JPH11277246A - 耐摩耗性の溶接肉盛層および溶接肉盛用材料 - Google Patents
耐摩耗性の溶接肉盛層および溶接肉盛用材料Info
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- JPH11277246A JPH11277246A JP10057198A JP10057198A JPH11277246A JP H11277246 A JPH11277246 A JP H11277246A JP 10057198 A JP10057198 A JP 10057198A JP 10057198 A JP10057198 A JP 10057198A JP H11277246 A JPH11277246 A JP H11277246A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 炭化タングステンなどの大量添加によって溶
接肉盛層の硬化を図るが、層内の硬度のバラツキが著し
く耐摩耗性の向上を阻害する。 【解決手段】 NiまたはFeの基地とW、Cr、Bの
三元複合化合物または析出物を主体とするミクロ組織よ
りなる。たとえば粉末プラズマアーク溶接法によるとき
は、NiまたはFe粉末に炭化タングステンおよびホウ
化クロムの粉末を40〜80重量%含み、かつ、該複合
粉末中の炭化タングステンは常にホウ化クロムよりも大
きい重量%を占めるが、ホウ化クロム自体が必ず10〜
30重量%は含むことにより、溶接肉盛層にきわめて高
い硬度をもたらし、かつ、層内の上下方向の硬度差を常
に僅差に抑制することによって課題を解決する。
接肉盛層の硬化を図るが、層内の硬度のバラツキが著し
く耐摩耗性の向上を阻害する。 【解決手段】 NiまたはFeの基地とW、Cr、Bの
三元複合化合物または析出物を主体とするミクロ組織よ
りなる。たとえば粉末プラズマアーク溶接法によるとき
は、NiまたはFe粉末に炭化タングステンおよびホウ
化クロムの粉末を40〜80重量%含み、かつ、該複合
粉末中の炭化タングステンは常にホウ化クロムよりも大
きい重量%を占めるが、ホウ化クロム自体が必ず10〜
30重量%は含むことにより、溶接肉盛層にきわめて高
い硬度をもたらし、かつ、層内の上下方向の硬度差を常
に僅差に抑制することによって課題を解決する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性材料、特に
摩耗面に該当する部分のみを硬化した溶接肉盛層、およ
びその材料に係る。
摩耗面に該当する部分のみを硬化した溶接肉盛層、およ
びその材料に係る。
【0002】
【従来の技術】従来、装置、機械類の特定の部材の特定
の面に耐摩耗性など特定の性質を与えるため、母材の表
面に表面処理や溶接肉盛が施工されている。周知の通
り、溶接肉盛には多くの方法が実用化されているが、簡
単な装置で足りるフラックス入り複合ワイヤを使用した
アーク溶接が多用されている。これは、可撓性のある軟
鋼、ステンレス鋼などからなる中空管状の外皮の中へC
r、C、Si、Mnなどの所要の添加成分を粉末として
配合充填してなるフラックス入り複合ワイヤを、母材の
表面にフレキシブルに供給して溶接肉盛する方式であ
る。
の面に耐摩耗性など特定の性質を与えるため、母材の表
面に表面処理や溶接肉盛が施工されている。周知の通
り、溶接肉盛には多くの方法が実用化されているが、簡
単な装置で足りるフラックス入り複合ワイヤを使用した
アーク溶接が多用されている。これは、可撓性のある軟
鋼、ステンレス鋼などからなる中空管状の外皮の中へC
r、C、Si、Mnなどの所要の添加成分を粉末として
配合充填してなるフラックス入り複合ワイヤを、母材の
表面にフレキシブルに供給して溶接肉盛する方式であ
る。
【0003】一方、溶射による表面被覆も広く行なわれ
ている。これは、金属やセラミックなどを溶融し、小粒
子を高速で噴射して物体表面を被覆する方式である。設
備や操作が比較的簡単で大型の母材にも適用されるが、
溶射ガンから噴射された溶滴は空気中を飛んで被溶射体
の表面に衝突して潰れ、同時に急冷されて凝固する。こ
のように偏平小粒子が堆積して溶射被膜が形成される
が、表面が部分的に酸化され、粒子間に小間隔が残ると
いう基本的に共通した性状が指摘される。
ている。これは、金属やセラミックなどを溶融し、小粒
子を高速で噴射して物体表面を被覆する方式である。設
備や操作が比較的簡単で大型の母材にも適用されるが、
溶射ガンから噴射された溶滴は空気中を飛んで被溶射体
の表面に衝突して潰れ、同時に急冷されて凝固する。こ
のように偏平小粒子が堆積して溶射被膜が形成される
が、表面が部分的に酸化され、粒子間に小間隔が残ると
いう基本的に共通した性状が指摘される。
【0004】溶射による耐摩耗性向上のために被覆被膜
を強化する従来技術は多数提起されている。たとえばW
−Co系の複ホウ化物とCo−Cr−Mo系合金相を組
合わせてサーメット化する特開平9−268361号
や、炭化物サーメットの各粒子とホウ化物をメカニカル
アロイングやCVD法によってあらかじめ複合一体化
