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JP7434791B2 - ドリル - Google Patents

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JP7434791B2
JP7434791B2 JP2019181304A JP2019181304A JP7434791B2 JP 7434791 B2 JP7434791 B2 JP 7434791B2 JP 2019181304 A JP2019181304 A JP 2019181304A JP 2019181304 A JP2019181304 A JP 2019181304A JP 7434791 B2 JP7434791 B2 JP 7434791B2
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Description

本発明は、特に被削材の傾斜面や曲面に座繰り穴加工を施すのに用いられるドリルに関するものである。
このようなドリルとして、例えば特許文献1には、先端角が180°~181°のドリルであって、このドリルは曲線状の切刃を有しており、この切刃から外周コーナへ向けて延びる直線とチゼルエッジから外周コーナへ延びる直線とのなす角度が18°~22°であり、ランドには2つのマージンが設けられたものが記載されている。なお、この特許文献1に記載されたドリルは、2枚刃のドリルである。
また、この特許文献1には、溝長がドリルの直径の2倍以上5倍以下であり、シャンクの長さがドリルの直径の5倍以上20倍以下とすることも記載されている。このようなドリルでは、切刃の強度を保ちつつ、傾斜面や曲面を有する被削材の座繰り穴加工においてもドリルの振れを抑制することができると特許文献1には記載されている。
特開2014-034080号公報
ところで、この特許文献1に記載されたドリルのようにランドに2つのマージンが設けられた、いわゆるダブルマージンドリルでは、加工穴の内周面へのマージンの接触面積が大きいため接触による摩擦が大きく、切削時に生成された細かい切り粉が2つのマージンの間に入り込むと、摩擦熱によって溶着を生じ易い。
ただし、切刃の先端角が180°~181°と略フラットなドリルにおいては、このようにランドに2つのマージンが形成されていなければ、被削材の傾斜面や曲面に切刃が食い付く際に、上述のようなドリルの振れが生じ易くなる。
ここで、特許文献1に記載されたドリルでは、この特許文献1の図1および図2に示されるように、2つのマージンの間の切刃部の外周逃げ面が、一般的なドリルと同様に軸線に直交する断面において2つのマージンの外周面よりも凹んだ凸曲線状をなすように形成されている。
このため、座繰り穴加工時に切削油剤のようなクーラントを供給しても、2つのマージンの間に流れ込んだ切削油剤は、ドリル本体の回転に伴いドリル回転方向とは反対側に位置するマージン(第2マージン部)側に流れるだけとなり、ドリル回転方向側に位置するマージン(第1マージン部)を切削油剤によって効率的に冷却、潤滑して切り粉の溶着を防止することは困難となる。
本発明は、このような背景の下になされたもので、切刃の先端角が180°に近い座繰り穴加工用のドリルにおいて、ランドに第1、第2マージン部の2つのマージン部が形成されたダブルマージンドリルであっても、これら2つのマージン部を切削油剤によって効率的に冷却、潤滑して溶着が生じるのを防ぐことが可能なドリルを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りにドリル回転方向に回転させられるドリル本体の先端側の切刃部の外周に、このドリル本体の先端逃げ面に開口して後端側に延びる2つの切屑排出溝が周方向に間隔をあけて形成され、これらの切屑排出溝の上記ドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に、先端角が178°~182°の範囲内の切刃が形成されたドリルであって、上記2つの切屑排出溝の間の上記切刃部の外周面には、上記切刃の外周端に連なって上記ドリル本体の外周側に突出する第1マージン部と、この第1マージン部から上記ドリル回転方向とは反対側に間隔をあけて上記ドリル本体の外周側に突出する第2マージン部とが形成されており、上記切刃部の外周面には、上記第1マージン部と上記第2マージン部との間に、上記軸線に直交する断面において上記ドリル本体の内周側に凹む凹曲線状をなす複数の凹部が、周方向に互いに隣接して配置されていることを特徴とする。
