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JPH1083586A - 記録再生装置 - Google Patents

記録再生装置

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Publication number
JPH1083586A
JPH1083586A JP23688896A JP23688896A JPH1083586A JP H1083586 A JPH1083586 A JP H1083586A JP 23688896 A JP23688896 A JP 23688896A JP 23688896 A JP23688896 A JP 23688896A JP H1083586 A JPH1083586 A JP H1083586A
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Ichiro Fujiwara
一郎 藤原
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 記録密度の向上をはかる。 【解決手段】 針状電極よりなるヘッドにより記録媒体
に情報を記録または再生する記録再生装置であって、記
録媒体は、少なくともナノ結晶層を有する電荷蓄積層を
有して成り、上記ヘッドから電圧を印加することにより
上記記録媒体に存在する電子またはホールトラップの所
定領域への電荷移動により情報を記録または消去する。
そして、この情報の再生を、上記ヘッドが上記記録媒体
に非接触、または接触状態で、上記所定領域に記録され
た情報を、該領域における静電容量の変化量、あるいは
電荷もしくは表面電位の変化量を検出することにより再
生する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像情報、大容量
のデータ情報等の超高密度記録を行うことができる新規
な記録および再生を行う、あるいは記録情報の再生のみ
を行う記録再生装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】マルチメディア社会、特にハイビジョン
システムおよび高度情報通信システム、コンピュータネ
ットワーク、ビデオオンデマンド、インフォメーション
オンデマンドなどに必要とされる大容量の画像情報、デ
ータファイルにおいて高速な記録再生装置の要求が益々
高まっている。
【0003】従来のランダムアクセスが可能な高密度記
録技術には、磁気記録、光記録、半導体メモリ等があ
る。
【0004】半導体メモリではその集積度が年々向上し
ているにもかかわらず、半導体メモリの製造技術の例え
ばフォトリソグラフィの限界から、高精細度の画像情報
を記録するだけの容量を満たすような、すなわち少なく
とも3Gバイト以上の容量を満たすような半導体メモリ
を得るには至っていない。
【0005】一方、光記録、磁気記録において、大容量
の情報を記録するには、記録領域を小さくして、記録密
度を向上させることが必要である。
【0006】光記録において、その記録領域を小さくす
る試みはなされているが、その光源として波長500n
m付近の半導体レーザー光源が開発された場合でも、物
理的な限界、光の回折限界が存在するため、そのスポッ
トエリアをその光の波長以下にすることは原理的に不可
能である。この限界を越えることのできる記録方法の試
みや、提案も種々なされているものの、いづれのもの
も、直径100nm以下の記録領域(記録ビット)を実
現することは難しいとされている。
【0007】また、磁気記録においても、特にハードデ
ィスクにおいて磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MR型磁気
ヘッド)、巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMR型磁
気ヘッド)の開発により、記録密度の向上が著しいが、
再生ヘッドの感度の限界の問題で100nm以下の記録
領域を達成することは難しい。
【0008】一方、原子分子レベルの空間分解能を持つ
走査トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Mic
roscope)、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Mic
roscope )が開発され、種々の材料の微細表面形状の解
析に適用され、表面解析装置として大きな成功を収めて
いる。
【0009】AFMでは試料とカンチレバーチップとの
原子間相互作用をプローブとして用いているが、近年A
FMは種々の物理量をプローブとして用いた走査型プロ
ーブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope ) と
して発展している。最近、これらの手段すなわち原子、
分子にアクセスする手段を用いて、高密度メモリとして
の実現可能性の検討がなされている。
【0010】これまでにSTMまたはAFMを用いて、
高密度記録実現の試みの報告はなされているが、原理的
な可能性が述べられているにとどまり、実用化に至って
いない。
【0011】例えば、スタンフォード大学のクエート(P
rof.Quate)氏等は、Si基板上にSiO2 膜およびSi
N膜を形成したNOS( SiN/SiO2 /Si) 構造
による記録媒体を用いてAFMの発展系である走査型容
量顕微鏡( SCM:ScanningCapacitance Microscope)
構成によって高密度メモリへの応用の可能性を示した
(R.C.Barret and C.F.Quate;Journal of Applied Phys
ics,70 2725-2733 (1991) 参照。) 。
【0012】ところで、図10に示すように、p型また
はn型Si基板1上に、熱酸化によるSiO2 膜2およ
び熱CVD法(化学的気相成長法)によるSiN膜3を
被着形成し、このSiN膜3上に金属電極による上部電
極4が被着されたいわゆるMNOS(Metal Nitride Ox
ide Semiconductor)系の記録媒体は、不揮発性半導体メ
モリの1つであるEEPROM(Electrically Erasabl
e Programable Read Only Memory) ですでに実用化され
ている。
【0013】このようなMNOS系、あるいはNOS系
記録再生の基本は、Si半導体と、SiO2 /SiN界
面やその近傍のSiN中のキャリアのトラップとの間の
電荷の移動を用いることである。この場合、データ保持
特性を良好にするために、SiO2 膜の膜厚を充分厚く
設計している。
【0014】すなわち、この層構造でSiO2 /SiN
界面およびこの界面を形成するSiN層中(以下単にS
iO2 /SiN界面付近という)にキャリアのトラップ
が形成されることが分かっており、例えば図10のMN
OS系においてSiN膜3上の上部電極4に正電圧を掛
けると、強電界によりSi基板1側から電子がSiO 2
膜2をトンネルして、SiO2 /SiN界面付近のトラ
ップに注入されてここに蓄積される。一方、上部金属電
極4に負電圧を掛けると、トンネル酸化膜2の膜厚が厚
い場合逆向きの強電界によりトラップに蓄積されている
電子がSi基板1側にSiO2 膜2をトンネルして逆注
入、すなわち放出されてSiO2 /SiN界面付近のト
ラップに存在する電子が欠乏する。このようにして、M
NOS記録媒体への電気パルス印加に伴う電荷の移動に
より記録、消去を行っている。そして、この記録媒体か
らの記録情報の読み出しすなわち再生は、この記録媒体
すなわちMNOS構造キャパシタの静電容量の変化とし
て電気的に読み出すという方法がとられる。
【0015】上述のクエート(Quate) 氏等の研究では、
NOS媒体に導電性カンチレバーを接触させた状態で記
録消去し、同様に導電性カンチレバーの接触状態でその
記録情報に基ずく容量変化を、SCMのカンチレバー直
近に配置された容量センサーを用いて検出することによ
って再生するという方法が採られている。この方法によ
る場合、現在実用化ないしは研究、開発がなされている
光記録、あるいは磁気記録方法では不可能な微小領域で
の情報の記録再生、すなわち高密度記録が可能であるこ
とを示した。この場合記録媒体にはキャリア(電子)の
移動を用いているものである。この場合、最小記録領域
は、直径約150nmであり、トラップに蓄積された電
子は、7日間以上安定であった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した高
密度記録装置では、次に挙げる問題点がある。 (1)NOS材料の特徴として、情報の記録、消去時に
必要な各時間が、ms(ミリ秒)オーダー、電圧が40
V(しきい値電圧25V)となり、高速、低電圧駆動を
充分満たすものではない。また、再生ヘッドを記録媒体
に接触させた状態で情報の再生を行う接触型構成による
場合には、 (2)情報の再生すなわち容量変化の読み出しは、メタ
ルコートされたカンチレバーを記録媒体に接触させて動
作させていることから、カンチレバーすなわちヘッドの
記録媒体との接触による摩擦磨耗が大きいためにヘッド
の劣化が生じ、その結果として記録再生特性が劣化す
る。 (3)情報の再生は、記録媒体の容量変化を、カンチレ
バーの直後に設けたキャパシタセンサで直接的に検出し
ているが、この系での記録媒体表面形状に極めて敏感で
あり、特に場合によっては浮遊容量が大きくなる可能性
があり、信号のS/Nが劣化する。という問題がある。
【0017】また、従来の容量変化検出方式を再生に用
いる方式の記録装置では静電容量型(CED)または高
密度記録が可能なVHDビデオディスク等がある。しか
し、これを大容量の記録媒体とするには記録密度が低
く、また再生専用であって記録消去の機能を有するもの
ではない。また、Iwamura 等によるディスク形状のMN
OS記録媒体を用いた静電容量検出方式の記録再生の試
みが行われている(IEEETransactions on Electron Devi
ces Vol.28 No.7 854-860(1981)。しかし、高記録密度
の点で問題があり、上記クエート(Quate)氏のSPMを
用いた記録密度の実験結果と比較しても及ばない。
【0018】また、最近になってTiwariらがSiナノ結
晶を用いた新しい半導体不揮発メモリの提案を行った
(Applied Physics Letters 68 1377(1996) )。しか
し、この報告によれば、メモリトランジスタのしきい値
のシフト量が約0.2Vしかとれず、従来のメモリトラ
ンジスタのしきい値のシフト量を検出しているセンスア
ンプの感度では検出できないという問題点がある。
【0019】本発明においては、鋭意研究を重ねた結
果、SPMと、微小領域でのキャリアトラップとなるナ
ノ結晶(ナノクリスタル)すなわちnmオーダーの粒径
