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JPH09216830A - Hsp60ファミリーに属するタンパク質の、タンパク多糖体含有合成抑制剤 - Google Patents

Hsp60ファミリーに属するタンパク質の、タンパク多糖体含有合成抑制剤

Info

Publication number
JPH09216830A
JPH09216830A JP8046736A JP4673696A JPH09216830A JP H09216830 A JPH09216830 A JP H09216830A JP 8046736 A JP8046736 A JP 8046736A JP 4673696 A JP4673696 A JP 4673696A JP H09216830 A JPH09216830 A JP H09216830A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
belonging
hsp60
family
molecular weight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8046736A
Other languages
English (en)
Inventor
Masayoshi Morino
眞嘉 森野
Toshimi Shiragami
俊美 白神
Yoichi Shobu
洋一 清輔
Chikao Yoshikumi
親雄 吉汲
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kureha Corp filed Critical Kureha Corp
Priority to JP8046736A priority Critical patent/JPH09216830A/ja
Publication of JPH09216830A publication Critical patent/JPH09216830A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 分子量57キロダルトンから68キロダルト
ンまでの間の熱ショックタンパク質(HSP60ファミ
リー)がその発症に関与する自己免疫疾患(例えば、I
型糖尿病や慢性関節リウマチなど)の患者の生理学的状
態を有効に改善させ、前記病気を効果的に治療すること
ができる、HSP60ファミリーに属するタンパク質の
合成抑制剤を提供する。 【解決手段】 カワラタケ属に属する担子菌の菌体、
培養物、又は子実体から得られるタンパク多糖体を有効
成分として含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カワラタケ属に属
する担子菌由来のタンパク多糖体を有効成分として含有
する、分子量が57キロダルトン(kD)から68kD
までの間の熱ショックタンパク質群(以下、HSP60
ファミリーと称する)に属するタンパク質の合成抑制剤
に関する。本発明によるHSP60ファミリーに属する
タンパク質の合成抑制剤は、特に、HSP60ファミリ
ーに属するタンパク質の組織内合成を抑制することによ
り、HSP60ファミリーに属するタンパク質が発症に
関与するものと考えられている自己免疫疾患、例えば、
I型糖尿病や慢性関節リウマチなどの病気の患者の生理
学的状態を有効に改善させ、I型糖尿病や慢性関節リウ
マチなどの自己免疫疾患を効果的に治療することができ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、自己免疫疾患が大きな問題となっ
ている。自己免疫疾患とは、本来ならば自己の身体を構
成する成分に対しては攻撃しないはずの免疫系が、自己
の組織と反応して破壊してしまう病気であり、例えば、
I型糖尿病や慢性関節リウマチなどが含まれる。例え
ば、近年わが国では、経済・社会・文化の発達と、生活
水準の向上や生活様式の変化に伴って、糖尿病患者は著
しく増加し、病態も重症化、複雑化してきた。糖尿病学
の進歩によって、患者の予後は改善したとはいえ、特有
な網膜症、腎症及び神経障害が多発し、加えて動脈硬化
も促進され、健康と社会活動に多大な支障をきたしてい
る。糖尿病のうち、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿
病;insulin-dependent diabetes mellitus ;IDD
M)の発生率は、多くの国でこの数十年間に数倍に増加
し、現在生きているヒトの1%は70才になるまでにI
型糖尿病に罹病するものと予想されている。
【0003】I型糖尿病は、インスリン産生細胞である
膵臓ランゲルハンス島のβ細胞だけが自己免疫的に破壊
されるためにインスリン欠乏状態となる疾患で、臓器特
異的な自己免疫疾患である(Atkinson, M. A. et al.:
"Sci. Am.", 263 : 42-49, 1990; Todd JA.: "Immunol.
