JPH0645856B2 - 隙間制御用溶射皮膜 - Google Patents
隙間制御用溶射皮膜Info
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- JPH0645856B2 JPH0645856B2 JP24948688A JP24948688A JPH0645856B2 JP H0645856 B2 JPH0645856 B2 JP H0645856B2 JP 24948688 A JP24948688 A JP 24948688A JP 24948688 A JP24948688 A JP 24948688A JP H0645856 B2 JPH0645856 B2 JP H0645856B2
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- thermal spray
- particles
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Description
【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は自動車用ターボチャージャのコンプレッサー
ハウジングにおけるインペラーとの間隙など、回転する
相手部材との間の隙間を可及的に小さく制御するために
形成される溶射皮膜に関するものである。
ハウジングにおけるインペラーとの間隙など、回転する
相手部材との間の隙間を可及的に小さく制御するために
形成される溶射皮膜に関するものである。
従来の技術 自動車用ターボチャージャーは、第6図に示すように、
エンジンのエキゾーストマニホールドからの排ガスをタ
ービンハウジング1に導いてタービンホイール2を回転
させ、そのタービンホイール2にシャフト3を介して連
結されたインペラー4の回転によってコンプレッサーハ
ウジング5内で吸気を圧縮し、その圧縮された吸気をエ
ンジンに送り込むものである。このような自動車用ター
ボチャージャーにおけるコンプレッサーハウジング5と
しては、一般にアルミ合金鋳物が使用され、またインペ
ラー4としては一般に耐熱アルミ合金鋳物を焼入れ焼も
どしした材料が使用されている。
エンジンのエキゾーストマニホールドからの排ガスをタ
ービンハウジング1に導いてタービンホイール2を回転
させ、そのタービンホイール2にシャフト3を介して連
結されたインペラー4の回転によってコンプレッサーハ
ウジング5内で吸気を圧縮し、その圧縮された吸気をエ
ンジンに送り込むものである。このような自動車用ター
ボチャージャーにおけるコンプレッサーハウジング5と
しては、一般にアルミ合金鋳物が使用され、またインペ
ラー4としては一般に耐熱アルミ合金鋳物を焼入れ焼も
どしした材料が使用されている。
ところで自動車用ターボチャージャーにおいては、イン
ペラー4の先端とそれに対向するコンプレッサーハウジ
ング5の内壁面との間隙Hを可及的に小さくすること
が、ターボ効率(コンプレッサー効率)の向上などに有
利であることが知られている。しかしながらこの間隙H
を小さくし過ぎれば、回転中にシャフト3のわずかな偏
心や振動によってもインペラー4の先端がコンプレッサ
ーハウジング5に接触して、インペラー4が破損する可
能性がある。そこで従来の自動車用ターボチャージャー
のコンプレッサーハウジング5とインペラー4との間隙
Hは、ターボチャージャーの大きさによっても異なる
が、最小でも 0.3〜 0.5mm程度は必要とされており、こ
の間隙が、ターボ効率をより向上させることができない
大きな原因となっていた。
ペラー4の先端とそれに対向するコンプレッサーハウジ
ング5の内壁面との間隙Hを可及的に小さくすること
が、ターボ効率(コンプレッサー効率)の向上などに有
利であることが知られている。しかしながらこの間隙H
を小さくし過ぎれば、回転中にシャフト3のわずかな偏
心や振動によってもインペラー4の先端がコンプレッサ
ーハウジング5に接触して、インペラー4が破損する可
能性がある。そこで従来の自動車用ターボチャージャー
のコンプレッサーハウジング5とインペラー4との間隙
Hは、ターボチャージャーの大きさによっても異なる
が、最小でも 0.3〜 0.5mm程度は必要とされており、こ
の間隙が、ターボ効率をより向上させることができない
大きな原因となっていた。
一方、ガスタービンエンジンにおいてもパワーロスを最
小に抑えるためにはタービンケーシングとタービンブレ
ードとの間隙を最小限にすることが好ましいが、この場
合も自動車用ターボチャージャーと類似の問題があっ
た。そこでガスタービンエンジンについては特公昭50
−690号に示されるようにタービンケーシングをター
ビンブレードより軟質なセラミックで構成し、タービン
ブレードの破損を防止する提案がなされている。
小に抑えるためにはタービンケーシングとタービンブレ
ードとの間隙を最小限にすることが好ましいが、この場
合も自動車用ターボチャージャーと類似の問題があっ
た。そこでガスタービンエンジンについては特公昭50
−690号に示されるようにタービンケーシングをター
ビンブレードより軟質なセラミックで構成し、タービン
ブレードの破損を防止する提案がなされている。
また航空機用のガスタービンエンジンについては、特開
昭52−72335号あるいは特開昭52−85031
号に示されているように、圧縮機のケーシングの表面に
Ni−Cr合金粉末やAl−Cu合金等の合金粉末と黒
鉛をNiで被覆したNi黒鉛粉末との混合粉末を溶射
し、その溶射皮膜を相手材としての回転羽根により切削
してケーシングと回転羽根との間隙を調整する技術が提
案されている。
昭52−72335号あるいは特開昭52−85031
号に示されているように、圧縮機のケーシングの表面に
Ni−Cr合金粉末やAl−Cu合金等の合金粉末と黒
鉛をNiで被覆したNi黒鉛粉末との混合粉末を溶射
し、その溶射皮膜を相手材としての回転羽根により切削
してケーシングと回転羽根との間隙を調整する技術が提
案されている。
発明が解決しようとする課題 前述の特公昭50−690号に示されているようにター
ビンケーシングの全体の回転部材(この場合はタービン
ブレード)よりも軟質な材料で構成することは、大幅な
