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JP7537145B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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JP7537145B2 JP2020115027A JP2020115027A JP7537145B2 JP 7537145 B2 JP7537145 B2 JP 7537145B2 JP 2020115027 A JP2020115027 A JP 2020115027A JP 2020115027 A JP2020115027 A JP 2020115027A JP 7537145 B2 JP7537145 B2 JP 7537145B2
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Description

本発明は検査性に優れたポリエステルフィルムに関する。
ポリエステルフィルムはその加工性の良さから、様々な工業分野に利用されている。例えば、ポリエステル層を基材として、離型性のある樹脂層(シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などを塗布し形成される層)を設けたフィルムは離型用途に好適に使用されている。ポリエステル層を基材とした離型フィルムは、セラミックグリーンシート製造用、液晶偏光板離型用、フォトレジスト用などの各種離型用途に用いられている。一般的な離型フィルムには、離型フィルムの上に離型対象物を設けた際の積層ズレや積層時の欠点を少なくすることや、離型フィルムと離型フィルム上に設けた離型対象物との離型性などが求められる。また、離型フィルム上に異物が存在すると、樹脂層を塗布する際に塗布ムラ・塗布抜けの要因となるため、離型フィルム上の異物低減に対する要望も高い。特に偏光板離型用では、離型フィルムが偏光板と貼り合わされたままクロスニコル検査を受けるため、そのクロスニコル検査を阻害しないために離型フィルム内の異物を低減すること(クロスニコル検査での易検査性)も要求される。その一方で、反射光および透過光を用いた検査も行われることから、離型フィルムのフィルムヘイズを好適な範囲に調整することも要求される。これまでに、離型フィルムの搬送性や離型性を向上させるための方法として、ポリエステルフィルム中に粒子を適量配合し、フィルム表面に微細な突起を形成する技術が知られている。特許文献1では、凝集シリカ、球状シリカ、炭酸カルシウムといった無機粒子を用いている。また、フィルムのヘイズを調整する方法として、ポリエステルフィルム中に粒子を適量配合してフィルムの不透明度を上げる技術が知られており、例えば特許文献2ではカルシウム化合物を用いている。
特開平8-124150号公報 特公平6-86537号公報 特開2005-138538号公報
しかしながら、ポリエステル中の無機粒子含有量を増やした場合、無機粒子の凝集による粗大粒子が発生しやすくなる。例えば特許文献3に記載されている磁気テープ用ポリエステルフィルムでは、添加した無機粒子が凝集により粗大突起を形成し、ドロップアウトなどの欠点を生むことや凝集粒子脱落による削れ性の悪化が起こるという課題を有している。離型フィルムでも同様に、添加した無機粒子の粗大異物が、下流工程での搬送中に脱落し、下流工程を汚染することが問題であった。また、フィルムの搬送性や離型性、またはフィルムヘイズを高めるために、無機粒子を多量に添加すると、無機粒子の凝集により形成される粗大異物によって検査性が悪化することも問題として挙げられる。
本発明は、かかる従来技術の欠点を解消することにある。すなわち、フィルムに含有させる粒子を有機粒子として、無機粒子の凝集による検査性悪化と、無機粒子脱落による下流工程の汚染を抑制したポリエステルフィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を取る。すなわち、
[I]有機粒子を含有するポリエステルフィルムであって、実質的に無機粒子を含有しておらず、前記ポリエステルフィルムに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲と0.8μm以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、ポリエステルフィルム表面の算術平均表面粗さRaが両面とも5nm以上であるポリエステルフィルム。
[II]2層以上からなるポリエステルフィルムであって、少なくとも一つの層に有機粒子を含有しており(かかる層を層Aとする)、前記層Aには実質的に無機粒子を含有しておらず、前記層Aに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲と0.8以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、前記層Aに含有する有機粒子のプロットにおいて、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲において最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率aと、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲で最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率bの比(a/b)が0.5以上6.0以下である[I]に記載のポリエステルフィルム。
[III]前記層Aが少なくとも片側の表層に有しており、前記層Aを有する表面の算術平均表面粗さRaが20nm以上30nm以下である、[II]に記載のポリエステルフィルム。
[IV]3層からなるポリエステルフィルムであって、両表層に有機粒子を含有しており(かかる層を層A、層A’とする)、層A、層A’にはいずれの層にも実質的に無機粒子を含有しておらず、層A、層A’に含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、いずれも粒子径0.2μm以上0.4μmの範囲と0.8μm以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、前記層A、層A’に含有する有機粒子のプロットにおいて、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲において最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率aと、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲で最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率bの比(a/b)が0.5以上6.0以下である[I]に記載のポリエステルフィルム。
