[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JPH09263949A - プラズマ処理装置 - Google Patents

プラズマ処理装置

Info

Publication number
JPH09263949A
JPH09263949A JP8094912A JP9491296A JPH09263949A JP H09263949 A JPH09263949 A JP H09263949A JP 8094912 A JP8094912 A JP 8094912A JP 9491296 A JP9491296 A JP 9491296A JP H09263949 A JPH09263949 A JP H09263949A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
plasma
magnetic field
discharge vessel
magnetic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8094912A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenichi Takagi
憲一 高木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Anelva Corp
Original Assignee
Anelva Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Anelva Corp filed Critical Anelva Corp
Priority to JP8094912A priority Critical patent/JPH09263949A/ja
Publication of JPH09263949A publication Critical patent/JPH09263949A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • ing And Chemical Polishing (AREA)
  • Drying Of Semiconductors (AREA)
  • Plasma Technology (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラズマ処理装置で、大型基板に対し良好な
均一性のプラズマ処理を行え、最適な処理速度で基板に
ダメージを与えることなく処理する。 【解決手段】 電力導入窓11と電極12からなる放電容器
13と、真空容器14と、アンテナ19を含むプラズマ生成機
構と、排気機構と、ガス導入機構と、基板保持機構17を
備える。電極の大気側に非接触状態でかつ電極中心部の
周囲に環状のレイアウトで配置された磁極部を含む磁場
形成機構(21)を備える。アンテナは環状で電力導入窓を
囲む。かかる構成で磁場形成機構は、アンテナ配置位置
の放電容器壁を横切り、電極中心から所定距離以内の電
極表面に入る磁力線であって、放電容器内での形状が出
口方向に凸となる当該磁力線からなる磁場を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプラズマ処理装置に
関し、特に、プラズマ発生機構で生成されたプラズマを
利用し、主にプラズマCVDおよびプラズマエッチング
へ応用されるプラズマ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のプラズマ処理装置の代表例を図1
4と図15を参照して説明する。このプラズマ処理装置
は、誘電体製の円筒形状の電力導入窓71と、その下部
周囲に配置された環状アンテナ72を備える誘導結合型
プラズマ処理装置である。
【0003】図14は、誘導結合型プラズマ処理装置の
手前部分を切り欠いて内部構造を示した外観斜視図を示
す。電力導入窓71の上端は例えば接地電位に保持され
た導電性電極73によって封じられ、これにより放電容
器74が形成される。この放電容器74は金属製プラズ
マ拡散容器75の上に設けられ、放電容器74とプラズ
マ拡散容器75の各内部空間は通じている。放電容器7
4とプラズマ拡散容器75の内部には、電極73の箇所
またはプラズマ拡散容器75の箇所から、図示しないガ
ス導入機構によって反応ガスが導入される。また放電容
器74とプラズマ拡散容器75の各内部は、図示しない
排気機構によって減圧されて所望の真空状態にされ、例
えば100Pa以下の所定の放電圧力に維持される。放
電容器74の下部周囲を囲むように配置された環状アン
テナ72を経由して電力導入窓71から高周波電力が導
入され、この高周波電力により放電が生じ放電容器74
内にプラズマが生成される。プラズマ内に含まれる活性
種は、プラズマ拡散容器75内に拡散し、プラズマ拡散
容器75内の基板保持機構76に配置された被処理基板
77の表面を処理する。
【0004】図15は図14のC2−C2線断面図であ
る。プラズマ拡散容器75の円筒状側壁の周囲には複数
の磁気回路78が円周方向に一定の間隔で配置されてい
る。磁気回路78は、ヨーク79とそれに固定された棒
状の2本の永久磁石80とからなる。棒状の永久磁石8
0はプラズマ拡散容器75の円筒形側壁の中心軸に平行
に配置され、当該中心軸に向う隣り合う磁極が互いに異
極となるように着磁されている。磁気回路78により、
プラズマ拡散容器75の側壁の内面にはラインカスプ状
の磁場が形成される。プラズマ中の電子は、プラズマ拡
散容器75の側壁の内面に沿って作られた磁力線81に
捕捉され、磁力線81を旋回中心とする螺旋運動を行
う。この際、磁束密度の勾配により、磁束密度が低い方
向、すなわち、プラズマ拡散容器75の中心軸方向に電
子の旋回中心が偏心する運動、いわゆるドリフトと呼ば
れる運動により、プラズマ拡散容器75の中心軸方向に
電子が反射される。この作用により、プラズマ中の電子
のプラズマ拡散容器75の側壁内面への衝突による消滅
が抑制される。このため、効率的なプラズマの維持が可
能である。通常、プラズマ拡散容器75の側壁の内面に
沿って形成された磁力線81をバケット磁場という。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来のプラズマ
処理装置では、放電容器74で発生したプラズマをプラ
ズマ拡散容器75内で拡散させ、プラズマ拡散容器75
に生成された上記バケット磁場によりプラズマを効率的
に維持し、被処理基板77をプラズマ処理している。こ
の際に、プラズマが生成される放電容器74からプラズ
マ拡散容器75内の被処理基板77までの距離を或る程
度以上長くして、プラズマを拡散させる必要がある。
【0006】ところで、放電容器74の口径を変えるこ
となく、被処理基板77の直径を現在のφ(直径)20
0mmから例えばφ(直径)300mm以上に広げる場
合、プラズマの拡散によって良好な均一性のプラズマを
得るためには、放電容器74から被処理基板77までの
距離をさらに長くしなければならない。このように、被
処理基板77の面積が増大すると、プラズマ処理装置の
占有体積が増大すると共に、被処理基板77の位置での
プラズマ密度が減少するので、処理速度が遅くなるとい
う問題が提起される。
【0007】他方、従来のプラズマ処理装置において、
放電容器74の口径を大きくし、生成されるプラズマの
領域を広くした場合、放電容器74から被処理基板77
までの間隔を短くすることによってプラズマ処理装置の
占有体積を小さくすることは可能である。しかしなが
ら、このようにすると、放電容器74内のプラズマ密度
分布が放電圧力によって大きく変化することが知られて
いる。
【0008】例えば、10Pa程度以上の放電圧力では
電力導入窓71の側壁内面の近くに偏ったリング状プラ
ズマの密度分布が作られ、1Pa前後の放電圧力では放
電容器74の中心近傍でプラズマ密度が高くなった密度
分布が作られる。
【0009】放電容器74内で生成されるプラズマのプ
ラズマ特性(密度分布特性)の不均一性は、被処理基板
77における処理の不均一性に直接的に反映する。
【0010】また放電圧力、すなわちプラズマ放電で処
理を行う際の内部圧力は、プラズマ密度を大きく変化さ
せるので、プラズマ処理速度を決定する重要な因子の1
つである。しかしながら、上で述べたようにプラズマ密
度分布は放電圧力によって大きく変化するため、従来、
最適なプラズマ処理速度が得られる放電圧力において、
良好な均一性を持つプラズマ処理を行えるように、プラ
ズマ密度分布を任意に制御することは困難であった。
【0011】さらに、放電容器74の側壁を取り囲むよ
うに電磁コイルを設け、プラズマ密度分布を制御するこ
とは可能であるが、装置が大型化する。また被処理基板
77を貫く磁力線81の密度の不均一性に基づき、被処
理基板77でダメージが発生する問題もある。
【0012】本発明の目的は、上記の問題を解決するも
ので、基板の大口径化に応じてプラズマ源である放電容
器の口径を大きくしかつ放電容器と被処理基板の間の距
離を短くして装置全体の占有体積を小さくする場合に、
放電圧力の影響を受けることなく、放電容器で生成され
るプラズマの密度分布を必要な任意分布に容易に制御す
ることができ、基板が大型化しても良好な均一性を有す
るプラズマで基板を処理でき、また最適なプラズマ処理
速度で基板にダメージを与えることなく処理できるプラ
ズマ処理装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】第1の本発明
(請求項1に対応)に係るプラズマ処理装置は、上記の
目的を達成するため、誘電体の例えば円筒状の電力導入
窓と電力導入窓の一端を封じ、所定電圧(接地電位等)
が印加される導電性の電極とにより構成される放電容器
と、放電容器を備え、これと連通される真空容器と、放
電容器内でプラズマを発生させるためのアンテナを備え
たプラズマ生成機構と、真空容器の内部を減圧状態に保
持するための排気機構と、真空容器内に反応ガスを導入
するガス導入機構と、電極に対し所定間隔をあけ、放電
容器の内部空間に接近させて真空容器内に設置される基
板保持機構とを備えるものであり、さらに、上記電極の
大気側の位置に電極に対して非接触状態でかつ電極の中
心部の周囲に例えば環状のレイアウトで配置された磁極
部を含む磁場形成機構を備えるように構成される。上記
のアンテナは環状であって、電力導入窓を囲むように配
置される。かかる構成で、上記磁場形成機構は、アンテ
ナの配置位置の近傍の放電容器壁を横切りかつ電極中心
から所定距離以内の電極表面に入る形状の磁力線であっ
て、放電容器内における形状がその出口方向に凸となる
当該磁力線からなる磁場を形成するように、当該磁極部
の配置が設定される。
【0014】上記の構成によれば、電極の外側に配置さ
れた磁場形成機構によって上記放電容器内に形成される
磁場に係る磁力線分布に従って電子の運動が制御され、
もって電子を放電容器内に反射することで、プラズマに
対する放電容器壁の影響を小さく抑える。電極の上側に
