JPH0883418A - 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents
磁気記録媒体および磁気記録再生装置Info
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- JPH0883418A JPH0883418A JP17515095A JP17515095A JPH0883418A JP H0883418 A JPH0883418 A JP H0883418A JP 17515095 A JP17515095 A JP 17515095A JP 17515095 A JP17515095 A JP 17515095A JP H0883418 A JPH0883418 A JP H0883418A
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Abstract
を提供することを目的とする。 【解決手段】 磁性金属粒子と非磁性母材とから構成さ
れる磁性薄膜を有する磁気記録媒体において、前記非磁
性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、
前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方
性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属
粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以
下であることを特徴としている。
Description
ディスク等で用いられる磁気記録媒体に関する。
特にハードディスク用途においては、磁気記録媒体に対
しより高密度の記録・再生能力が要求されるようになっ
てきた。この要求を満たすために、現在では飽和磁化I
sの大きいCoPtなどの磁性金属の薄膜が記録層に用
いられている。しかし、これらの磁性金属薄膜は機械的
強度に劣るため、記録・再生ヘッドとの衝突時に破損が
生じないように、磁性金属薄膜上に硬質の保護層を設
け、その上方に記録・再生ヘッドを非常に小さな間隙を
保って浮上させている。なお、保護層としては例えばバ
ルク状態でのビッカース硬度が2GPaであるSiO2
薄膜が用いられている。
高密度になればなるほど、記録・再生ヘッドと記録層と
の距離(スペーシング)を小さくする必要がある。しか
し、保護層を設けるとスペーシングの低減に対する制限
となるため、磁気記録媒体の高密度化にとって大きな障
害となっている。そこで、非常に薄い保護層を設け、か
つヘッドの浮上量を小さくする努力がなされているが、
このような保護層の保護性能が低い場合には、かえって
ヘッドとの接触による磁性金属薄膜の破損の確率は増加
してしまう。最近では炭素薄膜などを用いてより薄くか
つ保護性能の高い保護層が開発されつつあるが、いずれ
にしても保護層を設ける限り高密度化に対しての本質的
な解決策とはならない。
薄膜自体の硬度を増加させることが考えられるが、現在
知られている酸化物磁性体の磁化の値は小さいため、保
護層をなくしたとしても高密度記録には適さない。
は、磁性薄膜中において結晶粒間の磁気的相互作用を十
分に分断する必要がある。また、一般に基板上に磁性薄
膜を形成する場合、磁性薄膜内部に応力が生じて磁性薄
膜の密着性や磁気特性などに影響を及ぼすことが知られ
ているため、応力を緩和する必要がある。
気抵抗(MR)素子を用いたものが開発されているが、
MRヘッドと磁性薄膜とが接触した際に電気的な導通が
あると、MR素子に大電流が流れてヘッドが損傷する恐
れがある。一方、磁性薄膜が絶縁体である場合は、磁性
薄膜上に空気との摩擦等により発生する電荷が蓄積さ
れ、そこから素子への放電が起こり、これによりヘッド
が損傷する恐れがある。このような現象を避けるために
は、磁性薄膜の電気抵抗率が磁気記録装置の構成や材料
等に適合した値に設定することが好ましい。しかしなが
ら、これらをすべて満足する高密度記録に適した磁気記
録媒体は得られていないのが現状である。
解決するためになされたものであり、高密度記録が可能
な磁気記録媒体を提供することを目的とする。
と非磁性母材とから構成される磁性薄膜を有する磁気記
録媒体において、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金属
粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁気
異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁性
母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元
素の含有率が20原子%以下であることを特徴とする磁
気記録媒体を提供する。
粒子は磁気記録システムに応じた情報にしたがって所定
の方向に磁化され、長手記録、斜め記録または垂直記録
が可能である。また、本発明の磁気記録媒体は、記録・
再生装置(へッド)が磁気記録媒体に接触する方式、ヘ
ッドが磁気記録媒体から浮上する方式のいずれにも適用
することができる。
粒子は形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有するよ
うにする。あるいは、磁性金属粒子は形状磁気異方性エ
ネルギーが104 J/m3 以上、好ましくは5×104
J/m3 以上であり、結晶磁気異方性エネルギーが5×
105 J/m3 以上、好ましくは106 J/m3 以上で
あるようにする。
について簡単に説明する。磁気異方性とは、物体の方向
によって磁気的特性が異なる性質のことであり、その異
なる特性の原因が磁性体の形状によるものが形状磁気異
方性、結晶構造によるものが結品磁気異方性である。例
えば、針状の磁性体は長軸の方向に磁化され易いので、
形状磁気異方性がある。また、Coは結晶構造上のある
特定の方向(C軸)が磁化され易いので、結晶磁気異方
性がある。また、磁化され易い方向と困難な方向に磁化
を向けるのに必要なエネルギーの差が、磁気異方性エネ
ルギーであり、このエネルギーが大きいほど、ある方向
に磁化を安定して向けることができる。また、磁気異方
性エネルギーが大きいと、記録した情報を安定して保持
することができ、また、信号出力を大きくすることがで
きる等の磁気記録媒体にとって好ましい磁気特性が得ら
れる。
ば、磁性金属粒子に膜厚方向に細長い形状を有するもの
を用いて、形状磁気異方性を膜厚方向に付与することに
よって、垂直磁化膜とすることができる。また、磁性金
属粒子にCo基合金を用いて、膜厚方向へ結晶のC軸が
向くように成長させることによって、同様に垂直磁化膜
とすることができる。磁性金属粒子が形状磁気異方性と
結晶磁気異方性の両方を有することによって、より大き
な垂直磁気異方性を磁性薄膜に付与することができ、ま
た、垂直・斜め・長手記録用のいずれの磁気記録媒体に
も適用することができる。例えば、Co基合金からなる
磁性金属粒子が膜厚方向に細長の形状を有し、かつ結晶
のC軸が膜厚方向に沿って成長している場合は、2つの
磁気異方性の相乗効果によってより大きな磁気異方性を
得ることができる。この場合、保磁力を大きくすること
ができ、記録磁区の小さな、より高密度の記録ができる
ようになる。
直磁気異方性を有する方が高密度記録に適していると言
われており、これは、例えば、膜面内方向にC軸が配向
している磁性金属粒子が膜厚方向に細長い形状を有する
ことにより実現できる。なお、形状磁気異方性と結晶磁
気異方性とはその起源が異なるので、媒体作製プロセス
や材料選択等の面で独立に制御し易い。したがって、こ
の2つの磁気異方性を具備することは、高密度の磁気記
録媒体にとって好ましいと言える。なお、磁気異方性の
大きさや向きは、磁気記録媒体を構成する材料、作製装
置、ドライブに要求される仕様等により決定される。
膜面内方向に連続して存在する非磁性母材並びに非磁性
母材内に保持された磁性金属粒子からなる磁性薄膜から
構成されている。非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向およ
び膜面内方向に連続して存在するということは、非磁性
母材がネットワーク状の構造を持つことを意味する。本
発明における非磁性母材は、磁性薄膜全体の機械的強度
を向上させ、電気抵抗率を高め、かつ磁性金属粒子間の
磁気的相互作用を分断する役割を担っている。
きく、かつ磁気異方性が大きいものが望ましい。このよ
うなものとして、例えばCo、Pt、Sm、Fe、N
i、Cr、Mn、Bi、Al、またはこれらの合金を用
いることができる。特に、大きな結晶磁気異方性を有す
るCoPt、SmCo、CoCr等のCo基合金や、大
きい異方性エネルギーを有するMnBi、MnAl等の
Mn合金を用いることが好ましい。また、これらの金属
または合金に、磁気特性を制御する目的で、Feおよび
/またはNiを添加してもよい。さらに、これらの金属
または合金に、磁気特性を向上させるために、例えばC
r、Nb、V、Ta、Ti、W、Hf、In、Si、B
等を添加してもよい。
いが、形状磁気異方性を向上させるために円柱状、回転