Today", 11: 122-129, 1990)。I型糖尿病をおこす自
己免疫過程は、非常に厳密に膵臓だけに限られており、
しばしば大人になる前に発症してくることが多い。I型
糖尿病が臨床的に発症するときには、膵島の炎症(膵島
炎)があり、インスリンを産生しているβ細胞の大半が
特異的に失われる(Atkinson, M. A., et al.: "Sci. A
m.", 263 : 62-67, 1990)。糖尿病の臨床症状は、β細
胞の大部分(おそらく90%以上)が再生できない程度
にまで破壊された後に初めて現れ、患者の生存はインス
リンの外的供給に依存することになる。即ち、臨床診断
によって発見することができる時期には、この自己免疫
反応が既に不可逆的な損傷を与えており、しかもその多
くは顕著な自覚症状を示さない等、I型糖尿病は多くの
問題を含んでいる。
【0004】また、慢性関節リウマチは、関節滑膜を病
変の主座とする慢性炎症性疾患である。病変部位はとき
として関節滑膜のみにとどまらず、全身に及ぶこともま
れではない。関節滑膜に初発した炎症は、やがて滑膜増
殖、更に軟骨及び骨の破壊を起こし、関節組織の破壊が
引き起こされる。その結果、患者は社会的にも家庭的に
も著しく制限を受けるのみならず、経済的負担も無視で
きないものとなる。慢性関節リウマチの患者数は人口の
0.1〜0.3%とされる。これは慢性関節リウマチの
確診例であって、疑診例などや慢性関節リウマチの周辺
疾患を含めると患者数はその10倍前後にも増えるもの
と思われる。
【0005】一方、熱ショックタンパク質(heat shock
protein;HSP、ストレスタンパク質ともいう)は、
細胞を何らかのストレス、例えば、熱、重金属、薬剤、
アミノ酸類似体、又は低酸素(低濃度酸素)などで刺激
することにより、細胞に発現される一群のタンパク質で
ある。熱ショックタンパク質は、自然界に普遍的に存在
しており、細菌、酵母、植物、昆虫、及びヒトを含む高
等動物により産生される。
【0006】HSPは、その種類は多種多様であるが、
分子量の大きさからHSP90ファミリー(例えば、9
0kD又は110kDのHSPなど)、HSP70ファ
ミリー(例えば、70〜73kDのHSPなど)、HS
P60ファミリー(例えば、57〜68kDのHSPな
ど)、低分子HSPファミリー(例えば、20kD、2
5〜28kD、又は47kDのHSPなど)の4ファミ
リーに大別することができる。なお、本明細書において
は、特定分子量を有するHSPを、HSPとその直後に
記載する数字とによって示すものとし、例えば、分子量
60kDのHSPを『HSP60』と称するものとす
る。以上のように、HSPには多くの種類が存在する
が、これらは分子量だけでなく、構造、機能、又は性質
などもそれぞれ異なるものである。ストレスへの応答に
加えて、これらのタンパク質の中には構成的に合成され
るものがあり、正常な環境の下で、タンパク質のフォー
ルディング、アンフォールディング、タンパク質サブユ
ニットの会合、タンパク質の膜輸送のような、必須の生
理的な役割を演じていることが示されている。熱ショッ
クタンパク質としてのこれらの機能は、分子シャペロン
と称される。
【0007】自己免疫疾患の病因に関して注目されてい
ることのひとつに、分子相同性(molecular mimicry)が
ある。すなわち、自己抗原が微生物などの外来抗原と共
通抗原性をもっている場合、微生物感染によって生成さ
れる抗体や感作リンパ球が交叉反応によって自己の組織
を攻撃してしまう結果、自己免疫疾患が発症するものと
考えられている(Atkinson, M. A. et al.: "Sci. A
m.", 263 : 42-49, 1990;Shinha, A. A. et al.: "Scie
nce", 248 : 1380-1388, 1990)。例えば、細菌のHSP
60ファミリーに属するタンパク質は、結核、らい病、
梅毒、在郷軍人病、又はライム病などの主たる抗原であ
り(Young, R. A. et al.: "Cell", 59:5-8, 1989)、
かつ、細菌のHSP60ファミリーに属するタンパク質
は強い免疫原性を有し、及び自己の(宿主であるヒト
の)タンパク質との分子相同性を有するために、感染症
がトリガーとなった分子相同性による自己免疫疾患が発
症するものと考えられている。
【0008】例えば、糖尿病の患者やその家族の血中に
検出される64kDタンパク質と反応する抗体(64k
D自己抗体)はβ細胞特異的であるし、また糖尿病と診
断される直前によく出現しやすい。すなわち、I型糖尿
病において発症の原因と考えられている膵島細胞抗原
は、分子量64kDの糖タンパク質(Baekkeskov, S. e
t al.: "Nature", 298 : 167-169, 1982)である。64
kDタンパク質に対する抗体はヒトの糖尿病のみならず
(Atkinson, M. A. et al.: "Lancet", 335 : 1357-136
0, 1990)、BBラット(Baekkeskov, S. et al.: "Scie
nce", 224 : 1348-1350, 1984)やNODマウス(Atkins
on, M. A. et al.: "Diabetes", 37: 1587-1590, 1988)
などのように、自然にI型糖尿病を発症し、ヒトのI型
糖尿病の多くの特徴を示す、I型糖尿病のモデル動物に
おいても検出される。I型糖尿病における膵臓β細胞の
64kDタンパク質は、サイトカインや熱刺激で誘導さ
れるので、熱ショックタンパク質である可能性がある。
【0009】I型糖尿病のモデル動物であるNODマウ
スにおける膵臓ランゲルハンス島β細胞の64kDタン
パク質は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のH
SP60ファミリーに属するタンパク質に対する抗体と
免疫学的に交叉反応性を示す自己抗原であることが示さ
れている。このように、HSP60ファミリーに属する
タンパク質と64kDタンパク質自己抗原との間に免疫
学的交叉が観察されることにより、膵臓β細胞の64k
Dタンパク質がHSP60ファミリーの一員である可能
性があり、HSP60ファミリーに属するタンパク質の
エピトープと交叉する自己免疫の機序が、I型糖尿病の
発症に関与することが示唆されている。また、結核菌の
HSP60ファミリーに属するタンパク質に特異性を有
するTリンパ球のクローンを移入すると、幼若NODマ
ウスにランゲルハンス島炎と高血糖を引き起こす。ま
た、結核菌のHSP60ファミリーに属するタンパク質
を免疫原性のある投与方法、すなわちアジュバントとと
もにNODマウスに注射すると、糖尿病を早期に発症さ
せ得る(Elias, D. et al.: "Proc. Natl. Acad. Sci.