し、溶射作業中に両成分が分離しないように図った特開
平6−116702号、さらにはW、Cr、Niの3成
分を複合した粉末溶射において、その耐摩耗性や硬度、
溶接性を向上するために3%以下のホウ素を添加して炭
化タングステンを均一微細に分布した特公昭52−26
725号などがある。
を強化する従来技術は多数提起されている。たとえばW
−Co系の複ホウ化物とCo−Cr−Mo系合金相を組
合わせてサーメット化する特開平9−268361号
や、炭化物サーメットの各粒子とホウ化物をメカニカル
アロイングやCVD法によってあらかじめ複合一体化
し、溶射作業中に両成分が分離しないように図った特開
平6−116702号、さらにはW、Cr、Niの3成
分を複合した粉末溶射において、その耐摩耗性や硬度、
溶接性を向上するために3%以下のホウ素を添加して炭
化タングステンを均一微細に分布した特公昭52−26
725号などがある。
【0005】溶接肉盛による基地の強化として高く評価
される方式には、粉体プラズマアーク溶接(以下「PT
A溶接」という)がある。この方式の原理は、図6に示
す通り原料粉末Pを送給ガスで高温のプラズマアーク1
4内に供給し粉末を溶かしながら溶融プールに移行させ
溶接肉盛層15を形成するもので、金属粉末以外の炭化
物、酸化物、ホウ化物粉末などを自由に混合し、溶接金
属中に添加できる利点がある。また、従来の溶接法に比
べ、溶け込みが浅く、溶接ビードも滑らかで溶接肉盛に
適していると考えられる。一般にプラズマガス11、シ
ールドガス12、粉末送給ガス13にはアルゴンガスが
用いられる。通常PTA溶接に用いられる原料粉末Pは
Fe、Ni、Crなどの金属粉末であるが、溶接肉盛層
を一段と硬化するためにこれらの金属粉末に加えて、炭
化タングステンを30〜70重量%(以下、単に%で表
わす)混入することが行なわれている。送給性と溶着効
率の観点から、通常、粉末粒子径は45〜200μのサ
イズのものが多用される。
される方式には、粉体プラズマアーク溶接(以下「PT
A溶接」という)がある。この方式の原理は、図6に示
す通り原料粉末Pを送給ガスで高温のプラズマアーク1
4内に供給し粉末を溶かしながら溶融プールに移行させ
溶接肉盛層15を形成するもので、金属粉末以外の炭化
物、酸化物、ホウ化物粉末などを自由に混合し、溶接金
属中に添加できる利点がある。また、従来の溶接法に比
べ、溶け込みが浅く、溶接ビードも滑らかで溶接肉盛に
適していると考えられる。一般にプラズマガス11、シ
ールドガス12、粉末送給ガス13にはアルゴンガスが
用いられる。通常PTA溶接に用いられる原料粉末Pは
Fe、Ni、Crなどの金属粉末であるが、溶接肉盛層
を一段と硬化するためにこれらの金属粉末に加えて、炭
化タングステンを30〜70重量%(以下、単に%で表
わす)混入することが行なわれている。送給性と溶着効
率の観点から、通常、粉末粒子径は45〜200μのサ
イズのものが多用される。
【0006】PTA溶接についても多数の従来技術が提
示されており、粉末の粒度や形状を限定して粉末飛散を
防ぐ特許第2703713号、特開平7−195177
号、水素量0.5〜20ppm添加してピンホールを防
止する特許第2703735号、ショベルやスクリュー
に用途を限定した特許第2668055号、特開昭61
−266209号など枚挙に暇がない。
示されており、粉末の粒度や形状を限定して粉末飛散を
防ぐ特許第2703713号、特開平7−195177
号、水素量0.5〜20ppm添加してピンホールを防
止する特許第2703735号、ショベルやスクリュー
に用途を限定した特許第2668055号、特開昭61
−266209号など枚挙に暇がない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上の従来技術のう
ち、溶射については既に述べたように溶滴を噴射ガンで
母材の表面に噴き付けて偏平な小粒子が堆積した薄い溶
射被膜を形成するだけであるから、被膜の粒子間に空隙
が残り易く緻密さに限界があり、また表面が部分的に酸
化され易く、酸素との親和力が強い金属粉末を配合する
には限界がある。何れにしても粒子と粒子とは相互に無
関係に堆積するだけで、単体としての硬度向上はあると
しても化合物生成による硬度の飛躍的な強化は望み難
い。粒子と素地とも冶金的に無関係であり、素地の表面
の凹凸に単に粉末が食込んだ物理的な付着に過ぎないか
ら、高度な一体的結合は望み得ず、単純に静的な耐摩耗
性に適性が認められたとしても、動的なアブレージョン
摩耗などには擦過、剥離の懸念が高く、被膜の膜厚も高
々数百ミクロン単位であるから耐摩耗性部品の表面処理
としての用途は限定される。
ち、溶射については既に述べたように溶滴を噴射ガンで
母材の表面に噴き付けて偏平な小粒子が堆積した薄い溶
射被膜を形成するだけであるから、被膜の粒子間に空隙
が残り易く緻密さに限界があり、また表面が部分的に酸
化され易く、酸素との親和力が強い金属粉末を配合する
には限界がある。何れにしても粒子と粒子とは相互に無
関係に堆積するだけで、単体としての硬度向上はあると
しても化合物生成による硬度の飛躍的な強化は望み難