材料コストの上昇を招き、現実的ではない。したがって
特開昭52−72335号や特開昭52−85031号
に示されているように、溶射皮膜を形成してこれを相手
材である回転部材により切削して間隙を調整する方法が
有効であると考えられる。この方法は、一般用の自動車
用ターボチャージャーでは充分であるが、レース用等の
如く、より高い回転数が与えられる場合には未だ満足で
きるに至っていないのが実情である。
ビンケーシングの全体の回転部材(この場合はタービン
ブレード)よりも軟質な材料で構成することは、大幅な
材料コストの上昇を招き、現実的ではない。したがって
特開昭52−72335号や特開昭52−85031号
に示されているように、溶射皮膜を形成してこれを相手
材である回転部材により切削して間隙を調整する方法が
有効であると考えられる。この方法は、一般用の自動車
用ターボチャージャーでは充分であるが、レース用等の
如く、より高い回転数が与えられる場合には未だ満足で
きるに至っていないのが実情である。
すなわち、前述のような溶射材料、例えば(Ni−Cr
合金)−Ni被覆黒鉛あるいは(Al−Cu合金)−N
i被覆黒鉛などをそのままタービンケーシングやコンプ
レッサーハウジングに溶射した場合、従来の方法では溶
射皮膜の組織はその全域にわたってほぼ均一であり、ま
た溶射皮膜の表面あらさは60〜 200μmRz になってい
る。そのため例えばコンプレッサーハウジングに形成さ
れた溶射皮膜を隙間調整のためインペラー等で切削する
にあたって、レース用の如く初期から超高速でインペラ
ーを回転させようとする場合、初期においては被削抵抗
が大きくなってスムーズにインペラーの回転数が高くな
らない可能性がある。また超高速回転させようとする場
合、初期にインペラー等が回転しても、溶射皮膜の組織
中にはAl−Cu合金やNi−Cr合金等の如く、相手
材(インペラー等)の硬さに近い硬度を有するベースメ
タル層が存在するため、インペラー等の先端接触部に局
部的に傷を生ぜしめたりあるいは摩耗させたりするおそ
れがあった。このように超高速回転が要求されるレース
用ターボチャージャーなどにおいて通常の均一な組織を
有する溶射皮膜を形成したのでは、皮膜の切削上の問題
やインペラーの摩耗等の問題が生じる可能性があった。
合金)−Ni被覆黒鉛あるいは(Al−Cu合金)−N
i被覆黒鉛などをそのままタービンケーシングやコンプ
レッサーハウジングに溶射した場合、従来の方法では溶
射皮膜の組織はその全域にわたってほぼ均一であり、ま
た溶射皮膜の表面あらさは60〜 200μmRz になってい
る。そのため例えばコンプレッサーハウジングに形成さ
れた溶射皮膜を隙間調整のためインペラー等で切削する
にあたって、レース用の如く初期から超高速でインペラ
ーを回転させようとする場合、初期においては被削抵抗
が大きくなってスムーズにインペラーの回転数が高くな
らない可能性がある。また超高速回転させようとする場
合、初期にインペラー等が回転しても、溶射皮膜の組織
中にはAl−Cu合金やNi−Cr合金等の如く、相手
材(インペラー等)の硬さに近い硬度を有するベースメ
タル層が存在するため、インペラー等の先端接触部に局
部的に傷を生ぜしめたりあるいは摩耗させたりするおそ
れがあった。このように超高速回転が要求されるレース
用ターボチャージャーなどにおいて通常の均一な組織を
有する溶射皮膜を形成したのでは、皮膜の切削上の問題
やインペラーの摩耗等の問題が生じる可能性があった。
また前述のような均一な組織を有する溶射皮膜をレース
用のターボチャージャーの如く超高速回転が要求される
場合に使用すれば、コンプレッサーハウジング等の母材
に対する密着性が不足する場合が多く、その場合インペ
ラー等で溶射皮膜を切削する際に生じる母材と溶射皮膜
との界面の剪断応力によって剥離が生じるおそれがあ
る。密着力向上のためには、予めNi基合金などを母材
表面に溶射して下地層(ボンド層)を形成しておき、そ
の下地層の上に間隙調整用の溶射皮膜を形成することが
従来から行なわれているが、このように下地層を形成す
ることは生産性を阻害してコスト上昇と招く問題があっ
た。
用のターボチャージャーの如く超高速回転が要求される
場合に使用すれば、コンプレッサーハウジング等の母材
に対する密着性が不足する場合が多く、その場合インペ
ラー等で溶射皮膜を切削する際に生じる母材と溶射皮膜
との界面の剪断応力によって剥離が生じるおそれがあ
る。密着力向上のためには、予めNi基合金などを母材
表面に溶射して下地層(ボンド層)を形成しておき、そ
の下地層の上に間隙調整用の溶射皮膜を形成することが
従来から行なわれているが、このように下地層を形成す
ることは生産性を阻害してコスト上昇と招く問題があっ
た。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、レ
ース用の自動車用ターボチャーチジャーのコンプレッサ
ーハウジングにおけるインペラーに対向する部位の如
く、超高速で回転する相手部材との間隙を可及的に小さ
くすることが望まれる部位に間隙調整のために形成され
る溶射皮膜として、超高速回転時の初期における被削抵
抗が小さいと同時に母材との密着力が充分に高い溶射皮
膜を提供することを目的とするものである。
ース用の自動車用ターボチャーチジャーのコンプレッサ
ーハウジングにおけるインペラーに対向する部位の如
く、超高速で回転する相手部材との間隙を可及的に小さ
くすることが望まれる部位に間隙調整のために形成され
る溶射皮膜として、超高速回転時の初期における被削抵
抗が小さいと同時に母材との密着力が充分に高い溶射皮
膜を提供することを目的とするものである。
課題を解決するための手段 この発明の溶射皮膜は、基本的には、軟質金属材料中に
軟質非金属材料粒子を分散させ、かつその軟質非金属材
料粒子の径もしくは偏平率を溶射皮膜の厚さ方向に変化
させることによって初期の被削性と母材に対する密着性
との両者を同時に向上させている。
軟質非金属材料粒子を分散させ、かつその軟質非金属材
料粒子の径もしくは偏平率を溶射皮膜の厚さ方向に変化
させることによって初期の被削性と母材に対する密着性
との両者を同時に向上させている。
具体的には、請求項1の発明は、回転する相手部材に対
向する部位の母材表面に形成される軟質な溶射皮膜であ