USA", 87: 1576-1580, 1990)。マイコバクテリアのHS
P60ファミリーに属するタンパク質に対する動物の免
疫反応がI型糖尿病を引き起こすというこれらの事実
は、マイコバクテリアのHSP60ファミリーに属する
タンパク質に対する抗体と交叉反応する抗原に対する免
疫系による攻撃が、β細胞に障害を与えることを示して
いる。
【0010】また、HSP60ファミリーに属するタン
パク質は、慢性関節リウマチの動物モデルであるラット
のアジュバント関節炎や、ヒトのリウマチ関節炎に関連
していることが知られている。例えば、慢性関節リウマ
チの場合、細菌の菌体タンパク質である熱ショックタン
パク質のなかでもHSP60ファミリーに属するタンパ
ク質は、関節軟骨に存在するプロテオグリカンと分子相
同性をもっていることが明らかとなっている。ラットの
アジュバント関節炎ではHSP60ファミリーに属する
タンパク質反応性Tリンパ球の関与が示されている("C
urr. Top. Microbiol. Immunol.", 145 : 27-83, 198
9)。この疾患は、放射線照射を受けた免疫学的に無防備
の(native)ラットに、結核菌のHSP60ファ
ミリーに属するタンパク質に対して反応性のTリンパ球
のクローンを移入することにより、前記ラットに移すこ
とができることが見出された("Science", 219 : 56-5
8, 1983; "Nature", 331: 171-173, 1988)。このTリ
ンパ球は同時に関節のプロテオグリカンとも交叉反応性
を示す("Proc. Natl. Acad. Sci. USA", 82: 5117-512
0, 1985)。このHSP60ファミリーに属するタンパク
質で誘導される調節性Tリンパ球は、溶連菌やプリステ
インによる関節炎でも認められている。従って、アジュ
バント関節炎は、抗HSP60ファミリーに属するタン
パク質Tリンパ球により引き起こされる自己免疫疾患の
ようである。また、ヒトの若年性関節リウマチでもHS
P60ファミリーに属するタンパク質反応性Tリンパ球
の関与が考えられている。
【0011】また、慢性関節リウマチの患者の滑液中か
らマイコバクテリア由来のHSP60ファミリーに属す
るタンパク質に対して、特異的に反応するTリンパ球が
取り出されている("Lancet", II: 478-480, 1988; "Na
ture", 339 : 226, 1989; "Annu. Rev. Immunol.", 1
1: 637, 1993)。このように、マイコバクテリアのHS
P60ファミリーに属するタンパク質と交叉反応性を示
すタンパク質が高濃度に慢性関節リウマチの軟骨/パン
ヌス接合部に認められるのに対し、正常な組織や他の疾
患による慢性の炎症を呈する組織においては認められな
い("Scand. J. Immunol.", 31: 283-288, 1990)。更
に、HSP60ファミリーに属するタンパク質に対する
抗体がヒト及びラットの慢性関節リウマチで検出される
(Kaufmann,S. H. E., et al.: "Immunol. Today", 11:
129-136, 1990)ことからも、慢性関節リウマチの病因
がマイコバクテリアのHSP60ファミリーに属するタ
ンパク質と構造の類似した自己抗原に対する自己免疫で
あるという可能性がある。従ってHSP60ファミリー
に属するタンパク質に対する免疫応答の存在はラット及
びヒトの両方の関節炎に関連している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記事
情に鑑み、I型糖尿病や慢性関節リウマチなどの自己免
疫疾患の患者の生理学的状態を有効に改善することがで
き、それらの自己免疫疾患を効果的に治療することので
きる方法を開発するために、HSP60ファミリーに属
するタンパク質に対して合成抑制作用を示す化合物に関
して種々検討を重ねてきた。その結果、本発明者らは、
意外にも、カワラタケ属に属する担子菌由来のタンパク
多糖体が、病態を示す組織の細胞におけるHSP60フ
ァミリーに属するタンパク質の合成を特異的に抑制する
ことを見出した。すなわち、カワラタケ属に属する担子
菌由来のタンパク多糖体を投与することによって、細胞
内でのHSP60ファミリーに属するタンパク質の合成
が抑制され、従って、I型糖尿病や慢性関節リウマチな
どの自己免疫疾患の治療が可能であることを見出したの
である。本発明はこうした知見に基づくものであり、I
型糖尿病や慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患を効果
的に治療することのできる、HSP60ファミリーに属
するタンパク質の合成抑制剤を提供することを目的とす
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、カワ
ラタケ属に属する担子菌の菌子体、培養物、又は子実体
から得られるタンパク多糖体(カワラタケ属に属する担
子菌由来のタンパク多糖体と称することがある)を有効
成分として含有することを特徴とする、分子量57キロ
ダルトンから68キロダルトンまでの間の熱ショックタ
ンパク質(すなわち、HSP60ファミリーに属するタ
ンパク質)の合成抑制剤に関する。本明細書において、
「HSP60ファミリー」とは、前記のとおり、分子量
が57kD〜68kDの熱ショックタンパク質群を意味
