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JP7613130B2 - リガーゼ変異体 - Google Patents

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Description

本発明は、リガーゼ変異体などに関する。
T4 RNAリガーゼ2は、ATPの存在下でリボヌクレオチドの連結能を有するRNAリガーゼ(EC6.5.1.3)の一種であり、エシェリヒアへの感染能を有するT4バクテリオファージに由来する酵素である(NP_049790)。T4 RNAリガーゼ2は、ホスホジエステル結合を形成することにより、核酸の5’末端のリン酸基(ドナー)を3’末端のヒドロキシル基(アクセプター)に連結する能力を有する。T4 RNAリガーゼ2は、突出末端を有する二本鎖RNAの連結、および二本鎖RNA中のニックの連結等の反応に使用されている。T4 RNAリガーゼ2はまた、RNAのみならず、DNA、ならびにDNAおよびRNA以外の修飾核酸も基質として利用できることが知られている。また、T4 RNAリガーゼ2には、幾つかの変異体が知られている。T4 RNAリガーゼ2の先行技術については、下記を参照することができる。
国際公開第2008/094599号
[online],INTERNET,NCBI Protein Database,2018年8月13日,NP_049790,検索日:2020年2月27日,URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_049790 Chauleau, M., & Shuman, S. (2013). Kinetic mechanism of nick sealing by T4 RNA ligase 2 and effects of 3′-OH base mispairs and damaged base lesions. RNA, 19(12): 1840-1847. Nandakumar, J., Shuman, S., Lima, C. D. (2006). RNA ligase structures reveal the basis for RNA specificity and conformational changes that drive ligation forward. Cell, 6;127(1):71-84. Ho, C. K., & Shuman, S. (2002). Bacteriophage T4 RNA ligase 2 (gp24.1) exemplifies a family of RNA ligases found in all phylogenetic domains. PNAS, 1;99(20):12709-14. Nandakumar, J., Ho, C. K., Lima, C. D., Shuman, S. (2004). RNA substrate specificity and structure-guided mutational analysis of bacteriophage T4 RNA ligase 2. J. Biol. Chem., 23;279(30):31337-47. Nandakumar, J. & Shuman, S. (2004). How an RNA ligase discriminates RNA versus DNA damage. Mol. Cell., 22;16(2):211-21. Nandakumar, J. & Shuman, S. (2005). Dual mechanisms whereby a broken RNA end assists the catalysis of its repair by T4 RNA ligase 2. J. Biol. Chem., 24;280(25):23484-9. Yin, S., Ho, C. K., Shuman, S. (2003). Structure-function analysis of T4 RNA ligase 2. J. Biol. Chem., 16;278(20):17601-8. Yin, S., Kiong Ho, C., Miller, E. S., Shuman, S. (2004). Characterization of bacteriophage KVP40 and T4 RNA ligase 2. Virology, 5;319(1):141-51.
本発明の目的は、優れた性質を有するリガーゼ変異体を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)に対してそれぞれ93%、87%および95%のアミノ酸配列同一性を示し(後述の表1を参照)、かつ当該T4 RNAリガーゼ2に比し優れた性質を有する3種のリガーゼ変異体Mut1~3(配列番号1~3)を開発することに成功し、もって本発明を完成するに至った。上記先行技術は、このような3種のリガーゼ変異体を教示も示唆もしていない。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕下記(1)、(2)または(3)のリガーゼ変異体:
(1)配列番号1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;
(2)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;または
(3)配列番号3のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体。
〔2〕核酸が、DNAおよび/または修飾核酸を含んでいてもよい一本鎖RNAまたは二本鎖RNAである、〔1〕のリガーゼ変異体。
〔3〕〔1〕または〔2〕のリガーゼ変異体の存在下で核酸材料を連結して核酸生成物を生成することを含み、
核酸材料が、一本鎖核酸材料、二本鎖核酸材料、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる、核酸生成物の製造方法。
〔4〕核酸材料がRNAである、〔3〕の方法。
〔5〕核酸材料が4本以上の一本鎖RNAである、〔3〕または〔4〕の方法。
〔6〕核酸生成物が12~27塩基長の相補部分を含む、〔3〕~〔5〕のいずれかの方法。
〔7〕核酸材料がDNAおよび/または修飾核酸を含む、〔3〕~〔6〕のいずれかの方法。
〔8〕核酸材料の濃度が1μM以上である、〔3〕~〔7〕のいずれかの方法。
〔9〕核酸生成物がsiRNAである、〔3〕~〔8〕のいずれかの方法。
〔10〕〔1〕または〔2〕のリガーゼ変異体をコードするポリヌクレオチド。
〔11〕〔10〕のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
〔12〕〔1〕または〔2〕のリガーゼ変異体をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む形質転換微生物。
〔13〕〔1〕または〔2〕のリガーゼ変異体を、〔12〕の形質転換微生物を用いて生成することを含む、リガーゼ変異体の製造方法。
本発明によれば、核酸材料から核酸生成物(例、siRNAやヘテロ二本鎖核酸等の修飾核酸)を効率的に製造することができる。
図1は、本発明のリガーゼ変異体(Mut1~3)のアミノ酸配列(配列番号1~3)を示す図である。 図2は、4断片の一本鎖オリゴヌクレオチドのライゲーション反応により生成する二本鎖オリゴヌクレオチドを示す図である。修飾ヌクレオチド残基の表記は、表2のものと同じである。 図3は、(A)4断片の一本鎖オリゴヌクレオチドのライゲーション反応により生成する二本鎖オリゴヌクレオチド、および(B)当該二本鎖オリゴヌクレオチドの生成のタイムコースを示す図である。修飾ヌクレオチド残基の表記は、表4のものと同じである。 図4は、(A)3断片の一本鎖オリゴヌクレオチドのライゲーション反応により生成する二本鎖オリゴヌクレオチド、および(B)当該二本鎖オリゴヌクレオチドの量(反応時間15分)を示す図である。ライゲーションポイントから-2位、-1位、+1位、+2位のヌクレオチド残基の2’位がフッ素原子(F)、O-メチル(Ome)、O-メトキシエチル(MOE)に修飾された、または水素原子(DNA)に置換されたオリゴヌクレオチドを基質として用いた。
1.リガーゼ変異体
本発明は、下記(1)、(2)または(3)のリガーゼ変異体を提供する:
(1)配列番号1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;
