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JPH11288798A - プラズマ生成装置 - Google Patents

プラズマ生成装置

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Publication number
JPH11288798A
JPH11288798A JP11008126A JP812699A JPH11288798A JP H11288798 A JPH11288798 A JP H11288798A JP 11008126 A JP11008126 A JP 11008126A JP 812699 A JP812699 A JP 812699A JP H11288798 A JPH11288798 A JP H11288798A
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JP
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plasma
wall
vacuum vessel
grid
potential
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JP11008126A
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Unryu Ri
雲龍 李
Noriyoshi Sato
徳芳 佐藤
Satoru Iizuka
哲 飯塚
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Kokusai Electric Corp
Original Assignee
Kokusai Electric Corp
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Publication date
Application filed by Kokusai Electric Corp filed Critical Kokusai Electric Corp
Priority to JP00812699A priority Critical patent/JP4340348B2/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 処理対象物の寸法が大きくなったとき、処理
対象物の表面における電子温度分布が不均一になること
を防止することができるようにする。 【解決手段】 領域分割部30は、リング状の放電用電
極15の近傍でこの放電用電極15の内側を囲むことに
より、筒状の真空容器11の内部領域をその中心軸Zに
垂直な方向にプラズマ生成領域R1とプラズマ拡散領域
R2とに分割する。この領域分割部30は、筒状のグリ
ッド301を有する。このグリッド301は、複数の電
子通過孔を有するとともに導電性を有する。また、この
グリッド301は、基板Wの外側に位置するように、真
空容器11と同軸的に設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、低電子エ
ネルギープラズマを利用して負イオンプラズマを生成す
るプラズマ生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種半導体デバイス、液晶ディス
プレイ、太陽電池等を製造する工程で、プラズマを利用
した処理が盛んに使われている。
【0003】例えば、基板の表面に形成された薄膜をド
ライエッチングする場合は、プラズマを利用したドライ
エッチング処理が使われている。このドライエッチング
処理の具体例としては、例えば、シリコン半導体基板上
に形成された酸化シリコン膜をプラズマ中で生成される
活性種やイオンの作用を利用してエッチングする処理が
挙げられる。
【0004】また、基板の表面に所定の薄膜を形成する
場合は、プラズマを利用した成膜処理が使われている。
この成膜処理の具体例としては、例えば、プラズマによ
る気相反応を利用して基板の表面に所定の薄膜を形成す
るプラズマCVD(ChemicalVapor Deposition)処理が
挙げられる。このプラズマCVD処理の具体例として
は、例えば、シリコン半導体基板上に層間絶縁膜を形成
するた処理が挙げられる。
【0005】すなわち、近年、半導体デバイスの高集積
化に伴って配線が多層化されている。これにより、配線
と配線との間に絶縁膜( 層間絶縁膜) を設けなければな
らなくなった。この層間絶縁膜を形成する処理として
は、CVD処理がある。このCVD処理としては、熱C
VD処理がある。この熱CVD処理は、反応の活性化に
必要なエネルギーとして熱を利用する処理である。すな
わち、プロセス用の反応室に導入された反応性ガスに熱
を加えて反応させることにより、層間絶縁膜を形成する
処理である。
【0006】しかしながら、この熱CVD処理では、比
較的に高い温度が必要なため、デバイスに不具合が生じ
ることが多い。そこで、最近では、活性化エネルギーと
して、プラズマを利用する処理が用いられるようになっ
てきた。この場合、プラズマとしては、例えば、グロー
放電を通じて生じるプラズマが利用される。
【0007】なお、太陽電池などの基板上に所定の薄膜
を形成する場合も、プラズマCVD処理が使われてい
る。
【0008】ところで、代表的なプラズマプロセスであ
るドライエッチングプロセスにおいては、プラズマを生
成する場合、次のような点が要求される。 (1)基板の大面積化や装置のスループットの向上に対
応できるように、均一で高密度のプラズマを生成するこ
とができること。 (2)電子デバイス構造の微細化や多層化に対応するた
めに、加工精度や選択性を向上させることができること (3)チャージアップダメージを低減するために、均一
なプラズマを生成することができること。
【0009】このような要求に応えるために、近年、様
々なプラズマ生成装置(プラズマ源)の開発が進められ
ている。このプラズマ生成装置としては、ECR(Elec
tron-Cyclotron-Resonance)型プラズマ生成装置、誘導
結合型プラズマ生成装置(ICP:Inductively-Coupled Pl
asma)、マイクロ表面波型プラズマ生成装置、ヘリコン
波型プラズマ生成装置、マグネトロン高周波放電型プラ
ズマ生成装置等の高密度プラズマ生成装置がある。
【0010】これらの装置においては、プラズマの密度
として、十分な密度を得ることができる。しかしなが
ら、プラズマの均一性としては、φが300mmの範囲
内において、十分な均一性を得ることができない状況に
ある。
【0011】また、これらの装置においては、プラズマ
の電子温度を低く抑えることが要求される。これは、プ
ロセス用ガスの過度の解離を抑制するためである。
【0012】しかしながら、シリコン酸化膜のドライエ
ッチング用の高密度プラズマ生成装置は開発途中にあ
る。そのため、この装置では、ガスの過度の解離による
エッチングの選択性の低下と基板表面での電荷の蓄積と
が大きな課題になっている。
【0013】現状の高密度プラズマ生成装置を用いるエ
ッチングプロセスにおいては、次のような点が現実に問
題になっている。 (1)微細なシリコン酸化膜をエッチングすることによ
ってコンタクトホールを形成する場合に、下地シリコン
に対する選択性が低下すること (2)ゲートポリシリコン電極をエッチングする場合
に、電荷蓄積によって異常なサイドエッチングが発生す
ること (3)ゲート酸化膜の絶縁破壊が発生すること
【0014】これらの現象は、低圧高密度プラズマ生成
装置により生成されたプラズマに高エネルギー電子が多
く存在することによって発生すると考えられている。言
い換えれば、このプラズマの電子温度が高いことによっ
て発生すると考えられている。すなわち、プラズマの電
子温度が高いと、プラズマ中の解離反応が進みすぎる。
これにより、選択性の決め手となるラジカル種( CFx
ラジカルなど) が少なくなったり、基板の表面に発生す
るシース電位(プラズマ空間の平均電位と基板表面の電
位との差)が高くなったりする。その結果、基板の凹凸
やプラズマの密度分布によるシース電位の分布により電
荷蓄積が大きくなって、上記現象が生じると考えられて
いる。なお、シース電位とは、プラズマ空間の平均電位
に対する基板表面の電位をいう。
【0015】以上から、プロセスプラズマの電子温度を
低く抑える方法の開発が望まれる。この方法としては、
現在、パルス変調プラズマ法とグリッド制御法とが考え
られている。
【0016】ここで、パルス変調プラズマ法とは、プラ
ズマ生成用の電極に対してプラズマ生成用の電力を断続
的に供給することにより、電子温度の低いプラズマを生
成する方法である。すなわち、給電の実行と停止とを繰
り返すことにより、電子温度の低いプラズマを生成する
方法である。言い換えれば、プラズマ生成用の電力をパ
ルス変調することにより、電子温度の低いプラズマを生
成する方法である。この場合、パルス信号としては、数
十マイクロメートル程度の短いパルス幅を有する信号が
用いられる。
【0017】この方法によれば、ある程度のプラズマ密
度を維持しながら、電子温度を低下させることができ
る。すなわち、給電を停止した時のプラズマ密度の減衰
速度は電子温度の減衰速度より遅い。これにより、給電
の実行と停止とを操り返すことによって、ある程度のプ
ラズマ密度を維持しながら、電子温度を低下させること
