JPH0767620A - ユーグレナの流加培養法 - Google Patents
ユーグレナの流加培養法Info
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- JPH0767620A JPH0767620A JP31098192A JP31098192A JPH0767620A JP H0767620 A JPH0767620 A JP H0767620A JP 31098192 A JP31098192 A JP 31098192A JP 31098192 A JP31098192 A JP 31098192A JP H0767620 A JPH0767620 A JP H0767620A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】 ユーグレナを、炭素源及び窒素源を含む培地
で培養を開始し、培養の途中において炭素源及び窒素源
を流加基質として添加しながら流加培養することよりな
るユーグレナの培養法。 【効果】 ユーグレナの収率及びその中のリン脂質含量
を高めることができる。
で培養を開始し、培養の途中において炭素源及び窒素源
を流加基質として添加しながら流加培養することよりな
るユーグレナの培養法。 【効果】 ユーグレナの収率及びその中のリン脂質含量
を高めることができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ユーグレナの培養方法
に関する。本発明の方法によると、ユーグレナの収率を
増大させ、その中のリン脂質含量を向上することができ
る。
に関する。本発明の方法によると、ユーグレナの収率を
増大させ、その中のリン脂質含量を向上することができ
る。
【0002】
【従来の技術】ユーグレナは、単細胞の真核生物であっ
て、生物分類学上はミドリムシ植物門に分類される植物
であると共に、原生動物門に分類される動物でもあると
いう特異な生物である。このユーグレナは、淡水中に広
く分布しており、多くは池や沼などのような静水中に生
棲するが、海水中、あるいは汚水中でも生育することが
知られている。そして、ユーグレナは、比較栄養学の材
料生物として有用であって、その生理について多くの研
究がなされている〔ユーグレナ−生理と生化学、北岡正
三郎編、学会出版センター、1989年〕。また、ユー
グレナは、アラキドン酸やエイコサペンタエン酸などの
高度不飽和脂肪酸、あるいはビタミンC、E、β−カロ
チンなどのビタミン類、さらには良質の蛋白質や多糖類
などの有用物質を生産することも知られている。
て、生物分類学上はミドリムシ植物門に分類される植物
であると共に、原生動物門に分類される動物でもあると
いう特異な生物である。このユーグレナは、淡水中に広
く分布しており、多くは池や沼などのような静水中に生
棲するが、海水中、あるいは汚水中でも生育することが
知られている。そして、ユーグレナは、比較栄養学の材
料生物として有用であって、その生理について多くの研
究がなされている〔ユーグレナ−生理と生化学、北岡正
三郎編、学会出版センター、1989年〕。また、ユー
グレナは、アラキドン酸やエイコサペンタエン酸などの
高度不飽和脂肪酸、あるいはビタミンC、E、β−カロ
チンなどのビタミン類、さらには良質の蛋白質や多糖類
などの有用物質を生産することも知られている。
【0003】近年、ユーグレナの生産するそれらの成分
を利用する目的で、多くの研究者がユーグレナの培養法
について種々の検討を行っている。例えば、高濃度の酸
素を通気することにより、蝋質物や粘質物などの生成、
分泌を抑制し、不飽和脂肪酸やビタミンEなどの生産を
促進させる培養方法(特公平4−4865号公報)や従
来の回分培養法に比べて同一培養時間で1.5〜10倍
量のユーグレナを得ることのできる連続培養方法(特開
昭61−37091号公報)などが知られており、さら
には、閉鎖系暗黒下での培養と開放系光照射下での培養
を組み合わせた培養方法(特開昭61−40785号公