(2)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;または
(3)配列番号3のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体。
配列番号1のアミノ酸配列は、公知のT4 RNAリガーゼ2(NP_049790)のアミノ酸配列に対して93%の同一性を示す。(1)のリガーゼ変異体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を示すアミノ酸配列で特定されていることから、公知のT4 RNAリガーゼ2に対して十分に差別化されている。(1)のリガーゼ変異体における配列番号1のアミノ酸配列に対する同一性%の程度は、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上であってもよい。
配列番号2のアミノ酸配列は、公知のT4 RNAリガーゼ2(NP_049790)のアミノ酸配列に対して87%の同一性を示す。(2)のリガーゼ変異体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列で特定されていることから、公知のT4 RNAリガーゼ2に対して十分に差別化されている。(1)のリガーゼ変異体における配列番号2のアミノ酸配列に対する同一性%の程度は、好ましくは91%以上、より好ましくは92%以上、さらにより好ましくは93%以上、最も好ましくは94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。
配列番号3のアミノ酸配列は、公知のT4 RNAリガーゼ2(NP_049790)のアミノ酸配列に対して95%の同一性を示す。(3)のリガーゼ変異体は、配列番号3のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列で特定されていることから、公知のT4 RNAリガーゼ2に対して十分に差別化されている。(3)のリガーゼ変異体における配列番号3のアミノ酸配列に対する同一性%の程度は、好ましくは97.5%以上、より好ましくは98%以上、さらにより好ましくは98.5%以上、最も好ましくは99%以上または99.5%以上であってもよい。
アミノ酸配列の同一性%の算出は、株式会社ゼネティックスのソフトウェアGENETYX Ver13.1.1を使用し、ORFにコードされるポリペプチド部分全長を用いて、Muscle alignmentもしくはClustalW alignmentもしくはMultiple sequence alignmentを行った後にGaps are take into accountの設定で計算させた際の数値を用いて行うことができる。配列番号1(全長 332個のアミノ酸残基)、配列番号2(全長 330個のアミノ酸残基)、および(全長 332個のアミノ酸残基)において上記のような同一性%を達成できるアミノ酸残基の修飾(例、置換、欠失、付加、もしくは挿入、またはそれらの組合せ)の個数は、90%以上については1~33個であり、91%以上については1~29個であり、92%以上については1~26個であり、93%以上については1~23個であり、94%以上については1~19個であり、95%以上については1~16個であり、96%以上については1~13個であり、97%以上については1~9個であり、98%以上については1~6個であり、99%以上については1~3個であってもよい。
本発明のリガーゼ変異体は、核酸の連結活性を有する。核酸としては、例えば、一本鎖核酸、および二本鎖核酸が挙げられる。核酸としてはまた、例えば、RNA、DNA、RNAおよびDNA以外の修飾核酸、ならびにこれらの混合型の核酸が挙げられる。好ましくは、核酸は、DNAおよび/または修飾核酸を含んでいてもよい一本鎖RNAまたは二本鎖RNAであってもよい。核酸の詳細は、後述する核酸生成物の製造方法における核酸材料と同様である。
本発明のリガーゼ変異体が有する核酸の連結活性は、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)のものに比し優れている限り特に限定されないが、T4 RNAリガーゼ2に比べて好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上、さらにより好ましくは1.8倍以上、特に好ましくは2.0倍以上の核酸の連結活性を有していてもよい。このような核酸の連結活性は、実施例に記載されるような所定の反応により測定することができる。例えば、このような反応は、下記a)~c)の手順により行われてもよい(例、実施例2を参照):
a)終濃度で10μM 核酸材料(例、一本鎖RNA)、50mM Tris-HCl(pH7.5)、2mM MgCl、1mMジチオスレイトール、0.4mM ATPを含む反応液20μLを調製する;
b)この反応液に精製リガーゼ変異体含有溶液 50μLを終濃度0.36μg/mLとなるよう添加して反応を開始する;
c)25℃1時間反応させる。
本発明のリガーゼ変異体はまた、優れた温度安定性を有することができる。例えば、本発明のアミノ酸配列を含むリガーゼ変異体は、熱処理およびそれに引き続き活性の測定が行われた場合、熱処理無しの条件下で測定された活性を基準として30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上の残存活性を有することが好ましい。このような条件は、25℃での23時間の保温、または37℃での4時間の保温(例、54mM Tris-HCl(pH7.5)、2.2mM MgCl、1.1mMジチオスレイトール、0.43mM ATP、および酵素0.78μg/mLを含む溶液中での保温)、およびそれに引き続き活性の測定を行う条件であってもよい。活性の測定は、上記段落中のa)~c)の条件下で行われてもよい。あるいは、活性の測定は、25℃もしくは37℃で15分間の反応において活性を測定する条件であってもよい。このような条件下で使用される反応液組成は、例えば、10μM オリゴヌクレオチド、50mM Tris-HCl(pH7.5)、2mM MgCl、1mM ジチオスレイトール、0.4mM ATP、および酵素0.72μg/mLであってもよい。酵素の温度安定性と液状安定性および/または長期保存安定性は一般に相関し得るので、優れた温度安定性を有する本発明のリガーゼ変異体は、液状安定性および/または長期保存安定性に優れるということができる。したがって、本発明のリガーゼ変異体は、試薬として有用である。
本発明のリガーゼ変異体は、所望の同一性%および連結活性が維持される範囲内において1以上のアミノ酸残基の変異を有していてもよい。変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置は、当業者に明らかである。例えば、当業者は、1)同種の特性を有する複数のタンパク質のアミノ酸配列(例、配列番号1~3)を比較し、2)相対的に保存されている領域、および相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を認識できる。したがって、当業者は、本発明のリガーゼ変異体のアミノ酸配列において変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置を特定できる。このような位置における変異後のアミノ酸残基は、変異前のアミノ酸残基と異なる所望の天然α-アミノ酸残基である。このような所望の天然α-アミノ酸残基は、L-アラニン(A)、L-アスパラギン(N)、L-システイン(C)、L-グルタミン(Q)、L-イソロイシン(I)、L-ロイシン(L)、L-メチオニン(M)、L-フェニルアラニン(F)、L-プロリン(P)、L-セリン(S)、L-スレオニン(T)、L-トリプトファン(W)、L-チロシン(Y)、L-バリン(V)、L-アスパラギン酸(D)、L-グルタミン酸(E)、L-アルギニン(R)、L-ヒスチジン(H)、L-リジン(K)、またはグリシン(G)の残基である。例えば、配列番号1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を示すアミノ酸配列では、配列番号1のアミノ酸配列に1~16個のアミノ酸残基の変異が導入されてもよい。配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列では、配列番号2のアミノ酸配列に1~33個のアミノ酸残基の変異が導入されてもよい。配列番号3のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列では、配列番号3のアミノ酸配列に1~9個のアミノ酸残基の変異が導入されてもよい。アミノ酸残基の変異は、アミノ酸残基の置換、欠失、付加および挿入からなる群より選ばれる。
