以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による作業車両の制御システム(以下、単に制御システムという)の全体構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の制御システムは、複数の作業車両100-1~100-4にそれぞれ搭載された車両制御装置10-1~10-4と、作業車両100を目視可能な現場にいる監視者(以下、現場監視者という)が使用するリモコン型の第1遠隔操作装置30と、作業車両100を目視できない遠隔地の基地局200にいる監視者(以下、遠隔監視者という)が使用する遠隔監視型の第2遠隔操作装置40とを備えて構成される。以下の説明において、複数の作業車両100-1~100-4を特に区別しないときは単に作業車両100と記す。また、複数の車両制御装置10-1~10-4を特に区別しないときは単に車両制御装置10と記す。また、第1遠隔操作装置30および第2遠隔操作装置40をまとめて遠隔操作装置30,40と記す。
作業車両100-1~100-4はそれぞれ、作業機101-1~101-4(以下の説明において、各々を特に区別しないときは単に作業機101と記す)を備えている。作業機101は任意であるが、本実施形態では一例として、車両本体の後方に連結して使用される耕うん機であるとする。作業機101は、昇降可能に作業車両100に連結されており、作業時には作業機101を下降させ、非作業時には作業機101を上昇させる。
車両制御装置10と第1遠隔操作装置30との間は、特定小電力無線、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)または無線LANなどの無線通信手段を介して接続されており、相互に通信を行うことができるようになっている。また、車両制御装置10と第2遠隔操作装置40との間は、インターネットや専用線などの通信回線および無線LANなどの無線通信手段を介して接続されており、相互に通信を行うことができるようになっている。第1遠隔操作装置30は、遠隔操作機能を有するアプリケーションがインストールされたスマートフォンやタブレットといったモバイル端末であってもよい。
本実施形態の制御システムでは、第1遠隔操作装置30、第2遠隔操作装置40から車両制御装置10にそれぞれ与えられる指示(以下、外発指示という)と、車両制御装置10自体による自律的な制御に基づき発行される指示(以下、内発指示という)とに従って、複数の作業車両10-1~10-4の動作(走行および作業機101による作業)を制御することが可能になされている。この外発指示は、特許請求の範囲の「命令」に相当する。
この外発指示には、作業車両100の運転に関する動作モード(詳細は後述する)の設定を指示するもの(以下、モード設定指示という)と、作業車両100の運転(作業車両100の走行および作業機101の作動を含む)の制御を指示するもの(以下、操縦指示という)とが含まれる。操縦指示は、エンジンの起動・停止に関する指示、走行の開始・停止に関する指示、操舵の制御に関する指示、走行速度の制御に関する指示、変速の制御に関する指示、作業機101の作動(昇降および駆動)に関する指示などを含む。
なお、図1では説明を簡単にするために、現場監視者が1人で第1遠隔操作装置30が1つ、基地局200の遠隔監視者が1人で第2遠隔操作装置40が1つの例を示しているが、第1遠隔操作装置30および第2遠隔操作装置40はそれぞれ複数であってもよい。1人の現場監視者が複数の第1遠隔操作装置30を操作する形態であってもよい。なお、複数の第1遠隔操作装置30を区別して示すとき、および複数の第2遠隔操作装置40を区別して示すときは、“30”または“40”の符号に下付き数字を付すことにする。また、現場監視者が複数人で第1遠隔操作装置30が複数(第2遠隔操作装置40がない状態)であってもよいし、遠隔監視者が複数人で第2遠隔操作装置40が複数(第1遠隔操作装置30がない状態)であってもよい。また、本実施形態では、1台から最大4台までの作業車両100を同時に走行させることができるシステムの例について説明するが、最大4台というのは一例に過ぎず、2台以上であればよい。
図2は、本実施形態による車両制御装置10の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態の車両制御装置10は、機能構成として、状態情報取得部11、モード設定部12、運転制御部13、制御装置メッセージ発信部14および操作装置メッセージ受信部15を備えている。また、車両制御装置10は、記憶媒体として、経路データ記憶部10Aを備えている。また、車両制御装置10には、各種センサ17およびカメラ18が電気的に接続されている。
各機能ブロック11~15は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~15は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
状態情報取得部11は、各種センサ17により検出される作業車両100の走行状態を示す走行状態情報、各種センサ17により検出される作業機101の作動状態を示す作動状態情報、および、カメラ18により撮影される車両周囲の状態を示す車両周囲画像を取得し、制御装置メッセージ発信部14に逐次供給する。また、状態情報取得部11は、モード設定部12により設定された作業車両100の動作モードの情報を取得し、制御装置メッセージ発信部14に供給する。以下では、走行状態情報、作動状態情報、車両周囲画像および動作モード情報を合わせて各種状態情報という。
モード設定部12は、操作装置メッセージ受信部15が受信した操作装置メッセージ(詳細は後述する)に外発指示として含まれるモード設定指示に従って、作業車両100の運転に関する動作モードを設定する。また、モード設定部12は、運転制御部13による自律的な制御に基づき内発指示として発行されるモード設定指示に従って、作業車両100の運転に関する動作モードを設定することもある。本実施形態において設定可能な動作モードは、例えば、手動運転モード、自動運転モード、遠隔操縦モード、待機モード、非常停止モード、一時停止モード、自動停止モードである。
手動運転モードは、現場監視者が作業車両100に乗車し、作業車両100の各種操作部を操作することにより、作業車両100の運転を現場監視者が手動で行う動作モードである。
自動運転モードは、あらかじめ設定した計画(経路データ記憶部10Aに記憶される経路データ)に従って運転を自動実行する動作モードである。経路データ記憶部10Aには、作業車両100が走行する圃場内にあらかじめ設定された走行経路を表す経路データが記憶されている。経路データには、圃場内のどの位置で作業機101を下降させて作業を行い、どの位置で作業機101を上昇させて作業を停止するかの作業計画を示す作業指示データも含まれている。