[V]前記層Aを有する表面、前記層A’を有する表面のいずれも、算術平均表面粗さRaが20nm以上30nm以下である、[IV]に記載のポリエステルフィルム。
[VI]表面を有さない層(かかる層を層Bとする)に実質的に無機粒子を含有しておらず、層Bに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲に一つ以上の極大値を持つ、[IV]または[V]に記載のポリエステルフィルム。
[VII]フィルムヘイズが7%以上13%以下である[I]~[VI]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VIII]離型用途に用いられる[I]~[VII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[IX]偏光板離型用途に用いられる[I]~[VII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
本発明のポリエステルフィルムは、好適な検査性、離型性を有するフィルムでありながら、含有する粒子由来の工程汚染を抑制できる。特に、偏光板離型用に用いた際、偏光板の欠点検査をする際にクロスニコル検査を阻害する粗大粒子の影響が抑制される。
反射検査器を使用した欠点観察法を模式的に示す図である。 透過検査器を使用した欠点観察法を模式的に示す図である。 クロスニコル検査器を使用した輝点欠点観察法を模式的に示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムにおけるポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことである。
ポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、本発明を実施するためには、テレフタル酸を全ジカルボン酸構成成分に対して30mol%以上使用することが好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としてはマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3-ベンゼンジメタノール,1,4-ベンセンジメタノール、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが複数個連なったものなどが例としてあげられるがこれらに限定されない。
本発明のポリエステルは公知の方法で製造するこができる。具体的にはエステル化工程は単数または複数のエステル化反応槽を使用し、攪拌下に行う。例えば、単一のエステル化反応槽を用いる場合、反応温度は通常240~280℃、大気圧に対する相対圧力は通常0~400kPa、反応時間は通常1~10時間である。エステル化工程で得られるエステル化反応生成物のエステル化反応率は通常95%以上である。
溶融重縮合工程は、通常、単数または複数の重縮合反応槽を使用した連続式または回分式で行なうことができ、常圧から漸次減圧して加熱攪拌下に生成するエチレングリコールを系外に留出させながら行なう。例えば、単一の重縮合反応槽を使用した回分式の場合、反応温度は通常250~290℃、常圧から漸次減圧とした最終的な絶対圧力は、通常1.3~0.013kPa(10~0.1Torr)、反応時間は通常1~20時間である。
ポリエステル樹脂の固有粘度は、重合の終点をポリマーの攪拌トルクで判定することができる。攪拌トルクが高い場合には、ポリマーの溶融粘度が高く、固有粘度も高くなる。目標とする固有粘度になるように重合装置の終点判定攪拌トルクを設定すればよい。本発明ではフィルムのIVが0.60以上0.70以下となるように終点判定の攪拌トルクを設定することが好ましい。この範囲とすることで、表面粗さの制御がしやすく、好ましい。
得られた重合の終了したポリエステル樹脂は、重合装置下部からストランド状に吐出し、水冷しながらカッターによってカッティングすればよい。カッティングによってチップ形状が制御できるので、本発明において好ましい嵩密度を有するポリエステルチップを得ることができる。
本発明において使用する重縮合反応触媒には、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコラート、二酸化ゲルマニウム、有機チタン化合物などの一種または二種以上を用いることができる。中でも得られるポリエステルの透明性および入手性の面から三酸化アンチモンが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、実質的に無機粒子を含有しておらず、有機粒子を含有していることを特徴とする。ポリエステルフィルムに無機粒子を含有させると、フィルムの離型性・搬送性の向上や、検査性が良好となるようにフィルムヘイズを調整することが可能だが、フィルム中に含有させた無機粒子の金属元素同士が凝集してフィルム内部の異物となって、クロスニコル検査性を損なう恐れがある。また、フィルム表層に無機粒子を含有していると、下流工程での搬送によって無機粒子がフィルムから脱落し、工程汚染の要因となる。一方、有機粒子は、無機粒子と比較してポリエステルとの親和性が高いため、延伸時に粒子を核とする空隙を形成しにくく、また、金属元素を含んでいないことから凝集物も形成しにくい。さらに、平均粒子径を制御することで、フィルム表面からの脱落も少なくなるため好ましい。なお、本発明において、無機粒子を実質的に含有しないとは、後述する測定方法において、無機粒子の含有量が0.05重量%以下であることを示す。無機粒子の含有量は0.03重量%以下であることがより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、後述する測定方法によってポリエステルフィルム中に含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲と0.8μm以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持つことが必要である。かかる範囲に極大値を有する有機粒子を含有することで、搬送性と検査性をともに良好とすることができる。より好ましくは最も小さい極大値が0.2μm以上0.4μm以下の範囲にあり、最も大きい極大値が0.8μm以上1.0μm以下の範囲にあることである。最も小さい粒子径の極大値が0.2μm未満の範囲にあると、フィルムの搬送性・巻き取り性が悪化し、また、離型フィルムとして用いた際に、積層体を塗布するのに好的な平滑性が得られるが、離型フィルムと積層体との離型性が悪化する。また、最も大きい粒子径の極大値が1.0μmを超える範囲にあると、フィルムの搬送性・巻き取り性は向上するものの、粒子による塗布抜けが起こりうる。さらに、離型フィルムとして用いた際、積層体との離型性は向上するものの、離型フィルム上の積層体に過度な凹凸を生み、その転写により積層体の機能性を損なう恐れがある。一方、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲と0.8μm以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を有しておらず、例えば、粒子径の極大値が0.4μmを超えて0.8μm未満の範囲にしか極大値を有していない場合、積層体を塗布するのに好適な平滑性が得られない。
