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JPH0965836A - α−グルコシダーゼ阻害剤、それを含む糖組成物、甘味料、食品及び飼料 - Google Patents

α−グルコシダーゼ阻害剤、それを含む糖組成物、甘味料、食品及び飼料

Info

Publication number
JPH0965836A
JPH0965836A JP7246722A JP24672295A JPH0965836A JP H0965836 A JPH0965836 A JP H0965836A JP 7246722 A JP7246722 A JP 7246722A JP 24672295 A JP24672295 A JP 24672295A JP H0965836 A JPH0965836 A JP H0965836A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sugar
action
food
glucosidase inhibitor
slow
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP7246722A
Other languages
English (en)
Inventor
Toru Doge
徹 道下
Mitsuo Obara
光夫 小原
Hitoshi Okuda
等 奥田
Tokuo Shiomi
▲徳▼夫 塩見
Shuichi Onodera
秀一 小野寺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
HOKUREN
HOKUREN FEDERATION OF AGRICULT COOP
Original Assignee
HOKUREN
HOKUREN FEDERATION OF AGRICULT COOP
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by HOKUREN, HOKUREN FEDERATION OF AGRICULT COOP filed Critical HOKUREN
Priority to JP7246722A priority Critical patent/JPH0965836A/ja
Publication of JPH0965836A publication Critical patent/JPH0965836A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小腸の微絨毛に局在するα−グルコシダーゼ
を緩慢に阻害するα−グルコシダーゼ阻害剤と、その阻
害剤を含む糖を主体とする組成物、食品、甘味料、飼料
を提供する。この阻害剤はデンプン、デンプン由来のオ
リゴ糖類及びシュークロースの消化を遅延させ、その結
果、血糖値の急激な上昇を抑え、インシュリン分泌を低
く抑える作用を有するので、肥満、糖尿病予防に有用で
ある。 【解決手段】 本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は植
物性蛋白質又は動物性蛋白質を加水分解して得られる加
水分解物を有効成分とする。このα−グルコシダーゼ阻
害剤は、小腸の消化酵素であるα−グルコシダーゼの作
用を緩慢に阻害し、急激な血糖値の上昇を抑制し、イン
シュリンの分泌を低く抑える効果がある。このα−グル
コシダーゼ阻害剤は、消化性糖と組合せることにより、
食品、甘味料、飼料として利用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、α−グルコシダー
ゼを緩慢に阻害し、デンプン、デンプン由来のオリゴ糖
類及びシュークロースの消化を遅延させ、その結果、血
糖値の急激な上昇を抑え、インシュリン分泌を低く抑え
る作用を有するα−グルコシダーゼ阻害剤、それを含む
糖を主体とする組成物、甘味料、食品及び飼料に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、植物繊維の多い炭水化物を増やし
た食事を摂取すると、腸からの栄養素の吸収が穏やかに
なり、食後の血糖値の上昇を抑制し、インシュリン分泌
を低く抑えることができ、肥満・糖尿病等の成人病の予
防になることが報告されている〔Dr.Denis Burkitt著
「Don't forget fibre in your diet (日本語訳;昭和
58年5月25日中央公論社発行の“食物繊維で現代病
は予防できる”125−137頁)」、昭和57年5月
15日第一出版株式会社発行の著書「食物繊維」271
−286頁参照〕。しかしながら、前記食物繊維は広範
