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JPWO2007015288A1 - 軸ずれ量推定方法及び軸ずれ量推定装置 - Google Patents

軸ずれ量推定方法及び軸ずれ量推定装置 Download PDF

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JPWO2007015288A1
JPWO2007015288A1 JP2007529145A JP2007529145A JPWO2007015288A1 JP WO2007015288 A1 JPWO2007015288 A1 JP WO2007015288A1 JP 2007529145 A JP2007529145 A JP 2007529145A JP 2007529145 A JP2007529145 A JP 2007529145A JP WO2007015288 A1 JPWO2007015288 A1 JP WO2007015288A1
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雅 三本
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Abstract

レーダの軸ずれ量を精度よく推定する。走行する車両の前方の目標物を検出するレーダの軸ずれ量を推定する軸ずれ量推定装置において、距離と速度とに基づいて送信波のエコーから静止物のエコーを選択する静止物抽出部21と、前記レーダの覆域を複数の領域に分割する観測域分割部221と、静止物抽出部21によって選択された静止物のエコーの反射点であって、観測域分割部221によって分割された一部の領域に属する反射点の分布を直線近似して車両の走行軌道に平行な基準直線を求め、この基準直線に基づいて前記レーダの軸ずれ量を求める基準直線算出部222と、を備えた。

Description

この発明は、レーダを用いて目標物を検出する装置に係るものであり、特にレーダの軸ずれ量を算出して目標物の検出精度を高める技術に関する。
従来のレーダシステムは軍事・防衛、気象といった分野に多く適用されてきたが、これらの分野では量産コストや据え付けコストがあまり問題になることはなかった。しかし昨今では、レーダ装置を自動車に搭載し、自動車走行中に障害物を検出し、自動車運行上の安全性を高める試みが行われるようになってきている。自動車搭載用レーダでは、量産コストを低く抑えることが問題となるばかりではなく、低廉に生産したレーダを少ない工数で精度よく自動車に取り付けることも要求される。
ここで特に問題になるのは、レーダ軸の調整作業の簡略化と高精度化である。自動車搭載用レーダではおよそ200メートル遠方の目標物の距離や速度を1m程度の分解能で検出することが要求されるが、仮にレーダ軸が本来の前方方向とわずか0.5度ずれただけでも、検出誤差は200メートル×tan0.5°=1.7メートルとなり、要求分解能を達成できないことになる。
さらに、工場出荷前においてレーダ装置を精度よく据え付けることができたとしても、自動車の使用を通じてレーダ装置の据え付けが狂う場合がある。例えば、悪路の走行による長期間の振動や軽微な事故による車体の変形等から生じるレーダ軸の誤差を防止することはほぼ不可能である。そこで、レーダ装置の使用中に軸ずれを自動的に検出し、補正する処理を組み込む必要が生じる。
従来、この種の軸ずれ量推定方法としては、レーダを搭載する車両が直線路を走行しているものと仮定し、レーダが検出するエコー中に路側に存在する看板やガードレールなどの静止物のエコーが多く分布するものとして、これら道路に平行に分布するエコーを直線近似し、この直線の方向に基づいてレーダ軸のずれを推定する方式が知られている(例えば特許文献1や非特許文献1)。
特開平7−120555号公報
W.Kederer, J.Detlefsen, Sensor-based determination of angular misalignment and lane configuration of a radar sensor for ACC-applications, Proceedings of 30th European Microwave Conference, pp.313-316, 2000.
