JPH0626891B2 - 液体噴射装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は液体噴射装置に関し、更に詳しくは液滴吐出の
回復手段を具備した液体噴射装置に関する。

近年、ノンインパクト記録法は、記録時に於ける騒音の
発生が極めて小さいという点で関心を集めている。中で
も飛翔的液滴を記録部材上に付着させて記録を行なう液
体噴射記録法は、普通紙上に所謂定着という様な特別な
処理を必要とせずに記録が行なえ、しかも高速の記録も
可能という点で注目されている。

而乍ら、液体噴射記録法は、微細なオリフイスより液滴
を吐出させる為、オリフイスに紙粉等の異物がつかえて
液滴の吐出が停止したり、長期間装置を使用しないと記
録液（液体）中の溶媒が蒸発する為、オリフイスやその
近傍に残つた溶質が障害物となり液滴の吐出が停止する
場合があつた。又、液体中の溶存気体が液体中より放出
されて発生した気体やその他の原因で入り込んだ気体の
為に、液体が液体を貯蔵している液溜からオリフイスま
で連続して存在しなくなる場合があつた。そうなると、
液滴をオリフイスより吐出させるためのエネルギーが液
体に伝わらなかつたり、伝わつても液滴が吐出されなか
つたり、吐出が不安定になつたりする場合もあつた。更
に、不要な気体が存在すると、それ等気体の為に吐出さ
れた液体の量に見合つた液体の供給が成されない場合も
あつた。

以上の中でも液体噴射記録装置に於いては、オリフイス
やオリフイスに連通する液流路の目詰りによる液滴の不
吐出は重要な問題であり、その対策には数々の提案が成
されている。

しかも、上述した様に目詰りの原因も種々の理由が考え
られ、原因に応じた対応策が必要となる。かかる不吐出
原因のひとつにインク噴出孔附近のインクの低沸点物質
の蒸発によるインク増粘に基づく吐出抵抗の増大が考え
られる。この様な場合その対策としてインク噴出孔に多
孔質体を密着接触せしめ、増粘したインクを多孔質体に
吸収せしめる方法が有効である。しかし、この様な方法
に於いては吸収せしめられたインクが多孔質体に飽和し
多孔質体の頻繁な交換を必要とした。

又、液体の粘度増加や溶媒の蒸発によつては多孔質体に
よる液体の吸収が行なわれない場合があつた。即ち、上
記の様な液滴吐出の回復手段は液体不吐出を生じにくく
する予防手段や軽度の目詰り対策としては優れてはいる
が、液流路内に異物が詰つたり気体が多く入いり込んだ
りした場合の様な、重度の目詰りや重度の不吐出原因を
解消するのには至らない場合があつた。

それ等重度の不吐出原因を解消する手段として、記録ヘ
ツドのオリフイス面をキヤツプでキヤツピングし、その
キヤツプ内を吸引力を発生する吸引手段を用いて吸引
し、オリフイスより液体とともに異物を吸い出したり、
気体を吸い出して不吐出原因を解消する手段が知られて
いる。しかし、この場合は吸引力と液滴不吐出原因を除
去する力のバランスが難しく回復操作時にキヤビテーシ
ヨンによる気泡発生が生ずる場合があつた。

又、更に、複数オリフィスを備えたオリフィス面に多孔
質体を当接させるて回復を行う際に、多孔質体に吸引さ
れた増粘液体が多孔質体内で不均一に分布することに起
因して、一部のオリフィスのみの吸引回復が行われる一
方で、増粘液体が多く分布した領域の他のオリフィスの
吸引回復は不充分である場合もあった。又、吸引が行わ
れる前述の一部オリフィスに連通する液体流路内に過度
の吸引による圧力の低下に起因して生じるキャビテーシ
ョンによりに気泡が発生する場合もあった。

即ち、液滴の吐出を回復させる為の操作をしているのに
もかかわらず、液滴吐出の不良や不能の原因を発生させ
る場合や吸い出された液体がオリフイス近傍に残り液滴
の吐出を不安定にする場合が従来の回復手段にはあつ
た。