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分岐側鎖を有するアミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間での置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルアラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイシンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよい。
本発明のリガーゼ変異体はまた、C末端またはN末端に、他のペプチド成分(例、タグ部分)を含んでいても。本発明のリガーゼ変異体に含まれ得る他のペプチド成分としては、例えば、目的タンパク質の精製を容易にするペプチド成分(例、ヒスチジンタグ、Strep-tag II等のタグ部分;グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質等の目的タンパク質の精製に汎用されるタンパク質)、目的タンパク質の可溶性を向上させるペプチド成分(例、Nus-tag)、シャペロンとして働くペプチド成分(例、トリガーファクター)、他の機能をもつタンパク質あるいはタンパク質のドメインあるいはそれらをリガーゼ変異体とつなぐリンカーとしてのペプチド成分が挙げられる。
2.本発明のリガーゼ変異体の製造に関連し得る発明
本発明のリガーゼ変異体は、本発明のリガーゼ変異体をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む形質転換微生物を用いて、または無細胞系等を用いて、調製することができる。本発明はまた、このようなポリヌクレオチドおよび形質転換微生物、ならびに形質転換体の作製に利用できる発現ベクターを提供する。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のリガーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAであってもよいが、DNAが好ましい。
本発明の形質転換微生物は、例えば、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを用いる方法(例、コンピテント細胞法、エレクトロポレーション法)、またはゲノム改変技術により作製することができる。発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じる組込み型(integrative)ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれることができる。一方、発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じない非組込み型ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれず、宿主細胞内において、発現ベクターの状態のまま、ゲノムDNAから独立して存在できる。あるいは、ゲノム編集技術(例、CRISPR/Casシステム、Transcription Activator-Like Effector Nucleases(TALEN))によれば、発現単位を宿主細胞のゲノムDNAに組み込むこと、および宿主細胞が固有に備える発現単位を改変することが可能である。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、宿主細胞で機能するターミネーター、リボゾーム結合部位、および薬剤耐性遺伝子等のエレメントをさらに含んでいてもよい。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する耐性遺伝子が挙げられる。
発現ベクターはまた、宿主細胞のゲノムDNAとの相同組換えのために、宿主細胞のゲノムとの相同組換えを可能にする領域をさらに含んでいてもよい。例えば、発現ベクターは、それに含まれる発現単位が一対の相同領域(例、宿主細胞のゲノム中の特定配列に対して相同なホモロジーアーム、loxP、FRT)間に位置するように設計されてもよい。発現単位が導入されるべき宿主細胞のゲノム領域(相同領域の標的)としては、特に限定されないが、宿主細胞において発現量が多い遺伝子のローカスであってもよい。
発現ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ファージ、または人工染色体であってもよい。発現ベクターはまた、組込み型(integrative)ベクターであっても非組込み型ベクターであってもよい。組込み型ベクターは、その全体が宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。あるいは、組込み型ベクターは、その一部(例、発現単位)のみが宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。発現ベクターはさらに、DNAベクター、またはRNAベクター(例、レトロウイルス)であってもよい。発現ベクターはまた、汎用されている発現ベクターであってもよい。このような発現ベクターとしては、例えば、pUC(例、pUC19、pUC18)、pSTV、pBR(例、pBR322)、pHSG(例、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398)、RSF(例、RSF1010)、pACYC(例、pACYC177、pACYC184)、pMW(例、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218)、pQE(例、pQE30)、およびその誘導体が挙げられる。
本発明のリガーゼ変異体を発現させるための宿主としては、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌、コリネバクテリウム属細菌〔例、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)〕、およびバチルス属細菌〔例、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)〕をはじめとする種々の原核細胞、サッカロマイセス属細菌〔例、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)〕、ピヒア属細菌〔例、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)〕、アスペルギルス属細菌〔例、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)〕をはじめとする種々の真核細胞を用いることができる。宿主としては、所定の遺伝子を欠損する株を用いてもよい。形質転換微生物としては、例えば、細胞質中に発現ベクターを保有する形質転換微生物、およびゲノム上に目的遺伝子が導入された形質転換微生物が挙げられる。
本発明の形質転換微生物は、所定の培養装置(例、試験管、フラスコ、ジャーファーメンター)を用いて、例えば後述の組成を有する培地において培養することができる。培養条件は適宜設定することができる。具体的には、培養温度は10℃~37℃であってもよく、pHは6.5~7.5であってもよく、培養時間は1h~100hであってもよい。また、溶存酸素濃度を管理しつつ培養を行っても良い。この場合、培養液中の溶存酸素濃度(DO値)を制御の指標として用いることがある。大気中の酸素濃度を21%とした場合の相対的な溶存酸素濃度DO値が、例えば1~10%を、好ましくは3%~8%を下回らない様に、通気・攪拌条件を制御することが出来る。また、培養はバッチ培養であっても、フェドバッチ培養であっても良い。フェドバッチ培養の場合は糖源となる溶液やリン酸を含む溶液を培養液に連続的あるいは不連続的に逐次添加して、培養を継続することも出来る。
形質転換される宿主は、上述したとおりであるが、大腸菌について詳述すると、大腸菌K12株亜種のエシェリヒア コリ JM109株、DH5α株、HB101株、BL21(DE3)株などから選択することが出来る。形質転換を行う方法、および形質転換微生物を選別する方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor press(2001/01/15)などにも記載されている。以下、形質転換された大腸菌を作製し、これを用いて所定の酵素を製造する方法を、一例としてより具体的に説明する。