設置された磁場形成機構の複数の磁極の電極に対する位
置関係を好ましい状態に制御することで、放電容器内に
形成される磁力線の分布形状を所望の状態に制御し、プ
ラズマ密度の均一性を制御する。
【0015】第2の本発明(請求項2に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
で形成される上記磁場は、内径が350mm以上(好ま
しくは362mm)の放電容器を使用する場合に、上記
アンテナの配置位置の近傍の放電容器壁を横切りかつ電
極の中心から約50mm以内の電極表面に入る形状の磁
力線であって、放電容器内における形状がその出口方向
に凸となり、かつ放電容器壁の内面から約100mm以
内の領域で放電容器の中心軸に対して垂直となる接線が
描ける点を持つ形状の前記磁力線を含むことを特徴とす
る。
【0016】第3の本発明(請求項3に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、環状のヨークとこのヨークの電極側面
に固定された内外の2つの永久磁石とからなる磁気回路
ユニットであって、径が異なる複数の当該磁気回路ユニ
ットからなり、複数の磁気回路ユニットは同心円的に配
置されるように構成される。
【0017】第4の本発明(請求項4に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第3の発明において、複数の永久磁
石で、隣合う永久磁石の磁極同士が異極となるように配
置される。
【0018】第5の本発明(請求項5に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、中央部に孔が形成された円錐形状を有
し、電極に向かって径の大きな開口部を向けるように配
置された永久磁石であり、その内周縁部と外周縁部に磁
極が形成される。
【0019】第6の本発明(請求項6に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、中央部に孔が形成され、外周縁に電極
側に延設された縁部を有する蓋形の永久磁石であり、そ
の内周縁部と電極側縁部に磁極が形成される。
【0020】第7の本発明(請求項7に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、電極側に開いた断面コ字形の環状のヨ
ークとこのヨークで作られる空間に配置される電磁石と
で構成される。
【0021】第8の本発明(請求項8に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、上記の各構成において、電極にその
温度を調整する温度調整機構が設けられ、電極の温度と
磁場形成機構の温度は独立に調整されることを特徴とす
る。
【0022】第9の本発明(請求項9に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、上記の各構成において、好ましく
は、プラズマ発生機構のアンテナが1ループ状であるこ
とを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0024】図1〜図8は本発明に係るプラズマ処理装
置の第1の実施形態を示す。図1において、11は誘電
体製の電力導入窓であり、この電力導入窓11は例えば
内径φ362mm、高さ100mmの円筒形状を有す
る。この電力導入窓11は、基板の大口径化に応じて大
きな口径を有するように形成されている。電力導入窓1
1の材質としては例えば耐熱衝撃性が強い石英が使用さ
れる。12は金属製の円板形状をした電極で、電極12
は、円筒状電力導入窓11の上方端部を封じる真空フラ
ンジの役目を持ち、電力導入窓11と共に放電容器13
を構成する。放電容器13は真空容器14の上に配置さ
れ、互いの内部空間が通じ、放電容器13と真空容器1
4は全体として真空槽を形成している。真空容器14の
下部は、図示例では開放されているが、実際の装置では
真空槽を形成すべく閉じた構造となっている。また電極
12は、好ましくは接地電位に保持され、かつヒータ線
15による温度調整機構を備える。電極12に、直流バ
イアス電圧と交流バイアス電圧を並列に導入することも
できる。
【0025】さらに電極12では、その上側すなわち大
気側に、同心円状にかつ電極12に対して非接触状態で
配置された複数の環状のヨーク16と、当該ヨーク16
の各々の下側であって内側縁と外側縁に固定された環状
の2つの永久磁石20とからなる磁場形成機構が設けら
れる。ただし本実施形態の場合、中央部のヨーク16a
は円板形状になっている。この磁場形成機構は、電極1
2の放電容器側の表面近傍および放電容器13内に所望
の磁力線分布を持つ磁場を形成する。
【0026】磁場形成機構およびその周辺部に関する構
造やヒータ線15に関する構造は、後で図2を参照して
詳述される。
【0027】本実施形態では反応ガスを真空容器14の
内部に導入するためのガス導入機構を図示していない
が、通常、真空容器14にガス導入口が設けられ、反応
ガスを導入できるようになっている。電極12にガス導
入口を設けることも可能である。ガス導入機構は従来か
ら知られたものが使用される。
【0028】真空容器14の内部であって放電容器13
の下側位置には基板保持機構17が設けられる。基板保
持機構17の基板載置面は、電極12に対して一定の間
隔で対向した状態で真空容器14のほぼ上端に位置し、
基板保持機構17は放電容器13の内部空間に可能な限
り接近して配置される。基板保持機構17は、その上部
を放電容器13の内部に挿入するようにして配置するこ
ともできる。基板保持機構17の上には被処理基板18
が配置される。被処理基板18の被処理面は、放電容器
13の内部空間に臨んでいる。放電容器13の内部空間
は、放電プラズマが生成される領域である。放電容器1
3の内部で生成されたプラズマは、被処理基板18の表
面を処理する。
【0029】円筒形の電力導入窓11の周囲に配置され
た偏平な環状部材19は環状(ループ)アンテナであ
る。環状アンテナ19は、本実施形態では、電力導入窓
11の中央の位置(軸方向の中心位置)、すなわち、真
空容器14の上面から50mm離れた位置に、電力導入
窓11の全周囲を取り囲むように配置されている。環状
アンテナ19を支持する構造の図示は省略されている
が、通常、絶縁物質で作られた支持部材で上記の位置に
配置される。環状アンテナ19に対しては、例えば1
3.56MHzの周波数を有する高周波電力が供給され
る。この場合において、環状アンテナ19と、接地電位
に保持された真空容器14または電極12との距離が4
0mm以下のときには大気放電が発生するので、これを
避けるべく環状アンテナ10と接地電位である部分(電
極12と真空容器14)との距離を50mmと設定し
た。ただし、環状アンテナ19と接地電位である部分と
の距離は、整合回路の違い、あるいは、使用する高周波
電力および高周波電力の周波数に依存して異なるもので
ある。
【0030】また環状アンテナ19と接地電位の部分と
の間をテフロン等の絶縁体により埋め、大気放電の発生
を抑制することで、放電容器の高さをさらに短くするこ
ともできる。
【0031】図1に示されたプラズマ処理装置の基本動
作を概説する。この装置を動作させるには、一度、真空
容器14に付設された排気機構(よく知られたものが使
用され、図示せず)によって真空容器14および放電容
器13の内部を所定の真空状態にし、その後、図示しな
い反応ガス導入系により反応ガスを放電容器13内に導
入すると共に、同時に真空排気して100Pa以下の所
定の減圧状態を保つ。次に、図示されない電力導入機構
により環状アンテナ19に高周波電力を導入して放電容
器13内でプラズマを生成し、反応ガスの粒子を活性化
させる。本実施形態では、放電容器13の内径を例えば
362mmとして、この放電容器13内に直径300m
m以上の大きな面積を持つプラズマが生成される。真空
容器14内の基板保持機構17上に、電極12に対向す
るように設置された被処理基板18の表面は、放電容器
13内で生成されたプラズマ中の活性種により処理され
る。
【0032】図1および図2に従って、磁場形成機構に
関する構造やヒータ線15に関する構造を説明する。図
2は図1中のC1−C1線断面図である。
【0033】電極12の大気側には、内外に位置する2
つの環状の永久磁石20を固定した環状のヨーク16が
同心円状に複数個配置されている。ヨーク16と2つの
永久磁石20によって磁気回路ユニット21が形成され
る。環状のヨーク16と永久磁石20は、外側へ行くほ
ど直径が大きくなる。そして、1つのヨーク16に固定
された永久磁石20の電極12に向かう磁極が、隣り合
う永久磁石20の電極12に向かう磁極と異極となるよ
うに構成されている。ヨーク16は、永久磁石20が電
極12に直接に接触しないように配置され、電極12の
熱が永久磁石20に直接伝達されない構造とすることに
よって、永久磁石20の温度上昇を抑制し、永久磁石の
劣化を防いでいる。ヨーク16を支持する構造は図示さ
れていないが、自明の機械的支持構造が使用される。
【0034】本実施形態では電極12と永久磁石20の
間を大気としているが、100Pa程度以下の真空、あ
るいはテフロン等で他の断熱層を形成することで、熱の
伝達をさらに抑制することが可能である。
【0035】また図2に示すように、金属製の電極12
にヒータ線15を埋め込むことにより、好ましくは電極
12の放電容器側表面の温度が制御される。本実施形態
の場合、電力導入窓11に設けた電極12は、上記温度
調整機構(ヒータ線15)により70℃程度以上の所定
温度に保持されている。また温度調整機構により、プラ
ズマ中の粒子のうちプラズマ処理に必要な活性種の相対
的な割合が制御される(例えば、菅井他、第41回応用物
理学関連連合講演会予稿集 第二分冊 p536 )。ただ
し、当該効果は、プラズマに接触する面積のうち、前記
所定温度の面積が相対的に広いほど有効になる。そこで
本実施形態では、電力導入窓11の高さを100mm以
下と小さくし、所定温度に加熱することが難しい電力導
入窓11の面積を、所定温度を常時維持することが容易
な電極12の面積に対して相対的に小さくすることによ
って、上記効果を大きくした。
【0036】また電極12を加熱することにより、絶縁
体の堆積物が電極12に付着することを抑制できる。そ
の結果、電極12の表面電位が常に接地電位に保持され
るため、これに直接接触しているプラズマのプラズマ空
間電位を安定させる効果もある。通常、異なる電位であ
る複数面に接触しているプラズマのプラズマ空間電位
は、プラズマが接触している最大面積である面の電位を
基準として決定される。このため、プラズマの接する面
の内、最大面積である面の電位を安定な電位、例えば接
地電位、とすることで、プラズマ空間電位は安定する傾
向となる。従来例で示したようなプラズマ拡散容器内に
プラズマを拡散させる場合には、プラズマ拡散容器の電
位、すなわち接地電位が基準電位となる。しかし、本実
施形態で示すように、放電容器出口に基板保持機構17
が配置される構造では、電極12と電力導入窓11のう