報)も提案されている。本発明者らも、先にシェア・ス
トレスを軽減し,攪拌力に優れたユーグレナ培養装置
(特開平3−98574号公報)を開発している経緯が
ある。
を利用する目的で、多くの研究者がユーグレナの培養法
について種々の検討を行っている。例えば、高濃度の酸
素を通気することにより、蝋質物や粘質物などの生成、
分泌を抑制し、不飽和脂肪酸やビタミンEなどの生産を
促進させる培養方法(特公平4−4865号公報)や従
来の回分培養法に比べて同一培養時間で1.5〜10倍
量のユーグレナを得ることのできる連続培養方法(特開
昭61−37091号公報)などが知られており、さら
には、閉鎖系暗黒下での培養と開放系光照射下での培養
を組み合わせた培養方法(特開昭61−40785号公
報)も提案されている。本発明者らも、先にシェア・ス
トレスを軽減し,攪拌力に優れたユーグレナ培養装置
(特開平3−98574号公報)を開発している経緯が
ある。
【0004】従来、ユーグレナを培養する方法として、
回分培養法が用いられている。この方法では、培養に必
要な栄養分を溶解した発酵槽を滅菌した後、あらかじめ
前培養した細胞を接種し、細胞数及び細胞収率が所定の
水準に到達するまでユーグレナを培養する(特公平4−
4865号公報、特開昭61−40785号公報)。し
かし、この方法で培養した場合、通常の培養期間に得ら
れる細胞収率は、多くても10g/l程度で非常に少な
いという問題がある。また、滅菌した栄養分を連続的に
発酵槽内に送液して発酵槽内に一定時間滞留させると共
に、細胞懸濁液の一部を回収する連続培養法も提案され
ている(特開昭61−37091号公報)。しかし、こ
の方法を用いると培養中に細胞の生理状態が変化するた
め、目的の生産物を高含量で得ることが難しく、さらに
は、培養が長期間にわたるため、雑菌に汚染される危険
性が増加するという問題がある。そして、有用物質の回
収が数回にわたって煩雑であること、あるいはそれを避
けるためにまとめて回収作業を行った場合は、保存中に
細胞成分の変化が生じるなどの問題もある。
回分培養法が用いられている。この方法では、培養に必
要な栄養分を溶解した発酵槽を滅菌した後、あらかじめ
前培養した細胞を接種し、細胞数及び細胞収率が所定の
水準に到達するまでユーグレナを培養する(特公平4−
4865号公報、特開昭61−40785号公報)。し
かし、この方法で培養した場合、通常の培養期間に得ら
れる細胞収率は、多くても10g/l程度で非常に少な
いという問題がある。また、滅菌した栄養分を連続的に
発酵槽内に送液して発酵槽内に一定時間滞留させると共
に、細胞懸濁液の一部を回収する連続培養法も提案され
ている(特開昭61−37091号公報)。しかし、こ
の方法を用いると培養中に細胞の生理状態が変化するた
め、目的の生産物を高含量で得ることが難しく、さらに
は、培養が長期間にわたるため、雑菌に汚染される危険
性が増加するという問題がある。そして、有用物質の回
収が数回にわたって煩雑であること、あるいはそれを避
けるためにまとめて回収作業を行った場合は、保存中に
細胞成分の変化が生じるなどの問題もある。
【0005】一方、リン脂質は生体膜の構成成分であっ
て、通常は食品から摂取される量で十分であることが知
られている。また、生物は必要量に見合ったリン脂質を
生合成することができることも明らかになってきてい
る。しかしながら、近年、生体内の膜リン脂質が、血清
コレステロールの低下作用、血圧降下作用、神経伝達系
の活性化作用など、種々の役割を果たしていることが明
らかとなり、リン脂質の生理活性が見直されつつある現
状にある。そのような中で、ユーグレナが生産するリン
脂質量は、総脂質量の70%以上を占める場合もあるこ
とが知られている。そして、脂肪酸の大部分がこのリン
脂質画分に含まれ、特に高度不飽和脂肪酸はその傾向が
顕著であることから、高度不飽和脂肪酸含量が高く、特
異的な生理活性を有するリン脂質をユーグレナが生産す
ることも期待される。
て、通常は食品から摂取される量で十分であることが知
