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JPH1158042A - ベイナイト鋼レールのテルミット溶接方法 - Google Patents

ベイナイト鋼レールのテルミット溶接方法

Info

Publication number
JPH1158042A
JPH1158042A JP23151797A JP23151797A JPH1158042A JP H1158042 A JPH1158042 A JP H1158042A JP 23151797 A JP23151797 A JP 23151797A JP 23151797 A JP23151797 A JP 23151797A JP H1158042 A JPH1158042 A JP H1158042A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rail
welding
temperature
reheating
stress
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP23151797A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenichi Karimine
健一 狩峰
Koichi Uchino
耕一 内野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
MINE SEISAKUSHO KK
Nippon Steel Corp
Mi Ne Seisakusho Co Ltd
Original Assignee
MINE SEISAKUSHO KK
Nippon Steel Corp
Mi Ne Seisakusho Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by MINE SEISAKUSHO KK, Nippon Steel Corp, Mi Ne Seisakusho Co Ltd filed Critical MINE SEISAKUSHO KK
Priority to JP23151797A priority Critical patent/JPH1158042A/ja
Publication of JPH1158042A publication Critical patent/JPH1158042A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、このベイナイト鋼レールのテルミ
ット溶接に対し、疲労破壊の生じやすい余盛止端部の残
留応力分布を制御し、疲労強度の高いテルミット溶接継
手を提供する。 【解決手段】 2本のレール端部を間隔を設けて対向設
置し、前記レール端部間の隙間とその周囲を取り囲む耐
火物鋳型によって構成される空間に高温の溶融金属を流
し込み、レールを溶接するテルミット溶接であって、溶
融金属が完全に凝固し、レール頭部溶接金属の表面温度
が300℃以下になるまで冷却した後で、前記凝固部を
含むレール底部足表面を400〜700℃に再加熱する
ことを特徴とするベイナイト鋼レールのテルミット溶接
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はレール突き合わせ溶
接部を疲労破壊から防止することができるレールのテル
ミット溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、軌道保守コストの低減や騒音振動
の低減のために溶接によって継目を連続化するロングレ
ール化が普及しつつある。テルミット溶接法は酸化鉄と
アルミニウムの化学反応を利用した溶接法であり、レー
ルの現地溶接法として広く使われている。
【0003】テルミット溶接法は、「新線路、平成9年
4月号、48頁〜50頁」に説明されているように、鋳
型で覆った溶接部の上方に反応るつぼを設置し、るつぼ
内の化学反応によって生成した溶融鉄を、るつぼ底部の
流出孔を開口させて溶接部に注入し、母材を溶融、接合
する溶接法である。テルミット溶剤はアルミニウム、酸
化鉄、鉄粉粒、合金材から構成される。
【0004】レールには列車通過の際に、多数の車軸の
通過による繰り返し荷重が作用するため、疲労強度が問
題となる場合がある。溶接部に対しても同様に疲労強度
