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JPH08128435A - シャフトの軸受メタル構造とその軸受メタルの選択組付方法 - Google Patents

シャフトの軸受メタル構造とその軸受メタルの選択組付方法

Info

Publication number
JPH08128435A
JPH08128435A JP26779894A JP26779894A JPH08128435A JP H08128435 A JPH08128435 A JP H08128435A JP 26779894 A JP26779894 A JP 26779894A JP 26779894 A JP26779894 A JP 26779894A JP H08128435 A JPH08128435 A JP H08128435A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bearing
metal
size
shaft
bearing metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP26779894A
Other languages
English (en)
Inventor
Yukihiro Shibata
幸宏 柴田
Yoshikatsu Nakamura
吉克 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP26779894A priority Critical patent/JPH08128435A/ja
Publication of JPH08128435A publication Critical patent/JPH08128435A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Sliding-Contact Bearings (AREA)
  • Shafts, Cranks, Connecting Bars, And Related Bearings (AREA)
  • Mounting Of Bearings Or Others (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】シャフトの軸受構造において、軸部と軸受メタ
ルとのクリアランスのバラツキ幅を従来よりも低減す
る。 【構成】クランクシャフト4の軸部5とこれに対する軸
受部7との間にできる隙間G1にその大きさに合わせた
肉厚を有する半割状の軸受メタル14を一対組み付け、
同メタル14と軸部5との間に所要の大きさを有するク
リアランスC1を設定する。軸受メタル14には、同メ
タル14を軸受部7に組み付けたときに同軸受部7を膨
張変形させながら円周方向へ圧縮されるクラッシュハイ
トを設定する。ここで、クラッシュハイトの設定値を、
軸受メタル14の肉厚T1の大きさにより異なる軸受部
7の膨張変形量分を見込んで、実際に機能する実クラッ
シュハイトの大きさがほぼ一定となるように決定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はシャフト、例えば内燃
機関のクランクシャフト等の軸部とこれに対する軸受部
との間に介装される軸受メタルに係る。詳しくは、軸部
と軸受部との間にできる隙間の大きさに合わせた肉厚を
有する半割状の軸受メタルを一対組み付け、同メタルと
軸部との間に所要の大きさのクリアランスを設定してな
る軸受メタル構造とその軸受メタルの選択組付方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、内燃機関に設けられるク
ランクシャフトはシリンダブロックに対して回転可能に
組み付けられ、同シャフトにはピストンに連結されたコ
ンロッドが回転可能に組み付けられる。ここで、図1
1,12に示すように、クランクシャフト51の軸部
(ジャーナル)52とこれに対するシリンダブロック5
3の軸受部54との間の隙間G1、図11,13に示す
ように、クランクシャフト51の軸部(ピン)55とこ
れに対するコンロッド56の軸受部57との間の隙間G
2には、すべり軸受(Plain Bearing)型の軸受メタル5
8,59がそれぞれ介装されている。これらの軸受メタ
ル58,59は半割状の単体を上下一対組み合わせるこ
とにより、軸部52,55と軸受部54,57との間に
介装される。軸受メタル58,59は軸部52,55と
の間ですべり運動をする軸受であり、すべり抵抗を低減
させて軸部52,55の円滑な回転を確保する。更に、
軸部52,55と軸受メタル58,59との間に設定さ
れたクリアランスC1,C2には、油通路60を通じて
所定の潤滑油が供給される。
【0003】ところで、上記のような軸部52,55及
び軸受部54,57のそれぞれには寸法上の公差がある
ことから、両者の間の隙間G1,G2の大きさにもある
程度の範囲でバラツキが出る。このような隙間G1,G
2に一律同じ大きさの肉厚T1,T2を有する軸受メタ
ル58,59を組み付けた場合、クリアランスC1,C
2の大きさにもバラツキが出てしまい、両者の間で適正
な潤滑性能が得られなくなるおそれがある。
【0004】そこで、軸受メタル58,59の組み付け
に当たり、隙間G1,G2の大きさのバラツキに応じて
同メタル58,59の肉厚T1,T2のサイズを選択す
ることにより、クリアランスC1,C2を所要の大きさ
に調整する必要がある。この要求を満足させることので
きる組付方法として、いわゆる「選択嵌合方法」が一般
に採用されている。
【0005】図12,13を参照すると、この組付方法
は上記の隙間G1,G2の大きさのバラツキをほぼ等間
隔で複数のランクに区分する。その区分に応じた大きさ
の肉厚T1,T2を有する軸受メタル58,59を予め
複数種類準備しておく。そして、軸部52,55と軸受
部54,57を組み付ける際に、実測される隙間G1,
G2の大きさのランクに応じて複数種類の軸受メタル5
8,59の中から隙間G1,G2の大きさに合う肉厚T
1,T2を有する軸受メタル58,59を選択する。そ
の選択された軸受メタル58,59を軸部52,55の
回りに嵌合して使用する。このような「選択嵌合方法」
