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JP7434113B2 - 系統安定化装置、系統安定化方法、及びプログラム - Google Patents

系統安定化装置、系統安定化方法、及びプログラム Download PDF

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JP7434113B2 JP2020142452A JP2020142452A JP7434113B2 JP 7434113 B2 JP7434113 B2 JP 7434113B2 JP 2020142452 A JP2020142452 A JP 2020142452A JP 2020142452 A JP2020142452 A JP 2020142452A JP 7434113 B2 JP7434113 B2 JP 7434113B2
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Description

本発明の実施形態は、系統安定化装置、系統安定化方法、及びプログラムに関する。
電力系統の安定化を目的とした系統安定化装置では、系統において事故が発生した場合に備えて、事故が発生する前の電力の状態に基づいて事故が発生した場合における過渡安定度計算を周期的に実行し、事故に応じて解列(以下、遮断、或いは電制とも称する)の対象とする発電機(以下、電制機とも称する)を選択する方法が行われている(例えば、非特許文献1)。
上述した系統安定化装置においては、1分などの周期で電力系統の情報を反映した系統モデルの過渡安定度計算で系統事故発生時の脱調防止に必要な電制機を選定するため、過渡安定度計算の周期の間に再生可能エネルギー電源の出力急変などで電力系統の状態が変化した場合、脱調防止に必要な電制機が不足して脱調が防止できない可能性がある。
"付録2 脱調未然防止リレーシステム事例",平成12年10月,電気学会技術報告,第801号,p.153-154
本発明が解決しようとする課題は、再生可能エネルギー電源の出力急変などで電力系統の状態が変化した場合でも、系統事故発生時の脱調防止に必要な電制量を補正して脱調を未然に防止することができる系統安定化装置、系統安定化方法、及びプログラムを提供することである。
実施形態の系統安定化装置は、電力系統を構成する送電線の有効・無効電力を少なくとも含む系統情報を収集して系統モデルを構築し、想定事故条件の過渡安定度計算を事前に実施することで、想定事故条件ごとに発電機の脱調を防止するための第1の電制発電機を事前に選定しておき、系統事故が発生した場合に予め選定しておいた第1の電制発電機を解列することで脱調を防止する。系統安定化装置は、安定度評価モデル生成部と、追加電制実行部とを持つ。安定度評価モデル生成部は、事故発生前に、前記電力系統に含まれる一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる位相角偏差の将来値を推定するためのモデル定義情報と、前記一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる判別基準値とを、直前の前記過渡安定度計算の結果に基づいて準備しておく。追加電制実行部は、事故発生後に、前記電力系統の計測値に基づいて前記安定度評価モデル生成部で準備しておいた前記判別基準値を調整し、事故発生前後の前記電力系統の計測値を前記モデル定義情報に適用することで予測した位相角偏差の将来値と、前記調整した後の判別基準値とに基づいて、前記電力系統に含まれる発電機が脱調すると判別された場合に追加電制発電機を選定する。
本実施形態の系統安定化装置20が適用される電力供給システムの構成を示すブロック図。 本実施形態の追加電制実行部50が行う処理の流れの一例を示すフローチャート。 本実施形態の追加電制実行部50が行う処理を説明する図。
以下、実施形態の系統安定化装置、系統安定化方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。以下の説明において、複数の同じ種類の構成要素について、符号の末尾に「1」、「2」等の数値を、「-」(ハイフン)を介して付すことにより区別する。複数の同じ種類の構成を互いに区別しない場合には、符号の末尾に「1」、「2」等の数値を「-」(ハイフン)を介して付すことを省略する。
図1は、本実施形態の系統安定化装置20が適用される電力供給システムの構成を示すブロック図である。電力供給システムは、例えば、電力系統1と、伝送系10と、系統安定化装置20とを備える。
電力系統1は、母線2(母線2-1~2-5)と、送電線3(送電線3-1~3-4)と、変圧器4(変圧器4-1~4-4)と、発電機5(発電機5-1~5-4)と、遮断器6(遮断器6-1~6-4)と、情報端末11(情報端末11-1~11-5)と、制御端末12(制御端末12-1、12-2)とを備える。
変圧器4は、発電機5により発電される電力の電圧を所定電圧に変圧する。例えば、変圧器4-1は、発電機5-1により発電される電力の電圧を所定電圧に変圧する。発電機5は、太陽光、風力等の再生可能エネルギーによる電源、または火力機、原子力機、水力機等の同期機等化石燃料等の枯渇性エネルギーによって電力を発電する機器を示す。遮断器6は、発電機5により発電される電力の需要家への供給を遮断する。例えば、遮断器6-1は、発電機5-1により発電される電力の供給を遮断する。伝送系10は、専用通信回線やインターネット等の通信ネットワークにより構成され、情報端末11と系統安定化装置20との間で、後述する系統情報等の各種情報を伝送する。
情報端末11は、発電機5から母線2を介して需要家に供給される電力に関する情報(以下、系統情報と称する)を計測する。
系統情報は、電力系統1の各構成要素(母線2、送電線3、変圧器4、発電機5、遮断器6、情報端末11、及び制御端末12)における電力の需給状態に関する電力情報、及びの接続状態に関する接続情報を含む。系統情報が含む電気情報は、送電線3や変圧器4の有効電力と無効電力、母線2に印加される母線電圧などである。また、系統情報が含む接続情報は、送電線3と変圧器4の接続状態などである。系統情報は、例えば、電力系統1における各母線2の電圧や位相角、送電線3の有効電力潮流や無効電力潮流、発電機5の起動・停止情報、などの情報を含む。例えば、情報端末11-1は、母線2-1に接続する送電線3-1、3-2、3-5により供給される電力等に関する電力情報、及び送電線3-1等の接続情報を含む系統情報を計測する。