な食品に自由に添加混合できる糖とは異なり、種々の食
品に対する利用に制約があった。例えば、食物繊維自体
は甘味がなく、コーヒーやジュース等の飲料やケーキや
お菓子類に用いる甘味料又は甘味素材として用いること
はできない。
【0003】また近年、α−グルコシダーゼ阻害剤を投
与すると、α−グルコシダーゼ阻害剤が小腸の微絨毛に
局在するα−グルコシダーゼを阻害し、食後の血糖値の
急上昇及びそれに続くインシュリン値の急上昇を抑制す
ることが知られている(例えば、特開昭52−1223
42号公報、DIABETIC MEDICINE, 1993;10:688-693,134
-138, Am,J.Clin.Nutr.1992;55:318S-9S 、特開昭57−
200335号公報、A m,J.Clin.Nutr.1992;55:314S-7
S 、 特開昭57−59813号公報参照)。このような
α−グルコシダーゼ阻害剤のうち、アカルボースはイン
シュリン非依存型糖尿病(略語:NIDDM)用の経口
糖尿病治療薬として用いられている。しかしながら、こ
れらの物質は本来生体に対して異物であって、安全性に
ついては懸念が残されており、使用量について厳しい規
定が定められている。
【0004】また、難消化性或いは低消化性のオリゴ糖
として、フラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖等、或い
はデンプン加水分解物や他のオリゴ糖の糖アルコール類
(例えば、マルチトールやマルトオリゴ糖の糖アルコー
ル類、イソマルトースとそのオリゴ糖の糖アルコール
類、還元パラチノースやラクチトール)は、それ自体が
難消化性、低消化性のため血糖値の上昇が少ない甘味料
として従来使用されている。しかし、これら血糖値の上
昇が少ない甘味料として使用されていた難消化性或いは
低消化性のオリゴ糖は、使用量を誤ると下痢を誘発しや
すい等の欠点があった。
【0005】また、糖質の吸収抑制作用を有するインド
産ギムネマシルベスタを原料とする血糖値上昇抑制を目
的とする飲食物が、特開昭61−5023号公報、特開
昭63−208532号公報に提案されている。これら
ギムネマシルベスタやギムネマイノドラムの抽出物の作
用は、糖類の吸収作用を抑制することによるものであ
り、摂取量を誤ると副作用として血糖値が下がりすぎた
り、吸収されない糖類が大腸に達し、下痢等の障害をお
こす恐れがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したように従来の
α−グルコシダーゼ阻害剤は種々の問題点があるため、
通常摂取する食物中に含まれるような物質であって、加
工特性に優れ、消化管から吸収され、体内で有効に使用
することの可能な、つまり生体にとって安全性が高く有
益なα−グルコシダーゼ阻害剤の出現が望まれていた。
【0007】そこで本発明は、小腸の微絨毛に局在する
α−グルコシダーゼを阻害する物質を検索し、食品素材
・甘味料・飼料に用いることができ、肥満・糖尿病等の
成人病の予防が可能で、またそれらの患者用に適したα
−グルコシダーゼ阻害剤、そのα−グルコシダーゼ阻害
剤を含む糖組成物、食品、甘味料、飼料を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、食品とし
て一般に摂取されている植物及び動物に由来する蛋白質
の加水分解物に注目し、それらの加水分解物にα−グル
コシダーゼ阻害作用があるかどうかについて検討した。
その結果、広範な蛋白質の加水分解物にα−グルコシダ
ーゼに対して緩慢な阻害作用を有することを発見し、さ
らに、このような加水分解物と食用の炭水化物、糖類を
併用した際に、摂取直後の急激な血糖値上昇の抑制、イ
ンシュリン分泌を低く抑える作用があることを見出し
た。このような知見を基礎にして次のような発明を完成
した。
【0009】即ち、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤
は、植物性蛋白質又は動物性蛋白質を加水分解して得ら
れる加水分解物を有効成分とするα−グルコシダーゼに
対する緩慢な阻害作用を有するα−グルコシダーゼ阻害
剤であることを特徴とする。
【0010】本発明における「緩慢な阻害作用」とは、
そのα−グルコシダーゼ阻害剤が炭水化物とともに摂取
される場合に、摂取される全炭水化物量(全糖質量)に
対して0.5〜20重量%のα−グルコシダーゼ阻害剤
が配合される量の範囲において、小腸の消化酵素α−グ
ルコシダーゼの働きを適度に阻害する作用を言う。本発
明のα−グルコシダーゼ阻害剤の使用適量が、従来知ら
れているα−グルコシダーゼ阻害剤の投与量と比較して
大量であることから、本発明のα−グルコシダーゼ阻害
