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JPH09246605A - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

熱電変換素子及びその製造方法

Info

Publication number
JPH09246605A
JPH09246605A JP8079461A JP7946196A JPH09246605A JP H09246605 A JPH09246605 A JP H09246605A JP 8079461 A JP8079461 A JP 8079461A JP 7946196 A JP7946196 A JP 7946196A JP H09246605 A JPH09246605 A JP H09246605A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
film
thermal spraying
raw material
thermoelectric
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8079461A
Other languages
English (en)
Inventor
Masahiro Fukumoto
昌宏 福本
Masakatsu Ito
正克 伊東
Hiroshi Kikuchi
啓 菊地
Hisataka Yakabe
久孝 矢加部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokyo Gas Co Ltd
Original Assignee
Tokyo Gas Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokyo Gas Co Ltd filed Critical Tokyo Gas Co Ltd
Priority to JP8079461A priority Critical patent/JPH09246605A/ja
Publication of JPH09246605A publication Critical patent/JPH09246605A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Coating By Spraying Or Casting (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】溶射原料粉末としてメカニカルアロイングして
得られたMA粉を用いることにより、例えば補助原料ガ
スを別途添加する必要がなく、有効な優れた熱電変換特
性を備えた厚膜の熱電変換素子を得る。 【解決手段】粉末原料をメカニカルアロイングして得ら
れた混合粉末を溶射することにより形成された熱電材料
の厚膜を有することを特徴とする熱電変換素子、及び、
粉末原料をメカニカルアロイングし、得られた混合粉末
を溶射することにより熱電材料の厚膜を形成することを
特徴とする熱電変換素子の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化合物半導体等か
らなる熱電材料を有する熱電変換素子及びその製造方法
に関し、より詳しくは熱電材料の粉末原料をメカニカル
アロイングして得られた混合粉末を溶射することにより
形成された厚膜の熱電変換素子及びその厚膜を形成する
熱電変換素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱電変換素子は、相異なる二種の金属や
p型半導体とn型半導体等の相異なる熱電材料を熱的に
並列に置き、電気的に直列に接続して接合部間に温度差
を与えることにより両端に熱起電力が発生する熱電効果
(ゼーベック効果)を利用して熱エネルギーを直接電力
に変換する素子であり、外部に負荷を接続して閉回路を
構成すると回路に電流が流れ、電力を取り出すことがで
きる。
【0003】図1はその熱電変換素子の一態様を原理的
に説明する模式図であり、n型半導体とp型半導体とを
組合せたものである。図1中、1はp型半導体、2はn
型半導体、3は高温側接合部、4は低温側接合部であ
り、Qは高温熱源、Thは高温側温度、Tcは低温側温
度を示し、Sは絶縁空間である。図示のとおり高温側接
合部には高温側電極5を共通に設け、低温側接合部には
低温側電極6、7が別個に設けられている。この態様の
熱電変換素子において、高温側接合部3と低温側接合部