を基本にした軸受メタルに係る技術は〔自動車技術ハン
ドブック;設計編;1991年3月1日発行、81頁〕
に記載されている。
【0006】ところで、上記のような半割状の軸受メタ
ル58,59には、同メタル58,59が軸受部54,
57に組み付けられたときに機能する適当な大きさの締
め代が設けられている。この締め代は、図14に示すよ
うに、測定用の治具71に軸受メタル58,59を組み
付けてその一端をストッパ72で止め、同メタル58,
59に所定の大きさの荷重POをかけた上で測定される
突出量、即ち「クラッシュハイト(CH)」で与えられ
る。このクラッシュハイト(CH)は軸受メタル58,
59の外周長が軸受部54,57の内周長よりも大きい
分である。従来の軸受メタル58,59では、クラッシ
ュハイト(CH)の大きさが同メタル58,59の肉厚
T1,T2のサイズにかかわらず一律同じ大きさに設定
される。そして、軸受メタル58,59が軸受部54,
57に組み付けられる際に、同メタル58,59がクラ
ッシュハイト(CH)の分だけ円周方向へ圧縮され、そ
れに伴い軸受部54,57が膨張変形することにより、
同メタル58,59の外周面が軸受部54,57の内周
面に押し付けられ、両者の間に適正な密着力が得られ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の「嵌
合選択方法」では、隙間G1,G2の各ランクの違いに
応じて使用される軸受メタル58,59毎に肉厚T1,
T2のサイズのみが異なりクラッシュハイト(CH)が
一定であることから、同メタル58,59が軸受部5
4,57に組み付けられた際の軸受部54,57の膨張
変形量が軸受穴径により異なる。これは、各ランクの間
で軸受メタル58,59のクラッシュハイト(CH)が
一律同じ大きさに設定されているにもかかわらず、その
クラッシュハイト(CH)が実質的に機能する「実クラ
ッシュハイト」の大きさが異なってしまうことになる。
従って、軸部52,55と軸受メタル58,59との間
で実際に機能するクリアランス(「実クリアランス」)
の大きさにバラツキが出てしまう。その意味で、必要な
潤滑性能を確保したり、内燃機関で振動・騒音を低減さ
せたりする上で、軸受メタル58,59について検討の
余地があった。
【0008】そこで、上記の実クリアランスのバラツキ
に係り、その要因を本発明者は以下のように検討した。
図15は実クリアランス(a)のバラツキに影響する要
因を示す。実クリアランス(a)のバラツキは、基本的
には「軸受部の膨張変形量(b)」と、設計上の「呼び
クリアランス(c)」とにより構成される。ここで、呼
びクリアランス(c)に係る要因としては「軸受メタル
肉厚の加工精度(d)」と「軸受メタル肉厚の選択嵌合
方法(e)」が挙げられる。この中で、肉厚の加工精度
(d)は従来のレンジが限界であることから検討から除
外し、軸受部の膨張変形量(b)を中心に着目した。
【0009】この膨張変形量(b)に係る要因として
は、変動要因である「軸受部の穴径変化(f)」、固定
要因である「軸受メタルのクラッシュハイトの設定値
(j)」、「軸受メタルのクラッシュハイト加工精度
(h)」及び「軸受メタル肉厚(呼び値)(j)」がそ
れぞれ挙げられる。ここで、膨張変形量(b)のバラツ
キ幅に影響の大きい要因として、軸受メタル肉厚(j)
を除く三つの要因が考えられる。その三つの要因の中で
クラッシュハイト加工精度(h)は従来の精度レンジが
限界であることから検討から除外する。よって、穴径変
化(f)及びクラッシュハイト設定値(g)に着目して
両要因の実クリアランス(a)のバラツキに対する影響
を検討した。 (以下、余白)
【0010】
【表1】
【0011】表1は従来の「選択嵌合方法」に係る寸法
上の各諸元等を示す。同表1において、「軸部と軸受部
との隙間ランク(k)」は「1〜5」に区分されてい
る。各隙間ランク(k)はその数字が大きいほど隙間の
範囲が大きいことを意味する。各隙間ランク(k)のラ
ンク幅(m)はそれぞれ同じ値Wに設定されている。一
対の軸受メタルを構成する上側及び下側の軸受メタルの
肉厚サイズ(n)は「1〜5」の隙間ランク(k)に合
わせて「No.1〜No.5」に区分され、その番号が大きくな
るほど肉厚サイズ(n)が大きくなる。全ての肉厚サイ
ズ(n)における軸受メタルのクラッシュハイト(C
H)の設定値は一律同じ値Aである。ここで、実クリア
ランス(a)は、前述した軸受部の膨張変形量(b)
と、予め設定された呼びクリアランス(c)との和から
構成される。その膨張変形量(b)は各隙間ランク
(k)毎にある範囲のバラツキを有し、それらのバラツ
キ範囲がある値α1,β1,γ1をもってシフトしてい
ることが分かる。各隙間ランク(k)に係る膨張変形量
(b)のバラツキ範囲は、各隙間ランク(k)毎に値W
のランク幅(m)を満足する軸部と軸受部との複数の組
み合わせに対し、対応する肉厚サイズ(n)の軸受メタ
ルを組み付けたときに得られるものである。本発明者は
その膨張変形量(b)のバラツキ範囲の中に、同表1に
おいて棒線で示す「実クリアランス(a)を構成させる
範囲(X)」と、同表1において破線で示す「実際の範
囲(Y)」とが存在することを見出した。その内容を説
明すると、範囲(Y)はあるクランク幅(m)を持った
軸部と軸受部との隙間ランク(k)毎での軸受部の穴径
変化(f)による全体分布幅である。範囲(X)はある
ランク幅(m)を持った軸部と軸受部との隙間ランク
(k)毎での最小隙間及び最大隙間を構成する軸受部の
穴径変化(f)の中での最小膨張変形量から最大膨張変
形量の分布幅である。よって、範囲(Y)の一部は実ク
リアランス(a)の範囲の決定には影響せず、範囲
(X)により実クリアランスを検討し、範囲(Y)は下
限値を見て軸受メタルの軸受部への密着性判断を行うべ
きものということが分かった。
【0012】この表1において、膨張変形量(b)が各
隙間ランク(k)で不均一な、しかも上側のランク
(k)ほど大きな値となることが分かる。その原因は、
肉厚サイズ(n)が異なる全ての軸受メタルを通じてク
ラッシュハイト(CH)の設定値が同一であるため、穴
径変化(f)とクラッシュハイト(CH)の設定値とで
構成される実クラッシュハイト(CHR)の値が変動す
