところで、単結晶膜や、結晶がある程度配向されている膜を含む配向膜(以降、「配向性膜」と称する場合がある)を形成する方法として、作製しようとする単結晶や配向性多結晶膜の原料融液を調製し、種となる単結晶上で結晶化させる方法がある。しかしながら、かかる方法において使用される酸化物(例えば、酸化亜鉛(ZnO)等)や窒化物(例えば、窒化ガリウム(GaN)等)や炭化物(例えば、炭化珪素(SiC)等)等の原料が非常に高い融点を有したり、もしくは分解し易かったりする場合がある。このような原料については原料融液を得ることが困難であり、かかる材料系に上記方法を適用することは困難であった。そこで、例えば、GaNの単結晶を作製しようとする場合において、ナトリウム(Na)をフラックスとして原料を溶解し、種に析出させて単結晶を得るNaフラックス法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、サファイア等の異種基板上にハイドライド気相成長法(Hydride Vapor Phase Epitaxy)を用いてGaN層を形成し、GaN層の成長後に異種基板を除去することにより、自立したGaNの単結晶基板を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、これらの従来技術に係る方法は、結晶の成長速度が遅いという問題を有する。
一方、固相成長法によって単結晶膜及び配向性膜を製造することもできる(例えば、特許文献3を参照)。具体的には、例えば、ペロブスカイト構造を有する酸化物からなり0.01〜8体積%の気孔率を有する単結晶又は配向性多結晶が圧電材料等として優れた特性を発揮することができることが開示されている。また、特定の組成を有する酸化物粉末の成形体又は焼結体を所定の温度において熱処理することにより、配向性多結晶又は単位面積当たりに所定個数の小傾角粒界を形成する結晶粒子を含む単結晶から実質的に構成される良質な酸化物イオン伝導性結晶体を効率的に製造することが開示されている(例えば、特許文献4を参照)。
加えて、上記特許文献3及び4においては、結晶体を製造する1つの方法として、焼結体と単結晶(種基板)とを接触させた状態で、接触部分を加熱すると共にそれ以外の末端部分を冷却する温度制御を行うことにより所定の温度勾配を生じさせて、種基板を起点として多結晶の焼結体を単結晶化又は配向化することが開示されている(例えば、特許文献3の図4、特許文献4の図4を参照)。
しかしながら、かかる固相成長による結晶の配向化においては、以下に示すような問題が懸念される。先ず、上記のように焼結体と種基板とを接触させて接触部分を加熱することにより焼結体の粒子を種基板の単結晶に取り込ませて固相成長させるためには、例えば、種基板の表面を鏡面研磨したり、焼結体と種基板とを加圧接触したり、両者の界面に空隙が生じないように、界面に液相材料を充填したりして、両者を密着させることが重要である。そのため、製造工程及び製造装置が複雑になる。特に、大面積の焼結体と種基板とを均一に密着させることは極めて困難である。
また、
上記従来技術においては、多結晶の焼結体と種基板との接触部分を加熱すると共に当該焼結体の他の末端領域を冷却することにより所定の温度勾配を発生させているが、温度勾配が小さい場合は、焼結体と種基板との界面では固相成長するものの、当該界面から離れた焼結体の内部では個々の粒子において別個に粒成長が進む。この結果、固相成長が進むにつれて種結晶に取り込まれる粒子が粗大となり、最終的には固相成長が停止する。また、粗大粒子が別個に種結晶に取り込まれるため、膜中に気孔が残留しやすい。一方、このような問題を防ぐために温度勾配を過大にするとワークそのものが破損する虞がある。
そこで、当該技術分野においては、原料の粉体(原料粉)の粒径が種基板から離れるに従って次第に大きくなるようにエアロゾルデポジション法(以降、「AD法」と称する場合がある)によって粒径の異なる原料粉を種基板上に噴射し、種基板上に堆積させ、斯くして形成された原料を含む膜を熱処理することにより、良質な単結晶膜又は配向性多結晶膜を製造する技術が開示されている(例えば、特許文献5を参照)。
しかしながら、上記従来技術に係る単結晶膜及び配向性多結晶膜の製造方法は、上記のように非常に複雑であり、且つ手間がかかる。また、固相成長の進行方向を制御して結晶粒の配向を制御するために原料粉に混入される固溶不純物及び配向化温度をより低温側にシフトさせるために原料粉の膜に添加される焼結助剤の膜内での濃度分布を狙い通りに正確に制御することは極めて困難であり、均質な結晶を得ることが難しい。また、特許文献3及び4に記載の方法と同様に、膜と種基板との界面から離れた領域に存在する粒子は熱処理によって粒成長して粗大粒子となるため、固相成長には多大なエネルギーが必要となり、最終的には固相成長が停止する。また、粗大粒子が別個に種結晶に取り込まれるため、膜中に気孔が残留しやすい。また、上述した何れの従来技術に係る単結晶膜及び配向性多結晶膜の製造方法においても、膜の作製と当該膜の加熱とが別個の装置によって行われる。従って、単結晶膜の製造工程及び製造手段が複雑になり、例えば、製造コストの増大等の問題を招く虞がある。
ところで、当該技術分野においては、AD法を用いてセラミックス膜構造体を基板上に形成する方法であって、AD法による成膜(以降、「AD成膜」と称する場合がある)後又はAD成膜中に、赤外線レーザー照射による熱処理を行うことにより、基板への熱処理の影響を抑えつつ、膜質を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献6及び非特許文献1を参照)。
上記方法は、エピタキシャル成長法による単結晶化ではなく、例えば、結晶性等の膜質の改善を目的とするものである。また、上記方法においては、熱源となる赤外線レーザーが膜の表面側(基板とは反対側)から照射されるため、基板に近付くにつれて低温となるような温度勾配がセラミックス膜構造体の内部に生ずる。しかしながら、このような方法では膜と種基板との界面における固相成長よりも(当該界面から離れた)膜の表面側での粒成長が優先して生じるため、固相成長には多大なエネルギーが必要となり、最終的には固相成長が停止する。また、粗大粒子が別個に種結晶に取り込まれるため、膜中に気孔が残留しやすい。即ち、上記方法における加熱様式は、原料粉の単結晶化には必ずしも適していない。
加えて、上記方法においては、AD成膜中に赤外線レーザー照射による加熱を行うことが可能であるものの、成膜中に赤外線レーザー照射を行おうとする場合、成膜室内がエアロゾルで充満しており、レーザー光が散乱しやすいため、原料粉にレーザー光を効果的に照射することが難しいという問題がある。
以上のように、当該技術分野においては、原料融液を得ることが困難な材料系においても気孔が少ない高品質な単結晶を作製可能な生産性に優れた単結晶製造装置に対する要求が存在する。
米国特許第5868837号明細書 特開2003−178984号公報 特開2003−267796号公報 特許第3985144号明細書 特許第4682054号明細書 特許第4538609号明細書
「エアロゾルデポジション法の基礎から応用まで」シーエムシー出版、p.48(2008)
上述のように、当該技術分野においては、原料融液を得ることが困難な材料系においても気孔が少ない高品質な単結晶を作製可能な生産性に優れた単結晶製造装置に対する要求が存在する。本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。即ち、本発明は、原料融液を得ることが困難な材料系においても気孔が少ない高品質な単結晶を作製可能な生産性に優れた単結晶製造装置を提供することを1つの目的とする。
本発明の上記1つの目的は、
原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する噴射手段、及び
前記種基板の表面上に堆積された前記膜を加熱する加熱手段、
を備え、
前記噴射手段により、前記粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する成膜ステップ、及び
前記加熱手段により、前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱する加熱ステップ、
を実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する単結晶製造装置であって、
前記噴射手段と前記加熱手段とが前記種基板を挟んで互いに対向するように配置されていること、
を特徴とする単結晶製造装置によって達成される。
本発明に係る単結晶製造装置によれば、原料融液を得ることが困難な材料系においても、気孔が少ない高品質な単結晶を高い生産性にて作製することができる。
本発明の1つの実施態様に係る単結晶製造装置20の構成の概略を示す模式的な構成図の一例である。
前述のように、当該技術分野においては、原料融液を得ることが困難な材料系においても気孔が少ない高品質な単結晶を作製可能な生産性に優れた単結晶製造装置に対する要求が存在する。本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。即ち、本発明は、原料融液を得ることが困難な材料系においても気孔が少ない高品質な単結晶を作製可能な生産性に優れた単結晶製造装置を提供することを1つの目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、噴射手段により原料の粉体を種基板に向かって噴射して種基板の表面上に粉体を堆積させ、膜を形成する成膜ステップと、種基板の表面上に形成された膜を加熱手段により加熱する加熱ステップとを実行することにより、粉体から単結晶を作製する単結晶製造装置において、噴射手段と加熱手段とを種基板を挟んで互いに対向するように配置することにより、原料融液を得ることが困難な材料系においても、気孔が少ない高品質な単結晶を高い生産性にて作製することができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