4との間に温度差ΔT=Th−Tcを与えると、両電極
間(5と6及び7との間)に電圧が発生する。それ故低
温側の両電極6と7との間に負荷(R)を接続すると電
流(I)が流れ、電力(W)として取り出すことができ
る。
【0004】熱電変換素子としてはバルク、薄膜、厚膜
など様々な形態のものが考案されているが、何れにして
も一対では通常所望される電圧を得ることができないか
ら、多くの場合その複数対を積層することが必要不可欠
である。それら各種形態のうち膜状の素子はそのように
積層する場合に非常に有利となる。しかし、スパッタリ
ング法などによる薄膜素子はその断面積があまりにも小
さいために十分な電流を流すことができず、通常の用途
には向かない。このため厚膜素子とする試みがなされて
おり、厚膜成膜法である溶射法(特開昭60ー1337
69号)やその変形法(特開平5ー70921号)が提
案されている。
【0005】このうち特開昭60ー133769号にお
いては、熱発電素材として必要な条件は粒界を多数含む
多結晶の構造や、さらに好ましくは非晶質の構造であ
り、このうち非晶質熱電材料は厚さ数mm程度のバルク
を必要とするが、通常の融体急冷法では冷媒に接するの
が表面のみで内部は冷えにくく、そのため結晶化がおこ
りやすく、厚いものが得られないと指摘し、この問題点
を解決するものとして、溶射法により多結晶又は非結晶
の熱電半導体を構成し、該熱電半導体に一対の熱起電力
取出用の電極を設けるというものである。
【0006】しかし特開平5ー70921号によれば、
上記のように溶射法による場合の欠点として、例えばF
eーSi系においては、組成がFeSi2 のものが最も
高い特性指数が得られるが、溶射法による粉末原料にF
eSi2 を使用したところ、得られた膜の組成はFeS
ix(x<2)となり、Siが不足したこの組成のもの
ではFeSi2 のものほどの特性は得られない。この不
足の原因としてはSiの融点が、Feの融点1536℃
よりも低く、1414℃であり、溶融、蒸発しやすいこ
とが大きく影響していることが分かったとしている。
【0007】そこで、この技術においては、そのように
粉末原料にFeSi2 を使用する方法で不足しているS
iを補充する目的で、粉末原料に対して各種粒径のSi
粉末を添加し、プラズマトーチのパワー、作動ガスの種
類、流量等の各種製膜条件を変えて製膜している。図2
はその実施例で使用した製造装置の断面図である。図2
中、8は真空容器、9は排気口であり、排気口9は真空
ポンプ(図示せず)に連結される。10はプラズマ発生
器であり、11は作動ガス供給管、12は粉末原料供給
管、13は熱プラズマ、14は基板ホルダーであり、ま
た15は基板ホルダー14上に載置された基板、17は
噴霧される補助原料ガスである。
【0008】操作に際しては、排気口9からの排気によ
り真空容器8内を10Pa程度の真空とした後、作動ガ
ス供給管11からArガスを供給するとともに、粉末原
料供給管12からFeSi2 を供給し、プラズマ発生器
10を作動させて熱プラズマ13を形成することにより
基板15の面上に膜状熱発電素子を成膜する。この場
合、ガスパイプ16を通して補助原料ガスSiH4 を供
給し、この補助ガスを使用するとともに、プラズマトー
チのパワー、作動ガスの種類、流量等の各種製膜条件を
変えることにより粉末原料としてFeSi2 のみを使用
する場合に不足するSiを補充している。
【0009】ここでその対象としているFeーSi(F
eSi2 )系の化合物にはα相、β相及びε相がある
が、このうち熱電特性が優れているのはβ相である。こ
のβーFeSi2 は、熱電能が大きく、比抵抗が割合小
さいばかりでなく、化学的に安定で、1200K以上の
高温大気中にも耐え、機械的強度も一般のセラミック材
料より大きい。またこの半導体相は適性不純物を添加す
ることによりp型にもn型にもすることができ、原料の
鉄とシリコンが資源的にも豊富且つ安価なため経済的な
熱発電素子が得られるという特徴をもっている〔例え
ば、西田外3名「金属材料技術研究所研究報告集6(1
985)」p.149〜156〕。
【0010】しかし、前掲特開平5ー70921号の方
法においても、粉末原料供給管に加えて、別途不足Si
を補うための補助原料ガス供給管を設ける必要があるだ
けでなく、プラズマのパワー、流量等の各種製膜条件を
変える必要があり、また補助原料ガスとして例えばシラ
ン(SiH4 )という危険且つ高価なガスを用いる必要
があるなど、所定の化学量論比FeSi2 の組成ないし
はこれに近い組成の膜を得ることはなかなか難かしい。
