以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は、左側通行の法規を有する国にて、車両が左側通行で走行することが前提となっている。右側通行の法規を有する国では、車両が右側通行で走行するため、以下の説明の右と左を対称にして読み替えるものとする。
[走行支援システムの構成]
図1は、本発明に係る走行支援システム10を示すブロック図である。図1に示すように、走行支援システム10は、検出装置1、地図情報2、自車情報検出装置3、ナビゲーション装置4、車両制御装置5、及び走行支援装置6を備える。検出装置1は、撮像装置11と測距装置12を含む。自車情報検出装置3は、車速検出装置31、舵角検出装置32、及び自車位置検出装置33を含む。車両制御装置5は、車速制御装置51と操舵制御装置52を含む。走行支援システム10に含まれる装置は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、互いに情報を授受することができる。
検出装置1は、自車両の周囲の対象物を検出するためのセンサである。対象物とは、たとえば、道路の車線境界線、センターライン、路面標識、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁、道路標識、信号機、横断歩道、工事現場、事故現場、交通制限である。また、対象物には、自車両以外の自動車(他車両)、オートバイ、自転車、歩行者が含まれる。対象物には、自車両の走行に影響を与える可能性がある障害物も含まれる。
対象物は、たとえば、撮像装置11と測距装置12により検出される。撮像装置11は、画像により自車両の周囲の対象物を認識する装置であり、たとえば、CCD等の撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラなどのカメラである。撮像装置11は、一台の車両に複数を設けることができ、たとえば、車両のフロントグリル部、左右ドアミラーの下部、及びリアバンパ近傍に配置できる。これにより、車両の周囲の対象物を認識する場合の死角を減らすことができる。
一方、測距装置12は、車両と対象物との相対距離および相対速度を演算するための装置であり、たとえば、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)、LiDAR(light detection and ranging)ユニット、超音波レーダーなどのレーダー装置又はソナーである。測距装置12も、一台の車両に複数設けることができ、たとえば、車両の前方、右側方、左側方、及び後方に配置できる。これにより、車両の周囲の対象物との相対距離及び相対速度を正確に演算することができる。
撮像装置11及び測距装置12から検出結果は、所定の時間間隔で、走行支援装置6により取得される。撮像装置11の検出結果と測距装置12の検出結果は、走行支援装置6にて統合又は合成することができ、これにより、検出結果に不足している対象物の情報を補完する。たとえば、後述する自車位置検出装置33により取得した、自車両が走行する位置である自己位置情報と、自車両と対象物の相対位置(距離と方向)により、走行支援装置6にて対象物の位置情報を算出することができる。また、これに代えて、地図情報2と、オドメトリによる自己位置情報と、自車両と対象物の相対位置(距離と方向)とを対応させて、対象物の位置情報を算出してもよい。
算出された対象物の位置情報は、走行支援装置6にて、撮像装置11及び測距装置12の検出結果及び地図情報2などの複数の情報と統合され、自車両の周囲の環境情報となる。これに加えて、撮像装置11及び測距装置12の検出結果と、地図情報2とを用いて、自車両の周囲の対象物を認識し、その動きを予測することもできる。
地図情報2は、走行経路の生成及び/又は走行制御に用いられる情報であり、道路情報、施設情報、それらの属性情報が含まれる。道路情報及び道路の属性情報には、道路幅、曲率半径、路肩構造物、道路交通法規(制限速度、車線変更の可否)、道路の合流地点、分岐地点、車線数の増加・減少位置等の情報が含まれている。走行支援装置6は、必要に応じて、車載LANを介して地図情報2を取得する。
地図情報2は、たとえば、レーンごとの移動軌跡を把握できる高精細地図情報である。高精細地図情報には、各地図座標における二次元位置情報及び/又は三次元位置情報、各地図座標における道路・レーンの境界情報、道路属性情報、レーンの上り・下り情報、レーン識別情報、接続先レーン情報が含まれる。地図情報2は、走行支援装置6、車載装置、又はサーバ装置に設けられた記録媒体に読み込み可能な状態で記憶されている。
また、地図情報2は、自車両が走行する走路とそれ以外との境界を示す走路境界の情報を含む。自車両が走行する走路とは、自車両が走行するための道であり、走路の形態は特に限定されない。走路境界は、自車両の進行方向に対して左右それぞれに存在する。走路境界の形態は特に限定されず、たとえば、路面標示、道路構造物が挙げられる。路面標示の走路境界としては、たとえば、車線境界線、センターラインが挙げられる。また、道路構造物の走路境界としては、たとえば、中央分離帯、ガードレール、縁石、トンネル又は高速道路の側壁が挙げられる。なお、走路境界が明確に特定できない地点(例えば、交差点内)に対して、地図情報2には予め走路境界が設定されている。予め設定された走路境界は架空の走路境界であって、実際に存在する路面標示または道路構造物ではない。
自車情報検出装置3は、自車両の状態に関する情報を検出する装置である。自車両の状態とは、自車両の走行速度、加速度、操舵角度、現在位置、姿勢、車両性能などを含む。走行速度と加速度は、車速検出装置31を用いて検出する。操舵角度は、舵角検出装置32を用いて検出する。現在位置は、自車位置検出装置33から取得した情報に基づいて算出する。姿勢は、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いて検出する。走行支援装置6は、必要に応じて、車載LANを介してこれらの装置の検出結果を取得する。
車速検出装置31としては、車両の走行速度を検出できるセンサであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。同様に、舵角検出装置32としては、車両の操舵角度を検出できるセンサであれば特に限定されない。またこれに代えて、車両制御装置5から自車両の走行速度及び操舵角度を取得してもよいし、自車両の各装置から取得してもよい。自車位置検出装置33は、GPS(Global Positioning System)ユニット、ジャイロセンサ、オドメトリなどを含む測位システムであり、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
ナビゲーション装置4は、地図情報2を参照して、自車情報検出装置3の自車位置検出装置33により検出された自車両の現在位置から、ドライバーにより設定された目的地までの走行経路を算出する装置である。算出された走行経路は、走行支援装置6に出力される。走行経路は、自車両が走行する道路、方向(上り/下り)及び車線が識別された線形である。走行経路は、走行レーンの情報を含む。
車両制御装置5は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータであり、車両の走行を律する車載機器を電子的に制御する。車両制御装置5は、自車両の走行速度を制御する車速制御装置51と、自車両の操舵操作を制御する操舵制御装置52を備える。車速制御装置51及び操舵制御装置52は、走行支援装置6から入力された制御信号に応じて、これらの駆動装置及び操舵装置の動作を自律的に制御する。これにより、自車両は、設定した走行経路に従って自律的に走行できる。
