以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1~4には、本発明の一実施形態としての複数種類のブラケット付き筒型防振装置のうちの一つである第一のブラケット付き筒型防振装置として、電気自動車用の第一のブラケット付きモータマウント10が示されている。第一のブラケット付きモータマウント10は、第一のブラケット12における装着孔14に対して、筒型のゴムマウント本体16が装着された構造とされている。なお、車両装着時における第一のブラケット付きモータマウント10の向きは限定されるものではないが、以下の説明では、上下方向とは図2中の上下方向、前後方向とは図2中の右左方向、左右方向とは図2中の紙面直交方向であり、奥手前方向をいう。
より詳細には、第一のブラケット12は、図3にも示されるように、全体として左右方向に対して直交する方向に広がっており、金属や繊維補強された合成樹脂等からなる硬質の部材である。第一のブラケット12には、前方部分に装着孔14が形成されており、当該装着孔14が、第一のブラケット12を貫通して左右方向に延びている。装着孔14は円形の貫通孔であり、ある程度の長さ寸法を有している。即ち、装着孔14の周壁部分18は、装着孔14の軸方向(左右方向)である程度の長さ寸法を有しており、周壁部分18の内径寸法が装着孔14の軸方向(左右方向)で略一定である。なお、第一のブラケット12において、装着孔14以外の部分は、例えばモータ等のパワーユニット側の部材への取付けに適した構造とされており、肉抜穴や取付用のボルトが挿通される挿通孔が適宜設けられている。
また、ゴムマウント本体16は、インナ軸部材20とアウタ筒部材22が、本体ゴム弾性体24によって弾性連結された構造を有している。
インナ軸部材20は、アルミニウム合金等の金属によって形成されて、全体としてロッド状とされている。インナ軸部材20は左右方向に延びており、左右方向両端部分が、略矩形ブロック状の締結部26,26とされて、各締結部26には、上下方向に貫通するボルト孔28が形成されている。一方、インナ軸部材20の左右方向中間部分は、略長円形断面であり、当該略長円形断面とされた左右方向中間部分の外周面が、左右方向両端部分である締結部26の外周面よりも外周側に位置している。即ち、インナ軸部材20の外周面は、軸方向中間部分が軸方向両端部分よりも外周側に突出しており、かかる略長円形断面とされた軸方向中間部分が、軸方向両端部分よりも外周側に突出して、後述する外嵌突部70と嵌合する嵌合用突部30とされている。特に、本実施形態では、嵌合用突部30において、軸直交方向(図4中の右方)に突出して、軸方向の略全長にわたって延びる突出部32が設けられている。
一方、インナ軸部材20の軸方向中間部分における嵌合用突部30には、突出部32が設けられている側と反対側(図4中の左側)に開口するインナ凹所34が設けられている。インナ凹所34は、ある程度の開口寸法(図4中の上下方向寸法)と深さ寸法(図4中の左右方向寸法)を有しており、本実施形態では、嵌合用突部30の全長には至らない開口寸法をもって、インナ凹所34が形成されている。
アウタ筒部材22は、金属等で形成されており、左右方向に延びる略円筒形状とされている。アウタ筒部材22は、インナ軸部材20が挿通可能であり、略一定の内径寸法を有している。
インナ軸部材20の軸方向中間部分である嵌合用突部30がアウタ筒部材22に挿通され、それらインナ軸部材20の嵌合用突部30とアウタ筒部材22の径方向間に本体ゴム弾性体24が配されている。本体ゴム弾性体24は、図5にも示されるように、インナ軸部材20とアウタ筒部材22とを相互に連結する一対のゴム腕36,36を備えている。ゴム腕36,36は、内周端部がインナ軸部材20の嵌合用突部30に加硫接着されていると共に、外周端部がアウタ筒部材22の内周面に加硫接着されている。ゴム腕36,36を備える本体ゴム弾性体24は、インナ軸部材20の嵌合用突部30の表面を左右方向の中央部分において覆っており、換言すれば、インナ軸部材20の嵌合用突部30における左右方向両端部は、ゴム腕36,36を備える本体ゴム弾性体24から露出している。また、インナ軸部材20の嵌合用突部30とアウタ筒部材22は、左右方向端部が本体ゴム弾性体24よりも左右方向の外側へ突出している。
本体ゴム弾性体24の径方向中間部分において、嵌合用突部30における突出部32が設けられている側と径方向の反対側(図4中の左側)には、軸方向(左右方向)で貫通する第一のすぐり孔38が設けられている。第一のすぐり孔38は、周方向で半周に満たない長さで延びている。また、本体ゴム弾性体24の径方向中間部分において、嵌合用突部30における突出部32が設けられている側(図4中の右側)には、軸方向(左右方向)で貫通する第二のすぐり孔40が設けられている。第二のすぐり孔40は、周方向で半周に満たない長さで延びている。そして、第一のすぐり孔38と第二のすぐり孔40の周方向端部間に一対のゴム腕36,36が配されている。