即ち、本発明の第1の実施態様は、
原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する噴射手段、及び
前記種基板の表面上に堆積された前記膜を加熱する加熱手段、
を備え、
前記噴射手段により、前記粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する成膜ステップ、及び
前記加熱手段により、前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱する加熱ステップ、
を実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する単結晶製造装置であって、
前記噴射手段と前記加熱手段とが前記種基板を挟んで互いに対向するように配置されていること、
を特徴とする単結晶製造装置である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造装置は、原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する噴射手段、及び前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱する加熱手段を備える。これにより、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、前記噴射手段により、前記粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する成膜ステップと、前記加熱手段により、前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱する加熱ステップとを実行することにより、前記粉体から単結晶を作製することができる。尚、本実施態様に係る単結晶製造方法によって単結晶を得る物質の主成分は、特に限定されないが、例えば、種々のセラミックス、酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物、及び窒化ガリウム(GaN)等の窒化物等を挙げることができる(詳しくは後述する)。
尚、上記噴射手段は、原料の粉体を種基板に向かって噴射して種基板の表面上に粉体を堆積させることが可能である限り、如何なる構成を有するものであってもよい。具体的には、上記噴射手段は、例えば、エアロゾルデポジション法(AD法)、パウダージェットデポジション法(PJD法)等において、原料の粉体を種基板に向けて噴射するための噴射ノズル等を含むことができる。
また、上記加熱手段は、種基板の表面上に形成された膜を加熱して、当該膜から単結晶を成長させることができる限り、如何なる構成を有する加熱手段であってもよい。典型的には、上記加熱手段としては、例えば、赤外線ランプ(例えば、近赤外線ランプ等)、各種レーザー(例えば、COレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、半導体レーザー等)、及び高周波加熱装置等を挙げることができる。
上記のような構成を有する本実施態様に係る単結晶製造装置は、成膜ステップにおいて上記噴射手段により原料の粉体を種基板に向かって噴射して種基板の表面上に粉体を堆積させ、膜を形成し、加熱ステップにおいて種基板の表面上に形成された膜を上記加熱手段により加熱して、原料の粉体から単結晶を作製する。
この際、前述のように、加熱ステップにおいて熱源となるエネルギー(例えば、赤外線、レーザー光等)が噴射手段が配設されている側から照射される従来技術に係る単結晶製造装置においては、種基板の表面上に形成された膜の内部において、種基板に近付くにつれて低温となるような温度勾配が生ずることに加え、熱源となるエネルギーが粉体に到達する経路となる空間に噴射手段から噴射された粉体が充満しているため、熱源となるエネルギーが散乱される等して、熱源となるエネルギーが粉体に有効に到達することが困難である。その結果、膜を種基板の単結晶に取り込ませて、単結晶を有効に固相成長させることが難しい。
しかしながら、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、上述のように、前記噴射手段と前記加熱手段とが前記種基板を挟んで互いに対向するように配置されている。これにより、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、熱源となるエネルギー(例えば、赤外線、各種レーザー光、高周波電磁波等)が膜への到達経路において充満する粉体によって散乱されることが防止されると共に、膜と種基板との接触部分側から膜を加熱することができる。その結果、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、熱源となるエネルギーを膜に有効に到達させることができると共に、種基板に近付くにつれて高温となるような温度勾配を種基板の表面上に形成された膜の内部に生じさせることができるので、良質な単結晶を効率的に固相成長させることができる。尚、例えば、加熱手段と噴射手段とが完全に独立しておらず、噴射手段から噴射される粉体の量が著しく多い場合等において、加熱手段周辺に粉体が侵入し、熱源となるエネルギー(例えば、赤外線、各種レーザー光、高周波電磁波等)が膜への到達経路において粉体によって散乱される可能性がある。また、例えば赤外線ランプ等の加熱手段へ粉体が付着することにより、当該加熱手段において故障が生ずる場合がある。かかる場合は、噴射手段の周囲や加熱手段から膜への到達経路の周囲を、例えば多孔質フィルター等によって遮蔽してもよい。この場合、多孔質フィルターの気孔率及び気孔径については特に限定されないが、粉体の放散を抑制しつつ、キャリアガスは透過させるものを選んでもよい。また、多孔質フィルターの材質についても特に限定されないが、多孔質フィルターを熱源付近に設置する場合は耐熱性を有する材質を適用する必要がある。
ところで、前述したように、従来技術に係る単結晶の製造方法においては、膜の作製と当該膜の加熱とが別個の装置によって行われるのが一般的である。従って、従来技術に係る単結晶製造方法においては、単結晶の製造工程及び製造手段が複雑になり、例えば、製造コストの増大等の問題を招く虞がある。しかしながら、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、上述のように、膜の作製と当該膜の加熱とを同一の装置によって行うことができる。その結果、本実施態様に係る単結晶製造装置によれば、単結晶の製造工程及び製造手段の複雑化を回避して、例えば、製造コストの増大等の問題を低減することができる。
尚、本発明に係る単結晶製造装置が備える加熱手段は、種基板の表面上に形成された膜から単結晶を固相成長させるために必要な条件にて当該膜を加熱することが可能である限り、特に限定されるものではない。但し、詳しくは後述するように、加熱ステップにおいて単結晶を得る過程における気孔の発生をより確実且つ容易に抑制して良質な単結晶を効率的に固相成長させるためには、例えば、成膜ステップ及び加熱ステップを逐次的に実行する場合、高い昇温速度を実現可能な(即ち、高い加熱効率を有する)加熱手段を採用することが望ましい。かかる観点からも、本発明に係る単結晶製造装置が備える加熱手段としては、上述のように、例えば、赤外線ランプ(例えば、近赤外線ランプ等)、各種レーザー(例えば、COレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、半導体レーザー等)、及び高周波加熱装置等を挙げることができる。
従って、本発明の第2の実施態様は、
本発明の前記第1の実施態様に係る単結晶製造装置であって、
前記加熱手段が、赤外線ランプ、レーザー、及び高周波加熱装置からなる群より選ばれる何れかの熱源を利用して前記膜を加熱する加熱手段であること、
を特徴とする単結晶製造装置である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、前記加熱手段が、赤外線ランプ、レーザー、及び高周波加熱装置からなる群より選ばれる何れかの熱源を利用して前記膜を加熱する加熱手段である。結果として、本実施態様に係る単結晶製造装置によれば、加熱ステップにおいて、種基板の表面上に形成された膜から良質な単結晶を固相成長させるのに好適な条件にて当該膜を加熱することができる。
ところで、本実施態様に係る単結晶製造装置によって単結晶化しようとする膜は、必ずしも、上述した熱源から供給されるエネルギーを効率良く吸収して熱に変換して、その温度を効率良く上昇させることができる材料であるとは限らない。換言すれば、本実施態様に係る単結晶製造装置によって単結晶化しようとする膜が、上述した熱源から供給されるエネルギーを効率良く吸収して熱に変換することができない材料である場合も想定される。
かかる膜を本実施態様に係る単結晶製造装置によって単結晶化しようとする際には、上述した熱源から供給されるエネルギーを効率良く吸収して熱に変換することができる部材(以降、「発熱部材」と称する場合がある)を利用して、加熱ステップを実行可能とすることができる。具体的には、本実施態様に係る単結晶製造装置において、種基板の膜が形成される側とは反対側に、上述した熱源から供給されるエネルギーを効率良く吸収して熱に変換する発熱部材を配置して、当該発熱部材から生ずる熱エネルギーにより、種基板の表面上に形成された膜を加熱して、当該膜から単結晶を固相成長させることができる。