られている。また、生物は必要量に見合ったリン脂質を
生合成することができることも明らかになってきてい
る。しかしながら、近年、生体内の膜リン脂質が、血清
コレステロールの低下作用、血圧降下作用、神経伝達系
の活性化作用など、種々の役割を果たしていることが明
らかとなり、リン脂質の生理活性が見直されつつある現
状にある。そのような中で、ユーグレナが生産するリン
脂質量は、総脂質量の70%以上を占める場合もあるこ
とが知られている。そして、脂肪酸の大部分がこのリン
脂質画分に含まれ、特に高度不飽和脂肪酸はその傾向が
顕著であることから、高度不飽和脂肪酸含量が高く、特
異的な生理活性を有するリン脂質をユーグレナが生産す
ることも期待される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上述の
問題点を鑑み、ユーグレナの収率を増大させると共に、
リン脂質含量の高いユーグレナを培養すべく、その方法
について鋭意検討を行ったところ、回分培養法と同様の
方法で培養を開始した発酵槽内に、培養途中の任意の時
期に栄養成分を添加し、一定の細胞数および細胞収量に
なるまで培養を行うことにより、ユーグレナの収率を増
大させると共に、リン脂質含量の高いユーグレナを得ら
れることができることを見出し、本発明を完成するに至
った。したがって、本発明は、ユーグレナの収率を増大
させると共に、その中のリン脂質含量を高めるユーグレ
ナ培養方法を提供することを課題とする。
問題点を鑑み、ユーグレナの収率を増大させると共に、
リン脂質含量の高いユーグレナを培養すべく、その方法
について鋭意検討を行ったところ、回分培養法と同様の
方法で培養を開始した発酵槽内に、培養途中の任意の時
期に栄養成分を添加し、一定の細胞数および細胞収量に
なるまで培養を行うことにより、ユーグレナの収率を増
大させると共に、リン脂質含量の高いユーグレナを得ら
れることができることを見出し、本発明を完成するに至
った。したがって、本発明は、ユーグレナの収率を増大
させると共に、その中のリン脂質含量を高めるユーグレ
ナ培養方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ユーグレナを
流加基質として炭素源及び窒素源を添加しながら流加培
養を行なうことよりなるユーグレナの流加培養法に関す
る。本発明における炭素源及び窒素源としては特に限定
はないが、通常のユーグレナその他の微生物、細胞等の
培養に用いられる炭素源及び窒素源が用いられる。この
ような炭素源としては、糖類、例えばグルコース、フル
クトース、ガラクトース、キシロース等を、窒素源とし
てはアンモニウム塩、アミノ酸等を挙げることができ
る。アンモニウム塩としてはリン酸アンモニウム、リン
酸水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等が
あり、このうち特にリン酸水素二アンモニウムが好適で
ある。またアミノ酸には、イソロイシン、リジン、バリ
ン、アスパラギン酸、グルタミン酸等、通常のアミノ酸
を挙げることができるが、このうち特に酸性アミノ酸、
就中グルタミン酸が好適である。また、本発明ではこれ
らのアミノ酸のナトリウム塩等の水溶性塩を用いること
もできる。特に窒素源としてグルタミン酸及びリン酸水
素二アンモニウムを併用することがユーグレナの収率や
リン脂質含量の面からみて望ましい。以下、本発明で
は、炭素源としてグルコースを、窒素源としてグルタミ
ン酸及びリン酸水素二アンモニウムを用いた場合につい
て主として説明するが、本発明の炭素源及び窒素源は上
記のように広範囲のものから選択することができ、これ
らに限定解釈されるべきではない。本発明は、先に挙げ
た種々の従来法に比較して、ユーグレナの収率を増大さ
せることができると共に、リン脂質含量の高いユーグレ
ナを得ることができる。本発明の流加培養法は、従来の
回分培養法と同様の方法で培養を開始した発酵槽内に、
培養途中の任意の時期に栄養成分を添加し、一定の細胞
数および細胞収量になるまで培養を行うことにより、ユ