による微細結晶が絶縁膜中に埋め込まれて配列されたナ
ノ結晶層を有する電荷蓄積層が形成された記録媒体を用
いることによって上述した諸問題の解決をはかり、高
速、高密度記録にすぐれ、またヘッドの長寿命化はかる
ことができる記録再生装置を提供するに至ったものであ
る。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明による記録再生装
置は、針状電極よりなるヘッドにより記録媒体に情報を
記録または再生する記録再生装置であって、その記録媒
体は、少なくともトンネル絶縁膜と、絶縁膜中にナノ結
晶が埋め込まれてなるナノ結晶層を有する電荷蓄積層を
有して成る。そして、上記ヘッドからの電圧印加によっ
て電荷蓄積層の所定領域に対するトンネル絶縁膜を通じ
ての電荷移動により情報の記録または消去がなされ、ヘ
ッドを、上記記録媒体に非接触または接触させた状態
で、上記所定領域における電荷、あるいは表面電位、ま
たは静電容量、あるいはこれらの微分量の少なくともい
づれかの変化量を検出して、記録情報の再生を行う。
【0021】上述の本発明による記録再生装置によれ
ば、記録媒体として特にナノ結晶、すなわち結晶粒の大
きさがnmオーダー、つまり10nm以下のナノ結晶を
有する電荷蓄積層が形成された構成とし、さらに針状電
極ヘッドによる電圧印加により、この電荷蓄積層のキャ
リアトラップに対する電荷移動により情報を記録または
消去する態様をとることから、高速、高密度記録がなさ
れる。
【0022】また、その再生においても、針状電極によ
ったことから電位分解能および空間分解能の高い再生を
行うことができる。
【0023】そして、この記録媒体上の記録情報を、記
録媒体に対してヘッドを非接触の状態で、再生するとき
は、再生時における針状電極によるヘッドや記録媒体の
磨耗を効果的に低減化することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】図1は、本発明装置に用いられる
記録媒体の基本構成を示す。この記録媒体10は、導電
性基体例えばシリコンSi基体11に下部電極12が被
着形成され、これとは反対側に、活性層13が形成され
る。活性層13は、少なくとも例えばSiO2 を介して
の電荷の注入、放出における電荷のトンネルが可能なト
ンネル絶縁膜を有し、例えば半導体のSiのナノ結晶が
SiO2 等の絶縁膜中に埋め込まれ、ナノ結晶層を有す
る電荷蓄積層を有してなる。
【0025】このSiO2 膜によるトンネル膜は、ナノ
結晶が埋め込まれたナノ結晶層を挟んでその上下に形成
することができ、ナノ結晶粒と、更にナノ結晶粒とトン
ネル膜もしくはナノ結晶粒を埋め込むSiO2 膜との界
面において高密度に電荷のトラップを形成するヘテロ界
面を形成させることができる。
【0026】ここで、絶縁膜中に埋め込まれたナノクリ
スタルは、空間的に離散化されてかつ伝導帯端からエネ
ルギーレベルの深いキャリアトラップになっている。そ
のサイズは直径10nm以下、その間の距離は10nm
以下である。このような場合、キャリア(電子)が記録
ヘッドと記録媒体のSi基体との間に印加された強電界
によりSi基体側または記録ヘッド側から例えばSiO
2 膜によるトンネル絶縁膜をトンネルして空間的に離散
化されたキャリアトラップに注入されることにより情報
の記録が成される。この注入される電子の方向は、キャ
リアトラップとSi基体、記録ヘッドとの間のトンネル
絶縁膜の厚さ、および記録ヘッドでの記録時の表面電界
集中の大きさなどに依存している。キャリアトラップの
密度は、5〜1011〜1×1012cm-2である。また、
一つのキャリアトラップには複数個の電子をトラップす
ることができる。一方、キャリア(電子)が記録ヘッド
と記録媒体のSi基体との間に記録の場合とは逆の極性
の強電界を印加することにより、トラップに注入されて
いた電子を放出することにより情報の消去を行うことが
できる。
【0027】情報の再生は、キャリアトラップに捕獲さ
れた電子と再生ヘッドとのクーロン相互作用を表面電
位、静電容量等として直接検出する。この再生方法は非
常に高感度であり、このため、小数のキャリアトラップ
に捕獲された電子を高感度に検出することが可能とな
る。すなわち、表面電位の検出感度は数mVであるた
め、数10mV程度の表面ポテンシャルの変化量を容易
に検出することができる。
【0028】そして、ナノクリスタルを用いた記録媒体
の特徴は、 (1)ナノクリスタルの元素を選択することにより、エ
ネルギーレベルが深く、密度が高いキャリアトラップを
絶縁膜中に作製することができる。 (2)ナノクリスタルから構成されるキャリアトラップ
を空間的に離散化した状態で絶縁膜中に作製することが
できる。ということであり、その結果として、 (1)書込み動作電圧を10V以下(場合によっては5
V以下)にすることができる。 (2)トラップが空間的に離散化しているため、記録ビ
ット(記録領域)における情報の繰り返し書き換え消去
特性が良好となる。 (3)トラップのエネルギーレベルが深く、空間的に離
散化されているために同一トンネル絶縁膜の厚さで比較
した場合、記録ビットのデータ保持特性が良好になる。
【0029】記録媒体10を構成する各構成材料層は、
それぞれ例えばスパッタリング法、MOCVD(Metal
Organic Chemical Vapor Deposition )法、LPCVD
(低圧CVD)法、分子線蒸着法、通常の蒸着法、MO
D(Metal Oxide Deposition)法、レーザアブレーショ
ン法、ゾルゲル法、スピンコート法、熱酸化法、熱窒化
法などによって成膜することができる。
【0030】記録媒体10に対する情報の記録は、原子
間力顕微鏡(AFM)構成により、その記録ヘッドは、
先端に針状電極を有するAFM制御の導電性カンチレバ
ーによる構成とし、この記録ヘッド、すなわち針状電極
が活性層13側に接触して行われる。
【0031】この電荷蓄積層を有する記録媒体10に対
する記録は、記録ヘッドとしての針状電極を先端に有す
る導電性カンチレバーに記録電圧VRとして、|VR|
<10Vの、例えばキャリアが電子である場合は、負電
圧の例えば−5Vのパルス電圧を印加する。このように
して、カンチレバーから電子を局所的に、少なくとも電
荷蓄積層のトラップに注入することによって、すなわち
電荷の移動を行わしめて情報の記録を行う。
【0032】そして、この局所的な電荷が注入された領
域に対し、記録時の印加電圧とは、逆極性の所要の電
圧、例えば+5V程度のパルス電圧を印加することによ
り、電荷蓄積層のキャリアトラップから電荷の放出、す
なわち電荷の移動を行って記録情報の消去を行う。
【0033】また、電荷(電子)をSi基体側からキャ
リアトラップに注入する場合は、記録ヘッドに+5Vの
パルス電圧を印加して記録する。そして、これを消去す
る場合は、−5Vのパルス電圧を印加してキャリアトラ
ップから電荷(電子)をSi基体に放出する。
【0034】そして、その記録情報の読み出し(再生)
は、記録媒体の上述したトラップへの電荷の注入領域と
再生ヘッドとのクーロン相互作用に起因する静電容量、
電荷、表面電位の変化量またはそれらの微分量として、
針状電極による再生ヘッドを記録媒体に対して接触ある
いは微小間隙をもって非接触の状態で検出することによ
って行う。
【0035】上述したように、記録媒体に対する記録お
よび消去は、10V以下の例えば10Vの動作電圧、さ
らに本発明の電荷蓄積層の構成、例えばナノ結晶の構成
材料、粒径、間隔等の最適化によってさらに低い5V以
下とすることもできる。また、キャリアのトンネル膜例
えばSiO2 膜の膜厚を小とすることによってキャリア
の注入、逆注入すなわち放出に要する時間すなわち記
録、消去時間をそれぞれ1μs以下とすることができ
る。
【0036】さらに、上述した静電容量の変化、あるい
は電荷もしくは表面電位の変化の検出、すなわち記録情
報の再生も、1MHz以上の高速再生ができる。また、
記録領域の直径は、100nm以下、例えば検出系の感
度を向上させることにより50nm以下、さらにナノ結
晶の粒径に対応する10nm程度とすることもできる。
【0037】次に、本発明装置の記録、消去装置と、再
生装置の具体例を説明する。
【0038】〔記録、消去装置〕図2は記録、消去装置
の一例の概略構成図を示す。この記録ヘッドHRは、先
端に例えば円錐状、3角錐状、断面例えば3角の柱状等
の実質的に記録媒体に対して点接触ないしは微小面接触
できる針状電極21が形成された例えば短冊状の板バネ
構成を有し、一端が固定されたカンチレバー22によっ
て構成される。このカンチレバー22は、バネ定数0.
01〜10[N/m]のSiもしくはSiNよりなりそ
の表面にAu、Pt、Co、Ni、Ir、Cr等の単層
ないしは多層構造の金属層が被覆されることによって高
い導電性が付与されて成る。或いは針状加工が可能で、
導電性を有する不純物ドーピングのなされた導電性シリ
コンによって構成される。これらカンチレバー22は、
いわゆるマイクロファブリケーション技術によって作製
することができる。
【0039】30は、記録媒体10が載置され、その面
方向に沿って例えば互いに直交するx軸およびy軸に関
して移動するように、もしくは回転するようになされた
記録媒体10の載置台であり、この載置台30は、さら
に記録ヘッドすなわちカンチレバー22の針状電極21
との接触状態を調整できるように記録媒体10の面方向
と垂直方向(以下z軸方向という)に移動制御できるよ
うに構成される。
【0040】この載置台30のz軸方向の制御は、例え
ば、半導体レーザー38からのレーザー光を、収束レン
ズ系31によって収束させてカンチレバー22の先端に
照射し、その反射光を例えば複数の分割フォトダイオー
ド例えば4分割フォトダイオードによる光検出器32に
よって差動検出し、その検出信号をプリアンプ33を通
じて、載置台30のz軸制御を行うサーボ回路34に入
力して載置台30のz軸方向の位置を制御することによ
って、常時記録媒体10に対して、記録ヘッドすなわち
針状電極21が、最適な接触状態にあるように制御され
る。
【0041】一方、カンチレバー22と記録媒体10の
下部電極12との間に、記録信号に応じた電圧が印加さ
れる。この印加電圧は、記録信号に応じたパルス電圧発
生回路35よりのパルス電圧を直流電源36による所要
の直流バイアス電圧に重畳して印加する。
【0042】このようにして、記録媒体10に、カンチ
レバー22の先端の針状電極21すなわち記録ヘッドを
接触させた状態で記録媒体と相対的に移行させて上述の
直流電圧にパルス電圧を重畳させた電圧を印加すること
により情報の記録を行う。
【0043】〔再生装置〕記録媒体10からの記録情報
の読み出しすなわち再生は、再生ヘッドが記録媒体と接
触しない、すなわち非接触状態で行うか、あるいは接触
状態で行う。先ず、非接触状態による場合について説明
する。この再生装置は、基本的には、下記(i) 〜(iv)の
いづれかの構成による。 (i) 走査型マックスウエル応力顕微鏡(SMM:Scanni