即ち、本発明の第3の実施態様は、
本発明の前記第2の実施態様に係る単結晶製造装置であって、
前記エネルギーを吸収して発熱する発熱部材を更に備えること、及び
前記発熱部材が、前記種基板の前記膜が形成される側とは反対側に配置されること、
を特徴とする単結晶製造装置である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、前記エネルギーを吸収して発熱する発熱部材が、前記種基板の前記膜が形成される側とは反対側に配置される。これにより、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、本実施態様に係る単結晶製造装置によって単結晶化しようとする膜が上述した熱源から供給されるエネルギーを効率良く吸収して熱に変換することができない材料である場合においても、種基板の膜が形成される側とは反対側に配置された発熱部材が上述した熱源から供給されるエネルギーを効率良く吸収して熱に変換し、当該発熱部材から生ずる熱により、種基板を経由して、種基板の表面上に形成された膜を加熱し、当該膜から単結晶を固相成長させることができる。
ところで、上記発熱部材を構成する材料としては、例えば、上述した熱源から供給されるエネルギーを効率良く吸収して熱に変換することができ、且つ当該発熱部材から生ずる熱エネルギーを、種基板を経由して、種基板の表面上に形成された膜に均一に効率良く伝えることができる材料が望ましい。かかる材料としては、例えば、高い熱伝導率を有する金属、セラミックス等を挙げることができる。
即ち、本発明の第4の実施態様は、
本発明の前記第3の実施態様に係る単結晶製造装置であって、
前記発熱部材が、金属又はセラミックスを含んでなること、
を特徴とする単結晶製造装置である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造装置が備える発熱部材は、金属又はセラミックスを含んでなる。発熱部材に含まれる材料として好適な金属の具体例としては、例えば、白金、ニオブ、タングステン、及びモリブデン等の高融点金属を挙げることができる。また、発熱部材に含まれる材料として好適なセラミックスの具体例としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、及び窒化珪素等を挙げることができる。発熱部材は、種基板と直接接触するため種基板との反応性が無いことが必要であり、且つ所望の熱処理温度に耐え、熱伝導率が高いものを利用することが望ましい。より好ましくは、種基板の熱膨張率に近い熱膨張率を有する発熱部材を利用することが更に望ましい。
ところで、本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、気孔が少なく均質な単結晶を高い生産性にて製造することができる単結晶製造装置に関するのみならず、かかる単結晶製造装置を用いる単結晶製造方法にも関する。
従って、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第1乃至第4の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造装置を用いて、前記成膜ステップ及び前記加熱ステップを逐次的に実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する単結晶製造方法である。
上述した単結晶製造装置としての各種実施態様に関する説明からも明らかであるように、本実施態様に係る単結晶製造方法によれば、気孔が少なく均質な単結晶を高い生産性にて製造することができる。
ところで、本発明に係る単結晶製造方法に含まれる成膜ステップにおいて原料の粉体を種基板の表面上に堆積させ、膜を形成する方法は、種基板との良好な密着性を有し且つ膜内に(ミクロンオーダー(即ち、大きさが1μm以上)の)気孔が生じない緻密な膜を種基板上に形成することが可能である限り、特に限定されるものではない。しかしながら、前述のように、本発明に係る単結晶製造装置は、原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する噴射手段を備える。従って、本発明に係る単結晶製造方法に含まれる成膜ステップにおいて原料の粉体を種基板の表面上に堆積させ、膜を形成する方法は、噴射手段を使用して、原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させる方法であることが望ましい。かかる方法の具体例としては、例えば、エアロゾルデポジション法(AD法)、パウダージェットデポジション法(PJD法)等を挙げることができる。
従って、本発明の第6の実施態様は、
本発明の前記第5の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に前記膜を形成する方法が、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)からなる群より選ばれる何れかの方法であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に前記膜を形成する方法として、エアロゾルデポジション法(AD法)又はパウダージェットデポジション法(PJD法)の何れかの方法が採用される。その結果、本実施態様に係る単結晶製造方法によれば、種基板との良好な密着性を有し且つ膜内に(ミクロンオーダーの)気孔が生じない緻密な膜を種基板上に確実に形成することができる。尚、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)の各々の詳細については当業者に周知であるので、本明細書においては説明を省略する。
ところで、単結晶の固相成長においては、膜と種基板との接触部分を加熱して、種基板に近付くにつれて高温となるような温度勾配を膜内に生じさせることにより、膜を種基板の単結晶に取り込ませて固相成長させることが望ましい。即ち、本発明に係る単結晶製造方法に含まれる加熱ステップにおいては、膜を種基板の側から加熱することが望ましい。
即ち、本発明の第7の実施態様は、
本発明の前記第6の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱されること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱される。これにより、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、種基板に近付くにつれて高温となるような温度勾配が、膜内に生ずる。その結果、本実施態様に係る単結晶製造方法によれば、原料融液を得ることが困難な材料系においても、気孔が少ない高品質な単結晶を高い生産性にて作製することができる。
ところで、本発明者らは、鋭意研究の結果、所定値以下の厚みとなるように種基板の表面上に形成された膜を種基板側から所定値以上の昇温速度にて加熱することにより、気孔が少ない高品質な単結晶を高い生産性にて作製することができることを見出した。かかる知見は、本実施態様に係る単結晶製造方法にも適用することができる。
即ち、本発明の第8の実施態様は、
本発明の前記第7の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下であること、及び
前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が30℃/分以上であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下であり、且つ前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が30℃/分以上である。これにより、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、原料融液を得ることが困難な材料系においても、気孔が少ない高品質な単結晶を高い生産性にて作製することができる。
尚、上記のように所定値以下の厚みを有する膜を所定値以上の昇温速度にて加熱することにより気孔が少ない高品質な単結晶が得られる詳細なメカニズムについては未だ解明されていない。しかしながら、上記のように所定値以下の厚みを有する膜を所定値以上の昇温速度にて加熱することにより、膜の内部に適度な温度勾配が発生して、膜内の粒成長を抑えつつ膜と種基板との界面から固相成長が順次進むため、気孔の発生が抑制されたものと考えられる。
尚、前述のように種基板の表面上に形成された膜を種基板側から加熱することが可能な加熱手段としては、例えば、セラミックスヒーター等の一般的なステージヒーターを挙げることもできる。しかしながら、かかるステージヒーターでは、例えば、本実施態様に係る単結晶製造方法において規定される昇温速度を実現することは困難である。かかる観点からも、前述したように、本発明に係る単結晶製造装置が備える加熱手段としては、例えば、赤外線ランプ(例えば、近赤外線ランプ等)、各種レーザー(例えば、COレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、半導体レーザー等)、及び高周波加熱装置等が望ましい。