剤の作用は「緩慢な阻害作用」と言える。
【0011】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤の原料
として、植物性蛋白質又は動物性蛋白質が使用され、こ
れらの蛋白質を加水分解して得られた加水分解物であれ
ば本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤として利用でき
る。前記植物性蛋白質を例示すれば、馬鈴薯蛋白質、ト
ウモロコシ蛋白質、大豆蛋白質等を挙げることができ、
また前記動物性蛋白質を例示すれば、カゼインを挙げる
ことができる。
【0012】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、シ
ュークロース、澱粉、及び澱粉由来のオリゴ糖から選ば
れた1種または2種以上の消化性糖から構成される糖と
組み合わせてなる、糖成分を主体とした糖組成物とする
ことにより、この糖組成物が人間又は動物に摂取される
とき、糖の緩慢な消化作用が行われ、かつインシュリン
分泌が低く抑えられる。
【0013】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤とシュ
ークロース、澱粉、及び澱粉由来のオリゴ糖から選ばれ
た1種または2種以上の消化性糖から構成される糖と組
み合わせてなる、糖成分を主体とした前記糖組成物は、
甘味料として使用することができ、このような甘味料
は、人体又は動物に摂取されたとき、糖の緩慢な消化作
用を有し、かつインシュリン分泌を低く抑える作用を有
する。
【0014】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、炭
水化物が主体となった食品に直接添加されて使用される
場合には、その食品が人体又は動物に摂取されるとき、
その食品に含まれる糖の緩慢な消化作用が行なわれ、且
つインシュリンの分泌を低く抑える作用が発揮される。
このような炭水化物が主体となった食品の例は、パスタ
類、麺類、パン類、クッキー類、ケーキ類、チョコレー
ト、キャンディー、チューインガム、各種菓子類、ジュ
ース・コーラ等の各種清涼飲料等の各種食品が挙げられ
る。
【0015】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤が、炭
水化物の含有量が元来少ないか或いは殆ど含まないよう
な食品に対して使用される場合、例えば、コーヒー、紅
茶、或いは各種茶等に対して、シュークロース、澱粉、
及び澱粉由来のオリゴ糖から選ばれた1種又は2種以上
の消化性糖から構成される糖とα−グルコシダーゼが組
み合わされた糖組成物又は甘味料の形態で使用すること
ができる。
【0016】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤が添加
される食品は、健康食品、糖尿病患者用食品、痩身用食
品とすることができる。また、本発明のα−グルコシダ
ーゼ阻害剤は飼料にも添加することができ、家畜、ペッ
ト等のダイエット、糖尿病予防等に用いることができ
る。
【0017】本発明の糖組成物、甘味料、食品及び飼料
において、前記のα−グルコシダーゼ阻害剤が、全糖質
量に対して0.5〜20重量%となるように配合される
ことが望ましい。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤が
0.5重量%以下であると、α−グルコシダーゼに対す
る阻害作用が充分でなく、急激な血糖値の上昇を抑制す
る効果や、インシュリン分泌を低く抑える効果がない。
また、α−グルコシダーゼ阻害剤が20重量%以上であ
ると、用途によっては呈味上の問題が生ずる場合があ
る。
【0018】
【実施例】
〔実施例1〕本実施例1は馬鈴薯、トウモロコシ、大豆
に由来する各植物性蛋白質の加水分解物及びカゼインの
加水分解物がラット小腸の消化酵素α−グルコシダーゼ
を阻害する実施例である。
【0019】基質として20mMのシュークロース及び
2%可溶性デンプン溶液を用意した。これらの基質を
0.5mlずつ試験管にとり、0.1Mリン酸緩衝液
(pH7.0)で希釈した1.5重量%濃度の馬鈴薯、
トウモロコシ、大豆に由来する各植物性蛋白質の加水分
解物及びカゼインの加水分解物を各0〜0.4ml加
え、さらに0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を0.
4〜0ml加えた。すなわち、上記加水分解物を含む
0.1Mリン酸緩衝液の全量がいずれも0.4mlにな
るようにした。これらに20mMシュークロース溶液
0.1mlとラット小腸の粗酵素液を適宜希釈して0.