上述の従来技術は、静止物エコーが単一直線上に数多く分布し、直線の近似精度が高い場合にはレーダの軸ずれ量を良好に推定できる。しかし現実の路上で観測される障害物にはさまざまな形状のものが存在するため、エコーの分布がこのような単一の直線のみでは近似できないことはよく知られている。このような状況で、静止物エコーの空間分布を単一直線で近似しようとしても、精度よくレーダの軸ずれ量を推定することは難しい。
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、レーダ軸の軸ずれ量を精度良く推定することを可能にし、レーダの計測性能を向上させることを目的とする。
かかる課題を解決するために、この発明に係る軸ずれ量推定方法では、
走行する車両前方の目標物を検出するレーダの軸ずれ量を求める軸ずれ量推定方法であって、
前記レーダの送信波のエコーからこのレーダの覆域の所定の一部領域に反射点が属する静止物エコーを選択するエコー選択ステップと、
前記エコー選択ステップにおいて選択された静止物エコーの反射点の分布を直線近似して前記車両の走行軌道に平行な基準直線を算出する基準直線算出ステップと、
前記基準直線算出ステップにおいて算出された基準直線の方向に基づいてレーダの軸ずれ量を求める軸ずれ量推定ステップと、
を有することとしたものである。
このように、この発明に係る軸ずれ量推定方法では、レーダの覆域全体に存在する静止物のエコーに対して直線近似を行うのではなく、覆域のうちの一部領域に存在する静止物のエコーに対してのみ直線近似を行うこととしたので、近似精度を劣化させる静止物エコーを棄却することで直線の近似精度が高まり、精度よくレーダの軸ずれ量を算出することが可能となる。
この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を示すブロック図。 この発明の実施の形態1の観測領域の構成を示す説明図。 この発明の実施の形態1の軸ずれ量推定処理のフローチャート。 この発明の実施の形態1の動作原理を示す説明図。 この発明の実施の形態2の構成を示すブロック図。
符号の説明
4 エコー検出部、
5 位置検出部、
6 速度検出部、
7 軸ずれ量推定部、
8 位置補正部、
21 静止物抽出部、
22 直線近似部、
24 軌道曲率取得部、
25 基準直線記憶部、
26 軌道曲率記憶部、
221 観測域分割部、
222 基準直線算出部。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1によるレーダ装置は、例えば自動車に搭載されているものとし、自動車の進行方向(車軸に垂直な方向)に向けてレーダ送信波を放射し、目標物(その多くは、走行上の障害物である)を検出するものとする。ここで、この発明の実施の形態1によるレーダ装置は、目標物の位置を検出する上での基準方位と自動車の正面方向とのずれ、すなわちレーダの軸ずれを補正する機能を有している。
初めに、この発明の実施の形態1において利用するレーダの軸ずれ角を補正する方法の原理を大まかに述べるならば、次のようになる。すなわち道路には、ガードレールや歩道、中央分離帯など、自動車の走行軌道に対して平行な面を有する物体が多く見られる。そこで、自動車の走行軌道と平行をなす物体上の反射点、と推測されるレーダ波の反射点(エコーの反射点)を抽出して、これら反射点の分布に対して直線を近似する。
こうして得られた直線が自動車の走行軌道に平行であると仮定して、自動車の走行軌道とレーダ自身の基準方向との差違を求めるのである。こうすることで、レーダの基準方向(レーダ軸の方向)にずれ(未知量)が生じていても、ずれの量を適切に算出する。軸ずれ量を考慮して反射体の位置や方位を算出することで、反射体の位置・方位・速度等の精度が向上するということになる。
図1は、この発明の実施の形態1によるレーダ装置の構成を表すブロック図である。図に示すように、このレーダ装置は、アンテナ1から自動車の走行方向に向けてレーダ波を放射するとともに、目標物や障害物などレーダ波反射体によって反射されたレーダ波を受信する。送受信部2は、アンテナ1が外部に放射するレーダ波の元となる送信信号11を供給する。それとともに送受信部2は、アンテナ1がレーダ波反射体によって反射されたレーダ波を受信すると、それにともなってアンテナ1が出力するRF(Radio Frequency)帯域の受信信号12を中間周波数の内部信号との差信号を用いてビデオ帯域の受信信号にダウンコンバートする。ダウンコンバートは、受信信号12と送受信部2お内部信号である基準信号の周波数差を出力することにより実現される。以後、ビデオ帯域の受信信号を差信号と呼ぶこととする。この結果として、送受信部2は、差信号13を出力する。この差信号13は、信号処理部3に入力されて対象物の位置の検出に供される。
