JPWO2009048178A1 - 塗工紙の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、水溶性高分子水溶液が塗布された原紙に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工紙を得る塗工工程と、塗工紙を含水率5.5重量%以下にしてカレンダー処理するカレンダー工程と、を有する塗工紙の製造方法である。 また、本発明は、含水率4重量%以下の原紙に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工紙を得る塗工工程と、塗工紙を含水率5.5重量%以下にしてカレンダー処理するカレンダー工程と、を有する塗工紙の製造方法である。
Description
本発明は、塗工紙及びその製造方法に関する。
近年、印刷物のビジュアル化やカラー化が急速に進み、非塗工印刷用紙と比較し、紙表面に平滑な塗工層をインキ受理層とする塗工紙の需要も年々増加している。また、近年の低コスト化指向により、従来の紙厚、印刷品質を維持しながら軽量化する要望が増してきている。塗工紙の印刷品質には塗工層の平滑性が重要となり、一般的にスーパーカレンダーやソフトニップカレンダー等で表面平滑化処理を施している。しかしこの処理は用紙を加圧して表面の平滑性を高めるものであるため同時に密度が増し、紙厚が低下する。このため紙厚を維持しようとすると塗工紙の重量が増加する。
そこで、高い光沢度と平滑性を有した、低密度で紙厚が厚い塗工紙の開発が試みられている。例えば、密度0.30〜1.00g/cm3の紙に有機高分子ゲルの乾燥皮膜層を形成させた後、親水性塗料を塗工する技術(JP−A 2007−107171)、特定のガラス転移点を有し、平均粒子径が100〜200nmのスチレン含有量が30重量%以上の共重合体ラテックスを含有する塗工層を、該塗工層を有する塗工紙の水分率を3〜8重量%に調整して、熱カレンダーにて平坦化処理をする技術(JP−A 2006−188783)、片面当り1.5〜10g/m2の塗工層を設けてなる塗工紙の製造方法において、塗工装置の前で原紙の水分含有量2〜8重量%で特定のロールから構成されるカレンダー装置で平滑化処理をする技術(JP−A 6−146197)等が開示されている。
そこで、高い光沢度と平滑性を有した、低密度で紙厚が厚い塗工紙の開発が試みられている。例えば、密度0.30〜1.00g/cm3の紙に有機高分子ゲルの乾燥皮膜層を形成させた後、親水性塗料を塗工する技術(JP−A 2007−107171)、特定のガラス転移点を有し、平均粒子径が100〜200nmのスチレン含有量が30重量%以上の共重合体ラテックスを含有する塗工層を、該塗工層を有する塗工紙の水分率を3〜8重量%に調整して、熱カレンダーにて平坦化処理をする技術(JP−A 2006−188783)、片面当り1.5〜10g/m2の塗工層を設けてなる塗工紙の製造方法において、塗工装置の前で原紙の水分含有量2〜8重量%で特定のロールから構成されるカレンダー装置で平滑化処理をする技術(JP−A 6−146197)等が開示されている。
本発明Iは、原紙に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工紙を得る塗工工程と、塗工紙をカレンダー処理するカレンダー工程と、を有する塗工紙の製造方法であって、
前記原紙が、水溶性高分子水溶液を塗布したものであり、
前記カレンダー工程が、含水率5.5重量%以下の塗工紙をカレンダー処理する工程である、塗工紙の製造方法に関する。
さらに本発明IIは、原紙に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工紙を得る塗工工程と、塗工紙をカレンダー処理するカレンダー工程と、を有する塗工紙の製造方法であって、
前記塗工工程が、含水率4重量%以下の原紙に塗工液を塗工する工程であり、前記カレンダー工程が、含水率5.5重量%以下の塗工紙をカレンダー処理する工程である、塗工紙の製造方法である。
さらに、本発明は、上記の製造方法により得られた密度が1.2g/cm3以下である塗工紙である。
発明の詳細な説明
JP−A 2007−107171では多価金属イオンを含有させた紙と特定の水溶性高分子溶液処理が必要であり、JP−A 2006−188783では特定の塗工液に限定される。また、JP−A 6−146197では、塗工前に特定のロールによる平滑化処理の工程が必要である。
本発明は、カレンダー処理しても、密度上昇を抑制し(以下、カレンダー耐性に優れるともいう)かつ所望の光沢度が得られる塗工紙の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、光沢度と低密度を両立した塗工紙を提供する。
本発明により、光沢度と低密度を両立した塗工紙及びその製造方法を提供することができる。
以下に本発明Iと本発明IIを詳細に説明する。
塗工紙は、例えば、パルプ原料の希薄液が金網上で紙層を形成された後、プレス工程、乾燥工程、サイズ工程、乾燥工程、塗工工程、乾燥工程及びカレンダー工程を経て、要すればさらに調湿工程を経て製造される。製造される。本発明では、これらの工程の中で、塗工工程に用いる原紙及びカレンダー工程に特徴を有する。ここで、本発明では、塗工工程の前の紙を原紙、塗工工程後のものを塗工紙という。
[本発明Iの塗工工程]
本発明に係る塗工工程は、原紙に塗工液を塗工して塗工紙を得る工程である。塗工液の塗工は原紙の片面及び両面のいずれであってもよい。
本発明では、塗工工程で用いる原紙として、光沢の観点から、表面に水溶性高分子水溶液を塗布したものを用いる。水溶性高分子水溶液は、いわゆる製紙用の外添薬剤として捉えることができ、この点で前記の繊維結合阻害剤とは異なるものである。原紙は、水溶性高分子水溶液を片面及び両面のいずれに塗布したものであってもよい。表面に水溶性高分子水溶液を塗布された原紙を用いると、塗工液を塗工した際に顔料の原紙中への浸透が抑制され、塗工層の厚さが増加し、カレンダー処理で塗工層の表面がより平坦化されるため、得られる塗工紙の光沢が向上するものと推定される。水溶性高分子としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース化合物;澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチル澱粉、ジアルデヒド澱粉、リン酸エステル変性澱粉、ヒドロキシアルキル変性澱粉等の澱粉類;ショ糖、乳糖等の糖類;にかわ、ゼラチン、カゼイン、寒天等の上記以外の天然高分子類;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ポリ(メタ)アクリル酸アルカリ塩、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合物のアルカリ塩、アクリル酸/マレイン酸共重合物のアルカリ塩等の(メタ)アクリル系重合体;ポリアクリルアミド重合体、変性ポリアクリルアミド、スチレン・マレイン酸系重合体、水溶性ポリエステル、ポリエチレンオキシド及びポリビニルピロリドン等の上記以外の合成高分子;さらに、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノ基を有するスチレン、ビニルピリジン、N−ビニル複素環化合物、アミノ基を有する単量体の酸中和物あるいは4級アンモニウム塩、ジアリル型4級アンモニウム塩等のカチオン性基含有ビニル単量体と、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)置換(メタ)アクリルアミド等の親水性ノニオン性基含有ビニル単量体と、から選ばれる少なくとも一種以上を含む単量体を重合して得られるビニル共重合体が挙げられる。前記ビニル単量体は、単独または2種以上を混合して用いることができる。前記ビニル共重合体としては、カチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体がより好ましく、カチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを主成分とする単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体がさらに好ましい。また、少なくとも2個のビニル基等を分子中に有する架橋性ビニル単量体を構成成分として前記ビニル共重合体中に含むビニル共重合体も挙げられる。カチオン性基含有共重合体は、構成単量体中、前記親水性ノニオン性基含有ビニル単量体と前記カチオン性基含有ビニル単量体の合計が80〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは90〜99.9モル%である。これらの中でも澱粉類、セルロース化合物、ポリビニルアルコール類及びカチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを主成分とする単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。水溶性高分子水溶液中の水溶性高分子の濃度は0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜5重量%がさらに好ましい。水溶性高分子水溶液は、塗工紙の軽量化の観点から、塗工液と異なることが好ましい。
水溶性高分子水溶液の粘度(25℃)は、塗布のしやすさの観点から1〜5000mPa・sが好ましく、1〜3000mPa・sがより好ましい。
水溶性高分子水溶液の塗布は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられる。
水溶性高分子水溶液の塗布量は特に限定されないが、軽量化の観点から、片面当り、固形分換算で0.01〜15g/m2となる量が好ましく、0.1〜10g/m2となる量がより好ましく、0.1〜5.0g/m2となる量がさらに好ましく、0.1〜1.0g/m2となる量がさらにより好ましい。
[本発明IIの塗工工程]
本発明に係る塗工工程は、含水率4重量%以下の原紙に塗工液を塗工して塗工紙を得る工程である。塗工液の塗工は原紙の片面及び両面のいずれであってもよい。なお、塗工液の塗工を原紙の両面に行う場合など、塗工を2回以上行う場合は、当該原紙の含水率は、少なくとも1回は4重量%以下として行い、好ましくは全て4重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下として行う。
本発明では、得られる塗工紙の光沢を上げることができる。この理由として、塗工工程で用いられる原紙中の含水率を低く調整することで塗工した際に塗工液中の水分が急速に原紙中に浸透することにより原紙表面で塗工液の固形分が急激に増大する。その結果、塗工顔料が原紙中に浸透することなく原紙表面に滞留するため、原紙表面の塗工層の厚さが保たれ、カレンダー処理で塗工層表面がより平坦化され、カレンダー工程を経た塗工紙の光沢が向上するものと推定される。