1ml加え、37℃で30分間反応させた。その後、2
M Tris−HCl緩衝液(pH7.0)を2ml加
えて反応を停止し、酵素反応で生じたグルコース量をグ
ルコースオキシダーゼを用いた酵素法により定量した。
【0020】前記馬鈴薯蛋白質の加水分解物は、本発明
者が先に発明した方法(平成6年特許願第314251
号)に従って製造した。すなわち、馬鈴薯汁液を60℃
で60分間加熱し、凝固した蛋白質を遠心分離により回
収した。得られた沈澱物を3倍容積の2%水酸化ナトリ
ウム水溶液に均一に分散後、濃塩酸でpH7.0に調整
して、豚膵臓由来の蛋白質分解酵素と微生物由来の蛋白
質分解酵素を、分散液中の蛋白質量に対してそれぞれ
1.0重量%加えた。このものを45℃で120分間攪
拌しながら保持し、その後、遠心分離により上澄液のみ
を回収した。この上澄液を限外濾過膜により脱色後、イ
オン交換樹脂によりさらに精製した。この精製液を逆浸
透膜により脱塩、濃縮し、濃縮液を噴霧乾燥して加水分
解物粉末を調製した。
【0021】前記カゼイン加水分解物の調製は、加水分
解を豚膵臓由来の蛋白質分解酵素のみで行った以外は、
馬鈴薯蛋白質の加水分解物の調製方法と同様に行った。
【0022】前記トウモロコシ、大豆に由来する蛋白質
の加水分解物及びカゼインの加水分解物は市販されてい
る次の製品を用いた。
【0023】トウモロコシ蛋白質加水分解物:日本食品
化工株式会社製「ペプチーノ」 大豆蛋白質加水分解物:不二製油株式会社製「ハイニュ
ートPM」 これら蛋白質加水分解物の規格は、いずれも平成6年7
月1日公示の「たん白質酵素分解物食品規格基準」に準
ずるものであった。
【0024】また、上記酵素反応に用いた粗酵素液は次
のようにして調製した酵素液を用いた。すなわち、ラッ
トの小腸の内壁粘膜を採取し、これに5mM EDTA
を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加えてホ
モジナイズし、遠心分離により沈澱物を回収した。この
沈澱物に少量の同緩衝液を加えて懸濁し、これに1%の
Triton X−100を含む同緩衝液5倍量を加
え、5℃の低温室で60分間攪拌し酵素を抽出した。遠
心分離により沈澱物を除去し、さらに0.01Mリン酸
緩衝液(pH7.0)中で透析し、粗酵素液を得た。
【0025】その結果を基質が20mMシュークロース
の場合を図1及び基質が2%可溶性デンプン溶液の場合
を図2にグラフとして示す。図1及び図2では、反応液
中に添加した蛋白質の加水分解物の添加量を横軸に、酵
素活性を縦軸に示したが、酵素活性は基質のみと粗酵素
溶液による反応を100%として表示した。図1及び図
2のグラフに示すように、いずれの蛋白質の加水分解物
もシュークロース及び可溶性デンプンを基質にしたと
き、蛋白質の加水分解物の濃度を増加させるに従い、酵
素活性は低下する結果となった。このことから、各蛋白
質の加水分解物が消化酵素α−グルコシダーゼの反応を
阻害することがわかる。
【0026】〔実施例2〕本実施例2は、馬鈴薯に由来
する蛋白質の加水分解物が豚小腸の消化酵素α−グルコ
シダーゼを阻害する実施例である。
【0027】基質として20mMのシュークロース、マ
ルトース、イソマルトース及び2%の可溶性デンプン溶
液を用い、前記実施例1に記したと同じ方法で馬鈴薯由
来の蛋白質の加水分解物による豚小腸から調製した粗酵
素液の阻害試験を実施した。豚小腸からの粗酵素液の調
製方法は前記実施例1のラット小腸からの粗酵素液の調
製方法と同様に行った。
【0028】その結果を図3に、反応液中に添加した馬
鈴薯蛋白質の加水分解物の添加量を横軸に、酵素活性を
縦軸にしたグラフとして示す。図3より馬鈴薯蛋白質の
加水分解物は豚小腸由来の消化酵素α−グルコシダーゼ
の作用も同様に阻害することがわかる。
【0029】〔実施例3〕本実施例3は、馬鈴薯由来の
蛋白質の加水分解物による糖質負荷後の血糖値上昇抑制
作用とインシュリン分泌抑制作用を調べた実施例であ
る。
【0030】体重150gのSugague-dawley系雄ラット
を下記の表1に示した成分組成の基本食で7〜8日間予
備飼育した。飼育は1匹ずつアパートメント形式のゲー
ジで、飼料及び飲料水は自由摂取させた。飼育室内温度