ng Maxwell Stress Microscope) 構成。 (ii)上記SMM構成においてヘテロダイン検出方式を採
る構成。 (iii) ケルビン力顕微鏡(KFM:Kelvin Force Micro
scope )構成。 (iv)走査型容量顕微鏡(SCM:Scanning Capacitance
Microscope)構成。
【0044】上記(i) 〜(iv)の構成について説明する。 〔(i) のSMM構成による場合。〕図3は、この再生装
置における再生ヘッドHPとその制御部の構成図を示
す。この再生はSMMで知られている動作原理(例えば
Molecular Electronics and Bioelectronics,vol.3 p79
(1992)参照。)によってなされる。ここで、再生ヘッド
HPは、図2で説明した記録ヘッドHR自体を用いるこ
とができるが、いずれの場合においてもこの再生ヘッド
HPは記録媒体10に対して非接触状態で用いられる。
この再生ヘッドHPは、前述した記録ヘッドHRにおけ
る場合と同様に、先端に例えば円錐状、3角錐状、断面
例えば3角の柱状等の実質的に針状電極21が形成され
た例えば短冊状の板バネ構成を有し、一端が固定された
カンチレバー22によって構成される。このカンチレバ
ー22は、前述した載置台30上に載置された記録媒体
10に非接触な状態で記録媒体10の表面電位Vsまた
は静電容量の検出によって記録情報の再生がなされる。
【0045】載置台30は、前述したように、これに載
置された記録媒体10の面方向に沿って例えば互いに直
交するx軸およびy軸に関して移動するように、もしく
は回転するようになされ、さらに再生ヘッドHPとして
のカンチレバー22の針状電極21との間隔を調整でき
るように記録媒体10の面方向と直交するz軸方向に移
動制御できるように構成される。
【0046】再生ヘッドHPすなわち針状電極21を有
するカンチレバー22と記録媒体10との間にバイアス
電圧Vを印加すると、静電結合により針状電極21と、
記録媒体との間に(数1)で与えられる力FZ が働く。
【0047】
【数1】 (ここでCは針状電極21と記録媒体10との間の静電
容量、Zは針状電極21と記録媒体10との間の距
離。) 今、記録媒体10の表面電位をVS とし、 V=VAC・sinωt+Voff のバイアス電圧Vを印加すると、力FZ は次式(数2)
のようになる。
【0048】
【数2】
【0049】これによってカンチレバー22は力FZ
受けて振動する。一方カンチレバー22の先端に、半導
体レーザー43からのレーザー光を照射し、その反射光
をフォトダイオード等の光検出器44によって検出す
る。この光検出器44によって得られる検出信号Aは、
次式(数3)で表すことができる。
【0050】
【数3】
【0051】この検出信号Aは、ロックインアンプ45
に入力され、ここで、2ω成分の出力(数4)を取り出
す。
【0052】
【数4】
【0053】この2ω成分による出力は、載置台30の
z軸方向の位置制御を行うサーボ回路46に入力し、こ
れによって載置台30のz軸方向の位置制御を行ってこ
の2ω成分による出力が一定になるようになされる。2
ω成分は静電容量の微分信号であり、2ωを一定に制御
することにより、誘電率を一定に仮定すれば、カンチレ
バー22の針状電極21と記録媒体との距離を一定に制
御できる。
【0054】このときの載置台30のz軸の制御信号を
画像化すると、記録媒体10の表面形状の情報が得られ
ることになる。
【0055】また、このとき同時にω成分の出力(数
5)をロックインアンプ45で取り出す。
【0056】
【数5】
【0057】これは媒体10の表面電位VS にのみ依存
することになる。つまり、これが記録媒体10の表面電
位分布に対応した出力となる。そして、このとき、この
出力が∂C/∂zの大きさによって変わることのないよ
うに、さらに、ω項がゼロになるようにω成分出力をV
off の制御回路47にフィードバックしてVoff の制御
を行って∂C/∂Zの大きさによる影響を排して、 Voff +VS =0 すなわち VS =−Voff とする。このようにすればVS 、云い換えれば、記録媒
体10上の表面電位分布として生じる記録情報を読み出
すことができる。
【0058】〔(ii)上記SMM構成においてヘテロダイ
ン検出方式を採る構成による場合。〕通常のSMMで
は、周波数特性はカンチレバーの共振周波数によって限
定されるが、ヘテロダイン検出法を用いることによりカ
ンチレバー機械的共振周波数よりも高い周波数帯域での
表面電位の検出が可能となる。このため、再生ヘッドの
周波数特性は、MHz帯域までの応答が可能となる。図
4は、この再生装置における再生ヘッドHPとその制御
部の構成図を示す。図4において図3と対応する部分に
は同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】この検出方式は、ヘテロダイン検出方式に
よるSMMの動作原理による(前記Molecular Electron
ics and Bioelectronics,Vol.3 p79(1992)およびVol.79
p34(1995)参照)。この方式では、通常のSMM検出方
式による表面電位の検出等、カンチレバーの共振点より
高い周波数領域における静電容量の検出を行うことがで
きる。
【0060】この検出方式においても、再生ヘッドHP
すなわち針状電極21を有するカンチレバー22と記録
媒体10との間にバイアス電圧Vを印加すると、静電結
合により針状電極21と、記録媒体10との間に前記
(数1)で与えられる力FZ が働く。 今、記録媒体1
0の表面電位をVsとし、 V=VAC・sinωt+Voff のバイアス電圧Vを印加すると、力FZ は前記(数2)
のようになる。これによってカンチレバー22は力FZ
を受けて振動する。一方カンチレバー22の先端に、半
導体レーザー43からのレーザー光を照射し、その反射
光をフォトダイオード等の光検出器44によって検出す
る。この光検出器44によって得られる検出信号Aは、
前記(数3)で表すことができる。
【0061】この検出信号は、ロックインアンプ45B
に入力され、ここで、2ω成分の出力(前記(数4))
を取出す。この2ω成分による出力は、載置台30のz
軸方向の位置制御を行うサーボ回路46に入力し、これ
によって載置台30のz軸方向の位置制御を行ってこの
2ω成分による出力が一定になるようになされる。2ω
成分は静電容量の微分信号であり、2ωを一定に制御す
ることにより、誘電率を一定に仮定すれば、カンチレバ
ー22の針状電極21と記録媒体10との距離を一定に
制御できる。このときの載置台30のz軸の制御信号を
画像化すると、記録媒体10の表面形状の情報が得られ
ることになる。
【0062】また、このとき同時にω成分の出力(前記
(数5))をロックインアンプ45Bで取り出す。これ
は記録媒体10の表面電位Vsにのみ依存することにな
る。つまり、これが記録媒体10の表面電位分布に対応
した出力となる。そして、このとき、この出力が∂C/
∂zの大きさによって変わることのないように、さら
に、ω項がゼロになるようにω成分出力をフィードバッ
クしてVoff の制御を行って∂C/∂zの大きさによる
影響を排して、 Voff +Vs=0 すなわち Vs=−Voff とする。このようにすればVs、云い換えれば、記録媒
体10上の表面電位分布として生じる記録情報を読み出
すことができる。
【0063】そして、通常のSMMでは、その周波数特
性はカンチレバーの共振周波数によって限定されるが、
ヘテロダイン検出法を用いることによりカンチレバー機
械的共振周波数よりも高い周波数帯域での静電容量また
は表面電位の検出が可能となる。このため再生ヘッドの
周波数特性は、MHz帯域までの応答が可能となる。ヘ
テロダイン検出方式のSMMの動作原理は以下の通りで
ある。SMMでMHz以上の高周波数成分を含む複数の
交流電圧をカンチレバー22と記録媒体10との間に印
加し、誘起されたカンチレバー22の振動を4分割光検
出器44で検出する。
【0064】
【数6】
【0065】ここで、VAFは、(数7)で与えられ、カ
ンチレバーの共振周波数以下の周波数成分からなる低周
波電圧で、低周波発振器56およびローパスフィルタ5
7によって得たDC(直流)バイアス電圧VDcと周波数
ω0 の交流電圧からなる。V RFは、(数8)で与えら
れ、カンチレバーの共振周波数より高い交流電圧を示
し、高周波発振器58からの周波数ωa でハイパスフィ
ルタ59よりの周波数ωrの高周波キャリア信号を変調
の深さM(M≒1)で振幅変調したものである。
【0066】
【数7】
【0067】
【数8】
【0068】この結果、印加電圧は、DC、ω0 、ωr
とωr +ωa 、ωr −ωa の5種類の周波数成分から構
成される交流電圧となる。上記交流電圧がカンチレバー
に印加されるとマックスウエル応力が電界の2乗に比例
するために、周波数の混合が引き起こされ、和と差の周
波数を持つ振動成分がカンチレバー上に誘起され、この
振動が光検出器44で検出されプリアンプ55で増幅さ
れ、ロックインアンプ45Aおよび45Bに導入され
る。ロックインアンプ45Aおよびロックインアンプ4
5Bから得たヘテロビート成分、ω0 成分、2ω0 成分
は、コンピュータ147に入力される。特にωa で振動
するヘテロダインビート成分は周波数ωrでの記録媒体
での誘電応答についての情報を与える(下記(数
9))。このためヘテロダイン検出方式は、カンチレバ
ーの共振器周波数よりも高い周波数での記録媒体の静電
容量の検出を可能にする。また、カンチレバーの位置の
制御は、2ω0 の振幅が常に一定になるように、例えば
z軸方向のピエゾ素子(図示せず)による制御によって
行われる。
【0069】
【数9】
【0070】〔(iii) ケルビン力顕微鏡(KFM:Kelv
in Force Microscope )構成。〕この動作原理は、ケル
ビン力顕微鏡で知られている(例えばApplied PhysicsL
etters 52 1103 (1993)参照)。
【0071】図5を参照して説明する。図5において、
図4と対応する部分には同一符号を付して示す。この場
合においても、再生ヘッドHPは、図2で説明した記録
ヘッドHR自体を用いることができるが、この場合にお
ける再生ヘッドHRは記録媒体10に対して非接触状態
で用いられる。すなわち、図2で説明した記録ヘッドに
おけると同様に、再生ヘッドHPは、先端に例えば円錐
状、3角錐状、断面例えば3角の柱状等の実質的に針状
の電極21が形成された例えば短冊状の板バネ構成を有
し、一端が固定されたカンチレバー22によって構成さ
れる。このカンチレバー22は、前述した載置台30上
に載置された記録媒体10に非接触な状態で記録媒体1
0の表面電圧Vsの検出すなわち記録情報の再生がなさ
れる。そして、この場合、共振周波数が充分高く、バネ
定数が充分低いカンチレバーを用いることにより、KF
