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JP7439645B2 - 化学強化ガラスの製造方法および管理方法 - Google Patents

化学強化ガラスの製造方法および管理方法 Download PDF

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JP7439645B2 JP2020092689A JP2020092689A JP7439645B2 JP 7439645 B2 JP7439645 B2 JP 7439645B2 JP 2020092689 A JP2020092689 A JP 2020092689A JP 2020092689 A JP2020092689 A JP 2020092689A JP 7439645 B2 JP7439645 B2 JP 7439645B2
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Description

本発明は、化学強化ガラスの製造方法および管理方法に関する。
携帯端末のカバーガラス等には、化学強化ガラスが用いられている。化学強化ガラスは、ガラスを硝酸ナトリウムなどの溶融塩に接触させて、ガラス中に含まれるアルカリ金属イオンと、溶融塩に含まれるよりイオン半径の大きいアルカリ金属イオンとの間でイオン交換を生じさせ、ガラスの表面部分に圧縮応力層を形成したものである。化学強化ガラスの強度は、ガラス表面からの深さを変数とする圧縮応力値で表される応力特性に強く依存する。したがって、化学強化ガラスの製造においては、化学強化ガラスの応力特性を適正に管理することが求められている。
化学強化ガラスの応力特性を非破壊で測定する方法として、例えば、特許文献1には、強化ガラスの表面応力を測定する方法(以下、FSMとも略す。)が開示されている。また、特許文献2には、レーザ光の偏光位相の変化に基づき応力特性を測定する方法(以下、SLPとも略す。)が開示されている。
国際公開第2017/115811号 国際公開第2018/056121号
FSMやSLPでは化学強化ガラスにおける応力特性の測定精度が低く、品質管理が難しい場合がある。例えば、FSMはイオン交換によりガラス組成の変化により生じる屈折率の変化から応力特性を測定することから、圧縮応力層深さが浅い場合や、イオン交換しても屈折率が上がるように変化しにくいガラスであると精度良く測定できない。また、SLPは、レーザ光の偏光位相の変化に基づき応力特性を測定することから、圧縮応力層深さが浅い場合は精度良く測定できない。さらに、工業的規模の化学強化ガラスの製造においては、製造条件を直接的に管理しにくいという問題がある。
したがって、本発明は上記事情に鑑み、化学強化ガラスの応力特性を適正に管理し得る製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化し、第2のガラスが化学強化された化学強化ガラスの応力特性を確認することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)~(3)を含む、化学強化ガラスの製造方法に関する。
(1)第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化して、
第1のガラスが化学強化された第1の化学強化ガラス及び第2のガラスが化学強化された第2の化学強化ガラスを得ること。
(2)前記第2の化学強化ガラスの応力特性を測定すること。
(3)前記第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であるか否か確認すること。
本発明は、以下の(I)~(III)を含む、化学強化ガラスの応力特性を管理する方法に関する。
(I)第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化して、
前記第1のガラスが化学強化された第1の化学強化ガラス及び前記第2のガラスが化学強化された第2の化学強化ガラスを得ること。
(II)前記第2の化学強化ガラスの応力特性を測定すること。
(III)前記第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であることを確認すること。
本発明の化学強化ガラスの製造方法によれば、応力特性を測定しにくい化学強化ガラスについての応力特性を適正に管理し得る。
図1は、本発明の一実施態様を示すフロー図である。 図2は、本発明の一実施態様を示すフロー図である。 図3は、本発明の一実施態様を示すフロー図である。 図4は、本発明の一実施態様を示すフロー図である。
1.化学強化ガラスの製造方法
本発明の化学強化ガラスの製造方法(以下、本発明の製造方法とも略す。)は、以下の(1)~(3)の工程を含む。
(1)第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化して、前記第1のガラスが化学強化された第1の化学強化ガラス及び前記第2のガラスが化学強化された第2の化学強化ガラスを得ること。
(2)前記第2の化学強化ガラスの応力特性を測定すること。
(3)前記第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であるか否かを確認すること。
図1は本実施態様を示すフロー図である。以下、第2のガラスが第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度が速いガラスである態様を第1実施態様、第2のガラスが第1のガラスよりNa-Li置換速度が速いガラスである態様を第2実施態様として、各工程について説明する。
[第1実施態様]
<工程(1):化学強化工程>
工程(1)は、第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化して化学強化ガラスを得る工程である。工程(1)の化学強化の条件(以下、化学強化条件とも略す)により、第1のガラスを化学強化したガラスを第1の化学強化ガラスとし、第2のガラスを化学強化したガラスを第2の化学強化ガラスとする。
