JPH04115519U - スローアウエイ式ボールエンドミル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スローアウェイ式ボールエンドミルにおい
て、製造コストを著しく高めることなく、切削抵抗によ
るチップずれを防止する。 【構成】 ホルダの先端の半球状部にチップ取付座を形
成し、このチップ取付座に略楕円状のチップを配置する
とともに、チップ中央部を貫通してチップ取付座に締め
込まれたクランプネジによりチップを着脱可能に固定
し、チップ取付座のホルダ後端側の端部に、チップの後
端部側面を係止するためのチップ係止部を設けた。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、金型の倣い加工等に使用されるスローアウェイ式ボールエンドミル に係わり、特に、切削抵抗によるチップずれを防止するための改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

図１０および図１１は、従来のスローアウェイ式ボールエンドミルの一例を示 す図である。図中符号１は先端１Ａが半球状に形成された円柱状のホルダで、こ のホルダ１の先端半球状部１Ａには、ホルダ先端側から後方に延びる主刃チップ 取付座２および副刃チップ取付座３が、互いにほぼ１８０゜隔てて形成されてい る。

【０００３】 これらチップ取付座２，３には、主刃チップ４と副刃チップ５がそれぞれ取り 付けられ、各チップ４，５はその中央を貫通しチップ取付座２，３に締め込まれ たクランプネジ６，７により固定されている。

【０００４】 主刃チップ取付座２のホルダ中心側の側面２Ａは、その両端部が平面でこれら 平面の間を円弧状曲面でつないだ形状をなし、前記２つの平面がチップ位置決め 用の基準面になっている。また、前記側面２Ａと対応するチップ側面４Ａも側面 ２Ａと同様の形状とされ、これらの２対の平面同士を当接させることにより、チ ップ位置決めがなされている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上記のようなスローアウェイ式ボールエンドミルにおいては、図１ １に示すように主刃チップ４の先端にホルダ軸線方向に向けて切削抵抗が加わる と、主刃チップ取付座２の側面２Ａに沿って、主刃チップ４を中心Ｏ回りに回動 させる力が生じる。この回動力が前記基準面による位置規制力を越えると、クラ ンプネジ６と主刃チップ４との間の遊びの分だけ主刃チップ４が後方にずれて、 切刃の先端位置および最外周位置に狂いが生じ、切削精度が低下する欠点を有し ていた。

【０００６】 そこで上記問題を解決するため、実願昭６２−２３７９４３号では、図１２お よび図１３に示すように、チップ取付座２のネジ孔の周囲に円環状の凸部８（ま たは凹部）を形成する一方、これと対応するチップ４の裏面には、前記凸部８（ または凹部）が隙間なく嵌合する円環状の凹部９（または凸部）を形成した構成 が開示されている。

【０００７】 ところが、最近では切削効率をいっそう向上するため、さらに過酷な切削条件 を採る要求が高まりつつあり、前記の構造では、突出量が小さい凸部８に切削抵 抗の大部分がかかることから、凸部８の変形や摩耗等が生じるおそれを有し、強 度の点で前記要求に十分に応えきれない可能性があった。

【０００８】 一方、実開平２−３１６１８号公報には、チップの底面にチップ幅方向に延び る突条部（または凹溝）を形成する一方、チップ取付座にはこれと嵌合する凹溝 （または突条部）を形成する構成が開示されている。

【０００９】 しかし、このようにチップを係止するキー部（凸部・凹部）を設けたものでは 、いずれもチップそのものの形状を変更し、しかもキー部の加工には高い精度が 要求されるため、チップの製作コストが大きく上昇する欠点がある。

【００１０】 また、チップ底面に凹部を形成するものでは、チップの強度が低下することが 避けられず、荒切削する場合にチップが割れるおそれがあり、逆にチップ底面に 凸部を形成するものでは、チップ強度は低下しないものの、凹部を形成する場合 に比して高精度加工が格段に難しく、凸部の加工精度のばらつきによりチップの 着座性が不安定になりやすい欠点を有していた。