って、しかも相手部材の回転により表面層を切削するこ
とによって相手部材との隙間を調整するための隙間制御
用溶射皮膜において、軟質金属材料中に軟質非金属材料
粒子が分散されており、かつその軟質非金属材料粒子の
粒径が母材との界面の側から皮膜表面に向けて大きくな
るように構成されていることを特徴とするものである。
向する部位の母材表面に形成される軟質な溶射皮膜であ
って、しかも相手部材の回転により表面層を切削するこ
とによって相手部材との隙間を調整するための隙間制御
用溶射皮膜において、軟質金属材料中に軟質非金属材料
粒子が分散されており、かつその軟質非金属材料粒子の
粒径が母材との界面の側から皮膜表面に向けて大きくな
るように構成されていることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、回転する相手部材に対向する部
位の母材表面に形成される軟質な溶射皮膜であって、し
かも相手部材の回転により表面層を切削することによっ
て相手部材との隙間を調整するための隙間制御用溶射皮
膜において、軟質金属材料中に軟質非金属材料粒子が分
散しており、かつその軟質非金属材料粒子の偏平率が皮
膜表面の側から母材との界面に向けて大きくなるように
構成されていることを特徴とするものである。
位の母材表面に形成される軟質な溶射皮膜であって、し
かも相手部材の回転により表面層を切削することによっ
て相手部材との隙間を調整するための隙間制御用溶射皮
膜において、軟質金属材料中に軟質非金属材料粒子が分
散しており、かつその軟質非金属材料粒子の偏平率が皮
膜表面の側から母材との界面に向けて大きくなるように
構成されていることを特徴とするものである。
なおここで軟質非金属材料粒子の偏平率とは、第5図に
示すように溶射皮膜の厚さ方向に対し直交する方向の最
大径をa、溶射皮膜の厚さ方向の最大径をbとし、偏平
率F(%)を 表わした値とする。
示すように溶射皮膜の厚さ方向に対し直交する方向の最
大径をa、溶射皮膜の厚さ方向の最大径をbとし、偏平
率F(%)を 表わした値とする。
作 用 軟質金属材料中に軟質非金属材料粒子を分散させてなる
溶射皮膜を自動車用ターボチャージャーのコンプレッサ
ーハウジング等の母材の表面に形成した状態で相手部材
例えばインペラーを回転させれば、その回転の初期に
は、相手部材の先端が溶射皮膜に接触しつつ回転し、溶
射皮膜における接触された厚みの部分が削り取られて、
相手部材との隙間が実質的に零に調整される。
溶射皮膜を自動車用ターボチャージャーのコンプレッサ
ーハウジング等の母材の表面に形成した状態で相手部材
例えばインペラーを回転させれば、その回転の初期に
は、相手部材の先端が溶射皮膜に接触しつつ回転し、溶
射皮膜における接触された厚みの部分が削り取られて、
相手部材との隙間が実質的に零に調整される。
ここで請求項1の発明における溶射皮膜では、軟質非金
属材料粒子の粒径が母材との界面の側から表面に向けて
大きくなるように構成されている。したがって溶射皮膜
の表面層、すなわち初期に相手部材によって切削される
層に分散している軟質非金属材料粒子は粗大であるか
ら、その表面層は全体として軟質で脆く、被削性が良好
な状態となっている。またこのように粗大な軟質非金属
材料粒子が分散した表面層を形成するためには、表面層
部分の溶射時に粗大な溶射粒子を用いなければならない
が、粗大な溶射粒子はその粒子が完全に溶融しないうち
に母材表面に衝突するため、衝突時に粒子が潰れにく
く、そのため粒子間の結合力が小さくなるとともに粒子
間に気孔が生じ易くなり、このことも表面層が脆くなっ
て被削性が良好となるに寄与する。したがって相手材の
回転初期において溶射皮膜の表面層が削り取られる際に
は、その脆くて被削性の良好な表面層が容易に削り取ら
れ、被削抵抗も小さい値となる。
属材料粒子の粒径が母材との界面の側から表面に向けて
大きくなるように構成されている。したがって溶射皮膜
の表面層、すなわち初期に相手部材によって切削される
層に分散している軟質非金属材料粒子は粗大であるか
ら、その表面層は全体として軟質で脆く、被削性が良好
な状態となっている。またこのように粗大な軟質非金属
材料粒子が分散した表面層を形成するためには、表面層
部分の溶射時に粗大な溶射粒子を用いなければならない
が、粗大な溶射粒子はその粒子が完全に溶融しないうち
に母材表面に衝突するため、衝突時に粒子が潰れにく
く、そのため粒子間の結合力が小さくなるとともに粒子
間に気孔が生じ易くなり、このことも表面層が脆くなっ
て被削性が良好となるに寄与する。したがって相手材の
回転初期において溶射皮膜の表面層が削り取られる際に
は、その脆くて被削性の良好な表面層が容易に削り取ら
れ、被削抵抗も小さい値となる。
一方、溶射皮膜における母材に接する側の層(基層)で
は、分散している軟質非金属材料粒子の径が小さいため
全体として緻密で相対的に硬い層となっており、そのた
め母材との密着性も高い。またこのように微細な軟質非
金属材料粒子が分散した基層を形成するためには、基層
部分の溶射時に微細な溶射粒子を用いなければならない
が、微細な溶射粒子はその粒子中央部まで充分に溶融し
た状態で母材表面に衝突するため、衝突時に粒子が潰れ
易く、そのため緻密な層となり、しかも粒子温度も高く
保たれているため母材との濡れ性も良好であり、これら
も基層部分の母材に対する密着性が向上するに寄与す
る。
は、分散している軟質非金属材料粒子の径が小さいため
全体として緻密で相対的に硬い層となっており、そのた
め母材との密着性も高い。またこのように微細な軟質非
金属材料粒子が分散した基層を形成するためには、基層
部分の溶射時に微細な溶射粒子を用いなければならない
が、微細な溶射粒子はその粒子中央部まで充分に溶融し
た状態で母材表面に衝突するため、衝突時に粒子が潰れ
易く、そのため緻密な層となり、しかも粒子温度も高く
保たれているため母材との濡れ性も良好であり、これら
も基層部分の母材に対する密着性が向上するに寄与す
る。
このように、請求項1の発明では、溶射皮膜中に分散し
ている軟質非金属材料粒子の粒径を厚み方向に変化させ
ることによって、相手材が回転する際の初期の被削抵抗
を小さくすると同時に、母材との密着性を良好にするこ
とができる。
