[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JPH07190065A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

Info

Publication number
JPH07190065A
JPH07190065A JP35280893A JP35280893A JPH07190065A JP H07190065 A JPH07190065 A JP H07190065A JP 35280893 A JP35280893 A JP 35280893A JP 35280893 A JP35280893 A JP 35280893A JP H07190065 A JPH07190065 A JP H07190065A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sliding
shaft
unevenness
wear
test
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP35280893A
Other languages
English (en)
Inventor
Takaaki Saigou
隆晄 西郷
Taku Kobayashi
卓 小林
Eiji Suzuki
英二 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
SUTAARAITO KOGYO KK
Starlite Co Ltd
Original Assignee
SUTAARAITO KOGYO KK
Starlite Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by SUTAARAITO KOGYO KK, Starlite Co Ltd filed Critical SUTAARAITO KOGYO KK
Priority to JP35280893A priority Critical patent/JPH07190065A/ja
Priority to EP94119285A priority patent/EP0661470A3/en
Publication of JPH07190065A publication Critical patent/JPH07190065A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Sliding-Contact Bearings (AREA)
  • Lubricants (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 摩耗量が少なく,摩擦係数の小さい高性能の
乾式摺動部材を提供する。 【構成】 摺動部を構成する軸の表面を,(1)10点
平均粗さ(Rz表示法)が0.2〜20μm以内であ
り,かつ(2)二次元的に方向性のない凹凸を設けるこ
とにより,上記の目的を達することが出来た。特に複写
機,プリンタ−の熱定着部に使用するアルミニウム合金
製ロ−ル軸の軸受構成部の部材に使用して著効がある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,各種産業機器,事務機
器,輸送機器などの軸受部,或いはスライド摺動部材,
その製法及びその使用方法に関する。これ等の部分は互
いに摺動する二つの部品から構成され,一般的には軸と
軸受部,或いはスライドとスライド受け部などから構成
されている。これ等は互いに7になって摺動部を形成す
るが,本発明においては主として上述の軸或いはスライ
ド部を謂うが,特殊な態様の場合には受け部を指すこと
もあり,以下,軸或いはスライド部を総称して軸と略称
する。
【0002】
【従来の技術】従来,軸受などと摺動する軸は切削工具
を用いて切削加工で仕上られるか,或いは砥粒,研磨紙
などを用いて研磨加工にて仕上げられる。これ等の加工
方法を用いた仕上げ表面は,微細に見れば二次元的に加
工工具の移動した痕跡の方向性を有する。(参考資料参
照)又従来の摺動面に対する仕上げは鏡面の如く仕上
げ,凹凸を可及的に小さくすることが部材の摩耗を減ら
す良好な方法とも見られる向きもあった。
【0003】又これ等摺動部の材料面から見れば,近
年,液状潤滑剤を用いる摺動方式と共に,特に精密機器
にては乾燥状態で使用される摺動部材が増えてきた。こ
の後者の場合には,自己潤滑性の優れたプラスチック材
料,或いは母材(マトリックス)がプラスチック材料
で,それに4フッ化エチレン樹脂,鱗片状黒鉛,2硫化
モリブデンなどの固体潤滑剤を充填材とした複合材料も
使用が多くなってきたが,このような材料は,一般に相
手軸表面に移着層を形成することによって,優れた摺動
性を発揮するものとも謂われている。
【0004】従来から使用されている研(切)削加工痕
跡に起因する方向性のある凹凸を持つ摺動表面や,極め
て凹凸を少なくした鏡面仕上げ面の場合,相手軸受材料
から移着膜の形成が不充分で,摺動面が摩耗,損傷を受
け,又一旦かかる損傷が始まると,摩擦の変動やガタツ
キ等のため,摩耗量の加速度増加を来すことがあった。
【0005】最近の傾向として,メンテナンスフリ−へ
の指向,精密機器内でのダスト発生防止等の要請から,
長寿命,高信頼性の摺動材,特に低摩耗性の乾式摺動部
材の開発が急務とされている。このような要請に対し
て,従来は軸受材料側からの改良が中心となって来た。
例えば本発明等の発明に係る特開昭62−10166号
などが挙げられるが,かかる改善を以てしても,使用条
件が厳しい今日の要請には充分満足出来る状態には至っ
ていない。
【0006】又,軸側の点からの改良については,軸材
をより硬くして,摩耗を減らす方向の研究が進められ,
例えば焼入れ(軸が鋼材の場合),硬質メッキ,アルマ
イト加工(軸がアルミニウムの場合),セラミックコ−
ティング(CVD法等)などが挙げられる。然しかかる
改良はそれなりの効果もあるが,費用も嵩み,軸の基材
選定範囲の制約も発生し,又その改良効果も今一歩充分
でない憾みがあった。特に複写機,プリンタ−などの熱
定着部のヒ−トロ−ル軸は,均熱性,昇温時間の短縮な
どの要求特性から軟質金属であるアルミニウム合金が,
主に使用されて来たが,耐用性に未だ問題があり,又当
機器の一層の高性能化に伴い,ヒ−トロ−ル軸の損傷に
よるトラブルを解消し得る新規な材料への要求が強い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は,従来の摺
動材料の問題点を基礎的に追求し,厳しい条件下におい
ても低摩耗,低ダスト,高寿命の摺動部材,特に軸摺動
部材を提供する目的で行われ,以下に述べる意外とも思
われる方法で解決,完成したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明においては,軸表
面の形態に着目して鋭意検討の結果,軸表面に,むし
ろ,特定の凹凸を設けることによって,優れた耐摩耗効
果が発現することを見出した。更に敷衍するならば,特
定の凹凸とは,例えばブラスト処理などの手段により,
二次元的に方向性のない,特定の表面粗さ(凹凸)を有
する面を軸表面に形成させることにより,この凹部に移
着した膜を有効に保持,形成させることが出来,軸材
側,軸受材側共に著しく摩耗を少なくすることが出来,
その結果低ダスト,長寿命,低騒音,の課題を一挙に達
成することが出来た。
【0009】ここに,二次元的に方向性のない粗さと
は,10点平均粗さ表示法(JIS・BO601・3−
5項608頁の定義による)で0.2〜20μmの範囲
内,望ましくは1〜10μmの範囲内に表面の凹凸が管
理され,かつその凹凸が一定の方向性を有しないランダ
ム状態にあることを謂う。表面粗さがRz表示で0.2
μm以下の場合は,鏡面に近くなり,有効な移着膜が保
持,形成されにくいため,効果は薄い。又これが20μ
mを超える場合は摩耗の増加或いは摩耗係数の増加を来
して実用的でない。又このような凹凸加工を施した部分
は摺動する部分の全面(略・100%)であることが好
ましいが,施さない部分の面積が50%程度でもその効
力は認められた。
【0010】次に,このような方向性を有せず,かつ深
さがRz0.2〜20μmの凹凸加工表面を形成する方
法について記す。前記したように機械的回転方式の切削
や研磨方法では方向性のある連続溝が残るので,本願発
明においては好ましくない(参考資料・写真2,3)。
方向性のない,深さのコントロ−ルされた凹凸を設ける
ためには,例えば前記のサンドブラスト法(硬い砂状の
粒子を空気と共に表面に吹き付ける方法,参考資料写真
1)の他,エッチング法(化学薬剤による腐蝕作用によ
る方法,又は電解的に表面を荒らす方法),金属溶射法
(溶融金属をミスト状で吹き付ける方法),カロライズ
法(例えば鉄の表面にアルミニウム微粉を載せて昇温反
