JPH0618642U - ピストン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スラスト荷重の側圧によって生起される加振
力を適切にスカート部で吸収し、スラップ音の発生を抑
制することのできるピストンを提供する。 【構成】 スカート部（４）内面に形成される空間部の
うちピンボス部（５）の両側に沿って上下に形成される
空間部のピン孔（７）方向の内法を、ピンボス部（５）
近傍では狭く、ピンボス部（５）の上部および下部では
広く形成した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、ピストンに関し、特に自動車用内燃機関のピストンに関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、この種の内燃機関では軽量化と共に運転の静粛性が要求され、特に爆発 力をピストンピン、連接棒を介してクランク軸の回転力に変換するように機能す るピストンでは構造上種々な工夫がなされてきた。例えば実開昭６２−８５１５ ２号公報に開示されている例は、ピストンの軽量化を図りつつ、しかもスカート 部のスラスト荷重受面が合理的に機能するように、スカート部に末広がりの勾配 を持たせると共にスカート部の摺動面を削減し、耐久性および軽量化の双方の向 上を目指したものである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、上記従来例ではそのピストンの作動中に作用するスラスト荷重 の側圧がスカート部を介してシリンダ壁に伝達されるように構成されており、殊 にスカート部の下部の剛性が高いと側圧によりシリンダ壁に向けて生起されるピ ストンの加振力がここで吸収し切れず、スラップ音を発生させる。

【０００４】 本考案の目的は、このような従来の問題に着目し、その解決を図るべく、スラ スト荷重の側圧によって生起される加振力を適切にスカート部で吸収し、スラッ プ音の発生を抑制することのできるピストンを提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

かかる目的を達成するために、本考案は、スカート部内面に形成される空間部 のうちピンボス部の両側に沿って上下に形成される空間部のピン孔方向の内法を 、前記ピンボス部の近傍では狭く、前記ピンボス部の上下部では広く形成したこ とを特徴とするものである。

【０００６】

【作用】

本考案によれば、構造上剛性を要求されるピンボス部近傍ではピンボス部の両 側に沿って上下に形成される空間部の内法を狭く保つ一方、衝撃的にスラスト荷 重の側圧を受けるピンボス部の上下では上記空間部の内法を広く保つことにより 、剛性を低く保ち、スラップ音の低減を図ることができる。

【０００７】

【実施例】

以下に、本考案の実施例を図面を参照しつつ具体的に説明する。

【０００８】 図１は本考案の一実施例を示す。その（Ａ）において、１はピストン（本体） 、２はピストンヘッド、３はリング部、４はスカート部であり、本例ではスカー ト部４の側圧がかからない側の面、すなわちピストンピンボス部５が形成される 側の面（図１の（Ｂ）および（Ｃ）参照）がスカート部４の摺動面４Ａから引込 められた形に形成されている。なお、以下ではこのように摺動面４Ａからは引込 められた形で、ピンボス部５の両側においてスカート摺動面４Ａと接続される部 分をエプロン部６と呼ぶこととする。

【０００９】 また、本実施例ではエプロン部６を含むスカート部４において、そのリング部 ３側の上部にあたるＡ−Ａ線断面の形状を図１の（Ｂ）に示すように形成すると 共にその下方のＢ−Ｂ線断面形状を図１の（Ｃ）に示すように、さらにまたその 下方のＣ−Ｃ線断面形状を図１の（Ｄ）に示すようにそれぞれ形成する。すなわ ち、スカート部４のＡ−Ａ線断面に当る部分では、（Ｂ）に示すようにエプロン 部６同士間の内法を十分広く保つことによりこの部分で低い剛性が保たれるよう にする。

【００１０】 また、スカート部４のＢ−Ｂ線断面近傍の部分（以下で絞り部という）１１で は（Ｃ）に示すようにエプロン部６同士をピストン１の内側に向けて絞り込むよ うになして、摺動面４Ａ形成部分を狭くすることによりこの断面近傍では十分に ピストンとしての剛性が高く保たれるようにする。そして、Ｃ−Ｃ線断面では（ Ｄ）に示すように再びエプロン部６の内法間隔を広めるようにして断面における 剛性が低められるようにする。図２はピストン１をピストンピン孔７の方向から 見た図であり、なお、本実施例ではこの図に示すようにピストン１のフラッタや スラップ音発生防止効果がより一層高められるように、ピストンピン孔７の位置 をピストン中心線０からスラスト側に僅かに偏心させたオフセットピストンとし た。

【００１１】 ついで、図３に従って本考案のピストン１に燃焼圧Ｆ_g が作用したときの動作 について説明する。

【００１２】 いま、燃焼圧Ｆ_g がピストン１のヘッド２に作用すると、ピストン１にピスト ンピン８周りのモーメントＭが働くと共に、コンロッド９からピン８を介しての 反力として側圧Ｆ_T が働き、ためにピストン１ではスラスト側のスカート部４摺 動面の下端がシリンダ壁１０に当接する。しかし、この状態では図１の（Ｄ）に 示したように十分な幅のあるスカート部摺動面４Ａが両側のエプロン部６によっ て支持される断面形態であるために、剛性が低く、側圧Ｆ_T による加振力はこの 部分の変形によって吸収されてしまいスラップ音の発生が抑制される。