車速制御装置51が制御する駆動装置には、走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、動力伝達装置を制御する駆動装置などが含まれる。また、車速制御装置51が制御する制動装置は、たとえば、車輪を制動する制動装置である。車速制御装置51には、走行支援装置6から、設定した走行速度に応じた制御信号が入力される。車速制御装置51は、走行支援装置6から入力された制御信号に基づいて、これらの駆動装置を制御する信号を生成し、駆動装置に当該信号を送信することで、車両の走行速度を自律的に制御する。
一方、操舵制御装置52が制御する操舵装置には、ステアリングホイール(いわゆるハンドル)の操舵角度に応じて総舵輪を制御する操舵装置、たとえば、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータなどのステアリングアクチュエータが含まれる。操舵制御装置52は、走行支援装置6から入力された制御信号に基づき、検出装置1の検出結果、地図情報2、及び自車情報検出装置3で取得した自車情報のうちの少なくとも一つを用いて、設定した走行経路に対して所定の横位置(車両の左右方向の位置)を維持しながら自車両が走行するように、操舵装置の動作を自律的に制御する。
走行支援装置6は、走行支援システム10に含まれる装置を制御して協働させることで自車両の走行を制御し、自車両の走行、特に、自車線から隣接車線への自車両の車線変更支援する装置である。走行支援装置6は、プロセッサ7により車線変更支援を実現する。プロセッサ7は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)72と、ROM72に格納されたプログラムを実行することで、走行支援装置6として機能するための動作回路であるCPU(Central Processing Unit)71と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)73とを備える。
なお、本発明に係る走行支援システム10は、自律走行制御による車線変更のみならず、ドライバーの手動運転による車線変更を支援する場合にも適用できる。また、走行支援システム10を車両の自律走行制御に適用する場合には、速度制御と操舵制御の両方を自律制御するほか、速度制御と操舵制御の一方を自律制御し、他方を手動制御する場合にも適用できる。
[車線変更支援部]
本実施形態の走行支援装置6で用いるプログラムは、走行支援装置6による車線変更支援を実現するための機能ブロックである車線変更支援部100を含む。車線変更支援部100は、自車両が、自車線から隣接車線に車線変更するための走行動作を自律制御する機能を有する。走行動作には加速、減速、右方向又は左方向への転舵などが含まれ、走行支援装置6は、車線変更支援部100の機能により、車両制御装置5を用いて当該走行動作の一部又は全部を自律制御する。一方、走行支援装置6が自律制御しない走行動作については、ドライバーによる手動の操作が行われる。本実施形態の車線変更支援部100は、要否判定部101、完了位置検出部102、目標位置設定部103、走行時間設定部104、走行距離設定部105、及び走行制御部106を備える。図1には、各部を便宜的に抽出して示す。
図2は、本実施形態の走行支援装置6を含む走行支援システム10を用いて車線変更支援を実行する走行シーンの一例を示す平面図である。図2には、図面の上下方向に延在する道路R1と、図面の左右方向に延在する道路R2とが存在し、道路R1とR2とが交差する部分には交差点Cが存在する。道路R1及びR2は、左側通行の道路である。図2に示す道路R1の走行方向は、矢印Aで示す、図面の下から上に向かう方向である。道路R1の走行方向右側には、交差点Cを右折又は直進できる車線L1があり、走行方向左側には、交差点Cを左折又は直進できる車線L2がある。また、交差点Cの手前には車線変更禁止区間Zが設けられている。車線変更禁止区間Zでは、車線L1から車線L2への車線変更も、車線L2から車線L1への車線変更もすることができない。
図2に示す走行シーンでは、自車両V1が車線L1を走行し、他車両V2、V3、及びV4a~V4cが車線L2を走行しているものとする。図2に示すように、他車両V2は自車両V1と並走し、他車両V3は他車両V2の前方を走行している。また、他車両V4a~V4cは、車列を成して他車両V2の後方を走行している。なお、以下において、自車両V1が走行する車線L1を「自車線」と、車線L1に隣接する車線L2を「隣接車線」とも称する。また、図2に示す走行シーンにて、自車両V1は、走行支援装置6の自律走行制御の機能を用いて、ナビゲーション装置4により設定された経路に沿って、目的地Pzに向けて自律的に走行しているものとする。以下、目的地Pzに向かって自律的に走行する自車両V1の自律走行支援において、車線変更支援部100の各機能ブロックが果たす機能について説明する。
要否判定部101は、設定された経路に沿って自車両V1が自律的に走行するために車線変更が必要か否かを判定する機能を有する。要否判定部101の機能により、走行支援装置6は、たとえば、自車位置検出装置33を用いて自車両の現在位置を取得し、設定された経路に沿って自車両が走行するために、取得した現在位置の前方にて自車両が進路を変更する必要があるか否かを判定する。進路の変更には、交差点における右折及び左折、道路の分岐地点における本線から分岐線への進入、及び道路の合流地点における本線への合流などが含まれる。走行方向前方にて自車両が進路を変更する必要がないと判定した場合には、走行支援装置6は、車線変更が不要であると判定する。
一方、走行方向前方にて自車両が進路を変更する必要があると判定した場合には、走行支援装置6は、地図情報2から、自車両の周辺の道路情報と道路の属性情報、特に道路交通法規の情報を取得する。そして、自車両が走行する位置、たとえば自車両が走行する車線において所望の進路変更が許可されているか否かを判定する。所望の進路変更が許可されていると判定すれば、走行支援装置6は、車線変更が不要であると判定する。これに対して、所望の進路変更が許可されていないと判定すれば、進路変更のために車線変更が必要であると判定する。
図2に示す走行シーンでは、自車両V1は、設定された経路に沿って目的地Pzに向かうため、走行方向前方に存在する交差点Cを左折し、進路を変更する必要がある。ところが、車線L1を走行する自車両V1は、交差点Cを右折又は直進することはできるが、交差点Cを左折することはできない。このため、走行支援装置6は、自車両V1が交差点Cを左折するために、車線L1から、交差点Cを左折又は直進できる車線L2に車線変更する必要があると判定する。
完了位置検出部102は、要否判定部101にて車線変更が必要と判定された場合に、自車両が車線変更を完了すべき位置である車線変更完了位置を検出し、自車両から車線変更完了位置までの距離を算出する機能を有する。車線変更完了位置とは、法令上車線変更を完了しなければならないとされている位置をいい、たとえば、道路法規上、車線変更が禁止されている区間の開始位置、具体的には車線変更が禁止されている区間の走行方向後方の端部である。車線変更が禁止されている区間には、道路の分岐地点及び交差点の手前の所定範囲内(たとえば交差点手前30mの範囲)の区間、交差点内などが含まれる。走行支援装置6は、たとえば、撮像装置11にて取得した画像データから道路標識又は路面標識を認識し、認識した標識から車線変更完了位置を検出する。この場合に、自車両から車線変更完了位置までの距離は、認識した標識までの距離を測距装置12で検出して求めることができる。