い。粒子と素地とも冶金的に無関係であり、素地の表面
の凹凸に単に粉末が食込んだ物理的な付着に過ぎないか
ら、高度な一体的結合は望み得ず、単純に静的な耐摩耗
性に適性が認められたとしても、動的なアブレージョン
摩耗などには擦過、剥離の懸念が高く、被膜の膜厚も高
々数百ミクロン単位であるから耐摩耗性部品の表面処理
としての用途は限定される。
【0008】これに対してPTA溶接は溶接ビードも平
滑で耐摩耗性も良好であり、多様なアブレッシーブな摩
耗に直面する耐摩耗面の形成に好適である。しかし、よ
り高度な耐摩耗性を求められる今日、公知手段である高
硬度の炭化タングステンの分散硬化だけでは必ずしも対
応し切れなくなっている。すなわち、PTA溶接による
溶接用粉末として、NiまたはFeをベースに大量の炭
化タングステンを配合する従来技術も、表1が示唆する
ように、基地金属と添加化合物の密度差(比重差)によ
る問題が浮上する。
滑で耐摩耗性も良好であり、多様なアブレッシーブな摩
耗に直面する耐摩耗面の形成に好適である。しかし、よ
り高度な耐摩耗性を求められる今日、公知手段である高
硬度の炭化タングステンの分散硬化だけでは必ずしも対
応し切れなくなっている。すなわち、PTA溶接による
溶接用粉末として、NiまたはFeをベースに大量の炭
化タングステンを配合する従来技術も、表1が示唆する
ように、基地金属と添加化合物の密度差(比重差)によ
る問題が浮上する。
【0009】
【表1】
【0010】基地となるNiのビッカース硬度Hv(以
下、単に硬度という)が約120、Feが約100に対
して、W2C3000、WCでも1800であるから、
均等に基地中へ炭化タングステンが分布しておれば、溶
接肉盛層全体の硬度、従って耐摩耗性が飛躍的に向上す
ることは万人が予見するところである。従来技術のすべ
てはこの原点に立ち、炭化タングステン添加の溶接肉盛
によって耐摩耗性が向上することに疑念を挟む余地はな
かった。しかしNi粉末に対しW2Cを30、50、7
0%とそれぞれ配合比を変えた粉末でPTA溶接を行な
い、溶接肉盛層の上下で水平に分断して各断層毎に硬度
を測定してみると、意外に深刻な課題に衝き当る。
下、単に硬度という)が約120、Feが約100に対
して、W2C3000、WCでも1800であるから、
均等に基地中へ炭化タングステンが分布しておれば、溶
接肉盛層全体の硬度、従って耐摩耗性が飛躍的に向上す
ることは万人が予見するところである。従来技術のすべ
てはこの原点に立ち、炭化タングステン添加の溶接肉盛
によって耐摩耗性が向上することに疑念を挟む余地はな
かった。しかしNi粉末に対しW2Cを30、50、7
0%とそれぞれ配合比を変えた粉末でPTA溶接を行な
い、溶接肉盛層の上下で水平に分断して各断層毎に硬度
を測定してみると、意外に深刻な課題に衝き当る。
【0011】図7は代表例として30%Ni+70%W
2Cの各断層の硬度の測定結果を示したもので、母材の
SS400材に若干溶け込んだ第1列の平均硬度が11
07であるのに対し、上段に進むほど平均硬度が低下
し、各列の平均硬度は974、699、534と極度に
低下を続け、4列それぞれの平均硬度をさらに総平均し
た硬度は861に留まった。
2Cの各断層の硬度の測定結果を示したもので、母材の
SS400材に若干溶け込んだ第1列の平均硬度が11
07であるのに対し、上段に進むほど平均硬度が低下
し、各列の平均硬度は974、699、534と極度に
低下を続け、4列それぞれの平均硬度をさらに総平均し
た硬度は861に留まった。
【0012】図8は前記測定値に加え、さらに50%、
30%とW2C配合量を変動して溶接肉盛層の上下で分
断する水平断面の平均硬度との相関を示した図表であ
り、W 2C添加量増大と共に全体としての硬度は上昇し
つつも、それ以上に溶接肉盛層内の硬度のバラツキが拡
大する悪しき傾向が昂進し、R(平均硬度の最低値/平
均硬度の最高値)が急速に減少して肉盛層の耐摩耗性の
バランスが喪失されていく状態を示唆する。
30%とW2C配合量を変動して溶接肉盛層の上下で分
断する水平断面の平均硬度との相関を示した図表であ
り、W 2C添加量増大と共に全体としての硬度は上昇し
つつも、それ以上に溶接肉盛層内の硬度のバラツキが拡
大する悪しき傾向が昂進し、R(平均硬度の最低値/平
均硬度の最高値)が急速に減少して肉盛層の耐摩耗性の
バランスが喪失されていく状態を示唆する。
【0013】この甚だしい硬度差が発生する原因は、配
合成分の比重の差によるものと解釈される。表1におい
て密度(g/cm3)をみると、基地であるNiが8.
90、Feが7.86であるのに対し、W2Cが17.
20、WCが15.77であり、かかる大差があれば、
PTA溶接の僅かな溶融時間内においても著しく融点の
高くかつ質量の大きい炭化タングステンの大半は未溶解
のまま溶融プール内を沈降するし、また、溶融した炭化
タングステンも沈降することは理の当然と言える。
合成分の比重の差によるものと解釈される。表1におい
て密度(g/cm3)をみると、基地であるNiが8.
90、Feが7.86であるのに対し、W2Cが17.