このように構成されたドリルにおいては、2つの切屑排出溝の間の切刃部の外周面(ランド部の外周面)に第1、第2マージン部の2つのマージン部が形成されているので、切刃の先端角が180°に近い座繰り穴加工用のドリルであっても、被削材の傾斜面や曲面に切刃が食い付く際の切刃部の振れ回りを抑制することができる。
そして、この座繰り穴加工時に切削油剤等のクーラントを供給することにより、2つのマージン部の間に入り込んだ切削油剤は、切刃部の外周側ではドリル本体の回転に伴いドリル回転方向とは反対側に流れて第2マージン部を冷却、潤滑するとともに、切刃部の内周側では、外周側でドリル回転方向とは反対側に流れた切削油剤によって押し出されることにより、軸線に直交する断面においてドリル本体の内周側に凹む凹曲線状をなす上記凹部のドリル本体外周側を向く底面に沿ってドリル回転方向側に流れるように対流を形成する。
従って、上記構成のドリルによれば、このドリル回転方向側に流れた切削油剤によって第1マージン部も冷却、潤滑することができるので、第1、第2マージン部の双方を効率的に冷却、潤滑することができる。このため、穴明け加工時に生成された細かい切り粉が2つのマージン部の間に入り込んでも、摩擦熱によって溶着が生じるのを防ぐことが可能となる。
ここで、上記切刃部の外周面には、複数の上記凹部が周方向に並んで形成されていてもよい。これにより、個々の凹部と加工穴の内周面との間で上述したような切削油剤の対流を発生させることができ、特にドリル回転方向側の凹部では、ドリル回転方向とは反対側の第2マージン部を冷却、潤滑する前の切削油剤を対流させて第1マージン部を冷却、潤滑することができるので、一層効率的な第1、第2マージン部の冷却、潤滑を図ることができる。
なお、こうして切刃部の外周面に複数の凹部を周方向に並んで形成した場合、隣接する凹部の間には凹部の断面がなす凹曲線が交差する凸部が形成されることになるが、上記軸線に直交する断面において、複数の上記凹部の間に形成される凸部の突端から、この凸部の周方向に隣接する凹部の底までの上記軸線に対する半径方向の深さは、10μm以上とされていることが望ましい。この凸部の突端から凹部の底までの深さが10μmを下回ると、凹部が凸部に対して浅くなりすぎて切削油剤を確実に対流させることが困難となるおそれがある。
さらに、上記軸線に直交する断面において、上記第1マージン部の外周側を向いて上記軸線を中心とした円弧状をなす第1マージン外周面の円弧の弦に沿った幅である第1マージン幅W1に対して、上記第2マージン部の外周側を向いて上記軸線を中心とした円弧状をなす第1マージン外周面の円弧の弦に沿った幅である第2マージン幅W2が大きすぎると、これら第1、第2マージン外周面が加工穴の内周面に摺接することによる抵抗が大きくなって、切刃部に振れ回りが生じ易くなるとともに、ドリル本体を回転させるための駆動力が増大したり、高い摩擦熱が発生したりするおそれがある。
その一方で、第1マージン幅W1に対して第2マージン幅W2が小さすぎると、第2マージン部の加工穴内周面との摺接によって切刃部を確実に支持することができなくなり、振れ回りを抑えることができなくなるおそれがある。このため、上記軸線方向先端側から見て、上記第1マージン幅W1に対して、上記第2マージン幅W2は、0.2×W1~0.6×W1の範囲内とされていることが望ましい。
さらにまた、上述したような切刃部の振れ回りは、上記切刃の直径Dに対して、切屑排出溝の軸線方向の長さLが長い場合、すなわち切刃部の長さが長い場合に発生し易いが、この切刃部の長さが短すぎると、この切刃部の長さ以上の深い穴深さの座繰り穴加工を施すことができなくなって汎用性が損なわれる。このため、上記切刃の直径Dに対して、上記切屑排出溝の上記軸線方向の長さLが1×D~3×Dの範囲内とされていることが望ましい。
以上説明したように、本発明によれば、切刃の先端角が178°~182°の範囲内であって、被削材の傾斜面や曲面に座繰り穴加工を施すときでも、切刃が食い付く際の切刃部の振れ回りを第1、第2マージン部によって抑制することができるとともに、第1、第2マージン部の間の外周面に形成された凹部によって切削油剤を対流させることにより、これら2つのマージン部を効率的に冷却、潤滑することができ、穴明け加工時に生成された細かい切り粉が2つのマージン部の間に入り込んでも、溶着が生じるのを防ぐことが可能となる。
本発明の一実施形態を示す斜視図である。 図1に示す実施形態の拡大正面図である。 図1に示す実施形態の先端部の側面図である。 図1に示す実施形態の第1マージン部を示す軸線に直交する拡大断面図である。 図1に示す実施形態の第2マージン部を示す軸線に直交する拡大断面図である。 図1に示す実施形態の切刃部におけるランド部の外周面を示す軸線に直交する拡大断面図である。