この経路データは、例えば、作業車両100が走行を開始する前に第2遠隔操作装置40から車両制御装置10に送信され、経路データ記憶部10Aに記憶される。なお、経路データ記憶部10Aに経路データを記憶させる方法は、上記のような送信によるものに限定されない。例えば、経路データを記憶したリムーバブル記憶媒体を車両制御装置10に接続し、当該リムーバブル記憶媒体から経路データ記憶部10Aに経路データを転送するようにしてもよい。また、経路データは、自動運転モードで動作中に、各種センサ17からのデータに基づいて動的に生成されてもよい。この場合は、経路データ記憶部10Aには作業範囲や圃場外形などの事前に取得されたデータが記録されている。
遠隔操縦モードは、監視者(作業車両100に乗車していない現場監視者または遠隔監視者。以下同様)による遠隔操作装置30,40からの外発指示を逐一作業車両100の車両制御装置10に送信して運転を制御する動作モードである。なお、第1遠隔操作装置30からの外発指示に基づき運転を制御する動作モードと、第2遠隔操作装置40からの外発指示に基づき運転を制御する動作モードとを分けて管理するようにしてもよい。待機モードは、いずれの動作もさせる必要がない場合に作業車両100をその場に停車させておくように制御し、他の動作モードへのモード設定指示を待機する動作モードである。
非常停止モードは、システムが備える通常機能では対応できない安全を脅かす可能性のある障害が発生した場合に、現在システムが実施している作業を復帰継続できなくなるなどの作業上の不都合があるにもかかわらず緊急性を優先して作業車両100と作業機101とを安全状態に移行させる動作モードである。
一時停止モードは、自動運転モードの設定中に何らかの理由により遠隔操作装置30,40からの指示によって運転の自動実行を一時的に停止する動作モードである。簡単な再開操作で自動運転モードに復帰可能である。本実施形態では、ある車両制御装置10-iと遠隔操作装置30,40との間に通信断絶が起きた場合に、他の車両制御装置10-j(j≠i)のモード設定部12が遠隔操作装置30,40からの指示を受けて一時停止モードに遷移することがある。これについての詳細は追って説明する。自動停止モードは、各種センサ17またはカメラ18あるいは車両制御装置10などの何らかの不具合により運転制御部13が運転の自動実行を自動停止する動作モードである。
運転制御部13は、モード設定部12により設定された動作モードに従って作業車両100の運転の制御を実行する。モード設定部12により手動運転モードが設定された場合、運転制御部13は、作業車両100に搭載されている各種の操作部(図示せず)から送信されてくる外発指示と、車両制御装置10自体による自律的な制御に基づき発行される内発指示とに従って、作業車両100の運転の制御を実行する。
モード設定部12により自動運転モードが設定された場合、運転制御部13は、経路データ記憶部10Aに記憶された走行経路のデータと、各種センサ17に含まれる位置・方位センサにより検出される作業車両100の現在位置および現在方位(以下、車両位置・方位という)とに基づいて、走行経路に対する車両位置・方位の偏差を逐次検出しながら、その偏差が少なくなるように作業車両100の操舵を自動制御する。また、自動運転モードの設定時に運転制御部13は、作業車両100の走行速度や変速など、操舵以外の走行に関する制御も自動実行する。また、作業機101の作動に関する制御も自動実行する。すなわち、運転制御部13は、自動運転を開始した後は、遠隔操作装置30,40からの外発指示を受けることなく、一切の運転を内発指示に従って自動制御する。
モード設定部12により遠隔操縦モードが設定された場合、運転制御部13は、遠隔操作装置30,40から送信されてくる操作装置メッセージに命令(外発指示)として含まれる操縦指示に従って、作業車両100の運転の制御を実行する。モード設定部12により待機モードが設定された場合、運転制御部13は、エンジンは動作させつつ変速をニュートラルにしてアイドリング状態とし、作業車両100を停止させる。また、PTO軸の動力をPTOクラッチによって停止させ、作業機101を所定の高さに維持した状態で待機させる。
制御装置メッセージ発信部14は、制御装置メッセージを所定時間間隔で発信する。この制御装置メッセージには、車両制御装置10自体(以下、自制御装置という)を特定可能な制御装置ID、制御装置メッセージを発信する直前の一定時間以内に遠隔操作装置30,40から受信した操作装置メッセージに含まれる操作装置IDのリスト、および、自制御装置が搭載された作業車両100の運転状態を示す状態情報が含まれる。運転状態を示す状態情報は、上述した各種状態情報の全てまたは一部であり、少なくとも動作モード情報があればよい。
ここで、制御装置IDは、複数の車両制御装置10を互いに識別可能なIDである。また、操作装置IDは、遠隔操作装置30,40を互いに識別可能なIDである。IDには、例えば固有の番号が用いられる。一例として、0~7の番号が遠隔操作装置30,40に割り当てられ、8~15の番号が車両制御装置10に割り当てられる。このようにすると、番号を見るだけで、それが遠隔操作装置30,40のものであるか車両制御装置10のものであるかを識別可能である。
操作装置メッセージ受信部15は、遠隔操作装置30,40から所定時間間隔で送られてくる操作装置メッセージを受信する。上述したように、モード設定部12は、操作装置メッセージ受信部15が受信した操作装置メッセージに命令として含まれるモード設定指示に従って、作業車両100の運転に関する動作モードを設定する。また、運転制御部13は、操作装置メッセージ受信部15が受信した操作装置メッセージに命令として含まれる操縦指示に従って、作業車両100の運転の制御を実行する。
図3は、本実施形態による遠隔操作装置30,40の機能構成例を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態の遠隔操作装置30,40は、第1遠隔操作装置30および第2遠隔操作装置40に共通する機能構成として、操作装置メッセージ発信部21、制御装置メッセージ受信部22、接続管理部23、冗長性管理部24および命令制御部25を備えている。
各機能ブロック21~25は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック21~25は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
操作装置メッセージ発信部21は、操作装置メッセージを所定時間間隔で発信する。この操作装置メッセージには、遠隔操作装置30,40自体(以下、自操作装置という)を特定可能な操作装置ID、操作装置メッセージを発信する直前の一定時間以内に車両制御装置10から受信した制御装置メッセージに含まれる制御装置IDのリスト、および、車両制御装置10に対する命令(モード設定指示または操縦指示)が含まれる。なお、監視者が遠隔操作装置30,40を操作していないタイミングでも操作装置メッセージは発信され、その場合の操作装置メッセージに含まれる命令は、「命令なし」であることを示す内容となる。
制御装置メッセージ受信部22は、車両制御装置10から所定時間間隔で送られてくる制御装置メッセージを受信する。