本発明のポリヌクレオチドを発現させるプロモーターとしては、通常E.coliにおける異種タンパク質生産に用いられるプロモーターを使用することができ、例えば、PhoA、PhoC、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージのPRプロモーター、PLプロモーター、T5プロモーター等の強力なプロモーターが挙げられ、PhoA、PhoC、lacが好ましい。また、ベクターとしては、例えば、pUC(例、pUC19、pUC18)、pSTV、pBR(例、pBR322)、pHSG(例、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398)、RSF(例、RSF1010)、pACYC(例、pACYC177、pACYC184)、pMW(例、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218)、pQE(例、pQE30)、およびその誘導体等を用いてもよい。他のベクターとしては、ファージDNAのベクターを利用してもよい。さらに、プロモーターを含み、挿入DNA配列を発現させることができる発現ベクターを使用してもよい。好ましくは、ベクターは、pUC、pSTV、pMWであってもよい。
また、本発明のポリヌクレオチドの下流に転写終結配列であるターミネーターを連結してもよい。このようなターミネーターとしては、例えば、T7ターミネーター、fdファージターミネーター、T4ターミネーター、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネーター、大腸菌trpA遺伝子のターミネーターが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドを大腸菌に導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入および/または付加などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。
また、形質転換微生物を選別するために、ベクターがアンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有することが好ましい。このようなプラスミドとして、強力なプロモーターを持つ発現ベクターが市販されている〔例、pUC系(タカラバイオ社製)、pPROK系(クローンテック製)、pKK233-2(クローンテック製)〕。
得られた本発明の発現ベクターを用いて大腸菌を形質転換し、この大腸菌を培養することにより、本発明のリガーゼ変異体を得ることができる。
培地としては、M9-カザミノ酸培地、LB培地など、大腸菌を培養するために通常用いる培地を用いてもよい。培地は、所定の炭素源、窒素源、補酵素(例、塩酸ピリドキシン)を含有していてもよい。具体的には、ペプトン、酵母エキス、NaCl、グルコース、MgSO、硫酸アンモニウム、リン酸2水素カリウム、硫酸第二鉄、硫酸マンガン、などを用いても良い。また、培養条件、生産誘導条件は、用いたベクターのマーカー、プロモーター、宿主菌等の種類に応じて適宜選択される。
本発明のリガーゼ変異体を回収するには、以下の方法などがある。本発明のリガーゼ変異体は、本発明の形質転換微生物を回収した後、菌体を破砕(例、ソニケーション、ホモジナイゼーション)あるいは溶解(例、リゾチーム処理)することにより、破砕物および溶解物として得ることができる。このような破砕物および溶解物を、抽出、沈澱、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手法に供することにより、本発明のリガーゼ変異体を得ることができる。
3.核酸生成物の製造方法
本発明はまた、本発明のリガーゼ変異体の存在下で核酸材料を連結して核酸生成物を生成することを含む、核酸生成物の製造方法を提供する。核酸材料としては、一本鎖核酸材料、二本鎖核酸材料、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるものを使用することができる。
(核酸)
核酸材料および核酸生成物における核酸は、天然核酸および修飾核酸に分類することができる。天然核酸とは、細胞に含まれるポリヌクレオチドを構成するヌクレオチド残基(アデノシン(A)、グアノシン(G)、シチジン(C)、ウリジン(U)、デオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシシチジン(dC)、チミジン(dT)。以下、「天然ヌクレオチド残基」と呼ぶ。)から構成される核酸を(RNAおよびDNA)いう。修飾核酸とは、天然核酸以外の核酸をいい、天然ヌクレオチド残基以外のヌクレオチド残基(以下、「修飾残基」と呼ぶ。)を含む核酸である。修飾残基としては、例えば、修飾ヌクレオチド残基、アミノ酸残基、リンカーが挙げられる。修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、後述する修飾を含むヌクレオチド残基が挙げられる。アミノ酸には、アミノ酸の誘導体が含まれる。アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニン、およびこれらの誘導体が挙げられる。アミノ酸の誘導体とは、アミノ酸中の任意の原子または基が、別の原子または基で置換されたアミノ酸をいい、例えば、アミノ基中の水素原子、カルボキシル基中の水素原子、酸素原子、水酸基、側鎖中の任意の原子もしくは基、または骨格炭素原子(例、α-、β-、γ-、δ-炭素原子)に結合した水素原子が、別の原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子)または基(例、後述する化学修飾における置換後の置換基)で置換されたアミノ酸が挙げられる。
修飾ヌクレオチド残基における修飾には、ヌクレオチド残基の糖部分(リボースまたはデオキシリボース)の原子または基の置換、ヌクレオチド残基の糖部分自体(糖骨格)の置換、およびヌクレオチド残基の核酸塩基部分の修飾(例、核酸塩基部分の置換基の置換)が含まれる。
ヌクレオチド残基の糖部分の原子または基の置換としては、例えば、1’-H、2’-OH(リボースのみ)、2’-H、3’-OH、3’-NH、3’-H、3’-リン酸基、4’-H、5’-リン酸基、またはこれらの組合せの置換が挙げられる。ここで、リン酸基には、-O-P(O)(OH)だけでなく、酸素原子が硫黄原子またはΝHに置き換わった基(例えば、-O-Ρ(S)(OH)、-NH-Ρ(O)(OH)、-NH-Ρ(S)(OH))も含まれる。また、リン酸基中の水酸基(-OH)がOR(式中、Rは、リン酸基の保護基などの有機基を示す)に置き換わった基(例えば、保護されたリン酸基)も、リン酸基に含まれる。このような置換としては、例えば、1’、2’、3’、もしくは4’-化学修飾(1’、2’、3’、または4’部位における他の置換基への置換)、5’-または3’-リン酸基修飾(5’-または3’-リン酸基の他の置換基への置換)、架橋修飾(1’、2’、3’、または4’部位の2つ同士を架橋する置換)、およびキャリア付加修飾(1’、2’、3’、4’、または5’部位におけるキャリアへの置換)が挙げられる。
化学修飾は、例えば、オリゴヌクレオチドの分解耐性を向上させるために導入されてもよい。化学修飾における置換後の置換基としては、例えば、C1~6アルキルオキシC1~6アルキレン(例、メトキシエチル:MOE)、-O-C1~6アルキル(例、-O-Me)、-O-C6~14アリール(例、-O-フェニル)、-C-アリール(例、-C-フェニル)、ハロゲン原子(例、フッ素原子)、-O-C1~6アルキルN-アミドC1~6アルキレン(例、-O-N-メチルアセトアミド、-O-NMA)、-O-C1~6アルキル-(C1~6アルキル-)アミノ-C1~6アルキレン(例、-O-ジメチルアミノエトキシエチル、-O-DMAEOE)、および-O-アミノC1~6アルキル(例、-O-アミノプロピル、-O-AP)が挙げられる。化学修飾は、2’-化学修飾(2’部位の置換)、3’-化学修飾(3’部位の置換)が好ましく、中でも、2’-化学修飾(2’部位の置換)がより好ましい。2’-化学修飾における置換後の置換基としては、例えば、2’-C1~6アルキルオキシC1~6アルキレン(例、2’-メトキシエチル)、2’-O-C1~6アルキル(例、2’-O-Me)、2’-O-C6~14アリール(例、2’-O-フェニル)、2’-C-アリール(例、2’-C-フェニル)、2’-ハロゲン原子(例、2’-F)、2’-O-C1~6アルキルN-アミドC1~6アルキレン(例、2’-O-N-メチルアセトアミド、2’-O-NMA)、2’-O-C1~6アルキル-(C1~6アルキル-)アミノ-C1~6アルキレン(例、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル、2’-O-DMAEOE)、および2’-O-アミノC1~6アルキル(例、2’-O-アミノプロピル、2’-O-AP)が挙げられる。3’-化学修飾における置換後の置換基としては、例えば、3’-O-P(O)(OH)2、3’-O-Ρ(S)(OH)、3’-NH-Ρ(O)(OH)、3’-NH-Ρ(S)(OH))、および、リン酸基中の水酸基(-OH)がOR(式中、Rは、後述するリン酸基の保護基などの有機基を示す)に置き換わった基が挙げられる。
