JPH06114109A - バルーンカテーテル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 カテーテル管の外径を小さくせず、バルーン
部の膨張収縮の応答性に優れ、しかも患者の血管内にス
ムーズに挿入することが可能であり、患者に対する負担
の少ないバルーンカテーテルを提供すること。 【構成】 大動脈内に挿入されて、心機能の補助作用を
行うように膨張および収縮するバルーン膜２２と、前記
バルーン膜２２内に圧力流体を導入および導出するカテ
ーテル管２４とを有し、前記バルーン膜の後端部２２ｂ
と、前記カテーテル管の先端部２４ａとが、相互に折り
重ならないように、金属製接続チューブ２７の両端外周
に接合してある。接合の手段としては、接着剤による接
着、熱融着などの手段を採用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、急性心不全等の治療法
である大動脈内バルーンポンピング法に用いるバルーン
カテーテルに関する。

【０００２】

【従来の技術】大動脈内バルーンポンピング法（Intra-
aortic balloon pumping，以下、「IABP法」と略称す
る）とは、心不全等の心機能低下時の治療のため、図２
に示すように、大動脈内に合成高分子材から成るバルー
ンカテーテル２を挿入し、心臓１の拍動に合わせてポン
プ装置８によりカテーテル管６からバルーン膜４に圧力
流体を導入または導出し、バルーン膜４を膨張・収縮さ
せて心機能の補助を行う補助循環方法である。

【０００３】IABP法に用いられるバルーンカテーテルと
しては、特開昭６３−２０６２５５号公報および特開昭
６２−１１４５６５号公報に示すようなバルーンカテー
テルが知られている。このようなバルーンカテーテルに
おいて、心臓の拍動に合わせてバルーン膜を膨張および
収縮するために、患者の心臓の拍動を検知する必要があ
る。患者の心臓の拍動を検知する手段として、患者の体
表面あるいは内部に電極を装着し、心臓の拍動を電気信
号として検出する手段がある。

【０００４】また、バルーンカテーテルを利用して患者
の血圧から心臓の鼓動を検出する手段として、図３に示
すように、バルーン膜４の先端部４ａに接合される先端
チップ部１２に、血液連通孔１３を設け、その血液連通
孔１３と連通する内管１０を、バルーン膜４およびカテ
ーテル管６の内部に軸方向に挿通させ、血液連通孔１３
から血圧変動を測定することにより、心臓の鼓動を検出
する方法がある。

【０００５】バルーン膜４の後端部４ｂには、接続チュ
ーブ１４の外周側で、カテーテル６の先端部６ａが熱融
着あるいは接着剤による接着などの手段で折り重なるよ
うに接合してある。金属製接続チューブ１４を用いるの
は、この接続チューブを境としてバルーン部分とカテー
テル管の部分とを区切り、バルーンカテーテルを挿入す
るに際してバルーン膜４を内管１０に巻きつけてもカテ
ーテル管６とバルーン膜４の後端部４ｂが歪んだり、つ
ぶれたりするのを防止する。このことによってバルーン
部分の膨張収縮は良好に行われる。また金属製接続チュ
ーブ１４はＸ線レントゲンなどの造影時にバルーン部分
の後端位置を確認するためのマーカーとなる。

【０００６】ところで、バルーンカテーテル２を患者の
動脈血管内に挿入する際には、バルーン部分を構成する
バルーン膜４は、内管１０の周囲に巻き付けられる。し
たがって、この部分の外径は、カテーテル管６の外径と
同程度以下にすることができる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところが、バルーン膜
４とカテーテル管６との接合部では、ステンレス製接続
チューブ１４の外周に、カテーテル管６の先端部６ａ
と、バルーン膜４の後端部４ａとが折り重なるように接
合してあり、この部分が、バルーンカテーテル挿入時の
状態では最大外径となる。そのため、バルーンカテーテ
ル２を患者に留置するとき、通常はシースを患者の動脈
内に挿入し、そのシース内を通してバルーンカテーテル
を挿入するが、シース入口径は最大径より大きなものを
選択しなければならない。このことは患者に、より大き
な侵襲を与えることから好ましくない。さらには、バル
ーン膜４とカテーテル管６との接合部が患者の皮膚組織
あるいは血管内壁などに引っかかり易いという危険性も
ある。