尚、本実施態様に係る単結晶製造方法に含まれる成膜ステップにおいて種基板の表面上に形成される膜の(種基板の表面に直交する方向における厚みである)膜厚は100μm以下であることが望ましく、より好ましくは30μm以下であることが望ましい。また、本実施態様に係る単結晶製造方法に含まれる加熱ステップにおける膜の昇温速度は30℃/分以上であることが望ましく、より好ましくは300℃/分以上であることが望ましい。
従って、本発明の第9の実施態様は、
本発明の前記第8の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に形成される前記膜の膜厚が30μm以下であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
また、本発明の第10の実施態様は、
本発明の前記第8又は第9の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法であって、
前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が300℃/分以上であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
ところで、一般に酸化物又は窒化物(例えば、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)等)を主成分とする単結晶を作製しようとする場合、加熱ステップにおいて過剰な熱エネルギーが与えられると、材料の分解や昇華により、得られる結晶膜に組成ずれ及び気孔が発生し易くなる。一方、成膜ステップ及び加熱ステップを逐次的に実行する本発明に係る単結晶製造方法は、上述のように所定値以下の厚みを有する膜を所定値以上の昇温速度にて加熱することにより、膜の内部に適度な温度勾配を発生させて、得られる単結晶における気孔の発生を抑制することができる。即ち、成膜ステップ及び加熱ステップを逐次的に実行する本発明に係る単結晶製造方法は、酸化物又は窒化物を主成分とする単結晶を得ようとする場合に、特に好適に適用することができる。
従って、本発明の第11の実施態様は、
本発明の前記第5乃至前記第10の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法であって、
前記膜の主成分が、酸化物及び窒化物からなる群より選ばれる何れか1種の材料であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
尚、本実施態様に係る単結晶製造方法において種基板の表面上に形成される膜の主成分として使用することができる酸化物及び窒化物の具体例としては、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)及び窒化ガリウム(GaN)を挙げることができる。
従って、本発明の第12の実施態様は、
本発明の前記第11の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記酸化物が酸化亜鉛(ZnO)であり、前記窒化物が窒化ガリウム(GaN)であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
尚、上記のように、例えば、酸化亜鉛(ZnO)及び窒化ガリウム(GaN)等の昇華性が高い材料を膜の主成分として使用する場合、かかる材料が加熱ステップにおいて昇華して、結果として得られる単結晶に組成ずれ又は気孔が発生する等の問題を招くことを抑制することが望ましい。かかる目的を達成するための方策としては、例えば、加熱ステップにおける最高到達温度に上限を設けたり、最高到達温度での保持時間に上限を設けたりすることが挙げられる。但し、この場合、膜の主成分として使用する物質の融点、膜の厚み等を十分に考慮して、これらの上限を定める必要がある。
ところで、本発明に係る単結晶製造方法は、エピタキシャル成長法による単結晶の製造方法であるが、当該単結晶製造方法によって作製される単結晶の主成分と種基板の主成分とは、同じであっても、あるいは異なっていてもよい。換言すれば、本発明に係る単結晶製造方法は、ホモエピタキシャル成長法であっても、あるいはヘテロエピタキシャル成長法であってもよい。
本発明に係る単結晶製造方法がホモエピタキシャル成長法である場合、当該単結晶製造方法によって作製される単結晶の主成分と種基板の主成分とは同じである。この場合、例えば、種基板の表面上に形成される膜の主成分が酸化亜鉛(ZnO)又は窒化ガリウム(GaN)であるとすると、種基板の主成分もまた、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)又は窒化ガリウム(GaN)である。一方、本発明に係る単結晶製造方法がヘテロエピタキシャル成長法である場合、当該単結晶製造方法によって作製される単結晶の主成分と種基板の主成分とは異なる。この場合、例えば、種基板の表面上に形成される膜の主成分が酸化亜鉛(ZnO)又は窒化ガリウム(GaN)であっても、種基板の主成分は、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)ではない物質又は窒化ガリウム(GaN)ではない物質である。尚、種基板の主成分として使用可能な、酸化亜鉛(ZnO)又は窒化ガリウム(GaN)の何れでもない物質の具体例としては、例えば、サファイアを挙げることができる。
従って、本発明の第13の実施態様は、
本発明の前記第5乃至前記第12の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法であって、
前記種基板の主成分が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアからなる群より選ばれる何れか1種の材料であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、前記種基板の主成分が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアからなる群より選ばれる何れか一種の材料である。従って、種基板の表面上に形成される膜の主成分及び種基板の主成分が何れも酸化亜鉛(ZnO)であるか又は窒化ガリウム(GaN)である場合、本実施態様に係る単結晶製造方法はホモエピタキシャル成長法となる。一方、種基板の表面上に形成される膜の主成分と種基板の主成分との組み合わせが上記以外である場合、本実施態様に係る単結晶製造方法はヘテロエピタキシャル成長法となる。
また、本発明に係る単結晶製造方法において、種基板上に形成される膜は、結果として得られる単結晶の特性等に悪影響を及ぼさない限りにおいて、上述した種々の主成分の他に、不純物(ドーパント)を含有していてもよい。具体的には、膜を構成する成分として、例えば、酸化亜鉛(ZnO)にアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、硫黄(S)、シリコン(Si)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素をドープした材料等を使用してもよい。
即ち、本発明の第14の実施態様は、
本発明の前記第5乃至前記第13の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法であって、
前記膜が、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、硫黄(S)、シリコン(Si)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を不純物として含むこと、
を特徴とする単結晶製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、前記膜が、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、硫黄(S)、シリコン(Si)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を不純物として含む。これにより、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、例えば、結果として得られる単結晶の導電性を所望のレベルに調整することができる。尚、本実施態様に係る単結晶製造方法において、種基板の表面上に形成される膜の主成分としてアルミニウム(Al)又はガリウム(Ga)を含有する物質を使用する場合は、それぞれアルミニウム(Al)又はガリウム(Ga)を不純物(ドーパント)として含有することはできないことは言うまでもない。
ところで、本発明に係る単結晶製造方法においては、前述のように、原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する噴射手段と、前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱する加熱手段とを備える単結晶製造装置において、前記噴射手段により前記粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記膜を形成させる成膜ステップと、前記種基板の表面上に形成された前記膜を前記加熱手段により加熱する加熱ステップとを実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する。この際、本発明に係る単結晶製造方法においては、従来技術に係る単結晶製造方法と同様に、成膜ステップを実行した後に加熱ステップを実行することにより、原料の粉体から単結晶を作製することができる。
