JP7505382B2 - 内燃機関用点火コイル - Google Patents
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Description
スイッチング素子を有するイグナイタ(43)と、
前記スイッチング素子によって通電及び通電の遮断が行われる一次コイル(2)と、
前記一次コイルの外周側に前記一次コイルと同軸状に配置され、前記一次コイルへの通電の遮断を受けて誘導起電力を発生させる二次コイル(3)と、
前記二次コイルが外周に巻き付けられた二次ボビン(31)と、
前記イグナイタ、前記一次コイル、前記二次コイル及び前記二次ボビンを収容するコイルケース(5)と、
前記コイルケース内の隙間に充填され、前記イグナイタ、前記一次コイル、前記二次コイル及び前記二次ボビンを絶縁して固着し、かつ前記二次ボビンの比誘電率よりも比誘電率が高い絶縁固着樹脂(6)と、を備え、
前記二次ボビンは、四角筒形状の筒状部(32)と、前記筒状部の外周における軸方向(L)の複数箇所において、前記筒状部の外周から突出し、前記筒状部の外周を前記軸方向に並ぶ複数の凹部(321)に仕切る複数の鍔部(33,34)とを有し、
複数の前記鍔部における、両端に位置する端鍔部(33)を除く残りの複数の中間鍔部(34)には、互いに隣接する前記凹部の間を渡る前記二次コイルの巻線(301)が配置された1つの渡り溝(35)が形成されており、
複数の前記中間鍔部のうちの、前記二次コイルの軸方向(L)の中心位置(L0)よりも前記軸方向の高電圧側(L1)に位置する少なくとも1つの中間鍔部には、前記二次コイルの巻線の最外周位置(P)よりも深く切り欠かれて、前記絶縁固着樹脂によって充填された少なくとも1つの切欠き溝(36)が形成されており、
前記切欠き溝は、前記中心位置よりも前記軸方向の前記高電圧側に位置する複数の前記中間鍔部に形成されており、
前記切欠き溝が形成された複数の前記中間鍔部において、前記軸方向の前記高電圧側に位置する前記中間鍔部ほど、前記軸方向から見たときの前記切欠き溝の切欠き面積が大きい、内燃機関用点火コイル(1)にある。
<実施形態1>
本形態の内燃機関用点火コイル1(点火コイル1という。)は、図1及び図2に示すように、イグナイタ43、一次コイル2、二次コイル3、二次ボビン31、コイルケース5及び絶縁固着樹脂6を備える。イグナイタ43は、スイッチング素子を有する。一次コイル2は、スイッチング素子によって通電及び通電の遮断が行われるよう構成されている。二次コイル3は、一次コイル2の外周側に一次コイル2と同軸状に配置されており、一次コイル2への通電の遮断を受けて誘導起電力を発生させるよう構成されている。
(点火コイル1)
図1に示すように、点火コイル1は、車両の内燃機関としてのエンジンにおいて、シリンダヘッドカバー7に配置され、シリンダヘッドに配置されたスパークプラグから、シリンダヘッドの燃焼室内に火花放電を発生させるために用いられる。本形態の点火コイル1は、車載用のものである。点火コイル1は、一次コイル2、二次コイル3、コイルケース5、イグナイタ43等によって構成されたコイル本体部11と、コイル本体部11から突出して、二次コイル3とスパークプラグとを高圧端子45及びバネ46を介して電気的に接続するためのジョイント部12とを有する。コイル本体部11は、シリンダヘッドカバー7に配置され、ジョイント部12は、シリンダヘッドカバー7のプラグホール71に配置される。
図1~図5に示すように、本形態の軸方向Lとは、一次コイル2及び二次コイル3の断面の中心(図心)を通る仮想線としての中心軸線が延びる方向のことをいう。軸方向Lにおいて、二次コイル3に高電圧が生じる側を高電圧側L1といい、高電圧側L1の反対側を低電圧側L2という。一次コイル2及び二次コイル3の中心軸線から放射状に広がる方向を径方向Rという。一次コイル2及び二次コイル3の中心軸線の周りの方向を周方向Cという。本形態の周方向Cは、四角形の周りの方向を示す。
図1及び図2に示すように、一次コイル2は、巻線301としてのマグネットワイヤを、一次ボビン21の筒状部の外周面に巻き付けることによって形成されている。一次コイル2は、イグナイタ43のスイッチング素子によって、通電及び通電の遮断が繰り返されるものである。
図1及び図2に示すように、二次コイル3は、一次コイル2の外周側において、一次コイル2と同軸状に配置されている。二次コイル3は、巻線301としてのマグネットワイヤを、二次ボビン31の筒状部32の外周面に巻き付けることによって形成されている。二次コイル3の巻線301は一次コイル2の巻線よりも細く、二次コイル3の巻線数は一次コイル2の巻線数よりも多い。二次コイル3は、一次コイル2への通電が遮断されたときに、相互誘導作用による誘導起電力を発生させるものである。一次コイル2及び二次コイル3の中心軸線は、コイルケース5の開口部52に対して直交する方向に向けられている。
