【発明の詳細な説明】
ヒトDNAリガーゼIII
本発明は新たに同定されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドに
よりコードされるポリペプチド、そのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチ
ドの使用、並びにそのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの製造に関す
る。特には本発明のポリペプチドはヒトDNAリガーゼIIIである。本発明はそ
のようなポリペプチドの作用を阻害することにも関する。
DNA鎖の中断とギャップは、複製、修復、組換え中に生じる。哺乳動物の細
胞核においてはそのような切断の再結合はいくつかの異なるDNAポリメラーゼ
およびDNAリガーゼに依存する。3つの異なるDNAリガーゼの存在は、精製
された酵素の生化学的および免疫学的キャラクタリゼーションにより以前に確立
された(Tomkinson,A.E.等、J.Biol.Chem.、266:21728−21
735(1991))。DNAリガーゼは哺乳動物細胞におけるDNA複製、除去
修復および組換修復を触媒する酵素である(Li,J.J.およびKelly,T.J.、PNAS
、USA、81:6973−77(1984)およびWook.R.O.等
、Cell,53:97−106(1988))。細菌においては3つのDNAリガー
ゼ、すなわちDNAリガーゼI、DNAリガーゼII、およびDNAリガーゼIIIが
発見され、ヒトでは3つすべてが見出されているが、DNAリガーゼIのみがク
ローン化されている。
DNAリガーゼIをコードする完全長のヒトcDNAは、S.cereviasiae cdc
温度感受性DNAリガーゼ変異体の機能的相補性により得られた(Baker,D
.G.、Eur.J.Biochem.,162:659−67(1987))。完全長cDN
Aは919個のアミノ酸残基よりなる102kDaのタンパク質をコードする。微
生物DNAリガーゼを除いて他の公知タンパク質と顕著な配列相同性はない。活
性部位リジン残基は位置568に位置している。DNAリガーゼIは活性のため
にマグネシウムとATPを必要とする。DNAリガーゼIの主な機能は、ラギン
グ鎖DNA複製の間にオカザキ断片を結合することである。それはDNA中の一
本鎖破断点をも有効にシールし、制限酵素DNA断片を付着末端に結合する。該
酵素はDNAのブラント末端結合を触媒することもできる。DNAリガーゼIは
、poly(dA)に水素結合したオリゴ(dT)分子を結合できるが、該酵素は、オ
リゴ(dT)をポリ(rA)相補鎖にライゲートできない点でT4DNAリガーゼ
とは異なる。
ヒトDNAリガーゼIIは細胞核とより堅固に結合している。この酵素は42℃
で急速に不活性する不安定なタンパク質である。DNAリガーゼIIは、補因子と
してATPを必要とする点で他の真核DNAリガーゼと似ているが、ATPに対
してずっと高い会合性を有する点においてDNAリガーゼIと異なる。DNAリ
ガーゼIIは、オリゴ(dT)・ポリ(rA)基質とのホスホジエステル結合の形成
を触媒するが、オリゴ(rA)・ポリ(dT)基質については触媒しない。従って
この点においてDNAリガーゼIとは完全に異なる(Arrand,J.E.等,J.B iol.Chem.
,261:9079−82(1986))。
DNAリガーIIより大きく、そのタンパク質とは明らかに関係のない、最近検
出された酵素はDNAリガーゼIIIと名付けられた(Tomkinson,A.E.等,J. Biol.Chem.
,266:21728−35(1991))。DNAリガーゼIIIは
、ATPの場合低い親和力を有しヒドロキシアパタイトに弱くのみ結合する点に
おいてDNAリガーゼIに類似し、DNAリガーゼIIとは異なる。しかしながら
DNAリガーゼIおよびIIIは密接に関係していない。DNAリガーゼIIIはDN
Aにおける一本鎖破断点を有効に修復するが、ブラント末端結合またはスーパー
コイルDNAのAMP依存性緩和を行うことができない(Elder,R.H.等、Eur .J.Biochem.
,203:53−58(1992))。
DNAリガーゼによるDNA鎖中断の結合についてのメカニズムは広く記載さ
れている。その反応は共有結合的酵素−アデニレート複合体の形成により開始さ
れる。哺乳動物およびウイルスDNAリガーゼはATPを補助因子として用い、
一方細菌DNAリガーゼはアデニリル基を生成するためにNADを用いる。AT
Pは、AMP、およびタンパク質の活性部位にある特異的なリジン残基のε−基
へホスホルアミデート結合により結合したアデニリル残基を有するピロホスフェ
ートに切断される(Gumport,R.I.等、PNAS,68:2559−63(19
71))。DNAリガーゼ−アデニレート中間体の再活性化されたAMP残基は2
本鎖DNA中の1本鎖破断点の5′リン酸末端に移され、5′−5′ホスホ無水
物結合を有する共有結合性DNA−AMP複合体を生ずる。この反応中間体は微
生物および哺乳動物リガーゼについても単離されたが、アデニル化された酵素よ
り短命である。DNAライゲーションの最終段階において、ホスホジエステル結
合の生成に必要なアデニル化されていないDNAリガーゼは、アデニル化部位の
隣接3′−ヒドロキシル基による攻撃を介してAMP残基の置換を触媒する。
本発明のポリペプチドはアミノ酸配列相同性の結果として、ヒトDNAリガー
ゼIIIと推定的に同定された。
本発明の一態様によればヒトDNAリガーゼIIIである新規な成熟ポリペプチ
ド、並びに生物学的に活性な、そして診断または治療上有用なその断片、アナロ
グ、および誘導体が提供される。
本発明の他の態様によれば、mRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA並びに
そのアナログおよび生物学的に活性で診断または治療上有用なフラグメントを含
む、ヒトDNAリガーゼIIIをコードする単離された核酸分子を提供する。
本発明の異なる態様によれば組換え技術によるそのようなポリペプチドの製造
方法が提供され、その方法は、ヒトDNAリガーゼIII核酸配列を有する組換え
原核および/または真核宿主細胞を、該タンパク質の発現を促進する条件下に培
養し、次にそのタンパク質を回収することを含んでなる。
本発明の更なる態様によれば、そのようなポリペプチド、またはそのようなポ
リペプチドをコードするポリヌクレオチドを、科学的研究、DNA合成およびD
NAベクターの製造に関するインビトロ目的のために利用する方法が提供される
。
本発明の更なる態様によれば、遺伝子治療によって、不十分なヒトDNAリガ
ーゼIII活性に関する状態を処置する方法が提供され、その方法はDNAリガー
ゼIII遺伝子を患者の細胞にin vivoまたはex vivoで入れることを含んでなる。
その遺伝子はトランスデュースされた細胞中で発現され、その結果として、該遺
伝子によりコードされるタンパク質を治療に、例えば異常な細胞増殖、例えば腫
瘍等のDNAの欠陥に関連する障害を防止し、激しい免疫抑制、発育阻止された
生長およびリンパ腫、並びにDNA破損剤に対する細胞の過敏性を治療する。
本発明の更なる態様によれば、ヒト配列に特異的にハイブリダイズするに十分
な長さの核酸分子よりなる核酸プローブが提供され、DNAリガーゼIIIをコー
ドする遺伝子中の変異を検出するのに診断的に使用し得る。
本発明の更なる態様によれば、そのようなポリペプチドに対するアンタゴニス
トが提供され、それは細胞内で製造されるかまたは遺伝子治療により投与され、
そのようなポリペプチドの作用を阻げ、例えば望ましくない細胞、例えば癌細胞
を標的にし、破壊する。
本発明のこれらのおよび他の態様は本明細書の教示から当業者に明らかであろ
う。
次の図は本発明の態様の説明であり、請求の範囲に包含される本発明の範囲を
制限することを意図しない。
図1は、DNAリガーゼIIIポリペプチドのcDNA配列および対応する推定ア
ミノ配列を示す。アミノ酸についての標準的な1文字省略を用いる。
図2は、ヒトDNAリガーゼI(上の列)およびヒトDNAリガーゼIII(下
の列)間のアミノ酸相同性を示す。
図3は、異なるヒト組織におけるDNAリガーゼIIIの存在を説明するゲルの
コピーである。パネルAはヒトDNAリガーゼIII遺伝子のノーザン分析のオー
トラジオグラフであり、パネルBはローディングレファレンスとしてのエチジウ
ムブロマイド染色ゲルである。結果は、ヒトDNAリガーゼIIIが、胸腺、精巣
および心臓で主に発現することを示す。
本発明の一態様により、第1図の推定アミノ酸配列を有する成熟ポリペプチド
、または1994年8月31日にATCC寄託番号第75880号として寄託さ
れたクローンのcDNAによりコードされる成熟ポリペプチドをコードする、単