るからである。
【0013】ここで、軸受部の膨張変形量(b)がある
値α1,β1,γ1をもってシフトするのは、その軸受
部の穴径変化による円周長さの変化量(i )と、各軸受
メタルのクラッシュハイト(CH)の設定値(ii)とで
構成される両メタルの実クラッシュハイト(CHR)の
値(iii)に変動があるからである。その結果、「1〜
5」の全隙間ランク(k)を通じて範囲(X)にある幅
を示す変動幅値(iv)が生じる。ここで、軸受メタルを
軸受部に密着させるために最低限必要な軸受部の膨張変
形量(b)は値(v)である。従って、その膨張変形量
(b)に係る範囲(Y)はこの値(v)以上でなければな
らない。
【0014】図16は上記の表1に従い、穴径変化によ
る円周長さの変化量(i)が「0」となる「5」の隙間ラ
ンク(k)の軸受部54,57に対して肉厚サイズ
(n)の大きい「No.5」の軸受メタル58,59を1個
組み付けたときに得られる実クラッシュハイト(CH
R)の大きさを示し、その値は「A」となる。図17
は、同じく上記の表1に従い、穴径変化による円周長さ
の変化量(i)が「+γ」となる「1」の隙間ランク
(k)の軸受部54,57に肉厚サイズ(n)の小さい
「No.1」の軸受メタル58,59を1個組み付けたとき
に得られる実クラッシュハイト(CHR)の大きさを示
し、その値は「A+γ/2」となる。このように、実ク
ラッシュハイト(CHR)の値は「No.1〜No.5」の軸受
メタル58,59で異なることから、実クリアランス
(a)にバラツキが出るのである。
【0015】近年、静粛性を維持又は向上させながら内
燃機関の出力や燃費を向上させるという要求が大きく、
その要求に応える必要がある。この発明は前述した事情
に鑑みてなされたものであり、軸受メタルのクラッシュ
ハイトが軸部と軸受メタルとの間のクリアランスに影響
を及ぼすことに着目してなされたものであって、そのク
リアランスのバラツキ幅を従来よりも低減することを可
能にしたシャフトの軸受メタル構造とその軸受メタルの
選択組付方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に記載の第1の発明では、軸受メタル
に、同メタルを軸受部に組み付けたときに軸受部を膨張
変形させながらメタル自身は円周方向へ圧縮されるクラ
ッシュハイトを設け、そのクラッシュハイトの大きさ
を、軸受メタルの肉厚の大きさに応じて異なる軸受部の
膨張変形量を見込んで、実際に機能する実クラッシュハ
イトの大きさがほぼ一定となるように設定し、軸受部の
膨張変形量を一定に保つことを趣旨とする。
【0017】上記の目的を達成するために、請求項2に
記載の第2の発明では、軸部と軸受部との間にできる隙
間の大きさをほぼ等間隔で複数のランクに予め区分し、
それら各区分に応じた大きさの肉厚を有する軸受メタル
を予め複数種類準備しておく。これと共に、各軸受メタ
ルには、同メタルを軸受部に組み付けたときにその軸受
部を膨張変形させながらメタル自身は円周方向へ圧縮さ
れるクラッシュハイトを設ける。更に、軸受メタルの肉
厚の大きさに応じて異なる軸受部の膨張変形量を見込ん
で、実際に機能する実クラッシュハイトの大きさがほぼ
一定となるようにし、軸受部の膨張変形量を一定の範囲
に保つようにクラッシュハイトの大きさをそれぞれ設定
しておく。そして、軸部と軸受部を組み付ける際に、実
測される隙間の大きさに応じて適合する軸受メタルを複
数種類の中から選択し、その選択された軸受メタルを軸
部と軸受部との間に組み付けるようにしたことを趣旨と
する。
【0018】
【作用】上記第1の発明の構成によれば、軸受メタルが
軸受部に組み付けられることにより、同メタルは予め設
定されたクラッシュハイトの大きさの分だけ軸受部を膨
張変形させながらメタル自身は円周方向へ圧縮され、軸
部と軸受メタルとの間に所要の大きさのクリアランスが
できる。ここで、クラッシュハイトの設定値の中には、
軸受メタルの肉厚の大きさに応じて異なる軸受部の膨張
変形量が見込まれていることから、常にほぼ一定の大き
さの実クラッシュハイトが機能することになる。従っ
て、隙間の大きさに応じて肉厚の大きさの異なる軸受メ
タルが軸部と軸受部との間に組み付けられても、軸受部
の膨張変形に起因する誤差が大幅に低減して軸部と軸受
メタルとの間のクリアランスがほぼ狙いの大きさにな
る。
【0019】上記第2の発明の構成によれば、軸部と軸
受部との隙間の大きさに係る各ランク毎に、大きさの異
なる肉厚を有する軸受メタルが複数種類準備され、各軸
受メタルにはそれぞれクラッシュハイトが設けられる。
ここで、クラッシュハイトの大きさの中には、軸受メタ
ルの肉厚の大きさに応じて異なる軸受部の膨張変形量が
見込まれており、実際に機能する実クラッシュハイトの
大きさがほぼ一定となるように設定されている。そし
て、軸部と軸受部を組み付ける際には、両者の間で実測
される隙間の大きさに応じて適合する軸受メタルが複数
種類の中から選択され、その軸受メタルが組み付けられ
る。このとき、常にほぼ一定の大きさの実クラッシュハ
イトが機能することになる。従って、軸受部の膨張変形
に起因する誤差が大幅に減少して軸部と軸受メタルとの
間のクリアランスがほぼ狙いの大きさになる。
【0020】
【実施例】
(第1実施例)以下、上記第1及び第2の発明に係るシ
ャフトの軸受メタル構造とその軸受メタルの選択組付方
法を内燃機関のクランクシャフトに具体化した第1実施
例を図面等に従って詳細に説明する。
【0021】図1に示すように、内燃機関(以下「エン
ジン」と書き表す)1はシリンダヘッド2、シリンダブ
ロック3及びクランクシャフト4を備える。クランクシ
ャフト4は複数の軸部(ジャーナル)5及び複数の軸部
(ピン)6を備え、シリンダブロック3は各軸部5に対
する複数の軸受部7を備える。クランクシャフト4はそ
の複数の軸部5により複数の軸受部7に回転可能に組み
付けられている。クランクシャフト4の複数の軸部6に
は、ピストン8に連結されたコンロッド9の軸受部(大
端部)10が回転可能に組み付けられている。
【0022】図2はシリンダブロック3の各軸受部7に
おける断面を示す。図1,2に示すように、各軸受部7
はシリンダブロック3に形成されたホルダ11と、これ
に対して一対のボルト12により締め付けられる軸受キ
