JPH0716743B2 - 金属線材積層圧縮体の製造装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は自動車のエアバッグ、航空機の緊急脱出用座席
の射出装置、バルブの緊急開閉装置、船舶用浮力発生装
置等のガス発生器と組み合わせて使用されるガスフィル
タや、そのばね材等のような金属線材積層圧縮体の製造
装置に関するものである。

（従来の技術） この種のガス発生器としては、火薬を燃焼させて発生し
た高温ガスを用いる方法が広く採用されているが、バッ
グ等の破損を避けるためのガス冷却及びガス中の有害成
分の除去のためにガスフィルタを用いる必要がある。こ
のためのガスフィルタとしてはステンレススチール製の
金網を複数枚積層したものや、金属発泡体、金属製の邪
魔板等が使用されている。

しかし上記のような従来のガスフィルタはいずれも弾性
が不十分であるためにケーシング内に収納したときに隙
間が生じて高温ガスがショートパスし易いこと、また仮
にケーシングとの間に隙間がなくてもガスフィルタ自体
が不均質であって高温ガスのショートパスが生じ易いこ
と、ケーシング内への装填に多くの手数を要すること等
の多くの問題を残していた。

そこで本発明者等は先に、コイル状に巻かれた金属線材
を引き伸ばすことにより得られた波状の針金をリング状
に予備成形し、これを更にプレスして金属線材積層圧縮
体とするガスフィルタの製造方法を開発したのである
が、コイルを引き伸ばした線材は捩れ易く取扱が困難で
あること、工程が複雑で自動化が困難であること、圧縮
成形用の金型を損傷し易いこと等の多くの問題が残され
ていた。

また、線材全体に外力を加えて「より」を与えて屈曲さ
せ、しかる後にそれを積層加圧成形したバネ材が特開昭
63-93440号公報に開示されている。しかし、これは線材
の屈曲形状が単純で規則的なため線材相互の絡みつき方
が低く、それを積層加圧しバネ材とした後も形状の自己
保持性が比較的低く、使用中に振動その他の外力が加わ
ることによって次第にバラバラになる可能性が高く、使
われる場所が限定されてしまうという欠点があった。即
ち、そのバネ材を置く場所は閉空間が望ましく、外部か
らの規制によってそのバネ材の形状が保持できる条件の
ある所が望ましかった。

そのうえ、線材の形状加工方法として上記後者の方法は
「より」を与えるために線材全体に張力を加える必要が
あり、調整いかんによって線材切断の可能性もあり調整
が難しく、装置自体も複雑高価になるという欠点があっ
た。

また上記のようなガス発生器には火薬等を安定に支持す
るための皿ばね状のばね材が用いられているが、このば
ね材もやはり金属線材積層圧縮体により形成することが
求められており、その製造についても上記と同様の問題
があった。

（発明が解決しようとする課題） 本発明は上記したような従来の問題点を解決して、使用
場所が閉空間でなくとも、形状の自己保持性が高いため
に任意の場所で使うことができ、ケーシング内への充填
が容易であり、ケーシングとの間に隙間を生じにくく、
太い金属線材の加工も容易で溶損しにくく、またそれ自
体も均質であって高温ガスがショートパスするおそれの
ないガスフィルタやばね材のような金属線材積層圧縮体
を能率よく、しかも容易に製造することができる製造装
置を提供するために完成されたものである。

（課題を解決するための手段） 上記の課題を解決するためになされた本発明は、金属線
材の供給機と、供給された金属線材を一平面上で波状に
屈曲させる一対の第１歯車、及び第１歯車からガイドに
より方向を規制しつつ供給された金属線材を前記平面と
は異なる方向に屈曲させる第１歯車に比較して小さいモ
ジュールを持つ一対の第２歯車とからなる金属線材の屈
曲機構と、屈曲された金属線材の張力調整機構と、均等
巻付けガイドを備えた金属線材の巻取り機構と、巻取ら
れた金属線材の圧縮成形機とからなることを特徴とする
金属線材積層圧縮体の製造装置によって解決することが
できる。

以下に本発明を実施例とともに更に詳細に説明する。

（実施例） 第１図は本発明の実施例を示すものであり、（１）は金
属線材の供給機、（２）は金属線材の屈曲機構、（３）
は金属線材の張力調整機構、（４）は金属線材の切断機
構、（５）は金属線材の巻取り機構である。