20、WCが15.77であり、かかる大差があれば、
PTA溶接の僅かな溶融時間内においても著しく融点の
高くかつ質量の大きい炭化タングステンの大半は未溶解
のまま溶融プール内を沈降するし、また、溶融した炭化
タングステンも沈降することは理の当然と言える。
【0014】PTA溶接法による溶接肉盛層の形成にお
いて、硬度強化のために慣用化した炭化タングステンの
大量添加に代えて、ホウ化クロム添加で置換する手段も
従来技術の1つである。ホウ化クロムも炭化タングステ
ンと類似の特性を具え、冶金学的にほぼ同等の挙動を見
せることは周知である。この場合、ホウ化クロムは炭化
タングステンと違って密度が小さく、CrB2で5.6
0g/cm3と基地のNi密度よりむしろ小さいから、
溶融プール内で直ちに沈降する懸念は小さい。しかし、
80%のNiへ20%のCrB2を単独配合したとこ
ろ、図9のようにその硬度分布は最高で734、最低で
668と密度が小さいだけに溶接肉盛層内の硬度のバラ
ツキこそ小さいものの、総平均の硬度は700程度であ
り、単独添加の限界を示すに留まる。
いて、硬度強化のために慣用化した炭化タングステンの
大量添加に代えて、ホウ化クロム添加で置換する手段も
従来技術の1つである。ホウ化クロムも炭化タングステ
ンと類似の特性を具え、冶金学的にほぼ同等の挙動を見
せることは周知である。この場合、ホウ化クロムは炭化
タングステンと違って密度が小さく、CrB2で5.6
0g/cm3と基地のNi密度よりむしろ小さいから、
溶融プール内で直ちに沈降する懸念は小さい。しかし、
80%のNiへ20%のCrB2を単独配合したとこ
ろ、図9のようにその硬度分布は最高で734、最低で
668と密度が小さいだけに溶接肉盛層内の硬度のバラ
ツキこそ小さいものの、総平均の硬度は700程度であ
り、単独添加の限界を示すに留まる。
【0015】本発明はPTA溶接などによって母材上に
高硬度の肉盛層を形成するとき、溶接肉盛の何れの部位
においても一定レベル以上の硬度を普遍的に具え、常に
高度な耐摩耗性を保証する溶接肉盛層、または該溶接肉
盛層を形成する独特の溶接材料の提供を目的とする。
高硬度の肉盛層を形成するとき、溶接肉盛の何れの部位
においても一定レベル以上の硬度を普遍的に具え、常に
高度な耐摩耗性を保証する溶接肉盛層、または該溶接肉
盛層を形成する独特の溶接材料の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明に係る耐摩耗性の
溶接肉盛層は、NiまたはFeの基地とW、Cr、Bの
三元複合化合物または析出物を主体とするミクロ組織よ
りなり、層内の上下何れの部分においてもほぼ近接した
きわめて高い硬度を一様に具えたことを特徴とする。具
体的には溶接肉盛層内の如何なる位置においても、硬度
が少なくとも700を超え、かつ、肉盛層表面からの深
度毎に水平に測定した各断層面の平均硬度の最低値/最
高値の比率Rが深度に関わらず常に0.80を超える狭
い範囲内に集中する構成が望ましい実施形態である。
溶接肉盛層は、NiまたはFeの基地とW、Cr、Bの
三元複合化合物または析出物を主体とするミクロ組織よ
りなり、層内の上下何れの部分においてもほぼ近接した
きわめて高い硬度を一様に具えたことを特徴とする。具
体的には溶接肉盛層内の如何なる位置においても、硬度
が少なくとも700を超え、かつ、肉盛層表面からの深
度毎に水平に測定した各断層面の平均硬度の最低値/最
高値の比率Rが深度に関わらず常に0.80を超える狭
い範囲内に集中する構成が望ましい実施形態である。
【0017】また該溶接肉盛層を形成するための溶接材
料としては、粉末プラズマアーク溶接法に使用する粉末
材料では、NiまたはFe粉末に炭化タングステンおよ
びホウ化クロムの粉末を合計で40〜80重量%含む複
合粉末で、該複合粉末中の炭化タングステンは常にホウ
化クロムよりも大きい配合%を占めるが、ホウ化クロム
自体が必ず10〜30重量%は含むことにより、溶接肉
盛層にきわめて高い硬度をもたらし、かつ、肉盛層表面
からの深度毎に水平に測定した各断層面の平均硬度の最
低値/最高値の比率Rが深度に関わらず常に0.80を
超える狭い範囲に抑制することが要件である。アーク溶
接法に使用する溶接用フラックス入りワイヤについて
は、ニッケルまたは軟鋼、もしくはステンレス鋼の何れ
かから選択した板材を中空管状に成形した外皮の中に、
シールドガス発生剤、スラグ形成剤、および脱酸剤と共
に、炭化タングステンおよびホウ化クロム粉末を外皮を
含む全重量に対して合計で40〜80%充填するが、炭
化タングステンは常にホウ化クロムよりも大きい重量%
を占め、かつ、ホウ化クロム自体が必ず10〜30%は
含むことが要件となる。
料としては、粉末プラズマアーク溶接法に使用する粉末
材料では、NiまたはFe粉末に炭化タングステンおよ
びホウ化クロムの粉末を合計で40〜80重量%含む複
合粉末で、該複合粉末中の炭化タングステンは常にホウ
化クロムよりも大きい配合%を占めるが、ホウ化クロム
自体が必ず10〜30重量%は含むことにより、溶接肉
盛層にきわめて高い硬度をもたらし、かつ、肉盛層表面
からの深度毎に水平に測定した各断層面の平均硬度の最
低値/最高値の比率Rが深度に関わらず常に0.80を
超える狭い範囲に抑制することが要件である。アーク溶
接法に使用する溶接用フラックス入りワイヤについて
は、ニッケルまたは軟鋼、もしくはステンレス鋼の何れ
かから選択した板材を中空管状に成形した外皮の中に、
シールドガス発生剤、スラグ形成剤、および脱酸剤と共
に、炭化タングステンおよびホウ化クロム粉末を外皮を
含む全重量に対して合計で40〜80%充填するが、炭
化タングステンは常にホウ化クロムよりも大きい重量%
を占め、かつ、ホウ化クロム自体が必ず10〜30%は
含むことが要件となる。
【0018】表1ではホウ化クロムの融点、硬度、密度
を示し、CrB2の硬度が2100と極めて高く、Cr
Bもこれに準じる数値を示している上、密度が基地であ
るNiやFeより低いので、溶融プール中で沈降せず溶
接肉盛層の上部を硬化するのに有効であり、従来の炭化
タングステン単独添加よりも溶接肉盛層全体を硬化する