楕円体形状等でも良い。磁性金属粒子は、記録される情
報にしたがって所望の方向(例えば、媒体表面の面内、
媒体表面に垂直な方向、またはその中間の方向)に磁化
され、これにより情報が記録される。磁性金属粒子を、
その長軸方向が磁気記録媒体表面の面内方向に傾くよう
に配置すると面内に磁化されやすく、磁気記録媒体表面
に対して垂直な方向に傾くように配置すると次第に垂直
方向に磁化され易くなる。
の損傷を防ぐという目的を達成するために磁気記録媒体
が満たすべき物理特性を正確に決定することは一般には
困難であるが、1つの基準として硬度を採用することが
できる。原理的には、硬度が大きいほど磁気ヘッドとの
接触による磁気記録媒体の損傷が小さくなると考えられ
る。
バルク状態で高い硬度で高い抵抗率を有するものが用い
られる。一般的に、バルクで硬い材料は薄膜化しても充
分な硬度を保つ。このような非磁性母材の材料として、
例えば一般式M−Gで表される化合物が挙げられる。こ
こで、MはSi、Al、Zr、Ti、In、Snおよび
Bからなる群より選択される少なくとも1種であり、G
は酸素、窒素および炭素からなる群より選択される少な
くとも1種である。具体的には、Si−O、Al−O、
Zr−O、Ti−O、Si−N、Al−N、Zr−N、
Ti−N、B−N、Si−C、Ti−C、B−C、Si
Al−ON、Si−ON、AlTi−OC、In−Sn
−O等が好ましい。また、非磁性母材の材料としては、
潤滑性に優れバルク状態で高硬度である炭素の同素体、
例えばダイヤモンド、アモルファスカーボン、ダイヤモ
ンドライクカーボン等を用いることもできる。これらの
非磁性母材を構成する材料のバルクにおける硬度は、バ
ルクのSiO2 が有するビッカース硬度2GPaと同程
度またはそれ以上であることが好ましい。さらに、非磁
性母材の材料として、電気絶縁体または半導体からなる
材料を用いることにより、磁気記録媒体全体の電気抵抗
率を金属薄膜媒体に比べて大幅に高くすることが可能で
ある。
させるために、上記材料に非磁性の元素を添加してもよ
い。この場合、添加元素が非磁性母材中に固溶していて
もよく、相分離した状態で添加されていてもよい。ま
た、添加元素が微粒子の状態で非磁性母材中に存在して
いてもよい。添加元素が存在する状態は、磁性金属粒子
が分散される状態における磁性薄膜の機械的特性や磁気
的特性により適宜選択する。
や非磁性母材の特性向上のために上述したような添加元
素を加える場合に、磁性金属粒子と非磁性母材とに同じ
元素が添加されていてもよい。また、後述するように、
原子レベルで磁性金属粒子と非磁性母材とが完全に分離
された状態の複合膜を形成することは事実上不可能であ
るので、磁性金属粒子に対する添加元素が非磁性母材中
に存在してもよい。この場合、添加元素の効果をより効
率的に発揮させるために、非磁性母材中の添加元素は磁
性金属粒子内に比べて1/10以下、より好ましくは1
/100以下の割合であればよい。この関係は、非磁性
母材と磁性金属粒子とを入れ換えても成り立つ。
薄膜を支持する基板としては、金属、ガラス、セラミッ
ク等を用いることができる。なお、基板と磁性薄膜との
間に、磁性体または非磁性体からなる下地層を設けても
よい。特に、金属基板を用いる場合には、磁気ヘッドと
磁気記録媒体との間の短絡を防止するために、電気絶縁
性を有する下地層を用いることが望ましい。また、磁気
記録媒体の表面には、必要に応じて極薄い(100オン
グストローム以下)保護膜を設けてもよい。さらに、磁
性金属粒子同士は、磁気的交換力が及ばない程度の距離
(1nm以上)をおいて非磁性母材に保持されているこ
とが望ましい。これは、電気抵抗を高めるだけでなく、
磁気記録媒体の保磁力を向上させ、磁気記録媒体のノイ
ズを低減させるためである。
的な記録/再生を行なうために、磁性薄膜中の磁区や記
録/再生へッドと交換相互作用・静磁気相互作用により
磁気的に結合されている。磁区と交換結合するように下
地層を配置する場合、磁化反転しやすい磁性体からなる
下地層を用いて磁区を安定化する方法、あるいは磁化の
大きな磁性体からなる下地層を用いて再生出力を増加さ
せる方法等が挙げられる。
や非磁性母材の結晶構造を制御する目的、あるいは基板
からの不純物の混入を防ぐ目的で配置される。例えば、
磁性金属粒子の所望の結晶構造の格子間隔に近い格子間
隔を持つ材料からなる下地層を用いることにより、磁性
金属粒子の結晶の格子間隔を制御することが可能であ
る。また、例えば、ある表面エネルギーを有するアモル
ファス下地層を用いることにより、磁性金属粒子あるい
は非磁性母材の結晶性あるいはアモルファス性を制御し
てもよい。また、基板からの不純物の混入を防止する場
合には、格子間隔の小さい薄膜あるいは緻密な薄膜を下
地層として用いればよい。上記の磁性体からなる下地層
や非磁性体からなる下地層は、他方の持つ機能を有して
いてもよい。すなわち、磁性体からなる下地層が磁性金
属粒子の結晶性を制御する特性を有していてもよい。こ
の場合には、記録/再生特性上の効果と結晶性における
効果とが相乗されるのでより好ましい。また、上記下地
層は、イオンプレーティング、雰囲気ガス中でのドーピ
ング、中性子線照射等により基板の表面を改質すること
により形成してもよい。これらの方法によれば、薄膜形
成工程を介さないので媒体作製上好ましい。
属粒子と非磁性母材との間に、磁性金属粒子と非磁性母
材とを効率よく結合させ、あるいは磁性金属粒子および
非磁性母材の構成元素の相互拡散を防止するための界面
層が存在していてもよい。この界面層には、磁性金属粒
子あるいは非磁性母材の少なくとも一方を構成する元素
が主成分として存在してもよく、磁性金属粒子および非
磁性母材を構成する元素がほとんど存在していなくても
よい。前者の場合、磁性金属粒子と非磁性母材とを機械
的に強固に結合させるという点で好ましく、後者は磁性
金属粒子と非磁性母材とを磁気的に完全に分離するとい
う点で好ましい。
および非磁性材料を真空中において物理的蒸着法や化学
的蒸着法により基板上に堆積させることにより形成す
る。物理的蒸着法としては、次に示す方法が挙げられ
る。(a)磁性金属材料のターゲットおよび非磁性材料
のターゲットを用いて同時スパッタリング。(b)複数
の金属材料のタ一ゲットを用い、酸素、窒素または炭素
を含む不活性ガス雰囲気中における同時スパッタリン
グ。
炭素との化合物からなる非磁性母材が形成される。な
お、(a)および(b)の場合において、磁性金属粒子
と非磁性母材の材料は、それぞれ別々のターゲットに配
置されていてもよく、両材料を同じターゲットに配置し
た複合ターゲットでもよい。前者の場合は、磁気的特性
や機械的特性の経時変化に対して対応し易いという利点
かあり、後者の場合は、大量生産に適しているという利
点がある。
般に結晶が柱状に成長することが知られている。したが
って、投入電力、スパッタリング圧力、反応性ガス種、
成膜速度、バイアス電力、添加物の種類等のプロセスパ
ラメータを選択することにより、磁性金属粒子および非
磁性母材を共に柱状に成長させることができる。また、
スパッタリング法による薄膜形成の場合、一般に磁性金
属は柱状に成長し易く、硬質誘電体薄膜はアモルファス
化し易い。このことから、スパッタリング法で磁性金属
と硬質誘電体材料を同時に成長させることにより、アモ
ルファス化した硬質誘電体からなる非磁性母材中に形状
磁気異方性の大きな柱状の磁性金属粒子が混入した磁性
薄膜を得ることが可能となる。
は、磁性金属粒子が細長い柱状に成長した場合には、磁
性薄膜の膜厚方向に付与されるが、結晶の成長の状態に
よっては、円柱状の結晶粒がその中心軸を膜面内方向に
向けて成長することもある。その場合には、膜面内方向
に形状磁気異方性が付与されることになる。また、結晶
磁気異方性の向きは、異方性を有する結晶軸が膜厚方向
/膜面内方向のどの方向に向くかによって決まる。これ
は、結晶成長の状態により制御することが可能である。
結晶成長の状態に影響を与えるプロセスパラメータとし
ては、上述の投入電力、スパッタリング圧力、反応性ガ
ス種、成膜速度、バイアス電力、添加物の種類等が挙げ
られる。この他にも、基板の状態や下地膜の成膜の状
態、例えば結晶方位や表面エネルギー等も磁気異方性に
影響を及ぼすので、これらのパラメータを選択すること
によっても所定の磁気異方性を得ることができる。
やプラズマCVD、多元同時蒸着等が挙げられる。これ
らの方法において、必要に応じて基板上に堆積された材
料に熱処理を施して、非磁性母材中に磁性金属粒子を析
出させてもよい。
面側で磁性金属粒子が非磁性母材に示める割合を小さく
し、基板界面側でその割合を大きくすることにより、磁
気ヘッドとの間の短絡をより完全に防止することができ
る。反対に、上記割合を媒体表面側で大きくし、基板界
面側で小さくすることにより、媒体磁界強度を向上させ
ることができる。なお、磁性金属材料のターゲットと非
磁性材料のターゲットに投入するパワー比等の成膜条件
を変えることにより、非磁性母材中の磁性金属粒子の割
合や分布状態を選択することができる。
媒体に対して以下に示すような特徴を有する。 (1)保護層によるスペーシングロスの解消 本発明の磁気記録媒体は、非磁性母材が高硬度の材料か
らなるために、磁性薄膜が充分な機械的強度を有する。