する。また、HSP60ファミリーに属するタンパク質
としては、例えば、HSP60(すなわち、分子量60
kDの熱ショックタンパク質)、HSP58(すなわ
ち、分子量58kDの熱ショックタンパク質)、HSP
65(すなわち、分子量65kDの熱ショックタンパク
質)、又はGroEL(すなわち、原核生物、例えば、
大腸菌などの分子量約64kDの熱ショックタンパク
質)などを挙げることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の合成抑制剤において有効成分として用い
られるタンパク多糖体は、サルノコシカケ科のカワラタ
ケ属に属する担子菌から得られるタンパク多糖体であ
る。本発明の合成抑制剤に含有される、カワラタケ属に
属する担子菌由来のタンパク多糖体は、例えば、特公昭
46−17149号、特公昭51−36322号、特公
昭56−14274号、特公昭56−14275号、及
び特公昭56−14276号各公報などに記載されてい
る。すなわち、カワラタケ属に属する天然の担子菌、ま
たは、カワラタケ属に属する担子菌の人工培養によって
得た菌糸体、培養物、又は子実体を、水又は水系溶媒に
よって抽出する。本明細書において、水系溶媒とは、水
を主体とした抽出溶媒であって、水に可溶性の酸、塩
基、塩、又は有機溶媒の1種以上を少量含む溶媒を意味
する。
【0015】人工培養は、例えば、カワラタケ属に属す
る担子菌が着生している腐朽植物体の一部、あるいはそ
の植物体上に発生している子実体の組織、又は胞子を適
当な寒天培地に移植し、数週間培養し、この培養操作を
更に2〜3回繰り返し行って、雑菌の混入が無いのを確
認後、これを母菌として液体培地又は固形培地に接種し
て培養を行う。液体培地における培養には、例えば、静
置、振盪、通気、及び通気攪拌培養等が含まれ、固形培
地としては、例えば、寒天、ゼラチン、澱粉、鋸屑、木
材、パルプ、海綿、合成樹脂、ゴム、又は砂粒等を挙げ
ることができ、それらを適宜組み合わせてもよい。前記
の担子菌を培養するための培地は、固体又は液体の何れ
でも使用可能であるが、液体の方が取り扱い及び生産性
の点から非常に便利である。培養のための培地として
は、通常の培養に用いられる処方で十分であり、前記担
子菌の発育に必要な諸栄養素が含有されていればよい。
すなわち、炭素源としては、例えば、ブドウ糖、麦芽
糖、乳糖、ショ糖、デンプン、又は廃糖密などを使用す
ることができ、窒素源としては、例えば、ペプトン、肉
エキス、酵母エキス、酵母、コーンステイーブリカー、
アンモニウム塩類、若しくは尿素などをはじめとする有
機又は無機の窒素含有物を使用することができる。他の
無機塩類としては、例えば、リン酸塩、マグネシウム
塩、鉄塩、又はその他の無機塩類を使用することができ
る。この他に生長に必要なビタミン等は適宜添加しても
よい。培養の初発pHは約2〜7であって、20〜33
℃において通常2〜20日間培養を行うのがよい。通気
攪拌培養を行う場合には、通気量0.1〜2.0リット
ル/リットル(培地)/min、攪拌速度30〜800
rpmの範囲で実施するのが適当である。
【0016】カワラタケ属に属する担子菌は、抽出に際
しては、そのまま用いてもよいが、通常、前処理、例え
ば、蒸留水、生理食塩水、又は各種緩衝液などにて洗浄
を行った後、乾燥をして、親油性有機溶媒(例えば、n
−ヘキサン、ベンゼン、石油エーテル、クロロホルム、
又は四塩化炭素等)によって脱脂後、細粉するか、ある
いは細粉せずに抽出の原料とする。また、カワラタケ属
に属する担子菌を水性液体培地を用いて深部培養を行
い、得られる培養混合物、すなわち、菌体と培地におけ
る培養生成物との混合物であるブロス(broth)を
乾燥処理した後、水又は水系溶媒により抽出し、さらに
得られる抽出液より分子量5000以下の物質を除去、
精製してもよい。つまり、一旦、該培養物を乾燥した
後、水又は水系溶媒で抽出することにより、目的とする
タンパク多糖体を得ることができる。ここでいう "深部
培養法" とは、通気と攪拌とを行いながら液中で培養す
る方法を意味するものであり、菌体の増殖は液体培地の
表面でなく、液層の深部において主として行われるので
ある。この際の通気量は、一般には0.1〜2.0リッ
トル/リットル(培地)/minであり、攪拌速度は3
0〜800rpmの範囲である。約7日間の培養期間
で、目的とするタンパク多糖体が十分に産生される。こ
の培養物の乾燥は、60℃〜150℃、好ましくは90
℃〜130℃において、水分含有率が約20重量%以下
になるように実施される。この乾燥処理に用いる乾燥手
段は特に限定されることはなく、例えば、ドラムドライ
アー、フラッシュドライアー、ザンバイ等一般の乾燥手
段が使用される。
【0017】カワラタケ属に属する天然の担子菌、ある
いはカワラタケ属に属する担子菌の人工培養によって得
た菌糸体及び/又は子実体、あるいは乾燥処理を施され
た培養混合物(broth)は、水又は水系溶媒によっ
て抽出される。抽出は攪拌しても、又は攪拌せずに抽出
を行ってもよい。これらの中では、カワラタケ属に属す
る担子菌(カワラタケ属に属する担子菌の子実体又は菌
糸体)を0.01N〜2Nのアルカリ水溶液を用いて抽
出し、得られる抽出液を限外濾過及び/又は逆浸透圧法
により処理して該抽出液中に含有される分子量5000
以下の低分子物を除去するのが、好ましい。特に限定す
るものではないが、0.01N〜2Nのアルカリ水溶液