またこれに代えて、完了位置検出部102の機能により、自車位置検出装置33を用いて自車両の現在位置を取得し、取得した現在位置の前方、特に設定された経路上における車線変更ができない位置、区間、及び領域の情報を地図情報2から取得し、当該取得した情報から車線変更完了位置を検出してもよい。この場合、地図情報2から取得した車線変更ができない位置、区間、又は領域の、走行方向後方の端部を車線変更完了位置として検出する。この場合に、自車両から車線変更完了位置までの距離は、地図情報2より取得した情報を用いて検出した車線変更完了位置と、自車位置検出装置33にて取得した現在位置との距離をナビゲーション装置4で算出して求めることができる。
図2に示す走行シーンでは、自車両V1前方に存在する交差点Cの手前に車線変更禁止区間Zが設けられている。走行支援装置6は、車線変更禁止区間Zを示す路面標識を撮像装置11にて取得した画像データから認識する、又は地図情報2から車線変更禁止区間Zの情報を取得することで、車線変更禁止区間Zの存在を認識する。そして、車線変更禁止区間Zの走行方向後方の端部、および当該端部に対応する道路R1の位置を車線変更完了位置Pxとして検出する。自車両V1の現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxは、測距装置12で取得した、自車両V1と車線変更禁止区間Zの走行方向後方の端部との距離、又はナビゲーション装置4で求めた、自車両V1の現在位置Pcと車線変更完了位置Pxとの地図上の距離を用いて算出する。
目標位置設定部103は、要否判定部101にて車線変更が必要と判定された場合に、自車線の隣接車線に車線変更の目標位置を設定する機能を有する。車線変更の目標位置とは、自車両の運転状態(車速、走行路など)や周囲の環境(他車両の存否など)により決定することができる適宜の位置であり、隣接車線を走行する他車両が検出されない場合には、自車両の現在位置から車線変更完了位置までの間で適宜の位置を車線変更の目標位置に設定することができる。一方、隣接車線を走行する他車両が検出された場合には、自車両と他車両と相対位置及び相対速度、他車両の走行位置、自車両及び他車両から車線変更完了位置までの距離などを用いて車線変更の目標位置を設定する。なお、車線変更の目標位置は、他車両に対する相対的な位置であってもよいし、自車両が走行する道路における絶対的な位置であってもよい。
たとえば、走行支援装置6は、撮像装置11により取得した画像データから、隣接車線を走行する他車両の前方又は後方に、自車両が車線変更するために十分なスペースが検出された場合において、測距装置12を用いて当該スペースに障害物が存在しないと確認されたときは、当該他車両の前方又は後方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、当該他車両に対する相対的な位置であっても、自車両が走行する道路における絶対的な位置であってもよい。当該スペースの大きさは、他車両との接触を回避できる範囲内で適宜の大きさとすることができる。また、自車両と他車両とのTHW(Time HeadWay)及びTTC(Time To Collision)から、自車両と他車両との衝突の危険度を算出し、当該危険度の低い位置に車線変更の目標位置を設定してもよい。なお、THWとは、自車両と後続車両との相対距離を自車両の車速の大きさで除した値であり、TTCとは、自車両と後続車両との相対距離を、後続車両に対する自車両の相対速度で除した値である。
図2に示す走行シーンでは、自車両V1は、車線変更禁止区間Zに到達する前に、左折ができない自車線L1から、左折可能な隣接車線L2に車線変更をする必要がある。車線変更禁止区間Zの開始位置であるPxと、自車両V1の現在位置Pcとの距離Dxに鑑みると、自車両V1が、他車両V3の前方の位置又は他車両V4cの後方の位置に車線変更することは難しい。一方、他車両V2とV3との間、及び他車両V2と他車両V4aとの間には、自車両V1が車線変更できるスペースがある。走行支援装置6は、これらのスペースを撮像装置11により取得した画像データから認識し、測距装置12を用いて障害物が存在しないことを確かめたうえで、並走する他車両V2の前方又は後方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、他車両V2、V3、及びV4aのうち少なくとも一台に対する相対的な位置である。
本実施形態の目標位置設定部103は、自車線の隣接車線を走行する他車両が検出された場合に、車線変更完了位置までの距離が所定距離より長いときは、検出された他車両の前方に車線変更の目標位置を設定することができる。この車線変更の目標位置は、検出された他車両に対する相対的な位置であっても、自車両が走行する道路における絶対的な位置であってもよい。たとえば、図2に示す走行シーンであれば、自車両V1から車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが所定距離より長いときは、隣接車線L2を走行する他車両V2の前方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、他車両V2及び/又はV3に対する相対的な位置である。一方、自車両V1から車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが所定距離以下のときは、他車両V2の後方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、他車両V2及び/又はV4aに対する相対的な位置である。所定距離は、自車両V1が他車両V2を追い抜くことができる範囲内で適宜の距離を設定することができる。
また、これに加えて又はこれに代えて、本実施形態の目標位置設定部103は、隣接車線を走行する他車両が検出された場合に、自車両V1の車速が、検出された他車両の車速よりも所定値以上大きいときは、当該他車両の前方に車線変更の目標位置を設定することができる。この車線変更の目標位置は、検出された他車両に対する相対的な位置であっても、自車両が走行する道路における絶対的な位置であってもよい。たとえば、図2に示す走行シーンであれば、測距装置12を用いて他車両V2の車速を検出し、車速検出装置31から自車両V1の車速を取得し、他車両V2に対する自車両V1の相対速度を算出する。そして、当該相対速度が所定値以上のとき、つまり他車両V2の車速よりも自車両V1の車速が所定値以上大きいときは、隣接車線L2を走行する他車両V2の前方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、他車両V2及び/又はV3に対する相対的な位置である。一方、当該相対速度が所定値未満のときは、他車両V2の後方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、他車両V2及び/又はV4aに対する相対的な位置である。当該車速の所定値は、自車両V1が他車両V2を追い抜くことができる範囲内で適宜の値を設定することができる。