制御端末12は、系統安定化装置20からの制御信号に応じて、遮断器6を制御し、発電機5からの電力の供給の遮断を制御する。例えば、制御端末12-1は、系統安定化装置20からの制御信号に応じて、遮断器6-1、6-2を制御し、母線2-4を介した電力の供給の遮断を制御する。
電力系統1において、系統情報が得られない送電線3-5から左側の範囲を外部系統と称し、系統情報が得られる送電線3-5から右側の範囲を内部系統と称する。また、後述の連系点とは、系統情報が得られる範囲と得られない範囲との境界である母線2-1を意味し、連系線とは、送電線3-5を意味する。なお、外部系統にも、母線2や送電線3、変圧器4、発電機5などが複数存在する。
系統安定化装置20は、伝送系10を介して系統情報を取得し、取得した系統情報に基づいて過渡安定度計算を行い、想定事故が発生した場合に電力系統1の安定を維持するために電制を行う電制機を選択する。ここで、電制機は、電力の供給を遮断する発電機5である。以下の説明において、「事故」とは系統事故を意味するものとする。
本実施形態において、系統安定化装置20は、上述した過渡安定度計算に加えて、過渡安定度計算を行う周期よりも短い周期で電力系統1の状態が変化した場合に、追加の電制が必要か否かを判定し、追加の電制が必要な場合には、追加で電制を行う電制機を選択する。
系統安定化装置20は、電制実行部30と、安定度評価モデル生成部40と、追加電制実行部50とを備える。電制実行部30は、従来の過渡安定度計算による電制に関する処理を行う機能部である。安定度評価モデル生成部40、及び追加電制実行部50は、追加の電制に関する処理を行う機能部である。
電制実行部30は、系統情報収集部31と、基本系統記憶部32と、系統モデル作成部33と、安定度計算部34と、電制機選定部35と、第1段電制部36と、計算結果記憶部37とを備える。
系統情報収集部31は、伝送系10を介して情報端末11から予め設定された周期(例えば、1分)毎に、系統情報を取得する。系統情報収集部31は、取得した系統情報を、系統モデル作成部33に出力する。
系統モデル作成部33は、情報端末11により取得される系統情報、及び基本系統記憶部32に記憶される構成情報に基づいて、電力系統1の電力の潮流状態を表すシミュレーションモデル(以下、系統モデルと称する)を作成する。基本系統記憶部32は、構成情報を記憶する。
構成情報は、電力系統1の各構成要素の構成に関する情報である。構成情報は、例えば、電力系統1が有する送電線3のインピーダンスやインダクタンス、母線2と送電線3の相互接続情報、電力系統1の各構成要素の規模や台数、配置等を示す情報である。
安定度計算部34は、系統モデルを用いて過渡安定度計算による系統解析シミュレーションを行う。安定度計算部34は、予め設定されている種々の想定事故が発生した場合の過渡安定度計算を実行し、発電機が脱調しないか脱調するか、即ち、電力系統が安定か不安定かを判別する。安定度計算部34は、判定結果を電制機選定部35に出力する。電制機選定部35は、安定度計算部34による判定結果が不安定の場合、脱調する発電機の中から1台を電制機として選択し、追加する。安定度計算部34は、電制機選定部35により選択された電制機を遮断する条件で過渡安定度計算を実行し、再度、安定か不安定かを判別し、判定結果を電制機選定部35に出力する。この安定度計算部34と電制機選定部35とのやり取りを、判定結果が安定となるまで反復することで、想定事故において電力系統の安定性を維持できる電制機が決定(選択)される。なお、地絡事故等の発生前の直近に実施された、第1の電制発電機を決める一連の処理を直前計算と称する。
電制機選定部35は、想定事故が発生した場合に電力系統1を安定させるために選択した電制機の情報を第1段電制部36に出力する。また、安定度計算部34は、計算結果記憶部37に、過渡安定度計算に用いた系統モデルや、電制機の選定結果を含む各種条件と計算結果とを記憶させる。
第1段電制部36は、伝送系10を介して電力系統1における事故の発生及び事故条件を感知し、事故条件に対応した想定事故において予め選択された電制機の制御端末12に遮断指令を送る。これにより、該当する発電機5が電力系統1から切り離される。計算結果記憶部37は、過渡安定度計算に用いた系統モデルや、電制機の選定結果を含む各種条件と計算結果とを記憶する。
安定度評価モデル生成部40は、不安定側系統モデル策定部41と、安定側系統モデル策定部42と、判別基準策定部43と、出力変化モデル策定部44とを備える。
不安定側系統モデル策定部41は、各想定事故の事故条件における不安定発電機群モデルの状態量を計算するための各種定数を算出する。不安定発電機群モデルは、不安定側系統に属する複数の発電機5(不安定発電機群)を、当該複数の発電機と等価な1台の発電機にまとめたモデルである。不安定側系統に属する発電機5とは、想定事故の発生に対して安定を維持しない、つまり不安定となり得る発電機5であり、当該想定事故における電制の対象とする発電機5である。
不安定側系統モデル策定部41は、例えば、全ての発電機5の位相角重心を基準とした各発電機5の内部電圧位相角差を精査(算出)し、算出した位相角差が所定の指定値を超過している発電機を不安定側系統に属する発電機5とする。
また、不安定側系統モデル策定部41は、(式1)に示すように、不安定発電機群モデルの状態量を計算するための各種定数として、不安定発電機群モデルの慣性定数Mを算出する。
Figure 0007434113000001
(式1)において、Mは不安定側系統に属する識別番号iの発電機5の慣性定数を示す。識別番号i(i=0~n)は不安定発電機(不安定側系統に属する発電機5)を一意に識別する番号である。nは任意の自然数である。