本体ゴム弾性体24は、第一のすぐり孔38においてインナ軸部材20と反対側の壁部を構成する第一のアウタストッパゴム42を備えており、当該第一のアウタストッパゴム42が、アウタ筒部材22の内周面に固着されている。第一のアウタストッパゴム42は、周方向中央部分においてインナ軸部材20側に突出する第一の当接突部44を備えており、第一の当接突部44は、第一のすぐり孔38の周方向中央部分において、インナ軸部材20のインナ凹所34の開口に向けて突出している。第一の当接突部44は、略矩形ブロック形状とされており、第一の当接突部44の突出先端面における左右方向中央部分には、インナ軸部材20に向かって更に突出する第一の緩衝突起46が設けられている。
本体ゴム弾性体24は、第二のすぐり孔40においてインナ軸部材20と反対側の壁部を構成する第二のアウタストッパゴム48を備えており、当該第二のアウタストッパゴム48が、アウタ筒部材22の内周面に固着されている。第二のアウタストッパゴム48は、周方向中央部分においてインナ軸部材20側に突出する第二の当接突部50を備えており、第二の当接突部50は、第二のすぐり孔40の周方向中央部分において、インナ軸部材20に向けて突出している。第二の当接突部50は、略矩形ブロック形状とされており、第二の当接突部50の突出先端面における左右方向中央部分には、インナ軸部材20に向かって更に突出する第二の緩衝突起52が設けられている。
インナ軸部材20の嵌合用突部30における第一のすぐり孔38側(図4中の左側)には、第一のインナストッパゴム54が固着されている。第一のインナストッパゴム54は、インナ凹所34内に充填状態で配されていると共に、インナ凹所34の開口よりも外周側まで突出している。第一のインナストッパゴム54と第一のアウタストッパゴム42とは、図4中の左右方向で離隔して対向している。第一のインナストッパゴム54は、各ゴム腕36の周方向端部に対して連続しており、本体ゴム弾性体24と一体的に設けられている。
インナ軸部材20の嵌合用突部30における第二のすぐり孔40側(図4中の右側)には、第二のインナストッパゴム56が固着されている。第二のインナストッパゴム56は、嵌合用突部30における突出部32の表面を覆っており、第二のアウタストッパゴム48に対して、図4中の左右方向で離隔して対向している。第二のインナストッパゴム56は、各ゴム腕36における第一のインナストッパゴム54とは反対側の周方向端部に対して連続しており、本体ゴム弾性体24と一体的に設けられている。
以上の如き構造とされたゴムマウント本体16では、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との間に軸直角方向(図4中の左右方向)に衝撃的な大振幅振動が入力されると、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸直角方向の相対変位量が、第一の軸直角ストッパ機構58と第二の軸直角ストッパ機構60によって制限される。
すなわち、インナ軸部材20がアウタ筒部材22に対して図4中の左方へ大きく変位すると、インナ軸部材20の嵌合用突部30とアウタ筒部材22とが、第一の当接突部44と第一の緩衝突起46とを含む第一のアウタストッパゴム42及び第一のインナストッパゴム54を介して当接する。これにより、第一の軸直角ストッパ機構58が構成されて、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸直角方向における相対変位量が制限される。また、インナ軸部材20がアウタ筒部材22に対して図4中の右方へ大きく変位すると、インナ軸部材20の嵌合用突部30における突出部32とアウタ筒部材22とが、第二の当接突部50と第二の緩衝突起52とを含む第二のアウタストッパゴム48及び第二のインナストッパゴム56を介して当接する。これにより、第二の軸直角ストッパ機構60が構成されて、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸直角方向における相対変位量が制限される。
そして、第一のブラケット付きモータマウント10は、第一のブラケット12及びゴムマウント本体16に装着されるストッパ部材62を有している。ストッパ部材62は、図6にも示されるように、全体として溝状であり、第一のブラケット12の装着孔14の軸方向(左右方向)両側に配される一対の側方部分64,64と、第一のブラケット12の外周側に配されて一対の側方部分64,64を相互につなぐ外方部分66とを有している。ストッパ部材62は、少なくとも後述する軸方向のストッパ機構82,106や軸直角方向のストッパ機構(第三の軸直角ストッパ機構104)を構成する部分がゴム等の弾性材により形成されていることが好適であるが、本実施形態では、ストッパ部材62の全体がゴム等の弾性材により構成されている。