Mを用いて高周波数領域における高速の再生が可能とな
る。
【0072】この載置台30は、前述したと同様にこれ
に載置された記録媒体10の面方向に沿って例えば互い
に直交するx軸およびy軸に関して移動するように、も
しくは回転するようになされ、さらに再生ヘッドHPと
してのカンチレバー22の針状電極21との間隔を調整
できるように記録媒体10の面方向と直交するz軸方向
に移動制御できるように構成される。
【0073】そして、再生ヘッドすなわち針状電極21
を有する圧電素子23を用いて共振周波数で振動してい
るカンチレバー22と記録媒体10との間に、バイアス
電圧Vを印加すると、静電結合により針状電極21と、
記録媒体10との間に前記(数1)で与えられる力Fz
が働く。そして、いま、記録媒体10の表面電位をVs
とし、 V=VAC・sinωt+Voff で与えられるバイアス電圧Vを印加すると、力FZ
(数10)のようになり、カンチレバー22は、力Fz
を受けて振動する。
【0074】
【数10】
【0075】一方、カンチレバー22の先端に、半導体
レーザー43からのレーザー光を照射し、その反射光を
フォトダイオード等の光検出器44によって検出する。
この光検出器44によって得られる検出信号Aで、カン
チレバー22の共振周波数の振幅の減少量に着目する。
カンチレバー22の共振周波数の振幅は、記録媒体10
とのクーロン相互作用により減少する。この共振周波数
の周波数シフトに起因する共振周波数の振幅の減少量ま
たは位相変化を検出することにより表面電位または静電
容量の微分量等の物理量を求めることができる。この検
出信号は、ロックインアンプ45に入力され、ここでカ
ンチレバーの共振器周波数ωr 成分の出力を(数11)
を取り出す。
【0076】
【数11】
【0077】このωr 成分による出力は、載置台30の
z軸方向の位置制御を行うサーボ回路46に入力し、こ
れによって載置台30のz軸方向の位置制御を行ってこ
の2ω成分による出力が一定になるようにされる。ωr
成分は、ファンデルフワールス力とクーロン力に起因す
る力であり、ωr を一定に制御することにより、誘電率
を一定と仮定すれば、カンチレバー22の針状電極21
と記録媒体10との距離を一定に制御できる。このとき
の載置台30のz軸の制御信号を画像化すると、記録媒
体10の表面形状の情報が得られることになる。
【0078】また、このとき同時に、ω成分の出力(数
12)をロックインアンプ45で取り出す。
【0079】
【数12】
【0080】測定される変位量Aは、カンチレバーの共
振点での振動の振幅または位相に対する微分信号となる
ため記録媒体10の表面電位Vsの微分に対応する信号
が得られる。つまり、これが記録媒体10の表面電位分
布に対応した出力となる。そして、このとき、この出力
が∂C/∂zの大きさによって変わることのないよう
に、さらにω項が0になるように、ω成分出力をVoff
の制御回路47にフィードバックしてVoff の制御を行
って∂C/∂zの大きさによる影響を配して、 Voff +Vs=0すなわちVs=−Voff とする。このようにすれば、Vs言い換えれば、記録媒
体10上の表面電位分布の微分信号として生じる記録情
報を読み出すことができる。
【0081】また、記録媒体10からの記録情報の再生
の他の例としては、再生ヘッドを記録媒体に接触させた
状態での容量変化の検出によって行うことができる。こ
の再生は、具体的には、上述のAFMを発展させた周知
の装置である走査型容量顕微鏡(SCM)構成によるこ
とができる。
【0082】〔(iv)のSCMによる場合〕この記録媒体
10からの記録情報の再生は、再生ヘッドを記録媒体1
0に対して接触させた状態で行う。図6は、記録情報に
基く静電容量の変化量を検出して記録情報の再生を行う
この再生装置の一例の概略構成図を示す。この再生装置
は、具体的には上述のAFMを発展させた周知の走査型
静電容量顕微鏡(SCM:Scanning Capacitance Micro
scop)構成とした(以下、この再生装置をSCM型再生
装置という)。すなわち、この場合においても、前述し
た記録装置におけると同様に、先端に針状電極21を有
する導電性カンチレバー22が設けられた再生ヘッドH
Pを有してなる。この再生ヘッドHPは、記録ヘッドH
Rと共用することも別構成とすることもできる。この再
生ヘッドHPにおいても、先端に例えば円錐状、三角錐
状、断面例えば三角の柱状等の実質的に記録媒体に対し
て点接触ないしは微小面接触できる針状電極21が形成
された例えば短冊状の板バネ構成を有し、一端が固定さ
れたカンチレバー22によって構成される。このカンチ
レバー22は、バネ定数0.01〜10〔N/m〕のS
iもしくはSiNよりなりその表面にAu,Pt,C
o,Ni,Ir,Cr等の単層ないしは多層構造の金属
層が被覆されることによって高い導電性が付与されて成
る。或いは針状加工が可能で、導電性を有する不純物ド
ーピングのなされた導電性シリコンによって構成され
る。これらカンチレバー22は、いわゆるマイクロファ
ブリケーション技術によって作製することができる。
【0083】載置台30は、前述したように、これに載
置された記録媒体10の面方向に沿って例えば互いに直
交するx軸およびy軸に関して移動するように、もしく
は回転するようになされ、更に再生ヘッドHPとしての
カンチレバー22の針状電極21との接触状態を調整で
きるように記録媒体10の面方向と直交するz軸方向に
移動制御できるように構成される。
【0084】再生ヘッドHPの針状電極21を記録媒体
10上に接触させ、この状態で載置台30によって記録
媒体を例えば回転させて針状電極21を記録媒体10上
に走査しつつ、直流電源40からの直流バイアス電圧V
記録媒体10に印加し、カンチレバー22と記録媒体1
0との間の静電容量を検出器50に内蔵する発振周波数
915MHzの発振器からの発振周波数シフトとして静
電容量信号C(V)を検出し、ロックインアンプ45か
らdC/dV信号を取り出し、これをコンピュータ52
に入力する。この場合、媒体の極くわずかな容量変化が
共振周波数のシフトとなり、出力振幅の高低が変化す
る。この信号を検波回路で検波し、静電容量の変化とし
て検出する。
【0085】その概略構成を説明すると、カンチレバー
22に、例えば半導体レーザ43からのレーザー光を照
射し、その反射光を光検出器44によって検出し、サー
ボ回路に入力し、載置台30のz軸方向の制御がなされ
る。
【0086】この場合の再生ヘッドは、前述した例えば
記録ヘッドHRにおけると同様のカンチレバー構成を採
り得る。このカンチレバーすなわち再生ヘッドは、上述
した記録ヘッドと兼用することもできるし、別の構成と
するこもできる。いずれにおいても、その再生ヘッドと
してのカンチレバーは、これが記録媒体に接触した状態
で通常のAFM装置と同一の方式でフィードバック制御
される。そして、このカンチレバーすなわち再生ヘッド
と記録媒体との間に働く静電容量を容量センサで検出す
る。尚、本明細書においては、この再生ヘッドとその後
段に位置する容量センサ(静電容量検出器)を合せて再
生ヘッド系という。そして、この検出された静電容量を
2次元画像化することができ、これにより静電容量の2
次元分布を検出することができる。
【0087】SCMでは、周波数特性はカンチレバーの
共振周波数によって限定されず、カンチレバーよりも高
い周波数帯域での静電容量の検出が可能となる。このた
め再生ヘッドの周波数特性は、MHz帯域までの応答が
可能となる。
【0088】次に、本発明の実施例を説明する。 〔実施例1〕この実施例においては、記録ヘッドである
カンチレバーと記録媒体との間に電圧パルスを印加して
情報の記録を行うものであるが、この場合、記録媒体の
基体側からのキャリア(電子)を電荷蓄積層のトラップ
に注入する記録態様をとる場合である。この場合の記録
媒体10は、図7にその概略断面図を示すように、導電
性半導体基体11としてのp型のSi基体上に、下層絶
縁膜14を被着形成する。この下層絶縁膜14は、キャ
リア、この例では電子をトンネルすることのできる厚さ
に選定されたボトム側のトンネル絶縁膜となるものであ
り、この下層絶縁膜14は、基体11の表面熱酸化によ
る厚さ1.8nmのSiO2 膜によって形成し得る。こ
の下層絶縁膜14上に、プラズマCVD法によりSiに
よるナノ結晶(ナノクリスタル)15Cを形成する。こ
のナノ結晶15Cは、結晶粒径が約5nmで、約5nm
の間隔で配列される。これの上に、LPCVD法により
SiO2 絶縁膜15iを形成してナノ結晶15Cを埋め
込んだナノ結晶層15を形成し、続いてこれの上にSi
2 による上層絶縁膜16を形成することによって電荷
蓄積層17を形成する。この上層絶縁膜16の厚さは、
6nmとされ、これにより記録媒体の表面は比較的平面
に形成される。しかしながら、必要に応じて、この記録
媒体の表面を例えばCMP(化学的機械的研磨)処理に
よって平坦化処理することもできる。
【0089】この構成による記録媒体10の電荷蓄積層
17は、ナノ結晶15Cと、これと絶縁膜15iおよび
16のSiO2 のためにキャリアトラップとして動作す
るキャリアトラップを有する層として形成される。
【0090】そして、基体11の電荷蓄積層17が形成
された側とは反対側の裏面に、金属電極層による下部電
極12がオーミックに被着される。
【0091】この電荷蓄積層17を有する記録媒体10
に対する記録は、前述した図2の記録ヘッドHRによっ
て行う。すなわち、記録媒体10を、移動載置台30上
に配置し、記録媒体10の活性層側すなわち電荷蓄積層
17側の表面、つまり上層絶縁膜16側の表面に、針状
電極21を走査しつつ記録情報に基いてパルス電圧を印
加して、導電性カンチレバーより電荷蓄積層17の主と
してSiナノ結晶層15におけるキャリアトラップにキ
ャリア例えば電子を局部的に注入して情報の記録を行
う。すなわち、キャリアトラップに局所的に注入したキ
ャリア(電子)の有無による電荷量の変化として記録が
なされ、この記録情報に応じた電位パターンを形成す
る。
【0092】この記録媒体10の、電荷蓄積層17の主
としてSiナノ結晶層15によるキャリアトラップへの
電荷注入、すなわち情報の記録は、Si基体11側から
のキャリアの注入と、カンチレバー側からの注入との2
種類存在するが、本実施例ではSiO2 下層絶縁膜14
をトンネル膜として主としてSiナノ結晶層15のトラ
ップに電子を局所的に注入することによって局所的に電
荷量の差を生じさせ、電荷量の差の検出を表面電位Vs
の分布の検出によって行う。なお、本実施例においてS
iO2 膜16は膜厚が厚いため、このSiO2 膜16で
のトンネル確率が低くカンチレバー側からのSiナノ結
晶層への電子が注入される確率は少ない。
【0093】次に、本実施例1における記録媒体の電圧
−容量特性について述べる。本実施例における記録媒体
の記録層、すなわち電荷蓄積層において、そのSiナノ
結晶層であるトラップが電荷の注入を受けている場合