ャップ13とにより構成される円形状の穴よりなる。軸
部5とこれに対する軸受部7との間にできる隙間G1に
は、その隙間G1の大きさに合わせた肉厚T1を有する
すべり軸受(Plain Bearing)型の軸受メタル14が介装
されている。この軸受メタル14は半割状の単体を上下
一対組み合わせることにより、軸部5と軸受部7との間
に介装されている。軸受メタル14は軸部5との間です
べり運動をする軸受であり、すべり抵抗を低減させて軸
部5の円滑な回転を確保する。この軸受メタル14に
は、アルミニウム、銅、鉛、カドミウム、ニッケル又は
銀等、或いはそれらの合金を材料に使用することができ
る。軸部5と軸受メタル14との間には所要の大きさを
有するクリアランスC1が設けられている。このクリア
ランスC1には、シリンダブロック3及びクランクシャ
フト4等に設けられた油通路15を通じて所定の潤滑油
が供給される。
【0023】図3は各コンロッド9の軸受部10におけ
る断面を示す。図1,3に示すように、各軸受部10は
コンロッド9に形成されたホルダ16と、これに対して
一対のボルト17により締め付けられる軸受キャップ1
8とにより構成される円形状の穴よりなる。軸部6とこ
れに対する軸受部10との間にできる隙間G2には、そ
の隙間G2の大きさに合わせた肉厚T2を有するすべり
軸受(Plain Bearing)型の軸受メタル19が介装されて
いる。この軸受メタル19は前記軸受メタル14と同様
に半割状の単体を上下一対組み合わせることにより、軸
部6と軸受部10との間に介装されている。軸部6と軸
受メタル19との間には、同じく所要の大きさを有する
クリアランスC2が設けられている。このクリアランス
C2にも油通路15を通じて所定の潤滑油が供給され
る。
【0024】ところで、上記の軸受構造において、軸部
5及び軸受部7にはそれぞれ寸法上の公差があることか
ら、両者5,7の間の隙間G1の大きさにもある程度の
範囲でバラツキが出る。軸部6と軸受部10との隙間G
2についても同様である。そのため、軸部5,6と軸受
メタル14,19との間に適正な潤滑性能を確保するた
めに、隙間G1,G2のバラツキに対処して両者の間に
適正な大きさのクリアランスC1,C2を確保する必要
がある。
【0025】そこで、この実施例では、所要の大きさの
クリアランスC1,C2を確保するために、軸受メタル
14,19の肉厚T1,T2の大きさを隙間G1,G2
の大きさに合わせて設定している。
【0026】更に、この軸受メタル14,19には、同
メタル14,19が軸受部7,10に組み付けられた際
に軸受部7,10を膨張変形させながらメタル14,1
9自身は円周方向へ圧縮することのできるクラッシュハ
イト(CH)が設けられている。このクラッシュハイト
(CH)は軸受メタル14,19が軸受部7,10に組
み付けられたときに機能する締め代である。この締め代
の値は、図4に示すように測定用の治具20を使用する
ことにより軸受メタル14,19に与えられる。即ち、
軸受メタル14,19を治具20に組み付け、その一端
をストッパ21で止めて同メタル14,19に所定の大
きさの荷重POをかける。その上で測定される突出量が
クラッシュハイト(CH)に係る設定値である。
【0027】従って、軸受メタル14,19が軸受部
7,10に組み付けられたときには、同メタル14,1
9がクラッシュハイト(CH)の設定値に応じて円周方
向へ圧縮され、それに伴い軸受部7,10が膨張変形す
る。これにより、軸受メタル14,19の外周面が軸受
部7,10の内周面に押し付けられ、両者の間に適正な
密着力が得られる。
【0028】ところで、軸受メタル14,19が組み付
けられたときのクラッシュハイト(CH)による軸受部
7,10の膨張変形量は、同メタル14,19の肉厚T
1,T2の大きさに応じて異なる。更に、その膨張変形
量の違いによっては、実際にできるクリアランスC1,
C2、即ち実クリアランスの大きさも異なる。そこで、
この実施例では、肉厚T1,T2の大きさに応じて異な
る軸受部7,10の膨張変形量を見込んで、所要の実ク
リアランスを得るために実際に機能する実クラッシュハ
イト(CHR)の大きさがほぼ一定となるように、クラ
ッシュハイト(CH)の設定値が個々の軸受メタル1
4,19について最適な値に設定されている。つまり、
軸受メタル14,19の肉厚T1,T2の大きさが異な
れば、それに対応する軸受部7,10の穴径の大きさに
よりクラッシュハイト(CH)の作用程度も異なる。そ
こで、実クラッシュハイト(CHR)の作用程度が同じ
になるように、肉厚T1,T2の違いに応じてクラッシ
ュハイト(CH)の設定値が決められている。即ち、こ
の実施例では、使用される軸受メタル14,19につい
て、その肉厚T1,T2のサイズが隙間G1,G2の大
きさに応じて設定され、併せてそのクラッシュハイト
(CH)の設定値が個々の肉厚T1,T2の違いに応じ
て設定されている。
【0029】従って、この実施例では、クラッシュハイ
ト(CH)の設定値の中に、肉厚T1,T2のサイズの
違いに応じて軸受部7,10の膨張変形量が異なること
が見込まれている。よって、常に一定の大きさの実クラ
ッシュハイト(CHR)が機能することになる。そのた
め、隙間G1,G2の大きさに応じて肉厚T1,T2の
サイズの異なる軸受メタル14,19が軸部5,6と軸
受部7,10との間に組み付けられても、軸受部7,1
0の膨張変形に起因した誤差分が大幅に減少し、軸部
5,6と軸受メタル14,19との間のクリアランスC
1,C2が狙いの大きさになる。その結果、互いに異な
るシリンダブロック3の間で、或いは互いに異なる軸受
部7,10の間で、クリアランスC1,C2のバラツキ
幅を従来よりも低減することができる。その意味から、
軸受メタル14,19による潤滑性能を向上させること
ができ、エンジン1で振動・騒音を一層有効に低減させ
ることができる。
【0030】次に、上記のように隙間G1,G2の大き
さに合った肉厚T1,T2を有する軸受メタル14,1
9を軸部5,6と軸受部7,10との間に組み付けるた
めの方法を説明する。
【0031】上記の軸受構造において、複数の異なるシ
リンダブロック3及びクランクシャフト4の間では、軸
部5及び軸受部7に係る寸法上の公差から、両者5,7