原紙の含水率を調整する方法としては、例えば、塗工工程前の乾燥工程の条件を調整する方法が挙げられる。該乾燥工程での乾燥方法は特に限定されるものではなく、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等を用いることができる。また、原紙の含水率を、より乾燥した状態から水分量を増加することで調整する方法、例えば含水率を0重量%にしてから水分量を増加させて所望の含水率とする方法も用いることができる。
また、原紙の含水率は、例えば、BM計(Basis weight/Moisture(坪量・水分)計)を用いた測定や、原紙を絶乾し重量減を測定することより知ることができる。
さらに、本発明IIでは、塗工工程で用いる原紙として、塗工紙の光沢向上の観点から、表面に水溶性高分子水溶液を塗布したものを用いることが好ましい。水溶性高分子水溶液については上記のようであることが好ましい。
[本発明Iと本発明IIの塗工工程]
本発明Iの水溶性高分子水溶液を塗布する原紙または本発明IIの含水率4重量%以下の原紙としては、通常の塗工紙の原紙を用いることができる。原紙を得るための抄紙方法は、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式、及び傾斜ワイヤー式抄紙機等の一般的な抄紙機を用いることができる。特に紙の表裏差を少なくする観点からツインワイヤー式が好ましい。
原紙に用いるパルプとしては、植物性繊維である木材や草木の繊維を原料とするいずれのパルプも使用できる。すなわち、晒化学パルプ(NBKP、LBKP等)や機械パルプ(TMP、CTMP、GP、RGP等及びその漂白処理をしたパルプ)、高収率パルプ(SCP、CGP等及びその漂白処理をしたパルプ)並びに、古紙パルプ及び脱墨古紙パルプ(DIP)及びその漂白処理をしたパルプ(BDIP)等の回収パルプを使用することができる。塗工紙の光沢の点から、使用するパルプ中、化学パルプを50重量%以上含有することが好ましい。
なお、抄紙時には必要に応じて、一般に用いられるサイズ剤、填料、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤等を添加してもよい。サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等が挙げられる。填料として炭酸カルシウム等が挙げられる。
さらに、低密度の観点から、原紙が、パルプスラリーに繊維結合阻害剤を添加後、抄紙して得られたものであることが好ましい。
繊維結合阻害剤を添加することにより、得られる塗工紙の密度上昇を抑制しつつ、しなやかな手触り感を塗工紙に付与することができる。この理由として、カレンダー工程で用いられる塗工紙は繊維結合阻害剤を含有するためパルプ間隔が増大する傾向にあり、更に当該カレンダー処理前の塗工紙中の含水率を低く調整することで、該塗工紙中のパルプ繊維中の水素結合性の部位同士が水を介さず直接水素結合する様になり、パルプ繊維全体が硬くなると推定される。そして、パルプ繊維全体が硬くなった塗工紙はカレンダー処理の圧力によってつぶれにくくなり、密度上昇が抑制される。一方で、表面の塗工層はカレンダー処理によって平滑化される。また、繊維結合阻害剤がパルプ表面に存在することにより、パルプ間の摩擦が低減され、パルプ繊維がつぶれないことにより、しなやかな手触りが付与されていると推定される。このような機構により低密度としなやかな手触り感が両立できると推定される。
繊維結合阻害剤は、パルプ繊維間結合を阻害する作用を有する化合物である。繊維結合阻害剤としては、疎水基と親水基を持つ界面活性剤として用いられる化合物が挙げられ、例えば、紙用嵩高剤を用いることができる。紙用嵩高剤は親水基がパルプ表面に吸着し、疎水基によりパルプ繊維間の結合が阻害されると推定される。そして、紙用嵩高剤を添加しない場合より原紙中の空隙が大きく保たれるため、低密度になると考えられる。繊維結合阻害剤は、いわゆる製紙用の内添薬剤として捉えることができ、そのパルプスラリーへの添加は、水に乳化又は分散させたものを用いることができる。化合物としては、多価アルコールと脂肪酸のエステルである脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステルのポリオキシアルキレン付加物、高級脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン付加物、多価脂肪酸とアルコールのエステルである多価脂肪酸アルコールエステル、多価脂肪酸アルコールエステルのポリオキシアルキレン付加物、ポリアミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸又はヒドロキシルカルボン酸とのエステル化合物の該ヒドロキシル基にアニオン基を導入してなる化合物、直鎖状脂肪酸アミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、高級アルコールのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、等のエステル系化合物及びその誘導体;脂肪酸モノアミド、脂肪酸アミドアミンのポリオキシアルキレン付加物、脂肪酸ポリアミドアミン、脂肪酸ジアミドアミン、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・尿素縮合物、多価脂肪酸とポリアミンとのアミド化合物、多価脂肪酸と直鎖状アミンとのアミド化合物、等のアミド化合物及びその誘導体;脂肪酸アミドアミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、等の分子内にアミド結合とエステル結合を有する化合物;高級アルコールまたは高級脂肪酸のポリオキシアルキレン付加物、多価アルコール型非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、油脂系非イオン界面活性剤、等の上記以外のポリオキシアルキレン付加物及びその誘導体;その他の化合物として、高級アルコール、スルホコハク酸誘導体、界面活性能を有する部位を含む構成単位とアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの1種以上に由来する構成単位とを有する重合体、等を使用することができる。これらの中でも塗工紙の密度の低下の観点から、エステル系化合物及びその誘導体、アミド化合物及びその誘導体、前記以外のポリオキシアルキレン付加物及びその誘導体を使用することが好ましく、中でも、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ジアミドアミン、脂肪酸ポリアミドアミン、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・尿素縮合物、高級アルコールのポリオキシアルキレン付加物、等を使用することがより好ましい。
繊維結合阻害剤はパルプ100重量部に対して0.01〜10重量部、更に0.1〜5重量部、特に0.1〜1.5重量部の割合で用いられることが好ましい。なお、繊維結合阻害剤を使用する場合は、ポリアクリルアミド重合物、カチオン化澱粉、硫酸バンド等の繊維結合阻害剤のパルプへの定着を促進する定着促進剤を併用することが好ましい。
本発明においては、塗工紙の光沢向上の観点から、原紙にカレンダー処理を行うことができる。カレンダー処理としては、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用いることができ、これらを併用してもよい。
塗工液は、少なくとも顔料と接着剤を含有するものであり、顔料としては、カオリン、沈降性炭酸カルシウム、微粉砕した重質炭酸カルシウム、ろう石クレー、二酸化チタン、サチンホワイト、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等の無機顔料や、プラスチックピグメント等の有機顔料を用いることができる。これらの中でも、経済性の観点から無機顔料が好ましい。
また、塗工液には接着剤(バインダー)として、カゼイン、澱粉誘導体、繊維素誘導体等の高分子の水溶液やSBR(スチレンブタジエンラバー)、MBR(メチルメタクリレートブタジエンラバー)等の合成ラテックスエマルジョン等が例示される。顔料と接着剤の比率は、顔料の種類や用途によって調整可能であるが、顔料100重量部に対して接着剤を10〜50重量部配合するのが好ましい。塗工液には、顔料、接着剤以外にも染料、消泡剤、潤滑剤、分散剤、粘度調整剤、pHコントロール剤などの塗料用添加剤を併用することができる。塗工液の固形分濃度は、30重量%以上が好ましく、エアナイフコーターの場合40重量%前後、ブレードコーターの場合50〜70重量%が好ましい。塗工層の厚さは特に限定されず、塗工紙の用途、品質等により設定されるが、光沢の高い紙を得る観点から、塗工液の塗工量(固形分換算)は、片面あたり、11g/m2以上が好ましく、11〜25g/m2がより好ましく、さらに好ましくは12〜20g/m2である。一般に、塗工液の塗工量を多くすると塗工紙の重量は増加するため軽量化しにくくなるが、本発明では、カレンダー処理後の塗工紙の密度増加を抑制できるため、塗工液の塗工量が多くても軽量な塗工紙を得ることができる。
原紙への塗工液の塗工は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられる。
[カレンダー工程]
本発明に係るカレンダー工程は、塗工工程で得られた、カレンダー処理前の塗工紙を含水率5.5重量%以下にしてカレンダー処理する工程である。なお、カレンダー処理を複数回行う場合、それぞれのカレンダー前の含水率は、少なくとも1回5.5重量%以下として行う。好ましくは全てのカレンダー処理を5.5重量%以下で行う。
より高い光沢の塗工紙を得る観点から、カレンダー処理前の塗工紙(ぞれぞれのカレンダー処理前の塗工紙)の含水率は、1〜5.5重量%が好ましく、2〜5重量%がより好ましく、3〜4重量%が更に好ましい。より低密度の塗工紙を得る観点から、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は、0〜4重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜2重量%が更に好ましい。高い光沢と低密度を両立する観点から、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は、1〜4重量%が好ましく、2〜3重量%がより好ましい。
本発明では、得られる塗工紙の密度上昇を抑制しつつ光沢を上げることができる。この理由として、カレンダー工程で用いられる塗工紙中の含水率を通常より低く調整することで、該塗工紙中のパルプ繊維中の水素結合性の部位同士が水を介さず直接水素結合する様になり、パルプ繊維全体が硬くなると推定される。そして、パルプ繊維全体が硬くなった塗工紙はカレンダー処理の圧力によってつぶれにくくなり、パルプ層の密度上昇が抑制される。一方で、カレンダー処理で塗工層の表面がより平坦化されるため、カレンダー工程を経た塗工紙の光沢が向上するものと推定される。そして、本発明では、前述した様に水溶性高分子水溶液を塗布された原紙を用いて塗工液を塗布した際に顔料の原紙中への浸透が抑えられる効果と、カレンダー工程のパルプ層の密度上昇抑制と塗工層の平滑化の効果により、低密度と光沢が両立できると推定される。