安定側系統モデル策定部42は、計算結果記憶部37に保存された計算結果を用いて、各事故条件において外部系統に含まれる発電機の有効電力総和を推定するための関数を予め構築しておく。また、安定側系統モデル策定部42は、各想定事故の事故条件における安定発電機群モデルの状態量を計算するための各種定数を算出する。
安定発電機群モデルは、安定側系統に属する複数の発電機5(安定発電機群)を、当該複数の発電機5と等価な1台の発電機にまとめたモデルである。安定側系統とは、想定事故に対して安定を維持すると推定される系統であり、例えば、想定事故が発生した箇所から電気的な接続の観点から離れた箇所に位置する発電機等の集合である。想定事故の発生が想定される箇所から離れた箇所に設けられた発電機5は、想定事故の影響を受け難く、想定事故に対して安定を維持すると考えられるためである。
安定側系統モデル策定部42は、例えば、全ての発電機5の位相角重心を基準とした各発電機の内部電圧位相角差を精査(算出)し、算出した位相角差が所定の指定値を超過していないものを安定側系統に属する発電機5とする。
ここで、安定側系統は、想定事故が発生した箇所から離れた箇所に設けられている場合が多いと考えられるため、情報端末11により安定側系統における系統情報を直接的に計測することができない場合がほとんどであるとみなしてよい。このため、実際に事故が発生した直後の安定側系統の系統情報をリアルタイムに測定することは困難である。
この対策として、本実施形態において安定側系統モデル策定部42は、安定発電機群モデルの有効電力を推定するための関数として、安定側系統の総負荷と連系点母線電圧との関係を示す回帰モデル(関数)を作成する。これにより、事故が発生した直後の安定側系統の系統情報を、回帰モデルを用いて推測する。
また、安定側系統モデル策定部42は、(式2)に示すように、安定発電機群モデルの状態量を計算するための各種定数として、安定発電機群モデルの慣性定数Mを算出する。
Figure 0007434113000002
(式2)において、Mは安定発電機群モデルの慣性定数、Mは安定側系統に属する識別番号jの発電機5の慣性定数を示す。識別番号j(j=0~m)は安定発電機(安定側系統に属する発電機5)を一意に識別する番号である。mは任意の自然数である。
判別基準策定部43は、例えば、統合発電機モデルの位相角偏差Δδの閾値(以下、判別基準値R)を算出する。位相角偏差については、後で詳しく説明する。統合発電機モデルの判別基準値Rは、後述する追加電制実行部50の安定度判別部73により、事故発生後における統合発電機モデルの安定度合いを判別する閾値として用いられる。
安定となる第1の電制発電機台数の1段階手前の不安定な過渡安定度計算結果から求めた統合発電機モデルの有効電力偏差ΔP(後述)とΔδとの関係は、あるΔδまではΔPが増加し、その後に減少に転じるsin関数で近似可能な軌跡を辿る。判別基準策定部43は、ΔPが減少に転じて0となるときのΔδを判別基準値Rとする。判別基準値Rは事故条件ごとに準備しておく。また、判別基準策定部43は、ΔP最大時のΔδを保存しておく。
出力変化モデル策定部44は、計算結果記憶部37に保存された計算結果を用いて、第1の電制及び追加電制実施に起因する、統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分を求めるための係数を予め算出しておく。ここで言う有効電力偏差ΔPの変化分とは、電制実施直後のステップ的な変化量である。出力変化モデル策定部44は、さらに、第1の電制発電機に各追加電制発電機候補を加えた全電制パターンにおける、追加電制発電機の端子母線から見た、他の不安定発電機までの短絡インピーダンスと、安定発電機までの短絡インピーダンスを求め、2つの短絡インピーダンスの合計値を分母、安定発電機までの短絡インピーダンスを分子とした比率を計算しておく。以上、不安定側系統モデル策定部41と、安定側系統モデル策定部42と、出力変化モデル策定部44とによって策定されたモデル情報が、「モデル定義情報」の一例である。
追加電制実行部50は、電力系統で事故が発生した後に動作する機能部である。追加電制実行部50は、電力系統で事故が発生した場合において、第1電制機による電制を実行した後に追加の電制を行うか否かを、安定度評価モデル生成部40により生成された関数等を用いて判定し、追加の電制が必要な場合には、その対象とする電制機を選択する。
追加電制実行部50は、高速情報収集部51と、発電機状態計算部60と、出力変化推定部71と、判別基準調整部72と、安定度判別部73と、追加電制機選定部74とを備える。
高速情報収集部51は、伝送系10を介して、電制実行部30による系統情報を取得する周期よりも高速なサンプリング周期(例えば、ミリ秒オーダー)で系統情報を取得する。ここでの系統情報には、発電機有効電力、送電線有効電力、連系点と各発電機間の位相角差、連系点の電圧、連系線の有効電力などの各種情報が含まれる。高速情報収集部51は、常時、高速なサンプリング周期で系統情報を収集してバッファメモリに書き込み、一定の時間区間の系統情報を参照可能に保持している。そして、高速情報収集部51は、事故が発生したと判定した場合、事故が発生する前の所定時刻(以下、情報収集開始時という)から所定の時間が経過するまで(以下、情報収集終了時という)の一定の時間区間に収集した系統情報を抽出する。高速情報収集部51は、抽出した一定の時間区間の系統情報を、発電機状態計算部60に出力する。
なお、事故が発生したか否かは、保護リレーの動作信号を取得することで判定することができる。例えば、保護リレーの1つでは、送電線の両端の電流を計測し、その差分が所定の閾値以上であるか否かにより判定される。この場合、電流の差分が所定の閾値以上である場合、事故が発生したと判定される。
発電機状態計算部60は、高速情報収集部51から取得した系統情報を用いて、事故発生後の発電機5の状態を計算する。発電機5の状態とは、例えば、発電機5の有効電力偏差ΔP、及び位相角偏差Δδである。有効電力偏差ΔPは、事故発生前の有効電力を基準とした、情報収集開始時から情報収集終了時までの有効電力の時系列変化である。位相角偏差Δδは、事故発生前の位相角を基準とした、情報収集開始時から情報収集終了時までの位相角の時系列変化である。
統合発電機モデルの位相角偏差Δδは(式3)で求められる。