の間の隙間G1の大きさにある程度の範囲でバラツキが
出る。軸部6と軸受部10との隙間G2についても同様
である。そこで、この隙間G1,G2に係るバラツキに
対処して軸部5,6と軸受メタル14,19との間に適
正な潤滑性能を確保するために、本実施例では「選択嵌
合方法」を採用している。即ち、軸受メタル14,19
の組み付けに当たり、隙間G1,G2の大きさに合った
サイズの肉厚T1,T2を有する軸受メタル14,19
が選択され、軸部5,6と軸受部7,10との間に組み
付けられている。これによりクリアランスC1,C2が
所要の大きさに調整されている。
【0032】ここで、上記の軸部5及び軸受部7に係り
それに対する軸受メタル14の「選択嵌合方法」の手順
について説明する。この方法では、上記の隙間G1の大
きさのバラツキを等間隔で複数(この実施例では「1〜
5」)のランクに区分している。その区分に応じたサイ
ズの肉厚T1を有する軸受メタル14を予め複数種類準
備しておく。ここでは、図2における上側及び下側の軸
受メタル14について、肉厚サイズをそれぞれ5種類だ
け準備しておく。この実施例では、図5(a)(b)に
示すように、上側及び下側の軸受メタル14の外周面に
施された捺印又は刻印22に、肉厚サイズに係る番号が
示されている。
【0033】そして、軸部5と軸受部7を組み付ける際
に、両者5,7について実測された隙間G1の大きさを
確認する。即ち、この実施例において、図6に示すよう
に、シリンダブロック3の下面に施された複数の刻印2
3には、個々の軸受部7について実測された穴径サイズ
がそれぞれ示されている。又、図7に示すように、クラ
ンクシャフト4の外周面に施された刻印24には、個々
の軸部5について実測された径サイズがそれぞれ示され
ている。そして、両刻印23,24に示される穴径サイ
ズ及び径サイズに基づき隙間G1の大きさのランクを確
認する。
【0034】そして、その隙間G1のランクに応じて、
複数種類の軸受メタル14の中から隙間G1の大きさに
適合する肉厚サイズを有する軸受メタル14を、上側及
び下側についてそれぞれ選択する。この選択の際に、捺
印又は刻印22の表示が参照される。
【0035】更に、その選択された軸受メタル14を軸
部5の回りに嵌合した上で、軸部5を軸受部7に組み付
けることにより、クランクシャフト4をシリンダブロッ
ク3に組み付ける。
【0036】軸部6及び軸受部10に係りそれに対する
軸受メタル19の「選択嵌合方法」についても上記の手
順に準ずる。ここではその説明を省略する。 (以下、余白)
【0037】
【表2】
【0038】表2は本実施例における軸部5、軸受部7
及び軸受メタル14の「選択嵌合方法」に係る寸法上の
各諸元等を示す。同表2において「軸部5と軸受部7と
の隙間ランク(k)」は「1〜5」に区分されている。
各隙間ランク(k)はその数字が大きいほど隙間G1の
範囲が大きいことを意味する。各隙間ランク(k)のラ
ンク幅(m)はそれぞれ同じ値Wに設定されている。一
対の上側及び下側の軸受メタル14の肉厚サイズ(n)
は「1〜5」の隙間ランク(k)に合わせて「No.1〜N
o.5」に区分され、その番号が大きくなるほど肉厚サイ
ズ(n)が大きくなる。この実施例では、全ての肉厚サ
イズ(n)における軸受メタル14のクラッシュハイト
(CH)の設定値が一部を除いて互いに異なる値になっ
ている。ここでは、軸受部7の膨張変形量(b)が軸受
メタル14の肉厚サイズ(n)の大きさに応じて異なる
ことを見込んで、実際に機能する実クラッシュハイト
(CHR)の大きさがほぼ一定の値、即ち「2A+α」
となるようにクラッシュハイト(CH)の設定値が決定
されている。
【0039】ここで、実クリアランス(a)は、前述し
た軸受部7の膨張変形量(b)と、予め設定された呼び
クリアランス(c)との和から構成される。その膨張変
形量(b)は各隙間ランク(k)毎にある範囲のバラツ
キを有する。各隙間ランク(k)に係る膨張変形量
(b)のバラツキ範囲は、各隙間ランク(k)毎に値W
のランク幅(m)を満足する軸部5と軸受部7との複数
の組み合わせに対し、対応する肉厚サイズ(n)の軸受
メタル14を組み付けたときに得られるものである。膨
張変形量(b)のバラツキ範囲の中には、同表2におい
て棒線で示す「実クリアランス(a)を構成させる範囲
(X)」と、同表2において破線で示す「実際の範囲
(Y)」とが存在する。その二つの範囲(X),(Y)
について内容を説明する。範囲(Y)はあるランク幅
(m)を持った軸部と軸受部との隙間ランク(k)毎で
の軸受部の穴径変化(f)による全体分布幅である。範
囲(X)はあるランク幅(m)を持った軸部と軸受部と
の隙間ランク(k)毎での最小隙間及び最大隙間を構成
する軸受部の穴径変化(f)の中での最小膨張変形量か
ら最大膨張変形量の分布幅である。よって、範囲(Y)
の一部は実クリアランス(a)の範囲決定には影響しな
いことが分かった。
【0040】この表2において、膨張変形量(b)の両
範囲(X),(Y)は各隙間ランク(k)の間で均一で
はないが、その範囲(X)の下限値(viii)が全隙間ラ
ンク(k)を通じて同じであることが分かる。その理由
は、軸受部7の穴径変化による円周長さの変化量(i)
と、各軸受メタル14のクラッシュハイト(CH)の設
定値(ii)とで構成される上下一対の軸受メタル14に
係る実クラッシュハイト(CHR)の値(iii)が同じだ
からである。その結果として、「1〜5」の全隙間ラン
ク(k)を通じて範囲(X)に係る変動幅値(iv)が範
囲(Y)に係る変動幅値(vi)が表1に示したものより
も小さくなる。
【0041】
【表3】
【0042】表3は本実施例の各隙間ランク(k)に対
応する膨張変形量(b)のバラツキ範囲を従来技術のそ
れと比較して示す。ここで、範囲(Y)は軸受メタル1
4を軸受部7に密着させるために最低限必要な膨張変形
量(b)の値(v)を確保しており、更に範囲(X)の膨
張変形量(b)の上限値(vi)は従来技術のそれよりも
相対的に小さい。この実施例では、変動幅値(iv)を従
来技術のそれよりも結果的に約30%小さくすることが
できた。
【0043】図8は上記の表2に従い、穴径変化による
円周長さの変化量(i)が「0」となる「5」の隙間ラン
ク(k)の軸受部7に肉厚サイズ(n)の大きい「No.