ちプラズマの接する面積の広い方によってプラズマ空間
電位の基準が決定される。そこで、電力導入窓11の高
さを100mm以下と短くし、プラズマが接触する電力
導入窓11の面積に対するプラズマの接触する電極12
の接地面の面積の相対比を大きくし、電極12の表面電
位、すなわち接地電位をプラズマの基準電位とすること
で、放電容器内のプラズマ空間電位を安定させ、同時
に、プラズマ空間電位の再現性を向上させることが可能
である。従って、電極12の加熱により、プラズマ処理
に使用するプラズマのプラズマ空間電位を一定とするこ
とが可能なことから、プラズマ処理の再現性を向上させ
るためにも有効な手段となる。さらに、本実施形態の放
電容器13の口径のみを直径300mm以上に大口径化
した場合には、さらに当該面積の相対比は大きくなり、
前記効果をさらに大きくすることができる。
【0037】次に、前述した図1と図2、さらに図3〜
図8を参照して本実施形態によるプラズマ処理装置の特
性を説明する。
【0038】図3は本実施形態における磁場シミュレー
ションの結果としての磁力線31の分布形状を示す。こ
こで使用される放電容器13の内径は362mmであ
る。電極12の大気側には直径の異なる4つのヨーク1
6(16a)に関する磁気回路ユニット21が同心円状
に配置されている。本実施例の各磁気回路ユニット21
は、外側の環状の永久磁石20の電極12に向かう磁極
をN極、そして内側の環状の永久磁石20の磁極をS極
としている。そして、各磁気回路ユニット21の電極1
2に対する配置を、電極12との距離(電極上面と磁極
面との距離)が、図2に示すように、内側の磁気回路ユ
ニット21から23mm、11mm、11mm、3mm
となるように設定した。これらの4つの磁気回路ユニッ
ト21で形成される放電容器13内の磁力線31は、ア
ンテナ19が配置された近傍の電力導入窓(放電容器
壁)11の内面を横切り、電極12の内面上の放電容器
中心近傍(放電容器の中心軸から例えば40mm以内の
範囲)に入る分布形状を描いている。そして、電力導入
窓11を横切った磁力線31は、下側の放電容器出口で
下方に凸となった後、電極12の中心近傍に入るように
分布する。このとき、放電容器13内における磁力線3
1は、電力導入窓11から電極12にまで至る経路にお
いては放電容器を横切ることはない。そして、放電容器
13の中心軸13a(図2に示す)に対して垂直となる
接線が描ける場所は、ほぼ放電容器の中心軸13aから
約130mmの位置に存在する。このような磁力線31
に基づいて、磁力線31と電極12とで取り囲まれた空
間が放電容器13の中心軸13aを中心として環状に形
成される。
【0039】図4は、4つの磁気回路ユニット21によ
り形成された磁力線31の分布における電子32の運動
を示す。誘導結合型プラズマ処理装置では、通常、アン
テナ19の設置されている電力導入窓11の内面近傍の
電子32は誘導電界により加速されることでエネルギを
得、この電子が原子、分子等に衝突することでプラズマ
を生成し、維持している。このとき磁力線31が存在す
ると、電子32は磁力線31を旋回中心とする螺旋運動
を行う。このため、アンテナ19が設置されている場所
の近傍に電力導入窓11を横切る磁力線31が存在する
場合には、加速された電子32は磁力線31に沿って移
動する。電子32は、磁力線31に沿って移動する途中
で、分子等の他の粒子に衝突して他の粒子を励起し、電
離させる。
【0040】磁力線31を旋回中心として螺旋運動をし
ている電子32の旋回半径は、磁束密度によって変化
し、磁束密度の低い磁場ほど旋回半径が大きくなる。本
実施形態では、放電容器内に向かって磁束密度が小さく
なる配置であるために、一周の旋回を終えた電子32の
旋回中心は、元の磁力線31よりも放電容器出口に近い
磁力線31となり、磁力線31を旋回中心として螺旋運
動をしている電子32の旋回半径の中心は、放電容器1
3内の磁束密度の勾配から電極12と反対の方向に向か
い曲がっていくことになる。そして最終的には、電子3
2は磁力線31の捕捉から逃れ、電極12と反対の方向
の真空容器14に向かって移動する。いわゆる、ドリフ
トと呼ばれる現象である。従って、電極12の放電容器
内に形成された磁場の勾配により、電極12に入射して
消滅する電子32を抑制することが可能となる。
【0041】また、放電容器13の中心近傍にまで輸送
された電子32の内、放電容器13の側壁に向かって移
動する電子32は、放電容器13内に形成された磁力線
31により補捉されて移動する。中心軸13aと、この
中心軸に垂直な接線の引ける磁力線31上の点との間の
領域においては、電子32は放電容器13の出口方向に
運動することになる。そして、磁力線31が曲率を持つ
ために、電子は移動しながら放電容器13の出口方向に
ドリフトして拡散チャンバである真空容器14に拡散す
る。ただし、放電容器13の中心軸に垂直な接線の引け
る磁力線31上の点を越えた電子32は、磁力線31に
沿って運動を行い、放電容器13の側壁に衝突し消滅す
る。このため、放電容器内のプラズマ密度は、中心軸1
3aとこの中心軸に垂直な接線の引ける磁力線31上の
点との範囲の外周側で急速に低下していると考えられ
る。これらの効果により、放電容器13内のプラズマの
消滅が抑制され、プラズマ密度が均一に維持されている
と考えられる。
【0042】また石英製の電力導入窓11の内面近傍で
は負シースが形成され、磁力線31に沿って電力導入窓
11に向かって移動してきた電子32のうち電子温度の
低い電子は、負シースの電界によって反射される。しか
し、電子温度の高い電子は、負シースでの反射が行われ
ず、放電容器内面に入射し消滅する。
【0043】以上の作用によって電子32を放電容器1
3内に反射することで、プラズマに対する放電容器壁の
影響を小さく抑え、電極12の上側に設置された複数の
永久磁石20の各々と電極12との距離を適切に制御す
ることで、放電容器13内に形成される磁力線31の形
状を制御し、プラズマ密度の均一性が制御される。
【0044】なお、電極12の上側に設置された複数の
永久磁石20の各々と電極12との距離を制御するため
の機構の図示は省略される。この機構には、従来から良
く知られた昇降機能を有する任意の機械的支持機構を用
いることができる。
【0045】図5は、内径362mmの放電容器を用
い、放電圧力0.53Paとした場合において、磁場あ
り(特性A1)と磁場なし(特性B1)のときの放電容
器出口近傍でのArプラズマのプラズマ密度分布を示
す。「磁場あり」の場合では、図3に示された磁場が形
成される。横軸は放電容器13の中心軸13aから距離
(mm)を示し、縦軸はプラズマ密度(cm-3)を示
す。なお図5に示された放電のための条件は、正確に
は、放電ガス:アルゴン(Ar)、放電圧力0.53P
a、放電電力1000W、放電チャンバ(放電容器):
内径362mm;高さ100mm、拡散チャンバ(真空
容器):直径460mmである。
【0046】電極12に磁気回路ユニット21を設置し
ない場合、すなわち磁場なしの特性B1の場合には、放
電容器13の中心近傍のプラズマ密度が高くなった。プ
ラズマ密度の均一性は、半径120mm以内の領域で±
23%であった。放電圧力0.53Paにおいては、プ
ラズマ中の粒子の拡散が大きく、電力導入窓11での活
性種の消滅が大きい。このため、電力導入窓11の近傍
ではプラズマ密度が減少すると考えられる。
【0047】図3に示した本実施形態による4つの磁気
回路ユニット21を用いた場合、すなわち磁場ありの特
性A1の場合には、プラズマ密度は、磁気回路ユニット
21を用いない場合に比較して約2倍に上昇していた。
またプラズマ密度の均一性は、放電容器中心軸から12
0mmの範囲内で±16%と改善されていた。特に、放
電容器中心軸から90mmの範囲内では±10%以下に
改善されていた。放電容器中心軸から約90mmまでの
領域は、放電容器中心軸に対して垂直な接線が引ける磁
力線31の位置が約130mmであることから、当該位
置から放電容器の中心軸方向に約40mm程度内側とな
る位置と放電容器中心軸の間の領域である。以上に示し
た磁力線31の形状により形成された放電容器中心軸に
対して垂直な接線が引ける位置から約40mm程度内側
の位置と放電容器の中心軸までの間の領域内にあるプラ
ズマは、実質的に電力導入窓11の内面の影響を受け
ず、放電容器中心軸から約90mm以内の領域のプラズ
マは、磁場により閉じこめられていると考えられる。
【0048】図6は、磁気回路ユニット21の配置に関
して、上記実施形態の配置と異なった場合の磁力線の分
布形状を示す。磁気回路ユニット21の配置としては、
外側の磁気回路ユニット21程、電極12に接近させる
ようになっている。磁気回路ユニット21の電極12に
向かう磁極の配置は、内側の3つの磁気回路ユニット2
1が隣り合う磁極が異極となるのに対し、最外側の磁気
回路ユニット21aのみ、他の磁気回路ユニット21の
外側と内側の磁極を入れ替え、外側の環状の永久磁石2
0の電極12に向かう磁極がS極、そして、内側の環状
の永久磁石20の電極12に向かう磁極がN極となる構
造としてある。この磁気回路ユニット21aを配置する
ことにより、放電容器13内の磁力線の分布形状は、電
力導入窓11の内面では磁力線31が横切っている。し
かし、電力導入窓11を横切った磁力線31は、図3で
示した磁力線31と異なり、放電容器中心近傍および放
電容器中心から約150mmの位置の2箇所で電極12
に比較的に集中して入射している。このような磁力線分
布を持つ磁場を形成しても、前述と同様な効果を発揮さ
せることができる。
【0049】図7は、図5と同様な図であり、図6に示
した磁力線分布形状を用いた場合の、磁場あり(特性A
2)と磁場なし(特性B2)のときの放電容器出口近傍
でのプラズマ密度分布を示す。「磁場あり」の場合では
図6に示された磁場が形成される。図7の放電のための
条件は、図5の場合に説明した条件と同じである。
【0050】実際の放電状態を観測すると、電力導入窓
11の近傍で、環状の高いプラズマ密度の領域が観測さ
れた。この位置は、磁力線31が集中している放電容器
中心から約150mmの位置と電力導入窓11の内面と
に挟まれた領域に相当する。放電容器出口付近のプラズ
マ密度は、磁気回路ユニットを電極12に配置しない場
合に比べて、約40%に低下していた。これに対して、
図6の構成の磁気回路ユニット21,21aを用いた場
合、電力導入窓11の近傍で生成されたプラズマは、放
電容器周辺の電極12に入る磁力線31により捕捉さ
れ、捕捉された当該プラズマ中の粒子が放電容器13の
中心に拡散されるため、放電容器出口近傍のプラズマ密
度が減少していると考えられる。
【0051】しかしながら、プラズマ密度の均一性は、
放電容器中心軸から120mmの領域で±6%と良好と
なり、当該領域の外側においては急速にプラズマ密度が
減少し、均一性は急速に悪化する。放電容器中心軸から
120mmまでの領域は、放電容器中心軸に対して垂直
な接線が引ける位置から約30mm程度内側となる位置
と放電容器中心軸との間の領域である。プラズマ密度の