応させる方法)等が挙げられる。これ等の方法は主とし
て,金属製軸材料に好適である。経済的にはブラスト法
が安価である。
【0011】又非金属材料の場合,例えばエンジニヤリ
ングプラスチック材等の場合には,前記のブラスト法等
の他,成形用金型の内面にブラスト法などにより予め微
細な凹凸を設けて射出成形する方法も量産製品の製造に
は好ましい。
【0012】最近特に電子機器などにおいては,急動,
急停,軽量などの要請から慣性の小さい材料としてアル
ミニウム合金やエンジニヤリング樹脂複合材(芳香族ポ
リエ−テルケトン,ポリアミド,ポリスルホン,ポリア
セタ−ル,ポリアミドイミド,ポリエチレンテレフタレ
−ト等の繊維強化材料)の軽量材料が回転軸やスラスト
部分に用いられることが多くなったが,このような軟質
合金や軟質材料にも,本発明方法は非常に大きな減摩効
果を示すことが見出された。本発明は摺動面の長寿命化
のために,表面を硬くすることは必ずしも必要ではない
が,銅系合金,鉄鋼(不銹鋼材含む)のような硬い材料
に適用しても勿論効果がある。
【0013】また,その硬さ,軽量性,耐熱性,低CT
E性等の点からセラミック材料(例えば珪酸系,アルミ
ナ系,炭素系の等方性材料等)が電子機器,プリンタ
−,換気フアン等の内部構成部材,例えば回転軸にも用
いられるようになったが,このようなセラミック材は原
料として微粉を圧縮,成形,焼成して作られるため,丁
度素焼き陶器の表面のように若干の凹凸を有しているの
で,適当に表面の凹凸を残しつつ研磨加工の併用で本願
発明の実施に好適なる表面に加工することも出来る。
【0014】又このようなセラミック材の表面に他の材
料で被覆したものも本願発明に有効である。例えば等方
性炭素材料にCVD法でSiC膜を50〜100μm程
度折出させたものは,本願発明に好適な表面粗さを有す
ることがある。若し表面粗さが0.2〜20μmの範囲
を大きく超える場合は適宜に表面の凹凸を残しつつ研磨
加工を併用することも可能である。
【0015】
【作用】本発明者らは軸表面の性状と摩擦との関係につ
いて種々の検討を加えた結果,前記のように二次元的に
方向性のないかつ,特定の粗さ範囲を有する凹凸を軸表
面に設けることによって優れた摺動特性が得られること
を見出した。この効果は以下の理由によるものと解釈さ
れるが,本願内容は実施例等に記す実験事実に基づくも
ので,その解釈による理論に拘束されるものではない。
軸表面に移着膜が形成されることによって良好な摺動特
性が得られることは,例えば(株)テクノシステム 1
992.10.16発行の書籍「摩耗機構の解析と対
策」P144.P145に書かれているように一般に知
られている。軸表面と移着膜の結合力が強い場合にこの
効果が良好に発揮されるものと考えられる。仮に,軸表
面と移着膜の結合力が弱い場合は,移着膜が引き続く摺
動の繰り返しによって剥がし取られ,摩耗粉として摺動
界面から排出されることによって見かけ上移着膜が殆ど
無い状態で摺動することになる。このような移着膜形成
の不充分な状態では移着膜による軸表面の保護作用や移
着膜による低摩耗状態(一般に定常摩耗状態と呼ばれ
る)への移行作用が余り期待出来ないことになる。実表
面と移着膜との結合力は原子間力,化学的結合力,機械
的結合力などによるものと考えられている。本発明によ
る二次元的に方向性のない凹凸が形成された軸表面は機
械的結合力(アンカ−効果)が著しく増加するものと考
えられ,この結果耐久性のある良好な移着膜の形成が容
易に,かつこれが保持され易くなり摩耗の低減,軸表面
の保護などに著しい効果を発揮するものとも解釈され
る。
【0016】本発明による加工方法は従来の加工方法
(旋盤切削加工,研磨加工など)と組み合わせて使用さ
れても充分効果を発揮するものであり,当然本発明によ
る表面凹凸の加工がなされる前の表面は,部品を所定寸
法に仕上げるために従来の加工方法(旋盤切削加工,研
磨加工など)が事前に施されており,二次元的に方向性
のある凹凸形成されている。これを更に本願では方向の
ないものに仕上げ加工する。従って本願発明は従来加工
方法との併用を妨げるものではない。
【0017】
【実施例】以下,本発明に係わる摺動部材について,そ
の実施例に基づいて構成及び比較例と対象して説明す
る。
【0018】(1)実験群〔1〕 摺動軸にアルミニウム合金を用いた場合 (イ)供試試料の調整方法 表1に示す実施例1〜6及び比較例1〜8はアルミニウ
ム合金A5056からなるφ20×250Lの棒状軸材
をテストピ−スに用いて評価を実施した。先ず当軸材の
試験表面を10点平均粗さで0.1μm以下に鏡面研磨
した後,実施例1〜6及び比較例1〜2については,粒
径の異なる溶融アルミナ粉砕品を用いサンドブラスト装
置で二次元的に方向性のない所定の粗さに凹凸を設けて
試験に供した。又,比較例3〜8については従来加工方
法(切削加工,研磨加工)を用いて二次元的に方向性の
ある所定の粗さに試験表面を加工して試験に供した。 (ロ)試験条件 実施例1〜4及び比較例1〜6の相手軸受材及び試験条
件は下記の通りである。尚,下記相手軸受材(A)は特
開昭62−10166の比較例1に示す構成の合成樹脂
ベ−ス軸受材料であり,φ20×φ23×15のブッシ
ュ状に成形して供試した。ブッシュの製作方法,構成材
料詳細は特開昭62−10166に示す通りである。 ・試験条件 試験機─ラジアルジャ−ナル型軸受試験機 (イ)速度──8.4m/min (ロ)相手軸受材(A) 面圧──6kgf/cm2 PPS/芳香族ポリアミド繊維 温度──200℃ /PTFE/PbO 潤滑──無潤滑 =55/15/22/8(体積比)
【0020】(2)実験群〔2〕 摺動軸に鉄合金を用いた場合 (イ)供試試料の調整方法 表1に示す実施例7〜11及び比較例9〜17は不錆鋼
SUS303からなるφ20×φ70×7tのディスク
状軸材をテストピ−スに用いて評価を実施した。先ず当
軸材の試験表面を10点平均粗さで0.2μm以下に鏡
面研磨した後,実施例5〜7及び比較例7〜8について
は,粒径の異なる溶融アルミナ粉砕品を用いサンドブラ
スト装置で二次元的に方向性のない所定の粗さ範囲に凹
凸を設けて試験に供した。又比較例9〜17については
従来加工方法(切削加工,研磨加工)を用いて二次元的
に方向性のある所定の粗さに試験表面を加工して試験に
供した。
【0021】(ロ)試験条件 実施例7〜11及び比較例9〜17の相手軸受材及び試
験条件は下記の通りである。 ・相手軸受材(B) PPS/PTFE=80/20体積比 (PPS樹脂及びPTFE粉末をミキサ−で混合し,混
練押出機でペレット化し,射出成形機でφ5×10のピ
ン状に成形した) ・試験条件 試験機─ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度──30m/min 面圧──3kgf/cm2 温度──25℃ 潤滑──無潤滑
【0022】(3)実験群〔3〕 プラスチックの場合 (イ)供試試料の調整方法 軸材としてガラス繊維(30重量%)で補強したポリエ
チレンテレフタレ−ト(市販品,以下GFRPETと呼
ぶ)を,相手軸受材として前述の軸受材B(φ5×10
ピン状成形品)を用いた。実施例の軸材(φ20×φ7
0×3tディスク状成形品)は銅板を対向電極とし油浴
中,放電加工法により加工した金型のキャビティ面を用
いて射出成形することにより二次元的に方向性のない凹
凸を設けて供試した。比較例は研磨加工した金型を用い
て射出成形することにより二次元的に方向性のある凹凸
を設けて供試した。 (ロ)試験条件を下記に示す。 試験条件 試験機──ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度───6m/min 面圧───5kgf/cm2 温度───25℃ 潤滑───無潤滑
【0023】(4)供試試料の評価結果 上記の各テストピ−スを試験評価した第1群,第2群及
び第3群の結果をそれぞれ表1,表2,表3に示す。尚
表中の〔比摩耗量〕及び〔摩擦係数)の算出方法は,下
記によった。
【0024】相手軸受の比摩耗量 相手軸受の摩耗深さを変位計により計測して計算により
摩耗体積に変換し,当摩耗体積を摺動距離と加えた荷重
の積で徐すことによって比摩耗量を求めた。(小さい方
が良い)。 摩擦係数 摺動により発生した摩擦力を荷重変換器により計測し,
計測した摩擦力を加えた荷重で徐すことにより摩擦係数
を求めた。(小さい方が良い)。
【0025】又〔軸の損傷〕欄は一連の実験終了後,供
試した軸を取り外した際の外見を目視観察した所見で,
○印は軸の耐久性良好を,×印は耐久性不良と判定され
たものである。
【0026】
【0027】 (注)*1,2,3は,添付した図面代用の写真のコピ
−:写真1,2,3にそれぞれ対応する。
【0028】
【0029】(5)実験結果からの知見 (イ)第1群実験は棒状アルミニウム合金製軸材の表面
粗さと,相手軸受材の摩耗,回転軸の耐久性及び摩擦と
の影響を見たものである。サンドブラスト法で本発明の