このため、従来の磁気記録媒体で必須であった保護層を
設ける必要がなくなる。記録・再生へッドと磁性薄膜と
の間の距離であるスペーシングは、従来は保護層の厚さ
以上にしかできなかったが、本発明による磁気記録媒体
では、この制限が全くなくなる。このことは、スペーシ
ングを小さくして、従来は不可能であった高密度記録が
可能になることを意味し、また、従来と同程度の記録密
度とする場合には、磁気記録媒体とへッドとの距離を大
きくすることができ、へッドや媒体の損傷確率を大幅に
低減できることを意味する。さらに、保護層を作製する
工程が不要になるため、媒体作製の歩留りが向上し、媒
体の製造コストを下げることができる。なお、保護層が
ない状態での動作に耐えるに充分な硬度を磁性薄膜が持
たない場合、あるいは接触動作等の従来の保護層つきの
媒体ですら耐えられないような使われ方をする場合に
は、本発明による磁性薄膜上に保護層を設けてもよい。
この場合、磁性薄膜自体の硬度は従来の金属薄膜に対し
て大きいので保護層は作製し易い。 (2)媒体ノイズの低減 本発明の磁気記録媒体では、個々の磁性金属粒子の間に
非磁性母材が存在し、磁性金属粒子間の距離が交換相互
作用の及ぶ距離よりも大きいので、媒体ノイズを小さく
することができる。
形成することによって行われるが、この反転磁区はさら
に磁性薄膜の結晶粒から構成される。結晶粒内では各原
子のスピンは同じ向きを向いており、へッドからの磁界
によって結晶粒内でほぼ同時に反転する。したがって、
反転磁区の境界の粗さは理想的には結晶粒の大きさ程度
であり、この境界の粗さが情報を記録することによって
生じる記録ノイズの原因となる。磁性薄膜では、一般に
は磁性体の結晶粒の間には酸化物等の非磁性体が存在す
るが、結晶粒間の距離が短く磁気的な絶縁が不充分であ
ると結晶粒間に交換相互作用が働く。このような状態で
は、一つの結晶粒が磁化反転すると交換相互作用によっ
て隣接する結晶粒も磁化反転してしまい、磁化反転の単
位はいくつかの結晶粒群となる。この場合、反転磁区の
境界はより粗くなり、大きな媒体ノイズか発生してしま
う。従来の磁気記録媒体は、この問題に悩まされてお
り、媒体材料にいろいろな添加物を添加することが試み
られているが、結晶粒間の相互作用を完全に分断するこ
とはできていない。現在までのところ、結晶粒間を1n
m程度にまで離すことができてはいるが、磁性元素の拡
散等のために磁気的な絶縁は完全ではなく、数〜数10
dBの記録ノイズが発生している。一方、本発明の磁気
記録媒体にはこの間題がない。すなわち、磁性結晶粒間
が非磁性母材により完全に絶縁されているために、交換
相互作用が極めて小さい。 (3)媒体の抵抗率の制御性 高感度の磁気抵抗効果(MR)型へッドを用いる場合に
は、磁気記録媒体の抵抗率が問題になる。すなわち、媒
体一へッド間の放電による記録・再生素子や媒体の破壊
が問題となる場合には、磁気記録媒体の電気伝導性が高
い方が好ましい。また、媒体への電流リークによるMR
素子の破壊や信号強度の低下が問題となる場合には、磁
気記録媒体は絶縁性である方が好ましい。
に絶縁性保護層が形成された構成であり、磁気特性や保
護性能を損なわずに磁気記録媒体全体の電気抵抗率を制
御することは不可能であった。ところが、本発明による
磁気記録媒体は、磁性金属粒子と非磁性母材との混合物
であり、両者の混合比や添加物の種類や量等で電気抵抗
率を任意に制御することができる。
問題点を解決する方法として、磁性金属微粒子を誘電体
中に分散してなる磁性薄膜が提案されている(USP
4,973,525)。しかしながら、この磁性薄膜
は、磁気記録媒体に使用可能な磁気特性を得るのために
は、700〜800Kに加熱した基板上にスパッタリン
グにより作製する必要があることが記載されているだけ
で、大きな磁気異方性エネルギーをどのようにして得る
のかということについて述べられていない。特に、実施
例に挙げられているFe微粒子は結晶磁気異方性エネル
ギーがかなり小さい材料であることが知られており、ま
た、形状も球形に近く、磁気記録媒体に必要な保磁力を
得ることは難しい。実施例では1kOc程度の保磁力が
得られることが記載されているが、これは熱処理等によ
る応力によって誘起されたものと考えられる。この場
合、応力による膜の剥離が問題となる可能性があり、ま
た、700〜800Kという熱処理温度は基板にダメー
ジを与える可能性がある。これに対して、本発明の磁気
記録媒体は、磁性金属粒子が形状磁気異方性と結晶磁気
異方性の両方を有するので、大きな保磁力を得ることが
可能である。また、熱処理を必要としないので基板に与
えるダメージもない。
および図2を参照して説明する。図1において、ガラス
基板11上には、形状磁気異方性および結晶磁気異方性
を有する磁性金属粒子1と膜厚方向および膜面内方向に
連続して存在する非磁性母材2とからなる磁性薄膜が形
成されている。
下地層12が形成され、さらにその上に形状磁気異方性
および結晶磁気異方性を有する磁性金属粒子1と、膜厚
方向および膜面内方向に連続して存在する非磁性母材2
とからなる磁性薄膜が形成されている。ここで、このよ
うな磁性薄膜の厚さは100nm以下、さらには50n
m以下、さらには20nm以下であることが好ましい。
これは、磁性薄膜の厚さが厚すぎると成膜時間が長時間
化する上、磁性薄膜中に応力に起因する歪みが入り、膜
が剥離し易くなるからである。なお、長手記録を行う場
合には、薄膜であるほど高密度の記録が可能になる。
は、磁性金属粒子と非磁性母材との複合材料とみなすこ
とができる。この磁性薄膜を複合材料のconnectivityの
定義に従って表現すれば、非磁性母材が3次元に広が
り、磁性金属粒子が2次元または1次元の結合状態にな
っていることから、いわゆる「3−1結合」または「3
−2結合」であるといえる。このような結合状態は、従
来の磁気記録媒体では知られていない。
材がネットワーク状になっていることは、磁性薄膜を酸
等に浸して磁性金属粒子のみを充分に溶解することによ
り確認できる。そして、磁性金属粒子のみを取り除いて
も、非磁性母材が元の磁性薄膜の形状を保った状態で基
板上に残存するのであれば、磁性薄膜自体が堅牢性に対
する必要条件を充分に満たしていると言える。
非磁性母材とが相分離して混在している構造を有する。
ただし、微視的な観点からは、薄膜形成時あるいは薄膜
形成後に、磁性金属粒子を構成する原子と非磁性母材を
構成する原子の拡散が起こり得るので、原子レベルで完
全に磁性金属粒子と非磁性母材とが分離された複合膜を
形成することは困難である。したがって、磁性金属粒子
と非磁性母材とが分離された構造がもたらす上述の利点
を得るためには、非磁性母材の特定領域(中央部)にお
いて、磁性金属粒子を構成する磁性元素の含有率が20
原子%以下である、あるいは磁性金属粒子中央部におい
て非磁性母材を構成する元素の含有率が20原子%以下
であることが必要である。
性母材における磁性金属粒子間の特定領域(中央部)に
ついて説明する。図3は図1に示す構成において、磁性
金属粒子としてCoPt粒子を用い、非磁性母材の材料
にSiOを用いた場合における微粒子分散薄膜の透過型
電子顕微鏡(TEM)による薄膜平面像を示す図であ
る。図中31は主にCoPtからなる磁性全属粒子部を
示し、32は主にSiOからなる非磁性母材部を示す。
これらの部分は、平面TEM像において、結晶格子の不
連続部、像のコントラストの不連続変化部等によって明
瞭に区別できる。
組成分布を示す図である。この微細な組成分析は、電子
線回折によって図3の像と同時に得ることができる。図
4中には図3より判断される磁性金属粒子部31および
非磁性母材部32の境界も示してある。本発明の磁気記
録媒体において、非磁性母材における磁性金属粒子間の
特定領域とは、図4の磁性全属粒子部31間の非磁性母
材部32の領域の中央部80%の領域のことをいう。ま
た、磁性金属粒子の中央部とは、図4の磁性全属粒子部
31の領域の中央部80%の領域のことをいう。また、
この領域は、平面TEM上でのA−A線の選び方によっ
て広さが異なるので、上記の分析を複数回行って、その
平均値で決定する。したがって、分析平均値により、磁
性金属粒子と非磁性母材との分散の度合いを評価するこ
ととなる。
金属粒子と非磁性母材の間に界面層が存在している場合
の平面TEM像を示す図である。図中31は主にCoP
tからなる磁性金属粒子部を示し、32は主にSiOか
らなる非磁性母材部を示し、51はアモルファスCoO
からなる界面層を示す。図3の場合と同様に、これらの
部分は、平面TEM上で明確に区別できる。また、図6
は、図5のB−B線上の組成分折の結果を示す図であ
る。図6の場合の磁性金属粒子中央部は、領域31の中
央部80%の領域であり、非磁性母材における磁性金属
粒子間の特定領域は、領域31間の領域32の中央部8
0%の領域である。
粒子間の交換相互作用を強める作用を持つ。図7に図3
の例における非磁性母材の特定領域の磁性元素(Co)
量に対する交換相互作用の減衰量を示す。これは、2つ
の磁性金属粒子間に非磁性母材を設置し、Co量が0原
子%の場合の交換相互作用の減衰量を1としたときの相
対量で示してある。図7から分かるように、Co量が
5,10,20原子%のときに、減衰量がそれぞれ0.