カレンダー処理前の塗工紙の含水率の調整方法は、例えば、カレンダー工程前の乾燥工程の条件(温度、湿度、風量、時間等)を調整する方法が挙げられる。乾燥方法としては、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等が挙げられる。一般的な製紙工程では、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は6〜7重量%程度である。
また、塗工紙の含水率は、BM計(Basis weight/Moisture(坪量・水分)計)を用いた測定や、未塗工紙を絶乾し重量減を測定することより知ることができる。
カレンダー処理においては、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、マシンカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用いることができ、これらを併用してもよい。カレンダーの表面温度は特に限定はないが、50℃以上で行うことが好ましい。光沢の高い塗工紙を得る観点からスーパーカレンダー装置、ソフトカレンダー装置を用いることが好ましい。
本発明に係るカレンダー処理前の塗工紙はカレンダーで圧縮されにくいので、カレンダー圧(実施例記載の方法により測定した紙にかかる圧力)を9〜80MPa、さらには9〜50MPaとすることができる。塗工紙の光沢と低密度化の観点から、カレンダー圧は、25〜80MPa、さらには25〜50MPaが好ましい。また、カレンダー処理回数は、光沢を高める観点から2回以上が好ましい。
[調湿工程]
本発明の製造方法では、さらに、カレンダー工程の後に、塗工紙の含水率を上げる調湿工程を有することが好ましい。調湿工程を経ることで、カレンダー工程により増加した密度が低下し、より低密度な塗工紙が得られる。これは、カレンダー工程により圧縮された塗工紙が、再び水を介したパルプ間の水素結合により膨潤するためと推定される。含水率はカレンダー処理前の塗工紙の含水率よりも重量%単位で0.1〜9ポイント上げることが好ましく、1〜7ポイント上げることがより好ましく、2.5〜6ポイント上げることが更に好ましい。すなわち、(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+0.1)〜(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+9)(重量%)とすることが好ましく、(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+1)〜(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+7)(重量%)とすることがより好ましく、(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+2.5)〜(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+6)(重量%)とすることが更に好ましい。
調湿装置としては、水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置等を前記カレンダーとともに配置することができ、適宜組み合わせて使用することもできる。
[塗工紙]
本発明I及びIIの塗工紙は、上記のような本発明の製造方法により得られたものであり、好ましくは密度が1.2g/cm3以下、更には1.18g/cm3以下、更には1.15g/cm3以下のものであり、1.1〜0.5g/cm3のものがより好ましく、1.0〜0.6g/cm3のものが更に好ましい。
本発明の塗工紙は、各種の紙に適用できる。例えば、書籍用紙や雑誌などに用いられる塗工紙、カタログ、ポスターに用いられる塗工紙といった印刷用塗工紙、あるいは、電子写真用転写紙、インクジェット用紙、感熱紙に用いられる情報用紙、あるいは包装用紙など、を挙げることができる。
さらに具体的には、例えばキャストコート紙、A0アート紙、A1アート紙、A2コート紙、A3コート紙、軽量コート紙、中質コート紙などに好適である。
前記原紙が、水溶性高分子水溶液を塗布したものであり、
前記カレンダー工程が、含水率5.5重量%以下の塗工紙をカレンダー処理する工程である、塗工紙の製造方法に関する。
さらに本発明IIは、原紙に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工紙を得る塗工工程と、塗工紙をカレンダー処理するカレンダー工程と、を有する塗工紙の製造方法であって、
前記塗工工程が、含水率4重量%以下の原紙に塗工液を塗工する工程であり、前記カレンダー工程が、含水率5.5重量%以下の塗工紙をカレンダー処理する工程である、塗工紙の製造方法である。
さらに、本発明は、上記の製造方法により得られた密度が1.2g/cm3以下である塗工紙である。
発明の詳細な説明
JP−A 2007−107171では多価金属イオンを含有させた紙と特定の水溶性高分子溶液処理が必要であり、JP−A 2006−188783では特定の塗工液に限定される。また、JP−A 6−146197では、塗工前に特定のロールによる平滑化処理の工程が必要である。
本発明は、カレンダー処理しても、密度上昇を抑制し(以下、カレンダー耐性に優れるともいう)かつ所望の光沢度が得られる塗工紙の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、光沢度と低密度を両立した塗工紙を提供する。
本発明により、光沢度と低密度を両立した塗工紙及びその製造方法を提供することができる。
以下に本発明Iと本発明IIを詳細に説明する。
塗工紙は、例えば、パルプ原料の希薄液が金網上で紙層を形成された後、プレス工程、乾燥工程、サイズ工程、乾燥工程、塗工工程、乾燥工程及びカレンダー工程を経て、要すればさらに調湿工程を経て製造される。製造される。本発明では、これらの工程の中で、塗工工程に用いる原紙及びカレンダー工程に特徴を有する。ここで、本発明では、塗工工程の前の紙を原紙、塗工工程後のものを塗工紙という。
[本発明Iの塗工工程]
本発明に係る塗工工程は、原紙に塗工液を塗工して塗工紙を得る工程である。塗工液の塗工は原紙の片面及び両面のいずれであってもよい。
本発明では、塗工工程で用いる原紙として、光沢の観点から、表面に水溶性高分子水溶液を塗布したものを用いる。水溶性高分子水溶液は、いわゆる製紙用の外添薬剤として捉えることができ、この点で前記の繊維結合阻害剤とは異なるものである。原紙は、水溶性高分子水溶液を片面及び両面のいずれに塗布したものであってもよい。表面に水溶性高分子水溶液を塗布された原紙を用いると、塗工液を塗工した際に顔料の原紙中への浸透が抑制され、塗工層の厚さが増加し、カレンダー処理で塗工層の表面がより平坦化されるため、得られる塗工紙の光沢が向上するものと推定される。水溶性高分子としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース化合物;澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチル澱粉、ジアルデヒド澱粉、リン酸エステル変性澱粉、ヒドロキシアルキル変性澱粉等の澱粉類;ショ糖、乳糖等の糖類;にかわ、ゼラチン、カゼイン、寒天等の上記以外の天然高分子類;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ポリ(メタ)アクリル酸アルカリ塩、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合物のアルカリ塩、アクリル酸/マレイン酸共重合物のアルカリ塩等の(メタ)アクリル系重合体;ポリアクリルアミド重合体、変性ポリアクリルアミド、スチレン・マレイン酸系重合体、水溶性ポリエステル、ポリエチレンオキシド及びポリビニルピロリドン等の上記以外の合成高分子;さらに、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノ基を有するスチレン、ビニルピリジン、N−ビニル複素環化合物、アミノ基を有する単量体の酸中和物あるいは4級アンモニウム塩、ジアリル型4級アンモニウム塩等のカチオン性基含有ビニル単量体と、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)置換(メタ)アクリルアミド等の親水性ノニオン性基含有ビニル単量体と、から選ばれる少なくとも一種以上を含む単量体を重合して得られるビニル共重合体が挙げられる。前記ビニル単量体は、単独または2種以上を混合して用いることができる。前記ビニル共重合体としては、カチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体がより好ましく、カチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを主成分とする単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体がさらに好ましい。また、少なくとも2個のビニル基等を分子中に有する架橋性ビニル単量体を構成成分として前記ビニル共重合体中に含むビニル共重合体も挙げられる。カチオン性基含有共重合体は、構成単量体中、前記親水性ノニオン性基含有ビニル単量体と前記カチオン性基含有ビニル単量体の合計が80〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは90〜99.9モル%である。これらの中でも澱粉類、セルロース化合物、ポリビニルアルコール類及びカチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを主成分とする単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。水溶性高分子水溶液中の水溶性高分子の濃度は0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜5重量%がさらに好ましい。水溶性高分子水溶液は、塗工紙の軽量化の観点から、塗工液と異なることが好ましい。
水溶性高分子水溶液の粘度(25℃)は、塗布のしやすさの観点から1〜5000mPa・sが好ましく、1〜3000mPa・sがより好ましい。
水溶性高分子水溶液の塗布は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられる。
水溶性高分子水溶液の塗布量は特に限定されないが、軽量化の観点から、片面当り、固形分換算で0.01〜15g/m2となる量が好ましく、0.1〜10g/m2となる量がより好ましく、0.1〜5.0g/m2となる量がさらに好ましく、0.1〜1.0g/m2となる量がさらにより好ましい。
[本発明IIの塗工工程]
本発明に係る塗工工程は、含水率4重量%以下の原紙に塗工液を塗工して塗工紙を得る工程である。塗工液の塗工は原紙の片面及び両面のいずれであってもよい。なお、塗工液の塗工を原紙の両面に行う場合など、塗工を2回以上行う場合は、当該原紙の含水率は、少なくとも1回は4重量%以下として行い、好ましくは全て4重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下として行う。