粗度に制御された実施例群は,従来法による表面加工さ
れた比較例群に比べ耐摩耗,摩擦係数,軸の耐久性の点
で格段の効果があった。
【0030】(ロ)第2群実験は,ピンオンディスク型
摩擦・摩耗試験機を用いた摩耗試験であって,換言すれ
ばディスク状スラスト摩耗に対する摺動特性を見たもの
である。供試材としては,鉄鋼製品の中でも汎用性の高
い不銹鋼製材料を用いたが,本発明の粗度に制御され
た,実施例群は,従来法により加工された比較例群に比
べて,耐摩耗,摩擦係数の点で効果が認められ,特に耐
摩耗に格段の改善効果があった。尚,表2中右欄外の*
印試料は「図面代用写真のコピ−」中の写真1,2,3
に対応する。
【0031】(ハ)第3群実験は,通称エンジニアリン
グプラスチック(本例ではPET)をガラス繊維で強化
した(GFRP)デイスクを実験に供した例である。こ
の例の場合は,特に射出成形により供試用デイスクが調
整され,この成形用金型の内面のキャビティ部は銅を対
向電極とした放電加工法によって製作されたものであっ
て,その内表面の粗さは3ケ所10点測定平均値でRz
値5.6μmであった。一方比較例に供した金型は,研
削で概略寸法に加工した後,研磨砥粒紙によって更に精
密研磨仕上げを行ったもので,表面粗さはRz値では
3.3μmであった。
【0032】成形された供試試料(GFRPET)の表
面粗さも略この金型内面粗度に近いものであり,粗さの
点では研磨仕上げ面が,放電加工面に比べ平滑性におい
て優れるものであったが,摺動特性の点では,本願方法
による面がむしろ耐摩耗,摩擦係数の点で格段に優れる
結果が得られた。これは加工面の凹凸の方向性の有無が
大きく摺動特性改善に大きく寄与しているものとも解さ
れるが,その機構解釈については拘束されない。
【0033】
【発明の効果】本発明による摺動部材は,実施例に示す
ように200℃,無潤滑という苛酷な条件下においてア
ルミニウム合金などの軟質軸においても損傷を来すこと
なく,且つ,低摩擦係数,相手軸受材の低摩耗率化を示
す優れた効果を有している。又硬質材料で軸が損傷しに
くいSUS303ステンレス鋼の場合でも,相手の耐摩
耗性を格段に向上させる極めて優れた効果を有してい
る。
【図面の簡単な説明】
供試した軸表面の拡大写真(3枚)のコピ−(図面代
用)及びその説明。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年4月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 摺動部材
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,各種産業機器,事務機
器,輸送機器,油空圧機器などの軸受部,或いはスライ
ド摺動部材,その製法及びその使用方法に関する。これ
等の部分は互いに摺動する二つの部品から構成され,一
般的には軸と軸受部,或いはスライドとスライド受け部
などから構成されている。これ等は互いに対になって摺
動部を形成するが,本発明においては主として上述の軸
或いはスライド部を謂うが,特殊な態様の場合には受け
部を指すこともあり,以下,軸或いはスライド部を総称
して軸と略称する。
【0002】
【従来の技術】従来,軸受などと摺動する軸は切削工具
を用いて切削加工で仕上られるか,或いは砥粒,研磨紙
などを用いて研磨加工にて仕上げられる。これ等の加工
方法を用いた仕上げ表面は,微細に見れば二次元的に加
工工具の移動した痕跡の方向性を有する。(参考資料参
照)又従来の摺動面に対する仕上げは鏡面の如く仕上
げ,凹凸を可及的に小さくすることが部材の摩耗を減ら
す良好な方法とも見られる向きもあった。
【0003】又これ等摺動部の材料面から見れば,近
年,液状潤滑剤を用いる摺動方式と共に,特に精密機器
にては乾燥状態で使用される摺動部材が増えてきた。こ
の後者の場合には,自己潤滑性の優れたプラスチック材
料,或いは母材(マトリックス)がプラスチック材料
で,それに4フッ化エチレン樹脂,鱗片状黒鉛,2硫化
モリブデンなどの固体潤滑剤を充填材とした複合材料も
使用が多くなってきたが,このような材料は,一般に相
手軸表面に移着層を形成することによって,優れた摺動
性を発揮するものとも謂われている。
【0004】従来から使用されている研(切)削加工痕
跡に起因する方向性のある凹凸を持つ摺動表面や,極め
て凹凸を少なくした鏡面仕上げ面の場合,相手軸受材料
から移着膜の形成が不充分で,摺動面が摩耗,損傷を受
け,又一旦かかる損傷が始まると,摩擦の変動やガタツ
キ等のため,摩耗量の加速度増加を来すことがあっ
た。
【0005】最近の傾向として,メンテナンスフリ−へ
の指向,精密機器内でのダスト発生防止等の要請から,
長寿命,高信頼性の摺動材,特に低摩耗性の乾式摺動部
材の開発が急務とされている。このような要請に対し
て,従来は軸受材料側からの改良が中心となって来た。
例えば本発明等の発明に係る特開昭62−10166号
などが挙げられるが,かかる改善を以てしても,使用条
件が厳しい今日の要請には充分満足出来る状態には至っ
ていない。
【0006】又,軸側の点からの改良については,軸材
をより硬くして,摩耗を減らす方向の研究が進められ,
例えば焼入れ(軸が鋼材の場合),硬質メッキ,アルマ
イト加工(軸がアルミニウムの場合),セラミックコ−
ティング(CVD法等)などが挙げられる。然しかかる
改良はそれなりの効果もあるが,費用も嵩み,軸の基材
選定範囲の制約も発生し,又その改良効果も今一歩充分
でない憾みがあった。特に複写機,プリンタ−などの熱
定着部のヒ−トロ−ル軸は,均熱性,昇温時間の短縮な
どの要求特性から軟質金属であるアルミニウム合金が,
主に使用されて来たが,耐用性に未だ問題があり,又当
機器の一層の高性能化に伴い,ヒ−トロ−ル軸の損傷に
よるトラブルを解消し得る新規な材料への要求が強い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は,従来の摺
動材料の問題点を基礎的に追求し,厳しい条件下におい
ても低摩耗,低ダスト,高寿命の摺動部材,特に軸摺動
部材を提供する目的で行われ,以下に述べる意外とも思
われる方法で解決,完成したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明においては,軸表
面の形態に着目して鋭意検討の結果,軸表面に,むし
ろ,特定の凹凸を設けることによって,優れた耐摩耗効
果が発現することを見出した。更に敷衍するならば,特
定の凹凸とは,例えばブラスト処理などの手段により,
二次元的に方向性のない,特定の表面粗さ(凹凸)を有
する面を軸表面に形成させることにより,この凹部に移
着した膜を有効に保持,形成させることが出来,軸材
側,軸受材側共に著しく摩耗を少なくすることが出来,
その結果低ダスト,長寿命,低騒音,の課題を一挙に達
成することが出来た。
【0009】ここに,二次元的に方向性のない粗さと
は,10点平均粗さ表示法(JIS・BO601・3−
5項608頁の定義による)で0.2〜20μmの範囲
内,望ましくは1〜10μmの範囲内に表面の凹凸が管
理され,かつその凹凸が一定の方向性を有しないランダ
ム状態にあることを謂う。表面粗さがRz表示で0.2
μm以下の場合は,鏡面に近くなり,有効な移着膜が保
持,形成されにくいため,効果は薄い。又これが20μ
mを超える場合は摩耗の増加或いは摩耗係数の増加を来
して実用的でない。又このような凹凸加工を施した部分
は摺動する部分の全面(略・100%)であることが好
ましいが,施さない部分の面積が50%程度でもその効
力は認められた。
【0010】次に,このような方向性を有せず,かつ深
さがRz0.2〜20μmの凹凸加工表面を形成する方
法について記す。前記したように機械的回転方式の切削
や研磨方法では方向性のある連続溝が残るので,本願発
明においては好ましくない(参考資料・写真2,3)。
方向性のない,深さのコントロ−ルされた凹凸を設ける
ためには,例えば前記のサンドブラスト法(硬い砂状の
粒子を空気圧又は回転羽で表面に吹き付ける方法,参考
資料写真1)の他,ショットブラスト法(硬い球状の粒
子を空気圧又は回転羽で表面に吹き付ける方法),エッ
チング法(化学薬剤による腐蝕作用による方法,又は電
解的に表面を荒らす方法),金属溶射法(溶融金属をミ
スト状で吹き付ける方法),カロライズ法(例えば鉄の
表面にアルミニウム微粉を載せて昇温反応させる方法)
等が挙げられる。これ等の方法は主として,金属製軸材
料に好適である。経済的にはブラスト法が安価である。
【0011】ブラスト法に用いる粒子材料には,天然
石,セラミックス,金属,などの無機物或いは,クル
ミ,プラスチックなどの有機物があり,粒子形状には,
球状,円柱状,無定形などがあり,相手材質によって適
宜使い分ける。又,これらの方法で軸表面に所定の形状
を形成した後,メッキ加工,防錆加工,焼入加工,表面