と、電荷の注入を受けていない場合とでは、電圧−容量
特性が異なる。その結果として、注入電荷の有無で電圧
−容量特性にヒステリシス特性を示す。ヒステリシス特
性におけるフラットバンド電圧のバイアス電圧の差ΔV
は、注入された電荷量に依存しており、注入電荷量が多
いほどΔVは大きくなる。このヒステリシス特性は、一
定のバイアス電圧では注入電荷の有無によって容量の値
が異なるため、空間的な容量変化を表面電位の変化とし
て情報の記録、かつこれを検出することにより情報の再
生を行うことができる。
【0094】次に、この実施例1における記録、消去お
よび再生特性を示す。まず、SiO2 上層絶縁膜16/
Siナノ結晶層15/SiO下層絶縁膜14/Si基体
11/下部電極12による記録媒体10に、5Vのパル
ス電圧をヘッドすなわち針状電極21と下部電極12と
の間に印加して、基体11側から、電子を主としてSi
ナノ結晶層15におけるキャリアトラップに局所的に注
入する。この場合、1つのSiナノ結晶トラップには複
数個の電子を注入することが可能である。
【0095】このようにして、情報の記録がなされた記
録媒体10に対して、図4で説明したヘテロダイン検出
SMM再生装置によって、その局所的な注入電荷量の差
を表面電位Vsの分布の変化量として検出する。このヘ
テロダイン検出方式において10MHzの高周波数領域
で表面電位分布を評価した。
【0096】その結果、表面形状は、パルス電圧を印加
する前後で変化は観察されなかった。すなわち、パルス
電圧を印加することによって記録媒体の表面が変質する
ことなく良好に保持されていることが分かった。
【0097】そして、SMM像では、3μm×3μmの
領域の表面電位分布を検討した。この場合、通常のSM
M測定で行っている5〜10kHzでの評価結果とほぼ
同一であることが分かった。この場合、電子が注入され
た部分の表面電位のコントラストが、その周辺と比較し
て低くなっており、記録ビットが観測された。つまり、
10MHzでの高周波数領域でも、5〜10kHzと同
様な表面電位分布が得られていることが分かった。これ
は、表面電位分布が10MHzの高周波数領域において
も検出可能であることを示すものである。
【0098】注入電荷量の差は、電位差では約30mV
であり、SMMの電位分解能が1mVであることから、
例えばデジタル信号“0”および“1”のデータの識別
を充分行うことができる値であることが分かった。
【0099】また、+5Vを先に、上述の記録媒体10
に印加した後に、−5Vのパルス電圧を印加した場合、
周辺の表面電位と同様な値を示すことが分かった。これ
は記録ビットの消去が可能であることを示している。
【0100】また、オーバーライト特性は、パルス電圧
条件を最適化することにより可能となることも分かっ
た。また、ヘテロダイン検出方式により、表面電位分布
像における記録ビットの検出が10MHzの高周波数領
域においても可能であることも分かった。
【0101】このことはヘテロダイン検出方式のSMM
を用いることにより、高周波領域での記録ビットの再生
が可能であることを示している。このことから、本実施
例の記録媒体の局所的な電荷の注入量がカンチレバー記
録ヘッドよりのバイアス電圧印加により制御可能なこと
が示された。
【0102】この2種類の局所的な電荷の有無を、デジ
タルデータのストレージの“0”と“1”に対応させる
ことができる。すなわち、SMM像において、表面電位
のコントラストの低い部分とその周辺に生じた高い部分
でデジタルデータの“0”と“1”に対応させることに
より高密度記録ができる。
【0103】種々の実験の結果、最小記録ビットの直径
を100nm以下にすることが可能であることが分かっ
た。また、キャリア注入による記録、消去時間はそれぞ
れ1μsより小さいことが分かった。
【0104】そして、局所的にキャリアを注入した領域
は、充分安定に保持されることが分かった。上述したよ
うに、この実施例1では高密度記録再生装置として充分
な強をもっていることが分かった。 〔実施例2〕この実施例においては、カンチレバーによ
るパルス電圧印加により、記録ヘッド側から、キャリア
(電子)を、記録媒体の電荷蓄積層のトラップに注入す
る記録態様をとる場合である。この場合の記録媒体10
は、実施例1におけると同様の方法によって、図7にそ
の概略断面図を示すように、導電性半導体基体11とし
てのn型のSi基体上に、SiO2 による下層絶縁膜1
4、Siナノ結晶層15、SiO2 による上層絶縁膜1
6を形成するものであるが、この場合、ボトム側の下層
絶縁膜14においては、電子のトンネルが生じにくい程
度の厚さの3.5nmに形成した。そして、Siナノ結
晶層15は、ナノ結晶15Cの粒径および粒子間隔をそ
れぞれ3.5nmとし、このナノ結晶15Cを埋込んで
SiO2 絶縁膜15iを形成し、続いてこれの上に上層
の絶縁膜16を、3nmとなるように形成した場合であ
る。
【0105】この電荷蓄積層17を有する記録媒体10
に対する記録は、前述した図2の記録ヘッドHRによっ
て行う。すなわち、記録媒体10を、移動載置台30上
に配置し、記録媒体10の活性層側すなわち電荷蓄積層
17側の表面、つまり上層絶縁膜16側の表面に、針状
電極21を走査しつつ記録情報に基いてパルス電圧を印
加して、導電性カンチレバー側から、Siナノ結晶存在
するキャリアトラップにキャリア例えば電子を局部的に
注入して情報の記録を行う。すなわち、キャリアトラッ
プに局所的に注入したキャリア(電子)の有無、すなわ
ち電荷の変化として記録がなされ、この記録情報に応じ
た電位パターンを形成する。
【0106】この記録媒体10からの記録情報の読み出
しすなわち再生は、記録情報に応じた電位VSの分布の
検出によって行う。
【0107】次に、本実施例2における記録、消去およ
び再生特性を示す。まず、SiO2 上層絶縁膜16/S
iナノ結晶層15/SiO下層絶縁膜14/Si基体1
1/下部電極12による記録媒体10に、−5Vのパル
ス電圧をヘッドすなわち針状電極21と下部電極12と
の間に印加して、記録ヘッド側から電子を主としてSi
ナノ結晶層15におけるキャリアトラップに局所的に注
入する。
【0108】次に、図3のSMM再生装置によって、そ
の局所的な注入電荷量の差を表面電位Vsの分布の変化
量として検出する。SMMによって、2μm×2μmの
領域を評価した結果、表面形状は、パルス電圧を印加す
る前後で変化は観察されずパルス電圧を印加することに
よって記録媒体の表面が変質することなく良好に保持さ
れていることが分かった。
【0109】SMM像では、2μm×2μmの部分でキ
ャリアの注入させた部分の表面電位のコントラストは、
周囲と比較して低くなっており、これは−5Vのパルス
電圧によって電子が記録ヘッド側よりトラップに局所的
に注入され、負の電荷量が周囲と比較して増加している
ことを示している。
【0110】以上より微細な記録ビットをSMMによっ
て検出可能であることが分かった。注入電荷量の差は、
電位差で約30mVであり、SMMの電位分解能が、数
mVであることから、例えばデジタル信号“0”および
“1”のデータの識別を充分行うことができる値である
ことが分かった。
【0111】また、−5Vのパルス電圧を印加した後+
5Vのパルス電圧を記録媒体10に印加した場合、すな
わち上述とは反対の極性の電圧を印加した場合、SMM
の電位分布で観察される画像のコントラストも周囲と比
較して同一の電位になっていることが分かった。すなわ
ち記録媒体10のトラップに注入されるキャリアの量が
相殺されていることが分かり、記録ビットの消去が可能
であることが分かった。このことから、この実施例の記
録媒体の局所的な電荷の注入量がカンチレバー記録ヘッ
ドよりのバイアス電圧印加により制御可能なことが示さ
れた。この2種類の局所的な電荷の有無を、デジタルデ
ータのストレージの“0”と“1”に対応させることが
できる。すなわち、SMM像において、表面電位のコン
トラストの高い部分と低い部分でデジタルデータの
“0”と“1”に対応させることにより高密度記録がで
きる。
【0112】種々の実験の結果、最小記録ビットの直径
を100nm以下にすることが可能であることが分かっ
た。また、キャリア注入に必要な記録、消去時間はそれ
ぞれ1μsより小さくできることが分かった。
【0113】また、図4に示したヘテロダイン検出SM
Mを用いることにより、1MHz以上の高周波数領域で
の記録ビット信号の検出再生を行うことができた。そし
て、局所的にキャリアを注入した領域は、充分安定に保
持されることが分かった。上述したように、この実施例
2では高密度記録再生装置として充分な機能を有してい
ることが分かった。
【0114】〔実施例3〕この実施例における記録媒体
10は、電荷蓄積層17のキャリアトラップであるSi
ナノ結晶に、カンチレバーすなわち記録ヘッド側から電
子を注入することによって情報の記録を行うようにした
場合である。この実施例では、Siナノ結晶層を2層構
造としてナノ結晶の実質的トラップ密度が増加する素子
構造になっている。
【0115】この実施例3における記録媒体10は、図
8にその概略断面図を示すように、n型Si基体11上
に、その表面熱酸化により形成した厚さ3nmのSiO
2 膜による下層絶縁膜14を形成し、これの上にプラズ
マCVD法によりSiナノ結晶15Cを形成し、これに
SiO2 絶縁膜15iをLPCVD法により形成してナ
ノ結晶15Cを埋込んで、第1のSiナノ結晶層15A
を形成する。このナノ結晶は、粒径約3nmで、約3n
m間隔で配列されている。続いてこれの上にLPCVD
法によって厚さ3nmのSiO2 膜による中間絶縁膜1
8を成膜する。さらにこれの上にSiナノ結晶15Cを
同様にプラズマCVD法により形成し、さらにこれの上
にLPCVD法によりSiナノ結晶15Cを埋込んでS
iO2 絶縁膜15iを形成して第2のナノ結晶層15B
を形成する。続いてLPCVD法によって4nmのSi
2 膜による上層絶縁膜16を形成した。そして、その
表面の平坦化を行なうため、必要に応じてCMP処理を
行なうこともある。
【0116】基体11の電荷蓄積層17が形成された側
とは反対側には金属層による下部電極12を被着する。
【0117】本実施例による記録媒体10は、第1およ
び第2のナノ結晶層15Aおよび15Bによるキャリア
トラップ層が、厚さ方向に2箇所、つまり2層存在する
ことになり、トラップされるキャリアの数が実施例1の
場合と比較して多くなり、その結果として実施例1で説
明した表面電位の周辺部との差を、実施例1に比し大き
くすることができる。
【0118】この2層のナノ結晶層15Aおよび15B
を有する荷蓄積層17を有してなる記録媒体10に対す
る記録も、前述した図2の記録ヘッドHRによって行
う。すなわち、記録媒体10を、移動載置台30上に配
置し、記録媒体10の表面SiO2 層16に、針状電極
21を走査しつつ記録情報に基いてパルス電圧を印加し
て、導電性カンチレバーよりナノ結晶層15Aおよび1
5Bとその近傍に存在するキャリアトラップに電子を局
