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JPWO2004065611A1 - 抗体の軽鎖スクリーニング方法 - Google Patents

抗体の軽鎖スクリーニング方法 Download PDF

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JPWO2004065611A1 JP2005508106A JP2005508106A JPWO2004065611A1 JP WO2004065611 A1 JPWO2004065611 A1 JP WO2004065611A1 JP 2005508106 A JP2005508106 A JP 2005508106A JP 2005508106 A JP2005508106 A JP 2005508106A JP WO2004065611 A1 JPWO2004065611 A1 JP WO2004065611A1
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Abstract

本発明は、(a)所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を製造する工程、(b)抗体軽鎖ライブラリーを工程(a)の宿主に導入し、前記重鎖及び前記軽鎖により構成される抗体を提示するライブラリーを製造する工程、(c)工程(a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するライブラリーを選択する工程、(d)工程(c)において選択されたライブラリーを工程(a)の抗原とは異なる所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するライブラリーを製造する工程、及び(e)工程(d)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するライブラリーを選択する工程を含む共通軽鎖をスクリーニングする方法に関する。

Description

本発明は、多重特異性抗体の異なる特異性を有する重鎖に対応して高いアフィニティーを示す共通軽鎖をスクリーニングする方法に関する。
二重特異性抗体(bispecific antibody;BsAb)は、二機能性抗体(bifunctional antibody)と呼ばれることもあり、2つの抗原決定基に特異的な結合部位を有する、2種類の抗原と反応することができる多価抗体である。BsAbは、ハイブリッドハイブリドーマ、即ちクアドローマ(quadroma)と呼ばれる2種類の異なるモノクローナル抗体産生細胞の融合体を用いて産生することができる(米国特許第4,474,893号公報;R.Bos and W.Nieuwenhuitzen(1992)Hybridoma 11(1):41−51)。また、2種類のモノクローナル抗体のFab(抗原結合性)断片、またはFab’断片を化学的(M.Brennan et al.(1985)Science 229(1708):81−3)、または遺伝子操作により結合して作製することもできる。さらに、2つの完全なモノクローナル抗体を共有結合することにより作製することもできる(B.Karpovsky et al.(1984)J.Exp.Med.160(6):1686−701)。
BsAb製造方法における問題点として、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖が無作為に組み合わさるため、10種類の異なる抗体分子が産生される可能性がある点が挙げられる(M.R.Suresh et al.(1986)Methods Enzymol.121:210−28)。クアドローマにより産生される10種類の抗体のうち、所望の二特異性を有する抗体は、正しい軽鎖と重鎖が組合されており、且つ、異なる結合特性を有する2組の軽鎖・重鎖ペアにより構成された1種類の抗体のみである。そこで、クアドローマにより産生される10種類の抗体から所望の二重特異性を有する抗体を選択的に精製する必要がある。精製は、一般にアフィニティークロマトグラフィーを利用して行われるが、余計な手数を要し、またその収量も少なくなってしまうという問題点がある(Y.S.Massimo et al.(1997)J.Immunol.Methods 201:57−66)。
このような問題点を解消し、より大きな収量でBsAbを得る方法として、例えば、Fab’−チオニトロ安息香酸(TNB)誘導体とFab’−チオール(SH)等の抗体断片を化学的に連結する方法が知られている(Brennan et al.(1985)Science 229:81)。さらに、化学的に連結させることができるFab’−SH断片をより簡便に得るための方法として、大腸菌等の宿主から遺伝子組換技術により産生する方法が知られている(Shalaby et al.(1992)J.Exp.Med.175:217−25)。遺伝子組換技術を用いることにより、ヒト化抗体断片より構成されるBsAbを得ることもできる。また、ダイアボディ(Db)は、遺伝子融合により構築された軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)が互いに結合できないくらいに短いリンカーによって結合されている2種類の断片からなるBsAbである(P.Holliner et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−8;EP404,097号;WO93/11161号)。このようなDbをさらに改良したものとして単鎖(single chain)Dbを挙げることができる(特願2002−112369号公報)。しかしながら、抗体断片は、完全長の抗体に比べ血清半減期が短く、完全抗体のようにエフェクター機能も有していない。そのため、完全長の抗体の方が、より診断や治療に適している場合があると考えられている。
産生された抗体重鎖をヘテロダイマーとして効率的に結合するための方法として、抗体重鎖のマルチマー化ドメインのCH3(定常領域の一部)ドメインに立体的に相補的な変異を導入する方法が知られている(Ridgway et al.(1996)Protein Eng.9:617−21)。この方法により製造された重鎖も、依然として誤った軽鎖と対形成し得る。そこで、特許文献1には、抗体結合ドメインを有するヘテロマー性ポリペプチドと結合した共通の軽鎖を有する多重特異性抗体を製造する方法が記載されている。