Figure 0007434113000003
(式3)において、tは情報収集開始時から経過した所定の時刻、Δδは不安定発電機群モデルの位相角偏差、Δδは安定発電機群モデルの位相角偏差、を示す。
また、不安定発電機群モデルの位相角偏差Δδは、(式4)と(式5)に基づいて求められる。
Figure 0007434113000004
Figure 0007434113000005
(式4)において、δは不安定発電機群モデルの位相角を示す。(式5)において、Mは不安定側系統に属する識別番号iの発電機5の慣性定数を示し、δは不安定側系統に属する識別番号iの発電機5の位相角を示す。
同様に、安定発電機群モデルの位相角偏差Δδは、(式6)と(式7)に基づいて求められる。
Figure 0007434113000006
Figure 0007434113000007
(式6)において、δは安定発電機群モデルの位相角を示す。(式7)において、Mは安定側系統に属する識別番号jの発電機5の慣性定数を示し、δは安定側系統に属する識別番号jの発電機5の位相角を示す。
発電機状態計算部60は、不安定発電機計算部61と、安定発電機計算部62と、位相角偏差計算部63と、位相角偏差係数算出部64と、調整要否判定部65と、位相角偏差推定部66とを備える。
不安定発電機計算部61は、不安定側系統モデル策定部41で算出した各種定数と高速情報収集部51で収集された情報に基づいて、事故発生から情報収集終了までの計測期間における所定間隔(例えば、10ミリ秒間隔)刻みの不安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG1を計算する。所定間隔は、高速情報収集部51が情報を収集する周期に依存する。
具体的に、不安定発電機計算部61は、(式8)に示すように、時刻tにおける不安定発電機群モデルの有効電力から事故発生前における不安定発電機群モデルの有効電力を減ずることにより不安定発電機群モデルの有効電力偏差を計算する。
Figure 0007434113000008
(式8)において、ΔPG1は不安定発電機群モデルの有効電力偏差、PG1(t)は情報収集開始時から所定の時刻tが経過した時点における不安定発電機群モデルの有効電力、PG1(0)は情報収集開始時(つまり、事故発生前)における不安定発電機群モデルの有効電力を示す。
なお、不安定発電機計算部61は、不安定発電機群モデルの時刻tにおける有効電力PG1(t)を、(式9)に示すように、高速情報収集部51により収集された不安定側系統に属する発電機5の時刻tにおける有効電力PGi(t)を加算することにより算出する。
Figure 0007434113000009
安定発電機計算部62は、安定側系統モデル策定部42で得られた関数と各種定数、及び高速情報収集部51で収集された情報に基づいて、事故発生から情報収集終了までの計測期間における所定間隔(例えば、10ミリ秒間隔)刻みの安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG2を計算する。この間隔は、不安定発電機計算部61の場合と同様に、高速情報収集部51が情報を収集する周期に依存する。
具体的に、安定発電機計算部62は、(式10)に示すように、時刻tにおける安定発電機群モデルの有効電力から事故発生前における安定発電機群モデルの有効電力を減ずることにより安定発電機群モデルの有効電力偏差を計算する。
Figure 0007434113000010
(式10)において、ΔPG2は安定発電機群モデルの有効電力偏差、PG2(t)は情報収集開始時から所定の時刻tが経過した時点における安定発電機群モデルの有効電力、PG2(0)は情報収集開始時(つまり、事故発生前)における安定発電機群モデルの有効電力を示す。
安定発電機群モデルの有効電力PG2(t)は、(式11)に示す通り、安定側系統に属する発電機5の時刻tにおける有効電力PGi(t)の和として定義される。
Figure 0007434113000011
なお、実際の計算に当たっては、安定発電機計算部62は、安定側系統モデル策定部42により構築された回帰モデルに、高速情報収集部51により収集された連系点母線電圧を入力させることにより、安定側系統における総負荷を推定し、計測した安定側系統へ流れる有効電力と推定した総負荷の差分を安定側系統の発電機有効電力の総和としてよい。そして、安定発電機計算部62は、安定側系統の発電機有効電力の総和に内部系統の安定発電機の有効電力の計測値を加算し、安定発電機群モデルの有効電力PG2とする。
位相角偏差計算部63は、不安定発電機計算部61で計算された不安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG1と、安定発電機計算部62で計算された安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG2と、(式12)とを用いて、事故発生から高速情報収集部51の情報収集終了までの計測期間における統合発電機モデルの位相角偏差Δδを計算する。
Figure 0007434113000012
(式12)において、Mは発電機の慣性定数、ΔPは統合発電機モデルの有効電力偏差、を示す。慣性定数Mは、不安定発電機群モデルの慣性定数M及び不安定発電機群モデルの慣性定数Mを用いて、(式13)によって計算される。
Figure 0007434113000013
また、統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPは、不安定発電機群モデルの慣性定数M、不安定発電機群モデルの慣性定数M、不安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG1、及び安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG2を用いて、(式14)によって計算される。
Figure 0007434113000014
なお、(式12)は、(式15)に示す運動方程式において、ダンピング係数Dを0、機械入力Pを事故発生前の有効電力P(0)としたものである。
Figure 0007434113000015