硬化処理などを施してもよい。これ等の方法は主とし
て,金属製軸材料に好適である。経済的にはブラスト法
が安価である。
【0012】又非金属材料の場合,例えばエンジニヤリ
ングプラスチック材等の場合には,前記のブラスト法等
の他,成形用金型の内面にブラスト法などにより予め微
細な凹凸を設けて射出成形する方法も量産製品の製造に
は好ましい。
【0013】最近特に電子機器などにおいては,急動,
急停,軽量などの要請から慣性の小さい材料としてアル
ミニウム合金やエンジニヤリング樹脂複合材(芳香族ポ
リエ−テルケトン,ポリアミド,ポリスルホン,ポリア
セタ−ル,ポリアミドイミド,ポリエチレンテレフタレ
−ト等の繊維強化材料)の軽量材料が回転軸やスラスト
部分に用いられることが多くなったが,このような軟質
合金や軟質材料にも,本発明方法は非常に大きな減摩効
果を示すことが見出された。本発明は摺動面の長寿命化
のために,表面を硬くすることは必ずしも必要ではない
が,銅系合金,鉄鋼(不銹鋼材含む)のような硬い材料
に適用しても勿論効果がある。
【0014】また,その硬さ,軽量性,耐熱性,低CT
E性等の点からセラミック材料(例えば珪酸系,アル
ミナ系,炭素系の等方性材料等)が電子機器,プリンタ
−,換気フアン等の内部構成部材,例えば回転軸にも用
いられるようになったが,このようなセラミック材は,
一般的には熔融法或いは原料として微粉を圧縮,成形,
して作られるため,丁度素焼き陶器の表面のように
若干の凹凸を有しているので,適当に表面の凹凸を残し
つつ研磨加工の併用で本願発明の実施に好適なる表面に
加工することも出来る。
【0015】又このようなセラミック材の表面に他の材
料で被覆したものも本願発明に有効である。例えば等方
性炭素材料にCVD法でSiC膜を50〜100μm程
度折出させたものは,本願発明に好適な表面粗さを有す
ることがある。若し表面粗さが0.2〜20μmの範囲
を大きく超える場合は適宜に表面の凹凸を残しつつ研磨
加工を併用することも可能である。
【0016】
【作用】本発明者らは軸表面の性状と摩擦との関係につ
いて種々の検討を加えた結果,前記のように二次元的に
方向性のない,かつ特定の粗さ範囲を有する凹凸を軸表
面に設けることによって優れた摺動特性が得られること
を見出した。この効果は以下の理由によるものと解釈さ
れるが,本願内容は実施例等に記す実験事実に基づくも
ので,その解釈による理論に拘束されるものではない。
軸表面に移着膜が形成されることによって良好な摺動特
性が得られることは,例えば(株)テクノシステム 1
992.10.16発行の書籍「摩耗機構の解析と対
策」P144.P145に書かれているように一般に知
られている。軸表面と移着膜の結合力が強い場合にこの
効果が良好に発揮されるものと考えられる。仮に,軸表
面と移着膜の結合力が弱い場合は,移着膜が引き続く摺
動の繰り返しによって剥がし取られ,摩耗粉として摺動
界面から排出されることによって見かけ上移着膜が殆ど
無い状態で摺動することになる。
【0017】このような移着膜形成の不充分な状態では
移着膜による軸表面の保護作用や移着膜による低摩耗状
態(一般に定常摩耗状態と呼ばれる)への移行作用が余
り期待出来ないことになる。実表面と移着膜との結合力
は原子間力,化学的結合力,機械的結合力などによるも
のと考えられている。本発明による二次元的に方向性の
ない凹凸が形成された軸表面は機械的結合力(アンカ−
効果)が著しく増加するものと考えられ,この結果耐久
性のある良好な移着膜の形成が容易に,かつこれが保持
され易くなり摩耗の低減,軸表面の保護などに著しい効
果を発揮するものとも解釈される。
【0018】本発明による加工方法は従来の加工方法
(旋盤切削加工,研磨加工など)と組み合わせて使用さ
れても充分効果を発揮するものであり,当然本発明によ
る表面凹凸の加工がなされる前の表面は,部品を所定寸
法に仕上げるために従来の加工方法(旋盤切削加工,研
磨加工など)が事前に施されており,二次元的に方向性
のある凹凸形成されている。これを更に本願では方向の
ないものに仕上げ加工する。従って本願発明は従来加工
方法との併用を妨げるものではない。
【0019】
【実施例】以下,本発明に係わる摺動部材について,そ
の実施例に基づいて構成及び効果を比較例と対して説
明する。
【0020】(1)実験群〔1〕 摺動軸にアルミニウム合金を用いた場合 (イ)供試試料の調整方法 表1に示す実施例1〜6及び比較例1〜8はアルミニウ
ム合金A5056からなるφ20×250Lの棒状軸材
をテストピ−スに用いて評価を実施した。先ず当軸材の
試験表面を10点平均粗さで0.1μm以下に鏡面研磨
した後,実施例1〜6及び比較例1〜2については,粒
径の異なる溶融アルミナ粉砕品を用いサンドブラスト装
置で二次元的に方向性のない所定の粗さに凹凸を設けて
試験に供した。又,比較例3〜8については従来加工方
法(切削加工,研磨加工)を用いて二次元的に方向性の
ある所定の粗さに試験表面を加工して試験に供した。
【0021】(ロ)試験条件 実施例1〜及び比較例1〜の相手軸受材及び試験条
件は下記の通りである。尚,下記相手軸受材(A)は特
開昭62−10166の比較例1に示す構成の合成樹脂
ベ−ス軸受材料であり,φ20×φ23×15のブッシ
ュ状に成形して供試した。ブッシュの製作方法,構成材
料詳細は特開昭62−10166に示す通りである。 ・試験条件 試験機─ラジアルジャ−ナル型軸受試験機 (イ)速度──8.4m/min (ロ)相手軸受材(A) 面圧──6kgf/cm2 PPS/芳香族ポリアミド繊維 温度──200℃ /PTFE/PbO 潤滑──無潤滑 =55/15/22/8(体積比)
【0022】(2)実験群〔2〕 摺動軸に鉄合金を用いた場合 (イ)供試試料の調整方法 表に示す実施例7〜11及び比較例9〜17は不錆鋼
SUS303からなるφ20×φ70×7tのディスク
状軸材をテストピ−スに用いて評価を実施した。先ず当
軸材の試験表面を10点平均粗さで0.μm以下に鏡
面研磨した後,実施例11及び比較例10につ
いては,粒径の異なる溶融アルミナ粉砕品を用いサンド
ブラスト装置で二次元的に方向性のない所定の粗さ範囲
に凹凸を設けて試験に供した。又比較例11〜17につ
いては従来加工方法(切削加工,研磨加工)を用いて二
次元的に方向性のある所定の粗さに試験表面を加工して
試験に供した。
【0023】(ロ)試験条件 実施例7〜11及び比較例9〜17の相手軸受材及び試
験条件は下記の通りである。 ・相手軸受材(B) PPS/PTFE=80/20体積比 (PPS樹脂及びPTFE粉末をミキサ−で混合し,混
練押出機でペレット化し,射出成形機でφ5×10のピ
ン状に成形した) ・試験条件 試験機─ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度──30m/min 面圧──3kgf/cm2 温度──25℃ 潤滑──無潤滑
【0024】(3)実験群〔3〕 プラスチックの場合 (イ)供試試料の調整方法 軸材としてガラス繊維(30重量%)で補強したポリエ
チレンテレフタレ−ト(市販品,以下GFRPETと呼
ぶ)を,相手軸受材として前述の軸受材B(φ5×10
ピン状成形品)を用いた。実施例の軸材(φ20×φ7
0×3tディスク状成形品)は銅板を対向電極とし油浴
中,放電加工法により加工した金型のキャビティ面を用
いて射出成形することにより二次元的に方向性のない凹
凸を設けて供試した。比較例は研磨加工した金型を用い
て射出成形することにより二次元的に方向性のある凹凸
を設けて供試した。
【0025】(ロ)試験条件を下記に示す。 試験条件 試験機──ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度───6m/min 面圧───5kgf/cm2 温度───25℃ 潤滑───無潤滑
【0026】(4)実験群〔4〕 セラミックスの場合 (イ)供試試料の調整方法 軸材として1.5mm厚さのガラス板をφ70ディスク
形状に加工して用いた。相手軸受材は前述の軸受材B
(但し,φ8×10)を用いた。実施例14は二次元的
に方向性のない凹凸を有している市販のスリガラスを,
比較例21は殆ど凹凸のない鏡面状態の市販のガラス板
を,比較例22は上記鏡面状態のガラス板に研磨加工で
方向性を有する凹凸を設けたものをそれぞれ軸材試料と
して供試した。
【0027】(ロ)試験条件を下記に示す。 試験条件 試験機───ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度────30m/min 面圧────3kgf/cm2 温度────25℃ 潤滑────無潤滑
【0028】()供試試料の評価結果 上記の各テストピ−スを試験評価した第1群,第2群,
第3群及び第4群の結果をそれぞれ表1,表2,表3,
表4に示す。尚表中の〔比摩耗量〕及び〔摩擦係数)の
算出方法は,下記によった。
【0029】相手軸受の比摩耗量 相手軸受の摩耗深さを変位計により計測して計算により