第1のガラス及び第2のガラスの母材となるガラスは、イオン交換可能なガラスであればよく、非晶質ガラス又は結晶化ガラスのいずれであってもよい。第1のガラス及び第2のガラスの母材となるガラスは、例えば、所定の組成のガラスが得られるように、ガラス原料を適宜調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。その後、バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷することで作製できる。またはブロック状に成形して徐冷した後に切断する方法で板状に成形してもよい。
板状に成形する方法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法及びダウンドロー法が挙げられる。特に、大型のガラス板を製造する場合は、フロート法が好ましい。また、フロート法以外の連続成形法、たとえば、フュージョン法及びダウンドロー法も好ましい。
成形して得られたガラスリボンを必要に応じて研削及び研磨処理して、ガラス板を形成する。なお、ガラス板を所定の形状及びサイズに切断し、または、ガラス板の面取り等を行う場合、後述する化学強化処理を施す前に、ガラス板の切断や面取りを行えば、化学強化処理によって端面にも圧縮応力層が形成されるため、好ましい。
形成したガラス板を化学強化処理した後、洗浄及び乾燥することにより、化学強化ガラスが得られる。化学強化処理は、大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、ナトリウムイオンまたはカリウムイオン)を含む金属塩(例えば、硝酸カリウム)の融液(溶融塩組成物)に浸漬する等の方法で、ガラスを金属塩に接触させ、ガラス中の小さなイオン半径の金属イオン(典型的には、リチウムイオンまたはナトリウムイオン)と金属塩中の大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、リチウムイオンに対してはナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、ナトリウムイオンに対してはカリウムイオン)とを置換させる処理である。
ガラス中のリチウムイオンを溶融塩中のナトリウムイオンと交換する「Na-Li置換」又はガラス中のナトリウムイオンを溶融塩中のカリウムイオンと交換する「K-Na置換」を利用する方法は、化学強化処理の速度が速い点、イオン交換により大きな圧縮応力を形成できる点等から好ましい。
化学強化処理の処理条件は、特に限定されず、ガラスの特性・組成や溶融塩組成物の種類、ならびに、最終的に得られる化学強化ガラスに所望される表面圧縮応力(CS)や圧縮応力層の深さ(DOL)等の化学強化特性などを考慮して、適切な条件を選択すればよい。また、本発明においては、化学強化処理を一回のみ行ってもよく、あるいは2以上の異なる条件で複数回の化学強化処理(多段強化)を行ってもよい。
化学強化処理の条件としては特に限定されるものではないが、例えば、360~600℃に加熱された硝酸カリウム等の溶融塩組成物中に、ガラス板を0.1~500時間浸漬することによって行うことができる。なお、溶融塩組成物の加熱温度としては、375~500℃が好ましく、また、溶融塩組成物中へのガラス板の浸漬時間は、0.3~200時間が好ましい。
化学強化処理を行うための溶融塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩及び塩化物などが挙げられる。このうち硝酸塩としては、例えば、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム及び硝酸銀などが挙げられる。硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム及び硫酸銀などが挙げられる。炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなどが挙げられる。塩化物としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム及び塩化銀などが挙げられる。これらの溶融塩は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の製造方法において、第1のガラスは応力特性の管理の対象となるガラスに該当し、第2のガラスは、モニター試料に該当する。すなわち、本発明の製造方法においては、第2のガラスをモニター試料として用い、第1のガラスと同時に化学強化して、得られた第2の化学強化ガラスの応力特性を指標として、第1の化学強化ガラスの応力特性を管理するものである。第2のガラスは、第1のガラスと同一の条件で化学強化した場合であっても、応力特性を高い精度で測定できるガラスであることが好ましい。
第2のガラスは、第1のガラスより、イオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである。ここで、K-Na置換速度とは、ガラス中のナトリウムイオンと、溶融塩組成物中のカリウムイオンとのイオン交換速度をいう。また、Na-Li置換速度とは、ガラス中のリチウムイオンと、溶融塩組成物中のナトリウムイオンとのイオン交換速度をいう。ガラスのイオン交換速度(以下、置換速度ともいう)は、化学強化条件と化学強化後のイオン深さから測定できる。
具体的には、拡散がフィックの法則(下記式)に基づき、下記のStep1~3により算出できる。
Figure 0007439645000001
上記式において、Dは拡散係数(単位:×10-12/分)、Cはイオン濃度(単位:mol%)、xはガラス表面からの深さ(μm)を示す。
〔Step1〕温度T(単位:℃)及び時間t(単位:分)の条件で強化した化学強化ガラ
スを用意する。