は23±1℃、飼育期間中の明期を7:00〜19:0
0、暗期を19:00〜7:00までの12時間毎の明
暗2サイクルとした。
【0031】
【表1】
【0032】実施前に体重測定し、体重に極端な差のあ
る個体を排除し、1群6〜7匹の群分けをした。糖質負
荷試験実施前一晩絶食させた。
【0033】各群のラットに下記のA、Bの2種類の組
成による糖質及びα−グルコシダーゼ阻害剤を胃ゾンデ
を用い経口投与し、15分、30分、60分、120分
後に動脈血を採取し、血糖濃度(血清グルコース量)と
血清インシュリン濃度を酵素法により測定した。
【0034】糖液組成: A:20%シュークロース(対照) B:20%シュークロース+1%馬鈴薯蛋白質の加水分
解物 投与量は、ラットの体重100gあたりシュークロース
が250mgとなる割合で投与した。投与後の血糖値の
経時変化を示すグラフを図4に、血清インシュリン量の
経時変化を示すグラフを図5に示した。これらのグラフ
より明らかなように、対照区の血糖値及び血清インシュ
リン値は糖液投与後15分後に最大値をとり、その後徐
々に低下する。これは今までに報告されている諸種の文
献報告と一致している。
【0035】図4のグラフにおいて15分後は、糖質が
小腸内で消化酵素α−グルコシダーゼにより最終的にグ
ルコースまで分解され、かつ強制的に血管内に取り込ま
れ急速な血糖値の上昇を招いたことを示している。急速
な血糖値の上昇がインシュリンの分泌を促し、そのイン
シュリンの働きにより血糖値は投与30分以降、徐々に
低下し平常値になる。馬鈴薯蛋白質の加水分解物を混合
したシュークロース溶液ではシュークロースのみの対照
区と比較して15分後の最大血糖値が明らかに低く、1
5分後の血糖値は有意水準1%で統計的に有意な差が認
められた。
【0036】また、図5のグラフに示すように馬鈴薯蛋
白質の加水分解物を混合したシュークロース溶液での血
清インシュリン濃度は急激な上昇がおきず、15分後の
インシュリン値を対照区と比較すると低い値をとり、有
意水準1%で統計的に有意な差が認められた。
【0037】〔実施例4〕本実施例4は、トウモロコシ
及び大豆由来の各蛋白質の加水分解物及びカゼインの加
水分解物による糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用とイン
シュリン分泌抑制作用を調べた実施例である。
【0038】前記実施例3と同様の方法で20%シュー
クロースに各蛋白質の加水分解物を混合した糖液につい
て血糖値上昇抑制作用とインシュリン分泌抑制作用を糖
液投与15分後に動脈血を採取して調べた。その結果を
下記の表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】表2に示すようにトウモロコシ及び大豆に
由来する各蛋白質の加水分解物及びカゼインの加水分解
物は、シュークロースと混合して経口投与したとき、対
照区(20%シュークロースのみ)と比較すると15分
後の血糖値上昇及びインシュリン分泌を抑制することが
わかる。
【0041】〔実施例5〕ラットの体重増加抑制試験 体重60gのSugague-dawley系雄ラットを前記表1に示
した成分組成の基本食で4日間予備飼育し、体重に差の
ないように1群5匹とし、2群に分けた。飼育は1匹ず
つアパートメント形式のゲージで、飼料及び飲料水は自
由摂取させた。飼育室内温度は23±1℃、飼育期間中
の明期を7:00〜19:00、暗期を19:00〜
7:00までの12時間毎の明暗2サイクルとした。
【0042】予備飼育後、2群のラットの1群を前記表
1に示した成分の基本食で飼育し、他の1群のラットを
カゼインの組成比を25.0%から23.0%に減ら
し、代わりに馬鈴薯由来の蛋白質の加水分解物を2.0
%混合した飼料で飼育した。体重測定は予備飼育終了時
より6日毎に7回実施し、試験終了時に解剖を行った。
【0043】下記の表3に予備飼育後、6日毎に計測し
たラットの体重の平均値を示す。飼料に馬鈴薯に由来す
る蛋白質の加水分解物を添加した区のラットの体重増加
は基本食による対照区にくらべて緩慢であり、馬鈴薯に
由来する蛋白質の加水分解物がラットの体重増加を抑制
した傾向が見てとれる。下記の表4には予備飼育後12