2つの異なる抗原に対する特異的結合能を有するBsAbは、in vitro及びin vivoにおける免疫診断、治療及び免疫学的検定等の臨床分野において標的化薬剤として有用である。例えば、BsAbの一方の腕を酵素免疫分析に使用する酵素上の酵素反応を阻害しない部分のエピトープと結合するように、そして他方の腕を固定化用担体に結合するように設計してやることで、担体上に酵素を結合する媒体として使用することができる(Hammerling et al.(1968)J.Exp.Med.128:1461−73)。その他、例えば、抗体ターゲティング化血栓溶解療法を挙げることができる。該療法として、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、プロウロキナーゼ等の酵素またはその前駆体等の蛋白を、血栓に含まれるフィブリン特異的に運搬する抗体を用いることが検討されている(T.Kurokawa et al.(1989)Bio/Technology 7:1163;特開平5−304992号公報)。さらに、癌ターゲティングに応用可能なマウス・ヒト・キメラ二重特異性抗体(特開平2−145187号公報)、種々の腫瘍を対象とした癌治療及び診断(例えば、特開平5−213775号公報;特開平10−165184号公報;特開平11−71288号公報;特表2002−518041号公報;特表平11−506310号公報;Link et al.(1993)Blood 81:3343;T.Nitta et al.(1990)Lancet 335:368−71;L.deLeij et al.(1990)Foundation Nationale de Transfusion Sanguine,Les Ulis France 249−53;Le Doussal et al.(1993)J.Nucl.Med.34:1662−71;Stickney et al.(1991)Cancer Res.51:6650−5参照)、真菌治療(特開平5−199894号公報)、免疫応答誘導(特表平10−511085号公報;Weiner et al.(1993)Cancer Res.53:94−100)、T細胞殺細胞作用の誘導(Kroesen et al.(1994)Br.J.Cancer 70:652−61;Weiner et al.(1994)J.Immunol.152:2385)、免疫分析(M.R.Suresh et al.(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7989−93;特開平5−184383号公報)、免疫組織化学(C.Milstein and A.C.Cuello(1983)Nature 305:537)等にBsAbを使用することが報告されている。
抗体の抗原特異性を決定する重鎖及び軽鎖の可変領域塩基配列を取得することにより、特定の抗原に特異的な抗体を遺伝子工学的に作製することができる(J.Xiang et al.(1990)Mol.Immunol.27:809;C.R.Bebbington et al.(1992)Bio/Technology 10:169)。抗原特異的な重鎖及び軽鎖を取得する方法として、大腸菌を宿主とし、ファージまたはファージミドを利用した方法が公知である(W.D.Huse et al.(1989)Science 246:1275;J.McCafferty et al.(1990)Nature 348:552;A.S.Kang et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4363)。これらの方法ではFabを産生させて抗体ライブラリーとするか、または、Fab若しくは一本鎖Fvとファージコート蛋白質との融合蛋白質を産生させて抗体ライブラリーとする。最終的に、抗原との結合性を調べることにより、それらの抗体ライブラリーから抗原特異的抗体及びその遺伝子を選択する。
〔特許文献1〕特表2001−523971号公報
二重特異性IgGの作製では、異なる抗原に対する2つの抗体を選択し、その2つの重鎖遺伝子、2つの軽鎖遺伝子を細胞に導入することになるが、その組み合わせは上記従来技術においても述べたように10通りにものぼる。そして特許文献1では、IgGのCH3部分にアミノ酸置換を導入することで重鎖のヘテロな組合せのものを優先的に発現する方法を開発し、さらに軽鎖を共通のものにすることで効率良く二特異性IgGの発現を行うことが提案されている。しかし任意の抗体を2つ選んだ場合、同じ軽鎖を含む可能性は低く、上記アイデアを実行することは困難である。本発明は、任意の異なる重鎖に対応し高いアフィニティーを示す共通軽鎖をスクリーニングする方法を提供する。
本発明者らは、BsAbの作成に利用可能な異なる重鎖に対応し、抗原に対し高いアフィニティーを示す共通軽鎖を、(1)抗原Aに対する抗体A、及び抗原Bに対する抗体Bをそれぞれ選択し、(2)該抗体の重鎖(好ましくはFd部分、即ちVH及びCH1を含む領域)をコードする遺伝子の発現ベクターを導入して各重鎖の分泌株Ha(抗体Aの重鎖を分泌)及びHb(抗体Bの重鎖を分泌))を用意し、(3)別に、軽鎖がファージの表面蛋白との融合蛋白質として発現されるライブラリーを構築し、(4)該軽鎖ライブラリーを前記大腸菌Haに導入して抗体Aの重鎖と様々な軽鎖から成る抗体(重鎖がFd部分の場合はFab)を表面に提示したファージライブラリーを分泌させ(図1)、(5)該ライブラリーから、抗原Aによるパニングにてクローンを濃縮し、(6)得られたクローンをさらに大腸菌Hbに感染させ、抗体Bの重鎖と様々な軽鎖から成る抗体(重鎖がFd部分の場合はFab)を表面に提示したファージライブラリーを得、(7)該ライブラリーを抗原Bによるパニングによってクローンを濃縮するという工程を繰り返すことによって(図2)得ることができることに想到し、本発明を完成した。
より詳細には、本発明は、下記発明に関するものである。
(1)以下の工程を含む共通軽鎖をスクリーニングする方法。
(a)所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を製造する工程
