JPH06307358A - スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は圧縮機運転時における圧縮室への油
の安定供給と停止時における過剰な油の流入を阻止する
ように構成を工夫して、安定した性能を持つスクロール
気体圧縮機を提供することを目的とするものである。 【構成】 本発明は油ポンプの下流に配設された旋回渦
巻羽根部品に絞り装置を有したインジェクション経路を
設ける構成にしたものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は空気調和装置等に使用さ
れるスクロール圧縮機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】スクロール圧縮機で気体を圧縮する場合
は圧縮部の漏れ隙間を小さくするために渦巻部の寸法精
度を極めて高くする必要があるが、部品形状の複雑さ、
寸法精度のバラツキなどにより、スクロール圧縮機のコ
ストが高く性能のバラツキも大きいという問題があっ
た。

【０００３】そこで、この種の問題解決の方策として、
圧縮途中の気体漏れ防止のために潤滑油膜を利用したシ
ール効果により渦巻部寸法精度の適正化と圧縮機性能の
安定化を図る様々な構成が出願されている。

【０００４】図４は密閉容器７０１内の上部に電動機７
０３を配置し下部に圧縮部を配置して密閉容器内空間７
０２を吐出室とした構造で、吐出室底部の油溜７１０の
潤滑油を油吸い込み管７２２を介して圧縮途中の圧縮室
７２３に直接流入させる構成であり（特開昭５７−８３
８６号公報）、図５は密閉容器８０１内の上部に圧縮部
を配置し下部に電動機８０３を配置して密閉容器内空間
８０２を吐出室とした構造で、旋回渦巻羽根部品８０４
の気体圧縮時に作用するスラスト力を軽減するために旋
回渦巻羽根部品８０４の反圧縮室側背面に設けた中間圧
力状態の背圧室８０８を中継し、その前後に設けた駆動
軸８０６内の給油穴８９９、給油配管８１５を通して密
閉容器８０１内底部の油溜８０９の潤滑油を圧縮途中の
圧縮室８２３に差圧により流入させる構成であった（特
開昭５９−１１０８９３号公報）。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
図４のような吐出圧力に等しい密閉容器内空間７０２の
底部の油溜７１０の潤滑油を圧縮途中の圧縮室７２３に
差圧により流入させる構成では、冷媒圧縮機などに使用
する際、圧縮停止中にその自重や差圧などにより圧縮機
外部の冷凍サイクルから圧縮機内に帰還した多量の冷媒
が液化状態で油溜７１０の上部の電動機７０３下面にま
で溜り、冷媒液や潤滑油が油吸い込み管７２２などを通
じて圧縮室７２３に流入し充満する場合もあり、このよ
うな状態では圧縮負荷が過大のため再起動運転不能であ
り、例え電動機７０３の起動トルクが大きくて再起動で
きるとも圧縮機破損を招く。

【０００６】また、圧縮機運転条件によって油溜７１０
の潤滑油が不足する場合もあり、このような状態では圧
縮室に圧縮気体が流入して圧縮効率の著しい低下や圧縮
室内異常圧力上昇に伴う圧縮機破損などを招くという問
題があった。

【０００７】また、上記の図５のような圧縮機底部の油
溜８０９に通じる中間圧力状態の背圧室８０８を経由し
て圧縮途中の圧縮室８２３に潤滑油を供給する構成で
も、上記の図４の場合と同様に油溜８０９の潤滑油が不
足する場合には圧縮効率の著しい低下や耐久性低下を招
くという問題もあった。

【０００８】そこで、本発明は圧縮機運転時における圧
縮室への油の安定供給と停止時における過剰な油の流入
を阻止する構成のスクロール圧縮機を提供するものであ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明のスクロール圧縮機は、密閉容器の内部に電動
機と、この電動機で駆動する圧縮機構を配設し、前記圧
縮機構を、固定鏡板の上に固定渦巻羽根を形成した固定
渦巻羽根部品と、前記固定渦巻羽根と噛み合い複数個の
圧縮作業空間を形成する旋回渦巻羽根を旋回鏡板の上に
形成した旋回渦巻羽根部品と、この旋回渦巻羽根部品の
自転を防止して旋回のみをさせる自転拘束部品と、前記
渦巻羽根部品を旋回駆動するクランク軸と、このクラン
ク軸に形成した主軸を支承する主軸受を有する軸受部品
と吐出空間に連通する空間から主軸内を貫通する給油経
路に油を供給するポンプとを含んで構成し、前記圧縮機
構の吐出気体を前記クランク軸及び前記電動機を含む空
間に吐出させ、前記旋回鏡板の前記旋回渦巻羽根と反対
側の鏡板背面に、前記クランク軸に設けた偏芯駆動係合
部に係合してこの旋回渦巻羽根部品を旋回駆動する旋回
駆動係合部を設け、前記鏡板背面のこの旋回駆動係合部
の外方に前記鏡板背面にかかる気体圧力を、中心部にか
かる吐出圧力と前記鏡板背面の外周にかかる前記吐出圧
力よりも低い圧力とに仕切る摺動仕切環を配設し、この
内側に形成される背面高圧室と、圧縮室とを連通させる
絞り装置を有する給油通路を前記旋回渦巻羽根部品に設
け、前記ポンプから給油される油を圧縮室にインジェク
ションできる構成としたものである。

