[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JPWO2003031426A1 - 無水コハク酸、その製造方法およびその用途 - Google Patents

無水コハク酸、その製造方法およびその用途 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2003031426A1
JPWO2003031426A1 JP2003534409A JP2003534409A JPWO2003031426A1 JP WO2003031426 A1 JPWO2003031426 A1 JP WO2003031426A1 JP 2003534409 A JP2003534409 A JP 2003534409A JP 2003534409 A JP2003534409 A JP 2003534409A JP WO2003031426 A1 JPWO2003031426 A1 JP WO2003031426A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
succinic anhydride
distillation
polyester
anhydride
succinic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003534409A
Other languages
English (en)
Inventor
理絵 伊藤
理絵 伊藤
佐々木 雅光
雅光 佐々木
理浩 城島
理浩 城島
柿本 行彦
行彦 柿本
松本 幸治
幸治 松本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Publication of JPWO2003031426A1 publication Critical patent/JPWO2003031426A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07DHETEROCYCLIC COMPOUNDS
    • C07D307/00Heterocyclic compounds containing five-membered rings having one oxygen atom as the only ring hetero atom
    • C07D307/02Heterocyclic compounds containing five-membered rings having one oxygen atom as the only ring hetero atom not condensed with other rings
    • C07D307/34Heterocyclic compounds containing five-membered rings having one oxygen atom as the only ring hetero atom not condensed with other rings having two or three double bonds between ring members or between ring members and non-ring members
    • C07D307/56Heterocyclic compounds containing five-membered rings having one oxygen atom as the only ring hetero atom not condensed with other rings having two or three double bonds between ring members or between ring members and non-ring members with hetero atoms or with carbon atoms having three bonds to hetero atoms with at the most one bond to halogen, e.g. ester or nitrile radicals, directly attached to ring carbon atoms
    • C07D307/60Two oxygen atoms, e.g. succinic anhydride
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G63/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carboxylic ester link in the main chain of the macromolecule
    • C08G63/02Polyesters derived from hydroxycarboxylic acids or from polycarboxylic acids and polyhydroxy compounds
    • C08G63/12Polyesters derived from hydroxycarboxylic acids or from polycarboxylic acids and polyhydroxy compounds derived from polycarboxylic acids and polyhydroxy compounds
    • C08G63/16Dicarboxylic acids and dihydroxy compounds

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
  • Furan Compounds (AREA)

Abstract

溶融状態において着色の少ない無水コハク酸と、そのような無水コハク酸の製造方法と、着色の極めて少ないポリエステルを得ることができるポリエステルの製造方法とを提供することを課題とし、かかる課題を解決する手段として、無水コハク酸は、γ−ブチロラクトンの含有量が800ppm以下、ジラクトンの含有量が500ppm以下であることを特徴とし、無水コハク酸の製造方法は、水素添加反応を触媒の存在下、温度120〜160℃、水素圧0.1〜2.0MPaで行い、かつ、前記蒸留を、減圧によりボトム温度が125〜200℃の範囲に納まるようにして行うことを特徴とし、ポリエステルの製造方法は、酸成分として前記無水コハク酸を用いることを特徴とする。