離された核酸(ポリヌクレオチド)を提供する。
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、胸腺、精巣および心
臓から得ることができる。本発明のポリヌクレオチドは、ヒトの活性化されたT
細胞から得られたcDNAライブラリー中で発見された。それは、構造的に、D
NAリガーゼファミリーに関係がある。それは、899個のアミノ酸残基のタン
パク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。そのタンパク質は、
ウサギDNAリガーゼに対し、最も大きい相同性を有し、全タンパク質にわたっ
て、29%の同一性および51%の類似性を有する。疎水性アミノ酸残基がいず
れかの側で隣接する保存された活性なリジン残基が存在し、配列E−KYDG−
Rは、哺乳動物細胞、酵母、ワクシニアウイルスおよびバクテリオファージT7
等の異なる源からの酵素に共通することも重要である。
本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形で、またはDNAの形であり得、こ
のDNAには、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAが含まれる。該DN
Aは、二本鎖または一本鎖であり得、また一本鎖であるなら、コード鎖または非
コード(アンチ−センス)鎖であり得る。成熟ポリペプチドをコードするコード配
列は、第1図に示すコード配列または寄託されたクローンのコード配列と同じで
あってよく、あるいは遺伝コードの重複または縮重の結果として、第1図のDN
Aまたは寄託されたcDNAと同じ成熟ポリペプチドをコードする異なったコー
ド配列であってもよい。
第1図の成熟ポリペプチドまたは寄託されたcDNAによりコードされる成熟
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドには、以下のものが含まれ得る:成
熟ポリペプチドのコード配列のみ;成熟ポリペプチドのコード配列(また場合に
より、付加的コード配列)、および成熟ポリペプチドのコード配列のイントロン
または非コード配列5'および/または3'といったような非コード配列。
従って、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ポリ
ペプチドのコード配列のみが含まれるポリヌクレオチド、さらにはまた、付加的
コードおよび/または非コード配列が含まれるポリヌクレオチドを包含する。
本発明はさらに、第1図の推定アミノ酸配列を有するポリペプチドまたは寄託
されたクローンのcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメント、ア
ナログおよび誘導体をコードする、上記のポリヌクレオチドの変異体に関する。
ポリヌクレオチドの変異体は、ポリヌクレオチドの天然に存在するアレル変異体
またはポリヌクレオチドの天然には存在しない変異体であり得る。
従って、本発明には、第1図に示すのと同じ成熟ポリペプチドまたは寄託され
たクローンのcDNAによりコードされる同じ成熟ポリペプチドをコードするポ
リヌクレオチド、さらにはまた、そのようなポリヌクレオチドの変異体が含まれ
、これらの変異体は、第1図のポリペプチドまたは寄託されたクローンのcDN
Aによりコードされるポリペプチドのフラグメント、誘導体またはアナログをコ
ードする。そのようなヌクレオチド変異体には、欠失変異体、置換変異体並びに
付加および挿入変異体が含まれる。
先に示したように、該ポリヌクレオチドは、第1図に示すコード配列の天然に
存在するアレル変異体または寄託されたクローンのコード配列の天然に存在する
アレル変異体であるコード配列を有し得る。当業界で知られているように、アレ
ル変異体は、1つまたはそれ以上のヌクレオチドの置換、欠失または付加を有し
得る別の形のポリヌクレオチド配列であり、これは、コードされるポリペプチド
の機能を実質的には変えない。
本発明のポリヌクレオチドはまた、本発明のポリペプチドの精製を可能とする
マーカー配列に枠内で融合したコード配列も有し得る。細菌宿主の場合には、そ
のマーカー配列は、マーカーに融合した成熟ポリペプチドの精製を提供するため
の、pQE−9ベクターにより与えられるヘキサ−ヒスチジンタグ(tag)であって
よく、または、例えば、哺乳動物宿主、例えば、COS−7細胞を使用する場合
には、そのマーカー配列は、赤血球凝集素(HA)タグであってよい。HAタグは
、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質から得られるエピトープに対応する(
Wilson,I.ら、Cell、37:767(1984))。
本発明はさらに、配列間に少なくとも50%、また好ましくは70%の同一性
がある場合に、上記の配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本
発明は特に、ストリンジェント条件下、上記のポリヌクレオチドにハイブリダイ
ズするポリヌクレオチドに関する。本明細書中で使用する場合、「ストリンジェ
ント条件」という用語は、配列間に少なくとも95%、また好ましくは少なくと
も97%の同一性がある場合にのみ、ハイブリダイゼーションが起こるであろう
ことを意味する。好ましい態様では、上記のポリヌクレオチドにハイブリダイズ
するポリヌクレオチドは、第1図のcDNAまたは寄託されたcDNAによりコー
ドされる成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能または活性を実質的には保有する
ポリペプチドをコードする。
本明細書中で言う寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダ
ペスト条約の条件の下に保持されるであろう。これらの寄託は、単に当業者への
便宜として与えられるものであって、寄託が35 U.S.C.§112下に要求
されることを承認するものではない。寄託された物質中に含まれるポリヌクレオ
チドの配列、さらにはまた、それによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配
列は、本明細書の一部を構成して、本明細書中の配列のいずれかの記載と矛盾す
る際はいつでも照合している。寄託された物質を製造し、使用し、または販売す
るには、実施許諾が要求され得、またそのような実施許諾は、ここでは付与され
ない。
本発明はさらに、第1図の推定アミノ酸配列を有する、または寄託されたcD
NAによりコードされるアミノ酸配列を有するDNAリガーゼIIIポリペプチド
、さらにはまた、そのようなポリペプチドのフラグメント、アナログおよび誘導
体に関する。
第1図のポリペプチドまたは寄託されたcDNAによりコードされるポリペプ
チドを示す場合、「フラグメント」、「誘導体」および「アナログ」という用語
は、そのようなポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能または活性を保有する
ポリペプチドを意味する。
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然ポリペプチドまたは合成
ポリペプチド、好ましくは組換ポリペプチドであってよい。
第1図のポリペプチドまたは寄託されたcDNAによりコードされるポリペプ
チドのフラグメント、誘導体またはアナログは、(i)1つまたはそれ以上のア
ミノ酸残基が同型または非同型アミノ酸残基(好ましくは、同型アミノ酸残基)で
置換されており、またそのような置換アミノ酸残基が遺伝コードによりコードさ
れるものであってもよく、またはコードされたものでなくてもよいもの、(ii)
1つまたはそれ以上のアミノ酸残基に置換基が含まれるもの、または(iii)成
熟ポリペプチドが、該ポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリ
エチレングリコール)のような、他の化合物と融合しているもの、または(iv)
は成熟ポリペプチドの精製に使用される、付加的アミノ酸が成熟ポリペプチドに
融合しているものであり得る。そのようなフラグメント、誘導体およびアナログ
は、本明細書中の教示から当業者の範囲内であると思われる。
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、単離された形で提供される
のが好ましく、好ましくは、均一となるまで精製される。
「単離された」という用語は、物質がその元の環境(例えば、それが天然に存
在するなら、天然の環境)から除去されていることを意味する。例えば、生きて