接続管理部23は、制御装置メッセージ受信部22により受信された制御装置メッセージに含まれる制御装置IDに基づいて、自操作装置と相互に通信接続が確認されている車両制御装置10を認識し、認識した車両制御装置10の制御装置IDを保持する。例えば、制御装置メッセージ受信部22が第1の車両制御装置10-1および第2の車両制御装置10-2から制御装置メッセージを受信していて、第3の車両制御装置10-3および第4の車両制御装置10-4から制御装置メッセージを受信していない場合、接続管理部23は、2つの車両制御装置10-1,10-2から受信した制御装置メッセージに含まれる車両制御装置10-1,10-2の制御装置IDに基づいて、自操作装置に2つの車両制御装置10-1,10-2が通信接続されている(相互に通信可能な状態で接続されている)ことを認識する。
冗長性管理部24は、制御装置メッセージ受信部22により受信された制御装置メッセージに含まれる操作装置IDのリストに基づいて、接続管理部23により通信接続状態が認識された車両制御装置10のそれぞれについて、遠隔操作装置30,40の接続数が所定数以上である冗長状態、または遠隔操作装置30,40の接続数が所定数未満である非冗長状態の何れであるかを認識し、認識した結果の情報(以下、冗長性情報という)を保持する。制御装置メッセージに含まれる操作装置IDのリストは、相互接続が確認されている遠隔操作装置30,40から受信した操作装置メッセージに含まれている操作装置IDを示したものである。本実施形態では、所定数は2つであるものとする。ここで、冗長状態および非冗長状態を図4に基づいて説明する。
図4は、2人の現場監視者U1,U2がそれぞれリモコン型の第1遠隔操作装置30-1,30-2を1つずつ用いて4台の作業車両100-1~100-4を遠隔制御している状況を示している。第1遠隔操作装置30-1,30-2に割り当てられている操作装置IDはID0,ID1であり、4つの車両制御装置10-1~10-4に割り当てられている制御装置IDはID8~ID11である。以下では、第1遠隔操作装置30をリモコン30と言い換えて説明する。
なお、図4では、第2の車両制御装置10-2が発信する制御装置メッセージの内容を“ID9,[ID0,ID1],auto”のように表記している。“ID9”は、第2の車両制御装置10-2自体の制御装置IDである。“[ID0,ID1]”は、第2の車両制御装置10-2が制御装置メッセージを発信する直前の一定時間以内に2つのリモコン30-1,30-2から受信した操作装置メッセージに含まれる操作装置IDのリストである。“auto”は、第2の車両制御装置10-2が搭載された作業車両100-2の動作モードを示す状態情報であり、ここでは自動運転モードであることを示している。
これと同様に、第1の車両制御装置10-1が発信する制御装置メッセージの内容を“ID8,[ID0],auto”と表記し、第3の車両制御装置10-3が発信する制御装置メッセージの内容を“ID10,[ID1],auto”と表記し、第4の車両制御装置10-4が発信する制御装置メッセージの内容を“ID11,[ID1],auto”と表記している。
また、第1のリモコン30-1が発信する操作装置メッセージの内容を“ID0,[ID8,ID9],nop”のように表記している。“ID0”は、第1のリモコン30-1自体の操作装置IDである。“[ID8,ID9]”は、第1のリモコン30-1が操作装置メッセージを発信する直前の一定時間以内に2つの車両制御装置10-1,10-2から受信した制御装置メッセージに含まれる制御装置IDのリストである。“nop”は、第1のリモコン30-1が発行する命令を示す情報であり、ここでは「命令なし」であることを示している。
また、第2のリモコン30-2が発信する操作装置メッセージの内容を“ID1,[ID9,ID10,ID11],nop”のように表記している。“ID1”は、第2のリモコン30-2自体の操作装置IDである。“[ID9,ID10,ID11]”は、第2のリモコン30-2が操作装置メッセージを発信する直前の一定時間以内に3つの車両制御装置10-2~10-4から受信した制御装置メッセージに含まれる制御装置IDのリストである。“nop”は、第2のリモコン30-2が発行する命令を示す情報であり、ここでは「命令なし」であることを示している。
図4の例において、第2の車両制御装置10-2は、これと通信接続状態にあるリモコン30-1,30-2が2つある。これが冗長状態である。図4では、冗長状態における通信接続状態を点線で示している。この場合、冗長状態にある第2の車両制御装置10-2と通信接続されているリモコン30-1,30-2では、2つの操作装置ID0,ID1のリストが含まれる制御装置メッセージを第2の車両制御装置10-2から制御装置メッセージ受信部22が受信するので、冗長性管理部24はリスト内に2つの操作装置ID0,ID1が含まれていることをもって、第2の車両制御装置10-2が冗長状態であることを認識することが可能である。
これに対し、第1の車両制御装置10-1は、これと通信接続状態にあるリモコン30が第1のリモコン30-1の1つしかない。これが非冗長状態である。図4では、非冗長状態における通信接続状態を実線で示している。この場合、非冗長状態にある第1の車両制御装置10-1と通信接続されている第1のリモコン30-1では、1つの操作装置ID0が含まれる制御装置メッセージを第1の車両制御装置10-1から制御装置メッセージ受信部22が受信するので、冗長性管理部24はリスト内に1つの操作装置ID0が含まれていることをもって、第1の車両制御装置10-1が非冗長状態であることを認識することが可能である。
同様に、第3の車両制御装置10-3および第4の車両制御装置10-4は、これと通信接続状態にあるリモコン30が第2のリモコン30-2の1つしかない。この場合、車両制御装置10-3,10-4と通信接続されている第2のリモコン30-2では、1つの操作装置ID1が含まれる制御装置メッセージを制御装置メッセージ受信部22が受信するので、冗長性管理部24はリスト内に1つの操作装置ID1が含まれていることをもって、第3の作業車両100-3および第4の作業車両100-4が非冗長状態であることを認識することが可能である。
車両制御装置10が2つ以上のリモコン30と冗長状態で通信接続されている場合、その車両制御装置10が搭載された作業車両100を2人以上の現場監視者が監視可能な状態であるため、仮にその中の1人が作業車両100を実質的に監視不能な状態(十分な注意能力をもって監視できない状態)になったとしても、他の現場監視者が引き続きその作業車両100を監視可能であるため、安全に遠隔制御を継続することが可能である。一方、車両制御装置10が1つのリモコン30とのみ非冗長状態で通信接続されている場合、仮にその現場監視者が作業車両100を実質的に監視不能な状態になると、その作業車両100を安全に遠隔制御することができなくなる。本実施形態では、このような冗長状態と非冗長状態との性質の違いを考慮して、命令制御部25によって車両制御装置10に対して発出する命令を制御するようにしている。