しかしながら、本発明に係る単結晶製造装置においては、前述のように、膜の作製(成膜ステップ)と当該膜の加熱(加熱ステップ)とを同一の装置によって実行することができる。加えて、本実施態様に係る単結晶製造装置においては、前述のように、噴射手段と加熱手段とが種基板を挟んで互いに対向するように配置されている。従って、かかる単結晶製造装置を用いる本発明に係る単結晶製造方法においては、成膜ステップを実行しながら、加熱ステップを実行することもできる。
即ち、本発明の第15の実施態様は、
本発明の前記第1乃至第4の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造装置を用いて、前記成膜ステップ及び前記加熱ステップを並行して実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する単結晶製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、前記成膜ステップ及び前記加熱ステップを並行して実行する。即ち、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、成膜ステップを実行しながら、加熱ステップを実行する。従って、本実施態様に係る単結晶製造方法によれば、より高い生産性を達成することができる。
尚、本実施態様に係る単結晶製造方法においては、加熱手段による加熱温度を一定に保ったまま成膜することができるため、昇温速度が遅いステージヒーター等を用いることができる。しかしながら、このように加熱手段による加熱温度を一定に保ったまま成膜する場合であっても、噴射によって種基板に粒子が衝突した際には衝突粒子内に温度勾配を生じさせる必要がある。従って、雰囲気全体を均質に加熱する方法は望ましくない。
ところで、本実施態様に係る単結晶製造方法に含まれる成膜ステップにおいて原料の粉体を種基板の表面上に堆積させ、膜を形成する方法もまた、噴射手段を使用して、原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させる方法であることが望ましい。かかる方法の具体例としては、例えば、エアロゾルデポジション法(AD法)、パウダージェットデポジション法(PJD法)等を挙げることができる。
従って、本発明の第16の実施態様は、
本発明の前記第15の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に前記膜を形成する方法が、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)からなる群より選ばれる何れかの方法であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
また、本実施態様に係る単結晶製造方法においても、単結晶の固相成長においては、成膜と同時に固相成長する場合もあるが、固相成長速度が成膜速度よりも遅い場合もある。後者の場合(即ち、固相成長速度が成膜速度よりも遅い場合)、成膜ステップ及び加熱ステップを逐次的に実行する場合と同様に、膜と種基板との接触部分を加熱して、種基板に近付くにつれて高温となるような温度勾配を膜内に生じさせることにより、膜を種基板の単結晶に取り込ませて固相成長させることが望ましい。即ち、本実施態様に係る単結晶製造方法においても、膜を種基板の側から加熱することが望ましい。
従って、本発明の第17の実施態様は、
本発明の前記第16の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱されること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
ところで、前述のように、一般に酸化物又は窒化物(例えば、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)等)を主成分とする単結晶を作製しようとする場合、加熱ステップにおいて過剰な熱エネルギーが与えられると、材料の分解や昇華により、得られる結晶膜に組成ずれ及び気孔が発生し易くなる。一方、成膜ステップ及び加熱ステップを並行して実行する本発明に係る単結晶製造方法においても、上述のように膜の内部に適度な温度勾配を発生させて、得られる単結晶における気孔の発生を抑制することができる。即ち、成膜ステップ及び加熱ステップを並行して実行する本発明に係る単結晶製造方法もまた、酸化物又は窒化物を主成分とする単結晶を得ようとする場合に、好適に適用することができる。
従って、本発明の第18の実施態様は、
本発明の前記第15乃至前記第17の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法であって、
前記膜の主成分が、酸化物及び窒化物からなる群より選ばれる何れか一種の材料であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
また、本実施態様に係る単結晶製造方法において種基板の表面上に形成される膜の主成分として使用することができる酸化物及び窒化物の具体例としては、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)及び窒化ガリウム(GaN)を挙げることができる。
従って、本発明の第19の実施態様は、
本発明の前記第18の実施態様に係る単結晶製造方法であって、
前記酸化物が酸化亜鉛(ZnO)であり、前記窒化物が窒化ガリウム(GaN)であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
ところで、成膜ステップ及び加熱ステップを並行して実行する本発明に係る単結晶製造方法においても、当該方法によって作製される単結晶の主成分と種基板の主成分とは、同じであっても、あるいは異なっていてもよい。換言すれば、成膜ステップ及び加熱ステップを並行して実行する本発明に係る単結晶製造方法もまた、ホモエピタキシャル成長法であっても、あるいはヘテロエピタキシャル成長法であってもよい。即ち、成膜ステップ及び加熱ステップを並行して実行する本発明に係る単結晶製造方法において使用される種基板の主成分もまた、成膜ステップ及び加熱ステップを逐次的に実行する本発明に係る単結晶製造方法において使用される種基板の主成分と同様に、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアからなる群より選ぶことができる。
従って、本発明の第20の実施態様は、
本発明の前記第15乃至前記第19の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法であって、
前記種基板の主成分が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアからなる群より選ばれる何れか一種の材料であること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
また、成膜ステップ及び加熱ステップを並行して実行する本発明に係る単結晶製造方法において、種基板上に形成される膜もまた、結果として得られる単結晶の特性等に悪影響を及ぼさない限りにおいて、上述した種々の主成分の他に、不純物(ドーパント)を含有していてもよい。具体的には、膜を構成する成分として、例えば、酸化亜鉛(ZnO)にアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、硫黄(S)、シリコン(Si)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素をドープした材料等を使用してもよい。
即ち、本発明の第21の実施態様は、
本発明の前記第15乃至前記第20の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法であって、
前記膜が、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、シリコン(Si)、硫黄(S)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を不純物として含むこと、
を特徴とする単結晶製造方法である。
ところで、本発明の種々の実施態様に係る単結晶製造方法のうち成膜ステップと加熱ステップとを逐次的に行う方法においては、種基板の表面上に膜を形成する成膜ステップにおいて、前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下である膜を形成し、次いで、前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱して単結晶を得る加熱ステップにおいて、前記膜を前記種基板の側から加熱して、30℃/分以上の昇温速度にて昇温させることにより、原料融液を得ることが困難な材料系においても気孔が少ない高品質な単結晶を高い生産性にて作製することを可能とする。
即ち、本発明の種々の実施態様に係る単結晶製造方法のうち成膜ステップと加熱ステップとを逐次的に行う方法においては、当該方法を1サイクルのみ実行する場合、得られる単結晶の厚みは概して100μm以下、より好ましくは30μm以下となる。従って、例えば、単結晶ウェハー等、より大きい厚みを有する単結晶を作製しようとする場合には、かかる単結晶製造方法を複数サイクルに亘って繰り返し実行することが必要である。また、本発明に係る単結晶製造方法のうち成膜ステップと加熱ステップとを並行して行う方法においても、所望の大きい厚みを有する単結晶を作製することが困難である場合がある。かかる場合においても、本発明に係る単結晶製造方法を複数サイクルに亘って繰り返し実行することが必要である。