均一性が改善される領域と、磁力線31の放電容器中心
軸に対して垂直な接線が引ける位置との関係は、図3に
示したプラズマ密度が良好となる領域と磁力線31との
関係と、ほぼ一致している。
【0052】以上に示した磁力線31の分布状態におけ
る放電容器中心軸に対して垂直な接線が引ける位置から
約40mm程度内側の位置と、放電容器中心軸との間の
領域内にあるプラズマは、実質的に、電力導入窓11の
内面の影響を受けていないと考えられる。このことか
ら、当該領域では均一なプラズマ密度の分布を達成する
ことが可能である。
【0053】また本実施形態で用いた内径362mmの
放電容器13よりも小さな内径260mmの放電容器1
3aを用いて、第1の実施形態の複数の磁気回路ユニッ
ト21により、放電容器中心軸から90mmの範囲内で
±10%以下の良好な均一性を得ることも可能である。
【0054】図8に、図3に示した磁力線31の分布形
状と内径260mmの放電容器13aとの関係を示す。
本実施形態の図3に示した磁気回路ユニット21の配置
を用い、磁力線31の分布における放電容器中心軸に対
して垂直な接線が引ける位置から約40mm程度内側の
位置を放電容器壁近傍となるように放電容器13aの内
径を設定している。以上の構成によっても、前記実施形
態で示したように、磁力線31の分布において放電容器
中心軸に対して垂直な接線が引ける位置から約40mm
内側の位置と、放電容器中心軸との間の領域で、すなわ
ち、放電容器中心軸から90mm程度の領域内で、良好
な均一性が得られる。
【0055】また図3に示した場合には、アンテナ19
が設置されている放電容器断面場所の磁場強度が10Ga
uss 、放電容器出口から50mm離れた場所で1Gauss
以下と低い磁場であった。被処理基板18が配置された
場所、すなわち、プラズマ処理が行われる場所の近傍に
当たる放電容器出口から50mmの場所では、ほぼ磁場
のない状態が達成可能である。従って、被処理基板18
に対してプラズマ処理が行われる際に、被処理基板18
を貫く磁力線の密度の不均一性に起因すると考えられる
チャージアップ等のダメージを最小に抑えられる。
【0056】以上の結果から、アンテナ19を設置して
いる近傍の電力導入窓11から電極12の放電容器中心
近傍に入る磁力線31の分布形状を図3または図6に示
したものを形成することで、プラズマ密度の均一性を向
上させることが可能である。従って、直径300mm以
上の大面積のプラズマの均一性をプラズマの拡散により
確保する形式の、従来のプラズマ処理装置に比べ、放電
空間を小さくでき、装置全体の占有体積を小さくでき
る。また、電極12の放電容器内側表面近傍にのみ磁場
を形成することから、被処理基板18を貫く磁力線31
は発生せず、被処理基板18のダメージを抑制できる。
【0057】図9は、本発明に係るプラズマ処理装置の
第2の実施形態を示し、図2と同様な図であって、放電
容器および磁場形成機構の断面図を示す。第1の実施形
態では、放電容器13内の磁力線の分布形状を制御する
ために、複数個の環状または円板状のヨーク16,16
aと永久磁石20からなる磁場形成機構を用いた。これ
に対して、本実施形態では、1つの環状の永久磁石33
が、電極12の大気側に配置され、簡素な形態となって
いる。環状の永久磁石33は中央に孔が空いたほぼ偏平
な傘形であり、外周部が内周部よりも電極12に接近し
た状態で配置される。換言すれば、永久磁石33は、中
央部に孔が形成された偏平なほぼ円錐形状を有し、電極
12に向かって径の大きな開口部を向けるように配置さ
れる。永久磁石33の断面形状はほぼ矩形で、この矩形
断面において放電容器33の半径方向が長軸となり、か
つこの長軸方向に着磁されている。すなわち永久磁石3
3の断面形状において、例えば内側部がS極、外側部が
N極に着磁される。環状の永久磁石33の外側にある磁
極は、内側にある磁極よりも電極12に接近した形状と
なっている。その他の構成は、第1の実施形態の場合と
同じであり、第1実施形態で説明した要素と同一の要素
には同一の符号を付している。電極12には第1の実施
形態と同一のものを使用している。また磁場形成機構
は、電極12に直接接触しない配置とし、電極12の熱
が直接伝達されない構造である。本実施形態では、さら
に永久磁石33の裏面に水冷管34を配置し、永久磁石
33を冷却し、電極12からの熱輻射、対流による永久
磁石33の温度上昇を抑制している。
【0058】本実施形態では、電極12と環状の永久磁
石33との間を大気の空気層としているが、100Pa
程度以下の真空、またはテフロン等で他の断熱層を形成
することもできる。これによって、熱の伝達をさらに抑
制する。
【0059】図10に、本実施形態による磁場形成機構
によって発生する磁場の磁力線分布形状を示す。放電容
器13内での磁場形成機構による磁力線は、放電容器中
心軸13aから放電容器の半径方向に延びている。第2
の実施形態による磁力線の分布形状は、図3と図10の
対比で明らかなように、第1の実施形態の場合の放電容
器内の磁力線分布形状と実質的に同じである。従って、
本実施形態による磁場形成機構によっても、第1の実施
形態の場合と実質的に同様にプラズマの均一性とプラズ
マ密度の上昇を達成することができる。
【0060】図11は、本発明に係るプラズマ処理装置
の第3の実施形態を示し、図2と同様な図であって、放
電容器および磁場形成機構の断面図を示す。本実施形態
では、放電容器13内の磁力線の分布形状を制御するた
めに、第2の実施形態と同様に、1つの環状の永久磁石
35を用い、簡単な構造とした。本実施形態で用いた環
状の永久磁石35は、その断面形状がL字型となってお
り、電極12の大気側に配置されている。すなわち、永
久磁石35は、中央部に孔が形成され、外周縁に電極側
に延設された縁部を有する蓋形の永久磁石であり、その
内周縁部と電極側縁部に磁極が形成される。
【0061】環状の永久磁石35の磁極はL字型断面の
両端部に形成され、一端35aが電極12に向かい、他
端35bが環状の永久磁石35の中心軸、すなわち放電
容器13の中心軸13aに向かっている。その他の構成
は、第1の実施形態の場合と同じであり、第1実施形態
で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を
付している。電極12には第1の実施形態と同一のもの
を使用している。磁場形成機構は電極12に直接接触し
ない配置とし、電極12の熱が直接伝達されない構造で
ある。
【0062】図12は、図3と同様な図である。図12
に示すように、本実施形態による磁場形成機構により生
成される磁場の磁力線分布形状を示す。当該磁場形成機
構による放電容器内での磁力線は、放電容器中心軸から
放電容器の半径方向に延びている。第3の実施形態によ
る磁力線の分布形状は、図3と図12の対比で明らかな
ように、第1の実施形態の場合の放電容器内の磁力線分
布形状と実質的に同じである。従って、本実施形態によ
る磁場形成機構によっても、第1の実施形態の場合と実
質的に同様にプラズマの均一性とプラズマ密度の上昇を
達成することができる。
【0063】なお本実施形態でも、電極12と永久磁石
35の間に、100Pa程度以下の真空またはテフロン
等で他の断熱層を形成し、熱の伝達をさらに抑制でき、
永久磁石35の裏面に水冷管を配置できる。
【0064】図13は、本発明に係るプラズマ処理装置
の第4の実施形態を示し、図2と同様な図であって、放
電容器および磁場形成機構の断面図を示す。本実施形態
では、電極12の大気側に1つの環状の電磁石36が、
放電容器中心軸を中心として配置され、電磁石36は下
方に開いた断面コ字型の環状のヨーク37に囲まれてい
る。断面コ字型のヨーク37の開放側は電極12に向か
う構造となっている。電磁石36およびヨーク37は電
極12に直接接触しないように配置され、電極12の熱
が直接伝達されない構造となっている。電磁石36は水
冷管38により間接的に水冷され、電極12からの熱輻
射、対流による電磁石などの温度上昇を抑制している。
【0065】本実施形態でも、電極12と、電磁石36
およびヨーク37との間に、100Pa程度以下の真空
またはテフロン等で他の断熱層を形成することで、熱の
伝達をさらに抑制できる。
【0066】本実施形態では、上記の構成により、断面
コ字型の開放側で磁場を発生し、放電容器13内に磁場
を形成する。外周側のヨーク37の部分を内周側のヨー
ク37の部分より電極12の側に長く延ばすことによ
り、電磁石36の中心軸方向に磁場を偏らせた。かかる
構造に基づいて、断面コ字型の開放側で発生する磁場に
おいて、放電容器内部に前述の第1〜第3の各実施形態
と同様の磁場を形成できる。さらに、本実施形態によれ
ば、電磁石36に流れる電流を制御することにより、第
1〜第3の実施形態のように機械的な機構に基づき磁場
形成機構を移動させることなく、放電容器13内に形成
される磁場強度と磁場配置を制御できる。かかる放電容
器内の磁場の制御により、前述の各実施形態と同様の効
果を得られる。また、本実施形態では1つの電磁石36
を用いたが、複数個の環状の電磁石を同心円状に配置す
ることで、任意の磁場形状を放電容器内に形成すること
が、より容易となる。
【0067】上記の各実施形態では、アンテナ19につ
いて、1ループアンテナを用いた誘導結合型プラズマ源
の例を示したが、多重ループアンテナを用いたプラズマ
源にも適用可能である。
【0068】上記実施形態の放電容器の内径はもっとも
好ましい例として362mmとしたが、350mm以上
であればよく、362mmより大きくてもよい。また本
発明の実施形態では、円筒状の電力導入窓11を用いた
放電容器の実施形態を示したが、矩形または多角形状の
筒となった放電容器に対しても、適用可能であることは
勿論である。
【0069】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明に
よれば、誘導結合型プラズマ処理装置において、放電容
器の大気側端部の電極の外側に所定構造の磁場生成機構
を設けたため、当該放電容器内のプラズマの均一性を制
御でき、これにより放電容器の口径を大きくし、放電容
器内で例えば直径300mm以上の大口径の基板の均一
な処理を行うことができる。さらに、放電容器の口径の
大型化により、プラズマ拡散容器が不要となり、プラズ
マ処理装置の小型化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置
の一部を切り欠いた外観斜視図である。
【図2】図1中のC1−C1線断面図である。
【図3】第1実施形態による磁場形成機構により形成さ
れた磁力線分布形状の磁場シミュレーション結果を示す
図である。
【図4】電力導入窓から出て電極に入る磁力線での電子
の運動状態を示す図である。
【図5】内径362mmの放電容器を用い放電圧力0.
53Paとした場合の放電容器出口近傍でのArプラズ
マのプラズマ密度分布を示す特性図である。
【図6】第1実施形態の磁場形成機構の変形例により形
成された磁力線分布形状の磁場シミュレーション結果を
示す図である。
【図7】内径362mmの放電容器を用い放電圧力0.