【0011】ところで、メカニカルアロイング(機械的
合金化法:mechanicalalloying:本
明細書及び図面中、「MA」と指称する)は2種以上の
金属元素を合金化する方法であるが、この技術は成分の
異なる複数の金属原料粉(元素粉又は母合金粉)をアト
ライターなどの高エネルギーボールミルで粉砕と圧着を
繰り返して機械的に合金化するプロセスとして知られて
いるものである。この方法による、例えば酸化物粉等の
セラミックス粒子を超微細分散させて得られた粒子分散
強化型合金は他の通常の耐熱合金の2倍もの高い強さを
有し、ガスタービンの燃焼器、静翼や動翼の材料として
検討されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、溶
射法による皮膜形成用の原料粉末として上記のとおり特
殊な合金化法、すなわちMAして得られた混合粉末(本
明細書中、「MA粉」と指称する)を使用することによ
り、前述従来法のように別途補助原料ガスの添加を必要
とすることなく、βーFeSi2 ないしこれに近い組成
の有効な優れた熱電性能指数を有する厚膜を形成し得る
ことを見い出し、本発明に到達するに至ったものであ
る。すなわち本発明においては熱電材料の粉末原料とし
てMA粉を使用し、これを溶射法により成膜することに
より得られた優れた特性を有する厚膜の熱電変換素子及
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、熱電材料の粉
末原料をMAした混合粉末を溶射することにより形成さ
れた熱電材料の厚膜を有することを特徴とする熱電変換
素子を提供し、また、本発明は、熱電材料の粉末原料を
MAし、得られた混合粉末を溶射することにより熱電材
料の厚膜を形成することを特徴とする熱電変換素子の製
造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明によれば、化合物半導体か
らなる熱電材料を構成する各元素を粉末混合物としてM
Aし、得られたMA粉を溶射法における成膜原料として
使用することにより、前述のような従来法では得られな
い大きな熱電性能指数を有する厚膜を形成することがで
きる。
【0015】本発明における原料粉末としては化合物半
導体の熱電材料であれば何れも使用されるが、その例と
しては例えばFeSi2 系、Bi2Te3系、PbTe
系、Si1-XGeX(0<X<1)系その他各種の半導体
化合物を挙げることができる。本発明によれば、MA時
の原料粉末に微量成分(一例としてFeSi2 系の場合
にはMn、Co等の微量成分)を添加することにより、
最終的にp型、n型等の化合物半導体皮膜を作製するこ
とができる。
【0016】例えばFeーSi系化合物の場合、前述の
とおりα相、β相及びε相があり、このうち熱電特性が
優れているのはβ相であるが、その単相組成範囲は非常
に狭く、FeSi1.95〜FeSi2.05であると考えられ
ており、このように狭い範囲のβ相を得ることはなかな
か難しい。本発明においては、その皮膜形成に溶射法を
適用するに際して、その溶射原料としてMAで得られた
FeーSi系粉末を使用することにより、正にFeSi
2 の組成である場合を含めたFeSi1.95〜FeSi
2.05の組成を有する皮膜を形成することができる。
【0017】MAは成分粉末を合金化するための手法で
あるが、本発明における溶射用MA粉としては、必ずし
も合金化された粉末である必要はなく、均質、緊密な混
合状態となるまでMAしたものであれば使用することが
できる。またMAの手法としては、例えばアトライター
などの高エネルギーボールミルで粉砕と圧着を繰り返し
て機械的に混合することにより行うことができる。この
場合そのミル助剤としては、メタノール、エタノールそ
の他の有機系或いは無機系の溶剤を使用することがで
き、また容器内雰囲気としては好ましくはAr、その他
各種不活性ガスを使用する。
【0018】
【実施例】以下、実施例を基に本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明がこの実施例に限定されないことは勿
論である。図3は、本実施例において使用した各装置及
び各工程の流れを示すものである。図3中、18はMA
用のミル装置、19はその中に収容されたボールであ
り、MA装置18はその使用時に図中矢印で示すように
(又はその逆方向に)所定の回転数で回転させる。20
は溶射装置である。本発明においては溶射法であればガ
ス法、プラズマ溶射法、アーク法、レーザ法その他何れ