本発明では、得られる塗工紙の光沢を上げることができる。この理由として、塗工工程で用いられる原紙中の含水率を低く調整することで塗工した際に塗工液中の水分が急速に原紙中に浸透することにより原紙表面で塗工液の固形分が急激に増大する。その結果、塗工顔料が原紙中に浸透することなく原紙表面に滞留するため、原紙表面の塗工層の厚さが保たれ、カレンダー処理で塗工層表面がより平坦化され、カレンダー工程を経た塗工紙の光沢が向上するものと推定される。
原紙の含水率を調整する方法としては、例えば、塗工工程前の乾燥工程の条件を調整する方法が挙げられる。該乾燥工程での乾燥方法は特に限定されるものではなく、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等を用いることができる。また、原紙の含水率を、より乾燥した状態から水分量を増加することで調整する方法、例えば含水率を0重量%にしてから水分量を増加させて所望の含水率とする方法も用いることができる。
また、原紙の含水率は、例えば、BM計(Basis weight/Moisture(坪量・水分)計)を用いた測定や、原紙を絶乾し重量減を測定することより知ることができる。
さらに、本発明IIでは、塗工工程で用いる原紙として、塗工紙の光沢向上の観点から、表面に水溶性高分子水溶液を塗布したものを用いることが好ましい。水溶性高分子水溶液については上記のようであることが好ましい。
[本発明Iと本発明IIの塗工工程]
本発明Iの水溶性高分子水溶液を塗布する原紙または本発明IIの含水率4重量%以下の原紙としては、通常の塗工紙の原紙を用いることができる。原紙を得るための抄紙方法は、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式、及び傾斜ワイヤー式抄紙機等の一般的な抄紙機を用いることができる。特に紙の表裏差を少なくする観点からツインワイヤー式が好ましい。
原紙に用いるパルプとしては、植物性繊維である木材や草木の繊維を原料とするいずれのパルプも使用できる。すなわち、晒化学パルプ(NBKP、LBKP等)や機械パルプ(TMP、CTMP、GP、RGP等及びその漂白処理をしたパルプ)、高収率パルプ(SCP、CGP等及びその漂白処理をしたパルプ)並びに、古紙パルプ及び脱墨古紙パルプ(DIP)及びその漂白処理をしたパルプ(BDIP)等の回収パルプを使用することができる。塗工紙の光沢の点から、使用するパルプ中、化学パルプを50重量%以上含有することが好ましい。
なお、抄紙時には必要に応じて、一般に用いられるサイズ剤、填料、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤等を添加してもよい。サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等が挙げられる。填料として炭酸カルシウム等が挙げられる。
さらに、低密度の観点から、原紙が、パルプスラリーに繊維結合阻害剤を添加後、抄紙して得られたものであることが好ましい。
繊維結合阻害剤を添加することにより、得られる塗工紙の密度上昇を抑制しつつ、しなやかな手触り感を塗工紙に付与することができる。この理由として、カレンダー工程で用いられる塗工紙は繊維結合阻害剤を含有するためパルプ間隔が増大する傾向にあり、更に当該カレンダー処理前の塗工紙中の含水率を低く調整することで、該塗工紙中のパルプ繊維中の水素結合性の部位同士が水を介さず直接水素結合する様になり、パルプ繊維全体が硬くなると推定される。そして、パルプ繊維全体が硬くなった塗工紙はカレンダー処理の圧力によってつぶれにくくなり、密度上昇が抑制される。一方で、表面の塗工層はカレンダー処理によって平滑化される。また、繊維結合阻害剤がパルプ表面に存在することにより、パルプ間の摩擦が低減され、パルプ繊維がつぶれないことにより、しなやかな手触りが付与されていると推定される。このような機構により低密度としなやかな手触り感が両立できると推定される。
繊維結合阻害剤は、パルプ繊維間結合を阻害する作用を有する化合物である。繊維結合阻害剤としては、疎水基と親水基を持つ界面活性剤として用いられる化合物が挙げられ、例えば、紙用嵩高剤を用いることができる。紙用嵩高剤は親水基がパルプ表面に吸着し、疎水基によりパルプ繊維間の結合が阻害されると推定される。そして、紙用嵩高剤を添加しない場合より原紙中の空隙が大きく保たれるため、低密度になると考えられる。繊維結合阻害剤は、いわゆる製紙用の内添薬剤として捉えることができ、そのパルプスラリーへの添加は、水に乳化又は分散させたものを用いることができる。化合物としては、多価アルコールと脂肪酸のエステルである脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステルのポリオキシアルキレン付加物、高級脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン付加物、多価脂肪酸とアルコールのエステルである多価脂肪酸アルコールエステル、多価脂肪酸アルコールエステルのポリオキシアルキレン付加物、ポリアミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸又はヒドロキシルカルボン酸とのエステル化合物の該ヒドロキシル基にアニオン基を導入してなる化合物、直鎖状脂肪酸アミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、高級アルコールのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、等のエステル系化合物及びその誘導体;脂肪酸モノアミド、脂肪酸アミドアミンのポリオキシアルキレン付加物、脂肪酸ポリアミドアミン、脂肪酸ジアミドアミン、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・尿素縮合物、多価脂肪酸とポリアミンとのアミド化合物、多価脂肪酸と直鎖状アミンとのアミド化合物、等のアミド化合物及びその誘導体;脂肪酸アミドアミンのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸のエステル化合物、等の分子内にアミド結合とエステル結合を有する化合物;高級アルコールまたは高級脂肪酸のポリオキシアルキレン付加物、多価アルコール型非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、油脂系非イオン界面活性剤、等の上記以外のポリオキシアルキレン付加物及びその誘導体;その他の化合物として、高級アルコール、スルホコハク酸誘導体、界面活性能を有する部位を含む構成単位とアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの1種以上に由来する構成単位とを有する重合体、等を使用することができる。これらの中でも塗工紙の密度の低下の観点から、エステル系化合物及びその誘導体、アミド化合物及びその誘導体、前記以外のポリオキシアルキレン付加物及びその誘導体を使用することが好ましく、中でも、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ジアミドアミン、脂肪酸ポリアミドアミン、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・尿素縮合物、高級アルコールのポリオキシアルキレン付加物、等を使用することがより好ましい。
繊維結合阻害剤はパルプ100重量部に対して0.01〜10重量部、更に0.1〜5重量部、特に0.1〜1.5重量部の割合で用いられることが好ましい。なお、繊維結合阻害剤を使用する場合は、ポリアクリルアミド重合物、カチオン化澱粉、硫酸バンド等の繊維結合阻害剤のパルプへの定着を促進する定着促進剤を併用することが好ましい。
本発明においては、塗工紙の光沢向上の観点から、原紙にカレンダー処理を行うことができる。カレンダー処理としては、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用いることができ、これらを併用してもよい。
塗工液は、少なくとも顔料と接着剤を含有するものであり、顔料としては、カオリン、沈降性炭酸カルシウム、微粉砕した重質炭酸カルシウム、ろう石クレー、二酸化チタン、サチンホワイト、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等の無機顔料や、プラスチックピグメント等の有機顔料を用いることができる。これらの中でも、経済性の観点から無機顔料が好ましい。
また、塗工液には接着剤(バインダー)として、カゼイン、澱粉誘導体、繊維素誘導体等の高分子の水溶液やSBR(スチレンブタジエンラバー)、MBR(メチルメタクリレートブタジエンラバー)等の合成ラテックスエマルジョン等が例示される。顔料と接着剤の比率は、顔料の種類や用途によって調整可能であるが、顔料100重量部に対して接着剤を10〜50重量部配合するのが好ましい。塗工液には、顔料、接着剤以外にも染料、消泡剤、潤滑剤、分散剤、粘度調整剤、pHコントロール剤などの塗料用添加剤を併用することができる。塗工液の固形分濃度は、30重量%以上が好ましく、エアナイフコーターの場合40重量%前後、ブレードコーターの場合50〜70重量%が好ましい。塗工層の厚さは特に限定されず、塗工紙の用途、品質等により設定されるが、光沢の高い紙を得る観点から、塗工液の塗工量(固形分換算)は、片面あたり、11g/m2以上が好ましく、11〜25g/m2がより好ましく、さらに好ましくは12〜20g/m2である。一般に、塗工液の塗工量を多くすると塗工紙の重量は増加するため軽量化しにくくなるが、本発明では、カレンダー処理後の塗工紙の密度増加を抑制できるため、塗工液の塗工量が多くても軽量な塗工紙を得ることができる。
原紙への塗工液の塗工は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられる。
[カレンダー工程]
本発明に係るカレンダー工程は、塗工工程で得られた、カレンダー処理前の塗工紙を含水率5.5重量%以下にしてカレンダー処理する工程である。なお、カレンダー処理を複数回行う場合、それぞれのカレンダー前の含水率は、少なくとも1回5.5重量%以下として行う。好ましくは全てのカレンダー処理を5.5重量%以下で行う。
より高い光沢の塗工紙を得る観点から、カレンダー処理前の塗工紙(ぞれぞれのカレンダー処理前の塗工紙)の含水率は、1〜5.5重量%が好ましく、2〜5重量%がより好ましく、3〜4重量%が更に好ましい。より低密度の塗工紙を得る観点から、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は、0〜4重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜2重量%が更に好ましい。高い光沢と低密度を両立する観点から、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は、1〜4重量%が好ましく、2〜3重量%がより好ましい。