【０００８】接合部の外径を小さくするために、カテー
テル管６の外径を小さくすることも考えられるが、その
場合には、カテーテル管６内の流路抵抗が増大し、圧力
流体によるバルーン膜４の膨張収縮の応答性が低下する
と言う問題点を有する。そのため、カテーテル管６の外
径を小さくすることは好ましくない。

【０００９】本発明は、このような実状に鑑みてなさ
れ、カテーテル管の外径を小さくせず、バルーン部の膨
張収縮の応答性に優れ、しかも患者の血管内にスムーズ
に挿入することが可能であり、患者に対する負担の少な
いバルーンカテーテルを提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のバルーンカテーテルは、大動脈内に挿入さ
れて、心機能の補助作用を行うように膨張および収縮す
るバルーン膜と、前記バルーン膜内に圧力流体を導入お
よび導出するカテーテル管とを有し、前記バルーン膜の
後端部と、前記カテーテル管の先端部とが、相互に折り
重ならないように、金属製接続チューブの両端外周に接
合してあることを特徴とする。このことは従来のバルー
ン膜とカテーテル管を強固に接合することを目的として
いたバルーンカテーテルにあっては想到しえないことで
あった。接合の手段としては、接着剤による接着、熱融
着などの手段を採用することができる。

【００１１】

【作用】本発明のバルーンカテーテルでは、バルーン膜
の後端部と、カテーテル管の先端部とが、相互に折り重
ならないように、金属製接続チューブの両端外周に接合
してあるので、カテーテル管の外径を小さくすることな
く、接合部の外径を、従来に比較して、バルーン膜の膜
厚の二倍程度（直径で）小さくすることができる。バル
ーン膜の膜厚は、一般に、１００〜１５０μｍ程度なの
で、接合部の外径は、２００〜３００μｍ程度小さくす
ることができる。また、カテーテル管の外径は、約３ｍ
ｍであるので、接合部の外径は、従来に比較して、約７
〜１０％小さくすることが可能になる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の一実施例に係るバルーンカテ
ーテルについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。図
１は本発明の一実施例に係るバルーンカテーテルの概略
断面図、図２はバルーンカテーテルの使用状態を示す断
面図である。

【００１３】図１に示すように、本発明の一実施例に係
るバルーンカテーテル２０は、心臓の拍動に合わせて膨
張および収縮するバルーン膜２２を有する。バルーン膜
２２は、膜厚１００〜１５０μｍ程度の薄膜で構成され
る。薄膜の材質は、特に限定されないが、耐屈曲疲労特
性に優れた材質であることが好ましく、例えばポリウレ
タンなどにより構成される。バルーン膜２０の外径およ
び長さは、心機能の補助効果に大きく影響するバルーン
膜２０の内容積と、動脈血管の内径などに応じて決定さ
れる。バルーン膜２０の内容積は、特に限定されない
が、３０〜５０ｃｃであり、バルーン膜２０の膨張時の
外径は、１４〜１６ｍｍが好ましく、軸方向長さは、２
１０〜２７０ｍｍが好ましい。

【００１４】このバルーン膜２２の先端部２２ａには、
血液連通孔２３が形成してある先端チップ部２５が熱融
着ないしは接着などの手段で取り付けてある。先端チッ
プ部２５は、たとえば合成樹脂で構成されるが、レント
ゲン時の造影が可能なように、造影剤などが混入してあ
ることが好ましい。この先端チップ部２５の内周側に
は、内管３０の先端部が熱融着ないしは接着などの手段
で取り付けてある。

【００１５】内管３０は、バルーン膜２２およびカテー
テル管２４の内部を軸方向に延在し、後述するコネクタ
２６の血圧測定口３２に連通するようになっており、そ
の内部は、バルーン膜２２内部とは連通しないようにな
っている。バルーン膜２２内に位置する内管３０は、バ
ルーンカテーテル２０を動脈内に挿入する際に、収縮し
たバルーン膜２２が巻かれてバルーン膜２２が都合良く
動脈内に差し込まれる際の案内ロッドとしての作用も有
する。この内管３０は、たとえばメッシュなどで補強さ
れた樹脂チューブあるいは金属性チューブなどにより構
成される。内管３０を構成する金属としては、特に限定
されず、ステンレス、タングステンなどが例示される
が、好ましくはステンレスが用いられる。