位相角偏差係数算出部64は、位相角偏差計算部63で求めた計測期間の統合発電機モデルの位相角偏差Δδと、その計算に用いた統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPに基づいて、有効電力偏差ΔPと位相角偏差Δδの関係を表す(式16)の係数Kを算出する。係数Kは、「第1の係数」の一例である。
Figure 0007434113000016
(式16)において、αは有効電力偏差ΔPが最大となる位相角偏差Δδとπ/2[rad]との差分であり、判別基準策定部43で予め求めておく。αは、「第2の係数」の一例である。
調整要否判定部65は、高速情報収集部51で収集された情報に基づいて、式(16)における差分αの調整要否を判定する。調整が必要であると判断した時には、予め設定された値をαから減算し、その結果を新たなαとして設定する。差分αは、(式17)におけるYが所定の閾値以下のとき、要調整と判定される。
Figure 0007434113000017
(式17)において、Yは直前計算に対応した外部系統リアクタンスの評価指標を示し、Yは事故発生前後の計測値による外部系統リアクタンスの評価指標を示す。Yは(式18)によって、Yは(式19)によって計算される。
Figure 0007434113000018
Figure 0007434113000019
さらに、(式18)のX(t)は(式20)によって、X(0)は(式21)によって計算される。また、(式19)のXA(t)は(式22)によって、XA(0)は(式23)によって計算される。
Figure 0007434113000020
Figure 0007434113000021
Figure 0007434113000022
Figure 0007434113000023
(式20)から(式23)において、δ(0)は直前計算結果から求めた統合発電機モデル換算の位相角初期値、Δδは統合発電機モデル換算の位相角偏差、Pは連系線の有効電力、Vは連系点の母線電圧を示す。また、添え字のBは直前計算の結果及びその結果を用いた計算値を表し、Aは計測値及び計測値を用いた計算値を表す。
位相角偏差推定部66は、後述する出力変化推定部71によって計算された第1の電制の影響を反映した、第1の電制直後の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPを始点とし、前述の(式12)と(式16)を用いた時系列の反復計算により、第1の電制以降における各時間ステップの統合発電機モデルの位相角偏差Δδ(将来値)を求める。ただし、(式12)における慣性定数Mは第1の電制で選択された発電機分を控除した数値とする。さらに、位相角偏差推定部66は、第1の電制以降に追加電制が実施された場合、出力変化推定部71で求めた統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分を、追加電制時刻の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPに加算し、前述の(式12)と(式16)を用いた時系列の反復計算により、追加電制以降の統合発電機モデルの位相角偏差Δδを求める。この場合、(式12)における慣性定数Mは、第1の電制及び追加電制で選択された発電機分を控除した数値とする。
出力変化推定部71は、出力変化モデル策定部44で予め求めておいた、第1の電制実施時の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分を、電制直前の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPに加算する。出力変化推定部71は、また、出力変化モデル策定部44から得た短絡インピーダンスの比率に、後述する追加電制機選定部74によって選定された追加電制機の事故前の有効電力を乗じて、統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分を求める。
判別基準調整部72は、必要に応じて、判別基準策定部43で求めた判別基準値Rを調整する。まず、判別基準調整部72は、事故発生前における、連系点と各不安定発電機間の位相角差の計測値を高速情報収集部51から取得し、直前計算における連系点と各不安定発電機間の位相角差を計算結果記憶部37から取得する。次に、発電機ごとに、計測値の位相角差と直前計算の位相角差の差分を取り、慣性加重平均で1つの位相角差を求める。そして、この位相角差が正値の場合、すなわち、直前計算より計測値の位相角差が大きい場合、慣性加重平均で求めた位相角差の2倍値を判別基準策定部43で求めた判別基準値Rから減じて新たな判別基準値Rとする。これにより、直前計算より計測値の位相角差が大きい場合、判別基準値Rが小さくなるので、不安定と判別し易くなり、不安定を安定と誤判別することが少なくなる。
安定度判別部73は、位相角偏差推定部66によって推定された統合発電機モデルの位相角偏差Δδと判別基準調整部72から得た判別基準値Rとを比較する。安定度判別部73は、位相角偏差Δδの最大値が判別基準値Rを下回った場合に安定と判別する一方、位相角偏差Δδの最大値が判別基準値Rを下回った場合には不安定と判別する。
追加電制機選定部74は、出力変化モデル策定部44で求めた係数に基づいて、追加電制候補の中から、電制による統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分が最も大きいものを追加電制機に選定する。追加電制機選定部74は、出力変化モデル策定部44から得た短絡インピーダンスの比率が最も大きいものを追加電制機に選定する。なお、追加電制機選定部74は、追加電制候補の組合せすべての安定判別を行い、安定となる中から電制量が最少となる追加電制機を選定してもよい。
図2は、本実施形態の追加電制実行部50が行う処理の流れを説明するフローチャートである。まず、高速情報収集部51は、予め高速なサンプリング周期で収集されている系統情報のうち、指定された一定の時間区間の系統情報を収集する(ステップS1)。