5’-または3’-リン酸基修飾は、例えば、オリゴヌクレオチドの分解耐性を向上させるために導入されてもよい。5’-または3’-リン酸基修飾としては、例えば、リン酸基(-O-P(O)(OH))から、リン酸基において酸素原子が硫黄原子またはΝHに置き換わった基への置換が挙げられる。このような基としては、例えば、-O-Ρ(S)(OH)(チオリン酸基:ホスホロチオエート修飾)、-NH-Ρ(O)(OH)、-NH-Ρ(S)(OH)が挙げられる。また、5’-または3’-リン酸基修飾には、リン酸基中の水酸基(-OH)がOR(式中、Rは、リン酸基の保護基などの有機基、を示す)に置き換わった基(例えば、保護されたリン酸基)も含まれる。リン酸基の保護基としては、例えば、トリチル(Tr)基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル(MMTr)基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)基、シアノエチル基(CN-C-)が挙げられる。
架橋修飾は、例えば、ヌクレオチド残基の立体構造安定性を向上させるために導入されてもよい。架橋修飾としては、例えば、2’4’-架橋修飾(2’-OHと4’-Hを架橋する置換)、3’5’-架橋修飾(3’-Hと5’-Hを架橋する置換)等が挙げられる。2’4’-架橋修飾としては、例えば、2’-OHと4’-Hの2’-O-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-O-メチレン-4’(ロック核酸:LNA)、2’-O-エチレン-4’(エチレン架橋核酸:ENA)、2’-O-メチル置換メチレン-4’への置換(コンストレインドエチル架橋化核酸:BNAの一種(cEt-BNA))、2’-OHと4’-Hの2’-O-C1~6アルキレン-O-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-O-メチレン-O-メチレン-4’(架橋化核酸:BNAの一種(BNACOC))、2’-OHと4’-Hの2’-O-N(R)-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-O-N(R)-メチレン-4’(架橋化核酸:BNAの一種(BNANC)、ここで、Rはメチル、水素原子またはベンジルを示す)、2’-NHと4’-Hの2’-N(R)-C(O)-4’への置換(例、2’-N(メチル)-C(O)-4’(アミド架橋核酸:AmNA))、2’-NHと4’-Hの2’-NH-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-NH-メチレン-4’)、2’-Hと4’-Hの2’-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-メチル置換エチレン-4’)が挙げられる。また、3’5’-架橋修飾としては、例えば、3’-Hと5’-Hの3’ -C1~6アルキレン-5’への置換(例、3’-エチレン-5’(ビシクロ核酸:Bc核酸)、Bc核酸の一種:tc核酸等))が挙げられる。
キャリア付加修飾におけるキャリアは、目的の修飾オリゴヌクレオチドに安定性、標的指向性、薬効等の性能を向上または付与するためのキャリアであってもよい。このようなキャリアは、使用目的に応じて、公知のキャリアから適宜選択することができる。キャリアとしては、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、ペプチド、リン酸、コレステロール、トコフェロール、脂肪鎖、葉酸が挙げられる。キャリア付加修飾における付加部位は、目的の修飾オリゴヌクレオチドの末端に相当する3’または5’部位が好ましい。
ヌクレオチド残基の糖部分自体の置換を含むヌクレオチド残基としては、例えば、5員環の糖から6員環の擬似糖への置換を含む修飾ヌクレオチド残基が挙げられる。このような修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)が挙げられる。また、ヌクレオチド残基の糖部分自体の置換を含む修飾ヌクレオチド残基としてはさらに、生体内の酵素(例、RNase等のヌクレアーゼ)により分解を受けずかつ免疫応答を誘導しないモルフォリノ環構造を持つヌクレオチド類似人工化合物であるモルフォリノ核酸(PMO)残基も挙げられる。
ヌクレオチド残基の核酸塩基部分の修飾としては、例えば、ヌクレオチド残基の核酸塩基部分がアルキル置換したもの(例、シトシル基の5位にメチル基が置換したもの)が挙げられる。
(核酸材料)
核酸材料は、単一であっても複数であってもよい。例えば、単一の核酸材料として、突出末端を有する二本鎖核酸が用いられる場合、本発明の方法は、当該二本鎖核酸の環化に用いることができる。複数の核酸材料が用いられる場合、本発明の方法は、突出末端を有する複数の二本鎖核酸の連結、突出末端を有する単一または複数の二本鎖核酸と単一または複数の一本鎖核酸との連結、複数の一本鎖核酸の連結等の連結に用いることができる。複数の核酸材料が用いられる場合の核酸材料の本数としては、2本以上であれば特に限定されず、例えば、2~10本、2~8本、3~7本、4~6本等の比較的少数の本数であってもよいが、10本を超える本数であってもよい。
核酸材料の長さは、特に限定されない。例えば、1000塩基長を超える長い核酸材料を用いることができる。あるいは、短い核酸生成物の製造が所望される場合、短い核酸材料を用いることができる。短い核酸材料は、例えば5塩基長以上、好ましくは6塩基長以上、より好ましくは7塩基長以上、さらにより好ましくは8塩基長以上、特に好ましくは9塩基長以上であってもよい。短い核酸材料はまた、19塩基長以下、好ましくは18塩基長以下、より好ましくは17塩基長以下、さらにより好ましくは16塩基長以下、特に好ましくは15塩基長以下であってもよい。
連結では、突出末端が利用されてもよい。連結で利用される突出末端としては、例えば、突出末端を有する二本鎖核酸(核酸材料)における突出末端、および核酸材料間(例、二本鎖核酸と一本鎖核酸との間、または一本鎖核酸間)のアリーリングで形成される突出末端が挙げられる。突出末端の長さは特に限定されないが、短い核酸生成物の製造が所望される場合、突出末端は、例えば1~10塩基長であり、好ましくは1~8塩基長であり、より好ましくは1~6塩基長であり、さらにより好ましくは2~6塩基長、3~6塩基長または4~6塩基長であってもよい。したがって、核酸材料として、このような突出末端を有する二本鎖核酸、または複数の核酸材料の組合せ(例、二本鎖核酸と一本鎖核酸との組合せ、複数の一本鎖核酸の組合せ)が選択されてもよい。
核酸材料は、遊離の形態であっても、固相に固定されていてもよい。また、核酸生成物と機能性部分との複合体化が所望される場合、核酸材料は、その対応部分において機能性部分と複合体化されていてもよい。
核酸材料は、化学合成法(例、固相合成法、液相合成)または酵素的合成法により製造することができる。このような合成法としては、例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2005/070859号に記載の方法が挙げられる。
好ましくは、核酸材料は、DNAおよび/または修飾核酸を含んでいてもよい一本鎖RNAまたは二本鎖RNAであってもよい。より好ましくは、このような核酸材料は、上述したような突出末端を有する二本鎖RNA、または上述したような突出末端をアニーリングで形成するような複数のRNA材料の組合せ(例、二本鎖RNAと一本鎖RNAとの組合せ、複数の一本鎖RNAの組合せ)であってもよい。
(核酸生成物)
核酸生成物は、塩基が対合している相補部分を含む。このような核酸生成物としては、例えば、二本鎖核酸、二本鎖様構造部分を含む一本鎖核酸(例、ヘアピン型核酸、ダンベル型核酸等のループ型核酸)が挙げられる。二本鎖核酸は、各鎖が上述した核酸である二本鎖核酸であってもよく、例えば、二本鎖RNA、二本鎖DNA、RNAおよびDNAからなるヘテロ二本鎖核酸、RNAおよびRNA-DNA混成核酸からなる二本鎖核酸、DNAおよびRNA-DNA混成核酸からなる二本鎖核酸、およびRNA-DNA混成核酸同士からなる二本鎖核酸が挙げられる。二本鎖核酸としては、例えば、siRNAやヘテロ二本鎖核酸が挙げられる。