ができる。
【0018】この方法は、上述したような高密度プラズ
マ生成装置のいずれにも適用可能である。但し、この場
合、最適な電子温度を得るためのパルス変調周波数は、
各装置ごとに異なる。これは、各装置ごとに、プラズマ
密度や電子温度の立上がり時間及び減衰時間が異なるか
らである。
【0019】また、グリッド制御法とは、グリッドによ
って真空容器の内部領域をプラズマ生成領域とプラズマ
拡散領域とに分割することにより、プラズマ拡散領域に
電子温度の低いプラズマを生成する方法である。
【0020】図17は、電子温度低下法として、このグ
リッド制御法を採用した従来のプラズマ生成装置の構成
を示す図である。なお、図には、グリッド制御法をマグ
ネトロン高周波放電型のプラズマ生成装置に適用した場
合を代表として示す。また、図には、このプラズマ生成
装置を有する基板表面処理装置の一例の構成を示す。さ
らに、図では、断面を示すハッチングを一部の構成要素
にのみに付す。これは、図が煩雑になるのを防止するた
めである。
【0021】図示の装置は、平板状のグリッド42を真
空容器41の中心軸Zに対して垂直に配設することによ
り、真空容器41の内部領域をその中心軸Z方向にプラ
ズマ生成領域R1とプラズマ拡散領域R2とに分割する
ようになっている。言い換えれば、図示のプラズマ生成
装置は、平板状のグリッド42を基板Wと平行に配設す
ることにより、真空容器41の内部領域をその中心軸Z
方向にプラズマ生成領域R1とプラズマ拡散領域R2と
に分割するようになっている。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電子温
度低下法として、パルス変調プラズマ法を用いたプラズ
マ生成装置では、放電用電力が大きくなると、低い電子
温度を得ることが難しくなるという問題があった。これ
は、放電用電力が大きくなると、給電を停止したとき、
電子温度が減衰し難くなるからである。
【0023】また、この装置では、電子温度の低いプラ
ズマを得るために、給電の停止時間を長くすると、プラ
ズマの生成効率が低下し、基板の処理効率が低下すると
いう問題があった。
【0024】これらの問題は、電子温度低下法として、
グリッド制御法を採用したプラズマ生成装置では生じな
い。これは、この装置では、放電用電力に何ら手を加え
ないからである。
【0025】しかしながら、この装置では、基板の寸法
が大きくなったとき、基板の表面における電子温度分布
が不均一になることがあるという問題があった。
【0026】すなわち、この装置では、グリッド42が
基板Wと平行に配設されている。これにより、基板Wの
寸法が大きくなると、グリッド42の口径も大きくな
る。その結果、グリッド42がプラズマにより加熱され
たとき、変形することがある。グリッド42が変形する
と、基板Wとグリッド42との平行度が崩れる。これに
より、基板Wの表面における電子温度分布が不均一にな
る。
【0027】そこで、本発明は、処理対象物の寸法が大
きくなっても、処理対象物の表面における電子温度分布
が不均一になることを防止することができるプラズマ生
成装置を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に請求項1記載のプラズマ生成装置は、筒状の真空容器
と、ガス導入手段と、雰囲気排出手段と、リング状の放
電用電極と、放電用電力供給手段と、領域分割手段と、
電子温度制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0029】ここで、ガス導入手段は、真空容器の内部
に放電用のガスを導入する機能を有する。雰囲気排出手
段は、真空容器の内部の雰囲気を排出する機能を有す
る。放電用電極は、真空容器と同軸的に設けられ、放電
用ガスを放電させることにより、真空容器の周辺部でプ
ラズマを生成する機能を有する。放電用電力供給手段
は、放電用電極に放電用ガスを放電させるための放電用
電力を供給する機能を有する。
【0030】領域分割手段は、放電用電極の近傍でこの
放電用電極の内側を覆うことにより、真空容器の内部領
域をその中心軸に垂直な方向にプラズマ生成領域とプラ
ズマ拡散領域とに分割する。この領域分割手段は、複数
の電子通過孔を有する筒状の壁を有する。この壁は、処
理対象物の配設位置の外側に位置するように真空容器と
同軸的に設けられている。電子温度制御手段は、プラズ
マ拡散領域のプラズマの電子温度を制御する機能を有す
る。
【0031】この請求項1記載の装置によれば、真空容
器の内部領域を真空容器の中心軸に垂直な方向にプラズ
マ生成領域とプラズマ拡散領域とに分割することができ
る。これにより、処理対象物の寸法が大きくなった場合
でも、壁の強度が低下することを防止することができ
る。その結果、壁の変形によって処理対象物の表面の電
子温度分布が不均一になることを防止することができ
る。
【0032】また、この装置によれば、真空容器の内部
領域をプラズマ生成領域とプラズマ拡散領域とに分割す
ることができる。これにより、プラズマ生成領域のプラ
ズマに影響を与えることなく、プラズマ拡散領域のプラ
ズマを制御することができる。その結果、プラズマ拡散
領域のプラズマの制御性を高めることができる。
【0033】さらに、この装置によれば、領域分割手段
が放電用電極の近傍に設けられている。これにより、プ
ラズマ拡散領域のプラズマの電子温度を効果的に制御す
ることが可能となる。
【0034】さらにまた、この装置によれば、領域分割
手段が処理対象物の外側に位置するように配設されてい
る。これにより、処理対象物の全面でプラズマ密度を均
一にすることができる。その結果、処理対象物の全面で
プラズマ処理を均一にすることができる。
【0035】請求項2記載のプラズマ生成装置は、請求
項1記載の装置において、壁が導電性を有することを特
徴とする。
【0036】この請求項2記載の装置によれば、導電性
を有する壁によって領域分割を行うことができる。これ
により、プラズマ拡散領域のプラズマの電子温度をプラ
ズマ生成領域のプラズマの電子温度より低くすることが
できる。
【0037】請求項3記載のプラズマ生成装置は、請求
項2記載の装置において、電子温度制御手段が絶縁手段
を有することを特徴とする。ここで、絶縁手段は、壁を
基準電位点から電気的に絶縁する機能を有する。
【0038】この請求項3記載の装置によれば、壁を基
準電位点から電気的に絶縁することができる。これによ
り、壁の電気的特性を制御することが可能となる。その
結果、この壁を使って、プラズマ拡散領域のプラズマの
電子温度を制御することが可能となる。
【0039】請求項4記載のプラズマ生成装置は、請求
項3記載の装置において、電子温度制御手段が容量性素
子を有することを特徴とする。ここで、容量性素子は、
壁と基準電位点との間に挿入されている。
【0040】この請求項4記載の装置によれば、壁の高
周波インピーダンスを小さくすることができる。これに
より、放電用電極に高周波電力を印加することによって
プラズマ空間電位が変動しても、壁の電位が変動するこ
とを抑制することができる。その結果、壁の表面に発生
するシース電位を所望の電位に設定することができる。
これにより、プラズマ拡散領域のプラズマの電子温度を
かなり低い温度まで下げることができる。
【0041】請求項5記載のプラズマ生成装置は、請求
項3記載の装置において、電子温度制御手段が電位制御
手段を有することを特徴とする。ここで、電位制御手段
は、壁の電位を制御する機能を有する。
【0042】この請求項5記載の装置によれば、壁の電
位を制御することができる。これにより、壁の表面に発
生するシース電位を制御することができる。その結果、
プラズマ拡散領域のプラズマの電子温度を制御すること
ができる。
【0043】請求項6記載のプラズマ生成装置は、請求
項3記載の装置において、電子温度制御手段が、電位制
御手段と、容量性素子とを有することを特徴とする。こ
こで、電位制御手段は、壁の電位を制御する機能を有す
る。容量性素子は、壁と基準電位点との間に挿入されて
いる。
【0044】この請求項6記載の装置によれば、プラズ
マ拡散領域のプラズマの電子温度をかなり低い温度まで
下げることができるとともに、この電子温度を広い範囲
に亘って制御することができる。
【0045】請求項7記載のプラズマ生成装置は、請求
項4または6記載の装置において、容量性素子が可変容
量性素子であることを特徴とする。
【0046】この請求項7記載の装置によれば、容量性
素子の容量を制御することができる。これにより、壁の
高周波インピーダンスを制御することができる。その結
果、壁の表面に発生するシース電位を制御することがで
きる。これにより、プラズマ拡散領域のプラズマの電子
温度を制御することができる。
【0047】請求項8記載のプラズマ生成装置は、請求
項5または6記載の装置において、電位制御手段が壁の
直流電位を制御することを特徴とする。
【0048】この請求項8記載の装置によれば、プラズ
マ拡散領域のプラズマの電子温度を広範囲に亘って連続
的に制御することができる。
【0049】請求項9記載のプラズマ生成装置は、請求
項1,2,3,4,5,6,7または8記載の装置にお
いて、電子温度制御手段が面積調整手段を有することを
特徴とする。ここで、面積調整手段は、複数の電子通過
孔の総面積を調整する機能を有する。
【0050】この請求項9記載の装置によれば、複数の
電子通過孔の総面積を調整することができる。これによ
り、電子通過孔に発生するシース電位を制御することが