53Paとした場合であって、図6の磁力線分布形状を
放電容器内に形成した場合の放電容器出口近傍でのAr
プラズマのプラズマ密度分布を示す特性図である。
【図8】第1実施形態の磁場形成機構により形成された
磁力線分布形状を用い、かつ内径260mmの放電容器
を用いた場合の磁場シミュレーション結果を示す図であ
る。
【図9】本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置
についての放電容器と磁場形成機構の図2と同様な断面
図である。
【図10】第2実施形態の磁場形成機構により形成され
た磁力線分布形状の磁場シミュレーション結果を示す図
である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理装
置についての放電容器と磁場形成機構の図2と同様な断
面図である。
【図12】第2実施形態の磁場形成機構により形成され
た磁力線分布形状の磁場シミュレーション結果を示す図
である。
【図13】本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理装
置についての放電容器と磁場形成機構の図2と同様な断
面図である。
【図14】従来の誘導結合型プラズマ処理装置の一部を
切り欠いた外観斜視図である。
【図15】図14中のC2−C2線断面図である。
【符号の説明】
11 電力導入窓 12 電極 13 放電容器 14 真空容器 15 ヒータ線 16 ヨーク 17 基板保持機構 18 被処理基板 19 環状アンテナ 20 永久磁石 21 磁気回路ユニット 31 磁力線 32 電子
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年11月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 プラズマ処理装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプラズマ処理装置に
関し、特に、プラズマ発生機構で生成されたプラズマを
利用し、主にプラズマCVDおよびプラズマエッチング
へ応用されるプラズマ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のプラズマ処理装置の代表例を図1
2と図13を参照して説明する。このプラズマ処理装置
は、誘電体製の円筒形状の電力導入窓71と、その下部
周囲に配置された環状アンテナ72を備える誘導結合型
プラズマ処理装置である。
【0003】図12は、誘導結合型プラズマ処理装置の
手前部分を切り欠いて内部構造を示した外観斜視図を示
す。電力導入窓71の上端は例えば接地電位に保持され
た導電性電極73によって封じられ、これにより放電容
器74が形成される。この放電容器74は金属製プラズ
マ拡散容器75の上に設けられ、放電容器74とプラズ
マ拡散容器75の各内部空間は通じている。放電容器7
4とプラズマ拡散容器75の内部には、電極73の箇所
またはプラズマ拡散容器75の箇所から、図示しないガ
ス導入機構によって反応ガスが導入される。また放電容
器74とプラズマ拡散容器75の各内部は、図示しない
排気機構によって減圧されて所望の真空状態にされ、例
えば100Pa以下の所定の放電圧力に維持される。放
電容器74の下部周囲を囲むように配置された環状アン
テナ72を経由して電力導入窓71から高周波電力が導
入され、この高周波電力により放電が生じ放電容器74
内にプラズマが生成される。プラズマ内に含まれる活性
種は、プラズマ拡散容器75内に拡散し、プラズマ拡散
容器75内の基板保持機構76に配置された被処理基板
77の表面を処理する。
【0004】図13は図12のC2−C2線断面図であ
る。プラズマ拡散容器75の円筒状側壁の周囲には複数
の磁気回路78が円周方向に一定の間隔で配置されてい
る。磁気回路78は、ヨーク79とそれに固定された棒
状の2本の永久磁石80とからなる。棒状の永久磁石8
0はプラズマ拡散容器75の円筒形側壁の中心軸に平行
に配置され、当該中心軸に向う隣り合う磁極が互いに異
極となるように着磁されている。磁気回路78により、
プラズマ拡散容器75の側壁の内面にはラインカスプ状
の磁場が形成される。プラズマ中の電子は、プラズマ拡
散容器75の側壁の内面に沿って作られた磁力線81に
捕捉され、磁力線81を旋回中心とする螺旋運動を行
う。この際、磁束密度の勾配により、磁束密度が低い方
向、すなわち、プラズマ拡散容器75の中心軸方向に電
子の旋回中心が偏心する運動、いわゆるドリフトと呼ば
れる運動により、プラズマ拡散容器75の中心軸方向に
電子が反射される。この作用により、プラズマ中の電子
のプラズマ拡散容器75の側壁内面への衝突による消滅
が抑制される。このため、効率的なプラズマの維持が可
能である。通常、プラズマ拡散容器75の側壁の内面に
沿って形成された磁力線81をバケット磁場という。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来のプラズマ
処理装置では、放電容器74で発生したプラズマをプラ
ズマ拡散容器75内で拡散させ、プラズマ拡散容器75
に生成された上記バケット磁場によりプラズマを効率的
に維持し、被処理基板77をプラズマ処理している。こ
の際に、プラズマが生成される放電容器74からプラズ
マ拡散容器75内の被処理基板77までの距離を或る程
度以上長くして、プラズマを拡散させる必要がある。
【0006】ところで、放電容器74の口径を変えるこ
となく、被処理基板77の直径を現在のφ(直径)20
0mmから例えばφ(直径)300mm以上に広げる場
合、プラズマの拡散によって良好な均一性のプラズマを
得るためには、放電容器74から被処理基板77までの
距離をさらに長くしなければならない。このように、被
処理基板77の面積が増大すると、プラズマ処理装置の
占有体積が増大すると共に、被処理基板77の位置での
プラズマ密度が減少するので、処理速度が遅くなるとい
う問題が提起される。
【0007】他方、従来のプラズマ処理装置において、
放電容器74の口径を大きくし、生成されるプラズマの
領域を広くした場合、放電容器74から被処理基板77
までの間隔を短くすることによってプラズマ処理装置の
占有体積を小さくすることは可能である。しかしなが
ら、このようにすると、放電容器74内のプラズマ密度
分布が放電圧力によって大きく変化することが知られて
いる。
【0008】例えば、10Pa程度以上の放電圧力では
電力導入窓71の側壁内面の近くに偏ったリング状プラ
ズマの密度分布が作られ、1Pa前後の放電圧力では放
電容器74の中心近傍でプラズマ密度が高くなった密度
分布が作られる。
【0009】放電容器74内で生成されるプラズマのプ
ラズマ特性(密度分布特性)の不均一性は、被処理基板
77における処理の不均一性に直接的に反映する。
【0010】また放電圧力、すなわちプラズマ放電で処
理を行う際の内部圧力は、プラズマ密度を大きく変化さ
せるので、プラズマ処理速度を決定する重要な因子の1
つである。しかしながら、上で述べたようにプラズマ密
度分布は放電圧力によって大きく変化するため、従来、
最適なプラズマ処理速度が得られる放電圧力において、
良好な均一性を持つプラズマ処理を行えるように、プラ
ズマ密度分布を任意に制御することは困難であった。
【0011】さらに、放電容器74の側壁を取り囲むよ
うに電磁コイルを設け、プラズマ密度分布を制御するこ
とは可能であるが、装置が大型化する。また被処理基板
77を貫く磁力線81の密度の不均一性に基づき、被処
理基板77でダメージが発生する問題もある。
【0012】本発明の目的は、上記の問題を解決するも
ので、基板の大径化に応じてプラズマ源である放電容器
の口径を大きくしかつ放電容器と被処理基板の間の距離
を短くして装置全体の占有体積を小さくする場合に、放
電圧力の影響を受けることなく、放電容器で生成される
プラズマの密度分布を必要な任意分布に容易に制御する
ことができ、基板が大型化しても良好な均一性を有する
プラズマで基板を処理でき、また最適なプラズマ処理速
度で基板にダメージを与えることなく処理できるプラズ
マ処理装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】第1の本発明
(請求項1に対応)に係るプラズマ処理装置は、上記の
目的を達成するため、誘電体の例えば円筒状の電力導入
窓と電力導入窓の一端を封じ、所定電圧(接地電位等)
が印加される導電性の電極とにより構成される放電容器
と、放電容器を備え、これと連通される真空容器と、放
電容器内でプラズマを発生させるためのアンテナを備え
たプラズマ生成機構と、真空容器の内部を減圧状態に保
持するための排気機構と、真空容器内に反応ガスを導入
するガス導入機構と、電極に対し所定間隔をあけ、放電
容器の内部空間に接近させて真空容器内に設置される基
板保持機構とを備えるものであり、さらに、上記電極の
大気側の位置に電極に対して非接触状態でかつ電極の中
心部の周囲に例えば環状のレイアウトで配置された磁極
部を含む磁場形成機構を備えるように構成される。上記
のアンテナは環状であって、電力導入窓を囲むように配
置される。かかる構成で、上記磁場形成機構は、アンテ
ナの配置位置の近傍の放電容器壁を横切りかつ電極中心
から所定距離以内の電極表面に入る形状の磁力線であっ
て、放電容器内における形状がその出口方向に凸となる
当該磁力線からなる磁場を形成するように、当該磁極部
の配置が設定される。
【0014】上記の構成によれば、電極の外側に配置さ
れた磁場形成機構によって上記放電容器内に形成される
磁場に係る磁力線分布に従って電子の運動が制御され、
もって電子を放電容器内に反射することで、プラズマに
対する放電容器壁の影響を小さく抑える。電極の上側に
設置された磁場形成機構の複数の磁極の電極に対する位
置関係を好ましい状態に制御することで、放電容器内に
形成される磁力線の分布形状を所望の状態に制御し、プ
ラズマ密度の均一性を制御する。
【0015】第2の本発明(請求項2に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
で形成される上記磁場は、内径が350mm以上(好ま
しくは362mm)の放電容器を使用する場合に、上記
アンテナの配置位置の近傍の放電容器壁を横切りかつ電
極の中心から約50mm以内の電極表面に入る形状の磁
力線であって、放電容器内における形状がその出口方向
に凸となり、かつ放電容器壁の内面から約100mm以
内の領域で放電容器の中心軸に対して垂直となる接線が
描ける点を持つ形状の前記磁力線を含むことを特徴とす
る。
【0016】第3の本発明(請求項3に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、環状のヨークとこのヨークの電極側面
に固定された内外の2つの永久磁石とからなる磁気回路
ユニットであって、径が異なる複数の当該磁気回路ユニ
ットからなり、複数の磁気回路ユニットは同心円的に配
置されるように構成される。
【0017】第4の本発明(請求項4に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第3の発明において、複数の永久磁
石で、隣合う永久磁石の磁極同士が異極となるように配
置される。
【0018】第5の本発明(請求項5に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、中央部に孔が形成された円錐形状を有
し、電極に向かって径の大きな開口部を向けるように配
置された永久磁石であり、その内周縁部と外周縁部に磁
極が形成される。
【0019】第6の本発明(請求項6に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、中央部に孔が形成され、外周縁に電極
側に延設された縁部を有する蓋形の永久磁石であり、そ
の内周縁部と電極側縁部に磁極が形成される。
【0020】第7の本発明(請求項7に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、第1の発明において、磁場形成機構
が、好ましくは、電極側に開いた断面コ字形の環状のヨ
ークとこのヨークで作られる空間に配置される電磁石と
で構成される。
【0021】第8の本発明(請求項8に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、上記の各構成において、電極にその
温度を調整する温度調整機構が設けられ、電極の温度と
磁場形成機構の温度は独立に調整されることを特徴とす
る。
【0022】第9の本発明(請求項9に対応)に係るプ
ラズマ処理装置は、上記の各構成において、好ましく
は、プラズマ発生機構のアンテナが1ループ状であるこ
とを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0024】図1〜図6は本発明に係るプラズマ処理装
置の第1の実施形態を示す。図1において、11は誘電
体製の電力導入窓であり、この電力導入窓11は例えば
