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JPH07243148A - 繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料およびその製造方法 - Google Patents

繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料およびその製造方法

Info

Publication number
JPH07243148A
JPH07243148A JP6059825A JP5982594A JPH07243148A JP H07243148 A JPH07243148 A JP H07243148A JP 6059825 A JP6059825 A JP 6059825A JP 5982594 A JP5982594 A JP 5982594A JP H07243148 A JPH07243148 A JP H07243148A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yarn
fiber
thermoplastic resin
molding material
yarns
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Application number
JP6059825A
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English (en)
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JP3214647B2 (ja
Inventor
Kiyoshi Honma
清 本間
Akira Nishimura
明 西村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
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Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP05982594A priority Critical patent/JP3214647B2/ja
Publication of JPH07243148A publication Critical patent/JPH07243148A/ja
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  • Reinforced Plastic Materials (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 複雑な曲面をもつFRTPでも容易に成形す
ることができるばかりか、力学的特性の優れたFRTP
を成形することができる成形用材料およびその製造方法
を提供する。 【構成】 強化繊維のマルチフィラメント糸2と、熱可
塑性のマルチフィラメント糸3またはスリットヤーンと
の積層体を織糸とする織物からなる繊維強化熱可塑性樹
脂成形用材料およびその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂
(以下、FRTPという)を成形するための材料および
その製造方法に関する。本発明は、複雑な形状を有する
FRTPの成形に適用してとくに有用なものである。
【0002】
【従来の技術】FRTP、たとえば炭素繊維強化熱可塑
性樹脂(以下、CFRTPという)の成形用材料として
は、従来、例えばナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポ
リプロピレン繊維などの熱可塑性繊維糸と炭素繊維糸と
の交織織物が知られている。このような成形材料は、成
形時の加熱によって熱可塑性繊維糸のみを溶融し、ナイ
ロン、ポリエステル、ポリプロピレンなどのマトリクス
を形成する。このような成形方法により、織物の剪断変
形をそのまま利用できるので、成形時に樹脂含浸と同時
に最終製品の形状に賦形できる利点がある。
【0003】しかしながら、かかる従来技術の成形材料
は、以下に説明するような問題がある。特公平1−35
101号公報で提案されているように、炭素繊維糸と熱
可塑性マルチフィラメント糸またはスリットヤーン(以
下、単に熱可塑性繊維糸ということもある)を引き揃え
てたて糸およびよこ糸とした織物においては、炭素繊維
