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JP7549117B1 - 調光フィルム - Google Patents

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凌祐 田邉
智宏 竹安
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Abstract

【課題】太陽光に対する良好な遮熱性を実現するのに適した調光フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の調光フィルムXは、基材フィルム10と、電極層20と、調光層30と、電極層40とを、厚さ方向Hにこの順で備える。電極層20は、インジウム含有導電性酸化物層である。電極層20は、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有する。電極層20は、面方向における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層であり、厚さ方向Hにおいて複数の結晶粒を含む領域を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、調光フィルムに関する。
建物および乗り物等の窓ガラスに貼り合わされる調光フィルムが知られている。調光フィルムは、調光部と、当該調光部を支持する透明な基材フィルムとを備える。調光部は、例えば、透明導電層と、調光層と、透明導電層とを、厚さ方向にこの順で備える。調光層は、二つの透明導電層によって挟まれる。調光層は、エレクトクロミック(EC)材料から形成される。EC材料は、例えば、電気化学的酸化還元により、有色の非透明状態と無色の透明状態との間で可逆的に変化可能な材料である。各透明導電層は、電極層である。電極(透明導電層)間の電圧のオン・オフにより、調光層が、例えば、非透明状態(遮光状態)と透明状態(非遮光状態)との間で切り替えられる。このような調光フィルムが貼り合わされた窓ガラスでは、電極間の電圧のオン・オフにより、当該調光フィルム付き窓ガラスに対する可視光などの光の透過率が、切り替えられる(光透過率のスイッチング制御)。このような調光フィルムに関する技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
特開2019-101206号公報
建物内および乗り物内の快適性向上および冷房負荷の低減等の観点から、調光フィルムには、太陽光に対する遮熱性を有することが求められる。
一方、本発明者らは、調光フィルムに関し、次のような知見を得た。電極(透明導電層)は、太陽光中の熱線(放射によって熱を伝える近赤外線等の電磁波)に対して有意な反射性を有する自由電子を、キャリアとして含有する。調光フィルムでは、そのような電極が、調光層に対して全面的に設けられている。すなわち、調光フィルムにおける面方向での電極の占有面積割合は、大きい。このような調光フィルムでは、電極におけるキャリア数の調整により、太陽光に対する同フィルムの遮熱性を効率よく制御できる。本発明は、このような知見に基づく。
本発明は、太陽光に対する良好な遮熱性を実現するのに適した調光フィルムを提供する。
本発明[1]は、基材フィルムと、第1電極層と、調光層と、第2電極層とを厚さ方向にこの順で備える調光フィルムであって、前記第1電極層が、インジウム含有導電性酸化物層であり、前記第1電極層が、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有し、前記第1電極層が、面方向における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層であり、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域を有する、調光フィルムを含む。
本発明[2]は、前記インジウム含有導電性酸化物が、酸化スズ割合11質量%以上のインジウムスズ複合酸化物である、上記[1]に記載の調光フィルムを含む。
本発明[3]は、前記第2電極層が、インジウム含有導電性酸化物層である、上記[1]または[2]に記載の調光フィルムを含む。
本発明[4]は、前記第2電極層における前記インジウム含有導電性酸化物が、酸化スズ割合11質量%以上のインジウムスズ複合酸化物である、上記[3]に記載の調光フィルムを含む。
本発明[5]は、前記第2電極層が、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有する、上記[1]から[4]のいずれか一つに記載の調光フィルムを含む。
本発明[6]は、前記第2電極層が、面方向における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層である、上記[1]から[5]のいずれか一つに記載の調光フィルムを含む。
本発明[7]は、前記第2電極層が、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域を有する、上記[6]に記載の調光フィルムを含む。
本発明[8]は、前記基材フィルムが、近赤外線吸収層および/または近赤外線反射層を有する、上記[1]から[7]のいずれか一つに記載の調光フィルムを含む。
本発明[9]は、波長800nm~1300nmでの平均透過率が50%以下である、上記[1]から[8]のいずれか一つに記載の調光フィルムを含む。
本発明の調光フィルムは、上記のように、基材フィルムと、第1電極層と、調光層と、第2電極層とを厚さ方向にこの順で備え、第1電極層が、インジウム含有導電性酸化物層であって、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有し、面方向における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層であり、且つ、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域を有する。このような調光フィルムは、第1電極層における平面視の単位面積あたりの自由電子数(キャリア数)を確保するのに適する。第1電極層における単位面積あたりの自由電子数が多いほど、当該第1電極層の、太陽光中の熱線に対する反射性は高い。熱線に対する第1電極層の反射性が高いほど、そのような第1電極層を備える調光フィルムの、熱線に対する遮蔽性(遮熱性)は高い。したがって、本発明の調光フィルムは、太陽光に対する良好な遮熱性を実現するのに適する。
本発明の調光フィルムの一実施形態の断面模式図である。 図1に示す調光フィルムの部分拡大断面図である。 図1に示す調光フィルムの他の部分拡大断面図である。 図1に示す調光フィルムの製造方法の一例における一部の工程を表す。図4Aは基材フィルム用意工程を表し、図4Bは透明導電層形成工程を表し、図4Cは結晶化工程を表し、図4Dは調光層形成工程を表す。 図4Dに示す工程の後の貼合せ工程を表す。
本発明の一実施形態としての調光フィルムXは、基材フィルム10(第1基材フィルム)と、電極層20(第1電極層)と、調光層30と、電極層40(第2電極層)と、基材フィルム50(第2基材フィルム)とを、厚さ方向Hにこの順で備える。基材フィルム10は、第1面10aと、当該第1面10aとは反対側の第2面10bとを有する。電極層20は、第1面10a上に配置されている。電極層20と第1面10aとは、互いに接する。調光層30は、電極層20上に配置されている。調光層30と電極層20とは、互いに接する。電極層40は、調光層30上に配置されている。電極層40と調光層30とは、互いに接する。基材フィルム50は、電極層40上に配置されている。基材フィルム50は、電極層40側の第1面50aと、当該第1面50aとは反対側の第2面50bとを有する。電極層40と第1面50aとは、互いに接する。また、調光フィルムXは、厚さ方向Hと直交する方向(面方向)に広がるシート形状を有する。
調光フィルムXにおいて、基材フィルム10と電極層20とは、電極付き基材フィルムY1を形成する。
基材フィルム10は、本実施形態では、樹脂フィルム11と、硬化樹脂層12とを、厚さ方向Hに順に備える。硬化樹脂層12は、樹脂フィルム11に接する。硬化樹脂層12は、基材フィルム10の第1面10aを形成する。