ガスフィルタを製造する場合には、ステンレススチール
のような耐熱性の金属線材が素材として用いられる。金
属線材の線径が細すぎると高温ガスとの接触により溶融
してしまうおそれがあり、太すぎると加工が困難となる
とともにガス流路が大きくなってガス冷却及びフィルタ
としての機能が低下することとなるので、線径が0.1〜
1.5mm程度の耐熱鋼線が好ましい。

供給機（１）は２本のローラ（６）の上に線材ドラム
（７）を支持したもので、金属線材はローラ（６）から
飛び出さないように下方へ引き出されたうえ、屈曲機構
（２）へ入る。なお、停止時に慣性により線材ドラム
（７）が回転して余分の金属線材が送られることを防止
するため、ローラ（６）の一方には電磁ブレーキ（８）
を設けておくことが好ましい。

屈曲機構（２）は互いに噛み合う一対の第１歯車
（９）、（９）と、これよりモジュールの小さい一対の
第２歯車（10）、（10）とからなるものである。屈曲加
工工程における金属線材の断線を避けるため、第１歯車
（９）と第２歯車（10）の直径と同一として金属線材の
張力が一定に保たれるようにしておく。また第１歯車
（９）と第２歯車（10）とのモジュールの違いにより、
両者を同一速度で回転させるとその送り速度に微妙な違
いが生じ、断線の原因となる。そこで両方の歯車間に円
錐ベルト式あるいは可変ピッチプーリ式等の回転数調節
機構を介在させておけば、断線を確実に防止することが
できる。

金属線材はまず第１歯車（９）、（９）の間を通過する
間に一定ピッチで一平面上に波状に（平面波形）屈曲さ
れる。この第１歯車（２）はそのモジュールを4.0〜1.0
とした平歯車が適当である。次に金属線材はガイド（1
1）を通って方向を規制されつつ互いに噛み合う一対の
第２歯車（10）、（10）の間を通過する。第２歯車（1
0）に入るときには金属線材は第１歯車（９）による屈
曲面が第２歯車（10）の歯面と平行となるように自然に
捩られるが、第２歯車（10）、（10）間を通過するとこ
の屈曲面に対して異なる方向に立体波状に屈曲した凹凸
（立体波形）が形成される。第２歯車（10）はそのモジ
ュールを2.0〜0.5とした平歯車であり、このように第１
歯車（９）と第２歯車（10）のモジュールを変えておく
ことによって、互いに異なる方向に異なるピッチで波状
に屈曲加工された金属線材を得ることができる。

ここで第１歯車（９）よりも第２歯車（10）のモジュー
ルを小さくしたのは、もしこのモジュールを同一として
おくと、ガイド（11）により捩じられた線材がその弾性
によって第１歯車（９）によって作られた歯形に沿って
第２歯車（10）に入って行き、結局できた屈曲形状は第
１歯車（９）によって作られた形状と同じものになって
しまうからである。なお、第２歯車（10）のモジュール
M2に対する第１歯車（９）のモジュールM1の比は、M1/M
2＝1.5〜2.5にすることが好ましい。本実施例では、屈
曲加工のピッチは５〜10mm、波の高さ３〜6mmとされて
いるが、波の高さや送り速度は一対の歯車の軸間距離の
調節により変えることができる。これらの第１歯車
（９）および第２歯車（10）の駆動は電磁マグネット付
きのブレーキモータによるとともに、インバータ制御に
より歯車の加速、減速を制御し、送られる金属線材の重
量を厳密に管理することが好ましい。

金属線材の張力調整機構（３）は天秤棒（12）の先端に
滑車（13）を付けるとともに、他端に分銅（14）を付け
たもので、金属線材の張力を一定に保つ。なお張力が過
大となると天秤棒（12）が上昇してセンサ（15）に触
れ、屈曲機構（２）の駆動モータが回転数を上げて余分
の金属線材を送り出すことができる。