内径φ362mm、高さ100mmの円筒形状を有す
る。この電力導入窓11は、基板の大径化に応じて大き
な径を有するように形成されている。電力導入窓11の
材質としては例えば耐熱衝撃性が強い石英が使用され
る。12は金属製の円板形状をした電極で、電極12
は、円筒状電力導入窓11の上方端部を封じる真空フラ
ンジの役目を持ち、電力導入窓11と共に放電容器13
を構成する。放電容器13は真空容器14の上に配置さ
れ、互いの内部空間が通じ、放電容器13と真空容器1
4は全体として真空槽を形成している。真空容器14の
下部は、図示例では開放されているが、実際の装置では
真空槽を形成すべく閉じた構造となっている。また電極
12は、好ましくは接地電位に保持され、かつヒータ線
15による温度調整機構を備える。電極12に、直流バ
イアス電圧と交流バイアス電圧を並列に導入することも
できる。
【0025】さらに電極12では、その上側すなわち大
気側に、同心円状にかつ電極12に対して非接触状態で
配置された複数の環状のヨーク16と、当該ヨーク16
の各々の下側であって内側縁と外側縁に固定された環状
の2つの永久磁石20とからなる磁場形成機構が設けら
れる。ただし本実施形態の場合、中央部のヨーク16a
は円板形状になっている。この磁場形成機構は、電極1
2の放電容器側の表面近傍および放電容器13内に所望
の磁力線分布を持つ磁場を形成する。
【0026】磁場形成機構およびその周辺部に関する構
造やヒータ線15に関する構造は、後で図2を参照して
詳述される。
【0027】本実施形態では反応ガスを真空容器14の
内部に導入するためのガス導入機構を図示していない
が、通常、真空容器14にガス導入口が設けられ、反応
ガスを導入できるようになっている。電極12にガス導
入口を設けることも可能である。ガス導入機構は従来か
ら知られたものが使用される。
【0028】真空容器14の内部であって放電容器13
の下側位置には基板保持機構17が設けられる。基板保
持機構17の基板載置面は、電極12に対して一定の間
隔で対向した状態で真空容器14のほぼ上端に位置し、
基板保持機構17は放電容器13の内部空間に可能な限
り接近して配置される。基板保持機構17は、その上部
を放電容器13の内部に挿入するようにして配置するこ
ともできる。基板保持機構17の上には被処理基板18
が配置される。被処理基板18の被処理面は、放電容器
13の内部空間に臨んでいる。放電容器13の内部空間
は、放電プラズマが生成される領域である。放電容器1
3の内部で生成されたプラズマは、被処理基板18の表
面を処理する。
【0029】円筒形の電力導入窓11の周囲に配置され
た偏平な環状部材19は環状(ループ)アンテナであ
る。環状アンテナ19は、本実施形態では、電力導入窓
11の中央の位置(軸方向の中心位置)、すなわち、真
空容器14の上面から50mm離れた位置に、電力導入
窓11の全周囲を取り囲むように配置されている。環状
アンテナ19を支持する構造の図示は省略されている
が、通常、絶縁物質で作られた支持部材で上記の位置に
配置される。環状アンテナ19に対しては、例えば1
3.56MHzの周波数を有する高周波電力が供給され
る。この場合において、環状アンテナ19と、接地電位
に保持された真空容器14または電極12との距離が4
0mm以下のときには大気放電が発生するので、これを
避けるべく環状アンテナ10と接地電位である部分(電
極12と真空容器14)との距離を50mmと設定し
た。ただし、環状アンテナ19と接地電位である部分と
の距離は、整合回路の違い、あるいは、使用する高周波
電力および高周波電力の周波数に依存して異なるもので
ある。
【0030】また環状アンテナ19と接地電位の部分と
の間をテフロン等の絶縁体により埋め、大気放電の発生
を抑制することで、放電容器の高さをさらに短くするこ
ともできる。
【0031】図1に示されたプラズマ処理装置の基本動
作を概説する。この装置を動作させるには、一度、真空
容器14に付設された排気機構(よく知られたものが使
用され、図示せず)によって真空容器14および放電容
器13の内部を所定の真空状態にし、その後、図示しな
い反応ガス導入系により反応ガスを放電容器13内に導
入すると共に、同時に真空排気して100Pa以下の所
定の減圧状態を保つ。次に、図示されない電力導入機構
により環状アンテナ19に高周波電力を導入して放電容
器13内でプラズマを生成し、反応ガスの粒子を活性化
させる。本実施形態では、放電容器13の内径を例えば
362mmとして、この放電容器13内に直径300m
m以上の大きな面積を持つプラズマが生成される。真空
容器14内の基板保持機構17上に、電極12に対向す
るように設置された被処理基板18の表面は、放電容器
13内で生成されたプラズマ中の活性種により処理され
る。
【0032】図1および図2に従って、磁場形成機構に
関する構造やヒータ線15に関する構造を説明する。図
2は図1中のC1−C1線断面図である。
【0033】電極12の大気側には、内外に位置する2
つの環状の永久磁石20を固定した環状のヨーク16が
同心円状に複数個配置されている。ヨーク16と2つの
永久磁石20によって磁気回路ユニット21が形成され
る。環状のヨーク16と永久磁石20は、外側へ行くほ
ど直径が大きくなる。そして、1つのヨーク16に固定
された永久磁石20の電極12に向かう磁極が、隣り合
う永久磁石20の電極12に向かう磁極と異極となるよ
うに構成されている。ヨーク16は、永久磁石20が電
極12に直接に接触しないように配置され、電極12の
熱が永久磁石20に直接伝達されない構造とすることに
よって、永久磁石20の温度上昇を抑制し、永久磁石の
劣化を防いでいる。ヨーク16を支持する構造は図示さ
れていないが、自明の機械的支持構造が使用される。
【0034】本実施形態では電極12と永久磁石20の
間を大気としているが、100Pa程度以下の真空、あ
るいはテフロン等で他の断熱層を形成することで、熱の
伝達をさらに抑制することが可能である。
【0035】また図2に示すように、金属製の電極12
にヒータ線15を埋め込むことにより、好ましくは電極
12の放電容器側表面の温度が制御される。本実施形態
の場合、電力導入窓11に設けた電極12は、上記温度
調整機構(ヒータ線15)により70℃程度以上の所定
温度に保持されている。また温度調整機構により、プラ
ズマ中の粒子のうちプラズマ処理に必要な活性種の相対
的な割合が制御される(例えば、菅井他、第41回応用物
理学関連連合講演会予稿集 第二分冊 p536 )。ただ
し、当該効果は、プラズマに接触する面積のうち、前記
所定温度の面積が相対的に広いほど有効になる。そこで
本実施形態では、電力導入窓11の高さを100mm以
下と小さくし、所定温度に加熱することが難しい電力導
入窓11の面積を、所定温度を常時維持することが容易
な電極12の面積に対して相対的に小さくすることによ
って、上記効果を大きくした。
【0036】また電極12を加熱することにより、絶縁
体の堆積物が電極12に付着することを抑制できる。そ
の結果、電極12の表面電位が常に接地電位に保持され
るため、これに直接接触しているプラズマのプラズマ空
間電位を安定させる効果もある。通常、異なる電位であ
る複数面に接触しているプラズマのプラズマ空間電位
は、プラズマが接触している最大面積である面の電位を
基準として決定される。このため、プラズマの接する面
の内、最大面積である面の電位を安定な電位、例えば接
地電位、とすることで、プラズマ空間電位は安定する傾
向となる。従来例で示したようなプラズマ拡散容器内に
プラズマを拡散させる場合には、プラズマ拡散容器の電
位、すなわち接地電位が基準電位となる。しかし、本実
施形態で示すように、放電容器出口に基板保持機構17
が配置される構造では、電極12と電力導入窓11のう
ちプラズマの接する面積の広い方によってプラズマ空間
電位の基準が決定される。そこで、電力導入窓11の高
さを100mm以下と短くし、プラズマが接触する電力
導入窓11の面積に対するプラズマの接触する電極12
の接地面の面積の相対比を大きくし、電極12の表面電
位、すなわち接地電位をプラズマの基準電位とすること
で、放電容器内のプラズマ空間電位を安定させ、同時
に、プラズマ空間電位の再現性を向上させることが可能
である。従って、電極12の加熱により、プラズマ処理
に使用するプラズマのプラズマ空間電位を一定とするこ
とが可能なことから、プラズマ処理の再現性を向上させ
るためにも有効な手段となる。さらに、本実施形態の放
電容器13の口径のみを直径300mm以上に大口径化
した場合には、さらに当該面積の相対比は大きくなり、
前記効果をさらに大きくすることができる。
【0037】次に、前述した図1と図2、さらに図3〜
図6を参照して本実施形態によるプラズマ処理装置の特
性を説明する。
【0038】図3は本実施形態における磁場シミュレー
ションの結果としての磁力線31の分布形状を示す。こ
こで使用される放電容器13の内径は362mmであ
る。電極12の大気側には直径の異なる4つのヨーク1
6(16a)に関する磁気回路ユニット21が同心円状
に配置されている。本実施例の各磁気回路ユニット21
は、外側の環状の永久磁石20の電極12に向かう磁極
をN極、そして内側の環状の永久磁石20の磁極をS極
としている。そして、各磁気回路ユニット21の電極1
2に対する配置を、電極12との距離(電極上面と磁極
面との距離)が、図2に示すように、内側の磁気回路ユ
ニット21から23mm、11mm、11mm、3mm
となるように設定した。これらの4つの磁気回路ユニッ
ト21で形成される放電容器13内の磁力線31は、ア
ンテナ19が配置された近傍の電力導入窓(放電容器
壁)11の内面を横切り、電極12の内面上の放電容器
中心近傍(放電容器の中心軸から例えば40mm以内の
範囲)に入る分布形状を描いている。そして、電力導入
窓11を横切った磁力線31は、下側の放電容器出口で
下方に凸となった後、電極12の中心近傍に入るように
分布する。このとき、放電容器13内における磁力線3
1は、電力導入窓11から電極12にまで至る経路にお
いては放電容器を横切ることはない。そして、放電容器
13の中心軸13a(図2に示す)に対して垂直となる
接線が描ける場所は、ほぼ放電容器の中心軸13aから
約130mmの位置に存在する。このような磁力線31
に基づいて、磁力線31と電極12とで取り囲まれた空
間が放電容器13の中心軸13aを中心として環状に形
成される。
【0039】図4は、4つの磁気回路ユニット21によ
り形成された磁力線31の分布における電子32の運動
を示す。誘導結合型プラズマ処理装置では、通常、アン
テナ19の設置されている電力導入窓11の内面近傍の
電子32は誘導電界により加速されることでエネルギを
得、この電子が原子、分子等に衝突することでプラズマ
を生成し、維持している。このとき磁力線31が存在す
ると、電子32は磁力線31を旋回中心とする螺旋運動
を行う。このため、アンテナ19が設置されている場所
の近傍に電力導入窓11を横切る磁力線31が存在する
場合には、加速された電子32は磁力線31に沿って移
動する。電子32は、磁力線31に沿って移動する途中
で、分子等の他の粒子に衝突して他の粒子を励起し、電
離させる。
【0040】磁力線31を旋回中心として螺旋運動をし
ている電子32の旋回半径は、磁束密度によって変化
し、磁束密度の低い磁場ほど旋回半径が大きくなる。本
実施形態では、放電容器内に向かって磁束密度が小さく
なる配置であるために、一周の旋回を終えた電子32の
旋回中心は、元の磁力線31よりも放電容器出口に近い
磁力線31となり、磁力線31を旋回中心として螺旋運
動をしている電子32の旋回半径の中心は、放電容器1
3内の磁束密度の勾配から電極12と反対の方向に向か
い曲がっていくことになる。そして最終的には、電子3
2は磁力線31の捕捉から逃れ、電極12と反対の方向
の真空容器14に向かって移動する。いわゆる、ドリフ
トと呼ばれる現象である。従って、電極12の放電容器
内に形成された磁場の勾配により、電極12に入射して
消滅する電子32を抑制することが可能となる。
【0041】また、放電容器13の中心近傍にまで輸送
された電子32の内、放電容器13の側壁に向かって移
動する電子32は、放電容器13内に形成された磁力線
31により補捉されて移動する。中心軸13aと、この
中心軸に垂直な接線の引ける磁力線31上の点との間の
領域においては、電子32は放電容器13の出口方向に
運動することになる。そして、磁力線31が曲率を持つ
ために、電子は移動しながら放電容器13の出口方向に
ドリフトして拡散チャンバである真空容器14に拡散す
る。ただし、放電容器13の中心軸に垂直な接線の引け
る磁力線31上の点を越えた電子32は、磁力線31に
沿って運動を行い、放電容器13の側壁に衝突し消滅す
る。このため、放電容器内のプラズマ密度は、中心軸1
3aとこの中心軸に垂直な接線の引ける磁力線31上の
点との範囲の外周側で急速に低下していると考えられ
る。これらの効果により、放電容器13内のプラズマの
消滅が抑制され、プラズマ密度が均一に維持されている