命令制御部25は、冗長性管理部24により非冗長状態であると認識されている車両制御装置10との間で通信接続状態から通信断絶状態に変化したことが接続管理部23により検知された場合に、保持している冗長性情報に基づいて、通信断絶状態となった車両制御装置10以外に非冗長状態であると認識されている他の車両制御装置10が存在するか否かを判定し、存在する場合に、当該他の車両制御装置10に対して作業車両100の運転に関する命令を発信するように操作装置メッセージ発信部21を制御する。本実施形態では一例として、命令制御部25は、作業車両100の運転を停止する命令(一時停止モードに設定するためのモード設定指示)を発信するように操作装置メッセージ発信部21を制御する。
なお、非冗長状態であると認識されている車両制御装置10との間で通信接続状態から通信断絶状態に変化したことが接続管理部23により検知された場合、そのことを図示しない報知部に伝え、これを受けた報知部が、所定の報知処理を行うことによって通信断絶を報知する。報知処理は、例えば、遠隔操作装置30,40が備えるLEDやディスプレイに対するメッセージの表示、またはスピーカに対するブザー音の出力などによって行う。このようにすると、遠隔操作装置30,40を操作している監視者は、通信断絶状態となった車両制御装置10を把握することが可能であり、通信断絶状態から通信接続状態に復帰させるための処置を講じることが可能となる。
図5および図6は、この命令制御部25の処理例を説明するための図である。図5および図6において、前提状態は図4に示した状態と同じである。図5に×印で示すように、非冗長状態で通信接続されている第2のリモコン30-2と第4の車両制御装置10-4との間で、何らかの理由によって通信接続状態から通信断絶状態に変化したとする。通信断絶は、通信状態の悪化によって起こる場合や、第2の現場監視者U2または第4の車両制御装置10-4の移動によって通信可能圏外となることによって起こる場合、第4の車両制御装置10-4の故障によって起こる場合などがある。
このような通信接続状態から通信断絶状態への変化が接続管理部23により検知された場合、第2のリモコン30-2の命令制御部25は、通信断絶状態となった第4の車両制御装置10-4以外に非冗長状態であると認識されている他の車両制御装置10が存在するか否かを判定する。図5の例では、第3の車両制御装置10-3も第2のリモコン30-2と非冗長状態で通信接続されている。この場合、命令制御部25は、第3の作業車両100-3の運転を停止する命令(一時停止モードに設定するためのモード設定指示)を含む操作装置メッセージを発信するように操作装置メッセージ発信部21を制御する。
一方、第2のリモコン30-2の命令制御部25は、第2のリモコン30-2と通信接続されている第2の車両制御装置10-2に対しては、第2の作業車両100-2の運転を停止する命令を含む操作装置メッセージを発信しない。第2の車両制御装置10-2は、第2のリモコン30-2の他に第1のリモコン30-1にも通信接続された冗長状態にあるからである。
図5の例では、第2のリモコン30-2が発信する操作装置メッセージの内容を“ID1,[ID9,ID10],stop>ID10”のように表記している。第4の車両制御装置10-4との間は通信断絶状態となったため、操作装置IDのリストは“[ID9,ID10]”となっており、ID11はリストから除外されている。“stop>ID10”は、“ID10”の第3の車両制御装置10-3に対する一時停止モードのモード設定指示であることを示している。第2のリモコン30-2と通信接続されている全ての車両制御装置10-2,10-3に対して“stop>ID10”のモード設定指示を含む操作装置メッセージが送信され、これを受けた車両制御装置10-2,10-3において、自制御装置に対する命令であるか否かを判定し、自制御装置に対する命令である場合にのみその命令を実行する。
第2の現場監視者U2は、第2のリモコン30-2と非冗長状態で通信接続されている第4の車両制御装置-4との間が通信断絶状態となり、そのことを報知処理によって確認した場合、通信断絶状態から通信接続状態に復帰させるために何らかの処置を行う可能性が高い状況といえる。このとき、第2の監視者U2は第2のリモコン30-2を使用して第3の作業車両100-3も遠隔制御しているが、当該第3の作業車両100-3に対する監視をそれまでのように十分な注意能力をもって行えなくなる可能性が生じる。このような状況において、本実施形態では、命令制御部25の制御によりモード設定指示を含む操作装置メッセージが自動的に発行され、第3の作業車両100-3が一時停止モードに自動的に遷移させられる。これにより、第3の作業車両100-3の運転において安全な状態が確保される。
一方、第2の作業車両100-2は、上述したように第2のリモコン30-2だけでなく第1のリモコン30-1にも通信接続された冗長状態となっており、第2の作業車両100-2を第1の現場監視者U1が十分な注意能力をもって監視可能な状態にある。この場合、第4の車両制御装置10-4と第2のリモコン30-2との間が通信断絶状態となり、通信断絶状態から通信接続状態に復帰させるために第2の現場監視者U2が何らかの処置を行う可能性があるとしても、第2の車両制御装置10-2に対するモード設定指示は発行されず、第2の作業車両100-2は自動運転モードが維持される。
また、図6に示すように、非冗長状態で通信接続されている第1のリモコン30-1と第1の車両制御装置10-1との間で、何らかの理由によって通信接続状態から通信断絶状態に変化したとする。このような通信接続状態から通信断絶状態への変化が接続管理部23により検知された場合、命令制御部25は、通信断絶状態となった第1の車両制御装置10-1以外に非冗長状態であると認識されている他の車両制御装置10が存在するか否かを判定する。図6の例では、第1のリモコン30-1と非冗長状態で通信接続されている他の車両制御装置10は存在しない。この場合、命令制御部25は、一時停止モードのモード設定指示を含む操作装置メッセージの発信は行わない。
第1の現場監視者U1は、第1のリモコン30-1を使用して、通信断絶状態となった第1の車両制御装置10-1を搭載した第1の作業車両100-1の他に、第2の作業車両100-2の遠隔制御も行っている。しかし、第2の作業車両100-2は第2のリモコン30-2にも通信接続された冗長状態となっており、第2の作業車両100-2を第2の現場監視者U2が十分な注意能力をもって監視可能な状態にある。この場合、第1の車両制御装置10-1と第1のリモコン30-1との間が通信断絶状態となり、第1の現場監視者U1が何らかの処置を行う可能性があるとしても、第2の車両制御装置10-2に対するモード設定指示は発行されず、第2の作業車両100-2は自動運転モードが維持される。また、例えば第2の作業車両100-2が移動したことによって第2のリモコン30-2との距離が離れ、第2の車両制御装置10-2と第2のリモコン30-2との間が通信断絶状態になったとしても、第2の車両制御装置10-2と第1のリモコン30-1との間の通信接続状態が維持されており、第1の現場監視者U1が第2の作業車両100-2を遠隔制御可能である。
