JPH0559400U - 放射性物質収納体の保管庫 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は、放射性物質収納体の保管庫に係る
もので、放射化した塵埃の外部拡散を防止するととも
に、セル室への塵埃の侵入及び堆積を抑制する。 【構成】 放射性物質収納体を収容するセル室に、高温
状態の空気を排出する排気シャフトや冷却空気を送り込
む給気シャフトが配され、これらシャフトの内部に、挿
通する空気流と交差状態の水カーテンが形成される。水
カーテンに空気流が接触することにより、空気中に混入
した放射性粒体が吸着除去される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、放射性物質収納体の保管庫に係り、特に、放射性物質の拡散及び汚 染防止を図るものである。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、原子力発電プラント等で発生する高レベル放射性廃棄物は、例えばガ ラス固化処理することによって、取り扱い性を向上させることができる。そして 、ガラス固化等の処理がなされた固化パッケージ等の放射性物質収納体は、図２ に示すような放射性廃棄物の保管庫で長期間保管される計画である。

【０００３】 図２において、符号Ｐは高レベル放射性廃棄物をガラス固化する等の処理を施 してなる放射性物質収納体、１は放射性物質収納体Ｐを多数収納保管するための セル室、２はセル室１を囲んでいる放射線遮蔽壁（コンクリート壁）、３はセル 室１の上方に設けられる搬送室、４はセル室１と搬送室３とを仕切っているコン クリート壁からなる天井スラブ、５は天井スラブ４から吊持されて放射性廃棄物 を縦積み状態に複数収納するための鋼管等の収納管（内管）、６はセル室１の中 に水平に架設されている支持構造物( 支持架構 )、７は支持構造物６に支持され かつ収納管５を囲んでいる外管、８は外気入口、９は空気出口、１０は給気シャ フト、１１は排気シャフト、１２は収納管５の上部を密閉する閉塞蓋、１３は収 納管５と外管７との間に形成されかつ給気シャフト１０及び排気シャフト１１に 連通させられる筒状冷却流路である。

【０００４】 このような構造の保管庫では、放射性物質の崩壊熱によって、収納管５の温度 が高くなると、筒状冷却流路１３の空気が上昇する対流が生じて、図２に矢印で 示すように、外気入口８から取り入れた空気が挿通することによって冷却が行な われ、加熱された空気が空気出口９から排出される。したがって、動力源を必要 とせず、崩壊熱が生じている期間、自然の対流による冷却が行なわれ、停電等に 左右されず高い安全性を有するものとなる。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、かかる構造の保管庫では、外気入口８や空気出口９から、塵埃等が空 気流とともにセル室１の内部に入り込むと、放射線被曝によって新たな放射性物 質となって、セル室１の底部等に堆積する現象が生じ易くなり、一部が空気流と ともに空気出口９から保管庫の外に送り出されることを考慮すべきである。

【０００６】 本考案は、かかる事情に鑑みてなされたもので、放射化した塵埃の外部拡散 を防止すること、セル室への塵埃の侵入を抑制すること、放射性物質を除去 することによって健全性を確保すること等を目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案は、上記課題を解決する四つの手段を提案している。 第１の手段は、放射線遮蔽壁によって囲まれ放射性物質収納体を収容するセル 室に、高温状態の空気を排出する排気シャフトが配され、該排気シャフトの内部 に、挿通する空気流と交差状態の水カーテンが形成される構成の放射性物質収納 体の保管庫としている。 第２の手段は、排気シャフトの内部に、空気流の屈曲路が形成され、該屈曲路 の段部に、水カーテンが形成される構成を第１の手段に付加するものである。 第３の手段は、セル室に冷却空気を送り込む給気シャフトの内部に、水カーテ ンが形成される構成を第１または第２の手段に付加するものである。 第４の手段は、セル室の天井スラブに、放射性物質収納体の搬入口が上方に突 出状態に配され、該搬入口の回りに天井スラブの上を覆う貯留水層が形成され、 該貯留水層から水カーテンに水が流下供給される構成を第１、第２または第３の 手段に付加するものである。