日毎の体重の増加量の平均値を示すが、ラットの成長が
進むにつれ、馬鈴薯蛋白質の加水分解物添加区の方が期
間中の退場増加量の平均値が小さく、25日〜36日に
かけての平均値は統計的にも有意な差(有意水準5%)
が見て取れる。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】〔実施例6〕本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤をクッキーに用いた
場合の実施例 クッキーの製造材料に馬鈴薯蛋白質の加水分解物を添加
した下記の表5に示す材料組成によりクッキーを製造
し、官能評価試験を実施した。対照として馬鈴薯蛋白質
の加水分解物を加えない以外は本実施例6と同じ材料を
使用してクッキーを製造した。
【0047】
【表5】
【0048】両方のクッキーについて、10名のパネラ
ーを対象にした官能評価試験を実施したが、芳香、味、
歯触り、口溶けに統計的に有意な差は認められなかっ
た。なお、対照品の材料組成によるアミノ酸スコア(1
973年、FAO/WHO評点パターン)が65点であ
るのに対し、本実施例6のクッキーは70点に向上し
た。
【0049】〔実施例7〕本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤をパンに用いた場合
の実施例 パンの製造材料に馬鈴薯蛋白質の加水分解物を添加した
下記の表6に示す材料組成によりパンを製造し、官能評
価試験を実施した。パンの製造には松下電器産業株式会
社製、ホームベーカリーSD−BT5型を使用し、対照
として馬鈴薯蛋白質の加水分解物を加えないパンを製造
した。
【0050】
【表6】
【0051】両方のパンについて、10名のパネラーを
対象にした官能評価試験を実施したが、芳香、味、やわ
らかさ、口溶けに統計的に有意な差は認められなかっ
た。また、5cm角に切ったパンの断片の色調をスガ試
験機株式会社製、多光源分光測色計MSC−2型で測定
した。測色試験の結果を下記の表7に示すが、両方のパ
ンの色調にも差は見られなかった。
【0052】
【表7】
【0053】なお、対照品の材料組成によるアミノ酸ス
コア(1973年、FAO/WHO評点パターン)が3
9点であるのに対し、本実施例7のパンは62点に向上
した。
【0054】〔実施例8〕本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を含む甘味料をコー
ヒーに使用した場合の実施例 シュークロース100重量部に対して、馬鈴薯に由来す
る蛋白質の加水分解物を各2重量部及び5重量部混合し
た甘味料を作った。コーヒーに上記の甘味料のうちのシ
ュークロース量が5重量%になるように加えた。対照と
してコーヒーにシュークロースのみを5重量%加えたも
のを調製した。
【0055】それぞれのコーヒーを熟練したパネラー1
0名に飲ませ、その味質に関しての官能評価試験を実施
した。試験の結果、馬鈴薯蛋白質の加水分解物を2重量
部混合した甘味料を加えたコーヒーでは10名中1名
が、5重量部混合した甘味料を加えたコーヒーでは10
名中3名が苦み味がまろやかになると評価した。馬鈴薯
蛋白質の加水分解物を2重量部及び5重量部混合した甘
味料を加えたコーヒーとも、渋み味などの他の味質につ
いては差がないと答えた。この結果から、本発明のα−
グルコシダーゼ阻害剤は、飲料に甘味料として使用でき
ることがわかる。
【0056】〔実施例9〕本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を含む甘味料をスポ
ンジケーキに用いた場合の実施例 スポンジケーキの製造材料に馬鈴薯蛋白質の加水分解物
を添加した下記の表8に示す材料組成によりスポンジケ
ーキを製造し、官能評価試験を実施した。本実施例9で
使用した甘味料はシュークロース100重量部と馬鈴薯
由来の蛋白質の加水分解物5重量部を混合した甘味料で
あり、対照品にはシュークロースのみを使用した。
【0057】
【表8】
【0058】両方のスポンジケーキについて、10名の
パネラーを対象にした官能評価試験を実施したが、芳
香、味、歯触り、口溶けに統計的に有意な差は認められ