樹脂フィルム11は、調光フィルムXの強度を確保する基材である。また、樹脂フィルム11は、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。樹脂フィルム11の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマーが挙げられる。アクリル樹脂としては、例えばポリメタクリレートが挙げられる。樹脂フィルム11の材料は、透明性および強度の観点から、好ましくはポリエステル樹脂であり、より好ましくはPETである。
樹脂フィルム11における硬化樹脂層12側の表面は、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる(後記の樹脂フィルム51に関する表面改質処理についても同様である)。
樹脂フィルム11の厚さは、調光フィルムXの強度を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。樹脂フィルム11の厚さは、ロールトゥロール方式における樹脂フィルム11の取り扱い性を確保する観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下である。樹脂フィルム11の厚さは、調光フィルムXの強度と取り扱い性との両立の観点から、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μm、更に好ましくは30~150μmである。
樹脂フィルム11の可視光透過率は、調光フィルムの透明状態時に求められる透明性を調光フィルムXにおいて確保する観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。樹脂フィルム11の可視光透過率は、例えば100%以下である。可視光透過率とは、波長380nm~780nmの範囲での透過率とする。
硬化樹脂層12は、本実施形態では、調光フィルムXの光学特性を良化するための光学調整層(屈折率調整層)である。硬化樹脂層12は、後述の透明導電層形成工程(図4B)において、樹脂フィルム11から発生する水分や有機ガスを遮断する機能を有してもよい。硬化樹脂層12は、本実施形態では、硬化型の第1樹脂組成物の硬化物である。第1樹脂組成物は、樹脂を含有する。当該樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アルキド樹脂、有機シラン縮合物、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、ウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、アミド樹脂、シリコーン樹脂、およびエポキシ樹脂が挙げられる。これら樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。第1樹脂組成物中の樹脂は、基材フィルム10に対する電極層20の密着性を確保する観点から、好ましくは、メラミン樹脂、アルキド樹脂および有機シラン縮合物からなる群より選択される少なくとも一つである。また、第1樹脂組成物は、紫外線硬化型の樹脂組成物であってもよいし、熱硬化型の樹脂組成物であってもよい。
硬化樹脂層12の厚さは、調光フィルムXの光透過特性を良化する観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、一層好ましくは30nm以上である。硬化樹脂層12の厚さは、調光フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、一層好ましくは40nm以下である。硬化樹脂層12の厚さは、調光フィルムXの光透過特性と薄型化との両立の観点から、好ましくは5~1000nm、より好ましくは10~100nm、更に好ましくは20~50nm、一層好ましくは30~40nmである。
基材フィルム10は、樹脂フィルム11に対して硬化樹脂層12とは反対側に他の硬化樹脂層を有してもよい。他の硬化樹脂層としては、例えば、ハードコート層およびアンチブロッキング層が挙げられる。図1では、基材フィルム10における他の硬化樹脂層を、硬化樹脂層13として仮想線で示す。
他の硬化樹脂層は、例えば、硬化型の第2樹脂組成物の硬化物である。第2樹脂組成物は、樹脂を含有する。当該樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、ウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、およびメラミン樹脂が挙げられる。これら樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。第2樹脂組成物は、紫外線硬化型の樹脂組成物であってもよいし、熱硬化型の樹脂組成物であってもよい。
第2樹脂組成物は、粒子を含有してもよい。当該粒子としては、例えば、無機酸化物粒子および有機粒子が挙げられる。無機酸化物粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、および酸化アンチモンが挙げられる。有機粒子の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル・スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、およびポリカーボネートが挙げられる。粒子は、好ましくは無機酸化物粒子であり、より好ましくは、シリカ粒子およびジルコニア粒子からなる群より選択される少なくとも一つである。
他の硬化樹脂層の厚さは、当該硬化樹脂層の機能を確保する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上である。この硬化樹脂層の厚さは、調光フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。この硬化樹脂層の厚さは、同層の機能確保と調光フィルムXの薄型化との両立の観点から、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μm、更に好ましくは2~3μmである。
基材フィルム10の厚さは、調光フィルムXの取り扱い性を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上、一層好ましくは60μm以上である。基材フィルム10の厚さは、調光フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下、一層好ましくは150μm以下である。基材フィルム10の厚さは、調光フィルムXの取り扱い性と薄型化との両立の観点から、好ましくは10~500μm、より好ましくは30~300μm、更に好ましくは50~200μm、一層好ましくは60~150μmである。
基材フィルム10の可視光透過率は、調光フィルムの透明状態時に求められる透明性を調光フィルムXにおいて確保する観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。基材フィルム10の可視光透過率は、例えば100%以下である。
基材フィルム10は、好ましくは、近赤外線吸収層および/または近赤外線反射層を有する(各層は図示略)。近赤外線吸収層とは、近赤外線(波長700nm~2500nm)に対して有意な吸収能を示す層を意味する。近赤外線反射層とは、近赤外線(波長700nm~2500nm)に対して有意な反射能を示す層を意味する。
近赤外線吸収層は、樹脂フィルム11と硬化樹脂層12との間に配置されてもよいし、樹脂フィルム11に対して硬化樹脂層12とは反対側に配置されてもよい。樹脂フィルム11が、近赤外線吸収層であってもよいし、近赤外線吸収層を含む多層構造を有してもよい。近赤外線吸収層は、例えば、近赤外線吸収剤と、バインダー樹脂とを含む。近赤外線吸収剤としては、例えば、無機近赤外線吸収剤および有機近赤外線吸収剤が挙げられる。無機近赤外線吸収剤としては、例えば、CFM複合酸化物粒子および酸化タングステン粒子が挙げられる。CFM複合酸化物とは、銅と鉄とマンガンとの複合酸化物である。バインダー樹脂の材料としては、例えば、樹脂フィルム11に関して上記した材料が挙げられる。
