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JP7433107B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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JP7433107B2
JP7433107B2 JP2020057838A JP2020057838A JP7433107B2 JP 7433107 B2 JP7433107 B2 JP 7433107B2 JP 2020057838 A JP2020057838 A JP 2020057838A JP 2020057838 A JP2020057838 A JP 2020057838A JP 7433107 B2 JP7433107 B2 JP 7433107B2
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Description

本発明は、軟便の吸収に適した吸収性物品に関する。
吸収性物品においては、水様便や泥状便等の軟便の吸収性を改善する技術が種々提案されている。本出願人も、例えば特許文献1記載の技術を提案している。この先行技術は、吸収要素と、吸収要素の表側に配置されたトップシートを有する基本構造において、軟便が透過可能な有孔トップシートを採用するとともに、軟便を取り込み可能な繊維集合体層をトップシートの裏に隣接して設けたものである。この先行技術では、軟便はトップシートを透過して繊維集合体層に至り、このうち吸収要素により吸収可能な液分及び微小な固形分が吸収要素に移行し、吸収要素により吸収不可能な固形分は繊維集合体層に残留し保持される(ろ過作用)。この結果、有孔トップシート及び繊維集合体層を有しないものと比較して、軟便はトップシート上に残りにくくなるだけでなく、繊維集合体層に残留する軟便がトップシート上に逆戻りしにくいものとなる。
この先行技術の吸収性物品では、繊維集合体の密度を低くすることにより軟便の取り込み速度を向上させ、トップシート上での軟便の広がりを低減できるが、繊維集合体の密度を低くし過ぎると軟便の保持性が低下し、逆戻り防止性が低下する。反対に、繊維集合体の密度を高くすると、逆戻り防止性は向上するが、軟便の取り込み速度が低下し、トップシート上で軟便が広がりやすくなる。つまり、先行技術では、軟便の取り込み速度と、逆戻り防止性との両立が困難であった。
特開2006-141647号公報 特開2016-112232号公報 特開2010-119741号公報
そこで、本発明の主たる課題は、逆戻り防止性の低下を防止しつつ軟便の取り込み速度を向上させることにある。
上記課題を解決した本発明の代表的態様は以下のとおりである。
<第1の態様>
軟便が透過可能な多数の孔を有するトップシートと、
前記トップシートの裏に隣接して設けられた、軟便を取り込み可能な繊維集合体層と、
前記繊維集合体層の裏側に設けられた吸収要素とを備え、
前記繊維集合体層の表面から裏側に凹む凹部が形成され、
前記トップシートの裏面と前記凹部の内面との間に受容空間が形成され、
前記トップシート上の排泄物が前記孔を通じて前記受容空間に流入可能である、
ことを特徴とする、吸収性物品。
(作用効果)
本吸収性物品の特徴は、トップシートの裏に隣接して、軟便を取り込み可能な繊維集合体層を設けるだけでなく、さらに繊維集合体層の表面から裏側に凹む凹部を形成し、トップシートの裏面と前記凹部の内面との間に受容空間を形成したところにある。この場合、軟便はトップシートの孔を通じて受容空間に流入可能であるため、受容空間が無い場合と比較して軟便の取り込み速度は高いものとなるだけでなく、受容空間は繊維集合体層により囲まれており、受容空間内に流入した軟便は繊維集合体層に取り込まれ、保持可能となるため、逆戻り防止性も良好となる。しかも、繊維集合体層の表面積も大きくなるため、繊維集合体による軟便の取り込み保持性も向上する。これらの作用は単に受容空間を設けただけのものとは質的に異なる。そして、本吸収性物品は、これらの作用によって、逆戻り防止性の低下を防止しつつ軟便の取り込み速度を向上させることができる。
<第2の態様>
前記吸収要素は、繊維を含む吸収材が集合した吸収体を有し、
前記凹部は、前記繊維集合体層の表面から前記吸収体内まで凹む凹部である、
第1の態様の吸収性物品。
(作用効果)
本態様のような吸収体は保形性(剛性)が高い。よって、本態様のような吸収体を採用するとともに、凹部を吸収体内まで凹ませることで、深い受容空間をしっかりと確保することができる。