〔Step2〕Step1で用意した化学強化ガラスについて、深さ方向のイオン拡散プロファイルを測定する。
具体的には例えば、化学強化ガラスの切断面をEPMAやSIMSなどで組成比率を評価する。K-Na置換である場合はKイオン、またはNa-Li置換である場合はNaイオンの深さ方向のイオン深さプロファイルを測定する。
〔Step3〕測定したイオンプロファイルを下記式でFittingする。下記式において、C(x)は、ガラス表面からの深さx(μm)におけるイオン濃度である。
Figure 0007439645000002
前記式におけるDが温度T(単位:℃)における拡散係数(×10-12/分)であり、置換速度となる。
第2のガラスは、第1のガラスより、イオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いことにより、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標として、第1の化学強化ガラスの応力特性を管理し得る。
本発明の製造方法の第1実施態様は、工程(1)における化学強化においてガラス中のナトリウムイオンと溶融塩組成物中のカリウムイオンとのイオン交換(K-Na置換)が行われる態様である。第一の態様において、第2のガラスのK-Na置換速度は、第1のガラスのK-Na置換速度より速いことが好ましい。第1実施態様において、第2のガラスのK-Na置換速度は、第1のガラスのK-Na置換速度の1.1倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上、特に好ましくは4.0倍以上である。
第2のガラスのK-Na置換速度は、第1のガラスのK-Na置換速度の1.1倍以上であることにより、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標として、第1の化学強化ガラスの応力特性をより適正に管理し得る。また、第2のガラスのK-Na置換速度は、一般的には前記第1のガラスのK-Na置換速度の10000倍以下である。
なお、K-Na置換速度は、第一のガラスと第二のガラスを同一強化条件で強化し、圧縮応力層深さDOLの比で簡易的に評価してもよい。なお、DOLは拡散速度の平方根にほぼ比例するため、DOL比の二乗が置換速度の倍率に相当する。同様に、FSMで干渉縞の本数はDOLにほぼ比例するため、DOLの比で簡易的に評価することもできる場合もある。
本発明の製造方法の第1実施態様において、第1の化学強化ガラスとしては、例えばカリウムイオンの拡散層深さが好ましくは10μm以下であると応力特性を精度よく測定することは困難であることから、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標とする第1の化学強化ガラスの応力特性の管理が有用である。圧縮応力とバランスをとる引張応力を下げ、引張応力に起因する傷の進展を抑制する観点から、第1の化学強化ガラスのカリウムイオンの拡散層深さは、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下、特に好ましくは4μm以下、より更に好ましくは2μm以下である。また、典型的には1μm以上であることが好ましい。
化学強化ガラスのカリウムイオンの拡散層深さは、EPMAやSIMSにより測定できる。ここで、イオン拡散深さとはガラス表面からガラス中心に向かうイオン分布において、最大値と最小値の差を100%としたときに、最小値に対して最大値と最小値の差分の5%を加えた値より大きい値を取る深さとする。該当する値が2以上ある場合は、板厚中心に近い、ガラス表面からの深さが深い方とする。
本発明の製造方法の第1実施態様において、第2のガラスは、第2のガラス内のナトリウムイオンをカリウムイオンに置換することにより、屈折率が上昇するガラスであることが好ましい。上述したように、FSMでは、イオン交換しても屈折率が変化しないガラスは応力特性を精度良く測定することは困難である。本発明の製造方法の一実施態様においては、第2のガラスをイオン交換により屈折率が上昇するガラスとすることにより、第1のガラスがイオン交換により屈折率が変化しないガラスであっても、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標とすることで、第1の化学強化ガラスの応力特性を適正に管理し得る。
本発明の製造方法の第1実施態様において、第2のガラスの組成は、酸化物基準で、第1のガラスの組成より、NaOを好ましくは1mol%以上、より好ましくは2mol%以上、さらに好ましくは4mol%以上多く含有することが好ましい。第1のガラスの組成より、NaOを好ましくは1mol%以上多く含有することにより、イオン交換速度を速めることができるので、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標として、第1の化学強化ガラスの応力特性をより適正に管理し得る。
応力特性の測定精度を高める点から、第2のガラスの板厚は、0.2~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.3~2.0mm、さらに好ましくは0.4~1.0mmである。また、応力特性の測定精度を高める点から、第1のガラスの板厚は、0.3~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.4~2.0mm、さらに好ましくは0.5~1.0mmである。
本発明の製造方法の一実施態様において、第2のガラスとして、異なる組成を持つ2種類以上のガラスを用いることが好ましい。第2のガラスとして異なる組成を持つ2種類以上のガラスを用いることにより、第1の化学強化ガラスの応力特性の管理における精度を向上できる。また、第2のガラスとして異なる組成を持つ2種類以上のガラスを用いることにより、2種類以上の化学強化の条件を管理し得る。