を、菌体原料(乾燥重量)に対して5〜200倍使用す
るのが好ましい。0.01N〜2Nの濃度範囲のアルカ
リ水溶液を用いて上記担子菌を抽出する場合、50℃〜
100℃、好ましくは80℃〜98℃の温度下で20分
〜10時間行うと充分である。また、上記抽出操作は1
回でもよいが、必要に応じ数回(2回〜10回、好まし
くは3〜8回)反復して行ってもよい。また、水又は希
アルカリ水溶液により行い、逐次高濃度のアルカリ水溶
液を用いて多段階的に行ってもよい。すなわち、担子菌
から目的物質を抽出するには、水又は微量のアルカリを
含む水系溶媒を最初に使用し、ついで次第に高濃度のア
ルカリを含む水系溶媒へと逐次高濃度のアルカリを含む
水溶液を抽出溶媒として使用することにより複数回抽出
処理(すなわち、多段的抽出)を行うものである。な
お、上記抽出過程の一部において、同一濃度の抽出液に
よる抽出を反復することも差し支えない。数回抽出操作
を反復した際、抽出の回数にかかわらず、上記温度下で
の加熱時間の合計は20時間以下であることが、有効成
分の分解を防止するうえから好ましい。用いるアルカリ
には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水
酸化カルシウム、及びアンモニア水などが包含される
が、特に水酸化ナトリウムが好ましい。このようにして
得られる抽出液は、鉱酸(例えば、希塩酸)により、常
法通り中和した後、次の精製処理工程にかける。この場
合、各抽出毎に抽出液を精製処理してもよく、また、各
抽出液を合わせて精製処理してもよい。
【0018】精製処理工程は、例えば、透析、限外濾
過、逆浸透圧処理、ゲル濾過、イオン交換樹脂処理、硫
安などによる塩析、及び有機溶媒による沈殿処理などの
1種又は2種以上の方法の適用によって行われる。これ
らの方法のうち、特に効果的に適用されるのは限外濾過
及び/又は逆浸透圧処理である。限外濾過法又は逆浸透
圧法において用いることのできる膜は、分画分子量50
00〜15000表示の膜であり、標準物質としてチト
クロームc(分子量13000)に対して阻止率98〜
100%以上を有するものが有効である。また、上記膜
を用いて本発明による抽出液を精製するための操作条件
に関しては、例えば、装置の形状、又は抽出液の処理量
などにより、若干の変動があることは当然であるが、限
外濾過の場合には、圧力は0.5〜5kg/cm2 、好
ましくは1〜4kg/cm2 の加圧下で行い、操作温度
は、膜の性状により異なるが、通常5〜70℃で行うこ
とが一般的である。一方、逆浸透圧法の場合には、圧力
は、通常、20〜35kg/cm2 、好ましくは20〜
25kg/cm2 の範囲において、操作温度は、膜の性
状により異なるが、5〜20℃の範囲で行なうのが一般
的である。上記抽出液を精製するに当たっては、限外濾
過法又は逆浸透圧法を各々単独で適用してもよく、両者
を併用しても差し支えない。上記精製処理によって前記
抽出液から5000以下の低分子物を除去した後は、例
えば、噴霧乾燥又は凍結乾燥した後、製品化するもので
ある。
【0019】上記の如く、前記タンパク多糖体は、担子
菌の一種であるカワラタケ属(Coriolus)に属する菌類
を培養して得られる菌糸体、培養物(Broth)、又
は子実体から抽出により得ることができる。前記タンパ
ク多糖体は、約18〜38%のタンパク質を含み、超遠
心分離測定法により測定する分子量が5,000以上、
好ましくは5,000〜1,000,000である。
【0020】本発明の合成抑制剤に含有される、カワラ
タケ属に属する担子菌由来のタンパク多糖体の代表例
は、一般名でPSKと呼称されているものであって、ク
レスチンという商品名で三共株式会社から市販されてい
る。PSKは、すでに臨床的に用いられており、癌患者
の生存期間を延長させる効果のあることが実証されてい
る(Nakazato, H., et al., "The Lancet", 343: 1122-
1126, 1994)。また、PSKについては、最近の新薬
(1977年)第28集第14〜16頁、最近の新薬
(1978年)第29集第96〜101頁、又は医薬品
要覧(昭和54年5月第6版、薬業時報社発行)第13
46頁等にも記載されている。その性状の一端を示すと
次のとおりである。PSKは、カワラタケ
【外1】 CM−101株[FERM−P2412(ATCC 2
0547)]の菌糸体を水又は水系溶媒、例えば、熱水
又はアルカリ溶液(例えば、アルカリ金属の水酸化物、
特には水酸化ナトリウムの水溶液)で抽出し、精製した
後に乾燥して得ることができる。PSKの主要画分の糖
部分はβ−D−グルカンで、このグルカン部分の構造
は、β1→3、β1→4、及びβ1→6結合を含む分枝
構造であり、主な構成単糖は、グルコースやマンノース
である。また、PSKは約18〜38%のタンパク質を
含む。タンパク質の構成アミノ酸は、アスパラギン酸や
グルタミン酸等の酸性アミノ酸と、バリンやロイシン等
の中性アミノ酸が多く、リジンやアルギニン等の塩基性
アミノ酸は少ない。水に可溶であるが、メチルアルコー
ル、ピリジン、クロロホルム、ベンゼン、又はヘキサン
には殆ど溶けない。約120℃から徐々に分解する。
【0021】なお、本発明の出発原料に関しては、前記
のカワラタケ菌CM−101株のみならず、カワラタケ
属に属する他のカワラタケ菌株(例えば、FERM−P
No.2413〜2426)、ニクスバタケ〔Coriol