また、かかるストッパ部材62では、一対の側方部分64,64及び外方部分66がそれぞれ全体として略平板形状であり、一対の側方部分64,64が左右方向で相互に離隔して対向していると共に、外方部分66が左右方向と平行に広がっている。特に、これら一対の側方部分64,64及び当該側方部分64,64の外周側につながる外方部分66により溝状とされた領域において、溝長さ方向(図6中の上下方向)で、一対の側方部分64,64及び外方部分66が、それぞれ略一定の寸法とされている。
さらに、ストッパ部材62は、図7にも示されるように、一対の側方部分64,64がそれぞれ全体として略矩形状であり、各側方部分64において外方部分66につながる側と反対側の端部分には、ゴムマウント本体16のインナ軸部材20へ取り付けられる取付用穴68が設けられている。取付用穴68の左右方向視における外形状は、インナ軸部材20の嵌合用突部30の左右方向視における外形状と対応しており、全体として略長円形状とされた長円部分69aと、長円部分69aの外周縁部の一部において突出部32に相当して山型に突出する突出部分69bとを有している。一対の側方部分64,64において、各取付用穴68の内周縁部には、周方向の略全周にわたって連続して対向方向内方に突出する略環状の外嵌突部70が一体的に設けられている。なお、一対の側方部分64,64において、取付用穴68と外方部分66との間には、凹凸部72が設けられている。凹凸部72が設けられることにより、後述する軸方向のストッパ機構82,106における緩衝機能の向上や打音の低減が図られる。
かかる側方部分64における取付用穴68の周囲には、外周方向(図7中の上方)に向かって広がる張出部分76が、側方部分64とは異なる部分として設けられている。この張出部分76は、左右方向視で略半円形状をもって図7中の上方に膨出しており、張出部分76の外周縁形状が、周方向で湾曲して外方に凸となっている。なお、本実施形態では、一対の側方部分64,64の両方に張出部分76が設けられているが、少なくとも一方の側方部分64に張出部分76が設けられればよい。
以上のような構成とされた第一のブラケット12、ゴムマウント本体16及びストッパ部材62は、ゴムマウント本体16が第一のブラケット12の装着孔14に装着された後、ストッパ部材62の一対の側方部分64,64が装着孔14の軸方向両側に位置すると共に、ストッパ部材62の外方部分66が第一のブラケット12の外周側に位置するように、ストッパ部材62が、第一のブラケット12及びゴムマウント本体16に組み付けられる。
具体的には、第一のブラケット12の装着孔14にゴムマウント本体16が圧入組付けされる。なお、装着孔14へのゴムマウント本体16の圧入方法は、限定されるものではなく、例えば従来公知の圧入用の治具を用いて、圧入組付けがなされる。その際、第一のブラケット12とゴムマウント本体16とは、相互に所定の向きをもって組み付けられる。第一のブラケット付きモータマウント10では、図2の向きに配置された第一のブラケット12に対して、インナ軸部材20の左右方向両端に設けられた各ボルト孔28が、上下方向を向くように組み付けられる。なお、第一のブラケット12とゴムマウント本体16との周方向における位置決め機構は限定されるものではなく、例えば従来公知の周方向位置決め機構が採用される。
そして、第一のブラケット12に組み付けられたゴムマウント本体16において左右方向両側に突出するインナ軸部材20に対して、左右方向外側からストッパ部材62における一対の側方部分64,64が、取り付けられる。即ち、一対の側方部分64,64における取付用穴68,68に対して、インナ軸部材20の左右方向両端部の締結部26,26が挿通されて、インナ軸部材20の嵌合用突部30における左右方向両端部において本体ゴム弾性体24に覆われず露出する部分に対して、一対の側方部分64,64から対向方向内方(インナ軸部材20の軸方向内方)に突出する外嵌突部70が略密着状態で外嵌されることで、ストッパ部材62が第一のブラケット12及びゴムマウント本体16に組み付けられる。なお、本実施形態では、ストッパ部材62の略全体がゴム等の弾性材により構成されていることから、相互に対向する一対の側方部分64,64を対向距離が大きくなるように押し広げたりすることで、側方部分64における取付用穴68にインナ軸部材20の左右方向両端部を差し入れることが可能となる。
本実施形態では、嵌合用突部30が全体として略長円形状であると共に、嵌合用突部30が挿通される取付用穴68は、嵌合用突部30と対応する形状とされた長円部分69aを有している。それ故、嵌合用突部30に対して外嵌突部70を外嵌する際には、それぞれ非円形状とされた嵌合用突部30と長円部分69aとにより、ストッパ部材62がゴムマウント本体16に対して周方向で位置決めされる。従って、本実施形態では、それぞれ非円形状とされた嵌合用突部30と取付用穴68における長円部分69aにより、ゴムマウント本体16とストッパ部材62との周方向での位置決め機構78が構成されている。特に、本実施形態では、嵌合用突部30の外周面の一部に突出部32が設けられていると共に、取付用穴68には突出部32に対応する突出部分69bが設けられていることから、これらによってもゴムマウント本体16とストッパ部材62との周方向での位置決め機構78が構成されており、より高度な周方向での位置決めが達成される。