エコー検出部4は、差信号13を用いて反射波の検出を行い、検出した反射エコーの差信号の周波数14を出力する。このような反射エコーの一般的な検出方法としては、受信機雑音やクラッタなどの不要波成分よりも電力の大きい場合に、反射波があると見なす方法が通常用いられる。そのためには、受信機雑音あるいはクラッタの電力にある一定のマージンを付加し、それを超える電力を持つ信号成分を反射エコーと見なして、これを検出すればよい。
位置検出部5は、エコー検出部4が出力した差信号の周波数14を用いて所定の周期毎に反射点(エコー)の位置15を求める。そのためには、まずこの反射点とレーダ装置との相対距離、さらには反射点の方向(角度)を求め、求められた相対距離と方向とから反射物の位置が定められる。
距離を計測する方法としては、送信波をパルス変調し、送受信の時間差により距離計測を行うパルスレーダ方式や、周波数変調した連続波を送信するとともに、送信信号と受信信号を混合することにより得られる差信号の周波数から距離を得るFMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)方式あるいは多周波CW方式などが知られている。また、方向を求める方法としては、ペンシルビームを持つ空中線を機械的に駆動して観測する方式や、複数の素子アンテナを配置し、送信または受信時に各素子にて位相制御を行うことにより電子的にビーム走査を行う方式などが知られている。これら公知の方法を用いれば、当業者ならば容易に位置検出部5を構成することができる。
以下の説明において、位置検出部5は、反射点の位置15を、x座標とy座標とからなるデカルト座標系で表現して出力するものとする。ここで、y座標の座標軸であるy軸は、レーダ軸方向前方を正の方向とし、その反対方向を負の方向として設定する。また、x座標の座標軸であるx軸とy軸とは直交しているものとし、x軸は、レーダ軸方向前方に向かって右方向を正の方向、左方向に負の方向として設定する。
一方、速度検出部6は、差信号の周波数14を用いて反射点の相対速度を算出する。反射点の相対速度は受信波周波数のドップラー変調を用いて計算されることは広く知られている。位置検出部5でFMCW方式や多周波CW方式を用いる場合には、距離と速度とを同時に算出することができるので、位置検出部5と速度検出部6とを同一の部位や素子で構成するようにしてもよい。
軸ずれ量推定部7は、エコー検出部4によって検出された反射点のうち、自動車の走行軌道と平行をなす直線上に分布していると推測される反射点を抽出し、抽出された反射点の分布に基づいて軸ずれ量を算出する。図2は、軸ずれ量推定部7の詳細な構成を示すブロック図である。図において、軸ずれ量推定部7は、外部から反射点の位置15及び反射点の相対速度16を取得すると、静止物抽出部21にこの反射点の位置15及び反射点の相対速度16を入力する。
静止物抽出部21は、反射点の位置15あるいは相対速度16に基づいて、静止物上の反射点のエコー(以下、静止物エコーという)を選択し、静止物エコー31として出力する。なお、静止物エコー31の内容としては、少なくとも静止物上の反射点の位置(デカルト座標、あるいはデカルト座標を極座標系などに変換した座標であって、デカルト座標と等価なものなど)が含まれる。静止物抽出部21が入力された反射点が静止物上の反射点であるかどうかを判別する方法としては、例えば、次の方法1〜方法3として示すようないくつかの方法が考えられる。
(方法1)反射点の相対速度に基づいて、その反射点が静止物上の反射点か否かを弁別する方法である。反射点の相対速度を用いる方法としては、まず外部から車両の速度データを取得して反射点の相対速度と照合し、反射点が静止物上の反射点か否かを識別する方法(方法1−1)が考えられよう。より具体的には、例えば自車に取り付けられた車速センサにより車速データを得て、その車速とほぼ同じ大きさで、かつ近づく方向のドップラー速度をもつ反射物を静止物と見なす方法である。
また同じく反射点の相対速度を用いる方法としては、車両速度などの情報や信号を外部から取り込まずに、反射点の相対速度のみから反射点が静止物上の反射点か否かを弁別する方法(方法1−2)もある。この方法は、レーダ観測領域内に静止物エコーが多数存在し、かつ相対速度は複数の静止物エコーについてほぼ同一となる、という事実に基づくものである。すなわち、複数の反射点を相対速度について分類し、相対速度の分布が集中している反射点を静止物エコーとみなす方法である。
(方法2)車線から外れた位置に存在する物体(反射点)を静止物と見なす方法である。反射点が車線から外れているかどうかを判断するには、x座標について所定の基準(基準x座標)を定めておき、各反射点のx座標と基準x座標との差が一定以上となった場合に、この反射点が車線から外れたものとみなすこととすればよい。