本発明の製造方法の一実施態様において、第1の化学強化ガラスは、板厚0.7mmに換算した可視光透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは84%以上、さらに好ましくは86%以上である。また、第1の化学強化ガラスの板厚0.7mmに換算した可視光透過率は、典型的には、88%以上である。第2の化学強化ガラスは、板厚0.7mmに換算した可視光透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは84%以上、さらに好ましくは86%以上である。また、第2の化学強化ガラスの板厚0.7mmに換算した可視光透過率は、典型的には、88%以上である。
また、意匠性など(例:着色・AGガラス)により該可視光透過率が80%以下とすることが好ましい場合がある。その場合は、第1の化学強化ガラスとしては、例えば板厚0.7mmに換算した可視光透過率が好ましくは60%以下であるとSLP等の非破壊試験により応力特性を測定することが困難であることから、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標とする第1の化学強化ガラスの応力特性の管理が有用である。かかる観点から、該可視光透過率はより好ましくは40%以下、さらに好ましくは20%以下である。また典型的には、0.01%以上である。
本発明の製造方法の一実施態様において、第1の化学強化ガラスとしては、例えば光導波路効果を観測原理とする表面応力計で観察される干渉縞が好ましくは2本以下であるとFSM等の非破壊試験により応力特性を測定することが困難であることから、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標とする第1の化学強化ガラスの応力特性の管理が有用である。かかる観点から、第1の化学強化ガラスは該干渉縞が1本以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法の一実施態様において、第1の化学強化ガラスとしては、例えば屈折率が好ましくは1.40~1.62の範囲外であるとFSM等の非破壊試験により応力特性を測定することが困難であることから、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標とする第1の化学強化ガラスの応力特性の管理が有用である。かかる観点から、第1の化学強化ガラスは屈折率がより好ましくは1.4~1.7の範囲外である。
<工程(2):応力特性の測定工程>
工程(2)は、工程(1)で得られた第2の化学強化ガラスの応力特性を測定する工程である。応力特性としては、表面圧縮応力(CS)、圧縮応力層深さ(DOL)、板厚中心の引張応力(CT)、板厚、曲げ強度、クラック・イニシエーション・ロード、カリウムイオンの拡散層深さ、ナトリウムイオンの拡散層深さ等が挙げられる。第1の化学強化ガラスの応力特性の管理における精度を向上する点から、これらの中でも、CS、DOL及びCTから選ばれる少なくとも1つが好ましく、CS及びDOLが少なくとも含まれていることがより好ましく、CS、DOL及びCTが含まれていることがさらに好ましく、プロファイル全体が含まれていることが特に好ましい。
応力特性の測定方法は、従来公知の方法より適宜選択可能であり、特に限定されないが、例えば、ガラス板の断面を薄片化した試料を用いて、複屈折率応力計で測定できる。複屈折率応力計は、偏光顕微鏡と液晶コンペンセーター等を用いて応力によって生じたレターデーションの大きさを測定する装置であり、たとえばCRi社製複屈折イメージングシステムAbrio-IMがある。
ガラス板表面付近の圧縮応力値は、例えば、光導波表面応力計(例えば、折原製作所製FSM-6000)を用いて測定できる場合がある。光導波表面応力計によれば、ガラス試料を薄片化する等の加工を施さずに応力値が測定できる。
ガラス内部の応力値は、例えば、散乱光光弾性応力計(例えば、折原製作所製SLP-2000)を用いて測定できる。散乱光光弾性応力計によれば、ガラス内部の屈折率分布と関わりなく、ガラス試料を薄片化する等の加工を施さずに応力値を測定できる。
<工程(3):応力特性の評価工程>
工程(3)は、工程(2)で測定した第2の化学強化ガラスの応力特性が設計された範囲内であるか否かを確認する工程であり、第2のガラスの応力特性を管理範囲内に収めることで、第1のガラスの応力特性を管理する。工程(3)において、第2の化学強化ガラスの応力特性が設計された範囲内であれば、第1の化学強化ガラスの応力特性が設計された範囲内であると判断し得る。
第1の化学強化ガラスの応力特性について「設計された範囲」は、品質設計の観点で設定される。一例として、第1のガラスはFSMやSLPでは測定が困難だが、破壊試験(Abrioなど)であれば応力測定が可能である。予め破壊試験により応力特性を測定することにより、要求特性を満たす、第1の化学強化ガラスの応力特性の許容範囲を決めることができる。第1の化学強化ガラスの応力特性を設計された範囲内とするためには、第1のガラスを設計された範囲内の条件により化学強化する。化学強化の条件としては、例えば、温度、時間、溶融塩組成物に含有される塩濃度などが挙げられる。
第1のガラスの化学強化条件が「設計された範囲内の条件」であるか否かは、第2の化学強化ガラスの応力特性が、第2のガラスを設計された範囲内の条件で化学強化した時の応力特性の範囲に含まれるか否かにより判断できる。この第2の化学強化ガラスの応力特性が第2のガラスを設計された範囲内の条件で化学強化した時の応力特性の範囲に含まれることを「第2の化学強化ガラスの応力特性が設計された範囲内である」という。第2の化学強化ガラスの応力特性と、化学強化の条件は既知のものを用いる。
工程(3)の一態様としては、例えば、工程(2)で測定した第2の化学強化ガラスの応力特性の値(例えば、CS、DOL)について、第2の化学強化ガラスの応力特性が設計された範囲内であるか否かを確認する態様が挙げられる。第2の化学強化ガラスの応力特性の値が設計された範囲内であれば、第1の化学強化ガラスの応力特性が設計された範囲内であると判断し得る。また、第2の化学強化ガラスの応力特性の値が設計された範囲内であれば、第1のガラスを化学強化する条件が設計された範囲内の条件であると判断し得る。