摩耗体積に変換し,当摩耗体積を摺動距離と加えた荷重
の積ですことによって比摩耗量を求めた。(小さい方
が良い)。 摩擦係数 摺動により発生した摩擦力を荷重変換器により計測し,
計測した摩擦力を加えた荷重ですことにより摩擦係数
を求めた。(小さい方が良い)。
【0030】又〔軸の損傷〕欄は一連の実験終了後,供
試した軸を取り外した際の外見を目視観察した所見で,
○印は軸の耐久性良好を,×印は耐久性不良と判定され
たものである。
【0031】
【0032】 (注)*1,2,3は,添付した図面代用の写真のコピ
−:写真1,2,3にそれぞれ対応する。
【0033】
【0034】
【0035】()実験結果からの知見 (イ)第1群実験は棒状アルミニウム合金製軸材の表面
粗さと,相手軸受材の摩耗,回転軸の耐久性及び摩擦と
の影響を見たものである。サンドブラスト法で本発明の
粗度に制御された実施例群は,従来法による表面加工さ
れた比較例群に比べ耐摩耗,摩擦係数,軸の耐久性の点
で格段の効果があった。
【0036】(ロ)第2群実験は,ピンオンディスク型
摩擦・摩耗試験機を用いた摩耗試験であって,換言すれ
ばディスク状スラスト摩耗に対する摺動特性を見たもの
である。供試材としては,鉄鋼製品の中でも汎用性の高
い不銹鋼製材料を用いたが,本発明の粗度に制御され
た,実施例群は,従来法により加工された比較例群に比
べて,耐摩耗,摩擦係数の点で効果が認められ,特に耐
摩耗に格段の改善効果があった。尚,表2中右欄外の*
印試料は「図面代用写真のコピ−」中の写真1,2,3
に対応する。
【0037】(ハ)第3群実験は,通称エンジニアリン
グプラスチック(本例ではPET)をガラス繊維で強化
した(GFRP)デイスクを実験に供した例である。こ
の例の場合は,特に射出成形により供試用デイスクが調
整され,この成形用金型の内面のキャビティ部は銅を対
向電極とした放電加工法によって製作されたものであっ
て,その内表面の粗さは3ケ所10点測定平均値でRz
値5.6μmであった。一方比較例に供した金型は,研
削で概略寸法に加工した後,研磨砥粒紙によって更に精
密研磨仕上げを行ったもので,表面粗さはRz値では
3.3μmであった。
【0038】成形された供試試料(GFRPET)の表
面粗さも略この金型内面粗度に近いものであり,粗さの
点では研磨仕上げ面が,放電加工面に比べ平滑性におい
て優れるものであったが,摺動特性の点では,本願方法
による面がむしろ耐摩耗,摩擦係数の点で格段に優れる
結果が得られた。これは加工面の凹凸の方向性の有無が
大きく摺動特性改善に大きく寄与しているものとも解さ
れるが,その機構解釈については拘束されない。
【0039】(ニ)第4実験群はセラミックスであるガ
ラスをディスク状軸材として実験に供した例である。凹
凸の殆どない鏡面の板ガラス(比較例21)は摩耗は少
ないが摩擦係数が非常に高く,又方向性のある凹凸研磨
加工で設けた板ガラス(比較例22)は摩耗が非常に多
い。方向性のないランダムな状態で所定の粗度に制御さ
れた凹凸を有する実施例14は摩擦,摩耗共優れた特性
を示した。
【0040】
【発明の効果】本発明による摺動部材は,実施例に示す
ように200℃,無潤滑という苛酷な条件下においてア
ルミニウム合金などの軟質軸においても損傷を来すこと
なく,且つ,低摩擦係数,相手軸受材の低摩耗率化を示
す優れた効果を有している。又硬質材料で軸が損傷しに
くいSUS303ステンレス鋼の場合でも,相手の耐摩
耗性を格段に向上させる極めて優れた効果を有してい
る。
【図面の簡単な説明】 供試した軸表面の拡大写真(3枚)のコピ−(図面代
用)及びその説明。
【手続補正書】
【提出日】平成6年6月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例10に供試した摺動軸表面の顕微鏡写真
(Rz値6.31μm)プラスト加工を行ったもの(方
向性無し)を示す。(倍率43倍)
【図2】比較例14に供試した摺動軸表面の顕微鏡写真
(Rz値6.15μm)研磨加工により表面を仕上げた
もので,表面の方向性のある凹凸を示す。(倍率43
倍) 研磨方向:図中左から右へ。
【図3】比較例16に供試した摺動軸表面の顕微鏡写真
(Rz値6.23μm)切削加工により仕上げたもの。
Rz値は略同じ数値に揃え,方向性のある凹凸を示す。
(倍率43倍) 切削方向:図中左から右へ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年8月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,各種産業機器,事務機
器,輸送機器,油空圧機器などの軸受部,或いはスライ
ド摺動部材,その製法及びその使用方法に関する。これ
等の部分は互いに摺動する二つの部品から構成され,一
般的には軸と軸受部,或いはスライドとスライド受け部
などから構成されている。これ等は互いに対になって摺
動部を形成するが,本発明においては主として上述の軸
或いはスライド部を謂うが,特殊な態様の場合には受け
部を指すこともあり,以下,軸或いはスライド部を総称
して軸と略称する。
【0002】
【従来の技術】従来,軸受などと摺動する軸は切削工具
を用いて切削加工で仕上られるか,或いは砥粒,研磨紙
などを用いて研磨加工にて仕上げられる。これ等の加工
方法を用いた仕上げ表面は,微細に見れば二次元的に加
工工具の移動した痕跡の方向性を有する。(図2,3参
)又従来の摺動面に対する仕上げは鏡面の如く仕上
げ,凹凸を可及的に小さくすることが部材の摩耗を減ら
す良好な方法とも見られる向きもあった。
【0003】又これ等摺動部の材料面から見れば,近
年,液状潤滑剤を用いる摺動方式と共に,特に精密機器
にては乾燥状態で使用される摺動部材が増えてきた。こ
の後者の場合には,自己潤滑性の優れたプラスチック材
料,或いは母材(マトリックス)がプラスチック材料
で,それに4フッ化エチレン樹脂,鱗片状黒鉛,2硫化
モリブデンなどの固体潤滑剤を充填材とした複合材料も
使用が多くなってきたが,このような材料は,一般に相
手軸表面に移着層を形成することによって,優れた摺動
性を発揮するものとも謂わわている。
【0004】従来から使用されている研(切)削加工痕
跡に起因する方向性のある凹凸を持つ摺動表面や,極め
て凹凸を少なくした鏡面仕上げ面の場合,相手軸受材料
から移着膜の形成が不充分で,摺動面が摩耗,損傷を受
け,又一旦かかる損傷が始まると,摩擦の変動やガタツ
キ等のため,摩耗量の加速度増加を来すことがあっ
た。
【0005】最近の傾向として,メンテナンスフリーへ
の指向,真空系内での摺動部への応用,精密機器内での
ダスト発生防止等の要請から,長寿命,高信頼性の摺動
材,特に低摩耗性の乾式摺動部材の開発が急務とされて
いる。このような要請に対して,従来は軸受材料側から
の改良が中心となって来た。例えば本発明等の発明に係
る特開昭62−10166号などが挙げられるが,かか
る改善を以てしても,使用条件が厳しい今日の要請には
充分満足出来る状態には至っていない。
【0006】又,軸側の点からの改良については,軸材
をより硬くして,摩耗を減らす方向の研究が進められ,
例えば焼入れ(軸が鋼材の場合),硬質メッキ,アルマ
イト加工(軸がアルミニウムの場合),セラミックコー
ティング(CVD法等)などが挙げられる。然しかかる
改良はそれなりの効果もあるが,費用も嵩み,軸の基材
選定範囲の制約も発生し,又その改良効果も今一歩充分
でない憾みがあった。特に複写機,プリンターなどの熱
定着部のヒートロール軸は,均熱性,昇温時間の短縮な
どの要求特性から軟質金属であるアルミニウム合金が,
主に使用されて来たが,耐用性に未だ問題があり,又当
機器の一層の高性能化に伴い,ヒートロール軸の損傷に
よるトラブルを解消し得る新規な材料への要求が強い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は,従来の摺
動材料の問題点を基礎的に追求し,厳しい条件下におい
ても低摩耗,低ダスト,高寿命の摺動部材,特に軸摺動
部材を提供する目的で行われ,以下に述べる意外とも思
われる方法で解決,完成したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明においては,軸表
面の形態に着目して鋭意検討の結果,軸表面に,むし
ろ,特定の凹凸を設けることによって,優れた耐摩耗効
果が発現することを見出した。更に敷衍するならば,特
定の凹凸とは,例えばブラスト処理などの手段により,
二次元的に方向性のない,特定の表面粗さ(凹凸)を有
する面を軸表面に形成させることにより,この凹部に移
着した膜を有効に保持,形成させることが出来,軸材
側,軸受材側共に著しく摩耗を少なくすることが出来,
その結果低ダスト,長寿命,低騒音,の課題を一挙に達
成することが出来た。
【0009】ここに,二次元的に方向性のない粗さと
は,10点平均粗さ表示法(JIS・BO601・3−