ている軟質非金属材料粒子の粒径を厚み方向に変化させ
ることによって、相手材が回転する際の初期の被削抵抗
を小さくすると同時に、母材との密着性を良好にするこ
とができる。
次に請求項2の発明における溶射皮膜では、軟質非金属
材料粒子の偏平率が表面から母材の側へ向けて大きくな
るように構成されている。したがって相手材の回転によ
って切削される溶射皮膜の表面層に分散している軟質非
金属粒子はその偏平率が小さく、球状あるいは塊状をな
しており、このような形状の軟質非金属材料粒子は相手
材により切削される際に脱落し易く、したがってその表
面層は被削性が良好な状態となっている。またこのよう
に偏平率の小さい軟質非金属材料粒子が分散した表面層
を形成するためには、溶射時において溶射粒子が母材表
面に衝突する際に粒子が潰れないようにする必要がある
が、そのためには溶射時に与えるエネルギを小さくして
溶射粒子が完全には溶融しないようにする必要があり、
その場合には既に述べたように粒子間の結合力が小さく
なるとともに粒子間に気孔が生じ易く、したがって被削
性が良好となる。
材料粒子の偏平率が表面から母材の側へ向けて大きくな
るように構成されている。したがって相手材の回転によ
って切削される溶射皮膜の表面層に分散している軟質非
金属粒子はその偏平率が小さく、球状あるいは塊状をな
しており、このような形状の軟質非金属材料粒子は相手
材により切削される際に脱落し易く、したがってその表
面層は被削性が良好な状態となっている。またこのよう
に偏平率の小さい軟質非金属材料粒子が分散した表面層
を形成するためには、溶射時において溶射粒子が母材表
面に衝突する際に粒子が潰れないようにする必要がある
が、そのためには溶射時に与えるエネルギを小さくして
溶射粒子が完全には溶融しないようにする必要があり、
その場合には既に述べたように粒子間の結合力が小さく
なるとともに粒子間に気孔が生じ易く、したがって被削
性が良好となる。
一方、溶射皮膜における母材との界面に接する側の層
(基層)では、分散している軟質非金属粒子の偏平率が
大きく、このような基層は母材との密着力が高い。すな
わち、偏平率の大きい軟質非金属材料粒子が分散した基
層を形成するためには、溶射時において溶射粒子が母材
表面に衝突する際に偏平に潰れるようにする必要がある
が、そのためには溶射時に母材表面に衝突とする粒子が
充分に溶融しておりかつ高い溶射速度で衝突させる必要
があり、この場合には基層が緻密な層となって母材との
密着性が高くなり、またこの場合溶射粒子が高温に保た
れるため母材との濡れ性も良好となり、このことも母材
との密着性向上に寄与する。
(基層)では、分散している軟質非金属粒子の偏平率が
大きく、このような基層は母材との密着力が高い。すな
わち、偏平率の大きい軟質非金属材料粒子が分散した基
層を形成するためには、溶射時において溶射粒子が母材
表面に衝突する際に偏平に潰れるようにする必要がある
が、そのためには溶射時に母材表面に衝突とする粒子が
充分に溶融しておりかつ高い溶射速度で衝突させる必要
があり、この場合には基層が緻密な層となって母材との
密着性が高くなり、またこの場合溶射粒子が高温に保た
れるため母材との濡れ性も良好となり、このことも母材
との密着性向上に寄与する。
上述のように請求項2の発明では、溶射皮膜中に分散し
ている軟質非金属材料粒子の偏平率を厚み方向に変化さ
せることによって、相手材が回転する際の初期の被削抵
抗を小さくすると同時に、母材との密着性を良好にする
ことができる。
ている軟質非金属材料粒子の偏平率を厚み方向に変化さ
せることによって、相手材が回転する際の初期の被削抵
抗を小さくすると同時に、母材との密着性を良好にする
ことができる。
ここで、溶射皮膜中に分散される軟質非金属材料粒子と
しては、ポリエステル等の樹脂あるいはグラファイト等
を使用することができる。またベースとなる軟質金属材
料としては、Al合金、Ni合金等を使用することがで
きる。
しては、ポリエステル等の樹脂あるいはグラファイト等
を使用することができる。またベースとなる軟質金属材
料としては、Al合金、Ni合金等を使用することがで
きる。
また請求項1の発明において軟質非金属材料粒子の粒径
を溶射皮膜の厚み方向に変化させるためには、溶射時の
溶射粒子の粒径を変化させれば良いが、ここで溶射皮膜
の表面層における軟質非金属材料粒子の粒径は 150〜 2
00μm程度、母材との界面近くの基層における軟質非金
属材料粒子の粒径は10〜50μm程度とし、その間では粒
径が段階的もしくは連続的に変化するように構成するこ
とが好ましい。
を溶射皮膜の厚み方向に変化させるためには、溶射時の
溶射粒子の粒径を変化させれば良いが、ここで溶射皮膜
の表面層における軟質非金属材料粒子の粒径は 150〜 2
00μm程度、母材との界面近くの基層における軟質非金
属材料粒子の粒径は10〜50μm程度とし、その間では粒
径が段階的もしくは連続的に変化するように構成するこ
とが好ましい。
一方請求項2の発明において軟質非金属材料粒子の偏平
率を溶射皮膜の厚さ方向に変化させるためには、プラズ
マ溶射の場合、溶射電流および/またはプラズマガス量
を変化させれば良い。すなわち溶射開始の初期には溶射
電流および/またはプラズマガス量を多くし、終期には
溶射電流および/またはプラズマガス量を少なくし、そ
の間は段階的もしくは連続的に溶射電流および/または
プラズマガス量を少なくして行けば良い。
率を溶射皮膜の厚さ方向に変化させるためには、プラズ
マ溶射の場合、溶射電流および/またはプラズマガス量
を変化させれば良い。すなわち溶射開始の初期には溶射
電流および/またはプラズマガス量を多くし、終期には
溶射電流および/またはプラズマガス量を少なくし、そ
の間は段階的もしくは連続的に溶射電流および/または
プラズマガス量を少なくして行けば良い。
実施例 以下に自動車用ターボチャージャーのコンプレッサーハ
ウジングにこの発明を適用した実施例および比較例を記
す。なおいずれの実施例、比較例においても、軟質非金
属材料としてはポリエステルを、また軟質金属材料とし
てはアルミ−シリコン合金(Al−12wt%Si)を用い
た。
ウジングにこの発明を適用した実施例および比較例を記
す。なおいずれの実施例、比較例においても、軟質非金