第1のガラスを化学強化する条件が設計された範囲内の条件であると判断するための、第2の化学強化ガラスの応力特性の範囲としては、具体的には例えば、CSは好ましくは設計値±100MPa、より好ましくは設計値±50MPa、さらに好ましくは±30MPaの範囲で管理することが好ましい。また例えば、DOLは好ましくは設計値±10μm、より好ましくは設計値±5μm、さらに好ましくは±3μmの範囲で管理することが好ましい。
<工程(4):化学強化の条件を特定する工程>
本発明の製造方法は、工程(1)~(3)の後に、さらに工程(4)を含んでもよい。工程(4)は、第2の化学強化ガラスの応力特性から、工程(1)における化学強化条件を特定する工程であり、第2の化学強化ガラスの応力特性から該化学強化条件を算出して管理する。工程(1)~(4)を含む実施態様を説明するためのフロー図を図2に示す。
工程(4)の一態様としては、例えば、工程(2)の第2のガラスの応力特性の測定結果を元に工程(1)の化学強化条件を同定し、予め設定した「第1のガラスの化学強化条件についての設計された範囲」と比較し、工程(1)の化学強化条件が該設計された範囲内であるか否かを判断する。
<工程(1’):応力特性と化学強化の条件との関係を求める工程>
第2のガラスの応力特性と化学強化条件との関係が既知でない場合、本発明の製造方法は、工程(1)の前に工程(1’)を含んでもよい。工程(1’)は、第2のガラスの組成における化学強化条件と応力特性との関係性を求める工程である。具体的には、以下のようにして行う。工程(1’)は、第2のガラスと同一の組成を有する第3のガラスを化学強化して第3の化学強化ガラスを得て、第3の化学強化ガラスの応力特性を測定し、第3の化学強化ガラスの応力特性と、工程(1’)における前記化学強化の条件との関連性を求める工程である。第3の化学強化ガラスの応力特性と工程(1’)における前記化学強化の条件との関連性より、工程(3)における設計範囲を求めることが好ましい。
工程(1)の前に工程(1’)を含み、工程(1)~(3)の後に工程(4)を含む実施態様を説明するためのフロー図を図3に示す。
応力特性と化学強化の条件を特定する方法としては、例えば、Maya Hatano et al., Key Engineering Materials, 1662-9795, Vol.702, p.32-36に記載の方法が挙げられる。
第2のガラスと第3のガラスは、同一の組成を有するガラスである。工程(1’)における応力特性と化学強化の条件との関係の予測精度を向上する点から、第2のガラスと第3のガラスとは板厚が同じであることが好ましい。
工程(1’)の一態様としては、例えば、以下の工程(1’a)、または(1’b)が挙げられる。
(1’a)第3のガラスを複数の異なる条件(例えば、温度、時間、塩濃度)において化学強化して、応力特性(例えば、CS、DOL)のそれぞれについて、温度、時間、塩濃度との関連性を求める。この実験点から得られた関連性を利用し、強化条件から想定される応力特性を(CSsim、DOLsim)とする。
(1’b)第3のガラスを複数の異なる条件(例えば、温度、時間、塩濃度)において化学強化して得られる化学強化ガラスの応力特性(例えば、CS、DOL)を、強化シミュレーション(有限要素法など)により計算した応力特性のシミュレーション値を(CSsim、DOLsim)とする。
上記工程(1’)を含み、かつ工程(1)~(4)を含む実施態様における、工程(4)としては、例えば、以下の工程(4-1)~(4-3)を含む工程が挙げられる。かかる態様のフロー図を図4に示す。
(4-1)前記工程(1’)により求めた関連性に基づき、(1)の化学強化の条件(例えば、温度、時間、塩濃度)について、候補条件を求める。候補条件の数は、2以上であってもよい。候補条件の求め方としては、例えば、(1’)で求めた応力特性のシミュレーション値(例えば、CSsimおよびDOLsim)と、第2の化学強化ガラスの応力特性の測定値(例えば、CSexpおよびDOLexp)とが近い値となる条件を候補条件とする方法、有限要素法などで化学強化条件と応力特性の関係を調べ、応力特性から化学強化条件を推定する方法などが挙げられる。
(4-2)(4-1)で求めた各候補条件について、第2の化学強化ガラスの応力特性の測定値(例えば、CSexpおよびDOLexp)とシミュレーション値(例えば、CSsimおよびDOLsim)から、下記式(i)で表される応力特性値の誤差(例えば、CS誤差及びDOL誤差)を求める。
応力特性値の誤差=(応力特性の測定値-応力特性のシミュレーション値)/応力特性の測定値 …式(i)
応力特性が、例えば、CS及びDOLの場合、CS誤差及びDOL誤差はそれぞれ下記式(ii)及び式(iii)で表される。
CS誤差=(CSexp-CSsim)/CSexp …式(ii)
DOL誤差=(DOLexp-DOLsim)/DOLexp …式(iii)
(4-3)各候補条件について、各応力特性値の誤差の二乗和を求め、誤差の二乗和が最小となる、条件を工程(1)の化学強化の条件として特定する。応力特性値が、例えば、CS及びDOLの場合、誤差の二乗和は下記式(iv)で表される。
誤差の二乗和=CS誤差の二乗+DOL誤差の二乗 …式(iv)
第2のガラスとして互いに組成の異なる2種類以上のガラスを用いる場合、前記工程(4-3)において、誤差の二乗和を各組成の第2の化学強化ガラスごとに求めて、その和が最小となる化学強化の条件を、工程(1)の化学強化の条件として特定する。
具体的には例えば、第2のガラスとして互いに組成の異なる2種類以上のガラス(第2のガラスa、第2のガラスb)を用いる場合、工程(4)としては、例えば、以下の工程(4’-1)~(4’-3)を含む工程が挙げられる。