と考えられる。
【0042】また石英製の電力導入窓11の内面近傍で
は負シースが形成され、磁力線31に沿って電力導入窓
11に向かって移動してきた電子32のうち電子温度の
低い電子は、負シースの電界によって反射される。しか
し、電子温度の高い電子は、負シースでの反射が行われ
ず、放電容器内面に入射し消滅する。
【0043】以上の作用によって電子32を放電容器1
3内に反射することで、プラズマに対する放電容器壁の
影響を小さく抑え、電極12の上側に設置された複数の
永久磁石20の各々と電極12との距離を適切に制御す
ることで、放電容器13内に形成される磁力線31の形
状を制御し、プラズマ密度の均一性が制御される。
【0044】なお、電極12の上側に設置された複数の
永久磁石20の各々と電極12との距離を制御するため
の機構の図示は省略される。この機構には、従来から良
く知られた昇降機能を有する任意の機械的支持機構を用
いることができる。
【0045】図5は、内径362mmの放電容器を用
い、放電圧力0.53Paとした場合において、磁場あ
り(特性A1)と磁場なし(特性B1)のときの放電容
器出口近傍でのArプラズマのプラズマ密度分布を示
す。「磁場あり」の場合では、図3に示された磁場が形
成される。横軸は放電容器13の中心軸13aから距離
(mm)を示し、縦軸はプラズマ密度(cm-3)を示
す。なお図5に示された放電のための条件は、正確に
は、放電ガス:アルゴン(Ar)、放電圧力0.53P
a、放電電力1000W、放電チャンバ(放電容器):
内径362mm;高さ100mm、拡散チャンバ(真空
容器):直径460mmである。
【0046】電極12に磁気回路ユニット21を設置し
ない場合、すなわち磁場なしの特性B1の場合には、放
電容器13の中心近傍のプラズマ密度が高くなった。プ
ラズマ密度の均一性は、半径120mm以内の領域で±
23%であった。放電圧力0.53Paにおいては、プ
ラズマ中の粒子の拡散が大きく、電力導入窓11での活
性種の消滅が大きい。このため、電力導入窓11の近傍
ではプラズマ密度が減少すると考えられる。
【0047】図3に示した本実施形態による4つの磁気
回路ユニット21を用いた場合、すなわち磁場ありの特
性A1の場合には、プラズマ密度は、磁気回路ユニット
21を用いない場合に比較して約2倍に上昇していた。
またプラズマ密度の均一性は、放電容器中心軸から12
0mmの範囲内で±16%と改善されていた。特に、放
電容器中心軸から90mmの範囲内では±10%以下に
改善されていた。放電容器中心軸から約90mmまでの
領域は、放電容器中心軸に対して垂直な接線が引ける磁
力線31の位置が約130mmであることから、当該位
置から放電容器の中心軸方向に約40mm程度内側とな
る位置と放電容器中心軸の間の領域である。以上に示し
た磁力線31の形状により形成された放電容器中心軸に
対して垂直な接線が引ける位置から約40mm程度内側
の位置と放電容器の中心軸までの間の領域内にあるプラ
ズマは、実質的に電力導入窓11の内面の影響を受け
ず、放電容器中心軸から約90mm以内の領域のプラズ
マは、磁場により閉じこめられていると考えられる。
【0048】図6に、図3に示した磁力線31の分布形
状と内径260mmの放電容器13aとの関係を示す。
本実施形態の図3に示した磁気回路ユニット21の配置
を用い、磁力線31の分布における放電容器中心軸に対
して垂直な接線が引ける位置から約40mm程度内側の
位置を放電容器壁近傍となるように放電容器13aの内
径を設定している。以上の構成によっても、前記実施形
態で示したように、磁力線31の分布において放電容器
中心軸に対して垂直な接線が引ける位置から約40mm
内側の位置と、放電容器中心軸との間の領域で、すなわ
ち、放電容器中心軸から90mm程度の領域内で、良好
な均一性が得られる。
【0049】また図3に示した場合には、アンテナ19
が設置されている放電容器断面場所の磁場強度が10Ga
uss 、放電容器出口から50mm離れた場所で1Gauss
以下と低い磁場であった。被処理基板18が配置された
場所、すなわち、プラズマ処理が行われる場所の近傍に
当たる放電容器出口から50mmの場所では、ほぼ磁場
のない状態が達成可能である。従って、被処理基板18
に対してプラズマ処理が行われる際に、被処理基板18
を貫く磁力線の密度の不均一性に起因すると考えられる
チャージアップ等のダメージを最小に抑えられる。
【0050】以上の結果から、アンテナ19を設置して
いる近傍の電力導入窓11から電極12の放電容器中心
近傍に入る磁力線31の分布形状を図3に示したものを
形成することで、プラズマ密度の均一性を向上させるこ
とが可能である。従って、直径300mm以上の大面積
のプラズマの均一性をプラズマの拡散により確保する形
式の、従来のプラズマ処理装置に比べ、放電空間を小さ
くでき、装置全体の占有体積を小さくできる。また、電
極12の放電容器内側表面近傍にのみ磁場を形成するこ
とから、被処理基板18を貫く磁力線31は発生せず、
被処理基板18のダメージを抑制できる。
【0051】図7は、本発明に係るプラズマ処理装置の
第2の実施形態を示し、図2と同様な図であって、放電
容器および磁場形成機構の断面図を示す。第1の実施形
態では、放電容器13内の磁力線の分布形状を制御する
ために、複数個の環状または円板状のヨーク16,16
aと永久磁石20からなる磁場形成機構を用いた。これ
に対して、本実施形態では、1つの環状の永久磁石33
が、電極12の大気側に配置され、簡素な形態となって
いる。環状の永久磁石33は中央に孔が空いたほぼ偏平
な傘形であり、外周部が内周部よりも電極12に接近し
た状態で配置される。換言すれば、永久磁石33は、中
央部に孔が形成された偏平なほぼ円錐形状を有し、電極
12に向かって径の大きな開口部を向けるように配置さ
れる。永久磁石33の断面形状はほぼ矩形で、この矩形
断面において放電容器33の半径方向が長軸となり、か
つこの長軸方向に着磁されている。すなわち永久磁石3
3の断面形状において、例えば内側部がS極、外側部が
N極に着磁される。環状の永久磁石33の外側にある磁
極は、内側にある磁極よりも電極12に接近した形状と
なっている。その他の構成は、第1の実施形態の場合と
同じであり、第1実施形態で説明した要素と同一の要素
には同一の符号を付している。電極12には第1の実施
形態と同一のものを使用している。また磁場形成機構
は、電極12に直接接触しない配置とし、電極12の熱
が直接伝達されない構造である。本実施形態では、さら
に永久磁石33の裏面に水冷管34を配置し、永久磁石
33を冷却し、電極12からの熱輻射、対流による永久
磁石33の温度上昇を抑制している。
【0052】本実施形態では、電極12と環状の永久磁
石33との間を大気の空気層としているが、100Pa
程度以下の真空、またはテフロン等で他の断熱層を形成
することもできる。これによって、熱の伝達をさらに抑
制する。
【0053】図8に、本実施形態による磁場形成機構に
よって発生する磁場の磁力線分布形状を示す。放電容器
13内での磁場形成機構による磁力線は、放電容器中心
軸13aから放電容器の半径方向に延びている。第2の
実施形態による磁力線の分布形状は、図3と図8の対比
で明らかなように、第1の実施形態の場合の放電容器内
の磁力線分布形状と実質的に同じである。従って、本実
施形態による磁場形成機構によっても、第1の実施形態
の場合と実質的に同様にプラズマの均一性とプラズマ密
度の上昇を達成することができる。
【0054】図9は、本発明に係るプラズマ処理装置の
第3の実施形態を示し、図2と同様な図であって、放電
容器および磁場形成機構の断面図を示す。本実施形態で
は、放電容器13内の磁力線の分布形状を制御するため
に、第2の実施形態と同様に、1つの環状の永久磁石3
5を用い、簡単な構造とした。本実施形態で用いた環状
の永久磁石35は、その断面形状がL字型となってお
り、電極12の大気側に配置されている。すなわち、永
久磁石35は、中央部に孔が形成され、外周縁に電極側
に延設された縁部を有する蓋形の永久磁石であり、その
内周縁部と電極側縁部に磁極が形成される。
【0055】環状の永久磁石35の磁極はL字型断面の
両端部に形成され、一端35aが電極12に向かい、他
端35bが環状の永久磁石35の中心軸、すなわち放電
容器13の中心軸13aに向かっている。その他の構成
は、第1の実施形態の場合と同じであり、第1実施形態
で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を
付している。電極12には第1の実施形態と同一のもの
を使用している。磁場形成機構は電極12に直接接触し
ない配置とし、電極12の熱が直接伝達されない構造で
ある。
【0056】図10は、図3と同様な図である。図10
に示すように、本実施形態による磁場形成機構により生
成される磁場の磁力線分布形状を示す。当該磁場形成機
構による放電容器内での磁力線は、放電容器中心軸から
放電容器の半径方向に延びている。第3の実施形態によ
る磁力線の分布形状は、図3と図10の対比で明らかな
ように、第1の実施形態の場合の放電容器内の磁力線分
布形状と実質的に同じである。従って、本実施形態によ
る磁場形成機構によっても、第1の実施形態の場合と実
質的に同様にプラズマの均一性とプラズマ密度の上昇を
達成することができる。
【0057】なお本実施形態でも、電極12と永久磁石
35の間に、100Pa程度以下の真空またはテフロン
等で他の断熱層を形成し、熱の伝達をさらに抑制でき、
永久磁石35の裏面に水冷管を配置できる。
【0058】図11は、本発明に係るプラズマ処理装置
の第4の実施形態を示し、図2と同様な図であって、放
電容器および磁場形成機構の断面図を示す。本実施形態
では、電極12の大気側に1つの環状の電磁石36が、
放電容器中心軸を中心として配置され、電磁石36は下
方に開いた断面コ字型の環状のヨーク37に囲まれてい
る。断面コ字型のヨーク37の開放側は電極12に向か
う構造となっている。電磁石36およびヨーク37は電
極12に直接接触しないように配置され、電極12の熱
が直接伝達されない構造となっている。電磁石36は水
冷管38により間接的に水冷され、電極12からの熱輻
射、対流による電磁石などの温度上昇を抑制している。
【0059】本実施形態でも、電極12と、電磁石36
およびヨーク37との間に、100Pa程度以下の真空
またはテフロン等で他の断熱層を形成することで、熱の
伝達をさらに抑制できる。
【0060】本実施形態では、上記の構成により、断面
コ字型の開放側で磁場を発生し、放電容器13内に磁場
を形成する。外周側のヨーク37の部分を内周側のヨー
ク37の部分より電極12の側に長く延ばすことによ
り、電磁石36の中心軸方向に磁場を偏らせた。かかる
構造に基づいて、断面コ字型の開放側で発生する磁場に
おいて、放電容器内部に前述の第1〜第3の各実施形態
と同様の磁場を形成できる。さらに、本実施形態によれ
ば、電磁石36に流れる電流を制御することにより、第
1〜第3の実施形態のように機械的な機構に基づき磁場
形成機構を移動させることなく、放電容器13内に形成
される磁場強度と磁場配置を制御できる。かかる放電容
器内の磁場の制御により、前述の各実施形態と同様の効
果を得られる。また、本実施形態では1つの電磁石36
を用いたが、複数個の環状の電磁石を同心円状に配置す
ることで、任意の磁場形状を放電容器内に形成すること
が、より容易となる。
【0061】上記の各実施形態では、アンテナ19につ
いて、1ループアンテナを用いた誘導結合型プラズマ源
の例を示したが、多重ループアンテナを用いたプラズマ
源にも適用可能である。
【0062】上記実施形態の放電容器の内径はもっとも
好ましい例として362mmとしたが、350mm以上
であればよく、362mmより大きくてもよい。また本
発明の実施形態では、円筒状の電力導入窓11を用いた
放電容器の実施形態を示したが、矩形または多角形状の
筒となった放電容器に対しても、適用可能であることは
勿論である。
【0063】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明に
よれば、誘導結合型プラズマ処理装置において、放電容
器の大気側端部の電極の外側に所定構造の磁場生成機構
を設けたため、当該放電容器内のプラズマの均一性を制
御でき、これにより放電容器の口径を大きくし、放電容
器内で例えば直径300mm以上の大口径の基板の均一
な処理を行うことができる。さらに、放電容器の口径の
大型化により、プラズマ拡散容器が不要となり、プラズ
マ処理装置の小型化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置
の一部を切り欠いた外観斜視図である。
【図2】図1中のC1−C1線断面図である。
【図3】第1実施形態による磁場形成機構により形成さ
れた磁力線分布形状の磁場シミュレーション結果を示す
図である。
【図4】電力導入窓から出て電極に入る磁力線での電子
の運動状態を示す図である。
【図5】内径362mmの放電容器を用い放電圧力0.