金属線材の切断機構（４）は前後一対のエアクランプ
（16）の間にエア駆動式のカッタ（17）を設けたもの
で、所定長さの金属線材が送り出された後に金属線材を
クランプし、切断する。なおエアクランプ（16）の接触
部にはゴム等のクッション材を取り付けて屈曲された金
属線材の変形を防止する。またカッタ（17）の作動はタ
イマによりエアクランプ（16）の作動よりも１秒以上遅
らせ、金属線材のクランプを確実に行えるようにする。

金属線材の巻取り機構（５）は、回転数を調節可能なモ
ータ（18）により回転される巻取りローラ（19）と、こ
れに連動する均等巻付けガイド（20）とを含む。均等巻
付けガイド（20）は送りねじ（21）により往復動される
もので、送りねじ（21）の端部のローラ（22）を巻取り
ローラ（19）の軸に傘歯車を介して接続された一対の駆
動円板（23）、（24）のいずれかに接触させることによ
り送りねじ（21）を正逆両方向に回転させ、均等巻付け
ガイド（20）を往復動させる。なお巻取りローラ（19）
が所定回数回転すると図示を略したシリンダにより駆動
円板（23）、（24）を備えたドラムが押されて駆動円板
（23）がローラ（22）と接し、巻取りローラ（19）が更
に所定回数回転するとシリンダが後退してスプリング
（25）の力により駆動円板（23）、（24）を備えたドラ
ムが戻り、図示のように駆動円板（24）とローラ（22）
が接するようになっている。このようにして、金属線材
は均等巻付けガイド（20）により案内されつつ巻取りロ
ーラ（19）上に均等に巻き取られることとなる。そして
一定量の金属線材の巻取りが終了すると切断機構（４）
により端部が切断される。

巻取られた金属線材はそのままあるいは第２図のように
その周囲を金属製の締結線材（26）により締結されたう
えで圧縮成形機（27）で所定形状にプレスされる。圧縮
成形機（27）は第３図のように環状の成形用パンチ（2
8）、芯型（29）、外型（30）、突上型（31）とからな
るものである。巻取られた金属線材は芯型（29）と外型
（30）との間の空間に人手により押し込まれたうえで成
形用パンチ（28）によりプレスされるが、金属線材が隙
間からはみ出して金型を傷付けたりすることを無くする
ため、図示のように金属線材の上面に例えば硬度60〜10
0、引張強さ200〜450Kg/cm²のウレタンゴム等からなる
弾性リング（32）を当てて圧縮成形を行うことが好まし
い。これにより金属線材が型相互の隙間からはみ出して
金型を損傷したり、成形不良品を発生させたりすること
を防止できる。なお、圧縮成形後の嵩比重は1.0〜3.0が
好ましい。

第４図はこの圧縮成形機（27）の変形例を示す図であ
り、上方のプレスヘッド（33）に金属線材の押込み用パ
ンチ（34）と成形用パンチ（28）とを備えたものであ
る。押込み用パンチ（34）は成形用パンチ（28）の外径
寸法よりも1mm以上小さく、内径は1mm以上大きくしたも
のが好ましい。この上方のプレスヘッド（33）は水平方
向に移動することができ、まず押込み用パンチ（34）を
芯型（29）と外型（30）の直上に位置させて巻取られた
金属線材を軽く芯型（29）と外型（30）の間に押し込
み、次に成形用パンチ（28）を芯型（29）と外型（30）
の直上に位置させてプレス成形を行うものである。これ
により人手による押し込み作業を軽減することができ
る。なお、下側のプレスヘッドをスライドさせて下側の
金型を押込み用パンチ（34）と成形用パンチ（28）の下
方に順次移動させてもよい。このようにして目的とする
ガスフィルタやばね材等の金属線材積層圧縮体が得られ
ることとなる。

第５図は本発明の製造装置により得られた金属線材積層
圧縮体Ｆを自動車のエアバッグ用のガス発生器に組込ん
だ使用例を示すものである。図中、（35）はケーシング
であり、外側と内側の金属線材積層圧縮体Ｆ、Ｆはその
内部の隔壁（36）の両側に装填されている。点火室（3
7）の内部には点火器（38）と燃焼し易い窒化リン等の
着火薬が装填されており、これに点火すれば火薬室（3
9）内の例えばアジ化ナトリウム(Na₂N)のような火薬が
爆発的に燃焼して1000〜1200℃の多量の高温ガス（窒素
ガス）が発生し、この高温ガスは下部に充填された内側
と外側の金属線材積層圧縮体Ｆ、Ｆを順次通過する間に
ガス中の有害成分の除去と高温ガスの冷却とが行われ
る。そして適度に冷却されたガスはエアバッグ等のガス
利用側へ供給されることとなる。