が要求される。溶接部には溶接ビードの存在による応力
集中が生じるとともに、溶接熱による材質変化、内部応
力の再形成を生じているため、母材に比較し疲労強度が
低い。レール溶接方法は数種類あるが、その中でも溶接
部の断面変化が最も大きいテルミット溶接継手が最も疲
労強度が低く、3点曲げ正立姿勢での200万回疲労強
度は22kgf/mm2 程度であるといわれ、最低限21kgf/
mm2 の疲労強度がレール溶接継手に要求される。
【0005】一般に溶接部の疲労強度は余盛(溶接ビー
ド)止端部の応力集中、材料強度、残留応力に影響され
る。テルミット溶接に関する、これら因子の疲労強度へ
の影響について述べる。まず余盛止端部の応力集中に関
しては、長手方向への溶接部の形状変化が大きいほど応
力集中が増加し、疲労強度が低下する。逆に余盛が小さ
く、滑らかであるほど応力集中は軽減され疲労強度は高
くなる。
【0006】テルミット溶接では、アーク溶接における
アークのような集中熱源がない。このため、テルミット
溶接ではレール鋼の溶融がアーク溶接に比較すると不完
全になりやすく、粗大な溶け込み不良を生じることがあ
る。これを避けるために、高温の予熱が行われるが、母
材溶融が特に不利になりやすいレール外表面近傍に対し
ては、十分な熱量が加わるように、比較的大きい余盛を
形成させる必要がある。現在国内で主に使用されている
鋳型は特公昭53−29650号公報に示される鋳型で
あり、その余盛形状はレール底面部で高さ約7mm、幅約
40mmという大型のものである。本発明でもこの標準的
な余盛形状での検討を前提としている。
【0007】溶接余盛を溶接後に完全に除去し平滑化す
るか、余盛止端部のみをグラインダーによって滑らかに
する方法は、応力集中を軽減、解消し、疲労強度を向上
させるのに効果的である。しかしながら、これらの作業
をレールの現地溶接で行うには、レールの底面側に十分
な作業空間を確保する困難さ、底面側加工の際の作業の
困難さ、きらに限定された夜間作業という時間的制約か
ら多大な困難を伴う。
【0008】材料強度が疲労強度に及ぼす影響に関して
は、平滑材料の場合は材料強度が高いほど疲労強度は高
まる。しかしながら余盛止端部において応力集中を生じ
る溶接部では、材料強度が上がると切り欠き感受性が高
まるため、必ずしも材料強度の増加が疲労強度向上につ
ながらない場合がある。このため、材料強度の面から溶
接部の疲労強度を向上する試みは容易ではない。
【0009】一般に溶接を行うと、溶接部にはその冷却
過程で熱応力による変形が生じる。その際に、外部拘束
や、自拘束により変形が制限されると、応力に見合う変
形ができず、発生した応力の一部が残留応力として部材
内に残存する。残留応力は断面内で均衡しており、断面
内の積分値は零になる。従って、局部的に引っ張りの領
域があれば必ず他の領域が圧縮となる。引張残留応力の
存在する部位に外部から繰り返し応力が負荷されると、
外部荷重による応力に残留応力が加算され、疲労強度が
低下する。
【0010】現在国内で使用されている炭素量約0.7
wt%のパーライト鋼レールを、ほぼ同一の炭素量を有す
るテルミット溶接材料で溶接した場合、レール柱部に引
張、頭部と底部に圧縮残留応力が分布する。これは以下
の過程によるものと考えられる。テルミット溶接の冷却
過程では柱部が最も冷却が遅れ、この部分に最後の収縮
応力が生じる。このレール柱部に収縮が生じる時点では
レール頭部とレール底部は温度低下が進んでいる。この
ためレール頭部と底部は塑性変形能が低下しており、こ
れらの部分が柱部の収縮に対して自拘束として働く。こ
のためレール柱部は十分な収縮変形ができず、この部分
に引っ張り残留応力が生じ、これとバランスして頭部と
底部に圧縮残留応力が分布する。このようにレール底部
に圧縮残留応力が残存する場合の継手疲労強度は、残留
応力が中立ないし引張の場合に比較して有利となる。
【0011】溶接残留応力の処理、制御方法としては、
溶接後に再加熱し残留応力を一旦解放する後熱処理が一
般的である。レール溶接においてもいくつかの後熱処理
方法が実施されている。その一つは、簡易加熱炉を用い
て600℃程度まで溶接部を再加熱し、簡易加熱炉内で
徐冷する方法である。この方法は被覆アーク溶接棒を用
いるエンクローズアーク溶接で一般的に用いられてき
た。しかしながらこの処理方法は長時間を要するため、
迅速簡便さを特徴とするテルミット溶接法の長所が損な
われるため望ましくない。