99,0.97,0.95であり、50原子%になると
ほとんど減衰しなくなる。このことから、非磁性母材の
特定領域の磁性元素の許容濃度は20原子%以下、好ま
しくは10%以下、より好ましくは5%以下である。2
0原子%以上の濃度では、磁性金属粒子と非磁性母材と
の間での構成元素の拡散(例えば、非磁性母材中の酸素
原子の磁性金属粒子内への拡散)が起こり易くなり、磁
性薄膜全体の磁気特性の劣化につながってしまう。
の中央部におけるSi量に対する磁気異方性エネルギー
の変化を示す。Si量が0原子%の場合を1とした相対
値で示す。図8から分かるように、Si量が5,10,
20原子%のときに、磁気異方性エネルギーがそれぞれ
0.95,0.90,0.80であり、20原子%以上
ではCoPtの持つ磁気異方性エネルギーを充分に引き
出せなくなり、磁気記録媒体としての磁気特性を維持で
きなくなる。このことから、磁性金属粒子中央部での非
磁性母材の構成元素の許容濃度は20原子%以下、好ま
しくは10%以下、より好ましくは5%以下である。2
0原子%以上の濃度では、磁性金属粒子と非磁性母材と
の間での構成元素の拡散が起こり易くなり、磁性薄膜全
体の磁気特性の劣化につながってしまう。なお、上記元
素分析は、表面化領域で行うが、厚さ100nm以下程
度の薄膜では、表面化領域における元素分析と膜厚方向
における元素分析とは等価である。
異方性をもつ磁性金属粒子は、球形以外の異方的な物理
的形状をもつのが一般的であり、異方性を生じさせたい
方向に円柱、回転楕円体などの長い棒状の形状であるこ
とが好ましい。ここで、磁性金属粒子の形状についてさ
らに詳細に説明する。いま、磁化Iを持つ体積vの磁性
粒子について、その反磁界係数をN、真空の透磁率をμ
0 とすると、Nの方向の静磁エネルギーは、 U=1/2μ0 ・N・I2 ・v で表される。磁性粒子がz軸に関して軸対称であれば、
x、y、z軸方向の反磁界係数Nx 、Ny 、Nz は Nx =Ny =(1−Nz )/2 である。磁性粒子の形状が回転楕円体である場合を考え
ると、飽和磁化Isがz軸から角度θで傾いている場合
の静磁エネルギーUは、 U=1/4μ0 ・Is2 ・v・(3Nz −1)cos2
θ+const. である。この式から、形状磁気異方性エネルギーの大き
さは(1−3Nz )に比例することがわかる。また、形
状磁気異方性が最大になるのはNz =0、最小になるの
はNz =1/3のときである。z軸に沿って細長の回転
楕円体の(長軸の長さ)/(短軸の長さ)をrとし、r
と(1−3Nz )との関係を調べると、r=1、1.
5、2、3、5、10に対してそれぞれ(1−3Nz )
=0、0.30、0.48、0.67、0.83、0.
94となる。このことから、rが1.5以上であれば最
大の形状磁気異方性のほぼ30%、さらにrが3以上で
あればほぼ70%の形状磁気異方性を得ることができ
る。またこれは、磁性金属粒子の形状が長い棒状であれ
ば、回転楕円体に限らずほぼ同様の関係が満足される。
て高密度記録を実現するために、磁性薄膜が満たすべき
条件について検討する。以下において磁性薄膜の物性の
うち充填率および電気抵抗率について説明する。 (1)充填率 非磁性母材中における磁性金属粒子の充填率は磁性薄膜
の硬度、磁気特性等に重要な影響を及ぼす。いま、磁性
金属粒子が円柱形状であり、底面から見た粒子の配列が
hcpであると仮定すると、充填率pは粒子の半径aお
よび粒子間の間隔bを用いて、以下の数式(I)で表さ
れる。
録媒体の磁性金属粒子の結晶粒径は約40nmであり、
磁性金属粒子間の交換相互作用を分断するために要する
距離は少なくとも約1nmであることが知られている。
これらの値を代入して計算するとpは0.7以下とな
る。さらに、磁性金属粒子の充填率を制御することによ
って、磁性金属粒子間の磁気的相互作用の分断の度合を
制御できることは明らかである。より高密度の記録を行
うには、充填率の値は0.5以下であることが好まし
い。ただし、充填率の値は指針の1つであり、pの最適
値は磁気ドライブシステムの仕様によって決まるもので
ある。また、本発明の磁気記録再生装置における磁気記
録媒体では、磁性金属粒子を非磁性母材の不純物とみな
すことができるため、充填率によって磁性薄膜の内部応
力を制御することができる。なおここで、磁性金属粒子
の底面から見た配列がfcc等hcp以外であっても、
同様の理由からこのような充填率の値0.7以下で磁性
金属粒子の交換相互作用は有効に分断される。以上のよ
うに磁性薄膜全体にわたる充填率の平均値を制御するこ
ともできるが、磁性薄膜の膜厚方向に沿って充填率の変
化のさせ方を任意に制御して種々の特性を改善すること
もできる。なお、充填率の下限は特に限定しないが、
0.05以上であれば充分である。
率の高い部分と低い部分とが交互に現れるように変化さ
せると、局所的に少しずつ応力を集中させることがで
き、全体として内部応力を緩和させることができる。磁
性薄膜の内部応力が緩和されると、基板に対する磁性薄
膜の密着性が向上するので、磁気記録媒体の耐久性、寿
命が向上し、さらにバーストノイズの原因となる磁性薄
膜の欠陥を減少することができる。なお、このような充
填率の変化のさせ方は一例であって、磁性薄膜の成膜条
件によって内部応力の値は異なるので、それぞれの場合
によって適切な変化を与えればよい。
充填率が低くなるように変化させると、磁気記録媒体の
表面の硬度が向上するので、ヘッドクラッシュ等に対す
る磁気記録媒体の耐久性をより向上させることができ
る。この場合、ヘッドを接触走行させて記録させても十
分な耐久性を有するので、非常に高密度の磁気記録が可
能な磁気記録媒体を実現できる。
充填率が増加するように変化させると、磁性薄膜の表面
における磁化が大きくなるため、再生出力を大きくさせ
ることができる。ここで、基板と非磁性母材の材料が類
似しており、両者の膨張係数などの機械的特性が類似し
ている場合には、基板と磁性薄膜との界面における機械
的特性の差が小さくなるため、密着性を向上させること
ができる。
せて記録する場合には、磁性薄膜の表面における硬度お
よび電気絶縁性が高いことも重要な因子になる。したが
って、磁性薄膜の表面における磁性金属粒子の割合も重
要なパラメータの1つである。磁性薄膜の表面において
は、(磁性金属粒子の面積)/(非磁性母材の面積)の
値が、磁性金属粒子の充填率と同様に、0.7以下、さ
らには0.5以下であることが好ましい。実質的には、
0.05以上あれば充分である。 (2)電気抵抗率 本発明の磁気記録媒体では、非磁性母材として絶縁体を
用いれば、磁性金属粒子の充填率を制御することによっ
て、磁性薄膜の電気抵抗率を制御することができる。ま
た、非磁性母材に元素を添加することにより薄膜全体の
電気抵抗率を制御することができる。例えば、磁性薄膜
の電気抵抗率が1Ω・cm以上であれば、ヘッドの導体
部分に比べて充分に絶縁体とみなすことができ、MRヘ
ッドを用いた場合でも接触時の媒体へ電流がリークする
ことによるヘッドの破壊を防ぐことができる。MRヘッ
ドのようにヘッドの導体部分が微細化されている場合に
は、その部分の抵抗が増加するので、磁性薄膜の電気抵
抗率は105 Ω・cm以上であることが好ましく、さら
に完全な電気絶縁性を保つためには1010Ω・cm以上
であることが好ましい。
ディスク状の媒体を高速に回転させると、大気との摩擦
によってディスク上に電荷が発生することが知られてい
る。ディスク上にたまった電荷が磁気へッドへと放電し
てしまうと、へッド素子が破壊される可能性がある。た
まった電荷量が少なくても、磁気へッドの導体部分の体
積が小さいと、そこに流れる電流は大きくなる。したが
って、ヘッド素子の集積化が進むにつれて、このディス
ク上にたまる電荷が問題となる。上記の絶縁性よりも電
荷の方が問題となる場合には、媒体にある程度の導電性
を付与することが好ましい。ただし、完全に導体となっ
てしまうと上述のへッド素子からの電流のリークが発生
するので好ましくない。具体的には、電気抵抗率は10
-4〜105 Ω・cmであることが好ましい。なお、上記
の絶縁性およびある程度の電気伝導性は、用いるへッド
や磁気ディスク装置等のシステム環境によって選択す
る。10-4Ω・cm以上の電気抵抗率を実現する母材材
料としてはインジウム錫酸化物(ITO)が知られてい
る。また、10-2Ω・cm以上の電気抵抗率を実現する
母材材料としては、TiN、TaN、TiC等の遷移金
属の窒化物が知られている。それ以上の電気抵抗率を実
現する場合には、通常の誘電体材料、例えばSiO、A
lN、BN等を用いればよい。
磁気ディスクドライブシステム上においては、へッドを
媒体に接触させた状態で、媒体基板またはスピンドルと
へッド内のいかなる導電性部分との間においても満たさ
れるのが好ましい。例えば、静電気によるへッド素子の
破壊を防止するのであれば、へッドを媒体に接触させた
状態で、媒体基板またはスピンドルとへッド内のいかな