この場合、基準x座標は、これまで得られた反射点のx座標を統計的に処理して算出する。例えば、直前に入力された複数の反射点のx座標の平均を求めて、この平均値を基準x座標とする。さらには、この発明の実施の形態1のレーダ装置が最終的に求めるレーダ軸ずれ量に基づいて基準x座標を定めることができることはいうまでもないであろう。
なお、この方法2によれば、反射点のx座標のみでその反射点が静止物上の点かどうかを判断することができるので、軸ずれ量推定部7に対して反射点の速度16を入力する必要がなくなる。したがってレーダの軸ずれ量を求める、あるいは軸ずれ量を補正して反射点の位置の算出精度を向上する、という目的だけを達成すれば十分ということならば、速度検出部6をレーダ装置の構成要素から省略してもよい。
方法1−1では、外部の速度センサからの信号や情報を取得する必要があるので、速度データを伝達できるようにレーダ装置と移動プラットフォーム(車両等)の速度センサとの間を結線する必要がある。しかしながら、各反射点が静止物エコーであるか否かを反射点ごとに独立に識別することが出来るという特徴がある。
これに対して、方法1−2と方法2はいずれも外部速度センサからの情報が不要であり、方法2に至っては反射点の速度の算出すら必要ないという特徴を有している。しかし、複数の反射点の位置情報に同時にアクセスできるような構成とする必要がある。すなわち、複数の反射点の位置情報を図示せぬ記憶装置に記憶しておく必要がある。
なお、これらの各方法は原理的に互いに矛盾するものではないので、組み合わせて使用することは何ら問題がない。例えば方法2のように、x座標に基づいて静止物エコーを絞り込んでおき、さらに方法1−1や方法1−2の方法を用いて静止物エコーを再度絞り込むようにしてもよい。
このようにして算出された静止物エコー31に基づいて、直線近似部22は静止物エコーの分布を近似する直線を求める。そして近似した直線の傾きと切片とを直線32として出力する。静止物エコーの分布を近似する直線を式(1)のように表現するならば、傾きはp、切片(x切片:直線とx軸の交点のx座標)はqとして与えられる。
Figure 2007015288
以下、直線近似部22が静止物エコーの分布に対して直線を近似する方法を詳しく説明する。図3は、直線近似部22の詳細なブロック図である。図の静止物エコー31は、観測域分割部221に入力される。観測域分割部221では、所定の境界線に基づいて分割された観測域が予め設定されており、その中から直線近似に供される静止物エコーが属する観測域が決められている。
図4はこのような観測域(レーダ装置の覆域)の様子を示す図である。この図は、自動車41の走行軌道に平行となるように境界線が設定されており、進行方向に向かって境界線の左側を領域A、また境界線の右側を領域Bとした例である。図の×(バツ印、又はアルファベットのX)は静止物エコーの位置を示している。領域Aの静止物エコーはガードレール42にほぼ沿って分布している。また領域Bの静止物エコーは中央分離帯43にほぼ沿って分布している。
また、ここで用いる「境界線が自動車41の走行軌道に平行である」という表現は、走行軌道と境界線とのなす角が”ほぼ0°であること”を意味しており、走行軌道と境界線が交わらないことを要求するものではない。すなわち、走行軌道と境界線が同一直線上に存在していてもよいし、交点を有していてもよい。
観測域分割部221は、領域Aと領域Bのうちのいずれか一方の観測域の静止物エコーだけを選択して、観測域内静止物エコー32(以後、単に静止物エコー32という)として出力するとともに、選択されなかった他方の観測域の静止物エコーを棄却する。例えば領域Aの静止物エコーだけを選択して、静止物エコー32として出力し、領域Bの静止物エコーを棄却する。あるいは領域Bの静止物エコーを選択して静止物エコー32として出力し、領域Aの静止物エコーを棄却するようにしてもよいことはいうまでもない。
なお、静止物エコー32のデータには、静止物エコー31と同様に反射点の位置の座標(デカルト座標、あるいはデカルト座標を極座標系などに変換した座標であって、デカルト座標と等価なものなど)が含まれる。
このようにすることで、領域Aと領域Bのいずれか一方の領域だけに属する静止物エコーの分布を近似する直線を求めることが可能となる。一般に道路や車両軌道では、車両軌道を挟むようにして両側に静止物が分布する。このような状況で静止物エコーの抽出を行うと、静止物エコーが進行方向に向かって左右に散乱することになる。すなわち、ガードレール42上の静止物エコーと中央分離帯43上の静止物エコーの双方を同時に近似するような直線を求めざるを得ないこととなる。
その結果、近似直線として求めた直線は車両の軌道と大きくずれることとなって、レーダの軸ずれ量を求める基準として利用することができなくなる。この問題に対して、観測域分割部221を用いて予め領域分割し、所定の領域に属する静止物エコーのみを採用して直線近似を行えば、直線近似の精度は大幅に向上することとなる。