できる。その結果、プラズマ拡散領域のプラズマの電子
温度を制御することができる。
【0051】なお、面積調整手段としては、例えば、各
電子通過孔の面積を調整することにより複数の電子通過
孔の総面積を調整する手段であってもよいし、電子通過
孔の数を調整することにより、上記総面積を調整するも
のであってもよい。
【0052】請求項10記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の装
置において、壁が複数の小壁を有するように分割され、
電子温度制御手段が複数の小壁の間隔を調整可能な間隔
調整手段を有することを特徴とする。
【0053】この請求項10記載の装置によれば、複数
の小壁の間隔を調整することができる。これにより、複
数の小壁間に発生する電位バリアを制御することができ
る。その結果、プラズマ拡散領域の電子エネルギー分布
の広さを制御することができる。これにより、壁をバイ
アスする必要がない。その結果、反応ガスを用いるプロ
セスにおいて、壁の表面に絶縁膜が形成された場合で
も、プラズマ拡散領域のプラズマの電子温度を制御する
ことができる。
【0054】請求項11記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10記
載の装置において、電子温度制御手段が間隔調整手段を
有することを特徴とする。ここで、間隔調整手段は、壁
と放電用電極との間隔を調整可能となっている。
【0055】この請求項11記載の装置によれば、壁と
放電用電極との間隔を調整することができる。これによ
り、壁の表面に発生するシース電位を制御することがで
きる。その結果、壁によって形成される電位バリアを制
御することができる。これにより、この電位バリアを乗
り越えられる電子が持っているエネルギーが変化する。
その結果、プラズマ拡散領域の電子温度を制御すること
ができる。
【0056】また、この装置によれば、プラズマの生成
効率の低下と装置の大型化を防止することができる。す
なわち、壁と放電用電極との間隔が小さすぎると、壁と
放電用電極との間に放電が発生する。これにより、プラ
ズマの生成効率が低下する。逆に、大きすぎると、装置
が大型化する。以上から、壁と放電用電極との間隔を調
整することができることにより、プラズマの生成効率の
低下と装置の大型化を防止することができる。
【0057】請求項12記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または
11記載の装置において、壁と放電用電極との間隔が両
者の間に異常放電が発生しないような間隔に設定されて
いることを特徴とする。
【0058】この請求項12記載の装置によれば、壁と
放電用電極との間で異常放電が発生しないようにするこ
とができる。これにより、プラズマの生成効率を高める
ことができる。
【0059】請求項13記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11
または12記載の装置において、壁が真空容器の中心軸
と平行になるように設定されていることを特徴とする。
【0060】この請求項13記載の装置によれば、壁を
容易に形成することができる。
【0061】請求項14記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,1
1,12または13記載の装置において、壁が処理対象
物側を向くように、真空容器の中心軸に対して傾けられ
ていることを特徴とする。
【0062】この請求項14記載の装置によれば、処理
対象物の表面におけるプラズマ密度を高めることができ
る。これにより、処理対象物の処理効率を高めることが
できる。
【0063】請求項15記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,1
1,12,13または14記載の装置において、壁が誘
電体によって覆われていることを特徴とする。
【0064】この請求項15記載の装置によれば、壁と
プラズマとの相互作用によって壁の表面から金属製の不
純物が出るのを防止することができる。これにより、処
理対象物が不純物により汚染されるのを防止することが
できる。
【0065】請求項16記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,1
1,12,13,14または15記載の装置において、
領域分割手段が、リング状の第1,第2の仕切り板を有
することを特徴とする。ここで、第1の仕切り板の外縁
部は真空容器の内壁側に固定されている。この仕切り板
の内縁部には壁の一端部側が固定されている。第2の仕
切り板は、第1の仕切板とともに放電用電極を挟むよう
に配設されている。この仕切り板の外縁部は真空容器の
内壁側に固定されている。この仕切り板の内縁部には壁
の他端部側が固定されている。
【0066】この請求項16記載の装置によれば、放電
用電極をその内側から覆う領域分割手段を簡単に構成す
ることができる。
【0067】請求項17記載のプラズマ生成装置は、請
求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,1
1,12,13,14,15または16記載の装置にお
いて、複数の電子通過孔が格子状に配列されていること
を特徴とする。
【0068】この請求項17記載の装置によれば、電子
通過孔を有する壁を簡単に構成することができる。
【0069】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発
明の実施の形態を詳細に説明する。
【0070】[1]第1の実施の形態 [1−1]構成 図1は、本発明の第1の実施の形態の構成を示す側断面
図である。なお、図1には、本発明をマグネトロン高周
波放電型のプラズマ生成装置に適用した場合を代表とし
て示す。また、図1には、本発明を基板表面処理装置の
プラズマ生成装置に適用した場合を代表として示す。さ
らに、図1では、断面を示すハッチングを一部の構成要
素にのみ示す。これは、図が煩雑になるのを防止するた
めである。
【0071】図示の基板表面処理装置は、例えば円筒状
の真空容器11と、ガス導入部12と、ガス導入管13
と、雰囲気排出部14とを有する。ここで、真空容器1
1は、プラズマ生成空間を形成する機能を有する。ガス
導入部12とガス導入管13は、真空容器11の内部に
放電用のガスを導入する機能を有する。雰囲気排出部1
4は、真空容器11の内部の雰囲気を排出する機能を有
する。
【0072】また、この装置は、例えば円筒状の放電用
電極15と、高周波発振器16と、整合回路17と、円
形のリング状の遮蔽カバー18と、円形のリング状の絶
縁体19,20とを有する。ここで、放電用電極15
は、マグネトロン放電用の高周波電界を形成する機能を
有する。高周波発振器16は、放電用電極15に供給す
る放電用の高周波電力を発生する機能を有する。整合回
路17は、高周波発振器16と放電用電極15との整合
をとる機能を有する。遮蔽カバー18は、放電用電極1
5によって形成される高周波電界を遮蔽する機能を有す
る。絶縁体19,20は、真空容器11と放電用電極1
5との間を絶縁する機能を有する。
【0073】さらに、この装置は、円盤状の上部電極2
1と、円盤状の下部電極22と、高周波発振器23と、
整合回路24と、直流阻止コンデンサ25と、絶縁体2
6とを有する。ここで、上部電極21と下部電極22と
は、平行平板電極を形成する。高周波発振器23は、上
部電極21に高周波電力を供給する機能を有する。整合
回路24は、高周波発振器23と上部電極21との整合
をとる機能を有する。直流阻止コンデンサ25は、上部
電極21に直流電流が供給されるのを阻止する機能を有
する。絶縁体26は、上部電極21と真空容器11との
間を絶縁する機能を有する。
【0074】さらにまた、この装置は、2つの円形のリ
ング状の永久磁石27,28と、円形のリング状の電界
遮蔽部29とを有する。ここで、永久磁石27,28
は、真空容器11の内部に磁界を形成する機能を有す
る。電界遮蔽部29は、真空容器11の内部に形成され
た高周波電界を遮蔽する機能を有する。
【0075】また、この装置は、領域分割部30を有す
る。ここで、領域分割部30は、真空容器11の内部領
域をその径方向(真空容器11の中心軸Zと垂直な方
向)にプラズマ生成領域R1とプラズマ拡散領域R2と
に分割する機能を有する。
【0076】上記円筒状の真空容器11は、例えば、中
心軸Zが鉛直方向に向くように配設されている。また、
この真空容器11は、上部容器111と下部容器112
とを有するように水平に分割されている。上部容器11
1は、上端部が閉塞され、下端部が開口されている。逆
に、下部容器112は、上端部が開口され、下端部が閉
塞されている。
【0077】上部電極111と下部電極112との間に
は、リング状の放電用電極15が配設されている。この
場合、この放電用電極15は、真空容器11と同軸的に
配設されている。また、上部容器111と放電用電極1
5とは、絶縁体19によって絶縁されている。同様に、
下部容器112と放電用電極15とは、絶縁体20によ
って絶縁されている。さらに、下部容器112は接地さ
れている。上部容器111は、遮蔽カバー18と下部容
器112とを介して接地されている。
【0078】上記ガス導入部12は、上部容器111の
天板1aに設けられている。上記雰囲気排出部14は、
下部容器112の底板2aに設けられている。