(b)抗体軽鎖ライブラリーを工程(a)の宿主に導入し、前記重鎖及び前記軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(c)工程(a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
(d)工程(c)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)の抗原とは異なる所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(e)工程(d)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
(2)以下の工程を含む共通軽鎖をスクリーニングする方法。
(a)所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を製造する工程
(b)抗体軽鎖ライブラリーを工程(a)の宿主に導入し、前記重鎖及び前記軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(c)工程(a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
(d)工程(c)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)の重鎖とは異なるアミノ酸配列を有する重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(e)工程(d)記載の重鎖が認識する抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
(3)抗体重鎖がFdであり、重鎖及び軽鎖により構成される抗体がFabである、上記(1)または(2)記載の方法。
(4)宿主が大腸菌である、上記(1)または(2)記載の方法。
(5)工程(b)から(e)を2回以上繰り返す、上記(1)または(2)記載の方法。
(6)以下の工程をさらに含む、上記(1)記載の方法。
(f)工程(e)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)及び(d)の抗原とは異なる所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(g)工程(f)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
(7)以下の工程をさらに含む、上記(2)記載の方法。
(f)工程(e)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)及び(d)の重鎖とは異なるアミノ酸配列を有する重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
(g)工程(f)記載の重鎖が認識する抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
(8)上記(1)〜(7)のいずれかの方法により得られた軽鎖。
(9)上記(8)記載の軽鎖を含む抗体。
(10)以下の工程を含む抗体の軽鎖の製造方法。
(a)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のスクリーニング方法により抗体の軽鎖を選択する工程
(b)選択された軽鎖の遺伝子配列を基に、該軽鎖を発現可能なベクターを作製する工程
(c)該ベクターを宿主細胞に導入する工程
(d)該宿主細胞を培養する工程
(11)軽鎖を提示可能なファージが感染し、かつ重鎖を発現可能なベクターを有する宿主。
(12)軽鎖を提示可能なファージが感染し、かつ重鎖を発現可能なベクターを有する大腸菌。
本発明は、(a)所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を製造する工程、(b)抗体軽鎖ライブラリーを工程(a)の宿主に導入し、前記重鎖及び前記軽鎖により構成される抗体を提示するライブラリーを製造する工程、(c)工程(a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するライブラリーを選択する工程、(d)工程(c)において選択されたライブラリーを工程(a)の抗原とは異なる所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するライブラリーを製造する工程、及び(e)工程(d)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するライブラリーを選択する工程、を含む共通軽鎖をスクリーニングする方法に関する。本発明の方法は、特にBsAbの作成に利用可能な異なる重鎖に対応し、抗原に対し高いアフィニティーを示す共通軽鎖を選択するために利用することができる。しかしながら、上記本発明の方法において、工程(b)及び(c)、または工程(b)から(e)をさらに異なる種類の重鎖を分泌する宿主及びそれに対応した抗原を用いて繰り返すことにより、BsAbのみならず、3種類以上の抗原に対して特異性を示す多重特異性抗体の作成に利用できる、より多くの重鎖に対応し、抗原に対して高いアフィニティーを示す共通軽鎖をスクリーニングしてくることができる。本明細書中に記載される多重特異性抗体とは、少なくとも2種類の異なる抗原に対して特異的に結合することができる抗体である。好ましい多重特異性抗体として2つの抗原に対して特異的に結合することができるBsAbを挙げることができる。