近赤外線反射層は、樹脂フィルム11と硬化樹脂層12との間に配置されてもよいし、樹脂フィルム11に対して硬化樹脂層12とは反対側に配置されてもよい。樹脂フィルム11が、近赤外線反射層であってもよいし、近赤外線反射層を含む多層構造を有してもよい。近赤外線反射層は、例えば、光学特性の異なる複数の樹脂薄層を含む多層構造を有し、好ましくは、光学特性の異なる第1樹脂薄層および第2樹脂薄層が厚さ方向Hに交互に配置された多層構造を有する。光学特性としては、例えば、面内平均屈折率が挙げられる。第1樹脂薄層と第2樹脂薄層との面内平均屈折率の差は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、また、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.12以下である。多層構造を形成する樹脂薄層の積層数は、例えば20以上であり、また、例えば700以下である。樹脂薄層の材料としては、例えば、樹脂フィルム11に関して上記した材料が挙げられる。
電極層20は、光透過性と導電性とを兼ね備える層である。このような電極層20は、透明導電材料から形成されている。すなわち、電極層20は透明導電層である。
電極層20は、透明導電材料としてのインジウム含有導電性酸化物から形成されている。すなわち、電極層20は、インジウム含有導電性酸化物層である。インジウム含有導電性酸化物としては、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、およびインジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)が挙げられる。高い透明性と良好な電気伝導性とを実現する観点からは、インジウム含有導電性酸化物は、好ましくはITOである。このITOは、InおよびSn以外の金属または半金属を、InおよびSnのそれぞれの含有量より少ない量で含有してもよい。
ITOにおける酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の合計含有量に対する酸化スズの含有量の割合(酸化スズ割合)は、後述の結晶化工程(図4C)にて透明導電層中の結晶粒の成長を適度に抑制して、電極層20のキャリア数を確保する観点から、好ましくは11質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは12.5質量%以上である。酸化スズ割合は、電極層20の低抵抗化の観点から、好ましくは18質量以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは14質量%以下である。酸化スズ割合は、上記のキャリア数の確保と上記の低抵抗化との両立の観点から、好ましくは11~18質量%、より好ましくは12~16質量%、更に好ましくは12.5~14質量%である。
ITOにおける酸化スズ割合は、例えば次のようにして同定できる。まず、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により、測定対象物としてのITOにおけるインジウム原子(In)とスズ原子(Sn)の存在比率を求める。ITO中のInおよびSnの各存在比率から、ITO中のInの原子数に対するSnの原子数の比率を求める。これにより、ITOにおける酸化スズ割合が得られる。また、ITOにおける酸化スズ割合は、スパッタ成膜時に用いるITOターゲットの酸化スズ(SnO)含有割合からも特定できる。
電極層20は、結晶質層である。電極層20が結晶質層であることは、電極層20の低抵抗化の観点から好ましく、また、電極層20および調光フィルムXにおいて良好な赤外線反射特性を実現するのに好ましい。
導電性酸化物から形成された電極層(調光フィルムXでは電極層20,40)が結晶質層(結晶質膜)であることは、例えば、次の方法によって判断できる。まず、電極層を、濃度5質量%の塩酸に、20℃で15分間、浸漬する。次に、電極層を、水洗した後、乾燥する。次に、電極層の露出平面において、離隔距離15mmの一対の端子の間の抵抗(端子間抵抗)を測定する。この測定において、端子間抵抗が10kΩ以下である場合に、当該電極層が結晶質層であると判断できる。
電極層20(結晶質層)の面方向における平均結晶粒径は、電極層20のキャリア数(自由電子数)を確保する観点から、300nm以下であり、好ましくは270nm以下、より好ましくは240nm以下、更に好ましくは220nm以下である(電極層20において、結晶粒が小さいほど、粒界の合計長さは増大し、キャリア数は増大する傾向がある)。電極層20の面方向における平均結晶粒径は、電極層20において、調光フィルムの電極にとって好適な低比抵抗を確保する観点から、例えば30nm以上であり、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、更に好ましくは180nm以上、一層好ましくは200nm以上である。電極層20の面方向における平均結晶粒径は、電極層20のキャリア数の確保と低比抵抗との両立の観点から、好ましくは100~300nm、より好ましくは150~270nm、更に好ましくは180~240nm、一層好ましくは200~220nmである。電極層20の厚さ方向Hにおける基材フィルム10からの距離にかかわらず、電極層20における平均結晶粒径は、上記の範囲をとるのが好ましい。電極層20の平均結晶粒径の調整方法としては、例えば、電極層20の組成の調整、電極層20の厚さの調整、および後述の透明導電層形成工程(図4B)での成膜温度の調整が挙げられる。電極層20の組成の調整は、透明導電層形成工程における、スパッタ成膜に用いられるターゲットの組成の調整、および、酸素導入量の割合の調整を含む。電極層(電極層20,40)の平均結晶粒径の測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。
電極層20は、厚さ方向Hにおいて複数の結晶粒を含む領域(粒子積層領域)を有する。粒子積層領域における、厚さ方向Hの粒子数は、2、3または4以上である。図2には、電極層20が、厚さ方向Hにおいて2つの結晶粒21を含む粒子積層領域を有する場合を、例示的に示す。電極層20が粒子積層領域を有することは、電極層20において、粒界Lの長さ(合計長さ)を確保して、キャリア数を確保するのに適する。電極層(電極層20,40)が粒子積層領域を有することの確認方法は、実施例に関して後述するとおりである。
電極層20の比抵抗は、電極層20のキャリア数(自由電子数)を確保する観点から、2.5×10-4Ω・cm以下であり、好ましくは2.2×10-4Ω・cm以下、より好ましくは2.0×10-4Ω・cm以下、更に好ましくは1.8×10-4Ω・cm以下である。電極層20の比抵抗が低いことは、電極層20の低抵抗化の観点からも好ましい。電極層20の比抵抗は、後記の結晶化工程(図4C)において透明導電層(この層から電極層20が形成される)の良好な結晶化速度を実現する観点から、好ましくは0.5×10-4Ω・cm以上、より好ましくは1.0×10-4Ω・cm以上、更に好ましくは1.3×10-4Ω・cm以上、一層好ましくは1.5×10-4Ω・cm以上である。電極層20の比抵抗は、電極層20のキャリア数の確保と結晶化速度との両立の観点から、好ましくは0.5×10-4~2.5×10-4Ω・cm、より好ましくは1.0×10-4~2.2×10-4Ω・cm、更に好ましくは1.3×10-4~2.0×10-4Ω・cm、一層好ましくは1.5×10-4~1.8×10-4Ω・cmである。電極層20の比抵抗は、電極層20の表面抵抗に厚さを乗じて求められる。比抵抗を求める方法は、具体的には、実施例に関して後述するとおりである。電極層20の比抵抗の調整方法としては、例えば、電極層20をスパッタ成膜する時の各種条件の調整が挙げられる。その条件としては、例えば、電極層20が成膜される下地(本実施形態では基材フィルム10)の温度、成膜室内への酸素導入量、成膜室内の気圧、および、ターゲット上の水平磁場強度が挙げられる。