(4’-1)前記工程(1’)により求めた関連性に基づき、(1)の化学強化の条件(例えば、温度、時間、塩濃度)の候補を求める。
(4’-2)(4’-1)で選んだ候補の条件における、第2の化学強化ガラスa、bのそれぞれについて、応力特性値の誤差を求める。
(4’-3)第2の化学強化ガラスa、bのそれぞれについて、応力特性値の誤差の二乗和を求め、第2の化学強化ガラスaの誤差の二乗和と第2の化学強化ガラスbの誤差の二乗和との和である、下記式(v)で表される誤差の二乗和の和を求める。誤差の二乗和の和が最小となる化学強化の条件を工程(1)の化学強化の条件として特定する。
誤差の二乗和の和=(第2の化学強化ガラスaの誤差の二乗和)+(第2の化学強化ガラスbの誤差の二乗和) …式(v)
[第2実施様態]
本発明の製造方法の第2実施態様は、化学強化においてガラス中のリチウムイオンと溶融塩組成物中のナトリウムイオンとのイオン交換が行われる場合である。第2実施態様について、以下に記載の点以外は第1実施態様と同様である。第2実施態様において、第2のガラスのNa-Li置換速度は、第1のガラスのNa-Li置換速度より速いことが好ましい。
本発明の製造方法の第2実施態様において、第2のガラスのNa-Li置換速度は、第1のガラスのNa-Li置換速度の1.1倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上、特に好ましくは4.0倍以上である。第2のガラスのK-Na置換速度が、第1のガラスのNa-Li置換速度の1.1倍以上であることにより、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標として、第1の化学強化ガラスの応力特性を適正に管理しやすい。また、第1の化学強化ガラスの応力特性を適正に管理する点から、第2のガラスのNa-Li置換速度は、前記第1のガラスのK-Na置換速度の10000倍以下であることが好ましい。
なお、第一のガラスと第二のガラスを同一強化条件で強化し、圧縮応力層深さDOLの比で簡易的に評価してもよい。なお、DOLは拡散速度の平方根にほぼ比例するため、DOL比の二乗が置換速度の倍率に相当する。
本発明の製造方法の第2実施態様において、第1の化学強化ガラスとしては、例えばナトリウムイオンの拡散層深さが好ましくは50μm以下であると応力特性を精度よくSLPにより測定することは困難であることから、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標とする第1の化学強化ガラスの応力特性の管理が有用である。かかる観点から、第1の化学強化ガラスのカリウムイオンの拡散層深さは、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下、特に好ましくは35μm以下である。また、典型的には30μm以上であることが好ましい。
化学強化ガラスのナトリウムイオンの拡散層深さは、SIMSにより測定できる。
2.化学強化ガラスの応力特性を管理する方法
本発明の化学強化ガラスの応力特性を管理する方法(以下、本発明の管理方法とも略す。)、以下の(I)~(III)の工程を含む。
(I)第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化して、
前記第1のガラスが化学強化された第1の化学強化ガラス及び前記第2のガラスが化学強化された第2の化学強化ガラスを得ること。
(II)前記第2の化学強化ガラスの応力特性を測定すること。
(III)前記第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であることを確認すること。
前記工程(I)~(III)はそれぞれ、化学強化ガラスの製造方法の項において説明した工程(1)~(3)と同様である。本発明の管理方法によれば、第1のガラスが非破壊試験により応力特性を測定しにくいガラスであっても、第2の化学強化ガラスの応力特性を指標として第1の化学強化ガラスの応力特性を推定することにより、化学強化ガラスの応力特性を適正に管理することが可能になる。
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1及び例2は実施例である。
[測定方法]
(CS及びDOL)
CSは光導波表面応力計(折原製作所社製FSM-6000)を用いて測定し、DOLは複屈折率応力計(折原製作所製Abrio)により測定した。
(置換速度)
置換速度は上述したStep1~3により求めた。
[例1]
<工程(1’)>第2のガラスと同一の組成を有する第3のガラスを化学強化して第3の化学強化ガラスを得て、第3の化学強化ガラスの応力特性と、工程(1’)における化学強化の条件との関係を求める工程
(化学強化用ガラスの作製)
<工程(1)>において後述するガラス組成2A、2Bとなるように、ガラス原料を調合し、溶解、研磨加工して化学強化用のガラス板を作製した。ガラス原料としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩等の一般的なガラス原料を適宜選択し、ガラスとして900gとなるように秤量した。混合したガラス原料を白金坩堝に入れ、1700℃で溶融し、脱泡した。そのガラスをカーボンボード上に流して、ガラスブロックを得た。得られたガラスを加工し、鏡面研磨して厚さtが0.7mmの化学強化用ガラスのガラス板を得た。
(第3の化学強化ガラスの作製及び応力特性と化学強化条件との関係の評価)
得られた化学強化用ガラスを、第3の化学強化ガラスとして、応力特性と化学強化条件との関係を評価した。上記で得られた化学強化用ガラスについて、塩濃度(溶融塩組成物中のKNO含有量)を95~100%の範囲内において0.5質量%刻みで変化させ、温度を380~450℃の範囲内において5℃刻みで変化させ、また時間を15~180分間の範囲内において5分間刻みで変化させた各条件にて化学強化した化学強化ガラスの応力特性(CSsim及びDOLsim)をシミュレーションにより求めた。各条件において、ガラス組成2Aと同一組成である化学強化用ガラスを化学強化した化学強化ガラスを3A、ガラス組成2Bと同一組成である化学強化用ガラスを化学強化した化学強化ガラスを3Bと総称する。