【0079】上記円盤状の電極21,22は、互いに平
行にかつ対向するように配設されている。また、これら
は、水平に配設されている。すなわち、真空容器11の
中心軸Zに垂直に配設されている。さらに、上部電極2
1は、絶縁体26によって上部容器111と絶縁されて
いる。上記遮蔽カバー18は、放電用電極15と永久磁
石27,28とを外側から覆うように真空容器11に取
り付けられている。
【0080】上記リング状の永久磁石27,28は、真
空容器11と同軸的に配設されている。また、これら
は、放電用電極15を囲むように配設されている。さら
に、これらは、真空容器11の中心軸Z方向に所定間隔
離れるように配設されている。この場合、永久磁石27
は、放電用電極15の上端部側に位置決めされている。
逆に、永久磁石28は、下端部側に位置決めされてい
る。
【0081】永久磁石27,28は、径方向に着磁され
ている。この場合、これらは、互いに逆向きに着磁され
ている。すなわち、今、例えば永久磁石27の内側部分
がN極、外側部分がS極に着磁されているとすると、永
久磁石28の内側部分はS極、外側部分はN極に着磁さ
れている。これにより、永久磁石27の内側部分から真
空容器11の中心軸Z側に向かって延在した後、永久磁
石28の内側部分に戻る磁力線が形成される。この磁力
線は、真空容器11の中心軸Zにほぼ平行な部分を有す
る。この部分の長さは、中心軸Zに近づくほど長くな
る。この場合、磁力線は、永久磁石27の各部から出力
される磁力線の相互作用により、原理的には、最高でも
真空容器11の中心軸Z上で折り返す。
【0082】上記リング状の電界遮蔽部29は、真空容
器11と同軸的に配設されている。この場合、この電界
遮蔽部29は、下部電極22の周縁部と下部容器112
の側壁との間に挿入されている。また、この電界遮蔽部
29は、2枚のリング状の金属遮蔽板291,292を
有する。この2枚の金属遮蔽板291,292は、真空
容器11の中心軸Z方向に所定間隔離れるようにして平
行に配設されている。
【0083】各金属遮蔽板291,292には、真空容
器11の内部の雰囲気を排出するための排気孔が形成さ
れている。この場合、金属遮蔽板291に形成された排
気孔と金属遮蔽板292に形成された排気孔とは、全体
的に重なることがないように設定されている。すなわ
ち、一部が重なるか、または、全く重ならないように形
成されている。これにより、高周波電界の遮蔽機能と雰
囲気の排出機能の両方が得られる。
【0084】上記円筒状の領域分割部30は、真空容器
11と同軸的に配設されている。また、この領域分割部
30は、放電用電極15の近傍でこの放電用電極15の
内側を覆うように配設されている。これにより、真空容
器11の内部領域がその中心軸Zに垂直な方向にプラズ
マ生成領域R1とプラズマ拡散領域R2とに分割され
る。
【0085】図2は、この領域分割部30を拡大して示
す側断面図である。図示のごとく、領域分割部30は、
1つの円筒状のグリッド301と、2つの円形のリング
状の仕切板302,303とを有する。
【0086】円筒状のグリッド301は、真空容器11
と同軸的に配設されている。これにより、このグリッド
301は、真空容器11の中心軸Zと平行に配設されて
いる。また、このグリッド301は、放電用電極15と
対向するように配設されている。さらに、このグリッド
301は、リング状の仕切り板302,303を介して
真空容器11に固定されている。
【0087】この場合、仕切板302,303は、真空
容器11と同軸的に配設されている。また、仕切り板3
02,303は平行に配設されている。さらに、仕切り
板302の外縁部は、上部容器111の側壁に固定さ
れ、内縁部には、グリッド301の上端部が固定されて
いる。さらにまた、仕切り板303の外縁部は、下部容
器112の側壁に固定され、内縁部には、グリッド30
1の下端部が固定されている。また、仕切り板302,
303は、グリッド301と放電用電極15との間隔を
両者の間で異常放電が発生しないような間隔に設定する
ようになっている。
【0088】グリッド301と仕切板302,303と
は、例えば、金属により形成されている。これにより、
これらは、導電性を有する。この金属としては、例え
ば、ステンレスが用いられている。この場合、グリッド
301と仕切板302,303の全体を金属で形成して
もよいし、表面だけを金属で形成してもよい。また、グ
リッド301と仕切板302,303の表面は、プラズ
マに強い誘電体で覆われている。すなわち、プラズマと
反応し難い誘電体で覆われている。この誘電体として
は、例えば、Al、セラミックス等がある。
【0089】[1−2]動作 上記構成において、動作を説明する。
【0090】まず、プラズマを生成し、このプラズマを
使って基板Wの表面に所定の処理を施す場合の動作を説
明する。
【0091】この場合、基板Wは、図1に示すように、
下部電極22の上面に載置される。また、この場合、ガ
ス導入部12から真空容器11の内部に放電用ガスが導
入される。この放電用ガスは、上部電極21に形成され
たガス分散孔211を介して真空容器11の内部に均一
に分散される。さらに、この場合、放電用ガスがガス導
入管13を介して真空容器11の内部に導入される。さ
らにまた、この場合、真空容器11の内部に存在する雰
囲気が雰囲気排出部14を介して排出される。これによ
り、真空容器11の内部が減圧状態に設定される。
【0092】また、この場合、放電用電極15に高周波
発振器16から整合回路17を介して高周波電力が供給
される。この高周波電力の周波数は、例えば、13.5
6MHzに設定され、電力量は、例えば、500Wに設
定されている。さらに、この場合、上部電極21に高周
波発振器23から整合回路24と直流阻止コンデンサ2
5とを介して高周波電力が供給される。この高周波電力
の周波数は、例えば、100MHzに設定され、電力量
は、例えば、100Wに設定されている。
【0093】放電用電極15に高周波電力が供給される
ことにより、この放電用電極15の電位が変動する。こ
れにより、真空容器11の内部に、高周波電界が形成さ
れる。この高周波電界と永久磁石27,28により形成
される磁界との相互作用により真空容器11の内部にプ
ラズマが生成される。
【0094】すなわち、放電用電極15によって形成さ
れる高周波電界は、真空容器11の中心軸Z方向に向か
う。また、永久磁石7,28によって形成される磁力線
は、真空容器11の中心軸Zにほぼ平行な部分を有す
る。これにより、真空容器11の内部にほぼ直交する高
周波電界と磁界とが形成される。その結果、放電用電極
15の近傍で、電子が磁力線にトラップされるととも
に、マグネトロン運動する。このマグネトロン運動によ
り、電子が加速され、放電用ガスが電離させられる。こ
のマグネトロン放電により真空容器11の内部にプラズ
マが生成される。以下、このプラズマを第1のプラズマ
という。
【0095】また、上部電極21に高周波電力が供給さ
れることにより、この上部電極21の電位が変動する。
これにより、真空容器11の内部に真空容器11の中心
軸Z方向に向かう高周波電界が形成される。この高周波
電界と永久磁石27,28により形成される磁界との相
互作用により真空容器11の内部にプラズマが生成され
る。
【0096】すなわち、上記高周波電界が形成される
と、永久磁石27,28によって形成された磁力線上に
トラップされている高エネルギー電子が磁力線上を真空
容器11の中心軸Z方向に高周波振動する。この高周波
振動により高エネルギー電子がが加熱される。この加熱
により放電用ガスが放電させられる。この高周波振動放
電によりプラズマが生成される。以下、このプラズマを
第2のプラズマという。
【0097】上述した第1,第2のプラズマが形成され
ることにより、表面処理用の化学反応が活性化される。
これにより、基板Wの表面に所定の処理が施される。
【0098】第1のプラズマの密度は、真空容器11の
中心軸Zから離れるにつれて高くなる。言い換えれば、
放電用電極15の内側の側面に近づくにつれて高くな
る。これは、放電用電極15の内面に近づくにつれて、
放電用電極15により形成される電界と永久磁石27,
28より形成される磁界とが強くなるからである。すな
わち、これらが強くなることにより、マグネトロン放電
が活発になるからである。
【0099】第2のプラズマの密度は、真空容器11の
中心軸Zに近づくにつれて高くなる。これは、この中心
軸Zに近づくにつれて、永久磁石26,27によって形
成される磁力線のうち、この中心軸Zにほぼ平行な部分
の長さが長くなるからである。すなわち、この平行部分
の長さが長くなることにより、高エネルギー電子が真空
容器11の中心軸Z方向に加速運動可能な距離が長くな
るからである。
【0100】第1のプラズマの密度は、高周波発振器1
6から出力される高周波電力の大きさに依存する。した
がって、この高周波電力の大きさを制御することによ
り、第1のプラズマの密度を制御することができる。同
様に、第2のプラズマの密度は、高周波発振器23から
出力される高周波電力の大きさに依存する。したがっ
て、この高周波電力の大きさを制御することにより、第
2のプラズマの密度を制御することができる。
【0101】これにより、2つの高周波電力の大きさを
制御することによって、真空容器11の径方向のプラズ
マ密度の分布を制御することができる。その結果、ガス
の圧力が低い場合であっても、真空容器11の内部の周
辺部から中央部に亘って全体的に高密度でかつ密度分布
