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JPH06225574A - 電動機の制御方法及び装置 - Google Patents

電動機の制御方法及び装置

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Publication number
JPH06225574A
JPH06225574A JP6000712A JP71294A JPH06225574A JP H06225574 A JPH06225574 A JP H06225574A JP 6000712 A JP6000712 A JP 6000712A JP 71294 A JP71294 A JP 71294A JP H06225574 A JPH06225574 A JP H06225574A
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voltage
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JP6000712A
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English (en)
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JP2737632B2 (ja
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Toshiaki Okuyama
俊昭 奥山
Noboru Fujimoto
登 藤本
Toshio Saito
敏雄 齋藤
Takayuki Matsui
孝行 松井
Yuzuru Kubota
譲 久保田
Hiroshi Fujii
洋 藤井
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
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  • Control Of Ac Motors In General (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】速度センサ及び電圧センサを用いず、電流セン
サのみによる簡単なシステム構成で、しかも、ASR,
ACRを不要として、制御構成及び演算の簡素化を図
り、取扱いが簡単で回転速度,電流を安定かつ、高精度
に制御することができる電動機の速度制御方法及び装置
を提供する。 【構成】周波数変換器を用いる電動機の速度制御方法に
おいて、電動機の一次電圧の振幅値及び該一次電圧と誘
導起電力との位相差(内部相差角)の指令値を、少なく
とも周波数指令値及び一次電流成分値に基づいて演算
し、これらの指令値信号に基づいて一次電圧の瞬時値指
令を演算し、該一次電圧の瞬時値指令に応じて周波数変
換器の出力電圧を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電動機の速度制御方法
及び装置に係り、特に、速度センサ及び電圧(磁束)セ
ンサを用いることなく、高性能な速度制御を行うために
好適な電動機の速度制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】誘導電動機を可変速制御するインバータ
装置の制御方法としてベクトル制御やv/f制御(電圧
/周波数一定制御)がある。前者は一般にすべり周波数
制御方式が用いられる。この方式では例えば特開昭60−
28786 号公報に記載のように電動機に取付けた速度検出
器からの検出値に応じて速度制御しその出力信号に基づ
いてすべり周波数の指令値を演算してそれと速度検出値
を加算しインバータの出力周波数を制御している。また
電動機電流のトルク成分i1qを検出して、これに応じて
電流制御を行っている。このため高安定で高精度な速
度,電流制御が行えるが、速度検出器並びに速度調節器
(ASR)及び電流調節器(ACR)が必要で構成が複
雑である。一方、v/f制御は、速度及び電流検出値に
よるフィードバック制御は行わず、速度指令に比例して
インバータ出力周波数や出力電圧をオープンループで制
御する方式であり、負荷に応じて速度が変動し高精度な
制御は得られないが、構成は簡単である。
【0003】一方、誘導電動機を速度センサを用いずに
高精度に速度制御する方法に関する第2の従来技術とし
て、例えば、アイ・イー・イー・イー・トランザクショ
ン、インダストリー・アプリケーション、アイ・エー・
19、3(1983年)、第356頁〜第362頁(IE
EE、Transaction Industry Application、IA−19、
No.3(1983)PP356−362)に記載された
技術が知られている。この従来技術による誘導電動機の
速度制御方法は、電動機の一次電圧及び一次電流より、
速度及びすべり周波数あるいはトルクを演算し、その演
算結果を用いて制御を行う方法であり、速度センサを用
いることなく、高精度の速度制御を行うことができる。
【0004】また、第3の従来技術として、イー・ピー
・イー、コンファレンス(1985)、第351頁−第3
55頁(EPE Conference(1985)、PP351−3
55)に記載された技術が知られている。この従来技術
による誘導電動機の速度制御方法は、速度センサ及び電
圧(磁束)センサを共に省略した方法であり、インバー
タ出力電圧の瞬時値指令と電動機電流に基づいて、夫々
の位相角度を演算して力率角を検出し、この検出値が指
令値と一致するように周波数指令を制御する方法であ
る。
【0005】従来、誘導電動機のベクトル制御方式にお
いては、運転する誘導電動機の電動機定数、例えば励磁
インダクタンスおよび時定数等に基づいて、各制御定数
を細かく設定する必要がある。第4の従来技術として特
開昭59−165982号公報に示されたベクトル制御装置にお
いては、電圧指令信号を演算する際の制御定数の一次抵
抗r1 ,漏れインダクタンスLσ,一次インダクタンス
1 ,励磁電流指令値i*1d は、電動機の一次抵抗,漏
れインダクタンス,一次インダクタンス,励磁電流に応
じて設定する必要がある。
【0006】誘導電動機駆動制御装置に関する更に第5
番目の従来技術として、例えば、特開昭61−189193号公
報等に記載された技術が知られている。この従来技術に
よる制御装置は、必要とする誘導電動機のトルクに対
し、一次電流が最小の値となるようにするため、誘導電
動機の駆動制御装置に励磁電流を制御する手段を備える
ものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記第1番目の従来技
術における各制御方式には一長一短がある。すなわち、
ベクトル制御では速度や電流検出器及びASR,ACR
の調節器を有することから構成が複雑なこと、さらに各
調節器の定数を機械系の慣性モーメント及び電動機の電
気定数に応じて設定する必要があるため煩雑になり誤つ
た設定によっては制御が逆に不安定になる。一方、v/
f制御では負荷に応じて速度が変動すること、また、急
激な速度や負荷の変動によって電流が脈動したり、トル
ク/電流の低下が生じ、著しい場合は脱調するといった
制御上の問題がある。
【0008】前述した前者第2番目の従来技術(IEEE Tr
ansaction )は、電圧センサとその周辺回路のためシス
テム構成が複雑となり、また、速度及び電流を制御する
ための調節器(ASR,ACR)を必要とし、フィード
バックループが多数となって制御構造が複雑となるとい
う問題点を有している。また、第3番目の従来技術(E
PE Conference)も同様に、速度調節器及び力率調節器
を必要とし、フィードバックループが多数となって制御
構成が複雑となり、さらに、力率角を検出する際に多相
交流瞬時値の演算を行っており、この演算が非常に複雑
であり、充分な制御精度を得ることができないという問
題点を有している。さらに、前記両従来技術は、前述の
各種の調節器の制御定数を機械系の慣性モーメント及び
電動機の電気定数に応じて設定する必要があり、これら
の設定のための取扱いが煩雑であるという問題点があっ
た。
【0009】また、第4番目の従来例においては、これ
ら電動機定数を設計値または実測値に基づいて一つ一つ
マニュアル設定していたので、使用する電動機毎に制御
定数を細かく設定変更しなければならず作業が繁雑であ
り、また、電動機定数が不明な場合は設定が不可能とな
る問題があった。
【0010】また、前記第5番目の従来技術は、一次電
流を最小とするように誘導電動機の制御を行っているの
で、一次抵抗損を最小とすることができるが、二次抵抗
損やヒステリシス損,うず電流損等を含めたトータルの
損失を必ずしも最小とすることができないという問題点
があった。このため、前記従来技術は、これらの損失に
相当する電力を駆動制御装置から供給することが必要と
なり、制御装置の容量が大きくならざるを得ないという
問題点があった。また、誘導電動機側においては、回転
子の過熱の可能性があるとともに、例えば、電動機を高
速で回転させる場合には、ヒステリシス損やうず電流損
が大きくなり、場合によっては、電動機の過熱による損
傷を生ずる場合もある。
【0011】本発明の第1の目的は、前記従来技術の問
題点を解決し、速度センサ及び電圧センサを用いず、電
流センサのみによる簡単なシステム構成で、しかも、A
SR,ACRを不要として、制御構成及び演算の簡素化
を図り、取扱いが簡単で回転速度,電流を安定かつ、高
精度に制御することができる電動機の速度制御方法及び
装置を提供することにある。
【0012】本発明の第2の目的は、前述した従来技術
の問題点を解決し、電動機の低速運転領域から高速運転
領域にわたって、電動機内で発生する全損失が最小とな
るような理想的な誘導電動機駆動制御方法及び装置を提
供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、前記第
1の目的は、周波数変換器であるインバータの出力周波
数の指令値及び電動機の一次電流のトルク電流成分に基
づいて、出力電圧の振幅値と内部相差角を制御し、ま
た、前記トルク電流成分の不完全微分あるいは微分値に
応じてインバータの出力周波数及び出力電圧を修正する
ことにより達成される。
【0014】本発明によれば、前記第2の目的は、誘導
電動機の負荷トルクに対応した成分と、インバータ装置
の出力周波数とにより、誘導電動機の全損失が最小とな
るように、誘導電動機の励磁電流成分を制御することに
より達成される。
【0015】
【作用】前記第1の目的に関連し、電圧の振幅値と内部
相差角を制御することにより、負荷変動に伴う電動機の
磁束の変動を起すことなく常に一定の制御を行うことが
可能となる。これにより、従来のv/f制御において問
題のあったトルク変化時や低周波運転時においても、常
にトルク/電流の低下がなく、充分なトルクを安定に得
ることができる。さらに、トルク電流成分の変化分に応
じて電動機の周波数及び電圧を補償制御しているため、
急峻な速度指令の変化や負荷トルク変動に伴う電動機電
流の脈動や過大を防止して、回転速度を高精度に制御す
ることができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明による電動機の速度制御方法の
実施例を図面により詳細に説明する。なお、以下の説明
において、図面を通じ、同様な部材には同様な参照符号
を付し必要のない限りくり返して説明しない。
【0017】図1は本発明の方法を適用した制御システ
ムの基本構成を示すブロツク図、図2,図3,図4,図
7,図8は本発明の原理を説明する図、図10は図1の
システムの一部分のmodificationを示す図、図5,図
6,図9は図4の実施例の制御特性を説明する図、図1
1は電動機の電流特性を説明する図である。
【0018】図1は本発明の方法を適用した誘導電動機
のベクトル制御システムのブロック図である。なお、制
御演算はマイクロプロセッサにより行っても良いが、こ
こでは説明上ブロック図で記載している。
【0019】ベクトル制御は、周波数変換器(インバー
タ装置)によって誘導電動機の回転速度及びトルクを高
速応答,高精度に制御する1つの方法である。これは電
動機の一次電流を励磁電流(磁束を発生するための磁化
電流I1d)と二次電流(トルク発生に寄与するトルク電
流I1q)とに分けて制御し、二次鎖交磁束とトルク電流
が直交するように制御する。
【0020】図1において、1は電圧形PWMインバー
タ、2は誘導電動機、3は積分器、4は電流検出器、5
は周波数制御部、6は電圧指令演算部、7は3相電圧指
令部である。
【0021】本発明の制御方法を適用した制御システム
の一実施例は、電圧指令信号V*u−V*wによって制御さ
れる電圧形インバータ1と、該電圧形インバータ1を制
御する制御装置により構成され、被制御対象である誘導
電動機2が、電圧形インバータ1の出力により駆動され
る。制御装置は、一次周波数指令ω*1を積分して位相基
準信号θ* を生成する積分器3と、この位相基準信号θ
* を基準として電動機一次電流のトルク電流成分I1q
検出する電流検出器4と、このトルク電流成分I1qによ
り一次周波数指令信号ω*1を制御する周波数制御部5
と、トルク電流成分I1q,一次周波数指令信号ω*1及び
誘導電動機2の電気定数に基づいて電圧ベクトルの振幅
値V*1a と内部相差角δ* (一次電圧と誘導起電力との
位相角)とを演算する電圧指令演算部6と、電圧ベクト
ルの振幅値V*1a,内部相差角δ*,位相基準信号θ* に
基づいて、三相の出力電圧基準信号V*u〜V*wを演算す
る三相電圧指令部とにより構成されている。
【0022】周波数制御部5及び電圧指令演算部6の詳
細な構成は、制御原理と合わせて後述することとし、次
に、図2及び図3により基本的な原理と基本動作を説明
する。
【0023】図2は誘導電動機2の等価回路を示してお
り、図3はこの等価回路に基づいて表わしたベクトル図
で、図3におけるd−q軸は、同期速度ω1 で回転する