図1~図6は、本発明のドリルの一実施形態を示すものである。本実施形態において、ドリル本体1は、超硬合金等の硬質材料により軸線Oを中心とした概略円柱状に形成されており、その後端部(図1において右上側部分。図3においては上側部分)は円柱状のままのシャンク部2とされるとともに、先端部(図1において左下側部分。図3においては下側部分)は切刃部3とされる。
このようなドリルは、シャンク部2が工作機械の主軸に把持されてドリル本体1が軸線O回りにドリル回転方向Tに回転されつつ軸線O方向先端側に送り出されることにより、切刃部3に形成された切刃4によって被削材の軸線Oに対して傾斜した傾斜面や曲面に座繰り穴加工を施す。
切刃部3の外周には、ドリル本体1の先端逃げ面5に開口して後端側に向かうに従いドリル回転方向Tとは反対側に延びるように螺旋状に捩れる2つの切屑排出溝6が周方向に間隔(等間隔)をあけて形成されており、これらの切屑排出溝6のドリル回転方向Tを向く壁面と上記先端逃げ面5との交差稜線部に上記切刃4がそれぞれ形成されている。すなわち、本実施形態のドリルは2枚刃のツイストドリルである。なお、ドリル本体1は、軸線Oに関して180°回転対称形状に形成されている。
これらの切刃4は、先端角αが178°~182°の範囲内とされており、特に本実施形態では180°とされていて、被削材に形成される座繰り穴の底面は軸線Oに垂直な平面状とされる。なお、これらの切刃4は、軸線O方向先端側から見て図2に示すように、軸線O周辺の中心部と外周部の短い部分が略一直線状に形成されるとともに、これら中心部と外周部との間の長い部分はドリル回転方向Tとは反対側に僅かに凹む凹曲線状に形成されている。また、切屑排出溝6の先端内周部にはシンニングが施されており、切刃4の内周部にはシンニング刃4aが形成されている。
さらに、切刃部3の外周面には、上記2つの切屑排出溝6の間のランド部7に、切刃4の外周端に連なってドリル本体1の外周側に突出する第1マージン部8と、この第1マージン部8からドリル回転方向Tとは反対側に間隔をあけてドリル本体1の外周側に突出する第2マージン部9とが形成されている。
これら第1、第2マージン部8、9は、軸線O方向先端側から見て略台形状に形成されている。このうち、第1マージン部8は、ドリル回転方向Tを向く第1マージン前壁面8aが、切刃4の外周部がなす直線に沿った直線状とされるとともに、ドリル回転方向Tとは反対側を向く第1マージン後壁面8bはドリル本体1の内周側に向かうに従いドリル回転方向Tとは反対側に向けて延びるように傾斜している。
また、第2マージン部9は軸線O方向先端側から見て略等脚台形状に形成されており、ドリル回転方向Tを向く第2マージン前壁面9aがドリル本体1の内周側に向かうに従いドリル回転方向Tに向けて延びるように傾斜するとともに、ドリル回転方向Tとは反対側を向く第2マージン後壁面9bはドリル本体1の内周側に向かうに従いドリル回転方向Tとは反対側に向けて延びるように傾斜している。
ただし、本実施形態では、これら第1マージン前壁面8aと、第1マージン部8のドリル本体1外周側を向く第1マージン外周面8cとの交差稜線部は、軸線Oに直交する断面においてこれら第1マージン前壁面8aと第1マージン外周面8cとに接する第1マージン外周面8cよりも曲率半径の小さな凸曲線状に面取りされた第1マージン前面取り部8dとされている。
同様に、第2マージン前壁面9aと、第2マージン部9のドリル本体1外周側を向く第2マージン外周面9cとの交差稜線部は、軸線Oに直交する断面において第2マージン前壁面9aと第2マージン外周面9cに接する第2マージン外周面9cよりも曲率半径の小さな凸曲線状に面取りされた第2マージン前面取り部9dとされている。
なお、これら第1、第2マージン外周面8c、9cは、切刃4の直径Dすなわち切刃4の外周端が軸線O回りになす円の直径と等しい直径を有する軸線Oを中心とした1つの円筒面上に位置するように形成されており、軸線O方向先端側から見て軸線Oを中心とする互いに等しい半径の円弧状に形成されている。
ここで、軸線O方向に直交する断面において、第1マージン外周面8cがなす円弧の弦に沿った幅である第1マージン幅W1に対して、第2マージン外周面9cがなす円弧の弦に沿った幅である第2マージン幅W2は、0.2×W1~0.6×W1の範囲内とされている。また、切屑排出溝6は切刃部3の後端側で外周側に切れ上がっており、この切屑排出溝6が切れ上がった部分までの切刃4からの軸線O方向の長さLは、上記切刃の直径Dに対して1×D~3×Dの範囲内とされている。