の均一なプラズマを生成することができる。
【0102】以上が、プラズマを生成し、このプラズマ
を使って基板Wの表面に所定の処理を施す場合の動作で
ある。
【0103】次に、プラズマ拡散領域R2のプラズマの
電子温度を低下させる場合の動作を説明する。
【0104】領域分割部30は、放電用電極15の近傍
でこの放電用電極15を内側から囲むようになってい
る。これにより、真空容器11の内部領域のうち、第1
のプラズマが多く生成される領域が領域分割部30によ
って囲まれる。この領域分割部30のグリッド301
は、仕切板302,303と直接接続されている。これ
により、グリッド301の電位は、仕切板302,30
3の電位と同じ電位に設定されている。仕切板302は
容器111、112と遮蔽カバー18とを介して接地さ
れている。また、仕切板303も、下部容器112を介
して接地されている。これにより、仕切板302,30
3とグリッド301の電位は零電位に設定されている。
【0105】ところで、プロセスプラズマにおいては、
電子の温度がイオンの温度よりはるかに高く、電子の質
量がイオンの質量よりはるかに小さい。これにより、こ
のプラズマにおいては、電子の移動度がイオンの移動度
より十分大きくなる。その結果、プラズマ生成領域R1
でプラズマが生成されると、電子がイオンより早く領域
分割部30の壁の方に移動する。これにより、プラズマ
中には、イオンが電子より多く残されてしまう。その結
果、プラズマ中の電位(プラズマ空間電位)が領域分割
部30の壁の電位より高くなる。これにより、プラズマ
空間電位に対する壁電位(シース電位)が負の方向に大
きくなる。その結果、プラズマ中から壁の方に拡散する
電子が追い返され、プラズマ中から壁の方に拡散するイ
オンが加速される。
【0106】領域分割部30の壁が金属製のグリッド3
01により構成される場合、エネルギーの低い電子は、
グリッド301の表面に発生するシース電位によって追
い返される。これに対し、エネルギーの高い電子は、こ
のシース電位を乗り越え、グリッド301の電子通過孔
を介してプラズマ拡散領域R2に移動する。
【0107】プラズマ拡散領域R2に移動した高エネル
ギー電子は、この領域R2で加速され、中性ガス分子と
操り返し衝突する。この衝突により、高エネルギー電子
は、持っているエネルギーを失って低エネルギー電子に
なる。また、高エネルギー電子が中性ガス分子と衝突す
ることにより、新たな放電が発生する。その結果、プラ
ズマ拡散領域R2には、電子温度が低いプラズマが生成
される。
【0108】以上が、プラズマ拡散領域R2のプラズマ
の電子温度を低下させる動作である。
【0109】[1−3]効果 以上詳述した本実施の形態によれば、次のような効果を
得ることができる。
【0110】(1)まず、本実施の形態によれば、真空
容器11の内部領域をその中心軸Zに垂直な方向にプラ
ズマ生成領域R1とプラズマ拡散領域R2とに分割する
ことができる。これにより、基板Wの寸法が大きくなっ
た場合に、グリッド301の強度が低下することを防止
することができる。その結果、このような場合に、グリ
ッド301の変形によって、基板Wの表面の電子温度分
布が不均一になることを防止することができる。
【0111】(2)また、真空容器11の内部領域をプ
ラズマ生成領域R1とプラズマ拡散領域R2とに分割す
ることにより、プラズマ生成領域R1のプラズマに影響
を与えることなく、プラズマ拡散領域R2のプラズマを
制御することができる。これにより、プラズマ拡散領域
R2のプラズマの制御性を高めることができる。
【0112】(3)さらに、本実施の形態によれば、導
電性を有するグリッド301によって領域分割を行うよ
うになっている。これにより、プラズマ拡散領域R2の
プラズマの電子温度をプラズマ生成領域R1のプラズマ
の電子温度より低くすることができる。
【0113】(4)さらにまた、導電性を有するグリッ
ド301によって領域分割を行うことにより、プラズマ
拡散領域R2のプラズマの電子温度を容易に制御するこ
とができる。
【0114】(5)また、本実施の形態によれば、金属
製のグリッド301の表面をプラズマに強い誘電体で覆
うようになっている。これにより、グリッド301の表
面から金属製の不純物が出て、基板Wを汚染してしまう
ことを防止することができる。
【0115】すなわち、グリッド301の表面を誘電体
で覆わない場合、グリッド301とプラズマとの相互作
用によって、グリッド301の表面からプラズマ空間に
金属製の不純物が出ることがある。これにより、基板W
を汚染してしまうことがある。これに対し、グリッド3
01の表面をプラズマに強い誘電体で覆うことにより、
グリッド301とプラズマとの相互作用を防止すること
ができる。これにより、グリッド301の表面から金属
製の不純物が出て、基板Wを汚染してしまうことを防止
することができる。
【0116】(6)さらに、本実施の形態によれば、領
域分割部30を円筒状のグリッド301とリング状の仕
切板302,303とで形成するようになっている。こ
れにより、放電用電極15を確実に覆うことができると
ともに、領域分割部30を簡単に構成することができ
る。
【0117】(7)また、本実施の形態によれば、電子
通過孔を有する壁をグリッド301により形成するよう
になっている。これにより、この壁を簡単に構成するこ
とができる。
【0118】(8)また、本実施の形態によれば、グリ
ッド301を真空容器11の中心軸zと平行に配設する
ようになっている。これにより、グリッド301を容易
に構成することができる。
【0119】(9)また、本実施の形態によれば、放電
用電極15とグリッド301との間隔が、両者の間に異
常放電が発生しないような間隔に設定されている。これ
により、プラズマ生成領域R1におけるプラズマの生成
効率を高めることができる。
【0120】[1−4]変形例 以上の説明では、グリッド301と仕切板302,30
3とを金属で形成する場合を説明した。しかしながら、
本実施の形態では、金属以外の導電体で形成するように
してもよい。また、本実施の形態では、グリッド301
にバイアスをかけないので、これらを導電体以外の材料
で形成するようにしてもよい。例えば、プロセスによっ
ては、グリッド301の表面に自然に誘電体が形成され
る場合がある。このような場合は、グリッド301を最
初から絶縁材料によって形成する必要がある。
【0121】[2]第2の実施の形態 図3は、本発明の第2の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。なお、図3において、先の図2とほぼ
同一機能を果たす部分には、同一符号を付して詳細な説
明を省略する。
【0122】先の実施の形態では、グリッド301を仕
切板302,303に直接固定する場合を説明した。こ
れに対し、本実施の形態では、図3に示すように、グリ
ッド301を2つの円形のリング状の絶縁体304,3
05を介して仕切板302,303に固定するようにし
たものである。ここで、絶縁体304は、グリッド30
1の上端部と仕切板302の内縁部との間に挿入され、
絶縁体305は、グリッド301の下端部と仕切板30
3の内縁部との間に挿入されている。
【0123】このような構成によれば、グリッド301
の電気的特性を制御することが可能となる。これによ
り、グリッド301を使って、プラズマ拡散領域R2の
電子温度を制御することが可能となる。
【0124】[3]第3の実施の形態 図4は、本発明の第3の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。なお、図4において、先の図3に示す
構成要素とほぼ同一機能を果たす構成要素には、同一符
号を付して詳細な説明を省略する。
【0125】本実施の形態は、図4に示すように、第2
の実施の形態において、グリッド301とアースとの間
に容量が十分大きなコンデンサ31を挿入するようにし
たものである。この場合、コンデンサ31は、例えば、
複数設けられている。この複数のコンデンサ31は真空
容器11の中心軸Zの周りに均等に配設されている。
【0126】このような構成によれば、プラズマ拡散領
域R2のプラズマの電子温度をかなり低い温度(例え
ば、0.02eV)まで下げることができる。
【0127】すなわち、コンデンサ31を挿入しない構
成では、周波数が13.56MHzのような高周波電力
を放電用電極15に印加して第1のプラズマを生成する
場合、放電用電極15の電位が変化する。これにより、
プラズマ空間電位が変化する。その結果、グリッド30
1の電位が変化する。これにより、グリッド301の表
面に発生するシース電位として、所望の電位を設定する
ことができない。その結果、プラズマ拡散領域R2のプ
ラズマの電子温度として、あまり低い温度を得ることが
できない。
【0128】これに対し、本実施の形態では、コンデン
サ31によって、グリッド301の高周波インピーダン
スを小さくすることができる。これにより、放電用電極
15の電位が変化しても、グリッド301の電位をほぼ
ー定にすることができる。その結果、グリッド301の
表面に発生するシース電位として、所望の電位を設定す
ることができる。その結果、プラズマ拡散領域R2の電
子温度として、かなり低い温度を得ることができる。
【0129】[4]第4の実施の形態 図5は、本発明の第4の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。なお、図5において、先の図3に示す