また、第一のブラケット付きモータマウント10では、上述のように、図示しない周方向の位置決め機構によって、第一のブラケット12に対してゴムマウント本体16が所定の向きで組み付けられるようになっており、ゴムマウント本体16を介して、ストッパ部材62が、第一のブラケット12に対して周方向で位置決めされた状態で組み付けられるようになっている。それ故、第一のブラケット12とストッパ部材62とを周方向で位置決めする位置決め機構が、ゴムマウント本体16とストッパ部材62とを周方向で位置決めする位置決め機構78を含んで構成されている。
かかる位置決め機構78により第一のブラケット12及びゴムマウント本体16に対してストッパ部材62が周方向で位置決めされた状態で組み付けられることにより、装着孔14の周壁部分18における周上の一部が左右方向で対向する側方部分64,64間に位置していると共に、ストッパ部材62の外方部分66が、装着孔14の周壁部分18における周上の一部を、所定の方向において外周側から覆っている。
このようにして構成された第一のブラケット付きモータマウント10は、例えば第一のブラケット12が、図示しないモータ等のパワーユニット側の部材に取り付けられると共に、インナ軸部材20のボルト孔28に挿通される図示しないボルトにより、インナ軸部材20が、図4中に二点鎖線で示される車両ボデー側の相手側部材80に取り付けられる。第一のブラケット付きモータマウント10では、インナ軸部材20に固定される相手側部材80が、ストッパ部材62の側方部分64において張出部分76が広がる図4中の左方に延びている。これにより、装着孔14の周壁部分18における周上の一部が、ストッパ部材62における張出部分76を挟んで、インナ軸部材20に固定される相手側部材80と左右方向で対向している。
以上の如き構造とされた第一のブラケット付きモータマウント10において、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との間に軸方向(図4中の上下方向)に衝撃的な大振幅振動が入力されると、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸方向の相対変位量が、軸方向のストッパ機構82によって制限される。
すなわち、インナ軸部材20がアウタ筒部材22に対して図4中の上下方向で大きく変位すると、左右方向で相互に対向する第一のブラケット12とインナ軸部材20に固定される相手側部材80とが、ストッパ部材62における張出部分76を介して当接する。これにより、軸方向のストッパ機構82が構成されて、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸方向における相対変位量が制限される。従って、第一のブラケット付きモータマウント10では、ストッパ部材62における張出部分76を含んで、軸方向のストッパ機構82が構成されている。また、本実施形態では、第一のブラケット12と相手側部材80との打ち当たり面間に介在する張出部分76を含んで、ストッパ部材62の全体がゴム等の弾性材により構成されていることから、第一のブラケット12と相手側部材80との打ち当たりによる衝撃を緩衝することもできる。なお、ストッパ部材62において第一のブラケット12と相手側部材80との打ち当たり面間に介在して軸方向のストッパ機構82を構成する部分は、張出部分76だけでなく、張出部分76よりも取付用穴68側に位置する側方部分64を含んでいてもよい。
次に、図8~10には、本実施形態の複数種類のブラケット付き筒型防振装置のうちの別の一つである第二のブラケット付き筒型防振装置として、電気自動車用の第二のブラケット付きモータマウント90が示されている。第二のブラケット付きモータマウント90は、前述の第一のブラケット付きモータマウント10と同様に、第二のブラケット92における装着孔14に対して、筒型のゴムマウント本体16が装着された構造とされている。本実施形態では、第二のブラケット92の形状が第一のブラケット12と異ならされている一方、装着されるゴムマウント本体16は同一のものが採用されている。第二のブラケット付きモータマウント90において、第二のブラケット92以外の構造は、前述の第一のブラケット付きモータマウント10と同様であり、第一のブラケット付きモータマウント10と同一の部材及び部位には、図中に、第一のブラケット付きモータマウント10における符号と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。なお、車両装着時における第二のブラケット付きモータマウント90の向きは限定されるものではないが、以下の説明において、上下方向とは図9中の上下方向、前後方向とは図9中の右左方向、左右方向とは図9中の紙面直交方向であり、奥手前方向をいう。