直交座標である。電圧ベクトルV1 は、誘導起電力E′
1 と電動機の内部インピーダンス降下〔(r1+jω1
Lσ)・I1〕の和で与えられ、電圧ベクトルV1と誘導
起電力E′1 との間には内部インピーダンス降下に応じ
た内部相差角δを有する。そこで、電圧ベクトルV1
振幅値V1a及び内部相差角δの各指令値(V*1a,δ*)
は、後述する関係式に従い、誘導起電力E′1 の指令値
及び内部インピーダンス降下の推定値に基づいて演算さ
れる。さらに、この指令値から数1に従い三相の電圧指
令信号(V*u,V*v,V*w)が演算される。各電圧指令
信号は、互いに120度ずつ位相が異なるのみであるか
ら、例えば、U相の電圧指令信号V*uは、数1で示され
る。
【0024】
【数1】 V*u=−V*1a sin(θ*+δ*) …(数1) 電圧形PWMインバータ1は、正弦波の電圧指令V*u
V*v,V*wと搬送波信号とを比較して得られるパルス幅
変調信号に従い、各相の出力電圧を制御し、その基本波
成分瞬時値をそれらの電圧指令に比例して制御するた
め、電圧ベクトルV1 は、その振幅値V*1a ,内部相差
角δ* 及び位相基準信号θ* に応じて制御される。も
し、推定された内部インピーダンス降下が実際値と一致
していれば、誘導起電力E′1 の大きさは、前述したそ
の指令値に一致し、その向きはq軸と一致する。この条
件において、図1における積分器3から得られる位相基
準信号θ* は、磁束ベクトル(誘導起電力E′1 に直
交)の固定子U相軸から回転角θを表わすものとなる。
【0025】前述したように、誘導起電力E′1 の向き
がq軸に一致する条件においては、図1に示す電流検出
器4において数2に従って演算検出される各軸電流成分
1d,I1qは、夫々、励磁電流I′0 及び二次電流I′
2 に一致する。
【0026】
【数2】
【0027】数2において、iu−iwは電動機一次電流
である。
【0028】ここで、すべり周波数ωS は、二次電流
I′2 に比例することから、二次電流I′2 の検出値I
1qよりすべり周波数ωS を推定することができ、従っ
て、周波数制御部5における係数器は、すべり係数KS
をトルク電流成分I1qに乗ずることにより、すべり周波
数推定値ωS を演算することができる。これにより、周
波数制御部5は、周波数指令ω*rとすべり周波数ωS
の加算値を求めて一次周波数指令ω*1を制御し、電動機
の実際の回転速度ωr をその指令値ω*rと一致させるよ
うに制御することができる。
【0029】次に、電圧指令演算部6の詳細な構成と動
作について説明する。図3に示すベクトル図において、
電圧ベクトルV1 の振幅器V1aと内部相差角δとは、電
動機の電流成分I1d,I1q及び電動機定数に基づいて、
次式により示される。
【0030】
【数3】
【0031】
【数4】 V1a=(E′1+ω1・Lσ・I1d+r1・I1q)cosδ −(r1・I1d−ω1・Lσ・I1q)sinδ …(数4) ここで、E′1=ω1・M′・I1d=ω1φ2d φ2d:二次磁束鎖交数、M′:相互インダクタンス Lσ:漏れインダクタンス 電圧指令演算部6は、この数3及び数4に従い、
E′1,I1d,I1q の指令値あるいは実際値及び電動機
定数(r1,Lσ)に基づいて、V1a及びδの指令値を演
算し、これらを制御すれば、結果としてE′1 を負荷に
無関係に一定に、すなわち磁束φ2dを常に一定に制御す
ることができる(ベクトル制御条件の成立)。しかし、
数3,数4によれば、電圧指令演算部6で行うべき演算
は、ω1,I1d,I1q等の制御変数同志の乗除算が多く複
雑となる。そこで、本発明においては、V1a及びδの演
算を次に説明する原理に基づいて簡単化している。
【0032】δの演算 図4のベクトル図に示すように、一次電圧ベクトルV1
は、誘導起電力E′1に漏れインダクタンス降下(ω1
Lσ・I1)と一次電圧降下(r1・I1)とをベクトル
的に加算したものである。従って、E′1 にω1・Lσ
・I1のみを加算した電圧をE1して、E′1とE1 との
相差角をδl とし、V1 とE1 のなす角をδ′rとすれ
ば、内部相差角δは、
【0033】
【数5】 δ=δl−δ′r …(数5) と表わされる。ここで、漏れインダクタンス降下は、一
般にE′1 に比較しその比が0.2 程度と小さく、その
結果、δ′rは、E′1にr1・I1のみを加算した電圧E
1rとE′1 との相差角δr と略一致する。さらに、r1
・I1≪E′1 であるような高周波運転時においては、
図4に示すようにδ′r は小さく、δに関係する量が小
さい。それゆえ、全周波数範囲に亘り、δr をδ′r
みなしてもδを演算する上で大きな誤差を生じることは
ない。従って、内部相差角δは、次式に従って簡略化し
て演算することができる。
【0034】
【数6】 δ=δl−δr …(数6) ここで、
【0035】
【数7】
【0036】で表わすことができる。この式においてK
l は、インダクタンス比〔Lσ/(l1+M)〕であり、
この値は、電動機が異なっても通常0.1 程度でほぼ一
定であり、Mの値が既知でない場合にもδを演算するこ
とができる。
【0037】さらに、δl ≪1であることから、δ
l は、
【0038】
【数8】 δl≒Kl・I1q/I1d …(数8) として簡略演算することができる。
【0039】一方、δr は、
【0040】
【数9】
【0041】として表わすことができる。ここで、誘導
起電力E′1(=ω1・φ2d)は、一次誘導起電力E1(=
ω1・φ1)に略等しく、従って、次式によりφ2dを求
め、これによりE′1 を設定することができる。
【0042】
【数10】 φ2d≒φ1=E10/ω10 …(数10) ここに、φ1 :一次磁束鎖交数、E10:定格誘導起電
力、ω10:定格角周波数である。
【0043】1aの演算 一次電圧ベクトルV1 の振幅値V1aは、前述の数6によ
るδの演算結果を用いて、数4により演算することがで
きるが、ω1 が大きい場合には、数4において第1項≫
第2項となり、第2項を無視することができる。また、
ω1 が小さい場合には、数4の第2項における漏れイン
ダクタンス降下は、抵抗降下に比較して小さいことか
ら、V1aは、次式に従い簡略化して演算することができ
る。
【0044】
【数11】 V1a≒(ω1φ1+r1・I1q)cosδ−r1・I1d sinδ …(数11) 図5(a),(b)は、それぞれω1 及びI1qに対するV
1a及びδの演算結果を示したものであり、破線は、前述
した数3,数4による厳密な演算式に従い計算した値
を、実線は、数6,数11の簡略化した演算式に従い計
算した値を示す。図5(a)においては、I1qが大きく
なると、実線で示した簡略演算値は、破線で示した厳密
演算値に比較してV1aの値に誤差を生じるが、定格負荷
時においても、この誤差は−1.1% と小さく問題とな
らない。なお、無負荷時、すなわち、I1q=0において
は、全く誤差は生じない。また、図5(b)におけるδ
の演算では、ω1 が小,I1qが大の条件で誤差を生じて
いるが、この誤差は、後述するようにトルクに対する制
御精度への影響が小さく問題はない。
【0045】前述したことから、図1に示す電圧指令演
算部6は、δの演算を前述の数6,数8,数9に従って
行い、V1aの演算を数11に従って行うように構成すれ
ばよいことになる。図1に示す電圧指令演算部6におい
て、I1dの指令値I*1d に関する演算項は予め係数とし
て設定することができる。また、δr の演算では除算を
避けるため、変数xの逆数1/xを変数とするtan-1(1
/x)の関数テーブルを用いて構成されており、これに
より、極力変数同志の乗除算を用いない構成として、演
算の簡素化を図っている。
【0046】図6は前述の簡略化した電圧指令演算方式
におけるトルク制御特性を示している。同図におけるト
ルク精度は、発生トルクτe /トルク電流I1qの基準値
に対する変動割合である。同図から理解できるように、
高速度運転に比較して低速度運転時のトルク精度が劣る
が、その変動は0.5 %以内と小さく、このことから、図
1に示す実施例のような簡略式による電圧指令演算によ
る電圧制御によっても、充分な制御特性が得られること
がわかる。
【0047】次に、図1に示す周波数制御部5の詳細な
構成及びその動作について説明する。前述したように、
電動機の入力電圧V1 の大きさと位相を制御して、誘導
起電力(磁束)が電流により変動しない条件で制御する
場合、電動機の等価回路は、図7の鎖線内に示すように
表わすことができる。すなわち、この等価回路は、周波
数ω*1 を制御することにより、すべり周波数ωS =ω*
1−ωrが変化し、それに応じてトルク電流I1qが変化
し、これにより、電動機の発生トルクτe が変化して回
転速度ωr が変わることを表わしている。ところで特願
昭61−231889号公報に述べられているI1qに応じた周波
数制御法は、図8(a)に示すように、比例−積分(P
−I)補償の速度調節器(ASR)て電流調節器(AC
R)を備え、I1q及び速度指令ω*rに基づいて一次周波
数指令値ω*1を演算し、インバータの出力周波数を制御
しているが、これらASR,ACRにおける制御定数の
設定や調整が複雑であることから、制御機能を低下させ
ることなく、構成の簡単化を図っている。図8(b)〜
(d)は、構成の簡単化のためのASR,ACRの省略
化に際しての変換の経過を示すものである。図8(b)
は、ASRをP補償とし、ACRについては図のイ部を
省略しI−P補償としたものを表わしている。図8
(c)は、さらに、ASR,ACRとを一体化し、ま
た、P補償としたことによるASRのオフセットをロ部
に示す係数により補償したものである。図8(c)をさ
らに整理すれば、図8(d)に示すように簡素化され
る。いま、図8(d)において、I1qからω*1までの伝
達関数は次式で表わすことができる。
【0048】
【数12】
【0049】但し、KC はACRの比例ゲイン、Td
ASR,ACRの定数から成る時定数で、Td=1/KA
・KC、KAはASRの比例ゲイン、KS はすべり係数で
ある。
【0050】この数12において、第1項の一次遅れ要
素は、省略(Td=0)しても特性上の差異は殆ど無いた
め、これを省略することができる。これを省略すると、
前記数12の伝達関数は、
【0051】
【数13】
【0052】と表わされる。この数13における第1項
は、電動機のすべりによる速度変動を補償するためのす
べり補償項、また、第2項は、トルク急変時及び速度指
令変更時に電流の過渡状態におけるオーバシュートや振
動を防止するための電流ダンピング制御(以下CDCと
いう)に関係した項であり、この項は、数13から明ら
かなように不完全微分の形である。
【0053】図1に示す本発明の実施例における周波数
制御部5は、この数13に従った演算を実行するように
構成されている。周波数制御部5内の2点鎖線で囲まれ
た部分は、前述の不完全微分で構成された電流ダンピン
グ制御回路であり、I1qを入力としてその変化分に相当
した値Δωを演算している。この値ΔωとI1qにすべり
係数KS を乗じたすべり周波数ωS は、夫々負極性及び
正極性で速度指令ω*rを加算され、一次周波数指令ω*1
が出力される。なお、図10の周波数制御部5内に示さ
れる電流リミッタ51は、I1qを入力として、その出力
がω*1に負極性で加算される。
【0054】次に、この周波数制御部の動作を説明す
る。前述した電圧指令演算部6による本発明の電圧制御
により、一次電流のトルク電流成分の検出値I1qは、誘
導電動機のすべり周波数に比例することになるので、I
1qに比例係数KS を乗じるとすべり周波数ωS を演算す
ることができる。従って、負荷や速度が急峻に変化しな
い定常状態では、一次周波数指令ω*1は、ω*r+ωS
制御されることになり、負荷が変動しても、電動機の回
転速度ωr は、その指令値ω*rに一致して制御される。
【0055】一方、負荷や速度が急峻に変化する過渡状
態においては、例えば、図9に実線で示すように、速度
指令ω*rにステップ指令が与えられた場合、すべり周波
数が増加するためI1qは増加するが、このとき、電流ダ
ンピング制御(CDC)が働き、KC 及びTd を定数と
するI1qの不完全微分値Δωが速度指令ω*rに負極性で
加算されるので、一次周波数指令ω*1 の増加率は下
り、I1qの急峻な増加を防止できる。
【0056】また、過負荷時には、電流リミッタ51が
動作し、I1qがリミッタ51の設定値より大きくなる
と、I1qに所定の係数を乗じ、その出力値でω*1を低下
させることにより、すべり周波数を適正値に制御し、電
動機の過電流を防止することができる。
【0057】いま、電流ダンピング係数KC を零に、す
なわち、CDCを行わないようにすると、電動機の制御
特性は、図9の破線で示すようになり、速度指令のステ
ップ変化に対して、回転速度ωr やトルク電流成分に脈
動を生じる。この脈動は、図7に示す電動機の等価回路
において、一次周波数指令ω*1から回転速度ωr までの
伝達関数が、電動機の漏れインダクタンスによる時定数
Tσの一次遅れ要素及び機械系の慣性モーメントJに関
する積分要素によって、系が二次系となるために発生す
る。本発明によるCDCは、不完全微分を構成して、速
度や電流を不安定にする慣性モーメントに関する前述の
積分要素の影響を緩和し、系の安定性を保持する作用を
有する。
【0058】また、CDCは、以下の作用をも有する。
すなわち、図14の周波数制御部5は、すべり周波数の
演算値ωS を正極性でω*1に加算してすべりを補正して
いるが、このため、負荷増加時において、I1qの増加に
よりω*1が増加し、すべり補正を行わない場合に比べて
すべりが過大となり易く、過電流を発生し易い。しか
し、CDCがあることにより、周波数制御部5は、I1q
の変化分に応じたΔωの値をω*1より減算して、すべり
を適正値に制御するため、この問題を解決することがで
きる。
【0059】なお、数13は図10の回路でも実現で
き、数13の第1項,第2項は図10のC部,B部にそ
れぞれ相当する。