【００１６】内管３０を金属製チューブで構成した場合
には、内管３０の血液連通孔側の先端部分は、熱処理に
より低硬度に設定してあることが好ましい。内管３０の
先端部分Ｌ以外の部分の硬度を１００％とした場合に、
先端部分Ｌは１０〜６０％の硬度に設定することが好ま
しい。１０％以下であると、柔らかすぎて好ましくな
く、６０％以上であると、バルーンカテーテル挿入時の
案内としての効果が少ない。たとえば内管３０としてス
テンレスチューブを用いる場合には、ビッカース硬度が
３５０程度なので、このステンレスチューブの先端を、
８００〜１０００℃の焼き鈍し熱処理することにより、
ビッカース硬度で１５０〜２５０程度に下げることがで
きる。その結果、内管３０の先端部のみが他の部分に比
較して柔軟性が向上し、バルーンカテーテル２０を血管
内に挿入する際に、血管の内壁を傷つけることなく、曲
がりくねった血管内を都合良く挿入することができる。
金属製内管３０の先端部分の柔軟性を増大させる手段と
しては、熱処理により硬度を低下させる手段以外に、先
端部分の肉厚を薄くする手段、先端部分に蛇腹状の凹凸
を形成する手段、先端部分にスリットを設ける手段のう
ちの何れか、またはこれらの組合せを採用することもで
きる。この先端部分の範囲は、３〜１５ｃｍ程度が好ま
しい。

【００１７】本実施例では、バルーン膜２２の後端部２
２ｂは、金属製の接続チューブ２７の一方の端部外周側
に接合してある。そして、接続チューブ２７の他方の端
部外周側には、カテーテル管２４の先端部２４ａが接合
してある。その結果、バルーン膜２２の後端部２２ｂと
カテーテル管２４の先端部２４ａとは、従来とは異な
り、接続チューブ２７の外周で折り重ならない。バルー
ン膜２２とカテーテル管２４とは、接続チューブ２７を
通して連結され、内部が連通する。したがって、カテー
テル管２４を通じて、バルーン膜２２内に、流体圧が導
入または導出され、バルーン膜２２が膨張ないし収縮す
る。

【００１８】接続チューブ２７は、特に限定されない
が、たとえばステンレス、あるいはタングステンなどの
金属で構成され、その外径は、１．５〜４ｍｍが好まし
く、その肉厚は、３０〜１５０μｍが好ましい。また、
その長さＬは、８〜３０ｍｍが好ましい。接続チューブ
２７の長さＬが余りに長いと、カテーテル全体としての
柔軟性が低下し挿入性に影響するので好ましくなく、余
りに短いと、接合が不十分になる傾向にあるので好まし
くない。

【００１９】本実施例において、接続チューブ２７が金
属で構成されるのは、この接続チューブを境としてバル
ーン部分とカテーテル管の部分とを区切り、バルーン部
分の膨張収縮を良好に行うためと、Ｘ線レントゲンなど
の造影時にバルーン部分の後端位置を確認するためなど
である。また、金属製チューブと樹脂製チューブとを比
較すれば、同一外径および同一剛性の条件では、金属製
チューブの方が肉厚を小さくできるからである。肉厚を
小さくできれば、流路断面が広くなり、膨張収縮の応答
性が良くなるからである。

【００２０】バルーン膜の後端部２２ｂまたはカテーテ
ル管の先端部２４ａと接続チューブ２７との接合手段と
しては、熱融着あるいは接着剤による接着などの手段を
採用することができる。接着による場合には、プライマ
ーとしては、金属との接着性に優れたエポキシ樹脂、ポ
リイミド樹脂などを用いることが好ましい。このプライ
マーは、接着に際して、接続チューブ２７の外周に、た
とえば１０μｍ程度に薄く塗布しておくことが好まし
い。また、接続チューブ２７の外周には、接着性を向上
させる粗面化処理などを施しておいても良い。

【００２１】カテーテル管２４を構成する材質として
は、特に限定されないが、ポリウレタン、ポリ塩化ビニ
ル、ポリエチレン、ナイロン等が用いられる。また、カ
テーテル管２４の内径および肉厚は、特に限定されない
が、内径は、好ましくは、１．５〜４．０mmであり、肉
厚は、好ましくは、１５０〜３００μｍである。