【０００８】

【作用】

第１の手段にあっては、放射線遮蔽壁によって囲まれ放射性物質収納体を収容 するセル室に、高温状態の空気中に放射性物質が混入していると、空気が排気シ ャフトを挿通する課程で、空気流が水カーテンと交差して、空気中に含まれる放 射性物質が水に吸着されて洗い流されることにより除去される。 第２の手段にあっても、第１の手段と同様に放射性物質の除去が行なわれるが 、加えて、空気流が屈曲路を経由することによって、空気流の流路が長く設定さ れ、かつ、段部からの水の流下により、水カーテンが形成されて空気流との交差 箇所の設定及び放射性物質の除去が容易になる。 第３の手段にあっては、第１の手段または第２の手段による各作用に加えて、 外部からセル室内部への塵埃の流入が水カーテンによって阻止される。 第４の手段にあっては、第１の手段、第２の手段または第３の手段による各作 用に加えて、天井スラブが、貯留水層によって冷却されるとともに、セル室から の中性子等の放射線が貯留水層によって減衰させられる。そして、貯留水層から 水カーテンに水が流下供給される。

【０００９】

【実施例】

以下、本考案に係る放射性物質の貯蔵庫の一実施例について、図１を参照して 説明する。 なお、図２と共通する箇所には、同一符号を付して説明を簡略化する。

【００１０】 図１において、符号２０は保管庫建屋、２１はメンテナンス室、２２は給水管 、２３はサンプ室、２４はサンプ室、２５は水カーテン、２６は屈曲路、２７は 段部、２８は搬入口（搬出入口）、２９は貯留水層である。

【００１１】 前記保管庫建屋２０は、コンクリート壁等の放射線遮蔽壁を有する建造物とさ れる。

【００１２】 前記メンテナンス室２１は、搬送室３の上部等に配される。その内部には、循 環用ポンプ３０と、放射性物質を捕捉するためのフィルタ３１と、冷却器３２と が直列接続状態に配され、循環用ポンプ３０の吸入口と給気シャフト１０のサン プ室２３との間が、水回収配管３３によって接続され、循環用ポンプ３０の吐出 口側に位置する冷却器３２と、貯留水層２９が形成される搬送室３の下方位置と の間が、水供給配管３４とによって接続されている。 そして、冷却器３２には、熱交換用熱媒体を挿通させるための冷却媒体供給管 ３２ａが配される。

【００１３】 前記給水管２２は、搬送室３の内部の貯留水層２９と給気シャフト１０及び排 気シャフト１１との間を接続した状態に配され、ノズル２２ａから水を噴出する ことによって水カーテン２５を形成する。

【００１４】 前記サンプ室２３，２４は、給気シャフト１０及び排気シャフト１１の直下位 置に配されて、水カーテン２５の形成時に落下した水を貯留するものであり、両 サンプ室２３，２４の間が、連結配管３５によって接続され、サンプ室２４にお ける液位が設定値を越えた場合に、オーバーフローした水をサンプ室２３に流下 させるようにしている。 そして、排気シャフト１１の底部に配されるサンプ室２４の下方位置には、バ ルブ室３５ａが配され、サンプ室２４の底部と連結配管３５との間に、これらを 接続する水抜き配管３５ｂ及び開閉弁３５ｃが配される。

【００１５】 前記水カーテン２５は、給気シャフト１０及び排気シャフト１１の内部に、挿 通する空気流と交差した状態に形成される。 図１例では、給気シャフト１０及び排気シャフト１１の内部に、空気流を蛇行 させるための屈曲路２６が形成される。該屈曲路２６は、互違い状に水平方向に 突出する段部２７を上下に配して、その先端から水を流下させて薄い水膜を生じ させることにより、水カーテン２５が形成される。

【００１６】 前記搬入口（搬出入口）２８は、天井スラブ４に、収納管５の内部と連通状態 にかつ上方に突出状態に配され、放射性物質収納体Ｐを搬送室３から収納管５の 内部へ吊り降ろす場合、あるいは、放射性物質収納体Ｐを収納管５の内部から取 り出す場合等に利用され、通常状態においては閉塞蓋１２によって閉塞される。

【００１７】 前記貯留水層２９は、搬入口２８の回りに、その上部開口よりも下方位置まで 水を貯留することによって、天井スラブ４の上を覆うように形成され、該貯留水 層２９から給水管２２を経由して、給気シャフト１０及び排気シャフト１１の内 部に、水を供給して水カーテン２５を形成する。 なお、初期状態における水の供給や水量不足時の水の補給は、図示を略した水 供給系によって適宜実施される。

【００１８】 このような構造の保管庫であると、放射性物質の崩壊熱による放射性物質収納 体Ｐの発熱に基づいて収納管５が高温となると、その回りの加熱された空気が上 昇することによって、図１に各矢印で示すように、空気流（自然対流）が生じる 。