さらに、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、上記第1、第2マージン前面取り部8d、9dは凸円弧状に形成されており、ただしその曲率半径(半径)は、第1マージン前面取り部8dの曲率半径R8dが第2マージン前面取り部9dの曲率半径R9dよりも大きくされている。なお、軸線Oに直交する断面において、これら第1マージン前面取り部8dの曲率半径R8dと第2マージン前面取り部9dの曲率半径R9dとは10μm~50μmの範囲内とされている。
また、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、第1マージン部8のドリル回転方向Tとは反対側を向く上記第1マージン後壁面8bと外周側を向く第1マージン外周面8cとの交差稜線部も、これら第1マージン後壁面8bと第1マージン外周面8cとに接する凸曲線状に面取りされた第1マージン後面取り部8eとされている。
同様に、軸線Oに直交する断面において、第2マージン部9のドリル回転方向Tとは反対側を向く上記第2マージン後壁面9bと外周側を向く第2マージン外周面9cとの交差稜線部も、これら第2マージン後壁面9bと第2マージン外周面9cとに接する凸曲線状に面取りされた第2マージン後面取り部9eとされている。
さらに、軸線Oに直交する断面において、これら第1、第2マージン後面取り部8e、9eも凸円弧状に形成されており、ただし第1マージン後面取り部8eの曲率半径(半径)R8eよりも第1マージン前面取り部8dの曲率半径R8dが大きくされるとともに、第2マージン後面取り部9eの曲率半径(半径)R9eよりも第2マージン前面取り部9dの曲率半径R9dが大きくされている。
さらにまた、軸線Oに直交する断面において、第1マージン後面取り部8eの曲率半径R8eよりも第2マージン後面取り部9eの曲率半径R9eが小さくされている。なお、これら第1マージン後面取り部8eと第2マージン後面取り部9eが軸線Oに直交する断面においてなす凸曲線(円弧)の曲率半径(半径)R8e、R9eは、10μm~50μmの範囲内とされている。
また、切刃部3の上記ランド部7の外周面のうち、第1、第2マージン部8、9の間の部分と、第2マージン部9からドリル回転方向Tとは反対側に切屑排出溝6のドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面との交差稜線部であるヒール10までの部分とは、第1、第2マージン外周面8c、9cからドリル本体1の内周側に凹んだ外周逃げ面(二番取り面)11とされている。なお、これらの外周逃げ面11と、第1マージン後壁面8bとが交差する隅角部、および第2マージン前壁面9aと第2マージン後壁面9bとが交差する隅角部は、軸線Oに直交する断面において凹曲線状に形成されている。
そして、切刃部3のランド部7の外周面のうち、第1マージン部8と第2マージン部9との間の外周逃げ面11には、軸線Oに直交する断面においてドリル本体1の内周側に凹む凹曲線状をなす凹部12が形成されている。本実施形態では、この第1マージン部8と第2マージン部9との間の外周逃げ面11には、このような凹部12が複数(2つ)、周方向に並んで形成されている。
従って、軸線Oに直交する断面において、これら複数の凹部12の間には、凹部12に対して相対的に切刃部3の外周側に凸となる山形の凸部13が形成されることになる。ここで、本実施形態では、この凸部13の突端13aから、この凸部13の周方向に隣接する凹部12の底12aまでの軸線Oに対する半径方向の深さdは、10μm以上とされている。なお、複数(2つ)の凹部12は、同形同大に形成されており、従って凸部13の突端13aからこれらの凹部12の底12aまでの軸線Oに対する半径方向の深さdは互いに等しい。
このような凹部12と第1、第2マージン部8、9とは、図1および図3に示すように切屑排出溝6の捩れに合わせて螺旋状をなすようにして、軸線Oに直交する断面が同一の形状を維持したまま、切屑排出溝6がドリル本体1の外周側に切れ上がった部分にまで連続して形成されている。
さらに、本実施形態では、軸線O方向先端側から見て図2に示すように、上記第1マージン前壁面8aのドリル本体1外周側への延長面と上記第1マージン外周面8cのドリル回転方向Tへの延長面との交点P1と軸線Oとを通る第1マージン直線E1と、上記第2マージン前壁面9aのドリル本体1外周側への延長面と上記第2マージン外周面9cのドリル回転方向Tへの延長面との交点P2と軸線Oとを通る第2マージン直線E2との交差角θが、30°~60°の範囲内とされている。