構成要素とほぼ同一機能を果たす構成要素には、同一符
号を付して詳細な説明を省略する。
【0130】本実施の形態は、図5に示すように、第2
の実施の形態において、グリッド301とアースとの間
に直流可変電源32を挿入するようにしたものである。
【0131】このような構成によれば、直流可変電源3
2から出力される直流電圧を変えることにより、グリッ
ド301の直流電位を広範囲に亘って連続的に制御する
ことができる。これにより、グリッド301の表面に発
生するシース電位を広範囲に亘って連続的に制御するこ
とができる。その結果、プラズマ拡散領域R2のプラズ
マの電子温度を広範囲に亘って連続的に制御することが
できる。具体的には、この電子温度を連続的に1桁以上
制御することができる。
【0132】これを図6及び図7を用いて説明する。こ
れらは、本実施の形態の実験結果を示す特性図である。
なお、これらは、平行平板電極(上部電極21と下部電
極22)に高周波電力を供給しない状態で実験を行った
場合の結果を示す。
【0133】図6は、グリッド301の直流電位V
(V:ボルト)に対するプラズマの電子温度T(e
V)の依存性を示す特性図である。図6において、横軸
は、直流電位Vを示し、縦軸は、電子温度Tを示
す。図示のごとく、プラズマ生成領域R1のプラズマの
電子温度Tは、グリッド301の直流電位Vを−3
0(V)から30(V)まで変えても、ほとんど変わら
ない。これに対し、プラズマ拡散領域R2のプラズマの
電子温度Tは、約0.02(eV)から約2.3(e
V)まで変化する。
【0134】図7は、グリッド301の直流電位V
対するプラズマの電子密度n(×10cm−3)の
依存性を示す特性図である。図において、横軸は、グリ
ッド301の直流電位Vを示し、縦軸は、プラズマの
電子密度nを示す。
【0135】上述した図6に示すように、プラズマ拡散
領域R2では、直流電位Vが負の場合、この直流電位
が負の方向に大きくなるにつれて、プラズマの電子
温度Tは低くなる。これに対し、プラズマの電子密度
は、図7に示すように大きくなる。
【0136】ここで、注目すべきことは、プラズマ拡散
領域R2のプラズマの電子温度Tが低くなると、その
電子密度nがプラズマ生成領域R1のプラズマの電子
密度nより高くなることである。この理由は、プラズ
マ生成領域R1の高工ネルギー電子がグリッド301の
バイアスによって形成される電位バリアを乗り越えてプ
ラズマ拡散領域R2に移動し、このプラズマ拡散領域R
2で中性原子と衝突し、新たな放電を起こすことによ
り、低エネルギーのプラズマを生成するからであると考
えられる。
【0137】通常の弱電離プラズマの場合は、プラズマ
の電子密度nは、プラズマの生成と拡散損失とのバラ
ンスによって決まる。このことから、プラズマ拡散領域
R2では、電子温度Tが低くなるにつれて、拡散損失
が少なくなり、プラズマ生成領域R1よりも高いプラズ
マの電子密度nが観測されたと考えられる。
【0138】なお、実験では、放電用ガスとして、アル
ゴンガスを用いた。また、このアルゴンガスの圧力を1
mTorr、グリッド301のメッシュサイズを12メ
ッシュ/インチとした。
【0139】以上の説明では、グリッド301の直流電
位を制御する場合を説明した。しかしながら、本実施の
形態では、交流電位を制御するようにしてもよい。
【0140】[5]第5の実施の形態 図8は、本発明の第5の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。なお、図8において、先の図4及び図
5に示す構成要素とほぼ同一機能を果たす構成要素に
は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0141】本実施の形態は、先の第3の実施の形態と
第4の実施の形態とを組み合わせるようにしたものであ
る。すなわち、図8に示すように、グリッド301とア
ースとの間にコンデンサ31と直流可変電源32とを並
列に挿入するようにしたものである。
【0142】このような構成によれば、プラズマ拡散領
域R2のプラズマの電子温度をかなり低い温度まで下げ
ることができるとともに、この電子温度を広範囲に渡っ
て連続的に制御することができる。
【0143】[6]第6の実施の形態 図9は、本発明の第6の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。なお、図9において、先の図3とほぼ
同一機能を果たす部分には、同一符号を付して詳細な説
明を省略する。
【0144】先の第3の実施の形態では、コンデンサと
して、容量固定型のコンデンサ31を用いる場合を説明
した。これに対し、本実施の形態では、図9に示すよう
に、容量可変型のコンデンサ33を用いるようにしたも
のである。
【0145】このような構成によれば、コンデンサ33
の容量を変えることにより、グリッド301の高周波イ
ンピーダンスを制御することができる。これにより、グ
リッド301の表面のシース電位を制御することができ
る。その結果、放電用電極15の電位変化に影響される
ことなく、プラズマ拡散領域R2のプラズマの電子温度
を制御することができる。
【0146】なお、本実施の形態は、図4に示すような
第3の実施の形態だけでなく、図8に示すような第5の
実施の形態にも適用することができる。
【0147】[7]第7の実施の形態 図10は、本発明の第7の実施の形態の要部の構成を示
す側断面図である。なお、図10において、先の図4に
示す構成要素とほぼ同一機能を果たす構成要素には、同
一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0148】本実施の形態は、グリッド301をコンデ
ンサ31を介して接地するとともに、グリッド301の
メッシュサイズ(電子通過孔の大きさ)を変更すること
ができるようにしたものである。
【0149】本実施の形態では、メッシュサイズを変更
するために、例えば、グリッド301として、2つのグ
リッドを重ねた2層構造のグリッドを用いるようになっ
ている。このような構成によれば、2つのグリッドの相
対的な位置をずらすことにより、2つのグリッドの電子
通過孔の重なり具合を変更することができる。これによ
り、グリッド301のメッシュサイズを変更することが
できる。
【0150】図10において、34は、2つのグリッド
の相対的な位置をずらすずらし機構を示す。このずらし
機構34としては、種々様々な機構が考えられる。した
がって、図では、このずらし機構34を概念的に示す。
また、図では、2層構造のグリッド301を便宜上、1
つのグリッドで表している。
【0151】このような構成によれば、グリッド301
のメッシュサイズを変えることにより、プラズマ拡散領
域R2のプラズマの電子温度を制御することができる。
【0152】すなわち、グリッド301のメッシュサイ
ズを変えると、グリッド301の線と線の間のポテンシ
ャルバリア(電位バリア)が変化する。この場合、グリ
ッド301のメッシュサイズが小さくなるほど、電位バ
リアが大きくなり、メッシュサイズが大きくなるほど、
電位バリアが小さくなる。その一方、メッシュサイズが
小さくなるほど、グリッド301の線の表面積が大きく
なるため、高エネルギー電子がグリッド301の線にぶ
つかる確率が高くなる。これにより、グリッド301の
メッシュサイズが小さくなるほど、グリッド301の表
面に発生するシース電位が大きくなる。
【0153】以上から、グリッド301のメッシュサイ
ズが小さくなるほど、プラズマ拡散領域R2のプラズマ
の電子温度が低くなる。これにより、グリッドのメッシ
ュサイズを変えることにより、プラズマ拡散領域R2の
電子温度を制御することができる。
【0154】これを図11を用いて説明する。図11
は、本実施の形態において、メッシュサイズに対するプ
ラズマの電子温度Tと電子密度nの依存性を示す特
性図である。なお、図11は、平行平板電極(上部電極
21と下部電極22)に高周波電力を供給しない状態で
実験を行った場合の結果を示す。図において、横軸は、
メッシュサイズMS(メッシュ/インチ)を示し、縦軸
は、プラズマの電子温度Tと電子密度nを示す。
【0155】図示のごとく、メッシュサイズを変えるこ
とにより、プラズマ拡散領域R2のプラズマの電子温度
を約0.3(eV)から約2.8(eV)まで変化
させることができるとともに、プラズマの電子密度n
を約4.9(×10cm )から1.0(×10
cm−3)まで変化させることができる。
【0156】なお、以上の説明では、メッシュサイズを
変えることにより、電子温度を制御する場合を説明し
た。すなわち、電子通過孔の大きさを変えることによ
り、電子温度を制御する場合を説明した。しかしなが
ら、本実施の形態は、電子通過孔の数を変えることによ
り、電子温度を制御するようにしてもよい。要は、本実
施の形態は、複数の電子通過孔の総面積を変えることに
より、電子温度を制御する構成であれば、どのような構
成であってもよい。
【0157】また、本実施の形態は、図4に示すような
第3の実施の形態だけでなく、図5、図8、図9に示す
ような第4、第5、第6の実施の形態にも適用すること
ができる。
【0158】[8]第8の実施の形態 図12は、本発明の第8の実施の形態の要部の構成を示
す側断面図である。なお、図12において、先の図3に
示す構成要素とほぼ同一機能を果たす構成要素には、同
一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0159】先の実施の形態では、グリッドとして、1