ことができる。しかもこれは単体レベルの考察であっ
て、溶接金属部の組織を観察した結果、溶接アークの熱
によって炭化タングステンの一部または半分程度は溶融
し、ホウ化クロムは大半またはほとんどが溶融する。溶
接金属部で冷却凝固後に、W、Cr、Bの3成分を多く
含む化合物または析出物が認められる。この化合物また
は析出物は非常に硬く耐摩耗性が良好であると考えられ
課題が解決する。
を示し、CrB2の硬度が2100と極めて高く、Cr
Bもこれに準じる数値を示している上、密度が基地であ
るNiやFeより低いので、溶融プール中で沈降せず溶
接肉盛層の上部を硬化するのに有効であり、従来の炭化
タングステン単独添加よりも溶接肉盛層全体を硬化する
ことができる。しかもこれは単体レベルの考察であっ
て、溶接金属部の組織を観察した結果、溶接アークの熱
によって炭化タングステンの一部または半分程度は溶融
し、ホウ化クロムは大半またはほとんどが溶融する。溶
接金属部で冷却凝固後に、W、Cr、Bの3成分を多く
含む化合物または析出物が認められる。この化合物また
は析出物は非常に硬く耐摩耗性が良好であると考えられ
課題が解決する。
【0019】また、この要件を満足する溶接肉盛層を形
成するためには、PTA溶接法において噴射粉末として
炭化タングステンとホウ化クロムの合計を80%以下と
するのは、合計が80%を超えると溶接肉盛層が脆くな
り、表面に開口した大きな割れを多数生じて振動、衝撃
などの外力を受けると、剥離脱落する虞れが大きいこと
を確認したためである。しかし、炭化タングステンとホ
ウ化クロムの合計が40%より多くなければならない。
このことは、従来炭化タングステンをNiまたはFeの
溶接プールへ添加して肉盛層の硬度を向上させる従来技
術において炭化タングステンは30〜70%の範囲に定
めることが経験上得られた通則であり、比較例1におけ
る硬度測定でもこれを裏付ける結果が明らかになった。
30%以下の炭化タングステンに10%のホウ化クロム
を加えたとしても本願が求める硬度が得られる期待は望
み難い。また、炭化タングステンは常にホウ化クロムよ
り配合率が高く、かつ、そのホウ化クロム自体も10〜
30%含まなければならない。この要件を満たさない限
り、1溶接肉盛層内の全ての硬度が700以上であるこ
とや、各水平断面における硬度のバラツキR(平均硬度
の最低値/平均硬度の最高値)が0.80を超えるとい
う結果を保証できない。溶接法がアーク溶接法の場合
は、溶接用フラックス入りワイヤの外皮を含む全重量に
対して合計で40〜80%の炭化タングステン+ホウ化
クロムを充填することに置き換えられるが、他の条件は
変るところはない。
成するためには、PTA溶接法において噴射粉末として
炭化タングステンとホウ化クロムの合計を80%以下と
するのは、合計が80%を超えると溶接肉盛層が脆くな
り、表面に開口した大きな割れを多数生じて振動、衝撃
などの外力を受けると、剥離脱落する虞れが大きいこと
を確認したためである。しかし、炭化タングステンとホ
ウ化クロムの合計が40%より多くなければならない。
このことは、従来炭化タングステンをNiまたはFeの
溶接プールへ添加して肉盛層の硬度を向上させる従来技
術において炭化タングステンは30〜70%の範囲に定
めることが経験上得られた通則であり、比較例1におけ
る硬度測定でもこれを裏付ける結果が明らかになった。
30%以下の炭化タングステンに10%のホウ化クロム
を加えたとしても本願が求める硬度が得られる期待は望
み難い。また、炭化タングステンは常にホウ化クロムよ
り配合率が高く、かつ、そのホウ化クロム自体も10〜
30%含まなければならない。この要件を満たさない限
り、1溶接肉盛層内の全ての硬度が700以上であるこ
とや、各水平断面における硬度のバラツキR(平均硬度
の最低値/平均硬度の最高値)が0.80を超えるとい
う結果を保証できない。溶接法がアーク溶接法の場合
は、溶接用フラックス入りワイヤの外皮を含む全重量に
対して合計で40〜80%の炭化タングステン+ホウ化
クロムを充填することに置き換えられるが、他の条件は
変るところはない。
【0020】
【発明の実施の形態】表1に示した各成分を表2のよう
に組合わせた粒子径45〜200μの粉末を適用して溶
接肉盛した。
に組合わせた粒子径45〜200μの粉末を適用して溶
接肉盛した。
【0021】
【表2】
【0022】溶接条件は溶接電流170A,溶接電圧2
3V、溶接速度70mm/分(ただし摩耗試験用試料は
溶接速度を40mm/分に下げてウェービングを行っ
た。)であり、板厚25mmのSS400の鋼板上へP
TA溶接を行なった。
3V、溶接速度70mm/分(ただし摩耗試験用試料は
溶接速度を40mm/分に下げてウェービングを行っ
た。)であり、板厚25mmのSS400の鋼板上へP
TA溶接を行なった。
【0023】表2のうち、比較例1〜3はすでに図8に
説明した炭化タングステン単独配合の従来技術であり、
比較例4は図9で説明したホウ化クロム単独配合の従来
技術である。比較例1、2は硬度が700を超える測定
点がなく、比較例3は硬度の総平均が861であるが各
断層の平均最低硬度(534)は平均最高硬度(110
7)の0.48に過ぎず、比較例4は密度が小さいだけ
にこの比率が0.94とバラツキが小さい反面、総平均
は700程度で単独添加の限界を示すデータとなってい
る。
説明した炭化タングステン単独配合の従来技術であり、
比較例4は図9で説明したホウ化クロム単独配合の従来
技術である。比較例1、2は硬度が700を超える測定
点がなく、比較例3は硬度の総平均が861であるが各
断層の平均最低硬度(534)は平均最高硬度(110
7)の0.48に過ぎず、比較例4は密度が小さいだけ
にこの比率が0.94とバラツキが小さい反面、総平均
は700程度で単独添加の限界を示すデータとなってい
る。
【0024】比較例5は溶接肉盛に剥離を予見させる大
きな割れが多数認められ、炭化タングステン+ホウ化ク
ロム合計量の限界(80%)を特定させた。比較例6は
代表的な耐摩耗性材である高Cr鋳鉄であり、耐摩耗倍
率が3.7で充分でなく、また、製品全体が脆くて使用