このように構成されたドリルにおいては、切刃部3の2つの切屑排出溝6の間におけるランド部7の外周面に、第1、第2マージン部8、9の2つのマージン部がそれぞれ形成されているので、合計4つのマージン部によって切刃部3を支持することができる。このため、切刃4の先端角αが180°に近い座繰り穴加工用のドリルであって、被削材の傾斜面や曲面に座繰り穴を形成する場合でも、切刃4が食い付く際の切刃部3の振れ回りを抑制することができる。
そして、さらに上記構成のドリルにおいては、これら第1、第2マージン部8、9の間におけるランド部7の外周逃げ面11に、軸線Oに直交する断面においてドリル本体1の内周側に凹む凹曲線状をなす凹部12が形成されているので、座繰り穴加工時に切削油剤等のクーラントを供給することにより、これら第1、第2マージン部8、9の間に入り込んだ切削油剤は、切刃部3の外周側においては、ドリル本体1の回転に伴い加工穴の内周面との間でドリル回転方向Tとは反対側に流れて第2マージン部9を冷却、潤滑するとともに、切刃部3の内周側においては、外周側でドリル回転方向Tとは反対側に流れた切削油剤によって押し出されることにより、上記凹部12のドリル本体1外周側を向く底面に沿ってドリル回転方向T側に流れるように対流を形成する。
このため、上述のように構成されたドリルによれば、このドリル回転方向T側に流れた切削油剤によって第1マージン部8も冷却、潤滑することができる。従って、第1、第2マージン部8、9の双方を効率的に冷却、潤滑することができるので、穴明け加工時に生成された細かい切り粉が第1、第2マージン部8、9の間に入り込んでも、溶着が生じるのを防ぐことが可能となる。
なお、上述のような切削油剤は、ドリル本体1の外から外部給油によって切刃部3に供給することが可能であるが、例えばドリル本体のシャンク部2の後端面から切刃部3の先端逃げ面5等に向けてクーラント穴を形成して、このクーラント穴を通して切削油剤を内部給油するようにしてもよい。
また、本実施形態では、切刃部3のランド部7における第1、第2マージン部8、9の間の外周逃げ面11に、複数(2つ)の上記凹部12が周方向に並んで形成されている。従って、これにより、個々の凹部12と加工穴の内周面との間で上述したような切削油剤の対流を発生させることができる。
特に、ドリル回転方向T側の凹部12では、ドリル回転方向Tとは反対側の第2マージン部9を冷却、潤滑する前の切削油剤を対流させて第1マージン部8を冷却、潤滑することが可能となる。このため、一層効率的な第1、第2マージン部8、9の冷却、潤滑を図ることができる。
なお、こうして切刃部3の外周面に複数の凹部12を周方向に並んで形成した場合、上述したように隣接する凹部12の間には、凹部12の断面がなす凹曲線が交差する凸部13が形成されることになるが、軸線oに直交する断面において、この複数の凹部12の間に形成される凸部13の突端13aから、この凸部13の周方向に隣接する凹部12の底12aまでの軸線Oに対する半径方向の深さdが小さいと、凹部12が凸部13に対して浅くなりすぎて切削油剤を確実に対流させることが困難となるおそれがある。
このため、凸部13の突端13aから凹部12の底12aまでの軸線Oに対する半径方向の深さdは、本実施形態のように10μm以上とされていることが望ましく、これにより凸部13の突端13aから凹部12の底12aまでの深さdを十分に確保して、切削油剤を確実に対流させることができ、さらに一層効率的な第1、第2マージン部8、9や加工穴の内周面の冷却、潤滑を図ることが可能となる。
ただし、この深さdが大きくなりすぎると、切刃部3の剛性や強度が損なわれるおそれがあるので、深さdは100μm以下とされるのが望ましい。なお、このような凹部12の深さdは、例えば第1、第2マージン部の間の外周逃げ面11に、軸線Oに対する半径方向にダイヤルゲージを当てて、ドリル本体1を軸線O回りに回転させることにより、凹部12の底12aから凸部13の突端13aまでの半径方向の高さを測定することによって確認することができる。
また、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、第1マージン外周面8cが軸線Oを中心としてなす円弧の弦に沿った幅である第1マージン幅W1に対して、第2マージン外周面9cが軸線Oを中心としてなす円弧の弦に沿った幅である第2マージン幅W2が、0.2×W1~0.6×W1の範囲内とされており、これによってドリル本体1を回転させるための駆動力が増大したり、加工穴の内周面との間に高い摩擦熱が発生したりすることなく、切刃部3の振れ回りを確実に抑えることができる。