本発明のポリエステルフィルムが含有する有機粒子は、異種の粒子であっても、同種の粒子であっても良い。使用する有機粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル樹脂粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。いずれの粒子についても、粒子形状・粒子径分布は均一であることが好ましく、特に粒子形状は球形であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、有機粒子の含有量は、フィルム全体の重量に対して0.09~0.42重量%であることが好ましい。かかる範囲とすることで、粒子起因の転写を抑制しつつ、離型性、搬送性を良好にすることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム表面の算術平均粗さRaは、両面とも5nm以上であることが必要である。好ましくは20nm以上30nm以下である。フィルム表面の算術平均粗さがこの範囲にあると好適な離型性と搬送性を両立できる。算術平均粗さRaが5nm未満だと、積層体との離型性や、搬送性および巻き取り性が悪化するため好ましくない。
本発明のポリエステルフィルムは2層以上の積層構造であっても良い。少なくとも一つの層(層A)に含有する有機粒子量を変えることで、フィルム表面の算術平均粗さを調整でき、離型性や搬送性を向上させることができる。層Aが少なくとも片側の表層にある場合、層Aを有する表面の算術平均粗さは20nm以上30nm以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、層Aに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲と0.8以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、前記層Aに含有する有機粒子のプロットにおいて、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲において最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率aと、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲で最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率bの比(a/b)が0.5以上6.0以下であることが好ましい。ピークトップの存在比a/bが0.5未満だと、積層体への含有粒子起因の転写が多くなる場合がある。存在比a/bが6.0より大きいと、離型性および搬送性が損なわれる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、3層構成の場合、両表層(層A、A’)に無機粒子を実質的に含有しておらず、層A、層A’にはいずれの層にも実質的に無機粒子を含有しておらず、層A、層A’に含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、いずれも粒子径0.2μm以上0.4μmの範囲と0.8μm以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、前記層A、層A’に含有する有機粒子のプロットにおいて、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲において最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率aと、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲で最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率bの比(a/b)が0.5以上6.0以下であることが好ましい。また、前記層Aを有する表面、前記層A’を有する表面のいずれも、算術平均粗さが20nm以上30nm以下であることが好ましい。層A、層A’における有機粒子の含有量は、層A全体、層A’全体の重量に対して0.75~2.5重量%であることが好ましい。かかる範囲とすることで、粒子起因の転写を抑制しつつ、離型性、搬送性を良好にすることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、3層構成であることが好ましい。3層構成の場合、表面を有さない内層(層B)にフィルム特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいはほかの製膜工程のリサイクル原料などを混合して使用することが容易となるのでコスト的にも優位である。本発明のポリエステルフィルムは、3層構成の場合、内層(層B)に粒子を含有させることでフィルムヘイズを調整できる。その際、無機粒子を実質的に含有しておらず、有機粒子を含有することが、クロスニコル検査性の確保の観点から好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、層Bに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲に一つ以上の極大値を持つことが好ましい。粒子径の極大値が0.8μm未満だと、フィルムヘイズを調整するのに必要な粒子量が多くなり、粒子径の極大値が1.0μmより大きいと、両表層の表面形状に影響を及ぼす粗大突起となる恐れがある。層Bにおける有機粒子の含有量は、層B全体の重量に対して、0.03~0.2重量%であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムヘイズが7%以上13%以下であることが好ましい。本発明のポリエステルフィルムを偏光板離型用途に用いる際には、透過光を用いた検査や、反射光を用いた検査を実施する場合がある。ポリエステルフィルムフィルムヘイズが13%を超えていると、透過光を用いた検査において、透過光が十分に透過せず検査に支障を及ぼす場合がある。一方、フィルムヘイズが7%未満となると、反射光を用いた検査において、反射光が透過してしまい検査に支障を及ぼす場合がある。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、二軸配向ポリエステルフィルムを例に挙げて説明するが、本発明のポリエステルフィルムは、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