また、これに加えて又はこれに代えて、本実施形態の目標位置設定部103は、隣接車線を走行する他車両が検出された場合に、自車両V1の車速と、自車両V1が走行する道路の制限速度との差の絶対値が所定値以下のときは、検出された他車両の後方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、検出された他車両に対する相対的な位置であっても、自車両が走行する道路における絶対的な位置であってもよい。たとえば、図2に示す走行シーンであれば、道路R1の制限速度から自車両V1の車速を引いた値が所定値以下であれば、隣接車線L2を走行する他車両V2の後方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、他車両V2及び/又はV4aに対する相対的な位置である。一方、道路R1の制限速度から自車両V1の車速を引いた値が所定値を超えれば、隣接車線L2を走行する他車両V2の前方に車線変更の目標位置を設定する。この車線変更の目標位置は、他車両V2及び/又はV3に対する相対的な位置である。
走行時間設定部104は、車線変更の目標位置まで自車両が走行する時間を、車線変更完了位置までの距離に応じて設定する機能、特に、自車両の現在位置から車線変更の目標位置まで自車両が走行する時間を、自車両の現在位置から車線変更完了位置までの距離に応じて設定する機能を有する。たとえば、現在位置から車線変更完了位置までの距離が短いほど、現在位置から目標位置まで自車両が走行する時間を短く設定する。これにより、車線変更完了位置に到達するまでに車線変更を完了することができる。また、これに代えて又はこれに加えて、現在位置から車線変更完了位置までの距離が長いほど、現在位置から目標位置まで自車両が走行する時間を長く設定する。これにより、車線変更に伴う自車両の挙動を小さくすることができる。
また、自律的な車線変更支援を実行する平均的な所要時間(たとえば5~10秒)が、現在位置から車線変更の目標位置まで自車両が走行する所定の時間として設定されている場合には、自車両が車線変更完了位置に到達するまでの所要時間を算出し、算出した所要時間と当該所定時間とを比較し、現在位置から目標位置まで走行する時間を設定してもよい。すなわち、車線変更完了位置に到達するまでの所要時間が、設定されている所定時間よりも短い場合には、所定時間よりも短い時間を、目標位置まで走行する時間として設定する。一方、車線変更完了位置に到達するまでの所要時間が、設定されている所定時間以上である場合には、所定時間又はそれより長い時間を、目標位置まで走行する時間として設定する。
たとえば、図2に示す走行シーンであれば、完了位置検出部102にて算出した、自車両V1の現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dx、及び車速検出装置31から取得した自車両V1の車速を用いて、自車両V1が車線変更完了位置Pxに到達するまでの所要時間を算出する。そして、算出した所要時間と、目標位置まで走行する時間として設定されている所要時間とを比較し、算出した所要時間が所定時間よりも短い場合には、所定時間よりも短い時間を、自車両V1が現在位置から目標位置まで走行する時間として設定する。一方、算出した所要時間が所定時間以上である場合には、所定時間を、自車両V1が現在位置から目標位置まで走行する時間として設定する。
本実施形態の走行時間設定部104は、自車両V1が現在位置から目標位置まで走行する時間に代えて、又は自車両V1が現在位置から目標位置まで走行する時間に加えて、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxに応じて、車線変更の転舵を開始する転舵開始位置まで自車両V1が走行する走行時間を設定することができる。たとえば、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが短いほど、転舵開始位置までの走行時間を短く設定する。また、これに代えて又はこれに加えて、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが長いほど、転舵開始位置までの走行時間を長く設定する。このように、自車両V1が自車線L1を直進している間に走行時間を調整することで、自車両V1の挙動が大きくなる転舵を抑制し、乗員に与える不快感を抑制することができる。
また、本実施形態の走行時間設定部104は、自車線L1を走行する、自車両V1の後続車両が検出された場合には、当該後続車両が検出されなかった場合よりも、目標位置まで走行する時間を短く設定してもよい。これにより、後続車両が自車両V1よりも大きな車速で走行している場合などに、自車両V1が後続車両の走行の妨げとなる事態の発生を抑制する。後続車両の検出には、撮像装置11及び測距装置12を用いる。
これに代えて又はこれに加えて、本実施形態の走行時間設定部104は、自車両V1が交差点Cを直進する場合には、自車両V1が交差点Cを右折又は左折する場合よりも、自車両V1が目標位置まで走行する時間を短く設定してもよい。また、これに代えて又はこれに加えて、本実施形態の走行時間設定部104は、車線変更先の隣接車線L2が右折専用車線又は左折専用車線である場合には、隣接車線L2が右折専用車線又は左折専用車線でない場合よりも、自車両V1が目標位置まで走行する時間を短く設定してもよい。これにより、交差点Cを直進する車両と、右折又は左折する車両との速度差を考慮して、目標位置までの走行時間を設定できる。
走行距離設定部105は、車線変更完了位置までの距離に応じて、車線変更の目標位置まで走行するときの自車両の走行距離、特に、自車両の現在位置から車線変更完了位置までの距離に応じて、自車両の現在位置から車線変更の目標位置まで走行するときの走行距離を設定する機能を有する。走行距離は、たとえば、自車両が走行する道路の走行方向における走行距離であり、自車両の現在位置から車線変更完了位置までの距離が短いほど、自車両の現在位置から目標位置までの走行距離を短く設定する。これにより、車線変更完了位置に到達するまでに車線変更を完了することができる。また、これに代えて又はこれに加えて、自車両の現在位置から車線変更完了位置までの距離が長いほど、自車両の現在位置から目標位置までの走行距離を長く設定する。これにより、車線変更に伴う自車両の挙動を小さくすることができる。なお、走行距離設定部105により設定される走行距離は、他車両など自車両以外の物体に対する相対的な距離であってもよいし、自車両が走行する道路における絶対的な距離であってもよい。
また、自律的な車線変更支援を実行するための、車両の平均的な走行距離(たとえば50~150m)が自車両の走行距離の所定距離として設定されている場合は、当該所定距離と、自車両の現在位置から車線変更完了位置までの距離とを比較し、自車両の走行距離を設定してもより。つまり、当該所定距離が、現在位置から車線変更完了位置までの距離よりも長い場合には、当該所的距離未満の距離を自車両の走行距離として設定する。一方、自車両の現在位置から車線変更完了位置までの距離が当該所定距離以上である場合には、当該所定距離又はそれより長い距離を自車両の走行距離として設定する。
たとえば、図2に示す走行シーンであれば、完了位置検出部102にて算出した、自車両V1の現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxと、自律的な車線変更支援を実行する場合の平均的な走行距離である所定距離とを比較し、距離Dxが所定距離よりも短い場合には、所定距離よりも短い距離を自車両V1の走行距離として設定する。一方、距離Dxが所定距離以上である場合には、所定距離を自車両V1の走行距離として設定する。