53Paとした場合の放電容器出口近傍でのArプラズ
マのプラズマ密度分布を示す特性図である。
【図6】第1実施形態の磁場形成機構により形成された
磁力線分布形状を用い、かつ内径260mmの放電容器
を用いた場合の磁場シミュレーション結果を示す図であ
る。
【図7】本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置
についての放電容器と磁場形成機構の図2と同様な断面
図である。
【図8】第2実施形態の磁場形成機構により形成された
磁力線分布形状の磁場シミュレーション結果を示す図で
ある。
【図9】本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理装置
についての放電容器と磁場形成機構の図2と同様な断面
図である。
【図10】第2実施形態の磁場形成機構により形成され
た磁力線分布形状の磁場シミュレーション結果を示す図
である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理装
置についての放電容器と磁場形成機構の図2と同様な断
面図である。
【図12】従来の誘導結合型プラズマ処理装置の一部を
切り欠いた外観斜視図である。
【図13】図12中のC2−C2線断面図である。
【符号の説明】 11 電力導入窓 12 電極 13 放電容器 14 真空容器 15 ヒータ線 16 ヨーク 17 基板保持機構 18 被処理基板 19 環状アンテナ 20 永久磁石 21 磁気回路ユニット 31 磁力線 32 電子
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正内容】
【図7】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正内容】
【図10】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正内容】
【図11】
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正内容】
【図12】
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図13
【補正方法】変更
【補正内容】
【図13】
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図14
【補正方法】削除
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図15
【補正方法】削除
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H05H 1/46 H01L 21/302 A

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘電体の筒状の電力導入窓と前記電力導
    入窓の一端を封じ所定電圧が印加される導電性の電極と
    により構成される放電容器と、前記放電容器を備え、こ
    れと連通される真空容器と、前記放電容器内でプラズマ
    を発生するためのアンテナを備えたプラズマ生成機構
    と、前記真空容器の内部を減圧状態に保持するための排
    気機構と、前記真空容器内に反応ガスを導入するガス導
    入機構と、前記電極に対し所定間隔をあけ、前記放電容
    器の内部空間に接近させて前記真空容器内に設置される
    基板保持機構とを備えたプラズマ処理装置において、 前記電極の大気側の位置に前記電極に対して非接触状態
    でかつ前記電極の中心部の周囲に配置された磁極部を含
    む磁場形成機構を備え、 前記アンテナは環状であって、前記電力導入窓を囲むよ
    うに配置され、 前記磁場形成機構は、前記アンテナの配置位置の近傍の
    放電容器壁を横切りかつ前記電極中心から所定距離以内
    の電極表面に入る形状の磁力線であって、前記放電容器
    内における形状がその出口方向に凸となる前記磁力線か
    らなる磁場を形成することを特徴とするプラズマ処理装
    置。
  2. 【請求項2】 前記磁場形成機構で形成される前記磁場
    は、前記放電容器の内径が350mm以上であるとき、
    前記アンテナの配置位置の近傍の放電容器壁を横切りか
    つ前記電極の中心から約50mm以内の電極表面に入る
    形状の磁力線であって、前記放電容器内における形状が
    その出口方向に凸となり、かつ前記放電容器壁の内面か
    ら約100mm以内の領域で前記放電容器の中心軸に対
    して垂直となる接線が描ける点を持つ形状の前記磁力線
    を含むことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装
    置。
  3. 【請求項3】 前記磁場形成機構が、環状のヨークとこ
    のヨークの前記電極側面に固定された内外の2つの永久
    磁石とからなる磁気回路ユニットであって、径が異なる
    複数の前記磁気回路ユニットからなり、前記複数の磁気
    回路ユニットは同心円的に配置されることを特徴とする
    請求項1記載のプラズマ処理装置。
  4. 【請求項4】 前記複数の永久磁石で、隣合う永久磁石
    の磁極同士が異極となるように配置されることを特徴と
    する請求項3記載のプラズマ処理装置。
  5. 【請求項5】 前記磁場形成機構は、中央部に孔が形成
    された円錐形状を有し、前記電極に向かって径の大きな
    開口部を向けるように配置された永久磁石であり、その
    内周縁部と外周縁部に磁極が形成されたことを特徴とす
    る請求項1記載のプラズマ処理装置。
  6. 【請求項6】 前記磁場形成機構は、中央部に孔が形成
    され、外周縁に前記電極側に延設された縁部を有する蓋
    形の永久磁石であり、その内周縁部と電極側縁部に磁極
    が形成されたことを特徴とする請求項1記載のプラズマ
    処理装置。
  7. 【請求項7】 前記磁場形成機構は、前記電極側に開い
    た断面コ字形の環状のヨークとこのヨークで作られる空
    間に配置される電磁石とで構成されることを特徴とする
    請求項1記載のプラズマ処理装置。
  8. 【請求項8】 前記電極はその温度を調整する温度調整
    機構が設けられ、前記電極の温度と前記磁場形成機構の
    温度は独立に調整されることを特徴とする請求項1〜7
    のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
  9. 【請求項9】前記プラズマ発生機構のアンテナが1ルー
    プ状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1
    項に記載のプラズマ処理装置。
JP8094912A 1996-03-25 1996-03-25 プラズマ処理装置 Pending JPH09263949A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8094912A JPH09263949A (ja) 1996-03-25 1996-03-25 プラズマ処理装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8094912A JPH09263949A (ja) 1996-03-25 1996-03-25 プラズマ処理装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH09263949A true JPH09263949A (ja) 1997-10-07

Family

ID=14123229

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8094912A Pending JPH09263949A (ja) 1996-03-25 1996-03-25 プラズマ処理装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH09263949A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6339997B1 (en) 1999-04-12 2002-01-22 Anelva Corporation Plasma processing apparatus
KR100678696B1 (ko) * 2006-02-08 2007-02-06 주식회사 뉴파워 프라즈마 환형 플라즈마를 형성하기 위한 페라이트 코어 조립체를구비한 자기 강화된 플라즈마 소오스
JP2012199376A (ja) * 2011-03-22 2012-10-18 Tokyo Electron Ltd プラズマ処理装置
JP2012204582A (ja) * 2011-03-25 2012-10-22 Tokyo Electron Ltd プラズマ処理装置
KR20190031110A (ko) * 2017-09-15 2019-03-25 가부시끼가이샤 도시바 샤워 헤드, 처리 장치 및 샤워 플레이트

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6339997B1 (en) 1999-04-12 2002-01-22 Anelva Corporation Plasma processing apparatus
KR100678696B1 (ko) * 2006-02-08 2007-02-06 주식회사 뉴파워 프라즈마 환형 플라즈마를 형성하기 위한 페라이트 코어 조립체를구비한 자기 강화된 플라즈마 소오스
JP2012199376A (ja) * 2011-03-22 2012-10-18 Tokyo Electron Ltd プラズマ処理装置
JP2012204582A (ja) * 2011-03-25 2012-10-22 Tokyo Electron Ltd プラズマ処理装置
US9236226B2 (en) 2011-03-25 2016-01-12 Tokyo Electron Limited Plasma processing apparatus
KR20190031110A (ko) * 2017-09-15 2019-03-25 가부시끼가이샤 도시바 샤워 헤드, 처리 장치 및 샤워 플레이트
JP2019054164A (ja) * 2017-09-15 2019-04-04 株式会社東芝 シャワーヘッド、処理装置、及びシャワープレート
US10837113B2 (en) 2017-09-15 2020-11-17 Kabushiki Kaisha Toshiba Shower head, processing apparatus, and shower plate

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100646266B1 (ko) 스퍼터링 증착용 플라스마 처리 장치
EP0300447B1 (en) Method and apparatus for treating material by using plasma
US4610770A (en) Method and apparatus for sputtering
US5942854A (en) Electron-beam excited plasma generator with side orifices in the discharge chamber
JP3846970B2 (ja) イオン化スパッタリング装置
JP4527431B2 (ja) プラズマ処理装置
US8778151B2 (en) Plasma processing apparatus
JP2001185542A (ja) プラズマ処理装置及びそれを用いたプラズマ処理方法
US6380684B1 (en) Plasma generating apparatus and semiconductor manufacturing method
KR20160130200A (ko) 플라즈마 처리 장치
JP2002334800A (ja) 浸漬型誘導結合プラズマ源
KR20020048415A (ko) 대영역 플라즈마 소스에서의 균일하게 가스를 분배하기위한 장치 및 그 방법
JPH09266096A (ja) プラズマ処理装置及びこれを用いたプラズマ処理方法
JP2022179495A (ja) プラズマ処理方法
KR20000057263A (ko) 기판상에 균일한 밀도의 플라즈마를 형성하기 위한 방법 및 장치
JPS61150219A (ja) マイクロ波プラズマ処理装置
JP3254069B2 (ja) プラズマ装置
JPH0653177A (ja) プラズマ生成装置、表面処理装置および表面処理方法
US5804027A (en) Apparatus for generating and utilizing magnetically neutral line discharge type plasma
JPH09263949A (ja) プラズマ処理装置
JP4527432B2 (ja) プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
JPH09186000A (ja) プラズマ処理装置
JP3666999B2 (ja) プラズマ処理装置
JP2001220671A (ja) スパッタ成膜応用のためのプラズマ処理装置
JPH1116697A (ja) プラズマ処理装置の放電容器