る導電性部分との間においても電気抵抗率を1Ω・cm
以上に設定すれば、いかなる動作条件下においてもへッ
ドの損傷か起こらない。同様に、上述のへッド素子から
の電流のリークを防止するためには、へッドを媒体に接
触させた状態で、媒体基板またはスビンドルとへッド内
のいかなる導電性部分との間においても電気抵抗率を1
0-4Ω・cm以上に設定することが好ましい。 (3)磁性薄膜全体の磁気特性 本発明の磁気記録媒体が、1Gb/in2 以上の高密度
磁気記録を可能にするためには、微小な記録磁区を安定
に保持するために高い保磁力Hcが必要である。具体的
には、2kOe以上のHcを有することが好ましい。さ
らに、10Gb/in2 レベルの記録密度を達成するた
めには、3kOe以上のHcを有することが好ましい。
また、へッド−媒体相互作用から考えると、磁気記録媒
体のHcは磁気記録へッドの飽和磁束密度Bsと密接な
関係がある。
長0.25μm、スペーシング0.06μmである場合
の計算機シミュレーションによる、Bsと磁化転移幅
(transition length )と保磁力Hcとの関係を示す。
図9中の各曲線における極小値が、そのBsで記録でき
る最小の磁区幅、すなわち最高の記録密度を達成できる
条件となる。図9の各曲線の極小値が各Bsでの最高の
記録密度を達成するのに必要な最大のHcに相当する。
すなわち、Bs=0.8Tで2200 Oe、Bs=
1.0Tで2800 Oe、Bs=1.2Tで3500
Oe、Bs=1.6Tで4500 Oeである。この
結果から、磁気記録媒体のHcは、CGS単位系でへッ
ドのBsの1/2以下、さらにはl/4以下であること
がより好ましい。 (4)磁性薄膜表面の機械的構造 本発明による磁気記録媒体には、媒体の保護のため、従
来の磁気記録媒体で用いられている潤滑剤を塗布しても
よい。この場合、本発明における磁性薄膜においては、
非磁性母材部分あるいは非磁性母材と磁性金属粒子との
界面部分に存在する空隙に潤滑剤が埋め込まれて密着性
が向上する利点がある。また、積極的に潤滑剤を空隙に
埋め込むために、媒体作製後に研磨することによって、
磁性金属粒子あるいは非磁性母材と磁性金属粒子との界
面部分に選択的に空隙を形成してもよい。この空隙は、
充分な密着性を発揮させるために、半径1nm以上、深
さ2nm以上であることが好ましい。
密度記録を実現するために、磁性金属粒子自体が満たす
べき種々の物性について検討する。 (5)磁性金属粒子の体積 一般に磁性体が非常に小さくなると、熱ゆらぎによって
磁化を一定の方向にそろえておくことができなくなるこ
とが知られている。磁気異方性エネルギーKuを持つ体
積vの磁性体の熱ゆらぎによる磁化Iの時間変化は、 I(t)=Is・exp(−t/τ) で表される。ここで、tは時間、Isは最初の磁化の値
であり、τは τ=τ0 ・exp(v・Ku/kT) で表される。ここで、τ0 は約10-9、kはボルツマン
定数、Tは絶対温度である。この式から、室温(T=3
00K)においてτが実用的な記録保持時間10年を満
たすための条件は、v・Ku<1.7×10-19 Jとな
る。SmCoを例にとりKuに9.5×106 J/m3
を代入すると、v=1.8×10-26 m3となる。した
がって、この値以上の体積であれば、熱ゆらぎによる磁
化の消失がなく、磁気記録媒体として好ましく用いるこ
とができる。 (6)磁気クラスターのサイズ 磁性薄膜上には磁気ヘッドからの磁界によって磁区が形
成され、これが情報の記録の1単位となる。このとき、
その磁性薄膜の最小の磁区サイズが形成されるべき磁区
よりも大きいと信号のS/N比が劣化し、最悪の場合再
生不可能となる。最小磁区サイズは磁気記録媒体を交流
消磁したときの磁気クラスターサイズで見積もることが
できる。1GB/in2 の記録密度を達成する記録磁区
の線方向の長さは150nmであることが知られている
(Murdock:IEEE Trans.Magn.,Vol.28,p.3078,1992) 。し
たがって、磁気クラスターサイズの平均の大きさをこの
値より小さくすれば、1GB/in2 以上の高密度記録
が可能となる。ただし、実用レベルでは、磁区の短辺に
数個の磁気クラスターが入る程度でないとノイズレベル
が大きくなるので、この磁気クラスターの大きさは10
0nm以下、さらに50nm以下であることが好まし
い。高S/N比の再生を実現するためには、30nm以
下であることがより好ましい。 (7)磁性金属粒子の粒径 磁性金属粒子の粒径が、磁気記録媒体を交流消磁したと
きの磁気クラスターのサイズと同程度あるいはそれ以上
である場合、磁気記録媒体に形成される磁区の形状はヘ
ッドからの磁界を反映することができず、再生時のノイ
ズの原因となってしまう。この場合、磁性金属粒子の膜
面内の平均粒径が交流消磁をしたときの磁気クラスター
の平均サイズの1/10以下であれば、再生時のノイズ
を低減することができる。ここで、磁性金属粒子の膜面
内の平均粒径を算出するには、例えば磁性薄膜の表面を
顕微鏡で観察して複数の磁性金属粒子についてその平均
径を測定し、平均すればよい。なお、磁性薄膜表面から
観察した磁性金属粒子の形状が長い棒状である場合は、
例えば膜表面の顕微鏡写真に1本またはそれ以上の直線
を引いて、この直線が磁性金属粒子を横断する合計長さ
を横断した磁性金属粒子の個数で平均し、磁性金属粒子
の膜面内の平均粒径を算出する。また、磁性薄膜表面か
ら観察した磁性金属粒子の形状が楕円体であるときは、
その長軸及び短軸の長さを平均することで、磁性金属粒
子の膜面内の平均粒径を算出してもよい。
子の間隔は交換相互作用が働かない程度に離れているの
で、磁性金属粒子が磁化反転の最小単位となる。したが
って、上記のような磁性金属粒子の粒径と磁気クラスタ
ーとの関係でノイズを低減する効果が得られる。この関
係を通常の金属薄膜型の磁気記録媒体において、例えば
結晶粒と磁気クラスターとの関係として適用しようとし
ても、一つの結晶粒が磁化反転の最小単位とはならない
ので無意味である。 (8)磁性金属粒子間の間隔の標準偏差 前述したように、磁性金属粒子間の磁気的相互作用を分
断し、高密度の磁気記録が行うことができるようにする
には、磁性金属粒子間の距離が約1nm以上であること
が必要であるといわれている。また、この距離のばらつ
きが大きいと磁性薄膜全体にわたる均一な保磁力が得ら
れず、記録磁区形状が乱れてノイズが増加するため好ま
しくない。これを防ぐためには、磁性金属粒子の間隔の
標準偏差が1nm以下であることが好ましい。より高密
度記録を実現するためには、この標準偏差が0.5nm
以下であることがより好ましい。
を参照して具体的に説明する。 (第1の実施形態)以下のようにスパッタリング法を用
いて、図1に断面で示すように、ガラス基板11上に磁
性金属粒子1と非磁性母材2とからなる磁性薄膜を形成
した。すなわち、CoPtおよびSi−Oターゲットを
用い、1PaのAr雰囲気中で2元同時スパッタリング
を行い、50nm厚さの磁性薄膜を成膜した。この磁性
薄膜は、CoPtからなる磁性金属粒子とSi−Oから
なる非磁性母材とで構成されていた。非磁性母材の組成
はSiO2 に近く、この材料はバルク状態で2GPaの
ビッカース硬度を有する。また、この磁性薄膜を王水中
に浸し、CoPtのみを選択的に溶解させたところ、非
磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存
し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向
に連続して存在することが確認された。
ろ、図5に見られるような像が観察された。また、Co
Pt磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成
元素であるSiおよびOの含有率は5原子%以下であっ
た。また、Si−O非磁性母材の特定領域において、磁
性金属粒子を構成する磁性元素であるCoの含有率は5
原子%以下であった。CoPtとSi−Oとの界面領域
は、詳細な組成分析の結果Co−O相であることがわか
った。これは、CoPt磁性金属粒子とSi−O非磁性
母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の靭性
が向上することによって磁気記録媒体としての耐久性が
向上した。
ろ、垂直磁気異方性を有し保磁力Hcは約160kA/
m(2000 Oe)、飽和磁化Isは約0.5Wb/
m2 (400G)であった。磁性薄膜をTEM観察し、
CoPtの体積充填率を算出したところ、薄膜全体にわ
たって一様に約0.65であった。磁性金属粒子の平均
体積は4×10-25 m3 であった。さらに、磁性薄膜表
面から測定した磁性金属粒子の膜面内の平均粒径は3〜
4nmで、この試料を交流消磁したときの磁気クラスタ
ーの平均径約50nmの1/10以下であり、かつ磁性
金属粒子は細長回転楕円体の形状であり、(長軸の長