いる動物にある天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離され
ていないが、天然の系における共存物質のいくつかまたは全てから分離された同
じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。そのようなポリヌク
レオチドはベクターの部分となり得、および/またはそのようなポリヌクレオチ
ドまたはポリペプチドは組成物の部分となり得、またそのようなベクターまたは
組成物はその天然の環境の部分ではないという点で、なお単離されている。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドが含まれるベクター、本発明のベク
ターで遺伝的に操作された宿主細胞、および本発明のポリペプチドの組換え技術
による製造にも関する。
宿主細胞は、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る本
発明のベクターで遺伝的に操作される(トランスデュースされ、またはトランス
フォームされ、またはトランスフェクトされる)。該ベクターは、例えば、プラ
スミド、ウイルス粒子、ファージ等の形であり得る。操作された宿主細胞は、プ
ロモーターを活性化し、トランスフォーマントを選択し、またはDNAリガーゼ
III遺伝子を増幅するのに適するよう改変された従来の栄養培地で培養すること
ができる。温度、pH等といったような培養条件は、発現用に選択された宿主細
胞で先に使用した培養条件であって、当業者に明らかであろう。
本発明のポリヌクレオチドは、ペプチドを組換え技術により製造するのに使用
することができる。従って、例えば、該ポリヌクレオチドを、ポリペプチドを発
現するための様々な発現ベクターのいずれか1つに含ませることができる。その
ようなベクターには、染色体、非染色体および合成DNA配列、例えば、SV4
0の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラス
ミド;プラスミドとファージDNAとの組合せから得られるベクター;ワクシニ
ア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病といったようなウイルスDNA
が含まれる。しかし、他のいずれのベクターも、それが宿主中で複製可能であっ
て、生存可能である限り、使用することができる。
適当なDNA配列を様々な方法によりベクターに挿入することができる。一般
には、DNA配列を当業界で既知の方法により適当な制限エンドヌクレアーゼ部
位に挿入する。そのような方法および他の方法は、当業者の範囲内であると思わ
れる。
発現ベクターのDNA配列を、適当な発現制御配列(プロモーター)に作動可
能に結合し、mRNA合成を行わせる。そのようなプロモーターの代表例として
、以下のものが挙げられる:LTRまたはSV40プロモーター、E.coli. lac
またはtrp、ファージラムダPLプロモーター、および原核もしくは真核細胞また
はそれらのウイルスでの遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモ
ーター。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写
終結区も含む。該ベクターはまた、発現を増幅するのに適当な配列も含み得る。
さらに、発現ベクターは、真核細胞培養の場合にはジヒドロフォレートレダク
ターゼまたはネオマイシン耐性といったような、またはE.coliではテトラサイ
クリンまたはアンピシリン耐性といったような、トランスフォームされた宿主細
胞の選択のための表現型特性を与えるために、1つまたはそれ以上の選択可能な
マーカー遺伝子を含むのが好ましい。
上記のような適当なDNA配列、さらにはまた、適当なプロモーターまたは制
御配列を含むベクターを、適当な宿主をトランスフォームするために使用して、
その宿主がタンパク質を発現するのを可能にすることができる。
適当な宿主の代表例として、以下のものが挙げられる:E.coli、Streptomyc es
、Salmonella typhimuriumといったような細菌細胞;酵母のような真菌細胞
;DrosophilaおよびSf9といったような昆虫細胞;CHO、COSまたはBow
esメラノーマといったような動物細胞;植物細胞等。適当な宿主の選択は、本明
細書中の教示から当業者の範囲内であると思われる。
とりわけ、本発明にはまた、先に広く記載した配列を1つまたはそれ以上含ん
でなる組換え構築物も含まれる。その構築物は、本発明の配列が順または逆方向
で挿入されている、プラスミドまたはウイルスベクターといったようなベクター
を含んでなる。この実施態様の好ましい態様では、該構築物はさらに、例えば、
該配列に作動可能に結合したプロモーターを含め、制御配列を含んでなる。適当
なベクターおよびプロモーターが多数、当業者に知られていて、市販されている
。以下のベクターを例として挙げる。細菌用:pQE70、pQE60、pQE−
9(Qiagen)、pBS、pD10、ファージスクリプト(phagescript)、psiX17
4、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH4
6A(Stratagene);ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR5
40、pRIT5(Pharmacia)。真核生物用:pWLNEO、pSV2CAT、pO
G44、pXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSV
L(Pharmacia)。しかし、他のいずれのプラスミドまたはベクターも、それらが
宿主中で複製可能であって、生存可能である限り、使用することができる。
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベク
ターまたは選択マーカーを有する他のベクターを用いて、いずれかの所望の遺伝
子から選択することができる。2つの適当なベクターは、PKK232−8およ
びPCM7である。個々に名付けられた細菌プロモーターには、lacI、lacZ、
T3、T7、gpt、ラムダPR、PLおよびtrpが含まれる。真核プロモーターには
、CMV即時初期(immediate early)、HSVチミジンキナーゼ、初期および後
期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスのメタロチオネイン−
Iが含まれる。適当なベクターおよびプロモーターの選択は、十分、当業者のレ
ベルの範囲内である。
さらなる態様では、本発明は、上記の構築物を含む宿主細胞に関する。その宿
主細胞は、哺乳動物細胞のような高等真核細胞、酵母細胞のような低等真核細胞
であり得、または該宿主細胞は、細菌細胞のような原核細胞であり得る。構築物
の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デ
キストラン媒介トランスフェクションまたはエレクトロポレーションにより行う
ことができる。(Davis,L.、Dibner,M.、Battey,L.、Basic Methods in
Molecular Biology(1986))。
宿主細胞中の構築物を通常の方法で使用して、組換え配列によりコードされる
遺伝子産物を製造することができる。あるいはまた、本発明のポリペプチドは、
従来のペプチド合成装置により合成的に製造することができる。
成熟タンパク質は、適当なプロモーターの制御下、哺乳動物細胞、酵母、細菌
、または他の細胞中で発現させることができる。そのようなタンパク質を、本発
明のDNA構築物から得られるRNAを用いて製造するために、無細胞翻訳系も
また使用することができる。原核および真核宿主で使用するのに適当なクローニ
ングおよび発現ベクターは、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laborato
ry Manual,第2版、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、(1989)によ
り記載されており、この開示は、本明細書の一部を構成する。
本発明のポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、エン
ハンサー配列をベクターに挿入することにより増加する。エンハンサーは、プロ
モーターに作用してその転写を増加させる、通常、約10〜300bpの、DNA
のシス作用性要素である。例には、bp 100〜270の、複製開始点の後期側
にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハン
サー、複製開始点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイル
スエンハンサーが含まれる。
通例、組換え発現ベクターには、複製開始点、および宿主細胞のトランスフォ
ーメーションを可能にする選択可能なマーカー、例えば、E.coliのアンピシリ
ン耐性遺伝子およびS.cerevisiae TRP1遺伝子、並びに下流の構造配列の転
写を行わせるために高度に発現される遺伝子から得られるプロモーターが含まれ
るであろう。そのようなプロモーターは、とりわけ、3−ホスホグリセリン酸キ
ナーゼ(PGK)のような解糖系酵素、α因子、酸性ホスファターゼ、または熱シ
ョックタンパク質をコードするオペロンから得ることができる。ヘテロロガス構
造配列は、翻訳開始および終結配列、また好ましくは、翻訳されたタンパク質の
細胞周辺腔または細胞外媒体への分泌を行わせることができるリーダー配列と共
に、適当な相(phase)で構築される。場合により、そのヘテロロガス配列は、所
望の特性、例えば、発現された組換え生成物の安定化または精製の簡易化を与え
るN−末端同定ペプチドが含まれる融合タンパク質をコードすることができる。
細菌で使用するのに有用な発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構
造DNA配列を、適当な翻訳開始および終結シグナルと共に、機能的なプロモー
ターを有する作動可能なリーディング相に挿入することにより構築される。その
ベクターは、ベクターの維持を確実なものとするために、また所望により、宿主
内での増幅を与えるために、1つまたはそれ以上の表現型の選択可能なマーカー
および複製開始点を含んでなるであろう。トランスフォーメーションに適当な原
核宿主には、E.coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、並びに
Pseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphylococcus属の範囲内の様々な
種が含まれるが、他のものもまた、選択物質として使用することができる。
代表的であるが、非限定的な例として、細菌で使用するのに有用なベクターは
、周知のクローニングベクターpBR322(ATCC37017)の遺伝要素を
含んでなる市販のプラスミドから得られる、選択可能なマーカーおよび細菌の複
製開始点を含んでなり得る。そのような市販のベクターには、例えば、pKK2
23−3(Pharmacia Fine Chemicals,,Uppsala、スウェーデン)およびGE
M1(Promega Biotec、Madison、WI、米国)が含まれる。これらのpBR3
22「骨核」部分を適当なプロモーターおよび発現されるべき構造配列と組み合わ
せる。
適当な宿主株をトランスフォーメーションして、その宿主株を適当な細胞密度
まで増殖させた後、選択されたプロモーターを適当な方法(例えば、温度シフト
または化学誘導)により誘導して、細胞をさらなる期間培養する。
細胞を、一般的には、遠心分離により収集し、物理的または化学的方法により
破壊して、その結果得られた粗製の抽出物を更なる精製のために保有する。
タンパク質の発現に使用される微生物細胞は、凍結−解凍サイクル、音波処理
、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含め、いずれの従来法によっても破壊
でき、そのような方法は、当業者に周知である。
組換えタンパク質を発現させるために、様々な哺乳動物細胞培養系もまた使用
することができる。哺乳動物発現系の例には、Gluzman、Cell、23:175
(1981)により記載されている、サルの腎臓線維芽細胞のCOS−7系、お
よび適合可能なベクターを発現させることができる他の細胞系、例えば、C12
7、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞系が含まれる。哺乳動物発現ベク
ターは、複製開始点、適当なプロモーターおよびエンハンサー、またいずれかの
必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアク
セプター部位、転写終結配列、および5'に隣接する非転写配列もまた含んでな
るであろう。SV40のスプライシングから得られるDNA配列、およびポリア
デニル化部位を使用して、必要とされる非転写遺伝要素を与えることができる。
DNAリガーゼIIIポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈降
、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロース
クロマトグラフィー、疎水的相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロ
マトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチン
クロマトグラフィーが含まれる方法により、組換え細胞培養物から回収して、精
製することができる。必要に応じて、タンパク質の再生工程を、成熟タンパク質
の立体配置を完成するのに使用することができる。最後に、高性能液体クロマト
グラフィー(HPLC)を最終精製工程に使用することができる。
本発明のポリペプチドは、天然に精製された産物、もしくは化学合成法の産物
であり得るか、または原核もしくは真核宿主から(例えば、培養物中の細菌、酵
母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞によって)組換え技術により製造するこ
とができる。組換え製造方法で使用する宿主により、本発明のポリペブチドは、
グリコシル化され得るか、またはグルコシル化され得ない。本発明のポリペプチ
ドにはまた、最初のメチオニンアミノ酸残基が含まれ得る。
該DNAリガーゼポリペプチド、並びにポリペプチドであるアゴニストおよび
アンタゴニストはまた、「遺伝子治療」と呼ばれることが多い、そのようなポリ
ペブチドのインビボにおける発現により、本発明に従って使用することもできる
。
従って、例えば、患者由来の細胞を、エクスビボにおいてポリペプチドをコー
ドするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)で操作した後、操作した細胞を該
ペプチドで処置すべき患者に与える。そのような方法は、当業界で周知であって
、本明細書中の教示から明らかである。例えば、本発明のポリペプチドをコード
するRNAを含むレトロウイルス粒子の使用により、公知の方法により、細胞を
操作することができる。
同様に、例えば、当業界で既知の方法により、ポリペプチドのインビボにおけ
る発現のために、細胞をインビボにおいて操作することができる。例えば、細胞
をインビボにおいて操作して、ポリペプチドをインビボにおいて発現させるため
に、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含むレトロウイルス粒子を製造
するための産生細胞を患者に投与することができる。そのような方法により本発
明のポリペプチドを投与するためのこれらの方法および他の方法は、本発明の教
示から当業者に明らかであろう。例えば、細胞を操作するための発現ビヒクルは
、レトロウイルス以外のもの、例えば、適当な運搬ビヒクルと組み合わせた後、
細胞をインビボにおいて操作するために使用することができるアデノウイルスで
あってもよい。
DNAリガーゼIIIポリペプチドが遺伝子治療を介して細胞内でひとたび発現
されると、DNA損壊剤、例えばUV照射により生ずるDNAの一本鎖切断を修
復するのに用い得る。いくつかのヒトの症候群はDNAリガーゼ遺伝子の常染色
体劣性遺伝から生ずる。これらの症候群は重篤な免疫不全を起こし、DNAが修
復されないため異常な細胞分化になりやすさを大いに増加させ、一方細胞レベル
ではそれらは染色体の不安定性およびDNA損壊剤に対する過度の感受性により
特徴付られる。これらの症候群にはFanconi貧血およびBlackfan-diamond貧血
がある。
本発明のポリペプチドを用いて、DNAIII遺伝子の欠陥の結果である重篤な
免疫抑制およびDNA再結合欠陥から生じる発育を妨げられた増殖およびリンパ
腫を処置し得る。
同様に、本発明のポリヌクレオチドは、同様の生物学的活性を有する他の分子
を同定するのにも有用である。これについてのスクリーニングの例は、オリゴヌ
クレオチドプローブを合成するために公知のDNA配列を用いることによりDN
AリガーゼIII遺伝子のコード鎖を単離することである。本発明の遺伝子の配列