次に、不安定発電機計算部61が、不安定側系統モデル策定部41で算出した各種定数と高速情報収集部51で収集された情報に基づいて、事故発生から情報収集終了までの計測期間における不安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG1を計算する(ステップS2)。次に、安定発電機計算部62が、安定側系統モデル策定部42で得られた関数と各種定数、及び高速情報収集部51で収集された情報に基づいて、当該計測期間における安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG2を推測する(ステップS3)。
次に、位相角偏差計算部63が、不安定発電機計算部61で計算された不安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG1と、安定発電機計算部62で計算された安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG2とに基づいて、計測期間における統合発電機モデルの位相角偏差Δδを計算する(ステップS4)。次に、位相角偏差係数算出部64が、位相角偏差計算部63で求めた計測期間の統合発電機モデルの位相角偏差Δδと、その計算に用いた統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPに基づいて、有効電力偏差推定係数Kを算出する(ステップS5)。
次に、調整要否判定部65が、(式17)におけるYが所定の閾値以下であるか否かに基づいて、推定係数の調整が必要であるか否かを判定する(ステップS6)。調整要否判定部65は、Yが所定の閾値以下である場合には、調整が必要であると判断し、例えば、予め設定された値をαから減算し、その結果を新たなαとして設定する。
次に、出力変化推定部71が、出力変化モデル策定部44で予め求めておいた、第1の電制実施時の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分を、電制直前の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPに加算する(ステップS7)。次に、位相角偏差推定部66が、出力変化推定部71によって計算された第1の電制の影響を反映した、第1の電制直後の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPを始点とし、前述の(式12)と(式16)を用いた時系列の反復計算により、第1の電制以降における各時間ステップの統合発電機モデルの位相角偏差Δδを求める(ステップS8)。
次に、判別基準調整部72が、上述した1つの慣性加重平均で求めた位相角差が正値であるか否かを判定し、正値の場合、当該位相角差の2倍値を判別基準策定部43で求めた判別基準値Rから減じて新たな判別基準値Rとする(ステップS9)。次に、安定度判別部73が、位相角偏差推定部66によって推定された統合発電機モデルの位相角偏差Δδと判別基準調整部72から得た判別基準値Rとを比較する。安定度判別部73は、位相角偏差Δδの最大値が判別基準値Rを下回った場合に安定と判別する一方、位相角偏差Δδの最大値が判別基準値Rを上回った場合には不安定と判別する(ステップS10)。
安定度判別部73が不安定と判別した場合、追加電制機選定部74は、出力変化モデル策定部44で求めた係数に基づいて、追加電制候補の中から、電制による統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分が最も大きいものを追加電制機に選定する(ステップS11)。次に、出力変化推定部71が、出力変化モデル策定部44から得た短絡インピーダンスの比率に、ステップS10で選定した追加電制機の事故前の有効電力を乗じて統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分と定義する(ステップS12)。
次に、位相角偏差推定部66が、出力変化推定部71で求めた統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変化分を、追加電制時刻の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPに加算し、前述の(式12)と(式16)を用いた時系列の反復計算により、追加電制以降の統合発電機モデルの位相角偏差Δδを求める(ステップS13)。その後、位相角偏差推定部66は、ステップS10に処理を戻す。
安定度判別部73が安定と判別した場合、追加電制実行部50は、ステップS11からステップS13の繰り返しで選定された追加電制機の制御端末12に遮断指令を送信し、該当する発電機を電力系統から切り離す(ステップS14)。ステップS11からステップS13の処理が実行されず、ステップS14に処理が進んだ場合、追加電制機は選択されていない。そのため、追加電制実行部50は、いずれの発電機の制御端末12にも遮断指令は送らない。
図3は本実施形態の追加電制実行部50が行う処理を説明する図である。図3は発電機5の有効電力偏差及び位相角偏差の時系列変化を示しており、時刻t0が情報収集開始時(事故前)、時刻t1が事故発生時(事故発生)、時刻t2が事故除去時(事故除去)、時刻t3が情報収集終了時(計測終了)、時刻t4が第1電制機による電制実行時(第1の電制)、時刻t5が追加の電制実行時(追加電制)を示している。
図3の最上図は、安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG2の推移を示している。事故が発生した時刻t1において、ΔPG2は低下したものの、事故が除去された時刻t2以降はΔPG2が増加している。図3の上から二段目の図は、不安定発電機群モデルの有効電力偏差ΔPG1の推移を示している。時刻t1において、ΔPG1は大きく低下し、t2以降はやや増加したものの、再び低下に転じている。図3の上から三段目は、ΔPG2とΔPG1と(式14)で求めた統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPを示している。ΔPG1と同様に、ΔPも時刻t1において大きく低下し、時刻t2以降はやや増加したものの、再び低下に転じている。図3の上から四段目は、不安定発電機群モデルの位相角偏差Δδから安定発電機群モデルの位相角偏差Δδを減算した統合発電機モデルの位相角偏差Δδの推移を示している。時刻t1以降、位相角偏差Δδは単調に増加している。