本発明のポリエステルフィルムは、以下の工程を有する方法によって得ることができる。
(工程1)ポリエステル樹脂をシート状に溶融押出し、前記シート状に溶融押出したポリエステル樹脂を18~50℃のキャスティングロール上で1~15秒接触させて冷却固化せしめて厚み180~1400μmの未延伸ポリエステルフィルムを得る工程行程。
(工程2)(工程1)で得られた未延伸ポリエステルフィルムを、長手方向に延伸倍率が2.5~5倍で延伸した後、冷却をして一軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程。
(工程3)(工程2)で得られた一軸延伸ポリエステルフィルムを、幅方向に延伸倍率が3~6倍、かつ、幅方向の延伸倍率が長手方向の延伸倍率よりも高い延伸倍率で延伸した後、冷却をして、二軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程。
(工程4)前記二軸延伸ポリエステルフィルムを、熱処理温度が180~230℃にて熱処理して、二軸配向ポリエステルフィルムを得る工程。
以下にそれぞれの工程について詳しく説明する。
・(工程1)未延伸フィルムの作成
ポリエステル樹脂を、必要に応じて乾燥し、押出機に供給し溶融押出する。フィルムの固有粘度を上述の範囲とするためには、押出機に供給するポリエステル樹脂の平均固有粘度は0.55~0.64dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.55~0.62dl/gである。また押出機に供給するポリエステル樹脂の固有粘度のバラツキは0.002~0.030dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.005~0.030である。なお、押出機に供給するポリエステル樹脂の固有粘度のバラツキは、後述する測定方法により求められるものであり、原料として押出機に供給するポリエステル樹脂から無作為に抽出する50サンプルについて固有粘度の測定を行い、得られた値の標準偏差σとして算出されるものである。原料として供給するポリエステル樹脂の固有粘度に一定のバラツキを有さしめることで、フィルムの結晶の面配向指数を高くしつつ、配向角を小さくすることが可能となる。原料として供給するポリエステル樹脂の固有粘度のバラツキが0.002dl/g未満であると、結晶の面配向指数χi値が低くなるため輝点欠点を低減できない場合がある。一方、原料として供給するポリエステル樹脂の固有粘度のバラツキが0.030dl/gを超えると、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの特性が安定しない上、配向角が高くなり、偏光板をクロスニコル法で検査する際の光漏れが大きくなり検査の阻害となる場合がある。原料として供給するポリエステル樹脂のバラツキを上記の範囲とする方法は、特に限られるものでは無い。原料として供給するポリエステル樹脂の重合をバッチ式重合方法で得る場合は、連続式重合方法で得る場合に比べて、固有粘度のバラツキは大きくなる。
続いて押出機により溶融押出されたポリエステル樹脂をフィルターにより濾過する。小さな異物もフィルム欠点となるため、このフィルターには例えば5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。溶融したポリエステル樹脂は熱分解や、加水分解をすることで、その分子鎖が切れ、固有粘度が低下する。溶融押出を行う際のポリエステル樹脂の温度および水分率は、最終的に得られるフィルムの固有粘度を上述の範囲とすることができれば、特に限定されないが、安定して溶融押出を行うためには、その温度はポリエステル樹脂の融点+5~+40℃、水分率は300ppm以下であることが好ましい。
続いてT型口金等を用いてシート状に成形し、シート状に成形されたポリエステル樹脂をキャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを得る。この際、キャスティングロールの温度は18~50℃、シート状に成形されたポリエステル樹脂がキャスティングロールに接触する冷却時間は1~15秒であることが好ましい。キャスティングロールの温度が18℃未満であると、キャスティングドラム上に結露が生じやすくなり、製膜性が悪化する場合がある。キャスティングロールの温度が50℃を超えると、結晶の面配向指数χi値が低くなる場合がある。これは、キャスティングロールの温度が高いと冷却効率が悪化するため、得られる未延伸フィルム中に微結晶が生成され、その後の延伸工程での結晶配向化が進みやすくなるためである。同様に、キャスティングロールに接触して冷却される時間が1秒未満であると、冷却効率が悪化し、得られる未延伸フィルム中に微結晶が生成される結果、結晶の面配向指数χi値が低くなる傾向がある。キャスティングロールによる冷却時間は、キャスティングロールを大径化したり、ラインスピードを下げることで長くしたりすることができるが、設備スペースや生産性を鑑みるとその上限は15秒である。より好ましくは、キャスティングロールの温度は20~30℃、シート状に成形されたポリエステル樹脂がキャスティングロールに接触する冷却時間は3~12秒である。
また、工程1で得られる未延伸フィルムの厚みは180~1400μmであることが好ましい。未延伸フィルムの厚みが180μm未満であると、配向角や熱収縮率を所望の範囲となるように延伸するためには膜厚みが十分でなく、延伸中に膜破れなどが起きる場合がある。一方、未延伸フィルムの厚みが1400μmを超えると、ポリエステル樹脂シートをキャスティングロール上で冷却固化する際、厚み方向で冷却ムラが発生し、結晶の面配向指数χi値が低くなる傾向がある。また、二軸配向ポリエステルフィルムの最終厚みが、偏光板離型用途に適した範囲から外れる場合がある。
・(工程2)一軸延伸フィルムの作成