つの円筒形のグリッド301を用いる場合を説明した。
これに対し、本実施の形態は、グリッド301を水平に
分割することにより、2つの円筒形のグリッド301
(1),301(2)を用いるようにしたものである。
【0160】また、本実施の形態は、2つのグリッド3
01(1),301(2)の鉛直方向の間隔dを連続的
に調整することができるようにしたものである。図にお
いて、35が、このグリッド間隔dを調整するためのグ
リッド間隔調整機構を示す。このグリッド間隔調整機構
35としては、種々様々な機構が考えられる。したがっ
て、図には、このグリッド間隔調整機構35を概念的に
示す。
【0161】さらに、本実施の形態は、グリッド301
(1),301(2)とアースとの間にそれぞれコンデ
ンサ36,37を挿入するようにしたものである。
【0162】このような構成によれば、2つのグリッド
301(1),301(2)の間隔dを変えることによ
り、プラズマ拡散領域R2の電子温度Tを制御するこ
とができる。
【0163】すなわち、2つのグリッド301(1),
301(2)のグリッド間隔dを変えると、2つのグリ
ッド301(1),301(2)間に形成される電位分
布のバリアが変わる。この場合、2つのグリッド301
(1),301(2)の間隔dを大きくすると、電位バ
リアが小さくなり、間隔dを小さくすると、電位バリア
が大きくなる。
【0164】電位バリアが小さくなると、電位エネルギ
ーが低い電子も電位バリアを乗り越えて、プラズマ拡敢
領域R2に入ることができるようになる。これにより、
この場合は、プラズマ拡散領域R2のプラズマの電子エ
ネルギー分布が広くなり、電子温度が高くなる。
【0165】これに対し、電位バリアが大きくなると、
電位エネルギーが低い電子は電位バリアを乗り越えて、
プラズマ拡敢領域R2に入ることができない。これによ
り、この場合は、プラズマ拡散領域R2のプラズマの電
子エネルギー分布が狭くなり、電子温度が低くなる。
【0166】以上から、2つのグリッド301(1),
301(2)の間隔dを制御することにより、プラズマ
拡散領域R2のプラズマの電子温度を制御することがで
きる。これを図13を用いて説明する。図13は、グリ
ッド間隔dに対するプラズマ拡散領域R2のプラズマの
電子温度Tの依存性を示す特性図である。なお、図1
3は、平行平板電極(上部電極21と下部電極22)に
高周波電力を供給しない状態で実験を行った場合の結果
を示す。
【0167】図において、横軸は、グリッド間隔d(m
m)を示し、縦軸は、プラズマの電子温度Tを示す。
また、Zdは、平行平板電極の間隔、すなわち、真空容
器11の中心軸Z方向の間隔を示す。図には、このZd
が10cmである場合を示す。
【0168】図示のごとく、本実施の形態では、グリッ
ド間隔dを約10(mm)から約0(mm)まで変える
ことにより、プラズマの電子温度Tを約2.8(e
V)から0.2(eV)まで変化させることができる。
なお、本実験では、放電用ガスとして、アルゴンガスを
用いた。また、このアルゴンガスの圧力を3mTorr
とし、放電用電極15に供給される高周波電力の電力量
を100Wとした。
【0169】また、本実施の形態によれば、プラズマの
電子密度と、プラズマ空間電位と、プラズマの電子温度
の分布状態を均一にすることができる。これを図14を
用いて説明する。図14は、プラズマ拡散領域R2にお
けるプラズマの電子密度nと、プラズマ空間電位V
と、プラズマの電子温度Tの分布状態を示す特性図で
ある。なお、図14は、真空容器11の径方向における
分布状態を測定した場合の結果を示す。
【0170】図において、横軸は、真空容器11の中心
から径方向への距離r(cm)を示し、縦軸は、プラズ
マの電子密度nと、プラズマ空間電位V(×10
V)と、プラズマの電子温度Tとを示す。また、Zd
は、平行平板電極の間隔を示す。図には、このZdが1
0cm、グリッド間隔dが0mmである場合を示す。
【0171】図示のごとく、本実施の形態では、距離r
が約12cm以下の範囲で、プラズマの電子密度n
と、プラズマ空間電位Vと、プラズマの電子温度T
のいずれも均一に分布するようになっている。
【0172】さらに、本実施の形態によれば、グリッド
間隔dを連続的に変えるだけの比較的簡単な構成によ
り、プラズマ拡散領域R2のプラズマの電子温度T
連続的に制御することができる。
【0173】さらにまた、本実施の形態によれば、グリ
ッド301(1),301(2)にバイアスをかける必
要がない。これにより、反応ガスを用いるプロセスで、
グリッド301(1),301(2)の表面に絶縁膜が
形成された場合でも、プラズマ拡散領域R2のプラズマ
の電子温度Tを制御することができる。
【0174】[9]第9の実施の形態 図15は、本発明の第9の実施の形態を示す側断面図で
ある。なお、図15において、先の図4に示す構成要素
とほぼ同じ機能を果たす構成要素には、同じ符号を付し
て詳細な説明を省略する。
【0175】先の実施の形態では、グリッド301と放
電用電極15との間隔を一定にする場合を説明した。こ
れに対し、本実施の形態では、このグリッド・電極間隔
を調整することができるようにしたものである。このグ
リッド・電極間隔を調整する機構36としては、種々様
々な機構が考えられる。したがって、図では、このグリ
ッド・電極間隔調整機構36を概念的に示す。
【0176】このような構成によれば、グリッド301
と放電用電極15との間隔を変えることができる。これ
により、プラズマ拡散領域R2のプラズマの電子温度を
制御することができる。
【0177】すなわち、グリッド301と放電用電極1
5との間隔を変えることにより、グリッド301の表面
に発生するシース電位を制御することができる。これに
より、グリッド301によって形成される電位バリアを
制御することができる。その結果、この電位バリアを乗
り越えられる電子が持っているエネルギーが変化する。
これにより、プラズマ拡散領域の電子温度を制御するこ
とができる。
【0178】また、本実施の形態によれば、プラズマの
生成効率の低下と装置の大型化を防止することができ
る。
【0179】すなわち、グリッド301と放電用電極1
5との間隔が小さすぎると、グリッド301と放電用電
極15との間に放電が発生する。これにより、プラズマ
の生成効率が低下する。逆に、大きすぎると、装置が大
型化する。以上から、グリッド301と放電用電極15
との間隔を調整することができることにより、プラズマ
の生成効率の低下と装置の大型化を防止することができ
る。
【0180】なお、本実施の形態は、図4に示すような
第3の実施の形態だけでなく、図3、図5、図8、図
9、図10、図12に示すような実施の形態にも適用す
ることができる。
【0181】[10]第10の実施の形態 図16は、本発明の第10の実施の形態を示す側断面図
である。なお、図16において、先の図4に示す構成要
素とほぼ同じ機能を果たす構成要素には、同じ符号を付
して詳細な説明を省略する。
【0182】先の実施の形態では、グリッド301を真
空容器11の中心軸Zと平行に設定する場合を説明し
た。これに対し、本実施の形態では、図16に示すよう
に、グリッド301が基板W側に向くように真空容器1
1の中心軸に対して傾けるようにしたものである。この
ようなグリッド301は、例えば、円錐の上部を切断し
たような筒によって簡単に構成することができる。
【0183】このような構成によれば、基板Wの表面に
おけるプラズマ密度を高めることができる。これによ
り、基板Wの処理効率を高めることができる。
【0184】なお、本実施の形態は、図4に示すような
第3の実施の形態だけでなく、図3、図5、図8、図
9、図10、図12、図15に示すような実施の形態に
も適用することができる。
【0185】[11]その他の実施の形態 以上、本発明の10個の実施の形態を説明したが、本発
明は、上述したような実施の形態に限定されるものでは
ない。
【0186】(1)例えば、先の実施の形態では、壁と
して、電子通過孔を格子状に並べたグリッド301を用
いる場合を説明した。しかしながら、本発明は、電子通
過孔を格子状以外の形状、例えば、一列に並べた壁を用
いるようにしてもよい。このような構成は、例えば、電
子通過孔として、スリット状の電子通過孔を有する壁を
用いる場合に利用できる。
【0187】(2)また、先の実施の形態では、本発明
を、平行平板電極を有するマグネトロン高周波放電型プ
ラズマ生成装置に適用する説明した。しかしながら、本
発明は、平行平板電極を有しないマグネトロン高周波放
電型プラズマ生成装置にも適用することができる。
【0188】(3)さらに、先の実施の形態では、リン
グ状の永久磁石を有するマグネトロン高周波放電型のプ
ラズマ生成装置に本発明を適用する場合を説明した。し
かしながら、本発明は、永久磁石を有しないマグネトロ
ン高周波放電型プラズマ生成装置にも適用することがで
きる。
【0189】(4)さらにまた、先の実施の形態では、
本発明を、マグネトロン高周波放電型プラズマ生成装置
に適用する説明した。しかしながら、本発明は、ECR
型プラズマ生成装置、誘導結合型プラズマ生成装置、マ
イクロ表面波型プラズマ生成装置、ヘリコン波型プラズ
マ生成装置等の高密度プラズマ生成装置や負イオンプラ
ズマ生成装置等にも適用することができる。
【0190】(5)このほかにも、本発明は、その要旨
を逸脱しない範囲で種々様々変形実施可能なことは勿論
である。