すなわち、第二のブラケット付きモータマウント90においても、第二のブラケット92における装着孔14にゴムマウント本体16が圧入組付けされていると共に、第一のブラケット付きモータマウント10と同一のストッパ部材62が共通部品として、第二のブラケット92及びゴムマウント本体16に組み付けられている。この結果、第二のブラケット92とゴムマウント本体16とは、相互に所定の向きをもって組み付けられており、図9の向きに配置された第二のブラケット92に対して、インナ軸部材20の各ボルト孔28が上下方向を向くように組み付けられている。そして、ストッパ部材62が、位置決め機構78により第二のブラケット92及びゴムマウント本体16に対して周方向で位置決めされた状態で組み付けられることにより、装着孔14の周壁部分18における周上の一部が左右方向で対向する側方部分64,64間に位置していると共に、ストッパ部材62の外方部分66が、装着孔14の周壁部分18における周上の一部を、所定の方向において外周側から覆っている。
このようにして構成された第二のブラケット付きモータマウント90は、例えば第二のブラケット92が、図示しないモータ等のパワーユニット側の部材に取り付けられると共に、インナ軸部材20のボルト孔28に挿通される図示しないボルトにより、インナ軸部材20が、図10中に二点鎖線で示される車両ボデー側の相手側部材94に取り付けられる。本実施形態では、インナ軸部材20に固定される相手側部材94が、ストッパ部材62の側方部分64において張出部分76が広がる図10中の左方に延びている。これにより、装着孔14の周壁部分18における周上の一部が、ストッパ部材62における張出部分76を挟んで、インナ軸部材20に固定される相手側部材94と左右方向で対向している。
以上の如き構造とされた第二のブラケット付きモータマウント90においても、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との間に軸直角方向(図10中の左右方向)に衝撃的な大振幅振動が入力されると、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸直角方向の相対変位量が、第一の軸直角ストッパ機構58と第二の軸直角ストッパ機構60によって制限される。また、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との間に軸方向(図10中の上下方向)に衝撃的な大振幅振動が入力されると、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸方向の相対変位量が、軸方向のストッパ機構82によって制限される。
すなわち、インナ軸部材20がアウタ筒部材22に対して図10中の上下方向で大きく変位すると、左右方向で相互に対向する第二のブラケット92とインナ軸部材20に固定される相手側部材94とが、ストッパ部材62における張出部分76を介して当接する。これにより、軸方向のストッパ機構82が構成されて、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸方向における相対変位量が制限される。従って、第二のブラケット付きモータマウント90においても、ストッパ部材62における張出部分76を含んで、軸方向のストッパ機構82が構成される。なお、第二のブラケット付きモータマウント90においても、ストッパ部材62において第二のブラケット92と相手側部材94との打ち当たり面間に介在して軸方向のストッパ機構82を構成する部分は、張出部分76だけでなく、張出部分76よりも取付用穴68側に位置する側方部分64を含んでいてもよい。
次に、図11~13には、本実施形態の複数種類のブラケット付き筒型防振装置のうちの更に別の一つである第三のブラケット付き筒型防振装置として、電気自動車用の第三のブラケット付きモータマウント100が示されている。第三のブラケット付きモータマウント100は、前述の第一や第二のブラケット付きモータマウント10,90と同様に、第三のブラケット102における装着孔14に対して、筒型のゴムマウント本体16が装着された構造とされている。本実施形態では、第三のブラケット102の形状が第一や第二のブラケット12,92と異ならされている一方、装着されるゴムマウント本体16は同一のものが採用されている。第三のブラケット付きモータマウント100において、第三のブラケット102以外の構造は、前述の第一のブラケット付きモータマウント10と同様の構造であり、第一のブラケット付きモータマウント10と同一の部材及び部位には、図中に、第一のブラケット付きモータマウント10における符号と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。なお、車両装着時における第三のブラケット付きモータマウント100の向きは限定されるものではないが、以下の説明において、上下方向とは図12中の上下方向、前後方向とは図12中の右左方向、左右方向とは図12中の紙面直交方向であり、奥手前方向をいう。