本発明において、「異なる抗原」とは必ずしも抗原自体が異なる必要はなく、抗原決定基が異なる場合等も本発明の「異なる抗原」に含まれる。従って、例えば、単一分子内の異なる抗原決定基も本発明の異なる抗原に含まれ、このような単一分子内の異なる抗原決定基を各々認識する2つの抗体は、本発明において異なる抗原を認識する抗体として扱われる。また、本発明において「共通軽鎖」とは、異なる2種以上の重鎖と会合し、それぞれの抗原に対して結合能を示し得る軽鎖である。ここで、「異なる重鎖」とは、好ましくは異なる抗原に対する抗体の重鎖を指すが、それに限定されず、アミノ酸配列が互いに異なっている重鎖を意味する。従って、本発明は、(a)所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を製造する工程、(b)抗体軽鎖ライブラリーを工程(a)の宿主に導入し、前記重鎖及び前記軽鎖により構成される抗体を提示するライブラリーを製造する工程、(c)工程(a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するライブラリーを選択する工程、(d)工程(c)において選択されたライブラリーを工程(a)の重鎖とは異なるアミノ酸配列を有する重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程、並びに(e)工程(d)記載の重鎖が認識する抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程、を含む共通軽鎖をスクリーニングする方法にも関する。
本発明は、2種類以上の異なる抗体の重鎖に対応し、抗原に対し高いアフィニティーを示す共通軽鎖をスクリーニングする方法に関するものである。本発明のスクリーニング方法では、まず、所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を得る必要がある。該宿主は、例えば、BsAbを作成する場合には、所望の2種類の抗原の各々に対応する重鎖を分泌する2種類の宿主が必要であり、3特異性抗体であれば3種類、4特異性抗体であれば4種類必要となる。以下、例示的にBsAbにおける共通重鎖をスクリーニングするための方法を中心として説明する。
本発明のスクリーニングに必要な抗体重鎖を分泌する宿主を得るため、まず、2種類の抗原(便宜的に、抗原A及び抗原Bとする)に対する抗体を選択し、それらを産生する細胞を取得する。以後の説明において抗原Aに対する抗体を抗体A、抗原Bに対する抗体を抗体Bと呼ぶ。これらの抗体産生細胞は、適当な感作抗原を用いて動物を免疫化することにより得ることができる。または、抗体を産生し得るリンパ球をin vitroで免疫化して抗体産生細胞とすることもできる。免疫化する動物としては、各種哺乳動物を使用できるが、ゲッ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が一般的に用いられる。マウス、ラット、ハムスター等のゲッ歯目、ウサギ等のウサギ目、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等のサル等の霊長目の動物を例示することができる。その他、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物も知られており、このような動物を使用することによりヒト抗体を得ることもできる(WO96/34096;Mendez et al.(1997)Nat.Genet.15:146−56参照)。
動物の免疫化は、感作抗原をPhosphate−Buffered Saline(PBS)または生理食塩水等で適宜希釈、懸濁し、必要に応じてアジュバントを混合して乳化した後、動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。その後、好ましくは、フロイント不完全アジュバントに混合した感作抗原を4〜21日毎に数回投与する。抗体の産生の確認は、動物の血清中の目的とする抗体力価を慣用の方法により測定することにより行われ得る。
動物を免疫化する抗原としては、免疫原性を有する完全抗体と、免疫原性を有さない不完全抗原(ハプテンを含む)のどちらかを利用することができる。例えば、蛋白質、ポリペプチド、多糖類、核酸、脂質等からなる物質を抗原として使用することができる。動物を免疫するのに用いる免疫原としては、必要に応じ、抗原となる分子を他の分子(例えば、キーホルリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイクログロブリン、ダイズトリプシン阻害剤等)に結合させて可溶性抗原とすることもできる。さらに、場合により、該可溶性抗原の断片を免疫原として利用してもよい。受容体等の膜貫通分子を抗原として用いる場合には、好ましくは、これらの断片(例えば、受容体の細胞外領域)を使用する。また、膜貫通分子を細胞表面上に発現する細胞を免疫原としてもよい。このような細胞としては、天然(腫瘍セルライン等)由来の細胞も存在するが、遺伝子組換技術により膜貫通分子を発現する細胞を調製してもよい。
本発明の共通軽鎖を選択する方法は、多様な抗原に対するBsAbを製造するのに適用できるものである。例えば、BsAbを癌治療において使用することを目的とする場合には、例えば、抗体の一方の腕は腫瘍細胞抗原を認識するように調製し、他方の腕は細胞傷害性を誘起する分子を認識するように設計することができる。腫瘍細胞抗原としては、例えば、1D10(悪性B細胞)、AMOC−1(pan carcinoma associated antigen)、CAMA1、CD7、CD15、CD19、CD22、CD38、CEA、EGF受容体、Id−1、L−D1(大腸癌)、MoV18、p97、p185HER2、OVCAR−3、神経細胞接着分子(neural cell adhesion molecule;NCAM)、腎細胞癌、メラノサイト刺激ホルモンアナログ、葉酸結合蛋白質(FBP)等が挙げられる。また、細胞傷害性を誘起する分子としては、CD3、CD16、FcγRIが例示される。その他、IFN−α、サポニン、ピンカアルカロイド、リシンのA鎖等の毒素と結合できるようBsAbを設計することもできる。
また、ヘテロ二量体を形成し、リガンドとの結合によりその鎖間の距離または角度等が変化することにより細胞内にシグナルを伝達する受容体(例えば、多くのサイトカイン受容体)に対して結合するようにBsAbを構築することにより、該BsAbはリガンドによる受容体の二量体化を模倣できるアゴニスト抗体として利用することができる。