【００１１】

【課題を解決するための手段】 本考案は上記課題を解決するためになされたもので、ホルダの先端の半球状部 にチップ取付座を形成し、このチップ取付座に、切刃の回転軌跡が半球状となる ように略楕円状のチップを配置するとともに、このチップの中央部を貫通してチ ップ取付座に締め込まれたクランプネジにより前記チップを着脱可能に固定した スローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、前記チップ取付座のホルダ後端側 の端部に、前記チップの後端部側面を係止するためのチップ係止部を設けたこと を特徴としている。

【００１２】

【作用】

本考案のスローアウェイ式ボールエンドミルでは、チップ取付座のホルダ後端 側にチップ側面を直接係止する係止部が設けられているから、チップに回動力が 加わった場合にも、チップの回動中心からの距離が大きい位置で、チップ回動力 の向きに対して略垂直に係止部が面接触し、チップを係止する。したがって、係 止部の寸法が比較的小さくとも十分な係止強度が得られ、チップのずれが確実に 防止できる。

【００１３】 また、ホルダ側に係止部を形成するので、チップの強度を低下させることがな く、工具の製造コストが安いうえ、チップ底面とチップ取付座との当接面が平坦 でかつ当接面積を広く確保できるから、チップの着座性が高められる。

【００１４】

【実施例】

図１ないし図４は、本考案に係わるスローアウェイ式ボールエンドミルの第１ 実施例を示し、先の従来例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。

【００１５】 この実施例のボールエンドミルは、ホルダ１の主刃チップ取付座２のホルダ後 端側の端部に、主刃チップ４の側面との間に僅かな間隔Ｃを空けて起立する係止 壁（係止部）１０を形成したことを特徴としている。

【００１６】 係止壁１０は、その内側の側面が主刃チップ４の外側側面４Ｂと平行に形成さ れるとともに、外側の側面はホルダ外周面に倣った曲面とされている。係止壁１ ０の起立高さは、図４に示すように主刃チップ４の厚さとほぼ同程度とされ、係 止壁１０の肉厚は、十分なチップ係止強度が得られる値に設定されている。

【００１７】 前記間隔Ｃは０．２ｍｍ以下であることが望ましく、現実的には公差を考慮し て０．０３ｍｍ程度に設定される。０．２ｍｍより大きいと、主刃チップ４を係 止するまでのチップずれ量が大きくなり、ずれ防止効果が低下する。

【００１８】 上記構成からなるスローアウェイ式ボールエンドミルによれば、主刃チップ取 付座２のホルダ後端側に主刃チップ４の側面４Ｂを直接係止する係止壁１０を形 成したことにより、主刃チップ４の回動中心Ｏからの距離が大きい位置で、かつ 回転力に対して略垂直に面接触して主刃チップ４を係止するため、係止壁１０の 寸法が比較的小さくとも十分な係止強度が得られ、大きな切削抵抗がかかっても チップ４のずれが生じない。

【００１９】 また、ホルダ１側に係止壁１０を機械加工により一体形成した構造であるから 、チップ４の強度を低下させることがなく、かつ製造コストが安い。さらに、チ ップ４の底面とチップ取付座２との平坦な当接面積を広く確保できるため、チッ プ底面にキー部を形成する構成に比して、チップ４の着座性が高められる。

【００２０】 次に、図５ないし図７は本考案の第２実施例を示し、この例では、前記係止壁 １０の代わりに係止ネジ１２を使用したことを特徴とする。

【００２１】 すなわち、ホルダ１の、チップ取付座２の後端部近傍にはネジ孔１１がほぼ垂 直に形成され、このネジ孔１１に頭部１２Ａの広い係止ネジ１２が締め込まれる ことにより、図６に示すように、前記頭部１２Ａの底面がチップ４の側面と平行 に、若干の間隔Ｃを空けて配置されている。この間隔Ｃは前記実施例と同様であ る。また、係止ネジ１２の頭部１２Ａが当たる位置には、頭部１２Ａを受け入れ る浅い凹部１４が形成されている。