糸と熱可塑性繊維糸が完全に独立して互いに並行してい
るので、成形時に加熱し、熱可塑性繊維糸を溶融させて
炭素繊維糸間に含浸させようとしても炭素繊維糸の拡が
り性が悪かったりして均一に含浸しないし、例え加熱後
に加圧して強制的な含浸を試みても炭素繊維糸がスペー
サーとなって不均一加圧となり十分な含浸は望めない問
題がある。
【0004】特に炭素繊維糸の拡がり性に関しては、通
常の炭素繊維織物の織糸の場合、織糸の交錯により断面
が楕円形に集合しているし、また織糸に撚りが付与され
ていたり、たとえ無撚であっても各単繊維が交絡してい
たりするため樹脂を十分に含浸させることが困難な場合
が多い。とくに、各織糸の各単繊維がサイジング剤で強
固に接着されている場合にはさらに悪くなり、高い樹脂
含浸性は望めない問題点がある。
【0005】そのようなことから、最近においては炭素
繊維と熱可塑性繊維を均一に混繊させた混繊糸(コミン
グル糸)にして織物にすることが試みられている。この
ような方法を採ると、織物基材内において炭素繊維と熱
可塑性繊維が均一に分散することになるので、高いマト
リクス樹脂の含浸性が得られる。
【0006】しかしながら、この方法においては、一旦
エア交絡などにより炭素繊維と熱可塑性繊維を均一に分
散させたとしても、実際の製織工程における張力によっ
て、伸度が極端に低い炭素繊維が張力を受け持つことに
なり、それが真っ直ぐに伸長されるため簡単に交絡が解
かれる。そしてそれぞれが独立した、いわゆる引き揃え
と同様の状態になってしまう。しかも、前もって混繊し
ておく必要があり製造コストが高くつくという問題もあ
る。
【0007】さらに、前記熱可塑性繊維糸と炭素繊維糸
とを引き揃える従来技術における問題点として、ベース
となる炭素繊維織物には、取扱い性ならびに炭素繊維の
含有率の高い繊維強化樹脂を得るために、織糸間隔が小
さく、目の詰まった織構造が採用されている。そうする
と、織物の剪断変形能は自ずと限界が存在し、大きい曲
面には賦形できないという問題がある。
【0008】剪断変形能を高めるためには、織糸間隔を
大きくすること、あるいは織物組織において交錯点を少
なくした朱子織組織を採用するなどの方策がある。しか
し、前者においては、目の空いた織物であるため織糸の
隙間に樹脂が偏在し、炭素繊維の含有率が低い繊維強化
樹脂となるばかりか、繊維強化樹脂に応力が作用した
際、樹脂が偏在した弱点部からクラックが発生するので
低い強度の材料になってしまう。また、後者において
は、織物の表裏において織糸の浮き方が異なり、樹脂の
硬化収縮によって硬化板に反りが発生する問題も生じ
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、熱可
塑性の繊維糸やスリットヤーンを用いた従来の成形材料
の上述した問題点を解決し、複雑な曲面をもつFRTP
でも容易に成形することができるばかりか、力学的特性
の優れたFRTPを成形することができる成形用材料お
よびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料は、強化
繊維のマルチフィラメント糸と、熱可塑性のマルチフィ
ラメント糸またはスリットヤーンとの積層体を織糸とす
る織物からなる。
【0011】この織物の織組織は、通常、平組織とする
が、綾組織や朱子組織であってもよいし、三軸織物や、
たて糸とよこ糸とが織物の長さ方向に対して斜めに配列
されているバイアス織物であってもよい。
【0012】また、この織物においては、強化繊維の占
めるカバーファクターが90%以上であることが好まし
く、より好ましくは95%以上である。このような高い
カバーファクターによって、FRTPに成形した際に強
化繊維が全体にわたって均一に分布し、樹脂リッチな部
分が生じることが抑えられて、均一かつ高物性のFRT
Pが得られる。
【0013】また、このような高いカバーファクター
は、織糸を上記熱可塑性のマルチフィラメント糸または
スリットヤーンとの積層構成とすることによって容易に
達成され、後述の開繊、拡幅されやすい強化繊維マルチ
フィラメント糸を使用することによって一層容易に達成
される。
【0014】なお、上記カバーファクターCfとは、織
糸間に形成される空隙部の大きさに関係する要素で、織
物上に面積S1 の領域を設定したとき、面積S1 内にお
いて織糸に形成される空隙部の面積をS2 とすると、次
式で定義される値をいう。 カバーファクターCf=[(S1 −S2 )/S1 ]×1
00 これを強化繊維に関して求めた値が、前記強化繊維の占
めるカバーファクターである。
【0015】強化繊維の種類としては、特に限定され