ーグレナの収率を増大させると共に、リン脂質含量の高
いユーグレナを培養できるものである。
流加基質として炭素源及び窒素源を添加しながら流加培
養を行なうことよりなるユーグレナの流加培養法に関す
る。本発明における炭素源及び窒素源としては特に限定
はないが、通常のユーグレナその他の微生物、細胞等の
培養に用いられる炭素源及び窒素源が用いられる。この
ような炭素源としては、糖類、例えばグルコース、フル
クトース、ガラクトース、キシロース等を、窒素源とし
てはアンモニウム塩、アミノ酸等を挙げることができ
る。アンモニウム塩としてはリン酸アンモニウム、リン
酸水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等が
あり、このうち特にリン酸水素二アンモニウムが好適で
ある。またアミノ酸には、イソロイシン、リジン、バリ
ン、アスパラギン酸、グルタミン酸等、通常のアミノ酸
を挙げることができるが、このうち特に酸性アミノ酸、
就中グルタミン酸が好適である。また、本発明ではこれ
らのアミノ酸のナトリウム塩等の水溶性塩を用いること
もできる。特に窒素源としてグルタミン酸及びリン酸水
素二アンモニウムを併用することがユーグレナの収率や
リン脂質含量の面からみて望ましい。以下、本発明で
は、炭素源としてグルコースを、窒素源としてグルタミ
ン酸及びリン酸水素二アンモニウムを用いた場合につい
て主として説明するが、本発明の炭素源及び窒素源は上
記のように広範囲のものから選択することができ、これ
らに限定解釈されるべきではない。本発明は、先に挙げ
た種々の従来法に比較して、ユーグレナの収率を増大さ
せることができると共に、リン脂質含量の高いユーグレ
ナを得ることができる。本発明の流加培養法は、従来の
回分培養法と同様の方法で培養を開始した発酵槽内に、
培養途中の任意の時期に栄養成分を添加し、一定の細胞
数および細胞収量になるまで培養を行うことにより、ユ
ーグレナの収率を増大させると共に、リン脂質含量の高
いユーグレナを培養できるものである。
【0008】本発明は、ユーグレナ属に属する全ての種
に対して適用することができる。代表的なユーグレナと
しては、Euglena gracilis、Eugl
ena gracilis var.bacillar
is、Euglena viridisなどが知られて
おり、これらの変異種も用いることができる。
に対して適用することができる。代表的なユーグレナと
しては、Euglena gracilis、Eugl
ena gracilis var.bacillar
is、Euglena viridisなどが知られて
おり、これらの変異種も用いることができる。
【0009】本発明において、ユーグレナを培養する際
に用いる培地は、特に限定されるものではなく、通常、
ユーグレナの培養に用いられている組成のもので良い。
また、文献上知られている公知の培地組成を含め、炭素
源、窒素源、無機化合物及びビタミン類など、種々の組
成を組み合わせたものでも良い。例えば、ハトナー培地
〔ジャーナル・オブ・プロトズーオロジー、第6巻、2
3ページ、1959年〕、コレン−ハトナー培地〔ジャ
ーナル・オブ・プロトズーオロジー、第14巻、17ペ
ージ、1967年〕など、公知の培地を用いることがで
きる。なお、ハトナー培地は、培地1l当たり、リンゴ
酸2g、グルタミン酸ナトリウム5g、リン酸二水素カ
リウム0.4g、リン酸水素二アンモニウム0.2g、
硫酸マグネシウム0.5g、炭酸カルシウム0.2g、
硫酸亜鉛22mg、硫酸マンガン5.8mg、硫酸第一
鉄アンモニウム5.7mg、モリブデン酸アンモニウム
1.5mg、硫酸銅1.6mg、硫酸コバルト1.9m
g、ホウ酸11.4mg、EDTA・2ナトリウム50
mg及びビタミンB1 2.5mg、ビタミンB120.0
2mgを含み、pHは3.3である。
に用いる培地は、特に限定されるものではなく、通常、
ユーグレナの培養に用いられている組成のもので良い。
また、文献上知られている公知の培地組成を含め、炭素