さ)/(短軸の長さ)は2〜5、形状磁気異方性は2.
1〜3.2×105 J/m3 であった。また、CoPt
磁性金属粒子の結晶磁気異方性を磁気トルク測定により
見積もったところ、2×106 J/m3 であった。ま
た、磁性薄膜の表面にプローブを接触させて電気抵抗率
を測定したところ、約10Ω・cmであった。
に、磁性金属粒子および非磁性母材に添加元素を加え
た。まず、Bを添加したCoPtターゲットを用いてス
パッタリングを行うことにより、磁性薄膜中の磁性金属
粒子にBを添加した。このことにより、保磁力が220
kA/mに向上した。このとき、組成分析をTEM(透
過電子顕微鏡)により行ったところ、非磁性母材中の平
均B濃度は磁性金属粒子部における平均B濃度の1/5
0以下であった。一方、Taを添加したSi−Oターゲ
ットを用いてスパッタリングを行うことにより、磁性薄
膜中の非磁性母材にTaを添加した。このことにより、
磁性薄膜の電気伝導率が増加し、約10-2Ω・cmとな
り、MRへッドからの電流リークによる素子の損傷確率
が減少した。このとき、組成分析をTEMにより行った
ところ、磁性金属粒子部の平均Ta濃度は非磁性母材中
の平均のTa濃度の1/10以下であった。また、Bを
添加したCoPtターゲットとBを添加したSi−Oタ
ーゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、磁
性金属粒子と非磁性母材の両方にBを添加した。磁性金
属粒子に対するBの添加により保磁力が220kA/m
になった。また、非磁性母材に対するB添加により磁性
薄膜全体の歪が減少し、磁気記録媒体としての耐久性が
向上した。
基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、
スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を
行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去
ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであ
った。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通
常用いられるCSS(Contact Start Stop)試験を行っ
たところ、保護膜なしの状態で50万回以上の耐久性が
得られた。 (第2の実施形態)以下のようにスパッタリング法を用
いて、図1と同様にガラス基板上に磁性薄膜を形成し
た。すなわち、Co、FeおよびAlターゲットを用
い、酸素分圧10%のAr雰囲気中で3元同時スパッタ
リングを行い、200nm厚さの磁性薄膜を成膜した。
この磁性薄膜は、FeCoからなる磁性金属粒子とAl
2 O3 に近い組成を有する非磁性母材とで構成されてい
た。この非磁性母材の材料はバルク状態では12GPa
のビッカース硬度を有する。また、この磁性薄膜を王水
中に浸し、FeCoのみを選択的に溶解させたところ、
非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存
し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向
に連続して存在することが確認された。
ろ、図5に見られるような像が観察された。また、Fe
Co磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成
元素であるAlおよびOの含有率は5原子%以下であっ
た。また、Al−O非磁性母材の特定領域において、磁
性金属粒子を構成する磁性元素であるCoおよびFeの
含有率は5原子%以下であった。FeCoとAl−Oと
の界面領域の組成分析を行ったところ、ごく薄いFeC
o−O相が存在することがわかった。これは、FeCo
磁性金属粒子とAl−O非磁性母材との結合を強める作
用があり、磁性薄膜全体の靭性が向上することによって
磁気記録媒体としての耐久性が向上した。
ろ、面内磁気異方性を有し保磁力Hcは約160kA/
m、飽和磁化Isは約1Wb/m2 であった。磁性薄膜
をTEM観察し、FeCoの体積充填率を算出したとこ
ろ、薄膜全体にわたって一様に約0.65であった。磁
性金属粒子の平均体積は4×10-25 m3 であった。さ
らに、磁性薄膜表面から測定した磁性金属粒子の膜面内
の平均粒径は3〜4nmであり、この試料を交流消磁し
たときの磁気クラスターの平均径約50nmの1/10
以下であり、かつ磁性金属粒子は細長回転楕円体の形状
であり、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)は2〜5、形
状磁気異方性は5.4〜8.2×105 J/m3 であっ
た。また、FeCo磁性金属粒子の結晶磁気異方性を磁
気トルク測定により見積もったところ、106 J/m3
であった。磁性薄膜の表面にプローブを接触させて電気
抵抗率を測定したところ、約10Ω・cmであった。
らにCrターゲットを用い、酸素分圧10%のAr雰囲
気中で4元同時スパッタリングを行い、20nm厚さの
磁性薄膜を成膜した。この磁性薄膜は、FeCoCrか
らなる磁性金属粒子とAl2O3 に近い組成を有するA
l−O非磁性母材とで構成されていた。この場合、磁性
薄膜の保磁力Hcは約180kA/mとなった。FeC
oとAl−Oとの界面領域の組成分析を行ったところ、
ごく薄いFeCo−O相およびCr相が存在することが
わかった。これは、FeCo磁性金属粒子とAl−O非
磁性母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の
靭性が向上することによって磁気記録媒体としての耐久
性が向上した。
外は上記と同様に4元同時スパッタリングで磁性薄膜を
成膜したところ、得られた磁性薄膜の保磁力は220k
A/mとなった。
方向に平均40kA/mの磁界を印加しながら、上記と
同様に4元同時スパッタリングで磁性薄膜を成膜した。
得られた磁性薄膜中の磁性金属粒子の長軸はほぼ膜面に
垂直な方向を向いており、垂直磁化膜が得られた。
Pt、Sm、Ni等、非磁性母材を形成する材料として
Zr、Ti、B等、磁性金属の添加元素としてTa、
W、Hf、V、In、Si、B等、反応性ガスとして窒
素、有機ガスを用いた場合にも上記と同様な結果が得ら
れる。
基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、
スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を
行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去
ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであ
った。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通
常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの
状態で50万回以上の耐久性が得られた。 (第3の実施形態)以下のようにスパッタリング法を用
いて、図2に示すように、ガラス基板11上に形成され
た軟磁性下地層12上に磁性金属粒子1と非磁性母材2
とからなる磁性薄膜を形成した。すなわち、まず、Mn
Biターゲットを用いてAr雰囲気中でスパッタリング
を行い、ガラス基板11上に軟磁性下地層12を形成し
た。次いで、MnBiとCとがモザイク状に配置されて
いる複合ターゲットを用いて、Ar雰囲気中でスパッタ
リングを行い、軟磁性下地層12上に50nm厚さの磁
性薄膜を成膜した。その後、堆積した磁性薄膜を400
℃で2時間アニールした。この磁性薄膜は、MnBiか
らなる磁性金属粒子とCからなる非磁性母材とで構成さ
れていた。また、構造分析の結果、非磁性母材を構成す
るCはダイヤモンドライクカーボンであることがわかっ
た。また、この磁性薄膜を王水中に浸し、MnBiのみ
を選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元
の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄
膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在すること
が確認された。
ろ、図3に見られるような像が観察された。また、Mn
Bi磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成
元素であるCの含有率は10原子%以下であった。ま
た、C非磁性母材の特定領域において、磁性金属粒子を
構成する磁性元素であるMnおよびBiの含有率は10
原子%以下であった。
ろ、垂直磁気異方性を有し保磁力Hcは約160kA/