5項608頁の定義による)で0.2〜20μmの範囲
内,望ましくは1〜10μmの範囲内に表面の凹凸が管
理され,かつその凹凸が一定の方向性を有しないランダ
ム状態にあることを謂う。表面粗さがRz表示で0.2
μm以下の場合は,鏡面に近くなり,有効な移着膜が保
持,形成されにくいため,効果は薄い。又これが20μ
mを超える場合は摩耗の増加或いは摩耗係数の増加を来
して実用的でない。又このような凹凸加工を施した部分
は摺動する部分の全面(略・100%)であることが好
ましいが,施さない部分の面積が50%程度でもその効
力は認められた。
【0010】次に,このような方向性を有せず,かつ深
さがRz0.2〜20μmの凹凸加工表面を形成する方
法について記す。前記したように機械的回転方式の切削
や研磨方法では方向性のある連続溝が残るので,本願発
明においては好ましくない(例えば図2,3)。方向性
のない,深さのコントロールされた凹凸を設けるために
は,例えば前記のサンドブラスト法(硬い砂状の粒子を
空気圧又は回転羽で表面に吹き付ける方法,例えば図
)の他,ショットブラスト法(硬い球状の粒子を空気
圧又は回転羽で表面に吹き付ける方法),エッチング法
(化学薬剤による腐蝕作用による方法,又は電解的に表
面を荒らす方法),金属溶射法(溶融金属をミスト状で
吹き付ける方法),カロライズ法(例えば鉄の表面にア
ルミニウム微粉を載せて昇温反応させる方法)等が挙げ
られる。これ等の方法は主として,金属製軸材料に好適
である。経済的にはブラスト法が安価である。
【0011】ブラスト法に用いる粒子材料には,天然
石,セラミックス,金属,などの無機物或いは,クル
ミ,プラスチックなどの有機物があり,粒子形状には,
球状,円柱状,無定形などがあり,相手材質によって適
宜使い分ける。又,これらの方法で軸表面に所定の形状
を形成した後,メッキ加工,防錆加工,焼入加工,表面
硬化処理などを施してもよい。これ等の方法は主とし
て,金属製軸材料に好適である。経済的にはブラスト法
が安価である。
【0012】又非金属材料の場合,例えばエンジニヤリ
ングプラスチック材等の場合には,前記のブラスト法等
の他,成形用金型の内面にブラスト法などにより予め微
細な凹凸を設けて射出成形する方法も量産製品の製造に
は好ましい。
【0013】最近特に電子機器などにおいては,急動,
急停,軽量などの要請から慣性の小さい材料としてアル
ミニウム合金やエンジニヤリング樹脂複合材(芳香族ポ
リエーテルケトン,ポリアミド,ポリスルホン,ポリア
セタール,ポリアミドイミド,ポリエチレンテレフタレ
ート等の繊維強化材料)の軽量材料が回転軸やスラスト
部分に用いられることが多くなったが,このような軟質
合金や軟質材料にも,本発明方法は非常に大きな減摩効
果を示すことが見出された。本発明は摺動面の長寿命化
のために,表面を硬くすることは必ずしも必要ではない
が,銅系合金,鉄鋼(不銹鋼材含む)のような硬い材料
に適用しても勿論効果がある。
【0014】また,その硬さ,軽量性,耐熱性,低CT
E性等の点からセラミック材料(例えば珪酸系,アル
ミナ系,炭素系の等方性材料等)が電子機器,プリンタ
ー,換気フアン等の内部構成部材,例えば回転軸にも用
いられるようになったが,このようなセラミック材は,
一般的には熔融法或いは原料として微粉を圧縮,成形,
して作られるため,丁度素焼き陶器の表面のように
若干の凹凸を有しているので,適当に表面の凹凸を残し
つつ研磨加工の併用で本願発明の実施に好適なる表面に
加工することも出来る。
【0015】又このようなセラミック材の表面に他の材
料で被覆したものも本願発明に有効である。例えば等方
性炭素材料にCVD法でSiC膜を50〜100μm程
度折出させたものは,本願発明に好適な表面粗さを有す
ることがある。若し表面粗さが0.2〜20μmの範囲
を大きく超える場合は適宜に表面の凹凸を残しつつ研磨
加工を併用することも可能である。
【0016】
【作用】本発明者らは軸表面の性状と摩擦との関係につ
いて種々の検討を加えた結果,前記のように二次元的に
方向性のない,かつ特定の粗さ範囲を有する凹凸を軸表
面に設けることによって優れた摺動特性が得られること
を見出した。この効果は以下の理由によるものと解釈さ
れるが,本願内容は実施例等に記す実験事実に基づくも
ので,その解釈による理論に拘束されるものではない。
軸表面に移着膜が形成されることによって良好な摺動特
性が得られることは,例えば(株)テクノシステム 1
992.10.16発行の書籍「摩耗機構の解析と対
策」P144.P145に書かれているように一般に知
られている。軸表面と移着膜の結合力が強い場合にこの
効果が良好に発揮されるものと考えられる。仮に,軸表
面と移着膜の結合力が弱い場合は,移着膜が引き続く摺
動の繰り返しによって剥がし取られ,摩耗粉として摺動
界面から排出されることによって見かけ上移着膜が殆ど
無い状態で摺動することになる。
【0017】このような移着膜形成の不充分な状態では
移着膜による軸表面の保護作用や移着膜による低摩耗状
態(一般に定常摩耗状態と呼ばれる)への移行作用が余
り期待出来ないことになる。実表面と移着膜との結合力
は原子間力,化学的結合力,機械的結合力などによるも
のと考えられている。本発明による二次元的に方向性の
ない凹凸が形成された軸表面は機械的結合力(アンカー
効果)が著しく増加するものと考えられ,この結果耐久
性のある良好な移着膜の形成が容易に,かつこれが保持
され易くなり摩耗の低減,軸表面の保護などに著しい効
果を発揮するものとも解釈される。
【0018】本発明による加工方法は従来の加工方法
(旋盤切削加工,研磨加工など)と組み合わせて使用さ
れても充分効果を発揮するものであり,当然本発明によ
る表面凹凸の加工がなされる前の表面は,部品を所定寸
法に仕上げるために従来の加工方法(旋盤切削加工,研
磨加工など)が事前に施されており,二次元的に方向性
のある凹凸形成されている。これを更に本願では方向の
ないものに仕上げ加工する。従って本願発明は従来加工
方法との併用を妨げるものではない。
【0019】
【実施例】以下,本発明に係わる摺動部材について,そ
の実施例に基づいて構成及び効果を比較例と対して説
明する。
【0020】(1)実験群〔1〕 摺動軸にアルミニウム合金を用いた場合 (イ)供試試料の調整方法 表1に示す実施例1〜6及び比較例1〜8はアルミニウ
ム合金A5056からなるφ20×250Lの棒状軸材
をテストピースに用いて評価を実施した。先ず当軸材の
試験表面を10点平均粗さで0.1μm以下に鏡面研磨
した後,実施例1〜6及び比較例1〜2については,粒
径の異なる溶融アルミナ粉砕品を用いサンドブラスト装
置で二次元的に方向性のない所定の粗さに凹凸を設けて
試験に供した。又,比較例3〜8については従来加工方
法(切削加工,研磨加工)を用いて二次元的に方向性の
ある所定の粗さに試験表面を加工して試験に供した。
【0021】(ロ)試験条件 実施例1〜及び比較例1〜の相手軸受材及び試験条
件は下記の通りである。尚,下記相手軸受材(A)は特
開昭62−10166の比較例1に示す構成の合成樹脂
ベース軸受材料であり,φ20×φ23×15のブッシ
ュ状に成形して供試した。ブッシュの製作方法,構成材
料詳細は特開昭62−10166に示す通りである。 ・試験条件 試験機…ラジアルジャーナル型軸受試験機 (イ)速度……8.4m/min (ロ)相手軸受材(A) 面圧……6kgf/cm PPS/芳香族ポリアミド繊維 温度……200℃ /PTFE/PbO 潤滑……無潤滑 =55/15/22/8(体積比)
【0022】(2)実験群〔2〕 摺動軸に鉄合金を用いた場合 (イ)供試試料の調整方法 表に示す実施例7〜11及び比較例9〜17は不錆鋼
SUS303からなるφ20×φ70×7tのディスク
状軸材をテストピースに用いて評価を実施した。先ず当
軸材の試験表面を10点平均粗さで0.μm以下に鏡
面研磨した後,実施例11及び比較例10につ
いては,粒径の異なる溶融アルミナ粉砕品を用いサンド
ブラスト装置で二次元的に方向性のない所定の粗さ範囲
に凹凸を設けて試験に供した。又比較例11〜17につ
いては従来加工方法(切削加工,研磨加工)を用いて二
次元的に方向性のある所定の粗さに試験表面を加工して
試験に供した。
【0023】(ロ)試験条件 実施例7〜11及び比較例9〜17の相手軸受材及び試
験条件は下記の通りである。 ・相手軸受材(B) PPS/PTFE=80/20体積比 (PPS樹脂及びPTFE粉末をミキサーで混合し,混
練押出機でペレット化し,射出成形機でφ5×10のピ
ン状に成形した) ・試験条件 試験機…ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度……30m/min 面圧……3kgf/cm 温度……25℃ 潤滑……無潤滑
【0024】(3)実験群〔3〕 プラスチックの場合 (イ)供試試料の調整方法 軸材としてガラス繊維(30重量%)で補強したポリエ