属材料としてはポリエステルを、また軟質金属材料とし
てはアルミ−シリコン合金(Al−12wt%Si)を用い
た。
[実施例1] 第1図〜第3図に示すようにアルミニウム合金鋳物から
なるコンプレッサーハウジング5のエアー通流部のう
ち、特に相手材としてのインペラー4の先端と対向する
部位(インペラーとの間隙の寸法は 0.4mm)に、Al−
12wt%Si合金相7中にポリエステル粒子8が分散する
0.5mm厚の溶射皮膜6を、第3図に示す如くポリエステ
ル粒子8の粒径が厚み方向に変化するように形成した。
その詳細な工程条件は次の通りである。
なるコンプレッサーハウジング5のエアー通流部のう
ち、特に相手材としてのインペラー4の先端と対向する
部位(インペラーとの間隙の寸法は 0.4mm)に、Al−
12wt%Si合金相7中にポリエステル粒子8が分散する
0.5mm厚の溶射皮膜6を、第3図に示す如くポリエステ
ル粒子8の粒径が厚み方向に変化するように形成した。
その詳細な工程条件は次の通りである。
先ず基材であるコンプレッサーハウジング5をトリクレ
ンで洗浄した後、溶射皮膜6を形成すべき部位の表面に
Al2O3焼結グリッドを用いてショットブラスト処理
を施し、その表面あらさを25〜60μmRz 程度とした。
次いでプラズマ溶射装置を用いて電流 400A、Arガス
流量69/分、H2ガス流量 2/分で 100〜 150℃程
度に予熱し、続いて溶射材料として60wt%(Al−12wt
%Si)−40wt%ポリエステルを用いて溶射するにあた
って、次のように溶射材料粉末の粒径を変化させた。す
なわち、溶射開始時は粒径が10〜50μmの範囲内にある
粉末を用い、この後時間とともに粒径を大きくしてい
き、溶射終了時すなわち溶射皮膜の厚みが 0.5mm近くな
ったときに粒径が 150〜 200μmとなるようにした。な
お溶射時の電流は 400A、Arガス流量90/分、H2
ガス流量 2/分とした。
ンで洗浄した後、溶射皮膜6を形成すべき部位の表面に
Al2O3焼結グリッドを用いてショットブラスト処理
を施し、その表面あらさを25〜60μmRz 程度とした。
次いでプラズマ溶射装置を用いて電流 400A、Arガス
流量69/分、H2ガス流量 2/分で 100〜 150℃程
度に予熱し、続いて溶射材料として60wt%(Al−12wt
%Si)−40wt%ポリエステルを用いて溶射するにあた
って、次のように溶射材料粉末の粒径を変化させた。す
なわち、溶射開始時は粒径が10〜50μmの範囲内にある
粉末を用い、この後時間とともに粒径を大きくしてい
き、溶射終了時すなわち溶射皮膜の厚みが 0.5mm近くな
ったときに粒径が 150〜 200μmとなるようにした。な
お溶射時の電流は 400A、Arガス流量90/分、H2
ガス流量 2/分とした。
得られた溶射皮膜を調べたところ、溶射皮膜中に分散し
ているポリエステル粒子の大きさは、表面付近で 150〜
200μmとなっており、母材側へ向けて徐々に粒径が小
さくなって、母材との界面近傍では10〜50μmとなって
いることが判明した。
ているポリエステル粒子の大きさは、表面付近で 150〜
200μmとなっており、母材側へ向けて徐々に粒径が小
さくなって、母材との界面近傍では10〜50μmとなって
いることが判明した。
[実施例2] 実施例1と同様にコンプレッサーハウジング5に溶射皮
膜6を形成するにあたって、洗浄、ショットブラスト処
理、および予熱は実施例1と同様に行ない、その後溶射
材料として60wt%(Al−12wt%Si)−40wt%ポリエ
ステルの粒径が50〜 150μmで一定の溶射粉末を用いて
第4図に示す如くポリエステル粒子8の偏平率が厚み方
向に変化する溶射皮膜6をプラズマ溶射により形成し
た。溶射時の条件は次の通りである。
膜6を形成するにあたって、洗浄、ショットブラスト処
理、および予熱は実施例1と同様に行ない、その後溶射
材料として60wt%(Al−12wt%Si)−40wt%ポリエ
ステルの粒径が50〜 150μmで一定の溶射粉末を用いて
第4図に示す如くポリエステル粒子8の偏平率が厚み方
向に変化する溶射皮膜6をプラズマ溶射により形成し
た。溶射時の条件は次の通りである。
溶射開始初期段階すなわち母材に近い側の溶射皮膜を形
成する段階においては、電流 600A、Arガス流量 100
/分、H2ガス流量 2.5/分とし、その後徐々に電
流およびガス流量を減少させ、溶射最終段階すなわち溶
射層最表面層を形成する段階においては電流 350A、A
rガス流量85/分、H2ガス流量 1.5/分とした。
この溶射条件の制御は、溶射粉末粒子に与えるエネルギ
および飛行中の速度を徐々に遅くする目的で行なったも
のである。
成する段階においては、電流 600A、Arガス流量 100
/分、H2ガス流量 2.5/分とし、その後徐々に電
流およびガス流量を減少させ、溶射最終段階すなわち溶
射層最表面層を形成する段階においては電流 350A、A
rガス流量85/分、H2ガス流量 1.5/分とした。
この溶射条件の制御は、溶射粉末粒子に与えるエネルギ
および飛行中の速度を徐々に遅くする目的で行なったも
のである。
得られた溶射皮膜を調べたところ、第4図に示すように
溶射皮膜6中に分散しているポリエステル粒子8の偏平
率が表面では小さく、母材界面側では大きくなっている
ことが判明した。ここで、偏平率Fを第5図のa,bを
用いて F={(a−b)/a}× 100(%)で表わせば、表面
では偏平率Fが20〜30%程度、母材との界面付近では、
100%近くになっていることが確認された。
溶射皮膜6中に分散しているポリエステル粒子8の偏平
率が表面では小さく、母材界面側では大きくなっている
ことが判明した。ここで、偏平率Fを第5図のa,bを
用いて F={(a−b)/a}× 100(%)で表わせば、表面
では偏平率Fが20〜30%程度、母材との界面付近では、
100%近くになっていることが確認された。
[比較例1] 実施例1と同様にコンプレッサーハウジングに溶射皮膜
を形成するにあたって、溶射粉末として粒径が50〜 150
μmの一定のものを用いた点以外は実施例1と同じ条件
で溶射皮膜を形成した。この場合の溶射皮膜中のポリエ
ステル粒子の径は50〜 150μm程度でほぼ一定であっ
た。