【００１０】

【作用】本発明は上記のごとき構成にしたことにより、
圧縮機運転時には圧縮室を油膜でシールするのに適当な
油量を油ポンプより安定供給することができ、また、停
止時には過剰な油の流入を阻止することができる。

【００１１】

【実施例】以下本発明の実施例を図面とともに説明す
る。

【００１２】図１は本発明のスクロール圧縮機の実施例
の縦断面図で、図２、図３は圧縮機構部の拡大断面図で
ある。

【００１３】密閉容器１の内部に圧縮機構２とこれを駆
動する電動機３の固定子４を固定し、電動機３の回転子
５に圧縮機構２を駆動するクランク軸６を結合し、密閉
容器１の圧縮機構２の周囲を油溜７とする。圧縮機構２
は、固定鏡板８に一体に形成した固定渦巻羽根９を有す
る鋳鉄製の固定渦巻羽根部品１０と、この固定渦巻羽根
９と噛み合って複数個の圧縮室１４を形成する羽根先端
部に可動シール部材４４を有する旋回渦巻羽根１１を旋
回鏡板１２の上に形成したアルミニウムもしくは樹脂製
の旋回渦巻羽根部品１３と、この旋回渦巻羽根部品１３
の自転を防止して旋回のみをさせる自転拘束部品１５
と、この旋回鏡板１２の旋回渦巻羽根１１の反対側に設
けた旋回駆動軸１６と、クランク軸６の主軸１８の内方
に設けこの旋回駆動軸１６が嵌入する偏芯軸受７と、こ
のクランク軸６の主軸１８を支承する主軸受１９を有す
る軸受部品２１と、旋回鏡板１２の背面の鏡板背面２０
から微小な間隔の隙間をおいてこの旋回渦巻羽根部品１
３の軸方向の動きを制限する軸方向移動制限平面２３を
有する平面板部品２４を配置する。この平面板部品２４
に、鏡板背面２０にかかる気体圧力を中心部にかかる吐
出圧力と鏡板背面２０の外周にかかる吐出圧力よりも低
い圧力とに仕切る摺動仕切環２５を配設する。圧縮機の
吸入管３０から吸入した冷媒気体は、圧縮機構２の吸込
口３２から圧縮機構２に入り、圧縮室１４で圧縮され、
吐出口３３から、吐出室３４、固定鏡板８外周に設けた
吐出通路３５、軸受部品２１に設けた吐出通路３６を通
り電動機３と圧縮機構２の間の吐出室３７に吐出され
る。この吐出冷媒気体は、電動機周辺通路３８を通り、
吐出管３９から圧縮機の外に導かれる。

【００１４】一方、油溜７よりポンプ４２で強制給油さ
れた油は駆動軸６内に設けられた給油経路４３を介して
旋回渦巻羽根部品１３の軸に取り付けられた絞り装置４
０に入る。この絞り装置４０で適量に調節された油は導
入路４１を通ってインジェクションポートより、圧縮室
１４に供給される。

【００１５】上記の構成により、圧縮機運転時には圧縮
室を油膜でシールするのに適当な油量を油ポンプより安
定供給でき、渦巻部寸法精度の最適化と圧縮機性能の向
上を図ることができ、スクロール圧縮機の高効率化を実
現できる。また、停止時には差圧による油の圧縮室への
流入を油ポンプと絞り装置を抵抗にして阻止することが
でき、圧縮負荷過大による再起動不能状態を回避するこ
とができる。

【００１６】また、高速運転時は固定渦巻羽根部品と旋
回渦巻羽根部品が異種の材質のために熱膨張係数の差に
よる両羽根間の隙間が増大するが、上記の構成により、
シール性能を損なうことなく、低騒音かつ高性能なスク
ロール圧縮機を実現できる。

【００１７】さらにまた、旋回渦巻羽根部品の旋回時の
縦方向ぶれによる軸方向隙間の増大に追従する可動シー
ル部材のシール性能を向上させることにより、高性能な
スクロール圧縮機を実現できる。