なお、静止物エコーが領域Aと領域Bのいずれに属するかを判断するには、静止物エコーのx座標と境界線のx座標とを比較すれば足りる。また、境界線は自動車41の走行軌道(進行方向)に平行に設定されることが望ましい。しかしながら、図4の例のような場合は、ガードレール42の静止物エコーと中央分離帯43上の静止物エコーのいずれかを棄却できれば十分である。したがって境界線は自動車の進行方向とほぼ0°をなす直線であればよいのである。また、通常は移動プラットフォーム(車両)にレーダ装置を取り付ける際にある程度の方向調整を行っているはずであり、軸ずれを補正する前の境界線の方向精度であっても十分に機能する。したがって境界線の設定にそれほど厳密な精度は要求されない。
また、観測域を進行方向左右に分割する他に、静止物エコーのx座標xj(i=1,…,N、Nは自然数)の平均値xaveを算出し、この平均値xaveを境界線のx座標としてもよい。また境界線のx座標xaveと静止物エコーのx座標xjとの差の絶対値|xj−xave|を算出しておき、この絶対値が予め設定した値より小さくなる静止物のみを抽出するというようにして、静止物エコーを選択してもよい。この場合は、差の絶対値と比較する設定値及び境界線のx座標によって観測域を分割していることになる。
なお、路側の他、走行方向の正面の道路上部にも、交通標識などの反射物が存在する可能性がある。路側のみのデータを抽出するために、静止物のx座標を限定して抽出することを行ってもよい。一方、例えばトンネル内では道路上方にも車両軌道と平行に位置する壁面が存在するので、上方壁面上の静止物エコーを選択するように観測域を分割してもよい。
次に、静止物エコー32は図3の基準直線算出部222に入力され、基準直線算出部222において、静止物エコー32の分布を近似する直線を求める。図5は基準直線算出部222の処理のフローチャートである。基準直線算出部222は所定の周期毎、より詳しくはエコー検出部4が差信号の周波数14を出力するタイミング又は位置検出部5が反射点エコーを出力するタイミングに同期するように、このフローチャートに示された処理を実行し、それぞれのタイミングに合わせて個々に軸ずれ量を算出することになる。
図5のステップST101において、まず繰返し数を0に設定する。この繰返し数は直線の近似処理回数を計測するためのカウンタである。その後基準直線算出部222は、直線を近似する(ステップST102)。静止物エコー32がN個(Nは自然数)存在するとし、このN個の静止物エコーのうちのi番目の静止物エコーの位置を(xi、yi)(i=1,…,N)とする。これに対し、近似後の直線は式(1)で与えられる。ここで、その傾きpとx切片qは、最小二乗法により、式(2)及び式(3)によって算出される。
Figure 2007015288
Figure 2007015288
傾きpとx切片qとを求めた後、基準直線算出部222は近似直線として求めた直線の近似精度を評価し、近似の精度が予め定められたものよりも劣る場合には、静止物エコーのうちのいくつかを棄却して、再度近似直線を求める処理に移行する。具体的にいえば、まず静止物エコーと近似直線との距離を算出する(ステップST103)。静止物エコー(xi,yi)と直線x=py+qとの距離diは式(4)にて算出される。
Figure 2007015288
次に、式(4)を通じて算出されたdiが所定値以上となる静止物エコーを静止物エコー32の集合の中から棄却する(ステップST104)。こうすることで、直線近似の精度を劣化させる要因となっている静止物エコーを近似対象となる静止物エコーから効率的に除去することが可能となる。
図6は、ステップST104によって直線の近似精度、ひいては軸ずれ量推定精度が向上することを説明する図である。図において、自動車41の左前方に静止物エコーの集合51が直線52に沿うように存在している。また静止物エコーの集合53が直線52とは異なる直線54に沿うように存在している。ここでステップST102によって静止物エコーの集合51と53とを同一の直線で近似しようとすると、例えば直線55のような近似直線が得られることになる。
そこで、ステップST103によって、直線55と静止物エコーの集合51と53に属する各静止物エコーとの距離を算出し、ステップST104によって静止物エコーの集合53に属する静止物エコーを棄却すると、静止物エコーの集合51が沿っている本来の直線52に近い直線に近似されるものと期待できる。
この結果、直線55に基づいて軸ずれ量を求めようとすると、角度56のようになるところ、直線52を軸ずれ量算出のための基準直線とし、この基準直線に基づいて軸ずれ量を求めることができるので、角度57が得られることとなって、軸ずれ量の推定精度が向上することが分かる。