ず、炭素繊維の他、ガラス繊維やポリアミド繊維、ポリ
アラミド繊維、ポリイミド繊維等が使用できる。
【0016】強化繊維の体積含有率の好ましい範囲は、
強化繊維の種類によっても異なるが、30〜70%の範
囲である。強化繊維が炭素繊維である場合、好ましい体
積含有率は45〜70%である。炭素繊維の最大の特徴
は高い比強度、弾性率であり、その特徴を最大限発揮さ
せるには、できるかぎり炭素繊維の含有率を高めること
が必須である。しかしながら、あまりにも高い含有率を
望むと、樹脂が存在しない部分(ボイド)が発生し、か
えって強度、弾性率が低下する問題がある。そのような
ことから、本発明の材料全体の中で、炭素繊維が45〜
70%の体積含有率になることが好ましい。さらに好ま
しい範囲としては、50〜60%である。
【0017】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料
においては、織物の織糸として強化繊維のマルチフィラ
メント糸と熱可塑性のマルチフィラメント糸またはスリ
ットヤーンとの積層体が用いられる。この積層構成の織
糸をたて糸およびよこ糸の両方に採用することが好まし
いが、いずれか一方のみであってもよい。
【0018】上記熱可塑性のマルチフィラメント糸ある
いはスリットヤーンは、ナイロン、ポリエステル、ポリ
プロピレン、あるいはポリエーテルエーテルケトン(P
EEK)などからなるマルチフィラメント糸あるいはス
リットヤーンである。用いる繊維糸あるいはスリットヤ
ーンの太さとしては、1本の強化繊維マルチフィラメン
ト糸に対し、太い繊維糸あるいはスリットヤーンを1本
積層しても良く、また細い糸あるいはスリットヤーンを
複数本積層しても良い。
【0019】積層の態様としては、以下のように各種態
様を採り得る。上記強化繊維マルチフィラメント糸の片
面に熱可塑性のマルチフィラメント糸またはスリットヤ
ーンが積層されているもの、あるいは、上記強化繊維マ
ルチフィラメント糸の両面に熱可塑性のマルチフィラメ
ント糸またはスリットヤーンが積層されているもののい
ずれでもよい。また、上記熱可塑性のマルチフィラメン
ト糸またはスリットヤーンの両面に強化繊維マルチフィ
ラメント糸が積層されているものでもよい。
【0020】これらの積層態様について、図面を用いて
例示する。図1は、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形
用材料の一実施態様を示しており、1はたて糸で、扁平
な強化繊維マルチフィラメント糸2の上に熱可塑性のマ
ルチフィラメント糸3が積層されているものである。ま
た4はよこ糸であって、たて糸1と同様に、強化繊維マ
ルチフィラメント糸2の上に熱可塑性のマルチフィラメ
ント糸3が積層されている。この場合、熱可塑性マルチ
フィラメント糸3は扁平な強化繊維2の下側に積層され
ていてもよいし、また両面に積層されていても良い。ま
た、たて糸またはよこ糸のどちらかに積層されていても
よい。さらに、1本の強化繊維糸2に対し複数本(たと
えば2本)の細い熱可塑性マルチフィラメント糸が積層
されていてもよい。
【0021】図2は、熱可塑性樹脂フイルムのスリット
ヤーンを積層した一態様を示すもので、5は細く裁断さ
れた熱可塑性樹脂フイルムのスリットヤーンであって、
そのスリットヤーン5を2本引き揃えて扁平な強化繊維
マルチフィラメント糸2に積層したものである。この場
合、積層する熱可塑性樹脂フイルムのスリットヤーン5
は1本であってもよいが、幅の狭いスリットヤーン5を
複数本引き揃えることにより、常温での剪断変形量を大
きくとることができる。
【0022】すなわち、熱可塑性のスリットヤーンの場
合においては、スリット幅が扁平な炭素繊維糸と同じ幅
であってもよいが、本発明の特徴である剪断変形能がス
リットヤーンで規制されるから、細いスリットヤーンを
複数本引き揃えたものの方がより好ましい。
【0023】図1、図2に示した具体的な態様からも明
らかなように、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材
料を構成する織物は、特公平1−35101号公報に示
されているような、強化繊維糸と熱可塑性の繊維糸ある
いはスリットヤーンを並行に引き揃えたものとは明確に
構成が異なり、各織糸が強化繊維マルチフィラメント糸
と熱可塑性のマルチフィラメント糸またはスリットヤー
ンとの積層体とされている。
【0024】したがって、強化繊維糸についてみると、
織り目の細かい目の詰まった織り組織となり、FRTP
に成形した際にも、樹脂リッチな部分、ボイドの発生を