us consors (Berk.) Imaz.〕、ヤキフタケ
【外2】 ミノタケ〔Coriolus biformis (Klotz.) Pat. 〕、アラ
ゲカワラタケ
【外3】 サカズキカワラタケ〔Coriolus conchifer (Schw.) Pa
t. 〕、又はハカワラタケ〔Coriolus pargamenus (Fr.)
Pat.〕等の担子菌株も使用可能である。
【0022】本発明の合成抑制剤は、カワラタケ属に属
する担子菌由来のタンパク多糖体を、それ単独で、又は
好ましくは製剤学的若しくは獣医学的に許容することの
できる通常の担体と共に、動物、好ましくは哺乳動物
(特にはヒト)に投与することができる。投与剤型とし
ては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒
剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロ
ップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射
剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若
しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。こ
れらの経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリ
ウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、
マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリ
ン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシ
チン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸
マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネ
シウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなど
の賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動
性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安
定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、
常法に従って製造することができる。例えば、PSK1
重量部と乳糖99重量部とを混合して充填したカプセル
剤などである。
【0023】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなか
で、注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の
調製においては、有効成分としてのカワラタケ属に属す
る担子菌由来のタンパク多糖体の他に、例えば、生理食
塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しく
は脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは
塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、
防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤等を任意に用いることが
できる。具体的に一例を示すと、PSK10mgとマン
ニトール50mgとを蒸留水に溶解して10mlとし、
常法で除菌した後、2mlづつを注射用小瓶に分注し、
又はそのまま凍結乾燥して注射剤とする。使用に際し
て、生理食塩水で希釈して注射液とする。また、本発明
の合成抑制剤は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製
剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明の合
成抑制剤をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取
り込ませて、このペレットを治療すべき組織中に外科的
に移植することができる。
【0024】本発明の合成抑制剤は、これに限定される
ものではないが、カワラタケ属に属する担子菌由来のタ
ンパク多糖体を、0.01〜99重量%、好ましくは
0.1〜80重量%の量で含有することができる。本発
明の合成抑制剤を用いる場合の投与量は、病気の種類、
患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法な
どにより異なり、特に制限はないが、カワラタケ属に属
する担子菌由来のタンパク多糖体量として通常成人1人
当り1mg〜50g程度を、1日1〜4回程度にわけ
て、経口的に又は非経口的に投与する。更に、用途も医
薬品に限定されるものではなく、種々の用途、例えば、
機能性食品や健康食品として飲食物の形で与えることも
可能である。
【0025】
【作用】上記したように、本発明の合成抑制剤に含有さ
れるカワラタケ属に属する担子菌由来のタンパク多糖体