又、吸引による回復の場合には、液室内に液体がない場
合記録ヘツド側が減圧されたまま回復手段をオリフイス
面から開放した時に、大気側から大気が逆流し、全く回
復操作が行なわれない場合があつた。更に、液体中の異
物がオリフイス面を詰らせない様にフイルターを設けて
いる場合に、フイルターにまで大気が達するとフイルタ
ー内に大気（空気）が入いり込み、その後の吐出特性に
大きな障害を及ぼすといつた重大な欠点をも生ずる場合
もあつた。

〔目 的〕

本発明は、上記の諸問題に鑑み成されたもので、簡単な
構成で吸引力を制御できる回復手段を具備された液体噴
射装置を提供する事を目的とする。又、本発明は、液滴
吐出の回復が確実に行なわれる回復手段を具備された液
体噴射装置を提供する事も目的とする。

本発明の更に別の目的は、上記した様な多孔質体の長寿
命化を実現し、信頼性の高い液滴吐出の回復手段を具備
した液体噴射記録装置を提供する事にある。

本発明の更に他の目的は、キャビテーションにより液体
流路内の液体に気泡が発生することを防止しつつ、複数
オリフィス付近に付着した増粘液体の除去を行い、複数
オリフィスの液滴吐出の回復を確実に行うことができる
回復手段を具備した液体噴射装置を提供する事にある。

本発明は、飛翔的液滴を形成する液体を吐出する複数の
オリフィスを備えたオリフィス面に当接する多孔質体を
内部に配し、前記オリフィスのキャッピングを行うキャ
ップと、前記キャップを介して前記オリフィスから液体
を吸引する吸引手段と、前記吸引手段が発生する吸引力
により前記キャップ内の圧力が所定の値より小くなる場
合に前記キャップ内に大気を導入し、該導入により前記
キャップ内の圧力が所定の値より大きくなることにより
前記キャップ内への大気の導入を停止する吸引力調整手
段と、を具備し、前記多孔質体内の液滴の吸引を前記吸
引力調整手段による前記キャップ内への大気導入と大気
導入の停止とによって行う液体噴射装置を提供する事も
目的とする。

尚、本発明で提供される液体噴射装置は、飛翔的液滴を
形成するオリフィスを複数備える装置であり、好適には
オリフィスに連通する液体流路と、飛翔的液滴を形成す
る為に利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生
体と、を備えたものである。

〔実施例〕

以下、本発明を好適な実施態様例を用いて説明する。

第１図は本発明の液体噴射記録装置を説明する為の模式
的斜視部分図である。第１図に示される様に、本実施態
様例は紙送りローラー３とピンチローラー４によりプラ
テン２上を副走査方向（矢印Ａの方向）に移動させられ
る記録紙１上に、キヤリツジ駆動ベルト７によつてガイ
ド軸６に沿つて主走査方向（矢印Ｂの方向）に移動させ
られるキヤリツジ５にヘツドアライナー８を介して固定
されたマルチノズルヘツドユニツト９乃至１２（以下ヘ
ツドと称す）から液滴を入力信号に応じて吐出し記録を
行なう一例である。ヘツド９乃至１２は各々液室１３を
有し、各液室１３にはカプラー１４を介して夫々インク
タンク（不図示）に連通しているインクパイプ１５乃至
１８が各々接続されている。又ヘツド９乃至１２には夫
々フレキシブル配線１９が接続され、これによつて液滴
を吐出する為の電気信号が入力される。

２２乃至２５は多孔質体で多孔質体ホルダーでもあるキ
ヤツプ２１に保持されて弾性支持体２６を介してダクト
２７に固定される。ダクト２７には吸引力を発生する為
の吸引手段２９に一方の端を接続されているサクシヨン
パイプ２８が接続される。又、ダクト２７はダクト２７
を保持する基板３０に固定される。サクシヨンパイプ２
８には吸引力調整手段３７が付設される。尚、ダクト２
７は多孔質体２２乃至２５と共に第１図に示される矢印
Ｃの方向に移動可能とされている。

