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JP7417459B2 - 車両の走行制御装置及び走行制御方法 - Google Patents

車両の走行制御装置及び走行制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、緊急時における車両の走行制御技術に関する。
自動車などの車両の走行中に、運転者の体調が急変したり、運転者による誤操作によって車両が急加速したりすることによって、交通事故等が発生するケースがある。このような状況を回避するべく、運転席からも助手席からも操作可能な位置に押しボタン式の緊急停止スイッチを設けておき、同スイッチが強く押されると、緊急停止ユニットが作動して、エンジン回転数をアイドル状態まで落とし、ブレーキが掛かって車両を自動的に減速及び停車させる技術が提案されている。
特開2013-238182号公報
このように緊急時に強制的に車両を減速させたり停止させたりする制動制御は、例えば後続車による追突や、他車両の走行の妨げになるリスクを考慮するならば、真に必要な場合にのみ作動させることが望ましい。しかし、例えば運転者が正常に運転することが可能な状況であっても、同乗者の思い違いによって咄嗟に緊急停止等の操作をしてしまうケースが考え得る。また、運転者自身によって当該操作をした場合であっても、やはり走行を継続することが可能であると速やかに判断し直すケースも考え得る。
そこで、本発明は、車両における緊急制動制御を運転者の判断により解除することを可能にし、緊急制動制御によって発生し得るリスクを低減することを目的とする。
本発明では、車両の走行中に実質的に運転者のみが操作することが可能な第1操作部、又は、前記運転者及び前記車両の同乗者の両方が操作することが可能な第2操作部が操作されたときに、前記運転者による運転操作に関わらず前記車両に対して強制的に制動制御を行う。そして、前記制動制御の途中で前記第1操作部が操作されたときに、前記制動制御を解除し、前記運転者による運転操作に応じた通常制御に戻す。
本発明によれば、本発明は、車両における緊急制動制御を運転者の判断により解除することが可能になり、緊急制動制御によって発生し得るリスクを低減することができる。
走行制御装置が搭載された車両のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。 緊急時走行制御システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。 車両における緊急停止スイッチの配置位置の一例を示す説明図である。 緊急時制御装置で実行される緊急停止制御処理の一例を示すフローチャートである。 緊急時制御装置で実行される緊急停止制御処理の一例を示すフローチャートである。 緊急時制御装置で実行される緊急停止制御の解除処理の一例を示すフローチャートである。 第2実施形態における緊急時走行制御システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。 第2実施形態における緊急時制御装置で実行される緊急停止制御処理の一例を示すフローチャートである。 第2実施形態における緊急時制御装置で実行される緊急停止制御処理の一例を示すフローチャートである。 第3実施形態における緊急時走行制御システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。 第3実施形態における緊急時制御装置で実行される緊急停止制御処理の一例を示すフローチャートである。
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は本発明の実施形態に係る車両の走行制御装置が搭載された車両1のハードウェア構成の一態様を示すブロック図である。
車両1は、左前輪2,右前輪3,左後輪4,右後輪5を有した4輪車両である。各車輪2-5は、各車輪のブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダを含んだホイルシリンダ6-9を備える。これらのホイルシリンダ6-9の液圧は、ブレーキ装置10(液圧制御装置)においてマスターシリンダの油圧が調整されることによって制御される。なお、これらの車両1のサービスブレーキの制動機構は、液圧式の摩擦ブレーキに限定されず、例えば、電動式の摩擦ブレーキとしてもよいし、複数系統の制動機構を備えていてもよい。また、車両1は、電動パーキングブレーキ(EPB(Electronic Parking Brake))装置11を備えている。電動パーキングブレーキ装置11は、後輪の車輪4及び車輪5のブレーキキャリパーに組み込まれた電動アクチュエータを制御してパーキングブレーキを駆動させる。
エンジン12は、電子制御スロットルやインジェクタが電子制御されることによって車輪2-5への出力トルクが制御される内燃機関を含んだ動力装置(動力源)である。
車輪駆動モータ13は、駆動力が電子制御されることによって車輪2-5への出力トルクが制御されるモータである。車輪駆動モータ13は、バッテリから供給される電力で駆動し、主として発進時や低速時には単独で車輪2-5を駆動させ、加速時や通常走行時等にはアクセル操作に応じてエンジン12と協働して、車輪2-5へ駆動トルクを発生させる。
ステアリング装置14は、操舵アシスト力を発生するモータを備える電動パワーステアリング装置に代表される、操舵に関するアクチュエータを備えたステアリング装置である。
緊急停止スイッチ20は、運転者または同乗者が、車両の走行を正常に継続できないと判断したときに操作するスイッチであり、所定値以上の押圧力で押下されることによりスイッチ接点が閉じて接続端子間が導通するボタンである。当該接続端子間が導通されると緊急時制御装置21でこれを検出する。
緊急時制御装置21は、緊急停止スイッチ20が押下されたことを検出すると、車両1の制動制御を行う。具体的には、緊急時制御装置21は、ブレーキ装置10、エンジン12及び車輪駆動モータ13に対して、強制的に車両1の緊急停止制御(制動制御)を行うように緊急停止制御命令の信号を送信する。また、緊急停止制御の途中で当該緊急停止スイッチ20が再度押下された場合には、当該緊急停止制御を解除することも可能である。なお、本実施形態では、制動制御とは、車両1を減速させ、その結果停止させることを示すが、本発明における制動制御は、必ずしも車両を停止させることを必須とするものではない。