も使用することができ、好ましくはプラズマ溶射法が適
用できるが、ここではDCプラズマ溶射法の例を示して
いる。
【0019】21は溶射チャンバーであり、チャンバー
21は(図示しない)真空ポンプに連結され、操作時に
所定の圧力に排気、減圧される。22はプラズマトーチ
であり、MA装置18で得られたMA粉がキャリアガス
供給管23を通してトーチ22に供給される。24は操
作時に形成されるプラズマである。作動ガスとしては不
活性ガスを用いるが、特に好ましくはアルゴン(Ar)
が使用される。25は操作杆26を備えた操作部材であ
り、図示のとおりその上面に基板27が載置される。
【0020】溶射装置20を操作するに際しては、プラ
ズマトーチ22を作動させることによりプラズマ24が
形成され、これにより基板27面上にMA粉内材料間の
(MA粉成分相互間の)反応により生じた化合物皮膜が
形成されるが、この場合操作杆26による操作部材25
の操作により基板27を前後左右に移動させることによ
り、形成膜厚が偏奇せず、均一な膜厚となるように調整
される。次いでこうして基板上に形成された皮膜に対し
てβ化熱処理を行う。
【0021】以上の各過程で得られたMA粉、溶射皮膜
及びβ化熱処理後の溶射皮膜について評価を行う。本実
施例においては、この評価手法としてSEM(走査型電
子顕微鏡)、EDX(エネルギー分散型X線分析装
置)、EPMA(元素分析:electron pro
be microanalyser)及びXRD(X線
回析)を使用し、それらの結果を比較検討した。
【0022】《MA粉の作製》供試材料としてはFeー
Si系材料を用い、各原料粉末材料としては市販のもの
を使用した。このうちFe原料は粒子径150μm以
下、Si原料は粒子径10μm以下のものである。MA
粉の作製には、図3中18として示すような回転式ボー
ルミルを使用した。これはステンレス鋼(SUS30
4)製の内径φ128mm、内容積1.7l(1.7リ
ットル)のミル容器(ステンレスポット)であり、ミル
媒体としてはステンレス鋼(SUS304)製のボール
で、径φ9.6mmのボール1000個(全重量:3.
6kg)を装填・使用した。
【0023】MAの条件としてはボール:粉末比を10
0:1(重量比:粉末量36g)、回転速度を95±1
rpmとし、またミル助剤として0.72gのメタノー
ルを添加し、容器内雰囲気にはArを使用した。仕込組
成はβ相生成組成であるFe33Si67(at%)及びM
A粉作製中のFeの混入を考慮してFe27Si73〜Fe
30Si70(at%)とし、MA時間は90ks(=25
hr:ks=キロ秒、以下及び図面中同じ)及び360
ks(=100hr)とした。
【0024】《溶射皮膜の作製及びβ化熱処理》以上の
ようにして得たMA粉を使用してDCプラズマ溶射を実
施した。溶射には図3中20として示すようなDC減圧
プラズマ溶射装置を使用した。適用したプラズマ溶射条
件を表1に示す。
【表 1】
【0025】溶射粉末としては、得られた各MA粉を磁
製乳鉢で粉砕し、#150のふるいにかけて分級したも
の(105μm以下=ふるい下)を用い、また溶射基板
(基材)27には直径23mm、厚さ3mmのCSZ
(カルシア安定化ジルコニア)多孔質セラミックス円盤
を使用した。次いでこうして得られた皮膜をβ化するた
めに、真空中(10-2Torr)において760℃〜8
70℃の各温度範囲で、18ks〜360ks時間の各
熱処理を行った。
【0026】《各種特性の評価》得られた各MA粉、こ
れら各MA粉を原料とした溶射皮膜及び熱処理後の各溶
射皮膜について、以下に示すような各種特性評価試験を
行った。(1)断面組織は、走査型電子顕微鏡(SE
M)により観察した。(2)元素分布を観察するために
エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いた。
(3)形成膜の組成分析のためにEPMAを用いた。ま
た(4)相を同定するためにディフラクトメーターを使
ってCuKα線によるX線回折(XRD)を実施した。
【0027】《MA粉の各種特性》各MA粉の断面組織
を観察したところ(SEM)、数μmの粒子が凝集した
組織形態を示していた。MA時間90ksのものについ
ては塊状のSiも観察されたが、FeとSiは比較的均
質に分布していた。図4〜図5に二例のMA粉の組成及
びX線回折パターンを示している。これら二例における
仕込組成(MA前の粉末組成)は何れもFe33Si
67(at%)であるが、図4はMA時間90ksのも
の、図5はMA時間360ksのものである。