その他にも、(1)CD30及びアルカリホスファターゼに結合し、リン酸マイトマイシンをマイトマイシンアルコールに変換する等の、化学物質の変換を助ける酵素と相互作用するBsAb、(2)繊維素溶解剤として使用できる、フィブリン、tPA、uPA等に結合するBsAb、(3)LDL及びFc受容体(FcγRI、FcγRII、またはFcγRIII)等に結合し免疫複合体を細胞表面受容体へ誘導するBsAb、(4)CD3等のT細胞上の抗原と、HCV、インフルエンザ、HIV等の病原菌の抗原を認識する感染性の疾患に使用できるBsAb、(5)腫瘍の検出に使用し得る腫瘍抗原と、EOTUBE、DPTA、ハプテン等の検出可能な物質に結合性を有するBsAb、(6)ワクチンアジュバントとして使用し得るBsAb(Fanger et al.(1992)Crit.Rev.Immunol.12:101−24参照)、並びに(7)診断において使用し得るウサギIgG、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、FITC、β−ガラクトシダーゼ等の検出可能な物質と、ホルモン、フェリチン、ソマトスタチン、サブスタンスP、CEA等を抗原とするBsAb等が知られている。本発明の共通軽鎖を選択する方法は、これらの公知のBsAbを含む多様な多重特異性抗体の製造(WO89/02922号パンフレット、EP314、317号公報、US5116964号公報参照)において利用することができる。
次に、所望の抗原で免疫化した動物またはリンパ球より得られた抗体産生細胞を、慣用の融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を使用してミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作成する(Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,59−103)。必要に応じハイブリドーマ細胞を培養・増殖し、免疫沈降、放射免疫分析(RIA)、酵素結合免疫吸着分析(ELISA)等の公知の分析法により該ハイブリドーマより産生される抗体の結合特異性を測定する。その後、必要に応じ、目的とする特異性、親和性または活性が測定された抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈法等の手法によりサブクローニングすることもできる。
続いて、選択された抗体A及び抗体Bの重鎖をコードする遺伝子をハイブリドーマまたは抗体産生細胞(感作リンパ球等)から、重鎖に特異的に結合し得るプローブ(例えば、抗体定常領域をコードする配列に相補的なオリゴヌクレオチド等)を用いてクローニングする。また、mRNAからRT−PCRによりクローニングすることも可能である。免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの異なるクラスに分類される。さらに、これらのクラスは幾つかのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3、及びIgG−4;IgA−1及びIgA−2等)に分けられる。本発明において使用する抗体重鎖は、これらいずれのクラス及びサブクラスに属するものであってもよく、特に限定されないが、IgGは特に好ましいものである。
上述のハイブリドーマに代えて抗体ライブラリーから所望の抗原との結合性を利用して、目的とする抗体または抗体断片をコードする遺伝子を取得することもできる。抗体ライブラリーの構築は周知であり、様々な方法により作成し、利用することができる。例えば、抗体ファージライブラリーについては、Clackson et al.(1991)Nature 352:624−8、Marks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581−97、Waterhouses et al.(1993)Nucleic Acids Res.21:2265−6、Griffiths et al.(1994)EMBO J.13:3245−60、Vaughan et al.(1996)Nature Biotechnology 14:309−14、及び特表平10−504970号公報等の文献を参照することができる。その他、真核細胞をライブラリーとする方法(WO95/15393号パンフレット)やリボソーム提示法などの公知の方法を用いることが可能である。
ここで、重鎖をコードする遺伝子を遺伝子工学的手法により改変することも可能である。遺伝子工学的に非ヒト哺乳動物(マウス、ラット、ハムスター等)由来のモノクローナル抗体のCDR(相補性決定領域)以外の部分をヒト免疫グロブリン由来の可変領域の枠組構造配列に置換し、「ヒト化抗体」とする技術が公知である(例えば、Jones et al.(1986)Nature 321:522−5;Reichmann et al.(1988)Nature 332:323−9;Presta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−6参照)。ヒト化抗体は、レシピエント抗体に導入されたCDRまたは枠組構造配列のどちらにも含まれないアミノ酸残基を含んでいてもよい。通常、このようなアミノ酸残基の導入は、抗体の抗原認識及び/または結合能力をより正確に至適化するために行われる。本発明の方法のスクリーニングに使用する重鎖は、このようなヒト化等の改変されたものであってもよい。
上述のヒト化以外に、例えば、抗原との結合性等の抗体の生物学的特性を改善するために改変を行うことも考えられる。このような改変は、部位特異的突然変異(例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488参照)、PCR変異、カセット変異等の方法により行うことができる。一般に、生物学的特性の改善された抗体変異体は70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%以上、97%、98%、99%等)のアミノ酸配列相同性及び/または類似性を元となった抗体重鎖の可変領域のアミノ酸配列に対して有する。本明細書において、配列の相同性及び/または類似性は、配列相同性が最大の値を取るように必要に応じ配列を整列化、及びギャップ導入した後、元となった抗体残基と相同(同じ残基)または類似(一般的なアミノ酸の側鎖の特性に基き同じグループに分類されるアミノ酸残基)するアミノ酸残基の割合として定義される。通常、天然のアミノ酸残基は、その側鎖の性質に基いて(1)疎水性:アラニン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、メチオニン及びロイシン;(2)中性親水性:アスパラギン、グルタミン、システイン、スレオニン及びセリン;(3)酸性:アスパラギン酸及びグルタミン酸;(4)塩基性:アルギニン、ヒスチジン及びリシン;(5)鎖の配向に影響する残基:グリシンおよびプロリン;ならびに(6)芳香族性:チロシン、トリプトファン及びフェニルアラニンのグループに分類される。