図1及び図2に示すように、一次コイル2の内周側には、一次コイル2及び二次コイル3によって生じる磁束を通過させるための中心コア41が配置されている。本形態の中心コア41は、軟磁性材料からなる板状の電磁鋼板が複数積層されて形成されている。中心コア41は、直方体形状に形成されている。なお、中心コア41は、軟磁性材料からなる粉末が圧縮成形されて形成されたものであってもよい。
図1及び図2に示すように、二次コイル3の外周側には、一次コイル2及び二次コイル3によって生じる磁束を通過させるための外周コア42が配置されている。本形態の外周コア42は、軟磁性材料からなる板状の電磁鋼板が複数積層されて形成されている。外周コア42は、装着方向Dから見た断面において、中心コア41を内側に配置する四角環形状に形成されている。なお、外周コア42は、軟磁性材料からなる粉末が圧縮成形されて形成されたものであってもよい。
図1に示すように、イグナイタ43は、一次コイル2及び二次コイル3の軸方向Lにおいて、外周コア42の一部に隣接して配置されている。イグナイタ43は、スイッチング回路を形成するスイッチング素子等の電子部品が設けられた電子基板と、この電子基板を覆うモールド樹脂とによって構成されている。電子基板に設けられた導体ピンは、モールド樹脂の外部に引き出されている。イグナイタ43の導体ピンは、モールド樹脂から装着方向Dの開口側D2に突出している。イグナイタ43におけるスイッチング素子は、点火コイル1の外部に配置された電子制御装置による指令を受けて、一次コイル2への通電及び通電の遮断を行う。
図1及び図2に示すように、コイルケース5は、熱可塑性樹脂の成形品として形成されている。コイルケース5は、一次コイル2、二次コイル3、中心コア41、外周コア42、イグナイタ43等を収容する収容部51を有する。コイルケース5の開口部52は、収容部51の装着方向Dの開口側D2の端部に形成されている。開口部52は、装着方向Dにおける、スパークプラグが装着される装着側D1とは反対側に形成されている。一次コイル2、一次ボビン21、二次コイル3、二次ボビン31、中心コア41、外周コア42、イグナイタ43等のコイル組付体は、開口部52から収容部51に配置される。また、液状の絶縁固着樹脂6は、開口部52からコイルケース5内の隙間に注入される。
図1に示すように、絶縁固着樹脂6は、熱硬化性樹脂によって構成されている。コイルケース5内に、一次コイル2、一次ボビン21、二次コイル3、二次ボビン31、中心コア41、外周コア42、イグナイタ43等が組み付けられたコイル組付体が配置された後に、このコイルケース5内の隙間に液状の熱硬化性樹脂が注入され、この液状の熱硬化性樹脂が硬化される。熱硬化性樹脂からなる絶縁固着樹脂6によって、コイルケース5内の一次コイル2、一次ボビン21、二次コイル3、二次ボビン31、中心コア41、外周コア42、イグナイタ43等が絶縁された状態で互いに固着される。
図1及び図2に示すように、一次ボビン21は、熱可塑性樹脂の成形品によって形成されている。一次ボビン21は、四角形状の筒状部と、筒状部の軸方向Lの両端に形成された鍔部とを有する。一次コイル2の巻線は、一次ボビン21の筒状部における、鍔部同士の間の外周面に巻き付けられている。コネクタ部24には、イグナイタ43における導体ピンに接続されるコネクタ導体が設けられている。
図2及び図3に示すように、二次ボビン31は、熱可塑性樹脂の成形品によって形成されている。二次ボビン31における四角形状の筒状部32の4つの角部位は、曲線状に形成されている。また、複数の中間鍔部34の4つの角部位は、曲線状角部位343として形成されている。二次ボビン31の筒状部32の内周側には、一次コイル2及び一次ボビン21が配置された中空穴322が形成されている。複数の中間鍔部34は、装着方向Dに平行な、直線状の一対の第1辺部位341と、装着方向Dに垂直な、直線状の一対の第2辺部位342と、第1辺部位341と第2辺部位342とを繋ぐ4つの曲線状角部位343とによって構成されている。図3は、二次ボビン31を装着方向Dの装着側D1から見た状態で示す。
本形態の絶縁固着樹脂6は、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂の比誘電率よりも比誘電率が高いフィラーとを含有する。フィラーの使用により、絶縁固着樹脂6の機械的強度、耐電圧等を向上させるとともに、絶縁固着樹脂6の比誘電率を高くすることができる。本形態の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂等によって構成されている。本形態のフィラーは、アルミナ(酸化アルミニウム)、二酸化ケイ素を含むシリカ等によって構成されている。フィラーは、粉末、繊維等の無機材料、セラミックス、樹脂、木粉等によって構成することができる。フィラーは、例えば、熱硬化性樹脂の粘度を高くする目的で、熱硬化性樹脂に混合される。