以上の説明は、計測が終了する時刻t3以前の推移であるが、時刻t3以降の推移は電制の有無によって変化すると予測される。具体的には、(A)電制を実施しない場合、(B)第1の電制のみを実施する場合、(C)追加の電制を実施する場合のそれぞれについて、有効電力偏差と位相角偏差の推移の予測を説明する。
(A)電制を実施しない場合、時刻t3以降、位相角偏差Δδは判別基準値Rを超えて単調に増加し、それに応じて、有効電力偏差ΔPはゼロから乖離して単調に減少すると予測されるため、好ましくない。(B)第1の電制のみを実施する場合、時刻t4において位相角偏差Δδの増加の傾きは減少し、有効電力偏差ΔPは正の値を取ると予測される。しかし、依然として、位相角偏差Δδは判別基準値Rを超えて単調に増加し、それに応じて、有効電力偏差ΔPはゼロから乖離して単調に減少すると予測されるため、好ましくない。(C)追加の電制を実施する場合、時刻t5において、位相角偏差Δδは減少に転じ、有効電力偏差ΔPは時刻t5以降も正の値を取りつつゼロから乖離しないと予測されるため、好ましい。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、過渡安定度計算の計算結果をもとに予め準備しておいた関数や係数と、事故発生前後の電力系統や発電機の計測情報を用いて、電力系統全体を発電機一機に換算した統合発電機モデルの位相角偏差の時間推移を計算の上、第1の電制を反映した位相角偏差の時間推移を推定して安定判別を行い、発電機が脱調する不安定状態と判定した際は、追加電制機の選定と、追加電制を反映した位相角偏差の時間推移の推定と、安定判別を反復することで、安定となる追加電制機を選択し、第1の電制に続いて追加電制機を電力系統から遮断することにより、第1の電制では不安定となる場合であっても発電機が脱調しない安定状態を維持することができる。また、連系点と不安定発電機間の位相角差に応じて判別基準値を調整すること、及び、計測期間以降の統合発電機モデルの有効電力偏差ΔPの変遷を推定する計算式と係数を用いることで、不安定状態を安定と誤判定することが抑制される。
上述の実施形態においては、統合発電機モデルの位相角偏差Δδを用いて安定判別する例を示したが、位相角偏差に事故発生前の位相角初期値を加算した位相角δで安定判別してもよい。その場合は、判別基準策定部43で得られる判別基準も位相角初期値が加算されたものとなる。
また、上述の実施形態においては、高速情報収集部51による情報収集が第1の電制実施より前に終了する例を示したが、第1の電制実施より後にも高速情報収集部51による情報収集が行われてもよい。その場合は、第1の電制による不安定発電機群モデルの有効電力偏差は高速情報収集部51の情報に基づいて計算される。
また、上述の実施形態においては、第1の電制による有効電力偏差の変化分を反映し、それに基づいて第1の電制後の位相角偏差を計算する例を示した。しかし、例えば、変化分がゼロの場合のように、反映する変化分が著しく小さい場合には、第1の電制による変化分の反映及び位相角偏差の計算を実行しなくともよい。その場合、第1の電制を実行せず、追加の電制のみが実行されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1 電力系統
2 母線
3 送電線
4 変圧器
5 発電機
6 遮断器
10 伝送系
11 情報端末
12 制御端末
20 系統安定化装置
30 電制実行部
40 安定度評価モデル生成部
50 追加電制実行部

Claims (9)

  1. 電力系統を構成する送電線の有効・無効電力を少なくとも含む系統情報を収集して系統モデルを構築し、想定事故条件の過渡安定度計算を事前に実施することで、想定事故条件ごとに発電機の脱調を防止するための第1の電制発電機を事前に選定しておき、系統事故が発生した場合に予め選定しておいた第1の電制発電機を解列することで脱調を防止する系統安定化装置であって、
    事故発生前に、前記電力系統に含まれる一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる位相角偏差の将来値を推定するためのモデル定義情報と、前記一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる判別基準値とを、直前の前記過渡安定度計算の結果に基づいて準備しておく安定度評価モデル生成部と、
    事故発生後に、前記電力系統の計測値に基づいて前記安定度評価モデル生成部で準備しておいた前記判別基準値を調整し、事故発生前後の前記電力系統の計測値を前記モデル定義情報に適用することで予測した位相角偏差の将来値と、前記調整した後の判別基準値とに基づいて、前記電力系統に含まれる発電機が脱調すると判別された場合に追加電制発電機を選定する追加電制実行部と、
    を備える系統安定化装置。
  2. 前記追加電制実行部は、
    前記事故発生前後の、各発電機の有効電力、連系点と各発電機間の位相角差、連系点の電圧、及び連系線の有効電力を少なくとも含む前記電力系統の計測値を、前記系統情報よりも高速な刻み幅で収集する高速情報収集部と、
    前記安定度評価モデル生成部のモデル定義情報と前記高速情報収集部が収集した前記事故発生前後の一定期間の計測値に基づいて、前記電力系統に含まれる一以上の発電機を1台に換算した統合発電機モデルの位相角偏差を計算し又は推定する発電機状態計算部と、
    前記第1の電制発電機及び前記追加電制発電機の解列による前記統合発電機モデルの有効電力偏差の変化分を推定する出力変化推定部と、
    前記高速情報収集部から得た連系点と各発電機間の位相角差とに基づいて、前記判別基準値を調整する判別基準調整部と、
    前記発電機状態計算部で計算し又は推定された統合発電機モデルの位相角偏差と前記判別基準調整部で調整された判別基準値に基づいて、脱調有無を判別する安定度判別部と、