電極層20の平面視(面方向)におけるキャリア数(自由電子数)は、電極層20での遮熱性確保の観点から、好ましくは10×1015cm-2以上、より好ましくは12×1015cm-2以上、更に好ましくは14×1015cm-2以上、一層好ましくは14.5×1015cm-2以上である。このキャリア数は、電極層20の平面視における単位面積(1平方センチメートル)あたりのキャリア(自由電子)の個数を表す。電極層20の平面視におけるキャリア数は、電極層20の可視光透過率を確保する観点から、好ましくは100×1015cm-2以下、より好ましくは60×1015cm-2以下、更に好ましくは40×1015cm-2以下、一層好ましくは20×1015cm-2以下である。電極層20のキャリア数は、電極層20の遮熱性確保と可視光透過率との両立の観点から、好ましくは10×1015~100×1015cm-2、より好ましくは12×1015~60×1015cm-2、更に好ましくは14×1015~40×1015cm-2、一層好ましくは14.5×1015~20×1015cm-2である。電極層20のキャリア数の調整方法としては、例えば、電極層20の組成の調整、電極層20の厚さの調整、および後述の透明導電層形成工程(図4B)での成膜温度の調整が挙げられる。電極層20の組成の調整は、透明導電層形成工程における、スパッタ成膜に用いられるターゲットの組成の調整、および、酸素導入量の割合の調整を含む。電極層(電極層20,40)のキャリア数の測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。
電極層20の厚さは、電極層20のキャリア数を確保する観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上、一層好ましくは120nm以上である。電極層20が厚いことは、電極層20の低抵抗化の観点からも好ましい。電極層20の厚さは、電極層20の耐屈曲性(屈曲時の電極層20の割れの抑制)を確保する観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは170nm以下、一層好ましくは140nm以下である。電極層20の厚さは、電極層20のキャリア数の確保、低抵抗化および耐屈曲性の観点から、好ましくは50~300nm、より好ましくは80~200nm、一層好ましくは100~170nm、更に好ましくは120~140nmである。
電極層20の可視光透過率は、調光フィルムの透明状態時に求められる透明性を調光フィルムXにおいて確保する観点から、例えば50%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。また、電極層20の可視光透過率は、例えば100%以下である。
電極層20における希ガス原子の含有割合は、電極層20の低抵抗化(低比抵抗化)の観点から、好ましくは0.3原子%以下、より好ましくは0.2原子%以下、更に好ましくは0.1原子%以下であり、また、例えば0.0001原子%以上である。希ガス原子としては、例えば、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、およびキセノン(Xe)が挙げられる。希ガス原子は、例えば、後述の透明導電層形成工程(図4B)で用いられるスパッタリングガスに由来する(スパッタリングガスが混入したものである)。電極層20における希ガス原子の含有割合の同定方法としては、例えば、蛍光X線分析およびラザフォード後方散乱分光分析(RBS)が挙げられる(後記の電極層40における希ガス原子の含有割合の同定方法についても同様である)。
調光層30は、例えば、電流または電界の作用によって有色の非透明状態(遮光状態)と透明状態(非遮光状態)との間で可逆的に変化可能な材料から形成されている。調光層30としては、例えば、エレクトクロミック(EC)調光層、高分子分散型液晶(PDLC:polymer dispersed liquid crystal)を含む調光層、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:polymer network liquid crystal)を含む調光層、および、SPD(suspended particle device)調光層が挙げられる。
EC調光層は、EC材料から形成される。EC材料は、電気化学的酸化還元により、有色の非透明状態(遮光状態)と透明状態(非遮光状態)との間で可逆的に変化可能な材料である。EC材料としては、無機EC材料および有機EC材料が挙げられる。無機EC材料としては、例えば、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化ロジウム、および窒化インジウムが挙げられる。有機EC材料としては、例えば、ポリアニリン、ビオロゲン、およびポリオキソタングステートが挙げられる。
高分子分散型液晶は、高分子内において液晶が相分離した構造を有する。高分子ネットワーク型液晶は、高分子ネットワーク中に液晶が分散された構造を有し、高分子ネットワーク中の液晶は、連続相を形成している。これらにおいて、液晶化合物としては、例えば、ネマティック型液晶化合物、スメクティック型液晶化合物、および、コレステリック型液晶化合物が挙げられる。ネマティック型液晶化合物としては、例えば、ビフェニル系化合物、フェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルベンゼン系化合物、アゾキシベンゼン系化合物、アゾベンゼン系化合物、アゾメチン系化合物、ターフェニル系化合物、ビフェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルビフェニル系化合物、フェニルピリジン系化合物、シクロヘキシルピリミジン系化合物、および、コレステロール系化合物が挙げられる。
調光層30の厚さは、調光フィルムXにおいて、非透明状態と透明状態との間で可視光透過率の大きな差を確保する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。調光層30の厚さは、調光フィルムXの薄型化および透明状態での高透過性の確保の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下である。調光層30の厚さは、調光フィルムXにおける上記の可視光透過率差と上記の薄型化および高透過性との両立の観点から、好ましくは1~200μm、より好ましくは5~100μm、更に好ましくは10~80μmである。
調光フィルムXにおいて、基材フィルム50と電極層40とは、電極付き基材フィルムY2を形成する。
基材フィルム50は、本実施形態では、樹脂フィルム51と、硬化樹脂層52とを、厚さ方向Hに順に備える。硬化樹脂層52は、樹脂フィルム51に接する。硬化樹脂層52は、基材フィルム50の第1面50aを形成する。
樹脂フィルム51は、調光フィルムXの強度を確保する基材である。また、樹脂フィルム51は、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。樹脂フィルム51の材料としては、例えば、樹脂フィルム11の材料として上記した材料が挙げられる。樹脂フィルム51における硬化樹脂層52側の表面は、表面改質処理されていてもよい。樹脂フィルム51の好ましい厚さおよび好ましい可視光透過率については、樹脂フィルム11に関して上述した好ましい厚さおよび好ましい可視光透過率と同様である。
硬化樹脂層52は、本実施形態では、調光フィルムXの光学特性を良化するための光学調整層(屈折率調整層)である。硬化樹脂層52は、透明導電層形成工程において、樹脂フィルム51から発生する水分や有機ガスを遮断する機能を有してもよい。硬化樹脂層52は、本実施形態では、第3硬化型樹脂組成物の硬化物である。第3硬化型樹脂組成物は、樹脂を含有する。第3硬化型樹脂組成物の樹脂としては、例えば、第1樹脂組成物に関して上記した樹脂が挙げられる。また、第3硬化型樹脂組成物は、紫外線硬化型の樹脂組成物であってもよいし、熱硬化型の樹脂組成物であってもよい。
硬化樹脂層52の厚さは、調光フィルムXの光透過特性を良化する観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、一層好ましくは30nm以上である。硬化樹脂層52の厚さは、調光フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは1000nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、一層好ましくは40nm以下である。硬化樹脂層52の厚さは、調光フィルムXの光透過特性と薄型化との両立の観点から、好ましくは5~1000nm、より好ましくは10~100nm、更に好ましくは20~50nm、一層好ましくは30~40nmである。
基材フィルム50は、基材フィルム10に関して上述したのと同様に、樹脂フィルム51に対して硬化樹脂層52とは反対側に他の硬化樹脂層(例えば、ハードコート層およびアンチブロッキング層)を有してもよい。図1では、基材フィルム50における他の硬化樹脂層を、硬化樹脂層53として仮想線で示す。