源、窒素源、無機化合物及びビタミン類など、種々の組
成を組み合わせたものでも良い。例えば、ハトナー培地
〔ジャーナル・オブ・プロトズーオロジー、第6巻、2
3ページ、1959年〕、コレン−ハトナー培地〔ジャ
ーナル・オブ・プロトズーオロジー、第14巻、17ペ
ージ、1967年〕など、公知の培地を用いることがで
きる。なお、ハトナー培地は、培地1l当たり、リンゴ
酸2g、グルタミン酸ナトリウム5g、リン酸二水素カ
リウム0.4g、リン酸水素二アンモニウム0.2g、
硫酸マグネシウム0.5g、炭酸カルシウム0.2g、
硫酸亜鉛22mg、硫酸マンガン5.8mg、硫酸第一
鉄アンモニウム5.7mg、モリブデン酸アンモニウム
1.5mg、硫酸銅1.6mg、硫酸コバルト1.9m
g、ホウ酸11.4mg、EDTA・2ナトリウム50
mg及びビタミンB1 2.5mg、ビタミンB120.0
2mgを含み、pHは3.3である。
【0010】本発明では、培養開始時の培地に、炭素源
としてグルコースを10〜25g/l、好ましくは13
〜20g/l、窒素源としてグルタミン酸及びリン酸水
素二アンモニウムをそれぞれ1〜10g/l及び0.1
〜5g/l、好ましくは2〜7g/l及び0.2〜3g
/l添加し、培養を開始する。この際、培地のpHは
2.5〜8.0、好ましくは3.0〜4.5、培養温度
は10〜35℃、好ましくは25〜32℃に調整し、光
照射下あるいは暗黒下に、2〜10日間、好ましくは5
〜7日間培養を行う。なお、培養に用いる装置について
は、培養中に流加基質を無菌的に添加できる構造のもの
であれば特に問題はないが、本発明者らの提案したユー
グレナの培養に適した装置(特開平3−98574号公
報)を用いることが好ましい。流加基質は、培養中の任
意の時期、好ましくは培養3日目〜5日目に、炭素源及
び窒素源がほぼ消費されるのでその時期に、炭素源とし
てグルコースを5〜20g/l、好ましくは8〜13g
/l、窒素源としてグルタミン酸及びリン酸水素二アン
モニウムをそれぞれ1〜8g/l及び0.5〜5g/
l、好ましくは3〜5g/l及び0.7〜2g/l添加
し、培養を継続する。なお、流加基質にその他の微量無
機化合物を添加する必要は特にない。炭素源及び窒素源
を添加した直後、培地中の溶存酸素濃度が著しく低下す
るので、通気量を高めることが望ましい。本発明の流加
培養法では、通常の回分培養法の培養3日目頃に培地か
ら消失するグルコース及びグルタミン酸を流加基質とし
て補うことにより、ユーグレナの収率を増大させること
ができると共に、リン脂質含量の高いユーグレナを得る
ことが可能となる。
としてグルコースを10〜25g/l、好ましくは13
〜20g/l、窒素源としてグルタミン酸及びリン酸水
素二アンモニウムをそれぞれ1〜10g/l及び0.1
〜5g/l、好ましくは2〜7g/l及び0.2〜3g
/l添加し、培養を開始する。この際、培地のpHは
2.5〜8.0、好ましくは3.0〜4.5、培養温度
は10〜35℃、好ましくは25〜32℃に調整し、光
照射下あるいは暗黒下に、2〜10日間、好ましくは5
〜7日間培養を行う。なお、培養に用いる装置について
は、培養中に流加基質を無菌的に添加できる構造のもの
であれば特に問題はないが、本発明者らの提案したユー
グレナの培養に適した装置(特開平3−98574号公
報)を用いることが好ましい。流加基質は、培養中の任
意の時期、好ましくは培養3日目〜5日目に、炭素源及
び窒素源がほぼ消費されるのでその時期に、炭素源とし
てグルコースを5〜20g/l、好ましくは8〜13g
/l、窒素源としてグルタミン酸及びリン酸水素二アン
モニウムをそれぞれ1〜8g/l及び0.5〜5g/
l、好ましくは3〜5g/l及び0.7〜2g/l添加
し、培養を継続する。なお、流加基質にその他の微量無
機化合物を添加する必要は特にない。炭素源及び窒素源
を添加した直後、培地中の溶存酸素濃度が著しく低下す
るので、通気量を高めることが望ましい。本発明の流加
培養法では、通常の回分培養法の培養3日目頃に培地か
ら消失するグルコース及びグルタミン酸を流加基質とし