条件に厳しい制約があることは周知の通りである。
きな割れが多数認められ、炭化タングステン+ホウ化ク
ロム合計量の限界(80%)を特定させた。比較例6は
代表的な耐摩耗性材である高Cr鋳鉄であり、耐摩耗倍
率が3.7で充分でなく、また、製品全体が脆くて使用
条件に厳しい制約があることは周知の通りである。
【0025】本発明の実施形態の硬度分布の代表例とし
て図2に30%Ni+50%W2C+20%CrB2(表
2の実施例2)を示す。図のように4分割した各列の平
均硬度の最低(1103)と最高(1338)との比率
Rは0.82であり、個別の硬度の最低値も1012で
あった。同様に実施例1〜4について測定した結果を総
括したのが図1であり、4分割した各断層の平均硬度と
平均硬度の最低/最高、すなわちRを示している。黒く
塗り潰したのはFeベースの実施形態であり、ほぼ類似
した数値を示している。
て図2に30%Ni+50%W2C+20%CrB2(表
2の実施例2)を示す。図のように4分割した各列の平
均硬度の最低(1103)と最高(1338)との比率
Rは0.82であり、個別の硬度の最低値も1012で
あった。同様に実施例1〜4について測定した結果を総
括したのが図1であり、4分割した各断層の平均硬度と
平均硬度の最低/最高、すなわちRを示している。黒く
塗り潰したのはFeベースの実施形態であり、ほぼ類似
した数値を示している。
【0026】摩耗試験は図3に示すようにASTM G
65規格に準じて製作した円板回転式加圧摩耗試験機2
0を使用して測定した。図中、120r.p.mの速度
で回転するラバーホイル21の円周部に8.8kgfの
荷重で試験片Sを押圧し、ラバーホイル21と試験片S
表面間へ研削粉末としてサンドホッパ22から6号珪砂
を300g/分加えた加圧摩耗試験によって各試験片毎
の耐摩耗性を比較した。表2における耐摩耗倍率は、各
試験片の溶接肉盛層を上下2ヵ所で水平に切り取った断
層面でそれぞれ測定した数値をSS材を1.0として換
算して示し、CrB2%の増加と共に耐摩耗性も大幅に
増加することを立証している。しかも、一つの試験片毎
に上下の耐摩耗倍率を比較して見ると最低/最高の硬度
比率とほぼ同じ比率が求められ、硬さの変動と整合した
小さい変動を示している。対照的に比較例では硬度の大
幅な低下がそのまま耐摩耗倍率の低下と一致し、本発明
材料の優位性をさらに確認するデータを示している。
65規格に準じて製作した円板回転式加圧摩耗試験機2
0を使用して測定した。図中、120r.p.mの速度
で回転するラバーホイル21の円周部に8.8kgfの
荷重で試験片Sを押圧し、ラバーホイル21と試験片S
表面間へ研削粉末としてサンドホッパ22から6号珪砂
を300g/分加えた加圧摩耗試験によって各試験片毎
の耐摩耗性を比較した。表2における耐摩耗倍率は、各
試験片の溶接肉盛層を上下2ヵ所で水平に切り取った断
層面でそれぞれ測定した数値をSS材を1.0として換
算して示し、CrB2%の増加と共に耐摩耗性も大幅に
増加することを立証している。しかも、一つの試験片毎
に上下の耐摩耗倍率を比較して見ると最低/最高の硬度
比率とほぼ同じ比率が求められ、硬さの変動と整合した
小さい変動を示している。対照的に比較例では硬度の大
幅な低下がそのまま耐摩耗倍率の低下と一致し、本発明
材料の優位性をさらに確認するデータを示している。
【0027】本発明の特徴は、溶接肉盛層の上部、下部
を問わず断面の全域に亘ってほぼ近似した高硬度によっ
てバランスよく硬化されている点にあるが、その理由の
一つとしては、炭化タングステンとホウ化クロムを組合
わせた適切な添加割合によって、基地であるNiまたは
Feより密度の大きい炭化タングステンが溶融プール中
で沈降することにより溶接肉盛層上部の硬度が低下する
のを密度の小さいホウ化クロムが補うことが挙げられ
る。しかし、それだけでは炭化タングステンまたはホウ
化クロムを単独で添加した場合よりも遥かに高い最高硬
度を得る理由を説明することができない。この理由は炭
化タングステンとホウ化クロムの共存によって新たに生
起するW,Cr,Bの三元複合化合物または析出物を想
定してこそ初めて可能となる。
を問わず断面の全域に亘ってほぼ近似した高硬度によっ
てバランスよく硬化されている点にあるが、その理由の
一つとしては、炭化タングステンとホウ化クロムを組合
わせた適切な添加割合によって、基地であるNiまたは
Feより密度の大きい炭化タングステンが溶融プール中
で沈降することにより溶接肉盛層上部の硬度が低下する
のを密度の小さいホウ化クロムが補うことが挙げられ
る。しかし、それだけでは炭化タングステンまたはホウ
化クロムを単独で添加した場合よりも遥かに高い最高硬
度を得る理由を説明することができない。この理由は炭
化タングステンとホウ化クロムの共存によって新たに生
起するW,Cr,Bの三元複合化合物または析出物を想
定してこそ初めて可能となる。
【0028】図4は本発明の実施例2の溶接層最上部、
すなわち従来、最も条件的には不利とされるビード最上
面についてX線分析(電子線マイクロアナライザ・EP
MA)を行なった部分のミクロ組織を示し、中央を横切
る直線が測定X線の走査線を示す。図5はX線分析の一
部を示した検量図であり、加速電流15KV、試料電流
5×10-8A、ビーム径2μmの分析条件でCr、W、
Bの各成分毎の濃淡を検量線の高低で検出し、該3成分
の高低と該当するミクロ組織の位置とを照合して各相を
特定した。すなわち図5の各検量線の山部(A1,A2,
A3)が図4の淡灰色の組織(A1,A2,A3)とよく整
合し、この相がW,Cr,Bの濃密な三元複合化合物ま
たは析出物の高硬度の領域であり、図5の谷部(B1,
B2)が図4の濃灰色の組織(B1,B2)とよく整合
し、この相がNi+Fe(母材から転移)の基地に相当
する低硬度の基地領域と推認される。何れの断層面にお
いても満遍なく三元複合化合物または析出物が組織の過
半を占めることが本発明の最大の特徴である。その具体
的な分子構造や結晶構造を現時点では特定できないもの
の、三成分の相乗作用によって極めて平準化された高硬