本発明の方法において用いる抗体重鎖を分泌する宿主細胞は、抗体の重鎖の全長を分泌するものでも、重鎖の一部の断片を分泌するものであってもよい。従って、本発明の重鎖とは、抗体重鎖の全長、及び重鎖の断片が含まれる。重鎖の断片は、特に限定されないが、重鎖可変領域を含む断片であることが好ましく、特に好ましくはFd部分(重鎖の可変領域(VH)及び定常領域(CH1))を含む断片である。しかしながら、特にこれに限定されるものではなく、重鎖の可変領域のみ、可変領域の一部、または定常領域のその他の領域(CH2及び3)を含む部分を分泌する構成としてもよい。
所望の抗体重鎖をコードする遺伝子部分を、適当な宿主細胞における発現に適した発現ベクターに導入する。本発明の方法では、重鎖を分泌する宿主細胞は特に限定されるものではないが、ファージを感染させることができる細菌、特にグラム陰性細菌が好ましく、中でも、F因子を発現する大腸菌が好ましい。F因子を発現する大腸菌としては、例えば、XL1−Blueを挙げることができる。
本発明の方法において特に好ましい、重鎖を大腸菌で発現させるためのベクターは、遺伝子情報の転写及び翻訳を制御するプロモーター、ターミネーター等のユニットを含む必要がある。例えば、プラスミドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用することができる。プロモーターとしは、lac、trp、tac、λファージPL、PR等に由来するプロモーターが利用可能である。ターミネーターとしては、trpA、ファージ、rrnBリボソーマルRNA由来のものを使用することができる。
構築した発現ベクターは宿主細胞へ導入し、各抗体の重鎖を分泌する株を取得する。発現ベクターは、カルシウムイオンを用いた方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2110(1972))、プロトプラスト法(特開昭63−24829号公報)、エレクトポーレション法(Gene 17:107(1982);Molecular&General Genetics 168:111(1979))等の方法により宿主細胞へ導入され得る。
本発明のスクリーニング方法においてスクリーニングの対象となる抗体軽鎖のプールは、重鎖を分泌する宿主として細菌を選択した場合には、ファージライブラリーの形態とするのが好ましい。軽鎖をコードする遺伝子としては、ヒトまたはその他の動物の末梢血単核球、骨髄、または脾臓調製物由来のRNAを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)等により増幅して得られた遺伝子群、合成DNA等を利用することができる。その他、抗体のCDR領域内に変異を誘発して抗体ライブラリーの多様性を高める方法も知られている(特表平10−504970号公報)。このような方法により多様性を高められた抗体軽鎖遺伝子ライブラリーを本発明のスクリーニング方法における軽鎖をコードする遺伝子のプールとして使用することもできる。本発明の軽鎖には、軽鎖の全長、及び軽鎖の一部の断片が含まれる。軽鎖の断片とは、特に限定されないが、軽鎖可変領域(VL)を含む断片であることが好ましい。
ファージライブラリーを作製するため、通常、軽鎖をコードするDNAを、該軽鎖が外表面蛋白質またはディスプレイアンカー蛋白質との融合蛋白質としてファージ外表面へ提示されるように適当なファージベクターに組込む。ここで、ファージベクターは特に限定されないが、通常、バクテリオファージ用の複製開始点(ori)を含む、ファージゲノムの修飾により誘導されるベクターである。ファージベクターは、好ましくは、N末からC未の方向で(1)軽鎖、及び(2)ファージ膜アンカードメイン(外表面蛋白質またはディスプレイアンカー蛋白質の全部若しくは一部)をコードしている。また、必要に応じ、上記(1)及び(2)によりコードされる蛋白質が、宿主細菌の細胞外へ分泌されバクテリオファージに取込まれることを可能とする原核細胞分泌シグナルドメインをコードする配列を(1)の軽鎖をコードする配列の前に有している。
軽鎖をファージ粒子表面上に提示させるためのファージ膜アンカードメインは、糸状ファージ粒子の外膜と結合することができ、それにより融合蛋白質を取り込ませることができる外表面蛋白質またはディスプレイアンカー蛋白質の全部または一部である。外表面蛋白質またはディスプレイアンカー蛋白質とは、成熟ファージ粒子をコートする蛋白質であり、例えば、ファージ粒子のメジャーコート蛋白質であるcpVIIIや、それ以外のマイナーなコート蛋白質であるcpVI、cpVII、cpIX、あるいは感染吸着蛋白質であるcpIII蛋白質を挙げることができる。特に、cpIIIまたはcpVIII蛋白質との融合蛋白質として発現させるのが好ましく、中でもcpIII蛋白質との融合蛋白質の発現はよく研究されている(Smith(1985)Science 228:1315−7;de la Cruz et al.(1988)J.Biol.chem.263:4318−22参照)。膜アンカードメインは、これらの成熟ファージ粒子をコートする蛋白質のC末領域の一部を含むものであり、脂質二重層膜を貫通するための疎水性アミノ酸残基の領域、及び、細胞質領域の荷電したアミノ酸残基の領域である。
分泌シグナルは、宿主細胞からの融合蛋白質の分泌を可能にするリーダーペプチド配列であればよく、pel1B分泌シグナルを例示することができる(Better et al.(1988)Science 240:1041−3;Sastry et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5728参照)。