に相補的な配列を有する標識したオリゴヌクレオチドを用いて、ヒトcDNA、
ゲノムDNAまたはmRNAライブラリーをスクリーニングし、ライブラリーの
どのメンバーにプローブがハイブリダイズするか決める。
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、科学研究、DNAの合成に
関して、およびDNAベクターの製造のためにも用い得る。本発明のポリペプチ
ドおよび/またはポリヌクレオチドは研究市場で販売し得る。例えばDNAリガ
ーゼIIIを、他のリガーゼに類似する方法でDNA配列のin vitroinライゲーシ
ョンに用い得る。
本発明はヒトDNAリガーゼIIIにより触媒されるDNA結合反応を促進し(
アゴニスト)、また妨げる(アンタゴニスト)化合物を同定する、化合物スクリ
ーニング方法を提供する。そのような方法の例は、ATP、DNAリガーゼおよ
び一本鎖破断点を有するDNAを該化合物と、DNAリガーゼがATPをAMP
に正常に分解し、そのAMPが二本鎖DNAの一本鎖破断点の5'リン酸末端に
移り、共有結合性DNA−AMP複合体を生じ、一本鎖破断点がその後修復する
ような条件下に混合することを含んでなる。一本鎖破断点を有するDNAは変異
体細胞により上記例で提供され、その細胞は鎖破断修復に働くタンパク質を欠い
ており、例えばXRCCIを欠く変異体ゲッ歯類細胞、およびcdc9S、Cerevi
siaeDNAリガーゼ変異体である。この反応の触媒を促進し、または妨げる化合
物の能力を次に測定し、化合物が有効なアゴニストまたはアンタゴニストである
かを決める。
ヒトDNAリガーゼIIIは細胞内で産生され、機能する。それ故いずれのアン
タゴニストも細胞内性でなければならない。ヒトDNAリガーゼIIIに対する可
能性あるアンタゴニストには、細胞内で産生される抗体を含む、例えばDNAリ
ガーゼIIIをアンタゴナイズすると同定された抗体を、公知の方法、例えば適当
な細胞を一本鎖抗体をコードするDNAでトランスフォームし、ヒトDNAリガ
ーゼIIIの機能を阻害することにより、一本鎖抗体として細胞内で産生され得る
。
別の可能性のあるアンタゴニストは、アンチセンス技術を利用して調製された
アンチセンス構築物である。アンチセンス技術を利用して、三重らせん形成また
はアンチセンスDNAもしくはRNAによって遺伝子発現を制御することができ
、この方法は両方とも、ポリヌクレオチドのDNAまたはRNAへの結合に基づ
く。例えば、本発明の成熟ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド配列の
5'コード部分を使用して、長さ約10〜40塩基対のアンチセンスRNAオリ
ゴヌクレオチドを設計する。DNAオリゴヌクレオチドを、転写に関与する遺伝
子領域に対して相補的であるよう設計し(三重らせん−Leeら、Nucl.Acids R
es.、6:3073(1979);Cooneyら、Science、241:456(19
88);およびDervanら、Science、251:1360(1991)を参照、
そのことによって、転写およびDNAリガーゼIIIの産生を妨げる。アンチセン
スRNAオリゴヌクレオチドは、インビボにおいてmRNAにハイブリダイズし
て、mRNA分子のDNAリガーゼIIIへの翻訳をブロックする(アンチセンス−
Okano、J.Neurochem.、56:560(1991);Oligodeoxynucleotides
as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC.Press、Boca R
aton、FL(1988))。上記のオリゴヌクレオチドをまた、細胞に送り込み
、アンチセンスRNAまたはDNAをインビボにおいて発現させて、DNAリガ
ーゼ111の産生を阻害することができる。
他の可能性あるアンタゴニストには、DNAは認識するが一本鎖破断を修復せ
ず、従ってヒトDNAリガーゼIIIが機能するのを妨げるよう機能する、DNA
リガーゼIIIの変異した形、またはムテインが含まれる。
アンタゴニストを用いて望ましくない細胞、例えばがん細胞を標識化し得る。
何故ならDNAリガーゼ111の阻害はDNAにおける一本鎖破断の修復を妨げ、
事実上細胞死をもたらすからである。
本発明の小分子アゴニストおよびアンタゴニストは、適当な薬学的担体と組み
合わせて使用することができる。そのような組成物は、治療上有効な量の該化合
物、および薬学上許容され得る担体または賦形剤を含んでなる。そのような担体
には、これに限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキ
ストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが含ま
れる。その製剤は、投与方法に適合すべきである。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分を1つまたはそれ以上充填した、1
つまたはそれ以上の容器を含んでなる医薬品パックまたはキットも提供する。そ
のような容器に関連して、薬学的または生物学的製品の製造、使用または販売を
規制する政府当局により規定された形の通知を付してもよく、この通知は、ヒト
への投与のための製造、使用または販売の、該当局による承認を表わす。さらに
、本発明の医薬組成物は、他の治療化合物と共に使用することができる。
該医薬組成物は、経口、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内または
皮内経路といったような、便利な方法で投与することができる。該医薬組成物は
、具体的な徴候を治療および/または予防するのに有効な量で投与される。一般
に、それらは、少なくとも約10μg/kg(体重)の量で投与され、最も多くの場
合、それらは、1日当り約8mg/kg(体重)を超えない量で投与されるであろう。
最も多くの場合、投与経路および症状等を考慮に入れて、投薬量は、毎日約10
μg/kg〜約1mg/kg(体重)である。
完全な長さのヒトDNAリガーゼIII遺伝子のフラグメントは、完全な長さの
DNAリガーゼIII遺伝子を単離するために、また該遺伝子に対する高い配列類
似性活性を有する他の遺伝子を単離するために、cDNAライブラリーに対する
ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。この種類のプロ
ーブは、例えば、30、40、50、75、90、100または150であり得
る。好ましくは、しかし、該プローブは、30〜50塩基対を有する。該プロー
ブはまた、完全な長さの転写物、並びにゲノムクローン、または調節およびプロ
モーター領域、エキソン、およびイントロンが含まれる、完全な長さの転写物に
対応するcDNAクローンを同定するのに使用することもできる。プローブは、
ハイブリダイゼーションの同定を容易にするため標識してもよい。
本発明は診断薬としてのヒトDNAリガーゼIIIの使用をも提供する。例えば
ある病気は固有の遺伝子欠損から生ずる。これらの遺伝子は欠損遺伝子の配列を
正常なもののそれと比較することにより検出できる。すなわち変異体遺伝子をD
NA損壊剤に過度の感受性、異常な細胞増殖へのかかりやすさの増加、例えば腫
瘍および癌に関連づける。
ヒトDNAリガーゼIIIにおいて変異が起こっている個体は、様々な技術によ
り、DNAレベルで検出することができる。診断用の核酸は、患者の細胞から、
例えば、血液、尿、唾液、組織生検および剖検材料から得ることができる。ゲノ
ムDNAは、検出のために直接使用することができ、または分析前にPCR(Sa
ikiら、Nature、324:163−166(1986))を利用することにより
、酵素的に増幅することができる。RNAまたはcDNAもまた、同じ目的に使
用することができる。欠失および挿入は、正常な遺伝子型と比較しての増幅産物
のサイズの変化により検出することができる。点変異は、増幅されたDNAが、
放射能標識化DNAリガーゼIIIRNA、あるいはまた、放射能標識化DNAリ
ガーゼIIIアンチセンスDNA配列にハイブリダイズすることにより同定するこ
とができる。完全に対合している配列は、RNアーゼA消化により、または融解
温度の相違により、対合していない複合物(duplexes)と区別することができる。
DNA配列の相違に基づいた遺伝試験は、変性剤を含む、または含まないゲル
でのDNAフラグメントの電気泳動移動度における変化の検出により成し遂げる
ことができる。小さな配列の欠失および挿入は、高分解能ゲル電気泳動により視
覚化することができる。DNAフラグメントの様々な配列は、ホルムアミジング
ラジエントゲルを変性することで区別することができ、ここでは、様々なDNA
フラグメントの移動度が、それらの特異的な融解または部分的な融解温度により