Description

技術分野
本発明は、無水コハク酸、その製造方法およびその用途に関する。さらに詳しくは、ポリエステルの製造原料として好適な無水コハク酸と、無水マレイン酸を原料として水素添加反応を行い、さらに蒸留して精製することで前記無水コハク酸を得る方法と、着色の少ないポリエステルを得ることができるポリエステルの製造方法とに関する。
背景技術
無水コハク酸は、コハク酸、コハク酸のジエステル、スクシンイミド類、ポリエステル(特に、生分解性ポリエステル(脂肪族ポリエステル))類や、薬剤の製造原料などとして、種々の分野で有用であり、広く用いられている。
従来から、無水コハク酸を得る方法としては、例えば、コハク酸をオキシ塩化リンとともに100〜120℃で加熱して脱水する方法、コハク酸を水の共沸溶媒もしくは親水性溶媒を用いて100℃以下の温度で脱水する方法、コハク酸のみを200℃以上の温度で脱水する方法等のようにコハク酸を原料として脱水する方法と、無水マレイン酸を原料として触媒の存在下で水素添加等を行う方法(特開昭47−17707号公報、英国特許第1332613号明細書)とが知られている。例えば、試薬用途のように高品質の無水コハク酸を小スケールで得る際には、コハク酸を原料とする方法が好ましく、一般的にも該方法が採用されているが、種々の製造原料とする場合など工業的なスケールで製造する際には、無水マレイン酸を原料とする方法が好ましい。
無水マレイン酸を原料として無水コハク酸を得る場合、通常、原料無水マレイン酸の水素添加反応を行うことによって得られる反応物(粗製無水コハク酸)を精製することが必要となる。精製としては、操作の簡便性や設備等の点で工業的に有利であることから、一般的に蒸留が行われている。そして、これまでにも、製品品質に優れた精製無水コハク酸とするべく種々の検討がなされてきた。しかしながら、蒸留により精製を行った場合、コハク酸を除去できているにも関わらず、精製後の無水コハク酸に着色、特に黄色の着色が生じることがあった。このような着色は、とりわけ溶融状態とした際に顕著に現れるものであり、例えば、該無水コハク酸を溶融状態でポリエステルの製造原料として用いる場合、得られたポリエステルに著しい着色を生じさせるという問題があった。また、このようなポリエステルに着色を生じるという問題は、試薬として市販されている無水コハク酸を原料としてポリエステルの製造を行った場合(特許第3048316号公報)においても同様に問題となっていた。
このため、従来、サクシネート系のポリエステルは、一般にコハク酸を原料として製造されていた。しかし、工業的には、コハク酸よりも融点の低い無水コハク酸の方が取扱いやすく、しかも、コハク酸を原料とした場合には、脱水に長時間を要することになるため、無水コハク酸を原料とする場合に比べて反応時間が長くなり、生産性に劣る傾向があるといった問題もあるため、本来は無水コハク酸を原料とすることが望ましく、無水コハク酸を原料とした場合の着色の問題を回避することが要望されている。
発明の開示
発明が解決しようとする課題
本発明が解決しようとする課題は、溶融状態において着色の少ない無水コハク酸と、そのような無水コハク酸の製造方法と、着色の極めて少ないポリエステルを得ることができるポリエステルの製造方法とを提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。
その結果、従来の精製無水コハク酸について調べたところ、副生物として含まれている、無水コハク酸が2量化した1,6−ジオキサスピロ[4,4]ノナン−2,7−ジオン(以下、ジラクトンと称することもある。)の存在に気づき、これが多く含まれていることが精製無水コハク酸の着色の原因となっていることを発見した。さらに、このジラクトンは、蒸留の際の加熱により生成すること、しかも、生成したジラクトンは蒸留によっては除去しにくく、これが精製後の無水コハク酸中に残存して着色の原因となること、をも見出し、ジラクトンが生成しにくい蒸留の条件について検討を繰り返した。そして、減圧により蒸留塔の塔底温度が一定範囲に納まるようにすれば、ジラクトンの生成を抑制できることを発見した。
しかし、ポリエステルの製造原料として用いる場合のように、さらに着色の少ないことが要求される用途などにおいては、ジラクトンの生成を抑えることで期待される着色の低減だけでは十分ではないため、ジラクトン以外にも何らかの着色要因があるのではないかと推測した。主たる着色原因と考えていたジラクトンのみについて可能な限り低い濃度となるまで条件を絞り、その結果できる限り高品質な無水コハク酸を得たとしても、やはり一定レベル以上には着色の問題は解消されず、同時に生産性やコスト面で負担が大きくなるばかりであり、このような問題を一挙に解消する手立てとして、やはりジラクトン以外の何かに着目する必要があるのではないかと考えたからである。そこで、種々の検討および試行錯誤を繰り返した結果、ジラクトンと同様に従来の生成無水コハク酸に副生物として含まれているγ−ブチロラクトンに着目し、そして、このγ−ブチロラクトンもジラクトンと同様、精製無水コハク酸中に多く含まれていることが着色の原因となっていることを発見した。しかも、このγ−ブチロラクトンは、原料無水マレイン酸の水素添加反応時において該反応がさらに進んだ際に生成しやすいこと、しかも、生成したγ−ブチロラクトンは後の蒸留によっては除去しにくく、これが精製後の無水コハク酸中に残存して着色の原因となること、をも見出し、γ−ブチロラクトンが生成しにくい水素添加反応の条件について検討を繰り返した。そして、水素添加反応時の反応温度および水素圧が一定範囲に納まるようにすれば、γ−ブチロラクトンの生成を抑制できることを発見した。
したがって、上述のように精製無水コハク酸におけるジラクトンおよびγ−ブチロラクトンそれぞれの含有量を一定量以下にすれば、溶融状態においてもより着色の少ない無水コハク酸となり上記課題が一挙に解決できることを確認し、本発明を完成した。また、上述のように水素添加反応における反応条件と蒸留の条件とを特定した無水コハク酸の製造方法であれば、上記課題が一挙に解決できることを確認し、本発明を完成した。さらに、前記のような無水コハク酸を用いてポリエステルを製造すれば、着色の極めて少ないポリエステルを得ることができ、上記課題が一挙に解決できることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる無水コハク酸は、無水マレイン酸を原料として用い、水素添加反応により粗製無水コハク酸を得て、該粗製無水コハク酸を蒸留により精製することによって得られるものであって、ポリエステルの製造原料である無水コハク酸において、γ−ブチロラクトンの含有量が800ppm以下、ジラクトンの含有量が500ppm以下である、ことを特徴とする。
また、本発明にかかる無水コハク酸の製造方法は、無水マレイン酸を原料として用い、水素添加反応により粗製無水コハク酸を得て、蒸留により前記粗製無水コハク酸を精製する方法において、前記水素添加反応を触媒の存在下、温度120〜160℃、水素圧0.1〜2.0MPaで行い、かつ、前記蒸留を、減圧によりボトム温度が125〜200℃の範囲に納まるようにして行う、ことを特徴とする。
さらに、本発明にかかるポリエステルの製造方法は、酸成分とアルコール成分とを反応させてポリエステルを製造する方法において、前記酸成分として前記本発明の無水コハク酸を用いる、ことを特徴とする。
本発明にかかる無水コハク酸は、ジラクトンおよびγ−ブチロラクトンの両副生物の含有量を規定することにより、より着色を低減した無水コハク酸であるが、該副生物のいずれか一方についてみれば含有量が多い場合であっても、もう一方の含有量も少なくしている為、結果としては、一方の含有量を可能な限り低減したものよりも着色を少なくすることもできる。当然、両方を可能な範囲で十分低減させれば、著しく着色を抑えることが出来る。この効果は、本発明にかかる無水コハク酸の製造方法においても、関連しており、水素添加反応および蒸留の条件を、適宜適当なレベルに設定して組み合わせることによって、一方の条件のみを可能な限り好ましい範囲まで絞ったものに比べ、いわゆる相乗効果的に、より着色の少ない無水コハク酸を得ることもでき、ひいては、生産性やコスト面などで大きく有利な効果を得ることもできる。
発明の実施の形態
以下、本発明にかかる無水コハク酸、その製造方法およびポリエステルの製造方法に関する詳細について具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に何ら拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜実施し得る。