て補うことにより、ユーグレナの収率を増大させること
ができると共に、リン脂質含量の高いユーグレナを得る
ことが可能となる。
【0011】このようにして培養されたユーグレナは、
遠心分離などの手法を用い、培養液から回収することが
できる。培養されたユーグレナは、そのままあるいは凍
結乾燥、通気乾燥等の乾燥手段をほどこして脂質を抽出
する。脂質の抽出はヘキサン、クロロホルム、ジエチル
エーテル、アセトン、メタノール、エタノールなどの通
常脂質の抽出に用いられている有機溶媒を用い、回収し
たユーグレナから脂質を抽出する。抽出操作は、浸漬、
振盪、あるいは攪拌などで十分である。脂質抽出後、減
圧し、含有成分が分解しない程度の温度で抽出液から溶
媒を留去する。そして、抽出した脂質をシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィーなどの方法によって分画し、リン
脂質画分を回収することができる。
遠心分離などの手法を用い、培養液から回収することが
できる。培養されたユーグレナは、そのままあるいは凍
結乾燥、通気乾燥等の乾燥手段をほどこして脂質を抽出
する。脂質の抽出はヘキサン、クロロホルム、ジエチル
エーテル、アセトン、メタノール、エタノールなどの通
常脂質の抽出に用いられている有機溶媒を用い、回収し
たユーグレナから脂質を抽出する。抽出操作は、浸漬、
振盪、あるいは攪拌などで十分である。脂質抽出後、減
圧し、含有成分が分解しない程度の温度で抽出液から溶
媒を留去する。そして、抽出した脂質をシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィーなどの方法によって分画し、リン
脂質画分を回収することができる。
【0012】次に実施例を示し、本発明を詳しく説明す
る。
る。
【実施例1】容量2lの発酵槽に、リンゴ酸に代えてグ
ルコース18g/l、グルタミン酸3g/l、リン酸水
素二アンモニウム2.5g/lを含む改変ハトナー培地
1.3lを入れ、同様の培地で前培養したEuglen
a gracilis SM−ZK株 5%を接種して
流加培養を行った。なお、培養装置は、特開平3−98
574号公報に開示されているものを用いた。培養
は、、25℃、60rpmで攪拌下に、培養0〜3日は
通気速度0.32l/min.、3〜5日は1.3l/
min.、5〜7日は1.95l/min.で通気し、
通気攪拌培養を行なった。そして、流加基質として、培
養3日目及び5日目にグルコース13g/l、グルタミ
ン酸3g/l、リン酸水素二アンモニウム1.5g/l
をそれぞれ添加した。培養後、遠心分離(3,000×
g、10分間)を行ってユーグレナを回収し、凍結乾燥
を行った。得られたユーグレナの収率は30g/lであ
った。
ルコース18g/l、グルタミン酸3g/l、リン酸水
素二アンモニウム2.5g/lを含む改変ハトナー培地
1.3lを入れ、同様の培地で前培養したEuglen
a gracilis SM−ZK株 5%を接種して
流加培養を行った。なお、培養装置は、特開平3−98
574号公報に開示されているものを用いた。培養
は、、25℃、60rpmで攪拌下に、培養0〜3日は
通気速度0.32l/min.、3〜5日は1.3l/
min.、5〜7日は1.95l/min.で通気し、
通気攪拌培養を行なった。そして、流加基質として、培
養3日目及び5日目にグルコース13g/l、グルタミ
ン酸3g/l、リン酸水素二アンモニウム1.5g/l
をそれぞれ添加した。培養後、遠心分離(3,000×
g、10分間)を行ってユーグレナを回収し、凍結乾燥
を行った。得られたユーグレナの収率は30g/lであ
った。
【0013】一方、容量2lの発酵槽に、グルコース3
0g/l、グルタミン酸5g/lを含む改変ハトナー培
地1.3lを充填し、同様の培地で前培養したEugl
ena gracilis SM−ZK株 5%を接種
して回分培養を行った。なお、培養装置は、同様に特開
平3−98574号公報に開示されているものを用い、