【0012】また、レールの全周にアセチレン炎の火口
を配列したガス圧接用バーナーを用いてレール全断面を
1000℃近くまで再加熱する方法も高強度レールのエ
ンクローズアーク溶接の後熱処理方法として実施されて
いる。この方法でも溶接部の残留応力は変化するが、本
来この後熱処理の主目的は、その後に続く加速冷却によ
る溶接部の硬度調整である。また、テルミット溶接でこ
の方法を採用するためには、アセチレンガスとその流量
制御装置、ガスバーナーが新たに必要となり、簡便さを
特徴とするテルミット溶接の長所が損なわれてしまうた
め好ましくない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】近年、耐表面損傷性に
優れるといわれる、ベイナイト鋼レールの検討が進めら
れている。国内で一般的に使用されている炭素量0.7
wt%のパーライト鋼レールを高温のオーステナイト域か
ら冷却した場合、700℃付近で共析変態してパーライ
ト組織に変態する。これに対し、炭素量0.4wt%以下
のベイナイト鋼レールを、高温のオーステナイト域から
冷却した場合、パーライト変態より低温の500℃付近
からベイナイト組織に変態する。
【0014】パーライト変態は、鋼材の塑性変形能が高
い高温域で生じる。この場合、溶接後の冷却過程で部材
の中で最後に変態する。すなわち部材中で最も高温の部
位が変態する時点でも、その周囲は比較的高温である。
このため、最終変態部の変態膨張は比較的自由に生じ
る。従って変態時の応力が内部応力として残存すること
は少ない。パーライト鋼の残留応力は主に変態後の熱応
力によって生じる。なお、鉄鋼材料の塑性変形能は40
0℃以上で急速に増大するといわれている。
【0015】一方、ベイナイト変態は比較的低温で生じ
る。この場合、部材中の最も冷却の遅い部分がベイナイ
ト変態温度に達する時点では、その周囲は塑性変形能が
低下した温度域まで冷却が進んでいる。このため周囲部
材が拘束として働き、変態応力に見合う変形が制限され
て、変態応力が残留応力として残存する可能性が高ま
る。つまりベイナイト鋼の残留応力発生には無収縮応力
の他に、変態膨張応力が影響する。
【0016】本発明者らの測定によると、ベイナイト鋼
レールをテルミット溶接すると、レール底部足裏面の残
留応力は余盛近傍で20kgf/mm2 以上の引っ張りに転じ
ていた。このため、ベイナイト鋼レールのテルミット溶
接部の疲労強度は、レール底部足裏面に圧縮残留応力が
分布するパーライト鋼レールのテルミット溶接継手に比
較して劣る。
【0017】かかる技術の現状に鑑みて本発明は、この
ベイナイト鋼レールのテルミット溶接に対し、疲労破壊
の生じやすい余盛止端部の残留応力分布を制御し、疲労
強度の高いテルミット溶接継手を提供することを解決す
べき課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するもので、その要旨は、(1)2本のレール端部を
間隔を設けて対向設置し、前記レール端部間の隙間とそ
の周囲を取り囲む耐火物鋳型によって構成される空間に
高温の溶融金属を流し込み、レールを溶接するテルミッ
ト溶接であって、溶融金属が完全に凝固し、レール頭部
溶接金属の表面温度が300℃以下になるまで冷却した
後で、前記凝固部を含むレール底部足表面を400〜7
00℃に再加熱することを特徴とするベイナイト鋼レー
ルのテルミット溶接方法であり、(2)2本のレール端
部を間隔を設けて対向設置し、前記レール端部間の隙間
とその周囲を取り囲む耐火物鋳型によって構成される空
間に高温の溶融金属を流し込み、レールを溶接するテル
ミット溶接であって、溶融金属が完全に凝固し、レール
頭部溶接金属の表面温度が300℃以下になるまで冷却
した後で、前記凝固部含み溶接中心からレール長手方向
にそれぞれ30〜100mmの範囲のレール底部足表面を
400〜700℃に再加熱することを特徴とするベイナ
イト鋼レールのテルミット溶接方法、である。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
なお図1に、説明の便宜のために、使用されるレール断
面の各部位を示す。まず、ベイナイト鋼レールを国内で
一般的に使われている、パーライト鋼レール用溶剤を用
いる標準テルミット溶接工程で溶接する。すなわち、2
本のベイナイト鋼レールの端面を通常約25mmの隙間を