<工程(1)>第1の化学強化ガラス及び第2の化学強化ガラスを得る工程
(化学強化用ガラスの作製)
以下に酸化物基準のモル百分率表示で示すガラス組成1、2Aまたは2Bとなるように、工程(1’)と同様にして、鏡面研磨して厚さtが0.7mmの化学強化用のガラス板を得た。
・ガラス組成1:SiO、Al及びLiOを含有し、NaOを4.8%含有する組成
・ガラス組成2A:SiOを64%、Alを8%、NaOを13%、KOを4%、MgOを11%含有する組成。
・ガラス組成2B:SiOを64%、Alを11%、NaOを16%、KOを1%、MgOを8%有する組成。
ガラス組成1、ガラス組成2A又はガラス組成2Bからなる0.7mmの化学強化用のガラス板を96.5質量%のKNO及び3.5質量%のNaNOを含有する溶融塩組成物により390℃にて4時間化学強化した。得られた化学強化ガラスについて応力特性および置換速度比を評価した結果を表1に示す。
Figure 0007439645000003
(化学強化ガラス1、2A、2Bの作製)
化学強化用のガラス板を表2に示す条件にてイオン交換処理をし、第1の化学強化ガラス、第2の化学強化ガラス(化学強化ガラス2A、2B)を得た。
<工程(2)>第2の化学強化ガラスの応力特性を測定する工程
(1)で作製した化学強化ガラス2A及び2BのCS及びDOLを評価した。結果を、それぞれCSexp及びDOLexpとして表2Aに示す。
<工程(3)>第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であるか否か確認する工程
事前に求められていた第2の化学強化ガラスの応力特性の設計された範囲を表2Bに示す。表2Aの結果が表2Bの範囲に入ることを確認する。
<工程(4)>化学強化の条件を特定する工程
工程(1’)で求めた化学強化ガラス3A及び3Bの応力特性(CSsim及びDOLsim)について、工程(2)で測定した化学強化ガラス2A、2Bの応力特性値(CSexp及びDOLexp)と最も近い条件を候補条件1-1~1-5とした。結果を表3に示す。
求めた候補条件1-1~1-5のそれぞれについて、化学強化ガラス3A及び3Bの応力特性値(CSexp及びDOLexp)および化学強化ガラス2A及び2Bの応力特性値(CSsim及びDOLsim)から、上記した式(ii)~(iv)により誤差の二乗和(Δ1a、Δ1b)を求め、上記した式(v)により誤差の二乗和の和(Sum)を求めた。
Figure 0007439645000004
Figure 0007439645000005
Figure 0007439645000006
表2Aおよび表2Bに示すように、表2Aに示す結果は表2Bに示す範囲に入っていた。表3において、誤差の二乗和Δ3A、Δ3Bおよび誤差の二乗和の和が最も小さい値を太枠で囲った。表3に示すように二乗和の和が最も小さい値となった候補条件1-1は、表2Aに示す化学強化ガラス2A、2Bの化学強化条件と同じ条件となった。
[例2]
<工程(1’)>第2のガラスと同一の組成を有する第3のガラスを化学強化して第3の化学強化ガラスを得て、第3の化学強化ガラスの応力特性と、工程(1’)における化学強化の条件との関係を求める工程
例1と同様にして第3の化学強化ガラスとして、化学強化ガラス3A、化学強化ガラス3Bの応力特性(CSsim及びDOLsim)をシミュレーションにより求めた。
<工程(1)>第1の化学強化ガラス及び第2の化学強化ガラスを得る工程
例1における化学強化の条件を表4Aに示す条件に変更した以外は例1と同様にして、化学強化用のガラスを化学強化して化学強化ガラス2A、2Bを作製した。
<工程(2)>第2の化学強化ガラスの応力特性を測定する工程
例1と同様にして、(1)で作製した化学強化ガラス2A及び2BのCS及びDOLを評価した。結果を、それぞれCSexp及びDOLexpとして表5に示す。
<工程(3)>第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であるか否か確認する工程
事前に求められていた第2の化学強化ガラスの応力特性の設計された範囲を表4Bに示す。表4Aの結果が表4Bの範囲に入ることを確認する。
<工程(4)>化学強化の条件を特定する工程
工程(1’)で求めた化学強化ガラス3A及び3Bの応力特性(CSsim及びDOLsim)について、工程(2)で測定した化学強化ガラス2A、2Bの応力特性値(CSexp及びDOLexp)と最も近い条件を候補条件2-1~2-5とした。結果を表5に示す。
求めた候補条件2-1~2-5のそれぞれについて、工程(1’)で求めた応力特性値(CSexp及びDOLexp)および工程(2)で求めた応力特性値(CSsim及びDOLsim)から、誤差の二乗和(Δ3A、Δ3B)を求め、誤差の二乗和の和(Sum)を求めた。結果を表5に示す。
Figure 0007439645000007
Figure 0007439645000008
Figure 0007439645000009
表4Aおよび表4Bに示すように、表4Aに示す結果は表4Bに示す範囲に入っていた。表5において、誤差の二乗和Δ3A及びΔ3Bおよび誤差の二乗和の和が最も小さい値を太枠で囲った。表5に示すように、誤差の二乗和Δ3A、Δ3B、誤差の二乗和の和がそれぞれ最も小さい値となった候補条件2-1は、表4Aに示す化学強化ガラス2A、2Bの化学強化条件と同じ条件となった。
以上の結果から、本発明の製造方法によれば、化学強化ガラスの応力特性を特性に管理して、化学強化ガラスを製造できることがわかった。
また、このように候補条件を例えば2-1と特定できる応力特性(例えば、CSおよびDOL)の範囲を事前に調査しておき、第2の化学強化ガラスの応力特性が上記した工程(3)または工程(III)における「設計された範囲」内であるか否かを確認することにより、効率的に化学強化ガラスの応力特性を評価又は管理することが可能となる。