基材フィルム50の可視光透過率は、調光フィルムの透明状態時に求められる透明性を調光フィルムXにおいて確保する観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。基材フィルム50の可視光透過率は、例えば100%以下である。
基材フィルム50は、好ましくは、近赤外線吸収層および/または近赤外線反射層を有する(各層は図示略)。
基材フィルム50において、近赤外線吸収層は、樹脂フィルム51と硬化樹脂層52との間に配置されてもよいし、樹脂フィルム51に対して硬化樹脂層52とは反対側に配置されてもよい。樹脂フィルム51が、近赤外線吸収層であってもよいし、近赤外線吸収層を含む多層構造を有してもよい。近赤外線吸収層は、例えば、近赤外線吸収剤と、バインダー樹脂とを含む。近赤外線吸収剤としては、例えば、基材フィルム10に関して上記した近赤外線吸収剤が挙げられる。バインダー樹脂の材料としては、例えば、樹脂フィルム11に関して上記した材料が挙げられる。
基材フィルム50において、近赤外線反射層は、樹脂フィルム51と硬化樹脂層52との間に配置されてもよいし、樹脂フィルム51に対して硬化樹脂層52とは反対側に配置されてもよい。樹脂フィルム51が、近赤外線反射層であってもよいし、近赤外線反射層を含む多層構造を有してもよい。近赤外線反射層としては、例えば、基材フィルム10に関して上記した近赤外線反射層が挙げられる。
電極層40は、光透過性と導電性とを兼ね備える層である。電極層40は、透明導電材料から形成されている。すなわち、電極層40は透明導電層である。透明導電材料としては、例えば、インジウム含有導電性酸化物およびアンチモン含有導電性酸化物が挙げられる。インジウム含有導電性酸化物としては、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、およびインジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)が挙げられる。アンチモン含有導電性酸化物としては、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。高い透明性と良好な電気伝導性とを実現する観点からは、透明導電材料は、好ましくはインジウム含有導電性酸化物であり、より好ましくはITOである。すなわち、電極層40は、好ましくはインジウム含有導電性酸化物層であり、より好ましくはITO層である。ITOは、InおよびSn以外の金属または半金属を、InおよびSnのそれぞれの含有量より少ない量で含有してもよい。
電極層40がITOから形成される場合、ITOにおける酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の合計含有量に対する酸化スズの含有量の割合(酸化スズ割合)は、後述の結晶化工程(図4C)にて透明導電層中の結晶粒の成長を適度に抑制して、電極層40のキャリア数を確保する観点から、好ましくは11質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは12.5質量%以上である。電極層40での酸化スズ割合は、電極層40の低抵抗化の観点から、好ましくは18質量以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは14質量%以下である。電極層40での酸化スズ割合は、上記のキャリア数の確保と上記の低抵抗化との両立の観点から、好ましくは11~18質量%、より好ましくは12~16質量%、更に好ましくは12.5~14質量%である。
電極層40は、好ましくは結晶質層である。電極層40が結晶質層であることは、電極層40の低抵抗化の観点から好ましく、また、電極層40および調光フィルムXにおいて良好な赤外線反射特性を実現するのに好ましい。
電極層40(結晶質層)の面方向における平均結晶粒径は、電極層40のキャリア数(自由電子数)を確保する観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは270nm以下、更に好ましくは240nm以下、一層好ましくは220nm以下である(電極層40において、結晶粒が小さいほど、粒界の合計長さが増大し、キャリア数が増大する)。電極層40の面方向における平均結晶粒径は、電極層40の耐屈曲性(屈曲時の電極層40の割れの抑制)を確保する観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、更に好ましくは180nm以上、一層好ましくは200nm以上である。電極層40の面方向における平均結晶粒径は、電極層40のキャリア数の確保と耐屈曲性の確保との両立の観点から、好ましくは100~300nm、より好ましくは150~270nm、更に好ましくは180~240nm、一層好ましくは200~220nmである。電極層40の厚さ方向Hにおける基材フィルム50からの距離にかかわらず、電極層40における平均結晶粒径は、上記の範囲をとるのが好ましい。電極層40の平均結晶粒径の調整方法については、電極層20の平均結晶粒径の調整方法として上記したのと同様である。
電極層40は、好ましくは、厚さ方向Hにおいて複数の結晶粒を含む粒子積層領域を有する。粒子積層領域における、厚さ方向Hの粒子数は、2、3または4以上である。図3には、電極層40が、厚さ方向Hにおいて2つの結晶粒41を含む粒子積層領域を有する場合を、例示的に示す。電極層40が粒子積層領域を有することは、電極層40において、粒界Lの長さ(合計長さ)を確保して、キャリア数を確保するのに適する。
電極層40の比抵抗は、電極層40のキャリア数(自由電子数)を確保する観点から、好ましくは2.5×10-4Ω・cm以下、より好ましくは2.2×10-4Ω・cm以下、更に好ましくは2.0×10-4Ω・cm以下、一層好ましくは1.8×10-4Ω・cm以下である。電極層40の比抵抗が低いことは、電極層40の低抵抗化の観点からも好ましい。電極層40の比抵抗は、結晶化工程での透明導電層(この層から電極層40が形成される)の良好な結晶化速度を実現する観点から、好ましくは0.5×10-4Ω・cm以上、より好ましくは1.0×10-4Ω・cm以上、更に好ましくは1.3×10-4Ω・cm以上、一層好ましくは1.5×10-4Ω・cm以上である。電極層40の比抵抗は、電極層40のキャリア数の確保と結晶化速度との両立の観点から、好ましくは0.5×10-4~2.5×10-4Ω・cm、より好ましくは1.0×10-4~2.2×10-4Ω・cm、更に好ましくは1.3×10-4~2.0×10-4Ω・cm、一層好ましくは1.5×10-4~1.8×10-4Ω・cmである。電極層40の比抵抗の調整方法については、電極層20の比抵抗の調整方法として上記したのと同様である。
電極層40の平面視(面方向)におけるキャリア数(自由電子数)は、電極層40での遮熱性確保の観点から、好ましくは10×1015cm-2以上、より好ましくは12×1015cm-2以上、更に好ましくは14×1015cm-2以上、一層好ましくは14.5×1015cm-2以上である。電極層40の平面視におけるキャリア数は、10×1015cm-2未満であってもよい。電極層40の平面視におけるキャリア数(自由電子数)は、電極層40の可視光透過率を確保する観点から、好ましくは100×1015cm-2以下、より好ましくは60×1015cm-2以下、更に好ましくは40×1015cm-2以下、一層好ましくは20×1015cm-2以下である。電極層40のキャリア数は、電極層40の遮熱性確保と可視光透過率との両立の観点から、好ましくは10×1015~100×1015cm-2、より好ましくは12×1015~60×1015cm-2、更に好ましくは14×1015~40×1015cm-2、一層好ましくは14.5×1015~20×1015cm-2である。電極層40のキャリア数の調整方法については、電極層20のキャリア数の調整方法として上記したのと同様である。
電極層40の厚さは、電極層40のキャリア数を確保する観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上、一層好ましくは120nm以上である。電極層40が厚いことは、電極層40の低抵抗化の観点からも好ましい。電極層40の厚さは、電極層40の耐屈曲性(屈曲時の電極層40の割れの抑制)を確保する観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは170nm以下、一層好ましくは140nm以下である。電極層40の厚さは、電極層40のキャリア数、低抵抗化および耐屈曲性の観点から、好ましくは50~300nm、より好ましくは80~200nm、一層好ましくは100~170nm、更に好ましくは120~140nmである。