前記(工程1)で得られた未延伸フィルムを、長手方向に延伸倍率が2.5~5.0倍で延伸、冷却することによって、一軸延伸ポリエステルフィルムを得る。長手方向への延伸は、90~130℃の延伸温度で1段階的に、もしくは多段階的に分けて延伸することが好ましい。ボーイング現象およびフィルム長手方向の厚みムラを抑える観点から、延伸温度は100~120℃、延伸倍率は3~4倍がより好ましく、延伸ムラおよびキズを防止する観点から延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましい。また、長手方向延伸により幅方向の収縮が生じるが、この延伸工程から冷却工程におけるフィルムの幅縮みは15%以下であることが好ましい。フィルムの幅縮みが15%を超えるとフィルムの蛇行や幅変動が生じる、またはフィルムの幅方向の面配向の均一性が悪化するため、5m幅にわたって結晶の面配向指数χi値を6.0以上とすることが困難になる場合がある。フィルムの幅縮みは、長手方向延伸を行う前のフィルム端部の厚みプロファイルを調整したり、延伸張力をニップロールなどで調整したりすることで制御することができる。
なお、ここで示したフィルムの幅縮みは、長手方向延伸工程直前のフィルム幅と延伸・冷却を終えた後のフィルム幅との差を長手方向延伸工程直前のフィルム幅で除することで算出される。
(工程2)における冷却工程におけるフィルム温度は25~45℃であると、次の(工程行程3)における幅方向の延伸を安定して行う上で好ましい。
・(工程3)二軸延伸フィルムの作成
前記(工程2)で得られた一軸延伸ポリエステルフィルムを、幅方向に延伸倍率が3.0~6.0倍、かつ、幅方向の延伸倍率が長手方向の延伸倍率よりも高い延伸倍率で延伸する。幅方向の延伸は、90~130℃の延伸温度で延伸することが好ましい。延伸温度が90℃よりも低く、延伸倍率が6.0倍よりも高くなると配向角は低減する傾向にあるが、フィルムが破断しやすくなる、また結晶の面配向指数χi値が低くなる。延伸温度は100~120℃、延伸倍率は4.0~5.0倍であるとより好ましい。また、配向角を低くするためには、幅方向の延伸倍率が、長手方向の延伸倍率よりも高いことが好ましい。幅方向の延伸倍率より長手方向延伸倍率を高くすると、フィルム内の分子配向が長手方向側に傾くため、配向角バラツキを抑制することが困難となる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造するに際し、長手方向の延伸の後に幅方向延伸後を行う。幅方向延伸後に長手方向延伸を行うと、最初の幅方向延伸後に分子が主に幅方向に強く配向するが、その後に長手方向延伸を行うと長手方向にも配向してしまい、配向角が高くなってしまうためである。
続いて幅方向に延伸したフィルムをフィルム温度25~45℃、フィルムの幅縮み速度が0.1~20%/minにて冷却することによって、冷却された二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。冷却工程におけるフィルム温度は25~45℃とすることが幅縮みによる幅方向の配向緩和を抑制し、ボーイング現象を抑制できるため好ましい。より好ましくは、30~40℃である。冷却工程におけるフィルム温度が45℃より高いと、フィルム幅縮みによる張力が影響して製膜性が悪くなり、また幅方向の配向緩和を抑制する効果が十分に出ない場合がある。冷却工程におけるフィルム温度が20℃未満に冷却することは、生産性が悪い場合がある。
ポリエステルフィルムの冷却方法は、熱処理を行うテンターによる空冷方法、熱処理領域の上下にアルミ板などの遮蔽板で熱風を遮断する空冷方法、ロールによる冷却方法等が挙げられる。熱処理を行うテンターによる空冷方法では各ゾーンが長手方向に全てつながっているため、随伴気流など高温空気の自由な流れによりフィルム上下や幅方向に温度差が発生し、フィルム温度を十分冷却できない場合がある。その場合は、圧縮空気などを送り込んで積極的に冷却することで対応することもできる。
また、ロールによる冷却方法では、使用するロール本数や設定温度は限られるものではないが、ロール本数を複数本用いて冷却することが好ましい。ロールによる冷却方法においてフィルム温度を上記の範囲とするためには、ロール温度は20~45℃であることが好ましく、さらに好ましくは30~40℃である。また、ロールによる冷却方法ではフィルムをニップロールで冷却ロールに荷重をかけて密着させると、安定して冷却が行えるため好ましい。
また、この冷却工程において、フィルムの幅縮み速度は0.1~20%/minであることが好ましい。幅縮み速度が0.1%/min未満では、フィルムの幅縮みが抑制されたことによるフィルム張力が影響し、製膜性が悪くなり、フィルム破れ等の原因となる場合がある。また、幅縮み速度が20%/minより速いと、フィルムの幅縮みによる配向緩和を抑制する効果は少なく、ボーイング現象の抑制が不十分となる場合がある。フィルムの幅縮み速度は、0.2~18%/minとすることがさらに好ましい。幅縮み速度を制御する方法としては、冷却工程長さ、製膜速度から幅縮みの速度を設定し、様々な方法で実現することができる。具体的にはテンターにおける空冷方法においては両端をクリップで把持し、レール幅を調整することで幅縮み速度を所望の値にすることが出来る。
なお、ここで示した冷却工程におけるフィルムの幅縮み速度は、幅方向延伸工程を経た後であって冷却工程に入る直前のフィルム幅W1(mm)、冷却工程を経た後のフィルム幅W2(mm)、冷却工程の通過時間をT1(min)としたときに式(1)にて算出されるものである。
フィルムの幅縮み速度 =(W1-W2)/W1 × 1/T1 式(1)
また、(工程3)の冷却工程においてフィルムは温度が低下した状態である程度の時間を経ることが好ましい。この理由としては、以下のように推測している。前述したように冷却工程では幅縮みをする際に配向緩和が起こっていると考えられるが、フィルムを冷却することによって配向緩和を止めるには一定の時間が必要であると推測される。そのため、冷却工程の通過時間が不十分であると配向緩和を抑制できないため、ボーイング現象を抑制する効果が少ないと推測している。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造するに際して、冷却工程の通過時間は、10秒間以上が好ましく、更に好ましくは15秒間以上である。冷却工程の通過時間の上限は特に限定されないが、60秒間以下である
と生産性が良好となるため好ましい。
・(工程4)二軸延伸フィルムの熱処理
前記(工程3)で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを、熱処理することによって、二軸配向ポリエステルフィルムを得る。熱処理温度は180~230℃が好ましく、さらに好ましくは180~215℃、とくに好ましくは185~210℃である。熱処理温度が180℃未満では熱処理が不十分となり、150℃30分間熱処理した後のフィルム長手方向の熱収縮率を2.5~7.0%、フィルム幅方向の熱収縮率を2.5~8.0%の範囲に収めることが困難となる場合がある。熱処理温度が230℃より高いと、ボーイングが発生しやすくなり配向角を上述の範囲に制御することが困難となるため好ましくない。