<第3の態様>
前記繊維集合体層は、構成繊維の繊度が2~9dtexであり、かつ密度が60~200g/m3である、
第1又は2の態様の吸収性物品。
(作用効果)
繊維集合体層の疎密は特に限定されるものではないが、本態様のような疎らな構造を有する者が好ましい。ただし、これ以外の繊維集合体であっても、同一の密度で比較するならば、逆戻り防止性の低下を防止しつつ軟便の取り込み速度を向上させることができる。
<第4の態様>
前記繊維集合体層における前記凹部の底部に位置する部分は、周縁部に最も厚み方向に圧縮された高圧縮部を有するとともに、周縁部よりも内側に前記高圧縮部よりも厚み方向に圧縮されていない低圧縮部を有している、
第3の態様の吸収性物品。
(作用効果)
凹部を形成する方法としては、いわゆるエンボス加工等の圧縮賦形加工を用いることができるが、圧縮賦形加工により形成される凹部の底部の全体において繊維集合体層が厚み方向に圧縮され、密度が高くなると、軟便の保持性は低下する。よって、本態様のように、繊維集合体層における前記凹部の底部に位置する部分のうち、周縁部には凹部の賦形のための高圧縮部を設け、それ以外の部分には軟便の保持性を確保するための低圧縮部を設けるのは好ましい。
<第5の態様>
前記繊維集合体層は、前記凹部の底部に位置する部分を含めて、見かけの厚みの最大値に対する最小値の割合が90%以上である、
第3の態様の吸収性物品。
(作用効果)
本態様のように、繊維集合体層の厚みの変化がほとんどない(つまり密度変化がない)ことにより、凹部の底部を含め繊維集合体層の全体にわたり良好な軟便の保持性を確保することができる。
<第6の態様>
肛門対向位置から遠ざかる第1方向と直交する第2方向に間隔を空けて並ぶ前記凹部の列が、前記第1方向に間隔を空けて複数列設けられ、
個々の前記列における凹部の第2方向の位置が、他の前記列における凹部の第2方向の位置と異なっている、
第1~5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
(作用効果)
介護用途を考えた場合、軟便の広がりを抑制することが重要である。本態様の配列で凹部を設けることにより、軟便の広がりを効果的に抑制することができる。
本発明によれば、逆戻り防止性の低下を防止しつつ軟便の取り込み速度を向上させることができる、等の利点がもたらされる。
パッドタイプ使い捨ておむつの平面図である。 図1の7-7断面を示す断面図である。 トップシート及び起き上がりギャザーを除いた要部を示す平面図である。 別の例の平面図である。 別の例の断面図である。 別の例の断面図である。 表面の要部を拡大して示す平面図である。
図1及び図2は、パッドタイプ使い捨ておむつの一例を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつは、装着者の肌に対向するトップシート1と、その裏に隣接して設けられた繊維集合体層2と、その裏側に設けられた吸収要素3とを備えている。吸収要素3の裏側には液不透過性シート4を配置することが望ましい。また、表面の幅方向両側には、表側に起き上がる起き上がりギャザー5を備えていることが望ましい。
(トップシート)
トップシート1には、軟便が透過可能な多数の孔9が形成されている。孔9は、トップシート1の全体に設けられていることが好ましいが、後述する凹部10を有する領域に設けられる限り、トップシート1の一部に設けられているだけでもよい。
個々の孔9の平面形状(開口形状)は、図示例のような楕円形とするほか、長孔形、真円形、三角形、長方形、ひし形等の多角形、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。また、異なる形状の孔9が混在していてもよい。個々の孔9の寸法は特に限定されないが、軟便の透過性等を考慮すると、最小径9d(真円以外の形状の場合、内接可能な最大の円の直径)が3~6mm程度であるのが好ましく、3~4.5mm程度であると特に好ましい。
孔9の平面配列は適宜定めることができ、不規則でもよく、模様や文字状等でも良いが、規則的に繰り返される平面配列が好ましい。例えば、前後方向LDに所定の間隔で直線的に並ぶ孔9の列が、前後方向LDの位置がずれるように幅方向WDに並ぶ配列とすることができる。このような配列には、図示例のように、隣り合う列において孔9の配置が互い違いとなる、いわゆる千鳥状(六角格子状)の配列の他、孔9の列の前後方向LDの位置が徐々にずれる配列も含まれる。これらの場合における孔9の間隔は適宜定めることができるが、例えば、孔9の前後方向LDの中心間隔9L(重心間隔。他の中心間隔に同じ。)は、孔9の前後方向LDの最大径9yの1.3~2.3倍程度とすることができ、孔9の幅方向WDの中心間隔9Wは、孔9の幅方向WDの最大径9xの1.1 ~2.1倍程度とすることができる。