電極層40の可視光透過率は、調光フィルムの透明状態に求められる透明性を調光フィルムXにおいて確保する観点から、例えば50%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。また、電極層40の可視光透過率は、例えば100%以下である。
電極層40における希ガス原子の含有割合は、電極層40の低抵抗化(低比抵抗化)の観点から、好ましくは0.3原子%以下、より好ましくは0.2原子%以下、更に好ましくは0.1原子%以下であり、また、例えば0.0001原子%以上である。希ガス原子としては、例えば、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、およびキセノン(Xe)が挙げられる。希ガス原子は、例えば、後述の透明導電層形成工程(図4B)で用いられるスパッタリングガスに由来する(スパッタリングガスが混入したものである)。
調光フィルムXの可視光透過率(透明状態時)は、調光フィルムXの透明性を確保する観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。基材フィルム10の可視光透過率は、例えば100%以下である。
調光フィルムXの、波長800nm~1300nmでの平均透過率は、調光フィルムXにおいて、太陽光に対する良好な遮熱性を確保する観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。調光フィルムXの同平均透過率は、例えば0%以上であり、好ましくは10%以上である。調光フィルムXは、好ましくは、有色状態または透明状態にてこのような平均透過率(波長800nm~1300nm)の値をとり、より好ましくは、有色状態および透明状態の両状態にてこのような平均透過率(波長800nm~1300nm)の値をとる。
調光フィルムXは、例えば以下のように製造される。
まず、図4Aに示すように、基材フィルム10を用意する。基材フィルム10は、樹脂フィルム11上に硬化樹脂層12を形成することによって作製できる。硬化樹脂層12は、樹脂フィルム11上に、上記の第1樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を硬化させることによって形成できる。第1樹脂組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合には、加熱によって前記塗膜を硬化させる。第1樹脂組成物が紫外線化型樹脂を含有する場合には、紫外線照射によって前記塗膜を硬化させる。樹脂フィルム11上に形成された硬化樹脂層12の露出表面は、必要に応じて、表面改質処理される。表面改質処理としてプラズマ処理する場合、不活性ガスとして例えばアルゴンガスを用いる。また、プラズマ処理における放電電力は、例えば10W以上であり、また、例えば5000W以下である。また、樹脂フィルム11における硬化樹脂層12とは反対側には、上記の他の硬化樹脂層13(図1)を形成してもよい。
次に、図4Bに示すように、基材フィルム10上に、非晶質の透明導電層20’を形成する(透明導電層形成工程)。具体的には、スパッタリング法により、基材フィルム10における硬化樹脂層12上に透明導電材料を成膜して透明導電層20’を形成する。
スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置を使用するのが好ましい。調光フィルムXの製造において、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置を使用する場合、長尺の基材フィルム10を、装置が備える繰出しロールから巻取りロールまで走行させつつ、当該基材フィルム10上に材料を成膜して透明導電層20’を形成する。また、当該スパッタリング法では、一つの成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよいし、基材フィルム10の走行経路に沿って順に配置された複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよい。
スパッタリング法では、具体的には、スパッタ成膜装置が備える成膜室内に真空条件下でスパッタリングガス(不活性ガス)を導入しつつ、成膜室内のカソード上に配置されたターゲットにマイナスの電圧を印加する。これにより、グロー放電を発生させてガス原子をイオン化し、当該ガスイオンを高速でターゲット表面に衝突させ、ターゲット表面からターゲット材料を弾き出し、弾き出たターゲット材料を基材フィルム10上に堆積させる。ターゲットの材料としては、例えば、電極層20に関して上述した導電性酸化物の焼結体が用いられる。スパッタリングガスとしては、例えば、希ガス原子が挙げられる。希ガス原子としては、例えば、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、およびキセノン(Xe)が挙げられる。
スパッタリング法は、好ましくは、反応性スパッタリング法である。反応性スパッタリング法では、例えば、スパッタリングガス(不活性ガス)と反応性ガスとしての酸素が、成膜室内に導入される。反応性スパッタリング法において成膜室に導入されるスパッタリングガスおよび酸素の合計導入量に対する、酸素の導入量の割合は、電極層20のキャリア数を確保する観点から、好ましくは1.5流量%以上、より好ましくは2.0流量%以上、更に好ましくは2.2流量%以上である。酸素導入量の割合は、電極層20の良好な結晶性を確保する観点から、好ましくは3.2流量%以下、より好ましくは2.8流量%以下、更に好ましくは2.6流量%以下である。酸素導入量の割合は、電極層20のキャリア数と結晶性との両立の観点から、好ましくは1.5~3.2流量%、より好ましくは2.0~2.8流量%、更に好ましくは2.2~2.6流量%である。
スパッタリング法による成膜(スパッタ成膜)中の成膜室内の気圧は、例えば0.02Pa、好ましくは0.1Pa以上、より好ましくは0.2Pa以上であり、また、例えば1Pa以下、好ましくは0.7Pa以下、より好ましくは0.5Pa以下である。
スパッタリング法における成膜温度(スパッタ成膜中の基材フィルム10の温度)は、次の結晶化工程で結晶成長できる非晶質の透明導電層を適切に形成する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは10℃以下、一層好ましくは0℃以下、より一層好ましくは-5℃以下である。成膜温度は、例えば、-30℃以上または-20℃以上である。
ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、例えば、DC電源、AC電源、MF電源、およびRF電源が挙げられる。電源としては、DC電源とRF電源とを併用してもよい。スパッタ成膜中の放電電圧の絶対値は、例えば50V以上であり、また、例えば500V以下である。ターゲット上の水平磁場強度は、例えば10mT以上であり、また、例えば100mT以下である。
次に、図4Cに示すように、基材フィルム10上の透明導電層20’(図4B)を加熱によって結晶化させて、電極層20(結晶質の透明導電層)を形成する(結晶化工程)。これにより、電極付き基材フィルムY1が作製される。加熱の手段としては、例えば、赤外線ヒーターおよびオーブン(熱媒加熱式オーブン,熱風加熱式オーブン)が挙げられる。加熱温度は、高い結晶化速度を確保する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。加熱温度は、基材フィルム10への加熱の影響を抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは150℃以下である。加熱時間は、例えば600分未満、好ましくは120分未満、より好ましくは90分以下、更に好ましくは60分以下であり、また、例えば1分以上、好ましくは5分以上である。