図7は、上記のように構成した本実施形態による遠隔操作装置30,40の動作を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、所定時間間隔で繰り返し実行される。なお、図7は処理の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。すなわち、図7では、制御装置メッセージの受信と、通信接続の確認と、冗長性の確認と、操作装置メッセージの送信とを所定時間間隔ごとに同期して実行する内容となっているが、これは説明を簡略するための便宜上のものであり、必ずしも全てが同期して行われることを必須とするものではない。すなわち、上記の各処理を非同期で行うようにしてもよい。
まず、制御装置メッセージ受信部22は、車両制御装置10から送られてくる1以上の制御装置メッセージを受信する(ステップS1)。接続管理部23は、受信された制御装置メッセージに含まれる制御装置IDに基づいて、自操作装置に通信接続されている車両制御装置10を認識し、認識した車両制御装置10の制御装置IDを保持する(ステップS2)。次いで、冗長性管理部24は、受信された制御装置メッセージに含まれる操作装置IDのリストに基づいて、通信接続状態が認識された車両制御装置10のそれぞれについて、冗長状態または非冗長状態の何れであるかを認識し、認識した結果を示す冗長性情報を保持する(ステップS3)。
次に、操作装置メッセージ発信部21は、遠隔操作装置30,40に対する監視者の操作が行われたか否かを判定する(ステップS4)。遠隔操作装置30,40に対する操作が行われたと判定された場合、操作装置メッセージ発信部21は、その操作に応じた内容の命令(モード設定指示または操縦指示)を含む操作装置メッセージを発信する(ステップS5)。これにより、所定時間間隔で実施する1回の処理を終了する。
一方、遠隔操作装置30,40に対する操作が行われていないと操作装置メッセージ発信部21により判定された場合、接続管理部23は、上記ステップS2において通信接続状態であると認識した車両制御装置10の制御装置IDと、所定時間間隔前の処理時に保持された制御装置IDとを比較することにより、所定時間間隔前の処理時に冗長性管理部24により非冗長状態であると認識された車両制御装置10との間で、通信接続状態から通信断絶状態への変化が生じたか否かを判定する(ステップS6)。
ここで、通信断絶状態への変化が生じたと接続管理部23により判定された場合、命令制御部25は、通信断絶状態となった車両制御装置10以外に非冗長状態であると認識されている他の車両制御装置10が存在するか否かを判定(ステップS7)。そして、非冗長状態で接続されている車両制御装置10が他にも存在すると命令制御部25により判定された場合、操作装置メッセージ発信部21は、命令制御部25による制御に従って、当該他の車両制御装置10の動作モードを一時停止モードに設定するためのモード設定指示を含む操作装置メッセージを発信する(ステップS8)。
一方、非冗長状態で接続されている車両制御装置10が他に存在しないと命令制御部25により判定された場合、操作装置メッセージ発信部21は、「命令なし」という内容の命令を含む操作装置メッセージを発信する(ステップS9)。上記ステップS6において、通信接続状態から通信断絶状態への変化が生じていないと判定された場合も、操作装置メッセージ発信部21は、「命令なし」という内容の命令を含む操作装置メッセージを発信する(ステップS9)。ステップS8またはステップS9の処理により、所定時間間隔で実施する1回の処理を終了する。
以上詳しく説明したように、本実施形態では、遠隔操作装置30,40において、受信された制御装置メッセージに含まれる制御装置IDに基づいて、自操作装置に通信接続されている車両制御装置10を認識するとともに、受信された制御装置メッセージに含まれる操作装置IDのリストに基づいて、通信接続状態が認識された車両制御装置10のそれぞれについて、遠隔操作装置30,40の接続数が2つ以上である冗長状態または1つしかいない非冗長状態の何れであるかを認識する。そして、非冗長状態であると認識されている車両制御装置10との間で通信接続状態から通信断絶状態に変化したことが検知された場合に、通信断絶状態となった車両制御装置10以外に非冗長状態であると認識されている他の車両制御装置10が存在するか否かを判定し、存在する場合に、当該他の車両制御装置10に対して作業車両100の運転に関する命令を発信するようにしている。
このように構成した本実施形態によれば、通信断絶状態となった車両制御装置10以外にも非冗長状態で通信接続されている他の車両制御装置10が存在すると判定されると、当該他の車両制御装置10に対して運転に関する命令が発信され、他の作業車両100の運転が自動制御される。これにより、他の作業車両100の運転において安全な状態を確保することができる。一方、その監視者が遠隔操作装置30,40を使用して制御している他の作業車両100がある場合であっても、当該他の作業車両100に接続されている車両制御装置10との間の通信接続が冗長状態であると認識された場合には、当該車両制御装置10には運転に関する命令が発信されず、他の作業車両100の遠隔制御がそのまま継続される。このように、本実施形態によれば、何れかの遠隔操作装置30,40と車両制御装置10との間に通信の接続断絶が起きた場合にも、複数の遠隔操作装置30,40から複数台の作業車両100の動作を引き続き安全に制御できるようにすることが可能である。
<第1の変形例>
なお、上記実施形態では、冗長状態であるとする遠隔操作装置30,40の接続数を2つとする例について説明したが、所定数は3つ以上であってもよい。この場合、命令制御部25は、通信断絶状態となった車両制御装置10以外に非冗長状態であると認識されている他の車両制御装置10に対して発行する命令を、上記実施形態と同様に一時停止モードのモード設定指示とする。
図8は、第1の変形例による命令制御部25の処理例を説明するための図である。図8は、3人の現場監視者U1~U3がそれぞれリモコン30-1~30-3を1つずつ用いて4台の作業車両100-1~100-4を遠隔制御している状況を示している。図8において、第1の現場監視者U1は第1のリモコン30-1を用いて2台の作業車両100-1,100-2を遠隔制御しており、第2の現場監視者U2は第2のリモコン30-2を用いて3台の作業車両100-2~100-4を遠隔制御している。これは図4の状態と同様である。図8ではさらに、第3の現場監視者U3が第3のリモコン30-3を用いて2台の作業車両100-2,100-3を遠隔制御している。
図8に示す第1の変形例では、車両制御装置10に対するリモコン30の接続数が3つ以上の場合が冗長状態で、3つ未満である場合が非冗長状態である。よって、第2の車両制御装置10-2は3つのリモコン30-1~30-3と通信接続された冗長状態であり、それ以外の車両制御装置10-1,10-3,10-4は3つ未満のリモコン30と通信接続された非冗長状態である。特に、第3の車両制御装置10-3は、2つのリモコン30-2,30-3と通信接続されているが、非冗長状態となる。
この図8に示す状態において、非冗長状態で通信接続されている第2のリモコン30-2と第4の車両制御装置10-4との間で、何らかの理由によって通信接続状態から通信断絶状態に変化したとする。この場合は、上記実施形態と同様に、第2のリモコン30-2から非冗長状態で通信接続されている第3の車両制御装置10-3に対して運転に関する命令を含む操作装置メッセージが発信される一方で、第2のリモコン30-2から冗長状態で通信接続されている第2の車両制御装置10-2に対しては運転に関する命令を含む操作装置メッセージが発信されない。