本発明では、得られる塗工紙の密度上昇を抑制しつつ光沢を上げることができる。この理由として、カレンダー工程で用いられる塗工紙中の含水率を通常より低く調整することで、該塗工紙中のパルプ繊維中の水素結合性の部位同士が水を介さず直接水素結合する様になり、パルプ繊維全体が硬くなると推定される。そして、パルプ繊維全体が硬くなった塗工紙はカレンダー処理の圧力によってつぶれにくくなり、パルプ層の密度上昇が抑制される。一方で、カレンダー処理で塗工層の表面がより平坦化されるため、カレンダー工程を経た塗工紙の光沢が向上するものと推定される。そして、本発明では、前述した様に水溶性高分子水溶液を塗布された原紙を用いて塗工液を塗布した際に顔料の原紙中への浸透が抑えられる効果と、カレンダー工程のパルプ層の密度上昇抑制と塗工層の平滑化の効果により、低密度と光沢が両立できると推定される。
カレンダー処理前の塗工紙の含水率の調整方法は、例えば、カレンダー工程前の乾燥工程の条件(温度、湿度、風量、時間等)を調整する方法が挙げられる。乾燥方法としては、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等が挙げられる。一般的な製紙工程では、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は6〜7重量%程度である。
また、塗工紙の含水率は、BM計(Basis weight/Moisture(坪量・水分)計)を用いた測定や、未塗工紙を絶乾し重量減を測定することより知ることができる。
カレンダー処理においては、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、マシンカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用いることができ、これらを併用してもよい。カレンダーの表面温度は特に限定はないが、50℃以上で行うことが好ましい。光沢の高い塗工紙を得る観点からスーパーカレンダー装置、ソフトカレンダー装置を用いることが好ましい。
本発明に係るカレンダー処理前の塗工紙はカレンダーで圧縮されにくいので、カレンダー圧(実施例記載の方法により測定した紙にかかる圧力)を9〜80MPa、さらには9〜50MPaとすることができる。塗工紙の光沢と低密度化の観点から、カレンダー圧は、25〜80MPa、さらには25〜50MPaが好ましい。また、カレンダー処理回数は、光沢を高める観点から2回以上が好ましい。
[調湿工程]
本発明の製造方法では、さらに、カレンダー工程の後に、塗工紙の含水率を上げる調湿工程を有することが好ましい。調湿工程を経ることで、カレンダー工程により増加した密度が低下し、より低密度な塗工紙が得られる。これは、カレンダー工程により圧縮された塗工紙が、再び水を介したパルプ間の水素結合により膨潤するためと推定される。含水率はカレンダー処理前の塗工紙の含水率よりも重量%単位で0.1〜9ポイント上げることが好ましく、1〜7ポイント上げることがより好ましく、2.5〜6ポイント上げることが更に好ましい。すなわち、(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+0.1)〜(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+9)(重量%)とすることが好ましく、(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+1)〜(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+7)(重量%)とすることがより好ましく、(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+2.5)〜(カレンダー処理前の塗工紙の含水率値+6)(重量%)とすることが更に好ましい。
調湿装置としては、水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置等を前記カレンダーとともに配置することができ、適宜組み合わせて使用することもできる。
[塗工紙]
本発明I及びIIの塗工紙は、上記のような本発明の製造方法により得られたものであり、好ましくは密度が1.2g/cm3以下、更には1.18g/cm3以下、更には1.15g/cm3以下のものであり、1.1〜0.5g/cm3のものがより好ましく、1.0〜0.6g/cm3のものが更に好ましい。
本発明の塗工紙は、各種の紙に適用できる。例えば、書籍用紙や雑誌などに用いられる塗工紙、カタログ、ポスターに用いられる塗工紙といった印刷用塗工紙、あるいは、電子写真用転写紙、インクジェット用紙、感熱紙に用いられる情報用紙、あるいは包装用紙など、を挙げることができる。
さらに具体的には、例えばキャストコート紙、A0アート紙、A1アート紙、A2コート紙、A3コート紙、軽量コート紙、中質コート紙などに好適である。
図1は、発明Iの実施例及び比較例で得られた塗工紙の密度と75度鏡面光沢度の関係を示すグラフである。 図2は、発明IIの実施例及び比較例で得られた塗工紙の密度と75度鏡面光沢度の関係を示すグラフ
次の実施例は本発明の実施について述べる。 実施例は本発明の例示について述べるものであり、 本発明を限定するためではない。
実施例1〜16は発明Iの実施例である。 実施例21〜38は発明IIの実施例である。
<実施例1>
(1)原紙の製造
パルプ原料として、化学パルプLBKP(広葉樹晒パルプ)を用い、25℃で叩解機にて離解、叩解してパルプ濃度2.2重量%のLBKPスラリーとした。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は450mlであった。このLBKPスラリーを、抄紙後のシートの坪量が約80g/m2になるように計り取り、その後パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈し、攪拌後角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。抄紙後の湿潤シートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥してパルプシートを得た。得られたパルプシートを23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿後、原紙の表面粗さを揃える目的で下記条件でパルプシートのカレンダー処理を行い、原紙を得た。調湿後の原紙の含水率は5重量%であった。
<パルプシートのカレンダー処理条件>
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧10kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数2回)した。
(2)水溶性高分子の処理方法
(2−1)<実施例1、2、7、8、11、12、及び比較例4>
バーコーター(No.14)を用いて、カルボキシルメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙ケミカル(株)製、F10LC、表中、CMCと表記)1.0重量%水溶液を塗り拡げ、キャスティング皮膜をガラス板上に形成した。次いで上記で得られた原紙(幅12cm×長さ12cm)をキャスティング皮膜上にのせ、100g/m2のろ紙一枚でカバーし、ロール(直径200mm、幅200mm、線圧230g/cm)を転がし、CMC水溶液の液膜をガラス板上から原紙表面に転写した。次いで鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。これらの一連の操作は間髪を入れずすみやかに操作した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿した。なお、この操作は表面、裏面の両方について行った。
(2−2)<実施例3、4、9、10、13、14、及び比較例5>
CMC水溶液のCMC濃度を2.0重量%にした以外は、前記(2−1)と同様の方法で両面処理を行った。
(2−3)<実施例5、6、15、16及び比較例6>
CMCの代わりに下記の製造方法で得られた水溶性高分子Cの1重量%水溶液を用いた以外は前記(2−1)と同様にして、行った。
*水溶性高分子Cの製造例
1Lビーカーにイオン交換水267.4g、MOEDES(ジメチルアミノエチルメタクリレートとジメチル硫酸の当モル付加物。いずれも試薬、和光純薬(株)製)185.63g、DMAAm(N,N−ジメチルアクリルアミド、試薬、和光純薬(株)製)110.46g、NK−14G(架橋剤、ポリエチレングリコールジメタクリレート、親中村化学(株)製)0.415g、V−50(重合開始剤、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・2塩酸塩、和光純薬(株)社製)0.952gを混合し、モノマー水溶液aとした。
5Lのガラス容器にシクロヘキサン1648g、分散剤としてシュガーエステルS−770(三菱化成(株)製)を1.94g仕込み、60℃で1時間かけ均一に溶解せしめた。溶解後、30℃に冷却し、分散剤溶液bとした。
分散剤溶液bに、前記モノマー水溶液aを加え、ホモミキサー(ROBOMICS、特殊機化工業(株)製)にセットし、9000回転で4分間攪拌し、平均粒子径5μmのモノマー分散液を得た。全量を5Lの攪拌機と温度計、冷却管の付いたSUS槽に仕込み、窒素置換後、昇温し、55℃で1時間重合した。さらに70℃で1時間熟成した後、冷却管付きの脱水管を装着し、系内から水269gを除去した。脱水が進むにつれ、槽内温度は70℃から90℃に上昇した。
ついで40℃以下に冷却し、内容物をステンレス製トレーに移し、80℃、熱風乾燥させた。その後、家庭用コーヒーミルで約1秒間、軽く粉砕し平均粒子径4.0μmの水溶性高分子Cを得た。
(3)塗工紙の製造(塗工工程、カレンダー工程及び調湿工程)
前記水溶性高分子水溶液を塗布した原紙(パルプシート)の第1面に、重質炭酸カルシウムを50部、微粒カオリンを50部、分散剤(ポイズ535M:花王製)0.075部、水酸化ナトリウムを0.02部、ラテックスを11部、澱粉を3部に水を加えて固形分濃度65重量%に調整した塗工液を、ラボブレードコーター(熊谷理機工業製、速度25m/min)で片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させた。次いで、前記片面塗工紙の未だ塗工されていない第2面(第1面の反対面で、未塗工面)に前記塗工液を前記ラボブレードコーターで片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させ、塗工紙を得た。
次いで、得られた塗工紙を、乾燥させて含水率を2重量%にして、第1面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行った。次いで、前記塗工紙を、乾燥させて含水率を2重量%にして第2面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行い、23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿して紙中の含水率5重量%の塗工紙を得た。
<塗工紙のカレンダー処理条件>