【0060】図1の実施例によれば、電流センサのみを
用いてトルク電流成分の検出値I1qを得、この値と一次
周波数指令ω*1に基づいて、電動機電圧の大きさと位相
を制御することにより、電動機磁束を一定に制御でき、
さらに、電流ダンピング制御により、ASR,ACRを
用いることなく、回転速度や電流を安定に制御できると
いう効果を奏することができる。
【0061】なお、図1の実施例は、トルク電流成分検
出値I1qに基づいて制御演算を行っているが、制御精度
がさほど要求されない場合には、一次電流I1qの大きさ
に基づいて制御を行ってもよい。すなわち、図11に示
すように負荷トルクが大きい領域では、I1qは、I1
漸近する特性を示すため、I1に基づいた制御も可能で
ある。また、電動機の励磁電流I*1dが一定であれば、
1q=√(I2 1−I*2 1d)によりI1qを演算してもよく、
そのときのI1qの極性(力行,回生)は、インバータ1
の直流電流の極性等から判別することができる。
【0062】また、図1の実施例は、電流ダンピング制
御の不完全微分で構成したが、この制御を微分で構成し
ても同様なダンピング効果を得ることができる。さら
に、この不完全微分は、マイコンによるディジタル演算
を用いる場合、サンプル周期毎にI1qの差分を演算する
ことにより簡単に構成することができる。
【0063】次に、本発明の他の実施例を説明する。図
12は本発明の方法を適用した制御システムの別の実施
例を示すブロック図である。同図に示す実施例は、前述
した図1に示す実施例の構成に加えて、電動機一次電流
よりI1qを検出する検出器4において、数2に従って励
磁電流成分I1dも検出し、このI1dが指令値I*1d と一
致するように電流調節器8の出力を、δ* と係数器9を
介して電圧指令V*1aに加算する方式である。
【0064】この実施例によれば、速度や負荷が過渡的
に変動するような条件の場合においても、常にI1d
指令値通りに保持することができ、磁束を常に一定に制
御することができるので、その制御特性を、図1に示す
実施例よりさらに向上させることが可能である。
【0065】前述の図12に示す実施例において、I1d
の変動に応じて電圧指令演算部6のI*1d を修正するよ
うにしても、同様な効果を奏することができる。
【0066】図13は本発明の方法を適用した制御シス
テムのさらに別の実施例を示すブロック図である。同図
に示す実施例は、電圧指令演算部6における電圧指令演
算方式をさらに簡単化したものである。すなわち、この
実施例は、電圧振幅指令値V1aを、誘導起電力E1(=ω
1・φ1)と、電動機一次電流絶対値検出器10の検出値
|I1|に比例係数器11のゲインK1を乗じた値とを加
算することによって得るよう構成され、また、関数器1
2に前述した数3に従い、I1q=0(無負荷)の条件で、
ω*1を変数とした内部相差角の関数のカーブを予めテー
ブル化して格納しておき、この関数器12の出力δ
0 を、この出力δ0及び|I1|に応じて変化する比例係
数器13のゲインK2 で補正し、δ* を演算すように構
成される。また、周波数制御部5において、すべて周波
数演算に必要とするトルク電流成分は、演算器14によ
り、I1q=√(|I12−I*1d 2)の演算を行って検出
される。
【0067】この図13に示す実施例によれば、さら
に、電圧指令演算の簡単化を図ることができ、しかも前
述の2つの実施例の場合と同様な制御性能を得ることが
できるという効果を奏する。
【0068】前述の図13に示した実施例は、関数器1
2の設定を数3に基づいて行ったが、本発明は、制御要
求精度が低くてよい場合、低速度域においてのみ内部相
差角制御を行う構成としてもよい。
【0069】また、以上述べた本発明の実施例は、全て
電動機の力行運転時における制御として説明したが、本
発明は、回生運転時における制御にもそのまま適用する
ことができる。但し図13のものにおいては、PWMイ
ンバータの直流出力電流の符号等により回生運転である
ことを判別し、V*1a 及びδ* に加算する補正信号の符
号及びI1qの符号を変えればよい。
【0070】以上説明したように、上記の実施例によれ
ば、速度センサや電圧センサを用いず、電流センサのみ
を用いた簡単なシステム構成により電動機の制御がで
き、その上、ASRやACRを用いないため制御装置の
取扱いが簡単になるとともに、それらを用いないにもか
かわらず、回転速度や電流を高精度に制御できるという
効果を奏することができる。
【0071】更に、上記実施例によれば、ベクトル制御
における電圧制御部の電圧指令演算の簡素化を図ること
ができるので、演算に要す時間の短縮で、マイコンの負
担が軽減でき、低処理速度の低コストマイコンが適用で
きるという効果がある。また制御特性を劣化することな
く演算式の近似化を図ったことで、電動機定数の設定に
伴う煩雑さが解消できベクトル制御の適用範囲を拡げる
という効果がある。
【0072】図1〜図13に言及して説明した本発明の
制御方法は速度検出器を用いた制御システムにも適用で
きる。図14は本発明の方法を速度検出器を用いる電圧
制御形ベクトル制御インバータに適用した場合の回路構
成のブロック図である。
【0073】図14において、電力変換器であるパルス
幅変調方式インバータ(PWMINV)1は3相出力電圧指令
信号V*u−V*wに基づいて誘導電動機(IM)2に交流電
圧を供給する。実回転速度ωr はIMに直結された速度
検出器93より検出される。速度調節器(ASR)40に
おいて速度指令値ω*rと実回転速度ωr が突き合わさ
れ、トルク電流指令I*1q が出力される。すべり周波数
推定値ωS がすべり演算器50によりI*1q に応じて演
算され、推定値ωSと速度検出値ωrの和より一次周波数
ω*1を制御する。このω*1に基づいて積分器3は位相基
準信号θ* を出力する。6は電圧指令演算部で数6,数
8,数9,数11に従い変数ω*1,I*1qに応じて相電圧
の振幅値及び内部相差角の指令値V*1,δ* を演算す
る。ここで101〜103はsin,cos及び変数xの逆数
でテーブル化したtan-1(1/x)の関数器、104は乗
算器、105〜109は係数器である。係数器の係数は
制御対象の電動機の定数に基づいて設定するが、ここで
φ1 はインバータの出力電圧/周波数(v/f)の比で
決まる値である。また、励磁電流I1dの変動はないもの
として、その指令値I*1d はあらかじめ105,10
8,109の係数器に設定する。
【0074】3相出力電圧指令演算器7はθ* とδ* を
加算したθ*+δ*及びV*1a より3相出力電圧指令信号
V*u,V*v,V*wを次式に従い演算し、この信号に基づ
いてPWMインバータ1の出力電圧を制御する。
【0075】
【数14】
【0076】図14に示した電圧制御方式におけるトル
ク制御特性は図6と類似である。
【0077】図15は本発明の応用例を示す。同図は本
発明を同期電動機20の制御に用いた場合で、21は位
置検出器、22は回転速度演算器で位置検出信号θを微
分することで、回転速度ωr を検出する。6Aは電圧指
令の振幅値V*1a の演算器で上述した数4あるいは数1
1に従って演算する。6Bは内部相差角δ* の演算器で
上述した数3あるいは数6に従って演算する。なお、上
式における漏れインダクタンスに相当する定数は同期電
動機の同期インダクタンスに変更して与え演算する必要
がある。
【0078】本実施例によっても同期電動機のベクトル
制御が可能であり、前記図1の実施例と同様の効果が得
られる。
【0079】電動機定数の変動、特に、電動機の温度変
化等に起因する一次抵抗の変動によってその制御性は劣
化する。特に、低周波数運転においては、電動機の誘導
起電力に対して、一次抵抗降下の割合が増大し、制御特
性への影響が大きい。
【0080】従って、電動機特性の変動による影響を補
償してやれば、広い速度範囲にわたり、速度及びトルク
の更に高精度な制御が可能となる。具体的には、電動機
電流のd軸成分(励磁電流成分)を検出し、その基準値
からの変動に基づいて、電動機の一次抵抗降下及び漏れ
リアクタンス降下を同定し、これにより周波数変換装置
の出力電圧の大きさと位相を修正すれば良い。
【0081】すなわち、電動機の一次抵抗降下及び漏れ
リアクタンス降下の同定信号に基づいて、電動機を駆動
制御する周波数変換装置の出力電圧を修正することによ
り、電動機の一次抵抗及び漏れインダクタンスの変動の
影響を補償することが可能となり、制御精度の劣化のな
い高精度の電動機制御を行うことが可能となる。
【0082】以下、本発明によるこの誘導電動機の速度
制御方法の実施例を図面により詳細に説明する。
【0083】図16は本発明の上記同定schemeが付加さ
れた一実施例の構成を示すブロック図、図17は図16
における同定器の構成を示すブロック図である。
【0084】図16において、電圧形PWM制御インバ
ータ1は、誘導電動機2を駆動制御し、電圧指令V*u
V*v,V*wに比例して、その出力電圧の基本波成分の瞬
時値が制御される。位相角演算器(積分器)3は、周波
数指令ω**1 を積分し回転磁界座標の位相角度θ* を演
算出力し、座標変換器(電流検出器)4′は、電動機電
流iu,iv,iwを前記位相角度θ*を用いて、回転磁界
座標量のd軸成分である励磁電流成分i1dとq軸成分で
ある電流成分i1qとに変換する。すべり演算器50は、
前述のトルク電流成分i1qから電動機のすべり周波数ω
S を推定する演算を行い、減算器206は、周波数指令
ω**1 と推定された電動機のすべり周波数ωS とから、
電動機の回転速度の推定値ωr を求める。速度調節器
(ASR)207は、速度指令ω*rと前記回転速度の推
定値ωr の偏差を増幅し、q軸電流指令すなわちトルク
電流指令i*1q を演算出力し、電流調整器(ACR)2
08は、この電流指令i*1q と、トルク電流成分i1q
の偏差を増幅し、周波数指令ω*1を出力する。微分器2
19は、トルク電流成分i1qを微分し、その出力を周波
数指令ω*1に減算することにより、過渡時における電動
機磁束の変動を防止する。係数器210〜212は、電
動機2の抵抗とインダクタンス値を設定するものであ
り、係数器210,212からは一次抵抗降下(基準
値)に比例した量が、また、係数器211からは漏れリ
アクタンス降下(基準値)に比例した量が出力される。
また、乗算器213は、係数器211の出力に周波数指
令ω*1を乗算した値を出力し、乗算器214は誘導起電
力指令値を出力する。同定器215は、一次抵抗降下及
び漏れリアクタンス降下の変動分を同定する。加算器2
16は、係数器210,乗算器213及び同定器215
の出力信号を加算して、d軸電圧指令V*1d を演算出力
し、加算器217は、係数器212,乗算器214及び
同定器215の出力信号を加算して、q軸電圧指令V*
1q を演算出力する。座標変換器(3相電圧指令演算
器)7′は、前記d軸電圧指令V*1d ,q軸電圧指令V
*1q 及び位相角度θ* を用いて、固定子座標量を演算
し、3相電圧指令V*u,V*v,V*wを出力する。
【0085】同定器215の構成を示す図17におい
て、減算器151は、励磁電流の指令値i*1d と検出値
1dとの差を演算出力する。状態判別器152は、周波
数指令ω*1が所定値以下あるいはq軸電流i1qが所定値
以下の場合に「H」信号を出力して、スイッチ153を
「閉」に制御し、逆に、周波数指令ω*1が所定値以上で
かつq軸電流i1qが所定値以上の場合に「L」信号を出
力して、スイッチ154を「閉」に制御する。積分器1
55は、スイッチ153が「閉」のときに、減算器15
1の出力を積分し、一次抵抗の変動分Δr1 に相当する
信号を演算出力し、スイッチ153が「開」のときに
は、スイッチ153が「閉」の間に演算した信号Δr1
を保持する。積分器156は、スイッチ154が「閉」
のときに、減算器151の出力の極性反転信号を積分
し、電動機1の巻線の漏れインダクタンスの変動分Δ
(l1+l2′)に相当する信号を演算出力し、スイッチ1
54が「開」のときには、スイッチ154が「閉」の間
に演算した信号を保持する。乗算器157,158は、
一次抵抗の変動分Δr1と励磁電流成分i1dあるいはト
ルク電流成分i1qとを乗算し、d軸及びq軸の抵抗降下
の変動分を演算する。また、乗算器160,161は、
積分器156の出力である漏れインダクタンスの変動分
に乗算器159により周波数指令ω*1を乗算した信号で
あるΔ(l1+l2′)ω*1と、励磁電流成分i1dあるいは
トルク電流成分i1qとを乗算し、d軸及びq軸のリアク
タンス降下の変動分を演算する。加算器162,163
は、前述の抵抗降下の変動分及びリアクタンス降下の変
動分を加算し、漏れインピーダンス降下の変動分の同定
信号を出力する。
【0086】前述したように構成された本発明の図1
6,図17の実施例の動作を次に説明する。座標変換器
7′に対するインバータ出力電圧指令値V*1d,V*
1qは、前述した制御構成により次式に従って演算され
る。
【0087】
【数15】
【0088】数15において、r*11,ω*1(l*1+l
*2′)i1は一次抵抗降下及び漏れリアクタンス降下の推
定値、ω*1φ1dは誘導起電力の指令値、ΔVd,ΔV
qは、同定器215の出力値であり、係数器210〜2
12の設定値が電動機1の電気定数に一致し、また、φ
*1d=(M+l1)i*1d の関係にφ*1d及びi*1dが設定さ
れていれば、その出力値ΔVd,ΔVqは、定常時におい
て零となる。
【0089】前述のようにして演算された出力電圧指令
値V*1d,V*1qは、座標変換器7′において、3相電圧
指令V*u,V*v,V*wに変換される。この3相電圧指令
は、120度ずつ位相が異なるのであるから、代表して
U相指令V*uについていえば次に示す数16により算出
することができる。
【0090】
【数16】
【0091】電圧形PWMインバータ1においては、正
弦波の電圧指令V*u,V*v,V*wと搬送波信号とを比較
して得られるパルス幅変調信号に従い、各相の出力電圧
が制御されるので、その基本波成分瞬時値は、これらの
電圧指令に比例して制御される。その結果、インバータ