本発明にかかる無水コハク酸(以下、本発明の無水コハク酸と称することがある。)は、無水マレイン酸を原料として用い、水素添加反応により粗製無水コハク酸を得て、該粗製無水コハク酸を蒸留により精製することによって得られるものであって、ポリエステルの製造原料となるものである。
本発明の無水コハク酸は、副生物であるγ−ブチロラクトンおよびジラクトンを含まないものであることが好ましいが、それらを含む場合、γ−ブチロラクトンについては800ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは400ppm以下であり、ジラクトンについては500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。ここで、上記ジラクトンとは、具体的には、1,6−ジオキサスピロ〔4,4〕ノナン−2,7−ジオンのことである。このような本発明の無水コハク酸は、例えば、後述する本発明の無水コハク酸の製造方法により得ることができる。
本発明の無水コハク酸において、γ−ブチロラクトンの含有量が800ppmを超えると、溶融状態において該γ−ブチロラクトンが微量の酸素と反応して着色原因物質を生じやすく、溶融初期には着色が生じなくても、溶融時間が長くなるにつれて着色が顕著になる。また、ジラクトンは、無水コハク酸の着色原因物質の一つであり、その含有量が500ppmを超える場合、溶融状態において着色を生じることとなる。そして、このようなγ−ブチロラクトンおよび/またはジラクトンの含有量が前記範囲を超え、溶融状態で着色が生じる無水コハク酸は、ポリエステルの製造原料として用いた際に得られるポリエステルにも著しい着色を生じさせるため、ポリエステルの製造原料として適さないこととなる。具体的には、無水コハク酸の黄色度(YI)が3以上であると、もしくは、無水コハク酸を150℃の溶融状態で7時間放置した際の黄色度の変化(ΔYI)が8以上であると、いずれも得られるポリエステルが著しく着色することとなる。したがって、本発明の無水コハク酸は、黄色度(YI)が3未満であり、150℃の溶融状態で7時間放置した際の黄色度の変化(ΔYI)が8未満であることが好ましい。
本発明にかかる無水コハク酸の製造方法(以下、本発明の製造方法と称すことがある。)は、無水マレイン酸を原料として用い、水素添加反応により粗製無水コハク酸を得て、蒸留により前記粗製無水コハク酸を精製する方法であり、上記水素添加反応を触媒の存在下において温度120〜160℃、水素圧0.1〜2.0MPaで行い、その後、前記蒸留を、減圧によりボトム温度が125〜200℃の範囲に納まるようにして行う。
本発明の製造方法において、原料となる無水マレイン酸としては、特に限定されるわけではなく、例えば、ベンゼンを固定床プロセスで空気または分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化する方法(特公平3−54944号公報、特公昭38−19108号公報など参照)などにより製造されたものであればよい。
本発明の製造方法において、原料無水マレイン酸の水素添加反応を行う際の反応温度は、120〜160℃とすることが重要であり、より好ましくは120〜150℃、さらに好ましくは120〜145℃とするのがよい。水素添加反応における反応温度が120℃未満の場合は、生成する無水コハク酸の融点が120℃に近いため、反応液の粘度が高くなり反応速度が低下することとなり、160℃を超える場合は、γ−ブチロラクトンなどの不純物の生成量が増えてしまうことになる。
本発明の製造方法において、上記水素添加反応における水素圧は、0.1〜2.0MPaとすることが重要であり、より好ましくは0.3〜1.8MPa、さらにより好ましくは0.5〜1.5MPaとするのがよい。水素添加反応における水素圧が0.1MPa未満の場合は、反応速度が非常に遅くなり、2.0MPaを超える場合は、望まない一層の水添反応などの副反応が起きることとなる。
本発明の製造方法における上記水素添加反応においては、原料無水マレイン酸の転化率は、特に限定はされないが、98%以上となるようにすることが好ましい。上記転化率が98%未満である場合、軽沸点物の除去を目的とするいわゆる前蒸留を行わずに蒸留を行うと、無水コハク酸中に原料である無水マレイン酸が多く混入してしまったり、無水コハク酸を溶融状態で放置したときに経時的に着色が生じるおそれがあるため、前蒸留が必要になる。ところが、前蒸留を行うと、初留として得られる無水マレイン酸などの軽沸点化合物を分離してしまうため、必然的に無水コハク酸の収率は低下してしまう傾向がある。
本発明の製造方法においては、上記水素添加反応における反応温度や水素圧などの各種条件とともに反応時間を考慮し、収率、転化率の向上および不純物の低減を図ることが好ましい。反応時間は、特に限定はされず、無水マレイン酸の所望の転化率を達成できるよう、上記反応温度や水素圧などの各種条件との組み合わせも考慮して適宜任意に設定すればよい。一般的には、上記反応温度や水素圧について、高温・高圧であるほど反応時間は短く、低温・低圧であるほど反応時間は長くすることが好ましい。具体的には、例えば、反応時間は15分以上であることが好ましいが、場合により10分未満や300分以上が好ましいこともある。
上記水素添加反応は、触媒の存在下で行うものであるが、触媒としては、無水マレイン酸の環状構造の部分の炭素−炭素二重結合の部分に水素添加できる触媒を使用することが一般的であり好ましい。このような触媒としては、特に限定されるわけではないが、具体的には、例えば、ラネー触媒や、遷移金属であるIb族およびVIII族の金属触媒であることが好ましい。
上記ラネー触媒は、Ni、Co、Cu、Feなどの水添活性を示す金属が少なくとも1種類以上含んでいるラネーであり、骨格を有するいわゆる骨格触媒である。よって、支持体を必要としない。ラネー触媒としては、コスト面を考慮すると、好ましくは上記金属元素の中の1種または2種のみ、より好ましくは上記金属元素の中の1種のみを含むラネー触媒であるのがよい。なかでも、金属元素としてNiを用いることが特に好ましい。
上記遷移金属であるIb族およびVIII族の金属触媒は、例えば、Pd、Rh、Ru、Pt、Ir、Ni、Co、Feなどの水添活性成分を少なくとも1種類以上含んでいる金属触媒である。これら金属元素のなかでもPdまたはPtがより好ましく、Pdが特に好ましい。この金属触媒の形態としては、特に限定はされないが、金属粉末や、金属粉末を含むスラリーや、支持体に担持する形態などが挙げられる。上記支持体としては、特に限定はされないが、種々の構造を有する酸化アルミニウム、種々の構造を有するSiO、活性炭(カーボン)、酸化アルミニウムとSiOとの混合物、二酸化チタン、硫酸バリウムなどが挙げられ、その他、触媒分野では通常公知である粉末または成形体の形態の不活性支持体も挙げることができる。また、支持体に担持する形態の場合、その形状は、使用温度、使用圧力などに耐え得るよう、円柱状もしくは球状であることが好ましい。
上記水素添加反応においては、上記触媒の使用量は、特に限定はされないが、具体的には、例えば、原料となる無水マレイン酸100重量部に対して、0.01〜10重量部用いることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部、さらにより好ましくは0.2〜3重量部である。
本発明の製造方法においては、上記水素添加反応は、バッチ式で行ってもよいし、流通式(連続式)で行ってもよく、特に限定はされない。
本発明の製造方法においては、上記水素添加反応後に反応物(粗製無水コハク酸)の蒸留を行う。
本発明の製造方法においては、前記蒸留を、減圧により蒸留塔のボトム温度(以下、塔底温度と称することもある。)が125〜200℃の範囲に納まるようにして行うことが重要であり、より好ましくは130〜190℃、さらにより好ましくは135〜180℃の範囲に納まるようにするのがよい。これにより、着色の原因となるジラクトンの生成を抑制することができる。すなわち、着色の原因となるジラクトンの生成は、蒸留塔の塔底温度が低いほど、また、加熱時間が短いほど、効果的に抑制することができ、蒸留塔の塔底温度を前記範囲に設定することにより、ジラクトンが生成しにくい温度で、かつ加熱時間を短くすることが可能となるのである。蒸留塔の塔底温度が125℃未満であると、無水コハク酸の留出が遅くなり蒸留に要する時間が著しく長くなってしまう結果、長時間加熱されてジラクトンの生成が起こりやすくなると同時に、回収された無水コハク酸の固化により閉塞が起こる等の問題を招き、実用に適さないこととなる。一方、蒸留塔の塔底温度が200℃を超えると、無水コハク酸が高温で加熱されることとなり、蒸留の際のジラクトンの生成が増大することとなる。