を形成するにあたって、溶射粉末として粒径が50〜 150
μmの一定のものを用いた点以外は実施例1と同じ条件
で溶射皮膜を形成した。この場合の溶射皮膜中のポリエ
ステル粒子の径は50〜 150μm程度でほぼ一定であっ
た。
[比較例2] 実施例2と同様にコンプレッサーハウジングに溶射皮膜
を形成するにあたって、溶射条件を、電流値 500A、A
rガス流量90/分、H2ガス流量 2/分でそれぞれ
一定とした点以外は、実施例2と同じ条件で溶射皮膜を
形成した。この場合の溶射皮膜中のポリエステル粒子の
偏平率Fは40〜50%程度でほぼ一定であった。
を形成するにあたって、溶射条件を、電流値 500A、A
rガス流量90/分、H2ガス流量 2/分でそれぞれ
一定とした点以外は、実施例2と同じ条件で溶射皮膜を
形成した。この場合の溶射皮膜中のポリエステル粒子の
偏平率Fは40〜50%程度でほぼ一定であった。
[性能評価1] 実施例1,2、比較例1,2によりそれぞれ溶射皮膜が
形成されたコンプレッサーハウジングをそれぞれ実機タ
ーボチャージャーに組込み、インペラー回転数150,000r
pmで 180分間運転し、ターボ効率(コンプレッサー効
率)の向上度合(溶射皮膜を全く形成しなかった場合と
比較しての向上度合)を調べた。
形成されたコンプレッサーハウジングをそれぞれ実機タ
ーボチャージャーに組込み、インペラー回転数150,000r
pmで 180分間運転し、ターボ効率(コンプレッサー効
率)の向上度合(溶射皮膜を全く形成しなかった場合と
比較しての向上度合)を調べた。
その結果、実施例1および実施例2のコンプレッサーハ
ウジングでは、いずれもターボ効率が 3〜 4%向上して
いることが確認された。これに対し、比較例1および比
較例2のコンプレッサーハウジングにおいては、初期に
インペラーが回転しにくく、初期の50時間までの間のタ
ーボ効率が 0.5〜 1.0%低下していることが判明した。
その後比較例1,2のコンプレッサーハウジングでは、
その低下率のまま 2〜 3%のターボ効率の向上が認めら
れた。
ウジングでは、いずれもターボ効率が 3〜 4%向上して
いることが確認された。これに対し、比較例1および比
較例2のコンプレッサーハウジングにおいては、初期に
インペラーが回転しにくく、初期の50時間までの間のタ
ーボ効率が 0.5〜 1.0%低下していることが判明した。
その後比較例1,2のコンプレッサーハウジングでは、
その低下率のまま 2〜 3%のターボ効率の向上が認めら
れた。
上記の運転試験後、溶射皮膜表面およびインペラー表面
を観察したとろ、実施例1,2では何ら異常な正常な摩
耗面を呈していたが、比較例1,2ではインペラーに若
干の摺動傷が認められた。
を観察したとろ、実施例1,2では何ら異常な正常な摩
耗面を呈していたが、比較例1,2ではインペラーに若
干の摺動傷が認められた。
ここで、いずれの実施例、比較例においても、コンプレ
ッサーハウジングとインペラーとのクリアランスは、
0.4mmの設計値に対して 0.5mm厚の溶射皮膜が形成され
ており、インペラーの回転の初期に溶射皮膜の表面層が
削られることにより適正なクリアランスが得られる。し
たがってインペラーの回転に対する負荷は初期が最大で
あり、次第にクリアランスが確保されて局部的にしかイ
ンペラーが溶射皮膜と接触しなければ、負荷は小さくな
って行く。比較例1の溶射皮膜は、その表面層すなわち
初期に削り取られる部分のポリエステル粒子の径が比較
的小さい状態すなわち緻密な状態となっており、また比
較例2の溶射皮膜は表面層のポリエステル粒子の偏平率
が比較的大きい状態すなわちポリエステル粒子に対する
結合力が大きい状態となっており、そのためいずれも表
面層の被削性が悪いから切削抵抗が大きく、回転初期に
おいてインペラーに過大な負荷が加わり、回転しにくく
なってターボ効率が低くなるとともに、インペラーに摺
動傷が生じたものと考えられる。これに対し実施例1の
溶射皮膜では、初期に削り取られる表面層のポリエステ
ル粒子の粒径が大きい状態となっており、また実施例2
の溶射皮膜では表面層のポリエステル粒子の偏平率が小
さい状態すなわちポリエステル粒子が未溶融状態のまま
周囲のAl−12wt%Si合金に充分に固定されていない
状態となっており、したがっていずれも表面層が脆く被
削性が良好であるから、前述のようにインペラーの回転
初期においてもインペラーの回転が妨げられることなく
高いターボ効率が得られ、かつ摺動傷も発生しなかった
ものと考えられる。
ッサーハウジングとインペラーとのクリアランスは、
0.4mmの設計値に対して 0.5mm厚の溶射皮膜が形成され
ており、インペラーの回転の初期に溶射皮膜の表面層が
削られることにより適正なクリアランスが得られる。し
たがってインペラーの回転に対する負荷は初期が最大で
あり、次第にクリアランスが確保されて局部的にしかイ
ンペラーが溶射皮膜と接触しなければ、負荷は小さくな
って行く。比較例1の溶射皮膜は、その表面層すなわち
初期に削り取られる部分のポリエステル粒子の径が比較
的小さい状態すなわち緻密な状態となっており、また比
較例2の溶射皮膜は表面層のポリエステル粒子の偏平率
が比較的大きい状態すなわちポリエステル粒子に対する
結合力が大きい状態となっており、そのためいずれも表
面層の被削性が悪いから切削抵抗が大きく、回転初期に
おいてインペラーに過大な負荷が加わり、回転しにくく
なってターボ効率が低くなるとともに、インペラーに摺
動傷が生じたものと考えられる。これに対し実施例1の
溶射皮膜では、初期に削り取られる表面層のポリエステ
ル粒子の粒径が大きい状態となっており、また実施例2
の溶射皮膜では表面層のポリエステル粒子の偏平率が小
さい状態すなわちポリエステル粒子が未溶融状態のまま
周囲のAl−12wt%Si合金に充分に固定されていない
状態となっており、したがっていずれも表面層が脆く被
削性が良好であるから、前述のようにインペラーの回転
初期においてもインペラーの回転が妨げられることなく
高いターボ効率が得られ、かつ摺動傷も発生しなかった
ものと考えられる。
[比較例3] 実施例1と同様にコンプレッサーハウジングに溶射皮膜
を形成するにあたって、溶射粉末として粒径 150〜 250
μmの一定のものを用いた点以外は実施例1と同じ条件