【0028】定量分析の結果、何れの粉末においても
(各種例のうち二例である図4〜図5も含め)Feの量
が少量増加し、またCr及びNiの混入が認められ、こ
れら増加、混入はMA時間360ksのものにおいては
特に顕著に現われていた。これはステンレスポット及び
ボールからMA粉へのコンタミ(汚染)及びMA中にS
iがFeよりも多くステンレスポット及びボールへ付着
し、回収が困難になるためである。しかし、たとえコン
タミが生じたとしても、Feはもともとの成分として初
めから存在するものなので、Siとの比を調整すれば問
題はない。CrやNiはFeに対してドーパントとして
作用するが、実際に熱電変換素子として用いる場合には
これ以上の量のドーパントを添加してp型またはn型半
導体にすることになるから、この程度であれば、コンタ
ミは実用上問題とならない。
【0029】図4〜図5からも明らかなとおり、各MA
粉ともFeとSiとのピークが現れており、合金化は未
だ起っていない。また、実験の初期の段階では仕込組成
Fe33Si67(at%)でも実施したが、図4〜図5に
も示されているように鉄のコンタミ(汚染)が明らかに
なったので(上記のとおり、このコンタミはMA容器及
びボールによるものと解される)、以降Fe27Si
73(at%)〜Fe30Si70(at%)の範囲の組成を
使用した。
【0030】《溶射皮膜の各種特性》以上で作製した各
MA粉のプラズマ溶射によって得た各皮膜の断面組織を
観察した。各皮膜ともマイクロクラックやポーラスな部
分が認められたが、何れも層状の組織形態を有し、Fe
とSiは比較的均質に分布しており、溶射による付着効
率も高く、良好な皮膜が作製できた。このうちMA時間
360ksの粉末からの皮膜は緻密であり、長時間のM
Aは均質化には有効であることを示している。ただ、こ
のような長時間処理の場合、(MA容器やボール等の如
何にもよるが)MA時のコンタミ量(汚染量)が多くな
るので、この点に留意する必要がある。また定量分析の
結果、Siは溶射中わずかに減少する傾向が見られた。
【0031】仕込組成Fe27Si73(at%)〜Fe30
Si70(at%)のMA粉で形成した皮膜は、Fe33
67(at%)に近い組成になっており、その後の熱処
理によるβ相化が有効に行えることを示した。またこれ
らの溶射皮膜には、ε相のピークに加えて、α相の生成
が認められた。この点前掲「金属材料技術研究所研究報
告集6(1985)」p.149〜156によれば、
(α+ε)の共晶合金を熱処理することによりβ相を得
ているが、このことからもα相およびε相の生成はβ相
の生成上有効に作用するものと思われる。
【0032】《熱処理後の溶射皮膜の各種特性》熱処理
後の溶射皮膜においては、何れの皮膜の場合にも、溶射
後の皮膜断面組織とほぼ同じ組織形態で、特に顕著な変
化は認められなかった。図6は、その一例としてMA前
組成Fe33Si67、MA時間90ks、温度810℃で
72ks熱処理後の溶射皮膜の断面組織を示すものであ
る。図6のとおり、基板上に200μmないしそれ以上
の膜厚の溶射皮膜が形成されていることが分かる(なお
図6中基板はその下方部の厚み部分をカットして示して
いる)。
【0033】定量分析の結果、Siは熱処理によってわ
ずかに減少する傾向が見られた。なお熱処理を施すこと
により皮膜表面付近はSiの減少が多く、内部の相と異
なるため、その測定は表面層を薄く研磨(10μm程
度)して行った。760℃〜870℃の範囲の何れの熱
処理温度においてもβ相のピークが認められたが、温度
810℃〜820℃の熱処理の場合にβ/ε比が最も大
きかった。この事実からすれば熱処理温度としては81
0℃〜820℃の範囲が最適であるといえる。
【0034】図7〜図9は熱処理後の溶射皮膜(溶射皮
膜を熱処理したもの)の三例についてのX線回折パター
ンを示し、各図中の下部にFeーSi系化合物について
のJCPDSカード(米国、1985)によるβ相及び
ε相のX線回析データを併記している。図7〜図8の例
での仕込組成はFe27Si73(at%)、図9の例での
仕込組成はFe30Si70(at%)である。また図7〜
図9の各例ともMA時間は90ks、溶射条件は、供給
電力:36kW、溶射雰囲気圧力:60Torrであ
り、形成皮膜の熱処理条件は、図7の例では820℃で
72ks、図8では810℃で72ks、図9の場合は
温度820℃で360ks実施したものである。図7〜
図9は何れも明白な強いβ相の存在を示し、特に図7、
図8はほぼβ単相に近い組織が得られたことを示してい
る。このように、これらは熱電変換素子用として有効で