5」の軸受メタル14を1個組み付けたときに得られる
実クラッシュハイト(CHR)の大きさを示し、その値
は「A+α/2」となる。図9は同じく上記の表2に従
い、穴径変化による円周長さの変化量(i)が「+γ」と
なる「1」の隙間ランク(k)の軸受部7に肉厚サイズ
(n)の小さい「No.1」の軸受メタル14を1個組み付
けたときに得られる実クラッシュハイト(CHR)の大
きさを示し、その値は「No.5」の場合と同じく「A+γ
/2」となる。図8,9において、「R」は軸受部7の
穴径を示す。
【0044】このように、上記の「選択嵌合方法」によ
れば、常にほぼ一定の大きさの実クラッシュハイト(C
HR)が機能する。従って、軸受部7の膨張変形に起因
する誤差が大幅に低減し、軸部5と軸受メタル14との
間の実クリアランス(a)がほぼ狙いの大きさとなる。
そして、実クラッシュハイト(CHR)の値を全種類の
軸受メタル14を通じて同じにし、軸受部7の膨張変形
量(b)のバラツキ範囲を小さくできることから、実ク
リアランス(a)に係るバラツキを小さくすることがで
きる。
【0045】上記の「選択嵌合方法」によれば、実クリ
アランス(a)に係るバラツキを小さくできることか
ら、そのバラツキの上側の値をより小さくすることがで
き、クランクシャフト4の軸受構造における騒音・振動
低下の点で有利である。一方、そのバラツキの下側の値
をより大きくすることができ、クランクシャフト4の軸
受構造における潤滑性能向上と摩擦抵抗低下の点で有利
である。
【0046】尚、軸部6及び軸受部10に対する軸受メ
タル19の「選択嵌合方法」に関する作用及び効果につ
いても上記の説明に準じ、ここではその説明を省略す
る。 (第2実施例)次に、第1及び第2の発明を具体化した
第2実施例を説明する。尚、この実施例を含む以下の各
実施例において、前記第1実施例と同一の構成要素につ
いては同一の符号を付して説明を省略する。以下には、
構成、作用及び効果について第1実施例と異なった点を
中心に説明する。
【0047】第1実施例では表2,3に示すように、範
囲(X)の膨張変形量(b)に係るバラツキ範囲の下限
値(viii)を「1〜5」の全隙間ランク(k)を通じて
同じに揃えることができた。しかし、同膨張変形量
(b)の上限値(vi)を同じに揃えることはできなかっ
た。即ち、表2に示すように「2〜4」の隙間ランク
(k)には、クラッシュハイト(CH)の加工精度に係
る膨張変形量(b)に対する影響幅値(vii)を越える分
布が表れている。この実施例ではその影響幅値(vii)を
越える分布の対策を行う。 (以下、余白)
【0048】
【表4】
【0049】表4は本実施例における軸部5、軸受部7
及び軸受メタル14の「選択嵌合方法」に係る寸法上の
各諸元等を示し、表2に準ずる。この表4では、表2に
おいて影響幅値(vii)を越える分布を示す「2〜4」の
隙間ランク(k)に対応する「No.2〜No.4」の各肉厚サ
イズ(n)について、クラッシュハイト(CH)の設定
値及び実クラッシュハイト(CHR)の値を異にした二
種類の軸受メタル14がそれぞれ設けられている。従っ
て、この実施例では、上側及び下側についてそれぞれ8
種類の軸受メタル14が予め準備されている。この種類
数は、第1実施例のそれよりも3種類だけ多い。
【0050】例えば、表2の「3」の隙間ランク(k)
に対応する膨張変形量(b)の分布を「P1」とし、そ
の分布P1の構成を図10を参照して説明する。当該隙
間ランク(k)の分布P1は、軸受部7の穴径Rが相対
的に大きい場合の分布P2と、同穴径Rが相対的に小さ
い場合の分布P3とを含み、両者の下限値の差が「θ
1」である。この差θ1に対応して上下一対の軸受メタ
ル14で得られるクラッシュハイト(CH)の値は
「θ」である。そして、その値θが補正値として、
「3」の隙間ランク(k)に対応する一方の軸受メタル
14に係るクラッシュハイト(CH)の設定値に盛り込
まれている。同様にその他の「2,4」の隙間ランク
(k)に対応する一方の軸受メタル14に係るクラッシ
ュハイト(CH)の設定値にも、値θと同様な補正値ε
が盛り込まれている。
【0051】上記の構成について「選択嵌合方法」を実
施した場合には、「2〜4」の各隙間ランク(k)に対
応する「No.2〜No.4」の肉厚サイズ(n)を特定した
後、クラッシュハイト(CH)の設定値について値θ,
εで補正されたものを選択するか否かは、軸受部7の穴
径Rの大小に基づいて決定する。
【0052】従って、範囲(X)の膨張変形量(b)の
下限値(viii) を第1実施例のそれと同じ大きさにし、
同膨張変形量(b)の上限値(vi)を第1実施例のそれ
よりも更に小さくすることができる。この結果、この実
施例では、変動幅値(iv)を第1実施例のそれよりも更
に小さくすることができる。つまり、この実施例では、
「No.2〜No.4」の各肉厚サイズ(n)に係る軸受メタル
14について、クラッシュハイト(CH)の設定値に係
る因子を増やすことにより、膨張変形量(b)に係る変
動幅値(iv)をより縮小することができるのである。そ
の意味で、実クリアランス(a)のバラツキ幅を従来よ
りも低減することができる。
【0053】尚、軸部6及び軸受部10に対する軸受メ
タル19の「選択嵌合方法」に関する作用及び効果につ
いても上記の説明に準じ、ここではその説明を省略す
る。 (第3実施例)次に、第1及び第2の発明を具体化した
第3実施例を説明する。前記第2実施例では、第1実施
例よりも多い8種類の軸受メタル14を「選択嵌合方
法」に使用することにより、軸受部7の膨張変形量
(b)のバラツキ範囲を小さくして実クリアランス
(a)のバラツキを小さくした。この実施例では、第1