なかった。この結果から本発明のα−グルコシダーゼ阻
害剤を含む甘味料は、食品に使用できることがわかる。
【0059】
【発明の効果】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤の有
効成分である植物性蛋白質又は動物性蛋白質を加水分解
して得られる加水分解物は、シュークロース、デンプン
及びデンプン由来のオリゴ糖から選ばれた1種又は2種
以上の消化性糖類と併用して使用するとき、小腸の消化
酵素であるα−グルコーダーゼの作用を緩慢に阻害し、
急激な血糖値の上昇を抑制し、インシュリンの分泌を低
く抑える効果がある。
【0060】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤はその
阻害作用が緩慢であり、摂取される全炭水化物量(全糖
質量)100重量部に対して0.5〜20重量部の大量
のα−グルコシダーゼ阻害剤を配合させて使用すること
ができるので、食品に添加混合できる食品素材あるいは
甘味料として使用することができる。
【0061】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を含有
する食品、甘味料は、健康な人には、肥満、糖尿病を含
む成人病の予防に役立つことができ、また、肥満者や糖
尿病患者には、従来のシュークロース、デンプン、及び
デンプン由来のオリゴ糖等の糖類摂取の制限を緩和する
ことが可能な、食事療法に適した幅広い食品、甘味料の
提供が可能となる。
【0062】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を含有
する食品は、α−グルコシダーゼの作用を緩慢に阻害
し、急激な血糖値の上昇を抑制し、インシュリンの分泌
を低く抑えるので、長期の摂取によって痩身効果が認め
られる。
【0063】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を含有
する飼料は、肥満傾向を緩和するので、ペットの肥満防
止用或いは糖尿病予防用飼料として、また、脂肪付の少
ない肉質の獣肉用動物の飼料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種蛋白質の加水分解物がラット小腸の消化酵
素α−グルコシダーゼを阻害する作用を示すグラフ(基
質:20mMシュークロース)である。
【図2】各種蛋白質の加水分解物がラット小腸の消化酵
素α−グルコシダーゼを阻害する作用を示すグラフ(基
質:2%可溶性デンプン溶液)である。
【図3】馬鈴薯蛋白質の加水分解物が豚小腸の消化酵素
α−グルコシダーゼを阻害する作用を示すグラフであ
る。
【図4】シュークロースに馬鈴薯蛋白質の加水分解物を
混合したものを糖質としてラットに負荷した後の血糖値
上昇抑制の経時変化を示すグラフである。
【図5】シュークロースに馬鈴薯蛋白質の加水分解物を
混合したものを糖質としてラットに負荷した後の血清イ
ンシュリン濃度上昇抑制の経時変化を示すグラフであ
る。
【手続補正書】
【提出日】平成7年10月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤が、炭
水化物の含有量が元来少ないか或いは殆ど含まないよう
な食品に対して使用される場合、例えば、コーヒー、紅
茶、或いは各種茶等に対して、シュークロース、澱粉、
及び澱粉由来のオリゴ糖から選ばれた1種又は2種以上
の消化性糖から構成される糖とα−グルコシダーゼ阻害
が組み合わされた糖組成物又は甘味料の形態で使用す
ることができる。 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年10月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正内容】
【0043】下記の表3に予備飼育後、6日毎に計測し
たラットの体重の平均値を示す。飼料に馬鈴薯に由来す
る蛋白質の加水分解物を添加した区のラットの体重増加
は基本食による対照区にくらべて緩慢であり、馬鈴薯に
由来する蛋白質の加水分解物がラットの体重増加を抑制
した傾向が見てとれる。下記の表4には予備飼育後12
日毎の体重の増加量の平均値を示すが、ラットの成長が