図2は、本実施形態における車両1に搭載された緊急時走行制御システム100のシステム構成の一例を示す。
緊急時走行制御システム100は、第1緊急停止スイッチ20a及び第2緊急停止スイッチ20bと、緊急時制御装置21とを備える。緊急時制御装置21は、一例としてADAS(Advanced Driver Assistance System)ECU(Electronic Control Unit)において実装されており、緊急制御状態判定部22、緊急停止制御部23及び緊急停止制御解除部24を備える。また、緊急時走行制御システム100は、緊急時制御装置21の制御対象であるブレーキ装置10及び電動パーキングブレーキ装置11並びにこれらを電子制御するブレーキECU10aと、エンジン12を電子制御するエンジンECU12a並びにエンジン12が備える電子制御スロットル12b及びインジェクタ12cと、車輪駆動モータ13及びこれを制御するハイブリッドECU13aとを備える。さらに、緊急時走行制御システム100は、ハザードランプ30、車載ディスプレイ31及びスピーカ32、緊急時制御装置21に対して入力情報を提供する車輪速センサ40を具備する。
第1緊急停止スイッチ20aは、運転席から操作可能である一方で助手席や後部座席からは直接操作できない位置に設けられ、車両1の走行中に運転者により操作されるスイッチ(第1操作部)である。一方、第2緊急停止スイッチ20bは、運転席及び助手席の双方から操作可能な位置に設けられ、運転者及び車両1の同乗者の両方が操作することが可能なスイッチ(第2操作部)である。図3は、車両1における第1緊急停止スイッチ20a及び第2緊急停止スイッチ20bの配置位置の例を示している。第1緊急停止スイッチは、図3に示すような右ハンドルの車両において運転席側のハンドルの右側に配置されることにより、実質的に運転席にいる運転者からのみ操作可能である。一方、第2緊急停止スイッチ20bは、運転席及び助手席の間に配置されることにより、少なくとも運転席にいる運転者及び助手席にいる同乗者、さらに、状況によっては後部座席にいる同乗者からも操作可能である。前述したように、第1緊急停止スイッチ20a及び第2緊急停止スイッチ20bがそれぞれ所定値以上の押圧力で押下されてスイッチ接点が閉じると、緊急制御装置21でこれを検出する。
図2に戻り、緊急時停止装置21の緊急制御状態判定部22は、第1緊急停止スイッチ20a又は第2緊急停止スイッチ20bが押下されたことを検出する。さらに、緊急制御状態判定部22は、押下されたのが第1緊急停止スイッチ20aの場合には、現在緊急停止制御の途中であるか否かを判定する。
緊急停止制御部23は、第1緊急停止スイッチ20aが押下された場合であって現在緊急停止制御の途中でないとき、又は、第2緊急停止スイッチ20bが押下されたときに、運転者による運転操作に関わらず強制的に車両を減速させ停止させる緊急停止制御を行う。具体的には、緊急停止制御部23は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aに対して車両を減速させ停止させるための緊急停止制御命令の信号を送信する。また、緊急停止制御部23は、ハザードランプ30、車載ディスプレイ31及びスピーカ32に対し、緊急停止制御が行われていることを通知させる制御を行う。また、緊急停止制御部23は、車両1が停止したときに、ブレーキECU10aに対し、電動パーキングブレーキ装置11を駆動させる制御命令を送信する。なお、本実施形態における緊急停止制御部23が制動制御部に相当する。
緊急停止制御解除部24は、第1緊急停止スイッチ20aが押下された場合であって現在緊急停止中のとき、緊急停止制御を解除し、運転者による運転操作に応じた通常制御に戻す。具体的には、緊急停止制御解除部24は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aに対して、緊急停止制御の解除命令を送信する。また、緊急停止制御解除部24は、ハザードランプ30、車載ディスプレイ31及びスピーカ32における緊急停止制御の通知を中止する制御を行う。なお、本実施形態における緊急停止制御解除部24が制動制御解除部に相当する。
ブレーキECU10aは、緊急停止制御部23から送信された緊急停止制御命令又は緊急停止制御解除部24から送信された緊急停止制御の解除命令を受信すると、当該信号に基づき、ブレーキ量を算出して、ブレーキ装置10に対して制御信号を出力する。また、ブレーキECU10aは、緊急停止制御部23から送信された電動パーキングブレーキ装置11の駆動命令を受信すると、当該信号に基づき電動パーキングブレーキ装置11に対して制御信号を出力する。そして、ブレーキ装置10は、ブレーキECU10aから出力される制御信号に基づいたブレーキ圧の発生により、各車輪2-5に発生させる制動力を制御する。また、電動パーキングブレーキ装置11は、ブレーキECU10aから出力される制御信号に基づき、電動パーキングブレーキを駆動する。なお、電動パーキングブレーキ装置11は、ブレーキECU10aとは別構成のEPB ECUにより制御することも可能である。
エンジンECU12aは、緊急停止制御部23から送信された緊急停止制御命令又は緊急停止制御解除部24から送信された緊急停止制御の解除命令を受信すると、当該信号に応じて、電子制御スロットル12bの開度を調整する制御信号を出力する一方、インジェクタ12cの燃料噴射量を調整する制御信号を出力する。そして、電子制御スロットル12bは、エンジンECU12aから出力される制御信号に基づき、スロットルの開度を調整する。また、インジェクタ12cは、エンジンECU12aから出力される制御信号に基づき、燃料噴射量を調整する。
ハイブリッドECU13aは、緊急停止制御部23から送信された緊急停止制御命令又は緊急停止制御解除部24から送信された緊急停止制御の解除命令を受信すると、PCU(Power Control Unit、図示省略)を介し、車輪駆動モータ13に対して車輪駆動力を調整するように制御信号を出力する。そして、車輪駆動モータ13は、ハイブリッドECU13aから出力される制御信号に基づき、車輪駆動力を調整する。