また、他の規則的な平面配列としては、図示しないが、前後方向LDに所定の間隔で直線的に並ぶ孔9の列が、前後方向LDの位置がずれることなく幅方向WDに繰り返す行列状配列を挙げることができる。この場合における孔9の間隔は適宜定めることができるが、例えば、孔9の前後方向LDの中心間隔9Lは、孔9の前後方向LDの最大径9yの1.3~2.3倍程度とすることができ、孔9の幅方向WDの中心間隔9Wは、孔9の幅方向WDの最大径9xの1.1~2.1倍程度とすることができる。
トップシート1の素材は、肌感触を良好にするためには不織布が望ましいが、プラスチックシートでもよい。トップシート1としては、繊度2~15dtex程度、目付け10~45g/m2程度の不織布を用いることができる。また、トップシート1上に軟便を残りにくくするために、トップシート1の少なくとも表面は撥水性又は疎水性であることが好ましい。
(繊維集合体層)
トップシート1に裏側に隣接する繊維集合体層2は、トップシート1の孔を透過した軟便を繊維間に取り込み可能なものであり、軟便の固形分を保持する機能を有するものである。繊維集合体層2は、複数の繊維集合体が積層されたものであってもよい。
繊維集合体層2としては、不織布の他、フィラメントの集合体、例えばフィラメントを束としたトウを開繊してシート状としたものを用いることもできる。軟便の液分の透過性を考慮すると、繊維集合体層2は撥水性又は疎水性の繊維により構成されていることが好ましい。
繊維集合体層2は、軟便の取り込み性を考慮すると、疎らな構造であることが好ましいため、構成繊維の繊度は2~9dtex程度であり、密度は60~200g/m3程度であることが好ましい。また、最大厚みは0.2~1.1mmであることが好ましい。
(吸収要素)
繊維集合体層2の裏側に配置される吸収要素3は、軟便の液分及びこれに分散する微小な固形分を吸収するものである。軟便はトップシート1を透過して繊維集合体層2に至り、このうち吸収要素3により吸収可能な液分及び微小な固形分が吸収要素3に移行し、吸収要素3により吸収不可能な固形分は繊維集合体層2に残留し保持される。この結果、有孔9トップシート1及び繊維集合体層2を有しないものと比較して、軟便はトップシート1上に残りにくくなるだけでなく、繊維集合体層2に残留する軟便がトップシート1上に逆戻りしにくいものとなる。
吸収要素3としては、吸収材が集合した多孔質構造(繊維間隙を含む)の吸収体3Aを主体とするものが好適である。吸収材としては、パルプ繊維等の親水性繊維が好適に用いられ、吸収量を確保するために必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマー(SAP)が混合されうる。
高吸収性ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨欄性ポリマーを部分架橋したもの、あるいはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。製品の吸湿によるブロッキング性を抑制するためにブロッキング防止剤が添加されたものも用いることができる。また高吸収性ポリマーとしては、粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ゾル状、サスペンジョン状、ゲル状、フィルム状、不織布状等のさまざまな形態をもったものがあるが、これらはいずれも本発明において使用可能であり、特に粒子状のものが好適に使用される。高吸収性ポリマーの目付け量は適宜定めることができるが、一例として、介護用途における軟便吸収を目的とする場合、50~200g/m2とすることができる。
吸収要素3は、吸収体3Aの形状維持性を高めるために、吸収体3Aを包む包装シート3Bを含むことができる。包装シート3Bとしては、液透過性を有するシート、例えばクレープ紙や不織布、有孔9シート等を用いることができる。
吸収体3Aは複数積層されていてもよい。また、吸収要素3も複数積層されていてもよい。包装シート3Bは、一枚で吸収体3Aの全周を包むもののほか、複数枚組み合わせて吸収体3Aの全周を包むようにしてもよい。また、包装シート3Bは、吸収体3Aの一部(例えば図6に示すように上面のうち繊維集合体層2と重なる部分)を被覆しなくてもよい。