上述のようなファージベクターでは、通常、ファージ粒子の産生に必要なファージゲノム配列が除去または不活性化されている。そこで、該ファージベクターを宿主細菌に感染させてファージ粒子を産生させるために、一般的には、ヘルパーファージが必要とされる。ヘルパーファージは、欠損ファージまたはファージベクターを含む細胞に対して感染され、該欠損ファージまたはファージベクターを補足する機能を有する。
ファージライブラリーを構成するファージ粒子は特に限定されず、例えば、Charon4A、Charon30、f1、f2、fd、G4、If1、Ike、M13、MS2、P1、P2、P4、Pf1、Pf3、T4、T7、Xf、λ、λB、λgWES、ΦK、ΦX174等の公知のファージを利用することができるが、好ましくはfd、f1、M13などの糸状ファージである。このようにして作製されたライブラリーの個々のファージ粒子は、粒子表面上に提示される軽鎖融合蛋白質をコードする対応ファージミドのコピーを含む。従って、軽鎖提示ファージライブラリーに対して抗体Aの重鎖を接触させ、ファージ粒子上に提示される軽鎖融合蛋白質に該重鎖が会合したものを抗原Aに対する結合能によりファージ粒子を分離してくることにより抗体Aの重鎖と会合し、抗原Aに対する結合能を有する軽鎖をコードする遺伝子を得ることができる。
例えば、f1ファージのoriを含んだベクターを用いて、軽鎖(例えば、VL及びCLを含むもの)がf1ファージのgene3蛋白(マイナーコート蛋白質)と融合蛋白として発現するライブラリーを構築する。この軽鎖ライブラリーを先に述べた抗体Aの重鎖(例えば、Fd)を発現する大腸菌宿主に導入し、ヘルパーファージを感染させることにより、gene3蛋白との融合蛋白として抗体Aの重鎖と様々な軽鎖から成る抗体(重鎖がFdであり、軽鎖がVL及びCLを含む場合にはFab)を表面に提示するファージライブラリーを大腸菌から分泌させることができる(図1)。
WO95/15393号パンフレットには、抗体本来の抗原結合能をスクリーニング段階からより正確に調べることを可能にする抗体真核細胞ライブラリーの構築も提案されている。そこで、本発明の方法において、大腸菌等の細菌宿主に代えて、抗体を細胞表面上に提示する抗体真核細胞ライブラリーを採用することもできる。即ち、所望の重鎖(例えば、Fd)をコードする遺伝子を、該遺伝子の発現に適したプロモーター及び該重鎖を分泌可能なシグナル配列の下流に連結した発現ベクターを真核細胞宿主に導入する。そして、軽鎖をコードする遺伝子は、該軽鎖が発現された場合に細胞表面上に提示されるように細胞膜貫通領域をコードする配列と連結して、適当なプロモーターの下流へ挿入し、発現ベクターを構築する。好ましくは、該細胞膜貫通領域は、発現された軽鎖のC末端に付加される。該軽鎖発現ベクターを前記重鎖分泌宿主細胞へ導入することにより、所望の抗原に対して結合する抗体(重鎖としてFdを、そして軽鎖としてVL及びCLを含むものを使用した場合には、提示される抗体はFab断片となる)を細胞表面上に発現している宿主細胞を選択することもできる。
使用する宿主細胞の種類は特に限定されないが、抗体の正しい抗原特異性に基いたスクリーニングを目的とする場合には、真核生物細胞、特に動物細胞が好ましく、さらに哺乳動物細胞が好ましい。例えば、3T3、BHK、Bowesメラノーマ、C127、CHO(J.Exp.Med.108:945(1995);Proc.Natl.Acad.Sci.77:4216(1980);Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1968))、COS、HEK、Hela、KJM、Namalwa、ミエローマ細胞等を例示することができる。重鎖及び軽鎖を発現させるベクターは、選択した宿主における発現に適したものであればよく、pUC18等を利用して構築することができる。重鎖をコードする遺伝子は、周知の技術によりゲノム上に組込むことも可能である。発現ベクターは、エレクトロポレーション法(Chu et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:1311−26)、カチオニックリポソーム法、直接注入法(マイクロインジェクション法)、電気穿孔法(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1987)Section 9.1−9.9)、リポフェクション法(Derijard(1994)Cell 7:11025−37)、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama(1987)Mol.Cell.Biol.7:2745−52)、DEAEデキストラン法(Lopata et al.(1984)Nucleic Acids Res.12:5707−17;Sussmann and Milman(1985)Mol.Cell.Biol.4:1642−3)等の慣用の方法により宿主細胞へ導入する。
次に、本発明のスクリーニング法では、上述のようにして作製された抗体を提示する宿主細胞を抗原Aに対する結合性により選択する。宿主として細菌細胞を選択し、軽鎖をコードする遺伝子をファージライブラリーとした場合には、抗体はファージライブラリーとして宿主細胞より分泌される。従って、抗体Aに対する抗原Aによるパニングにて抗原Aに結合するクローンを宿主細胞より分泌されたファージライブラリーから濃縮することができる。この場合、濃縮された所望のファージライブラリーをそのまま次の工程における宿主細胞の感染に使用することができ、特に都合がよい。ファージライブラリーの分泌ではなく、宿主細胞表面に抗体が提示される形態とした場合には、所望の抗体を提示する細胞から該抗体を構成する軽鎖をコードする発現ベクターを回収し、必要に応じ公知の手段により精製して次の工程に用いる。
続いて、本発明のスクリーニング法では、上述のようにして濃縮されたクローン、または回収された軽鎖発現ベクターを、抗体Bの抗体(例えば、Fd)を分泌する宿主細胞に感染または導入する。ファージライブラリーを用いる場合には、該宿主細胞に対してヘルパーファージを再び重感染させることにより、抗体Bの重鎖(例えば、Fd)と様々な軽鎖から成る抗体(Fd並びにVL及びCLを含む軽鎖を使用した場合にはFab)を表面に提示したファージライブラリーが分泌される。ファージベクター以外の発現ベクターを用いた場合には、細胞表面上に抗体Bの重鎖(例えばFd)と軽鎖から成る抗体(Fd並びにVL及びCLを含む軽鎖を使用した場合にはFab)を表面に提示した様々な細胞が得られる。