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧200kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数1回)した。カレンダー装置の金属ロール表面温度は、装置の温度設定を用いた。また念の為、温度計(DIGIITAL THERMOMETER MODEL 2455(iuchi))で測定して温度が正しいことを確認した。
<実施例2〜16及び比較例1〜6>
実施例1において、水溶性高分子の塗布量及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率を、それぞれ表1に示す値として塗工紙を得た。
なお、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は、次のように測定されたものである。カレンダー処理前の塗工紙を12cm×12cmの大きさにカットし、200mlのメディアバイアルに入れて105℃で30分間乾燥後、フタで密閉して室温まで冷却し、この時の塗工紙の含水率を0重量%とした。次いで、前記含水率が0重量%の塗工紙を23℃、相対湿度65%の条件で調湿し、重量増加をチェックしながら所望の含水率となった時点で、前記(3)におけるカレンダー処理を行い、この時の含水率をカレンダー処理前の塗工紙の含水率とする。含水率は、塗工紙の重量に対する水の重量%を表わすものである。
また、前記ラボカレンダー装置の線圧と塗工紙にかかる圧力との関係を下記の方法により求めた。前記条件にて線圧を変えて感圧紙「プレスケール」(富士フイルム社製)をラボカレンダー装置に通し、その時の感熱紙の発色の程度から圧力を求めた。感圧紙として線圧100kg/cm未満の場合は中圧用を、線圧100kg/cm以上の場合は高圧用を用いた。その結果、線圧21kg/cmで圧力9MPa、線圧42kg/cmで圧力25MPa、線圧200kg/cmで圧力49MPa、線圧250kg/cmで圧力56MPa、線圧500kg/cmで圧力80MPaであった。
実施例7〜10では、原紙の製造において、LBKPスラリーに、ペンタエリスリトールモノステアレート(表中、エステル化合物Aと表記)の1重量%乳化物を、有効分添加量が表1の数値となるように添加し攪拌後、パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈した。次いで、ポリアクリルアミド重合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ PERCOL47)の0.05重量%水溶液をパルプ100重量部に対して0.03重量部になるように添加し攪拌後、角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。なお、エステル化合物Aはカチオン化澱粉を乳化剤として用い、ホモミキサー(特殊機化のロボミクス)を用いて、水と混合して乳化物としたものを用いた。
また、実施例11〜16では、前記ペンタエリスリトールモノステアレートの代わりに、下記の製造方法で得られたポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物(アミド化合物誘導体B)の1重量%水分散体を、有効分添加量が表1の数値となるように添加後、他は実施例7と同様にして抄紙したものを用いた。
*アミド化合物誘導体Bの製造
パルミチン酸/ステアリン酸混合物(花王 ルナックS−40)1061.1g(3.854モル)とテトラエチレンペンタミン208.5g(全アミン価1251.9mgKOH/gより、アミノ基として4.652モル)をフラスコに仕込み、窒素置換後、窒素流通下、200℃、常圧でアミド化を行った。酸価が5未満になったことを確認してから95℃まで冷却し、水を19g加えて加水分解を行い、ポリアミドアミン(全アミン価55mgKOH/g)を得た。次に90〜100℃でエピクロロヒドリン99.86g(1.079モル)を滴下し、更に110℃で3時間熟成してアミド化合物誘導体Bを得た。パルプスラリーには、このアミド化合物誘導体Bを冷却、固化後、ホモミキサー(特殊機化のロボミクス)を用いて、水分散体としたものを添加した。
<評価>
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた塗工紙について、JIS−P8118に従って密度を測定し、また、JIS−P8142に従って表と裏の両面の白紙光沢度を測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
表1の結果に基づく密度と75度鏡面光沢度の関係を図1にまとめた。表1及び図1から、実施例と比較例とを比べると、密度が同程度であれば、実施例の方が光沢度が高く、光沢度が同程度であれば、実施例の密度が低く、本発明では、低密度化と高光沢が両立できていることがわかる。
<実施例21>
(1)原紙の製造
パルプ原料として、化学パルプLBKP(広葉樹晒パルプ)を用い、25℃で叩解機にて離解、叩解してパルプ濃度2.2重量%のLBKPスラリーとした。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は450mlであった。このLBKPスラリーを、抄紙後のシートの坪量が約80g/m2になるように計り取り、その後パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈し、攪拌後角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。抄紙後の湿潤シートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥してパルプシートを得た。得られたパルプシートを23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿後、原紙の表面粗さを揃える目的で下記条件でパルプシートのカレンダー処理を行い、その後23℃、相対湿度65%の条件で12時間調湿後、原紙を得た。調湿後の原紙の含水率は5重量%であった。
パルプシートのカレンダー処理条件は上記実施例1と同様である。
(2)塗工紙の製造(塗工工程、カレンダー工程及び調湿工程)
前記原紙を、乾燥させて含水率を0重量%にして、該原紙(パルプシート)の第1面に、重質炭酸カルシウムを50部、微粒カオリンを50部、分散剤(ポイズ535M:花王製)0.075部、水酸化ナトリウムを0.02部、ラテックスを11部、澱粉を3部に水を加えて固形分濃度65重量%に調整した塗工液を、ラボブレードコーター(熊谷理機工業製、速度25m/min)で片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させた。次いで、前記片面塗工紙を、乾燥により含水率を0重量%にして、未だ塗工されていない第2面(第1面の反対面で、未塗工面)に前記塗工液を前記ラボブレードコーターで片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させ、塗工紙を得た。
次いで、得られた塗工紙を、乾燥させて含水率を0重量%にして、第1面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行った。次いで、前記塗工紙を、乾燥させて含水率を0重量%にして第2面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行い、23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿して紙中の含水率5重量%の塗工紙を得た。
前記塗工紙のカレンダー処理条件上記実施例1と同様である。
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧200kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数1回)した。カレンダー装置の金属ロール表面温度は、装置の温度設定を用いた。また念の為、温度計(DIGIITAL THERMOMETER MODEL 2455(iuchi))で測定して温度が正しいことを確認した。
<実施例22〜38及び比較例21〜28>
実施例21において、原紙及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率をそれぞれ表2に示す値として塗工紙を得た。
なお、原紙及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率は、次のように測定されたものである。原紙及びカレンダー処理前の塗工紙を、それぞれ12cm×12cmの大きさにカットし、200mlのメディアバイアルに入れて105℃で30分間乾燥後、フタで密閉して室温まで冷却し、原紙及び塗工紙を得、この時の原紙及び塗工紙の含水率を0重量%とした。次いで、前記含水率が0重量%の原紙及び塗工紙を23℃、相対湿度65%の条件で調湿し、重量増加をチェックしながら所望の含水率となった時点で、それぞれ前記(2)における塗工及びカレンダー処理を行い、この時の含水率を原紙及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率とする。含水率は、塗工紙の重量に対する水の重量%を表わすものである。
なお、前記ラボカレンダー装置の線圧と塗工紙にかかる圧力との関係を下記の方法により求めた。前記条件にて線圧を変えて感圧紙「プレスケール」(富士フイルム社製)をラボカレンダー装置に通し、その時の感熱紙の発色の程度から圧力を求めた。感圧紙として線圧100kg/cm未満の場合は中圧用を、線圧100kg/cm以上の場合は高圧用を用いた。その結果、線圧21kg/cmで圧力9MPa、線圧42kg/cmで圧力25MPa、線圧200kg/cmで圧力49MPa、線圧250kg/cmで圧力56MPa、線圧500kg/cmで圧力80MPaであった。
実施例31、32、35及び36では、原紙の製造において、LBKPスラリーに、ペンタエリスリトールモノステアレート(表中、エステル化合物Aと表記)の1重量%乳化物を、有効分添加量がパルプ100重量部に対して表2の数値となるように添加し攪拌後、パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈した。次いで、ポリアクリルアミド重合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ PERCOL47)の0.05重量%水溶液をパルプ100重量部に対して0.03重量部になるように添加し攪拌後、角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。なお、エステル化合物Aはカチオン化澱粉を乳化剤として用い、ホモミキサー(特殊機化のロボミクス)を用いて、水と混合して乳化物としたものを用いた。
また、実施例33、34、37及び38では、前記ペンタエリスリトールモノステアレートの代わりに、下記の製造方法で得られたポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物(アミド化合物誘導体B)の1重量%水分散体を、有効分添加量が表2の数値となるように添加後、他は実施例31と同様にして抄紙したものを用いた。