進むにつれ、馬鈴薯蛋白質の加水分解物添加区の方が期
間中の体重増加量の平均値が小さく、25日〜36日に
かけての平均値は統計的にも有意な差(有意水準5%)
が見て取れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A23L 1/22 A23L 1/22 E 1/236 1/236 A C 1/29 1/29 1/305 1/305 // A21D 13/00 A21D 13/00 13/08 13/08 A61K 38/00 C12N 9/26 Z 38/55 ADP A61K 37/18 C12N 9/26 37/64 ADP (72)発明者 小野寺 秀一 北海道札幌市白石区平和通1丁目北7−23 アサヒ平和ビル303

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 植物性蛋白質又は動物性蛋白質を加水分
    解して得られる加水分解物を有効成分とするα−グルコ
    シダーゼに対する緩慢な阻害作用を有するα−グルコシ
    ダーゼ阻害剤。
  2. 【請求項2】 (1)請求項1記載のα−グルコシダー
    ゼ阻害剤と、 (2)シュークロース、澱粉、及び澱粉由来のオリゴ糖
    から選ばれた1種または2種以上の消化性糖から構成さ
    れる糖の緩慢な消化作用を有し、かつインシュリン分泌
    を低く抑える作用を有する糖組成物。
  3. 【請求項3】 前記α−グルコシダーゼ阻害剤は、前記
    糖組成物中において0.5〜20重量%である請求項2
    記載の糖組成物。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3記載の糖組成物を有効成
    分とする、糖の緩慢な消化作用を有し、かつインシュリ
    ン分泌を低く抑える作用を有する甘味料。
  5. 【請求項5】 請求項2又は3記載の糖組成物が添加さ
    れた、糖の緩慢な消化作用を有し、かつインシュリン分
    泌を低く抑える作用を有する健康食品。
  6. 【請求項6】 請求項1記載のα−グルコシダーゼ阻害
    剤が、炭水化物を含む食品に、食品中の炭水化物量(糖
    質量)に対して0.5〜20重量%となるように添加さ
    れていることを特徴とする、糖の緩慢な消化作用を有
    し、かつインシュリン分泌を低く抑える作用を有する健
    康食品。
  7. 【請求項7】 請求項2又は3記載の糖組成物が添加さ
    れた、糖の緩慢な消化作用を有し、かつインシュリン分
    泌を低く抑える作用を有する糖尿病患者用食品。
  8. 【請求項8】 請求項1記載のα−グルコシダーゼ阻害
    剤が、炭水化物を含む食品に、食品中の炭水化物量(糖
    質量)に対して0.5〜20重量%となるように添加さ
    れていることを特徴とする、糖の緩慢な消化作用を有
    し、かつインシュリン分泌を低く抑える作用を有する糖
    尿病患者用食品。
  9. 【請求項9】 請求項2又は3記載の糖組成物が添加さ
    れた、糖の緩慢な消化作用を有し、かつインシュリン分
    泌を低く抑える作用を有する痩身用食品。
  10. 【請求項10】 請求項1記載のα−グルコシダーゼ阻
    害剤が、炭水化物を含む食品に、食品中の炭水化物量
    (糖質量)に対して0.5〜20重量%となるように添
    加されていることを特徴とする、糖の緩慢な消化作用を
    有し、かつインシュリン分泌を低く抑える作用を有する
    痩身用食品。
  11. 【請求項11】 請求項2又は3記載の糖組成物が添加
    された、糖の緩慢な消化作用を有し、かつインシュリン
    分泌を低く抑える作用を有する飼料。
  12. 【請求項12】 請求項1記載のα−グルコシダーゼ阻
    害剤が、飼料中の炭水化物量(糖質量)に対して0.5
    〜20重量%となるように添加されていることを特徴と
    する、糖の緩慢な消化作用を有し、かつインシュリン分
    泌を低く抑える作用を有する飼料。
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