25℃、60rpmの条件で、通気速度は、培養0〜4
日が0.32l/min.、4〜7日が0.65l/m
in.とした。培養後、遠心分離(3,000×g、1
0分間)を行ってユーグレナを回収し、凍結乾燥を行っ
た。得られたユーグレナの収率は16.7g/lであっ
た。
0g/l、グルタミン酸5g/lを含む改変ハトナー培
地1.3lを充填し、同様の培地で前培養したEugl
ena gracilis SM−ZK株 5%を接種
して回分培養を行った。なお、培養装置は、同様に特開
平3−98574号公報に開示されているものを用い、
25℃、60rpmの条件で、通気速度は、培養0〜4
日が0.32l/min.、4〜7日が0.65l/m
in.とした。培養後、遠心分離(3,000×g、1
0分間)を行ってユーグレナを回収し、凍結乾燥を行っ
た。得られたユーグレナの収率は16.7g/lであっ
た。
【0014】
【実施例2】実施例1で得られたそれぞれのユーグレナ
からリン脂質を抽出した。溶媒としてクロロホルム:メ
タノール=2:1を用い、振盪抽出の操作を10回行っ
た後、得られた抽出液を減圧下35℃に保持して溶媒を
留去した。次に、溶媒を留去した抽出液をシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーに吸着させた後、10%ジエチ
ルエーテル(n−ヘキサン)、20%ジエチルエーテル
(n−ヘキサン)、1%メタノール(クロロホルム)、
10%メタノール(クロロホルム)及び100%メタノ
ールの溶媒で順次溶出し、それぞれの溶出で得られた画
分をワックスエステル画分、トリグリセリド画分、遊離
脂肪酸画分、少量のリン脂質を含むその他の画分及びリ
ン脂質画分とした。そして、得られたリン脂質画分を薄
層クロマトグラフィー〔吸着剤:HPTLCプレート、
シリカゲル(メルク社製)、展開溶媒:クロロホルム:
n−プロパノール:酢酸エチル:メタノール:0.25
%塩化カリウム水溶液=23:25:25:15:9〕
に供し、Dittmer−Lester試薬陽性のスポ
ットを二波長クロマトスキャナ((株)島津製作所製)
で定量した。なお、各リン脂質については、標準品と同
じRf値を示すものをその物質として同定し、標準品と
一致しないスポットについては、未知のリン脂質として
定量した。定量の結果、流加培養で得られたユーグレナ
では凍結乾燥物1g当たり37.98μmolの総リン
脂質量であったのに対し、回分培養で得られたユーグレ
ナでは凍結乾燥物1g当たり18.58μmolの総リ
ン脂質量であった。
からリン脂質を抽出した。溶媒としてクロロホルム:メ
タノール=2:1を用い、振盪抽出の操作を10回行っ
た後、得られた抽出液を減圧下35℃に保持して溶媒を
留去した。次に、溶媒を留去した抽出液をシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーに吸着させた後、10%ジエチ
ルエーテル(n−ヘキサン)、20%ジエチルエーテル
(n−ヘキサン)、1%メタノール(クロロホルム)、
10%メタノール(クロロホルム)及び100%メタノ
ールの溶媒で順次溶出し、それぞれの溶出で得られた画
分をワックスエステル画分、トリグリセリド画分、遊離
脂肪酸画分、少量のリン脂質を含むその他の画分及びリ
ン脂質画分とした。そして、得られたリン脂質画分を薄
層クロマトグラフィー〔吸着剤:HPTLCプレート、
シリカゲル(メルク社製)、展開溶媒:クロロホルム:
n−プロパノール:酢酸エチル:メタノール:0.25
%塩化カリウム水溶液=23:25:25:15:9〕
に供し、Dittmer−Lester試薬陽性のスポ
ットを二波長クロマトスキャナ((株)島津製作所製)
で定量した。なお、各リン脂質については、標準品と同
じRf値を示すものをその物質として同定し、標準品と
一致しないスポットについては、未知のリン脂質として
定量した。定量の結果、流加培養で得られたユーグレナ
では凍結乾燥物1g当たり37.98μmolの総リン
脂質量であったのに対し、回分培養で得られたユーグレ