    脱調有りの場合に追加電制発電機を選定する追加電制機選定部と、
    を備える、
    請求項1に記載の系統安定化装置。
  3. 前記安定度評価モデル生成部は、
    前記過渡安定度計算の結果に基づいて、前記電力系統に含まれる一以上の発電機を不安定発電機群と安定発電機群に分け、前記不安定発電機群を1台の発電機に換算した不安定発電機群モデルのモデル定義情報を策定する不安定側系統モデル策定部と、
    前記過渡安定度計算の結果に基づいて、外部系統の安定発電機の有効電力総和を推定する関数、及び、前記安定発電機群を1台の発電機に換算した安定発電機群モデルのモデル定義情報を策定する安定側系統モデル策定部と、
    前記過渡安定度計算の結果に基づいて、前記判別基準値を作成する判別基準策定部と、
    前記過渡安定度計算の結果に基づいて、前記第1の電制発電機及び前記追加電制発電機の解列による前記統合発電機モデルの有効電力偏差の変化分を計算するための係数を求めておく出力変化モデル策定部と、を備え、
    前記電力系統に含まれる一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる位相角偏差の将来値を推定するためのモデル定義情報は、前記不安定発電機群モデルのモデル定義情報と、前記安定発電機群モデルのモデル定義情報とを含む、
    請求項2に記載の系統安定化装置。
  4. 前記発電機状態計算部は、
    前記不安定発電機群モデルの定義情報と前記高速情報収集部が収集した前記事故発生前後の一定期間の計測値とに基づき、前記不安定発電機群モデルの有効電力偏差を計算する不安定発電機計算部と、
    前記安定発電機群モデルの定義情報、前記関数、及び前記高速情報収集部が収集した前記事故発生前後の一定期間の計測値に基づき、前記安定発電機群モデルの有効電力偏差を計算する安定発電機計算部と、
    前記安定度評価モデル生成部のモデル定義情報と、前記不安定発電機計算部の不安定発電機群モデルの有効電力偏差と、前記安定発電機計算部の安定発電機群モデルの有効電力偏差とに基づいて、前記統合発電機モデルの位相角偏差を計算する位相角偏差計算部と、
    前記位相角偏差計算部によって計算された位相角偏差に基づいて、前記一定期間以降の位相角偏差の将来値を推定するための第1の係数を求める位相角偏差係数算出部と、
    前記高速情報収集部が収集した前記事故発生前後の一定期間の計測値に基づき、前記一定期間以降の位相角偏差の将来値を推定するための第2の係数を調整する調整要否判定部と、
    前記安定度評価モデル生成部のモデル定義情報と、前記出力変化推定部によって計算された前記統合発電機モデルの有効電力偏差の変化分と、前記位相角偏差係数算出部によって求められた第1の係数と、前記調整要否判定部で調整された第2の係数に基づいて、前記第1の電制発電機及び前記追加電制発電機の解列を反映した統合発電機モデルの位相角偏差を推定する位相角偏差推定部と、を備える、
    請求項3に記載の系統安定化装置。
  5. 前記位相角偏差係数算出部は、前記位相角偏差を計算するために用いられた前記統合発電機モデルの有効電力偏差に更に基づいて、前記第1の係数を予め算出しておく、
    請求項4に記載の系統安定化装置。
  6. 前記調整要否判定部は、前記高速情報収集部から得た連系点の電圧と連系線の有効電力とに基づいて、前記第2の係数を調整する、
    請求項4または5に記載の系統安定化装置。
  7. 前記判別基準調整部は、前記高速情報収集部から得た連系点と各不安定発電機間の位相角差に基づき、前記判別基準策定部で求めた前記判別基準値を調整する、
    請求項3から6のうちいずれか1項に記載の系統安定化装置。
  8. 電力系統を構成する送電線の有効・無効電力を少なくとも含む系統情報を収集して系統モデルを構築し、想定事故条件の過渡安定度計算を事前に実施することで、想定事故条件ごとに発電機の脱調を防止するための第1の電制発電機を事前に選定しておき、系統事故が発生した場合に予め選定しておいた第1の電制発電機を解列することで脱調を防止する系統安定化装置が、
    事故発生前に、前記電力系統に含まれる一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる位相角偏差の将来値を推定するためのモデル定義情報と、前記一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる判別基準値とを、直前の前記過渡安定度計算の結果に基づいて準備しておき、
    事故発生後に、前記電力系統の計測値に基づいて準備しておいた前記判別基準値を調整し、事故発生前後の前記電力系統の計測値を前記モデル定義情報に適用することで予測した位相角偏差の将来値と、前記調整した後の判別基準値とに基づいて、前記電力系統に含まれる発電機が脱調すると判別された場合に追加電制発電機を選定する、
    系統安定化方法。
  9. 電力系統を構成する送電線の有効・無効電力を少なくとも含む系統情報を収集して系統モデルを構築し、想定事故条件の過渡安定度計算を事前に実施することで、想定事故条件ごとに発電機の脱調を防止するための第1の電制発電機を事前に選定しておき、系統事故が発生した場合に予め選定しておいた第1の電制発電機を解列することで脱調を防止する系統安定化装置のプロセッサに、
    事故発生前に、前記電力系統に含まれる一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる位相角偏差の将来値を推定するためのモデル定義情報と、前記一以上の発電機の脱調有無の判別に用いる判別基準値とを、直前の前記過渡安定度計算の結果に基づいて準備させておき、
    事故発生後に、前記電力系統の計測値に基づいて準備しておいた前記判別基準値を調整し、事故発生前後の前記電力系統の計測値を前記モデル定義情報に適用することで予測した位相角偏差の将来値と、前記調整した後の判別基準値とに基づいて、前記電力系統に含まれる発電機が脱調すると判別された場合に追加電制発電機を選定させる、
    プログラム。
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