本実施形態の走行距離設定部105は、自車両V1が目標位置まで走行するときの走行距離に代えて、又は自車両V1が目標位置まで走行するときの走行距離に加えて、自車両V1の現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxに応じて、転舵開始位置まで自車両V1が走行するときの走行距離を設定することができる。たとえば、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが短いほど、現在位置Pcから転舵開始位置まで走行するときの走行距離を短く設定する。また、これに代えて又はこれに加えて、車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが長いほど、現在位置Pcから転舵開始位置まで走行するときの走行距離を長く設定する。このように、自車両V1が自車線L1を走行する距離を調整することで、自車両V1の挙動が大きくなる転舵を抑制し、乗員に与える違和感を抑制することができる。
また、本実施形態の走行距離設定部105は、自車線L1を走行する、自車両V1の後続車両が検出された場合には、当該後続車両が検出されなかった場合よりも、目標位置まで走行するときの自車両V1の走行距離を短く設定してもよい。これにより、後続車両が自車両V1よりも大きな車速で走行している場合などに、自車両V1が後続車両の走行の妨げとなる事態の発生を抑制する。後続車両の検出には、撮像装置11及び測距装置12を用いる。
これに代えて又はこれに加えて、本実施形態の走行距離設定部105は、自車両V1が交差点Cを直進する場合には、自車両V1が交差点Cを右折又は左折する場合よりも、目標位置まで走行するときの自車両V1の走行距離を短く設定してもよい。また、これに代えて又はこれに加えて、本実施形態の走行距離設定部105は、車線変更先の隣接車線L2が右折専用車線又は左折専用車線である場合には、隣接車線L2が右折専用車線又は左折専用車線でない場合よりも、目標位置まで走行するときの自車両V1の走行距離を短く設定してもよい。これにより、交差点Cを直進する車両と、右折又は左折する車両との速度差を考慮して、目標位置までの走行時間を設定できる。
走行制御部106は、走行時間設定部104にて設定された走行時間、又は走行距離設定部105にて設定された走行距離で車線変更が完了するように、自車両の走行を自律制御する機能を有する。当該自律制御を実行するために、走行支援装置6は、現在位置から車線変更の目標位置まで自車両が走行する走行経路を生成し、設定された走行時間又は走行距離で自車両が目標位置に到達するように、車両制御装置5を用いて自車両の走行を自律制御する。以下、図3用いて、走行制御部106による自律走行制御を説明する。
図3は、図2に示す走行シーンにて、他車両V2の後方に、他車両V2に対する相対的な車線変更の目標位置P1を設定した場合に、本発明に係る走行支援システム10を用いて車線変更支援を実行したときの走行シーンを示す平面図である。なお、目標位置P1は、他車両V2に対する相対的な位置である。
たとえば、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが、自律的な車線変更支援を実行するときの平均的な走行距離よりも短いものとする。この場合には、走行時間設定部104の機能により、自車両V1が現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまで到達する所要時間を算出し、算出された所要時間を用いて、自車両V1が車線変更完了位置Pxに到達する前に車線変更を完了できる走行時間T1を設定する。また、走行距離設定部105の機能により、現在位置Pcと車線変更完了位置Pxとの距離Dxから、自車両V1が車線変更完了位置Pxに到達する前に車線変更を完了できる走行距離D1を設定する。一例として、設定された走行時間T1及び走行距離D1を図3に示す。
ここで、走行時間設定部104にて、車線変更の転舵開始位置P2まで自車両V1が走行する走行時間T2を設定してもよい。また、走行距離設定部105にて、転舵開始位置P2まで自車両V1が走行するときの自車両V1の走行距離D2を設定してもよい。一例として、設定された転舵開始位置P2、転舵開始位置P2までの走行時間T2及び転舵開始までの走行距離D2を図3に示す。なお、設定された走行距離D1及び走行距離D2は、自車両V1が走行する道路R1における絶対的な距離である。
そして、走行支援装置6は、走行制御部106の機能により、現在位置Pcから目標位置P1まで自車両V1が走行する走行軌跡Xを生成し、走行軌跡Xに沿って走行時間T1又は走行距離D1で走行するように、車速制御装置51及び操舵制御装置52に制御信号を送出し、自車両V1の走行動作を自律制御する。これにより、自車両V1は、車線変更完了位置Pxに到達する前に、自車線L1から隣接車線L2への車線変更を完了できる。
本実施形態の走行制御部106は、設定された走行時間又は走行距離で自車両V1が目標位置P1まで走行するように、設定された走行時間又は走行距離に基づいて、自車両V1の目標車速、又は目標加速度もしくは目標減速度を設定することができる。たとえば、図3に示す走行シーンであれば、走行時間T1又は走行距離D1で自車両V1が目標位置P1まで走行するように、目標車速、又は目標加速度もしくは目標減速度を設定し、必要な制御信号を車速制御装置51に送出する。これに代えて又はこれに加えて、本実施形態の走行制御部106の機能により、図3に示す走行時間T2又は走行距離D2で自車両V1が転舵開始位置P2まで走行するように、目標車速、又は目標加速度もしくは目標減速度を設定してもよい。
目標加速度又は目標減速度を設定する場合には、設定された走行時間又は走行距離(図3の走行シーンであれば走行時間T1又は走行距離D1)に応じて、許容される加速度又は減速度の絶対値を大きくしてもよい。また、これに加えて又はこれに代えて、図3の走行シーンのように隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合には、設定された走行時間又は走行距離に基づいて、他車両V2との車間距離を増減させる割合を設定してもよい。すなわち、自車両V1と他車両V2との車間距離を調整することで、目標位置P1に到達する走行時間T1及び/又は走行距離D1を制御してもよい。
一方、図10は、図3と同様の走行シーンで、本発明の比較例に係る走行支援システムを用いて車線変更支援を実行したときの走行シーンを示す平面図である。本発明の比較例に係る走行支援システムは、車線変更完了位置までの距離にかかわらず、他車両V2に対する相対的な位置である車線変更の目標位置P1まで自車両が走行する時間を一律に設定するものである。
図10に示す走行シーンのように、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが、自律的な車線変更支援を実行するときの平均的な走行距離よりも短い場合に、距離Dxの大きさにかかわらず、車線変更の目標位置P1までの走行時間又は走行距離を一律に設定すると、車線変更完了位置Pxに到達するまでに車線変更が完了しないおそれがある。
たとえば、図10に示す走行シーンでは、自車両V1は、本発明の比較例に係る走行支援システムにより生成された走行軌跡Yに沿って走行する。走行軌跡Yは、自車両V1が自車線L1を走行する距離が走行軌跡Xよりも長く、自車両V1は、車線L1とL2に自車両V1の車体が含まれる位置Pyにて、他車両V2との接触を避けるために停車してしまう。この結果、自車両V1が車線変更完了位置Pxに到達する前に、自車線L1から隣接車線L2への車線変更を完了することができない。