すなわち、第1マージン幅W1に対して第2マージン幅W2が0.6×W1を上回るほど大きいと、第1、第2マージン外周面8c、9cが加工穴の内周面に摺接することによる抵抗が大きくなって、切刃部3に振れ回りが生じ易くなるとともに、ドリル本体1の回転駆動力が増大したり、高い摩擦熱が発生したりするおそれがある。一方、第1マージン幅W1に対して第2マージン幅W2が0.2×W1を下回るほど小さいと、第2マージン外周面9cの加工穴内周面との摺接によって切刃部3を確実に支持することができなくなり、切刃部3の振れ回りが大きくなるおそれがある。
なお、本実施形態では、第1、第2マージン前壁面8a、9aおよび第1、第2マージン後壁面8b、9bと第1、第2マージン外周面8c、9cとの交差稜線部に第1、第2マージン前面取り部8d、9dおよび第1、第2マージン後面取り部8e、9eが形成されていて、第1、第2マージン幅W1、W2は、これら第1、第2マージン前面取り部8d、9dや第1、第2マージン後面取り部8e、9eを除いた部分の幅とされているが、第1、第2マージン外周面8c、9cの全体が軸線Oに直交する断面において軸線Oを中心とした円弧状に形成されていて、第1、第2マージン前壁面8a、9aや第1、第2マージン後壁面8b、9bと角度をもって交差しているような場合は、第1、第2マージン幅W1、W2は第1、第2マージン外周面8c、9cの全体がなす円弧の弦に沿った幅となる。
また、本実施形態においては、切屑排出溝6の軸線O方向の長さLが、切刃4の直径Dに対して1×D~3×Dの範囲内とされている。このように、切屑排出溝6の長さLが長く、すなわち切刃部3の突き出し長さが長いドリルにおいては、特に切刃部3の振れ回りが発生し易いので、そのようなドリルにおいて、切刃部3の2つの切屑排出溝6の間におけるランド部7の外周面に第1、第2マージン部8、9の2つのマージン部を形成することにより、本実施形態によれば、加工穴精度や穴位置精度、加工穴の内周面の面粗さの一層の向上を図ることができる。なお、この切屑排出溝6の軸線O方向の長さLが、切刃4の直径Dに対して1×Dよりも小さいと、穴深さの深い座繰り穴加工を施すことができなくなって汎用性が損なわれるおそれがある。
一方、本実施形態では、軸線O方向先端側から見て、第1マージン直線E1と第2マージン直線E2との交差角θが30°~60°の範囲内とされている。これに対して、特許文献1に記載されたドリルでは、特許文献1の図1および図2に示されるように、この交差角θは64°程度とされており、これに比べて本実施形態では交差角θが小さく、すなわち第1、第2マージン部8、9の周方向の間隔が小さくされている。従って、ドリル本体1の回転によって第1マージン部8の第1マージン外周面8cが加工穴の内周面に摺接してから第2マージン部9の第2マージン外周面9cが摺接するまでの時間を短くすることができる。
このため、切刃4の先端角αが178°~182°の範囲内で軸線Oに垂直な一直線状に近い場合に、被削材に形成された傾斜面や曲面に軸線Oが斜交するようにされて座繰り穴加工を施すときでも、切刃4の食い付き時に切刃部3が不安定な状態となる時間を短くすることができ、切刃部3に振れ回りが生じるのを抑えることができる。従って、加工穴精度や穴位置精度が低下するのを防ぐことができるとともに、一層高精度で高品位の座繰り穴加工を行うことが可能となる。
ここで、第1、第2マージン直線E1、E2の交差角θが60°を上回ると、第1マージン外周面8cが加工穴の内周面に摺接してから第2マージン外周面9cが摺接するまでの時間を短くすることができなくなり、切刃部3の振れ回りを十分に抑えることができなくなるおそれがある。一方、逆に第1、第2マージン直線E1、E2の交差角θが30°を下回ると、第1、第2マージン部8、9が近づきすぎて切刃部3を周方向に2点で摺接して支持するような状態となるので、やはり切刃4の食い付き時に切刃部3に振れ回りが発生し易くなるおそれがある。
なお、本実施形態では、上述のように第1、第2マージン前壁面8a、9aと第1、第2マージン外周面8c、9cとの交差稜線部に第1、第2マージン前面取り部8d、9dが形成されていて、上記第1、第2マージン直線E1、E2は、第1、第2マージン前壁面8a、9aのドリル本体1外周側への延長面と第1、第2マージン外周面8c、9cのドリル回転方向Tへの延長面との交点P1、P2と軸線Oとを通る直線とされているが、このような第1、第2マージン前面取り部8d、9dが形成されず、第1、第2マージン前壁面8a、9aと第1、第2マージン外周面8c、9cとが角度をもって交差している場合には、交点P1、P2は第1、第2マージン前壁面8a、9aと第1、第2マージン外周面8c、9cとの交点とすればよい。