ハザードランプ30は、緊急停止制御部23からの制御信号に応じて、通常時とは異なる間隔で点滅し、車両1の外部に対して緊急停止制御が行われていることを通知する。
車載ディスプレイ31は、車両1の車内の運転者及び同乗者が見ることが可能な位置に設置され、緊急停止制御部23からの制御信号に応じて、緊急停止制御を行っていることを文字や記号等でディスプレイ上に表示する。
スピーカ32は、車両1の内部に設置され、緊急停止制御部23からの制御信号に応じて、緊急停止制御を行っていることを通知する音声を出力する。なお、当該スピーカ32は、車両1の外部にも設置されていてもよい。
車輪速センサ40は、各車輪2-5の回転速度を信号として検出するセンサであり、本実施形態においては、車両1が緊急停止中か否かの判定等に用いることができる。
なお、車両1は、車両の走行状態や操作状態を検出し、車両の走行を制御するための各種センサとして、車輪速センサ40の他に、加速度センサ、ジャイロセンサ、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、操舵角センサ等を備えている。
上記の各構成要素は、それぞれ車載ネットワーク50で接続されている。車載ネットワーク50は、例えばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、FlexRay等で構成される。
また、緊急時停止装置21(ADAS ECU)、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aは、いずれも、プロセッサ、SRAM、FROM、通信インタフェース、及びこれらを相互通信可能に接続する内部バスを含む。プロセッサは、プログラムに記述された命令セット(データの転送、演算、加工、制御、管理など)を実行するハードウェアであって、演算装置、命令や情報を格納するレジスタ、周辺回路などから構成されている。SRAMは、電源供給遮断によってデータが消失する揮発性メモリからなり、プロセッサが動作中に使用する一時的な記憶領域を提供する。FROMは、電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリからなり、各ECUの管理を行うプログラムや、当該プログラムの動作に用いる各種データを格納する。通信インタフェースは、例えばCANトランシーバ等で構成され、車載ネットワーク50に接続する機能を提供する。
図4及び図5は、緊急時制御装置21(ADAS ECU)、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aで実行される緊急停止制御処理の一例を示す。
ステップ1(図ではS1と表記する)で、第1緊急停止スイッチ20aまたは第2緊急停止スイッチ20bが押下されてスイッチ接点が閉じ、接続端子間が導通する。
ステップ2で、第1緊急停止スイッチ20aまたは第2緊急停止スイッチ20bにおける接続端子間の導通、すなわちボタンの押下の有無を常時監視している緊急制御状態判定部22が、第1緊急停止スイッチ20aまたは第2緊急停止スイッチ20bが押下されたか否かを判定する。押下されていないときには(No)、緊急停止制御を行わず、継続して第1緊急停止スイッチ20aまたは第2緊急停止スイッチ20bの押下の有無を監視する。押下されたときには(Yes)、ステップ4に進む。
ステップ3で、緊急制御状態判定部22は、現時点において車両1が緊急停止制御の途中であるか否かを判定する。緊急停止制御の途中の状態には、緊急停止中と緊急停止移行中との2つの状態が含まれる。緊急停止中とは、車両1が緊急停止制御により減速した結果すでに停止している状態であり、緊急停止移行中とは、緊急停止制御が開始されて減速中の状態であって、未だ車両が停止していない状態を示す。なお、緊急停止制御の途中であるか否かの判定は、例えば、後述する緊急停止制御を開始するときに、緊急停止制御フラグをメモリに記録しておき、これを参照すること等によって実現することが可能である。車両1が緊急停止中又は緊急停止移行中でない場合には(Yes)、ステップ5に進み、車両1が緊急停止中又は緊急停止移行中である場合には(No)、後述する緊急停止制御の解除処理を実行する。このとき、本実施形態では、第1緊急停止スイッチ20aが押下されたときにのみ、緊急停止制御の解除処理を実行する。第2緊急停止スイッチ20bが押下されたときには、緊急停止中の場合にはそのまま停止状態を維持し、緊急停止移行中であるときには、すでに行われている緊急停止制御を継続して実行する。
ステップ4で、緊急停止制御部23は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aの各々に対し、緊急停止制御命令の信号を送信する。
ステップ5で、緊急停止制御部23は、スピーカ32から、例えば「緊急停止します」など、緊急停止を行うことを示す警報を音声で出力する。
ステップ6で、緊急停止制御部23は、車載ディスプレイ31に、例えば「緊急停止します」など、緊急停止を行うことを示す警報を画面上で文字やイラスト等で出力する。
ステップ7で、緊急停止制御部23は、ハザードランプ30を通常の点滅間隔よりも短い間隔で点滅させる。
なお、本実施形態ではスピーカ32、車載ディスプレイ31及びハザードランプ30の全ての機器おいて警報を出力しており、これにより車両1の車内及び車外の両方に対して緊急停止を知らせることが可能であるが、必ずしもこれら全てにより警報を出力する必要はない。
ステップ8で、緊急停止制御命令の有無を常時監視しているブレーキECU10aが、緊急停止制御命令の信号を緊急停止制御部23から受信したか否かを判定する。当該信号を受信したときには(Yes)、ステップ10に進み、当該信号を受信していないときには(No)、継続して緊急停止制御命令の有無を監視する。
ステップ9で、ブレーキECU10aは、車両を減速させて停止させるためのブレーキ量を算出し、ブレーキ装置10に対し、当該ブレーキ量で自動ブレーキを駆動させる制御信号を出力する。
ステップ10で、緊急停止制御命令の有無を常時監視しているエンジンECU12aが、緊急停止制御命令の信号を緊急停止制御部23から受信したか否かを判定する。当該信号を受信したときには(Yes)、ステップ12に進み、当該信号を受信していないときには(No)、継続して緊急停止制御命令の有無を監視する。