1の出力電圧ベクトルは、d軸及びq軸の出力電圧指令
値V*1d,V*1q及び位相角度θ* に応じて制御されるこ
とになる。このとき、係数器210〜212等を用いて
推定された漏れインピーダンス降下が、実際値と一致し
ていれば、誘導電動機2の誘導起電力の大きさは、この
指令値(=ω*1φ*1d)に一致する。この条件において、
位相角演算器(積分器)3から出力される位相角度θ*
は、電動機磁束ベクトルの固定子U相軸からの回転角θ
を表わすものとなる。このとき、座標変換器4′におい
て、電動機電流iu,iv,iw から数2に従い演算検出さ
れるd軸電流成分i1d,q軸電流成分i1qは、夫々、誘
導電動機2の励磁電流及びトルク電流と比例する。
【0092】前述したように、q軸電流成分i1qは、電
動機トルク電流に比例するので、すべり演算器50は、
このi1qに基づいて電動機のすべり周波数ωS を推定す
ることができ、さらに、減算器206において、インバ
ータ周波数指令ω**1 から前記推定されたすべり周波数
ωS を減算することにより、電動機の回転速度を推定値
ωr として推定することができる。速度調節器207
は、速度指令値ω*rと推定値ωr の速度偏差値(ω*r
ωr)に応じて電流指令i*1qを出力し、さらに、電流調
節器208は、この電流指令i*1qとq軸電流成分i1q
との電流偏差(i*1q−i1q)に応じて周波数指令ω*1
を出力する。誘導電動機2のすべり周波数は、この周波
数指令ω*1の変化に応じて制御されることになり、座標
変換器4′の出力であるq軸すなわちトルク電流成分i
1qは、前述の電流指令i*1q に一致するように制御され
る。誘導電動機のトルクは、トルク電流成分i1qに比例
するため、前述のような制御により、トルクが速度偏差
に応じて制御できることとなり、回転速度が、速度指令
値に一致するように制御できることになる。
【0093】前述した動作が、本発明の図16に示す実
施例の基本動作であるが、次に、電動機定数が変動した
場合の動作を説明する。
【0094】係数器210〜212に設定される値が、
電動機内部の温度変動等によって、電動機定数の実際値
と一致しなくなった場合、これに基づいて演算される電
動機の一次抵抗降下及び漏れインダクタンス降下の推定
値は、実際値と一致しなくなる。この結果、誘導起電力
の実際値は、その指令値に一致しなくなる。このとき、
電動機磁束が基準値から変動し、ωS /i1qのゲインが
変動するため、すべり演算器50により推定されるすべ
り周波数ωS に誤差を生じ、その結果、回転速度の推定
値ωr にも誤差を生じて、誘導電動機の速度精度が劣化
する。また、磁束変動によりトルク/i1qの値も変動し
て低下する。この傾向は、特に、運転周波数が低く、一
次抵抗降下の影響が大きくなる場合に顕著となる。
【0095】図16に示す本発明の実施例においては、
前述のような影響を、次に説明するようにして防止する
ことができる。
【0096】すなわち、インバータ1の出力電圧は、前
述した数15に従って制御されるが、一方において、電
動機電圧は、定常時においては次に示す数17で示すこ
とができる。
【0097】
【数17】
【0098】但し、φ1d=(M+l1)i1d である。
【0099】インバータ1の出力電圧は、インバータ1
の出力電圧の飽和や非線形歪を無視すれば、電動機電圧
に一致することになり、電動機定数の変動によるd軸
(励磁電流成分)電圧の変動分ΔVd 及びq軸(二次電
流成分)電圧の変動分ΔVq は、次に示す数18により
表わされる。
【0100】
【数18】
【0101】但し、Δr1=r1−r*1 Δ(l1+l2′)=(l1+l2′)−(l*1+l*2′)であ
る。
【0102】すなわち、r1 及びl1+l2′の基準値か
らの変動Δr1,Δ(l1+l2′)に関係して、電圧指令
V*1d,V*1qに対して、ΔVd,ΔVqの補償が必要であ
る。そこで、図16に示す本発明の実施例は、同定器2
15を備え、この同定器215を用いて前述の変動分Δ
d,ΔVqを同定し、その結果を電圧指令V*1d,V*1q
に与えて補償を行っている。この同定器215の動作を
次に説明する。前述の変動分ΔVd を補償しない場合、
座標変換器4′の出力i1dが基準値から変動するため、
逆にその変動からΔVd を推定することが可能である。
しかし、数18に示すように、その変動分には、Δr1
とΔ(l1+l2′)の影響が混在しており、また、夫々
で、ΔVdとΔVqに関係する極性が異なっているため、
抵抗降下とリアクタンス降下とは、分離して同定する必
要がある。
【0103】ところで、数18から理解できるように、
ω1 あるいはi1qが小さい場合には、Δ(l1+l2′)の
影響は小さくΔr1 が支配的である。従って、このよう
な条件においては、i1dの変動は、Δr1 より生じると
みなすことができる。また、逆に、ω1 が大きくかつi
1qが大きい場合には、Δ(l1+l2′)の影響が支配的で
あり、このような条件においては、i1dの変動は、Δ
(l1+l2′)により生じるとみなすことができる。
【0104】そこで、同定器215には、前述の条件を
判別する状態判別器152が設けられている。該状態判
別器152は、前者の条件において、スイッチ153を
閉じ、同定器215は、これにより、積分器155の出
力と、励磁電流成分i1d,トルク電流成分i1qを乗算し
て得られた抵抗降下の同定信号を用いて、d軸電圧指令
V*1d ,q軸電圧指令V*1q を修正し、夫々の電圧の変
動分ΔVd ,ΔVq を補償する。このとき、積分器15
5の出力は、一次抵抗の変動分Δr1 に相当するものと
なっている。次に、後者の条件において、同定器215
は、スイッチ154が状態判別器152により閉じら
れ、積分器156の出力にω*1を乗算し、さらに、
1d,i1qを乗算して得られたリアクタンス降下の同定
信号を用いて、ΔVd,ΔVqを補償する。このとき、積
分器156の出力は、リアクタンスの変動分Δ(l1+l
2′)に相当するものとなっている。前述において、スイ
ッチ153が「開」の場合、積分器155の出力は、ス
イッチ153が「開」となる直前の値を保持しており、
スイッチ154が「開」の場合、積分器156の出力
は、スイッチ154が「開」となる直前の値を保持して
いる。
【0105】前述した本発明の実施例は、前述の条件が
交互に変化する間に、一次抵抗及びリアクタンスの変動
分Δr1,Δ(l1+l2′)を正しく同定することがで
き、これにより、d軸電圧の変動分ΔVd ,q軸電圧の
変動分ΔVq の補償を高精度に行うことが可能となり、
誘導電動機2の誘導起電力(磁束)の変動等の不都合な
く、誘導電動機2を精密に速度制御することができる。
【0106】図18は本発明の別の実施例の構成を示す
ブロック図、図19は同定器の構成を示すブロック図で
ある。図18,図19において、5′は周波数制御部、
21はすべり演算器、22は微分器、6′は電圧指令演
算部、25,30,36は係数器、27,31,34,
37は乗算器、28は係数器、29,33,35は関数
器であり、他の符号は図16,図17の場合と同一であ
る。
【0107】図18に示す実施例において、周波数制御
部5′は、速度指令ω*rと、すべり演算器21の出力
と、トルク電流成分i1qの安定制御のための微分器22
の出力とを加算器23により加算し、周波数指令ω*1
出力する。電圧指令演算部6′は、前記周波数制御部
5′からの周波数指令ω*1及びトルク電流成分i1q等に
基づいて、インバータ出力電圧、すなわち電動機電圧の
絶対値指令V*1a 及び電動機内部相差角指令δ*を演算
出力する。
【0108】なお、図18において、同定器の記載が省
略されているが、図16と同様に、図18に示す実施例
も同定器が備えられており、その出力が乗算器27,3
1,37及び係数器28に印加されている。この実施例
に用いる同定器は、r1 及び(l1+l2′)を同定でき
ればよく、抵抗降下やリアクタンス降下を演算する必要
がないので、図17における乗算器156〜161が不
要となり、図19に示すように構成することができる。
【0109】図18の実施例の動作は、本発明に関係す
る電圧指令演算部についてみれば、図16で示した実施
例と同様である。すなわち、この電圧指令演算部は、前
記図16に示す実施例の演算形式の直交形式を極形式に
変換したものであって、等価なためである。従って、こ
の演算に用いられる定数r1,(l1+l2′)を図19に
示すような同定器を用いて修正すれば、この実施例にお
いても、図16に示す実施例と同様な効果を得ることが
できる。
【0110】なお、誘導電動機の一次抵抗r1 と二次抵
抗r2 は、一般に、一次及び二次巻線が近接して存在す
るため、それらの温度上昇及びそれに伴う抵抗変化は、
略比例関係にある。従って、前述のようにして同定した
Δr1 を用いて、次式によりΔr2 を推定することがで
きる。
【0111】
【数19】 Δr2=Δr1・r*2/r*1 …(数19) 前式において、r*1,r*2は、一次,二次抵抗の基準値
である。前記Δr2 を用いて前述の実施例におけるすべ
り演算器のゲイン(r2 に比例)を修正することによ
り、二次抵抗変化によるすべり周波数の推定誤差及び速
度制御誤差の発生を防止できる。
【0112】また、同定器の出力である一次抵抗の変動
分が所定値以上となった場合に、誘導電動機の過熱,断
線等の異常が生じたと判定することができ、これにより
誘導電動機の保護を行うようにすることができる。
【0113】図20に本発明の他の実施例を示す。1〜
4′は前記実施例と同一物である。周波数制御部5″
は、速度指令ω*rとすべり演算器21の出力、及び電流
1qの安定制御のための微分器22′の出力、さらに、
過負荷時に動作し電動機の過電流を防止するための電流
リミッタ80の出力を加算器23で加算し、周波数指令
ω*1を出力する。電圧指令演算部6″は、ω*1及びi1q
などに基づいてインバータの出力電圧の絶対値指令V*
1a 及び電動機内部相差角指令δ* を演算し出力する。
その演算内容を表現する式を再記すると、次式となる。
【0114】
【数20】
【0115】但し、r1=r*1+Δr11+l2′=(l1*+l2′*)+Δ(l1+l2′) 係数器25は二次鎖交磁束φ*2d とω*1の積を出力し、
加算器26において、係数器61からの出力r11q
乗算器62からの出力ω*1(l1+l2′)i1d が加算さ
れ、V*1の演算式におけるcosδ*の係数が求まる。一
方、係数器64の出力r1i1dと乗算器63の出力ω*1(l
1+l2′)i1qが、減算器65で引かれ、V*1a の演算
式におけるsinδ*の係数が求まる。割算器28では、加
算器26の出力と減算器65の出力の割り算が行われ、
その結果から関数器29は、内部相差角指令δ* を出力
する。
【0116】次に、関数器33及び乗算器34によりV
*1a の右辺第1項が演算され、また関数器35と乗算器
66により同第2項が演算される。そして、加算器38
からV*1a が出力される。以上のV*1a 及びδ* を使っ
て各相の電圧指令が座標変換器7において演算され、イ
ンバータ1の出力電圧が制御される。
【0117】ところで、一次抵抗r1 は、電動機の運転
状態によって変わる電動機内部の温度の影響を大きく受
け、その値は大きく、変動する。この変動によって、電
動機の出力特性、例えばトルク/i1qの値は非常に変化
する。この傾向は、特に運転周波数が低い場合に顕著で
ある。従って、以下の様にして、一次抵抗変動の影響を
除去している。すなわち、低周波検出器70は、周波数
指令ω*1が入力され、その指令値の絶対値が、所定の値
以下の時に動作信号を出力し、その値以上の時には動作
信号を出力しない。スイッチ71は、動作信号が入力し
た時に「閉」の状態となり、減算器73からの出力(i
*1d−i1d)を定数同定器72へ送る。定数同定器72
は、入力信号に基づいて定数変動量Δr1 を同定する
が、入力が無い場合は、値を保持し続ける。同定した値
は係数器61と64に送られ、係数の値が調整される。
なお、すべり演算器21の係数は、二次抵抗値に比例し
ており、また、電動機内部では、一次抵抗と二次抵抗は
ほぼ同様な変化をする。そこで、同定値は、すべり演算
器21にも送られ、係数値の調整に使われる。その際、
係数器75を信号が通り、そこで、一次抵抗変動量Δr
1は二次抵抗変動量Δr2に変換される。
【0118】ところで、高速運転域では、一次抵抗変動
の影響よりは、漏れリアクタンス変動の影響の方が大き
い。しかし、漏れリアクタンス変動が、運転特性に及ぼ
す悪影響は、高速運転域では大きくなく問題にしなくて
も実用上さしつかえない。従って、低速運転時のみ一次
抵抗を修正すれば十分である。
【0119】以上説明したように、図16〜図20の実
施例によれば、誘導電動機の電動機定数の変動の影響を
補償することができ、誘導起動力(磁束)の変動と、そ
れに伴う速度制御精度の劣化やトルク低下を防止するこ
とができる。
【0120】図21の実施例は制御定数の簡便な設定手
段を備えた電動機の制御システムである。同図の制御シ
ステムにおいてはベクトル制御の電圧指令演算部におい
て、電圧指令信号および位相指令信号演算する際、制御
特性に影響を及ぼさない範囲で近似演算して、制御定数
の設定項目を最少化したことについては先に述べた。こ
れらの定数の設定に際しては、電動機容量と極数とに応
じて電動機毎の電動機定数を予め制御装置に記憶してお
く。そしてユーザが使用する際に電動機の銘板から上記
容量と極数とを読み取りそれを制御装置に入力すること
により、最適な制御定数を自動的に設定することができ
る。
【0121】すなわち、図21の実施例制御定数を電動
機の電気定数に応じて設定するための方法において、接
続候補となる種々の電動機の少なくとも電動機容量と極
数とをパラメータとして各電動機の制御定数を予め制御
装置内に記憶し、実際に接続される電動機の電動機容量
と極数とをユーザが制御装置に入力し当該電動機に対応
する制御定数を前記記憶手段から呼び出し設定するよう
にした。
【0122】また、制御対象の電動機は、ベクトル制御