、ゲルにおける様々な位置で遅延される(例えば、Myersら、Science、230
:1242(1985)を参照)。
特定の位置での配列変化もまた、RNアーゼおよびS1保護といったようなヌ
クレアーゼ保護アッセイ、または化学切断法により示すことができる(例えば、
Cottonら、PNAS、USA、85:4397−4401(1985))。
従って、特異的なDNA配列の検出は、ゲノムDNAのハイブリダイゼーショ
ン、RNアーゼ保護、化学切断、直接DNA配列決定、または制限酵素の使用(
例えば、制限酵素断片長多型(RFLP))、およびサザンブロッティングとい
ったような方法により成し遂げることができる。変異体はin situ分析により検
出し得る。
更にある病気は、mRNAにおける変化により検出できる遺伝子発現の変化の
結果であり、またはそれにより特徴付けできる。或いはDNAリガーゼIIを比較
として用い、低レベルのDNAリガーゼIIIタンパク質を発現する個体を、例え
ばNorthernブロッティングにより同定できる。
本発明の配列はまた、染色体同定にも有益である。その配列を個々のヒト染色
体上の特定の位置に対して具体的に標的化して、ハイブリダイズさせることがで
きる。そのうえ、現在、染色体上の特定の部位を同定する必要がある。実際の配
列データ(反復多型性)に基づいた染色体マーキング試薬は、現在、染色体位置を
マークするのにはほとんど利用できない。本発明によるDNAの染色体へのマッ
ピングは、それらの配列を病気と関連する遺伝子と関係づける重要な第一段階で
ある。
簡単に言えば、cDNA由来のPCRプライマー(好ましくは、15−25bp)
を調製することにより、配列を染色体にマップすることができる。cDNAのコ
ンピューター分析を利用して、ゲノムDNA中の1つ以上のエキソンをスパン(s
pan)しないプライマーを迅速に選択することから、増幅過程を複雑なものとする
。次いで、これらのプライマーを、個々のヒト染色体を含む体細胞ハイブリッド
のPCRスクリーニングに使用する。プライマーに対応するヒト遺伝子を含む、
それらのハイブリッドのみが、増幅されたフラグメントを与えるであろう。
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定のDNAを特定の染色体に帰
属させるための迅速な方法である。同じオリゴヌクレオチドプライマーを用いて
の本発明を利用して、サブローカリゼーションは、具体的な染色体または大きい
ゲノムクローンのプール由来のフラグメントのパネルを用いる類似の方法で達成
することができる。その染色体へマップするのに同様に利用することができる他
のマッピング方法には、in situハイブリダイゼーション、標識化フロー−ソー
ティッド(flow−sorted)染色体を用いてのプレスクリーニング、および染色体特
異的cDNAライブラリーを構築するためのハイブリダイゼーションによるプレ
セレクションが含まれる。
cDNAクローンの、中期染色体スプレッドへの蛍光in situハイブリダイゼー
ション(FISH)を利用して、正確な染色体位置を一工程で与えることができる
。この技術は、500または600塩基という短いcDNAで利用することがで
きる;しかし、2,000bpより大きいクローンは、簡単な検出に十分なシグナ
ル強度を有する独自の染色体位置へ結合する可能性が高い。FISHは、発現配
列タグ(EST)が得られるクローンの使用を必要とし、また長ければ長いほどよ
い。例えば、2,000bpが良好であり、4,000はより良好であって、4,0
00以上は、恐らく、良好な結果を妥当な時間割合で得るのに必要ない。この技
術の復習には、Vermaら、Human Chromosomes:a Manual of Basic Techni
ques、Pergamon Press、ニューヨーク(1988)を参照。
ある配列が正確な染色体位置に一度マップされると、染色体上の配列の物理的
位置を遺伝マップデータと関連付けることができる。そのようなデータは、例え
ば、V.McKusick、Mendelian Inheritance in Man(Johns Hopkins Univ
ersity Welch Medical Libraryを介してオンラインで利用できる)に見い出さ
れる。次いで、同じ染色体領域にマップされている遺伝子と疾患との間の関係を
結合分析(物理的に隣接した遺伝子の共遺伝(coinheritance))によって確認する
。本発明の遺伝子は染色体13q33−34にマップされた。
次に、病気に冒された個体と冒されていない個体との間のcDNAまたはゲノ
ム配列の相違を決定する必要がある。変異が、冒された個体のいくつかまたは全
てにおいて認められるが、いずれの正常な個体においても認められないなら、そ
の変異は疾患の原因となるものであるらしい。
現在、物理的マッピングおよび遺伝的マッピングの分析から、疾患と関連する
染色体領域に正確に局在化したcDNAは、50〜500の可能な原因となる遺
伝子の1つとなり得るであろう。(これは、1メガベースのマッピング分析およ
び20kb当り1つの遺伝子を仮定する)。
ポリペプチド、それらのフラグメントもしくは他の誘導体、もしくはそれらの
アナログ、またはそれらを発現する細胞を免疫源として使用して、それらに対す
る抗体を製造することができる。これらの抗体は、例えば、ポリクローナルまた
はモノクローナル抗体であり得る。本発明にはまた、キメラ、単鎖、およびヒト
化抗体、さらにはまた、Fabフラグメント、またはFab発現ライブラリーの生成
物も含まれる。当業界で既知の様々な方法を、そのような抗体およびフラグメン
トの製造に使用することができる。
本発明の配列に対応するポリペプチドに対して生成される抗体は、ポリペプチ
ドを動物に直接注入することにより、またはポリペプチドを動物、好ましくはヒ
トでない動物に投与することにより得ることができる。次いで、そのようにして
得られた抗体は、そのポリペプチド自体に結合するであろう。この方法では、ポ
リペプチドのフラグメントのみをコードする配列さえも、完全な天然のポリペプ
チドを結合する抗体を製造するのに使用することができる。次いで、そのような
抗体を使用して、そのポリペプチドを発現する組織からポリペプチドを単離する
ことができる。
モノクローナル抗体を調製するには、連続的な細胞系培養により産生される抗
体を与える技術を全て使用することができる。例には、ハイブリドーマ技術(Ko
hlerおよびMilstein、1975、Nature、256:495−497)、トリオ
ーマ(trioma)技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983、Imm
unology Today 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を製造するためのE
BV−ハイブリドーマ技術(Coleら、1985、Monoclonal Antibodies and
Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、77−96頁において)が含まれる
。
単鎖抗体の産生に関して記載されている技術(米国特許第4,946,778号)
は、本発明の免疫原性ポリペプチド産物に対する単鎖抗体を製造するのに適合し
得る。
本発明をさらに、以下の実施例に関して記載する;しかし、本発明は、そのよ
うな実施例に限定されないことを理解すべきである。部または量は全て、特にこ
とわらない限り、重量単位である。
以下の実施例の理解を容易にするために、幾つかの頻繁に出てくる方法および
/または用語を記載する。
「プラスミド」は、前置きする小文字のpおよび/または続けて大文字および
/または数字により示す。本明細書中の出発プラスミドは、市販されていて、限
定されない基盤の下に公に入手可能であるか、または公開された方法により入手
可能なプラスミドから構築できる。さらに、記載したプラスミドと同等のプラス
ミドは、当業界で既知であって、当業者に明らかであろう。
DNAの「消化」は、DNAのある配列にのみ作用する制限酵素でDNAを触
媒切断することを示す。本明細書中で使用する様々な制限酵素は市販されており
、それらの反応条件、補因子および他の必要条件は、当業者に知られているよう
に使用した。分析目的には、一般的に、緩衝溶液約20μl中、1μgのプラスミ
ドまたはDNAフラグメントを約2単位の酵素と共に使用する。プラスミド構築
のためのDNAフラグメントを単離する目的には、一般的に、より多量の体積中
、DNA5〜50μgを20〜250単位の酵素で消化する。特定の制限酵素に
適当な緩衝液および基質量は、製造者により指定されている。37℃で約1時間
のインキュベーション時間が通常利用されるが、供給者の指示に従って変えるこ