部的に注入して情報の記録を行う。すなわち、キャリア
トラップに局所的に注入したキャリア(電子)の有無の
記録情報に応じた電位パターンを形成する。この場合、
2層のナノ結晶層15Aおよび15Bのキャリアトラッ
プの数は、1層のナノ結晶層15による実施例1と比較
して多くなっているため、その結果として、キャリアト
ラップの濃度も大きくなる。
【0119】このようにして、ナノ結晶層15Aおよび
15Bのキャリアトラップに、Si基体11側から、電
子を局所的に注入することによって情報の記録を行った
記録媒体10からの記録情報の読み出しすなわち再生
は、上述した局所的に電荷量の差を生じさせ、電荷量の
差の検出を表面電位Vsの分布の検出によって行う。
【0120】次に、この実施例3における記録、消去お
よび再生特性を示す。まず、上述したSiO2 上層絶縁
膜16/第2のナノ結晶層15B/SiO2中間絶縁膜
18/第1のナノ結晶層15A/SiO2 下層絶縁膜1
4/Si基体11による記録媒体10に、5Vのパルス
電圧をヘッドすなわち針状電極21から印加して、局所
的に電子をSiO2 上層絶縁膜16/第2のナノ結晶層
15B/SiO2 中間絶縁膜18/第1のナノ結晶層1
5A/SiO2 下層絶縁膜14/による電荷蓄積層17
の、主として両ナノ結晶層15Aおよび15Bのキャリ
アトラップに注入して情報の記録を行う。
【0121】この情報の記録は、図4で説明したヘテロ
ダイン検出によるSMM再生装置によって再生する。す
なわち、上述の図7の構成による記録媒体10の局所的
な注入電荷量の差を、表面電位Vsの分布として検出す
る。この場合、ヘテロダイン検出によるSMM再生装置
によって3μm×3μmのエリアを評価した結果、この
場合においても、表面形状は、パルス電圧を印加する前
後で変化は観察されず、パルス電圧を印加することによ
って記録媒体の表面が変質することなく良好に保持され
ていることが分かった。
【0122】ヘテロダイン検出SMM像では、3μm×
3μmの部分でキャリアの注入させた部分の表面電位の
コントラストは周囲と比較して低くなって観察された。
これは−5Vのパルス電圧印加によって電子が記録ヘッ
ド側より局所的に注入され、負の電荷量が周囲と比較し
て増加していること、すなわち、記録ビットが形成され
ていることを示している。
【0123】また、ヘテロダイン検出によるSMM装置
のスキャンエリアをさらに小さくして、例えば1.5μ
m×1.5μmとして、同様な実験を試みた場合も、電
子のキャリア注入により電荷量が増大している記録ビッ
トが検出された。
【0124】以上より微細な記録ビットを、ヘテロダイ
ン検出SMMによって検出可能であることが分かった。
注入電荷量の差は、電位差では約40mVであり、SM
Mの電位分解能が1mVであることから、例えばデジタ
ル信号“0”及び“1”のデータの識別を充分に行うこ
とのできる値であることが分かった。
【0125】また、+5Vのパルス電圧を、上述の図7
の記録媒体10材料2に印加した場合、すなわち、上述
とは反対の極性の電圧を印加した場合、ヘテロダイン検
出SMMの電位分布で観察される画像のコントラストも
逆転していること、すなわち、トラップに注入されるキ
ャリアの極性が反対の関係になっていることが分かっ
た。また、記録と逆極性の電圧パルスを印加することに
より情報の消去も可能であることが分り、オーバーライ
ト特性も有することが分かった。
【0126】このことから、本実施例の記録媒体の局所
的な電荷の注入量が記録ヘッドよりのバイアス電圧印加
により制御可能なことが示された。この2種類の局所的
な電荷の有無を、デジタルデータのストレージの“0”
と“1”に対応させることができる。すなわち、表面電
位のコントラストの高い部分と低い部分でデジタルデー
タの“0”と“1”に対応させることにより高密度記録
ができる。種々の実験の結果、最小記録領域の直径を1
00nm以下にすることが可能であることが分かった。
また、キャリア注入の記録、消去時間はそれぞれ1μs
よりも小さいことが分かった。
【0127】そして、局所的にキャリアを注入した領域
は、充分安定に保持されることが分かった。上述したよ
うに、この実施例3では高密度記録再生装置として充分
な機能をもっていることが分かった。
【0128】〔実施例4〕本実施例では、キャリアの注
入を、記録ヘッドと記録媒体の間のパルス電圧印加によ
りSi基体側から電荷蓄積層のキャリアトラップに注入
するようにする場合である。
【0129】この実施例4では、記録媒体10として、
図9にその概略断面図を示すように、ボトムトンネル膜
として下層絶縁膜14を、厚さ2nmのSiON膜によ
って形成し、これの上に順次Siナノ結晶層15、表面
層の厚さが5nmのSiO2膜による上層絶縁膜16を
実施例1と同様の方法によって成膜して形成した。この
場合においても、基体11の上述した各成膜による電荷
蓄積層17が形成された側とは反対側に金属層による下
部電極12が被着形成される。
【0130】すなわち、この実施例4は、実施例1およ
び実施例3における各下層側つまりボトムトンネル膜と
しての下層絶縁膜14のSiO2 膜に換えてSiON膜
とした場合である。このようにSiONトンネル膜14
を用いることにより、SiO 2 トンネル膜による場合に
比し、情報の消去速度を速められることが期待される。
【0131】本実施例においても、カンチレバーにパル
ス電圧を印加することにより、Si基体11側から電荷
蓄積記録メディアに電子を注入、放出することができ、
その結果として、記録ビットの記録、再生、消去が可能
であることがわかった。
【0132】記録ビットの記録再生特性については本実
施例も実施例1と同等の特性が得られた。また、本実施
例においても、再生にヘテロダイン検出方式のSMMを
用いているため、記録ビットの高周波数領域での高速な
再生が可能になった。
【0133】〔実施例5〕本実施例では、パルス電圧印
加による記録媒体の電荷蓄積層に対するキャリアの注入
を、Si基体側からキャリアトラップに注入するように
した場合である。
【0134】この場合、記録媒体10の構成は、図8の
構成において、SiO2 による下層絶縁膜14の厚さを
2nmとし、第1のナノ結晶層15Aの厚さを3nmと
し、中間絶縁膜18の厚さを3nmとし、第2のナノ結
晶層15Bの厚さを3nmとし、上層絶縁膜16の表面
層の厚さを5nmとした場合である。また、この実施例
5においても、その各膜の成膜方法は、実施例1と同様
とした。
【0135】この実施例5においては、実施例3の場合
と比較して、SiO2 膜16の厚さを5nmと厚くし
て、下層絶縁膜14の膜厚を2nmと薄くしてこれをト
ンネル絶縁膜とするものであり、実施例1におけると同
様に、カンチレバーにパルス電圧を印加して、記録およ
び消去を行うとき、Si基体側から電荷蓄積層17への
キャリア(電子)を注入、放出がなされて記録ビットの
記録消去がなされるようにしたものである。
【0136】この実施例5における記録、消去および再
生特性についても、実施例1と同等の特性が得られた。
また、本実施例では再生にヘテロダイン検出方式のSM
M再生法を用いた。この場合においても、記録ビットの
高周波数領域での高速な再生が可能になった。
【0137】〔実施例6〕本実施例では、実施例1と同
一構成の記録媒体を用い、図2および図4で説明した記
録および消去ヘッドHRと、再生ヘッドHPをそれぞれ
別構成とした。すなわち、各ヘッドHRとHPのカンチ
レバーを独別に構成し、記録媒体10に対して接触状態
で用いられる記録および消去ヘッドHRの針状電極に関
しては、その磨耗を考慮して表面に形成される導電層を
比較的厚く形成した例えはその先端の曲率半径が50〜
100nmとするが、非接触状態で用いられる再生ヘッ
ドHPに関してはその磨耗を考慮する必要がないことか
ら、表面導電層は薄く形成して、その針状電極の先端の
曲率半径は記録および消去ヘッドHRのそれより小さい
30nm以下とした。
【0138】このように、再生ヘッドの針状電極の先端
の曲率半径を小さくすることによって、再生時の表面電
位の空間分解能の解像度を上げることができることか
ら、その最小記録領域の大きさを直径約60nm以下に
まで小さくすることができた。
【0139】また、局所的に電荷が注入された領域は、
充分安定に保持できた。また、ヘテロダイン検出方式の
SMMを用いたことにより、記録ビットの高周波数領域
での再生が可能になった。上述したように、本実施例で
高密度記録再生装置として充分な機能をもっていること
が確認された。
【0140】また、この実施例6では、実施例1におけ
る構成による記録媒体を用いたが、上述した他の実施例
で示した構成による記録媒体を用いる場合においても本
発明の本質が変わらないことは言うまでもない。
【0141】〔実施例7〕本実施例ではディスク形状を
している記録媒体を回転させて記録再生を行った。この
場合の記録、再生の各ヘッドは、実施例6で確認した2
種類の記録および再生用ヘッドを用いた。また、記録媒
体は実施例6で用いた構成、すなわち実施例1における
構成と同様の構成とした。この場合の情報の記録再生特
性は、実施例1と同様に確認することができた。
【0142】また、記録媒体と非接触状態で情報の再生
を行なっているため、記録媒体が高速回転している場合
でも、ヘッドと記録媒体間の磨耗による影響を最小限に
抑制することができた。また、ヘテロダイン検出方式の
SMMを用いることにより、記録ビットの高周波数領域
での再生が可能になった。
【0143】種々の実験の結果、この場合においても最
小記録ビット直径を100nm以下にすることが可能で
あることが分かった。記録時間は1μsより小さくする
ことができた。また、局所的に電荷が注入された領域は
充分安定に保持された。
【0144】尚、上述した各例においては、情報の再生
を、図4で説明したヘテロダイン検出方式のSMMを用
いた場合で、この場合記録ビットの高周波数領域での再
生が可能となるものであるが、各例において、図3のヘ
テロダイン検出方式によらないSMM装置によってその
再生を行うこともできる。
【0145】〔実施例8〕この実施例における記録媒体
は、実施例1と同一構成とし、同一記録態様を採った。
この場合においても記録媒体10からの記録情報の読み
出しすなわち再生は、記録媒体10の、ナノ結晶層15
のキャリアトラップを主とする電荷蓄積層17のキャリ
アトラップへの電荷注入方式は、Si基体側とカンチレ
バー側の2種類存在するが、本実施例ではSiO2 下層
絶縁膜14をトンネル膜として、キャリアトラップにS
i基体側より電子を局所的に注入することによって、局
所的に電荷量の差を生じさせて情報の記録を行い、この
電荷量の差の検出を表面電位Vsの分布として検出する
ことによって記録情報の再生を行う。
【0146】そしてこの記録情報の検出、すなわち再生
は、図5で説明したKFM再生装置によって行った。K
FMによって3μm×3μmのエリアを評価した結果、
表面形状は、パルス電圧を印加する前後で変化は観察さ