また、上記熱処理においては、必要に応じて弛緩処理を行ってもよい。弛緩処理は、幅方向・長手方向いずれの方向について行っても良く、幅方向・長手方向を同時に行っても、それぞれ別に行っても良い。弛緩率は、フィルムの全幅に対して好ましくは1~20%、さらに好ましくは1~15%であると、熱寸法安定性の優れたフィルムを得るのに有効である。
以下において、実施例3~6は、参考例3~6と読み替えるものとする。実施例および比較例における特性値の測定方法および評価方法は次の通りである。
(1)体積基準粒度分布測定
ミクロトームを用いて、ポリエステルフィルムの表面に対して垂直方向に切削した小片を作成し、その断面を電界放射走査型電子顕微鏡JSM-6700F(日本電子(株)製)を用いて10000倍に拡大観察して撮影した。その断面写真よりフィルム中に存在する粒子の粒度分布を画像解析ソフトImage-Pro Plus(日本ローパー(株))を用いて求めた。断面写真は異なる任意の測定視野から選び出し、断面写真中から任意に選び出した2500個以上の粒子の直径(円相当径)を測定し、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットした体積基準粒度分布を得た。前記、体積基準粒度分布において、横軸を担う粒子の存在比率は、0nmを初点とした10nm間隔毎の階級により、計算式「存在比率=該当する粒子径を持つ検出粒子の合計体積/全検出粒子の合計体積×100」により表す。また、極大を示すピークトップの値は、例えば粒子径が110nmを超えて120nm以下の範囲に極大を持つ場合はその階級の上限値である0.12μmであるとする。上記により得られた粒子の存在比率のチャートから、極大を示すピークトップの粒子径を読み取り、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲において最も高い値を有する極大の存在比率aと、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲で最も高い値を有する極大の存在比率b、それらの比a/bを求めた。
(2)フィルムヘイズ
JIS K7105(1981)に準じ、フィルム長手方向4cm×フィルム幅方向3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、ヘイズメータ(スガ試験機製HGM-2DP(C光用))を用いて測定する。フィルム幅方向に対して均等に3点測定し、その平均値を測定結果とした。
(3)算術平均粗さRa
三次元微細表面形状測定器(小坂製作所製ET-350K)を用いて測定し、得られたフィルム表面の線形プロファイル曲線より、JIS・B0601-1994に準じ、算術平均粗さRaを求めた。以下に示す条件で測定を行った。
X方向測定長さ:0.5mm、X方向送り速度:0.1mm/秒。
Y方向送りピッチ:5μm、Y方向ライン数:40本。
カットオフ:0.25mm。
触針圧:0.02mN。
高さ(Z方向)拡大倍率:5万倍。
(4)反射検査での易検査性
反射検査器での易検査性を評価する機器に、照明手段としてLEDライト(アトー製 HBLF-L1400)、受光手段として分解能100μmのCCDカメラ(ヒューテック製 PCTME8040)を複数配置し、反射光の照射角度と検出角度を40°になるよう設置した反射検査器を使用した。反射検査器のLEDライトの出力およびカメラの検出感度を変えずにフィルムを検査した際、カメラが検出する映像信号を最大明度の場合が255、最小明度の場合が0となるように256分割した出力値で評価し、ベース出力値が127±20の範囲に収まるかで判定した。装置の概略図を図1に示す。
○:ベース信号出力値が127±20の範囲内である(明欠点・暗欠点の両方が正常に検査できる)。
×:ベース信号出力値が127±20の範囲外である(明欠点・暗欠点のどちらかが正常に検査できない)。
(5)透過検査での易検査性
透過検査器での易検査性を評価する機器に、照明手段としてLEDライト(ヒューテック FLS-L3200)、受光手段として分解能70μmのCCDカメラ(ヒューテック製 DCFMB1A80)を複数配置し、透過光が直接カメラに進入するよう設置した透過検査器を使用した。透過検査器のLEDライトの出力およびカメラの検出感度を変えずにフィルムを検査した際、カメラが検出する映像信号を最大明度の場合が1023、最小明度の場合が0となるように1024分割した出力値で評価し、ベース出力値が512±40の範囲に収まるかで判定した。装置の概略図を図2に示す。
○:ベース信号出力値が512±40の範囲内である(明欠点・暗欠点の両方が正常に検査できる)。
×:ベース信号出力値が512±40の範囲外である(明欠点・暗欠点のどちらかが正常に検査できない)。
(6)輝点欠点個数
輝点欠点とは、クロスニコル検査において検知されるフィルム中の欠陥による光漏れのことを指し、輝点欠点を評価する機器として、照明手段としてLEDライト(アトー製 HBLF-WSL1500、HBLF-WSL700)および角度調整が可能な第1の偏光板が設けられ、受光手段として分解能50μmのCCDカメラ(ヒューテック製 GMFMB3B80)と角度調整が可能な第2の偏光板を組み合わせて複数配置されているクロスニコル検査器を使用した。クロスニコル検査器のカメラの検出感度を変えずにフィルム1000mを検査し、検出サイズ100μm以上の輝点欠点個数を測定した。装置の概要を図3に示す。
(7)クロスニコル検査での易検査性
前述の輝点欠点個数をクロスニコル検査での易検査性の指標としてそれぞれ評価した。(○以上を合格とした)。
○:200μm以上の輝点が0.6個/m以下である。
△:200μm以上の輝点が0.6~1.0個/mである。
×:200μm以上の輝点が1.0個/m以上である。
(8)粒子の脱落性
添加粒子の脱落性は、フィルムを巻き出し側から一定速度で繰り出して、巻き取り側で巻き取る搬送装置に、拭き取り布(東レ(株)製 トレシー)をフィルムに200gの荷重であたるように設置して拭き取り評価を行った。搬送速度は40m/minで、2000m拭き取りを実施し、拭き取り後の拭き取り布表面をマイクロスコープ(500倍)で観察した。粒子の脱落性は下記の基準で評価した。
〇:微量の粒子脱落が観察された。
△:少量の粒子脱落が観察された。
×:多量の粒子脱落が観察された。
(9)耐キズ性
SFT-700HにてMD長手方向にて50往復させる。(幅:1/2インチ、長さ:30cm(測長:10cm)、荷重:100g)
処理後のサンプルをベルジャー真空蒸着機にてサンプル面蒸着を行い、実体顕微鏡にて観察し、最も傷が多く見える角度で傷をカウントする。