m、飽和磁化Isは約1Wb/m2 であった。磁性薄膜
をTEM観察し、MnBiの体積充填率を算出したとこ
ろ、薄膜全体にわたって一様に約0.65であった。磁
性金属粒子の平均体積は4×10-25 m3 であった。さ
らに、磁性薄膜表面から測定した磁性金属粒子の膜面内
の平均粒径は3〜4nmで、この試料を交流消磁したと
きの磁気クラスターの平均径約50nmの1/10以下
であり、かつ磁性金属粒子は細長回転楕円体の形状であ
り、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)は2〜5、形状磁
気異方性は1.7〜2.6×105 J/m3 であった。
また、MnBi磁気金属粒子の結晶磁気異方性を磁気ト
ルク測定により見積もったところ、8×105 J/m3
であった。また、磁性薄膜表面での磁性金属粒子の間隔
の標準偏差を測定したところ、8nmであった。
基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、
スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を
行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去
ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであ
った。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通
常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの
状態で50万回以上の耐久性が得られた。 (第4の実施形態)以下のようにスパッタリング法を用
いて、図2に示すように、ガラス基板11上に形成され
た非磁性下地層12上に磁性金属粒子1と非磁性母材2
とからなる磁性薄膜を形成した。まず、Crターゲット
を用いてAr雰囲気中でスパッタリングを行い、ガラス
基板11上に非磁性下地層12を形成した。引き続きC
oPt、CrTaおよびSiターゲットを用い、窒素1
0%分圧のAr雰囲気中で3元同時バイアススパッタリ
ングを行い、非磁性下地層12上に磁性薄膜を成膜し
た。この磁性薄膜は、CoPtCrTaからなる磁性金
属粒子とSi−Nからなる非磁性母材とで構成されてい
た。また、この磁性薄膜を王水中に浸し、CoPtCr
Taのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部
分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材
が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在
することが確認された。
ろ、図5に見られるような像が観察された。また、Co
PtCrTa磁性金属粒子の中央部において、非磁性母
材の構成元素であるSiおよびNの含有率は5原子%以
下であった。また、Si−N非磁性母材の特定領域(中
央部)において、磁性金属粒子を構成する磁性元素であ
るCoおよびPtの含有率は1原子%以下であった。ま
た、CoPtCrTaとSi−Nとの界面領域の組成分
析を行ったところ、ごく薄いCr相が存在することがわ
かった。これは、CoPtCrTa磁性金属粒子とSi
−N非磁性母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜
全体の靭性が向上することによって磁気記録媒体として
の耐久性が向上した。また、磁性金属粒子内での組成変
調構造を誘起し、磁気特性、特に保磁力を向上させる作
用があった。
ろ、面内磁気異方性を有し保磁力Hcは約200kA/
m、飽和磁化Isは約0.8Wb/m2 であった。磁性
薄膜をTEM観察し、CoPtCrTaの体積充填率を
算出したところ、薄膜全体にわたって一様に約0.5で
あった。磁性金属粒子の平均体積は4×10-25 m3 で
あった。さらに、磁性薄膜表面から測定した磁性金属粒
子の膜面内の平均粒径は3〜4nmであり、この試料を
交流消磁したときの磁気クラスターの平均径約50nm
の1/10以下であり、かつ磁性金属粒子は細長回転楕
円体の形状であり、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)は
2〜5、形状磁気異方性は3.4〜5.1×105 J/
m3 であった。また、CoPtCrTa磁性金属粒子の
結晶磁気異方性を磁気トルク測定により見積もったとこ
ろ、2×106 J/m3 であった。
け、静止状態でへッドを接触させ、へッドとスピンドル
との間の電気抵抗率を数箇所測定したところ、いずれも
約10-2Ω・cm以上であった。また、このへッドの記
録素子において、磁極部分の飽和磁束密度Bsが0.4
Tに設定すると、保磁力200kA/m(2.5k0
e)では充分な記録ができず、ノイズが増加し、信号/
雑音比(S/N比)か小さく、高密度記録ができなかっ
た。一方、磁極部分の飽和磁束密度Bsが1Tに設定す
ると、ノイズが減少し、S/N比が8dB増加した。
観察したところ、表面に半径2nm、深さ3nm程度の
空隙が多数あることが確認された。この大きさは、直径
数オングストローム、長さ数nmの潤滑材分子が入り込
むには充分な大きさである。
材を塗布し、へッドを接触状態で走行させて密着性を調
べたところ、CoPtCrTa金属薄膜からなる磁気記
録媒体の場合に比べて耐久性が向上したことがわかっ
た。また、潤滑材塗布の前工程であるバニッシング工程
の際に、磁性金属粒子の部分と非磁性母材との部分で削
れ方が異なるために、これを利用してより多くより大き
な空隙を表面に形成することができる。したがって、本
発明の磁気記録媒体における磁性薄膜においては、膜厚
方向に均一に削れていく金属薄膜媒体に比べて、潤滑材
を埋め込みのための空隙を特に工程を増やすことなく容
易に作ることができる利点を有している。
的で、CoPt、CrTa、Si−OおよびSiターゲ
ットを用い、窒素10%分圧のAr雰囲気中で4元同時
バイアススパッタリングを行うこと以外は同様のプロセ
スで、CoPtCrTa磁性金属粒子とSi−N非磁性
母材とからなる磁性薄膜を非磁性下地層上に形成した。
ろ、面内磁気異方性を有し、保磁力Hcは約220kA
/m、飽和磁化Isは約0.9Wb/m2 であった。磁
性薄膜の微細な領域の組成分析をTEMにより行ったと
ころ、CoPtCrTa磁性金属粒子の中央部におい
て、非磁性母材の構成元素であるSiおよびNの含有率
は1原子%以下、Oの含有率は10原子%以下であっ
た。また、Si−N非磁性母材の中央部において、磁性
金属粒子を構成する磁性元素であるCoおよびPtの含
有率は1原子%以下であった。また、CoPtCrTa
磁性金属粒子とSi−N非磁性母材との界面領域に界面
層が存在しており、この界面層はCrとSiO2 から構
成されていることがわかった。このCrとSiO2 は、
CoPtCrTa磁性金属粒子とSi−N非磁性母材と
の結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の靭性が向上
することによって磁気記録媒体としての耐久性が向上し
た。また、磁性金属粒子内での組成変調構造を誘起し、
構成原子の相互拡散を防止することによって、保磁力を
向上させる作用がある。
比較例として、非磁性下地層を設けずに、ガラス基板上
に磁性薄膜を形成した。この磁性薄膜は磁性金属粒子と
非磁性母材とが分離された構造を有するが、磁性金属粒
子の結晶性が悪く、保磁力は80kA/m、結晶磁気異
方性は2×105 J/m3 であった。
浮上型のスライダーに設置したMRRへッドで再生を行
ったところ、媒体のチャージアップによるMR素子の静
電破壊の確率が増加した。そこで、媒体の非磁性母材に
導電性を付与した。まず、Siの代わりにTiを用いる
こと以外は前記と同様のプロセスでCoPtCrTa磁
性金属粒子とTi−N非磁性母材とからなる磁性薄膜を
ガラス基板上に形成した。この磁性薄膜を王水中に浸
し、CoPtCrTaのみを選択的に溶解させたとこ
ろ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って
残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内
方向に連続して存在することが確認された。また、この
磁性薄膜の磁気特性は、上記に示した磁気薄膜とほぼ同
様であった。
け、静止状態でへッドを接触させ、へッドとスピンドル
との間の電気抵抗率を数箇所測定したところ、いずれも
約5×10-2Ω・cm以上であった。この磁性薄膜を有
する磁気記録媒体を用いることにより、MRへッドの損
傷確率が減少した。
用い、窒素の代わりに酸素を用いること以外は上記と同
様のプロセスでCoPtCrTa磁性金属粒子とInS