本発明の製造方法においては、塔底温度が上記温度範囲に納まるように蒸留を行うことが重要となるのであるが、塔底温度が上記範囲に納まるとは、留出液の留出開始から留出が終わるまでの間、塔底温度が上記範囲に維持されていることを意味する。なお、塔底温度とは、主となる塔底温度(積極的に制御されうる温度)のことを意味するものであり、実質的な塔底温度が上記範囲に維持されていればよい。すなわち、例えばポンプの切り替えや留出受器の交換など蒸留中に通常行われる操作によって、短時間の間一時的に塔底温度が上記範囲を外れることがあっても構わない。
本発明の製造方法においては、蒸留の際の無水コハク酸の回収率は、90重量%以上とするのが好ましく、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上とするのがよい。蒸留を行う場合、通常、無水コハク酸の回収率が上がるにつれて、言い換えると、留出した精製無水コハク酸の量が増加するにつれて、蒸留塔の塔底温度は徐々に上昇する傾向があるが、本発明の製造方法において、着色原因物質であるジラクトンの生成を抑制するには、蒸留の際の回収率が上記範囲に到達するまでの全ての時間、塔底温度を上記温度範囲に納まるようにすることが重要となる。
蒸留は、バッチ式もしくは連続式のいずれで行ってもよく、特に限定されない。また、蒸留塔の理論段数は3段以上であることが好ましく、充填塔または棚段塔のどちらでもよく、特に限定されない。
蒸留の際の減圧度は、蒸留塔の塔底温度が前記範囲に納まるように適宜設定すればよいのであるが、好ましくは1.07〜18.7kPaの範囲とするのがよい。また、蒸留をバッチ式で行う場合には、回収率が上がり塔底温度が上昇するのに合わせて、減圧度を下げるようにしてもよい。
蒸留の際に用いられる蒸留装置としては、特に制限はなく、例えば、蒸留塔、蒸留塔の塔底温度を制御するための減圧手段および圧力調整手段、粗製無水コハク酸を溶解・昇温するための加熱手段、留出した精製無水コハク酸を回収するための受器等を少なくとも備えたものであればよい。
蒸留の際の具体的手順は、例えば、バッチ式の蒸留であれば、以下の通りである。
(1)蒸留装置において、蒸留塔の塔底温度が上記範囲に納まるように、蒸留塔内を減圧状態にし、かつ塔底部分の内圧を圧力調整弁等で調整しながら、溶融した粗製無水コハク酸の蒸留を行う。このとき、留出液の留出速度は、F因子が0.4〜2.5となるようにするのが好ましい。また、還流は行っても行わなくてもどちらでも良いが、還流を行う場合は還流比が0.5〜5となるようにするのが好ましい。なお、蒸留は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、例えば、粗製無水コハク酸の仕込み後に装置内を窒素置換しておけばよい。
(2)留出した無水コハク酸を受器に回収する。このとき、回収した無水コハク酸に未反応原料等の軽沸分が含まれている場合には、初留として、仕込んだ粗製無水コハク酸の0〜10重量%を除去することが好ましく、さらに、該初留は無水コハク酸の製造原料として再利用することが好ましい。
本発明の製造方法によれば、最終的に得られる無水コハク酸に関し、副生成物かつ不純物となる上記ジラクトンの含有量を低く抑えるとともに、γ−ブチロラクトンの含有量も低く抑えることができ、無水コハク酸の品質をより向上させることができ、品質不良も著しく低減できる。具体的には、γ−ブチロラクトンおよびジラクトンともに、上記本発明の無水コハク酸について記載した濃度範囲内とすることができる。
本発明の製造方法によれば、最終的に得られる無水コハク酸を高い収率で得ることができ、特に限定はされないが、具体的には、例えば、原料である無水マレイン酸に対して93%以上で得ることができる。
本発明の製造方法により得られた無水コハク酸は、ポリエステルの製造原料として有用であり、なかでも、脂肪族ポリエステル(特に生分解性ポリエステル)類の合成原料として好適である。さらに、本発明の製造方法により得られた無水コハク酸の用途は、これに限定されるものではなく、例えば、コハク酸、コハク酸のジエステル類、スクシンイミド類等の各種化学物質の原料としても有用である。
本発明にかかるポリエステルの製造方法は、酸成分とアルコール成分とを反応させてポリエステルを製造する方法であり、前記酸成分として前記本発明の無水コハク酸を用いるものである。
ポリエステル製造の原料である酸成分としては、前記本発明の無水コハク酸のほかに、無水コハク酸以外の環状無水酸やジカルボン酸を併用することもできる。なお、本発明の無水コハク酸以外の酸成分は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記環状無水酸としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。
ポリエステル製造の原料であるアルコール成分としては、ジオール類または環状エーテル類を用いることができる。
前記ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール等が挙げられる。また、前記例示のジオール類のうちグリコールの一部がポリオキシアルキレングリコールであるような化合物もジオール類として用いることができ、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、およびこれらの共重合体等が挙げられる。なお、ジオール類は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記環状エーテル類としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセバン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。なお、環状エーテル類は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸成分とアルコール成分との反応方法は、用いる原料の種類に応じて公知の方法から適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、1)アルコール成分としてジオール類を用いる場合には、本発明の無水コハク酸および必要に応じて前記環状無水酸や前記ジカルボン酸を含む酸成分と、ジオール類とを反応させハーフエステル化した後、重縮合する方法、2)アルコール成分として環状エーテル類を用いる場合には、本発明の無水コハク酸および必要に応じて前記環状無水酸を含む酸成分と、環状エーテル類とを開環共重合させる方法、等を採用すればよい。
前記1)の方法におけるハーフエステル化や重縮合反応の条件等については、特に限定はされず、適宜好適な条件を選択すればよい。例えば、酸成分とジオール類の全量を初期に一括仕込みして反応させてもよいし、両者のうちの一方を初期に仕込み、もう一方を分割して反応の進行に伴って添加するようにしてもよい。重縮合反応は、通常のエステル交換法またはエステル化法さらには両者の併用によっても可能である。重縮合反応に際しては、一般的なエステル化触媒やエステル交換触媒を用いてもよい。また、重縮合反応の際には、加圧または減圧により重合度を調整するようにしてもよい。
前記2)の方法における開環共重合反応の条件等については、特に限定はされず、適宜好適な条件を選択すればよい。例えば、公知の開環重合触媒を用い、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。
本発明のポリエステルの製造方法においては、得られた低分子量のポリエステルを、さらに、例えば少量の多官能イソシアネートと結合させて、ポリエステル/ポリウレタンとしてもよい。多官能イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、本発明のポリエステルの製造方法においては、得られた低分子量のポリエステルを、さらに、例えば少量のジフェニルカーボネートと反応させて、例えばポリブチレンサクシネート/カーボネート等のようなポリエステル/カーボネートとしてもよい。