抑えて、強化繊維が全体に均一に分布した、均一かつ高
強度のものが得られる。
【0025】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料
においては、上記積層構成に伴う利点に加え、成形時に
おける型への沿いやすさ、樹脂含浸性、さらに高い強化
繊維のカバーファクター等が望まれる。このような要望
を満たすために、とくに強化繊維マルチフィラメント糸
として以下のようなものが好ましい。
【0026】すなわち、集束性がフックドロップ値で1
00〜1,000mmの範囲の、扁平で実質的に撚りが
ない強化繊維マルチフィラメント糸を用いたものであ
る。
【0027】ここでフックドロップ値とは、強化繊維マ
ルチフィラメント糸の集束性に関係する要素で、次のよ
うな測定法によって測定されたフックの自由落下距離の
値をいう。なお、このフックドロップ値は、織物の形態
における強化繊維マルチフィラメント糸の特性であり、
測定は、織物から撚りがかからないように強化繊維マル
チフィラメント糸を取り出して行う。
【0028】まず、長さ120cmの扁平な強化繊維マ
ルチフィラメント糸を、50mg/デニールの初荷重を
かけた状態で、糸の両端を撚りが入らないように、また
扁平状態が潰れないように鉛直方向に固定する。つぎ
に、固定されている強化繊維マルチフィラメント糸の上
部固定部から10cmの位置で、強化繊維マルチフィラ
メント糸の幅のほぼ中央部に、金属製ワイヤー直径が
1.0mm、半径が5mmのフックに3cmの綿糸で重
りを取り付け、フックの自由落下距離を測定し、糸の場
合は、使用するボビンから10個のボビンをランダム抽
出し、1個のボビンにつき10回の測定を行い、10回
の測定値から値の大きい3つを削除した値のn=70の
平均値をフックドロップ値とする。また、織物の場合
は、長さ方向に1.3m長さの織物を3枚抽出し、各織
物からたて糸またはよこ糸を、毛羽が発生しないよう
に、また撚りが入らないようにほぐし、1枚の織物につ
きたて糸またはよこ糸について10回の測定を行い、1
0回の測定値から値の大きい3つを削除した値のn=2
1の平均値を、たて糸またはよこ糸フックドロップ値と
する。なお、ワイヤーおよび綿糸の重量は極力小さく
し、ワイヤー、綿糸および重りの合計重量を30gとす
る。
【0029】このフックドロップ値が大きいほど強化繊
維マルチフィラメント糸は開繊、拡幅されやすい。但し
大きすぎると、マルチフィラメント糸としての形態保持
性がなくなり、織物の製織が困難になるため、大きい方
にも限界がある。集束性をフックドロップ値で上記のよ
うな範囲にすることにより、織物の形態で織糸の最適な
扁平状態が得られ、かつその扁平状態が維持される。
【0030】たとえば炭素繊維糸を用いた織物とする場
合、一般的に炭素繊維はその製造工程において、切れた
フィラメントのローラへの巻き付きによる工程トラブル
を防ぐため、エアーをプリカーサの繊維束に吹き付け、
フィラメント同士を交絡させて、炭素繊維糸に集束性を
付与している。また、サイジング剤の付着量や炭素繊維
のフィラメント同士の接着により炭素繊維糸に集束性を
付与している。フィラメント同士の交絡度合い、サイジ
ング剤の付着量やサイジング剤による接着の度合いによ
ってこれら集束性の程度が決まるが、フックドロップ値
で100mm以下となり、集束性の程度が大きすぎる
と、炭素繊維の集束性が強すぎてハンドレイアップ成形
やプリプレグ加工の際、織物のたて糸およびよこ糸の幅
が拡がることがなく、炭素繊維糸間に形成される空隙に
樹脂のボイドが集中的に発生する。また、プリプレグに
加工する際に樹脂の含浸性が悪くなってしまい、高性能
なFRTPが得られない。また、フックドロップ値が
1,000mm以上であると、炭素繊維糸の集束性が悪
くなり製織中に毛羽が発生し、作業環境が悪くなるばか
りかFRTPの強度も低下する。
【0031】また、上記強化繊維マルチフィラメント糸
からなる織糸には、実質的に撚りがないことが好まし
い。ここで「実質的に撚りがない」とは、糸長1m当た
りに1ターン以上の撚りがない状態をいう。つまり、現
実的に無撚の状態をいう。
【0032】織糸に撚りがあると、その撚部において
は、織糸内で糸幅方向に横断する繊維が存在して繊維を
強固に集合させることになるので、樹脂含浸性が低下す
る。また、その撚りがある部分で糸幅が狭く収束して分
厚くなり、製織された織物の表面に凹凸が発生する。こ
のため、製織された織物は、外力が作用した際にその撚
り部分に応力が集中し、FRTP等に成形した場合に強
度特性が不均一となってしまう。