ステップ11で、エンジンECU12aは、電子制御スロットル12bに対し、スロットル開度を全閉にさせる制御信号を出力する。
ステップ12で、エンジンECU12aは、インジェクタ12cに対し、燃料噴射を停止させる制御信号を出力する。
これらのステップ11及びステップ12の処理により、エンジン12の回転数が減少し、停止する。なお、ステップ11及びステップ12では、エンジン12の回転数をアイドリング状態の回転数とするように電子制御スロットル12b及びインジェクタ12cを制御するようにしてもよい。
ステップ13で、緊急停止制御命令の有無を常時監視しているハイブリッドECU13aが、緊急停止制御命令の信号を緊急停止制御部23から受信したか否かを判定する。当該信号を受信したときには(Yes)、ステップ15に進み、当該信号を受信していないときには(No)、継続して緊急停止制御命令の有無を監視する。
ステップ14で、ハイブリッドECU13aは、車輪駆動モータ13に対し、駆動停止させる制御信号を出力する。
上記のステップ8からステップ14までの処理により、車両1は運転者によるアクセル操作に関わらず減速し、停止状態に至ることとなる。
ステップ15で、緊急停止制御部23は、車輪速センサ40からの入力に基づき、車両が停止しているか否かを判定する。車両が停止しているときには(Yes)、ステップ17に進み、車両が停止していないときには(No)、再度ステップ16の判定を行う。
ステップ16で、緊急停止制御部23は、ブレーキECU10aに対し、電動パーキングブレーキ装置11の駆動命令の信号を送信する。
ステップ17で、ブレーキECU10aは、電動パーキングブレーキ装置11に対し、電動パーキングブレーキを駆動させる制御信号を出力する。なお、電動パーキングブレーキ装置11の駆動とともに、変速機のシフトギアをP(パーキング)レンジ又はN(ニュートラル)レンジにする。
ステップ18で、緊急停止制御部23は、「緊急停止中」の状態であることを、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aに対し、所定周期で通知する。
図6は、緊急時制御装置21(ADAS ECU)、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aで実行される緊急停止制御の解除処理の一例を示す。
ステップ21で、緊急制御状態判定部22が、現在の状態が、緊急停止中又は緊急停止移行中のいずれであるかを判定する。緊急停止中と緊急停止移行中とのいずれであるかは、車輪速センサ40の入力により車両1が停止しているか否かを識別することによって判定することが可能である。緊急停止中であるときには(Yes)、ステップ22に進み、緊急停止移行中であるときには(Yes)、ステップ23に進む。
ステップ22で、緊急停止制御解除部24は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aの各々に対し、緊急停止状態の解除命令の信号を送信する。
ステップ23で、緊急停止制御解除部24は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aの各々に対し、緊急停止制御のキャンセル命令の信号を送信する。
ステップ24で、緊急停止制御解除部24は、緊急停止を行うことを示す警報のスピーカ32からの音声出力を停止する。
ステップ25で、緊急停止制御解除部24は、緊急停止を行うことを示す警報の車載ディスプレイ31への出力を停止する。
ステップ26で、緊急停止制御解除部24は、ハザードランプ30を消灯する。
ステップ27で、緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の有無を常時監視しているブレーキECU10aが、緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の信号を緊急停止制御解除部24から受信したか否かを判定する。当該信号を受信したときには(Yes)、ステップ28に進み、当該信号を受信していないときには(No)、継続して緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の有無を監視する。
ステップ28で、ブレーキECU10aは、ブレーキ装置10に対して緊急停止制御によって駆動している自動ブレーキを解除させる制御信号を出力する。
ステップ29で、緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の有無を常時監視しているエンジンECU12aが、緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の信号を緊急停止制御解除部24から受信したか否かを判定する。当該信号を受信したときには(Yes)、ステップ30に進み、当該信号を受信していないときには(No)、継続して緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の有無を監視する。
ステップ30で、エンジンECU12aは、電子制御スロットル12bにおけるスロットル開度の制御を、車両のアクセル操作に応じた通常制御に戻す。
ステップ31で、エンジンECU12aは、インジェクタ12cにおける燃料噴射量の制御を、車両1のアクセル操作に応じた通常制御に戻す。
ステップ32で、緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の有無を常時監視しているハイブリッドECU13aが、緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の信号を緊急停止制御解除部24から受信したか否かを判定する。当該信号を受信したときには(Yes)、ステップ33に進み、当該信号を受信していないときには(No)、継続して緊急停止状態の解除命令又は緊急停止制御のキャンセル命令の有無を監視する。
ステップ33で、ハイブリッドECU13aは、車輪駆動モータ13における駆動力の制御を、車両のアクセル操作に応じた通常制御に戻す。
ステップ34で、緊急停止制御解除部24は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aに対し、緊急停止制御が終了したことを通知する。