本発明のポリエステルの製造方法において、必須の原料である無水コハク酸は、前述した本発明の製造方法で得られるものであるが、溶融のための再加熱工程を省略するため、蒸留後、固化させずに溶融状態のままポリエステルの製造に供するのが好ましい。具体的には、例えば、蒸留した無水コハク酸を直接ポリエステル製造の反応釜に投入してポリエステルの製造を行うようにしてもよいし、もしくは、ポリエステル製造の反応釜とは別の容器に蒸留した無水コハク酸を溶融状態のまま保存し、必要なときにポリエステル製造の反応釜に移送してポリエステルの製造を行うようにしてもよい。なお、反応釜もしくは保存用容器中の溶融状態の無水コハク酸には、ポリエステルの製造に用いる無水コハク酸以外の酸成分もしくはアルコール成分を混合しておいてもよい。例えば、ジオール類をアルコール成分とする場合には、反応釜もしくは保存用容器にあらかじめジオール類を仕込んでおき、そこに溶融状態の無水コハク酸を滴下するか、もしくは蒸留した無水コハク酸中にジオール類を滴下して、あらかじめハーフエステル化しておくようにすることもできる。
本発明のポリエステルの製造方法において得られるポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等が挙げられ、さらに酸成分として前記環状無水酸やジカルボン酸をも併用した場合には、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレート)等が挙げられる。
本発明のポリエステルの製造方法で得られるポリエステルの分子量は、特に制限されないが、数平均分子量で10,000〜200,000であるのが好ましく、より好ましくは10,000〜150,000、さらに好ましくは10,000〜100,000であるのがよい。
本発明のポリエステルの製造方法によれば、得られるポリエステルは、本発明の無水コハク酸を原料とするので、着色の極めて少ないものとなる。具体的には、本発明のポリエステルの製造方法で得られるポリエステルの黄色度(YI)は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下となる。また、本発明のポリエステルの製造方法は、コハク酸を用いた従来の製造方法に比べ、反応時間の短縮が可能であり、生産性の向上を図ることができる等の利点もある。
実施例
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。
−実施例1(無水コハク酸の製造)−
2リットルのオートクレーブ中に、無水マレイン酸1kgと、活性炭に担持させたPd(パラジウム)触媒(Pd含有量:5重量%)4.0gとを入れた後、窒素置換し、攪拌下にてオートクレーブを徐々に140℃まで昇温して無水マレイン酸を溶融させた。オートクレーブ内の排気を行った後、水素圧1.0MPaにて300分間攪拌した。再度オートクレーブ内の排気を行った後、窒素置換を行い、内部の溶融している粗生成物をろ過して触媒を除去した。使用した無水マレイン酸の転化率は99.5%であった。
なお、無水マレイン酸の転化率は、水素添加反応後の粗生成物を、重水素化ジメチルスルホキシドに10重量%濃度となるように溶解させ、400MHzのHNMRにより測定した。以下の実施例・比較例においても同様の方法を用いた。
次に、この粗生成物を融解させ、蒸留塔の塔底を140〜150℃、2.7〜4.0kPaに維持しながら、回収率が99.5重量%になるまで蒸留を行った。蒸留により、無水コハク酸が99.9重量%、γ−ブチロラクトンが400ppm含まれている生成物(以下、無水コハク酸(1)と称すことがある。)を得た。この無水コハク酸(1)には、無水マレイン酸、ジラクトンおよびコハク酸の混入は認められなかった。使用した原料無水マレイン酸の量から算出した無水コハク酸の収率は、95.0%であった。
−実施例2(無水コハク酸の製造)−
2リットルのオートクレーブ中に、無水マレイン酸1kgと、活性炭に担持させたPd(パラジウム)触媒(Pd含有量:5重量%)4.0gとを入れた後、窒素置換し、攪拌下にてオートクレーブを徐々に140℃まで昇温して無水マレイン酸を溶融させた。オートクレーブ内の排気を行った後、水素圧1.0MPaにて180分間攪拌した。再度オートクレーブ内の排気を行った後、窒素置換を行い、内部の溶融している粗生成物をろ過して触媒を除去した。使用した無水マレイン酸の転化率は87.5%であった。
次に、この組成物について、実施例1と同様の蒸留を行ったところ、無水コハク酸が99.9重量%、γ−ブチロラクトンが50ppm含まれている生成物(以下、無水コハク酸(2)と称すことがある。)を得た。この無水コハク酸(2)には、無水マレイン酸、ジラクトンおよびコハク酸の混入は認められなかった。使用した原料無水マレイン酸の量から算出した無水コハク酸の収率は、83.0%であった。
−比較例1(比較無水コハク酸の製造)−
2リットルのオートクレーブ中に、無水マレイン酸1kgと、活性炭に担持させたPd(パラジウム)触媒(Pd含有量:5重量%)4.0gとを入れた後、窒素置換し、攪拌下にてオートクレーブを徐々に140℃まで昇温して無水マレイン酸を溶融させた。オートクレーブ内の排気を行った後、水素圧10MPaにて300分間攪拌した。再度オートクレーブ内の排気を行った後、窒素置換を行い、内部の溶融している粗生成物をろ過して触媒を除去した。使用した無水マレイン酸の転化率は99.8%であった。
次に、この組成物について、実施例1と同様の蒸留を行ったところ、無水コハク酸が99.9重量%、γ−ブチロラクトンが1260ppm含まれている生成物(以下、比較無水コハク酸(1)と称すことがある。)を得た。この比較無水コハク酸(1)には、無水マレイン酸、ジラクトンおよびコハク酸の混入は認められなかった。使用した原料無水マレイン酸の量から算出した無水コハク酸の収率は、93.5%であった。
−比較例2(比較無水コハク酸の製造)−
2リットルのオートクレーブ中に、無水マレイン酸1kgと、活性炭に担持させたPd(パラジウム)触媒(Pd含有量:5重量%)4.0gとを入れた後、窒素置換し、攪拌下にてオートクレーブを徐々に200℃まで昇温して無水マレイン酸を溶融させた。オートクレーブ内の排気を行った後、水素圧4.0MPaにて200分間攪拌した。再度オートクレーブ内の排気を行った後、窒素置換を行い、内部の溶融している粗生成物をろ過して触媒を除去した。使用した無水マレイン酸の転化率は99.9%であった。
次に、この組成物について、実施例1と同様の蒸留を行ったところ、無水コハク酸が99.9重量%、γ−ブチロラクトンが1500ppm含まれている生成物(以下、比較無水コハク酸(2)と称すことがある。)を得た。この比較無水コハク酸(2)には、無水マレイン酸、ジラクトンおよびコハク酸の混入は認められなかった。使用した原料無水マレイン酸の量から算出した無水コハク酸の収率は、95.2%であった。
−比較例3(比較無水コハク酸の製造)−
蒸留塔の塔底を210〜220℃、24〜26kPaに維持して蒸留を行った以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、無水コハク酸が99.5重量%、γ−ブチロラクトンが400ppm、ジラクトンが1000ppm含まれている生成物(以下、比較無水コハク酸(3)と称すことがある。)を得た。この比較無水コハク酸(3)には、無水マレイン酸およびコハク酸の混入は認められなかった。使用した原料無水マレイン酸の量から算出した無水コハク酸の収率は、94.5%であった。
−比較例4(比較無水コハク酸の製造)−
2リットルのオートクレーブ中に、無水マレイン酸1kgと、活性炭に担持させたPd(パラジウム)触媒(Pd含有量:5重量%)4.0gとを入れた後、窒素置換し、攪拌下にてオートクレーブを徐々に180℃まで昇温して無水マレイン酸を溶融させた。オートクレーブ内の排気を行った後、水素圧1.5MPaにて300分間攪拌した。再度オートクレーブ内の排気を行った後、窒素置換を行い、内部の溶融している粗生成物をろ過して触媒を除去した。使用した無水マレイン酸の転化率は99.5%であった。
次に、この組成物について、実施例1と同様の蒸留を行ったところ、無水コハク酸が99.9重量%、γ−ブチロラクトンが1350ppm含まれている生成物(以下、比較無水コハク酸(4)と称すことがある。)を得た。この無水コハク酸(4)には、無水マレイン酸、ジラクトンおよびコハク酸の混入は認められなかった。使用した原料無水マレイン酸の量から算出した無水コハク酸の収率は、95.0%であった。