で溶射皮膜を形成した。この場合は溶射皮膜中のポリエ
ステル粒子の径は 150〜 250μm程度であり、溶射皮膜
全体が脆い状態となっている。
を形成するにあたって、溶射粉末として粒径 150〜 250
μmの一定のものを用いた点以外は実施例1と同じ条件
で溶射皮膜を形成した。この場合は溶射皮膜中のポリエ
ステル粒子の径は 150〜 250μm程度であり、溶射皮膜
全体が脆い状態となっている。
[比較例4] 実施例2と同様にコンプレッサーハウジングに溶射皮膜
を形成するにあたって、溶射条件を、電流 350A、Ar
ガス流量85/分、H2ガス流量 1.5/分でそれぞれ
一定とした点以外は実施例1と同じ条件で溶射皮膜を形
成した。この場合の溶射皮膜中のポリエステル粒子の偏
平率Fは10〜20%程度でほぼ一定であり、全体として脆
い組織となっている。
を形成するにあたって、溶射条件を、電流 350A、Ar
ガス流量85/分、H2ガス流量 1.5/分でそれぞれ
一定とした点以外は実施例1と同じ条件で溶射皮膜を形
成した。この場合の溶射皮膜中のポリエステル粒子の偏
平率Fは10〜20%程度でほぼ一定であり、全体として脆
い組織となっている。
[性能評価2] 実施例1,2および比較例3,4によるコンプレッサー
ハウジングについて、性能評価1と同じ実機ターボチャ
ージャーによる運転試験を行なった。
ハウジングについて、性能評価1と同じ実機ターボチャ
ージャーによる運転試験を行なった。
その結果、比較例3,4の場合はいずれも初期の 1〜 2
時間において急激にコンプレッサー効率が低下したた
め、運転を停止し、コンプレッサーハウジングを調べた
ところ、溶射皮膜が一部剥離脱落している箇所があるこ
とが確認された。一方、実施例1,2の場合は 180時間
の運転終了までこのような剥離は生じず、ターボ効率の
低下も起らなかった。
時間において急激にコンプレッサー効率が低下したた
め、運転を停止し、コンプレッサーハウジングを調べた
ところ、溶射皮膜が一部剥離脱落している箇所があるこ
とが確認された。一方、実施例1,2の場合は 180時間
の運転終了までこのような剥離は生じず、ターボ効率の
低下も起らなかった。
比較例3,4の溶射皮膜の母材に対する密着性を剪断試
験により調べたところ 0.2〜0.5kgf/mm2と小さく、こ
れに対し実施例1,2の溶射皮膜は、 1〜 2kgf/mm2と
大きいことが確認された。このことから、比較例3,4
の如く溶射皮膜全体を脆い組織にすれば母材との密着性
が低下し、運転時に局部的に剥離が生じて、その部分が
起点にエア流が乱れてコンプレッサー効率が急激に低下
することが判明した。これに対し実施例1,2では溶射
皮膜の母材に接する部分が緻密で母材に対する密着力が
高く、そのため運転時に溶射皮膜の剥離が生ぜず、コン
プレッサー効率の急激な低下も生じない。
験により調べたところ 0.2〜0.5kgf/mm2と小さく、こ
れに対し実施例1,2の溶射皮膜は、 1〜 2kgf/mm2と
大きいことが確認された。このことから、比較例3,4
の如く溶射皮膜全体を脆い組織にすれば母材との密着性
が低下し、運転時に局部的に剥離が生じて、その部分が
起点にエア流が乱れてコンプレッサー効率が急激に低下
することが判明した。これに対し実施例1,2では溶射
皮膜の母材に接する部分が緻密で母材に対する密着力が
高く、そのため運転時に溶射皮膜の剥離が生ぜず、コン
プレッサー効率の急激な低下も生じない。
[実施例3] 実施例1と同様にコンプレッサーハウジングに溶射皮膜
を形成するにあたり、溶射開始の初期の粒径を 0〜10μ
m未満とした点以外は実施例1と同様にして厚み方向に
粒径を変化させた。
を形成するにあたり、溶射開始の初期の粒径を 0〜10μ
m未満とした点以外は実施例1と同様にして厚み方向に
粒径を変化させた。
[性能評価3] 実施例1および実施例3のコンプレッサーハウジングを
それぞれ実機ターボチャージャーに組込み、インペラー
回転数150,000rpmで2000時間の長時間耐久評価試験を行
なった。なおこの場合、いじわる評価として、組付時の
インペラーシャフトと軸受との間にガタが存在するもの
で試験を行なった。
それぞれ実機ターボチャージャーに組込み、インペラー
回転数150,000rpmで2000時間の長時間耐久評価試験を行
なった。なおこの場合、いじわる評価として、組付時の
インペラーシャフトと軸受との間にガタが存在するもの
で試験を行なった。
その結果、実施例3のものでは1500時間過ぎで若干の効
率低下が認められた。これは、この場合の評価試験では
インペラーにガタを与えているため溶射皮膜の削り取ら
れる量が多くなっており、そのため1500時間過ぎでは溶
射皮膜の母材に近い側の基層部分すなわち初期溶射部分
まで削られることになるが、実施例3の場合は初期溶射
部分(基層)におけるポリエステル粒子の径が著しく小
さく、その部分が著しく縅密で硬質な層となっているた
め、被削抵抗が高く溶射皮膜が削られにくい状態となっ
ており、1500時間を過ぎて基層部分が切削される際にイ
ンペラーに変形が生じて効率が低下したためであること
が判明した。なお実施例1のものでは試験終了まで何ら
異常が生じなかった。
率低下が認められた。これは、この場合の評価試験では
インペラーにガタを与えているため溶射皮膜の削り取ら
れる量が多くなっており、そのため1500時間過ぎでは溶
射皮膜の母材に近い側の基層部分すなわち初期溶射部分
まで削られることになるが、実施例3の場合は初期溶射
部分(基層)におけるポリエステル粒子の径が著しく小
さく、その部分が著しく縅密で硬質な層となっているた
め、被削抵抗が高く溶射皮膜が削られにくい状態となっ
ており、1500時間を過ぎて基層部分が切削される際にイ
ンペラーに変形が生じて効率が低下したためであること
が判明した。なお実施例1のものでは試験終了まで何ら
異常が生じなかった。
このような評価試験から、ポリエステル粒子の径を溶射
皮膜の厚さ方向に変化させる場合でも、長期間にわたっ
て安定した高い効率を得るためには、初期溶射部分でも
被削抵抗が過剰に大きくならないように、分散させた軟
質非金属粒子の径を少なくとも10μm以上とすることが
好ましいことが判る。
皮膜の厚さ方向に変化させる場合でも、長期間にわたっ