【００２２】カテーテル管２４の後端部２４ｂには、患
者の体外に設置されるコネクタ２６が連結してある。コ
ネクタ２６は、カテーテル管２４と別体に成形され、熱
融着あるいは接着などの手段で固着されても良いが、カ
テーテル管２４と一体に成形されても良い。コネクタ２
６には、カテーテル管２４およびバルーン膜２２内に圧
力流体を導入または導出するための圧力流体導入出口２
８と、内管３０内に連通する血圧測定口３２とが形成し
てある。

【００２３】圧力流体導入出口２８は、図２に示すよう
なポンプ装置８に接続され、このポンプ装置８により、
流体圧がバルーン膜２２内に導入または導出されるよう
になっている。導入される流体としては、特に限定され
ないが、ポンプ装置８の駆動に応じて素早くバルーン膜
が膨張または収縮するように、粘性の小さいヘリウムガ
スなどが用いられる。また、ポンプ装置８としては、特
に限定されず、例えば特公昭６４−４４７３号公報に示
すような装置が用いられる。

【００２４】血圧測定口３２は、例えば血圧測定装置に
接続され、血液連通孔２３から取り入れた動脈内の血液
の血圧の変動を測定可能になっている。この血圧測定装
置で測定した血圧の変動に基づき、心臓の拍動を検出
し、心臓の拍動に応じて図２に示すようなポンプ装置８
を制御し、バルーン膜２２を膨張または収縮させるよう
になっている。

【００２５】なお、本発明は、上述した実施例に限定さ
れず、本発明の範囲内で種々に改変することが可能であ
る。たとえば、内管３０の用途は、血圧測定のみに限定
されず、その他の用途に用いるようにしても良い。ま
た、上述した実施例では、バルーンカテーテルの内部に
内管３０を有しているが、必ずしも内管は必要ではな
く、単なる芯棒などを有するバルーンカテーテルに対し
て本発明を適用することもできる。本発明は、全ての種
類のバルーンカテーテルに対して適用することができ
る。

【００２６】

【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、バルーン膜の後端部と、カテーテル管の先端部と
が、相互に折り重ならないように、金属製細管の両端外
周に接合してあるので、カテーテル管の外径を小さくす
ることなく、接合部の外径を、従来に比較して、バルー
ン膜の膜厚の二倍程度に小さくすることができる。バル
ーン膜の膜厚は、一般に、１００〜１５０μｍ程度なの
で、接合部の外径は、２００〜３００μｍ程度小さくす
ることができる。また、カテーテル管の外径は、約３ｍ
ｍであるので、接合部の外径は、従来に比較して、約７
〜１０％小さくすることが可能になる。その結果、バル
ーン膜の膨張収縮の応答性を低下させることなく、バル
ーンカテーテルの挿入が容易となり、バルーン膜とカテ
ーテル管との接合部が患者の皮膚組織あるいは血管内壁
などに引っ掛かり難くなる。さらに、接合部の外径がカ
テーテル管の外径と大差なくなり、段差が小さくなるの
で、この点でも、バルーンカテーテルの挿入性が向上す
る。本発明者等の実験によれば、従来のバルーンカテー
テルでは、挿入性が悪いなどのクレームが１０％程度あ
ったのに対し、本発明のバルーンカテーテルを用いれ
ば、これらのクレームが解消することが確認された。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るバルーンカテーテルの
概略断面図である。

【図２】バルーンカテーテルの使用状態を示す断面図で
ある。

【図３】従来例に係るバルーンカテーテルの要部断面図
である。

【符号の説明】

２０… バルーンカテーテル ２２… バルーン膜 ２２ａ… 先端部 ２２ｂ… 後端部 ２３… 血液連通孔 ２４… カテーテル管 ２４ａ… 先端部 ２４ｂ… 後端部 ２５… 先端チップ部 ２７… 接続チューブ ３０… 内管

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 大動脈内に挿入されて、心機能の補助作
   用を行うように膨張および収縮するバルーン膜と、 前記バルーン膜内に圧力流体を導入および導出するカテ
   ーテル管とを有し、 前記バルーン膜の後端部と、前記カテーテル管の先端部
   とが、相互に折り重ならないように、金属製接続チュー
   ブの両端外周に接合してあることを特徴とするバルーン
   カテーテル。