従って、本発明の第22の実施態様は、
本発明の前記第5乃至前記第21の実施態様の何れか1つに係る単結晶製造方法を繰り返し実行することによって単結晶を得ること、
を特徴とする単結晶製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る単結晶製造方法によれば、これまで説明してきた種々の実施態様を始めとする本発明に係る単結晶製造方法を複数サイクルに亘って繰り返し実行することにより、所望の厚みを有する単結晶を得ることができる。
ところで、前述のように、本発明は、本発明に係る単結晶製造方法によって製造される単結晶にも関する。また、本実施態様に係る単結晶製造方法によって単結晶を得る物質の主成分は、特に限定されないが、例えば、種々のセラミックス、酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物、及び窒化ガリウム(GaN)等の窒化物等を挙げることができる。これらの中でも、酸化亜鉛(ZnO)及び窒化ガリウム(GaN)の単結晶化に、本発明に係る単結晶製造方法を適用することが望ましく、特に酸化亜鉛(ZnO)の単結晶化に、本発明に係る単結晶製造方法を適用することが望ましい。
即ち、本発明の第23の実施態様は、
本発明の前記第5乃至前記第22の実施態様に係る単結晶製造方法によって得られること、
を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶である。
また、前述のように、本発明に係る単結晶製造方法のうち、成膜ステップ及び加熱ステップを逐次的に実行する方法を1サイクルのみ実行する場合は、得られる単結晶膜の厚みは概して100μm以下、より好ましくは30μm以下となる。また、成膜ステップと加熱ステップとを並行して実行する方法においても、所望の大きい厚みを有する単結晶を作製することが困難である場合がある。しかしながら、用途によっては、30μmを超える厚みを有する単結晶が望ましい場合もある。
従って、本発明の第24の実施態様は、
本発明の前記第23の実施態様に係る酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
前記成膜ステップにおいて形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における当該結晶の厚みである結晶厚が30μmを超えること、
を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶である。
更に、用途によっては、100μmを超える厚みを有する単結晶が望ましい場合もある。しかしながら、前述のように、本発明に係る単結晶製造方法のうち、成膜ステップ及び加熱ステップを逐次的に実行する方法を1サイクルのみ実行する場合は、得られる単結晶膜の厚みは概して100μm以下となる。また、成膜ステップと加熱ステップとを並行して実行する方法においても、所望の大きい厚みを有する単結晶を作製することが困難である場合がある。従って、例えば、単結晶ウェハー等、より大きい厚みを有する単結晶を作製しようとする場合には、本発明に係る単結晶製造方法を複数サイクルに亘って繰り返し実行することが必要である。
即ち、本発明の第25の実施態様は、
本発明の前記第24の実施態様に係る酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
請求項22に記載の単結晶製造方法によって得られること、及び
前記成膜ステップにおいて形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における当該結晶の厚みである結晶厚が100μmを超えること、
を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶である。
更に、前述のように、本発明に係る単結晶製造方法において、種基板の表面上に形成される膜は、結果として得られる単結晶の特性等に悪影響を及ぼさない限りにおいて、前述した種々の主成分の他に、不純物(ドーパント)を含有していてもよい。具体的には、膜を構成する成分として、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、シリコン(Si)、硫黄(S)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を酸化亜鉛(ZnO)等の主成分にドープした材料等を使用してもよい。これらのドーパントを含有させることにより、例えば、n型化、p型化、又はバンドギャップ制御等、所望の特性を単結晶に付与することができる。
これらの中では、n型ドーパントとしてアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、硼素(B)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びシリコン(Si)が望ましく、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)が特に望ましい。尚、これらの不純物(ドーパント)の含有率は0.02at%以上、より好ましくは0.1at%以上であることが望ましい。これらの不純物(ドーパント)の含有率が0.02at%未満である場合、例えば、高い導電性(低い電気抵抗)等、目的とする所望の特性を達成する効果を得ることが困難となるので望ましくない。
従って、本発明の第26の実施態様は、
本発明の前記第23乃至前記25の実施態様の何れか1つに係る酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を不純物として含むこと、並びに
前記不純物の含有率が0.02at%以上であること、
を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶である。
また、本発明の第27の実施態様は、
本発明の前記第26の実施態様に係る酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
前記不純物の含有率が0.1at%以上であること、
を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶である。
ところで、上述したように、本発明に係る単結晶を構成する主成分にn型ドーパントを含有させることによって達成することができる特性としては、例えば、高い導電性(低い電気抵抗)等を挙げることができる。この場合、例えば、LED等のp−n接合を用いる電子デバイスの基板として酸化亜鉛単結晶を用いるときに、単結晶自体をn型層側の電極(カソード)として使用するには、結果として得られる単結晶が有する抵抗率は1×10−3Ω・cm以下であることが望ましい。このように基材として導電性の酸化亜鉛単結晶を用いることによりカソードが不要となるばかりでなく、LED等の発光素子において縦型構造を実現することができる。
即ち、本発明の第28の実施態様は、
本発明の前記第23乃至前記27の実施態様の何れか1つに係る酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
抵抗率が1×10−3Ω・cm以下であること、
を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶である。
以下、本発明の幾つかの実施態様に係る単結晶製造装置及び当該装置を用いる単結晶製造方法の構成等につき更に詳しく説明する。但し、以下に述べる説明はあくまでも例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
《単結晶製造装置の構成》
図1は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る単結晶製造装置20の構成の概略を示す模式的な構成図の一例である。図1に示すように、本実施例に係る単結晶製造装置20は、大気圧より低い気圧の雰囲気下において、原料成分を含む粉体(原料粉)を種基板21の表面上に噴射して堆積させ、膜を形成するエアロゾルデポジション法(AD法)に用いられる装置として構成されている。かかる単結晶製造装置20は、原料粉のエアロゾルを生成するエアロゾル生成部22と、原料粉を種基板21に噴射して原料成分を含む膜を形成すると共に、当該膜を単結晶化させる結晶生成部30と、種基板21上に形成された膜を照射熱によって加熱する加熱用光源(加熱手段)40と、種基板21の温度を測定するための熱電対35を備えている。
エアロゾル生成部22は、原料粉11を収容し、ガスボンベ(図示せず)から供給されるキャリアガス12,13によって、エアロゾルを生成するエアロゾル生成室23と、生成したエアロゾルを結晶生成部30へ供給する原料供給管24とを備えている。結晶生成部30は、種基板21を内包し、種基板21に減圧条件下でエアロゾルを噴射する成膜室31と、成膜室31の内部に配設され、種基板21を固定する基板設置ステージ34と、基板設置ステージ34をX軸−Y軸方向に移動するX−Yステージ33と、を備えている。また、結晶生成部30は、先端に形成された矩形状のスリット37を介してエアロゾルを種基板21へ噴射する噴射ノズル(噴射手段)36と、成膜室31を減圧する真空ポンプ38と、を備えている。