アミド化合物誘導体Bは上記実施例1と同様に製造した。
また、実施例30、35〜38では、原紙を製造後、さらにカルボキシルメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙ケミカル(株)製、F10LC、表中、CMCと表記)1.0重量%水溶液を、片面あたりの塗布量(固形分換算)が表2の数値となるように、バーコーターを用いて原紙の両面に塗布する工程を行い、この工程後の原紙の乾燥させたものを塗工工程に用いた。具体的には、バーコーター(No.14)を用いて、1.0重量%のCMCの水溶液を塗り拡げ、キャスティング皮膜をガラス板上に形成した。次いで原紙(幅12cm×長さ12cm)をキャスティング皮膜上にのせ、100g/m2のろ紙一枚でカバーし、ロール(直径200mm、幅200mm、線圧230g/cm)を転がし、CMCの水溶液の液膜をガラス板上から原紙表面に転写した。次いで鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。これらの一連の操作は間髪を入れずすみやかに操作した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿した。なお、この操作は表面、裏面の両方について行った。
<評価>
実施例21〜38及び比較例21〜28で得られた塗工紙について、JIS−P8118に従って密度を測定し、また、JIS−P8142に従って表と裏の両面の白紙光沢度を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
表2の結果に基づく密度と75度鏡面光沢度の関係を図2にまとめた。表2及び図2から、実施例と比較例とを比べると、密度が同程度であれば、実施例の方が光沢度が高く、光沢度が同程度であれば、実施例の密度が低く、本発明では、低密度化と高光沢が両立できていることがわかる。
実施例1〜16は発明Iの実施例である。 実施例21〜38は発明IIの実施例である。
<実施例1>
(1)原紙の製造
パルプ原料として、化学パルプLBKP(広葉樹晒パルプ)を用い、25℃で叩解機にて離解、叩解してパルプ濃度2.2重量%のLBKPスラリーとした。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は450mlであった。このLBKPスラリーを、抄紙後のシートの坪量が約80g/m2になるように計り取り、その後パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈し、攪拌後角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。抄紙後の湿潤シートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥してパルプシートを得た。得られたパルプシートを23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿後、原紙の表面粗さを揃える目的で下記条件でパルプシートのカレンダー処理を行い、原紙を得た。調湿後の原紙の含水率は5重量%であった。
<パルプシートのカレンダー処理条件>
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧10kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数2回)した。
(2)水溶性高分子の処理方法
(2−1)<実施例1、2、7、8、11、12、及び比較例4>
バーコーター(No.14)を用いて、カルボキシルメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙ケミカル(株)製、F10LC、表中、CMCと表記)1.0重量%水溶液を塗り拡げ、キャスティング皮膜をガラス板上に形成した。次いで上記で得られた原紙(幅12cm×長さ12cm)をキャスティング皮膜上にのせ、100g/m2のろ紙一枚でカバーし、ロール(直径200mm、幅200mm、線圧230g/cm)を転がし、CMC水溶液の液膜をガラス板上から原紙表面に転写した。次いで鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。これらの一連の操作は間髪を入れずすみやかに操作した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿した。なお、この操作は表面、裏面の両方について行った。
(2−2)<実施例3、4、9、10、13、14、及び比較例5>
CMC水溶液のCMC濃度を2.0重量%にした以外は、前記(2−1)と同様の方法で両面処理を行った。
(2−3)<実施例5、6、15、16及び比較例6>
CMCの代わりに下記の製造方法で得られた水溶性高分子Cの1重量%水溶液を用いた以外は前記(2−1)と同様にして、行った。
*水溶性高分子Cの製造例
1Lビーカーにイオン交換水267.4g、MOEDES(ジメチルアミノエチルメタクリレートとジメチル硫酸の当モル付加物。いずれも試薬、和光純薬(株)製)185.63g、DMAAm(N,N−ジメチルアクリルアミド、試薬、和光純薬(株)製)110.46g、NK−14G(架橋剤、ポリエチレングリコールジメタクリレート、親中村化学(株)製)0.415g、V−50(重合開始剤、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・2塩酸塩、和光純薬(株)社製)0.952gを混合し、モノマー水溶液aとした。
5Lのガラス容器にシクロヘキサン1648g、分散剤としてシュガーエステルS−770(三菱化成(株)製)を1.94g仕込み、60℃で1時間かけ均一に溶解せしめた。溶解後、30℃に冷却し、分散剤溶液bとした。
分散剤溶液bに、前記モノマー水溶液aを加え、ホモミキサー(ROBOMICS、特殊機化工業(株)製)にセットし、9000回転で4分間攪拌し、平均粒子径5μmのモノマー分散液を得た。全量を5Lの攪拌機と温度計、冷却管の付いたSUS槽に仕込み、窒素置換後、昇温し、55℃で1時間重合した。さらに70℃で1時間熟成した後、冷却管付きの脱水管を装着し、系内から水269gを除去した。脱水が進むにつれ、槽内温度は70℃から90℃に上昇した。
ついで40℃以下に冷却し、内容物をステンレス製トレーに移し、80℃、熱風乾燥させた。その後、家庭用コーヒーミルで約1秒間、軽く粉砕し平均粒子径4.0μmの水溶性高分子Cを得た。
(3)塗工紙の製造(塗工工程、カレンダー工程及び調湿工程)
前記水溶性高分子水溶液を塗布した原紙(パルプシート)の第1面に、重質炭酸カルシウムを50部、微粒カオリンを50部、分散剤(ポイズ535M:花王製)0.075部、水酸化ナトリウムを0.02部、ラテックスを11部、澱粉を3部に水を加えて固形分濃度65重量%に調整した塗工液を、ラボブレードコーター(熊谷理機工業製、速度25m/min)で片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させた。次いで、前記片面塗工紙の未だ塗工されていない第2面(第1面の反対面で、未塗工面)に前記塗工液を前記ラボブレードコーターで片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させ、塗工紙を得た。
次いで、得られた塗工紙を、乾燥させて含水率を2重量%にして、第1面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行った。次いで、前記塗工紙を、乾燥させて含水率を2重量%にして第2面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行い、23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿して紙中の含水率5重量%の塗工紙を得た。
<塗工紙のカレンダー処理条件>
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧200kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数1回)した。カレンダー装置の金属ロール表面温度は、装置の温度設定を用いた。また念の為、温度計(DIGIITAL THERMOMETER MODEL 2455(iuchi))で測定して温度が正しいことを確認した。
<実施例2〜16及び比較例1〜6>
実施例1において、水溶性高分子の塗布量及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率を、それぞれ表1に示す値として塗工紙を得た。
なお、カレンダー処理前の塗工紙の含水率は、次のように測定されたものである。カレンダー処理前の塗工紙を12cm×12cmの大きさにカットし、200mlのメディアバイアルに入れて105℃で30分間乾燥後、フタで密閉して室温まで冷却し、この時の塗工紙の含水率を0重量%とした。次いで、前記含水率が0重量%の塗工紙を23℃、相対湿度65%の条件で調湿し、重量増加をチェックしながら所望の含水率となった時点で、前記(3)におけるカレンダー処理を行い、この時の含水率をカレンダー処理前の塗工紙の含水率とする。含水率は、塗工紙の重量に対する水の重量%を表わすものである。
また、前記ラボカレンダー装置の線圧と塗工紙にかかる圧力との関係を下記の方法により求めた。前記条件にて線圧を変えて感圧紙「プレスケール」(富士フイルム社製)をラボカレンダー装置に通し、その時の感熱紙の発色の程度から圧力を求めた。感圧紙として線圧100kg/cm未満の場合は中圧用を、線圧100kg/cm以上の場合は高圧用を用いた。その結果、線圧21kg/cmで圧力9MPa、線圧42kg/cmで圧力25MPa、線圧200kg/cmで圧力49MPa、線圧250kg/cmで圧力56MPa、線圧500kg/cmで圧力80MPaであった。
実施例7〜10では、原紙の製造において、LBKPスラリーに、ペンタエリスリトールモノステアレート(表中、エステル化合物Aと表記)の1重量%乳化物を、有効分添加量が表1の数値となるように添加し攪拌後、パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈した。次いで、ポリアクリルアミド重合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ PERCOL47)の0.05重量%水溶液をパルプ100重量部に対して0.03重量部になるように添加し攪拌後、角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。なお、エステル化合物Aはカチオン化澱粉を乳化剤として用い、ホモミキサー(特殊機化のロボミクス)を用いて、水と混合して乳化物としたものを用いた。
また、実施例11〜16では、前記ペンタエリスリトールモノステアレートの代わりに、下記の製造方法で得られたポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物(アミド化合物誘導体B)の1重量%水分散体を、有効分添加量が表1の数値となるように添加後、他は実施例7と同様にして抄紙したものを用いた。