開けて設置し、その隙間を2分割型の鋳型を用いて取り
囲む。鋳型は珪砂を水ガラスを用いて結合したものであ
り、一般のテルミット溶接に供されるものである。
【0020】ここで、各被溶接レールの端面間は、望ま
しくは20〜30mmの範囲、より望ましくは標準テルミ
ット溶接工程における24〜26mmの範囲で設定され
る。端面間隔が狭すぎると溶接部に充填される溶融金属
量が少なくなるため、被溶接レールに対する有効入熱量
が不足し、レール端面の溶融が不完全になる場合があ
る。また、端面間隔が広すぎると溶接部に充填される溶
融金属量が増加し標準の溶剤の反応によってもたらされ
る溶融金属量では不十分となる懸念がある。
【0021】テルミット溶剤はアルミニウム、酸化鉄、
鉄粉粒、合金材から構成される。アルミニウム、酸化鉄
は反応原料、鉄粉粒は溶融鉄の温度調整用原料、合金材
は炭素、マンガン成分調整用原料として配合されてい
る。テルミット溶剤は耐火物製るつぼ内に装入、堆積さ
れ、点火剤により反応が開始される。溶剤の一部で反応
が開始すると、高温の生成物が新たな反応源となって次
々に反応が伝播し、るつぼ全体に反応がおよぶ。テルミ
ット反応により溶融鉄と溶融アルミナスラグが生成する
が、両者は比重差によりるつぼ内で上下に分離し、注入
の際には、溶融鉄が鋳型内の溶接部に先に充満し、引き
続き溶融スラグが押し湯部分に流入される。
【0022】るつぼから溶接部への溶融物の注入は、る
つぼ底部に装着された耐火物栓が、溶融物の顕熱により
溶融、開口することによって実現される。反応に要する
時間は約20秒から30秒で、融鉄の温度は2000℃
を超える。
【0023】溶剤の反応に先立ち、鋳型の注湯口から予
熱バーナーを挿入し、レール断面、鋳型内面を乾燥、予
熱する。予熱ガスはプロパン−酸素ガスが用いられ、レ
ール端面の温度は900℃以上に達する。予熱所要時間
は1.5〜2分である。
【0024】高温の融鉄の注入によりレール端面が溶融
する。溶接金属は4〜5分間で凝固する。レール頭部に
形成される押し湯部は、凝固完了後、油圧武の押し抜き
装置によって熱間で除去される。珪砂製鋳型はハンマー
により容易に破壊できる。頭部より上側の鋳型は余盛押
し抜きの直前にハンマーにより除去される。頭部押し湯
の熱間押し抜き後、レール頭部は数mmの余盛金属層を残
した状態で大気中に露出される。さらに温度低下が進ん
だ時点で柱部、底部の鋳型が除去される。溶接後、溶接
部の温度が300℃以下まで低下するのに、溶湯注入
後、約40分から60分間を要する。この待ち時間の間
に、ハンドグラインダーを用いて頭部の押し抜き面の余
盛金属の平滑仕上げを行うことができる。
【0025】溶接金属のパーライト変態は約600℃
で、ベイナイト変態は約400℃で完了する。また、鋼
材の組成変形能は400℃以下でほぼ一定の低い値とな
る。このため、400℃以下では、溶接部の温度が部位
毎に違ったとしても、これに基づく収縮応力の違いによ
って生じる変形は弾性変形の範囲にとどまる。そのた
め、溶接部全体が常温まで冷却した時点では収縮応力の
差が消失し、弾性変形も解消する、このことは、400
℃以下での残留応力の発生は微少であることを意味して
いる。
【0026】通常テルミット溶接部の冷却過程では、表
面温度より内部温度が数10℃高い。また、頭部の溶接
金属は熱間の押し抜き加工で露出する。このため、頭部
表面が溶接部の中で最も冷却速度が速い。但し、本願発
明者らの測定によると、頭部表面と最も冷却が遅れるレ
ール柱部との温度差は100℃未満である。すなわち、
溶接部の中で最も温度が低いレール頂部の表面温度が3
00℃以下になった時点で、溶接部全体が400℃以下
になっており、溶接部全体の組織変態と残留応力の発生
が完了している。
【0027】従って、レール頭部溶融金属の表面温度が
300℃以下に下がると、たとえ溶接部を水冷しても組
織変態や残留応力への影響が小ないのである。すなわ
ち、溶接後の冷却過程でレール頭部溶接金属の表面温度
が300℃以下に下がると、組織変態および残留応力の
発生はほとんど終わっている。従って、この温度域にな
れば溶接部を水冷してもよい。
【0028】レール頭部溶接金属の表面温度が300℃
以下に低下した後、レールの底部を足表面側からガスバ
ーナーを用いて400〜700℃まで再加熱する。テル
ミット溶接部の底部足表面側には湯上がりが形成されて
いるが、これは再加熱の際に邪魔になるので除去してお