【００１３】 このあと、ピストン１の下降に従い、側圧Ｆ_T が高められるが、この状態では 図１の（Ｃ）で示したようにエプロン内法が狭くて剛性の高い断面形態によりそ のスラスト荷重が受け持たれることになる。そして、このあと側圧Ｆ_T がさらに 高まり、最大スラスト荷重時にはその荷重中心はスカート部４の上部、つまり図 １の（Ｂ）に示した部分に移行しようとするが、この部分の断面形態は剛性が低 いために、荷重を担持するようには機能せず、結局荷重は図１の（Ｃ）で示した 絞り部１１であくまで担持されることになり、かくして上下死点で発生し易いス ラップ音の低減を図ることができる。

【００１４】 さらに第２の実施例として、上述の構成に加えてスカート部４における図１の （Ａ）に示すＢ−Ｂ線断面、すなわち図１の（Ｃ）において、摺動面４Ａ形成部 での肉厚を薄くすると共にエプロン部６との接続部からエプロン部６およびピン ボス部５に至る部分の肉厚を十分厚くすることにより、より一層効果的にスラス ト荷重分担と吸収とを機能的に行わせ、スラップ音低減に貢献させることができ る。

【００１５】 さらにまた、第３の実施例として、上述してきた各実施例の構成に加えて、図 １の（Ｂ）および／または（Ｄ）において、少なくともそのいずれかでそのスカ ート摺動面４Ａ形成部およびエプロン部６の肉厚を薄く形成することにより、さ らに上述した効果をより一層顕著なものとすることができる。

【００１６】 図４は本考案の第４の実施例を示す。本例はスカート部４の下部に形成される エプロン部６からその上部に形成されるスカート摺動面４Ａに向けて斜めにリブ １２を形成したもので、このリブ１２によりスラスト最大荷重時に図１の（Ｄ） に示す断面の部分で担持すべき荷重を図１の（Ｃ）に示す絞り部１１と分担して 担持させるようにすることができる。なお、本例においてもスカート摺動面４Ａ 形成部の中心部分まではリブ１２が延在されていないことにより図１の（Ｄ）に 示す剛性の低さはそのまま高くなることがない。

【００１７】

【考案の効果】

以上説明してきたように、本考案によれば、スカート部内面に形成される空間 部のうちピンボス部の両側に沿って上下に形成される空間部のピン孔方向の内法 を、前記ピンボス部の近傍では狭く、前記ピンボス部の上下部では広く形成した ので、スカート部のうち、スラップ音発生の要因となる部分の摺動面形成部およ びエプロン部の剛性を低めることによって、スラップ音の低減を図ることができ ると共にスラスト荷重をピストンピンボス部形成部分の近傍で重点的に担持させ るようにすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の構成を側面図（Ａ）、（Ａ）のＡ−Ａ
線断面図（Ｂ）、（Ａ）のＢ−Ｂ線断面図（Ｃ）および
（Ａ）のＣ−Ｃ線断面図（Ｄ）によって示す説明図であ
る。

【図２】本考案の構成をピストンピン孔の方向から見た
側面図である。

【図３】本考案ピストンに作用する力の関係を示す説明
図である。

【図４】本考案の第４実施例の構成を示す断面図であ
る。

【符号の説明】

１ ピストン ４ スカート部 ４Ａ 摺動面 ５ ピストンピンボス部 ６ エプロン部 ７ ピン孔 ８ ピストンピン １０ シリンダ壁 １１ 絞り部 １２ リブ

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 スカート部内面に形成される空間部のう
   ちピンボス部の両側に沿って上下に形成される空間部の
   ピン孔方向の内法を、前記ピンボス部の近傍では狭く、
   前記ピンボス部の上下部では広く形成したことを特徴す
   るピストン。
2. 【請求項２】 前記ピンボス部近傍の空間部におけるス
   カート摺動壁の厚さが、前記ピンボス部と前記スカート
   摺動壁とを接続するエプロン部に向けて漸増されること
   を特徴とする請求項１に記載のピストン。
3. 【請求項３】 前記スカート摺動壁の厚さは前記ピンボ
   ス部の上下部の少なくともいずれか一方で、前記ピンボ
   ス部近傍での厚さより薄肉に形成されることを特徴とす
   る請求項１または２に記載のピストン。
4. 【請求項４】 前記ピンボス部の下部のエプロン部から
   前記ピンボス部近傍の両側のスカート摺動壁に向けて前
   記スカート部内面に沿う肋材を設けたことを特徴とする
   請求項１ないし３のいずれかの項に記載のピストン。