すなわち、第三のブラケット付きモータマウント100においても、第三のブラケット102における装着孔14にゴムマウント本体16が圧入組付けされていると共に、第一のブラケット付きモータマウント10と同一のストッパ部材62が共通部品として、第三のブラケット102及びゴムマウント本体16に組み付けられている。この結果、第三のブラケット102とゴムマウント本体16とは、相互に所定の向きをもって組み付けられており、図12の向きに配置された第二のブラケット92に対して、インナ軸部材20の各ボルト孔28が上下方向を向くように組み付けられている。そして、ストッパ部材62が、位置決め機構78により第三のブラケット102及びゴムマウント本体16に対して周方向で位置決めされた状態で組み付けられることにより、装着孔14の周壁部分18における周上の一部が左右方向で対向する側方部分64,64間に位置していると共に、ストッパ部材62の外方部分66が、装着孔14の周壁部分18における周上の一部を、前方において外周側から覆っている。
このようにして構成された第三のブラケット付きモータマウント100は、例えば第三のブラケット102が、図示しないモータ等のパワーユニット側の部材に取り付けられると共に、インナ軸部材20のボルト孔28に挿通される図示しないボルトにより、インナ軸部材20が、図12,13中に二点鎖線で示される車両ボデー側の相手側部材103に取り付けられる。第三のブラケット付きモータマウント100では、図12にも示されるように、インナ軸部材20に固定される相手側部材103が外方部分66の位置する前方(図12中の右方)に向かって延びていると共に、外方部分66に接触しながら下方に延びている。これにより、装着孔14の周壁部分18における周上の一部が、ストッパ部材62における側方部分64の一部(図12中において灰色で着色した部分)を挟んで、インナ軸部材20に固定される相手側部材103と左右方向で対向している。また、装着孔14の周壁部分18における周上の一部が、ストッパ部材62における外方部分66を挟んでインナ軸部材20に固定される相手側部材103と軸直角方向(前後方向)で対向している。
以上の如き構造とされた第三のブラケット付きモータマウント100においても、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との間に軸直角方向(図13中の左右方向)に衝撃的な大振幅振動が入力されると、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸直角方向の相対変位量が、第一の軸直角ストッパ機構58と第二の軸直角ストッパ機構60によって制限される。また、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との間に別の軸直角方向である前後方向(図12中の左右方向)に衝撃的な大振幅振動が入力されると、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸直角方向の相対変位量が、第三の軸直角ストッパ機構104によって制限される。更に、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との間に軸方向(図13中の上下方向)に衝撃的な大振幅振動が入力されると、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸方向の相対変位量が、軸方向のストッパ機構106によって制限される。
すなわち、インナ軸部材20がアウタ筒部材22に対して図12中の右方へ大きく変位すると、左右方向で相互に対向する第三のブラケット102とインナ軸部材20に固定される相手側部材103とが、ストッパ部材62における外方部分66を介して当接する。これにより、第三の軸直角ストッパ機構104が構成されて、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸方向における相対変位量が制限される。従って、第三のブラケット付きモータマウント100では、ストッパ部材62における外方部分66を含んで、第一及び第二の軸直角ストッパ機構58,60とは異なる、第三の軸直角ストッパ機構104が構成される。
また、インナ軸部材20がアウタ筒部材22に対して図13中の上下方向で大きく変位すると、左右方向で相互に対向する第三のブラケット102とインナ軸部材20に固定される相手側部材103とが、ストッパ部材62における側方部分64(特に、図12中において灰色で着色した部分)を介して当接する。これにより、軸方向のストッパ機構106が構成されて、インナ軸部材20とアウタ筒部材22との軸方向における相対変位量が制限される。従って、第三のブラケット付きモータマウント100では、ストッパ部材62における側方部分64を含んで、軸方向のストッパ機構106が構成される。なお、第三のブラケット付きモータマウント100において、インナ軸部材20に固定される相手側部材103が、左右方向視において側方部分64だけでなく張出部分76にも跨って設けられる場合には、ストッパ部材62において第三のブラケット102と相手側部材103との打ち当たり面間に介在して軸方向のストッパ機構106を構成する部分は、側方部分64だけでなく張出部分76を含んでいてもよい。