−比較例5(比較無水コハク酸の製造)−
蒸留塔の塔底を10kPaに維持して蒸留を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。このとき、蒸留初期(留出液の留出開始直後)の塔底温度は180℃であったが、無水コハク酸の回収率が98.0重量%を超えたあたりから塔底温度は急激に上昇し始め、回収率が98.5重量%になった時点での塔底温度は200℃になった。さらに、回収率が99.5重量%になる時点まで蒸留を続け(この時点で塔底温度は220℃にまで上昇していた)、無水コハク酸が99.9重量%、γ−ブチロラクトンが400ppm、ジラクトンが900ppm含まれている生成物(以下、比較無水コハク酸(5)と称すことがある。)を得た。この比較無水コハク酸(5)には、無水マレイン酸およびコハク酸の混入は認められなかった。使用した原料無水マレイン酸の量から算出した無水コハク酸の収率は、94.5%であった。
上記のようにして得られた無水コハク酸(1)、(2)および比較無水コハク酸(1)〜(5)について、それぞれをSUS316製フラスコへ入れた後、内部を窒素置換し、150℃に昇温して無水コハク酸を溶融させた。次に、溶融直後と、溶融後150℃に保持して7時間後と、にサンプリングした。サンプリングした溶融状態のサンプルは、直径5cmの円盤状容器に流し込み固化させて厚み5mmの板状サンプルとし、この板状サンプルの黄色度(YI)を色差計(日本電色工業社製、製品名:SE−2000)を用いて測定した。溶融直後のサンプル由来の板状サンプルの黄色度(YI)と、溶融して7時間後のサンプル由来の板状サンプルの黄色度から上記YIを差し引いた値(ΔYI)(ΔYIの値が大きいサンプルほど着色の度合いが大きいことを示している。)と、を測定および算出し、その結果を表1に示した。
【表1】
Figure 2003031426
表1の結果から分かるように、蒸留での条件を特定することにより副生物であるジラクトンの生成が抑えられ、蒸留後に得られた無水コハク酸の着色(黄色度)YIが低減されている。さらに、水素添加反応での条件を特定することにより副生物であるγ−ブチロラクトンの生成が抑えられ、得られた無水コハク酸自体の着色(黄色度)が低減され、加えてこの無水コハク酸を長時間溶融状態で保持(保存)した場合の着色(黄色度)が顕著に低減されている。よって、無水コハク酸を原料マレイン酸の水素添加反応と粗製無水コハク酸の蒸留とを経て得る場合、水素添加反応および蒸留それぞれにおける条件を特定し制御することにより得られる、上記2種の副生物の含有量が特定範囲以下である、無水コハク酸は、蒸留後(蒸留直後)であっても長時間溶融状態で保存した場合であっても、常に非常に着色の少ないことが実証された。
−実施例3(ポリエステルの製造)−
温度計、攪拌装置、窒素導入管およびヴィグリュー分留管(vigreux column)を備えた三つ口フラスコ(反応容器)に、無水コハク酸(1)120.08部と、エチレングリコール76.61部とを仕込んだ後、この三つ口フラスコをオイルバスに浸した。次に、内容物を攪拌しながら、窒素気流下で185℃になるまで徐々に加熱した。次いで、フラスコ内の温度を185℃、減圧度を100kPa〜常圧に維持するとともに、生成する水と過剰のエチレングリコールとを留去しながら52時間、重縮合を行った。その後、反応系を常温になるまで冷却した。これにより脂肪族ポリエステル(以下、脂肪族ポリエステル(1)と称すことがある。)を得た。
−実施例4(ポリエステルの製造)−
無水コハク酸(1)の代わりに、無水コハク酸(2)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、脂肪族ポリエステル(以下、脂肪族ポリエステル(2)と称すことがある。)を得た。
−比較例6〜10(比較ポリエステルの製造)−
無水コハク酸(1)の代わりに、比較無水コハク酸(1)〜(5)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、比較例6〜10の脂肪族ポリエステル(以下、比較脂肪族ポリエステル(1)〜(5)と称すことがある。)を得た。
−実施例5(ポリエステルの製造)−
オートクレーブに無水コハク酸(1)500部およびオクチル酸ジルコニール3.68部、トルエン250部を加え、窒素置換を行った。次いで、撹拌下にオートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を0.40〜0.83MPaに維持しながら、酸化エチレン231.1部を1時間あたり58部の添加速度で4.0時間にわたって連続的に導入した。酸化エチレン導入後、130℃で1.0時間熟成反応を行ってから、反応系を常温に戻すことにより重合生成物を得た。得られた重合生成物からトルエンを除去し、脂肪族ポリエステル(以下、脂肪族ポリエステル(3)と称すことがある。)を得た。
−実施例6(ポリエステルの製造)−
無水コハク酸(1)の代わりに、無水コハク酸(2)を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行い、脂肪族ポリエステル(以下、脂肪族ポリエステル(4)と称すことがある。)を得た。
−比較例11〜15(比較ポリエステルの製造)−
無水コハク酸(1)の代わりに、比較無水コハク酸(1)〜(5)を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行い、比較例11〜15の脂肪族ポリエステル(以下、比較脂肪族ポリエステル(6)〜(10)と称すことがある。)を得た。
−実施例7(ポリエステルの製造)−
温度計、攪拌装置、窒素導入管およびヴィグリュー分留管(vigreux、column)を備えた三つ口フラスコ(反応容器)に、無水コハク酸(1)120.08部と、1,4−ブタンジオール94.20部とを仕込んだ後、この三つ口フラスコをオイルバスに浸した。次に、内容物を攪拌しながら、窒素気流下で185℃になるまで徐々に加熱した。次いで、フラスコ内の温度を185℃、減圧度を100kPa〜常圧に維持するとともに、生成する水と過剰の1,4−ブタンジオールとを留去しながら35時間、重縮合を行った。その後、反応系を常温になるまで冷却した。これにより脂肪族ポリエステル(以下、脂肪族ポリエステル(5)と称すことがある。)を得た。
−実施例8(ポリエステルの製造)−
無水コハク酸(1)の代わりに、無水コハク酸(2)を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行い、脂肪族ポリエステル(以下、脂肪族ポリエステル(6)と称すことがある。)を得た。
−比較例16〜20(比較ポリエステルの製造)−
無水コハク酸(1)の代わりに、比較無水コハク酸(1)〜(5)を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行い、比較例16〜20の脂肪族ポリエステル(以下、比較脂肪族ポリエステル(11)〜(15)と称すことがある。)を得た。
上記のようにして得られた脂肪族ポリエステル(1)〜(6)および、比較脂肪族ポリエステル(1)〜(15)について、それぞれを窒素雰囲気下130℃で溶融後、厚さ5mmの板状に固化させ、ニッパーで切断して3mm角のペレットを得た。このペレットを測定用ガラス製セルに厚さ30mmになるように敷き詰め、黄色度(YI)を色差計(日本電色工業社製、製品名:SE−2000)を用いて測定した。その結果を表2に示した。
また、上記のようにして得られた脂肪族ポリエステル(1)〜(6)および、比較脂肪族ポリエステル(1)〜(15)について、GPC装置(東ソー社製、製品名:HLC−8020)を用い、下記分析条件にて、ポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。その結果を表2に示した。
<分析条件>
カラム:Shodex K−802,K−803,K−804,K−805
(昭和電工社製)
溶離液:クロロホルム
流量:1ml/分
検出器:Shodex RI
カラム温度:40℃
サンプル濃度、量:1重量%、100μl
【表2】
Figure 2003031426
産業上の利用可能性
本発明によれば、溶融状態において着色の少ない無水コハク酸と、そのような無水コハク酸の製造方法と、着色の極めて少ないポリエステルを得ることができるポリエステルの製造方法とを提供することができる。