に限る必要はなく、その他の制御法も併用可能である。
その際の制御方法は、ベクトル制御法と他の制御法とを
切換えるステップと、ベクトル制御法を選択したとき
に、接続候補となる種々の電動機の少なくとも電動機の
容量と極数とをパラメータとして各電動機の制御定数を
予め記憶手段に記憶しておき実際に接続される電動機の
電動機容量と極数とをユーザが制御装置に入力し当該モ
ータに対応する制御定数を記憶手段から呼び出し設定す
る手段による設定と他の設定手段による設定と、を切換
えるステップとを設ければ、電動機の使用目的に応じ
て、最適の制御法と制御定数設定方式とを選択できる。
【0123】例えば図22においてベクトル制御からv
/f制御に切換えるにはI1d,I1qの電流フィードバッ
ク及びδの出力を零に設定することにより容易に達成で
きる。
【0124】汎用電動機を広く調査した結果、 A.汎用電動機の制御定数は、電動機容量と極数とによ
りほぼ定まる。
【0125】B.電動機の制御定数は、電動機の製作誤
差等により僅かに変動するが、それらは制御精度に大き
な影響を及ぼす程ではない。
【0126】ことが判明した。
【0127】従って、電動機容量と極数とに対応した電
動機定数を予め制御装置に記憶しておけば、電動機容量
と極数とをパラメータとして入力するだけで制御定数を
自動設定できることになる。
【0128】このようにして、電動機の種類が変わって
も制御定数を簡便かつ正確に設定できる。
【0129】図21において積分器3は、一次周波数指
令ω*1を積分して電圧位相信号θ*を出力する。トルク
電流成分検出器4は、電圧位相信号θ* を基準としてト
ルク電流成分i1qを検出する。すべり周波数演算器50
は、トルク電流成分i1qにすべり係数KS を乗じ、すべ
り周波数推定値ωS を出力する。電圧指令演算器6は推
定値ωS に応じて演算される一次周波数指令ω*1,トル
ク電流成分i1q、および電動機定数設定器88からの電
動機定数に基づいて、電圧ベクトルの大きさV*1a と内
部相差角δ* (一次電圧と誘導起電力との位相差)を演
算する。3相電圧指令演算器7は、電圧ベクトルの大き
さV*1a と内部相差角δ* と電圧位相信号θ* とに基づ
いて、3相出力電圧指令信号V*u,V*v,V*wを演算す
る。一方、電動機定数設定器88は、ユーザが電動機2
の容量P2 および極数Pを図示しない入力手段により入
力すると、その電動機に応じた種々の定数をすべり周波
数演算器50および電圧指令演算器6に出力し設定す
る。
【0130】次に、各演算器の演算を説明する。すべり
周波数演算器50では、すべり周波数ωS を次式により
演算する。
【0131】
【数21】
【0132】 T2 :二次時定数、 KS :1/(T2・I1d) 次に、上記演算器の電動機定数設定について説明する。
電圧指令演算器6の演算は数6,数8,数9,数11に
従ってなされるが、演算時間を短縮するために、励磁電
流I1dには設定値I*1d を使い定数化している。従っ
て、設定に必要な定数は、I*1d,Kl〔=Lσ/(l1
+M)〕,r1,φ1である。まず、一次磁束鎖交数φ1
の設定については、誘導電動機の定格一次端子電圧V10
と定格一次周波数f10から次式で設定される。
【0133】
【数22】
【0134】例えば、電動機定格電圧がV10=200
V,定格周波数がf10=50Hzであれば、φ1=0.3
67Wb・Tとして設定する。
【0135】Klの設定では、Kl=Lσ/(l1+L1)
で演算できるが、電動機の出力容量が異なっても、漏れ
インダクタンス対一次インダクタンスの比Klが5〜1
5%の範囲にあり、また、その範囲であれば制御特性へ
の影響は殆ど問題とならない。そこで、すでに述べたよ
うに、例えば、Kl=0.1 として初期設定する。
【0136】一次抵抗r1 および励磁電流I1dの設定で
は、r1 およびI1dが電動機容量および極数により異な
るため、電動機設定器88により設定する。
【0137】一方、すべり周波数演算器50における定
数設定には、数21から明らかなように、二次時定数T
2 と励磁電流I1dとを要し、これらの定数も電動機に応
じて異なるから、電動機定数設定器88により設定す
る。
【0138】以上の考察により、電動機の機種に応じて
設定すべき定数は、r1,I1d,T2の3種類のみで良い
ことが分かった。これらの定数は電動機の機種により変
化するが、電動機の出力容量P2 と極数Pとが定まれ
ば、メーカを問わず、定数の変動範囲は±20〜30%
以内にあることが、調査の結果判明した。また、この程
度の変動があっても本発明の実施例で示したベクトル制
御方式では、制御精度への影響が小さい。従って、電動
機定数設定器88には、電動機出力容量P2 と極数Pと
に対応させて、定数r1,I1d,T2を予め記憶してお
き、ユーザが使用する電動機の銘板から容量P2 および
極数Pを読み取り、電動機定数設定器88に入力したと
きに、この設定器88は前記設定定数r1,I1d,T2
各演算器に自動設定する。
【0139】上記実施例によれば、ベクトル演算の簡略
化により制御定数の設定項目が最少化され、ベクトル制
御装置の制御定数が、実際に使用される電動機の銘板に
記された容量と極数とを読み取り電動機定数設定器に入
力するだけでよく、制御定数の設定が容易になる。
【0140】本発明の他の実施例を図22に示す。図2
1の実施例の演算では、励磁電流I1dの値として設定値
を用いたが、ここではトルク電流成分検出器4′による
検出値を用いている。すなわち、I1dおよびI1qは電動
機一次電流iu,iv ,iwから数2により演算できる。
これにより、電動機の機種に応じて設定する定数はr1
およびT2 のみで良いことになる。
【0141】本実施例によれば、ベクトル制御定数の設
定個数がさらに減少し、記憶容量の節約となり、しかも
1dの変動誤差による制御精度低下を防止できる。
【0142】本発明のさらに他の実施例を図23に示
す。本実施例は、ベクトル制御法と他の制御法、またベ
クトル制御時に制御定数自動設定と手動設定を、1台の
汎用制御装置で選択できるようにしたものである。
【0143】図21の実施例において、トルク電流検出
器4からの信号I1qを零にすることで、ベクトル制御か
らV/f制御(電圧/周波数一定制御)に切換えられ
る。次に、ベクトル制御を選択した場合、使用する電動
機定数に応じた制御定数を必要とする。その制御定数設
定方式としては、制御対象となる電動機が規格化された
汎用機種であれば、前記電動機定数設定器88による自
動設定とし、専用機種の電動機のように規格外の電動機
では電動機定数の設定値または測定値に基づいて制御定
数を手動設定する。
【0144】このように、制御法と電動機の制御定数の
設定方式とを選択する手段を備えた本実施例では、1種
類の電動機制御装置で、多種類の電動機を多様に制御で
きることになる。
【0145】図21,図22の実施例によれば、ベクト
ル演算の簡略化により、制御定数の設定個数が最少化さ
れ、それらの定数を制御対象の電動機の銘板に表記され
た出力容量と極数のみで容易に設定できる電動機の制御
装置が得られる。
【0146】次に、図24は図1,図18,図20その
他の制御システムに誘導電動機の回転速度や電流のオー
バシュートの発生を抑制する手段を付加した制御システ
ムの構成図である。
【0147】図24の制御システムにつき以下で説明す
る。同図の制御システムにおいては、誘導電動機一次電
流のトルク成分を検出し、その検出値の不完全微分値に
応じてインバータ出力周波数及び出力電圧を制御すると
共に、トルク電流成分及びその不完全微分値より速度の
オーバシュートを検出し、この信号に基づいて不完全微
分を構成する一次遅れ要素の時定数を小さくする。即
ち、誘導電動機一次電流のトルク電流成分検出値I1q
応じてすべりを補償し、また、速度やトルク急変時等の
過渡状態においては、I1qの不完全微分値すなわちI1q
の変化分に応じて周波数と電圧を補償制御して、すべり
を適正に制御するので電流の脈動や過大を防止する。ま
た、I1qの不完全微分値の極性とI1qの個性を照合する
ことで力行及び回生各場合におけるオーバシュートが検
出でき、その検出信号に基づいて不完全微分の時定数を
小さくすると、不完全微分値による周波数及び電圧への
補償量はすみやかに減衰するためオーバシュートが発生
することはない。
【0148】図24中の破線で囲んだ部分は周波数制御
部5′′′である。前記I1qはすべり演算器50及び不
完全微分器52に各々入力され、すべり周波数ωS 及び
1qの変化分Δωを演算する。各出力は加算器53にお
いて速度指令ω*rにωS は加算、Δωは減算され一次周
波数指令ω*1を出力する。また、図中1点鎖線で囲む部
分は速度オーバシュート検出部555で、符号判別器5
4,55にはI1q及びI1qの不完全微分出力値Δωが入
力される。各々の符号信号は排他的論理和器56で論理
演算され、その出力に基づいて不完全微分器52の時定
数Td あるいはゲインKd を変化させる。
【0149】次に図24の制御システムの動作を説明す
る。トルク電流成分の検出値I1qは誘導電動機のすべり
周波数に比例することから、該I1qに比例係数KS を乗
じることですべり周波数ωS は推定できる。従って、負
荷や速度が急峻に変動しない定常状態では、一次周波数
指令ω*1は速度指令ω*r とすべり周波数推定値ωSの和
で制御されるため、負荷が変動しても回転速度ωr はそ
の指令値ω*rに一致して制御される。
【0150】一方、負荷や速度が急峻に変化する過渡状
態では、例えば図25に示すように速度指令ω*rにステ
ップ指令が与えられた場合、すべりの増加によりI1q
増加する。しかし、このときI1qを不完全微分した変化
量Δωがω*rより減算されるため、一次周波数指令ω*1
の増加率は下がり、該ω*1に応じて制御されるインバー
タの出力周波数及び出力電圧増加率が下がることから、
1qは急峻には増加しない。
【0151】これにより、本制御方式は速度推定値及び
電流指令値を演算しないが、上記した電流ダンピング制
御によつてすべりを常に適正に制御することから、AC
Rと同等な機能を有している。
【0152】しかし、制御の応答性を向上させようにし
て上記電流ダンピング制御を強くすると、すなわち不完
全微分の時定数を小さく、ゲインを大きくすると急峻や
速度指令や負荷の変動においては、図26に示すように
1qの不完全微分出力Δωによって一次周波数指令ω*1
が定常値以上となり、回転速度ωr にオーバシュートを
発生させる。しかし、同図I1qとΔωの波形をみるとわ
かるようにω*1のオーバシュート時には両波形の極性は
逆極性となることに気付く、従って両者の極性の符号よ
り判別しオーバシュートが検出できることがわかる。そ
して、その検出信号に基づいて不完全微分(Kd・S/
(1+Td・S)の時定数Td あるいはゲインKd を小さ
くすると、その出力値Δωは急峻に減衰し、ω*1への影
響はなくなり、速度のオーバシュートは抑制できる。
【0153】図27,図28は不完全微分の時定数やゲ
インをオーバシュート検出信号に基づき変化させる具体
的方法を示す。
【0154】図27の実施例は、係数器521,一次遅
れ522及び減算器523からなる不完全微分構成ブロ
ックにおいて、一次遅れ522にフィードバックする係
数器524を設け、この係数KF をオーバシュート検出
信号に基づき変化させようにしたものである。ここで、
定常時ではKF を零とするが、オーバシュート時にはK
F を所定値にする。これにより不完全微分における一次
遅れの時定数は1/(1+KF)倍に減少される。なお、
525は、係数器521の出力から係数器524の出力
を減算し一次遅れ522の入力に入力する減算器であ
る。
【0155】図28の実施例は、係数器521,積分器
526及び減算器523からなる構成において、積分器
の出力その入力にフィードバックする係数器524を設
け、この係数KF を、通常時ではKF =1とし、オーバ
シュート時にはKF を所定値(KF>1)に変更するよう
にしたものである。これにより不完全微分における一次
遅れ時定数は1/KF 倍に減少される。
【0156】なお、上記ではオーバシュート時において
不完全微分の時定数やゲインを変化させたが、図29の
ように不完全微分器52の出力側にスイッチ54を設
け、オーバシュート検出信号に基づいて該スイッチを入
切してもオーバシュートの発生は防止できる。
【0157】以上、図24,図27,図28,図29の
実施例によれば、電動機一次電流のトルク電流成分I1q
の不完全微分値Δωにより、一次周波数指令ω*1を制御
し、すべりを適正に制御することから、急峻な速度や負
荷変動に対しても電流の脈動や過大が防止できる効果が
あり、また速度検出器を用いることなく上記I1q及びΔ
ωに基づいて速度のオーバシュートが検出でき、その検
出信号に基づいて一次周波数ω*1を制御することでオー
バシュートが抑制できるため、回転速度や電流を高安定
かつ高精度に制御できるという効果がある。
【0158】なお、上述の制御システムではI1qの変化
量Δωを不完全微分より求める構成としたが、微分で構
成しても同様な効果は得られることはもちろんである。
【0159】また、上記の制御システムにおいて、回生
は行わず電動運転のみ行う場合では上記I1qの符号判別
器は不要で、Δωの符号判別器のみでオーバシュート検
出は可能である。
【0160】上述してきた本発明の誘導電動機の制御方
法では、電圧制御により一次電圧を操作して電動機をベ
クトル制御する。この方法は、一次電流が変動しても磁
束が変動しないような関係にある一次電圧の指令値を、
速度指令信号ω*rとトルク電流成分検出値I1q及び電動
機の電気定数に基づいて演算し、これに従い出力電圧を
制御するものである。
【0161】この制御方法においては、電流(トルク)
が急峻に変化しない定数状態では指令値に従って安定に
回転速度は制御されるので何等の問題もない。しかし、
過渡時においては、電動機のインダクタンスと一次電流
との影響を受けて磁束が変化するため、電動機の発生ト
ルクが変化し、速度制御が不安定になる可能性がある。