【００２２】 この例によれば、係止ネジ１２の締め込み量を調整することにより、前記間隔 Ｃを任意に調整することができ、チップ４のずれ防止効果を最適に調節すること が可能である。また、係止ネジ１２を締め込んだだけの単純な構造なので、製造 コストが安い利点も有する。

【００２３】 次に、図８および図９は本考案のさらに他の実施例（図ではチップを外してい る）を示すもので、まず図８に示す例は、図５ないし図７に示した構成に加えて 、チップ取付座２にクランプネジ６と同軸に円環形の凸部１６を形成するととも に、チップ４にはこの凸部１６が隙間なく嵌合する円環状の凹部を形成したこと を特徴とする。

【００２４】 また、図９に示す例は、図１ないし図４に示した構成に加えて、チップ取付座 ２にクランプネジ６と同軸に円環形の凸部１６を形成するとともに、チップ４に はこの凸部１６が隙間なく嵌合する円環状の凹部を形成し、さらに係止壁１０と チップ取付座の側面２Ａとの間に盗み２０を形成したものである。

【００２５】 上記２種の実施例によれば、第２あるいは第１実施例のそれぞれに比して、チ ップ４の係止力をさらに高めることができるから、重切削を行う場合にもより確 実なチップ４のずれ防止効果が得られる。

【００２６】 なお、本考案は上記各実施例のみに限定されるものではなく、各部の形状は必 要に応じて適宜変更してよい。また、上記各実施例では、主刃チップ４に対する 係止部のみを設けていたが、副刃チップ５に対して同様の係止部を形成すること も可能である。

【００２７】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案に係わるスローアウェイ式ボールエンドミルでは 、チップ取付座のホルダ後端側の端部に、チップの後端部側面を係止するための チップ係止部を設けているから、チップに回転力が加わった場合には、チップの 回動中心からの距離が大きい位置で、チップ回転力の向きに対して略垂直に係止 部がチップ側面に当接してチップを係止する。したがって、係止部の寸法が比較 的小さくとも十分な係止強度が得られ、チップのずれが確実に防止できる。

【００２８】 また、ホルダ側に係止部を形成するので、チップの強度を低下させることがな く、工具の製造コストが安いうえ、チップ底面とチップ取付座との当接面が平坦 で、かつ当接面積を広く確保できるから、チップの着座性が良好である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係わるスローアウェイ式ボールエンド
ミルの第１実施例を示す側面図である。

【図２】同実施例の正面図である。

【図３】図１中III−III線視断面図である。

【図４】同実施例を下方からみた図である。

【図５】本考案の第２実施例を示す側面図である。

【図６】図５中VI−VI線視断面図である。

【図７】同実施例を下方からみた図である。

【図８】本考案の第３実施例を示す側面図である。

【図９】本考案の第４実施例を示す側面図である。

【図１０】従来のスローアウェイ式ボールエンドミルを
示す側面図である。

【図１１】同ボールエンドミルの要部の側面図である。

【図１２】従来の別なボールエンドミルの分解図であ
る。

【図１３】同ボールエンドミルの要部の断面図である。

【符号の説明】

１ ホルダ １Ａ 先端半球状部 ２ 主刃チップ取付座（チップ取付座） ２Ａ 基準面 ３ 副刃チップ取付座 ４ 主刃チップ（チップ） ５ 副刃チップ ６ クランプネジ １０ 係止壁（係止部） １２ 係止ネジ １２Ａ 頭部（係止部）

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ホルダの先端の半球状部にチップ取付座
   を形成し、このチップ取付座に、切刃の回転軌跡が半球
   状となるように略楕円状のチップを配置するとともに、
   このチップの中央部を貫通してチップ取付座に締め込ま
   れたクランプネジにより前記チップを着脱可能に固定し
   たスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、前記チ
   ップ取付座のホルダ後端側の端部に、前記チップの後端
   部側面を係止するためのチップ係止部を設けたことを特
   徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。