基板設置ステージ34及びX−Yステージ33の内部は空洞になっており、その中に加熱用光源40が配設されている。加熱用光源40からの光(例えば、赤外光)が種基板21の下側(即ち、膜とは反対側)に設置された発熱部材32に照射され、発熱部材32が発熱することにより、種基板21の裏面から膜を加熱することが可能となっている。尚、前述のように、膜を加熱するための熱源は特に限定されるものではなく、例えば、赤外線ランプ、COレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、半導体レーザー等の各種レーザーに加え、高周波加熱装置等を使用してもよい。また、これらの加熱源によって種基板を直接加熱することができる場合は発熱部材32を設置しなくてもよい。
本実施例に係る単結晶製造装置20においては、種基板21の表面上に原料粉を堆積させて膜を形成した後に、単結晶化を行うための加熱ステップを逐次的に行ってもよく、あるいは加熱用光源40からの光によって種基板21を裏面から加熱しつつエアロゾルを種基板21へ噴射して種基板21の表面上に膜を形成することにより、成膜ステップと加熱ステップ(単結晶化)とを同時並行的に行ってもよい。
1.各種評価用試料の作製
(1)膜及び種基板の材料
本実施例においては、以下に示す表1に列挙した各種成膜用原料粉(成膜粉)及び種基板を使用して、各種評価用試料を作製した。尚、本実施例においては、何れの実験例についても、種基板としては、ZnO単結晶基板(10mm×10mm平方、厚さ0.5mm、c面)を用いた。尚、本実施例においては、成膜ステップと加熱ステップとを逐次的に実行する実施形態を採用した。
Figure 2014091969
(2)成膜用原料粉の調製
実験例01及び02において成膜用原料粉(成膜粉)として使用した、アルミニウム(Al)が固溶している酸化亜鉛(ZnO)は、以下のようにして調製した。先ず、酸化亜鉛(ZnO)粉末(体積基準メジアン径(D50)=0.8μm)と酸化アルミニウム(Al)粉末(体積基準D50=0.5μm)とを、アルミニウム(Al)の原子モル比率が0.2at%となるように秤量し、混合した。斯くして得られた混合粉末を、ポットミルにて湿式混合した。
このようにして湿式混合した粉末を、大気中で1400℃において5時間に亘って焼成して、アルミニウム(Al)が固溶している酸化亜鉛(ZnO)粉末を合成した。斯くして得られた合成粉末を、体積基準D50が2.6μmとなるように、ポットミル中で、ジルコニアボールを用いて、5時間に亘って湿式粉砕した。以上のようにして得られた、アルミニウム(Al)が0.2at%固溶している酸化亜鉛(ZnO)を、実験例01及び02において、成膜用原料粉(成膜粉)として使用した。
(3)成膜ステップ
本実施例においては、何れの実験例についても、図1に示す単結晶製造装置を用いて、AD法により、上記各種成膜用粉体をそれぞれの種基板の表面上に堆積させ、膜を形成した。具体的には、窒素(N)ガスを6L/分の流量にてキャリアガスとして流し、エアロゾル生成室の圧力は50〜70kPaとし、成膜室内の圧力は0.1kPa以下とし、成膜粉の噴射ノズル(SUS製)の開口サイズは10mm×0.8mmとした。また、成膜時のノズルの走査方法としては、表1に列挙した走査距離、走査速度、及び走査回数にて、成膜と同時に走査した。
(4)加熱ステップ
加熱ステップもまた、図1に示す単結晶製造装置を使用して、上記各種膜を加熱した。尚、光加熱のための光源としては、近赤外線ランプを使用した。また、上記各種膜は近赤外線の吸収係数が低いため、種基板の膜を形成する面とは反対側の面に発熱部材として白金板を配設し、種基板の膜を形成する面とは反対側から近赤外線を照射して、当該近赤外線を上記白金板に吸収させることにより、膜を種基板側から加熱した。尚、加熱ステップにおける雰囲気、加熱温度(表面温度)、昇温速度、及び保持時間については、表1に列挙した通りである。加熱ステップ後の単結晶膜の厚みについても、表1に列挙した。
2.各種評価用試料の評価方法
(1)断面SEM観察
上記加熱ステップを経た各種評価用試料を種基板の主面に直交する面に沿って研磨し、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−6390)を使用して、5000倍の倍率にて当該研磨面(断面)における膜の端部から40視野を観察した。かかる断面SEM観察の結果、ミクロンオーダー(即ち、大きさが1μm以上)の気孔が無く、サブミクロンオーダー(即ち、大きさが1μm未満)の気孔が検出された箇所が10箇所未満であり、且つ膜と種基板との間の界面が加熱ステップ後に消失している場合、緻密な単結晶が良好に得られたと判断した。尚、加熱ステップ前の膜の状態を同様の手法によって観察したところ、全ての実験例において、ミクロンオーダー(即ち大きさが1μm以上)の気孔は観察されず、アルキメデス法によって測定された相対密度は95%以上であった。
(2)面内ロッキングカーブ(XRC)測定
上記加熱ステップを経た各種評価用試料のC面につき、多機能高分解能X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、D8 DISCOVER)を、以下の条件下で使用して、面内ロッキングカーブ(XRC)測定を行った。(100)ピークが検出された場合、単結晶が良好に得られたと判断した。
・管電圧:40kV
・管電流40mA
・アンチスキャッタリングスリット:3°
・ステップ幅:0.001°
・スキャンスピード:0.5秒/ステップ
・入射角:1°
(3)二次イオン質量分析(D−SIMS)
上記加熱ステップを経た各種評価用試料につき、二次イオン質量分析計(アメテック株式会社カメカ事業部製、IMS−6f)を以下の条件下で使用して、単結晶化膜内における不純物(ドーパント)としてのアルミニウム(Al)の濃度及び分布状態を評価した。分布状態については、膜内のAl濃度が0.1〜0.3at%の範囲にあれば均質とした。
・イオン種:Cs
・イオンエネルギー14.5keV
・帯電補償:白金(Pt)コート
(4)四探針法による抵抗率測定
上記加熱ステップを経た各種評価試料につき、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタ−AX、ロレスタ用四探針PSPプローブ(MCP−TP06P))を用いて四探針法による抵抗率測定を行った。JIS K 7194に概ね準拠して測定を行ったが、電極間隔は1.5mm、試料面積は10mm×10mmとし、測定箇所は試料中央部のみとした。抵抗率は以下の式(1)に基づいて算出した。
Figure 2014091969
上式中、ρは抵抗率[Ω・cm]、Fは抵抗率補正係数、tは膜厚[cm]、及びRは抵抗[Ω]をそれぞれ表す。尚、抵抗率補正係数Fは、JIS K 7194に記載されている式を用いて計算した。
3.各種評価用試料の評価結果
上記加熱ステップを経た各種評価用試料についての上記評価方法(1)乃至(3)の結果についても、表1に列挙されている。表1に示された評価結果からも明らかであるように、実験例01及び02の何れについても、膜内における気孔の抑制、単結晶化の促進、及び不純物(ドーパント)の均質な分布という観点から見て、極めて良好な品質を有する単結晶を得ることができた。尚、不純物としてのアルミニウム(Al)が0.1〜0.3at%の濃度範囲にて膜内に均質に含まれることが確認され、1×10−3Ω・cm以下の非常に低い抵抗率を有する単結晶を得ることができた。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成有する幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができることは言うまでも無い。
11…原料の粉体、12…キャリアガス、13…圧力調整ガス、20…単結晶製造装置、21…種基板、22…エアロゾル生成部、23…エアロゾル生成室、24…原料供給管、30…結晶生成部、31…成膜室、32…サセプタ(発熱部材)、33…X−Yステージ、34…基板設置ステージ、35…熱電対、36…噴射ノズル(噴射手段)、37:矩形状スリット、38…真空ポンプ、及び40…加熱用光源(加熱手段)。

Claims (28)

  1. 原料の粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記粉体を堆積させ、膜を形成する噴射手段、及び
    前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱する加熱手段、
    を備え、
    前記噴射手段により、前記粉体を種基板に向かって噴射して前記種基板の表面上に前記膜を形成する成膜ステップ、及び
    前記加熱手段により、前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱する加熱ステップ、
    を実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する単結晶製造装置であって、
    前記噴射手段と前記加熱手段とが前記種基板を挟んで互いに対向するように配置されていること、
    を特徴とする単結晶製造装置。
  2. 請求項1に記載の単結晶製造装置であって、
    前記加熱手段が、赤外線ランプ、レーザー、及び高周波加熱装置からなる群より選ばれる何れかの熱源を利用して前記膜を加熱する加熱手段であること、
    を特徴とする単結晶製造装置。
  3. 請求項2に記載の単結晶製造装置であって、
    前記エネルギーを吸収して発熱する発熱部材を更に備えること、及び
    前記発熱部材が、前記種基板の前記膜が形成される側とは反対側に配置されること、
    を特徴とする単結晶製造装置。
  4. 請求項3に記載の単結晶製造装置であって、
    前記発熱部材が、金属又はセラミックスを含んでなること、