◎:50往復にてキズ発生本数が15本以下。
○:50往復にてキズ発生本数が16~20本以上。
△:50往復にてキズ発生本数が21~29本。
×:50往復にてキズ発生本数が30本以上。
(10)無機粒子含有量
JIS K6813(2002年)に基づき、以下のように求める。試料を秤量し、重さをm1とする。秤量した試料を試料ボートに乗せ、あらかじめ550℃に加熱した円筒形電気炉にて窒素雰囲気下において45分間加熱する。窒素雰囲気下で試料ボートを10分間放冷した後、デシケータに移して室温まで放冷後、重さを秤量し、m2とする。その後、試料ボートをマッフル炉に入れ、900℃にて灰化する。デシケータ内で室温まで試料ボートを冷却し、重さを秤量してm3とする。無機粒子の含有量(重量%)は以下の(a)式で算出する。この試行を5回行い、算術平均を以て含有量(重量%)とする。0.05重量%以下の場合は実質的に無機粒子を含有しないとした。
無機粒子含有量(重量%)=(m2-m3)/m1 ×100 ・・・ (a)。
(実施例1):
テレフタル酸とエチレングリコールのスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸のモル比が1.05~1,30)を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、ポリエステル組成物に対し、三酸化二アンチモンを0.0207重量%(0.693mol/t相当)、酢酸マンガンを0.014重量%(0.281mol/t相当)、リン酸を0.014重量%(1.428mol/t相当)、水酸化カリウム水溶液を0.0005重量%(0.09mol/t相当)となるように添加し、引き続いて、真空下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.70のポリエステルペレットAを得た。
次に、平均粒子径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルペレットAに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、平均粒子径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し2.0重量%含有するマスターペレットBを得た。同様に、平均粒子径0.9μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルペレットAに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、平均粒子径0.9μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1.0重量%含有するマスターペレットCを得た。
次に、ジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を含有するマスターペレットBおよびCを混合し、平均粒子径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を1.0重量%、平均粒子径0.9μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.5重量%含有するポリエステルA(層A、A’を構成するポリエステル)を得た。
さらに、本発明の製膜工程で発生したエッジ部分などを主体とする回収フィルムからなるポリエステル原料(回収ペレット)、実質的に粒子を含有しないポリエステルペレットA、平均粒子径0.9μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を含有するマスターペレットCを表に記載の重量比で混合し、ポリエステルB(層Bを構成するポリエステル)を得た。
これらのポリエステルをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥し、水分率を100ppmとした後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して、5μm以上の捕集効率95%の高精度フィルターで濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステル層A/ポリエステル層B/ポリエステル層A’からなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングロール上で7sec冷却固化し、厚み570μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、まず103℃に加熱したロールとラジエーションヒーターによって長手方向に3.4倍延伸した。このときの幅縮み量は14%であった。続いてテンターにて幅方向に110℃で4.4倍に延伸した。その後、冷却工程の幅縮み速度18%/minでフィルム温度が35℃になるよう冷却した。この冷却工程ではロール方式を採用し、ロールの温度は30℃とし、冷却工程の通過時間は15秒とした。次いで195℃で熱処理を行って、全フィルム厚み38μm、フィルムの積層厚さがポリエステル層A/ポリエステル層B/ポリエステル層A’=2.0μm/34μm/2.0μm、フィルム幅5.1mの3層からなる二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取って中間製品ロールを作成した。得られた中間製品ロールからサンプルを採取し、粒子径、フィルムヘイズ、算術平均粗さ、輝点個数を測定し、反射検査、透過検査、クロスニコル検査および粒子脱落性評価を実施したところ、体積基準粒度分布におけるピークトップの値は、それぞれ0.27μmと0.84μmで、それらの存在比率の比a/bは2.0だった。また、フィルムヘイズは10%、算術平均粗さは24nm、23nmであり、輝点個数、反射検査器での易検査性、透過検査での易検査性、クロスニコル検査での易検査性、粒子脱落性、耐キズ性は表1に記載したとおりいずれも良好な結果だった。
(実施例2、3、比較例3、4)
層Aを構成するポリエステルマスターペレットBおよびCの添加量を変えた以外は実施例1と同様に実施し、3層からなる二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた結果を表1にまとめた。
(実施例4、5、比較例5、6)
ポリエステルマスターペレットBおよびCに含有するジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の平均粒子径を変えた以外は実施例1と同様に実施し、3層からなる二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた結果を表1にまとめた。