なお、本実施形態では、車線変更の目標位置P1を設定した後に、走行時間T1及び/又は走行距離D1を設定したが、車線変更の目標位置P1を設定する前に走行時間T1及び/又は走行距離D1を設定してもよい。たとえば、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが比較的小さい場合には、現在位置Pcから隣接車線L2に車線変更するための走行時間T1及び/又は走行距離D1を短く設定し、設定された走行時間T1及び/又は走行距離D1に基づいて車線変更の目標位置P1を設定してもよい。この場合、車線変更の目標位置P1は、自車両V1が走行する道路における絶対的な位置である。これにより、車線変更を確実に完了できる。
また、車線変更に要する平均的な走行時間及び/又は走行距離に基づいて、車線変更の目標位置P1を予め設定した場合に、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが比較的小さいときは、現在位置Pcから隣接車線L2に車線変更するための走行時間T1及び/又は走行距離D1が短くなるように、車線変更の目標位置P1を変更してもよい。この場合、車線変更の目標位置P1は、自車両V1が走行する道路における絶対的な位置である。これにより、車線変更を確実に完了できる。
別の例として、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが比較的大きい場合には、現在位置Pcから隣接車線L2に車線変更するための走行時間T1及び/又は走行距離D1を長く設定し、隣接車線L2を走行する他車両V2を追い抜いた後に、車線変更の目標位置P1を設定してもよい。この場合、車線変更の目標位置P1は、隣接車線L2を走行するV2に対する相対的な位置である。また、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが比較的大きい場合には、隣接車線L2を走行する他車両V2の前方に、他車両V2に対する相対位置である車線変更の目標位置P1を設定し、現在位置Pcから車線変更の目標位置P1まで走行するための走行時間T1及び/又は走行距離D1を長く設定してもよい。
[走行支援システムの処理]
図4~9を参照して、走行支援装置6が車線変更を支援する際の処理を説明する。図4は、図1に示す走行支援システム10における処理を示すフローチャートの一例である。図5及び6は、図4に示すステップS4のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。また、図7、8及び9は、それぞれ、図4に示すステップS5、S6及びS7のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。図4~9に示す処理は、走行支援装置6のプロセッサ7により、所定の時間間隔で実行される。
なお、以下の説明は、走行支援装置6の自律制御により、設定した経路に沿って、交差点Cに向かって自車両V1が自律的に走行しており、走行速度は車速制御装置51により制御され、操舵操作は操舵制御装置52により制御されていることを前提とする。
まず、ステップS1にて、要否判定部101の機能により、ナビゲーション装置4にて設定された経路に沿った走行を継続するために車線変更が必要か否かを判定する。当該判定には、自車位置検出装置33から取得した自車両V1の現在位置Pc、及び地図情報2から取得した自車両V1の走行方向前方における道路交通法規の情報を用いる。車線変更が必要でないと判定した場合には(ステップS1:No)、車線変更支援を行わず、図4に示すルーチンの実行を終了する。一方、車線変更が必要であると判定した場合には(ステップS1:Yes)、ステップS2に進む。
ステップS2にて、完了位置検出部102の機能により、車線変更完了位置Pxを検出する。当該検出には、たとえば、撮像装置11により取得した画像データ、測距装置12の検出結果、地図情報2から取得した道路情報、及び自車位置検出装置33により取得した自車両V1の現在位置Pcを用いる。続くステップS3にて、完了位置検出部102の機能により、車線変更完了位置Pxまでの距離Dxを算出する。距離Dxは、たとえば、測距装置12の検出結果から算出した、自車両V1と路面標識との距離、又は地図情報2から取得した車線変更禁止区間Zの位置と、自車位置検出装置33により取得した自車両V1の現在位置Pcとの距離から求めることができる。
続くステップS4にて、目標位置設定部103の機能により、車線変更の目標位置P1を隣接車線L2に設定する。車線変更の目標位置P1を設定した後、ステップS5及び/又はステップS6に進む。ステップS5に進んだ場合には、ステップS3にて算出した車線変更完了位置Pxまでの距離Dxに応じて、走行時間設定部104の機能により、ステップS4で設定した目標位置P1まで自車両V1が走行するときの走行時間T1を設定する。一方、ステップS6に進んだ場合には、ステップS3にて算出した車線変更完了位置Pxまでの距離Dxに応じて、走行距離設定部105の機能により、ステップS4で設定した目標位置P1まで自車両V1が走行するときの、自車両V1の走行距離D1を設定する。
そして、ステップS7にて、ステップS5にて設定した走行時間T1、及び/又はステップS6にて設定した走行距離D1を用いて、走行制御部106の機能により、ステップS4にて設定した目標位置P1まで走行する自車両V1の走行動作を自律制御する。ステップS7における処理が完了した後は、図4に示すルーチンの実行を終了する。
図5は、図4に示すステップS4のサブルーチンの一例である。車線変更の目標位置P1を設定する場合に、ステップS4では、たとえば図5に示す手順で処理を行う。まず、ステップS3にて車線変更完了位置Pxまでの距離Dxを算出した後、ステップS41にて、検出装置1を用いて、隣接車線L2を走行する他車両を検出する。隣接車線L2を走行する他車両が検出されない場合には(ステップS41:No)、ステップS42に進み、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの間に、車線変更の目標位置P1を設定する。一方、隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合には(ステップS41:Yes)、ステップS43に進む。
ステップS43では、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが、自車両V1が他車両V2を追い抜くことができる所定距離よりも大きいか否かを判定する。現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが所定距離よりも大きいと判定した場合には(ステップS43:Yes)、ステップS44に進み、検出した他車両V2の前方に目標位置P1を設定する。一方、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが所定距離以下であると判定した場合には(ステップS43:No)、ステップS45に進み、検出した他車両V2の後方に目標位置P1を設定する。目標位置P1が設定されると、ステップS5及び/又はS6に進み、走行時間T1及び/又は走行距離D1が設定される。