【0162】この対策として、電動機一次電流を検出
し、その励磁電流成分I1dが励磁電流指令値I*1d と一
致するように電圧を制御する方法が考えられる。しか
し、このようなフィードバックループを設けると、ルー
プゲインの設定やオフセットを生じない電流調節器が必
要で、さらにその定数設定が必要なため、制御構成及び
制御設計が複雑になるといった問題が生じる。
【0163】図30の制御システムは、上記したような
電流調節器を用いることなく過渡時の磁束変動を抑制
し、もって高精度・高応答に誘導電動機を制御するシス
テムを示す。
【0164】図30の制御システムに適用した制御方法
のポイントは、誘導電動機に給電される電流の変化量を
検出し、この変化量に応じて周波数変換器の出力電圧の
位相を補正するようにしたところにある。
【0165】ここで、上記給電電流とは、その一次電流
又はトルク成分電流に比例した電流であり、その変化量
は、指令値又は実測値のいずれから求めても良い。
【0166】以下で図30に適用した制御方法の原理に
つき図面を参照して説明する。
【0167】磁束変動、特にそのq軸成分φ2q,トルク
電流成分I1qの変化量に比例することが解った。また、
このトルク電流成分I1qの変化量は、励磁電流成分I1d
が一定であれば、一次電流I1 の変化量に比例する。
【0168】従って、上記トルク電流成分I1q又は一次
電流I1d 等の電動機給電電流の変化量に応じて周波数
変換器の出力電圧位相を補正すれば、q軸成分の磁束φ
2qの発生を抑制することができる。このため、急峻な電
流(トルク)変化時においても磁束変動を抑制すること
ができ、磁束を指令値通りに保持することができるの
で、高精度及び高応答の速度制御が実現できる。
【0169】図32は、図31に示す誘導電動機の等価
回路に基づく電圧と電流及び磁束のベクトル図で、d−
q軸は同期角周波数ω1 で回転する直交座標である。こ
こで電圧ベクトルV1 は誘導起電力E1′と電動機内部
インピーダンス降下(r11+ω1・LσI1)の和で与
えられ、V1とE1′との間には内部インピーダンス降下
に応じた内部相差角δを有する。ここでE1′ のベクト
ルの方向をq軸に一致させると、一次電圧V1 の大きさ
1a及び内部相差角δは、電動機一次電流I1 の成分I
1d,I1q及び電動機定数に基づき前述数3,数4で示さ
れる。
【0170】ここでE1′,I1d,I1q の指令値あるい
は実際値及び電動機定数に基づいてV1a,δの指令値V
*1a,δ*を演算し、それを制御すれば結果としてE1
は電流に無関係に一定、すなわち磁束φ2dは一定に制御
できる。しかし、電流(トルク)が急峻に変化する過渡
時においては漏れインダクタンスLσにより一次電流に
遅れが生じるため、制御上で用いたd−q軸座標に対し
て、実際の座標軸m−t軸は漏れ磁束(q軸磁束Δ
φ2q)に相当した角度分だけずれる。そこで図30のシ
ステムでは、このずれ角Δθを下述の方法で検出し、該
Δθでもって電圧の位相を補正する。
【0171】上記したΔφ2qによる軸ずれ角Δθは以下
のようにして検出できる。いま、誘導電動機の電流及び
磁束を変数にとる状態方程式は次式で与えられる。
【0172】
【数23】
【0173】ここで、P:微分演算子、r2′ :一次換
算二次抵抗、M:相互インダクタンス、L2:二次イン
ダクタンス、T2:二次時定数(L2/r2)、ωr :回
転子角周波数、ωS :すべり角周波数、また、変数(ベ
クトル値)I1 ,φ2 ,v1 を直交d−q軸座標系で表
わすと次式である。
【0174】
【数24】
【0175】インバータにより、電動機一次電圧の各d
−q軸成分v1d,v1qが、指令値に比例して制御される
ことを仮定すると、v1d,v1q
【0176】
【数25】
【0177】であるから、数25を数23に代入し、さ
らに磁束φ2dが一定に制御されると仮定すると、q軸成
分に関しての状態方程式は次式となる。
【0178】
【数26】
【0179】これより、pφ2qをI1qを用いて示せば
【0180】
【数27】
【0181】となり、φ2qはI1qの漏れインダクタンス
降下相当分だけ変動する。そして、φ2qの変動量Δφ2q
をd−q軸差標上における座標軸のずれ角Δθで表わす
と、
【0182】
【数28】
【0183】となる。ここでΔφ2q≪φ2dであるから数
28は
【0184】
【数29】
【0185】となり、ΔθはΔI1qの変化量から検出で
きることがわかる。
【0186】次に、以上の原理に基づく本発明の制御方
法の一実施例を図30より説明する。積分器3により一
次角周波数指令ω*1を積分して得られる位相基準信号θ
* を基準として、電流検出器4により電動機一次電流の
q軸成分(トルク電流成分)を検出し、該I1qに基づい
てすべり演算器50ですべり角周波数ωS を演算し、該
ωS と速度指令ω*rとの加算により一次角周波数ω*1
制御する。一方、電圧指令演算器6は磁束を発生させる
ためのd軸成分(励磁電流)指令値I*1d と上記トルク
電流検出値I1q及びω*1を入力し、前述数3,数4に基
づいて電圧ベクトルの大きさV*1a と内部相差角δ(一
次電圧と誘導起電力との位相差)を演算する。ここで電
圧の位相は、上記位相基準信号θと内部相差角δ* 、及
び、微分器67にトルク電流検出値I*1q を入力し、前
述数29に基づいて演算した軸ずれ角Δθとの加算より
求める。得られた電圧位相信号(θ* +δ−Δθ)及び
電圧の大きさV*1a は座標変換器7により3相電圧指令
値V*u〜V*wに変換され、該電圧指令値によりインバー
タ1を制御する。
【0187】上記制御により電流(トルク)の急変時に
おいて磁束変動φ2qが生じ実際の座標値(m−t軸)が
d−q軸よりずれた場合でも、微分演算器67の出力値
Δθでもって電圧位相が修正されm−t軸にd−q軸が
常に一致するように制御される。
【0188】この実施例の制御特性について、図33を
用いで説明する。同図は、2.2KWの誘導電動機を供
試機とし、インバータの速度指令ω*rにステップ変化を
与えた際の、過渡時の制御特性を示す。同図(a)は従
来特性、(b)は本実施例の特性である。
【0189】先ず、図33(a)では、速度指令ω*r
変化に対して、実際の回転速度ωrは追従せず、脈動す
る。これは、図から分るように、電圧指令V*1,δ* と
電流I1d,I1q、及び磁束φ2d,φ2qの脈動による相乗
作用によるものである。最終的には発散まで至り、制御
困難となる。
【0190】これに対して本実施例では、図33(b)
に示すように、過渡時に微少のφ2qが発生しているが、
このφ2qの変化量に応じて電圧位相が補正されることか
ら、磁束φ2dは略一定に制御させることになる。この
時、電流I1d,I1q、及び実速度ωr の波形から明らか
なように、制御が安定に行われていることが判る。
【0191】従って、本実施例によれば、いかなる外乱
に対しても高速な制御応答が得られ、また、磁束が常に
一定に保たれることから、トルク及び速度が高精度に制
御できる。
【0192】図34は図30に適用した本発明の制御方
法の他の実施例を示す。図30の実施例では速度検出器
を用いない構成で本発明を適用したため、磁束変動を防
止する微分器67の入力に電流検出値を用いた。この
点、本実施例では、電動機2に取付けた速度検出器93
によって回転速度ωrを検出し、該ωrとその指令値ω*r
の偏差に応じて速度調節器(ASR)40より出力される
トルク電流指令値I*1qを用い、この指令値I*1q を基
に、微分器67により軸ずれ角Δθを演算し、電圧位相
を修正している。
【0193】本実施例によれば、電圧位相補正により磁
束一定制御できることに加えて、速度検出器及び速度調
節器により回転速度を安定に制御することができる。
【0194】図30,図34の実施例によれば、過渡的
な電流(トルク)変化に伴う磁束変動を抑制できるの
で、磁束を略一定に保持することができ、高精度及び高
応答な速度制御を実現することができる。
【0195】図35は、図1の実施例に図18,図2
1,図24,図30でそれぞれ示した定数同定器,定数
設定器,速度オーバシュート検出部,微分器を全て加え
た本発明による制御方法の実施例である。この実施例に
よれば、電流センサのみによる簡単なシステム構成で様
々な誘導電動機の回転速度,電流を高精度に制御できる
という効果が得られる。図35の説明は省略する。
【0196】なお、図35の実施例以外にも、今まで説
明して来た様な構成を組合わせることにより様々な制御
システムが可能であることは云うまでもなく、又、その
ような様々な制御システムも本発明のsprit から逸脱す
るものではない。
【0197】次に、前記した本発明の第2の目的を達成
するための制御原理を説明する。
【0198】まず、誘導電動機が負荷から要求されるト
ルクに対し、電動機で発生する全損失が常に最小の値と
なる励磁電流の決め方を説明する。
【0199】一般に、誘導電動機に対しては、図3に示
すように、励磁電流I1dとトルク電流I1qがべクトル的
に直交する等価回路により表わすことができるものと
し、説明を簡単化するために、誘導電動機には磁気飽和
が無いと仮定し、磁束Φと励磁電流I1dは比例するもの
とする。図31において、(l1+l2)は漏れインダク
タンス、Mは励磁インダクタンス、r1は一次抵抗、r2
は二次抵抗、sはすべりである。
【0200】この図31に示す等価回路に対し、励磁電
流I1d,一次電流I1 ,一次換算トルク電流I1q,トル
クT1 の間には、次の数30〜数33で示す関係が成立
する。
【0201】
【数30】 I1dr 2+I1qr 2=I1r 2 …(数30)
【0202】
【数31】 I1d 2+I1q 2=I1 2 …(数31)
【0203】
【数32】 φ∝I1q …(数32)
【0204】
【数33】
【0205】但し、前記上式において、添字rは定格運
転時の値を意味し、I1rは一次定格電流、I1qrは一次側
換算の二次定格トルク電流、Tr は定格トルク、I1d
定格励磁電流である。
【0206】誘導電動機が定格トルクで運転されている
ときのトルク電流I1qrと一次定格電流I1r との位相角
θrは、次に示す数34より求めることができる。
【0207】
【数34】
【0208】また、任意の運転状態における励磁電流I
1dと定格励磁電流I1drとの比をmとおくことにする。
【0209】
【数35】 m=I1d/I1dr …(数35) 前記数31,数33,数34,数35からI1q
1qr,I1d,I1drを消去して、一次電流I1 に対して
成立する式を算出すると、次に示す数36得ることがで
きる。
【0210】
【数36】
【0211】いま、評価関数として、誘導電動機で発生
する全損失をとることにする。
【0212】まず、電動機の巻線抵抗に発生する抵抗損
としての一次抵抗損Lr1は、前述の数36を用いて次式
により求めることができる。
【0213】
【数37】
【0214】誘導電動機の回転子銅バーで発生する二次
抵抗損Lr2は、前述の数33,数34を用いて次式によ
り求めることができる。
【0215】
【数38】
【0216】また、電動機の固定子鉄心中で発生するヒ
ステリシス損Lh は、前述の数34,数35を用いてほ
ぼ次式により求めることができる。
【0217】
【数39】 Lh=K′h・ω1・B2 m =Kh・ω1・m2・I2 1r・sin2θr …(数39) この数39において、Bm は電動機の空隙における磁束
密度、K′h,Khは固定子鉄心の重量や材質,構造等に
よって決まる比例係数である。
【0218】この数39から理解できるように、ヒステ
リシス損Lh は、励磁電流の2乗、いいかえるとmの2
乗に比例し、駆動制御装置の出力周波数に比例してい
る。
【0219】さらに、固定子鉄心にはうず電流値Ie
発生するが、このうず電流損Le は、数39と同様に、
前述の数34,数35とを用いて次式により求めること
ができる。
【0220】
【数40】 Le=K′e・ω2 1・B2 m =Ke・ω2 1・m2・I2 1r・sin2θr …(数40) この数40において、K′e,Keは、ヒステリシス損と
同様に、固定子鉄心の重量や材質,構造等によって決ま
る比例係数である。
【0221】前述した4種の損失が、誘導電動機の全損
失のうち、制御可能な主たる損失であり、これらの和が
最小となるように励磁電流を制御すれば、誘導電動機を
理想的に制御できることになる。この全損失LT は、数
37〜数40をまとめて次のように表すことができる。
【0222】
【数41】
【0223】この全損失LT が最小となる条件を求める
ために、数41を次のように変形する。
【0224】
【数42】
【0225】この数42において、全損失LT が最小の
値となるのは、次に示す数43が成り立つ場合であり、
そのときのmの値をmOとすると、mOが数43の値を満
たすとき、電動機が必要とするトルクT1 に対し、電動
機内で発生する全損失LT が最小の値となる。
【0226】
【数43】
【0227】そして、全損失の最小値LTOは、次式で求
めることができる。
【0228】
【数44】
【0229】本発明は、以上説明した数式に基づいて誘
導電動機の励磁電流の制御を行うものであり、これによ
り誘導電動機を最高効率で運転することが可能となる。
【0230】以下、本発明による誘導電動機駆動制御装
置の実施例を図面により詳細に説明する。図36は本発
明の実施例の構成を示すブロック図である。同図におい
て、302は電圧型電力変換器、304は係数器、30
6は電流検出器、309は加算器、310は一次遅れ
器、311は積分器、312は関数発生器、313は2
相−3相変換器、314,316,317は比較器、31
5は速度調節器、318,319は演算器である。
【0231】図36に示す実施例が前述した図1や図4
と大きく異なる点は、図36に示す励磁電流指令演算器
308の構成であり、本発明の励磁電流指令演算器30
8が、インバータ出力角周波数ω*1と、負荷トルクに対
応したトルク電流値I1qを取込み、これらのデータを用
いて最適な励磁電流の値を決定するようにした点であ
る。
【0232】図36において、誘導電動機2は、電圧型