特定の実施形態では、核酸生成物は、上述した修飾残基を相補部分に含んでいてもよい。このような核酸生成物としては、例えば、修飾型ヌクレオチド残基を含む二本鎖核酸またはループ型核酸(例、相補部分に修飾型ヌクレオチド残基を含む二本鎖核酸またはループ型核酸)、ループ部分に修飾型ヌクレオチド残基またはヌクレオチド残基以外の残基(例、アミノ酸残基やリンカー等)を含むループ型核酸が挙げられる(例、国際公開第2012/005368号)。このような核酸生成物において、一部のヌクレオチド残基が修飾型ヌクレオチド残基であってもよく、全てのヌクレオチド残基が修飾型ヌクレオチド残基であってもよいが、修飾ヌクレオチド残基がモルフォリノ核酸(PMO)残基の場合には、目的の修飾核酸において、一部のヌクレオチド残基がモルフォリノ核酸(PMO)残基であるのが好ましい。また、このような核酸生成物には、その配列の両端に修飾型ヌクレオチド残基を有し、その配列の中央部にRNaseの認識を受けるギャップ領域を有する核酸であるギャップマーが含まれ、さらに、その配列中に修飾型ヌクレオチド残基が混在している核酸であるミックスマー、その配列中の全てのヌクレオチド残基が修飾型ヌクレオチド残基である核酸である全修飾型核酸等のRNase活性を誘導しない核酸も含まれる。
核酸生成物は、塩基が対合している相補部分のみからなる核酸であってもよいが、相補部分に加えて、塩基が対合していない非相補部分を含む核酸であってもよい。相補部分および/または非相補部分の長さは特に限定されないが、相補部分および/または非相補部分は短いものであってもよい。例えば、短い相補部分は、11~27塩基長、12~27塩基長、15~27塩基長、または18~27塩基長であってもよい。例えば、短い非相補部分は、1~16塩基長、1~10塩基長、1~5塩基長、または1、2もしくは3塩基長であってもよい。核酸生成物は、相補部分に加えて非相補部分を有する場合、相補部分は、連続形態であってもよいが、非相補部分により分断された非連続形態であってもよい。核酸生成物の長さは特に限定されないが、核酸生成物は短いものであってもよい。短い核酸生成物は、例えば、20~80塩基長、または24~74塩基長であってもよい。
好ましくは、核酸生成物は、DNAおよび/または修飾核酸を含んでいてもよい一本鎖RNAまたは二本鎖RNAであってもよい。より好ましくは、このような核酸生成物は、上述したような修飾残基を相補部分に含んでいてもよい。
(連結のための反応条件)
反応系としては、水溶液を用いることができる。水溶液としては、緩衝液が好ましい。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液が挙げられる。pHは、例えば約5~9であってもよい。例えば、目的の核酸生成物の効率的な大量生産が特に所望される場合、pHは、7.5~9.0(例えば、8.0~8.5)であってもよい。
連結反応における各核酸材料の濃度は、核酸材料が溶解し、かつ目的の核酸生成物を生成するために十分な濃度であればよい。各核酸材料の濃度は、例えば1μM以上、10μM以上、50μM以上、100μM以上、300μM以上、500μM以上または1000μM以上であってもよい。各核酸材料の濃度はまた、例えば1M、100mM、または10mM以下であってもよい。目的の核酸生成物の効率的な大量生産が特に所望される場合、上記濃度のうち100μM以上の濃度で各核酸材料を用いることが好ましい。
連結反応において複数の核酸材料が用いられる場合、全核酸材料のモル数は、未反応の核酸材料量の低減により製造効率を向上させる観点から、ほぼ等量であることが好ましい。全核酸材料のモル数がほぼ等量であるためには、複数の核酸材料より選ばれる任意の2個の核酸材料の全モル比が、例えば0.5~2、好ましくは1/1.8~1.8、より好ましくは1/1.5~1.5、さらにより好ましくは1/1.2~1.2、特に好ましくは1/1.1~1.1の範囲内であってもよい。
連結反応における本発明のリガーゼ変異体の濃度は、目的の核酸生成物を生成するために十分な濃度であればよい。リガーゼ変異体の濃度は、例えば0.01U/μL以上、好ましくは0.02U/μL以上、より好ましくは0.03U/μL以上、さらにより好ましくは0.04U/μL以上であってもよい。リガーゼ変異体の濃度はまた、例えば1U/μL以下、好ましくは0.5U/μL以下、より好ましくは0.2U/μL以下、さらにより好ましくは0.1U/μL以下であってもよい。ここで、1ユニット(U)は、実施例2に記載の反応で1時間に1μmolの核酸生成物を生成するために必要な酵素量として定義される。
反応系は、補因子を含んでいてもよい。補因子としては、例えば、ATP、二価金属塩(例、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩)が挙げられる。反応系は、リガーゼの安定化剤を含んでいてもよい。リガーゼの安定化剤としては、例えば、酸化防止剤(例、ジチオスレイトール、メルカプトエタノール等の還元剤)が挙げられる。反応系は、酵素の安定保持および反応速度向上等の目的のため、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤(例、Triton X-100等のTritonシリーズの界面活性剤)、およびイオン性界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤)が挙げられる。また、反応系は、反応速度向上等の目的のため、ポリエチレングリコールを含んでいてもよい。
反応系は、低濃度の一価カチオン塩を含むか、または一価カチオン塩を実質的に含んでいなくてもよい。反応系が一価カチオン塩を含む場合、反応系中の一価カチオン塩濃度は、例えば10mM以下、好ましくは1mM以下、より好ましくは0.1mM以下、さらにより好ましくは0.01mM以下であってもよい。特に好ましくは、反応系は、一価カチオン塩を実質的に含んでいなくてよい。一価カチオン塩としては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン等の一価カチオンと、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のアニオンとの塩が挙げられる。
反応温度は、本発明のリガーゼ変異体の活性化のために十分な温度であればよい。このような温度は、例えば2~50℃、好ましくは16~50℃、より好ましくは25~50℃であってもよい。
反応時間は、目的の核酸生成物を生成するために十分な時間であればよい。このような時間は、例えば1~72時間であってもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕RNAリガーゼの設計および調製
1)RNAリガーゼの設計
機能既知のT4 RNAリガーゼ2(NP_049790.1)を鋳型とし、Blastpから類似配列を425個取得した。なおBlastpの解析条件として、Max target sequencesを10000,Expected thresholdの値を1.0E-6に設定した。取得した類似配列を解析し、重複した配列及び配列長が明らかに鋳型と異なるものを除去することで、172配列まで選抜した。これを配列ライブラリーとした。その後文献1(Nakano, S., Motoyama, T., Miyashita, Y., Ishizuka, Y., Matsuo, N., Tokiwa, H., Shinoda, S., Asano, Y., and Ito, S. (2018) Benchmark Analysis of Native and Artificial NAD-Dependent Enzymes Generated by a Sequence-Based Design Method with or without Phylogenetic Data, Biochemistry 57, 3722-3732.) 及び2 (Nakano, S., Niwa, M., Asano, Y., and Ito, S. (2019) Following the Evolutionary Track of a Highly Specific l-Arginine Oxidase by Reconstruction and Biochemical Analysis of Ancestral and Native Enzymes, Appl Environ Microbiol 85, e00459-00419.)で用いた手法を適用することで、T4 RNAリガーゼ2のモチーフ様配列(32位がAla,116位がPhe,170位がSer,274位がIle)を同定した。配列ライブラリーにおいて、これらモチーフ様配列を有する配列のみ選抜し、最終的に21配列のデータを得た。21配列を用いて人工設計を行い、Mut1、Mut2、およびMut3と名づけた配列番号1~3のアミノ酸配列で示される人工RNAリガーゼ配列を設計した(図1)。