【0191】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1記載のプラ
ズマ生成装置によれば、真空容器の内部領域を真空容器
の中心軸に垂直な方向にプラズマ生成領域とプラズマ拡
散領域に分割することができる。これにより、処理対象
物の寸法が大きくなった場合でも、壁の変形によって処
理対象物の表面の電子温度分布が不均一になることを防
止することができる。
【0192】また、本装置によれば、真空容器の内部領
域をプラズマ生成領域とプラズマ拡散領域に分割するこ
とができる。これにより、処理対象物の表面のプラズマ
の制御性を高めることができる。
【0193】さらに、本装置によれば、領域分割手段が
放電用電極の近傍に設けられている。これにより、プラ
ズマ拡散領域のプラズマの電子温度を効果的に制御する
ことが可能となる。
【0194】さらにまた、本装置によれば、領域分割手
段が処理対象物の外側に位置するように配設されてい
る。これにより、処理対象物の全面でプラズマ処理を均
一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の全体的な構成を示
す側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態の効果を説明するた
めの特性図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態の効果を説明するた
めの特性図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態の要部の構成を示す
側断面図である。
【図10】本発明の第7の実施の形態の要部の構成を示
す側断面図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態の効果を説明する
ための特性図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態の要部の構成を示
す側断面図である。
【図13】本発明の第8の実施の形態の効果を説明する
ための特性図である。
【図14】本発明の第8の実施の形態の効果を説明する
ための特性図である。
【図15】本発明の第9の実施の形態の要部の構成を示
す側断面図である。
【図16】本発明の第10の実施の形態の要部の構成を
示す側断面図である。
【図17】従来のプラズマ生成装置の構成を示す側断面
図である。
【符号の説明】
11…真空容器、111…上部電極、112…下部電
極、12…ガス導入部、13…ガス導入管、14…雰囲
気排出部、15…放電用電極、16…高周波電源、17
…整合回路、18…遮蔽カバー、19,20…絶縁体、
21…上部電極、22…下部電極、23…高周波電源、
24…整合回路、25…直流阻止コンデンサ、26…絶
縁体、27,28…永久磁石、29…電界遮蔽部、29
1,292…金属遮蔽板、30…領域分割部、301…
グリッド、302,303…仕切板、304,305…
絶縁体、31…コンデンサ、32…直流可変電源、33
…容量可変コンデンサ、34…ずらし機構、35…グリ
ッド間隔調整機構、36,37…コンデンサ、38…グ
リッド・電極間隔調整機構、1a…天板、2a…底板、
R1…プラズマ生成領域、R2…プラズマ拡散領域、W
…基板。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 21/205 H01L 21/205 21/3065 21/31 C 21/31 21/302 E (72)発明者 飯塚 哲 宮城県仙台市太白区郡山6丁目5−10− 201

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒状の真空容器と、 この真空容器の内部に放電用ガスを導入するガス導入手
    段と、 前記真空容器の内部の雰囲気を排出する雰囲気排出手段
    と、 前記真空容器と同軸的に設けられ、前記放電用ガスを放
    電させることにより、前記真空容器の周辺部でプラズマ
    を生成するリング状の放電用電極と、 この放電用電極に前記放電用ガスを放電させるための放
    電用電力を供給する放電用電力供給手段と、 複数の電子通過孔を有し、処理対象物の配設位置の外側
    に位置するように設けられるとともに前記真空容器と同
    軸的に設けられる筒状の壁を有し、前記放電用電極の近
    傍でこの放電用電極の内側を覆うことにより、前記真空
    容器の内部領域をその中心軸に垂直な方向にプラズマ生
    成領域とプラズマ拡散領域とに分割する領域分割手段
    と、 前記プラズマ拡散領域の前記プラズマの電子温度を制御
    する電子温度制御手段とを備えたことを特徴とするプラ
    ズマ生成装置。
  2. 【請求項2】 前記壁が導電性を有することを特徴とす
    る請求項1記載のプラズマ生成装置。
  3. 【請求項3】 前記電子温度制御手段が、前記壁を基準
    電位点から電気的に絶縁する絶縁手段を有することを特
    徴とする請求項2記載のプラズマ生成装置。
  4. 【請求項4】 前記電子温度制御手段が、前記壁と前記
    基準電位点との間に挿入された容量性素子を有すること
    を特徴とする請求項3記載のプラズマ生成装置。
  5. 【請求項5】 前記電子温度制御手段が、前記壁の電位
    を制御する電位制御手段を有することを特徴とする請求
    項3記載のプラズマ生成装置。
  6. 【請求項6】 前記電子温度制御手段が、 前記壁と前記基準電位点との間に挿入された容量性素子
    と、 前記壁の電位を制御する電位制御手段とを有することを
    特徴とする請求項3記載のプラズマ生成装置。
  7. 【請求項7】 前記容量性素子が可変容量性素子である
    ことを特徴とする請求項4または6記載のプラズマ生成
    装置。
  8. 【請求項8】 前記電位制御手段が前記壁の直流電位を
    制御することを特徴とする請求項5または6記載のプラ
    ズマ生成装置。
  9. 【請求項9】 前記電子温度制御手段が、前記複数の電
    子通過孔の総面積を調整する面積調整手段を有すること
    を特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または
    8記載のプラズマ生成装置。
  10. 【請求項10】 前記壁が複数の小壁を有するように分
    割され、 前記電子温度制御手段が前記複数の小壁の間隔を調整す
    る間隔調整手段を有することを特徴とする請求項1,
    2,3,4,5,6,7,8または9記載のプラズマ生
    成装置。
  11. 【請求項11】 前記電子温度制御手段が、前記壁と前
    記放電用電極との間隔を調整可能な間隔調整手段を有す
    ることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,
    7,8,9または10記載のプラズマ生成装置。
  12. 【請求項12】 前記壁と前記放電用電極との間隔が両
    者の間で異常放電が発生しないような間隔に設定されて
    いることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,
    7,8,9,10または11記載のプラズマ生成装置。
  13. 【請求項13】 前記壁が前記真空容器の中心軸と平行
    になるように設定されていることを特徴とする請求項
    1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11また
    は12記載のプラズマ生成装置。
  14. 【請求項14】 前記壁が前記処理対象物側に向くよう
    に前記真空容器の中心軸に対して傾けられていることを
    特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,
    9,10,11,12または13記載のプラズマ生成装
    置。
  15. 【請求項15】 前記壁が誘電体によって覆われている
    ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,
    8,9,10,11,12,13または14記載のプラ
    ズマ生成装置。
  16. 【請求項16】 前記領域分割手段が、 外縁部が前記真空容器の内壁側に固定され、内縁部に前
    記壁の一端部側が固定されたリング状の第1の仕切り板
    と、 前記第1の仕切板とで前記放電用電極を挟むように配設
    され、外縁部が前記真空容器の内壁側に固定され、内縁
    部に前記壁の他端部側が固定されたリング状の第2の仕
    切り板とを備えたことを特徴とする請求項1,2,3,
    4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,1
    4または15記載のプラズマ生成装置。
  17. 【請求項17】 前記複数の電子通過孔が格子状に配列
    されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,
    5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,
    15または16記載のプラズマ生成装置。
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