これらのステップ27からステップ34までの処理により、車両の走行状態は次のようになる。すなわち、前述した緊急停止制御処理により車両が緊急停止中であって、緊急停止状態の解除命令が送信された場合、車両は一旦そのまま停止した状態を維持する。その際、運転者によって電動パーキングブレーキが解除され、シフトギア操作やアクセル操作がなされた場合には、当該操作に応じてエンジンECU12aが通常制御により電子制御スロットル12bを開いてインジェクタ12cによる燃料噴射を再開させ、ハイブリッドECU13aが車輪駆動モータ13の駆動を再開させることにより、車両1の通常走行が再開される。なお、このとき、手動でイグニッションスイッチをオフにし、再度オンにすることを条件として通常走行を再開できるようにしてもよい。
一方、車両が緊急停止移行中であって緊急停止制御のキャンセル命令が送信された場合、現時点での運転操作状態に応じて、エンジンECU12aが通常制御により電子制御スロットル12bの開度及びインジェクタ12cの燃料噴射量を調整し、ハイブリッドECU13aが車輪駆動モータ13の駆動力を調整することにより、緊急停止に向けて減速していた車両1が、再度通常走行状態に戻ることとなる。このため、例えば、同乗者が誤って第2緊急停止スイッチ20bを押下した場合や、運転者が第1緊急停止スイッチ20a又は第2緊急停止スイッチ20bを押下したが、やはり運転を継続できると判断した場合に、運転者が第1緊急停止スイッチ20aを再度押下することにより、速やかに通常走行に戻ることができる。したがって、不要な緊急停止によって他車両の走行に支障を生じさせたり、後方から他車両に追突されたりする等のリスクを低減することができる。
ここで、緊急停止制御を解除することは、車両が再び通常制御により走行可能になることに鑑みると、適切な判断のもとに行うことが望ましい。この点において、運転者が意識混濁等の特別な状態になっている場合を除けば、当該車両を運転しており車両の状態等も把握している運転者が、自身が運転可能か否かについて適切な判断ができることが多いと考えられる。この点において、本実施形態では、緊急停止制御処理については第1緊急停止スイッチ20a及び第2緊急停止スイッチ20bのいずれの押下によっても実行する一方で、緊急停止制御の解除処理は、運転者が操作しやすい位置に設置された第1緊急停止スイッチ20aの操作によってのみ実行する。このため、本実施形態では、運転者が緊急停止が不要であると判断したときには速やかに緊急停止制御を解除できるとともに、本当に緊急停止しなければならないときに、同乗者による誤った判断や誤操作等により緊急停止制御の解除をしてしまうことを防ぐことができる。
なお、このように運転者の操作により緊急停止制御が解除された場合においても、運転者の判断能力が著しく低下しており正しい判断ができる状態ではないときには、やはり緊急停止制御をしたほうがよい場合も考え得る。そのような場合に備え、例えば、第2緊急停止スイッチ20bが所定時間継続して押下された場合には、再度緊急停止制御処理を実行するようにしてもよい。そうすることで、同乗者のほうが運転者よりも正常な判断ができる場合に、同乗者の操作によって適切に緊急停止制御を行うことが可能となる。
また、緊急停止スイッチ20の配置は、必ずしも本実施形態の通りでなくてもよい。例えば、緊急停止制御を実行するのは、運転席からも助手席からも操作可能な第2緊急停止スイッチ20bのみとし、第1緊急停止スイッチ20aは緊急停止制御の解除のみの機能を有するように構成してもよい。また、緊急停止制御を実行するトリガとなり得る装置であれば、ボタン型に限らずいかなる態様でもよい。例えば、手を触れることによりスイッチが作動するタッチセンサ等を用いることも可能である。但し、この場合、所定時間以上触れることを条件としてスイッチを作動させるようにする等、誤操作がされにくい構造にすることが望ましい。
ここで、例えば、運転者自身によって第1緊急停止スイッチ20aまたは第2緊急停止スイッチ20bが押下されたときには、緊急停止後に、運転者が車両を安全に停止させておくための操作を行うことが想定される。しかし、特に同乗者によって第緊急停止スイッチが押下されたとき等には、このような操作が必ず行われるとは限らない。本実施形態では、緊急停止時に電動パーキングブレーキを駆動させることにより、緊急停止時の車両の操作状態に関わらず、車両を安全に停止させておくことができる。しかしながら、電動パーキングブレーキの駆動は本発明の実施において必須ではなく、サービスブレーキの駆動のみで緊急停止を実現することも可能である。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、緊急停止制御において、車両1が走行している道路の属性に応じてブレーキ量を調整する。例えば、車両1が高速道路を走行中である場合、緊急停止スイッチ20が押下されたときに、車両1が急速に減速すると、車両1の運転者や同乗者にとって衝撃が大きく、また、高速で走行している他の車両が後方から追突する可能性も高い。このため、第2実施形態では、車両1が高速道路を走行中には、ブレーキ量を小さくし、徐々に減速できるように制御を行う。
図7は、第2実施形態における車両1に搭載された緊急時走行制御システム100のシステム構成の一例を示す。
緊急時走行制御システム100は、第1実施形態と同様の構成のほかに、緊急時制御装置21において、道路属性判別部25を備える。また、緊急時走行制御システム100は、緊急時制御装置21に対して入力情報を提供する構成要素として、車輪速センサ40に加え、GPS(Global Positioning System)41及びジャイロセンサ42を備える。さらに、緊急時走行制御システム100は、地図情報50を備える。
道路属性判別部25は、車輪速センサ40、GPS41及びジャイロセンサ42からの入力情報に基づいて、車両1が高速道路と一般道路とのいずれを走行中であるかを判別する。
GPS41は、車両1の現在位置を人工衛星からの電波によって計測するための装置である。
ジャイロセンサ42は、車両制御においてロール軸、ピッチ軸及びヨー軸を含む三軸回りにおいて車両1が回転した角度の角速度を検出する。ジャイロセンサ42は、車両1の進行方向における変化や傾き、加速度を検出することが可能である。