<第2の変形例>
図5に示した状況において、第2のリモコン30-2から非冗長状態で通信接続されている第3の車両制御装置10-3に対して運転に関する命令を含む操作装置メッセージが発信される一方で、第2のリモコン30-2から冗長状態で通信接続されている第2の車両制御装置10-2に対して運転に関する命令を含む操作装置メッセージが発信されない場合、第2の作業車両100-2は自動運転モードで運転を継続する。
この状況下において、第1のリモコン30-1と第1の車両制御装置10-1との間で通信断絶が起きたとする。この場合、第2の車両制御装置10-2は依然として第1のリモコン30-1および第2のリモコン30-2の2つに接続された冗長状態にあるため、第1のリモコン30-1から第2の車両制御装置10-2に対して運転に関する命令を含む操作装置メッセージは発信されない。そうすると、第2の現場監視者U2が第4の作業車両100-4を処置するために第2の作業車両100-2を実質的に監視できない状況である中で、第1の現場監視者U1も第1の作業車両100-1を処置するために第2の作業車両100-2を実質的に監視できない状況になる可能性がある。
第2の変形例は、このような状況になることを未然に回避するためのものである。第2の変形例において、車両制御装置10の制御装置メッセージ発信部14は、通信接続状態にある遠隔操作装置30,40から送信された、運転に関する命令(自制御装置ではなく他制御装置に対する命令)を含む操作装置メッセージを操作装置メッセージ受信部15にて受信した場合、当該操作装置メッセージの送信元の遠隔操作装置30,40との間を仮想的に非接続状態とみなし、制御装置メッセージの操作装置IDのリストから、送信元の遠隔操作装置30,40の操作装置IDを除外する。
図9は、この第2の変形例の動作を説明するための図である。図9において、第3の車両制御装置10-3を一時停止モードに設定するためのモード設定指示(stop>ID10)を含む操作装置メッセージが第2のリモコン30-2から第2の車両制御装置10-2および第3の車両制御装置10-3に対して発信されるところまでは図5の状態と同じである(図9の(1)の状態)。
図9の(2)に示すように、第2の車両制御装置10-2の操作装置メッセージ受信部15が、通信接続状態にある第2のリモコン30-2から、第3の車両制御装置10-3を一時停止モードに設定するためのモード設定指示を含む操作装置メッセージを受信した場合、第2の車両制御装置10-2の制御装置メッセージ発信部14は、△印で示すように当該操作装置メッセージの送信元の第2のリモコン30-2との間を仮想的に非接続状態とみなし、制御装置メッセージの操作装置IDのリストから、上記操作装置メッセージの送信元の第2のリモコン30-2の操作装置IDを除外する。
すなわち、第2の車両制御装置10-2の制御装置メッセージ発信部14は、上記実施形態のように“ID9,[ID0,ID1],auto”のような内容の制御装置メッセージではなく、操作装置IDのリストから第2のリモコン30-2の操作装置ID1を除外した“ID9,[ID0],auto”のような内容の制御装置メッセージを送信する。このようにすると、第1のリモコン30-1の冗長性管理部24は、第1のリモコン30-1と第2の車両制御装置10-2との間は非冗長状態であると認識するようになる(図9の(3)の状態)。
このため、この後に第1のリモコン30-1と第1の車両制御装置10-1との間で通信断絶が起きた場合に、第1のリモコン30-1から第2の車両制御装置10-2に対して運転に関する命令を含む操作装置メッセージが発信されるようになる。これにより、第2の作業車両100-2が一時停止モードに遷移し、第2の作業車両100-3の運転において安全な状態が確保される。
なお、第3の作業車両100-3の運転に関する命令を含む操作装置メッセージの送信元である第2のリモコン30-2との間を仮想的に非接続状態とみなす期間は、例えば、第3の作業車両100-3の運転に関する命令を含む操作装置メッセージを第2の車両制御装置10-2の操作装置メッセージ受信部15が再度受信するまでの間とする。例えば、第2の現場監視者U2が第4の作業車両100-4に対する処置を終えて、第3の作業車両100-3を一時停止モードから自動運転モードに戻すためのモード設定指示を含む操作装置メッセージを第2のリモコン30-2からこれに接続されている各車両制御装置10-2,10-3,10-4に送信した場合に、これを受けた第2の車両制御装置10-2の制御装置メッセージ発信部14が、“ID9,[ID0],auto”に代えて“ID9,[ID0,ID1],auto”のような内容の制御装置メッセージの送信を再開するようにする。
このようにすれば、第1のリモコン30-1と第1の車両制御装置10-1との間で通信断絶が起きる前に、第2の現場監視者U2が第3の作業車両100-3を自動運転モードに戻すためのモード設定指示を行うと、第1のリモコン30-1と第2の車両制御装置10-2のとの間を非接続状態とみなす状態が解除されて、通常の冗長状態に戻る。よって、この後に第1のリモコン30-1と第1の車両制御装置10-1との間で通信断絶が起きた場合に、第1のリモコン30-1から第2の車両制御装置10-2に対して一時停止モードに設定するためのモード設定指示を含む操作装置メッセージが送信されないようにして、第2の作業車両100-2の自動運転モードでの運転を継続させるようにすることができる。
<第3の変形例>
上記実施形態では、遠隔操作装置30,40のみが接続管理部23および冗長性管理部24を備える構成について説明した。これに対し、第3の変形例は、遠隔操作装置30,40だけでなく、車両制御装置10も接続管理部23および冗長性管理部24と同様の構成を備えるようにする。第3の変形例において、冗長状態となる遠隔操作装置30,40の接続数は2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
図10は、第3の変形例に係る車両制御装置10の機能構成例を示すブロック図である。この図10において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図10に示すように、第3の変形例に係る車両制御装置10は、機能構成例として、第2接続管理部23Aおよび第2冗長性管理部24Aを更に備えている。また、第3の変形例に係る車両制御装置10は、運転制御部13に代えて運転制御部13Aを備えている。
第2接続管理部23Aは、操作装置メッセージ受信部15により受信された操作装置メッセージに含まれる操作装置IDに基づいて、自制御装置に通信接続されている遠隔操作装置30,40を認識する。第2冗長性管理部24Aは、第2接続管理部23Aにより通信接続されていると認識された遠隔操作装置30,40の数に基づいて、遠隔操作装置30,40の接続数が所定数以上である冗長状態または遠隔操作装置30,40の接続数が所定数未満である非冗長状態の何れであるかを認識する。