実施例と同じ5種類の軸受メタル14を「選択嵌合方
法」に使用することにより、実クリアランス(a)のバ
ラツキを小さくできる手法を説明する。 (以下、余白)
【0054】
【表5】
【0055】表5は本実施例における軸部5、軸受部7
及び軸受メタル14の「選択嵌合方法」に係る寸法上の
各諸元等を示す。第1実施例における表2では、あるバ
ラツキ範囲を有する隙間G1が「1〜5」の隙間ランク
(k)に区分されていたのに対し、この実施例では、同
一のバラツキ範囲を有する隙間が「1〜9」の隙間ラン
ク(k)により細かく区分されている。それに合わせ
て、各隙間ランク(k)のランク幅(m)は第1実施例
の値Wの半分にそれぞれ設定されている。それに合わせ
て、各隙間ランク(k)の呼びクリアランス(c)の値
は「Z−W/2」にそれぞれ設定されている。更に、上
側及び下側の軸受メタル14の組み合わせは、肉厚サイ
ズ(n)に係り、同一番号同士の組み合わせを含む他
に、隣接する番号同士による組み合わせが設定されてい
る。即ち、「1〜9」の各隙間ランク(k)に対応し
て、上側及び下側の肉厚サイズ(n)につき、「No.1,
No.1」、「No.1,No.2」、「No.2,No.2」、「No.2,N
o.3」、「No.3,No.3」、「No.3,No.4」、「No.4,No.
4」、「No.4,No.5」及び「No.5,No.5」の組み合わせ
が設定されている。そして、「1〜9」の各隙間ランク
(k)を通じて、穴径変化による円周長さの変化量(i)
と、上側及び下側に係る二つのクラッシュハイト(C
H)の設定値(ii)とで構成される実クラッシュハイト
(CHR)の値(iii)が互いに同じになるように設定さ
れている。つまり、第1実施例では、上側及び下側の肉
厚サイズ(n)について、同じ番号同士の組み合わせを
設定したが、本実施例では、それらの中間の組み合わせ
を設定している。
【0056】その結果、軸受部7の膨張変形量(b)に
つき、表2における各隙間ランク(k)の間に中間的な
分布を設定することができる。又、軸受メタル14の肉
厚加工精度を改善することなく、即ち軸受メタル14の
肉厚によるランクを細分化することなく、隙間G1に対
する軸受メタル14の調整能力(分解能)を第1実施例
のそれよりも高めることができる。更には、実クリアラ
ンス(a)を構成する呼びクリアランス(c)を第1実
施例のそれよりも小さくすることができる。そして、こ
のように膨張変形量(b)及び呼びクリアランス(c)
についてより精密な調整が可能であることから、軸部5
と軸受メタル14との実クリアランス(a)のバラツキ
を縮小することができる。
【0057】軸部6及び軸受部10に対する軸受メタル
19の「選択嵌合方法」に関する作用及び効果について
も上記の説明に準じ、ここではその説明を省略する。
尚、この発明は次のような別の実施例に具体化すること
もできる。以下の別の実施例においても、前記実施例と
同等の作用及び効果を得ることができる。
【0058】(1)前記第1実施例では、「1〜5」の
隙間ランク(k)を設け、それに対応する「No.1〜No.
5」の肉厚サイズ(n)に係る軸受メタル14を5種類
設けた。これに対し、隙間ランク(k)の数とそれに対
応する肉厚サイズ(n)の種類数を適宜に変更してもよ
い。それに合わせて、第2及び第3の実施例に係る隙間
ランク(k)の数、軸受メタルの種類数を変更すること
ができる。
【0059】(2)前記実施例では、エンジン1のクラ
ンクシャフト4に係る軸受構造に具体化したが、トラン
スミッションのシャフト、カムシャフト或いはバランス
シャフト等の軸受構造や、その他の機構におけるシャフ
トの軸受構造に具体化することもできる。
【0060】更に、上記各実施例には、特許請求の範囲
に記載した技術的思想に係る次のような各種の実施態様
が含まれることを、以下にその効果と共に記載する。 (イ)請求項1又は2に記載の発明において、前記クラ
ッシュハイトの大きさを、更に前記軸受部の膨張変形量
のバラツキに基づいて補正したシャフトの軸受メタル構
造とその軸受メタルの選択組付方法。
【0061】この構成によれば、実クリアランスのバラ
ツキ幅を従来よりも更に低減することができる。 (ロ)請求項2に記載の第2の発明において、一対の軸
受メタルを組み合わせるに際して、同一種類同士の組み
合わせを設定すると共に、異なる種類同士の組み合わせ
を設定したシャフトの軸受メタルの選択組付方法。
【0062】この構成によれば、軸受メタルの肉厚加工
精度を改善することなく、軸部と軸受部との間の隙間に
対する軸受メタルの調整能力(分解能)を高めることが
できる。
【0063】尚、この明細書において、発明の構成に係
る手段及び部材等は、以下のように定義されるものとす
る。 (I)軸受メタルとは、軸受部の穴に嵌め込まれる上下
2片に分かれた筒形の部品を意味し、潤滑油がゆきわた
るように上半部に油穴と油溝を有するものを含む。軸受
メタルはその接触面が摩耗したときに取り替え可能であ
る。
【0064】(II)クラッシュハイトとは、半割状の軸
受メタルに係り、軸受部取付け面からのはみ出し量を意
味する。この値が適切な場合には、軸受メタルが取付け
面に密着固定される。この値が少ないと、取付け面との
密着が悪くなり、摩擦熱が軸受メタルから逃げにくくな
り、焼付きのおそれがある。クラッシュハイトが多すぎ
ると、軸受メタルが歪み、片当たりや偏摩耗を起こす要
因となる。
【0065】
【発明の効果】請求項1に記載の第1の発明によれば、
軸受メタルに設けられるクラッシュハイトの大きさを、
同メタルの肉厚の大きさに応じて異なる軸受部の膨張変
形量を見込んで、実際に機能する実クラッシュハイトの
大きさがほぼ一定となるように設定し、軸受部の膨張変