地図情報50は、車両が走行する道路の地図を示し、かつ、各道路の属性を示す情報を参照可能な情報である。この属性とは、例えば、道路が高速道路であるか一般道路であるかを示す道路種別をはじめ、道路の法定速度等、車両の走行に関連する種々の走行条件等を含む。ここで、各道路の属性を示す情報を参照可能とは、地図情報50自体に当該情報が含まれている場合と、各道路に対応付けられた外部データに当該情報が含まれている場合との両方を含む。地図情報50は、例えば、車両1が備えるナビゲーションシステムのメモリに保持されていてもよいし、通信により外部システムから随時受信するようにしてもよい。
他の構成要素については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図8及び図9は、第2実施形態において緊急時制御装置21(ADAS ECU)、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aで実行される緊急停止制御処理の一例を示す。
ステップ1からステップ3の処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
ステップ51で、道路属性判別部25は、GPS41において車両1の現在位置の位置情報を正常に受信できているか否かを判定する。位置情報を正常に受信できているときには(Yes)、ステップ52に進み、位置情報を正常に受信できていないときには(No)、ステップ55に進む。なお、GPS41において車両1の位置情報を正常に受信できない場合とは、例えば、車両1がトンネル内を走行中の場合等である。
ステップ52で、道路属性判別部25は、GPS41から受信した位置情報及び地図情報50に基づき、車両1が走行している現在位置が高速道路であるか否かを判定する。現在位置が高速道路である場合には(Yes)、ステップ53に進み、そうでない場合には(No)、ステップ54に進む。
ステップ53で、道路属性判別部25は、車両1が高速道路を走行中であると判別する。
ステップ54で、道路属性判別部25は、車両1が一般道路を走行中であると判別する。
ステップ55で、道路属性判別部25は、車輪速センサ40からの入力情報に基づき、車両1の走行速度が時速100キロメートル以上であるか否かを判定する。走行速度が時速100キロメートル以上である場合には(Yes)、ステップ56に進み、そうでない場合には(No)、ステップ57に進む。
ステップ56で、道路属性判別部25は、車両1が高速道路を走行中であると判別する。
ステップ57で、道路属性判別部25は、車輪速センサ40、ジャイロセンサ42からの入力情報に基づき、車両1の走行速度が時速70キロメートルから100キロメートルの間であって、かつ、車両1が登坂走行中又は加速中であるか否かを判定する。当該条件に該当する場合には(Yes)、ステップ58に進み、そうでない場合には(No)、ステップ59に進む。
ステップ58で、道路属性判別部25は、車両1が高速道路を走行中であると判別する。
ステップ59で、道路属性判別部25は、車両1が一般道路を走行中であると判別する。
なお、道路属性判別部25は、ステップ51でGPS41から現在位置の位置情報を受信できなかったとき、ジャイロセンサ42からの入力情報に基づいて現在位置を測定し、当該測定した現在位置及び地図情報50に基づいて、高速道路を走行中であるか否かを判定してもよい。
ステップ60で、緊急停止制御部23は、道路属性判別部25によるステップ51からステップ59までの間の判別結果に基づき、車両1が一般道路と高速道路とのいずれを走行中であるかを判定する。一般道路を走行中である場合には、ステップ61に進み、高速道路を走行中である場合には、ステップ62に進む。
ステップ61で、緊急停止制御部23は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aの各々に対し、一般道路走行時における緊急停止制御命令の信号を送信する。
ステップ62で、緊急停止制御部23は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aの各々に対し、高速道路走行時における緊急停止制御命令の信号を送信する。
なお、緊急時制御装置21(ADAS ECU)におけるステップ5からステップ7、ステップ15からステップ16、ステップ18の処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
ステップ63で、緊急停止制御命令の有無を常時監視しているブレーキECU10aが、緊急停止制御命令の信号を緊急停止制御部23から受信したか否かを判定する。当該信号を受信したときには(Yes)、ステップ64に進み、当該信号を受信していないときには(No)、継続して緊急停止制御命令の有無を監視する。
ステップ64で、ブレーキECU10aは、緊急停止制御命令の信号が一般道路走行時のものか高速道路走行時のものかを判定する。一般道路走行時の緊急停止制御命令のときには、ステップ65に進み、高速道路走行時の緊急停止制御命令のときには、ステップ66に進む。
ステップ65で、ブレーキECU10aは、一般道路を走行中である車両1を減速させて停止させるためのブレーキ量を算出する。このとき、ブレーキECU10aは、できる限り速やかに車両を停止させるべく、後述するステップ66における高速道路走行時のブレーキ量と比較して、ブレーキ量を大きくする。そして、ブレーキ装置10に対し、当該ブレーキ量で自動ブレーキを駆動させる制御信号を出力する。
ステップ66で、ブレーキECU10aは、高速道路を走行中である車両1を減速させて停止させるためのブレーキ量を算出する。このとき、高速道路において急ブレーキをかけると運転者や同乗者への衝撃が大きいほか、高速で走行している他の車両が後方から追突する可能性も高いため、ブレーキECU10aは、前述した一般道路走行時におけるブレーキ量と比較して、ブレーキ量を小さくする。そして、ブレーキ装置10に対し、当該ブレーキ量で自動ブレーキを駆動させる制御信号を出力する。
なお、ブレーキECU10aにおけるステップ17の処理、エンジンECU12aにおけるステップ10からステップ12の処理、及び、ハイブリッドECU13aにおけるステップ13からステップ14の処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