【0033】このような扁平糸であると、織糸間隔が大
きくて薄い織物が可能となる。したがって、たて糸とよ
こ糸の交錯部における拘束力が低いので容易に剪断変形
させることができる。また、剪断変形量は織糸の間隔と
糸の太さで決まるものであるから、織糸間隔が大きく、
しかも扁平糸であるから織糸断面がたとえば円形になる
まで変形させることができるので、剪断変形量は通常の
織物に比べ遙かに大きいわけである。そのようなことか
ら曲率の高い曲面に沿わせることが出来、複雑な形状に
も容易に沿わせることのできる織物となる。剪断変形量
の最適な値としては、バイアス方向の伸長率が25%以
上であることが望ましい。
【0034】また、扁平糸と熱可塑性繊維糸やスリット
ヤーンとを積層させ薄い織物としているので、この織物
を加熱して熱可塑性樹脂を溶融させると、自然と強化繊
維に均一に含浸していき、従来方法のように樹脂が偏在
した部分が発生するようなことがなく、性能の高いFR
TPが得られる。
【0035】また、織物基材が扁平な織糸で構成されて
いても、その織糸にサイジング剤が強固に付着していた
り、あるいは強化繊維の交絡が強い場合には、樹脂の含
浸性を阻害するおそれがある。しかし、フックドロップ
値を100mm以上とすることにより、織物の状態で強
化繊維糸が開繊、拡幅されており、樹脂の含浸性を極め
て良好に保つことができる。
【0036】上記のような扁平な強化繊維マルチフィラ
メント糸は、その糸厚みが0.07〜0.2mm、糸幅
/糸厚み比が30以上であることが好ましい。糸厚みが
上記範囲未満であると、薄すぎて扁平糸の形態を保持す
るのが困難となり、上記範囲を越えると、クリンプを小
さく抑えることが困難となる。また、糸幅/糸厚み比が
30未満であると、扁平糸の形態の維持と同時にクリン
プを抑えることの両方を同時に達成すること、および上
述のようなフックドロップ値の達成が難しくなる。糸幅
/糸厚み比の上限は特に限定しないが、上記フックドロ
ップ値を考慮しつつ、現実の製織工程の行い易さを考慮
すると、上限値は150程度である。また、糸幅として
は、4〜16mmの範囲程度が製織しやすい。
【0037】本発明に係る織物は前述の如く各種織組織
を採ることが可能であるが、たとえば上記のような扁平
な強化繊維マルチフィラメント糸を含む織糸をたて糸お
よびよこ糸とする平織物とする場合には、織物厚みが
0.15〜0.6mm、織物目付が150〜400g/
2 であることが好ましい。
【0038】上記織物において、強化繊維マルチフィラ
メント糸を炭素繊維糸とする場合には、該炭素繊維糸の
炭素繊維数が5,000〜24,000本、繊度が3,
000〜20,000デニールであることが好ましい。
【0039】また、上述の織物の形態とする場合で、か
つ、扁平な強化繊維マルチフィラメント糸が炭素繊維糸
からなる場合、炭素繊維糸でみた織物目付と炭素繊維糸
の繊度とが次式の関係を満たし、かつ、炭素繊維糸の占
めるカバーファクターが95%以上であることが好まし
い。 W=k・D1/2 但し、W:織物目付(g/m2 ) k:比例定数(1.6〜3.5) D:炭素繊維糸の繊度(デニール)
【0040】このような高いカバーファクターの織物に
することにより、炭素繊維充填密度の高い炭素繊維強化
樹脂材料が得られ、また、炭素繊維強化樹脂材料にした
場合に樹脂の偏在した部分が存在することがなく、炭素
繊維が均一に分散し、高い強度、弾性率の材料となり、
炭素繊維材料の最大の特徴である高い比強度、比弾性率
が十分に発揮される。
【0041】なお、上記のような扁平糸自身の作成方法
としては、たとえば、強化繊維糸の製造工程において、
複数の強化繊維からなる繊維束をロール等で所定の幅に
拡げ、扁平な形状にしてそのまま保持するか、あるいは
元に戻らないようにサイジング剤等で形態を保持させれ
ばよい。とくに、扁平形状を良好に保持するためには、
扁平糸に0.5〜2.0重量%程度の小量のサイジング
剤を付着させておくことが好ましい。
【0042】また、前述の如く、強化繊維マルチフィラ
メント糸を炭素繊維糸とする場合、撚りがなく、繊度が
3,000〜20,000デニールの炭素繊維糸が好ま
しが、糸の繊度は最終成形品の厚みやコストにより決め
ればよいものである。特に製造コストの低い繊度の大き
い炭素繊維糸が好ましい。
【0043】このとき、織糸を構成する炭素繊維として
は直径が5〜10ミクロンμmで、JIS−R7601
に基づく引張破断伸度が1.5〜2.3%、引張破断強
度が200〜800kg・f/mm2 、引張弾性率が2
0,000〜70,000kg・f/mm2 のものが好