【００１９】 搬送室３における天井スラブ４の上に、貯留水層２９が形成されるとともに、 その貯留水量が十分であると、オーバーフローした分の水が、給水管２２から給 気シャフト１０及び排気シャフト１１の内部に流下して、ノズル２２ａから噴出 する。 排気シャフト１１の内部に、ノズル２２から噴出した水は、一つの段部２７か ら流下することによって水カーテン２５を形成し、この水カーテン２５の水が次 の段部２７の上に流下して、次の水カーテン２５を形成することが段部２７の数 だけ繰り返される。

【００２０】 排気シャフト１１を上昇する空気中に、セル室１に浮遊していた放射性粒子が 混入していると、空気流が排気シャフト１１を挿通する課程で水カーテン２５を 繰り返し通り抜けることになり、空気流に含まれる放射性粒子が水によって吸着 されて、空気流から除去される。したがって、排気シャフト１１における空気出 口９からは、放射性物質を含まない空気のみが排出される。

【００２１】 放射性粒子を吸着した水は、サンプ室２４に集められた後、オーバーフロー分 が、連結配管３５を経由して給気シャフト１０におけるサンプ室２３まで流下す る。

【００２２】 給気シャフト１０の部分においても、外気入口８から取り入れた空気中に塵埃 等が混入していた場合に、塵埃が段部２７から流下する水カーテン２５に吸着さ れることによってその除去が行なわれ、セル室１の内部に塵埃、つまり、放射化 する恐れのある固体が侵入することが抑制される。塵埃等を吸着した水は、サン プ室２３に集められる。 この場合にあって、給気シャフト１０では、図１に示すように、上下方向の距 離を大きくすることが可能であり、加えて、屈曲路２６の形成によって、水カー テン２５を多段とするように設定される。長い屈曲路２６を挿通する空気流が繰 り返し水カーテン２５と交差することによって、塵埃の除去効率が向上する。

【００２３】 循環用ポンプ３０が運転状態であると、サンプ室２３の水が順次吸上げられて 、天井スラブ４の上の貯留水層２９に戻され、再び、給水管２２から両シャフト １０，１１に流下させられる循環が行なわれる。 この循環の途中で、フィルタ３１によって水に混入している放射性粒子が除去 され、かつ、冷却器３２によって除熱される。 なお、全体の循環水量が不足した場合には、適宜補給がなされることは勿論で ある。

【００２４】 天井スラブ４の上に貯留水層２９が形成されると、セル室１の内部温度が高く なった場合に、最も温度が上昇する天井スラブ４の部分の冷却が効果的になされ る。

【００２５】 さらに、放射性物質収納体Ｐから上方に放出される放射線は、天井スラブ４と 閉塞蓋１２とによって減衰させられるが、貯留水層２９によってさらに減衰させ られる。この場合にあって、貯留水層２９の水素原子の存在によって、特に、中 性子の遮蔽効果が上昇するものとなる。かつ、貯留水層２９の深さ（厚さ）は、 オーバーフローした水を流下させるようにしているため、一定量以上に保持され る。

【００２６】 一方、停電等によって、循環用ポンプ３０の運転が停止すると、サンプ室２３ から貯留水層２９への水の汲み上げが行なわれなくなるため、貯留水層２９の液 位が給水管２２の連通位置まで徐々に低下して、水カーテン２５が形成されなく なるが、放射性物質収納体Ｐの除熱や隔離等の基本的な機能には、影響を及ぼす ことがない。

【００２７】 ＜他の実施態様＞ 本考案にあっては、ここまで説明した一実施例に代えて、次の技術を採用する ことができる。 放射性物質収納体Ｐがガラス固化体以外のもの、例えば、一般の放射性廃棄物 をパッケージ処理したものや、使用済燃料をパッケージ処理したものであること 。 給気シャフト１０の内部に配されるノズル２２ａの高さを貯留水層２９の液位 より低く設定し、水頭差の付与によってノズル２２ａから水を勢いよく噴出させ ること。 上記の場合にあって、ノズル２２ａからシャワー状に水を噴出させること。 水カーテン２５をシャワー状等とすること。