れず、パルス電圧を印加することによって記録媒体の表
面が変質することなく良好に保持されていることが分か
った。
【0147】KFM像では3μm×3μmの部分でキャ
リアの注入させた部分の表面電位のコントラストは周囲
と比較して低くなっており、これは5Vのパルス電圧に
よって電子がSi基板側よりトラップに局所的に注入さ
れ、負の電荷量が周囲と比較して増加していることを示
している。また、KFMのスキャンエリアをさらに小さ
くして、例えば1.5μm×1.5μmとして、同様な
実験を試みた場合も、電子のキャリア注入により電荷量
が増大している記録ビットが検出された。
【0148】以上より微細な記録ビットをKFMによっ
て検出可能であることが分かった。注入電荷量の差は電
位差では約30mVであり、KFMの電位分解能が数m
Vであることから、例えばデジタル信号“0”および
“1”のデータの識別を充分行うことのできる値である
ことが分かった。
【0149】また、5Vの電圧パルスを印加した後−5
Vのパルス電圧を記録媒体10にかけた場合、すなわ
ち、上述とは反対の極性の電圧を印加した場合、KFM
の電位分布で観察される画像のコントラストは周囲の表
面電位とほぼ同一の表面電位の値を示すことが分かっ
た。すなわち、記録媒体10の電荷蓄積層17のトラッ
プに注入されるキャリアの量の分布が、消去されている
ことが分かった。また、オーバーライト特性を有するこ
とが分かった。
【0150】このことから、本実施例の記録媒体の局所
的な電荷の注入量が、カンチレバー記録ヘッドよりのバ
イアス電圧印加により制御可能なことが示された。この
2種類の局所的な電荷の有無をデジタルデータのストレ
ージの“0”と“1”に対応させることができる。すな
わち、局所的に注入された電荷の有無でデジタルデータ
の“0”と“1”に対応させることにより高密度記録が
できる。種々の実験の結果、最小記録領域の直径を10
0nm以下にすることが可能であることが分かった。ま
た、キャリア注入の書込み、消去時間はそれぞれ1μs
よりも小さいことが分かった。
【0151】また、記録ヘッドの共振周波数が充分大き
く(10MHzオーダ)、バネ定数が充分小さく(約1
N/m)することにより、記録ビットの5MHz帯で高
速な再生が可能になった。
【0152】そして、局所的にキャリアを注入した領域
は、充分安定に保持されることが分かった。上述したよ
うに、この実施例1では高密度記録再生装置として充分
な機能をもっていることが分かった。
【0153】〔実施例9〕この実施例における記録媒体
は、実施例3と同一構成とし、同一記録態様を採った。
記録媒体10からの記録情報の読み出しすなわち再生
は、本実施例においてもナノ結晶層15のキャリアトラ
ップを主とする電荷蓄積層17のキャリアトラップへの
電子の注入を、Si基体11側より局所的に注入するこ
とによって局所的に電荷量の差を生じさせ、電荷量の差
の検出を表面電位Vsの分布の検出によって行う。
【0154】そして、この実施例9においても、実施例
7で説明したと同様に図5のKFM再生装置を用いて記
録媒体10の電荷蓄積層における局所的な注入電荷量の
差を表面電位Vsの分布として検出する。KFMによっ
て3μm×3μmのエリアを評価した結果、表面形状
は、パルス電圧を印加する前後で変化は観察されず、パ
ルス電圧を印加することによって記録媒体の表面が変質
することなく良好に保持されていることが分かった。
【0155】KFM像では3μm×3μmの部分でキャ
リアの注入させた部分のコントラストは周囲と比較して
暗くなっており、これは−5Vのパルス電圧によって電
子が導電性カンチレバーより局所的に注入され、負の電
荷量が周囲と比較して増加していることを示している。
また、KFMのスキャンエリアをさらに小さくして、例
えば1.5μm×1.5μmとして、同様な実験を試み
た場合も、電子のキャリア注入により電荷量が増大して
いる記録ビットが検出された。
【0156】以上より微細な記録ビットをKFMによっ
て検出可能であることが分かった。注入電荷量の差は電
位差では約40mVであり、KFMの電位分解能が数m
Vであることから、例えばデジタル信号“0”および
“1”のデータの識別を充分行うことのできる値である
ことが分かった。
【0157】また、−5Vのパルス電圧を印加した後
に、+5Vのパルス電圧を材料1にかけた場合、すなわ
ち、上記の実験とは反対の極性の電圧を印加した場合、
KFMの電位分布で観察される画像のコントラストは周
囲の表面電位とほぼ同一の値を示すことが分かった。す
なわち、材料1のトラップに注入されるキャリアの量が
消去されていることが分かる。また、オーバーライト特
性も有することが分かった。
【0158】このことから、本実施例の記録媒体の局所
的な電荷の注入量がカンチレバー記録ヘッドよりのバイ
アス電圧印加により制御可能なことが示された。この2
種類の局所的な電荷の有無をデジタルデータのストレー
ジの“0”と“1”に対応させることができる。すなわ
ち、表面電位コントラストの高い部分と低い部分でデジ
タルデータの“0”と“1”に対応させることにより高
密度記録ができる。種々の実験の結果、最小記録領域の
直径を100nm以下にすることが可能であることが分
かった。また、キャリア注入の書込みおよび消去時間は
それぞれ1μsよりも小さいことが分かった。
【0159】また、記録ヘッドの共振周波数が充分大き
く(10MHzオーダ)、バネ定数が充分小さく(約1
N/m)することにより、記録ビットの5MHz帯での
高速な再生が可能になった。
【0160】そして、局所的にキャリアを注入した領域
は、充分安定に保持されることが分かった。上述したよ
うに、この実施例9においても、高密度記録再生装置と
して充分な機能をもっていることが分かった。
【0161】〔実施例10〕この実施例は、実施例4と
同一の構成による記録媒体に対して、実施例4と同様に
Si基体11側からSiON下層絶縁膜14をトンネル
して電荷蓄積層17のキャリアトラップに電子を注入し
て、実施例4と同様の情報の記録を行い、実施例9と同
様にKFM再生装置による情報の再生を行った。この場
合においても局所的な電荷の有無をデジタルデータのス
トレージの“0”と“1”に対応させることができる。
すなわち、表面電位のコントラストの高い部分と低い部
分でデジタルデータの“0”と“1”に対応させること
により高密度記録ができる。種々の実験の結果、最小記
録領域の直径を100nm以下にすることが可能である
ことが分かった。また、キャリア注入の書込みおよび消
去時間もそれぞれ1μsよりも小さいことが分かった。
【0162】この実施例10においても、実施例8と同
様にKFM再生装置によって記録情報の再生を行った。
この実施例10においても、記録ヘッドの共振周波数が
充分大きく(10MHzオーダ)、バネ定数が充分小さ
く(約1N/m)することにより、記録ビットの5MH
z帯での高速な再生が可能であった。
【0163】そして、局所的にキャリアを注入した領域
は、充分安定に保持されることが分かった。上述したよ
うに、この実施例10においても高密度記録再生装置と
して充分な機能をもっていることが分かった。
【0164】〔実施例11〕この実施例では、実施例2
と同様の記録媒体を用い実施例2と同様に、電荷蓄積層
17のキャリアトラップにカンチレバー側から電荷の注
入を行って情報の記録を行った。そして、その再生は、
実施例7と同様にKFM再生装置によって記録情報の再
生を行った。この実施例11においても、記録ヘッドの
共振周波数が充分大きく(10MHzオーダ)、バネ定
数が充分小さく(約1N/m)することにより、記録ビ
ットの5MHz帯での高速な再生が可能であった。
【0165】そして、局所的にキャリアを注入した領域
は、充分安定に保持されることが分かった。上述したよ
うに、この実施例11においても高密度記録再生装置と
して充分な機能をもっていることが分かった。
【0166】〔実施例12〕この実施例では記録媒体と
して、実施例7、すなわち実施例1と同様の電荷蓄積層
構成による記録媒体を用い、図2および図5で説明した
記録および消去ヘッドHRと、再生ヘッドHPをそれぞ
れ別構成とした。すなわち、各ヘッドHRとHPのカン
チレバーを独別に構成し、記録媒体10に対して接触状
態で用いられる記録および消去ヘッドHRの針状電極に
関しては、その摩擦を考慮して表面に形成される導電層
を比較的厚く形成した例えばその先端の曲率半径が50
〜100nmとするが、非接触状態で用いられる再生ヘ
ッドHPに関してはその摩耗を考慮する必要がないこと
から、表面導電層は薄く形成して、その針状電極の先端
の曲率半径は記録および消去ヘッドHRのそれより小さ
い30nm以下とする。
【0167】このように、再生ヘッドの針状電極の先端
の曲率半径を小さくすることによって、再生時の表面電
位の空間分解能の解像度を上げることができることか
ら、その最小記録領域の大きさを直径約60nm以下に
まで小さくすることができた。また、局所的に電荷が注
入された領域は、充分安定に保持できた。
【0168】上述したように、この実施例で高密度記録
再生装置として充分な機能をもっていることが確認さ
れ、また、この実施例12では実施例1の電荷蓄積層構
成による記録媒体を用いたが、他の実施例で示した電荷
蓄積層構成を記録媒体に適用した場合であっても本発明
の本質が変わらないことは言うまでもない。
【0169】〔実施例13〕この実施例ではディスク形
状をしている記録媒体を回転させて記録再生を行った。
ヘッドは実施例12で確認した2種類の記録および再生
用ヘッドを用いた。また、記録媒体は実施例12で用い
た電荷蓄積層構成による媒体を用いた。この場合の情報
の記録特性は、実施例1、再生特性は実施例7と同様に
確認することができた。そして、この実施例においても
情報の再生を記録媒体と非接触状態で行なっているた
め、記録媒体が高速回転している場合でも、ヘッドと記
録媒体間の摩擦、磨耗による影響を最小限に抑止するこ
とができた。
【0170】また、種々の実験の結果、この場合におい
ても記録スポット直径を100nm以下にすることが可
能であることが分かった。記録時間は1μsより小さく
することができた。また、記録ヘッドの共振周波数が充
分大きく(10MHzオーダ)、バネ定数が充分小さく
(数1N/m)とすることにより、記録ビットの5MH
z帯での高速な再生が可能になった。さらに、局所的に
電荷が注入された領域は充分安定に保持された。
【0171】以上より、この実施例13で高密度記録再
生装置として充分な機能をもっていることが確認された
また、この実施例13は記録媒体として実施例1に対し
て説明を行ったが、他の電荷蓄積層構成による記録媒体
に適用しても本発明の本質が変わらないことは言うまで
もない。
【0172】〔実施例14〕上述した各例においては、
記録媒体に対する情報の再生を、ヘッドが非接触状態で
なされるようにした場合で、この場合ヘッドおよび記録
媒体の磨耗を回避できることから、繰返し再生を可能に