本実施例における回復操作は、次の様に行なわれる。先
ず、キヤリツジ５がセンサー２３によつて所定位置に来
た事を検出してキヤリツジ５を止め、ダクト２７をキヤ
リツジ５の方へ移動させることにより各ヘツドのオリフ
イス面に多孔質体２２乃至２５を夫々密着させる。次に
吸引手段２９を動作させ吸引力を発生し、多孔質体が吸
収した液体や気体を吸引する。その際上述した様な液滴
不吐出原因を発生し得る位の吸引力がキヤツプ２１内に
作用すると、本実施例ではサクシヨンパイプ２８に付設
された吸引力調整手段３７が働きサクシヨンパイプ２８
内に大気を導入する。すると、吸引力は大気が導入され
る事によつて低下するので不吐出原因の発生は防止され
る。大気が導入された事によつてキヤツプ２１内に働く
吸引力が低下すると大気の導入は停止される。吸引力が
働いている間吸引力調整手段３７のこの動作は繰り返さ
れる。その後、吸引手段２９の動作を停止させ、ダクト
２７をキヤリツジ５から離す。即ち、キヤツプ２１をヘ
ツド９乃至１２からはずす。

本実施例では上記の様にして液滴吐出の回復が行なわれ
る。

第１図に示されるヘツド９を例により詳しく本発明の液
体噴射記録装置における回復手段の一例を第２図を用い
て説明する。第２図に示されるのはヘツド９に回復操作
を行なつている時の模式的切断面部分図である。第２図
中に引き出し線によつて示される番号は第１図中に示し
た番号と同じものを示す。

第２図に示される様に、多孔質体２２を保持するキヤツ
プ２１には廃液溜３３が形成されている。又、多孔質体
２２とキヤツプ２１とが接する部分の少なくとも吸引手
段側には多孔質体２２に吸引力が働く様に穴３２が設け
てある。

ダクト２８は軸３１がモーター等で回転される事で共に
回転する偏心カム３５が基板３０に固定されたカムフオ
ロワー３６を押し第１図に示される矢印Ｃの方向に移動
される。その結果多孔質体２２はヘツド９に押しつけら
れる。その際、弾性支持体２６は若干圧縮されて適度な
押圧力を多孔質体２２に与える。そして、多孔質体２２
はヘツド９のオリフイス面に密着し、オリフイス近傍の
液体を吸収する。

その状態で吸引手段を作動させる事によつて多孔質体２
２の背面は負圧を形成される。多孔質体２２に吸収され
た液体は多孔質体２２の連続発泡孔中を背面に導かれ、
背面で飽和した液体は廃液溜３３に貯留される。吸引力
調整手段３７は第１図に於いて説明した様な動作を吸引
力が発生している間繰り返す。

第３図及び第６図(ｂ)は本発明に於ける吸引力調整手段
の好適な実施態様例を示す模式的切断面図である。第３
図及び第６図(ｂ)に於いて101は弁体、102はサクシヨン
パイプ、103は弾性体である。

第５図乃至第６図(ｂ)に示してある弁体101は夫々弁体1
01自身が弾性力を持ち、第３図及び第４図に示される弾
性体103の働きもする。

第３図乃至第６図(ｂ)の各弁体101はサクシヨンパイプ1
02内の吸引力によつてサクシヨンパイプ102の管内に引
つぱられ大気とサクシヨンパイプ102内とを連通させ
る。弾性体は所定の吸引力がサクシヨンパイプ102内に
発生した時に作動する様な力のものが適宜選択される。

尚、第６図(ｂ)に示されるのは第６図(ａ)に示される弁
体101が大気を導入している時の状態である。

尚、第１図に於いてはヘツドを複数個備える液体噴射記
録装置が示されているが、ヘツドは図に示される様に４
個でなく、それ以上の個数でも以下の個数でもよく、も
ちろん単数であつてもかまわない。而乍ら、ヘツドを複
数個備えている場合には、相互のヘツドに対して均等に
多孔質体を密着させる為に、或いは各ヘツドのインクが
混合しない為にホルダー及び弾性支持体を各ヘツドごと
に独立させる事が好ましい。又、弾性支持体は必ずしも
必要としないが、吸引手段の発生した吸引力を有効に多
孔質体に伝える為或いは多孔質体とヘツドとの密着性を
高める為には設けた方が良い。