【００２８】

【考案の効果】

請求項１に係る放射性物質収納体の保管庫によれば、放射性物質収納体を収容 するセル室に、高温状態の空気を排出する排気シャフトが配され、排気シャフト の内部に、挿通する空気流と交差状態の水カーテンが形成される構成を採用して いるから、以下のような効果を奏する。 （１） 保管庫から外に送り出される空気中に放射性粒子が混入している場合に あっても、これら放射性粒子を水に吸着させることによって、放射性粒子が保管 庫の外に送り出される現象の発生を抑制して、放射性物質の拡散を図り、保管庫 の健全性を確保することができる。 （２） 水カーテンによって、空気流中の放射性粒子を吸着させることにより、 放射性粒子を水とともに簡単に回収することができる。 請求項２に係る放射性物質収納体の保管庫によれば、排気シャフトの内部に、 空気流の屈曲路が形成され、屈曲路の段部に水カーテンが形成されるので、請求 項１による効果に以下の効果が付加される。 （１） 屈曲路の形成によって空気流の流路が長く設定され、水カーテンの設置 数を多くして、放射性流体の吸着性を高め、安全性を向上させることができる。 （２） 屈曲路の段部から水を流下させることにより、水カーテンの形成を容易 に行なうことができる。 （３） 段部を複数とすることによって、水カーテンと空気流との交差箇所の設 定を容易にすることができる。 請求項３に係る放射性物質収納体の保管庫によれば、セル室に冷却空気を送り 込む給気シャフトの内部に、水カーテンが形成されるので、請求項１または請求 項２による効果に以下の効果が付加される。 （１） 外気入口から給気シャフトを経由して侵入する塵埃を水カーテンによっ て吸着して、塵埃が放射化することを防止することができる。 （２） セル室内部の塵埃量を低減して、セル室から外部に送られる空気への放 射性粒子の混入を防止することができる。 請求項４に係る放射性物質収納体の保管庫によれば、天井スラブに、搬入口が 上方に突出状態に配され、搬入口の回りに天井スラブの上を覆う貯留水層が形成 され、貯留水層から水カーテンに水が流下供給されるので、請求項１、請求項２ または請求項３による効果に以下の効果が付加される。 （１） セル室の内部温度が高くなった場合にあっても、天井スラブの冷却を実 施することができる。 （２） セル室から上方への放射線を貯留水層によって減衰させることができる 。特に、中性子線の遮蔽効果を向上させることができる。 （３） 貯留水層の水を流下させることにより、水カーテンを容易に形成するこ とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る放射性物質収納体の保管庫の一実
施例を示す正断面図である。

【図２】放射性廃棄物の保管庫の従来例を示す正断面図
である。

【符号の説明】

Ｐ 放射性物質収納体 １ セル室 ２ 放射線遮蔽壁（コンクリート壁） ３ 搬送室 ４ 天井スラブ ５ 収納管（内管） ６ 支持構造物（支持架構） ７ 外管 ８ 外気入口 ９ 空気出口 １０ 給気シャフト １１ 排気シャフト １２ 閉塞蓋 １３ 筒状冷却流路 ２０ 保管庫建屋 ２１ メンテナンス室 ２２ 給水管 ２２ａ ノズル ２３ サンプ室 ２４ サンプ室 ２５ 水カーテン ２６ 屈曲路 ２７ 段部 ２８ 搬入口（搬出入口） ２９ 貯留水層 ３０ 循環用ポンプ ３１ フィルタ ３２ 冷却器 ３２ａ 冷却媒体供給管 ３３ 水回収配管 ３４ 水供給配管 ３５ 連結配管 ３５ａ バルブ室 ３５ｂ 水抜き配管 ３５ｃ 開閉弁

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 放射線遮蔽壁によって囲まれ放射性物質
   収納体を収容するセル室に、高温状態の空気を排出する
   排気シャフトが配され、該排気シャフトの内部に、挿通
   する空気流と交差状態の水カーテンが形成されることを
   特徴とする放射性物質収納体の保管庫。
2. 【請求項２】 排気シャフトの内部に、空気流の屈曲路
   が形成され、該屈曲路の段部に、水カーテンが形成され
   ることを特徴とする請求項１記載の放射性物質収納体の
   保管庫。
3. 【請求項３】 セル室に冷却空気を送り込む給気シャフ
   トの内部に、水カーテンが形成されることを特徴とする
   請求項１または２記載の放射性物質収納体の保管庫。
4. 【請求項４】 セル室の天井スラブに、放射性物質収納
   体の搬入口が上方に突出状態に配され、該搬入口の回り
   に天井スラブの上を覆う貯留水層が形成され、該貯留水
   層から水カーテンに水が流下供給されることを特徴とす
   る請求項１、２または３記載の放射性物質収納体の保管
   庫。