(液不透過性シート)
液不透過性シート4の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート4には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート4として用いることができる。
(起き上がりギャザー)
トップシート1上における排泄物の横方向移動を阻止し、横漏れを防止するために、幅方向WDにおける製品の両側の内面から起き上がる起き上がりギャザー5(一般には立体ギャザーと呼ばれている)を設けるのは好ましい。もちろん、起き上がりギャザー5の有無は限定されないが、軟便の横漏れ防止のために起き上がりギャザー5を設けることが望ましい。
起き上がりギャザー5の構造は特に限定されないが、図示例の起き上がりギャザー5は、ギャザーシート5sと、このギャザーシート5sに前後方向LDに沿って伸長状態で固定された細長状のギャザー弾性部材5aとにより構成されている。このギャザーシート5sとしては撥水性不織布を用いることができ、またギャザー弾性部材5aとしては糸ゴム等の細長状の弾性部材を用いることができる。ギャザー弾性部材5aは、図1及び図2に示すように各1本設ける他、各複数本設けることができる。
ギャザーシート5sの内面は、トップシート1の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端から幅方向WDの外側の部分は、液不透過性シート4の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。
起き上がりギャザー5の接合始端より幅方向WDの内側は、製品前後方向LDの両端部ではトップシート1上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分がギャザー弾性部材5aの収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そしてギャザー弾性部材5aの収縮力が作用するので、ギャザー弾性部材5aの収縮力により起き上がりギャザー5が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
(平面ギャザー)
図示例のパッドタイプ使い捨ておむつは、吸収体3Aよりも側方に延び出たサイドフラップSFを有しており、このサイドフラップの前後方向LDの中間には、ゴム等の細長状の弾性部材からなる脚周り弾性部材4aが前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されている。この構造により、各サイドフラップSFの脚周り部分の脚周りへのフィット性が向上するようになる。もちろん、サイドフラップSF及び脚周り弾性部材4aは省略することもできる。
(凹部)
特徴的には、図1、図2、図3及び図7に示すように、繊維集合体層2の表面から裏側に凹む凹部10が形成されるとともに、トップシート1の裏面と凹部10の内面との間に受容空間20が形成され(つまり、トップシート1が凹部10の底部まで落ち込まない)、トップシート1上の排泄物が孔9を通じて受容空間20に流入可能となっている。この場合、軟便はトップシート1の孔9を通じて受容空間20に流入可能であるため、受容空間20が無い場合と比較して軟便の取り込み速度は高いものとなるだけでなく、受容空間20は繊維集合体層2により囲まれており、受容空間20内に流入した軟便は繊維集合体層2に取り込まれ、保持可能となるため、逆戻り防止性も良好となる。しかも、繊維集合体層2の表面積も大きくなるため、繊維集合体層2による軟便の取り込み保持性も向上する。これらの作用は単に受容空間20を設けただけのものとは質的に異なる。そして、本吸収性物品は、これらの作用によって、逆戻り防止性の低下を防止しつつ軟便の取り込み速度を向上させることができる。
繊維集合体層2が十分な厚みを有する場合、凹部10は繊維集合体層2内で凹む(吸収体3A内まで凹まない)だけでもよい。この場合、凹部10は繊維集合体層2単独の状態でエンボス加工等の圧縮賦形加工を施すことにより形成した後、トップシート1及び吸収要素3との間に配置すればよい。しかし、繊維集合体層2の厚みを薄くする場合や、受容空間20をより高くする場合には、図示例のように凹部10は吸収体3A内まで凹むものであると、吸収体3Aの高い剛性により深い受容空間20をしっかりと確保することができる(受容空間20が狭くなったり、潰れたりしにくい)ため好ましい。