は、細胞内のHSP60ファミリーに属するタンパク質
の合成を特異的に抑制する作用があるので、前記カワラ
タケ属に属する担子菌由来のタンパク多糖体を投与する
と細胞でのHSP60ファミリーに属するタンパク質の
生合成が特異的に減少する。従って、カワラタケ属に属
する担子菌由来のタンパク多糖体は、HSP60ファミ
リーに属するタンパク質がその発症に関連する自己免疫
疾患、例えば、I型糖尿病や慢性関節リウマチなどの予
防及び治療に使用することができる。
【0026】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:ヒト培養癌細胞のHSP発現量の測定 (1)ヒト培養癌細胞の培養 以下の各種ヒト培養癌細胞を、5%二酸化炭素条件下
で、熱ショック処理時以外は、37℃で培養した。前立
腺癌細胞株DU 145(ATCC HTB 81)
は、10%非働化ウシ胎児血清(以下、FBSと略称す
る)を含むRPMI1640培地中で培養した。前立腺
癌細胞株PC−3(ATCC CRL 1435)は、
7%非働化FBSを含むF−12K培地(シグマ,カタ
ログ番号N 3520)で培養した。
【0027】(2)PSK処理及び熱ショック処理 播種2日後の前記各種ヒト培養癌細胞の培地中に、最終
濃度1mg/mlになるようにPSK(商品名クレスチ
ン)を添加し、24時間培養した。その後、45℃にて
15分間熱ショック処理をしてから、37℃にて終夜培
養した。対照試験は、PSKを添加しないこと以外は前
記と同様に実施した。
【0028】(3)ヒト培養癌細胞でのHSP発現量の
測定 前項(2)で処理した各細胞を、以下に示す方法により
ホモジナイズし、HSP発現量をウェスタンブロット法
にて測定した。すなわち、前項(2)で処理した細胞
を、リン酸緩衝生理食塩水〔組成:KCl=0.2g/
l,KH2 PO4 =0.2g/l,NaCl=8g/
l,Na2HPO4 (無水)=1.15g/l;以下、
PBS(−)と称する〕で洗浄した後、ライシスバッフ
ァー(lysis buffer)〔1.0%NP−4
0、0.15M塩化ナトリウム、50mMトリス−HC
l(pH8.0)、5mM−EDTA、2mM−N−エ
チルマレイミド、2mMフェニルメチルスルホニルフル
オリド、2μg/mlロイペプチン及び2μg/mlペ
プスタチン〕1mlを加え、氷上で20分間静置した。
その後、4℃で12000rpmにて、20分間、遠心
を行った。遠心後の上清10μlをPBS(−)790
μlに加え、更にプロテインアッセイ染色液(Dye Reag
ent Concentrate : バイオラッド,カタログ番号500-00
06)200μlを加えた。5分間、室温にて静置した
後、595nmで吸光度を測定してタンパク質定量を行
った。
【0029】タンパク質定量を行った試料を用いて、L
aemmliのバッファー系(Laemmli, N. K., "Natur
e", 283 : pp. 249-256, 1970)にて、等量のタンパク質
を含むライセートのSDSポリアクリルアミドゲル電気
泳動を行った。電気泳動後、ブロッティング及びそれに
続くブロッキングを行った。すなわち、タンパク質転写
装置(Trans-Blot Electrophoretic Transfer Cell:バ
イオ・ラッド,カタログ番号170-3946)を用いて、室温
にて100Vにて、0.45μmニトロセルロース膜
(Schleicher & Schuell,カタログ番号401196)にゲル
を密着させ、3時間ブロッティングを行った。ブロッテ
ィングバッファーとしては、0.025Mトリス及び
0.192MグリシンよりなりpH8.5に調整された
トリスグリシンバッファー(Tris Gly Running and Blo
tting Buffer;Enprotech, 米国マサチューセッツ州,
カタログ番号 SA100034)にメチルアルコールを20%に
なるように加えて調製したバッファーを用いた。ブロッ
ティング後、ニトロセルロース膜を10%スキムミルク
(雪印乳業)−PBS(−)溶液に室温にて30分間、
インキュベートし非特異的結合をブロックした。
【0030】ブロッキング後、ニトロセルロース膜の上
で、抗ヒトHSP60マウスモノクローナル抗体(Stre
ssGen, Victoria, B.C., Canada, カタログ番号 SPA-8
06)により、1次抗体反応を行った。この抗ヒトHSP
60マウスモノクローナル抗体は、大腸菌を用いるリコ
ンビナントDNA法により作製したヒトHSP60を免
疫原として作製した抗体であり("J. Exp. Med." 175
, 1805-1810, 1992)、哺乳類HSP60(霊長類HS
P60、マウスHSP60、ラットHSP60、及びハ
ムスターHSP60)と特異的に反応する("J. Exp. M
ed." 175 , 1805-1810, 1992)。この抗ヒトHSP60
マウスモノクローナル抗体が認識するエピトープは、ヒ
トHSP60アミノ酸配列の第383番目〜第447番
目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列中に局在する
("J. Exp. Med." 175 , 1805-1810,1992)。1次抗体
反応後、PBS(−)で5分間ずつ、溶液を取り替えて
2回の洗浄をスロー・ロッキング・シェイカーによって