くことが望ましい。また、再加熱の際に溶接部の表面に
鋳型砂が付着したままだと加熱効率が低いため、足表面
の鋳型砂は極力除去しておく。
【0029】溶接部をレール足表面側からの再加熱する
ことにより、足表面部が最も高温に加熱され、次いで熱
伝導により、足裏面部が高温となる。再加熱された部位
は熱膨張が生じて引張応力が緩和する。また温度上昇に
より材料の塑性変形能が回復し、結晶格子のひずみや格
子内の転移、空孔などの欠陥が回復する。この過程で溶
接残留応力が解放される。
【0030】再加熱の最高温度は材料の塑性変形能が回
復する400℃以上でないと効果が望めない。ただし、
700℃を超えて加熱するとオーステナイト変態が生
じ、加熱後の冷却過程で改めてベイナイト変態が生じ
る。その結果、溶接時と同様の変態応力が生じ、溶接ま
まと同様の引張応力分布が生じるため望ましくない。す
なわち、再加熱の温度は400から700℃の範囲、望
ましくはより前記効果の顕著な500〜600℃の範囲
である、温度は例えば500℃と600℃の温度チョー
クを用いて確認する方法が簡便である。なお、再加熱時
間は特に問わない。
【0031】再加熱の範囲は溶接余盛とレール鋼熱影響
部にわたり、溶接中心から長手方向に片側30〜100
mm・全幅60〜200mmの範囲である。なお、レール底
部足表面の再加熱は、溶接中心からレール長手方向両側
に、また、レールの柱部を挟んで、範囲、温度、時間を
均等に行うのが好ましい。
【0032】再加熱の範囲が、溶接中心から30mm以下
では余盛止端部の温度上昇が不均一になりやすく不十分
である。また、溶接残留応力の分布範囲は溶接中心から
100mm程度の範囲であるので、この100mmを超えた
範囲を加熱することは意味がない。さらに、加熱幅が溶
接中心から片側40〜60mm、全幅80〜120mmの範
囲が残留応力の改善効果も確実で、加熱時間もさほどか
からないため望ましい。
【0033】加熱方法は、例えば、柱部を挟んで両側の
底部表面側を交互に均等に加熱していく。加熱バーナー
は溶接に先立って行う予熱用バーナーをそのまま使用
し、予熱時と同じプロパン酸素ガスを用いて再加熱す
る。時折り500℃の温度チョークを用いて温度確認
し、加熱部の温度が全域で500℃に達した時点で加熱
を終了する。
【0034】再加熱後、加熱部の表面温度が300℃以
下になれば残留応力の発生はほぼ終息しているが、再加
熱後に水冷を行うことは避け、大気中で空冷する事が望
ましい。再加熱後に水冷を行うと、底面に比較し底部表
面側の冷却が促進されることになり、足表面側が圧縮残
留応力状態に、足裏面側が引張残留応力状態に移行する
懸念があるからである。
【0035】溶接部の表面、内部探傷検査は、溶接部の
温度が常温まで低下しないと実施できない。本発明の工
程では、溶接完了後、再加熱前に行うことが最も効率的
といえる。
【0036】加熱終了後の冷却過程では、底部足表面側
が最後に収縮するため、この部分に引張残留応力が分布
する。しかしながら、疲労強度に最も影響する足裏面は
足表面側の引張応力に均衡するごとく、圧縮側に移行す
る。本発明者らの調査によれば、本発明の後さらに熱処
理を行った場合、底面での残留応力はほぼ中立まで改善
される。また、底部表面側での引張残留応力は20kgf/
mm2 以下であり、疲労強度に対する影響は小さい。
【0037】
【実施例】ベイナイト鋼レール、パーライト鋼レールを
標準工法で溶接後、本発明例および比較実施した再加熱
処理の実験結果について以下説明する。表1にその後熱
処理の実施条件と200万回疲労強度の調査結果を示
す。いずれも溶接材料は普通レール用テルミット溶接材
料を用いた。参考のために溶接金属の化学組成の調査結
果を表2に示す。
【0038】レール鋼の強度レベルは、ベイナイト鋼、
パーライト鋼ともに抗張力80kgf/mm2 クラスである。
疲労試験は3点曲げ方式で、レール足裏面に引張応力の
生じる正立姿勢で行った。継手の指示スパンは1mで、
その中央部に集中荷重を負荷した。繰り返し荷重の負荷
波形は正弦波形とし、200万回まで非破断となる応力
範囲をもって200万回疲労強度とした。応力設定はレ
ール断面内で応力が最大となるレール足裏面で設定し、
繰り返し応力の下限値は3kgf/mm2 で共通とし、上限応
力を変化させて応力変動範囲を設定した。
【0039】条件記号(e)はパーライト鋼レールの溶
接ままでの疲労試験結果で、200万回疲労強度は22