次に、図4Dに示すように、電極層20上に調光層30を形成する。調光層30を形成する材料として無機EC材料を用いる場合、例えば、ドライコーティング法によって無機EC材料を電極層20上に成膜する。ドライコーティング法としては、スパッタリング法が好ましい。調光層30を形成する材料として有機EC材料を用いる場合、例えば、ウェットコーティング法によって有機EC材料を電極層20上に成膜する。
一方、電極付き基材フィルムY2(基材フィルム50,電極層40)を作製する。具体的には、電極付き基材フィルムY1の作製方法(図4A~図4C)と同様である。
次に、図5Aおよび図5Bに示すように、調光層30を伴う電極付き基材フィルムY1と電極付き基材フィルムY2とを一体化させる。具体的には、電極付き基材フィルムY1,Y2によって調光層30が挟まれるように、電極付き基材フィルムY1,Y2および調光層30を一体化させる。
以上のようにして、調光フィルムXを製造できる。調光フィルムXにおいては、電極層20,40間の電圧のオン・オフにより、調光層30が、非透明状態(遮光状態)と透明状態(非遮光状態)との間で切り替えられる。このような調光フィルムXは、例えば、建物および乗り物等の窓ガラスに組付けられる調光フィルムである。調光フィルムXが貼り合わされた窓ガラスでは、電極層20,40間の電圧のオン・オフにより、当該調光フィルムX付き窓ガラスに対する可視光などの光の透過率が、切り替えられる。
調光フィルムXは、上記のように、電極層20が、インジウム含有導電性酸化物層であって、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有し、面方向における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層であり、且つ、厚さ方向において複数の結晶粒を含む粒子積層領域を有する。このような調光フィルムXは、電極層20の平面視における単位面積あたりの自由電子数(キャリア数)を確保するのに適する。電極層20における当該自由電子数が多いほど、太陽光中の熱線に対する電極層20の反射性は高く、従って、調光フィルムXの遮熱性は高い。したがって、調光フィルムXは、太陽光に対する良好な遮熱性を実現するのに適する。このような調光フィルムXは、屋外向け調光フィルムとして好適である。屋外向け調光フィルムとしては、例えば、自家用車等の車のサンルーフ用の調光フィルム、家屋およびビル等の建物の窓用の調光フィルムが挙げられる。
調光フィルムXは、上記のように、好ましくは、電極層40が、インジウム含有導電性酸化物層であって、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有し、平面視における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層であり、且つ、厚さ方向において複数の結晶粒を含む粒子積層領域を有する。調光フィルムXが電極層20に加えて電極層40を備えることは、調光フィルムにおいて、太陽光に対する良好な遮熱性を実現するのに役立つ。
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
〔実施例1〕
まず、長尺の樹脂フィルムとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ100μm,三菱ケミカル社製)のロールを用意した。次に、PETフィルムの一方面(第1面)に、熱硬化型の樹脂組成物C1を塗布して塗膜を形成した。樹脂組成物C1は、100質量部のメラミン樹脂と、100質量部のアルキド樹脂と、50質量部の有機シラン縮合物とを含む。次に、PETフィルム上の塗膜を、加熱して熱硬化させた。加熱温度は185℃とした。加熱時間は1分とした。これにより、厚さ35nmの光学調整層としての第1硬化樹脂層を形成した。次に、PETフィルムの他方面(第2面)に、紫外線硬化型の樹脂組成物C2を塗布して塗膜を形成した。次に、紫外線照射によって当該塗膜を硬化させた。これにより、厚さ2μmのハードコート(HC)層としての第2硬化樹脂層を形成した。以上のようにして、基材フィルム(第1硬化樹脂層/基材フィルム/第2硬化樹脂層)を作製した。
次に、反応性スパッタリング法により、基材フィルムにおける第1硬化樹脂層上に、厚さ125nmの非晶質の透明導電層を形成した(透明導電層形成工程)。本工程では、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタ成膜装置)を使用した。同装置は、ロールトゥロール方式でワークフィルムを走行させつつ成膜プロセスを実施できる成膜室を備える。本工程におけるスパッタ成膜の条件は、次のとおりである。
スパッタ成膜においては、成膜室内の到達真空度が0.5×10-4Paに至るまでスパッタ成膜装置内を真空排気した後、成膜室内に、スパッタリングガス(不活性ガス)としてのアルゴン(Ar)と、反応性ガスとしての酸素とを導入し、成膜室内の気圧を0.3Paとした。成膜室に導入されるアルゴンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は2.4流量%とした。また、ターゲット(第1ターゲット)としては、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ割合が12.5質量%のITO)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。成膜温度(透明導電層が積層される基材フィルムの温度)は-8℃とした。形成された透明導電層(非晶質)の比抵抗は、6.5×10-4Ω・cmであった。
次に、非晶質の透明導電層を、熱風オーブン内での加熱によって結晶化させた(結晶化工程)。加熱温度は150℃とした。加熱時間は2時間とした。これにより、厚さ125nmの結晶質の透明導電層を電極層として形成した。
以上のようにして、電極層付フィルムのロールを作製した。この電極層付フィルムは、基材フィルム(第2硬化樹脂層/樹脂フィルム/第1硬化樹脂層)と、基材フィルム上の電極層とを備える。
次に、電極層付フィルムのロールから、2枚の電極層付フィルムを切り出した。次に、一方の電極層付フィルム(第1の電極層付フィルム)における電極層上に、粘着剤(品名「LUCIACS CS9861UA」,日東電工社製)を塗付することにより、疑似調光層として厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次に、他方の電極層付フィルム(第2の電極層付フィルム)の電極層側を粘着剤層に貼り合わせた。すなわち、2枚の電極層付フィルムを、粘着剤層を介して接合した。
以上のようにして、実施例1の積層フィルムを作製した。この積層フィルムは、調光フィルム類似の積層構成を有する疑似調光フィルムである(このフィルムは、疑似的な形態を有するフィルムであり、調光機能を有しない)。実施例1の積層フィルムは、具体的には、第1の基材フィルムと、厚さ125nmの第1の電極層と、疑似調光層と、厚さ125nmの第2の電極層と、第2の基材フィルムとを、厚さ方向にこの順で有する。
〔比較例1〕
次のこと以外は実施例1の積層フィルムと同様にして、比較例1の積層フィルムを作製した。
透明導電層形成工程の反応性スパッタリング法において、第1ターゲットに代えて第2ターゲットを用い、成膜室に導入されるアルゴンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合を3.4流量%とした。第2ターゲットは、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体であって、酸化スズ割合が10.0質量%のITOである。また、結晶化工程を実施しなかった。
〔比較例2〕
次のこと以外は実施例1の積層フィルムと同様にして、比較例2の積層フィルムを作製した。
透明導電層形成工程において、反応性スパッタリング法により、基材フィルムにおける第1硬化樹脂層上に、非晶質の透明導電層(厚さ24nm)を形成した。同工程では、第1ターゲットに代えて第2ターゲット(酸化スズ割合が10.0質量%のITO焼結体)を用い、且つ、成膜温度を-8℃に代えて20℃とした。
比較例2の積層フィルムは、第1の基材フィルムと、厚さ24nmの第1の電極層と、疑似調光層と、厚さ24nmの第2の電極層と、第2の基材フィルムとを、厚さ方向にこの順で有する。
〈電極層の厚さ〉