行い、更にPBS(−)−0.1%Tween20(バ
イオ・ラッド,カタログ番号170-6531)溶液で15分間
ずつ、溶液を取り替えて4回の洗浄を行った。最終的
に、PBS(−)で5分間ずつ、2回の洗浄を行った。
【0031】洗浄終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗
マウスIgG抗体(CAPPEL,カタログ番号55550)を、2
%スキムミルクを含むPBS(−)溶液で5000倍に
希釈して調製した抗体溶液5mlを用いて、2時間、2
次抗体反応を行った。反応終了後、ニトロセルロース膜
に関して、PBS(−)溶液で5分間ずつ溶液を変えて
2回、更にPBS(−)−0.1%Tween20溶液
で15分間ずつ溶液を変えて5回の洗浄をスロー・ロッ
キング・シェイカーにより行った。最後にPBS(−)
溶液で5分間ずつ2回の洗浄を行った。余分なPBS
(−)溶液を除去した後、ウェスタンブロッティング検
出試薬(ECL Western blotting detectionreagent;Ame
rsham,カタログ番号RPN2106)をニトロセルロース膜上
に振りかけ、1分間インキュベートした後、余分な検出
試薬を除去し、ニトロセルロース膜をラップに包み、反
応面をX線フィルム(コダック X-OMAT, AR, カタログ
番号165 1454)に密着させて露光し、現像してHSP6
0の有無の検討を行った。結果を表1に示す。表中、
「↓」は、対照に比べて、PSK処理によりHSP60
発現量が減少したことを意味する。
【0032】
【表1】 癌種 癌細胞 HSP60発現量変化 前立腺 DU 145 ↓ 前立腺 PC−3 ↓
【0033】対照試験、すなわち、PSKを添加しなか
った細胞では、分子量約60kDのバンドが一本検出さ
れた。なお、分子量は、前記抗ヒトHSP60マウスモ
ノクローナル抗体との結合、及び分子量マーカー(卵白
オバルブミン及びウシ血清アルブミン)により決定し
た。表1に示すとおり、PSKは、前立腺癌細胞株DU
145及び前立腺癌細胞株PC−3においてHSP6
0の発現を抑制した。すなわち、PSKは、HSP60
の発現を抑制する合成抑制剤の活性を有すると結論する
ことができる。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、カワラタケ属に属
する担子菌由来のタンパク多糖体は、細胞内のHSP6
0ファミリーに属するタンパク質の発現を抑制する合成
抑制剤の活性を有する。従って、カワラタケ属に属する
担子菌由来のタンパク多糖体を投与することにより、例
えば、HSP60ファミリーに属するタンパク質が発症
に関与する自己免疫疾患(例えば、I型糖尿病や慢性関
節リウマチなど)の患者の生理学的状態を有効に改善さ
せ、前記病気を効果的に治療することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年4月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、カワ
ラタケ属に属する担子菌の菌体、培養物、又は子実体
から得られるタンパク多糖体(カワラタケ属に属する担
子菌由来のタンパク多糖体と称することがある)を有効
成分として含有することを特徴とする、分子量57キロ
ダルトンから68キロダルトンまでの間の熱ショックタ
ンパク質(すなわち、HSP60ファミリーに属するタ
ンパク質)の合成抑制剤に関する。本明細書において、
「HSP60ファミリー」とは、前記のとおり、分子量
が57kD〜68kDの熱ショックタンパク質群を意味
する。また、HSP60ファミリーに属するタンパク質
としては、例えば、HSP60(すなわち、分子量60
kDの熱ショックタンパク質)、HSP58(すなわ
ち、分子量58kDの熱ショックタンパク質)、HSP
65(すなわち、分子量65kDの熱ショックタンパク
質)、又はGroEL(すなわち、原核生物、例えば、
大腸菌などの分子量約64kDの熱ショックタンパク
質)などを挙げることができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カワラタケ属に属する担子菌の菌子体、
    培養物、又は子実体から得られるタンパク多糖体を有効
    成分として含有することを特徴とする、分子量57キロ
    ダルトンから68キロダルトンまでの間の熱ショックタ
    ンパク質の合成抑制剤。
  2. 【請求項2】 前記タンパク多糖体がPSKである、請
    求項1に記載の分子量57キロダルトンから68キロダ
    ルトンまでの間の熱ショックタンパク質の合成抑制剤。
JP8046736A 1996-02-08 1996-02-08 Hsp60ファミリーに属するタンパク質の、タンパク多糖体含有合成抑制剤 Pending JPH09216830A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1908474A2 (en) * 2000-01-31 2008-04-09 Tadashi Goino Physiologically active compositions of basidiomycotina and araliaceae extracts

Cited By (1)

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