    を特徴とする単結晶製造装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の単結晶製造装置を用いて、前記成膜ステップ及び前記加熱ステップを逐次的に実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する単結晶製造方法。
  6. 請求項5に記載の単結晶製造方法であって、
    前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に前記膜を形成する方法が、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)からなる群より選ばれる何れかの方法であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  7. 請求項6に記載の単結晶製造方法であって、
    前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱されること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  8. 請求項7に記載の単結晶製造方法であって、
    前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下であること、及び
    前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が30℃/分以上であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  9. 請求項8に記載の単結晶製造方法であって、
    前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に形成される前記膜の膜厚が30μm以下であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  10. 請求項8又は9の何れか1項に記載の単結晶製造方法であって、
    前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が300℃/分以上であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  11. 請求項5乃至10の何れか1項に記載の単結晶製造方法であって、
    前記膜の主成分が、酸化物及び窒化物からなる群より選ばれる何れか一種の材料であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  12. 請求項11に記載の単結晶製造方法であって、
    前記酸化物が酸化亜鉛(ZnO)であり、前記窒化物が窒化ガリウム(GaN)であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  13. 請求項5乃至12の何れか1項に記載の単結晶製造方法であって、
    前記種基板の主成分が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアからなる群より選ばれる何れか一種の材料であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  14. 請求項5乃至13の何れか1項に記載の単結晶製造方法であって、
    前記膜が、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、シリコン(Si)、硫黄(S)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を不純物として含むこと、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  15. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の単結晶製造装置を用いて、前記成膜ステップ及び前記加熱ステップを並行して実行することにより、前記粉体から単結晶を作製する単結晶製造方法。
  16. 請求項15に記載の単結晶製造方法であって、
    前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に前記膜を形成する方法が、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)からなる群より選ばれる何れかの方法であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  17. 請求項16に記載の単結晶製造方法であって、
    前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱されること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  18. 請求項15乃至17の何れか1項に記載の単結晶製造方法であって、
    前記膜の主成分が、酸化物及び窒化物からなる群より選ばれる何れか一種の材料であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  19. 請求項18に記載の単結晶製造方法であって、
    前記酸化物が酸化亜鉛(ZnO)であり、前記窒化物が窒化ガリウム(GaN)であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  20. 請求項15乃至19の何れか1項に記載の単結晶製造方法であって、
    前記種基板の主成分が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアからなる群より選ばれる何れか一種の材料であること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  21. 請求項15乃至20の何れか1項に記載の単結晶製造方法であって、
    前記膜が、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、硼素(B)、リン(P)、砒素(As)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、カーボン(C)、シリコン(Si)、硫黄(S)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、テルル(Te)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を不純物として含むこと、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  22. 請求項5乃至21の何れか1項に記載の単結晶製造方法を繰り返し実行することによって単結晶を得ること、
    を特徴とする単結晶製造方法。
  23. 請求項5乃至22の何れか1項に記載の単結晶製造方法によって得られること、
    を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶。
  24. 請求項23に記載の酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
    前記成膜ステップにおいて形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における当該結晶の厚みである結晶厚が30μmを超えること、
    を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶。
  25. 請求項24に記載の酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
    請求項22に記載の単結晶製造方法によって得られること、及び
    前記成膜ステップにおいて形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における当該結晶の厚みである結晶厚が100μmを超えること、
    を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶。
  26. 請求項23乃至25の何れか1項に記載の酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
    アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素を不純物として含むこと、並びに
    前記不純物の含有率が0.02at%以上であること、
    を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶。
  27. 請求項26に記載の酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
    前記不純物の含有率が0.1at%以上であること、
    を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶。
  28. 請求項23乃至27の何れか1項に記載の酸化亜鉛(ZnO)単結晶であって、
    抵抗率が1×10−3Ω・cm以下であること、
    を特徴とする酸化亜鉛(ZnO)単結晶。
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