て安定した高い効率を得るためには、初期溶射部分でも
被削抵抗が過剰に大きくならないように、分散させた軟
質非金属粒子の径を少なくとも10μm以上とすることが
好ましいことが判る。
発明の効果 前述の実施例からも明らかなように、この発明の隙間制
御用溶射皮膜では、表面層の被削性が良好であって相手
部材による切削に対して無理な負荷を与えることがな
く、しかも母材との密着性も優れている。したがってレ
ース用ターボチャージャー等の如く相手部材が超高速で
回転するような用途においても、相手部材の超高速回転
の際の初期において被削抵抗によって相手部材が円滑に
回転しなかったりあるいは相手部材に局部的に傷を生ぜ
しめたりすることがなく、かつまた相手部材による剪断
力によって溶射皮膜が剥離してしまうおそれも極めて少
ない。
御用溶射皮膜では、表面層の被削性が良好であって相手
部材による切削に対して無理な負荷を与えることがな
く、しかも母材との密着性も優れている。したがってレ
ース用ターボチャージャー等の如く相手部材が超高速で
回転するような用途においても、相手部材の超高速回転
の際の初期において被削抵抗によって相手部材が円滑に
回転しなかったりあるいは相手部材に局部的に傷を生ぜ
しめたりすることがなく、かつまた相手部材による剪断
力によって溶射皮膜が剥離してしまうおそれも極めて少
ない。
第1図はこの発明の溶射皮膜を自動車用ターボチャージ
ャーのコンプレッサーハウジングに適用した例を示す縦
断面図、第2図はこの発明の溶射皮膜を相手部材(この
場合はインペラー)により切削している状況を模式的に
示す拡大断面図、第3図は請求項1の発明の溶射皮膜の
組織の一例を模式的に示す拡大断面図、第4図は請求項
2の発明の組織の一例を模式的に示す拡大断面図、第5
図は請求項2の発明における偏平率を説明するための略
解図、第6図はこの発明が適用される自動車用ターボチ
ャージャーの一例を示す断面図である。 4……インペラー(相手部材)、5……コンプレッサー
ハウジング(母材)、6……溶射皮膜、7……Al−12
wt%Si合金相(軟質金属材料)、8……ポリエステル
粒子(軟質非金属材料粒子)。
ャーのコンプレッサーハウジングに適用した例を示す縦
断面図、第2図はこの発明の溶射皮膜を相手部材(この
場合はインペラー)により切削している状況を模式的に
示す拡大断面図、第3図は請求項1の発明の溶射皮膜の
組織の一例を模式的に示す拡大断面図、第4図は請求項
2の発明の組織の一例を模式的に示す拡大断面図、第5
図は請求項2の発明における偏平率を説明するための略
解図、第6図はこの発明が適用される自動車用ターボチ
ャージャーの一例を示す断面図である。 4……インペラー(相手部材)、5……コンプレッサー
ハウジング(母材)、6……溶射皮膜、7……Al−12
wt%Si合金相(軟質金属材料)、8……ポリエステル
粒子(軟質非金属材料粒子)。
Claims (2)
- 【請求項1】回転する相手部材に対向する部位の母材表
面に形成される軟質な溶射皮膜であって、しかも相手部
材の回転により表面層を切削することによって相手部材
との隙間を調整するための隙間制御用溶射皮膜におい
て、 軟質金属材料中に軟質非金属材料粒子が分散されてお
り、かつその軟質非金属材料粒子の粒径が母材との界面
の側から皮膜表面に向けて大きくなるように構成されて
いることを特徴とする隙間制御用溶射皮膜。 - 【請求項2】回転する相手部材に対向する部位の母材表
面に形成される軟質な溶射皮膜であって、しかも相手部
材の回転により表面層を切削することによって相手部材
との隙間を調整するための隙間制御用溶射皮膜におい
て、 軟質金属材料中に軟質非金属材料粒子が分散しており、
かつその軟質非金属材料粒子の偏平率が皮膜表面の側か
ら母材との界面に向けて大きくなるように構成されてい
ることを特徴とする隙間制御用溶射皮膜。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24948688A JPH0645856B2 (ja) | 1988-10-03 | 1988-10-03 | 隙間制御用溶射皮膜 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24948688A JPH0645856B2 (ja) | 1988-10-03 | 1988-10-03 | 隙間制御用溶射皮膜 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0297656A JPH0297656A (ja) | 1990-04-10 |
JPH0645856B2 true JPH0645856B2 (ja) | 1994-06-15 |
Family
ID=17193688
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP24948688A Expired - Lifetime JPH0645856B2 (ja) | 1988-10-03 | 1988-10-03 | 隙間制御用溶射皮膜 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0645856B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102004044597B3 (de) * | 2004-09-13 | 2006-02-02 | Forschungszentrum Jülich GmbH | Verfahren zur Herstellung dünner, dichter Keramikschichten |
JP5221486B2 (ja) * | 2009-09-18 | 2013-06-26 | 本田技研工業株式会社 | 摩擦式駆動装置 |
-
1988
- 1988-10-03 JP JP24948688A patent/JPH0645856B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0297656A (ja) | 1990-04-10 |
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