一次コイル2への通電の遮断後に生じる誘導起電力によってスパークプラグに火花放電が生じた後には、二次コイル3に、スパークプラグからの電圧の跳ね返りであるサージ電圧が加わる。このサージ電圧は、二次コイル3の巻線301における、高電圧側L1に位置する部位ほど大きくなる。二次コイル3の巻線301に設けられた絶縁被膜は、巻線301同士の間に線間電位として作用するサージ電圧にも、材質、形成厚みの設定によって耐えられるようにしている。
本形態の点火コイル1においては、二次ボビン31の高電圧側L1に位置する中間鍔部34の形状を変更し、二次コイル3の巻線301における高電圧側L1の部位に生じる直列静電容量を大きくする工夫をしている。具体的には、二次コイル3の軸方向Lの中心位置L0よりも軸方向Lの高電圧側L1に位置する少なくとも1つの中間鍔部34に、複数の切欠き溝36を形成している。そして、この切欠き溝36に、絶縁固着樹脂6が充填されることによって、二次コイル3の巻線301を軸方向Lに仕切る中間鍔部34の一部が絶縁固着樹脂6によって形成されることになる。
本形態においては、中間鍔部34に切欠き溝36を形成することによる効果を、シミュレーションによって確認した。
切欠き溝36は、図3に示した5つの中間鍔部34のうちの軸方向Lの高電圧側L1に位置する3つの中間鍔部34の一対の第2辺部位342に形成した。中間鍔部34の軸方向Lの厚みは、0.8mmで一定とした。二次ボビン31の比誘電率は3.0とし、フィラーを含む絶縁固着樹脂6の比誘電率は5.0とした。中間鍔部34の軸方向Lの表面における、切欠き溝36及び渡り溝35による面積減少率を、25%、50%としたときの最大線間電位の低減量を確認した。また、比較のために、渡り溝35のみが形成された中間鍔部34を有する従来の二次ボビンにおける面積減少率は、4%とした。最大線間電位とは、巻線301の全体において、線間電位が最大になる部位の値を示す。
2 一次コイル
3 二次コイル
31 二次ボビン
32 筒状部
34 中間鍔部
35 渡り溝
36 切欠き溝
Claims (3)
- スイッチング素子を有するイグナイタ(43)と、
前記スイッチング素子によって通電及び通電の遮断が行われる一次コイル(2)と、
前記一次コイルの外周側に前記一次コイルと同軸状に配置され、前記一次コイルへの通電の遮断を受けて誘導起電力を発生させる二次コイル(3)と、
前記二次コイルが外周に巻き付けられた二次ボビン(31)と、
前記イグナイタ、前記一次コイル、前記二次コイル及び前記二次ボビンを収容するコイルケース(5)と、
前記コイルケース内の隙間に充填され、前記イグナイタ、前記一次コイル、前記二次コイル及び前記二次ボビンを絶縁して固着し、かつ前記二次ボビンの比誘電率よりも比誘電率が高い絶縁固着樹脂(6)と、を備え、
前記二次ボビンは、四角筒形状の筒状部(32)と、前記筒状部の外周における軸方向(L)の複数箇所において、前記筒状部の外周から突出し、前記筒状部の外周を前記軸方向に並ぶ複数の凹部(321)に仕切る複数の鍔部(33,34)とを有し、
複数の前記鍔部における、両端に位置する端鍔部(33)を除く残りの複数の中間鍔部(34)には、互いに隣接する前記凹部の間を渡る前記二次コイルの巻線(301)が配置された1つの渡り溝(35)が形成されており、
複数の前記中間鍔部のうちの、前記二次コイルの軸方向(L)の中心位置(L0)よりも前記軸方向の高電圧側(L1)に位置する少なくとも1つの中間鍔部には、前記二次コイルの巻線の最外周位置(P)よりも深く切り欠かれて、前記絶縁固着樹脂によって充填された少なくとも1つの切欠き溝(36)が形成されており、
前記切欠き溝は、前記中心位置よりも前記軸方向の前記高電圧側に位置する複数の前記中間鍔部に形成されており、
前記切欠き溝が形成された複数の前記中間鍔部において、前記軸方向の前記高電圧側に位置する前記中間鍔部ほど、前記軸方向から見たときの前記切欠き溝の切欠き面積が大きい、内燃機関用点火コイル(1)。 - 前記切欠き溝は、複数の前記中間鍔部のうちの、前記二次コイルの前記軸方向の最も高電圧側に位置する中間鍔部から、前記軸方向の低電圧側に向けて連続する、1~4個の中間鍔部に形成されている、請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
- 前記絶縁固着樹脂は、熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂の比誘電率よりも比誘電率が高いフィラーとを含有する、請求項1又は2に記載の内燃機関用点火コイル。
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