実施例および比較例の各積層フィルムの作製過程で得られた電極層付フィルムの電極層の厚さを、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)での観察(FE-TEM観察)により測定した。具体的には、まず、FIB(Focused Ion Beam)加工により、実施例および比較例における各電極層の断面観察用サンプル(第1サンプル)を作製した(FIBマイクロサンプリング法)。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(品名「FB2200」,Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、第1サンプルにおける電極層の断面をFE-TEMによって観察し、当該観察画像において電極層の厚さを測定した。同観察では、FE-TEM装置(品名「JEM-2800」,JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。また、実施例1の積層フィルムの作製過程で得られた電極層付フィルムの電極層のFE-TEM観察では、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域(粒子積層領域)を確認できた。比較例1の電極層は、上記のように結晶化工程を経ておらず、非晶質層であった。具体的には、比較例1の積層フィルムの作製過程で得られた電極層付フィルムの電極層のFE-TEM観察では、同電極が非晶質層であることが確認され、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域(粒子積層領域)は確認できなかった。また、比較例2の積層フィルムの作製過程で得られた電極層付フィルムの電極層のFE-TEM観察では、粒子積層領域を確認できなかった。
〈比抵抗〉
実施例および比較例の各積層フィルムの作製過程で得られた電極層付フィルムの電極層(透明導電層)について、比抵抗を調べた。具体的には、まず、JIS K7194(1994年)に準拠した四端子法により、電極層の表面抵抗を測定した。次に、表面抵抗値と電極層の厚さとを乗じることにより、電極層の比抵抗(Ω・cm)を求めた。その結果を表1に示す。
〈平均結晶粒径〉
まず、透過電子顕微鏡(TEM)による観察用のサンプルを作製した。具体的には、電極層からウルトラミクロトーム(Leica製)によって薄片を切り出した。このとき、ウルトラミクロトームによる切断面が電極層の面方向と略平行となるように薄片を切り出した。次に、この薄片について、透過型電子顕微鏡(品名「HT7820」,日立ハイテクノロジーズ社製)によって観察(平面視観察)および撮影を実施し、TEM観察画像を得た。観察の倍率は、50000倍とした。次に、TEM観察画像において、1.5μm×1.5μmの正方形の領域を任意に選定した後、この領域内に含まれる複数の結晶粒を特定し、結晶粒ごとに、結晶粒の最大長さを求めた。この最大長さを、結晶粒の粒径とした。次に、領域内の複数の結晶粒の粒径の平均値を求めた。その値を平均結晶粒径として表1に示す。
〈キャリア数〉
実施例および比較例の各積層フィルムの作製過程で得られた電極層付フィルムの電極層のキャリア数(cm-2)を、ホール効果測定装置(品名「HL5500PC」,バイオラッド社製)によって測定した。測定結果を表1に示す。
〈透過率,反射率〉
実施例および比較例の各積層フィルムについて、分光光度計U-4100(HITACHI社製)により、波長300nm~2500nmの範囲における日射透過率(Te)および日射反射率(Re)を測定した。本測定では、測定ピッチを5nmとした。測定結果を表1に示す。日射とは、波長300nm~2500nmの範囲の放射をいう。日射透過率(Te)は、分光透過率と分光日射照度とを式中に含む所定の積和計算から、分光光度計によって算出される。日射反射率(Re)は、分光反射率と分光日射照度とを式中に含む所定の積和計算から、分光光度計によって算出される。
〈日射熱取得率〉
実施例および比較例の各積層フィルムについて、日射熱取得率を求めた。具体的には、積層フィルムの日射熱取得率を、ISO 13837:2021に基づき、下記の式(1)~(3)によって求めた。式(1)において、Ttsは、日射熱取得率を表し、遮熱性の指標となる。
Tts = Te + Qi (1)
Qi = Ae ×{hi/(hi + he)} (2)
Ae = 100- Te - Re (3)
実施例および比較例の各積層フィルムにとり、式(1)~(3)については以下のとおりである。Ttsは、試料に(積層フィルム)に対して照射される光(照射光)の総エネルギーを100%とした場合の、当該試料を通過するエネルギーの合計の割合(%)を示す。Teは、試料に対する照射光のうち当該試料を透過する光(透過光)のエネルギーを、割合で示す。Teとして、上記測定で得られた日射透過率を用いた。Qiは、試料を通過する二次熱流速を表し、式(2)によって求められる。この値が小さいほど、試料は熱を伝えにくく、断熱性が高いことを意味する。式(2)において、Aeは、試料に対する照射光のエネルギーのうち当該試料によって吸収されるエネルギーを割合で示し、式(3)によって求められる。hiは、試料における、光通過方向と同方向への熱の伝わりやすさを示すパラメータである。hiとして8W/(m・K)を用いた。heは、試料における、光通過方向とは逆の方向への熱の伝わりやすさを示すパラメータである。heとして21W/(m・K)を用いた。式(3)において、Reは、試料に対する照射光のうち当該試料にて反射される光(反射光)のエネルギーを、割合で示す。Reとして、上記測定で得られた日射反射率を用いた。
X 調光フィルム
H 厚さ方向
Y1,Y2 電極付き基材フィルム
10,50 基材フィルム
11,51 樹脂フィルム
12,52 硬化樹脂層
20 電極層(第1電極層)
30 調光層
40 電極層(第2電極層)

Claims (10)

  1. 基材フィルムと、第1電極層と、調光層と、第2電極層とを厚さ方向にこの順で備える調光フィルムであって、
    前記第1電極層が、インジウム含有導電性酸化物層であり、
    前記第1電極層が、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有し、
    前記第1電極層が、面方向における平均結晶粒径が、100nm以上、300nm以下の結晶質層であり、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域を有する、調光フィルム。
  2. 前記インジウム含有導電性酸化物層が、酸化スズ割合11質量%以上のインジウムスズ複合酸化物層である、請求項1に記載の調光フィルム。
  3. 前記第2電極層が、インジウム含有導電性酸化物層である、請求項1に記載の調光フィルム。
  4. 前記第2電極層、酸化スズ割合11質量%以上のインジウムスズ複合酸化物である、請求項3に記載の調光フィルム。
  5. 前記第2電極層が、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有する、請求項1に記載の調光フィルム。
  6. 前記第2電極層が、面方向における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層である、
    請求項1に記載の調光フィルム。
  7. 前記第2電極層が、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域を有する、請求項6に記載の調光フィルム。
  8. 前記基材フィルムが、近赤外線吸収層および/または近赤外線反射層を有する、請求項1に記載の調光フィルム。
  9. 波長800nm~1300nmでの平均透過率が50%以下である、請求項1から8のいずれか一つに記載の調光フィルム。
  10. 基材フィルムと、第1電極層と、調光層と、第2電極層とを厚さ方向にこの順で備える調光フィルムであって、
    前記第1電極層が、インジウム含有導電性酸化物層であり、
    前記インジウム含有導電性酸化物層が、酸化スズ割合11質量%以上18質量%以下のインジウムスズ複合酸化物層であり、
    前記第1電極層が、2.5×10-4Ω・cm以下の比抵抗を有し、
    前記第1電極層が、面方向における平均結晶粒径が300nm以下の結晶質層であり、厚さ方向において複数の結晶粒を含む領域を有する、調光フィルム。
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