Claims (3)

  1. 無水マレイン酸を原料として用い、水素添加反応により粗製無水コハク酸を得て、該粗製無水コハク酸を蒸留により精製することによって得られるものであって、ポリエステルの製造原料である無水コハク酸において、
    γ−ブチロラクトンの含有量が800ppm以下、ジラクトンの含有量が500ppm以下である、
    ことを特徴とする無水コハク酸。
  2. 無水マレイン酸を原料として用い、水素添加反応により粗製無水コハク酸を得て、蒸留により前記粗製無水コハク酸を精製する方法において、
    前記水素添加反応を触媒の存在下、温度120〜160℃、水素圧0.1〜2.0MPaで行い、かつ、前記蒸留を、減圧によりボトム温度が125〜200℃の範囲に納まるようにして行う、
    ことを特徴とする無水コハク酸の製造方法。
  3. 酸成分とアルコール成分とを反応させてポリエステルを製造する方法において、前記酸成分として請求項1に記載の無水コハク酸を用いる、ことを特徴とするポリエステルの製造方法。
JP2003534409A 2001-10-09 2002-10-08 無水コハク酸、その製造方法およびその用途 Pending JPWO2003031426A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001311939 2001-10-09
JP2001311939 2001-10-09
PCT/JP2002/010426 WO2003031426A1 (fr) 2001-10-09 2002-10-08 Anhydride succinique, preparation et utilisation de celui-ci