形量を一定に保つようにしている。
【0066】従って、肉厚の大きさの異なる軸受メタル
が軸部と軸受部との間に組み付けられても、軸受部の膨
張変形に起因する誤差が大幅に低減され、軸部と軸受メ
タルとの間のクリアランスがほぼ狙いの大きさになる。
その結果、そのクリアランスのバラツキ幅を従来よりも
低減することができ、延いては、シャフトの軸受構造に
おける振動・騒音を低下させることができ、軸受構造に
おける潤滑性能を向上させることができるという効果を
発揮する。
【0067】請求項2に記載の第2の発明によれば、隙
間のランクに応じて設定された肉厚を有する軸受メタル
を予め複数種類準備しておき、各種類の軸受メタルにつ
いて、その肉厚の大きさに応じて異なる軸受部の膨張変
形量を見込んで、実際に機能する実クラッシュハイトの
大きさがほぼ一定となるようにし、軸受部の膨張変形量
を一定の範囲に保つようにクラッシュハイトの大きさを
それぞれ設定している。そして、軸部と軸受部を組み付
ける際に、実測される隙間の大きさに応じて適合する軸
受メタルを複数種類の中から選択し組み付けるようにし
ている。
【0068】従って、肉厚の大きさに応じて異なる軸受
部の膨張変形に起因する誤差が大幅に低減され、軸部と
軸受メタルとの間のクリアランスがほぼ狙いの大きさに
なる。その結果、そのクリアランスのバラツキ幅を従来
よりも低減することができ、延いては、シャフトの軸受
構造における振動・騒音を低下させることができ、軸受
構造における潤滑性能を向上させることができるという
効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例に係り、クランクシャフトの各軸
受構造の断面図。
【図2】 第1実施例に係り、軸部、軸受部及び軸受メ
タルの組付け状態の断面図。
【図3】 第1実施例に係り、軸部、軸受部及び軸受メ
タルの組付け状態の断面図。
【図4】 第1実施例に係り、クラッシュハイト測定用
の治具の正面図。
【図5】 第1実施例に係り、軸受メタルの斜視図。
【図6】 第1実施例に係り、シリンダブロックの下面
図。
【図7】 第1実施例に係り、クランクシャフトの一部
側面図。
【図8】 第1実施例に係り、軸受メタルの実クラッシ
ュハイトの説明図。
【図9】 第1実施例に係り、軸受メタルの実クラッシ
ュハイトの説明図。
【図10】 第2実施例に係り、軸受部膨張変形量の分
布構成の説明図。
【図11】 従来技術に係り、クランクシャフトの各軸
受構造の断面図。
【図12】 従来技術に係り、軸部、軸受部及び軸受メ
タルの組付け状態の断面図。
【図13】 従来技術に係り、軸部、軸受部及び軸受メ
タルの組付け状態の断面図。
【図14】 従来技術に係り、クラッシュハイト測定用
の治具の正面図。
【図15】 従来技術に係り、実クリアランスの要因解
析図。
【図16】 従来技術に係り、軸受メタルの実クラッシ
ュハイトの説明図。
【図17】 従来技術に係り、軸受メタルの実クラッシ
ュハイトの説明図。
【符号の説明】
4…クランクシャフト、5,6…軸部、7,10…軸受
部、14,19…軸受メタル、G1,G2…隙間、C
1,C2…クリアランス、T1,T2…肉厚、CH…ク
ラッシュハイト、CHR…実クラッシュハイト。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シャフトの軸部とこれに対する軸受部と
    の間にできる隙間にその大きさに合わせた肉厚を有する
    半割状の軸受メタルを一対組み付け、同メタルと前記軸
    部との間に所要の大きさを有するクリアランスを設定し
    てなる軸受メタル構造であって、 前記軸受メタルに、同メタルを前記軸受部に組み付けた
    ときに前記軸受部を膨張変形させながらメタル自身は円
    周方向へ圧縮されるクラッシュハイトを設け、そのクラ
    ッシュハイトの大きさを、前記軸受メタルの肉厚の大き
    さに応じて異なる前記軸受部の膨張変形量を見込んで、
    実際に機能する実クラッシュハイトの大きさがほぼ一定
    となるように設定し、前記軸受部の膨張変形量を一定に
    保つことを特徴とするシャフトの軸受メタル構造。
  2. 【請求項2】 シャフトの軸部とこれに対する軸受部と
    の間にできる隙間にその大きさに合わせた肉厚を有する
    半割状の軸受メタルを複数種類の中から選択して一対組
    み付け、同メタルと前記軸部との間に所要の大きさを有
    するクリアランスを設定するようにした軸受メタルの選
    択組付方法において、 前記軸部と前記軸受部との間にできる隙間の大きさをほ
    ぼ等間隔で複数のランクに予め区分し、それら各区分に
    応じた大きさの肉厚を有する軸受メタルを予め複数種類
    準備しておくと共に、前記各軸受メタルには、同メタル
    を前記軸受部に組み付けたときにその軸受部を膨張変形
    させながらメタル自身は円周方向へ圧縮されるクラッシ
    ュハイトを設け、前記肉厚の大きさに応じて異なる前記
    軸受部の膨張変形量を見込んで、実際に機能する実クラ
    ッシュハイトの大きさがほぼ一定となるようにし、前記
    軸受部の膨張変形量を一定の範囲に保つように前記クラ
    ッシュハイトの大きさをそれぞれ設定しておき、 前記軸部と前記軸受部を組み付ける際に、実測される前
    記隙間の大きさに応じて適合する軸受メタルを前記複数
    種類の中から選択し、その選択された軸受メタルを前記
    軸部と前記軸受部との間に組み付けるようにしたことを
    特徴とするシャフトの軸受メタルの選択組付方法。
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