凹部10の深さ10hは適宜定めることができるが、通常の場合、3mm以上が好ましく、3~6mmであると特に好ましい。凹部10の深さ10hは、凹部10が吸収体3A内まで凹むものである場合、吸収体3Aの厚みの1/3~3/4倍であると好ましく、2/3~3/4であると特に好ましい。
図示例のように、凹部10が吸収体3A内まで凹むものを製造する場合、繊維集合体層2及び吸収要素3に対して別々にエンボス加工等の賦形加工を施し、それらの凹部10の位置を合わせて積層してもよいが、繊維集合体層2と吸収要素3とを重ねた状態でそれらを挟むようにしてエンボス加工等の賦形加工を行う方が簡単であるため好ましい。これらの場合、図2に示すように、圧縮賦形加工により形成される凹部10の底部11の全体において繊維集合体層2が厚み方向に圧縮され、密度が高くなると、軟便の保持性は低下する。よって、図5に示すように、凹部10の底部11の周縁部のみを圧縮する圧縮賦形加工等により、繊維集合体層2における凹部10の底部11に位置する部分は、周縁部に最も厚み方向に圧縮された高圧縮部2aを設けるとともに、周縁部よりも内側に高圧縮部2aよりも厚み方向に圧縮されていない低圧縮部2bを設けるのは好ましい。このように、高圧縮部2aを有することにより、凹部10の賦形性が確保され、それ以外の部分により軟便の保持性が確保されるようになる。
特に凹部10の賦形性を良好とするために、圧縮賦形加工を行う際に、加熱や超音波により、凹部10の底部11における圧縮部分の繊維同士を融着させるのは好ましいが、凹部10が形成される限り、このような融着がなくてもよい。
軟便の保持性を重視する場合、より好ましいのは、図6に示すように、繊維集合体層2の全体(凹部10の底部11に位置する部分を含めて)における、見かけの厚み2tの最大値に対する最小値の割合が90%以上であることである。すなわち、繊維集合体層2の厚み2tの変化がほとんどない(つまり密度変化がない)ことにより、凹部10の底部11を含め繊維集合体層2の全体にわたり良好な軟便の保持性を確保することができる。このような構造は、エンボス加工のような圧縮賦形加工ではなく、圧縮をせずに繊維集合体層2を変形させて凹部10を形成する変形加工や、型を用いて凹部10を有する繊維集合体層2を製造した後、その裏面上に吸収材を集積させて、繊維集合体層2の凹部10に沿う凹部10を有する吸収体3Aを製造することにより構築することができる。
個々の凹部10の形状(底部11の形状)は、図3に示すような楕円形とするほか、図4に示すような長方形、長孔形、真円形、三角形、ひし形等の多角形、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。また、異なる形状の凹部10が混在していてもよい。個々の凹部10の寸法は特に限定されないが、軟便の取り込み性を考慮すると、底部11の最小径10d(真円以外の形状の場合、内接可能な最大の円の直径。つまり、長方形の場合には短辺の長さ)が4~20mm程度であるのが好ましく、4~12mm程度であると特に好ましい。
凹部10の寸法を孔9との関係で考えた場合、凹部10の底部の前後方向LDの寸法10yは、孔9の前後方向LDの間隔(孔9の前後方向LDの中心間隔9L-孔9の前後方向LDの最大径9y)の1.3~7倍、特に3倍以上であることが好ましい。同様に、凹部10の底部の幅方向WDの寸法10xは、孔9の幅方向WDの間隔(孔9の幅方向WDの中心間隔9W-孔9の幅方向WDの最大径9x)の1.3~4倍、特に2倍以上であることが好ましい。
特に、凹部10は、次の(a)及び(b)の少なとも一方の条件を満足する寸法及び配置であることが好ましい。
(a)一つの凹部10の底部に少なくとも一部が重なる孔9が複数(好ましくは4以上)ある。
(b)一つの凹部10の底部に少なくとも一つ(好ましくは複数)の孔9の全体が重なる。
凹部10は一つのみでもよいが、複数配置することが望ましい。凹部10を複数設ける場合、その配置は不規則でもよく、模様や文字状等でも良いが、規則的に繰り返される平面配列が好ましい。例えば、肛門対向位置Zから遠ざかる第1方向と直交する第2方向に間隔を空けて並べて凹部10の列を形成し、軟便の広がりを抑制することが好ましい。また、このような凹部10の列を第1方向に間隔を空けて複数列設けるとともに、個々の列における凹部10の第2方向の位置が、他の列における凹部10の第2方向の位置と異なっているとさらに好ましい。第1方向は軟便の広がり方向であり、仰臥位の装着者を想定する場合には後方であるため、図示例では幅方向WDに沿う凹部10の列が前後方向LDに間隔を空けて複数設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば側臥位の装着者を想定する場合には第1方向は側方であり、第2方向は前後方向LDとなる。