ましい。このような炭素繊維を用いることにより、高い
力学的特性を有したCFRTPが得られる。
【0044】上述のような織物からなる繊維強化熱可塑
性樹脂成形用材料は次のように製造される。すなわち、
本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料の製造方
法は、強化繊維のマルチフィラメント糸と、熱可塑性の
マルチフィラメント糸またはスリットヤーンとを積層
し、この積層体をたて糸とよこ糸の少なくとも一方とし
て織物を製織することを特徴とする方法からなる。
【0045】たとえば図3に示すように、従来のレピア
織機を使用し、無撚の扁平な強化繊維糸10を解舒撚が
入らないように横取り解舒して扁平な(横長の)綜絖1
1のメール11aに供給する。同時にその強化繊維糸1
0の上方に重なるように熱可塑性繊維からなる糸条12
を供給し、これら積層された糸条をたて糸13とする。
【0046】このとき、強化繊維糸10と熱可塑性樹脂
糸12の供給角度に差をつけておくとよい。また図4に
示すように綜絖メール11aを上下に分離させておく
と、強化繊維糸10の扁平状態が確実に保たれるのでよ
り好ましい。また、熱可塑性繊維糸12も出来る限り扁
平状で供給する方が熱溶融させた際に均一に含浸しやす
いので好ましいが、強化繊維糸10より狭い幅であって
溶融時に扁平な強化繊維糸10上で流動するからそれほ
ど障害にはならない。
【0047】次いで、扁平な強化繊維糸14と熱可塑性
繊維糸15との積層体からなるよこ糸16においては、
よこ糸ボビンを回転させながら横取りで引取るためのニ
ップ式の供給装置(図示略)、ならびによこ糸の間欠供
給に対してよこ糸を貯溜させるプーリング装置(図示
略)により、よこ糸に解舒撚が入らないようにして、し
かも扁平状が捩じれることのないようにして、筬17を
通され開閉運動されるたて糸13間にレピア18により
供給する。この熱可塑性繊維糸15は、たて糸と同様の
方法で供給するのが好ましいが、前記ニップ式の供給装
置やよこ糸を貯溜させるプーリング装置を使用せずに強
化繊維糸14と上下の関係になるよう2つのガイドを設
けて供給させてもよい。
【0048】前述のような織物からなる繊維強化熱可塑
性樹脂成形用材料を用いて、本発明に係るFRTPが成
形される。本発明に係るFRTPにおいては、強化繊維
糸に熱可塑性繊維糸またはスリットヤーンが積層されて
いるので、そのまま加熱下で加圧することにより、熱可
塑性繊維糸またはスリットヤーンが溶融し強化繊維中に
含浸されてFRTPが成形される。
【0049】織糸が強化繊維糸と熱可塑性繊維糸または
スリットヤーンとの積層構成をとっているため、強化繊
維糸間ピッチは、強化繊維糸の糸幅と略同等のピッチと
でき、織糸間の目の詰まった高い強化繊維糸のカバーフ
ァクターを維持しつつ成形できる。したがって、成形さ
れた状態においても、強化繊維が全体にわたって均一に
分布するこになり、樹脂リッチな部分やボイドの発生が
抑えられ、均一かつ高強度のFRTPが得られる。
【0050】また、前述の如き扁平な実質的に撚りがな
い強化繊維マルチフィラメント糸を用いることにより、
極めて良好な樹脂含浸性とともに、成形の際の型への良
好なフィット性が得られる。また、織物は、その織糸の
クリンプが小さいので凹凸が小さく、成形されたFRT
Pも表面の平滑なものが得られる。
【0051】
【実施例】
実施例1 糸幅が6.5mmの扁平な東レ(株)社製 炭素繊維マ
ルチフィラメント“トレカ”T700S−12K(繊度
7,200デニール)と東レ(株)社製 ナイロンマル
チフィラメント“アラミン”840−96−700(8
40デニール)を準備し、レピア織機を用いて以下の方
法にしたがってたて糸およびよこ糸を供給しながら平織
組織で、それぞれ織密度が1.25本/cmで製織し
た。
【0052】まず、たて糸の炭素繊維糸は横取りで解舒
し、炭素繊維の扁平状を保持しながら横長矩形とした綜
絖メールに供給した。ナイロン糸は炭素繊維糸との体積
割合が50%になるよう、6本引き揃えて、炭素繊維糸
より上方から前記綜絖の上側のメールに供給した。一
方、よこ糸に関しては織機の回転と同期したよこ糸供給
ニップローラーにより横取り方式で、一定速度で引取り
ながら解舒させ、よこ糸の間欠給糸に対して作用する貯
溜装置で弛みが生じるのを防止し、扁平な炭素繊維糸が
捩じれないようにレピアによって供給した。ナイロン糸
においては、たて糸と同様、6本引き揃えて通常のテン
サーおよびガイドを経て、前記扁平な炭素繊維織糸の上
に配置させレピアに把持させるようにして供給した。ま