多孔質体は連続発泡した弾性体で液体になじみ易い材質
である事が好ましい。又、多孔質体に適度の弾力性があ
る事も好ましい。

弾性支持体は独立気泡型で空気の流通が少ないもの、例
えば所謂ゴムと称される様なもので適当な柔らかさを持
つているものが好ましく用いられる。

第２図にはダクト３１を移動させる方法として偏心カム
を利用した例を挙げてあるが、偏心カム以外にも数多く
の方法で移動し得るのはもちろんである。

又、キヤリツジを所定位置に止める為の機構を設けずと
も、キヤリツジがホームポジシヨンに来た時に回復操作
を行なつても良い。

吸引力調整手段は、本実施態様例ではサクシヨンパイプ
に設けた例を示したが、別にここに設ける必要がないの
はもちろんである。吸引力を発生する吸引手段からキヤ
ツプまでの間に設ければ良い。即ち、吸引手段が発生し
た吸引力を充分なレスポンスで調整し得る場所に付設さ
れれば良い。

〔効 果〕

以上、詳細に説明した様に、本発明によれば液体を吸収
する多孔質体の寿命が著しく延びる為、従来よりはるか
に長期に亘つて多孔質体を交換する必要がない。従つ
て、多孔質体の管理や経済的負担は非常に軽くなる。
又、吸引手段の発生する吸引力を適当な大きさに設定す
る事によつて、オリフイスよる液体を吸引出来るので、
オリフイス近傍に付着した液体の除去はもとより液流路
内の目詰りも解消出来る。更に、従来の吸引による目詰
りを除去する手段を設けた装置と違い、多孔質体が余分
な液体を吸収するのでオリフイス近傍に液体が付着して
吐出の安定が計れなくなるという事もない。

又、更に吸引力調整手段によりキャップ内への大気導入
と大気導入の停止とを繰り返すことで、多孔質体に吸引
された増粘液体の多孔質体内での分布の不均一を解消
し、オリフィスに関連する液体流路内の液体にキャビテ
ーションによる気泡が発生することを防止しつつ、複数
オリフィス付近に付着した増粘液体の除去を行い、複数
オリフィスの吐出回復を確実に行うことができる。

即ち、本発明の液体噴射記録装置は大変優秀な液滴吐出
の回復手段を備えるので長期間に亘る使用に際しても常
に優れた記録を行なえるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は各々本発明の好適な実施態様例を説
明する為の図で、第１図は模式的斜視図、第２図は模式
的切断面図である。第３図乃至第６図は各々本発明の液
体噴射記録装置に用いられる吸引力調整手段の好適な実
施態様例を示す切断面図である。 １……記録紙、２……プラテン、３……紙送りローラ
ー、４……ピンチローラー、５……キヤリツジ、６……
ガイド軸、７……キヤリツジ駆動ベルト、８……ヘツド
アライナー、９，10，11，12……ヘツド、１３……液
室、１４……カプラー、15，16，17，18……インクパイ
プ、１９……フレキシブル配線、２０……センサー、２
１……キヤツプ、22，23，24，25……多孔質体、２６…
…弾性支持体、２７……ダクト、２８，102……サクシ
ヨンパイプ、２９……吸引手段、３０……基板、３１…
…軸、３２……穴、３３……廃液溜、３４……枠体、３
５……偏心カム、３６……カムフオロワー、３７……吸
引力調整手段、101……弁体、103……弾性体

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】飛翔的液滴を形成する液体を吐出する複数
   のオリフィスを備えたオリフィス面に当接する多孔質体
   を内部に配し、前記オリフィスのキャッピングを行うキ
   ャップと、 前記キャップを介して前記オリフィスから液体を吸引す
   る吸引手段と、 前記吸引手段が発生する吸引力により前記キャップ内の
   圧力が所定の値より小くなる場合に前記キャップ内に大
   気を導入し、該導入により前記キャップ内の圧力が所定
   の値より大きくなることにより前記キャップ内への大気
   の導入を停止する吸引力調整手段と、 を具備し、 前記多孔質体内の液滴の吸引を前記吸引力調整手段によ
   る前記キャップ内への大気導入と大気導入の停止とによ
   って行うことを特徴とする液体噴射装置。
2. 【請求項２】前記吸引力調整手段は弁である特許請求の
   範囲第１項に記載の液体噴射装置。
3. 【請求項３】前記キャップが複数設けられている特許請
   求の範囲第１項に記載の液体噴射装置。