とができる。消化後、その反応物をポリアクリルアミドゲルで直接電気泳動して
、所望のフラグメントを単離する。
切断したフラグメントのサイズ分離は、Goeddel,Dら、Nucleic Acids Re
s.、8:4057(1980)により記載されている8%ポリアクリルアミドゲ
ルを用いて行う。
「オリゴヌクレオチド」は、化学的に合成することができる、一本鎖ポリデオ
キシヌクレオチド、または2つの相捕的ポリヌクレオチド鎖を示す。そのような
合成オリゴヌクレオチドは5'ホスフェートを有さないことから、キナーゼの存
在下、ATPでホスフェートを加えることなしには、別のオリゴヌクレオチドに
ライゲートしないであろう。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていな
いフラグメントにライゲートするであろう。
「ライゲーション」は、2つの二本鎖核酸フラグメントの間にホスホジエステ
ル結合を形成する過程をいう(Maniatis,T.ら、同上、146頁)。特にことわ
らない限り、ライゲーションは、ライゲートさせるべきDNAフラグメントのほ
ぼ等モル量の0.5μg当り10単位のT4DNAリガーゼ(「リガーゼ」)と共に
、既知の緩衝液および条件を用いて成し遂げることができる。
特にことわらない限り、トランスフォーメーションは、Graham,F.およびVa
n der Eb,A.、Virology、52:456−457(1973)の方法に記載さ
れているようにして行った。
実施例1
DNAリガーゼIIIの細菌における発現と精製
DNAリガーゼIIIをコードするDNA、ATCC#75880をプロセシン
グされたDNAリガーゼIIIタンパク質の5'配列に対応するPCRオリゴヌクレ
オチドプライマーを用いて最初に増幅する。その5'オリゴヌクレオチドプライ
マーは配列:
を有し、Bam HI制限酵素部位(下線)、続いてプロセシングされたタンパク
質コドンの推定の末端アミノ酸から出発するDNAリガーゼIIIコード配列の2
1ヌクレオチドを含む。
という3′配列は、PstI部位(下線)に対する相補的な配列を含み、DNAリ
ガーゼIIIのC末端のDNAリガーゼIIIの21ヌクレオチドが続く。その制限酵
素部位は細菌発現ベクターpQE−9(Qiagen,Inc.9259 Eton Aven
ue,Chatsworth,CA,91311)の制限酵素部位に対応する。pQE−9は
抗生物質耐性(Ampr)、細菌の複製起源(ori)、IPTG調節可能なプロモータ
ーオペレーター(P/O)、リボソーム結合部位(RBS)、6−Hisタグおよび制
限
酵素部位をコードする。pQE−9を次にBam H1およびPSTIで消化する。
増幅した配列をpQE−9にライゲートし、ヒスチジンのtagおよびRBSをコー
ドする配列と共に枠内に挿入する。ライゲーション混合物を用いて、Qiagenか
ら商標M15/rep4の名前で入手できるE.coli株M15/rep4を、Sambroo
k,J等、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring
Laboratory Press(1989)に記載された方法によりトランスホームす
る。M15/rep4はプラスミドpREP4の多重コピーを有し、該プラスミドは
lacIリプレッサーを発現し、カナマイシン耐性(Kanr)も与える。トランスホ
ーマントを、LBプレートで増殖するその能力により同定し、アンピシリン/カ
ナマイシン耐性コロニーを選択する。プラスミドDNAを単離し、制限分析によ
り確認する。所望の構築物を有するクローンを、Amp(100μg/ml)およびk
an(25μg/ml)の両方を補ったLB培地で液体培養で一晩(O/N)増殖さ
せる。そのO/N培養を用いて、大量培養物を1:100〜1:250の割合で
接種する。細胞を0.4〜0.6の間の光学密度600(O.D.600)まで増殖さ
せる。IPTG(イソプロピル−B−D−チオガラクトピラノシド)を最終濃度
1mMになるまで次に加える。IPTGはlacIリプレッサーを不活性化し、P/
Oをクリアリングして遺伝子発現の増加をもたらすことによって誘導する。細胞
をさらに3〜4時間増殖させる。次に細胞を遠心分離により収穫する。細胞ペレ
ットをカオトロピック剤6モルグアニシジンHClで可溶化する。清澄後可溶化
タンパク質抽出物を、以下の条件下にニッケル−キレートカラムでのクロマトグ
ラフィーによりこの溶液から精製する。その条件は6−His tagを含むタンパク
質による強固な結合を可能にするものであり(Hochuli,E等、J.Chromatogr
aphy 411:177−184(1984))、そのカラムから6モルのグアニ
シジンHCl pH5で溶出し、再生のために3モルグアニジンHCl、1.00m
Mリン酸ナトリウム、10ミリモルのグルタチオン(還元形)、および2ミリモル
のグルタチオン(酸化形)で調節する。この溶液で12時間インキュベーション
後、タンパク質を10ミリモルのリン酸ナトリウムに対し透析する。
実施例2 バキュロウイルス発現系を用いるDNAリガーゼIIIのクローニングおよび発現
完全長のDNAリガーゼIIIタンパクをコードするDNA配列、ATCC#7
5880を、その遺伝子の5′および3′配列に対応するPCRオリゴヌクレオ
チドプライマーを用いて増幅する。
5′プライマーは配列:
を有し、Sma I制限酵素部位(太線)、およびそれに続く真核細胞中での翻訳開
始のための有効シグナルに似た21ヌクレオチドが続く(Kozak,M.,J.Mol
.Biol.,196:947−950,(1987))。(翻訳開始コドンATGには
下線を引く)。
3′プライマーは配列:
を有し、制限エンドヌクレアーゼAsp718開裂部位(太線)およびDNAリガ
ーゼIII遺伝子のC末端配列に相補的な21ヌクレオチドを有する。増幅した配
列を商業的に入手できるキット(「Geneclean」BIO 101 Inc.,La J
olla,Ca)を用いて1%アガロースゲルから単離した。その断片を制限エンド
ヌクレアーゼSma IおよびAsp718で次に消化し、次に1%アガロースゲル
で再度精製した。この断片をF2と名付ける。
ベクターpRG1(pVL941ベクターの改変物、以下で論ずる)を、バキュ
ロウイルス発現システム(総説については、Summers,M.D.およびSmith,G
.E.1987,A manual of methods for baculovirus rectors and
insect cell culture procedures,Texas Agricultural Experimenta
l Station Bulletin No 1555を参照)を用いるDNAリガーゼIIIタ
ンパク質発現に用いる。この発現ベクターはAutographa california nuclear
polyhedrosis virus(AcMNPV)の強力なポリヘドリンプロモーター、お
よびその後に制限エンドヌクレアーゼSma IおよびAsp718の認識部位を含
む。サルウイル(SV)40のポリアデニル化部位を有効なポリアデニル化のた
めに
用いる。組換えウイルスの選択を容易にするためにE.coliからのβ−ガラクトシ
ダーゼ遺伝子をポリヘドリンプロモーターと同じ方向に挿入し、ポリヘドリン遺
伝子のポリアデニル化シグナルが続く。そのポリヘドリン配列の両側にコトラン
スフェクトされる野性型ウイルスDNAの細胞媒介ホモロガス組換えのためのウ
イルス配列を隣接させる。多くの他のバキュロウイルスベクターをpAc373、
pVL941およびpAcIM1等pRG1の代りに用い得るであろう(Luckow,V
.A.およびSummers,M.D.,Virology,170:31−39)。
そのプラスミドを制限酵素Sma IおよびAsp718で消化し、ウシの腸ホス
ファターゼを用いて公知の方法により脱ホスホリル化する。そのDNAを商業的
に入手できるキット(「Gene clean」BIO 101 Inc.,La Jolla,C
a)を用いて1%アガロースゲルから次に単離できる。このベクターをV2と呼
ぶ。
断片F2および脱ホスホリル化プラスミドV2をT4DNAリガーゼでライゲ
ートした。E.coli HB101細胞を次にトランスフォームし、酵素Sma Iお
よびAsp718を用いてDNAリガーゼIII遺伝子を有するプラスミド(pBac
DNAリガーゼIII)を含む細菌を同定する。クローン化した断片の配列をDN
A配列決定により確認する。
プラスミドpBacDNAリガーゼIII5μgを、商業的に入手できる線形化バク
ロウイルス1.0μg(「Baculo Gold、バキュロウイルスDNA」、Pharming
en,San Diego CA)でリポフェクション法(Felgner等、Proc.Natl.