電力変換器302の出力可変周波電力によって制御され
る。回転速度検出器(PG)93は、誘導電動機2の回
転速度を検出し、その出力信号は、回転子角周波数を極
対数であるP倍する係数乗算器304に伝えられる。誘
導電動機2のU相,V相,W相の各相の巻線には、各相
の一次電流を検出し、一次電流に対応した電流帰還信号
u,Iv,Iw を出力する一次電流検出器305a,3
05b,305cが設けられている。この一次電流検出
器305a,305b,305cの出力信号は、電流検
出器306に与えられる。この電流検出器306は、一
次電流検出器の出力信号を誘導電動機2の同期角周波数
(二次鎖交磁束ベクトルの角周波数)ω*1で回転する、
互いに直交する回転座標系の2軸成分、すなわち、励磁
電流成分I1dと、トルク電流成分I1qに変換する。この
トルク電流成分I1qは、すべり角周波数演算器307と
励磁電流指令値演算器308等に与えられる。すべり角
周波数演算器307は、励磁電流指令値演算器308か
ら出力される励磁電流指令値I*1d とトルク電流成分I
1qを用いて、すべり角周波数の指令値Pω*Sを演算す
る。そして、このすべり角周波数指令値Pω*Sは、加算
器309に送られ、そこで、前述した係数乗算器304
の出力Pωr と加算される。この加算結果が、前述し
た、誘導電動機同期角周波数ω*1として出力される。
【0233】励磁電流指令値演算器308は、絶対値信
号変換回路308aと、指令値演算回路308bと、最
大値信号選択回路308cと、最大値保持レジスタ30
8dとの4つの回路により構成されている。前述の電流
検出器306の出力信号であるトルク電流成分I1qは、
この励磁電流指令値演算器308内の絶対値信号変換回
路308aに入力され、絶対値信号変換回路308a
は、常に正の信号であるトルク電流成分I1qの絶対値|
1q|を指令値演算回路308bに対して出力する。指
令値演算回路308bは、前述した原理に基づいて、誘
導電動機で発生する全損失が最小となるように励磁電流
1dを、
【0234】
【数45】
【0235】として演算することにより求める。その
際、指令値演算回路308bは、加算器309が出力し
ている角周波数ω*1を一次遅れ器310を通して取込
み、励磁電流I1dの演算のために用いている。
【0236】ここで、一次遅れ器310の役割について
簡単に説明する。もし、この一次遅れ器310が無いと
すると、次のような現象が起こり得る。すなわち、角周
波数ω*1が、何らかの原因で急に変動し、その値が大き
くなった場合、前述の式で決まる励磁電流I1dの値が小
さくなり、この励磁電流I1dをもとにして演算されるす
べり角周波数Pω*Sが大きくなるので、結果として角周
波数ω*1がさらに大きくなるというポジティブな制御が
行われる現象が生じる。従って、場合によっては、角周
波数ω*1が発散してしまうことになる。一次遅れ器31
0は、このような角周波数ω*1の急激な変化を抑えるた
めに有効に作用する。
【0237】指令値演算回路308bにより前述のよう
にして求められた最適な励磁電流I1dOは、最大値信号
選択回路308cに送られる。最大値信号選択回路30
8cは、指令値演算回路308bからの入力信号I1dO
最大値保持レジスタ308dからの入力信号I1drとの値
を比較し、I1dOがI1drより小さいときにI1dO の値
を、I1dOがI1drより大きいときにI1dr の値を、励磁
電流指令値I*1d として、すべり角周波数演算器307
等に対して出力する。
【0238】積分器311は、前述の角周波数ω*1を積
分して、二次鎖交磁束ベクトルの位相角指令θ* を出力
し、その出力信号を関数発生器312に送る。関数発生
器312は、この位相角指令θ* に対応した正弦波信号
sinθ*及び余弦波信号cosθ*を発生し、これらの信号を
電流検出器306及び2相−3相変換器313に送る。
【0239】回転速度検出器93により検出された回転
子角周波数ωr は、比較器314にも送られ、比較器3
14により、回転子角周波数指令値ω*rと比較される。
速度調節器315は、この比較器314からの回転子角
周波数の偏差を増幅し、トルク電流の指令値I*1q を演
算して出力する。
【0240】比較器317は、このトルク電流の指令値
I*1q と、電流検出器306の出力であるトルク電流成
分I1qとを比較してその偏差を出力する。また、比較器
316は、電流検出器306の出力である励磁電流成分I
1dと、励磁電流指令値演算器308の出力である励磁電
流指令値I*1d とを比較してその偏差を出力する。
【0241】演算器318,319は、夫々、比較器3
16及び317により検出された励磁電流偏差(I*1d
1d)とトルク電流偏差(I*1q−I1q)を増幅し、誘導
電動機1の励磁電流成分I1d及びトルク電流成分I1q
常に所定の前記励磁電流指令値I*1d及び前記トルク電
流指令値I*1qに等しくなるように、一次電圧指令の励
磁電流軸の電圧成分V*1d 及び、一次電圧指令のトルク
電流軸の電圧成分V*1qを制御する。
【0242】2相−3相変換器313は、前記演算器3
18,319から出力される励磁電流軸の電圧成分V*1d
とトルク電流軸の電圧成分V*1qを、3相の電圧指令値
V*u,V*v,V*wに変換して、電圧型電力変換器302
に与える。
【0243】誘導電動機駆動制御回路において、最適な
励磁電流を決定する指令値演算回路308bで用いられ
る演算式では、トルクの代りにトルク電流が用いられて
いる。本発明の実施例のように、励磁電流を変化させる
場合には、誘導電動機が必要とする負荷トルクと、トル
ク電流とは、必ずしも比例関係にはなく、図36内に示
す演算式で求めた励磁電流は、必ずしも最適値とは成ら
ない。しかし、例えば、誘導電動機の電流値が小さく、
出力トルクが小さい場合には、誘導電動機の回転数が下
がり、角周波数ωr が小さくなるので、角周波数ω*1
小さくなる。この角周波数ω*1が小さくなると、電流値
が大きくなり、負荷トルクに対応したトルクを出し得る
値まで、速やかに、トルク電流I1qも増加する。従っ
て、トルクの代りにトルク電流I1qを用いて励磁電流を
算出しても実用上さしつかえない。以上説明したよう
に、本実施例によれば、誘導電動機の必要なトルクに対
し、低周波数領域から高周波数領域の全領域にわたっ
て、電動機で発生する一次抵抗損,二次抵抗損,ヒステ
リシス損,うず電流損を合わせた全損失を最小にするこ
とができるので、電源容量を小さくすることができ、設
備のイニシャルコストの低減を図ることができる他、消
費エネルギーを節約できるという効果を奏する。また、
電動機内部の損失が少ないので、電動機内部で発生する
熱も少なく、温度上昇も抑えられるので、電動機の寿命
を延ばすことができ、信頼性の向上を図ることができる
という効果を奏する。
【0244】次に、インバータ回路のデッドタイム補償
の発明について説明する。
【0245】前述したように、電圧指令信号に従いイン
バータの出力電圧が制御されるが、以下に述べる原因で
出力電圧は指令値に対して制御誤差を生じる。その結
果、電動機の回転速度やトルクの制御特性の劣化が起こ
る。
【0246】一般に、図37に示すように、トランジス
タTR1−TR6とフライホイール(or回生)ダイオー
ドD1−D6の並列回路をブリッジ接続したインバータ主
回路1を持つものにおいて、例えば、トランジスタTR
1とTR2の上下アームの転流時に両トランジスタが同
時に点弧状態になる期間が生じると、その期間短絡状態
となるため、片方のトランジスタがターンオフしてから
わずかに遅れてもう一方をターンオンする制御がなされ
る。
【0247】これらの関係を図38を使ってもう少し詳
しく説明する。電流iu が図37において矢印の方向に
流れる場合に、制御電圧信号Aと三角波Bとの比較によ
って得られるPWM波形に従ってトランジスタTR1と
TR2を交互にオン・オフするのに際し、図37のトラ
ンジスタTR1とTR2の接続点X(エックス)が負の
電位から正の電位に変化するのは、トランジスタTR1
の点弧遅れ時間(デッドタイム)TDだけ遅れる。逆
に、電流iu が図37において矢印と反対の方向に流れ
る場合には、接続点Xの電位が正から負に変化するの
が、トランジスタTR2の点弧遅れ時間(デッドタイ
ム)TDだけ遅れる。この結果、図38(d)の太い実線
で示すような、希望の波形に対し斜線部の部分がなくな
り(一部加わり)、(f)に示す波形となってしまう。
このことは、(e)に示すような幅TD のパルス状電圧
が逆極性に加わったものと等価である。従って、インバ
ータ出力電圧は、このパルス状電圧によって低下する。
【0248】これらのパルス状電圧は、(a)に示す回
転磁界より角度θi だけ位相が進んだ電流iu の極性と
関係がある。この角度θi は図39に示すd軸電流とq
軸電流のなす角であるが、電流iu が正の時はパルス状
電圧が負、iu が負の時はパルス状電圧は正である。そ
こで、この電流iu の極性を見て、デッドタイム補償を
する。
【0249】デッドタイムによる出力電圧低下などの影
響を補償する回路構成を図40に示す。電流検出器4′
では回転磁界座標の位相角θ* を使って電動機電流の、
d軸電流成分I1dとq軸電流成分I1qを検出する。この
検出値を使って電流I1 とd軸とのなす角θi を電流位
相演算器600で演算する。加算器670では、この電
流位相θiと回転磁界の位相θ* とが加算され、その出
力信号(θ*+θi)は関数発生器680に送られる。関
数発生器680では、角度(θ*+θi)の余弦が計算さ
れ、cos(θ*+θi)が正の時には+TD を出力し、負の
時には−TD を出力する。PWM波形発生器690は、
関数発生器680の出力に基づいてデッドタイム補償を
する。補償の状況を図41を使って簡単に説明する。
【0250】まず、補償をしない場合について見る。制
御電圧信号Aと三角波信号Bが交鎖する図のt3 時点に
着目する。補償しない場合には、得たい波形(b)に対
しデッドタイムTD だけ時間が遅れて電圧がt4 時点で
変化し、波形(c)となってしまう。デッドタイム補償
をする場合、例えば、関数発生器680から+TD の信
号がPWM波形発生器690に入力された時には、制御
電圧信号Aと三角波信号Bが交鎖するt3 時点より時間
的にTD だけ早めにパルスが立上るようにする。このよ
うにすると、デッドタイムTD だけ進んでPWM信号が
変化する。このときインバータ出力電圧は(d)に示す
ように、PWMへ信号の立上りからTDだけ遅れで変化
するのでt3 時点で電圧が負から正に変わる。この結果
理想的なPWM波形(b)が得られることになる。
【0251】この原理に基づいて、図40のPWM波形
発生器690は次のように処理を行う。図43に示すよ
うに、マイコンのタイマーによってサンプル周期TC
とにPWM割込処理を行う。その処理ごとに、電圧指令
例えば、V*uを取り込み、PWM波形のパルス幅を次式
から演算する。
【0252】
【数46】
【0253】ここに、Vumax:三角波信号の最大値 上式で求まるTu に、関数発生器680からの信号を加
算し、新しいパルス幅Tu′ を次式で演算すれば、デッ
ドタイム補償ができる。
【0254】
【数47】 Tu′=Tu±TD …(数47) 以上により、インバータ回路のデッドタイムを補償で
き、制御装置の制御精度の劣化を防ぐことができる。
【0255】なお、ここまで説明して来た様々な構成を
組合わせることにより様々な制御システムが可能である
ことは言うまでもなく、又、そのような様々な制御シス
テムも本発明のsprit から逸脱するものではない。
【0256】次に前述した各実施例の制御システムをデ
ータ処理装置の一つであるマイクロプロセッサを使って
ディジタル制御する実施例を図43より説明する。同図
で170は単一の半導体基板に形成されたシングルチッ
プマイクロプロセッサである。例えば日立HD647008マ
イクロプロセッサでは単一の半導体基体にプロセッサC
PU701,タイマ702,RAM703,ROM70
4,A/D変換器705,I/Oポート706等が装備
され、各々はアドレスバスAB,データバスDBで接続
されている。そしてROM704のメモリ空間は32K
バイトあり、またA/D変換器705は8チヤンネル、
I/Oポート706は9ポートである。
【0257】これにより、上記マイクロプロセッサ70
の1チップに発振器710を接続するのみのハード構成
で前記した本発明のベクトル制御が実施できる。すなわ
ち、A/D変換器705に速度指令信号ω*r及び電動機
一次電流の検出信号i1 を入力するだけで、I/Oポー
ト706からPWM信号を出力し、該PWM信号によっ
てインバータ装置をPWM制御できる。
【0258】次にマイクロプロセッサ170による動作
を簡単に説明する。ROM704にはあらかじめ前記し
た周波数及び電圧指令演算並びにPWM演算プログラム
が組込まれ、タイマによって管理される。先ず、CPU
701のリセツト端子RESに接続された運転スタート
信号をハイレベルにすると、A/D変換器705へのω
*r,i1を読込む命令によって、各入力のアナログ信号は
ディジタル信号に変換される。そして該信号に基づいて
ROMに記憶されている周波数及び電圧指令演算プログ
ラムに従って3相電圧指令v*1を演算し、さらに図42
に示したPWM制御演算によりPWM信号をI/Oポー
トから出力する。ここで、各演算処理における割込の優
先度は図44に示すようにサンプリングTC 毎に行うP
WM制御演算が第1番で、ベクトル制御演算はその次に
サンプリングTS で行い、PWM演算のあき時間で演算
処理を行う。
【0259】ここで応答特性を向上するには上記ベクト
ルに制演算のサンプリングTS を小さくするのが望まし
い。その点、本発明では、前記した周波数及び電圧指令
演算の簡素化を行ったこと、また、これにより、小さい
容量のメモリのROMでよいことから、1チップマイク
ロプロセッサでベクトル制御が実現できる。
【0260】以上、本発明の実施例によれば、1チップ
マイコンに、速度指令信号及び一次電流検出信号を入力