あることを示し、図7〜図8のものは特に有効であるこ
とを示している。
【0035】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、溶射法
による熱電材料の皮膜形成用の原料粉末としてMAして
得られた混合粉末(MA粉)を使用することにより、例
えば従来法のように補助原料ガスの添加を必要とするこ
となく、βーFeSi2 ないしこれに近い組成の有効な
優れた熱電性能を備えた厚膜の熱電変換素子を得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱電変換素子の一態様を原理的に説明する模式
図。
【図2】従来の膜状熱発電素子の製造装置を示す図。
【図3】本発明の実施例で使用した各装置及び各工程の
流れの概略を示す図。
【図4】MA時間90ksのMA粉の組成及びX線回折
パターンを示す図〔MA前の粉末組成Fe33Si67(a
t%)〕。
【図5】MA時間360ksのMA粉の組成及びX線回
折パターンを示す図〔MA前の粉末組成Fe33Si
67(at%)〕。
【図6】熱処理後の溶射皮膜の断面組織の一例を示す図
(写真)。
【図7】溶射皮膜の熱処理後のX線回折パターンを示す
図〔仕込組成:Fe27Si73(at%)、熱処理温度:
820℃で72ks〕。
【図8】溶射皮膜の熱処理後のX線回折パターンを示す
図〔仕込組成:Fe27Si73(at%)、熱処理温度:
810℃で72ks〕。
【図9】溶射皮膜の熱処理後のX線回折パターンを示す
図〔仕込組成:Fe30Si70(at%)、熱処理温度:
820℃で360ks〕。
【符号の説明】 1 p型半導体 2 n型半導体 3 高温側接合部 4 低温側接合部 5 高温側電極 6、7 低温側電極 S 絶縁空間 8 真空容器 9 排気口 10 プラズマ発生器 11 作動ガス供給管 12 粉末原料供給管 13 熱プラズマ 14 基板ホルダー 15 基板 16 ガスパイプ 17 補助原料ガス 18 MA用ミル装置 19 ボール 20 溶射装置 21 溶射チャンバー 22 プラズマトーチ 23 キャリヤガス供給管 24 プラズマ 25 操作部材 26 基板操作杆 27 基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊東 正克 愛知県豊橋市天伯町雲雀ケ丘1の1 豊橋 技術科学大学内 (72)発明者 菊地 啓 東京都稲城市押立1188ー103 (72)発明者 矢加部 久孝 東京都墨田区緑2ー13ー7 アーバンハイ ツ両国911号

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粉末原料をメカニカルアロイングして得ら
    れた混合粉末を溶射することにより形成された熱電材料
    の厚膜を有することを特徴とする熱電変換素子。
  2. 【請求項2】上記粉末原料がFeSi2 系化合物の成分
    粉末である請求項1記載の熱電変換素子。
  3. 【請求項3】上記溶射がプラズマ溶射である請求項1又
    は2記載の熱電変換素子。
  4. 【請求項4】粉末原料をメカニカルアロイングし、得ら
    れた混合粉末を溶射することにより熱電材料の厚膜を形
    成することを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
  5. 【請求項5】上記粉末原料がFeSi2 系化合物の成分
    粉末である請求項4記載の熱電変換素子の製造方法。
  6. 【請求項6】上記メカニカルアロイングがステンレス製
    の容器及びボールを用いるメカニカルアロイングであっ
    て、粉末原料が原子%でFe27Si73〜Fe30Si70
    割合の成分粉末である請求項5記載の熱電変換素子の製
    造方法。
  7. 【請求項7】上記溶射がプラズマ溶射である請求項4、
    5又は6記載の熱電変換素子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006241514A (ja) * 2005-03-03 2006-09-14 Tohoku Univ 耐溶融塩腐食コーティング部材の製造方法及び耐溶融塩腐食コーティング部材
JP2007324500A (ja) * 2006-06-05 2007-12-13 Sps Syntex Inc FeSi2系熱電変換材料及びその製造方法
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