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2003031426A1 true JPWO2003031426A1 (ja) 2005-01-20

Family

ID=19130673

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003534409A Pending JPWO2003031426A1 (ja) 2001-10-09 2002-10-08 無水コハク酸、その製造方法およびその用途

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20040249171A1 (ja)
EP (1) EP1435354A4 (ja)
JP (1) JPWO2003031426A1 (ja)
WO (1) WO2003031426A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105833863A (zh) * 2015-01-13 2016-08-10 广东工业大学 一种顺酐低温加氢制丁二酸酐的催化剂及其制备方法和应用
CN113045519B (zh) * 2021-03-09 2023-05-16 上海师范大学 一种能够同时满足顺酐和丁二酸酐生产的溶剂及其应用
CN112661625B (zh) * 2021-03-16 2021-06-22 中化学科学技术研究有限公司 一种丁二酸的制备工艺
CN113307784B (zh) * 2021-06-23 2023-08-01 吉林省长源药业有限公司 一种丁二酸酐的精制方法
CN113999374A (zh) * 2021-11-09 2022-02-01 青岛科技大学 一种聚丁二酸丁二醇酯的制备方法
CN114316225B (zh) * 2022-01-11 2024-02-02 万华化学集团股份有限公司 一种聚酯多元醇及其制备方法和应用

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US2198153A (en) * 1936-03-13 1940-04-23 Nat Aniline & Chem Co Inc Hydrogenation of maleic anhydride
JPS3811606B1 (ja) * 1960-08-18 1963-07-09
DE1226556B (de) * 1962-06-06 1966-10-13 Basf Ag Verfahren zur Herstellung von gesaettigten Carbonsaeureanhydriden
DE4424069A1 (de) * 1994-07-08 1996-01-11 Bayer Ag Verfahren zur Herstellung von Bernsteinsäureanhydrid
DE19501676A1 (de) * 1995-01-20 1996-07-25 Bayer Ag Verfahren zur Herstellung von Bernsteinsäureanhydrid
JP3228690B2 (ja) * 1997-01-27 2001-11-12 株式会社日本触媒 高分子量ポリエステル及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
EP1435354A1 (en) 2004-07-07
US20040249171A1 (en) 2004-12-09
WO2003031426A1 (fr) 2003-04-17
EP1435354A4 (en) 2005-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5107908B2 (ja) 脂肪族ポリエステルアミド組成物およびその製法
JP5453289B2 (ja) ε−カプロラクトンの製造方法
KR20100110830A (ko) ε-카프로락톤의 제조 방법
JP2011503021A5 (ja)
CN111978521A (zh) 一种共聚酯及其制备方法和应用
CN1449419A (zh) 聚酯前体纯化方法
JPWO2003031426A1 (ja) 無水コハク酸、その製造方法およびその用途
EP1975146B1 (en) Process for production of 1,6-hexanediol
CN111057224B (zh) 高分子量高顺式含量聚马来酸二元醇酯及其制备方法
JPH11236342A (ja) 脂肪族ジオールの製造プロセス
JP2023508205A (ja) 1,4-シクロヘキサンジメタノールの製造方法
EP2467414B1 (de) Verfahren zur herstellung von polyesteralkoholen
JP4182305B2 (ja) 水素化ビスフェノールa異性体組成物
TWI309244B (en) Method for the manufacture of polyesters
CN116589666A (zh) 一种聚酯多元醇及其制备方法和应用
JP3933747B2 (ja) 環状エーテルの重合方法
EP4289808A1 (en) 1,4-cyclohexanedimethanol composition and purification method therefor
JPH029873A (ja) ガンマーブチロラクトンの製造方法
RU2571082C2 (ru) СПОСОБ ПОЛУЧЕНИЯ ε-КАПРОЛАКТОНА И 1,6-ГЕКСАНДИОЛА
JPH03126719A (ja) ポリエステルポリオール組成物の製造方法
JP3852543B2 (ja) ポリテトラメチレンエーテルグリコールの製造方法
EP1599529B1 (en) Process for the manufacture of polyester via hydrogenation treatment of recycled diol
CN110183627B (zh) 一种尼龙酸聚酯多元醇的制备方法及其产品
JP3578433B2 (ja) ポリエチレンナフタレートの製造方法
JP2000327770A (ja) ポリオキシアルキレングリコール又はそのエステルの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050922

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090421

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090811