また第５図のガス発生器には本発明の製造装置により得
られた皿ばね状のばね材である金属線材積層圧縮体Ｓが
組み込まれ、火薬室（39）内の火薬を弾性的に支持して
いる。

（発明の効果） 以上に説明したように、本発明の金属線材積層圧縮体製
造装置は供給機から供給された金属線材を一平面上で波
状に屈曲させる一対の第１歯車、及び第１歯車からガイ
ドにより方向を規制しつつ供給された金属線材を前記平
面とは異なる方向に屈曲させる第１歯車よりもモジュー
ルの小さい一対の第２歯車とからなる屈曲機構により立
体波状に屈曲加工するので、これを圧縮成形して得られ
た金属線材積層圧縮体は金属線材が相互に密に絡まり合
い、形状の自己保持性が高いために使用場所に限定がな
く、均質でその内部にガスのショートパス経路が形成さ
れ難い構造のものとなる。しかもこの金属線材積層圧縮
体は適度な弾性を持つのでケーシング内への装填が容易
であり、ケーシング等との間に隙間を生ずることがな
い。また本発明の金属線材積層圧縮体製造装置は屈曲さ
れた金属線材の張力調整機構と、均等巻付けガイドを備
えた金属線材の巻取り機構とを備えたものであるから、
屈曲された金属線材を均一な張力と均一な密度で巻取る
ことができ、均等な金属線材積層圧縮体を製造するに適
したものである。更に本発明の金属線材積層圧縮体製造
装置は巻取られた金属線材の圧縮成形機を備え、所定形
状にプレスすることができるから、ケーシング内への装
填が容易でガス漏れのない金属線材積層圧縮体を製造す
ることができる。

以上に説明したように、本発明は従来の問題点を解決し
た金属線材積層圧縮体製造装置であるので、例えば自動
車のエアバッグ用のガス発生器に用いられるガスフィル
タやばね材として利用できる金属線材積層圧縮体を容易
かつ能率的に製造することができ、産業の発展に寄与す
るところは極めて大きいものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例を示す斜視図、第２図は巻取ら
れた金属線材を示す斜視図、第３図は圧縮成形機を示す
断面図、第４図はその変形例を示す断面図、第５図は得
られた金属線材積層圧縮体の使用状態を示す断面図であ
る。 （１）：供給機、（２）：屈曲機構、（３）：張力調整
機構、（５）：巻取り機構、（９）：第１歯車、（1
0）：第２歯車、（20）：均等巻付けガイド、（27）：
圧縮成形機、（28）：成形用パンチ、（32）：弾性リン
グ、（34）：押込み用パンチ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】金属線材の供給機（１）と、供給された金
   属線材を一平面上で波状に屈曲させる一対の第１歯車
   （９）、及び第１歯車（９）からガイド（11）により方
   向を規制しつつ供給された金属線材を前記平面とは異な
   る方向に屈曲させる第１歯車（９）に比較して小さいモ
   ジュールを持つ一対の第２歯車（10）とからなる金属線
   材の屈曲機構（２）と、屈曲された金属線材の張力調整
   機構（３）と、均等巻付けガイド（20）を備えた金属線
   材の巻取り機構（５）と、巻取られた金属線材の圧縮成
   形機（27）とからなることを特徴とする金属線材積層圧
   縮体の製造装置。
2. 【請求項２】金属線材の屈曲機構（２）が、第１歯車
   （９）と第２歯車（10）との間に回転数調節機構を持つ
   ものである請求項１記載の金属線材積層圧縮体の製造装
   置。
3. 【請求項３】金属線材の圧縮成形機（27）が、弾性リン
   グ（32）を介して金属線材をプレスするものである請求
   項１記載の金属線材積層圧縮体の製造装置。
4. 【請求項４】金属線材の圧縮成形機（27）が、金属線材
   の押込み用パンチ（34）と成形用パンチ（28）とを備え
   たものである請求項１記載の金属線材積層圧縮体の製造
   装置。