図6は、図4に示すステップS4のサブルーチンの他の例である。車線変更の目標位置P1を設定する場合に、ステップS4では、図6に示す手順で処理を行ってもよい。まず、ステップS3にて車線変更完了位置Pxまでの距離Dxを算出した後、ステップS41にて、検出装置1を用いて、隣接車線L2を走行する他車両を検出する。隣接車線L2を走行する他車両が検出されない場合には(ステップS41:No)、ステップS42に進み、現在位置Pcから車線変更完了位置Pxまでの間に、車線変更の目標位置P1を設定する。一方、隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合には(ステップS41:Yes)、ステップS43aに進む。
ステップS43aでは、測距装置12を用いて他車両V2の車速を検出する。続くステップS43bにて、自車両V1の車速が、他車両V2の車速よりも所定値以上大きいか否かを判定する。自車両V1の車速は、車速検出装置31から取得する。自車両V1の車速が、他車両V2の車速よりも所定値以上大きくないと判定した場合には(ステップS43b:No)、ステップS45に進み、検出した他車両V2の後方に目標位置P1を設定する。一方、自車両V1の車速が、他車両V2の車速よりも所定値以上大きいと判定した場合には(ステップS43b:Yes)、ステップS43cに進む。
ステップS43cでは、自車両V1の車速と、自車両V1が走行する道路R1の制限速度との差の絶対値が所定値以下か否かを判定する。道路R1の制限速度は、地図情報2から取得する。自車両V1の車速と、自車両V1が走行する道路R1の制限速度との差の絶対値が所定値以下であると判定した場合には(ステップS43c:Yes)、ステップS45に進み、検出した他車両V2の後方に目標位置P1を設定する。一方、自車両V1の車速と、自車両V1が走行する道路R1の制限速度との差の絶対値が所定値を超えると判定した場合には(ステップS43c:No)、ステップS44に進み、検出した他車両V2の前方に目標位置P1を設定する。目標位置P1が設定されると、ステップS5及び/又はS6に進み、走行時間T1及び/又は走行距離D1が設定される。
図7は、図4に示すステップS5のサブルーチンの一例である。車線変更の目標位置P1までの走行時間T1を設定する場合に、ステップS5では、たとえば図7に示す手順で処理を行う。まず、ステップS4にて目標位置P1を設定した後、ステップS51にて、自車両V1が車線変更完了位置Pxに到達するまでの時間を算出する。当該算出には、車速検出装置31から取得した自車両V1の車速と、ステップS3にて算出した、車線変更完了位置Pxまでの距離Dxとを用いる。
続くステップS52にて、ステップS51にて算出した到達時間が、所定時間より短いか否かを判定する。当該所定時間は、たとえば、自律的な車線変更支援を実行する平均的な所要時間である。到達時間が所定時間より短いと判定した場合には(ステップS52:Yes)、ステップS53に進み、所定時間未満の走行時間T1を設定する。一方、到達時間が所定時間以上であると判定した場合には(ステップS52:No)、ステップS54に進む。
ステップS54にて、撮像装置11及び測距装置12を用い、後続車両を検出する。後続車両が検出された場合には(ステップS54:Yes)、ステップS53に進み、所定時間未満の走行時間T1を設定する。一方、後続車両が検出されない場合には(ステップS54:No)、ステップS55に進み、所定時間以上の走行時間T1を設定する。そして、ステップS56にて、車線変更の転舵開始位置P2まで走行する走行時間T2を設定する。設定された走行時間T1及び走行時間T2に基づいて、ステップS7にて自車両V1の走行動作を自律制御する。
図8は、図4に示すステップS6のサブルーチンの一例である。車線変更の目標位置P1までの走行距離D1を設定する場合に、ステップS6では、たとえば図8に示す手順で処理を行う。まず、ステップS4にて目標位置P1を設定した後、ステップS61にて、自車両V1の現在位置Pcと車線変更完了位置Pxとの距離Dxが、所定距離より短いか否かを判定する。当該所定距離は、たとえば、自律的な車線変更支援を実行するための車両の平均的な走行距離である。距離Dxが所定距離未満であると判定した場合には(ステップS61:Yes)、ステップS62に進み、所定距離未満の走行距離D1を設定する。一方、距離Dxが所定距離以上であると判定した場合には(ステップS61:No)、ステップS63に進む。
ステップS63では、地図情報2から取得した道路情報、自車位置検出装置33により取得した自車両V1の現在位置Pc、及びナビゲーション装置4にて設定された走行経路から、自車両V1が交差点Cを直進する走行シーンであるか否かを判定する。自車両V1が交差点Cを直進する走行シーンであると判定した場合には(ステップS63:Yes)、ステップS62に進み、所定距離未満の走行距離D1を設定する。一方、自車両V1が交差点Cを直進する走行シーンでないと判定した場合には(ステップS63:No)、ステップS64に進む。
ステップS64では、撮像装置11にて取得した画像データ、地図情報2から取得した道路情報、及び自車位置検出装置33により取得した自車両V1の現在位置Pcから、車線変更先の隣接車線L2が、右折又は左折専用の車線であるか否かを判定する。隣接車線L2が右左折専用車線であると判定した場合には(ステップS64:Yes)、ステップS65に進み、所定距離以上の走行距離D1を設定する。一方、隣接車線L2が右左折専用車線でないと判定した場合には(ステップS64:No)、ステップS62に進み、所定距離未満の走行距離D1を設定する。そして、ステップS66にて、車線変更の転舵開始位置P2まで走行するときの走行距離である走行距離D2を設定する。設定された走行距離D1及び走行距離D2に基づいて、ステップS7にて自車両V1の走行動作を自律制御する。
図9は、図4に示すステップS7のサブルーチンの一例である。自車両V1の走行動作を自律制御する場合に、ステップS7では、たとえば図9に示す手順で処理を行う。まず、ステップS5にて走行時間T1を設定した後、及び/又はステップS6にて走行距離D1を設定した後に、ステップS71にて、現在位置Pcから目標位置P1まで走行する走行軌跡Xを生成する。続くステップS72にて、自車両V1が転舵開始位置P2まで走行する走行時間T2及び/又は走行距離D2が設定されたかを判定する。走行時間T2も走行距離D2も設定されていないと判定した場合には(ステップS72:No)、ステップS73に進み、自車両V1が目標位置P1まで走行する走行時間T1又は走行距離D1に基づいて、目標車速、又は目標加速度もしくは目標減速度を設定する。一方、自車両V1が転舵開始位置P2まで走行する走行時間T2及び走行距離D2のうち少なくとも一方が設定されていると判定した場合には(ステップS72:Yes)、ステップS74に進み、第1走行時間T1、走行時間T2第2走行距離、及び走行距離D2のうち少なくとも一つに基づいて、目標車速、又は目標加速度もしくは目標減速度を設定する。
続くステップS75にて、撮像装置11及び測距装置12を用いて、隣接車線L2を走行する他車両V2を検出する。隣接車線L2を走行する他車両V2が検出されない場合には(ステップS75:No)、ステップS77に進み、車両制御装置5を用いて、自車両V1が目標位置P1まで走行するように、自車両V1の走行動作を自律制御する。一方、隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合には(ステップS75:Yes)、ステップS76に進み、他車両V2との車間距離を増減させる割合を設定する。そして、ステップS77に進み、車両制御装置5を用いて、自車両V1が目標位置P1まで走行するように、自車両V1の走行動作を自律制御する。
[本発明の実施態様]