nO(ITO)非磁性母材とからなる磁性薄膜をガラス
基板上に形成した。この磁性薄膜を王水中に浸し、Co
PtCrTaのみを選択的に溶解させたところ、非磁性
母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非
磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続
して存在することが確認された。また、この磁性薄膜の
磁気特性は、上記に示した磁気薄膜とほぼ同様であっ
た。
け、静止状態でへッドを接触させ、へッドとスピンドル
との間の電気抵抗率を数箇所測定したところ、いずれも
約10-3Ω・cm以上であった。この磁性薄膜を有する
磁気記録媒体を用いることにより、MRへッドの損傷確
率はさらに減少した。
基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、
スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を
行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去
ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであ
った。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通
常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの
状態で50万回以上の耐久性が得られた。 (第5の実施形態)第1の実施形態と同様な磁性薄膜を
成膜するにあたり、CoPtターゲットおよびSi−O
ターゲットへの投入電力比を図10に示すように3種の
方法で変化させた。Aの方法は投入電力比を正弦波状に
周期的に変化させる方法である。Bの方法はSi−Oへ
の投入電力に対するCoPtへの投入電力の比を徐々に
増加させる方法である。Cの方法はSi−Oへの投入電
力に対するCoPtへの投入電力の比を徐々に減少させ
る方法である。各方法で得られた磁性薄膜の断面をTE
M観察し、膜厚方向の磁性金属粒子の充填率の変化およ
び磁性薄膜の特性を調べた。
得られた磁性薄膜は、粘着テープを用いた剥離試験で剥
離がほとんど生じなかった。一方、投入電力比を一定に
して得られた磁性薄膜では、剥離が生じ易かった。この
結果は、Aの方法では磁性薄膜の内部応力が緩和される
ことを示している。また、この磁性薄膜を王水中に浸
し、CoPtのみを選択的に溶解させたところ、非磁性
母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非
磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続
して存在することが確認された。
得られた磁性薄膜では、磁性薄膜の表面側へ向かうにつ
れてCoPtの充填率が大きくなった。また、この磁性
薄膜では、粘着テープによる剥離試験で剥離が全く生じ
なかった。
得られた磁性薄膜では、磁性薄膜の表面側へ向かうにつ
れてCoPtの充填率が小さくなった。磁性薄膜の表面
にプローブを接触させて電気抵抗率を測定したところ、
投入電力比を一定にして得られた磁性薄膜の電気抵抗率
の約80%となった。
前に逆スパッタリングを行うと、磁性薄膜の密着性が向
上することが認められた。例えば、投入電力比を一定に
して得られた磁性薄膜でも、剥離試験による剥離率が低
下した。また、磁性薄膜の保磁力は160kA/mから
200kA/mへ増加した。これらの効果は、スパッタ
エッチング処理の際に、Arイオンがガラス基板に照射
されることにより、基板表面の粗さが変化し、また、基
板表面の浮遊酸素か消失したことにより発揮されたもの
である。なお、スパッタエッチング処理以外の表面改質
法、例えば、中性子線照射やイオンプレーティングによ
っても同様の効果が得られる。
基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、
スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を
行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去
ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであ
った。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通
常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの
状態で50万回以上の耐久性が得られた。
は、磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄
膜を有し、非磁性母材の硬度が磁性金属粒子の硬度より
も大きく、磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁
気異方性を有しており、非磁性母材における磁性金属粒
子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下
であるので、高密度記録が可能なものである。
る平面観察像を示す図。
る平面観察像を示す図。
性金属粒子間の中央部のCo量と交換相互作用の減衰量
との関係を示すグラフ。
性金属粒子間の中央部のSi量と磁気異方性エネルギー
との関係を示すグラフ。
録媒体の保磁力の関係を示すグラフ。
成膜時のCoPtターゲットおよびSiOターゲットへ
の投入電力比の変化の方法を説明する図。
板、12…軟磁性下地層、31…磁性金属粒子部、32
…非磁性母材部、51…界面層。
Claims (10)
- 【請求項1】 磁性金属粒子と非磁性母材とから構成さ
れる磁性薄膜を有する磁気記録媒体において、前記非磁
性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、
前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方
性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属
粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以
下であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 【請求項2】 前記磁性金属粒子の中央部における前記
非磁性母材の構成元素の含有率が20原子%以下である
請求項1記載の磁気記録媒体。 - 【請求項3】 前記磁性金属粒子が、Co、Pt、S
m、Fe、Ni、Cr、Mn、Bi、Al、およびこれ
らの合金からなる群より選ばれた少なくとも1つからな
る請求項1記載の磁気記録媒体。 - 【請求項4】 前記非磁性母材が、一般式M−G(Mは
Si、Al、Zr、TiおよびBからなる群より選ばれ
た少なくとも1つ、Gは酸素、窒素および炭素からなる
群より選ばれた少なくとも1つ)で表される化合物、ま
たは炭素の同素体からなる請求項1記載の磁気記録媒
体。 - 【請求項5】 前記磁性金属粒子の前記非磁性母材に対
する充填率が0.7以下である請求項1記載の磁気記録
媒体。 - 【請求項6】 前記磁性金属粒子の充填率が前記磁性薄
膜の膜厚方向に沿って変化している請求項1記載の磁気
記録媒体。 - 【請求項7】 前記磁性金属粒子の膜面内の平均粒径
が、交流消磁したときの磁気クラスターの平均サイズの
1/10以下である請求項1記載の磁気記録媒体。 - 【請求項8】 前記磁性薄膜の電気抵抗率が10-4Ω・
cm以上である請求項1記載の磁気記録媒体。 - 【請求項9】 磁性金属粒子と非磁性母材とから構成さ
れる磁性薄膜を有する磁気記録媒体と、磁界による抵抗
変化を利用して前記磁気記録媒体からの信号を再生する
磁気ヘッドとを具備する磁気記録再生装置であって、前
記磁気記録媒体は、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金
属粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁
気異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁
性母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属
元素の含有率が20原子%以下である磁気記録再生装
置。 - 【請求項10】 前記磁気記録媒体が前記磁気ヘッドと
接触する状態で使用される請求項9記載の磁気記録再生
装置。
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