ナでは凍結乾燥物1g当たり18.58μmolの総リ
ン脂質量であった。
【0015】
【発明の効果】本発明の流加培養法を用いてユーグレナ
を培養することにより、従来の回分培養法に比べ、ユー
グレナの収率を増大させることができると共に、リン脂
質含量の高いユーグレナを得ることができる。ユーグレ
ナが生産するリン脂質は、高度不飽和脂肪酸の含量も高
く、特異的な生理活性を有することも期待されるので、
医薬や食品などの素材として有用であるが、本発明によ
ってその素材を大量に提供することができる。
を培養することにより、従来の回分培養法に比べ、ユー
グレナの収率を増大させることができると共に、リン脂
質含量の高いユーグレナを得ることができる。ユーグレ
ナが生産するリン脂質は、高度不飽和脂肪酸の含量も高
く、特異的な生理活性を有することも期待されるので、
医薬や食品などの素材として有用であるが、本発明によ
ってその素材を大量に提供することができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 ユーグレナを培養するに当り、流加基質
として炭素源及び窒素源を添加しながら流加培養を行っ
てユーグレナの収率及びその中のリン脂質含量を増大せ
しめることを特徴とするユーグレナの流加培養法。 - 【請求項2】 炭素源としてグルコース、フルクトー
ス、ガラクトース及びキシロースからなる群から選ばれ
る一種以上を、窒素源として酸性アミノ酸及びリン酸ア
ンモニウム塩を用いる請求項1記載の流加培養法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31098192A JPH0767620A (ja) | 1992-10-26 | 1992-10-26 | ユーグレナの流加培養法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31098192A JPH0767620A (ja) | 1992-10-26 | 1992-10-26 | ユーグレナの流加培養法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0767620A true JPH0767620A (ja) | 1995-03-14 |
Family
ID=18011720
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31098192A Pending JPH0767620A (ja) | 1992-10-26 | 1992-10-26 | ユーグレナの流加培養法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0767620A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100842869B1 (ko) * | 2007-04-05 | 2008-07-02 | 한국생명공학연구원 | 질소원 및 탄소원이 자동 공급되는 유가식 배양 방법 및이를 위한 장치 |
JP2019004807A (ja) * | 2017-06-27 | 2019-01-17 | 有限会社サンおきなわ | 微細藻類の培養方法 |
-
1992
- 1992-10-26 JP JP31098192A patent/JPH0767620A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100842869B1 (ko) * | 2007-04-05 | 2008-07-02 | 한국생명공학연구원 | 질소원 및 탄소원이 자동 공급되는 유가식 배양 방법 및이를 위한 장치 |
JP2019004807A (ja) * | 2017-06-27 | 2019-01-17 | 有限会社サンおきなわ | 微細藻類の培養方法 |
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