するものであるが、再生装置として、記録ヘッドと同様
に、走査型すなわちいわゆるコンタクト型SCMによる
再生装置を用いて再生ヘッドにおいても記録媒体に対し
て接触状態で、各構成による電荷蓄積層を具備する記録
媒体に対する情報の再生を行うようにすることもでき
る。このように、記録媒体に対して再生ヘッドを非接触
状態で再生するときは、再生感度の向上、解像の向上、
したがって、より記録密度の向上をはかることができ
る。この場合、実施例1と同様の記録媒体を用いて記録
再生を行ったところ、実施例1と同等の記録再生特性が
得られることが分かった。
【0173】上述したように、種々の実施例によって、
本発明の有効性を示したが、これらの実施例および他の
本発明装置で用いられる記録媒体において、その最上層
に、例えばダイヤモンドライクカーボンによる保護層
(図示せず)を被着することが望ましく、この保護層の
形成によって、記録再生装置および記録媒体の信頼性を
より向上させることができる。
【0174】上述したように本発明装置によれば、記録
密度の向上、記録、消去再生速度の高速化がはかられ
た。この本発明による高密度記録再生装置は、従来に比
較して1桁以上大きな記録密度を実現できるものであ
る。
【0175】そして、特に本発明装置においては、記録
媒体として、例えばナノSiクリスタルによるナノ結晶
を有する電荷蓄積層による構成としたものであり、この
ナノ結晶は、微細結晶の集合によることから、そのキャ
リアトラップ密度は高く、より高密度記録が図られ、ま
たその記録消去の高速、低電圧駆動が図られる。
【0176】すなわち、前述したようにSiナノクリス
タルは空間的に離散化されており、絶縁膜例えばSiO
2 膜中に埋め込まれた形状になっている。そのサイズは
直径10nm以下、その間の距離は10nm以下であ
る。このような場合、SiナノクリスタルはSiO2
中の離散化されたキャリアトラップとして動作する。S
iO2 とSiとのバンドエネルギーダイヤグラムよりト
ラップレベルは、3.leVと推定される。キャリア
(電子)は記録ヘッドと基板との間に印加された強電界
によりSi基体側または記録ヘッド側からSiO2 膜を
トンネルして離散化されたキャリアトラップに注入され
ることにより情報の記録が成される。注入される電子の
方向はキャリアトラップとSi基体、記録ヘッドとの間
のトンネル酸化膜の厚さおよび、記録ヘッドでの電界集
中の大きさなどに依存している。キャリアトラップの密
度は5×1011〜1×1012cm-2である。また、一つ
のキャリアトラップには複数個の電子をトラップするこ
とができる。
【0177】一方、キャリア(電子)は記録ヘッドとS
i基体との間に記録の場合と逆の極性の強電界を印加す
ることによりトラップに注入されていた電子を放出する
ことにより情報の消去を行う。情報の再生はキャリアト
ラップに捕獲された電子と再生ヘッドとのクーロン相互
作用を表面電位、静電容量等として直接検出する。この
再生方法は非常に高感度であり、このため、小数のキャ
リアトラップに捕獲された電子を高感度に検出すること
が可能となる。すなわち、表面電位の検出感度は数mV
であるため、数10mV程度の表面ポテンシャルの変化
シフトを容易に検出することができる。
【0178】Siナノクリスタルを用いた記録媒体の特
有の効果としては (1)伝導帯端を基準にしたエネルギーレベルが深く、
密度が高いキャリアトラップをSiO2 絶縁膜中に作製
することができる。 (2)Siナノクリスタルから構成されるキャリアトラ
ップを空間的に離散化した状態で絶縁膜中に作製するこ
とができる。その結果として、 (1)書き込み動作電圧を5V以下にすることができ
る。 (2)トラップが空間的に離散化しているため、記録ビ
ットにおける情報の繰り返し書き換え消去特性が良好と
なる。 (3)トラップのエネルギーレベルが深く、空間的に離
散化されているために同一トンネル絶縁膜の厚みで比較
した場合、記録ビットのデータ保持特性が良好になる。
【0179】尚、ナノ結晶は、Si以外の半導体や金属
によることもできる。また、上述した例では基体11が
n型Si基体とした場合であるが、p型基体を用いるこ
ともできる。
【0180】また、上述したように本発明装置において
は記録再生ヘッドが針状電極を有する構成とするもので
あるが、この針状電極の機械的強度を補強するなどの目
的で針状電極の周囲に絶縁体を配するなど上述の各実施
例に限られず、種々の変更を行うことができる。
【0181】また、上述したように、記憶ヘッドHRお
よび再生ヘッドHPを、共通に構成する場合において、
そのヘッド、したがってカンチレバーを複数個設けたい
わゆるマルチヘッド構成とすることができる。あるいは
記録ヘッドHRおよび再生ヘッドHPとを、それぞれ別
構成とする場合においてもその記録ヘッドHRおよび再
生ヘッドHPの双方もしくは一方をヘッド、したがって
カンチレバーを複数個設けたいわゆるマルチヘッド構成
とすることができる。
【0182】また、本発明による記録再生装置は、記録
および再生の双方の機能を有する構成とすることもでき
るし、記録機能がなく、上述の記録方法で記録されてい
る情報を再生する機能を有する構成とすることもでき
る。
【0183】
【発明の効果】上述したように、本発明によれば、極め
て優れた記録密度、高速な記録再生感度を有するため、
従来技術と比較して格段に優れた高密度記録装置が実現
された。
【0184】したがって、高速情報化社会に必要とされ
る大容量で高速なアクセスが必要とされる画像情報のス
トレージ、ハイビジョン放送などの画像の記録およびコ
ンデンサにおける大容量なデータの記録に有効な記録再
生装置なるものである。
【0185】また、その再生を、ヘッドの非接触状態で
行うときは、ヘッドおよび記録媒体の損耗を回避でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置に用いる記録媒体の基本的構成を示
す図である。
【図2】本発明装置の記録消去機構の一例の構成図であ
る。
【図3】本発明装置の再生装置の一例の構成図である。
【図4】本発明装置の再生装置の他の例の構成図であ
る。
【図5】本発明装置の再生装置の他の例の構成図であ
る。
【図6】本発明装置の再生装置の他の例の構成図であ
る。
【図7】本発明装置に用いる記録媒体の一例の概略断面
図である。
【図8】本発明装置に用いる記録媒体の他の例の概略断
面図である。
【図9】本発明装置に用いる記録媒体の他の例の概略断
面図である。
【図10】従来装置における記録媒体の概略断面図であ
る。
【符号の説明】
10 記録媒体、11 基体、12 下部電極、13
活性層、14 下層絶縁層、15,15A,15B ナ
ノ結晶層、16 上層絶縁層、17 電荷蓄積層、18
中間絶縁層、22 カンチレバー

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 針状電極よりなるヘッドにより記録媒体
    に情報を記録または再生する記録再生装置であって、 上記記録媒体は、少なくともトンネル絶縁膜と、絶縁膜
    中にナノ結晶が埋め込まれてなるナノ結晶層を有する電
    荷蓄積層を有して成り、 上記ヘッドからの電圧印加によって上記電荷蓄積層の所
    定領域に対する上記トンネル絶縁膜を通じての電荷移動
    により情報の記録または消去がなされ、 上記ヘッドを、上記記録媒体に非接触または接触させた
    状態で、上記所定領域における電荷、あるいは表面電
    位、または静電容量、あるいはこれらの微分量の少なく
    ともいづれかの変化量を検出して、上記記録情報を再生
    することを特徴とする記録再生装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、上記所定領域に記録
    された情報を、ヘテロダイン検出法によって上記所定領
    域における表面電位あるいは静電容量の少なくともいづ
    れかの変化量を、再生ヘッドが上記記録媒体に対し非接
    触状態で、該再生ヘッドの機械共振周波数より高い周波
    数で高速に検出して、上記記録情報を再生することを特
    徴とする記録再生装置。
  3. 【請求項3】 請求項1において、上記所定領域に記録
    された情報を、該領域における表面電位または静電容量
    の少なくともいづれかの変化量の微分を、再生ヘッドが
    上記記録媒体に対し非接触状態で、該再生ヘッドの共振
    周波数の振幅または位相の変動量またはその微分量を用
    いて検出して、上記記録情報を再生することを特徴とす
    る記録再生装置。
  4. 【請求項4】 請求項1において、記録情報の再生を、
    静電容量の変化量あるいは静電容量の変化量の微分を、
    再生ヘッドが上記記録媒体に対し接触状態で、該再生ヘ
    ッドまたは再生ヘッド系の発振器の共振周波数の周波数
    シフトに起因する共振点での振幅または位相の変化を検
    出して、上記記録情報を再生することを特徴とする記録
    再生装置。
  5. 【請求項5】 請求項1において、上記ヘッドを、少な
    くとも記録用および再生用の共通のヘッドとしたことを
    特徴とする記録再生装置。
  6. 【請求項6】 請求項1において、上記ヘッドを、少な
    くとも記録用および再生用の2種のヘッドとしたことを
    特徴とする記録再生装置。
  7. 【請求項7】 請求項1において、上記記録または消去
    を、上記ヘッドに10V以下の電圧を印加することによ
    り行い、上記記録媒体の単位記録領域は直径100nm
    以下であることを特徴とする記録再生装置。
  8. 【請求項8】 請求項1において、単位記録領域の記録
    および消去時間を、それぞれ1μs以下とすることを特
    徴とする記録再生装置。
  9. 【請求項9】 請求項1において、上記記録または再生
    を、上記記録媒体を回転させて行うことを特徴とする記
    録再生装置。
  10. 【請求項10】 請求項1において、上記記録媒体の上
    記ナノ結晶層の結晶粒の粒径が10nm以下、結晶粒間
    隔が10nm以下とされたことを特徴とする記録再生装
    置。
  11. 【請求項11】 請求項1において、上記記録媒体の電
    荷蓄積層の、上記ナノ結晶層の結晶粒が、酸化シリコン
    膜中埋め込まれて形成されてなることを特徴とする記録
    再生装置。
  12. 【請求項12】 請求項1において、上記ナノ結晶が半
    導体ナノ結晶であることを特徴とする記録再生装置。
  13. 【請求項13】 請求項1において、上記ナノ結晶がシ
    リコンナノ結晶であることを特徴とする記録再生装置。
  14. 【請求項14】 請求項1において、上記記録媒体が、
    最上層に保護層を有することを特徴とする記録再生装
    置。
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