運転制御部13Aは、第2冗長性管理部24Aにより冗長状態から非冗長状態に変化したことが検知された場合に、自制御装置に対して作業車両100の運転に関する命令を含む内発指示を発行する。例えば、運転制御部13Aは、モード設定部12に対して、作業車両100を一時停止モードに設定するためのモード設定指示を発行する。
図11は、第3の変形例の処理例を説明するための図である。この図11は、図8と同様の接続関係を示している。ただし、図11は遠隔操作装置30,40の接続数が2つの場合に冗長状態となる例を示している点で、遠隔操作装置30,40の接続数が3つ以上の場合に冗長状態となる例を示した図8と異なる。遠隔操作装置30,40の接続数が2つの場合に冗長状態となるので、第3の車両制御装置10-3と2つのリモコン30-2,30-3とが接続されているところも冗長状態となる。
この図11に示す状態において、第1のリモコン30-2、第2のリモコン30-2および第3のリモコン30-3のそれぞれの冗長性管理部24は、制御装置メッセージ受信部22により第2の車両制御装置10-2から受信された制御装置メッセージ“ID9,[ID0,ID1,ID2],auto”に含まれる操作装置IDのリストに基づいて、第2の車両制御装置10-2が冗長状態であることを認識する。同様に、第2のリモコン30-2および第3のリモコン30-3のそれぞれの冗長性管理部24は、制御装置メッセージ受信部22により第3の車両制御装置10-3から受信された制御装置メッセージ“ID10,[ID1,ID2],auto”に含まれる操作装置IDのリストに基づいて、第3の車両制御装置10-3が冗長状態であることを認識する。
一方、第2の車両制御装置10-2の接続管理部23Aは、操作装置メッセージ受信部15により第1のリモコン30-1から受信された操作装置メッセージ“ID0,[ID8,ID9],nop”と、第2のリモコン30-2から受信された操作装置メッセージ“ID1,[ID9,ID10,ID11],nop”と、第3のリモコン30-3から受信された操作装置メッセージ“ID2,[ID9,ID10],nop”とに含まれるそれぞれの操作装置IDに基づいて、自制御装置に通信接続されている3つのリモコン30-1,30-2,30-3を認識する。また、第2冗長性管理部24Aは、第2接続管理部23Aにより通信接続されていると認識されたリモコン30-1,30-2,30-3の数に基づいて、第2の車両制御装置10-2に対するリモコン30-1,30-2,30-3の接続数が2つ以上の冗長状態であることを認識する。
同様に、第3の車両制御装置10-3の接続管理部23Aは、操作装置メッセージ受信部15により第2のリモコン30-2から受信された操作装置メッセージ“ID1,[ID9,ID10],nop”と、第3のリモコン30-3から受信された操作装置メッセージ“ID2,[ID9,ID10,ID11],nop”とに含まれるそれぞれの操作装置IDに基づいて、自制御装置に通信接続されている2つのリモコン30-2,30-3を認識する。また、第2冗長性管理部24Aは、第2接続管理部23Aにより通信接続されていると認識されたリモコン30-2,30-3の数に基づいて、第3の車両制御装置10-3に対するリモコン30-2,30-3の接続数が2つの冗長状態であることを認識する。
この状態において、例えば図11(a)に示すように、第2の車両制御装置10-2と第2のリモコン30-2との間で、何らかの理由によって通信接続状態から通信断絶状態に変化したとする。この場合、第2の車両制御装置10-2の第2接続管理部23Aは、自制御装置に通信接続されている2つのリモコン30-1,30-3を認識する。また、第2冗長性管理部24Aは、第2接続管理部23Aにより通信接続されていると認識されたリモコン30-1,30-3の数に基づいて、第2の車両制御装置10-2に対するリモコン30-1,30-3の接続数が2つの冗長状態であることを認識する。このように、第2の車両制御装置10-2は冗長状態が維持されているので、運転制御部13Aは、モード設定部12に対して一時停止モードを設定するためのモード設定指示を発行しない。
また、例えば図11(b)に示すように、第3の車両制御装置10-3と第3のリモコン30-3との間で、何らかの理由によって通信接続状態から通信断絶状態に変化したとする。この場合、第3の車両制御装置10-3の第2接続管理部23Aは、自制御装置に通信接続されている1つのリモコン30-2を認識する。また、第2冗長性管理部24Aは、第2接続管理部23Aにより通信接続されていると認識されたリモコン30-2の数に基づいて、第3の車両制御装置10-3に対するリモコン30-2の接続数が2つ未満の非冗長状態であることを認識する。この場合は、冗長性管理部24Aによって冗長状態から非冗長状態への変化が検知されるので、運転制御部13Aは、モード設定部12に対して一時停止モードを設定するためのモード設定指示を発行する。
なお、上記第2の変形例では、図9に示したように、第2のリモコン30-2から運転に関する命令を含む操作装置メッセージを受信した第2の車両制御装置10-2が、当該操作装置メッセージの送信元である第2のリモコン30-2との間を仮想的に非接続状態とみなし、制御装置メッセージの操作装置IDのリストから、第2のリモコン30-2の操作装置ID“ID1”を除外する例について説明したが、これを第3の変形例に応用することも可能である。図12は、第3の変形例に応用する場合の処理例を示す図である。
第3の変形例に応用する場合、遠隔操作装置30,40の操作装置メッセージ発信部21は、通信接続状態にある車両制御装置10に対して、作業車両100の運転に関する命令を含む操作装置メッセージを発信した後、当該操作装置メッセージの送信先の車両制御装置10(命令の発行先以外の車両制御装置10)との間を仮想的に非接続状態とみなし、当該操作装置メッセージの制御装置IDのリストから、送信先の車両制御装置10の制御装置IDを除外する。
図12に示す例の場合、第2のリモコン30-2の操作装置メッセージ発信部21は、通信接続状態にある車両制御装置10-2,10-3に対して、作業車両100の運転に関する命令を含む操作装置メッセージ“ID1,[ID9,ID10],stop>ID10”を発信した後、第2の車両制御装置10-2との間を仮想的に非接続状態とみなし、次以降に発信する操作装置メッセージの制御装置IDのリストから第2の車両制御装置10-2の制御装置IDを除外する。これにより、図12の(1)に示すように、次以降に発信する操作装置メッセージは“ID1,[ID10],nop”となる。
図10に示した第2接続管理部23Aは、遠隔操作装置30,40から受信した操作装置メッセージの制御装置IDのリストの中に自制御装置の制御装置IDが含まれている操作装置メッセージのみを対象として、当該操作装置メッセージに含まれる操作装置IDに基づいて、自制御装置に通信接続されている遠隔操作装置30,40を認識する。
図12に示す例の場合、第2の車両制御装置10-2の第2接続管理部23Aは、第2のリモコン30-2から受信する操作装置メッセージ“ID1,[ID10],nop”の制御装置IDのリスト中に自制御装置の制御装置IDである“ID9”が含まれていないので、この操作装置メッセージは無視する。そして、第1のリモコン30-1から受信する操作装置メッセージ“ID0,[ID8,ID9],nop”のみを対象として、当該操作装置メッセージに含まれる操作装置ID“ID0”に基づいて、自制御装置に通信接続されている第1のリモコン30-1を認識する。