ここで、棄却された静止物エコーの数が0の場合、あるいは静止物エコー32の集合中に残存している静止物エコーの数が所定数を下回った場合(ステップST105:Yえs)は、推定軸ずれ量を欠損値とする(ステップST106)。逆に、ステップST104において、いずれかの静止物エコーが棄却されるとともに、依然として静止物エコー32の集合中に残存している静止物エコーの数が所定数以上の場合(ステップST105:No)は、残存している静止物エコーの分布を近似する直線を再度求める(ステップST107)。ここで行われる演算はステップST103と同じである。
その後、繰返し数に1加えて(ステップST108)、静止物エコーと直線との距離を式(4)にて算出する(ステップST110)。距離を算出後、さらに基準直線算出部222は、算出した距離の平均を算出し、この平均値が所定値を超えているかどうか検定する(ステップST110)。このような検定によって、直線の近似精度が十分なレベルに達したかどうかを評価することができるのである。
ここで、平均値が所定値を超えてしまった場合(ステップST110:Yes)は、まだ近似精度が十分でないと判断されるので、再び近似処理を行う。ただし繰返し数が所定値を超えている場合は、これ以上の近似処理を行わず、この静止物エコー32に対する推定軸ずれ量を欠損値とする(ステップST106)。レーダ装置が自動車に搭載されている場合などでは、軸ずれ量推定の演算にあまり長い時間をかけてしまうと応答性能が劣化してしまう。そうするとレーダ装置が衝突回避・防止システムなどに適用されている場合に、走行中の安全に重大な支障を来す場合もありうる。そこで、直線近似処理の回数が所定の回数以上とならないように制御することで、応答性能を劣化させないようにする。
一方、繰返し数が所定回数を超えていない場合は、再び直線近似処理を行う。そのためにまずステップST109で算出した静止物エコーと直線との距離に基づいて静止物エコーの棄却処理を行う(ステップST104)。以後、ステップST105〜ステップST111の直線近似処理を順次繰り返す。
このように、この発明の実施の形態1のレーダ装置は、静止物エコーの分布を近似する直線を求めるだけでなく、求めた直線が各静止物エコーの分布に沿うものかどうかを評価する。すなわち、近似直線に対する静止物エコーの分布の一致度、収束度を評価する。そして、静止物エコーの分布を十分に近似していないと判断される場合に、近似精度劣化の要因になっている静止物エコーを棄却した上で、再度静止物エコーの分布を近似する直線を求める。この結果として、単純な直線近似による軸ずれ量推定に比べて精度が大幅に向上することとなる。
一方、ステップST110において、平均値が所定値を超えない場合(ステップST110:No)は、すでに直線の近似精度が十分に高いと判断されるので、求めた近似直線を軸ずれ量17として出力し(ステップST111)、処理を終了する。
なお、軸ずれ量17を出力するにあたって、基準直線算出部222は求めた基準直線の傾きとx切片とをそのまま軸ずれ量17として出力してもよいし、システムの要求に合わせた表現形式の軸ずれ量17に変換するようにしても構わない。例えば軸ずれ量として角度表現(ラジアン値など)が適しているのであれば、式(5)によって直線32とレーダ軸のなす角度αをレーダ軸の軸ずれ量17として算出する。
Figure 2007015288
最後に、位置補正部8は位置検出部5が出力した反射点の位置15を、軸ずれ量17を用いて補正し、補正後の位置18をレーダ装置の外部に出力する。
このようにして、この発明の実施の形態1のレーダ装置によれば、レーダ軸ずれ量を推定するために反射点の分布を近似する直線を求めるが、この直線を求めるにあたって、観測域を境界線に基づいて分割し、そのうちの一部の観測域に含まれる反射点のみを用いることとしたので、直線近似の精度を劣化させる要因が取り除かれて、直線近似の精度が大幅に向上する。
さらに直線近似にあたり、直線から距離のある反射点を取り除くことで、さらに直線近似の精度を劣化させる要因が取り除かれて、直線近似の精度が大幅に向上する。
実施の形態2.
実施の形態1のレーダ装置は、移動プラットフォームである車両が直線運動を行っていて、かつ軌道も直線であることを前提として、静止物エコーの分布を近似する直線を求め、この直線の傾きを用いてレーダの軸ずれ量を推定するというものであった。
しかし、レーダ装置を自動車に搭載する場合、操舵角が0でない時間が全運行時間に占める割合を無視することはできない。また常に車両の軌道(道路)が直線であるとは限らない。このような場合に、単純に静止物エコーの分布を近似する直線を求めても正しい結果が得られない。