た、用いた炭素繊維糸は無撚であって、荷重30gのフ
ックドロップ値は220mmであった。
【0053】得られた織物は、カバーファクターが97
%と織糸の空隙部が殆どない目の詰まった織物で、ナイ
ロン糸は、扁平な炭素繊維糸の上に積層されて配置され
ている。この織物を、(0°、90°)/(±45°)
/(±45°)/(0°、90°)と4枚を交差積層
し、プレス成形法を用いて、厚み0.9mmの硬化板を
得た。なお成形時の加圧力は30kg/cm2 、加圧温
度は260℃で成形を行った。
【0054】得られた硬化板にはボイドはなく、炭素繊
維も均一に分散し、表面が滑らかな硬化板であった。そ
の板をJIS−K7073のCFRPの引張試験法に準
拠して引張強度を測定した。その結果を引張散性率と共
に表1に示す。
【0055】比較例1 比較のために、東レ(株)社製 炭素繊維マルチフィラ
メント“トレカ“T700S−12K(繊度7,200
デニール)と東レ(株)社製 ナイロンマルチフィラメ
ント“アミラン”840−96−700(840デニー
ル)を準備し、レピア織機を用い、炭素繊維糸1本とナ
イロン糸6本を引き揃えて、以下に説明する通常の製織
法により製織した。
【0056】織物組織は平織で、たて糸およびよこ糸密
度は、炭素繊維糸と引き揃えた6本のナイロン糸を一つ
の単位として1.25本/cmとした。たて糸は、炭素
繊維糸と6本のナイロン糸引きそろえた糸束を同じ綜絖
のメールに供給し、前記綜絖を1本交互に上下させて開
口をつくり、その開口部によこ糸として炭素繊維糸と6
本のナイロン糸引き揃え糸束を一緒に供給して製織し
た。
【0057】得られた織物は、炭素繊維糸とナイロン糸
が、またはそれぞれが一体となって集束し、目の粗いメ
ッシュ状の織物であった。また、炭素繊維糸とナイロン
糸はそれぞれ張力の掛かり方が異なるために、それぞれ
独立して、互いに並行したり捩じれたりしながら存在し
ており、特に両者または炭素繊維糸が捩じれている部分
においては厚くなっていた。
【0058】この織物を実施例1と同様に、(0°、9
0°)/(±45°)/(±45°)/(0°、90
°)と4枚を交差積層し、プレス成形法を用いて、厚み
1.2mmの硬化板を得た。織物の状態において、マト
リクスとなるナイロン糸は主に炭素繊維糸間に存在する
ため、そのナイロン糸が熱溶融しても炭素繊維間へ入り
込むためには移動距離が大きく、また溶融したナイロン
に圧力が及ばないため含浸不良が見られた。得られた硬
化板は、上記の理由により、炭素繊維糸間に樹脂が欠け
たところ多く存在し、炭素繊維部分にもボイドが多く発
生した。その硬化板を実施例1と同様にJIS−K70
73のCFRPの引張試験法に準拠して引張強度を測定
した。その結果を引張弾性率と共に表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】表1からも分かるように、本発明の織物基
材によると樹脂の含浸性が優れ、高い引張特性が得られ
た。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の繊維強化
熱可塑性樹脂成形用材料およびその製造方法によるとき
は、織物基材の織糸を、単なる引き揃えではなく、強化
繊維マルチフィラメント糸と熱可塑性のマルチフィラメ
ント糸またはスリットヤーンとの積層体としたので、成
形の時の型に沿わせる際、非常に剪断変形能に優れてお
り、曲率の大きい複雑な曲面の型に沿わせることがで
き、成形が大変容易であるばかりか、樹脂の含浸性が優
れているので物性の均一化や成形時間の短縮にもなる
し、また、強化繊維の高いカバーファクター、高い体積
含有率の達成が可能となり、高く均一な力学的特性を有
したFRTPを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る繊維強化熱可塑性樹
脂成形用材料の斜視図である。
【図2】本発明の別の実施態様に係る繊維強化熱可塑性
樹脂成形用材料の斜視図である。
【図3】本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料
の製造方法の一例を示す、織機の部分斜視図である。
【図4】図3の装置の部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1、13 たて糸 2、10、14 扁平な強化繊維マルチフィラメント糸 3、12、15 熱可塑性のマルチフィラメント糸 4、16 よこ糸 5 熱可塑性のスリットヤーン 11 綜絖 11a 綜絖メール