以上のとおり、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、自車両V1が走行する自車線L1から、前記自車線L1の隣接車線L2へ車線変更する場合に、自車両V1の現在位置Pcから、隣接車線L2における車線変更の目標位置P1まで自車両V1が走行するときの走行時間T1又は走行距離D1を、前記現在位置Pcから、自車両V1が車線変更を完了すべき車線変更完了位置Pxまでの距離Dxに応じて設定し、前記走行時間T1又は前記走行距離D1のうち少なくとも一つを用いて、前記目標位置P1への自車両V1の走行を自律制御する。これにより、自車両V1が走行する場面ごとに適した位置で自車線L1から隣接車線L2への車線変更を完了することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記現在位置Pcから前記車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが短いほど、前記走行時間T1又は前記走行距離D1を短く設定する。これにより、車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが小さい場合でも自車両V1の車線変更を完了することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記現在位置Pcから前記車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが長いほど、前記走行時間T1又は前記走行距離D1を長く設定する。これにより、自車両V1が他車両V2を追い抜く機会を逸することなく、自車両V1の車線変更を完了することができる。また、車線変更に伴う自車両V1の挙動を小さくすることができ、乗員に与える違和感を抑制することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記走行時間T1又は前記走行距離D1に基づいて、自車両V1の目標車速、又は目標加速度もしくは目標減速度を設定する。これにより、設定した走行時間T1又は走行距離D1で自車両V1が車線変更することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記走行時間T1又は前記走行距離D1に応じて、許容される加速度又は減速度の絶対値を大きくする。これにより、車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが小さい場合でも自車両V1の車線変更を完了することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合に、前記走行時間T1又は前記走行距離D1に基づいて、前記他車両V2との車間距離を増減させる割合を設定する。これにより、自車両V1が走行する場面ごとに適した車間距離を設定することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、車線変更の転舵を開始する転舵開始位置P2まで自車両V1が走行するときの走行時間T2又は走行距離D2を、前記現在位置Pcから前記車線変更完了位置Pxまでの距離Dxに応じて設定する。これにより、転舵中の自車両V1の挙動が大きくなる事態の発生を抑制しつつ、自車両V1が走行する場面ごとに適した位置で車線変更を完了することができる。すなわち、自車両V1が自車線L1を走行する走行時間T2又は走行距離D2を、車線変更完了位置Pxまでの距離Dxに応じて設定するため、転舵中の自車両V1の挙動は、距離Dxにより変化しない。また、自車両V1が他車両V2を追い抜く機会を逸することなく、自車両V1の車線変更を完了することができ、これに加えて、車線変更に伴う自車両V1の挙動を小さくすることができ、乗員に与える違和感を抑制することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記現在位置Pcから前記車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが短いほど、前記転舵開始位置P2までの走行時間T2又は走行距離D2を短く設定する、及び/又は前記現在位置Pcから前記車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが長いほど、前記転舵開始位置P2まで走行する走行時間T2又は走行距離D2を長く設定する。これにより、車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが小さい場合でも自車両V1の車線変更を完了することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合に、前記現在位置Pcから前記車線変更完了位置Pxまでの距離Dxが所定距離より長いときは、前記他車両V2の前方に前記目標位置P1を設定する。これにより、自車両V1が他車両V2を追い抜くための十分な走行距離がある場合に、他車両V2を追い抜く機会を逸することを抑制できる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合に、自車両V1の車速が、前記他車両V2の車速よりも所定値以上大きいときは、前記他車両V2の前方に前記目標位置P1を設定する。これにより、自車両V1よりも小さい車速で走行する他車両V2を追い抜く機会を逸することを抑制できる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記隣接車線L2を走行する他車両V2が検出された場合に、自車両V1の車速と、自車両V1が走行する道路R1の制限速度との差の絶対値が所定値以下のときは、前記他車両V2の後方に前記目標位置P1を設定する。これにより、他車両V2の追い抜きが難しい走行シーンにおいて、他車両V2の追い抜きを伴う車線変更支援の実行を抑制することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記自車線L1を走行する、自車両V1の後続車両が検出された場合には、前記後続車両が検出されなかった場合よりも、前記走行時間T1又は前記走行距離D1を短く設定する。これにより、自車両V1が自車線L1を走行する時間又は距離を短くすることができる。この結果、自車両V1が後続車両の走行を妨げる事態が発生することを抑制できる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、自車両V1が交差点Cを直進する場合には、自車両V1が前記交差点Cを右折又は左折する場合よりも、前記走行時間T1又は前記走行距離D1を短く設定する。これにより、交差点Cを直進する車両の車速が、交差点Cを右折又は左折する車両の車速よりも大きいことを考慮した車線変更支援を実行することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記隣接車線L2が右折専用車線又は左折専用車線である場合には、前記隣接車線L2が右折専用車線又は左折専用車線でない場合よりも、前記走行時間T1又は前記走行距離D1を長く設定する。これにより、交差点Cを右折又は左折する車両の車速が、交差点Cを直進する車両の車速よりも小さいことを考慮した車線変更支援を実行することができる。
また、本実施形態の車両の走行支援方法及び支援装置によれば、前記車線変更完了位置Pxは、交差点Cにおける車線変更禁止区間Zの開始位置である。これにより、自車両V1が交差点Cを走行する場合に、車線変更禁止区間Zの位置を考慮した車線変更支援を実行することができる。