さらに、実施の形態1のレーダ装置は、所望の近似精度が得られない場合、あるいは近似処理の回数が所定回数以上となった場合に、軸ずれ量の欠損を発生させることとしているが、軸ずれ量の欠損に対するハンドリング方法が明らかにされていない。
そこで、この発明の実施の形態2では、実施の形態1のレーダ装置の軸ずれ量推定処理において軸ずれ量を平滑するステップをさらに設けることで、車両の軌道形状の変動や車両の操舵角の変動、そして軸ずれ量の欠損に対応しうる軸ずれ量の推定方法が得られることを説明する。
この発明の実施の形態2によるレーダ装置は、実施の形態1のレーダ装置の軸ずれ量推定部7を改良したものである。したがって、特に説明しない限り、実施の形態2のレーダ装置の構成は実施の形態1のレーダ装置と同様の構成となっている。
図7は、この発明の実施の形態2のレーダ装置の特徴部分である直線近似部22の構成を示すブロック図である。図において、
軌道曲率取得部24は、車両が現在走行している位置での軌道の曲率34を取得する部位である。曲率34を取得する具体的な方法としては、例えば走行中の車両の角速度を取得するヨーレートセンサの計測値を利用するようにしてもよいし、車両の操舵装置からの操舵角情報を曲率に変換するようにしてもよい。
また基準直線記憶部25は、所定の長さの観測期間毎に得られた軸ずれ量35を複数期間分記憶する部位である。また軌道曲率記憶部26は基準直線が算出されるタイミングで基準直線算出部222が軌道曲率取得部24から取得した車両の軌道の曲率を記憶する部位である。
以後の説明では、1つの軸ずれ量33が算出される時間帯を区間と呼ぶこととし、各区間は区間1、区間2、…のように番号で識別されるものとする。そして区間に付した番号が連続する区間同士は前後に隣接するものとする。またある区間N(Nは自然数)において取得された軸ずれ量33を軸ずれ量33(N)、曲率34を曲率34(N)と表す。
次に、基準直線算出部222の処理について説明する。基準直線算出部222は、軌道曲率取得部24より曲率34(N)を取得する。また基準直線算出部222は、軌道曲率記憶部26から曲率36を取得する。この曲率36は、以前に基準直線算出部222が軌道曲率取得部24から取得した曲率34(k)(k<N)である。その後、基準直線算出部222は、曲率34(N)を軌道曲率記憶部26に記憶させる。その結果、軌道曲率記憶部26が記憶する曲率は曲率36から曲率34(N)に置き換えられ、次回の処理で曲率34(N)が曲率36として用いられることになる。
次に、基準直線算出部222は、曲率36(曲率34(k)、k<N)と曲率34(N)がともに所定値以下の曲率かどうかを検定する。その結果、曲率36と曲率34(N)の何れかが所定値を超えた場合、基準直線算出部222は現在の静止物エコー32から基準直線を算出する処理に替えて、基準直線記憶部25が記憶している基準直線35を用いる。例えば、基準直線記憶部25が最近数回の基準直線を記憶している場合には、これらの基準直線の平均値(傾きの平均値およびx切片の平均値)を用いて今回の基準直線を算出する。
また、曲率36と曲率34(N)がともに所定値以下である場合に、自動車が直進状態にあると判断する。そして実施の形態1と同様に基準直線を求めて推定軸ずれ量を計算する。推定軸ずれ量が正しく計算された場合は、基準直線を基準直線記憶部25に記憶させ、算出した軸ずれ量を出力する。
また、実施の形態1の方法で軸ずれ量を算出した結果、推定された軸ずれ量が欠損値となる場合は、曲率36と曲率34(N)の何れかが所定値を超えた場合と同様に、基準直線記憶部25が記憶している基準直線35を用いて今回の基準直線を算出する。
以上のように、この発明の実施の形態2のレーダ装置によれば、軌道曲率取得部24から軌道の曲率を取得して、算出する軸ずれ量が有効でないと判断される場合に、過去の有効な軸ずれ量に基づいて代替値を算出して出力するとした。このため、曲線軌道において算出された軸ずれ量に基づいて位置が補正されることを防ぐことができ、軸ずれ量推定処理の信頼性を向上させることができる。
さらに、直線近似処理において十分な精度をもって直線近似が行えない、あるいは所望の応答時間内に直線近似が行えない、などの理由で軸ずれ量の欠損が発生しても、過去に蓄積した十分に信頼性の高い軸ずれ量を用いて回復処理を行うので、軸ずれ量推定処理の堅牢性を高めることができ、さらにはこのようなレーダ装置の主な用途である衝突予測・回避システムの安全性を高めることに寄与する。
この発明は、レーダ技術の精度を向上させるために有用であり、特に自動車搭載用レーダ装置に適用することができる。

Claims (10)

  1. 走行する車両前方の目標物を検出するレーダの軸ずれ量を求める軸ずれ量推定方法であって、
    前記レーダの送信波のエコーからこのレーダの覆域の所定の一部領域に反射点が属する静止物エコーを選択するエコー選択ステップと、