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 強化繊維のマルチフィラメント糸と、熱
    可塑性のマルチフィラメント糸またはスリットヤーンと
    の積層体を織糸とする織物からなる繊維強化熱可塑性樹
    脂成形用材料。
  2. 【請求項2】 前記織物が平組織されてなる、請求項1
    の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料。
  3. 【請求項3】 強化繊維の占めるカバーファクターが9
    0%以上である、請求項1または2の繊維強化熱可塑性
    樹脂成形用材料。
  4. 【請求項4】 強化繊維の体積含有率が30〜70%で
    ある、請求項1ないし3のいずれかに記載の繊維強化熱
    可塑性樹脂成形用材料。
  5. 【請求項5】 前記強化繊維マルチフィラメント糸の片
    面に前記熱可塑性のマルチフィラメント糸またはスリッ
    トヤーンが積層されている、請求項1ないし4のいずれ
    かに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料。
  6. 【請求項6】 前記強化繊維マルチフィラメント糸の両
    面に前記熱可塑性のマルチフィラメント糸またはスリッ
    トヤーンが積層されている、請求項1ないし4のいずれ
    かに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料。
  7. 【請求項7】 前記熱可塑性のマルチフィラメント糸ま
    たはスリットヤーンの両面に前記強化繊維マルチフィラ
    メント糸が積層されている、請求項1ないし4のいずれ
    かに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料。
  8. 【請求項8】 前記強化繊維マルチフィラメント糸1本
    に対して前記熱可塑性のマルチフィラメント糸またはス
    リットヤーンが複数本積層されている、請求項1ないし
    7のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材
    料。
  9. 【請求項9】 前記強化繊維マルチフィラメント糸が、
    集束性がフックドロップ値で100〜1,000mmの
    範囲の、扁平で実質的に撚りがないマルチフィラメント
    糸である、請求項1ないし8のいずれかに記載の繊維強
    化熱可塑性樹脂成形用材料。
  10. 【請求項10】 前記強化繊維マルチフィラメント糸の
    糸厚みが0.07〜0.2mm、糸幅/糸厚み比が30
    以上である、請求項9の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材
    料。
  11. 【請求項11】 たて糸およびよこ糸に前記強化繊維マ
    ルチフィラメント糸を含み、織物厚みが0.15〜0.
    6mm、織物目付が150〜400g/m2である、請
    求項9または10の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料。
  12. 【請求項12】 前記強化繊維マルチフィラメント糸が
    炭素繊維糸である、請求項1ないし11のいずれかに記
    載の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材料。
  13. 【請求項13】 前記炭素繊維糸の炭素繊維数が5,0
    00〜24,000本、繊度が3,000〜20,00
    0デニールである、請求項12の繊維強化熱可塑性樹脂
    成形用材料。
  14. 【請求項14】 前記炭素繊維糸でみた織物目付と前記
    炭素繊維糸の繊度とが次式の関係を満たし、かつ、炭素
    繊維糸の占めるカバーファクターが95%以上である、
    請求項12または13の繊維強化熱可塑性樹脂成形用材
    料。 W=k・D1/2 但し、W:織物目付(g/m2 ) k:比例定数(1.6〜3.5) D:炭素繊維糸の繊度(デニール)
  15. 【請求項15】 強化繊維のマルチフィラメント糸と、
    熱可塑性のマルチフィラメント糸またはスリットヤーン
    とを積層し、この積層体をたて糸とよこ糸の少なくとも
    一方として製織することを特徴とする、繊維強化熱可塑
    性樹脂成形用材料の製造方法。
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