かかる第2実施形態によれば、車両1が高速道路を走行中にはブレーキ量を小さくして急ブレーキがかかることを避けることで、緊急停止に伴う運転者や同乗者の衝撃を軽減し、また、高速で走行中の後続車から追突されるリスクを低減することができる。このため、より安全性を向上させることができる。
なお、第2実施形態の変形例として、地図情報50において参照可能な道路の属性を示す情報が駐停車禁止区間を示す情報を含み、道路属性判別部25が、車両1が走行中の道路が駐停車禁止区間であることを判別するようにしてもよい。そして、車両1が走行中の道路が駐停車禁止区間である場合には、車両1を完全停止させずに所定速度(例えば、徐行程度の速度)で走行させるようにしてもよい。この場合、緊急停止制御部23は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aに対し、車両1が所定速度で走行するように制御信号を送信し、ブレーキ量及び車輪駆動力を調整する。
また、同様にして、地図情報50において参照可能な道路の属性を示す情報が各道路の最低速度を示す情報を含み、道路属性判別部25が、車両1が走行中の道路に最低速度が設定されていることを判別するようにしてもよい。そして、車両1が走行中の道路に最低速度が設定されている場合には、車両1を最低速度まで減速させた上で、走行速度が当該最低速度を下回らないように走行させるようにしてもよい。この場合、緊急停止制御部23は、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aに対し、車両1が最低速度を下回らない速度で走行するように制御信号を送信し、ブレーキ量及び車輪駆動力を調整する。なお、この場合も、例えば、当該制御中に第2緊急停止スイッチをさらに押下することにより、最低速度の設定の有無に関わらず車両1を完全停止させることができるようにしてもよい。
これらの変形例によれば、例えば、運転者が比較的速やかに運転を再開できる状況(一時的に眠ってしまった場合等)において、交通ルールの範囲内で制動制御をして安全性を確保しつつ、その後、運転者が第1緊急停止スイッチを押下することによって通常制御に戻すことができる。このため、他の車両の走行に及ぼす影響や後続車からの追突リスクをさらに低減することができる。
なお、これらの変形例においても、例えば、運転者による運転の再開の目処がたたない場合には、当該制御中に第2緊急停止スイッチをさらに押下することにより、駐停車禁止区間や最低速度の設定に関わらず、車両1を完全停止させることができるようにしてもよい。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、緊急停止スイッチ20の押下によって緊急停止制御を行うだけでなく、運転者の体調不良を検出し、運転不可能であるときには同様にして緊急停止制御を行う。
図10は、第3実施形態における車両1に搭載された緊急時走行制御システム100のシステム構成の一例を示す。
緊急時走行制御システム100は、第1実施形態と同様の構成のほかに、緊急時制御装置21において、運転可否判定部26を備える。また、緊急時走行制御システム100は、緊急時制御装置21に対して入力情報を提供する構成要素として、車輪速センサ40に加え、運転者異常検出装置60を備える。
運転可否判定部26は、運転者異常検出装置60による検出内容により、運転者が運転可能な状態であるか否かを判定する。
運転者異常検出装置60は、運転者の異常、すなわち、運転を継続できない状態になっていることを検出するために設置される装置であり、例えば、運転者の顔を含めた範囲を撮像可能に設置されたカメラを備える。カメラは、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を用いたデジタルカメラや、近赤外線カメラ等である。運転者異常検出装置60は、カメラにより撮像した運転者の顔画像を解析することで、運転者の生体異常、例えば、目を閉じている状態や白目状態、また、横倒れや前倒れ等の姿勢の異常を検出し、緊急制御装置21に対して異常検出信号を出力する。また、運転者異常検出装置60は、例えば、脈拍や脳波を計測する電子機器等によって運転者の生体異常を検出してもよい。
他の構成要素については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図11は、第3実施形態において緊急時制御装置21(ADAS ECU)、ブレーキECU10a、エンジンECU12a及びハイブリッドECU13aで実行される緊急停止制御処理の一例を示す。第3実施形態では、図4から図7に示した、緊急停止スイッチが押下されるときに実行する緊急停止制御処理及び緊急停止制御の解除処理を実行する一方で、当該図11に示す処理も実行する。
ステップ71で、運転者異常検出装置60が、運転者の生体異常を検出し、緊急時制御装置21に対して異常検出信号を出力する。
ステップ72で、運転者異常検出装置60からの異常検出信号の入力を常時監視している運転可否判定部26が、異常検出信号が入力されたか否かを判定する。異常検出信号が入力されていないときには(No)、緊急停止制御を行わず、継続して異常検出信号が入力の有無を監視する。異常検出信号が入力されたときには(Yes)、ステップ73に進む。
ステップ73で、運転可否判定部26は、スピーカ32から、緊急停止することを確認する緊急停止確認を音声で出力する。
ステップ74で、運転可否判定部26は、車載ディスプレイ31に、緊急停止することを確認する緊急停止確認を画面上で文字やイラスト等で出力する。
ステップ75で、運転可否判定部26は、緊急停止通知により運転者から緊急停止制御のキャンセル指示があったか否かを判定する。キャンセル指示があったときには(Yes)、ステップ72に戻り、継続して異常検出信号が入力の有無を監視する。キャンセル指示がないときには(No)、ステップ76に進む。なお、緊急停止制御のキャンセル指示は、例えば、車載ディスプレイ31のタッチパネルからの入力や、音声認識等によって行うことが可能である。
ステップ76で、運転可否判定部26は、運転者からの緊急停止のキャンセル指示がないまま所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過したときには(Yes)、図4のステップ4に進み、関連ECUに対して緊急停止制御命令の信号を送信する。所定時間が経過していないときには(No)、引き続き運転者からの緊急停止のキャンセル指示を待つ。