    前記エコー選択ステップにおいて選択された静止物エコーの反射点の分布を直線近似して前記車両の走行軌道に平行な基準直線を算出する基準直線算出ステップと、
    前記基準直線算出ステップにおいて算出された基準直線の方向に基づいてレーダの軸ずれ量を求める軸ずれ量推定ステップと、
    を有することを特徴とする軸ずれ量推定方法。
  2. 請求の範囲第1項に記載の軸ずれ量推定方法において、
    エコー選択ステップは、車両の走行軌道とのなす角がほぼ0°となる境界線に分割されるレーダの覆域の所定の一部領域に反射点が属する静止物エコーを選択することを特徴とする軸ずれ量推定方法。
  3. 請求の範囲第2項に記載の軸ずれ量推定方法において、
    エコー選択ステップは、車両の走行軌道とのなす角がほぼ0°となる境界線によって左右に分割された覆域の何れかの領域に属する静止物エコーを選択することを特徴とする軸ずれ量推定方法。
  4. 請求の範囲第1項に記載の軸ずれ量推定方法において、
    基準直線算出ステップは、エコー選択ステップにおいて選択された静止物エコーの反射点の分布を近似する第1の直線を求め、この第1の直線との距離が所定値以下となる反射点の分布を近似する第2の直線を基準直線として算出することを特徴とする軸ずれ量推定方法。
  5. 走行する車両前方の目標物を検出するレーダであって、送信波のエコーを受信し、受信したエコーの反射点の距離と速度とを検出するレーダの軸ずれ量を推定する軸ずれ量推定装置において、
    前記送信波のエコーから、前記距離と速度とに基づいて静止物エコーを選択する静止物抽出部と、
    前記レーダの覆域を複数の領域に分割する観測域分割部と、
    前記静止物抽出部によって選択された静止物のエコーの反射点であって、前記観測域分割部によって分割された一部の領域に属する反射点の分布を直線近似して前記車両の走行軌道に平行な基準直線を求め、この基準直線に基づいて前記レーダの軸ずれ量を求める基準直線算出部と、
    を備えることを特徴とする軸ずれ量推定装置。
  6. 請求の範囲第5項に記載の軸ずれ量推定装置において、
    観測域分割部は、レーダを搭載する車両の走行軌道とのなす角がほぼ0°となる境界線によってレーダの覆域を複数の領域に分割することを特徴とする軸ずれ量推定装置。
  7. 請求の範囲第6項に記載の軸ずれ量推定装置において、
    観測域分割部は、レーダの軸を境界線としてこのレーダの覆域を左右に分割することを特徴とする軸ずれ量推定装置。
  8. 請求の範囲第5項に記載の軸ずれ量推定装置において、
    基準直線算出部は、静止物抽出部によって選択された静止物のエコーの反射点であって、観測域分割部によって分割された一部の領域に属する反射点の分布を直線近似して第1の直線を求め、さらにこの第1の直線との距離が所定値以内となる静止物のエコーの反射点の分布を近似する第2の直線を基準直線として算出すること特徴とする軸ずれ量算出装置。
  9. 請求の範囲第5項に記載の軸ずれ量推定装置において、
    基準直線を記憶する基準直線記憶部を備え、
    基準直線算出部は、静止物抽出部によって選択された静止物のエコーの反射点であって、観測域分割部によって分割された一部の領域に属する反射点の分布を直線近似して第1の直線を求め、第1の直線と前記反射点との距離に基づいて第1の直線を基準直線とするか否かを決定し、第1の直線を基準直線とする場合には、この第1の直線を前記基準直線記憶部に記憶させてかつ基準直線として出力し、第1の直線を基準直線としない場合は、前記基準直線記憶部が記憶する基準直線を用いて基準直線を算出する、
    ことを特徴とする軸ずれ量推定装置。
  10. 請求の範囲第5項に記載の軸ずれ量推定装置において、
    車両の軌道の曲率を取得する軌道曲率取得部と、
    車両の軌道の曲率とを記憶する軌道曲率記憶部と、
    基準直線を記憶する基準直線記憶部を備え、
    基準直線算出部は、前記軌道曲率記憶部が記憶する車両の軌道の曲率を第1の車両の軌道の曲率として取得するとともに、前記軌道曲率取得部から第2の車両の軌道の曲率を取得してこの第2の車両の軌道の曲率を前記軌道曲率記憶部に車両の軌道の曲率を記憶させ、さらに前記第1の車両の軌道の曲率と前記第2の車両の軌道の曲率とがともに所定値以内である場合に、静止物抽出部によって選択された静止物のエコーの反射点であって、観測域分割部によって分割された一部の領域に属する反射点の分布を直線近似して基準直線を算出し、前記第1の車両の軌道の曲率と第2の車両の軌道の曲率との何れかが所定値を超える場合に前記基準直線記憶部が記憶する基準直線を用いて基準直線を算出する、
    ことを特徴とする軸ずれ量推定装置。
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