【００１８】

【発明の効果】本発明の効果は、密閉容器の内部に電動
機と、この電動機で駆動する圧縮機構を配設し、前記圧
縮機構を、固定鏡板の上に固定渦巻羽根を形成した固定
渦巻羽根部品と、前記固定渦巻羽根と噛み合い複数個の
圧縮室を形成する旋回渦巻羽根を旋回鏡板の上に形成し
た旋回渦巻羽根部品と、この旋回渦巻羽根部品の自転を
防止して旋回のみをさせる自転拘束部品と、前記渦巻羽
根部品を旋回駆動するクランク軸と、このクランク軸に
形成した主軸を支承する主軸受を有する軸受部品と吐出
空間に連通する空間から主軸内を貫通する給油経路に油
を供給するポンプとを含んで構成し、前記圧縮機構の吐
出気体を前記クランク軸及び前記電動機を含む空間に吐
出させ、前記旋回鏡板の前記旋回渦巻羽根と反対側の鏡
板背面に、前記クランク軸に設けた偏芯駆動係合部に係
合してこの旋回渦巻羽根部品を旋回駆動する旋回駆動係
合部を設け、前記鏡板背面のこの旋回駆動係合部の外方
に前記鏡板背面にかかる気体圧力を、中心部にかかる吐
出圧力と前記鏡板背面の外周にかかる前記吐出圧力より
も低い圧力とに仕切る摺動仕切環を配設し、この内側に
形成される背面高圧室と、圧縮室とを連通させる絞り装
置を有する給油通路を前記旋回渦巻羽根部品に設け、前
記ポンプから給油される油を圧縮室にインジェクション
する構成により、圧縮機運転時には圧縮室を油膜でシー
ルするのに適度な油量を油ポンプより供給でき、渦巻部
寸法精度の最適化と圧縮機性能の向上化を図ることがで
きる。また、停止時には差圧による油の圧縮室への流入
を油ポンプと絞り装置を抵抗にして阻止することがで
き、圧縮負荷過大による再起動不能状態を回避すること
ができる。

【００１９】本発明の請求項２に係る効果は高速回転使
用が不可欠となる固定渦巻羽根部品と旋回渦巻羽根部品
が異種の金属で構成される場合にも、低騒音かつ高性能
なスクロール圧縮機を実現できることである。

【００２０】本発明の請求項３に係る効果は、旋回渦巻
羽根部品の旋回時の軸方向ぶれによる軸方向隙間の増大
に追従する可動シール部材のシール性能を向上させるこ
とにより、高性能なスクロール圧縮機を実現できること
である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のスクロール圧縮機の実施例における縦
断面図

【図２】同圧縮機構部の拡大縦断面図

【図３】同圧縮機構部の拡大横断面図

【図４】従来のスクロール圧縮機の縦断面図

【図５】他の従来のスクロール圧縮機の縦断面図

【符号の説明】

１ 密閉容器 ２ 圧縮機構 ３ 電動機 ６ クランク軸 ８ 固定鏡板 ９ 固定渦巻羽根 １０ 固定渦巻羽根部品 １１ 旋回渦巻羽根 １２ 旋回鏡板 １３ 旋回羽根部品 １４ 圧縮室 １５ 自転拘束部品 １８ 主軸 １９ 主軸受 ２０ 旋回鏡板背面 ２１ 軸受部品 ２５ 摺動仕切環 ４０ 絞り装置 ４１ 導入路 ４２ 給油ポンプ ４３ 給油経路 ４４ 可動シール部材 ４５ インジェクション穴

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長谷 昭三 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】密閉容器の内部に電動機と、この電動機で
   駆動する圧縮機構を配設し、前記圧縮機構を、固定鏡板
   の上に固定渦巻羽根を形成した固定渦巻羽根部品と、前
   記固定渦巻羽根と噛み合い複数個の圧縮室を形成する旋
   回渦巻羽根を旋回鏡板の上に形成した旋回渦巻羽根部品
   と、この旋回渦巻羽根部品の自転を防止して旋回のみを
   させる自転拘束部品と、前記渦巻羽根部品を旋回駆動す
   るクランク軸と、このクランク軸に形成した主軸を支承
   する主軸受を有する軸受部品と吐出空間に連通する空間
   から主軸内を貫通する給油経路に油を供給するポンプと
   を含んで構成し、前記圧縮機構の吐出気体を前記クラン
   ク軸及び前記電動機を含む空間に吐出させ、前記旋回鏡
   板の前記旋回渦巻羽根と反対側の鏡板背面に、前記クラ
   ンク軸に設けた偏芯駆動係合部に係合してこの旋回渦巻
   羽根部品を旋回駆動する旋回駆動係合部を設け、前記鏡
   板背面のこの旋回駆動係合部の外方に前記鏡板背面にか
   かる気体圧力を、中心部にかかる吐出圧力と前記鏡板背
   面の外周にかかる前記吐出圧力よりも低い圧力とに仕切
   る摺動仕切環を配設し、この内側に形成される背面高圧
   室と、圧縮室とを連通させる絞り装置を有する給油通路
   を前記旋回渦巻羽根部品に設け、前記ポンプから給油さ
   れる油を圧縮室にインジェクションするスクロール圧縮
   機。
2. 【請求項２】旋回渦巻羽根部品を固定渦巻羽根部品と異
   種の材料にした請求項１記載のスクロール圧縮機。
3. 【請求項３】旋回渦巻羽根の先端部に可動シール部材を
   有する旋回渦巻羽根部品をもつ請求項１記載のスクロー
   ル圧縮機。