Acad.Sci.USA,84:7413−7417(1987)を用いてコトラ
ンスフェクトした。
1μgのBaculo GoldウイルスDNAおよび5μgのプラスミドpBac DNA
リガーゼIIIを、50μlの血清を含まないGrace培地(Life Technologies
Inc,Gaithersburg、MD)を含むマイクロタイタープレートの滅菌ウエル中
で混合する。その後10μlのリポフェクチンおよび90μlのGrace培地を加え
、混合し、室温で15分インキュベートする。次にトランスフェクション混合物
を、血清を含まない1mlのGrace培地を有する35mmの組織培養プレートに接種
したSf9昆虫細胞(ATCC CRL 1711)に滴下する。そのプレートを
前後
にゆすり、新しく加えた溶液を混合する。そのプレートを次に27℃で5時間イ
ンキュベートする。5時間後トランスフェクション溶液をプレートから除き、1
0%ウシ胎児血清を補ったGraceの昆虫培地1mlを加える。そのプレートをイン
キュベートに戻し、培養を27℃で4日間続ける。
4日後、上清を集め、プラーク検定をSummersおよびSmith(上記)に記載と
同様に行う。一変形として「Blue Gal」(Life Technologies Inc.,G
aithersburg)を用い、青色に染色されたプラークの単離を行う。(「プラーク検
定」の詳細な記述は、Life Technologies Inc.,Gaithersburg,9−10
頁により配布された昆虫細胞培養およびbaculovirologyのためのユーザスガイド
にも見出すことができる)。
ウイルスの連続希釈の4日後、細胞に加え、青色に染色されたプラークをエッ
ペンドルフピペットのチップで選ぶ。組換えウイルスを有する寒アガーを次に2
00nlのGrace培地を含むエッペンドルフ管に再懸濁する。アガーを短時間の遠
心分離により取り除き、組換えバキュロウイルスを含む上清を用いて、35mmデ
イッシュに接種したSf9細胞に感染させる。4日後、これらの培養皿の上清を
集めて4℃で貯蔵する。
Sf9細胞を10%の熱不活性化FBSを補ったGrace培地中で培養する。そ
の細胞を組換えバキュロウイルスV−DNAリガーゼIIに感染多重度(MOI)
2で感染させる。6時間後、培地を取り除き、メチオニンおよびシステインを除
いたSF900II培地で置換する(Life Technologies Inc.,Gaithersburg
)。42時間後、5μCiの35S−メチオニンおよび5μCiの35S−システイン
(Amersham)を加える。更にその細胞を16時間インキュベートした後、遠心
分離により収穫し、標識化されたタンパク質をSDS−PAGEおよびオートラ
ジオグラフィーにより視覚化する。
実施例3
COS細胞における組換えDNAリガーゼの発現
プラスミドDNAリガーゼIII HAの発現は、1)SV40複製起源 2)ア
ンピシリン耐性遺伝子 3)E.coli複製起源 4)CMVプロモーターとそれ
に続くポリリンカー領域、SV40イントロンおよびポリアデニル化部位を含む
ベクターpcDNAI/Amp(Invitrogen)に由来する。完全なDNAリガーゼI
II前駆体およびその3'末端に枠内で融合されたHAtagをコードするDNA断片
をベクターのポリリンカー領域にクローンし、それ故組換えタンパク質発現をC
MVプロモーター下に置く。HAtagは上記のようにインフルエンザヘマググル
チニンタンパク質に由来するエピトープに対応する(I.Wilson,H.Niman,R.
Heighten,A.Cherenson,M.ConnollyおよびR.Lerner,Cell 37:767(1984))
。HAtagの標的タンパク質への融合により、HAエピトープを認識する抗体を
用いた組換えタンパク質の検出が容易になる。
プラスミド構築戦略を次の如く記述できる:
DNAリガーゼIIIをコードするDNA配列ATCC#75880を、2つのプ
ライマーを用いてクローン化された元のEST上でのPCRにより構築する。5
'プライマー:
は、EcoRI部位(下線)およびそれに続く開始コドンから出発するDNAリガ
ーゼIIIコード配列の21のヌクレオチドを含む。3'配列:
は、XhoI部位(下線)に相捕的な配列、翻訳停止コドン、HAtagおよびDN
AリガーゼIIIコード配列(停止コドンを含まず)の最後の21ヌクレオチドを
含む。それ故、そのPCR産物はEcoRI部位、DNAリガーゼIIIコード配列
、それに続く枠内に融合したHAtag、HAtagに隣接した翻訳終了停止コドンお
よびXhoI部位を含む。そのPCR増幅DNA断片およびベクターpcDNAI/
AmpをEcoRIおよびXhoI制限酵素で消化し、ライゲートする。ライゲーショ
ン混合物をE.coli株SURE(Stratagene Cloning Systems,11099 North
Terrey Pines Road,La Jolla CA92037から入手可能)にトランスホーム
し、トランスホームした培養物をアンピシリン培地のプレートにプレートし耐性
コロニーを選択する。プラスミドDNAをトランスホーマントから単離し、制限
分析により正しい断片の存在について調べる。組換えDNAリガーゼIIIの発現
のためにCOS細胞をその発現ベクターでDEAE−DEXTRAN法によりト
ランスフェクトする(J.Sambrook,E.Fritsch,T.Maniatis,Molecular Cl
oning:A Laboratory Manual,Cold Spring Laboratry Press(1989))。
DNAリガーゼIIIHAタンパク質の発現を、放射標識および免疫沈降法により
検出する(E.Harlow,D.Lane,Antibodies:A Laboratory Mannual,Cold Spring Ha
rbor Laboratory Press,(1988))。細胞をトランスフェクション2日後に35S−
システインで8時間標識する。媒地を集め、細胞を洗剤で溶菌する(RIPA緩
衝液(150mM NaCl、0.1%SDS、1%NP−40、0.5%DOC、
50mM Tris,pH7.5)(Wilson,I等、上書37:767(1984))。細胞溶菌物
および媒地の両方をHA特異的なモノクローナル抗体を用いて沈殿させる。沈殿
したタンパク質を15%SDS−PAGEゲルで分析する。
実施例4
ヒト組織におけるDNAリガーゼIIIの発現パターン
ノーザンブロット分析を行いヒト組織におけるDNAリガーゼIIIの発現レベ
ルを調べ得る。全細胞RNA試料をRNAzol Bシステムを用いて単離する(B
iotecx Laboratories,Inc.6023 South Loop East,Houston,TX77033)。
特定した各ヒト組織から単離した全RNA約15μgを1%アガロースゲルで分
離し、ナイロンフィルターにブロットする(Sambrook,FrischおよびManiatis
,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Press(1989))。標識化反応を
、50μgのDNA断片を用いてStratagene Prime−Itキットに従って行う
。その標識したDNAをSelect−G−50カラムを用いて精製する(5プライ
ム−3プライム,Inc.5603 Arapahoe Road,Boulder,CO80303)。個々のR
NAブロットを含むフィルターを放射活性の標識した完全長DNAリガーゼIII
遺伝子と、1,000,000 cpm/mlで、0.5M NaPO4、pH7.4および7%SD
S中で一晩65℃でハイブリダイズする。0.5×SSC、0.1%SDSで室温
で2回および60℃で2回洗浄後、そのフィルターを−70℃で一晩インテンシ
ファ
イングスクリーンにさらす。DNAリガーゼIIIのメッセージRNAは胸腺、精
巣および心臓に豊富である(第3図参照)。
本発明の多くの改変および変形が上の教示に照らして可能である。それ故請求
の範囲内で本発明を特に記載した方法以外の方法で実施し得る。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C07K 16/40 C12N 9/88
C12N 1/21 9/99
5/10 G01N 33/50 T
9/88 33/53 D
9/99 C12N 5/00 B
G01N 33/50 A61K 37/02 ABA
33/53 ACC
//(C12N 1/21
C12R 1:19)
(C12N 5/10
C12R 1:91)
(C12N 9/88
C12R 1:19)