次に、抗原Aに対する選択と同様に、ファージライブラリーを用いた場合には、該ライブラリーに対する抗原Bによるパニングによって、宿主細胞より分泌されたファージライブラリーから抗原Bに結合するクローンを濃縮する。また、宿主細胞表面に抗体が提示される形態とした場合には、所望の抗体を提示する細胞から該抗体を構成する軽鎖をコードする発現ベクターを回収し、必要に応じ公知の手段により精製する。以上のようにして、抗原A及び抗原Bに対する軽鎖のスクリーニングを行うことによって、異なる重鎖に対応し、種々の抗原に対して高いアフィニティーを示す共通軽鎖をスクリーニングすることができる(図2)。
さらに、必要に応じ、抗原A及び抗原Bに対する抗体(例えばFd)を分泌する宿主への感染・導入、抗体(またはFab等の使用した軽鎖及び重鎖に応じた抗体断片)の分泌・提示、並びにパニング・選択を繰り返すことによってより選択性の高い共通軽鎖をスクリーニングすることができる。また、スクリーニングする抗原の種類を増やすことによって、より多くの重鎖に対応し、種々の抗原に対して高いアフィニティーを示す共通軽鎖をスクリーニングすることも可能である。このようにして選択された軽鎖、及び軽鎖をコードする遺伝子は、様々な診断及び治療方法において有用なBsAbを含む多重特異性抗体の製造に利用することができる。
図1は、Fab Lchライブラリーの模式図である。
図2は、本発明の異なる重鎖に対応し、高いアフィニティーを示す共通軽鎖のスクリーニング方法の流れを示す模式図である。
産業上の利用の可能性
本発明の方法により、異なる重鎖に対応し、高いアフィニティーを示す共通軽鎖をスクリーニングすることが可能となった。本発明の方法を利用することにより、効率の良く多重特異性抗体の発現を行うことができる。

Claims (12)

  1. 以下の工程を含む共通軽鎖をスクリーニングする方法。
    (a)所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を製造する工程
    (b)抗体軽鎖ライブラリーを工程(a)の宿主に導入し、前記重鎖及び前記軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
    (c)工程(a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
    (d)工程(c)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)の抗原とは異なる所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
    (e)工程(d)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
  2. 以下の工程を含む共通軽鎖をスクリーニングする方法。
    (a)所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主を製造する工程
    (b)抗体軽鎖ライブラリーを工程(a)の宿主に導入し、前記重鎖及び前記軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
    (c)工程(a)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
    (d)工程(c)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)の重鎖とは異なるアミノ酸配列を有する重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
    (e)工程(d)記載の重鎖が認識する抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
  3. 抗体重鎖がFdであり、重鎖及び軽鎖により構成される抗体がFabである、請求項1または2記載の方法。
  4. 宿主が大腸菌である、請求項1または2記載の方法。
  5. 工程(b)から(e)を2回以上繰り返す、請求項1または2記載の方法。
  6. 以下の工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
    (f)工程(e)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)及び(d)の抗原とは異なる所望の抗原に対して結合する抗体の重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
    (g)工程(f)記載の所望の抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
  7. 以下の工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
    (f)工程(e)において選択されたファージライブラリーを、工程(a)及び(d)の重鎖とは異なるアミノ酸配列を有する重鎖を分泌する宿主に対して導入し、該重鎖及び軽鎖により構成される抗体を提示するファージライブラリーを分泌させる工程
    (g)工程(f)記載の重鎖が認識する抗原に対して特異的に結合する抗体を提示するファージライブラリーを選択する工程
  8. 請求項1〜7のいずれかの方法により得られた軽鎖。
  9. 請求項8記載の軽鎖を含む抗体。
  10. 以下の工程を含む抗体の軽鎖の製造方法。
    (a)請求項1〜7のいずれかに記載のスクリーニング方法により抗体の軽鎖を選択する工程
    (b)選択された軽鎖の遺伝子配列を基に、該軽鎖を発現可能なベクターを作製する工程
    (c)該ベクターを宿主細胞に導入する工程
    (d)該宿主細胞を培養する工程
  11. 軽鎖を提示可能なファージが感染し、かつ重鎖を発現可能なベクターを有する宿主。
  12. 軽鎖を提示可能なファージが感染し、かつ重鎖を発現可能なベクターを有する大腸菌。
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