なお、前述のように、第一~第三のブラケット付きモータマウント10,90,100において、それぞれのブラケット(第一~第三のブラケット12,92,102)は形状が異ならされているが、装着孔14の周壁部分18において一対の側方部分64,64の間に位置する部分は、軸方向(左右方向寸法)が略等しくされている。具体的には、図4中にAで示す第一のブラケット12における周壁部分18の軸方向寸法と、図10中にBで示す第二のブラケット92における周壁部分18の軸方向寸法と、図13中にCで示す第三のブラケット102における周壁部分18の軸方向寸法とが、それぞれ略等しくされている。
本実施形態の複数種類のブラケット付き筒型防振装置である第一~第三のブラケット付きモータマウント10,90,100によれば、それぞれでブラケット(第一~第三のブラケット12,92,102)が異ならされているものの、共通部品として同一のストッパ部材62が採用されており、当該ストッパ部材62を利用して各ブラケット付きモータマウント10,90,100における軸方向のストッパ機構82,106が構成されている。即ち、ストッパ部材62は溝状であり、一対の側方部分64,64を装着孔14の軸方向両側に位置させるように、各ブラケット12,92,102に対して挟み込んで装着することができる。それ故、ブラケットの形状に拘らず、共通のストッパ部材62を安定して組み付けることができる。また、本実施形態では、第一及び第二のブラケット付きモータマウント10,90において、ストッパ部材62における張出部分76により軸方向のストッパ機構82が構成することができると共に、第三のブラケット付きモータマウント100において、ストッパ部材62における側方部分64により軸方向のストッパ機構106が構成することができる。従って、ストッパ部材62における側方部分64及び張出部分76を巧く利用して、各筒型防振装置(例えばモータマウント)に必要な軸方向のストッパ機構を構成することができる。
また、第三のブラケット付きモータマウント100では、ストッパ部材62における外方部分66を利用して、軸直角ストッパ機構の一つである第三の軸直角ストッパ機構104を設けている。これにより、同一のストッパ部材62を利用して軸方向のストッパ機構82,106と軸直角方向のストッパ機構(第三の軸直角ストッパ機構104)の両方を構成することができて、複数種類のブラケット付きモータマウントに適用することができる。特に、同一のストッパ部材62を利用して軸方向のストッパ機構82,106と軸直角方向のストッパ機構(第三の軸直角ストッパ機構104)を構成することができることから、ブラケット付き筒型防振装置(例えばブラケット付きモータマウント)の小型化を図ることができる。
ストッパ部材62とゴムマウント本体16とは、周方向での位置決め機構78を有しており、各ブラケット12,92,102とゴムマウント本体16とも従来公知の位置決め機構により周方向で位置決めされる。これにより、各ブラケット12,92,102に対してストッパ部材62における側方部分64、外方部分66及び張出部分76を所定の位置に配置することができる。
インナ軸部材20は、軸方向中間部分に外周面に突出する嵌合用突部30を備えており、ストッパ部材62は、嵌合用突部30に外嵌される外嵌突部70を備えている。即ち、ゴムマウント本体16に対してストッパ部材62を組み付ける際に、嵌合用突部30に外嵌突部70が外嵌されることで、ゴムマウント本体16に対してストッパ部材62を固定することができる。特に、嵌合用突部30と外嵌突部70(及びその周縁部の取付用穴68の長円部分69a)がそれぞれ長円形状とされており、且つ嵌合用突部30と取付用穴68が、相互に対応する突出部32及び突出部分69bを備えていることから、これらによってストッパ部材62とゴムマウント本体16との周方向での位置決め機構78を構成することができる。
ストッパ部材62において、一対の側方部分64,64と外方部分66とにより溝状とされた部分では、これら一対の側方部分64,64と外方部分66との軸方向(左右方向)寸法が略一定とされている。これにより、ストッパ部材62の形状が比較的簡単なものとなり、形状安定性の向上や耐久性の低下の回避などにも有利となる。本実施形態では、一対の側方部分64,64と外方部分66とが、それぞれ軸方向である程度の寸法を有していることから、これら側方部分64や外方部分66を利用して、軸方向のストッパ機構や軸直角方向のストッパ機構を容易に設けることができる。