チレンテレフタレート(市販品,以下GFRPETと呼
ぶ)を,相手軸受材として前述の軸受材B(φ5×10
ピン状成形品)を用いた。実施例の軸材(φ20×φ7
0×3tディスク状成形品)は銅板を対向電極とし油浴
中,放電加工法により加工した金型のキャビティ面を用
いて射出成形することにより二次元的に方向性のない凹
凸を設けて供試した。比較例は研磨加工した金型を用い
て射出成形することにより二次元的に方向性のある凹凸
を設けて供試した。
【0025】(ロ)試験条件を下記に示す。 試験条件 試験機……ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度………6m/min 面圧………5kgf/cm 温度………25℃ 潤滑………無潤滑
【0026】(4)実験群〔4〕 セラミックスの場合 (イ)供試試料の調整方法 軸材として1.5mm厚さのガラス板をφ70ディスク
形状に加工して用いた。相手軸受材は前述の軸受材B
(但し,φ8×10)を用いた。実施例14は二次元的
に方向性のない凹凸を有している市販のスリガラスを,
比較例21は殆ど凹凸のない鏡面状態の市販のガラス板
を,比較例22は上記鏡面状態のガラス板に研磨加工で
方向性を有する凹凸を設けたものをそれぞ軸材試料とし
て供試した。
【0027】(ロ)試験条件を下記に示す。 試験条件 試験機………ピンオンディスク型摩擦・摩耗試験機 速度……………30m/min 面圧……………3kgf/cm 温度……………25℃ 潤滑……………無潤滑
【0028】()供試試料の評価結果 上記の各テストピースを試験評価した第1群,第2群,
第3群及び第4群の結果をそれぞれ表1,表2,表3,
表4に示す。尚表中の〔比摩耗量〕及び〔摩擦係数)の
算出方法は,下記によった。
【0029】相手軸受の比摩耗量 相手軸受の摩耗深さを変位計により計測して計算により
摩耗体積に変換し,当摩耗体積を摺動距離と加えた荷重
の積ですことによって比摩耗量を求めた。(小さい方
が良い)。 摩擦係数 摺動により発生した摩擦力を荷重変換器により計測し,
計測した摩擦力を加えた荷重ですことにより摩擦係数
を求めた。(小さい方が良い)。
【0030】又〔軸の損傷〕欄は一連の実験終了後,供
試した軸を取り外した際の外見を目視観察した所見で,
○印は軸の耐久性良好を,×印は耐久性不良と判定され
たものである。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】()実験結果からの知見 (イ)第1群実験は棒状アルミニウム合金製軸材の表面
粗さと,相手軸受材の摩耗,回転軸の耐久性及び摩擦と
の影響を見たものである。サンドブラスト法で本発明の
粗度に制御された実施例群は,従来法による表面加工さ
れた比較例群に比べ耐摩耗,摩擦係数,軸の耐久性の点
で格段の効果があった。
【0036】(ロ)第2群実験は,ピンオンディスク型
摩擦・摩耗試験機を用いた摩耗試験であって,換言すれ
ばディスク状スラスト摩耗に対する摺動特性を見たもの
である。供試材としては,鉄鋼製品の中でも汎用性の高
い不銹鋼製材料を用いたが,本発明の粗度に制御され
た,実施例群は,従来法により加工された比較例群に比
べて,耐摩耗,摩擦係数の点で効果が認められ,特に耐
摩耗に格段の改善効果があった。尚,表2中右欄外の*
印試料はそれぞれ図1,2,3に対応する。
【0037】(ハ)第3群実験は,通称エンジニアリン
グプラスチック(本例ではPET)をガラス繊維で強化
した(GFRP)デイスクを実験に供した例である。こ
の例の場合は,特に射出成形により供試用デイスクが調
整され,この成形用金型の内面のキャビティ部は銅を対
向電極とした放電加工法によって製作されたものであっ
て,その内表面の粗さは3ケ所10点測定平均値でRz
値5.6μmであった。一方比較例に供した金型は,研
削で概略寸法に加工した後,研磨砥粒紙によって更に精
密研磨仕上げを行ったもので,表面粗さはRz値では
3.3μmであった。
【0038】成形された供試試料(GFRPET)の表
面粗さも略この金型内面粗度に近いものであり,粗さの
点では研磨仕上げ面が,放電加工面に比べ平滑性におい
て優れるものであったが,摺動特性の点では,本願方法
による面がむしろ耐摩耗,摩擦係数の点で格段に優れる
結果が得られた。これは加工面の凹凸の方向性の有無が
大きく摺動特性改善に大きく寄与しているものとも解さ
れるが,その機構解釈については拘束されない。
【0039】(ニ)第4実験群はセラミックスであるガ
ラスをディスク状軸材として実験に供した例である。凹
凸の殆どない鏡面の板ガラス(比較例21)は摩耗は少
ないが摩擦係数が非常に高く,又方向性のある凹凸研磨
加工で設けた板ガラス(比較例22)は摩耗が非常に多
い。方向性のないランダムな状態で所定の粗度に制御さ
れた凹凸を有する実施例14は摩擦,摩耗共優れた特性
を示した。
【0040】
【発明の効果】本発明による摺動部材は,実施例に示す
ように200℃,無潤滑という苛酷な条件下においてア
ルミニウム合金などの軟質軸においても損傷を来すこと
なく,且つ,低摩擦係数,相手軸受材の低摩耗率化を示
す優れた効果を有している。又硬質材料で軸が損傷しに
くいSUS303ステンレス鋼の場合でも,相手の耐摩
耗性を格段に向上させる極めて優れた効果を有してい
る。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 125:02) C10N 20:06 B 40:02 40:06 70:00

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 摺動部表面に10点平均粗さ(Rz)表
    示で0.2〜20μmの二次元的に方向性のない凹凸を
    設けた摺動部材。
  2. 【請求項2】 摺動部の材料が鉄鋼材(不銹鋼材を含
    む),アルミニウム合金製材料,銅系合金,高分子製材
    料(繊維強化材含む)である請求項1に記載の摺動部
    材。
  3. 【請求項3】 摺動部の材料の凹凸付与加工法が,ブラ
    スト加工法,エッチング加工法,金属溶射法,カロライ
    ズ加工法,放電加工法により,表面凹凸加工が施された
    ものである請求項1に記載の摺動部材。
  4. 【請求項4】 摺動部の材料の凹凸付与加工が,金型内
    面に予め設けられた凹凸により加工された高分子製材料
    (繊維強化材を含む)である請求項1に記載の摺動部
    材。
  5. 【請求項5】 摺動部表面に10点平均粗さ(Rz)表
    示で0.2〜20μmの二次元的に方向性のない凹凸を
    設けた摺動部材を,複写機用内部の回転摺動部(熱定着
    ロ−ルを含む)の構成部品,電子機器(プリンタ−を含
    む)の回転軸並びにスラスト摺動部の構成部品,として
    用いる摺動部材の使用方法。
  6. 【請求項6】 摺動部表面に10点平均粗さ(Rz)表
    示で0.2〜20μmの二次元的に方向性のない凹凸を
    設けた摺動部材を,複写機,プリンタ−の熱定着部アル
    ミニウム合金製ロ−ル軸の軸受摺動部の構成部材として
    用いる請求項5の摺動部材の使用方法。
JP35280893A 1993-12-27 1993-12-27 摺動部材 Pending JPH07190065A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35280893A JPH07190065A (ja) 1993-12-27 1993-12-27 摺動部材
EP94119285A EP0661470A3 (en) 1993-12-27 1994-12-07 Smooth and hanging contact bearing.

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35280893A JPH07190065A (ja) 1993-12-27 1993-12-27 摺動部材

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07190065A true JPH07190065A (ja) 1995-07-28

Family

ID=18426582

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP35280893A Pending JPH07190065A (ja) 1993-12-27 1993-12-27 摺動部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07190065A (ja)

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0949612A (ja) * 1995-08-07 1997-02-18 Babcock Hitachi Kk 流動化空気用散気管