Figure 0007613130000001
2)人工RNAリガーゼの発現菌株の構築
設計したRNAリガーゼをEscherichia coliのコドンに最適化し、pET-16b(Merck Millipore)のNde IおよびBam HIサイトに連結した発現プラスミドをユーロフィンジェノミクス社で合成した。Mut1、Mut2、およびMut3に対応するORFとして配列番号4~6の塩基配列を有する各人工設計RNAリガーゼ発現プラスミドをEscherichia coli BL21(DE3)株に形質転換し、アンピシリン 100mg/L含有のLB寒天プレートに塗布し、37℃で一晩培養して得られたコロニーを分離して各RNAリガーゼの発現菌株を取得した。この発現株では、N末端にHis-tagが付与された各RNAリガーゼが発現される。
3)人工RNAリガーゼの発現
各RNAリガーゼの発現菌株をアンピシリン 100mg/L含有のLB寒天プレートに塗布し、37℃で一晩培養した。生育した菌体をエーゼでかきとり、アンピシリン100mg/Lを含むLB培地150mLを添加した500ml容の坂口フラスコに植菌した。37℃でOD600が0.5となるまで3時間120rpmで振とう培養を行った後、Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside(IPTG)を終濃度0.1mMとなるように添加し、さらに37℃、120rpmで3時間培養を継続した。培養終了後、得られた培養液150mlより菌体を8000rpmで30分の遠心分離により回収した。
4)RNAリガーゼの精製
回収した菌体を250mM NaCl,10% Sucrose,15mM Imidazoleを含む50mM tris(hydroxymethyl)aminomethane-HCl緩衝液(pH7.5) 15mLに懸濁した。さらにLysozyme(Sigma-Aldrich)を終濃度50μg/mL、10% Triton-X100を終濃度0.1%になるように添加し、氷上で30分間静置した。30分後、超音波破砕機(インソネータ 201M)(クボタ)にて菌体を破砕し、10,000×gで10分の遠心分離により菌体残渣を除き、上清を可溶性画分とした。
得られた可溶性画分を、AKTA Pure(GEヘルスケア ライフサイエンス)を用いて、前記緩衝液で平衡化したHisTALON Superflow Cartridge(5mL)(タカラバイオ)に添加して吸着させた。非吸着タンパク質を250mM NaCl,10% Sucrose,15mM Imidazoleを含むTris-HCl緩衝液(pH7.5)緩衝液 30mlを用いて洗浄した後、250mM NaCl,10% Glycerol,200mM Imidazoleを含む50mM Tris-HCl(pH8.0)緩衝液で溶出した。
280nmの吸収でタンパク質の溶出を検出し、Hisタグ融合タンパクとして発現したRNAリガーゼが含まれる画分を集めた。4mlの溶出画分を、Amicon Ultra-15 10kDa(メルクミリポア)を用いて濃縮し、50mM KCl,35mM (NHSO,0.1mM EDTA,0.1mM DTT,50% Glycerolを含む10mM Tris-HCl(pH7.5)緩衝液にバッファーを置換し、50μLの溶液とした。精製酵素は本バッファー溶液として-20℃で保管した。配列1から3で示されるアミノ酸配列からなる各人工RNAリガーゼをそれぞれMut1、Mut2およびMut3と名付けた。150mlの培養液より各人工RNAリガーゼMut1、Mut2およびMut3をそれぞれ、4.2mg、1.1mg、および0.65mg得た。
〔実施例2〕各人工RNAリガーゼによる4断片のライゲーション反応
1)RNAライゲーション反応条件
調製した3種の人工RNAリガーゼのリガーゼ活性を以下の条件で測定した。基質として表2の4断片のオリゴヌクレオチドを用い、図2で示すように4断片のオリゴヌクレオチドを連結して、相補する2断片のヌクレオチドを生成する反応を行った。対照として市販のT4 RNAリガーゼ2 (New England Biolabs)を用いた。便宜上、MOD1-S-12UおよびMOD1-S-12Dの連結反応で生成するオリゴヌクレオチドをセンス鎖、MOD1-A-13UおよびMOD1-A-13Dより生成するオリゴヌクレオチドをアンチセンス鎖と表記した。
終濃度で10μMの各オリゴヌクレオチド、50mM Tris-HCl(pH7.5)、2mM MgCl、1mMジチオスレイトール、0.4mM ATPからなる反応液 20μLを氷上で調製し、200μL容のマイクロチューブにいれ、各精製酵素溶液 50μLを終濃度0.36μg/mLとなるよう添加して反応を開始した。サーマルサイクラーで25℃に保温し、反応開始1時間で、80℃に上げ、5分間加熱することにより反応を停止した。ライゲーション産物の濃度を下記の条件でHPLCにより定量した。
Figure 0007613130000002
2)HPLCによる分析
ライゲーション産物のオリゴヌクレオチドをACQUITY UPLC(登録商標) Oligonucleotide BEH C18 Column (Waters、1.7 μm 2.1×50 mm)を用いてHPLCにより定量した。HPLCはカラム温度60℃、検出波長260nm、インジェクション量10μL、流速0.4mL/minの条件で、移動相として100mM ヘキサフルオロイソプロパノール、8mM トリエチルアミン、0.004%リン酸を含む溶離液Aおよび10%メタノールを含む溶離液Bを用い、表3に示すリニアグラジエントにより分析した。ライゲーション別に合成した産物と同じ配列のオリゴヌクレオチドを別途合成し、これを標品としてライゲーション産物の濃度を定量した。
Figure 0007613130000003
3)結果
結果を表4に示す。MOD1-S-12UおよびMOD1-S-12Dの連結反応で生成するオリゴヌクレオチドを便宜上、センス鎖と表記した。対照のT4 RNAリガーゼ2を用いる反応では、1時間の反応によってセンス鎖のライゲーション産物が0.47μM生成した。人工RNAリガーゼではいずれも反応速度が上昇し、Mut1の反応では、T4 RNAリガーゼ2の場合と比較して、1.98μMのライゲーション産物が生成し、約4.2倍に大きく向上した。また、Mut2およびMut3でも、活性向上が観察され、T4 RNAリガーゼ2と比較して、1時間の反応によるライゲーション産物量が約2.2倍に向上した。本反応で1時間に1μmolのライゲーション産物を生成するために必要な酵素量を1unitとして定義すると、最も活性の高かったMut1では5.50unit/mgと算出された。
Figure 0007613130000004
〔実施例3〕基質高濃度条件での人工RNAリガーゼによる4断片のライゲーション反応
基質濃度を上げて、最も活性の向上したMut1 RNAリガーゼによるライゲーション反応を行った。基質として表5の4断片のオリゴヌクレオチドを用いた。対照としてT4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)を用いて反応した。図3(A)に示すように、MOD5-S-11UおよびMOD5-S-11Dの連結反応で生成するオリゴヌクレオチドをセンス鎖、MOD5-A-12UおよびMOD5-A-12Dより生成するオリゴヌクレオチドをアンチセンス鎖と表記した。
終濃度で500μMの各オリゴヌクレオチド、50mM Tris-HCl(pH8.0)、2mM MgCl、1mMジチオスレイトール、1.4mM ATP、および各酵素7.2μg/mLを含む10μLの反応液を200μL容のマイクロチューブに加えサーマルサイクラーで25℃に保温した。反応開始後、0.5、1、2、4、6および24時間で1μlの反応液をサンプリングし、10mM EDTA溶液49μLを添加して反応を停止した。ライゲーション産物の濃度を実施例2に記載の条件にてHPLCにより分析した。
ライゲーション産物の生成のタイムコースを図3(B)に示す。対照のT4 RNAリガーゼ2では、アンチセンス側のライゲーション産物の生成速度が遅く、反応24時間後のアンチセンス鎖およびセンス鎖のライゲーション産物量は、それぞれ320μMおよび120μMであり、基質として添加した4断片のオリゴヌクレオチドの一部が未反応のまま残存した。