kgf/mm2 であった。条件記号(A)〜(F)および
(a)〜(d)の被溶接レールはベイナイト鋼レールで
ある。条件記号(a)は後熱処理を行わない溶接ままの
結果で、パーライト鋼レールに比較して疲労強度が3kg
f/mm2 低い19kgf/mm2 であった。条件記号(A)〜
(F)および(b)〜(d)は溶接完了後、再加熱、放
冷処理を行った例である。
【0040】条件(A)〜(F)は本発明の実施例であ
る。条件(B)は再加熱幅が狭めであるため、また、条
件(D)は再加熱温度が必要最低限であったため、条件
(A),(C),(E)は、再加熱温度、再加熱幅とも
十分であり、パーライト鋼レールの溶接部と同等の耐疲
労性能が得られた。但し、条件(C)は再加熱幅が必要
以上に広く、一方、条件(E)は加熱温度が700℃と
上限値であるため、再加熱に30分以上を要した。夜間
の限定された時間に溶接を完了する必要がある軌道内溶
接の場合、作業時間が長くかかるのは好ましくない。条
件(A)は再加熱温度、再加熱幅とも特に適正であり、
10分以内で再加熱作業を完了することができ、能率の
低下は許容範囲内といえる。また、条件(F)は溶接後
の冷却過程で頭部の表面温度が300℃になった時点で
溶接部を50℃まで水冷し、その後条件(A)と同一条
件の再加熱を行ったものである。その結果、条件(A)
と同等の良好な疲労特性が得られ、従来の標準テルミッ
ト溶接工程でも実施されている上記水冷作業が本発明例
でも適用可能であることが確認された。
【0041】条件(b)は、再加熱開始の温度がやや高
すぎた例で、疲労性能は21kgf/mm2 に未達であった。
これは、再加熱開始時にベイナイト鋼レール熱影響部の
ベイナイト変態が部分的に未完了であり、再加熱の期間
中もその状態が維持され、再加熱後の冷却過程で未変態
部がベイナイト変態し、その変態応力が残留応力分布に
悪影響を及ぼしたと思われる。
【0042】条件記号(C)は再加熱の最高加熱温度が
300℃で、本発明例の範囲より低いため、溶接残留応
力の解放が不十分となり、疲労強度は溶接ままと同程度
の20kgf/mm2 である。条件記号(d)は再加熱温度が
900℃と過剰であるため、加熱過程で金属組織がオー
ステナイトに変態し、その後の冷却過程で再度ベイナイ
ト変態が生じる条件である。この場合、疲労強度は溶接
ままの状態(a)と同等となった。これはベイナイト変
態応力が残留応力の発生に影響し、溶接ままと同様の引
張残留応力が再分布したためと考えられる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】ベイナイト鋼レールのテルミット溶接に
おいて、レール底部足裏面に生じた引張残留応力が再加
熱処理によって一旦解放され、最終的にほぼ解消され
る。この再加熱処理を行うことにより、溶接ままの状態
に比較して疲労強度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール断面の各部位を示す説明図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2本のレール端部を間隔を設けて対向設
    置し、前記レール端部間の隙間とその周囲を取り囲む耐
    火物鋳型によって構成される空間に高温の溶融金属を流
    し込み、レールを溶接するテルミット溶接であって、溶
    融金属が完全に凝固し、レール頭部溶接金属の表面温度
    が300℃以下になるまで冷却した後で、前記凝固部を
    含むレール底部足表面を400〜700℃に再加熱する
    ことを特徴とするベイナイト鋼レールのテルミット溶接
    方法。
  2. 【請求項2】 2本のレール端部を間隔を設けて対向設
    置し、前記レール端部間の隙間とその周囲を取り囲む耐
    火物鋳型によって構成される空間に高温の溶融金属を流
    し込み、レールを溶接するテルミット溶接であって、溶
    融金属が完全に凝固し、レール頭部溶接金属の表面温度
    が300℃以下になるまで冷却した後で、前記凝固部含
    み溶接中心からレール長手方向にそれぞれ30〜100
    mmの範囲のレール底部足表面を400〜700℃に再加
    熱することを特徴とするベイナイト鋼レールのテルミッ
    ト溶接方法。
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