さらに、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、上述のように第1マージン部8の第1マージン前壁面8aと第1マージン外周面8cとの交差稜線部は凸曲線状に面取りされた第1マージン前面取り部8dとされるとともに、第2マージン部9の第2マージン前壁面9aと第2マージン外周面9cとの交差稜線部は凸曲線状に面取りされた第2マージン前面取り部9dとされている。
ここで、これらの第1、第2マージン前面取り部8d、9dは、第1、第2マージン部8、9がドリル本体1のドリル回転方向Tへの回転に伴い切刃4によって形成された座繰り穴の内周面に最初に摺接する部分であるので、そのような部分に断面凸曲線状の第1、第2マージン前面取り部8d、9dが形成されることにより、たとえ切刃部3に振れ回りが生じても、第1、第2マージン前壁面8a、9aと第1、第2マージン外周面8c、9cとが交差稜線部において角度をもって交差している場合のように、この交差稜線部が加工穴の内周面に食い込んで面粗さを劣化させたり、角張った交差稜線部に欠け等が生じたりするのを防ぐことができる。
また、特に本実施形態では、これら第1、第2マージン前面取り部8d、9dのうち、第1マージン前面取り部8dの曲率半径R8dが第2マージン前面取り部9dの曲率半径R9dよりも大きくされている。従って、第2マージン前面取り部9dよりもドリル回転方向T側に位置して先に加工穴の内周面に摺接する第1マージン前面取り部8dが切刃部3の振れ回りによって食い込んだり欠けたりするのを一層確実に防止することが可能となる。
さらに、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、これら第1、第2マージン前面取り部8d、9dの曲率半径(半径)R8d、R9dが10μm~50μmの範囲内とされており、第1、第2マージン前面取り部8d、9dの食い込みや欠け等をさらに確実に防止しつつ、切刃部3を加工穴の内周面によって支持して振れ回りを抑制することができる。
すなわち、これら第1、第2マージン前面取り部8d、9dの曲率半径R8d、R9dが10μmより小さいと、第1、第2マージン前面取り部8d、9dが鋭利となって食い込みや欠けを防止することができなくなるおそれがある。一方、逆に曲率半径R8d、R9dが50μmより大きいと、加工穴の内周面に摺接する第1、第2マージン部8、9の第1、第2マージン外周面8c、9cの周方向の幅である第1、第2マージン幅W1、W2が小さくなって、切刃部3を確実に支持して振れ回りを抑えることができなくなるおそれがある。
また、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、第1マージン部8のドリル回転方向Tとは反対側を向く第1マージン後壁面8bと第1マージン外周面8cとの交差稜線部も凸曲線状に面取りされた第1マージン後面取り部8eとされるとともに、第2マージン部9のドリル回転方向Tとは反対側を向く第2マージン後壁面9bと第2マージン外周面9cとの交差稜線部も凸曲線状に面取りされた第2マージン後面取り部9eとされている。従って、これら第1、第2マージン後壁面8b、9bと第1、第2マージン外周面8c、9cとの交差稜線部が角度をもって交差している場合に対し、これらの交差稜線部が切刃部3の振れ回りによって加工穴の内周面に食い込んだり、欠け等が生じたりするのを防ぐことができる。
ただし、これら第1、第2マージン後面取り部8e、9eよりも、ドリル回転方向T側に位置する第1、第2マージン前面取り部8d、9dの方が、加工穴の内周面に食い込んだり欠け等が発生したりするおそれが高くなる。このため、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、第1マージン前面取り部8dの曲率半径R8dが第1マージン後面取り部8eの曲率半径R8eよりも大きくされるとともに、第2マージン前面取り部9dの曲率半径R9dが第2マージン後面取り部9eの曲率半径R9eよりも大きくされている。
さらに、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、第1マージン後面取り部8eの曲率半径R8eよりも第2マージン後面取り部9eの曲率半径R9eが小さくされている。このため、特に本実施形態のように第2マージン幅W2が第1マージン幅W1よりも小さくされている場合に、第2マージン部9の第2マージン外周面9cの第2マージン幅W2が小さくなりすぎるのを防ぐことができ、第2マージン部9によっても確実に切刃部3を支持して振れ回りを抑制することができる。