図4のステップ4以降の処理については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
かかる第3実施形態によれば、緊急停止スイッチ20が押下されたときのみならず、運転者の体調の異常が検出されたときにも、緊急停止制御が行われる。その一方で、緊急停止中や緊急停止移行中に第1緊急停止スイッチ20aが押下されたときには、当該緊急停止制御を解除する。このため、運転者異常検出装置60による異常検出が誤っていた場合や、運転者の体調不良がごく一時的なものであってすぐに正常に戻った場合等に、緊急停止制御を解除することができ、速やかに通常走行に戻ることができる。したがって、不要な緊急停止によって他車両の走行に支障を生じさせたり、後方から他車両に追突されたりする等のリスクをさらに低減することができる。
また、本実施形態では、緊急停止を行う前に、音声や画面表示によって緊急停止することの確認を出力し、運転者からの緊急停止のキャンセル指示を所定時間待ってから、緊急停止制御処理を開始している。これにより、不要な緊急停止制御の発生をより低減させることができる。
なお、本明細書においてはハイブリッド車両に緊急停止スイッチ20や緊急時制御装置21が搭載された例を示した説明したが、エンジンのみを駆動源とする車両や、電気自動車等、様々な動力源の車両において緊急停止スイッチ20や緊急時制御装置21を搭載することが可能である。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の技術的範囲で考え得る実施態様の一部に過ぎず、本発明の技術的範囲を制限するものではない。また、各実施形態における機能的構成及び物理的構成は、前述の態様に限定されるものではなく、例えば、各機能や物理的資源を統合して実装したり、逆に、さらに分散して実装したり、さらには、構成の一部について他の構成の追加、削除、置換等をすることも可能である。
1…車両、10…ブレーキ装置、11…電動パーキングブレーキ装置、12…エンジン、13…車輪駆動モータ、20a…第1緊急停止スイッチ、20b…第2緊急停止スイッチ、21…緊急時制御装置、22…緊急制御状態判定部、23…緊急停止制御部、24…緊急停止制御解除部、25…道路属性判別部、26…運転可否判定部

Claims (9)

  1. 車両の走行中に実質的に運転者のみが操作することが可能な第1操作部と、
    前記運転者及び前記車両の同乗者の両方が操作することが可能な第2操作部と、
    前記第1操作部又は前記第2操作部が操作されたときに、前記運転者による運転操作に関わらず前記車両に対して強制的に制動制御を行う制動制御部と、
    前記制動制御部による前記制動制御の途中で前記第1操作部が操作されたときに、前記制動制御を解除し、前記運転者による運転操作に応じた通常制御に戻す制動制御解除部と
    を備えた車両の走行制御装置。
  2. 前記車両の位置情報、及び、各道路の属性を示す情報を参照可能な地図情報に基づいて、前記車両が走行している道路の前記属性を判別する道路属性判別部をさらに備え、
    前記制動制御部は、前記道路属性判別部により判別された前記属性に応じて異なる前記制動制御を行う、請求項1記載の車両の走行制御装置。
  3. 前記道路属性判別部は、前記車両が走行している道路が高速道路又は一般道路のいずれであるかを判別し、
    前記制動制御部は、前記道路属性判別部により、前記車両が走行している道路が高速道路であると判別されたときに、前記制動制御におけるブレーキ量を、前記車両が一般道路を走行しているときよりも少なくする、請求項2記載の車両の走行制御装置。
  4. 前記道路属性判別部は、前記車両が走行している道路が駐停車禁止区間であるか否かを判別し、
    前記制動制御部は、前記道路属性判別部により、前記車両が走行している道路が駐停車禁止区間であると判別されたときに、前記制動制御におけるブレーキ量及び車輪駆動力を、前記車両が所定速度で走行するように調整する、請求項2又は請求項3に記載の車両の走行制御装置。
  5. 前記道路属性判別部は、前記車両が走行している道路に最低速度が設定されているか否かを判別し、
    前記制動制御部は、前記道路属性判別部により、前記車両が走行している道路に最低速度が設定されていると判別されたときに、前記制動制御におけるブレーキ量及び車輪駆動力を、前記車両が前記最低速度以上で走行するように調整する、請求項2から請求項4のいずれか1つに記載の車両の走行制御装置。
  6. 前記運転者が運転可能な状態か否かを判別する運転可否判定部をさらに備え、
    前記制動制御部は、前記運転可否判定部により前記運転者が運転不可能であると判別されたときに、前記運転者による運転操作に関わらず前記車両に対して強制的に前記制動制御を行う、請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の車両の走行制御装置。
  7. 前記制動制御部は、前記制動制御により前記車両が停止した後に、電動パーキングブレーキを駆動する、請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の車両の走行制御装置。
  8. 前記制動制御部は、前記車両の内部及び外部の少なくとも一方に設けられた機器によって前記制動制御を行う旨の警報を出力する、請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の車両の走行制御装置。
  9. 車両の走行中に実質的に運転者のみが操作することが可能な第1操作部、又は、前記運転者及び前記車両の同乗者の両方が操作することが可能な第2操作部が操作されたときに、前記運転者による運転操作に関わらず前記車両に対して強制的に制動制御を行い、
    前記制動制御の途中で前記第1操作部が操作されたときに、前記制動制御を解除し、前記運転者による運転操作に応じた通常制御に戻す
    ことを含む、車両の走行制御方法。
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