一方、ライゲーション活性の向上したMut1では、センス側およびアンチセンス側のオリゴヌクレオチドのライゲーション速度が大きく改善した。反応24時間でのアンチセンス鎖およびセンス鎖のライゲーション産物量は、それぞれ470μMおよび450μMであり、基質として添加した4断片のオリゴヌクレオチドはほぼ完全に消費された。
Figure 0007613130000005
〔実施例4〕人工RNAリガーゼの基質特異性
図4(A)に示すように3断片のオリゴヌクレオチドを基質として、2断片のオリゴヌクレオチドを連結する反応で、人工RNAリガーゼの基質特異性の変化を調べた。連結されるオリゴヌクレオチドのライゲーションポイント近傍を修飾型RNAに置換したオリゴヌクレオチド、具体的には表6に示すようにライゲーションポイントから-2位、-1位、+1位、+2位の2’位がフッ素原子(F)やO-メチル、O-メトキシエチルに修飾された、または水素原子(DNA)に置換されたオリゴヌクレオチドを基質として用いた。最も活性の向上したMut1 RNAリガーゼおよび、対照としてT4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)を用いた。終濃度で10μMのオリゴヌクレオチド50mM Tris-HCl(pH7.5)、2mM MgCl、1mMジチオスレイトール、0.4mM ATP、および各酵素1.78μg/mLを含む20μLの反応液を200μL容のマイクロチューブに加え25℃に保温した。反応開始後、15分で3μlの反応液をサンプリングし、10mM EDTA溶液27μLを添加して反応を停止した。反応液に含まれるライゲーション産物の濃度を実施例2に記載の条件にてHPLCにより分析し、修飾核酸が含まれていないライゲーション産物を標品として、生成物を定量した。
15分の反応で生成したライゲーション産物の量を図4(B)に示した。対照のT4 RNAリガーゼ2では、全て天然型RNAからなるフラグメントを基質とした場合と比較して、-2位が2’-F、2’-MOE、DNAまたは、-1位が2’-O-Me、2’-MOE、DNAに置換したオリゴヌクレオチドを基質とした場合、ライゲーション産物量が5~50%まで大きく減少した。一方、ライゲーション活性の向上したMut1では、-2位が2’-FおよびDNAに置換したオリゴヌクレオチドを基質とした場合でも、ライゲーション産物量は、全て天然型RNAからなるフラグメントを基質とした場合と同程度であった。また、Mut1では、どのオリゴヌクレオチドを基質としても、T4 RNAリガーゼ2の2倍以上のライゲーション産物量を示した。
Figure 0007613130000006
〔実施例5〕人工RNAリガーゼの温度安定性
人工設計RNAリガーゼの温度安定性の評価を行った。最も活性の向上したMut1 RNAリガーゼおよび、対照としてT4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)を用いた。基質として表7の4断片のオリゴヌクレオチドを用いた。表7に示すように、RNA1-A-13UおよびRNA1-A-13Dより生成するオリゴ核酸をアンチセンス鎖と表記した。54mM Tris-HCl(pH7.5)、2.2mM MgCl、1.1mMジチオスレイトール、0.43mM ATP、および各酵素0.78μg/mLを含む9.2μLの溶液を200μL容のマイクロチューブで25℃に保温した。保温開始から23時間後、500μMの基質を各0.2μL添加し、ライゲーション反応を開始した。反応液組成は10μM オリゴヌクレオチド、50mM Tris-HCl(pH7.5)、2mM MgCl、1mM ジチオスレイトール、0.4mM ATP、および各酵素0.72μg/mLである。反応開始後、15分で3μLをサンプリングし、10mM EDTAを27μL添加することで反応を停止した。実施例2に記載の条件にてHPLCにより、アンチセンス鎖の生成物量を定量した。
15分の反応で生成したライゲーション産物量および残存活性を表8に示した。対照のT4 RNAリガーゼ2では、25℃で23時間保温した場合、未処理と比較して、ライゲーション産物量が19%まで大きく低下した。一方、ライゲーション活性の向上したMut1では、25℃で23時間保温した場合でも、ライゲーション産物量は未処理の89%であり、安定性が向上していた。
同様に37℃で4時間保温後の活性も測定した。表9に示すように、対照のT4 RNAリガーゼ2では、37℃で4時間保温した場合、ライゲーション産物量を確認できず大きく活性が低下していた。一方、ライゲーション活性の向上したMut1では、37℃で4時間保温した場合でも、ライゲーション産物量は未処理の83%であり、安定性が向上していた。
Figure 0007613130000007
Figure 0007613130000008
Figure 0007613130000009

Claims (14)

  1. 下記(1)、(2)または(3)のリガーゼ変異体:
    (1)配列番号1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)に比し1.5倍以上である核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;
    (2)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)に比し1.5倍以上である核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;または
    (3)配列番号3のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)に比し1.5倍以上である核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体。
  2. リガーゼ変異体が以下である、請求項1記載のリガーゼ変異体:
    (1)配列番号1のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)に比し1.5倍以上である核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;
    (2)配列番号2のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)に比し1.5倍以上である核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体;または
    (3)配列番号3のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、T4 RNAリガーゼ2(NP_049790)に比し1.5倍以上である核酸の連結活性を有するリガーゼ変異体。
  3. 核酸が、DNAおよび/または修飾核酸を含んでいてもよい一本鎖RNAまたは二本鎖RNAである、請求項1または2記載のリガーゼ変異体。
  4. 請求項1~3のいずれか一項記載のリガーゼ変異体の存在下で核酸材料を連結して核酸生成物を生成することを含み、
    核酸材料が、一本鎖核酸材料、二本鎖核酸材料、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる、核酸生成物の製造方法。
  5. 核酸材料がRNAである、請求項記載の方法。
  6. 核酸材料が4本以上の一本鎖RNAである、請求項または記載の方法。
  7. 核酸生成物が12~27塩基長の相補部分を含む、請求項のいずれか一項記載の方法。
  8. 核酸材料がDNAおよび/または修飾核酸を含む、請求項のいずれか一項記載の方法。
  9. 核酸材料の濃度が1μM以上である、請求項のいずれか一項記載の方法。
  10. 核酸生成物がsiRNAである、請求項のいずれか一項記載の方法。
  11. 請求項1~3のいずれか一項記載のリガーゼ変異体をコードするポリヌクレオチド。
  12. 請求項11記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  13. 請求項1~3のいずれか一項記載のリガーゼ変異体をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む形質転換微生物。
  14. 請求項1~3のいずれか一項記載のリガーゼ変異体を、請求項13記載の形質転換微生物を用いて生成することを含む、リガーゼ変異体の製造方法。
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