度の相を全域万遍なく形成していることは疑問の余地は
ない。
すなわち従来、最も条件的には不利とされるビード最上
面についてX線分析(電子線マイクロアナライザ・EP
MA)を行なった部分のミクロ組織を示し、中央を横切
る直線が測定X線の走査線を示す。図5はX線分析の一
部を示した検量図であり、加速電流15KV、試料電流
5×10-8A、ビーム径2μmの分析条件でCr、W、
Bの各成分毎の濃淡を検量線の高低で検出し、該3成分
の高低と該当するミクロ組織の位置とを照合して各相を
特定した。すなわち図5の各検量線の山部(A1,A2,
A3)が図4の淡灰色の組織(A1,A2,A3)とよく整
合し、この相がW,Cr,Bの濃密な三元複合化合物ま
たは析出物の高硬度の領域であり、図5の谷部(B1,
B2)が図4の濃灰色の組織(B1,B2)とよく整合
し、この相がNi+Fe(母材から転移)の基地に相当
する低硬度の基地領域と推認される。何れの断層面にお
いても満遍なく三元複合化合物または析出物が組織の過
半を占めることが本発明の最大の特徴である。その具体
的な分子構造や結晶構造を現時点では特定できないもの
の、三成分の相乗作用によって極めて平準化された高硬
度の相を全域万遍なく形成していることは疑問の余地は
ない。
【0029】フラックス入りのワイヤについては、基本
的に従来技術の原則を踏襲して炭化タングステンおよび
ホウ化クロムの配合についてのみ特定の基準に拠ること
が要件である。たとえば、スラグ形成材としてはルチー
ル(TiO2),アルミナ(Al2O3)など、また、ア
ーク安定剤としてはルチール(TiO2),Na,Kな
ど、脱酸剤としてはFe−Siなど、ガス発生成分とし
てCaF2などが典型であり、ガスシールドタイプでは
シールドガス発生成分は少なくてもよく、セルフシール
ドタイプでは当然多く配合することが求められる。各フ
ラックス成分の外皮内への充填率を管理することが本発
明の場合には特に必要であり、添加成分である炭化タン
グステンとホウ化クロムの配合率が外皮を含む全重量に
対して所定の範囲に入るように濃密に充填することが実
施形態上の重要な条件となる。
的に従来技術の原則を踏襲して炭化タングステンおよび
ホウ化クロムの配合についてのみ特定の基準に拠ること
が要件である。たとえば、スラグ形成材としてはルチー
ル(TiO2),アルミナ(Al2O3)など、また、ア
ーク安定剤としてはルチール(TiO2),Na,Kな
ど、脱酸剤としてはFe−Siなど、ガス発生成分とし
てCaF2などが典型であり、ガスシールドタイプでは
シールドガス発生成分は少なくてもよく、セルフシール
ドタイプでは当然多く配合することが求められる。各フ
ラックス成分の外皮内への充填率を管理することが本発
明の場合には特に必要であり、添加成分である炭化タン
グステンとホウ化クロムの配合率が外皮を含む全重量に
対して所定の範囲に入るように濃密に充填することが実
施形態上の重要な条件となる。
【0030】
【発明の効果】本発明は以上に述べた通り、溶接肉盛の
上下について分断した各水平断面の何れの平均硬度につ
いても極めて狭い範囲に集中し、しかも何れの断層にお
ける硬度も炭化タングステンまたはホウ化クロムを単体
でほぼ合計量添加した従来技術と比べて明らかに高いレ
ベルにあり、その相乗的な冶金的効果は瞠目に価する顕
著なものがある。しかも本発明は硬度、したがって耐摩
耗性だけに偏らず、溶接性や使用中の耐久性についても
許容できる範囲内に限定し、その溶接肉盛層は美麗平滑
であってPTA溶接法特有の精緻なビードは単に高硬度
だけに留まらず、耐摩耗性の上に微妙なプラス効果を投
影する要素を併せ具えている。
上下について分断した各水平断面の何れの平均硬度につ
いても極めて狭い範囲に集中し、しかも何れの断層にお
ける硬度も炭化タングステンまたはホウ化クロムを単体
でほぼ合計量添加した従来技術と比べて明らかに高いレ
ベルにあり、その相乗的な冶金的効果は瞠目に価する顕
著なものがある。しかも本発明は硬度、したがって耐摩
耗性だけに偏らず、溶接性や使用中の耐久性についても
許容できる範囲内に限定し、その溶接肉盛層は美麗平滑
であってPTA溶接法特有の精緻なビードは単に高硬度
だけに留まらず、耐摩耗性の上に微妙なプラス効果を投
影する要素を併せ具えている。
【図1】本発明の実施形態を示す硬度(Hv)−CrB
2重量%関係図である。
2重量%関係図である。
【図2】本発明の実施形態の代表例で示す溶接肉盛層断
面の各部位における硬度(Hv)の分布図である。
面の各部位における硬度(Hv)の分布図である。
【図3】本発明に使用した摩耗試験機の基本構造図であ
る。
る。
【図4】X線分析に供した試料上層面の顕微鏡組織であ
る。
る。
【図5】X線分析によって検量したCr、W、Bの各含
有量の変動を示した線図である。
有量の変動を示した線図である。
【図6】PTA溶接法の原理を示した正面図である。
【図7】従来技術の比較例3の溶接肉盛層断面の各部位
における硬度(Hv)である。
における硬度(Hv)である。
【図8】従来技術の比較例1〜3の硬度(Hv)と炭化
タングステン重量%との関係図である。
タングステン重量%との関係図である。
【図9】別の比較例4の溶接肉盛層断面の各部位におけ
る硬度(Hv)である。
る硬度(Hv)である。
10 粉末プラズマアーク溶接機(PTA溶接機) 11 プラズマガス 12 シールドガス 13 送給ガス 14 プラズマアーク 15 溶接肉盛層 20 摩耗試験機 21 ラバーホイル 22 サンドポッパ S 試験片
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B23K 35/30 340 B23K 35/30 340L 35/368 35/368 E // C22C 29/02 C22C 29/02 C
Claims (4)
- 【請求項1】 耐摩耗性の溶接肉盛層において、Niま
たはFeの基地とW、Cr、Bの三元複合化合物または
析出物を主体とするミクロ組織よりなり、層内の上下何
れの部分においてもほぼ近似したきわめて高い硬度を一
様に具えたことを特徴とする耐摩耗性の溶接肉盛層。 - 【請求項2】 請求項1において、溶接肉盛層内の如何