Claims (19)

  1. 以下の(1)~()を含む、化学強化ガラスの製造方法。
    (1)第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化して、
    前記第1のガラスが化学強化された第1の化学強化ガラス及び前記第2のガラスが化学強化された第2の化学強化ガラスを得ること。
    (2)前記第2の化学強化ガラスの応力特性を測定すること。
    (3)前記第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であるか否か確認すること。
    (4)前記第2の化学強化ガラスの応力特性から、前記(1)における前記化学強化の条件を特定すること。
  2. 前記(1)の前に、以下の(1’)を含む、請求項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
    (1’)前記第2のガラスと同一の組成を有する第3のガラスを化学強化して第3の化学強化ガラスを得て、前記第3の化学強化ガラスの応力特性を測定することにより、前記第2のガラスの組成における、化学強化条件と応力特性との関係を求めること。
  3. 前記(2)における前記応力特性は、表面圧縮応力CS、圧縮応力層深さDOLおよび板厚中心の引張応力CTから選ばれる少なくとも1つである請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  4. 前記(1)における前記化学強化の条件は、前記第1のガラスおよび前記第2のガラスの前記溶融塩組成物への浸漬時間、前記溶融塩組成物の温度を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  5. 前記第2のガラスの板厚は、0.3~2.5mmである請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  6. 前記第2のガラスの板厚は、前記第3のガラスの板厚と同一である、請求項2~5のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  7. 前記第2のガラスとして、互いに組成の異なる2種類以上のガラスを用いる、請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  8. 前記第2のガラスは、前記第1のガラスより、前記K-Na置換速度が速い、請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  9. 前記第1の化学強化ガラスのカリウムイオンの拡散層深さが10μm以下である、請求項に化学強化ガラスの製造方法。
  10. 前記第2のガラスの前記K-Na置換速度は、前記第1のガラスの前記K-Na置換速度の1.1倍以上である、請求項8または9に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  11. 前記第2のガラスは、前記第2のガラス内のナトリウムイオンを、カリウムイオンに置換することにより、屈折率が上昇するガラスである、請求項8~10のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  12. 前記第2のガラスの組成は、前記第1のガラスの組成より、酸化物基準でNa2Oを1mol%以上多く含有する、請求項8~11のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  13. 前記第2のガラスは、前記第1のガラスより、前記Na-Li置換速度が速い、請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  14. 前記第1の化学強化ガラスのナトリウムイオンの拡散層深さが50μm以下である、請求項13に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  15. 前記第2のガラスの前記Na-Li置換速度は、前記第1のガラスの前記Na-Li置換速度の1.1倍以上である、請求項13または14に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  16. 前記第1の化学強化ガラスは、板厚0.7mmに換算した可視光透過率が80%以下である請求項1~15のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  17. 前記第1の化学強化ガラスは、光導波路効果を観測原理とする表面応力計で観察される干渉縞が1本以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  18. 前記第1の化学強化ガラスは、屈折率が1.40~1.62である、請求項1~15のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  19. 以下の(I)~(IV)を含む、化学強化ガラスの化学強化の条件を特定する方法。
    (I)第1のガラスと、前記第1のガラスよりイオン交換におけるK-Na置換速度及びNa-Li置換速度の少なくとも一方が速いガラスである第2のガラスとを、同一の溶融塩組成物に浸漬し、同時に化学強化して、
    前記第1のガラスが化学強化された第1の化学強化ガラス及び前記第2のガラスが化学強化された第2の化学強化ガラスを得ること。
    (II)前記第2の化学強化ガラスの応力特性を測定すること。
    (III)前記第2の化学強化ガラスの応力特性が、設計された範囲内であることを確認すること。
    (IV)前記第2の化学強化ガラスの応力特性から、前記(I)における前記化学強化の条件を特定すること。
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