また、図4に示すように、肛門対向位置Zから遠ざかる第1方向と直交する第2方向に延びる凹部10を設けるのも好ましく、このような凹部10を第1方向に間隔を空けて複数設けるとより好ましい。
凹部10を複数設ける場合の凹部10の間隔は適宜定めることができるが、例えば、凹部10の底部11の第1方向の中心間隔10Lは、凹部10の底部11の第1方向の最大径10yの1.7~2.5倍程度とすることができ、凹部10の底部11の第2方向の中心間隔10Wは、凹部10の底部11の第2方向の最大径10xの1.7~2.5倍程度とすることができる。
(接合手段)
厚み方向に隣接する部材同士は、適所で又は全体にわたり接合される。例えば、トップシート1と繊維集合体層2、繊維集合体層2と吸収要素3は、対向面の一部(点状等のパターン)で又は全体にわたり接合される。各部材を接合する接合手段としてはホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
(不織布)
上述した不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった親水性繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載がない限り、以下の意味を有するものである。
「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
「空隙率」とは、以下の方法により計測するものである。すなわち、中シートにおける接合部以外の部分を矩形に切取り、試料とする。試料の長さ、幅、厚み、重量を測定する。不織布の原料密度を用いて、試料と同じ体積で空隙率が0%の場合の仮想重量を算出する。試料重量及び仮想重量を以下の式に代入し、空隙率を求める。
空隙率 = 〔 (仮想重量 - 試料重量) / 仮想重量 〕 × 100
各部の寸法は、特に記載がない限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
本発明は、上記例のパッドタイプ使い捨ておむつの他、テープタイプ使い捨ておむつやパンツタイプ使い捨ておむつ等、吸収性物品全般に利用できるものである。
LD…前後方向、WD…幅方向、Z…肛門対向位置、1…トップシート、2…繊維集合体層、2a…高圧縮部、2b…低圧縮部、3…吸収要素、3A…吸収体、3B…包装シート、4…液不透過性シート、5…起き上がりギャザー、5a…ギャザー弾性部材、5s…ギャザーシート、9…孔、10…凹部、20…受容空間、11…底部。

Claims (2)

  1. 軟便が透過可能な多数の孔を有するトップシートと、
    前記トップシートの裏に隣接して設けられた、軟便を取り込み可能な不織布と、
    前記不織布の裏側に設けられた、繊維を含む吸収材が集合した吸収体を含む吸収要素とを備え、
    前記不織布の表面から前記吸収体内まで凹む凹部が形成され、
    前記凹部の深さは、前記吸収体の厚みの1/3~3/4倍であり、
    前記不織布は、構成繊維の繊度が2~9dtexであり、かつ密度が60~200g/mであり、
    前記不織布は、前記凹部と、前記凹部の周囲の前記凹部でない部分とにわたり延びており、
    前記不織布における前記凹部の底部に位置する部分は、周縁部のみに最も厚み方向に圧縮された高圧縮部を有するとともに、周縁部よりも内側全体が前記高圧縮部よりも厚み方向に圧縮されていない低圧縮部とされており、
    前記トップシートの裏面と前記凹部の内面との間に受容空間が形成され、
    前記トップシート上の排泄物が前記孔を通じて前記受容空間に流入可能である、
    ことを特徴とする、吸収性物品。
  2. 肛門対向位置から遠ざかる第1方向と直交する第2方向に間隔を空けて並ぶ前記凹部の列が、前記第1方向に間隔を空けて複数列設けられ、
    個々の前記列における凹部の第2方向の位置が、他の前記列における凹部の第2方向の位置と異なっている、
    請求項1記載の吸収性物品。
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