よって、この場合に第2冗長性管理部24Aは、第2接続管理部23Aにより通信接続されていると認識されたリモコン30-1の数に基づいて、リモコン30-1の接続数が所定数未満の非冗長状態であると認識する(図12の(2))。その結果、制御装置メッセージ発信部14が発信する制御装置メッセージは、図9と同様に、“ID9,[ID0,ID1],auto”から“ID9,[ID0],auto”に変わる(図12の(3))。
<第4の変形例>
図4~図6、図8、図9、図11、図12では、複数の現場監視者が複数のリモコン(第1遠隔操作装置)30を使用して複数台の作業車両100を遠隔制御する例について説明したが、第1遠隔操作装置30の他に第2遠隔操作装置40が含まれていてもよい。図13(a)は、図5における第2のリモコン30-2の代わりに第2遠隔操作装置40を用いた例を示すものである。なお、ここでは、圃場の俯瞰画像を撮影可能な遠隔制御カメラを圃場の所定位置に設置し、当該カメラにより撮影される映像を用いて監視を行う状態を示している。図13(b)は、図5と同様の状態を示したものである(ただし、後述するように、第2のリモコン30-2から発行する命令の内容が図5とは異なる)。
第4の変形例では、第1遠隔操作装置30と第2遠隔操作装置40とを使用して複数の作業車両100を遠隔制御する場合において、命令制御部25は、操作装置メッセージを発信する自操作装置が第1遠隔操作装置30または第2遠隔操作装置40の何れであるかに応じて、非冗長状態の車両制御装置10に対して発行する運転に関する命令の内容を異ならせる。第1遠隔操作装置30の場合は現場監視者が作業車両100を目視可能な状態であるのに対し、第2遠隔操作装置40の場合は遠隔監視者が監視映像でしか作業車両100を視認できない状態であるため、第2遠隔操作装置40は第1遠隔操作装置30に比べて監視能力が低いと考えられるからである。
例えば、図13(a)のように、第2遠隔操作装置40と第4の車両制御装置10-4との間が通信接続状態から通信断絶状態に変化した場合に、第2遠隔操作装置40から発信する第3の車両制御装置10-3に対する運転に関する命令は、第3の作業車両100-3を一時停止モードに設定するためのモード設定指示とする。このように、操作装置メッセージを発信する自操作装置が第2遠隔操作装置40である場合、第2遠隔操作装置40は第1遠隔操作装置30に比べて監視能力が低いと考えられるため、作業車両100を一時停止モードに設定するといった厳格な命令を発行するようにする。
一方、図13(b)のように、第1遠隔操作装置30-2と第4の車両制御装置10-4との間が通信接続状態から通信断絶状態に変化した場合に、第1遠隔操作装置30-2から発信する第3の車両制御装置10-3に対する運転に関する命令は、第3の車両制御装置10-3の走行速度を落とすための操縦指示とする。このように、操作装置メッセージを発信する自操作装置が第1遠隔操作装置30である場合、第1遠隔操作装置30は第2遠隔操作装置40に比べて監視能力が高いと考えられるため、作業車両100の走行速度を落とすといった緩めの命令を発行するようにする。
なお、図11に示した第3の変形例に対しても、以上の第4の変形例を適用することが可能である。この場合、例えば、通信接続状態が維持されている遠隔操作装置30,40が第1遠隔操作装置30または第2遠隔操作装置40の何れであるかに応じて、作業車両100の運転に関する命令の内容を異ならせるようにすることが考えられる。
例えば、図11(b)における第2のリモコン30-2の代わりに第2遠隔操作装置40を用いた場合、第3の車両制御装置10-3と第3のリモコン30-3との間で、何らかの理由によって通信接続状態から通信断絶状態に変化したとき、第3の車両制御装置10-3が内発指示として発行する運転に関する命令は、第3の作業車両100-3を一時停止モードに設定するためのモード設定指示とする。第3の車両制御装置10-3との間で通信接続状態が維持されているのが第2遠隔操作装置40だからである。一方、図11(b)のように第2のリモコン30-2を用いた場合、第3の車両制御装置10-3と第3のリモコン30-3との間で、何らかの理由によって通信接続状態から通信断絶状態に変化したとき、第3の車両制御装置10-3が内発指示として発行する運転に関する命令は、第3の車両制御装置10-3の走行速度を落とすための操縦指示とする。第3の車両制御装置10-3との間で通信接続状態が維持されているのが第1遠隔操作装置30だからである。
<その他の変形例>
なお、上記実施形態および変形例では、制御対象とする特定の車両制御装置10の制御装置IDを用いて、例えば“stop>ID10”のよう運転に関する命令を発行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。図10のように車両制御装置10が第2冗長性管理部24Aを有する構成において、例えば図5に示す状態で、第2のリモコン30-2が、これに通信接続されている全ての車両制御装置10-2,10-3に対して“stop>single”のようなモード設定指示を送信し、これを受けた車両制御装置10-2,10-3において、自制御装置が非冗長状態であるか否かを判定し、非冗長状態である場合にのみ命令を実行するようにしてもよい。
また、冗長状態となる遠隔操作装置30,40の接続数が2つであるか3つ以上であるかに応じて、運転に関する命令の内容を異ならせるようにしてもよい。例えば、冗長状態となる遠隔操作装置30,40の接続数が2つの場合、運転に関する命令は、一時停止モードに設定するためのモード設定指示とする。一方、冗長状態となる遠隔操作装置30,40の接続数が3つ以上の場合、運転に関する命令は、走行速度を落とすための操縦指示とする。
また、複数の作業車両100を監視する遠隔操作装置の中に第2遠隔操作装置40が含まれるか否かに応じて、冗長状態であるとする遠隔操作装置30,40の接続数を2つまたは3つ以上の何れかに切り替えるようにしてもよい。例えば、遠隔操作装置の中に第2遠隔操作装置40が含まれない場合(全て第1遠隔操作装置30の場合)は所定数を2つとし、遠隔操作装置の中に第2遠隔操作装置40が含まれる場合は所定数を3つ以上とすることが考えられる。
また、上記実施形態および変形例では、作業車両100を自動運転モードから一時停止モードに変更するためのモード設定指示を発行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、遠隔操縦モードで運転中の作業車両100を一時停止モードに変更するためのモード設定指示を発行するようにしてもよい。また、一時停止モードに代えて待機モードに変更するためのモード設定指示を発行するようにしてもよい。また、動作モードを変更した場合、そのことを監視者に知らせる報知処理を行うようにしてもよい。
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。