さらにまた、本実施形態では、軸線Oに直交する断面において、これら第1、第2マージン後面取り部8e、9eの曲率半径R8e、R9eが10μm~50μmの範囲内とされているので、第1、第2マージン後面取り部8e、9eにおいても食い込みや欠け等をさらに確実に防止しつつ、切刃部3を加工穴の内周面によって支持して振れ回りを抑制することができる。
すなわち、これら第1、第2マージン後面取り部8e、9eの曲率半径R8e、R9eが10μmよりも小さいと、第1、第2マージン後面取り部8e、9eが鋭利となって食い込みや欠けを防止することができなくなるおそれがある。また、逆に50μmよりも大きいと、第1、第2マージン幅W1、W2が小さくなってしまい、切刃部3を確実に支持して振れ回りを抑えることができなくなるおそれが生じる。
1 ドリル本体
2 シャンク部
3 切刃部
4 切刃
4a シンニング刃
5 先端逃げ面
6 切屑排出溝
7 ランド部
8 第1マージン部
8a 第1マージン前壁面
8b 第1マージン後壁面
8c 第1マージン外周面
8d 第1マージン前面取り部
8e 第1マージン後面取り部
9 第2マージン部
9a 第2マージン前壁面
9b 第2マージン後壁面
9c 第2マージン外周面
9d 第2マージン前面取り部
9e 第2マージン後面取り部
10 ヒール
11 外周逃げ面
12 凹部
12a 凹部12の底
13 凸部
13a 凸部13の突端
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向T
α 切刃4の先端角
R8d 第1マージン前面取り部8dの曲率半径
R8e 第1マージン後面取り部8eの曲率半径
R9d 第2マージン前面取り部9dの曲率半径
R9e 第2マージン前面取り部9eの曲率半径
W1 第1マージン幅
W2 第2マージン幅
D 切刃4の直径
L 切屑排出溝6の軸線O方向の長さ
P1 第1マージン前壁面8aの外周側への延長面と第1マージン外周面8cのドリル回転方向Tへの延長面との交点
P2 第2マージン前壁面9aの外周側への延長面と第2マージン外周面9cのドリル回転方向Tへの延長面との交点
E1 第1マージン直線
E2 第2マージン直線
θ 第1マージン直線E1と第2マージン直線E2との交差角
d 凸部13の突端13aから凹部12の底12aまでの軸線Oに対する半径方向の深さ

Claims (4)

  1. 軸線回りにドリル回転方向に回転させられるドリル本体の先端側の切刃部の外周に、このドリル本体の先端逃げ面に開口して後端側に延びる2つの切屑排出溝が周方向に間隔をあけて形成され、
    これらの切屑排出溝の上記ドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に、先端角が178°~182°の範囲内の切刃が形成されたドリルであって、
    上記2つの切屑排出溝の間の上記切刃部の外周面には、上記切刃の外周端に連なって上記ドリル本体の外周側に突出する第1マージン部と、この第1マージン部から上記ドリル回転方向とは反対側に間隔をあけて上記ドリル本体の外周側に突出する第2マージン部とが形成されており、
    上記切刃部の外周面には、上記第1マージン部と上記第2マージン部との間に、上記軸線に直交する断面において上記ドリル本体の内周側に凹む凹曲線状をなす複数の凹部が、周方向に互いに隣接して配置されていることを特徴とするドリル。
  2. 上記軸線に直交する断面において、複数の上記凹部の間に形成される凸部の突端から、この凸部の周方向に隣接する凹部の底までの上記軸線に対する半径方向の深さが、10μm以上とされていることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
  3. 上記軸線に直交する断面において、上記第1マージン部の外周側を向いて上記軸線を中心とした円弧状をなす第1マージン外周面の円弧の弦に沿った幅である第1マージン幅W1に対して、上記第2マージン部の外周側を向いて上記軸線を中心とした円弧状をなす第1マージン外周面の円弧の弦に沿った幅である第2マージン幅W2が、0.2×W1~0.6×W1の範囲内とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のドリル。
  4. 上記切刃の直径Dに対して、上記切屑排出溝の上記軸線方向の長さLが1×D~3×Dの範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のドリル。
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