KR100613017B1 (ko) * 1998-06-02 2006-08-14 페데랄-모굴 비스바덴 게엠베하 운트 코. 카게 평베어링과 그의 제조방법
JP2010060085A (ja) * 2008-09-05 2010-03-18 Teikoku Piston Ring Co Ltd 摺動材の組合せ
JP2011084679A (ja) * 2009-10-16 2011-04-28 Starlite Co Ltd 動力伝達ガイド用摺動部材
JP2013178163A (ja) * 2012-02-28 2013-09-09 Kayaba Ind Co Ltd プラスチック材料の評価方法
WO2015046356A1 (ja) * 2013-09-27 2015-04-02 千住金属工業株式会社 摺動部材
WO2015046355A1 (ja) * 2013-09-27 2015-04-02 千住金属工業株式会社 摺動部材及び摺動部材の製造方法
US9956613B2 (en) 2012-10-25 2018-05-01 Senju Metal Industry Co., Ltd. Sliding member and production method for same
US10036088B2 (en) 2013-02-15 2018-07-31 Senju Metal Industry Co., Ltd. Sliding member and method of manufacturing the sliding member
US10309457B2 (en) 2012-03-27 2019-06-04 Senju Metal Industry Co., Ltd. Sliding member

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0949612A (ja) * 1995-08-07 1997-02-18 Babcock Hitachi Kk 流動化空気用散気管
KR100613017B1 (ko) * 1998-06-02 2006-08-14 페데랄-모굴 비스바덴 게엠베하 운트 코. 카게 평베어링과 그의 제조방법
JP2010060085A (ja) * 2008-09-05 2010-03-18 Teikoku Piston Ring Co Ltd 摺動材の組合せ
JP2011084679A (ja) * 2009-10-16 2011-04-28 Starlite Co Ltd 動力伝達ガイド用摺動部材
JP2013178163A (ja) * 2012-02-28 2013-09-09 Kayaba Ind Co Ltd プラスチック材料の評価方法
US10309457B2 (en) 2012-03-27 2019-06-04 Senju Metal Industry Co., Ltd. Sliding member
US9956613B2 (en) 2012-10-25 2018-05-01 Senju Metal Industry Co., Ltd. Sliding member and production method for same
US10036088B2 (en) 2013-02-15 2018-07-31 Senju Metal Industry Co., Ltd. Sliding member and method of manufacturing the sliding member
WO2015046355A1 (ja) * 2013-09-27 2015-04-02 千住金属工業株式会社 摺動部材及び摺動部材の製造方法
CN105579723A (zh) * 2013-09-27 2016-05-11 千住金属工业株式会社 滑动构件和滑动构件的制造方法
JP2015068397A (ja) * 2013-09-27 2015-04-13 千住金属工業株式会社 摺動部材
JP2015068396A (ja) * 2013-09-27 2015-04-13 千住金属工業株式会社 摺動部材及び摺動部材の製造方法
US10145415B2 (en) 2013-09-27 2018-12-04 Senju Metal Industry Co., Inc. Sliding member
WO2015046356A1 (ja) * 2013-09-27 2015-04-02 千住金属工業株式会社 摺動部材
US10443653B2 (en) 2013-09-27 2019-10-15 Senju Metal Industry Co., Ltd. Sliding member and method for manufacturing sliding member

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ul Haq et al. Dry sliding friction and wear behavior of AA7075-Si3N4 composite
Kumar et al. Influence of rutile (TiO2) content on wear and microhardness characteristics of aluminium-based hybrid composites synthesized by powder metallurgy
EP1801248B1 (en) Wear resistant low friction coating composition and method for coating
JP2517604B2 (ja) 摺動材料
KR101639549B1 (ko) 미끄럼 부재 및 미끄럼 재료 조성물
JPH07190065A (ja) 摺動部材
WO1993020023A1 (en) Sliding member and production thereof
Raj et al. Tribological characteristics of LM13/Si3N4/Gr hybrid composite at elevated temperature
CN111575699A (zh) 一种自润滑铝基复合材料及其制备方法
JP2003239976A (ja) 高精度すべり軸受
Ramesh et al. Friction and wear behavior of laser-sintered iron–silicon carbide composites
Pandey et al. Microstructure, mechanical and wear properties of aluminum borate whisker reinforced aluminum matrix composites
Micallef et al. Surface finishing and tool wear in single point diamond turning of chemical vapour deposited tungsten carbide hard coatings
Rokkala et al. Comparative study of plasma spray and friction stir processing on wear properties of Mg-Zn-Dy alloy
CN104328368A (zh) 一种自润滑耐磨铜基复合材料及其制备方法
JPS6241980A (ja) 斜板式コンプレツサ用シユ−
JP2004183075A (ja) 耐摩耗部材およびそれを用いた転動部材
Hassan et al. Engineered role of SiC particle size on multi‐length‐scale wear damage of spark plasma sintered zirconium diboride
Zheng et al. The wear behavior of (Ti, W, Mo, Cr)(C, N)-based cermet under a wide load range
JPH06329862A (ja) 摺動部材用ふっ素樹脂組成物
JP3513273B2 (ja) 気体軸受けユニット
JP4024514B2 (ja) ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物並びにフィルム及びシート
Wang et al. Tribological behaviors and wear mechanisms of NiTi-Ag coatings over a wide temperature range
Peng et al. Preparation and Water Lubrication Behaviors of Al-Cu Alloy-Based Si3N4 Composites
JPH07259861A (ja) すべり軸受