(実施例6)
ポリエステルAおよびBを溶融押出する際、矩形の2層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステル層A/ポリエステル層Bからなる2層積層とした以外は実施例1と同様に実施し、2層からなるポリエステルフィルムを得た。得られた結果を表1にまとめた。
(比較例1)
真比重2.71g/cm、平均粒径1.0μmの炭酸カルシウムを準備し、10重量%のエチレングリコールスラリーとした。このスラリーをジェットアジテイターで一時間分散処理を行い、5μm以上の捕集効率95%のフィルターで高精度濾過した。このスラリーをエステル化反応終了後、ポリエステル組成物に対し、三酸化二アンチモンを0.0105重量%(0.352mol/t相当)、酢酸マンガンを0.030重量%(0.602mol/t相当)、リン酸を0.008重量%(0.816mol/t相当)、リン酸二水素ナトリウムを0.010重量%(0.792mol/t相当)となるように添加し、引き続き、上記と同じように重縮合反応を行い、平均粒径1.0μmの炭酸カルシウムを1.0重量%含む、固有粘度0.62の炭酸カルシウム含有マスターポリエステルペレットDを得た。
ジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を含有するマスターペレットBと、炭酸カルシウムを含有するマスターペレットDを混合し、平均粒子径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を1.0重量%、平均粒子径1.0μmの炭酸カルシウム粒子を0.50重量%含有するポリエステルC(層A、A’を構成するポリエステル)を得た。
ポリエステルAの代わりにポリエステルCを使用する以外は実施例1と同様に実施し、3層からなる二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた結果を表1にまとめた。
(比較例2)
本発明の製膜工程で発生したエッジ部分などを主体とする回収フィルムからなるポリエステル原料、実質的に粒子を含有しないポリエステルペレットA、平均粒子径1.0μmの炭酸カルシウム粒子を含有するマスターペレットDを表に記載の重量比で混合し、ポリエステルD(層Bを構成するポリエステル)を得た。
ポリエステルBの代わりにポリエステルDを使用する以外は実施例1と同様に実施し、3層からなる二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた結果を表1にまとめた。
Figure 0007537145000001
1:検査対象のフィルム
2:照明手段
3:受光手段
4:信号処理手段
5:検査対象のフィルム
6:照明手段
7:受光手段
8:信号処理手段
9:検査対象のフィルム
10:第1の偏光フィルター
11:第2の偏光フィルター
12:照明手段
13:受光手段
14:信号処理手段

Claims (7)

  1. 3層以上からなり、有機粒子を含有するポリエステルフィルムであって、実質的に無機粒子を含有しておらず、前記ポリエステルフィルムに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲と0.8μm以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、ポリエステルフィルム表面の算術平均表面粗さRaが両面とも23nm以上28nm以下であるポリエステルフィルム。
  2. 層以上からなるポリエステルフィルムであって、少なくとも一つの層に有機粒子を含有しており(かかる層を層Aとする)、前記層Aには実質的に無機粒子を含有しておらず、前記層Aに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲と0.8以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、前記層Aに含有する有機粒子のプロットにおいて、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲において最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率aと、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲で最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率bの比(a/b)が0.5以上6.0以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 3層からなるポリエステルフィルムであって、両表層に有機粒子を含有しており(かかる層を層A、層A’とする)、層A、層A’にはいずれの層にも実質的に無機粒子を含有しておらず、層A、層A’に含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、いずれも粒子径0.2μm以上0.4μmの範囲と0.8μm以上1.0μm以下の範囲にそれぞれ一つ以上の極大値を持ち、前記層A、層A’に含有する有機粒子のプロットにおいて、粒子径0.2μm以上0.4μm以下の範囲において最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率aと、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲で最も高い値を有する極大のピークトップの存在比率bの比(a/b)が0.5以上6.0以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  4. 表面を有さない層(かかる層を層Bとする)が実質的に無機粒子を含有しておらず、層Bに含有する有機粒子の体積基準粒度分布測定を行い、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットしたとき、粒子径0.8μm以上1.0μm以下の範囲に一つ以上の極大値を持つ、請求項3に記載のポリエステルフィルム。
  5. フィルムヘイズが7%以上13%以下である請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. 離型用途に用いられる請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. 偏光板離型用途に用いられる請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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