ストッパ部材62の側方部分64には張出部分76が設けられており、張出部分76の外周縁形状が、周方向で湾曲して外方に凸となる形状とされている。これにより、張出部分76に設けられる軸方向のストッパ機構82において、張出部分76と、ブラケット(実施形態では第一のブラケット12又は第二のブラケット92)や相手側部材80,94との当接面積が確保されて、ブラケットと相手側部材80,94とが張出部分76を介して打ち当たる際の応力分散が図られる。また、ストッパ部材62における成形品の形状安定性の向上も図られる。
各ブラケット(第一~第三のブラケット12,92,102)において、装着孔14の周壁部分18におけるストッパ部材62が装着される部分の軸方向寸法(それぞれA,B,C)は、相互に略等しくされている。これにより、各ブラケット12,92,102の全体的な形状に拘らず同一のストッパ部材62を装着することができて、ブラケット形状の設計自由度の向上が図られる。
本実施形態では、ストッパ部材62の全体がゴム等の弾性材により構成されており、軸方向や軸直角方向のストッパ機構を構成するストッパ部材62の側方部分64、外方部分66及び張出部分76も弾性材により構成されている。これにより、各ブラケット12,92,102と相手側部材80,94,103とが、側方部分64、外方部分66及び張出部分76を介して打ち当たる際の衝撃が緩衝されて、これら側方部分64、外方部分66及び張出部分76は、緩衝ゴムとしての機能を発揮し得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。
前記実施形態では、第一~第三のブラケット付きモータマウント10,90,100において、それぞれのブラケット(第一~第三のブラケット12,92,102)が異ならされると共に、各ブラケット12,92,102に装着されるゴムマウント本体16は同一のものが採用されていたが、例えば同一形状のブラケットに対して異なるゴムマウント本体が装着されることで複数種類のブラケット付き筒型防振装置が構成されてもよいし、異なる形状のブラケットに対して異なるゴムマウント本体が装着されることで複数種類のブラケット付き筒型防振装置が構成されてもよい。本発明では、このようにして構成された複数種類のブラケット付き筒型防振装置に対して、共通部品として同一のストッパ部材が装着されればよい。
前記実施形態では、ストッパ部材62を前記図7の向きに配置した際に、張出部分76が上方へ張り出していたが、張出部分が側方部分から膨出する方向は限定されるものではない。即ち、幾つかの筒型防振装置では、張出部分がストッパ機構を構成するように、インナ軸部材に取り付けられる相手側部材の延びる方向に張出部分が設けられればよく、張出部分の張出方向は、想定される相手側部材等に合わせて適宜設定され得る。また、かかる張出部分は、取付用穴の周囲において一方向に広がるだけでなく、複数方向に広がっていてもよい。
ゴムマウント本体の形状は限定されるものではない。例えば本体ゴム弾性体の形状は、要求される防振特性等に応じて適宜設定され得るし、アウタ筒部材も必要なものではなく、例えば本体ゴム弾性体の外周面が直接ブラケットにおける装着孔の内周面に固着されてもよい。即ち、ゴムマウント本体のブラケットにおける装着孔への装着方法は、圧入に限定されるものではない。また、インナ軸部材の形状は限定されるものではなく、例えば円柱形状や多角柱形状等であってもよい。更に、インナ軸部材は円筒形状や多角筒形状であってもよく、インナ軸部材に挿通される取付用ボルト等により、相手側部材に固定されてもよい。なお、インナ軸部材が固定される相手側部材は、車両ボデー側の部材であってもよいし、モータ等のパワーユニット側の部材であってもよい。
ストッパ部材とゴムマウント本体とを周方向で位置決めする位置決め機構は必須なものではなく、周方向の位置決め機構が設けられる場合にも、前記実施形態に例示した態様に限定されず、従来公知の周方向位置決め機構が採用され得る。
前記実施形態では、ストッパ部材62の全体がゴム等の弾性材により形成されていたが、ストッパ部材において相互に打ち当たるブラケットと相手側部材との間に介在する部分がゴム等の弾性材で形成されることが好適であり、その他の部分には硬質の部材が採用されてもよい。
前記実施形態では、ブラケット付きの筒型防振装置として電気自動車用のブラケット付きのモータマウントを例示したが、本発明に係るブラケット付き筒型防振装置は、自動車用のブラケット付きのエンジンマウントやデフマウント、自動車用以外のブラケット付き筒型防振装置等であってもよい。
前記実施形態では、複数種類のブラケット付き筒型防振装置として三種類のブラケット付き筒型防振装置(第一~第三のブラケット付きモータマウント10,90,100)が示されていたが、ブラケット付き筒型防振装置は、二種類や四種類以上であってもよい。また、そのうちの幾つかの種類では、ストッパ部材における側方部分が軸方向のストッパ機構を構成すると共に、別の幾つかの種類では、ストッパ部材における張出部分が軸方向のストッパ機構を構成するが、それぞれの筒型防振装置は少なくとも一種類ずつ含まれていればよい。