するのみでPWM制御信号が得られることから、ハード
構成が簡単化できるという効果がある。
【0261】
【発明の効果】本発明によれば、速度センサ及び電圧セ
ンサを用いず、電流センサのみによる簡単なシステム構
成で、しかも、ASR,ACRを不要として、制御構成
及び演算の簡素化を図り、取扱いが簡単で回転速度,電
流を安定かつ、高精度に制御することのできる電動機の
速度制御方法及び装置を得ることができる。
【0262】更に、本発明によれば電動機の低速運転領
域から高速運転領域にわたって、電動機内で発生する全
損失が最小となるような理想的な誘導電動機駆動制御方
法及び装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である制御システムの基本構
成を示すブロツク図である。
【図2】本発明の原理を説明する図である。
【図3】本発明の原理を説明する図である。
【図4】本発明の原理を説明する図である。
【図5】本発明の一実施例の制御特性を説明する図であ
る。
【図6】本発明の一実施例の制御特性を説明する図であ
る。
【図7】本発明の原理を説明する図である。
【図8】本発明の原理を説明する図である。
【図9】本発明の一実施例の制御特性を説明する図であ
る。
【図10】図1の制御システムの一部分の変形例を示す
図である。
【図11】電動機の電流特性を説明する図である。
【図12】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図13】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図14】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図15】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図16】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図17】図16における同定器の構成を示すブロック
図である。
【図18】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図19】図18における同定器の構成を示すブロック
図である。
【図20】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図21】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図22】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図23】本発明の制御法と他の制御法および本発明の
制御定数自動設定方式と他の手動設定方式を選択可能な
実施例の選択系統を示す系統図である。
【図24】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図25】図24の実施例の動作説明図である。
【図26】図24の実施例の動作説明図である。
【図27】図24における一部分の別な実施例を示す具
体的構成図である。
【図28】図24における一部分の別な実施例を示す具
体的構成図である。
【図29】図24における一部分の別な実施例を示す具
体的構成図である。
【図30】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図31】図30の実施例の原理説明図である。
【図32】図30の実施例の原理説明図である。
【図33】図30の実施例の制御特性図である。
【図34】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図35】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図36】本発明の他の実施例を示す制御システムのブ
ロック図である。
【図37】一般的インバータの回路図を示す図である。
【図38】図37に示したインバータ回路の動作を説明
するに用いる図である。
【図39】図37に示したインバータ回路の動作を説明
するに用いる図である。
【図40】本発明によるデッドタイムによるインバータ
出力電圧低下の影響を補償する回路構成図である。
【図41】図40の回路動作を説明するに用いる図であ
る。
【図42】本発明を実施する上での説明図である。
【図43】本発明の実施例に用いるワンチップマイクロ
プロセッサの構成図である。
【図44】図43のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1…電圧形PWMインバ−タ、2…誘導電動機、3…積
分器、4…電流検出器、5…周波数制御部、6…電圧指
令演算部、7…3相電圧指令部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松井 孝行 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内 (72)発明者 久保田 譲 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内 (72)発明者 藤井 洋 千葉県習志野市東習志野7丁目1番1号 株式会社日立製作所習志野工場内

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】周波数変換器を用いる電動機の速度制御方
    法において、電動機の一次電圧の振幅値及び該一次電圧
    と誘導起電力との位相差(内部相差角)の指令値を、少
    なくとも周波数指令値及び一次電流成分値に基づいて演
    算し、これらの指令値信号に基づいて一次電圧の瞬時値
    指令を演算し、該一次電圧の瞬時値指令に応じて周波数
    変換器の出力電圧を制御することを特徴とする電動機の
    制御方法。
  2. 【請求項2】周波数変換器を用いる電動機の速度制御方
    法において、速度指令信号と電動機の一次電流成分値と
    に基づいて周波数指令値を演算し、さらに、電動機の一
    次電圧の振幅値及び該一次電圧と誘導起電力との位相差
    (内部相差角)の指令値を、少なくとも前記周波数指令
    値及び一次電流成分値に基づいて演算し、これらの指令
    値信号に基づいて一次電圧の瞬時値指令を演算し、該一
    次電圧の瞬時値指令に応じて周波数変換器の出力電圧を
    制御することを特徴とする電動機の制御方法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2に於いて、上記一
    次電流成分値は、一次電流のトルク電流成分検出値であ
    ることを特徴とする電動機の制御方法。
  4. 【請求項4】前記一次電圧の振幅値及び内部相差角の指
    令値の演算は、電動機の一次抵抗降下による相差角成分
    と漏れインダクタンス降下による相差角成分の夫々を、
    少なくとも前記周波数指令値及び一次電流成分値に基づ
    いて演算し、前記一次抵抗降下による相差角成分と漏れ
    インダクタンス降下による相差角成分との差により前記
    内部相差角の指令値を演算することによって行われるこ
    とを特徴とする請求項1または請求項2記載の電動機の
    制御方法。
  5. 【請求項5】前記一次電圧の振幅値及び内部相差角の指
    令値の演算は、電動機の一次抵抗降下による相差角成分
    と漏れインダクタンス降下による相差角成分の夫々を、
    少なくとも前記周波数指令値及び一次電流成分値に基づ
    いて演算し、前記一次抵抗降下による相差角成分と漏れ
    インダクタンス降下による相差角成分との差により前記
    内部相差角の指令値を演算し、さらに、この内部相差角
    の指令値により前記一次電圧の振幅値の指令値を演算す
    ることにより行われることを特徴とする請求項1または
    請求項2記載の電動機の制御方法。
  6. 【請求項6】前記内部相差角の指令値は、少なくとも前
    記周波数指令値と電動機一次電流検出値とに基づいて演
    算されることを特徴とする請求項1または請求項2記載
    の電動機の制御方法。
  7. 【請求項7】電圧指令信号に応じて出力電圧の大きさと
    出力周波数とが制御されるインバータにより誘導電動機
    を制御するものにおいて、前記電動機の一次電流成分を
    検出し、一次電流成分の基準値からの変動に応じて、電
    圧指令信号の演算定数の少なくとも一つを変動させるこ
    とを特徴とする電動機の制御方法。
  8. 【請求項8】前記演算定数は抵抗値であることを特徴と
    する請求項7記載の電動機の制御方法。
  9. 【請求項9】前記電圧指令信号の演算定数の少なくとも
    一つは、特定の周波数領域のみ変動させることを特徴と
    する請求項7記載の電動機の制御方法。
  10. 【請求項10】前記電圧指令信号の演算定数の少なくと
    も一つは、特定の一次電流成分値の領域のみ変動させる
    ことを特徴とする請求項7記載の電動機の制御方法。
  11. 【請求項11】電圧指令信号に応じて出力電圧の大きさ
    と出力周波数とが制御されるインバータにより誘導電動
    機を制御するものにおいて、前記電動機の前記一次電流
    のd軸成分(励磁電流相当)とq軸成分(トルク電流相
    当)を検出し、該q軸成分に応じて前記インバータの出
    力周波数及び出力電圧の大きさと位相を制御し、さら
    に、前記電動機の前記一次電流のd軸成分の基準値から
    の変動に応じて、電動機の漏れインピーダンス降下を同
    定し、この同定結果に基づいて前記インバータの出力電
    圧の大きさと位相とを修正することを特徴とする電動機
    の速度制御方法。
  12. 【請求項12】前記漏れインピーダンス降下の同定は、
    周波数指令あるいはq軸電流成分の少なくとも一方が所
    定値以下の場合に一次抵抗降下を同定し、前記周波数指
    令及びq軸電流成分がともに所定値以上の場合にリアク
    タンス降下を同定し、これらの同定信号に基づいて行わ
    れることを特徴とする請求項11記載の誘導電動機の速
    度制御方法。
  13. 【請求項13】前記電動機の前記一次電流のd軸成分
    (励磁電流相当)とq軸成分(トルク電流相当)を検出
    し、該d軸成分とq軸成分に応じて前記インバータの出
    力周波数及び出力電圧の大きさと位相を制御し、さら
    に、周波数指令が所定値以下の場合に前記電動機の前記
    一次電流のd軸成分の基準値からの変動に応じて一次抵
    抗降下を同定し、この同定結果に基づいて前記インバー
    タの出力電圧の大きさと位相とを修正することを特徴と
    する請求項11記載の電動機の制御方法。
  14. 【請求項14】前記同定結果に基づいて、前記インバー
    タの出力電圧の大きさと位相を修正する際に使うすべり
    周波数を演算する際にも、前記同定結果に基づいて修正
    することを特徴とする請求項13記載の電動機の制御方
    法。
  15. 【請求項15】電動機を可変速制御するための制御定数
    を前記電動機の電気定数に基づいて予め設定しておく電
    動機の制御装置において、 接続候補となる種々の電動機を特定する情報をパラメー
    タとして各電動機の制御定数を予め記憶する記憶手段
    と、 実際に接続される電動機を特定する情報を入力し、当該
    電動機に対応する制御定数を前記記憶手段から読み出し
    設定する手段と、 を備えたことを特徴とする電動機の制御装置。
  16. 【請求項16】前記特定する情報は、電動機容量と極数
    とを含む情報であることを特徴とする請求項15記載の
    電動機の制御装置。
  17. 【請求項17】前記制御定数のうち電動機の漏れインダ
    クタンスに関する定数を一次インダクタンスに対する比
    により設定することを特徴とする請求項15記載の電動
    機の制御装置。
  18. 【請求項18】電動機を可変速制御するための制御定数
    を前記電動機の電気定数に基づいて予め設定しておく電
    動機の制御装置において、 ベクトル制御法と他の制御法とを切換える手段と、 前記ベクトル制御法を選択したときに、接続候補となる
    種々の電動機を特定する情報をパラメータとして各電動
    機の前記制御定数を予め記憶する記憶手段と、 実際に接続される電動機を特定する情報を入力し、当該
    モータに対応する制御定数を前記記憶手段から呼び出し
    設定し、前記他の制御方法を選択したとき、他の設定手
    段による前記制御定数の設定を行う手段と、 を備えたことを特徴とする電動機の制御装置。
  19. 【請求項19】前記特定する情報は、電動機容量と極数
    とを含む情報であることを特徴とする請求項18記載の
    電動機の制御装置。
  20. 【請求項20】誘導電動機を可変周波電圧源により制御
    する駆動制御方法において、誘導電動機の一次電流の検
    出値から算出した二次電流成分と、励磁電流の指令値あ
    るいは誘導電動機の一次電流の検出値から算出した励磁
    電流成分と、出力周波数指令値とに基づいて、誘導電動
    機の固定子巻線と回転子巻線で発生する抵抗損及び鉄心
    中で発生するヒステリシス損とうず電流損を合わせた全
    損失が最小の値となるように、誘導電動機に鎖交磁束を
    作る励磁電流成分を制御することを特徴とする電動機の
    制御方法。
  21. 【請求項21】電誘機の一次電流のd軸成分とq軸成分
    とに基づいて電流位相演算し、さらに、これに基づいて
    一次側電流極性を求め、PWM出力信号のパルス幅を修
    正し、該修正されたPWM出力信号によって電動機が制
    御されることを特徴とする電動機の制御方法。
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