なる位置においてもビッカース硬度(Hv)が少なくと
も700を超え、かつ、肉盛層表面からの深度毎に水平
に分断した各断層面の平均硬度の最低値/最高値の比率
Rが深度に関わらず常に0.80を超えることを特徴と
する耐摩耗性の溶接肉盛層。 - 【請求項3】 耐摩耗性の溶接肉盛用材料において、粉
末プラズマアーク溶接法に使用する粉末材料であって、
NiまたはFe粉末に炭化タングステンおよびホウ化ク
ロムの粉末を合計で40〜80重量%含む複合粉末で、
該複合粉末中の炭化タングステンは常にホウ化クロムよ
りも大きい重量%を占めるが、ホウ化クロム自体が必ず
10〜30重量%は含むことを特徴とする粉体プラズマ
アーク溶接法に使用する耐摩耗性の溶接肉盛用材料。 - 【請求項4】 耐摩耗性の溶接肉盛用材料において、ア
ーク溶接法に使用する溶接用フラックス入りワイヤであ
って、ニッケルまたは軟鋼、もしくはステンレス鋼の何
れかから選択した板材を中空管状に成形した外皮の中
に、シールドガス発生剤、スラグ形成剤、および脱酸剤
と共に、炭化タングステンおよびホウ化クロム粉末を充
填してなるフラックス入りワイヤで、該フラックス入り
ワイヤの外皮を含む全重量に対して炭化タングステンと
ホウ化クロムの合計が40〜80重量%含み、かつ、炭
化タングステンは常にホウ化クロムより大きい重量%を
占めるが、ホウ化クロム自体が必ず10〜30重量%は
含むことを特徴とするアーク溶接法に使用する耐摩耗性
の溶接肉盛用材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10057198A JPH11277246A (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 耐摩耗性の溶接肉盛層および溶接肉盛用材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10057198A JPH11277246A (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 耐摩耗性の溶接肉盛層および溶接肉盛用材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11277246A true JPH11277246A (ja) | 1999-10-12 |
Family
ID=14277601
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10057198A Pending JPH11277246A (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 耐摩耗性の溶接肉盛層および溶接肉盛用材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11277246A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6987236B2 (en) | 2003-01-06 | 2006-01-17 | Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. | Plasma powder welding device and its welding method |
WO2007114524A1 (ja) * | 2006-03-30 | 2007-10-11 | Komatsu Ltd. | 耐摩耗粒子及び耐摩耗構造部材 |
CN103231182A (zh) * | 2012-09-13 | 2013-08-07 | 山东建筑大学 | 一种氩弧堆焊FeCrC铁基粉末合金配方及其制备工艺 |
CN105904167A (zh) * | 2016-06-30 | 2016-08-31 | 哈尔滨工业大学 | 两级原位自生钛合金表面可控耐磨涂层的制备方法 |
-
1998
- 1998-03-27 JP JP10057198A patent/JPH11277246A/ja active Pending
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6987236B2 (en) | 2003-01-06 | 2006-01-17 | Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. | Plasma powder welding device and its welding method |
CN1298200C (zh) * | 2003-01-06 | 2007-01-31 | 松下电器产业株式会社 | 粉末等离子焊接装置与焊接方法 |
WO2007114524A1 (ja) * | 2006-03-30 | 2007-10-11 | Komatsu Ltd. | 耐摩耗粒子及び耐摩耗構造部材 |
JPWO2007114524A1 (ja) * | 2006-03-30 | 2009-08-20 | 株式会社小松製作所 | 耐摩耗粒子及び耐摩耗構造部材 |
JP4850241B2 (ja) * | 2006-03-30 | 2012-01-11 | 株式会社小松製作所 | 耐摩耗粒子及び耐摩耗構造部材 |
US8679207B2 (en) | 2006-03-30 | 2014-03-25 | Komatsu Ltd. | Wear resisting particle and wear resisting structure member |
CN103231182A (zh) * | 2012-09-13 | 2013-08-07 | 山东建筑大学 | 一种氩弧堆焊FeCrC铁基粉末合金配方及其制备工艺 |
CN105904167A (zh) * | 2016-06-30 | 2016-08-31 | 哈尔滨工业大学 | 两级原位自生钛合金表面可控耐磨涂层的制备方法 |
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