*アミド化合物誘導体Bの製造
パルミチン酸/ステアリン酸混合物(花王 ルナックS−40)1061.1g(3.854モル)とテトラエチレンペンタミン208.5g(全アミン価1251.9mgKOH/gより、アミノ基として4.652モル)をフラスコに仕込み、窒素置換後、窒素流通下、200℃、常圧でアミド化を行った。酸価が5未満になったことを確認してから95℃まで冷却し、水を19g加えて加水分解を行い、ポリアミドアミン(全アミン価55mgKOH/g)を得た。次に90〜100℃でエピクロロヒドリン99.86g(1.079モル)を滴下し、更に110℃で3時間熟成してアミド化合物誘導体Bを得た。パルプスラリーには、このアミド化合物誘導体Bを冷却、固化後、ホモミキサー(特殊機化のロボミクス)を用いて、水分散体としたものを添加した。
<評価>
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた塗工紙について、JIS−P8118に従って密度を測定し、また、JIS−P8142に従って表と裏の両面の白紙光沢度を測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
<実施例21>
(1)原紙の製造
パルプ原料として、化学パルプLBKP(広葉樹晒パルプ)を用い、25℃で叩解機にて離解、叩解してパルプ濃度2.2重量%のLBKPスラリーとした。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は450mlであった。このLBKPスラリーを、抄紙後のシートの坪量が約80g/m2になるように計り取り、その後パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈し、攪拌後角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。抄紙後の湿潤シートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、ドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥してパルプシートを得た。得られたパルプシートを23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿後、原紙の表面粗さを揃える目的で下記条件でパルプシートのカレンダー処理を行い、その後23℃、相対湿度65%の条件で12時間調湿後、原紙を得た。調湿後の原紙の含水率は5重量%であった。
パルプシートのカレンダー処理条件は上記実施例1と同様である。
(2)塗工紙の製造(塗工工程、カレンダー工程及び調湿工程)
前記原紙を、乾燥させて含水率を0重量%にして、該原紙(パルプシート)の第1面に、重質炭酸カルシウムを50部、微粒カオリンを50部、分散剤(ポイズ535M:花王製)0.075部、水酸化ナトリウムを0.02部、ラテックスを11部、澱粉を3部に水を加えて固形分濃度65重量%に調整した塗工液を、ラボブレードコーター(熊谷理機工業製、速度25m/min)で片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させた。次いで、前記片面塗工紙を、乾燥により含水率を0重量%にして、未だ塗工されていない第2面(第1面の反対面で、未塗工面)に前記塗工液を前記ラボブレードコーターで片面あたり15g/m2(固形分換算)となるように塗工した。塗工後はドラムドライヤーを用い、105℃で2分間乾燥させ、塗工紙を得た。
次いで、得られた塗工紙を、乾燥させて含水率を0重量%にして、第1面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行った。次いで、前記塗工紙を、乾燥させて含水率を0重量%にして第2面が金属ロールに接するように下記条件でカレンダー処理を行い、23℃、相対湿度50%の条件で12時間調湿して紙中の含水率5重量%の塗工紙を得た。
前記塗工紙のカレンダー処理条件上記実施例1と同様である。
ラボカレンダー装置(熊谷理機工業株式会社製 30FC−200Eスーパーカレンダー)を用いて23℃、相対湿度50%の条件下、カレンダー加工(線圧200kg/cm、処理速度10m/min、ロール温度80℃、処理回数1回)した。カレンダー装置の金属ロール表面温度は、装置の温度設定を用いた。また念の為、温度計(DIGIITAL THERMOMETER MODEL 2455(iuchi))で測定して温度が正しいことを確認した。
<実施例22〜38及び比較例21〜28>
実施例21において、原紙及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率をそれぞれ表2に示す値として塗工紙を得た。
なお、原紙及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率は、次のように測定されたものである。原紙及びカレンダー処理前の塗工紙を、それぞれ12cm×12cmの大きさにカットし、200mlのメディアバイアルに入れて105℃で30分間乾燥後、フタで密閉して室温まで冷却し、原紙及び塗工紙を得、この時の原紙及び塗工紙の含水率を0重量%とした。次いで、前記含水率が0重量%の原紙及び塗工紙を23℃、相対湿度65%の条件で調湿し、重量増加をチェックしながら所望の含水率となった時点で、それぞれ前記(2)における塗工及びカレンダー処理を行い、この時の含水率を原紙及びカレンダー処理前の塗工紙の含水率とする。含水率は、塗工紙の重量に対する水の重量%を表わすものである。
なお、前記ラボカレンダー装置の線圧と塗工紙にかかる圧力との関係を下記の方法により求めた。前記条件にて線圧を変えて感圧紙「プレスケール」(富士フイルム社製)をラボカレンダー装置に通し、その時の感熱紙の発色の程度から圧力を求めた。感圧紙として線圧100kg/cm未満の場合は中圧用を、線圧100kg/cm以上の場合は高圧用を用いた。その結果、線圧21kg/cmで圧力9MPa、線圧42kg/cmで圧力25MPa、線圧200kg/cmで圧力49MPa、線圧250kg/cmで圧力56MPa、線圧500kg/cmで圧力80MPaであった。
実施例31、32、35及び36では、原紙の製造において、LBKPスラリーに、ペンタエリスリトールモノステアレート(表中、エステル化合物Aと表記)の1重量%乳化物を、有効分添加量がパルプ100重量部に対して表2の数値となるように添加し攪拌後、パルプ濃度が0.5重量%になるように水で希釈した。次いで、ポリアクリルアミド重合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ PERCOL47)の0.05重量%水溶液をパルプ100重量部に対して0.03重量部になるように添加し攪拌後、角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤーで抄紙し、湿潤シートを得た。なお、エステル化合物Aはカチオン化澱粉を乳化剤として用い、ホモミキサー(特殊機化のロボミクス)を用いて、水と混合して乳化物としたものを用いた。
また、実施例33、34、37及び38では、前記ペンタエリスリトールモノステアレートの代わりに、下記の製造方法で得られたポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロロヒドリン縮合物(アミド化合物誘導体B)の1重量%水分散体を、有効分添加量が表2の数値となるように添加後、他は実施例31と同様にして抄紙したものを用いた。
アミド化合物誘導体Bは上記実施例1と同様に製造した。
また、実施例30、35〜38では、原紙を製造後、さらにカルボキシルメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙ケミカル(株)製、F10LC、表中、CMCと表記)1.0重量%水溶液を、片面あたりの塗布量(固形分換算)が表2の数値となるように、バーコーターを用いて原紙の両面に塗布する工程を行い、この工程後の原紙の乾燥させたものを塗工工程に用いた。具体的には、バーコーター(No.14)を用いて、1.0重量%のCMCの水溶液を塗り拡げ、キャスティング皮膜をガラス板上に形成した。次いで原紙(幅12cm×長さ12cm)をキャスティング皮膜上にのせ、100g/m2のろ紙一枚でカバーし、ロール(直径200mm、幅200mm、線圧230g/cm)を転がし、CMCの水溶液の液膜をガラス板上から原紙表面に転写した。次いで鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。これらの一連の操作は間髪を入れずすみやかに操作した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿した。なお、この操作は表面、裏面の両方について行った。
<評価>
実施例21〜38及び比較例21〜28で得られた塗工紙について、JIS−P8118に従って密度を測定し、また、JIS−P8142に従って表と裏の両面の白紙光沢度を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
Claims (8)
- 原紙に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工紙を得る塗工工程と、塗工紙をカレンダー処理するカレンダー工程と、を有する塗工紙の製造方法であって、
前記原紙が、水溶性高分子水溶液を塗布したものであり、
前記カレンダー工程が、含水率5.5重量%以下の塗工紙をカレンダー処理する工程である、塗工紙の製造方法。 - 原紙に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工して塗工紙を得る塗工工程と、塗工紙をカレンダー処理するカレンダー工程と、を有する塗工紙の製造方法であって、
前記塗工工程が、含水率4重量%以下の原紙に塗工液を塗工する工程であり、前記カレンダー工程が、含水率5.5重量%以下の塗工紙をカレンダー処理する工程である、塗工紙の製造方法。 - 水溶性高分子が、澱粉類、セルロース化合物、ポリビニルアルコール類及びカチオン性基含有ビニル単量体と親水性ノニオン性基含有ビニル単量体とを含む単量体を重合して得られるカチオン性基含有ビニル共重合体から選ばれる1種以上の化合物である請求項1の塗工紙の製造方法。
- 原紙が、パルプスラリーに繊維結合阻害剤を添加後、抄紙して得られたものである請求項1または2記載の塗工紙の製造方法。
- 繊維結合阻害剤が、エステル系化合物及びその誘導体、並びに、アミド化合物及びその誘導体から選ばれる1種以上の化合物である請求項1または2記載の塗工紙の製造方法。
- 原紙が、水溶性高分子水溶液を塗布したものである請求項2記載の塗工紙の製造方法。
- カレンダー工程の後に、さらに、塗工紙の含水率を上げる調湿工程を有する請求項1〜6いずれか記載の塗工紙の製造方法。
- 請求項1〜7記載の製造方法により得られた、密度が1.2g/cm3以下である塗工紙。
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